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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】発光モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/60 20100101AFI20240726BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20240726BHJP
   H01L 33/52 20100101ALI20240726BHJP
【FI】
H01L33/60
H01L33/50
H01L33/52
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022015422
(22)【出願日】2022-02-03
(65)【公開番号】P2022158922
(43)【公開日】2022-10-17
【審査請求日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2021060799
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】阿部 耕治
(72)【発明者】
【氏名】西内 計聡
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-072435(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0175554(US,A1)
【文献】特開2016-072379(JP,A)
【文献】特開2020-088381(JP,A)
【文献】特開2009-182028(JP,A)
【文献】特開2013-033837(JP,A)
【文献】特開2018-029163(JP,A)
【文献】特開2018-174251(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0264577(US,A1)
【文献】特開2014-168036(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0191272(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00 - 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に複数の発光素子が載置された配線基板を準備する工程と、
前記配線基板の上面における前記複数の発光素子が載置された領域の外側に、光反射性物質を含む第1樹脂を配置する工程と、
前記第1樹脂を前記領域に拡げることにより、前記第1樹脂を前記配線基板と前記発光素子との間に配置させ、かつ、前記複数の発光素子の上面を前記第1樹脂で被覆する工程と、
固体の二酸化炭素を前記第1樹脂の上面に吹き付けることにより、前記発光素子の上面の前記第1樹脂を除去する工程と、
を備えた発光モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記除去する工程において、前記発光素子間に配置された前記第1樹脂の上部も除去する請求項1に記載の発光モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記被覆する工程は、気体を前記配線基板の上面に吹き付けることにより前記第1樹脂を拡げる工程を含む請求項1または2に記載の発光モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記領域の形状は平面視において長方形であり、
前記第1樹脂を配置する工程において、前記第1樹脂は前記領域の長辺に沿って配置され、
前記被覆する工程は、前記領域の長辺以上の幅の開口形状を有するノズルから前記気体を噴射しつつ、前記ノズルを前記領域の短辺が延びる方向に移動させる工程を有する請求項3に記載の発光モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記被覆する工程において、前記ノズルを移動させる工程を複数回繰り返す請求項4に記載の発光モジュールの製造方法。
【請求項6】
蛍光体が含有された半硬化状態の第2樹脂を前記複数の発光素子上及び前記第1樹脂上に配置する工程と、
前記第2樹脂を硬化する工程と、
をさらに備えた請求項1~5のいずれか1つに記載の発光モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、発光モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、1枚の配線基板に多数の発光素子を搭載し、発光素子を個別に制御する発光モジュールが提案されている。このような発光モジュールにおいて、各発光素子の光の取出効率を向上させることが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-74005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
実施形態は、光の取出効率が高い発光モジュール及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る発光モジュールの製造方法は、上面に複数の発光素子が載置された配線基板を準備する工程と、前記配線基板の上面における前記複数の発光素子が載置された領域の外側に、光反射性物質を含む第1樹脂を配置する工程と、前記第1樹脂を前記領域に拡げることにより、前記第1樹脂を前記配線基板と前記発光素子との間に配置させ、かつ、前記複数の発光素子の上面を前記第1樹脂で被覆する工程と、固体の二酸化炭素を前記第1樹脂の上面に吹き付けることにより、前記発光素子の上面の前記第1樹脂を除去する工程と、を備える。
【0006】
実施形態に係る発光モジュールは、配線基板と、前記配線基板上に載置された複数の発光素子と、光反射性物質を含む第1樹脂と、前記発光素子の上面及び前記第1樹脂の上面を被覆し、蛍光体を含む第2樹脂と、を備える。前記発光素子は、上面と、前記上面と反対側の下面と、前記上面と前記下面との間であって前記下面から前記上面に向かって広がるように傾斜する側面とを有する。前記発光素子の下面が前記配線基板の上面に対向する。前記第1樹脂は、前記配線基板の上面と前記発光素子の下面との間、及び、隣接する前記発光素子の前記側面間に配置されている。隣接する前記発光素子間において、前記第1樹脂の上面は、前記配線基板から前記第2樹脂に向かう方向において前記発光素子の上面と下面との間に位置する。前記第1樹脂から露出する前記発光素子の前記側面は前記第2樹脂で被覆されている。
【発明の効果】
【0007】
実施形態によれば、光の取出効率が高い発光モジュール及びその製造方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る発光モジュールを示す斜め上側から見た斜視図である。
図2図2は、実施形態に係る発光モジュールを示す斜め下側から見た斜視図である。
図3図3は、図1の領域IIIを示す拡大平面図である。
図4図4は、図1に示すIV-IV線による断面図である。
図5A図5Aは、図4の領域VAを示す拡大断面図である。
図5B図5Bは、図5Aの領域VBを示す拡大断面図である。
図6A図6Aは、実施形態に係る発光モジュールの製造方法を示す断面図である。
図6B図6Bは、実施形態に係る発光モジュールの製造方法を示す断面図である。
図6C図6Cは、実施形態に係る発光モジュールの製造方法を示す断面図である。
図7A図7Aは、実施形態に係る発光モジュールの製造方法を示す断面図である。
図7B図7Bは、実施形態に係る発光モジュールの製造方法を示す断面図である。
図7C図7Cは、実施形態に係る発光モジュールの製造方法を示す断面図である。
図8A図8Aは、実施形態に係る発光モジュールの製造方法を示す平面図である。
図8B図8Bは、実施形態に係る発光モジュールの製造方法を示す平面図である。
図9図9は、実施形態において使用するノズルを示す斜視図である。
図10A図10Aは、実施形態に係る発光モジュールの製造方法を示す拡大断面図である。
図10B図10Bは、実施形態に係る発光モジュールの製造方法を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。各図面は、実施形態を模式的に示したものであるため、各部材のサイズ、間隔若しくは位置関係などが誇張、部材の一部の図示が省略、又は、断面図として切断面のみを示す端面図を用いる場合がある。なお、各図面中、同じ構成には同じ符号を付している。
【0010】
<構成>
先ず、実施形態に係る発光モジュールの構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る発光モジュールを示す斜め上側から見た斜視図である。
図2は、本実施形態に係る発光モジュールを示す斜め下側から見た斜視図である。
図3は、図1の領域IIIを示す拡大平面図である。
図4は、図1に示すIV-IV線による断面図である。
図5Aは、図4の領域VAを示す拡大断面図である。
図5Bは、図5Aの領域VBを示す拡大断面図である。
【0011】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る発光モジュール1は、パッケージ基板10、配線基板20、複数の発光素子30、第1樹脂40、第2樹脂50、複数のワイヤ60、及び、第3樹脂70を備える。なお、図1においては、図示の便宜上、第3樹脂70の一部及び第2樹脂50の一部を省略しており、ワイヤ60の一部及び発光素子30の一部等を可視化している。
【0012】
発光モジュール1は、複数の発光素子30として、小型の発光素子30を多数備え、より多くの小型の発光素子30が狭ピッチで配線基板20上に高密度に配列されていることが好ましい。これにより、照射範囲をより多い分割数で制御できるようになり、高解像度の照明システムの光源として用いることができる。例えば、発光モジュール1を車の配光可変型ヘッドランプ(Adaptive Driving Beam:ADB)に用いる場合、配光を高度に制御し、より高精細、高解像な光を照射することができる。
【0013】
パッケージ基板10は、例えば、平板状の基体11と、基体11の少なくとも上面に配置された配線とを含む。基体11の材料には、放熱性が高い材料を用いることが好ましく、さらに、高い遮光性や強度を備える材料であることがより好ましい。具体的には、アルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライトなどのセラミックス、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、BTレジン(bismaleimide triazine resin)、ポリフタルアミド(PPA)などの樹脂、さらに、樹脂と金属又はセラミックスとで構成される複合材などが挙げられる。パッケージ基板10は、平板状のものを用いてもよく、上面に配線基板20を収納するキャビティを備える構造を用いてもよい。配線の材料としては、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)、白金(Pt)、チタン(Ti)、タングステン(W)、パラジウム(Pd)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)などの金属又はその合金などが挙げられる。
【0014】
一例として、パッケージ基板10は、AlやCu等の金属性の基体にエポキシ樹脂等の絶縁性部材を積層し、表面及び内部に配線が配置されている。配線の一部は、パッケージ基板10の上面10aにおいて複数の上面パッド12を構成し、配線の他の一部はパッケージ基板10の下面10bにおいて複数の下面パッド13を構成している。
【0015】
本明細書においては、説明の便宜上、XYZ直交座標を採用する。パッケージ基板10の長手方向を「X方向」とし、短手方向を「Y方向」とし、厚さ方向を「Z方向」とする。Z方向のうち、パッケージ基板10の下面10bから上面10aに向かう方向を「上」ともいい、その逆方向を「下」ともいうが、この表現も便宜的なものであり、重力の方向とは無関係である。
【0016】
また、パッケージ基板10の上面10a及び下面10bには、金属製の基体が絶縁性部材から露出して放熱部14を構成している。平面視で、放熱部14はパッケージ基板10の中央部に配置されており、上面パッド12及び下面パッド13は、それぞれ放熱部14を挟むように放熱部14の両側に複数ずつ配置されている。上面パッド12及び下面パッド13は、例えば、パッケージ基板10の長辺に沿って配列されている。
【0017】
配線基板20は、パッケージ基板10の放熱部14上に配置されている。配線基板20は、例えば、集積回路が内蔵されたシリコン基板であり、例えば、特定用途向け集積回路基板(Application Specific Integrated Circuit基板:ASIC基板)である。配線基板20の下面は放熱部14の上面に接合部材を介して接合されている。接合部材としては、例えばシリコーン銀ペーストが挙げられる。配線基板20の上面21の中央部は、発光素子が載置される領域38として、発光素子30に接続される第1パッドが設けられており、その周辺部には、第1パッドと電気的に接続される第2パッドが設けられている。
【0018】
ワイヤ60は、パッケージ基板10と配線基板20とを電気的に接続するための部材である。ワイヤ60は、パッケージ基板10の上面パッド12と配線基板20の第2パッドとに接続されている。ワイヤ60としては、例えば、金(Au)が挙げられる。例えば、ワイヤ60の数は上面パッド12の数と同じである。
【0019】
図1図3図5Bに示すように、複数の発光素子30は、配線基板20の上面21の中央部に載置されている。発光素子30は、上面視形状が略矩形状である。複数の発光素子30は、例えば行列状に配列されている。一例では、上面が略正方形の発光素子30が64行64列に配列されたセグメントが4つ設けられており、発光素子30は合計で16,384個設けられている。一例では、発光素子30の配列周期は50μmであり、各発光素子30は一辺が45μmの略正方形状である。したがって、隣り合う発光素子30間の距離は5μmである。発光素子30は配線基板20の上面21の第1パッドに接続されている。発光素子30は、例えば、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)であり、例えば、青色の光を出射する。
【0020】
発光モジュール1が備える発光素子30の大きさは、発光素子30の実装精度及びモジュールの高精細性を考慮して、上面視において、一辺が20μm~100μmの略矩形状であることが好ましく、一辺が30μm~100μmの略矩形状であることがより好ましい。また、発光モジュール1が備える発光素子30の数は、発光モジュールの小型化及び高精細性を考慮して、5000個~100000個が好ましく、15000個~30000個がより好ましい。
隣接する発光素子30間の距離は、発光モジュール1の高精細化のために、より狭い方が好ましい。さらに、後述する第1樹脂40を効率よく配置することを考慮して、隣接する発光素子30間の距離は2μm以上10μm以下とすることが好ましく、3μm以上7μm以下とすることがより好ましい。
【0021】
なお、発光素子30は、任意の波長の光を出射する素子を選択することができる。例えば、青色や緑色の光を出射する発光素子としては、ZnSeや窒化物半導体(InAlGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)、GaPを用いたものが選択できる。また、赤色の光を出射する発光素子30としては、GaAlAs、AlInGaP、で表される半導体を好適に用いることができる。更に、これら以外の材料からなる半導体発光素子を用いることもできる。用いる発光素子30の組成や発光色は目的に応じて適宜選択することができる。
【0022】
図5Aに示すように、発光素子30は、上面31と、上面31と反対側の下面32と、上面31と下面32との間に配置された側面33と、を有する。側面33は、下面32から上面31に向かって広がるように傾斜している。発光素子30の上面31及び下面32は平面視において例えば矩形であり、側面33は上面31及び下面32に連なるように4面設けられている。すなわち、発光素子30の形状は、略逆四角錐台形である。発光素子30の下面32は配線基板20の上面21に対向している。発光素子30は、導電性の接合材39を介して、第1パッドに接続されている。このため、発光素子30の下面32は配線基板20の上面21から離れている。接合材39は、例えば、銅(Cu)が挙げられる。接合材39は、例えば、電解めっき法により形成することができる。
【0023】
第1樹脂40は、光反射性を有し、配線基板20の上面21と発光素子30の下面32との間、及び、隣接する発光素子30の対向する側面33間に配置されている。つまり、第1樹脂40は、発光素子30の上面を露出し、発光素子の側面33の下部と下面32とを被覆している。これにより、発光素子30から出射される光のより多くを上面21から取り出すことができる。第1樹脂40は、透光性樹脂からなる母材41と、母材41に含有される光反射性物質42とを含む。第1樹脂40に含まれる光反射性物質42の含有量を多くすることで、発光素子30からの光取り出し効率を高めることができる。第1樹脂40における光反射性物質42の濃度は、50質量%以上70質量%以下であることが好ましく、例えば、60質量%程度である。
【0024】
母材41の透光性樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂、また、これらの樹脂を少なくとも一種以上含むハイブリッド樹脂等の樹脂を用いることができる。なかでも耐熱性、耐光性に優れるシリコーン樹脂を用いることが好ましく、ジメチルシリコーン樹脂を用いることがより好ましい。ジメチルシリコーン樹脂は、より高温耐性等の信頼性に優れるため、車載用途の材料として好適に使用することができる。
【0025】
光反射性物質としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、炭酸バリウム、硫酸バリウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、ガラスフィラーなどを好適に用いることができる。
一例として、母材41はジメチルシリコーン樹脂であり、光反射性物質は酸化チタンである。第1樹脂40の外観色は白色である。
【0026】
第2樹脂50は、透光性を有し、発光素子30の上面31及び第1樹脂40の上面43を被覆している。第2樹脂50は、発光素子30の上面31、側面33の上部、及び、第1樹脂40の上面43に接している。なお、側面33の上部及び下部とは、例えば、側面33において、上面31から下面32までの高さ方向における上面側の領域及び下面側の領域である。第2樹脂50は、少なくとも透光性樹脂からなる母材51を含み、その母材51中に蛍光体52を含んでいてもよい。
【0027】
母材51としては、上述した第1樹脂40の母材41と同様の材料を用いることができる。蛍光体52としては、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Y(Al,Ga)12:Ce)、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体
(例えば、Lu(Al,Ga)12:Ce)、テルビウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Tb(Al,Ga)12:Ce)、CCA系蛍光体(例えば、Ca10(POCl:Eu)、SAE系蛍光体(例えば、SrAl1425:Eu)、クロロシリケート系蛍光体(例えば、CaMgSi16Cl:Eu)、βサイアロン系蛍光体(例えば、(Si,Al)(O,N):Eu)、αサイアロン系蛍光体(例えば、Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu)、SLA系蛍光体(例えば、SrLiAl:Eu)、CASN系蛍光体(例えば、CaAlSiN:Eu)若しくはSCASN系蛍光体(例えば、(Sr,Ca)AlSiN:Eu)等の窒化物系蛍光体、KSF系蛍光体(例えば、KSiF:Mn)、KSAF系蛍光体(例えば、K(Si,Al)F:Mn)若しくはMGF系蛍光体(例えば、3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn)等のフッ化物系蛍光体、ペロブスカイト構造を有する蛍光体(例えば、CsPb(F,Cl,Br,I))、又は、量子ドット蛍光体(例えば、CdSe、InP、AgInS又はAgInSe)等を用いることができる。
【0028】
図5Bに示すように、隣接する発光素子30間において、第1樹脂40の上面43は、Z方向、すなわち、配線基板20と第2樹脂50とが対向する方向において、発光素子30の上面31と下面32との間に位置する。これにより、発光素子30の側面33のうち、下部は第1樹脂40によって被覆され、上部は第2樹脂50によって被覆される。換言すれば、発光モジュール1は、隣接する発光素子30間において、発光素子30の側面33と第1樹脂40の上面43とで画定される凹部を有し、この凹部に第2樹脂50が配置されている。
【0029】
第3樹脂70は、パッケージ基板10と配線基板20とを接続するワイヤを保護する。
第3樹脂70の平面視形状は、配線基板20の外縁に沿った矩形の枠状である。第3樹脂70は、パッケージ基板10の上面から配線基板20の上面に亘って配置され、パッケージ基板10の上面パッド12、ワイヤ60、及び、配線基板20の外部接続用パッドを覆っている。
【0030】
図4に示すように、第3樹脂70は、パッケージ基板10上に設けられた外側樹脂枠71と、配線基板20上に設けられた内側樹脂枠72と、外側樹脂枠71と内側樹脂枠72との間に設けられた保護樹脂73と、を含む。第3樹脂70は、透光性を有していてもよく、遮光性を有していてもよい。第3樹脂70は、少なくとも透光性樹脂からなる母材を含み、その母材中に光反射性物質及び/又は光吸収性物質を含んでいてもよい。母材としては、上述した第1樹脂40の母材41と同様の材料を用いることができる。光反射性物質としては、上述した第1樹脂40の光反射性物質と同様の材料を用いることができる。光吸収性物質としては、カーボンブラック、グラファイト等が挙げられる。
【0031】
一例では、外側樹脂枠71及び内側樹脂枠72は、透光性を有し、保護樹脂73は、光反射性(遮光性)を有する。保護樹脂73の外観は、例えば、白色、黒色、灰色である。
なお、第1樹脂40、第2樹脂50、第3樹脂70には、それぞれ、必要に応じて着色剤や光拡散材、粘度を調整するためのフィラー等が含有されていてもよい。
【0032】
<製造方法>
次に、本実施形態に係る発光モジュール1の製造方法について説明する。
図6A図6C図7A図7Cは、本実施形態に係る発光モジュールの製造方法を示す断面図である。
図8A及び図8Bは、本実施形態に係る発光モジュールの製造方法を示す平面図である。
図9は、本実施形態において使用するノズルを示す斜視図である。
図10A及び図10Bは、本実施形態に係る発光モジュールの製造方法を示す拡大断面図である。
なお、図6A図7Cにおいては、図を簡略化するために、発光素子30の数を実際よりも少なく描いている。
【0033】
(配線基板20を準備する工程)
先ず、図6Aに示すように、配線基板20を用意する。次に、配線基板20の上面21の周辺部を除く中央部に、複数の発光素子30を載置する。複数の発光素子30は、それぞれ接合材39を介して配線基板20上に接合される。配線基板20の上面21の周辺部に、レジスト膜101を配置する。レジスト膜101は、複数の発光素子30が載置された領域38を囲むように、配線基板20上に配置される。レジスト膜101の形状は、例えば、矩形の枠状とし、レジスト膜101の厚さは、接合材39及び発光素子30の合計の厚さと同程度とする。このようにして、上面21にレジスト膜101及び複数の発光素子30が載置された配線基板20を準備する。
【0034】
(第1樹脂40を配置する工程)
次に、図6B及び図8Aに示すように、配線基板20の上面21における複数の発光素子30が載置された領域38の外側に、未硬化の第1樹脂40を配置する。上述の如く、第1樹脂40においては、透光性樹脂からなる母材41中に、光反射性物質42が含まれている。例えば、領域38の形状は平面視において長方形であり、第1樹脂40はレジスト膜101上であって領域38のY方向片側に、領域38の長辺に沿って配置する。X方向における第1樹脂40の長さは、領域38の長辺の長さL以上とする。
ここで、第1樹脂40は上述したように光反射性物質を高濃度で含んでいる。このため、配線基板20上に配置された未硬化の第1樹脂40は、配線基板20上を濡れ拡がりにくく、配置されたままの形状が維持されやすい。例えば、配線基板20の上面に配置される第1樹脂40の粘度は、室温(20±5℃)で、50Pa・s以上200Pa・s未満であることが好ましい。これにより配線基板20上に第1樹脂40を配置する際の領域38への意図せぬ拡がりが抑制され、後述する第1樹脂で被覆する工程において、第1樹脂の領域38への移動を制御しやすくなる。
【0035】
(第1樹脂40で被覆する工程)
次に、未硬化の第1樹脂40を領域38に拡げることにより、第1樹脂40を配線基板20と発光素子30との間に配置させる。この際、複数の発光素子30の上面も第1樹脂で被覆される。そして、第1樹脂40が隣接する発光素子30間の隙間を流動することにより、発光素子30の側面が第1樹脂で被覆される。
より具体的には、図9に示すように、幅Wの開口部を有するノズル200を準備する。ノズル200の開口部の形状(開口形状)は矩形であり、その幅Wは、領域38の長辺の長さL以上とする。
【0036】
次に、図6C及び図10Aに示すように、ノズル200から気体300を配線基板20の上面に向かって略垂直に噴射しつつ、ノズル200をY方向、すなわち、領域38の短辺が延びる方向に移動させる。このように、気体300を配線基板20の上面21に吹き付けることにより、未硬化の第1樹脂40がY方向に沿って延ばし拡げられる。このノズル200の移動は、例えば複数回繰り返してもよい。これにより、図8Bに示すように、第1樹脂40を領域38に拡げることができる。
【0037】
このとき、第1樹脂40は、発光素子30の上面31上をY方向に移動していくと共に、隣り合う発光素子30間の隙間に進入し、さらに配線基板20と発光素子30との間の隙間に進入する。ノズル200から気体300を、配線基板20の上面に向かって略垂直に噴射しつつ、ノズル200を一方向に沿ってゆっくり移動させることにより、領域38に拡げられた第1樹脂40においてボイドの発生を抑制することができる。
【0038】
本実施形態では、配線基板20に向かって略垂直に気体300を吹き付けることにより、略垂直に噴射された気体300をレジスト膜101及び/又は配線基板20の上面に沿って第1樹脂40へと吹き付けることができる。これにより、表面張力によりレジスト膜101上に留まっていた第1樹脂40の表面形状を変化させて、具体的には、第1樹脂40とレジスト膜101の上面との接触角を大きくして、濡れ性を低下させて、Y方向に緩やかに拡がらせることができる。そして、領域38に達した第1樹脂40が発光素子30に接触することにより、接触部を起点に毛管現象を利用して、発光素子30間および発光素子30下の隙間に第1樹脂40を濡れ広がらせることができる。
【0039】
このようにして第1樹脂40を拡げることで、ボイドの発生を抑制することができる。また、発光素子30の上面を被覆する第1樹脂40の厚みが抑えられるため、後述する第1樹脂40を除去する工程において、第1樹脂40をより容易に除去することができる。このようにして、第1樹脂40を配線基板20と発光素子30との間、隣接する発光素子30間に配置させ、かつ、複数の発光素子30の上面31を第1樹脂40で被覆する。その後、例えば熱処理を施すことにより、第1樹脂40を硬化させる。一例として、発光素子30の上面を被覆する第1樹脂40の厚みは約20μmである。なお、発光素子30の上面の一部は第1樹脂40から露出していてもよいが、上面の外縁のすべてが第1樹脂40で被覆されることが好ましい。
【0040】
第1樹脂40で被覆する工程において、気体300を噴射するノズル200のY方向への移動速度は0.1~0.5mm/秒とすることが好ましく、例えば0.2mm/秒とすることが好ましい。気体の圧力は0.3~0.5MPaとすることが好ましく、例えば0.45MPaとすることが好ましい。ノズル200の移動の繰り返し数は1~5回とすることが好ましく、例えば3回とすることが好ましい。気体300は、例えば、空気、窒素ガス、又は、酸素ガスとすることが好ましく、例えば、空気とする。
【0041】
(第1樹脂40を除去する工程)
次に、図7A及び図10Bに示すように、ノズル400から固体の二酸化炭素500を第1樹脂40の上面に吹き付ける。固体の二酸化炭素500は、発光素子30と第1樹脂40との界面付近において昇華し、第1樹脂40における発光素子30の上面31上に配置された部分を剥離する。これにより、発光素子30の上面31から第1樹脂40を除去することができる。このとき、発光素子30間に配置された第1樹脂40の上部も除去されて、発光素子30の側面33の上部を露出させることができる。
【0042】
固体の二酸化炭素500の粒子径は5~50μmとすることが好ましい。ノズル400の移動速度は20~100mm/秒とすることが好ましく、例えば50mm/秒とすることが好ましい。固体の二酸化炭素500を吹き付ける圧力は0.1~0.35MPaとすることが好ましく、例えば0.3MPaとすることが好ましい。ノズル400の移動の繰り返し数は1~5回とすることが好ましく、例えば3回とする。
【0043】
次に、レジスト膜101を除去する。レジスト膜101の除去は、例えば、ウェットエッチングにより除去することができる。図7Bに示すように、配線基板20、複数の発光素子30、レジスト膜101、第1樹脂40からなる中間体90を、レジスト剥離液102中に浸漬する。これにより、図7Cに示すように、レジスト膜101を除去することができる。
【0044】
(配線基板20を実装する工程)
次に、図1及び図4に示すように、パッケージ基板10上に配線基板20を載置する。パッケージ基板10は配線基板20に、金属ペースト等の公知の接着部材を介して固定することができる。接着部材としては、例えば、シリコーン銀ペーストが挙げられる。
【0045】
(第2樹脂50を配置する工程)
次に、未硬化又は半硬化状態の第2樹脂50を複数の発光素子30上及び第1樹脂40上に配置する。上述の如く、第2樹脂50においては、母材51中に蛍光体52が含有されている。第2樹脂50は、枠状の第3樹脂70の内側、すなわち、複数の発光素子30が配置された領域38に配置される。なお、第2樹脂50は、スプレーやポッティング等によって配置されてもよく、予めシート状に加工されたものを配置してもよい。
【0046】
(第2樹脂50を硬化する工程)
次に、熱処理を施すことにより、第2樹脂50を硬化させる。このとき、第2樹脂50を第1の温度、例えば、100℃に加熱すると、第2樹脂50が一旦液状化して、発光素子30間の隙間であって第1樹脂40上の空間に進入する。これにより、第2樹脂50を発光素子30の側面33の上部に接触させることができる。次に、第2樹脂50を第1の温度よりも高い第2の本硬化温度、例えば、150℃に加熱すると、第2樹脂50が硬化する。このようにして、本実施形態に係る発光モジュール1が製造される。
【0047】
なお、第2樹脂50を配置する工程及び硬化する工程は、図7Bに示すレジスト膜101の剥離工程と、配線基板20をパッケージ基板10に載置する工程との間に実施してもよい。
【0048】
本実施形態に係る発光モジュール1の製造方法は、さらに、配線基板20とパッケージ基板とを電気的に接続する工程として、パッケージ基板10の上面パッド12と配線基板20の外部接続用パッドとを、ワイヤ60によって接続する工程、ワイヤ60を保護するための工程として、パッケージ基板10上に外側樹脂枠71を、配線基板20上に内側樹脂枠72を配置し、外側樹脂枠71と内側樹脂枠72との間に、保護樹脂73を配置する工程等を含んでいてもよい。
【0049】
<効果>
本実施形態に係る発光モジュール1においては、配線基板20と発光素子30との間に第1樹脂40が配置されている。このため、発光素子30から下方に向けて出射した光を上方に向けて反射することができる。これにより、発光モジュール1は光の取出効率が高い。
【0050】
また、第1樹脂40における光反射性物質42の濃度が50~70質量%と高いため、第1樹脂40の光の反射率が高い。これにより、発光モジュール1は光の取出効率が高い。
【0051】
また、発光モジュール1においては、第2樹脂50を発光素子30に接触させており、発光素子30と第2樹脂50との間に接着材層等が介在しない。このため、光の利用効率が高い。
【0052】
また、発光モジュール1においては、発光素子30の側面33の上部が第2樹脂50に接触している。側面33の上部が第1樹脂40から露出することにより、発光素子30からの光の取り出し効率が向上する。また、発光素子30と第2樹脂50との接触面積が大きいため、密着性が良好である。
【0053】
また、本実施形態に係る発光モジュール1の製造方法によれば、第1樹脂40が配置された配線基板20の上面に向かって気体を吹き付けることにより、ボイドの発生を抑制しながら、第1樹脂40を配線基板20と発光素子30との間、及び、発光素子30間に確実に配置することができる。このため、より狭い発光素子30間の隙間に光反射性物質を高濃度で含む第1樹脂40を配置することが可能となり、発光モジュール1の小型化を図ることができる。また、第1樹脂40の光の反射率を向上させることができる。
【0054】
また、図9に示すように、ノズル200の開口形状の幅Wを領域38の長手方向の長さL以上としている。これにより、第1樹脂40が領域38を短手方向に同時に移動するため、ボイドの発生を抑制しながら、効率よく且つ均一に伸び拡げることができる。
【0055】
また、ノズル200の移動を複数回繰り返すことにより、発光素子30の上面31上に配置された第1樹脂40の厚みをより薄くすることができる。これにより、固体の二酸化炭素を吹き付けることにより、発光素子30の上面31から第1樹脂40を除去することができる。固体の二酸化炭素は軟質であるため発光素子30にダメージを与えにくく、発光素子30と第1樹脂40の界面付近で昇華することにより第1樹脂40を剥離しやすい。また、固体の二酸化炭素を吹き付けることにより、発光素子30間に配置された第1樹脂40の上部も除去されて、発光素子30の側面33の上部を露出させることができる。
【0056】
前述の実施形態は、本発明を具現化した例であり、本発明はこの実施形態には限定されない。例えば、前述の実施形態において、いくつかの構成要素又は工程を追加、削除又は変更したものも本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、例えば、車両用の前照灯及び表示装置の光源等に利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1:発光モジュール
10:パッケージ基板
10a:上面
10b:下面
11:基体
12:上面パッド
13:下面パッド
14:放熱部
20:配線基板
21:上面
30:発光素子
31:上面
32:下面
33:側面
38:領域
39:接合材
40:第1樹脂
41:母材
42:光反射性物質
43:上面
50:第2樹脂
51:母材
52:蛍光体
60:ワイヤ
70:第3樹脂
71:外側樹脂枠
72:内側樹脂枠
73:保護樹脂
90:中間体
101:レジスト膜
102:レジスト剥離液
200:ノズル
300:気体
400:ノズル
500:固体の二酸化炭素
L:長さ
W:幅
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9
図10A
図10B