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特許7527126処理装置、処理方法、処理プログラムおよび情報処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】処理装置、処理方法、処理プログラムおよび情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/04 20230101AFI20240726BHJP
【FI】
G06Q10/04
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020072292
(22)【出願日】2020-04-14
(65)【公開番号】P2021170169
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】力久 弘昭
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 政寛
(72)【発明者】
【氏名】奈良 一孝
【審査官】田上 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-116693(JP,A)
【文献】特開2018-206199(JP,A)
【文献】特開2015-099492(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の情報提供装置から提供されたデータに基づいて複数の予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、外部の端末装置から送信されてきたデータに基づいて、設備の耐用年数を予測する分析予測部と、
前記予測モデルの生成に貢献したデータを提供した情報提供装置の寄与率を予測モデルごとに算出する算出部と、
前記外部の端末装置から送信されてきたデータに基づいて、前記分析予測部で利用される予測モデルを選択する選択部と、
前記分析予測部で予測モデルが利用された場合、前記算出部で算出された寄与率に基づいて、情報提供装置に対する利益の分配を決定する決定部とを備え
前記外部の端末装置から送信されてきたデータには、設備に関する第1情報と、当該設備周辺の環境変化に関する第2情報と、当該設備の状態を示す第3情報とが含まれており、
前記分析予測部は、前記選択部により選択された予測モデルを利用して、設備が敷設される環境に応じた設備の耐用年数を予測する構成である、
処理装置。
【請求項2】
前記分析予測部で利用された予測モデルの利用回数を予測モデルごとにカウントするカウント部を備え、
前記決定部は、前記カウント部でカウントされた予測モデルごとの利用回数と、前記算出部で算出された寄与率に基づいて、情報提供装置に対する利益の分配を決定する構成である請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記分析予測部は、情報提供装置ごとのデータに基づいて情報提供装置ごとの予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、設備の耐用年数を予測する構成である請求項1又は2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記分析予測部は、すべての情報提供装置から提供されたデータに基づいて設備周辺の環境変化に関する予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、設備が敷設される環境に応じた設備の耐用年数を予測する構成である請求項1又は2に記載の処理装置。
【請求項5】
前記選択部は、前記分析予測部で利用される予測モデルを複数選択する構成であり、
前記分析予測部は、前記選択部により選択された複数の予測モデルをそれぞれ利用し、設備が敷設される環境に応じた設備の耐用年数を複数予測する構成である請求項に記載の処理装置。
【請求項6】
前記外部の端末装置から送信されてきたデータを分析し、分析結果に基づいて、不足している情報を収集し、前記不足している情報は、特定した場所の環境に関する情報を含む、情報収集部を備え、
前記選択部は、前記外部の端末装置から送信されてきたデータと、前記情報収集部により収集された情報とに基づいて、前記分析予測部で利用される予測モデルを選択する構成であり、
前記情報収集部は、前記分析結果に基づいて、設備が敷設されている場所、または設備が敷設される場所を特定し、前記特定した場所の環境に関する情報を外部の環境情報提供サーバから収集する構成である、
請求項またはに記載の処理装置。
【請求項7】
前記分析予測部により予測された結果を前記端末装置に提供する提供部を備え、
前記提供部は、
予測結果の要約版を生成し、当該要約版を前記端末装置に提供し、
前記要約版を閲覧した前記端末装置からの応答に基づいて、予測結果を前記端末装置に提供する構成である請求項1からのいずれか一項に記載の処理装置。
【請求項8】
処理装置において実行される処理方法であって、
前記処理装置により、複数の情報提供装置から提供されたデータに基づいて複数の予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、外部の端末装置から送信されてきたデータに基づいて、設備の耐用年数を予測する分析予測工程と、
前記処理装置により、前記予測モデルの生成に貢献したデータを提供した情報提供装置の寄与率を予測モデルごとに算出する算出工程と、
前記処理装置により、前記外部の端末装置から送信されてきたデータに基づいて、前記分析予測工程で利用される予測モデルを選択する選択工程と、
前記処理装置により、前記分析予測工程で予測モデルが利用された場合、前記算出工程で算出された寄与率に基づいて、情報提供装置に対する利益の分配を決定する決定工程とを備え
前記外部の端末装置から送信されてきたデータには、設備に関する第1情報と、当該設備周辺の環境変化に関する第2情報と、当該設備の状態を示す第3情報とが含まれており、
前記分析予測工程は、前記選択工程により選択された予測モデルを利用して、設備が敷設される環境に応じた設備の耐用年数を予測することを含む、
処理方法。
【請求項9】
コンピュータに、
複数の情報提供装置から提供されたデータに基づいて複数の予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、外部の端末装置から送信されてきたデータに基づいて、設備の耐用年数を予測する分析予測工程と、
前記予測モデルの生成に貢献したデータを提供した情報提供装置の寄与率を予測モデルごとに算出する算出工程と、
前記外部の端末装置から送信されてきたデータに基づいて、前記分析予測工程で利用される予測モデルを選択する選択工程と、
前記分析予測工程で予測モデルが利用された場合、前記算出工程で算出された寄与率に基づいて、情報提供装置に対する利益の分配を決定する決定工程と、を実行させるための処理プログラムであって、
前記外部の端末装置から送信されてきたデータには、設備に関する第1情報と、当該設備周辺の環境変化に関する第2情報と、当該設備の状態を示す第3情報とが含まれており、
前記分析予測工程は、前記選択工程により選択された予測モデルを利用して、設備が敷設される環境に応じた設備の耐用年数を予測することを含む、
処理プログラム
【請求項10】
クラウドサーバと、処理装置とから構成される情報処理システムであって、
前記処理装置は、
複数の情報提供装置から提供されたデータが前記クラウドサーバに保存されており、当該クラウドサーバに保存されている複数の前記データに基づいて複数の予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、外部の端末装置から送信されてきたデータに基づいて、設備の耐用年数を予測する分析予測部と、
前記予測モデルの生成に貢献したデータを提供した情報提供装置の寄与率を予測モデルごとに算出する算出部と、
前記外部の端末装置から送信されてきたデータに基づいて、前記分析予測部で利用される予測モデルを選択する選択部と、
前記分析予測部で予測モデルが利用された場合、前記算出部で算出された寄与率に基づいて、情報提供装置に対する利益の分配を決定する決定部とを備え
前記外部の端末装置から送信されてきたデータには、設備に関する第1情報と、当該設備周辺の環境変化に関する第2情報と、当該設備の状態を示す第3情報とが含まれており、
前記分析予測部は、前記選択部により選択された予測モデルを利用して、設備が敷設される環境に応じた設備の耐用年数を予測する構成である、
情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、設備に関する情報を処理して、設備の耐用年数を予測する処理装置、処理方法、処理プログラムおよび情報処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
各種の建築物やインフラ設備等の構造物(例えば、ビルや電気設備など)は、経年老朽化や災害等に伴い、ひび割れやさび・腐食等の劣化や損傷等が発生する。そのため、維持管理のために点検補修等の対策作業が必要である。近年では、これらの構造物の劣化等の状態を診断、検出するシステムが開発されている。例えば、引用文献1では、機械学習を用いて構造物の劣化状態を検出するシステムが提案されている。
【0003】
また、構造物も含めて、これらの建造物などに敷設される設備には、一般的に、設計上の耐用年数(10年~20年など)が定められている。しかし、設備の敷設環境や使用状況などにより、設備が予想以上に劣化し、この耐用年数が変化する。例えば、設備の一例である電線の劣化要因としては、過電圧や過電流等の電気的要因、電線内部への浸水、機械的要因(振動、衝撃、圧縮、屈曲など)、熱的要因(高温や低温による物性の低下)、紫外線や塩分付着(物性低下)、微生物による劣化、施工不良などが考えられる。また、これらの劣化要因が複数組み合わされることにより、さらに設備の劣化が促進され、耐用年数未満での交換が必要になる場合がある。また、同じ設備であっても、敷設環境や使用状況などが異なれば、個々に劣化状態が異なり、耐用年数が異なる。
【0004】
特に、電線や光ファイバなどの長尺(たとえば、10m以上、さらにのぞましくは100m以上)の構造物では、たとえ一体物であっても、部位によって、構造、敷設環境または使用状況が異なるので、劣化状態が異なる。例えば、送電線では、端末部と電線部で構造が異なる。また、長距離(たとえば、数km)にわたって電線部が敷設される場合は、同じ電線部であっても、敷設環境あるいは使用状況が異なる部位が発生する。その結果、部位によって、耐用年数や劣化状態が異なることになる。
【0005】
そして、長尺の構造物では、全長が長いので、全体および各々の構成部について、局所的な環境条件を測定することが困難である。そのため、限られた情報を組み合わせながら、これらの構造物の全体および各々の構成部の局所的な劣化等の状態を診断、検出するシステムが、特に求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-200512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に係るシステムを応用しても、現在敷設されている設備の劣化診断に適用できるだけであり、例えば、これから敷設する設備の耐用年数を敷設環境などに基づいて予測することは困難である。また、環境のデータを蓄積していなかった敷設済の設備の劣化診断をすることは困難である。さらに、耐用年数を予測する予測モデルの予測精度の向上には、予測モデルの生成に利用するデータの量と質が重要になる。
【0008】
本願発明では、予測モデルの生成に利用するデータの量と質を向上させ、設備の耐用年数の予測精度を向上することができる処理装置、処理方法、処理プログラムおよび情報処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る処理装置は、複数の情報提供装置から提供されたデータに基づいて複数の予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、外部の端末装置から送信されてきたデータに基づいて、設備の耐用年数を予測する分析予測部と、前記予測モデルの生成に貢献したデータを提供した情報提供装置の寄与率を予測モデルごとに算出する算出部と、前記分析予測部で予測モデルが利用された場合、前記算出部で算出された寄与率に基づいて、情報提供装置に対する利益の分配を決定する決定部とを備える構成である。
【0010】
本開示に係る処理装置は、上記開示において、前記分析予測部で利用された予測モデルの利用回数を予測モデルごとにカウントするカウント部を備え、前記決定部は、前記カウント部でカウントされた予測モデルごとの利用回数と、前記算出部で算出された寄与率に基づいて、情報提供装置に対する利益の分配を決定する構成である。
【0011】
本開示に係る処理装置は、上記開示において、前記複数の端末装置から提供されたデータには、設備に関する第1情報I1と、当該設備周辺の環境変化に関する第2情報I2と、当該設備の状態を示す第3情報I3とが含まれている。
【0012】
本開示に係る処理装置は、上記開示において、前記分析予測部は、情報提供装置ごとのデータに基づいて情報提供装置ごとの予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、設備の耐用年数を予測する構成である。
【0013】
本開示に係る処理装置は、上記開示において、前記分析予測部は、すべての情報提供装置から提供されたデータに基づいて設備周辺の環境変化に関する予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、設備が敷設される環境に応じた設備の耐用年数を予測する構成である。
【0014】
本開示に係る処理装置は、上記開示において、前記外部の端末装置から送信されてきたデータに基づいて、前記分析予測部で利用される予測モデルを選択する選択部を備え、前記分析予測部は、前記選択部により選択された予測モデルを利用して、設備が敷設される環境に応じた設備の耐用年数を予測する構成である。
【0015】
本開示に係る処理装置は、上記開示において、前記選択部は、前記分析予測部で利用される予測モデルを複数選択する構成であり、前記分析予測部は、前記選択部により選択された複数の予測モデルをそれぞれ利用し、設備が敷設される環境に応じた設備の耐用年数を複数予測する構成である。
【0016】
本開示に係る処理装置は、上記開示において、前記外部の端末装置から送信されてきたデータを分析し、分析結果に基づいて、不足している情報を収集する情報収集部を備え、前記選択部は、前記外部の端末装置から送信されてきたデータと、前記情報収集部により収集された情報とに基づいて、前記分析予測部で利用される予測モデルを選択する構成である。
【0017】
本開示に係る処理装置は、上記開示において、前記情報収集部は、前記分析結果に基づいて、設備が敷設されている場所、または設備が敷設される場所を特定し、特定した場所の環境に関する情報を外部の環境情報提供サーバから収集する構成である。
【0018】
本開示に係る処理装置は、上記開示において、前記分析予測部により予測された結果を前記端末装置に提供する提供部を備え、前記提供部は、予測結果の要約版を生成し、当該要約版を前記端末装置に提供し、前記要約版を閲覧した前記端末装置からの応答に基づいて、予測結果を前記端末装置に提供する構成である。
【0019】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る処理方法は、複数の情報提供装置から提供されたデータに基づいて複数の予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、外部の端末装置から送信されてきたデータに基づいて、設備の耐用年数を予測する分析予測工程と、前記予測モデルの生成に貢献したデータを提供した情報提供装置の寄与率を予測モデルごとに算出する算出工程と、前記分析予測工程で予測モデルが利用された場合、前記算出工程で算出された寄与率に基づいて、情報提供装置に対する利益の分配を決定する決定工程とを備える。
【0020】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る処理プログラムは、コンピュータに、複数の情報提供装置から提供されたデータに基づいて複数の予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、外部の端末装置から送信されてきたデータに基づいて、設備の耐用年数を予測する分析予測工程と、前記予測モデルの生成に貢献したデータを提供した情報提供装置の寄与率を予測モデルごとに算出する算出工程と、前記分析予測工程で予測モデルが利用された場合、前記算出工程で算出された寄与率に基づいて、情報提供装置に対する利益の分配を決定する決定工程と、を実行させるためのプログラムである。
【0021】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る情報処理システムは、クラウドサーバと、処理装置とから構成される情報処理システムであって、前記処理装置は、複数の情報提供装置から提供されたデータが前記クラウドサーバに保存されており、当該クラウドサーバに保存されている複数の前記データに基づいて複数の予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、外部の端末装置から送信されてきたデータに基づいて、設備の耐用年数を予測する分析予測部と、前記予測モデルの生成に貢献したデータを提供した情報提供装置の寄与率を予測モデルごとに算出する算出部と、前記分析予測部で予測モデルが利用された場合、前記算出部で算出された寄与率に基づいて、情報提供装置に対する利益の分配を決定する決定部とを備える。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、予測モデルの生成に利用するデータの量と質を向上させ、設備の耐用年数の予測精度を向上することができる。特に、情報提供装置から、繰り返しデータが提供される場合に、初回以降に提供されるデータの質や量を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、情報処理システムの構成を示す図である。
図2図2は、第1情報の一例を模式的に示す図である。
図3図3は、第2情報の一例を模式的に示す図である。
図4図4は、第3情報の一例を模式的に示す図である。
図5図5は、処理装置の構成を示す図である。
図6図6は、予測モデルごとに各社の寄与率などが関連付けられているテーブルを模式的に示す図である。
図7図7は、複数の予測モデルが生成される処理の一例についての説明に供する図である。
図8図8は、複数の予測モデルが生成される処理の一例についての説明に供する図である。
図9図9は、予測モデルの生成に利用するデータの量と質を向上させ、設備の耐用年数の予測精度を向上する処理方法の手順を示すフローチャートである。
図10図10は、コンピュータの構成を示す図である。
図11図11は、コンピュータの他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る処理装置、処理方法、処理プログラムおよび情報処理システムの構成と動作について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0025】
(情報処理システムの構成について)
図1は、本発明に係る処理装置100を含む情報処理システム200の構成を示す図である。情報処理システム200は、ネットワークNを介して、複数の情報提供装置1a、1b、・・・、1nと、複数の端末装置2a、2b、・・・、2nと、クラウドサーバ3と、処理装置100とが相互に接続されている。
【0026】
複数の情報提供装置1a、1b、・・・、1nは、例えば、設備を有するまたは管理する会社によって管理されている。設備とは、屋内および屋外を問わず、建物や路上などに敷設される部材であり、例えば、電線(通信線、電力線を含む)、電柱、電力関連設備(碍子、変圧器、クロージャーなど)などである。なお、本実施形態では、「情報提供装置1」と称した場合、複数の情報提供装置1a、1b、・・・、1nを個別的に示す場合と、複数の情報提供装置1a、1b、・・・、1nを全体的に示す場合がある。情報提供装置1は、自社が有するまたは管理する設備に関するデータを、ネットワークNを介してクラウドサーバ3に送信する装置である。
【0027】
複数の端末装置2は、例えば、設備を有するまたは管理する会社によって管理されている。また、本実施形態では、「端末装置2」と称した場合、複数の端末装置2a、2b、・・・、2nを個別的に示す場合と、複数の端末装置2a、2b、・・・、2nを全体的に示す場合がある。端末装置2は、処理装置100にデータを送信し、処理装置100の予測結果の提供を受ける装置である。
【0028】
ここで、これから設備を購入して敷設する会社や、すでに敷設されている設備の耐用年数を知りたい会社(以下では、設備購入予定等の会社と称する)では、設備に関するデータを保有していない場合、耐用年数の予測ができないため、設計上の耐用年数を手掛かりにして管理することになる。設備購入予定等の会社にとって、実際の敷設環境や使用状況などから、設備の実際の耐用年数を予測できれば、設備の管理を適切に行うことができる。よって、設備購入予定等の会社は、端末装置2を利用して、処理装置100から設備の耐用年数に関する予測結果の提供を受けることができる。
【0029】
また、設備を有しまたは設備を管理し、設備に関するデータを有する会社(以下、設備データ保有会社と称する)においても、自社が保有している設備に関するデータだけでなく、他社が保有している設備に関するデータも活用できれば、設備の実際の耐用年数を高度に予測することができ、設備の管理を適切に行うことができる。よって、設備データ保有会社も同様に、端末装置2を利用して、処理装置100から設備の耐用年数に関する予測結果の提供を受けることができる。また、設備データ保有会社は、情報提供装置1を利用して設備に関するデータをクラウドサーバ3に送信することにより、一定条件を満たすことにより、利益の分配を受けることができる。
【0030】
設備に関するデータには、設備に関する第1情報I1と、設備周辺の環境に関する第2情報I2と、設備の状態を示す第3情報I3とが含まれている。図2は、第1情報I1の一例を模式的に示す図である。図3は、第2情報I2の一例を模式的に示す図である。図4は、第3情報I3の一例を模式的に示す図である。
【0031】
第1情報I1は、図2に示すように、設備を識別するID(identification)を示す設備ID、設備を製造した年月日を示す製造年月日、設備を製造した会社名を示す製造会社名、設備の定格電圧や定格温度などを示すスペック情報、設備を敷設した年月日を示す敷設年月日、設備を敷設した業者名を示す敷設業者名、設備を実際に敷設した作業者名を示す作業者名、設備を敷設したときの環境の情報(温度や湿度や天気などの情報)を示す環境情報などを含む情報である。なお、第1情報I1に含まれている項目は、図2に示す項目に限定されない。
【0032】
設備IDは、設備の形状(平型、丸型など)、用途(通信用、電力用など)、材料名(ビニル、ポリエチレンなど)、サイズなどに基づいて、同じ設備には同じIDが付与される。
【0033】
また、設備IDは、製造会社ごとに独自のIDを付与している場合がある。この場合には、処理装置100は、予め定められている変換表などに基づいて、同等品には同じIDが付与されるように設備IDを編集する。
【0034】
第2情報I2は、図3に示すように、設備IDごとに、各種のセンサにより取得された設備周辺の環境の変化に関する情報および設備内部の環境の変化に関する情報(以下、センシング情報と称する場合がある)が時系列で構成されている情報である。センシング情報には、設備筐体内の温度、湿度、内部圧力、浸水量、ケーブル本体の温度などが含まれる)なお、図3には、代表として「設備ID:0000000a」の第2情報I2を模式的に示している。
【0035】
センシング情報とは、設備周辺の温度、湿度、振動数などの情報である。なお、センシング情報は、設備周辺の温度、湿度、振動数に限定されず、設備周辺の日射量や紫外線量や降水の酸性度などを含めてもよい。
【0036】
設備周辺には、温度、湿度および振動などを検出する各種のセンサが配置されている。各種のセンサは、予め定められたタイミングで温度などをセンシングする。予め定められたタイミングとは、例えば、10分ごと、30分ごと、1時間ごと、などである。データのセンシングのタイミングとデータの送信のタイミングは、同時でなくてもよい。また、データは、有線や無線を使ったオンラインで取得することが望ましいが、ロボットや人手を用いたオフラインでデータを取得してもよい。
【0037】
また、第2情報I2は、各種のセンサによりセンシングされたデータを所定の期間ごとに平均化し、その平均化されたデータで構成されてもよい。例えば、気温の場合、一日ごとに、午前の平均値と午後の平均値で示されてもよいし、最低気温と最高気温で示されてもよい。
【0038】
また、第2情報I2は、各種のセンサによりセンシングされた全データから構成されてもよい。この構成の場合には、処理装置100は、第2情報I2に含まれている各データを所定の期間ごとに平均化するなどの処理を行ってもよい。
【0039】
第3情報I3は、図4に示すように、設備IDと、設備の劣化状態を確認した日時を示す日時情報と、設備の劣化状態などの情報を含む情報である。なお、第3情報I3に含まれている項目は、図4に示す項目に限定されない。
【0040】
設備の劣化状態は、設備の補修や交換の目安になる情報である。設備が被覆されている電線の場合の劣化状態について説明する。例えば、電線が断線し、交換を行った場合には、「A」状態とし、電線(シース(外皮))の外観に変化(変色、変質、腐食、粉塵付着など)が生じている場合には、「B」状態、電線の外観に変化がない場合には、「C」状態などとする。
【0041】
なお、設備に関するデータには、第1情報I1、第2情報I2および第3情報I3以外の情報が含まれてもよく、例えば、保全記録(設備の点検記録、故障修理の記録)に関する情報なども含まれてもよい。設備に関するデータを入力する手段としては、キーボード、カメラ、ビデオ、各種センサなどがある。また、キーボードなどから入力されたデータは、演算・加工された二次データを設備に関するデータとしてもよい。
【0042】
(処理装置の構成と動作について)
つぎに、処理装置100の構成と動作について説明する。図5は、処理装置100の構成を示す図である。処理装置100は、通信部10と、学習部11と、データ処理部12と、分析予測部13と、算出部14と、決定部15とを備える。
【0043】
通信部10は、処理装置100と他の装置(複数の情報提供装置1と、複数の端末装置2と、クラウドサーバ3)との間での通信を行う。
【0044】
学習部11は、クラウドサーバ3に保存されている複数のデータに基づいて学習を行い、学習した結果から複数の予測モデルを生成する。本実施例では、予測モデルは、機械学習やディープラーニング(深層学習)などを用いて生成する場合について説明するが、これに限定されず、回帰演算を用いて生成してもよい。
【0045】
ここで学習部11の動作について説明する。学習部11は、クラウドサーバ3に保存されている複数のデータに基づいて学習を行い、学習した結果から、設備の劣化要因と設備の耐用年数に関する予測モデルを複数生成する。1つのデータには、設備IDごとに、第1情報I1、第2情報I2および第3情報I3が関連付けられている。
【0046】
具体的には、学習部11は、第3情報I3に基づいて、設備の劣化状態が「A」状態になっている設備IDを抽出する。
【0047】
学習部11は、抽出した設備IDに関連付けられている情報の中から、劣化要因になり得る情報を抽出する。劣化要因になり得る情報とは、質の高い設備に関するデータを意味し、例えば、第1情報I1に含まれている、敷設業者名、作業者名、設備を敷設したときの環境の情報、第2情報I2に含まれている、センシング情報、設備の劣化状態が「A」状態になるまでの期間などである。設備の劣化状態が「A」状態になるまでの期間は、例えば、第1情報I1に含まれている敷設年月日と第3情報I3に含まれている日時情報とから算出することができる。
【0048】
敷設業者名、作業者名および設備を敷設したときの環境の情報は、施工不良の原因になり得る情報である。例えば、作業者A氏が敷設した設備は、他の作業者が敷設した設備よりも、耐用年数が短い場合などがある。このような場合には、この作業者A氏の氏名が劣化要因の特徴となる情報に該当する。
【0049】
センシング情報は、電線内部への浸水、機械的要因(振動、衝撃、圧縮、屈曲など)、熱的要因(高温や低温による物性の低下)、その他環境要因(湿度、日射)などになり得る情報である。
【0050】
学習部11は、抽出した劣化要因になり得る情報に基づいて、個々の劣化要因の特徴を学習し、学習した結果から、設備ごとの劣化要因と耐用年数に関する予測モデルを複数生成する。
【0051】
また、学習部11は、一度生成した予測モデルを所定のタイミングで自動的に評価し、この評価に基づいて更新する処理を行う構成でもよい。具体的には、学習部11は、ある予測モデルについて、精度低下を検知した場合、この予測モデルを自動的に更新する。例えば、学習部11は、予測モデルの利用回数の低下などを契機にして精度の低下を検知してもよい。このように構成されることにより、学習部11は、予測精度(予測モデルの品質)を維持することができる。また、この予測精度の低下に関する情報を処理装置100の管理者や情報提供装置1の管理者に通知してもよい。
【0052】
データ処理部12は、通信部10を介して端末装置2から送信されてきたデータを処理する。例えば、データ処理部12は、通信部10を介して端末装置2から送信されてきたデータを処理し、設備IDや設備を敷設する環境情報などを特定する。
【0053】
分析予測部13は、複数の情報提供装置1から提供されたデータがクラウドサーバ3に保存されており、当該クラウドサーバ3に保存されている複数のデータに基づいて複数の予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、データ処理部12で処理された結果に基づいて、設備が敷設される環境に応じた設備の耐用年数を予測する。
【0054】
算出部14は、予測モデルの生成に貢献したデータを提供した情報提供装置1の寄与率を予測モデルごとに算出する。図6は、予測モデルごとに各社の寄与率などが関連付けられているテーブルT1を模式的に示す図である。テーブルT1は、例えば、記憶部16に記憶されている。なお、テーブルT1に含まれている「利用回数」は、予測モデルの利用回数を示しており、詳細については後述する。
【0055】
また、予測モデルは、劣化要因になり得る情報(質の高い設備に関するデータ)から生成される。よって、算出部14は、学習部11により予測モデルが生成されたときに、劣化要因になり得る情報を多く寄与した情報提供装置1の寄与率が高くなるように算出する。
【0056】
決定部15は、分析予測部13で予測モデルが利用された場合、算出部14で算出された寄与率に基づいて、情報提供装置1に対する利益の分配を決定する。処理装置100は、決定部15により決定された利益の分配に基づいて、各情報提供装置1に対して利益を還元する。なお、利益の還元は、決定部15により決定された利益の分配に基づいて定められたポイントや現金を付与してもよい。
【0057】
このようにして、処理装置100は、クラウドサーバ3に保存されている複数のデータに基づいて複数の予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、外部の端末装置2から送信されてきたデータに基づいて、設備が敷設される環境に応じた設備の耐用年数を予測し、予測モデルの生成に貢献したデータを提供した情報提供装置の寄与率を予測モデルごとに算出し、予測モデルが利用された場合、算出部14で算出された寄与率に基づいて、情報提供装置1に対する利益の分配を決定する。
【0058】
処理装置100は、上述したように、学習部11により予測モデルが生成されたときに、劣化要因になり得る情報(質の高い設備に関するデータ)を提供した情報提供装置1の寄与率が高くなるように算出部14で算出する。情報提供装置1を管理する会社は、質の高い設備に関するデータを大量にクラウドサーバ3に送信するほど、より多くの利益の分配を得ることができる。よって、情報処理システム200において、利益の配分を多く得るために、情報提供装置1から質の高い設備に関するデータが大量にクラウドサーバ3に送信されることが期待される。したがって、処理装置100は、予測モデルの生成に利用するデータの量と質を向上させ、設備の耐用年数の予測精度を向上することができる。
【0059】
(分析予測部の第1の動作)
分析予測部13は、当該クラウドサーバ3に保存されている情報提供装置1ごとのデータに基づいて学習された結果から情報提供装置1ごとの予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、設備が敷設される環境に応じた設備の耐用年数を予測する構成であってもよい。
【0060】
ここで、学習部11により生成される予測モデルについて説明する。図7は、クラウドサーバ3に保存されているデータに基づいて、複数の予測モデルが生成される処理の一例についての説明に供する図である。なお、学習部11により生成された複数の予測モデルは、記憶部16に記憶されてもよい。
【0061】
情報提供装置1aは、会社Aにより管理されており、設備に関するデータ(以下では、第1データD1と称する)をクラウドサーバ3に送信する。情報提供装置1bは、会社Bにより管理されており、設備に関するデータ(以下では、第2データD2と称する)をクラウドサーバ3に送信する。情報提供装置1cは、会社Cにより管理されており、設備に関するデータ(以下では、第3データD3と称する)をクラウドサーバ3に送信する。
【0062】
学習部11は、第1データD1に基づいて学習された結果から第1予測モデルM11を生成する。つまり、第1予測モデルM11は、情報提供装置1aを管理する会社Aから提供された第1データD1のみに基づいて学習された結果から生成されており、会社Aの特徴(設備が敷設されている環境などの特徴)を示す予測モデルである。
【0063】
学習部11は、第2データD2に基づいて学習された結果から第2予測モデルM12を生成する。つまり、第2予測モデルM12は、情報提供装置1bを管理する会社Bから提供された第2データD2のみに基づいて学習された結果から生成されており、会社Bの特徴(設備が敷設されている環境などの特徴)を示す予測モデルである。
【0064】
学習部11は、第3データD3に基づいて学習された結果から第3予測モデルM13を生成する。つまり、第3予測モデルM13は、情報提供装置1cを管理する会社Cから提供された第3データD3のみに基づいて学習された結果から生成されており、会社Cの特徴(設備が敷設されている環境などの特徴)を示す予測モデルである。
【0065】
分析予測部13は、第1予測モデルM11を利用した場合、設備の耐用年数を、例えば、「12年」と予測する。分析予測部13は、第2予測モデルM12を利用した場合、設備の耐用年数を、例えば、「10年9カ月」と予測する。分析予測部13は、第3予測モデルM13を利用した場合、設備の耐用年数を、例えば、「10年~15年」と予測する。
【0066】
端末装置2を管理する会社は、各予測モデルからそれぞれ予測された耐用年数を参考にしてもよいし、自社の設備が敷設される環境に近い会社に関する予測モデルによって予測された耐用年数を参考にしてもよい。
【0067】
また、情報提供装置1を管理する会社は、自社に関する予測モデルの利用が多いほど、より多くの利益の分配を得ることができる。よって、情報処理システム200において、利益の配分を多く得るために、情報提供装置1から質の高い設備に関するデータが大量にクラウドサーバ3に送信されることが期待される。したがって、処理装置100は、予測モデルの生成に利用するデータの量と質を向上させ、設備の耐用年数の予測精度を向上することができる。
【0068】
(分析予測部の第2の動作)
分析予測部13は、クラウドサーバ3に保存されているすべての情報提供装置1から提供されたデータに基づいて学習された結果から設備周辺の環境変化に関する予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、設備が敷設される環境に応じた設備の耐用年数を予測する構成でもよい。
【0069】
ここで、学習部11により生成される予測モデルについて説明する。図8は、クラウドサーバ3に保存されているデータに基づいて、複数の予測モデルが生成される処理の一例についての説明に供する図である。なお、学習部11により生成された複数の予測モデルは、記憶部16に記憶されてもよい。
【0070】
情報提供装置1aは、会社Aにより管理されており、設備に関する第1データD1をクラウドサーバ3に送信する。情報提供装置1bは、会社Bにより管理されており、設備に関する第2データD2をクラウドサーバ3に送信する。情報提供装置1cは、会社Cにより管理されており、設備に関する第3データD3をクラウドサーバ3に送信する。
【0071】
学習部11は、第1データD1、第2データD2および第3データD3に基づいて学習された結果から第1予測モデルM21、第2予測モデルM22、第3予測モデルM23、・・・、第n予測モデルM2nを生成する。
【0072】
第1予測モデルM21は、例えば、第1データD1、第2データD2および第3データD3に含まれる低温環境を示すデータに基づいて学習された結果から生成される。第2予測モデルM22は、例えば、第1データD1、第2データD2および第3データD3に含まれる高温環境を示すデータに基づいて学習された結果から生成される。第3予測モデルM23は、例えば、第1データD1、第2データD2および第3データD3に含まれる気温差が大きい環境を示すデータに基づいて学習された結果から生成される。
【0073】
分析予測部13は、第1予測モデルM21を利用した場合、設備の耐用年数を、例えば、「13年」と予測する。分析予測部13は、第2予測モデルM22を利用した場合、設備の耐用年数を、例えば、「18年」と予測する。分析予測部13は、第3予測モデルM23を利用した場合、設備の耐用年数を、例えば、「8年」と予測する。
【0074】
端末装置2を管理する会社は、各予測モデルからそれぞれ予測された耐用年数を参考にしてもよいし、自社の設備が敷設される環境に近い環境に関する予測モデルによって予測された耐用年数を参考にしてもよい。
【0075】
また、情報提供装置1を管理する会社は、自社に関する予測モデルの利用が多いほど、より多くの利益の分配を得ることができる。よって、情報処理システム200において、利益の配分を多く得るために、情報提供装置1から質の高い設備に関するデータが大量にクラウドサーバ3に送信されることが期待される。したがって、処理装置100は、予測モデルの生成に利用するデータの量と質を向上させ、設備の耐用年数の予測精度を向上することができる。
【0076】
(予測モデルの利用回数について)
処理装置100は、図5に示すように、分析予測部13で利用された予測モデルの利用回数を予測モデルごとにカウントするカウント部17を備える構成でもよい。この構成の場合、決定部15は、カウント部17でカウントされた予測モデルごとの利用回数と、算出部14で算出された寄与率に基づいて、情報提供装置1に対する利益の分配を決定する構成である。
【0077】
カウント部17は、予測モデルごとの利用回数をテーブルT1(図6を参照)に記録する。決定部15は、テーブルT1を参照し、予測モデルごとの利用回数と、それぞれの寄与率に基づいて、情報提供装置1に対する利益の分配を決定する。
【0078】
情報提供装置1を管理する会社は、各予測モデルについての寄与率が高く、利用回数が多いほど、より多くの利益の分配を得ることができる。よって、情報処理システム200において、利益の配分を多く得るために、情報提供装置1から質の高い設備に関するデータが大量にクラウドサーバ3に送信されることが期待される。したがって、処理装置100は、予測モデルの生成に利用するデータの量と質を向上させ、設備の耐用年数の予測精度を向上することができる。
【0079】
(予測モデルを選択について)
処理装置100は、図5に示すように、外部の端末装置2から送信されてきたデータに基づいて、分析予測部13で利用される予測モデルを選択する選択部18を備える構成でもよい。分析予測部13は、選択部18により選択された予測モデルを利用して、設備が敷設される環境に応じた設備の耐用年数を予測する構成である。
【0080】
具体的には、通信部10は、会社X1が管理する端末装置2から送信されたデータを受信する。データ処理部12は、通信部10で受信されたデータを処理し、会社X1の設備が敷設される環境(例えば、低温環境など)などを特定する。選択部18は、データ処理部12により特定された会社X1の設備が敷設される環境などに基づいて、最も適した予測モデルを選択する。分析予測部13は、選択部18により選択された予測モデルを利用して、会社X1の設備が敷設される環境に応じた設備の耐用年数を予測する。
【0081】
よって、処理装置100は、設備購入予定等の会社または設備データ保有会社に対して、それぞれの環境に適した設備の耐用年数の予測情報を提供することができる。設備購入予定等の会社または設備データ保有会社は、処理装置100から提供された設備の耐用年数に関する予測情報に基づいて、設備の管理を適切に行うことができる。
【0082】
また、選択部18は、分析予測部13で利用される予測モデルを複数選択する構成であってもよい。分析予測部13は、選択部18により選択された複数の予測モデルをそれぞれ利用し、設備が敷設される環境に応じた設備の耐用年数を複数予測する構成である。
【0083】
具体的には、通信部10は、会社X2が管理する端末装置2から送信されたデータを受信する。データ処理部12は、通信部10で受信されたデータを処理し、会社X2の設備が敷設される複数の環境(例えば、屋内環境、屋外環境など)などを特定する。選択部18は、データ処理部12により特定された会社X2の設備が敷設される複数の環境などに基づいて、それぞれに最も適した予測モデルを複数選択する。分析予測部13は、選択部18により選択された複数の予測モデルを利用して、会社X2の設備が敷設される環境に応じた設備の耐用年数を複数予測する。
【0084】
また、選択部18は、予め定められている予測モデルを含めて選択してもよい。予め定められている予測モデルとは、処理装置100の管理者などがレコメンドしたい予測モデル(例えば、上述した会社Aの特徴(設備が敷設されている環境などの特徴)を示す予測モデル(第1予測モデルM11)や自社のデータのみで構成される予測モデル(他社のデータを参照しないモデル)である。他社のデータを参照しないモデルを利用した場合、結果的に、利益は、他社に分配されない。また、分析予測部13は、敷設された地域に特有の環境条件(海からの距離、来襲台風回数、降水量)や、敷設した設備に特有の条件(型番、ロット、その他の製造条件)などを考慮した予測ができる。
【0085】
よって、処理装置100は、設備を複数の異なる環境に敷設する会社などに対して、複数の環境に適した設備の耐用年数の予測情報を提供することができる。設備を複数の異なる環境に敷設する会社などは、処理装置100から提供された予測情報に基づいて、設備の管理を適切に行うことができる。
【0086】
(外部サーバの利用について)
処理装置100は、図5に示すように、外部の端末装置2から送信されてきたデータを分析し、分析結果に基づいて、不足している情報を収集する情報収集部19を備える構成であってもよい。選択部18は、外部の端末装置2から送信されてきたデータと、情報収集部19により収集された情報とに基づいて、分析予測部13で利用される予測モデルを選択する構成である。
【0087】
具体的には、情報収集部19は、外部の端末装置2から送信されてきたデータを分析し、分析結果に基づいて、設備がすでに敷設されている場所、または設備が敷設される予定の場所を特定し、不足している情報(例えば、特定した場所の環境に関する情報)を外部の環境情報提供サーバ4から収集する。
【0088】
情報収集部19は、外部の端末装置2から送信されてきたデータに含まれている会社の住所から、設備がすでに敷設されている場所、または設備が敷設される予定の場所を特定する。また、情報収集部19は、外部の端末装置2から送信されてきたデータに設備が敷設されている場所の情報、または設備が敷設される場所の情報が含まれていれば、この情報を利用する。
【0089】
外部の環境情報提供サーバ4とは、例えば、気象情報などを提供しているWebサイトである。情報収集部19は、外部の環境情報提供サーバ4にアクセスし、特定した場所の環境に関する情報(例えば、特定した場所における過去3年の平均気温の情報、降雨量の情報、寒暖差の情報など)を取得する。
【0090】
また、学習部11は、クラウドサーバ3に保存されているデータ(複数の情報提供装置1から提供されたセンシング情報など)と、環境情報提供サーバ4から取得した情報を組み合わせて学習を行い、学習した結果から予測モデルを生成してもよい。
【0091】
例えば、外部の環境情報提供サーバ4側において、百葉箱などを用いて、長期間ある地域の温度データなどを含む気象情報を保有しているとする。また、情報提供装置1側において、自らの所有する温度計測機能を有するセンサを用いて、短期間の温度データなどのセンシング情報を取得していたとする。
【0092】
学習部11は、情報提供装置1側で取得したある期間に相当するセンシング情報(例えば、温度データ)と、外部の環境情報提供サーバ4側で保有されていた上記期間に相当する気象情報(例えば、温度データ)について、相関を取る。そして、学習部11は、相関を取って得られた外部の環境情報提供サーバ4から提供された気象情報から、時間、位置、その他の敷設条件の差を埋めるデータを抽出し、抽出したデータを利用して予測モデルを生成する。以下に、学習部11の具体的な動作について例示する。
【0093】
(例1)情報提供装置1は、過去の長期のデータを保持していないため、この期間のデータを取得することができない。学習部11は、この過去の長期のデータを外部の環境情報提供サーバ4から取得する。また、外部の環境情報提供サーバ4から継続的にデータを取得することにより、情報提供装置1からデータを取得する必要がなくなる。よって、情報提供装置1を管理する側において、センシング情報を継続して取得する必要がないため、センサ等を除去することができる。また、学習部11は、外部の環境情報提供サーバ4から継続的にデータを用いて、予測精度の高い予測モデルを生成することができる。
【0094】
(例2)学習部11は、相関を取って得られた外部の環境情報提供サーバ4から提供された複数の測定点の気象情報から、情報提供装置1により管理されているセンサから離れた位置のデータをする。特に、長尺の電線を扱う場合には、このセンサが配置されている位置から離れた場所のデータを推定することが有意義である。学習部11は、電線の中間点に配置されているセンサから得られたデータに基いて、外部の環境情報提供サーバ4から提供された複数の測定点の気象情報を利用して、電線の両端部までの温度などの分布を推定し、この推定結果から予測モデルを生成する。
【0095】
(例3)学習部11は、相関を取って得られたた外部の環境情報提供サーバ4から提供された気象情報から、特定の敷設条件の設備のデータを推定する。学習部11は、例えば、地下に埋設された設備や、ケーブル等の収容容器(トラフ)などに埋め込まれた設備、または、直射日光にさらされる設備などのデータを推定し、この推定したデータに基づいて予測モデルを生成する。
【0096】
選択部18は、外部の端末装置2から送信されてきたデータと、情報収集部19により収集された特定した場所の環境に関する情報とに基づいて、分析予測部13で利用される予測モデルを選択する。
【0097】
よって、処理装置100は、外部の端末装置2から送信されてきたデータに情報が不足している場合、この不足している情報(例えば、環境情報)を外部の環境情報提供サーバ4から収集し、最も適した予測モデルを利用して設備の耐用年数を予測することができる。
【0098】
(予測結果の提供について)
処理装置100は、図5に示すように、分析予測部13により予測された結果を端末装置2に提供する提供部20を備える構成でもよい。提供部20は、予測結果の要約版を生成し、当該要約版を端末装置2に提供する。予測結果の要約版は、予測結果の前半部分だけを閲覧可能にして作成されてもよい。提供部20は、この要約版を閲覧した端末装置2からの応答に基づいて、予測結果のすべてを端末装置2に提供する。
【0099】
端末装置2の管理者側は、予測結果の要約版を確認し、興味があれば予測結果のすべての提供を受けることができる。
【0100】
また、決定部15は、提供部20により予測結果のすべてを端末装置2に提供したときに、分析予測部13利用された予測モデルに対して、算出部14で算出された寄与率に基づいて、情報提供装置1に対する利益の分配を決定してもよい。
【0101】
(処理方法について)
つぎに、予測モデルの生成に利用するデータの量と質を向上させ、設備の耐用年数の予測精度を向上する処理方法について説明する。図9は、予測モデルの生成に利用するデータの量と質を向上させ、設備の耐用年数の予測精度を向上する処理方法の手順を示すフローチャートである。
【0102】
ステップST11において、分析予測部13は、複数の情報提供装置1から提供されたデータがクラウドサーバ3に保存されており、当該クラウドサーバ3に保存されている複数のデータに基づいて複数の予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、外部の端末装置2から送信されてきたデータに基づいて、設備の耐用年数を予測する(分析予測工程)。
【0103】
ステップST12において、算出部14は、予測モデルの生成に貢献したデータを提供した情報提供装置1の寄与率を予測モデルごとに算出する(算出工程)。
【0104】
ステップST13において、決定部15は、分析予測工程で予測モデルが利用された場合、算出工程で算出された寄与率に基づいて、情報提供装置1に対する利益の分配を決定する(決定工程)。
【0105】
このようにして、本発明に係る処理方法は、クラウドサーバ3に保存されている複数のデータに基づいて複数の予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、外部の端末装置2から送信されてきたデータに基づいて、設備が敷設される環境に応じた設備の耐用年数を予測し、予測モデルの生成に貢献したデータを提供した情報提供装置の寄与率を予測モデルごとに算出し、予測モデルが利用された場合、算出部14で算出された寄与率に基づいて、情報提供装置1に対する利益の分配を決定する。
【0106】
情報提供装置1を管理する会社は、質の高い設備に関するデータを大量にクラウドサーバ3に送信するほど、より多くの利益の分配を得ることができる。よって、情報処理システム200において、利益の配分を多く得るために、情報提供装置1から質の高い設備に関するデータが大量にクラウドサーバ3に送信されることが期待される。したがって、本発明に係る処理方法は、予測モデルの生成に利用するデータの量と質を向上させ、設備の耐用年数の予測精度を向上することができる。
【0107】
(処理プログラムについて)
予測モデルの生成に利用するデータの量と質を向上させ、設備の耐用年数の予測精度を向上する処理プログラムは、主に以下の工程で構成されており、コンピュータ500(ハードウェア)によって実行される。
【0108】
工程1(分析予測工程):複数の情報提供装置1から提供されたデータがクラウドサーバ3に保存されており、当該クラウドサーバ3に保存されている複数のデータに基づいて複数の予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、外部の端末装置2から送信されてきたデータに基づいて、設備の耐用年数を予測する工程。
【0109】
工程2(算出工程):予測モデルの生成に貢献したデータを提供した情報提供装置1の寄与率を予測モデルごとに算出する工程。
【0110】
工程3(決定工程):分析予測工程で予測モデルが利用された場合、算出工程で算出された寄与率に基づいて、情報提供装置1に対する利益の分配を決定する工程。
【0111】
ここで、コンピュータ500の構成と動作について図を用いて説明する。図10は、コンピュータ500の構成を示す図である。コンピュータ500は、図10に示すように、プロセッサ501と、メモリ502と、ストレージ503と、入出力I/F504と、通信I/F505とがバスA上に接続されて構成されており、これらの各構成要素の協働により、本開示に記載される機能、および/または、方法を実現する。
【0112】
入出力I/F504には、ディスプレイやポインティングデバイス(例えば、マウスやキーボードなど)が接続される。通信I/Fは、所定の通信規格に準拠したインターフェイスであり、有線または無線により外部装置(例えば、情報提供装置1、端末装置2、クラウドサーバ3)と通信を行う。通信I/Fは、上述した通信部10に相当する。
【0113】
メモリ502は、RAM(Random Access Memory)で構成される。RAMは、揮発メモリまたは不揮発性メモリで構成されている。
【0114】
ストレージ503は、ROM(Read Only Memory)で構成される。ROMは、不揮発性メモリで構成されており、例えば、HDD(Hard Disc Drive)またはSSD(Solid State Drive)により実現される。ストレージ503は、上述した記憶部16に相当する。ストレージ503には、上述した工程1~工程3で実現される処理プログラムなどの各種のプログラムが格納されている。
【0115】
例えば、プロセッサ501は、コンピュータ500全体の動作を制御する。プロセッサ501は、ストレージ503からオペレーティングシステムや多様な機能を実現する様々なプログラムをメモリ502にロードし、ロードしたプログラムに含まれる命令を実行する演算装置である。
【0116】
具体的には、プロセッサ501は、ユーザの操作を受け付けた場合、ストレージ503に格納されているプログラム(例えば、本発明に係る処理プログラム)を読み出し、読み出したプログラムをメモリ502に展開し、プログラムを実行する。また、プロセッサ501が処理プログラムを実行することにより、学習部11、データ処理部12、分析予測部13、算出部14、決定部15、カウント部17、選択部18、情報収集部19および提供部20の各機能が実現される。
【0117】
ここで、プロセッサ501の構成について説明する。プロセッサ501は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、これら以外の各種演算装置、またはこれらの組み合わせにより実現される。
【0118】
また、本開示に記載される機能、および/または、方法を実現するために、プロセッサ501、メモリ502およびストレージ503などの機能の一部または全部は、専用のハードウェアである処理回路601で構成されてもよい。図11は、コンピュータ600の処理回路601の構成を示す図である。処理回路601は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものである。
【0119】
また、プロセッサ501は、単一の構成要素として説明したが、これに限られず、複数の物理的に別体のプロセッサの集合により構成されてもよい。本明細書において、プロセッサ501によって実行されるとして説明されるプログラムまたは当該プログラムに含まれる命令は、単一のプロセッサ501で実行されてもよいし、複数のプロセッサにより分散して実行されてもよい。また、プロセッサ501によって実行されるプログラムまたは当該プログラムに含まれる命令は、複数の仮想プロセッサにより実行されてもよい。
【0120】
このようにして、本発明に係る処理プログラムは、コンピュータ500,600で実行されることにより、クラウドサーバ3に保存されている複数のデータに基づいて複数の予測モデルが生成され、この予測モデルを利用して、外部の端末装置2から送信されてきたデータに基づいて、設備が敷設される環境に応じた設備の耐用年数を予測し、予測モデルの生成に貢献したデータを提供した情報提供装置の寄与率を予測モデルごとに算出し、予測モデルが利用された場合、算出部14で算出された寄与率に基づいて、情報提供装置1に対する利益の分配を決定する。
【0121】
情報提供装置1を管理する会社は、質の高い設備に関するデータを大量にクラウドサーバ3に送信するほど、より多くの利益の分配を得ることができる。よって、情報処理システム200において、利益の配分を多く得るために、情報提供装置1から質の高い設備に関するデータが大量にクラウドサーバ3に送信されることが期待される。したがって、本発明に係る処理プログラムは、予測モデルの生成に利用するデータの量と質を向上させ、設備の耐用年数の予測精度を向上することができる。
【0122】
以上、本願の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、本発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0123】
1、1a、1b、・・・、1n 情報提供装置
2、2a、2b、・・・、2n 端末装置
3 クラウドサーバ
4 環境情報提供サーバ
10 通信部
11 学習部
12 データ処理部
13 分析予測部
14 算出部
15 決定部
16 記憶部
17 カウント部
18 選択部
19 情報収集部
20 提供部
100 処理装置
200 情報処理システム
N ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11