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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】よどみ監視システム及びよどみ監視方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 7/007 20060101AFI20240726BHJP
   F24F 11/79 20180101ALI20240726BHJP
【FI】
F24F7/007 Z
F24F11/79
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020212420
(22)【出願日】2020-12-22
(65)【公開番号】P2022098814
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】能見 基彦
(72)【発明者】
【氏名】笛木 秀亮
(72)【発明者】
【氏名】生越 広行
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-013389(JP,A)
【文献】特開2010-159887(JP,A)
【文献】特開2019-076525(JP,A)
【文献】特開2014-130001(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 7/007
F24F 11/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内の人及び物を含む画像を撮像する撮像部と、
前記画像に写っている前記室内の人及び物の配置を含む情報に基づいて前記室内における空気よどみの発生箇所を推定する推定部と、
前記室内の空調設備を制御して前記空気よどみを解消する解消動作を実行させる実行部と、
を備える、よどみ監視システム。
【請求項2】
前記推定部は、前記画像に写っている前記室内の人及び物の配置パターンに基づいて前記空気よどみの発生箇所を推定する、
請求項1に記載のよどみ監視システム。
【請求項3】
前記室内の人及び物の複数の配置パターンと、各配置パターンに応じた前記発生箇所とが関連付けられた情報を格納する第1格納部を更に備え、
前記推定部は、前記画像に写っている前記配置パターンと同一又は類似する配置パターンに応じた前記発生箇所を前記第1格納部から読み取ることで前記空気よどみの発生箇所を推定する、
請求項2に記載のよどみ監視システム。
【請求項4】
前記室内の人及び物の複数の配置パターンと、各配置パターンに応じた前記空調設備の動作パターンと、が関連付けられた情報を格納する第2格納部を更に備え、
前記実行部は、前記推定部によって前記空気よどみが推定された場合には、前記画像に写っている前記配置パターンと同一又は類似する配置パターンに応じた動作パターンを前記第2格納部から読み取り、読み取った前記動作パターンに基づいて前記空調設備の運転を制御することで前記解消動作を実行させる、
請求項2又は3に記載のよどみ監視システム。
【請求項5】
前記解消動作では前記空気よどみを解消できない場合には、人及び物のいずれか又は両方の配置の変更を促す報知情報を出力させる報知部を更に備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載のよどみ監視システム。
【請求項6】
室内の人及び物を含む画像を撮像する撮像ステップと、
前記画像に写っている前記室内の人及び物の配置を含む情報に基づいて前記室内における空気よどみの発生箇所を推定する推定ステップと、
室内の空調設備を制御して前記空気よどみを解消する解消動作を実行させる実行ステップと、
を含むよどみ監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、よどみ監視システム及びよどみ監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、接触感染の他に、エアロゾル感染によって発症することが知られている。エアロゾル感染とは、空気中に浮遊している液体又は固体の微粒子(エアロゾル)内に病原体に含まれ、この微粒子を介して人に感染することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/059442号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このエアロゾル感染を抑制する手段の一つとして、室内の換気を行うことが挙げられる。しかしながら、換気を行ったとしても空気の流れによっては病原体が空気中に滞留してしまう場合がある。このような問題は、エアロゾル感染や空気感染など病原体に限られた問題ではなく、空気中を浮遊する可能性がある有害物やホコリなどの浮遊物を換気によって除去したい場合においても共通する問題である。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、空気中を浮遊する浮遊物が空気中に滞留することを抑制するよどみ監視システム及びよどみ監視方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、室内の画像を撮像する撮像部と、前記画像を含む情報に基づいて前記室内における空気よどみの発生箇所を推定する推定部と、前記室内の空調設備を制御して前記空気よどみを解消する解消動作を実行させる実行部と、を備える、よどみ監視システムである。
【0007】
(2)上記(1)のよどみ監視システムであって、前記推定部は、前記画像に写っている前記室内の人及び物の配置パターンに基づいて前記空気よどみの発生箇所を推定してもよい。
【0008】
(3)上記(2)のよどみ監視システムであって、前記室内の人及び物の複数の配置パターンと、各配置パターンに応じた前記発生箇所とが関連付けられた情報を格納する第1格納部を更に備え、前記推定部は、前記画像に写っている前記配置パターンと同一又は類似する配置パターンに応じた前記発生箇所を前記第1格納部から読み取ることで前記空気よどみの発生箇所を推定してもよい。
【0009】
(4)上記(2)又は上記(3)のよどみ監視システムであって、前記室内の人及び物の複数の配置パターンと、各配置パターンに応じた前記空調設備の動作パターンと、が関連付けられた情報を格納する第2格納部を更に備え、前記実行部は、前記推定部によって前記空気よどみが推定された場合には、前記画像に写っている前記配置パターンと同一又は類似する配置パターンに応じた動作パターンを前記第2格納部から読み取り、読み取った前記動作パターンに基づいて前記空調設備の運転を制御することで前記解消動作を実行させてもよい。
【0010】
(5)上記(1)から上記(4)のいずれかのよどみ監視システムであって、前記解消動作では前記空気よどみを解消できない場合には、人及び物のいずれか又は両方の配置の変更を促す報知情報を出力させる報知部を更に備えてもよい。
【0011】
(6)本発明の一態様は、室内の画像を撮像する撮像ステップと、前記画像を含む情報に基づいて前記室内における空気よどみの発生箇所を推定する推定ステップと、室内の空調設備を制御して前記空気よどみを解消する解消動作を実行させる実行ステップと、を含むよどみ監視方法である。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、空気中を浮遊する浮遊物が空気中に滞留することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係るよどみ監視システムの概略構成の一例を示す図である。
図2】第1の実施形態に係るよどみ監視システムの動作のフロー図である。
図3】第2の実施形態に係るよどみ監視システムの概略構成の一例を示す図である。
図4】第2の実施形態に係るよどみ監視システムの動作のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態に係るよどみ監視システムを、図面を用いて説明する。
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るよどみ監視システム1の概略構成の一例を示す図である。よどみ監視システム1は、室内Rにおける空気のよどみ(以下、「空気よどみ」という。)の発生箇所を推定し、推定した空気よどみを解消させるために、室内Rの空調を行う空調設備100を動作させたり、その空調設備100の動作を所定の動作に制御したりする解消動作を実行する。空気よどみとは、速度がゼロ、あるいは速度が、あるしきい値以下の低速であって、空気中の各種の物質が空気の対流で移動することが期待できない領域を指す。空調設備100とは、送風装置100a、換気装置100b、開閉体100cなどを含んでもよい。例えば、空調設備100は、送風装置100a、換気装置100b、及び開閉体100cのうち、1つ以上を含んでいればよい。なお、室内Rとは、例えば、工場、商業施設、病院、学校内などに設けられた人や物が集中しやすい空間である。
【0016】
送風装置100aは、室内Rにおける所定の方向に対して空気を送り出す装置である。この送風装置100aが送り出す空気の方向は、よどみ監視システム1によって制御される。例えば、送風装置100aは、サーキュレータなどの比較的指向性の高い送風機器などである。
【0017】
換気装置100bは、排気及び給気の少なくとも一方を行う機器である。排気は、室内Rの空気を室外に排出することである。給気は、内外の空気を室内Rに取り込むことである。例えば、換気装置100bは、室内Rの天井に取り付けられ、よどみ監視システム1によって制御される。換気装置100bは、室内Rにおける空気の温度、湿度、清浄度を調整する空調機であってもよい。
【0018】
開閉体100cは、室内Rの開口部を開閉する。例えば、開閉体100cは、窓ガラスや扉であって、よどみ監視システム1によって開閉が制御する。
【0019】
以下に、第1の実施形態におけるよどみ監視システム1の構成例を説明する。図1に示すように、よどみ監視システム1は、撮像部10、情報処理装置20及び報知装置30を備える。
【0020】
撮像部10は、ネットワークNWを介して情報処理装置20に接続されている。撮像部10は、室内Rの画像を撮像する。ここで、室内Rには、機器、机や椅子、柱などの予め室内Rに配置されており短期的に配置が変動しない物体(以下、「第1物体」という。)、人が持っていた鞄などの短期的に配置位置が変動する物体(以下、「第2物体」という。)、人などが存在する。なお、以下の説明において、第1物体及び第2物体を区別しない場合には、それらを総称して「物体」と称する。
【0021】
例えば、撮像画像には、複数の物体や人が写っている。撮像部10は、撮像した室内Rの画像(以下、「撮像画像」という。)を、ネットワークNWを介して情報処理装置20に送信する。
【0022】
通信ネットワークNWとは、無線通信の伝送路であってもよく、無線通信の伝送路及び有線通信の伝送路の組み合わせであってもよい。通信ネットワークNWは、携帯電話回線網などの移動体通信網、無線パケット通信網、インターネット及び専用回線又はそれらの組み合わせであってもよい。
【0023】
情報処理装置20は、取得部21、格納部22、推定部23、判定部24、実行部25及び報知部26を備える。これらの構成要素は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integrated circuit)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。記憶装置は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、ROM(Read Only Memory)、またはRAM(Random Access Memory)等により構成される。
【0024】
取得部21は、通信ネットワークNWを介して撮像部10から撮像画像を取得する。また、取得部21は、通信ネットワークNWを介して空調設備100と通信して、空調設備100から空調設備100の運転状況を取得する。運転状況とは、空調設備100の運転の有無や出力の大きさなどを含む。例えば、運転状況は、送風装置100aの運転の有無や送風装置100aが送り出している空気の方向や風量などの情報を含んでもよい。例えば、運転状況は、換気装置100bの運転の有無や換気装置100bの排気又は吸気の空気の量などの情報を含んでもよい。例えば、運転状況は、開閉体100cの開閉状態(開状態または閉状態)や開閉体100cの開口度合いなどの情報を含んでもよい。さらに、取得部21は、室内Rの温度や湿度などの環境情報を空調設備100やその他の室内Rの機器から取得してもよい。
【0025】
格納部22には、例えば半導体メモリなどの不揮発性メモリである。格納部22には、例えば、室内Rの形状及び大きさを示す室内R情報、及び、室内Rにおける送風装置100aや換気装置100b、開閉体100cなどの空調設備100の配置を示す設備配置情報(例えば、三次元の位置情報)などが予め格納されている。
【0026】
推定部23は、撮像画像を含む情報に基づいて室内Rにおける空気よどみの発生箇所を推定する。例えば、推定部23は、取得部21で取得された情報や格納部22に格納されている情報と、公知の流体解析とを用いることで室内Rの空気の流れを解析して、室内Rにおける空気よどみの発生箇所を推定する。
【0027】
判定部24は、推定部23で推定した空気よどみが空調設備100によって解消できるか否かを判定する。例えば、判定部24は、推定部23で推定した空気よどみの発生箇所が予め設定されている所定の領域の外に該当する場合には、空調設備100では解消できないと判定する。この所定の領域とは、空調設備100によって空気よどみが解消できる空気よどみの発生箇所である。ただし、これに限定されず、判定部24は、推定部23で推定した空気よどみが空調設備100によって解消できるか否かを判定できればよく、その方法には特に限定されない。
【0028】
実行部25は、判定部24にて空調設備100によって解消できると判定された場合には、推定部23で推定された空気よどみを解消する解消動作を空調設備100に実行させる解消動作を実行する。例えば、実行部25は、推定部23が推定した空気よどみの発生箇所に対して空気の流れが発生するように空調設備100の運転を制御することで空気よどみを解消する。この解消動作は、予め設定されてもよい。
【0029】
報知部26は、解消動作では空気よどみを解消できない場合には、人及び物のいずれか又は両方の配置の変更を促す報知情報を出力させる。例えば、報知部26は、判定部24によって解消動作では解消できないと判定された場合には、室内Rの人に報知情報を出力することで注意喚起する。例えば、報知部26は、判定部24によって解消動作では解消できないと判定された場合には、室内Rの人に対して、室内Rから退出することや一か所に留まらずに移動すること、空気よどみの発生箇所の周囲にある荷物(鞄など)を移動させることをなどの報知情報を報知装置30から音声出力させたり、表示させたりする。
【0030】
報知装置30は、報知情報を出力する装置であって、例えば、音声出力装置、ディスプレイなどの表示装置、及びLEDなどの表示灯のうち、少なくとも一つ以上の装置である。報知装置30は、通信ネットワークNWを介して報知部26からの報知情報を受け取ると、その報知情報を出力する。なお、報知装置30の報知の態様は、特に限定されないが、例えば、報知装置30は、人の視覚、聴覚及び触覚の少なくともいずれかに訴えかける態様で報知情報を出力する。人の視覚に訴えかえる態様として、報知情報をディスプレイに表示してもよい。ディスプレイは、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイは、EPD(Electrophoretic Display)及びLCD(Liquid Crystal Display)のいずれかである。報知装置30は、人の聴覚に訴えかえる態様として、報知情報を音として出力してもよい。音とは、音声や歌であってもよいし、音声を含む又は含まない音楽であってもよいし、ブザーを含む警報音であってもよい。また、報知装置30は、人の触覚に訴えかえる態様として、報知情報を振動として出力してもよい。
【0031】
以下に、第1の実施形態に係るよどみ監視システム1の動作の流れを、図2を用いて説明する。図2は、第1の実施形態に係るよどみ監視システム1の動作のフロー図である。なお、情報処理装置20は、一定周期ごとに図2に示す処理を繰り返す。
【0032】
取得部21は、通信ネットワークNWを介して撮像部10から撮像画像を取得する(ステップS101)。また、取得部21は、通信ネットワークNWを介して空調設備100などから運転状況を取得する(ステップS102)。推定部23は、取得部21で取得した撮像画像および運転状況と、格納部22に格納されている設備配置情報と、に基づいて室内Rにおける空気よどみの発生箇所を推定する(ステップS103)。例えば、推定部23は、設備配置情報に基づいて室内Rの第1物体の配置及び大きさを認識するとともに、撮像画像に基づいて第2物体及び人の配置及び大きさを認識する。ただし、推定部23は、撮像画像に基づいて第1物体、第2物体及び人の配置及び大きさを認識してもよい。そして、推定部23は、第1物体、第2物体及び人の配置及び大きさと、現在の空調設備100の運転状況の情報とを用いて室内Rの空気のよどみの発生箇所を推定する。ここで、推定部23によって空気よどみの発生箇所が推定されなかった場合には、ステップS101に移行する。
【0033】
判定部24は、推定部23で推定した空気よどみが空調設備100によって解消できるか、すなわち解消動作によって解消できるか否かを判定する(ステップS104)。そして、判定部24によって推定部23で推定した空気よどみが解消できると判定された場合には、実行部25は、空調設備100を制御して空気よどみを解消させる解消動作を実行する(ステップS105)。
【0034】
例えば、実行部25は、空調設備100の運転を開始させたり、複数の開閉体100cのうち、少なくとも推定部23が推定した空気よどみの発生箇所に最も近い開閉体100cを開状態に制御したりする。また、例えば、実行部25は、推定部23が推定した空気よどみの発生箇所と、第1物体、第2物体及び人の配置位置とに基づいて、第1物体、第2物体及び人になるべく遮られずに空気よどみの発生箇所に対して気流が発生するように送風装置100aのルーバを制御する。これにより、よどみ監視システム1は、空気よどみを解消させてエアロゾル感染や空気感染を抑制することができる。
【0035】
一方、判定部24によって空気よどみが解消できないと判定された場合には、報知部26は、室内Rの人や物の集まりや配置を変更させるように、音声メッセージを報知装置30から出力させたり、報知装置30から警告音を出力したり、報知装置30を点滅させたりするなどの報知処理を実行する。これにより、よどみ監視システム1は、空調設備100によって空気よどみが解消できない場合には、人や物の集まりや配置の変更を促す報知情報を報知することで、人や物の集まりや配置の変更を促して空気よどみを解消させることができる。
【0036】
以上、第1の実施形態によれば、よどみ監視システム1は、室内Rの画像を撮像する撮像部10と、画像を含む情報に基づいて室内Rにおける空気のよどみの発生箇所を推定する推定部23と、空気のよどみを解消する解消動作を実行させる実行部25と、を備える。このような構成により、空気中を浮遊するウイルスや有害物などの浮遊物が空気中に滞留することを抑制することができる。
【0037】
<第2の実施形態>
図3は、第2の実施形態に係るよどみ監視システム1Aの概略構成の一例を示す図である。第2の実施形態に係るよどみ監視システム1Aは、第1の実施形態の構成の一つの具体例を示す図である。以下の説明において、第1の実施形態で説明した内容と同様の機能を有する部分については、同様の名称および符号を付するものとし、その機能に関する具体的な説明は省略する。
【0038】
よどみ監視システム1Aは、第1の実施形態と同様に、室内Rにおける空気よどみの発生箇所を推定し、推定した空気よどみを解消させるために、室内Rの空調を行う空調設備100を動作させたり、その空調設備100の動作を所定の動作に制御したりする解消動作を実行する。
【0039】
図3に示すように、よどみ監視システム1Aは、撮像部10、情報処理装置20A及び報知装置30を備える。情報処理装置20Aは、取得部21、格納部22A、推定部23A、判定部24A、実行部25A及び報知部26を備える。これらの構成要素は、例えば、CPU等のハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPU等のハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予めHDDやフラッシュメモリ等の記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROM等の着脱可能な記憶媒体(非一過性の記憶媒体)に格納されており、記憶媒体がドライブ装置に装着されることで記憶装置にインストールされてもよい。記憶装置は、例えば、HDD、フラッシュメモリ、EEPROM、ROM、またはRAM等により構成される。
【0040】
格納部22Aは、第1格納部221、第2格納部222、及び第3格納部223を備える。なお、第1格納部221、第2格納部222、及び第3格納部223は、それぞれ別のデータベースなどの記憶装置であってもよいし、同一の記憶装置内の各記憶領域であってもよい。
【0041】
第1格納部221には、空気よどみの発生箇所を特定するための複数の特定パターンが予め格納されている。この特定パターンとは、室内Rにおいて、人及び物の配置パターン(例えば、三次元の位置情報)と空気よどみの発生箇所とが関連付けられた情報である。例えば、事前の実験や流体解析などを行い、室内Rの人及び物の配置パターンが第1配置パターンである場合には、空気よどみの発生箇所(例えば、空気よどみが発生する可能性が高い箇所)が第1発生箇所であると判定された場合には、第1配置パターンと第1発生箇所とを関連づけた第1特定パターンを第1格納部221に格納する。同様に、室内Rの人及び物の配置パターンが第2配置パターンである場合において、実験や流体解析などから空気よどみの発生箇所が第2発生箇所であると判定された場合には、第2配置パターンと第2発生箇所とを関連づけた第2特定パターンを第1格納部221に格納する。このように、第1格納部221には、室内Rの人及び物の配置が異なる複数の配置パターンと、各配置パターンで空気よどみが発生する又は発生し得る発生箇所とが関連付けられた複数の特定パターンが予め格納されている。
【0042】
第2格納部222には、空気よどみの解消するための空調設備100の複数の動作パターンが格納されている。例えば、第2格納部222には、人及び物の複数の配置パターン(例えば、三次元の位置情報)と、その配置パターンの際に発生する又は発生し得る空気よどみを解消するための空調設備100の複数の動作パターンとが、それぞれ関連付けられて予め格納されている。例えば、事前の実験や流体解析などを行い、室内Rの人及び物の配置パターンが第1配置パターンである場合に発生した空気よどみの発生箇所(例えば、空気よどみが発生する可能性が高い箇所)が解消した際の空調設備100の動作パターンを第1配置パターンと関連付けて予め第2格納部222に格納されている。同様に、室内Rの人及び物の配置パターンが第2配置パターンである場合に発生した空気よどみの発生箇所が解消した際の空調設備100の動作パターンを第2配置パターンと関連付けて予め第2格納部222に格納されている。このように、第2格納部222には、室内Rの人及び物の配置が異なる複数の配置パターンと、各配置パターンで空気よどみが発生する又は発生し得る発生箇所が解消できる空調設備100の複数の動作パターンが予め格納されている。
【0043】
例えば、動作パターンとは、どの空調設備100を動作させるかの情報であってもよいし、空調設備100の風量や風向などの情報を含んでもよい。例えば、空調設備100が送風装置100a、換気装置100b、及び開閉体100cを含む場合には、動作パターンは、送風装置100a及び換気装置100bの各装置の運転の有無や風量、風向、各開閉体の開閉状態を示す情報などである。
【0044】
第3格納部223には、解消動作では空気よどみの解消することができない人及び物の配置パターン(以下、「解消不可配置パターン」という。)が予め格納されている。解消不可配置パターン以外の配置パターンによって発生し得る空気よどみは、第2格納部222に格納されているいずれかの動作パターンによって解消可能である。
【0045】
推定部23Aは、撮像画像を含む情報に基づいて室内Rにおける空気よどみの発生箇所を推定する。例えば、推定部23は、取得部21で取得された撮像画像に写っている人及び物の配置パターン(以下、「撮像画像の配置パターン」という。」)と同一又は類似する配置パターンに応じた空気よどみの発生箇所を第1格納部221に格納された特定パターンから読み取ることで、室内Rにおける現在の配置パターンによって発生する又は発生し得る空気よどみの発生箇所を推定する。
【0046】
判定部24Aは、推定部23Aで推定した空気よどみが空調設備100によって解消できるか、すなわち解消動作によって解消できるか否かを判定する。例えば、判定部24Aは、撮像画像の配置パターンが第3格納部223に格納されている解消不可配置パターンと同一又は類似するか否かを判定することで、解消動作によって空気よどみが解消できるか否かを判定する。
【0047】
実行部25Aは、推定部23Aによって空気よどみが推定され、判定部24Aによって空気よどみを解消できると判定された場合には、撮像画像の配置パターンと同一又は類似する配置パターンに応じた動作パターンを第2格納部222から読み取り、読み取った動作パターンに基づいて空調設備100の運転を制御することで解消動作を実行させる。
【0048】
以下に、第2の実施形態に係るよどみ監視システム1Aの動作の流れを、図4を用いて説明する。図4は、第2の実施形態に係るよどみ監視システム1Aの動作のフロー図である。情報処理装置20Aは、一定周期ごとに図4に示す処理を繰り返す。
【0049】
取得部21は、通信ネットワークNWを介して撮像部10から撮像画像を取得する(ステップS201)。推定部23は、取得部21で取得した撮像画像から空間Rにおける現在の人及び物の三次元空間上の配置パターン(撮像画像の配置パターン)を求める(ステップS202)。そして、推定部23Aは、第1格納部221に格納された複数の特定パターンの中から、撮像画像の配置パターンと同一又は類似する配置パターンに応じた空気よどみの発生箇所を読み取ることで撮像画像の配置パターンによって発生する又は発生し得る空気よどみの発生箇所を推定する(ステップS203)。
【0050】
判定部24Aは、推定部23Aで推定した空気よどみが空調設備100によって解消できるか、すなわち解消動作によって解消できるか否かを判定する(ステップS204)。例えば、判定部24Aは、撮像画像の配置パターンが解消不可配置パターンと同一又は類似すると判定した場合には、解消動作によって解消できないと判定する。一方、判定部24Aは、撮像画像の配置パターンが解消不可配置パターンと同一ではなく且つ類似もしないと判定した場合には、解消動作によって解消できると判定する。
【0051】
実行部25Aは、判定部24Aによって空気よどみを解消できると判定された場合には、撮像画像の配置パターンと同一又は類似する配置パターンに応じた動作パターンを第2格納部222から読み取り、読み取った動作パターンに基づいて空調設備100の運転を制御することで解消動作を実行させる(ステップS205)。
【0052】
一方、判定部24によって空気よどみが解消できないと判定された場合には、報知部26は、第1の実施形態と同様に、室内Rの人や物の集まりや配置を変更させるように、音声メッセージを報知装置30から出力させたり、報知装置30から警告音を出力したり、報知装置30を点滅させたりするなどの報知処理を実行する。これにより、よどみ監視システム1は、空調設備100によって空気よどみが解消できない場合には、人や物の集まりや配置の変更を促す報知情報を報知することで、人や物の集まりや配置の変更を促して空気よどみを解消させることができる。
【0053】
以上、第2の実施形態によれば、よどみ監視システム1Aは、室内Rの画像を撮像する撮像部10と、画像を含む情報に基づいて室内Rにおける空気のよどみの発生箇所を推定する推定部23Aと、空気のよどみを解消する解消動作を実行させる実行部25Aと、を備える。このような構成により、空気中を浮遊するウイルスや有害物などの浮遊物が空気中に滞留することを抑制することができる。
【0054】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0055】
上記各実施形態において、よどみ監視システム1,1Aは、人体の発する炭酸ガスを検出するセンサーや、人体の存在を感知するサーモグラフィを更に備えてもよい。このセンサーやサーモグラフィは、室内Rに設けられ、そのセンサーやサーモグラフィの検出結果は、通信ネットワークNWを介して取得部21に送信される。そして、取得部21は、これらの検出結果を撮像画像の配置パターンを求めるための補助的な情報として使用してもよい。
【0056】
上記各実施形態において、推定部23,23Aは、取得部21で取得された複数の撮像画像の平均画像を求め、この平均画像に基づいて室内Rにおける空気よどみの発生箇所を推定してもよい。例えば、室内Rにおいて人の出入りが頻繁に発生する場合には、各撮像画像において撮像画像の配置パターンを求めて解消動作を実行してしまうと、空調設備100の電源のON/OFFが頻発してしまう。そこで、推定部23,23Aは、時系列順に取得部21で取得された複数の撮像画像(例えば、所定時間内に得られた複数の撮像画像)を平均化することによって平均画像を生成し、この平均画像の人及び物の配置パターンを求める。これにより、所定時間内において配置位置が常に変動する人及び物を除去し、所定時間内において配置位置が変動していない人及び物の配置パターンを求めることが可能となり、空調設備100の電源のON/OFFが頻発することを抑制することができる。
【0057】
上記第1の実施形態において、推定部23は、AI(人工知能)を使用して撮像画像や平均画像から室内Rにおける空気よどみの発生箇所を推定してもよい。例えば、推定部23は、少なくとも撮像画像又は平均画像を入力すると、その撮像画像又は平均画像に写っている人及び物の配置パターンによって生じる空気よどみの発生箇所を出力する学習済みモデルを有してもよい。前記学習済みモデルは、空気よどみの発生箇所の情報が関連付けられた空間内の複数の画像を学習データとしてディープラーニングなどの機械学習を行うことにより生成される。学習済みモデルは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)であってもよい。なお、この学習済みモデルの入力データは、撮像画像又は平均画像の他に、現在の空調設備100の運転状況の情報を含んでもよい。
【0058】
上記第1の実施形態において、実行部25Aは、AIを使用して撮像画像や平均画像から動作パターンを決定してもよい。例えば、実行部25Aは、少なくとも撮像画像又は平均画像を入力すると、その撮像画像又は平均画像に写っている人及び物の配置パターンによって生じる空気よどみを解消させるための解消動作を出力する学習済みモデルを有してもよい。この学習済みモデルは、空気よどみが解消した際の解消動作と、そのときの配置パターンとが関連付けられた情報を学習データとしてディープラーニングなどの機械学習を行うことにより生成される。この学習済みモデルは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)であってもよい。
【0059】
以上、説明したように、本実施形態のよどみ監視システムは、室内の撮像画像を含む情報に基づいて室内における空気よどみの発生箇所を推定し、室内の空調設備を制御して推定した空気よどみを解消する解消動作を実行させる。
【0060】
このような構成によれば、病原体や有害物質が空気中に滞留する原因の一つである空気よどみを解消させることができ、空気中を浮遊する浮遊物が空気中に滞留することを抑制することができる。
【0061】
なお、上述した情報処理装置20,20Aの全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、上記コンピュータは、CPU、GPUなどのプロセッサ及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えてもよい。そして、上記情報処理装置20,20Aの全部または一部の機能をコンピュータで実現するためのプログラムを上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムを上記プロセッサに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。ここで、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等の通信ネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0062】
明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」、「有する」や「備える」とする時、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0063】
また、明細書に記載の「…部」の用語は、少なくとも1つの機能や動作を処理する単位を意味し、これは、ハードウェアまたはソフトウェアとして具現されてもよいし、ハードウェアとソフトウェアとの組み合わせで具現されてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1,1A よどみ監視システム
10 撮像部
20 情報処理装置
21 取得部
22,22A 格納部
23,23A 推定部
24,24A 判定部
25,25A 実行部
26 報知部
30 報知装置
221 第1格納部
222 第2格納部
223 第3格納部
図1
図2
図3
図4