IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社荏原製作所の特許一覧

<>
  • 特許-基板処理システム 図1
  • 特許-基板処理システム 図2
  • 特許-基板処理システム 図3
  • 特許-基板処理システム 図4
  • 特許-基板処理システム 図5
  • 特許-基板処理システム 図6
  • 特許-基板処理システム 図7
  • 特許-基板処理システム 図8
  • 特許-基板処理システム 図9
  • 特許-基板処理システム 図10
  • 特許-基板処理システム 図11
  • 特許-基板処理システム 図12
  • 特許-基板処理システム 図13
  • 特許-基板処理システム 図14
  • 特許-基板処理システム 図15
  • 特許-基板処理システム 図16
  • 特許-基板処理システム 図17
  • 特許-基板処理システム 図18
  • 特許-基板処理システム 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】基板処理システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240726BHJP
   B24B 49/16 20060101ALI20240726BHJP
   B24B 37/013 20120101ALI20240726BHJP
【FI】
H01L21/304 622S
B24B49/16
B24B37/013
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021520809
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2020019869
(87)【国際公開番号】W WO2020235581
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2019095619
(32)【優先日】2019-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】鳥越 恒男
(72)【発明者】
【氏名】畠山 雅規
(72)【発明者】
【氏名】中込 良
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-4442(JP,A)
【文献】特開2018-58197(JP,A)
【文献】特開2000-202768(JP,A)
【文献】特開2004-25057(JP,A)
【文献】特開2020-53550(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/143474(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/013
B24B 49/16
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置に設置され、対象の基板の処理中における対象の物理量を検知するセンサと、
前記センサによって検知された物理量の時系列データまたは当該物理量の時系列データを時間で微分した時系列データを、学習済みの機械学習モデルに入力することによって、研磨を終了するタイミングである研磨終点タイミングを出力する予測部と、
を備え、
前記機械学習モデルは、過去の前記物理量の時系列データまたは当該過去の物理量の時系列データを時間で微分した時系列データを入力とし過去の研磨終点タイミングを出力とする学習用のデータセットとして用いて機械学習したモデルであり、
前記対象の物理量は、前記基板処理装置のテーブル回転モータの電流値、前記基板処理装置のトップリング回転モータの電流値、または前記基板処理装置のテーブルのトルクであり、
前記センサによって検知された電流値の時系列データを時間で微分した時系列データに基づいて、当該電流値の時系列データを選別する選別部と、
前記選別部によって選別された電流値の時系列データを入力とし、研磨終点タイミングを出力とする学習用のデータセットとして用いて機械学習することによって前記学習済みの機械学習モデルを生成する学習部と、
を更に備える基板処理システム。
【請求項2】
前記センサによって検知された物理量の時系列データと、過去の時系列データとを比較し、当該物理量の時系列変化に異常があるか否か判定する判定部と、
前記判定部によって異常があると判定された場合、処理条件を再度決定する決定部と、
前記決定部によって決定された処理条件で更新するよう制御する更新制御部と、
を更に備える請求項1に記載の基板処理システム。
【請求項3】
前記選別部は、前記時間で微分した時系列データに、設定基準を満たす極小点または極大点が検出されない場合、当該微分前の電流値の時系列データを除外することによって、前記電流値の時系列データを選別する
請求項に記載の基板処理システム。
【請求項4】
基板処理装置に設置され、対象の基板の処理中における対象の物理量を検知する少なくとも一つのセンサと、
基板のロットに対して、当該基板処理中の過去の物理量の時系列データが少なくとも一つ関連付けられて記憶されている第1のストレージと、
前記第1のストレージを参照して、処理されている対象の基板のロットに対応する過去の物理量の時系列データを抽出する抽出部と、
前記センサによって検知された異常発生時の物理量の時系列データと、前記抽出部によって抽出された過去の物理量の時系列データを比較して、メンテナンス要否を判定するメンテナンス要否判定部と、
少なくとも一つ以上の物理量の異常の有無の組み合わせと、異常の要因及び/または異常の解決法とが関連付けられて記憶されている第2のストレージと、
前記メンテナンス要否判定部によりメンテナンスが必要と判定された場合、前記第2のストレージを参照して、物理量の異常に有無の組み合わせに応じた異常の要因及び/または異常の解決法を出力する要因分析部と、
を備える基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造には、様々な基板処理装置が使用されており、基板処理装置の一つとしてCMP装置に代表される研磨装置が使用される。半導体デバイスの配線構造は、配線パターンに沿った溝が形成された絶縁膜上に金属膜(銅膜など)を形成し、その後不要な金属膜を研磨装置により除去することにより形成される。研磨装置は、研磨テーブル上の研磨パッドに研磨液(スラリー)を供給しながら、基板と研磨パッドとを相対移動させることにより、基板の表面を研磨する。
【0003】
従来の研磨装置は、基板の研磨終点を検知する研磨終点検出装置を備えている。この研磨終点検出装置は、膜厚を示す研磨指標値(例えば、テーブルトルク電流、渦電流式膜厚センサの出力信号、光学式膜厚センサの出力信号)に基づいて基板の研磨を監視し、金属膜が除去された時点を研磨終点と決定する。
【0004】
これまで、基板処理装置(例えば、研磨装置)の稼働データの取得・解析・異常に対する対処は、当該基板処理装置にサービス員が訪問して行っていた。その際には、例えば電話やメールで設計または開発部門とのやり取りにより行われる。
【0005】
例えば、複数の研磨終点検出装置を遠隔監視し、かつ遠隔操作するために、特許文献1には、複数の研磨終点検出装置と、ネットワークを介して複数の研磨終点検出装置に接続されたホストコンピュータとを備えることが開示されている。そして特許文献1には、ホストコンピュータが、複数の研磨終点検出装置から送られてくる研磨終点検出データを保存するメモリと、研磨終点検出データを表示する表示画面と有しており、ホストコンピュータは、複数の研磨終点検出装置から選択された少なくとも1つの研磨終点検出装置に新たな研磨終点検出レシピを送り、該選択された少なくとも1つの研磨終点検出装置の研磨終点検出レシピを書き換えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-176828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、依然として、研磨終点検出レシピを書き換えるにも、人手がかかっているので、省人化、装置、ユニット(等の動作)、工場の自動化が求められている。また基板処理装置のダウンタイムを少なくし、該当人員の移動・解析、異常に対する対応策の作成等の時間とコストを低減し、省人、省エネ、及び/または省コスト化、装置、ユニット(等の動作)、及び/または工場の自動化が求められている。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、基板処理装置にかかる省人、省エネ、及び/または省コスト化を可能とする基板処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係る基板処理システムは、基板処理装置に設置され、対象の基板の処理中における対象の物理量を検知するセンサと、前記センサによって検知された物理量の時系列データまたは当該物理量の時系列データを時間で微分した時系列データを、学習済みの機械学習モデルに入力することによって、研磨を終了するタイミングである研磨終点タイミングを出力する予測部と、を備え、前記機械学習モデルは、過去の前記物理量の時系列データまたは当該過去の物理量の時系列データを時間で微分した時系列データを入力とし過去の研磨終点タイミングを出力とする学習用のデータとして用いて機械学習したモデルである。
【0010】
この構成によれば、研磨終点タイミングを自動で予測できるので、研磨終点タイミングの予測にかかる時間とコストを低減し、省人、省エネ、及び/または省コスト化することができる。また、従来、テーブル回転モータの電流値の時系列データを時間で微分した時系列データを用いた場合に極小点または極大点が複数発生して、どの極小点または極大点の時刻が研磨終点タイミングであるかリアルタイムでは分からないという問題があった。これに対して、学習後の機械学習モデルは、過去の物理量の時系列データまたは当該過去の物理量の時系列データを時間で微分した時系列データを入力とし過去の研磨終点タイミングを出力とする学習用のデータで学習しているので、未知の物理量の時系列データまたは当該物理量の時系列データを時間で微分した時系列データが入力された場合であっても、正しい研磨終点タイミングを出力できる可能性を向上させることができる。
【0011】
本発明の第2の態様に係る基板処理システムは、第1の態様に係る基板処理システムであって、前記センサによって検知された物理量の時系列データと、過去の時系列データとを比較し、当該物理量の時系列変化に異常があるか否か判定する判定部と、前記判定部によって異常があると判定された場合、処理条件を再度決定する決定部と、前記決定部によって決定された処理条件で更新するよう制御する更新制御部と、を更に備える。
【0012】
この構成によれば、研磨終点タイミングを自動で予測できるので、研磨終点タイミングの予測にかかる時間とコストを低減し、物理量の時系列変化に異常がある場合、処理条件(レシピ)を更新することによって研磨の終了タイミングが自動で修正される。このため、現場にレシピ更新に行かなくてもよくなるので、省人、省エネ、及び/または省コスト化することができる。仮に現場作業が発生しても、従来より軽微な作業内容で済む。具体的には、波形変化から研磨終点タイミングを高精度に判断することができ、物理量の時系列変化から研磨が正常に動作しているか判断することができ、研磨が正常に動作しない場合であってもレシピの更新を自動的に行うことができる。
【0013】
本発明の第3の態様に係る基板処理システムは、第1または2の態様に係る基板処理システムであって、前記対象の物理量は、前記基板処理装置のテーブル回転モータの電流値、前記基板処理装置のトップリング回転モータの電流値、または前記基板処理装置のテーブルのトルクであり、前記センサによって検知された電流値の時系列データを時間で微分した時系列データに基づいて、当該電流値の時系列データを選別する選別部と、前記選別部によって選別された電流値の時系列データを入力とし、研磨終点タイミングを出力とする学習用のデータセットとして用いて機械学習することによって前記学習済みの機械学習モデルを生成する学習部と、を更に備える。
【0014】
この構成によれば、学習用のデータセットに、電流値の時系列データを時間で微分した時系列データに所望の極小点または極大点が現れるデータだけ選別することができるので、研磨終点タイミングの予測精度を向上させることができる。
【0015】
本発明の第4の態様に係る基板処理システムは、第3の態様に係る基板処理システムであって、前記選別部は、前記時間で微分した時系列データに、設定基準を満たす極小点または極大点が検出されない場合、当該微分前の電流値の時系列データを学習用のデータセットから除外することによって、前記電流値の時系列データを選別する。
【0016】
この構成によれば、設定基準を満たす極小点または極大点が検出されない場合、当該微分前の電流値の時系列データを学習用のデータセットから除外することによって、研磨終点タイミングの予測精度を向上させることができる。
【0017】
本発明の第5の態様に係る基板処理システムは、基板処理装置に設置され、対象の基板の処理中における対象の物理量を検知するセンサと、基板のロットに対して、当該基板処理中の過去の物理量の時系列データが少なくとも一つ関連付けられて記憶されているストレージと、前記ストレージを参照して、処理されている対象の基板のロットに対応する過去の物理量の時系列データを抽出する抽出部と、前記センサによって検知された物理量の時系列データと、前記抽出部によって抽出された過去の時系列データとを比較し、当該物理量の時系列変化に異常があるか否か判定する判定部と、を備える。
【0018】
この構成によれば、基板処理装置の物理量の時系列データに異常があることを自動的に検出することができるので、当該異常の検出の時間とコストを低減し、省人、省エネ、及び/または省コスト化することができる。
【0019】
本発明の第6の態様に係る基板処理システムは、第5の態様に係る基板処理システムであって、前記判定部によって異常があると判定された場合、処理条件を再度決定する決定部と、前記決定部によって決定された処理条件で更新するよう制御する更新制御部と、を備える。
【0020】
この構成によれば、基板処理装置の物理量の時系列データに異常がある場合に、処理条件(レシピ)を更新することができるので、異常に対する対応策の作成等の時間とコストを低減し、省人、省エネ、及び/または省コスト化することができる。
【0021】
本発明の第7の態様に係る基板処理システムは、基板処理装置に設置され、対象の基板の処理中における対象の物理量を検知する少なくとも一つのセンサと、基板のロットに対して、当該基板処理中の過去の物理量の時系列データが少なくとも一つ関連付けられて記憶されている第1のストレージと、前記第1のストレージを参照して、処理されている対象の基板のロットに対応する過去の物理量の時系列データを抽出する抽出部と、前記センサによって検知された異常発生時の物理量の時系列データと、前記抽出部によって抽出された過去の物理量の時系列データを比較して、メンテナンス要否を判定するメンテナンス要否判定部と、少なくとも一つ以上の物理量の異常の有無の組み合わせと、異常の要因及び/または異常の解決法とが関連付けられて記憶されている第2のストレージと、前記メンテナンス要否判定部によりメンテナンスが必要と判定された場合、前記第2のストレージを参照して、物理量の異常に有無の組み合わせに応じた異常の要因及び/または異常の解決法を出力する要因分析部と、を備える。
【0022】
この構成によれば、基板処理装置のメンテナンス要員は、即時に異常の要因及び/または異常の解決法を把握することができるので、現地の研磨装置に行くなどして、迅速に研磨装置の異常を解決することができる。また、当該異常の要因の検出及び/または異常の解決法の作成の時間とコストを低減し、省人、省エネ、及び/または省コスト化することができる。
【0023】
本発明の第8の態様に係る基板処理システムは、複数の基板処理装置に通信回線で接続されている情報処理装置と、前記情報処理装置と通信回線で接続されているフォグコンピュータもしくは端末と、を備え、前記情報処理装置は、前記複数の基板処理装置からデータを収集し、当該収集したデータに対して処理を施し、処理結果を前記フォグコンピュータもしくは前記端末へ送信し、前記フォグコンピュータもしくは前記端末は、前記処理結果を受信した場合、当該処理結果を出力するように制御する。
【0024】
この構成によれば、フォグコンピュータもしくは端末は、情報処理装置が複数の基板処理装置から収集したデータを処理した結果を出力することができる。
【0025】
本発明の第9の態様に係る基板処理システムは、第8の態様に係る基板処理システムであって、前記情報処理装置は、前記収集したデータから、基板処理条件、基板処理テーブル状態、及び/またはドレッシング均一性と基準以上、相関のあるパラメータを抽出する手段と、前記抽出されたパラメータを基板処理装置の間で比較し、比較結果に応じて、前記データのうち少なくとも一つのパラメータを更新する手段と、を有する。
【0026】
この構成によれば、基板処理条件(例えば研磨条件)、基板処理テーブル状態(例えば研磨テーブル状態)、及び/またはドレッシング均一性を近づけることができるので、基板処理装置(例えば研磨装置)の間での基盤処理(例えば研磨)のばらつきを低減することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明の一態様によれば、研磨終点タイミングを自動で予測できるので、研磨終点タイミングの予測にかかる時間とコストを低減し、研磨に異常があった場合に自動でレシピを更新できるので、省人、省エネ、及び/または省コスト化することができる。また、従来、テーブル回転モータの電流値の時系列データを時間で微分した時系列データを用いた場合に極小点または極大点が複数発生して、どの極小点または極大点の時刻が研磨終点タイミングであるかリアルタイムでは分からないという問題があった。この問題は、時系列データの波形の形から検出が難しいという側面と、時系列データの波形にノイズが載っていて検出が難しいという側面がある。これに対して、機械学習などのAIは、波形解析、ノイズ除去、傾向解析に適用することでこの問題を解決できる。具体的には、学習後の機械学習モデルは、過去の物理量の時系列データまたは当該過去の物理量の時系列データを時間で微分した時系列データを入力とし過去の研磨終点タイミングを出力とする学習用のデータセットで学習しているので、未知の物理量の時系列データまたは当該物理量の時系列データを時間で微分した時系列データが入力された場合であっても、正しい研磨終点タイミングを出力できる可能性を向上させることができる。本発明の別の態様によれば、基板処理装置の物理量の時系列データに異常があることを自動的に検出することができるので、当該異常の検出の時間とコストを低減し、省人、省エネ、及び/または省コスト化することができる。本発明の別の態様によれば、基板処理装置のメンテナンス要員は、即時に異常の要因及び/または異常の解決法を把握することができるので、現地の研磨装置に行くなどして、迅速に研磨装置の異常を解決することができる。また、当該異常の要因の検出及び/または異常の解決法の作成の時間とコストを低減し、省人、省エネ、及び/または省コスト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1の実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。
図2】第1の実施形態に係る研磨装置を示す模式図である。
図3】第1の実施形態に係るレシピサーバの概略構成を示す図である。
図4】レシピサーバのストレージに記憶されているテーブルの一例である。
図5】第1の実施形態に係るアラームサーバの概略構成を示す図である。
図6】第1の実施形態に係る解析サーバの概略構成を示す図である。
図7】解析サーバのストレージに記憶されているテーブルの一例である。
図8】第1の実施形態に係る予知保全サーバの概略構成を示す図である。
図9】モータ電流と当該モータ電流の微分値の波形の一例を示す模式図である。
図10】モータ電流と当該モータ電流の微分値の波形の他の例を示す模式図である。
図11】本実施形態に係る研磨終点タイミングの生成処理について説明するための模式図である。
図12】本実施形態に係る処理条件(レシピ)の更新処理について説明するための模式図である。
図13】本実施形態に係るメンテナンス要否判定処理について説明するための模式図である。
図14】メンテナンス要否判定部663における比較処理を説明するための図である。
図15】第2の実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。
図16】第3の実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。
図17】第1~3の実施形態に係る基板処理システムにおける各動作部位における機能、機構についてまとめた表である。
図18】各実施形態に係るニューラルネットワークの例である。
図19】第4の実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0030】
本実施形態では、基板処理装置の一例として、研磨装置を用いて説明する。また本実施形態に係る研磨装置は、基板の研磨終点を検知する研磨終点検出装置を備えている。この研磨終点検出装置は、膜厚を示す研磨指標値(例えば、テーブル回転モータの電流値、テーブルのトルクもしくはトップリング回転モータの電流値などのトルクを表す出力信号、渦電流式膜厚センサの出力信号、光学式膜厚センサの出力信号)に基づいて基板の研磨を監視し、金属膜が除去された時点を研磨終点と決定する。本実施形態では、一例として、膜厚を示す研磨指標値として、テーブル回転モータの電流値を用いるものとして説明する。
【0031】
図1は、第1の実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。図1に示すように、基板処理システムS1において、工場FAB-1、…、工場FAB-M(Mは正の整数)毎に、研磨装置1-1~1-N(Nは正の整数)が設けられている。なお、ここでは説明を簡単にするために、工場毎に、研磨装置の数は同じであるものとして説明するが、異なっていてもよい。
【0032】
基板処理システムS1において、工場FAB-1、…、工場FAB-M(Mは正の整数)毎に、レシピサーバ5、アラームサーバ6が設けられている。研磨装置1-1~1-N、レシピサーバ5及びアラームサーバ6は、ローカルエリアネットワークLN-i(iは1からMまでの整数)によって通信可能に接続されている。
【0033】
また一例として工場FAB-1には、プロセス装置4が設けられている。また一例として工場FAB-1には、工場管理センターFCが設けられており、この工場管理センターFCには、プロセス装置4と通信可能に接続されているFogサーバ2と、Fogサーバ2に通信可能に接続されているPC(Personal Computer)3が設けられている。ここで、Fogサーバ2はグローバルネットワークGNに接続されており、グローバルネットワークGNを介して、レシピサーバ5、アラームサーバ6、解析サーバ7、予知保全サーバ8と通信可能である。
【0034】
各レシピサーバ5は、グローバルネットワークGNに接続されており、分析センターACに設けられた解析サーバ7及び予知保全サーバ8と通信可能である。また、各アラームサーバ6は、グローバルネットワークGNに接続されており、分析センターACに設けられた解析サーバ7及び予知保全サーバ8と通信可能である。基板処理システムS1は、解析サーバ7及び予知保全サーバ8を備え、解析サーバ7及び予知保全サーバ8は、グローバルネットワークGNに接続されている。更に基板処理システムS1は端末装置9を備え、この端末装置9はグローバルネットワークGNに接続されており、端末装置9は予知保全サーバ8と通信可能である。以下、研磨装置1-1~1-Nを総称して、研磨装置1という。
【0035】
図2は、第1の実施形態に係る研磨装置を示す模式図である。この研磨装置は、基板を化学機械的に研磨するCMP装置である。研磨装置は、図2に示すように、研磨テーブル30と、トップリングシャフト34の下端に連結されたトップリング35と、研磨終点を検出するプロセッサ10とを備えている。トップリングシャフト34は、タイミングベルト等の連結手段を介してトップリング回転モータ41に連結されて回転駆動されるようになっている。このトップリングシャフト34の回転により、トップリング35がトップリングシャフト34を中心に矢印で示す方向に回転するようになっている。研磨される基板(例えばウエハ)Wは、トップリング35の下面に真空吸着またはメンブレンによる吸着により保持される。
【0036】
研磨テーブル30は、テーブル軸30aを介してその下方に配置されるテーブル回転モータ40に連結されており、このテーブル回転モータ40により研磨テーブル30がテーブル軸30aを中心に矢印で示す方向に回転するようになっている。この研磨テーブル30の上面には研磨パッド32が貼付されており、研磨パッド32の上面である研磨面32aが基板Wを研磨する。研磨テーブル30の上方には、研磨面32aに研磨液(スラリー)を供給するための研磨液供給機構38が配置されている。
【0037】
基板Wの研磨は次のようにして行われる。トップリング35および研磨テーブル30はそれぞれトップリング回転モータ41、テーブル回転モータ40により回転させられ、研磨パッド32の研磨面32aには、研磨液供給機構38から研磨液が供給される。この状態で、トップリング35は、基板Wを研磨面32aに対して押し付ける。基板Wは、研磨パッド32との摺接による機械的作用と研磨液の化学的作用とにより、研磨される。
【0038】
テーブル回転モータ40には、モータ電流を検出するテーブルモータ電流検出部45が接続されている。さらに、テーブルモータ電流検出部45はプロセッサ10に接続されている。基板Wの研磨中は、基板Wの表面と研磨パッド32の研磨面32aとが摺接するため、基板Wと研磨パッド32との間には摩擦力が生じる。この摩擦力は抵抗トルクとしてテーブル回転モータ40に作用する。
【0039】
研磨装置1は、プロセッサ10と、当該プロセッサ10に接続された通信回路11を更に備える。プロセッサ10は、テーブルモータ電流検出部45によって測定されるモータ電流(トルク電流)の時系列データを、通信回路11からレシピサーバ5へ出力する。プロセッサ10は、レシピサーバ5からこのモータ電流(トルク電流)の時系列データに応じて送信された研磨終点タイミングを通信回路11を介して取得する。
【0040】
積層構造を有する基板においては、種類の異なる複数の膜が形成されている。最も上の膜が研磨により除去されると、その下の膜が表面に現れる。通常これらの膜は異なる硬さを有しているため、上の膜が除去されて下の膜が現れると、基板Wと研磨パッド32との間の摩擦力が変化する。この摩擦力の変化は、テーブル回転モータ40にかかるトルク変化として検出することができる。
【0041】
解析サーバ7の後述する学習部762は、過去の物理量の時系列データを入力とし過去の研磨終点タイミングを出力とする学習用のデータセットとして用いて機械学習することによって、学習済みの機械学習モデルを生成する。ここで、学習部762に与える学習用のデータセットに含まれる研磨終点タイミングは、作業員または判定機能を有する機器が、テーブル回転モータ40への電流の変化に基づいて、膜が除去されたこと、すなわち研磨終点タイミングを判断したものである。なお、テーブルモータ電流検出部45を設けずに、テーブル回転モータ40に接続されたモータドライバ(図示せず)から出力される電流をプロセッサ10が監視するようにしてもよい。
【0042】
研磨装置1には、例えばセンサ21~24が設けられている。センサ21は、水またはスラリーの流量を検知する。センサ22は、研磨圧力を検知する。センサ23は研磨テーブル30の回転数を検知する。センサ24は、トップリング35の回転数を検知する。これらの検出信号はプロセッサ10に出力され、プロセッサ10は通信回路11からこれらの検出信号を他のサーバへ送信する。
【0043】
図3は、第1の実施形態に係るレシピサーバの概略構成を示す図である。図3に示すように、レシピサーバ5は、入力インタフェース51、通信回路52、ストレージ53、メモリ54、出力インタフェース55、及びプロセッサ56を備える。
【0044】
入力インタフェース51は、例えばキーボードであり、レシピサーバ5の管理者からの入力を受け付ける。 通信回路52は、接続されたローカルエリアネットワークLN-i(iは1~Mまでの整数)を介して研磨装置1-1~1―N、アラームサーバ6と通信する。また、通信回路52は、グローバルネットワークGNを介して解析サーバ7、予知保全サーバ8と通信する。これらの通信は、有線であっても無線であってもよいが、一例として有線であるものとして説明する。
【0045】
ストレージ53は、プロセッサ56が読み出して実行するためのプログラム及び各種のデータが格納されており、例えば不揮発性メモリ(例えばハードディスクドライブ)である。
メモリ54は、データ及びプログラムを一時的に保持し、例えば、揮発性メモリ(例えばRAM(Random Access Memory))である。
【0046】
出力インタフェース55は、外部の機器と接続するインタフェースである。
【0047】
プロセッサ56は、ストレージ53からプログラムをメモリ54にロードし、当該プログラムに含まれる一連の命令を実行することによって、予測部561、抽出部562として機能する。
【0048】
図4は、レシピサーバのストレージに記憶されているテーブルの一例である。図4に示すように、テーブルT1には、ウエハのロット、モータ電流の時系列データ、水またはスラリーの流量の時系列データ、研磨圧力の時系列データ、研磨テーブル回転数の時系列データ、トップリング回転数の時系列データなどの組のレコードが保存されている。このように、ストレージ53には、基板のロットに対して、当該基板処理中の過去の対象の物理量(例えば、モータ電流、水またはスラリーの流量、研磨圧力、研磨テーブル回転数)の時系列データが少なくとも一つ関連付けられて記憶されている。
【0049】
図5は、第1の実施形態に係るアラームサーバの概略構成を示す図である。図5に示すように、アラームサーバ6は、入力インタフェース61、通信回路62、ストレージ63、メモリ64、出力インタフェース65、及びプロセッサ66を備える。
【0050】
入力インタフェース61は、例えばキーボードであり、アラームサーバ6の管理者からの入力を受け付ける。
通信回路62は、接続されたローカルエリアネットワークLN-i(iは1~Mまでの整数)を介して研磨装置1-1~1―N、レシピサーバ5と通信する。また、通信回路52は、グローバルネットワークGNを介して解析サーバ7、予知保全サーバ8と通信する。これらの通信は、有線であっても無線であってもよいが、一例として有線であるものとして説明する。
【0051】
ストレージ63は、プロセッサ66が読み出して実行するためのプログラム及び各種のデータが格納されており、例えば不揮発性メモリ(例えばハードディスクドライブ)である。
メモリ64は、データ及びプログラムを一時的に保持し、例えば、揮発性メモリ(例えばRAM(Random Access Memory))である。
【0052】
出力インタフェース65は、外部の機器と接続するインタフェースである。
【0053】
プロセッサ66は、ストレージ63からプログラムをメモリ64にロードし、当該プログラムに含まれる一連の命令を実行することによって、判定部661、更新制御部662、メンテナンス要否判定部663として機能する
【0054】
図6は、第1の実施形態に係る解析サーバの概略構成を示す図である。図6に示すように、解析サーバ7は、入力インタフェース71、通信回路72、ストレージ73、メモリ74、出力インタフェース75、及びプロセッサ76を備える。
【0055】
入力インタフェース71は、例えばキーボードであり、解析サーバ7の管理者からの入力を受け付ける。
通信回路72は、グローバルネットワークGNを介してレシピサーバ5、アラームサーバ6、予知保全サーバ8と通信する。これらの通信は、有線であっても無線であってもよいが、一例として有線であるものとして説明する。
【0056】
ストレージ73は、プロセッサ76が読み出して実行するためのプログラム及び各種のデータが格納されており、例えば不揮発性メモリ(例えばハードディスクドライブ)である。
メモリ74は、データ及びプログラムを一時的に保持し、例えば、揮発性メモリ(例えばRAM(Random Access Memory))である。
【0057】
出力インタフェース75は、外部の機器と接続するインタフェースである。
【0058】
プロセッサ76は、ストレージ73からプログラムをメモリ74にロードし、当該プログラムに含まれる一連の命令を実行することによって、選別部761、学習部762、要因分析部763として機能する。
【0059】
図7は、解析サーバのストレージに記憶されているテーブルの一例である。図7に示すように、テーブルT2は、レコードを識別する識別情報であるレコードID、モータ電流の異常有無、水またはスラリーの流量の異常有無、研磨圧力の異常有無、研磨テーブル回転数の異常有無、トップリング回転数の異常有無、異常の要因、当該異常の解決法の組のレコードが保存されている。このように、ストレージ83には、少なくとも一つ以上の物理量の異常の有無の組み合わせと、異常の要因及び/または異常の解決法とが関連付けられて記憶されている。
【0060】
図8は、第1の実施形態に係る予知保全サーバの概略構成を示す図である。図8に示すように、予知保全サーバ8は、入力インタフェース81、通信回路82、ストレージ83、メモリ84、出力インタフェース85、及びプロセッサ86を備える。
【0061】
入力インタフェース81は、例えばキーボードであり、予知保全サーバ8の管理者からの入力を受け付ける。 通信回路82は、グローバルネットワークGNを介してレシピサーバ5、アラームサーバ6、解析サーバ7と通信する。これらの通信は、有線であっても無線であってもよいが、一例として有線であるものとして説明する。
【0062】
ストレージ83は、プロセッサ86が読み出して実行するためのプログラム及び各種のデータが格納されており、例えば不揮発性メモリ(例えばハードディスクドライブ)である。
メモリ84は、データ及びプログラムを一時的に保持し、例えば、揮発性メモリ(例えばRAM(Random Access Memory))である。
【0063】
出力インタフェース85は、外部の機器と接続するインタフェースである。
【0064】
プロセッサ86は、ストレージ83からプログラムをメモリ84にロードし、当該プログラムに含まれる一連の命令を実行することによって、決定部861として機能する。
【0065】
図9は、モータ電流と当該モータ電流の微分値の波形の一例を示す模式図である。波形G1が、モータ電流と研磨時間の関係を示しており、波形G2が、モータ電流の微分値と研磨時間の関係を示している。波形G2に示すように、極小点P1が現れる場合には、終点検知タイミングがこの極小点P1となる時刻t1であると判断することができる。
【0066】
しかし、この極小点(または極大点)が複数ある場合には、いずれの極小点(または極大点)が終点検知タイミングであるかをリアルタイムに判断することができないという問題がある。また波形に、ノイズが載っているときに、正常に判定することができないという問題もある。本実施形態では一例として、解析サーバ7の学習部762が、過去のモータ電流値の時系列データを入力とし、研磨終点タイミングを出力とする学習用のデータセットとして用いて機械学習することによって学習済みの機械学習モデルを生成することによって、その問題を解決する。
【0067】
図10は、モータ電流と当該モータ電流の微分値の波形の他の例を示す模式図である。波形G3が、モータ電流と研磨時間の関係を示しており、波形G4が、モータ電流の微分値と研磨時間の関係を示している。波形G4では、極小点(または極大点)が現れないので、作業者は、終点検知タイミングを判断することができない。よって、学習用データセットから、このデータを除く必要がある。
【0068】
このため、解析サーバ7の選別部761は、センサによって検知された電流値の時系列データを時間で微分した時系列データに基づいて、当該電流値の時系列データを選別する。具体的には例えば、選別部761は、当該時間で微分した時系列データに、設定基準を満たす極小点または極大点が検出されない場合、当該微分前の電流値の時系列データを除外することによって、当該電流値の時系列データを選別する。これによれば、設定基準を満たす極小点または極大点が検出されない場合、当該微分前の電流値の時系列データを学習用のデータセットから除外することによって、研磨終点タイミングの予測精度を向上させることができる。
【0069】
ここで設定基準とは例えば、電流値の微分値が予め設定された閾値を下回る(または閾値以下の)という条件である。また例えば、時間で微分した時系列データの極小点は、元の電流値の時系列データの2次微分値が0で3次微分値が正ということが知られているから、設定基準は、元の電流値の時系列データの2次微分値が0を基準とする予め設定された範囲にあり、且つ元の電流値の時系列データの3次微分値が正であるという条件であってもよい。
【0070】
そして解析サーバ7の学習部762は例えば、選別部761によって選別された電流値の時系列データを入力とし、研磨終点タイミングを出力とする学習用のデータセットとして用いて機械学習することによって学習済みの機械学習モデルを生成する。ここで機械学習モデルは例えば、電流値の時系列データを入力とし、研磨終点タイミングを出力とする学習用のデータセットとして用いて機械学習したモデルである。学習済みの機械学習モデルは例えば、電流値の時系列データを入力すると、研磨終点タイミングの候補値と当該候補値の正解確率が出力されるものである。
【0071】
この構成によれば、学習用のデータセットに、電流値の時系列データを時間で微分した時系列データに所望の極小点(または極大点)が現れるデータだけ選別することができるので、研磨終点タイミングの予測精度を向上させることができる。
【0072】
なお、この電流値は、本実施形態では一例として、研磨装置のテーブル回転モータの電流値であるものとして説明したが、これに限らず、研磨装置のトップリング回転モータの電流値、または研磨装置のテーブルのトルクであってもよい。
【0073】
図11は、本実施形態に係る研磨終点タイミングの生成処理について説明するための模式図である。図11に示すように、解析サーバ7の学習部762は、学習済みの機械学習モデルをレシピサーバ5の予測部561へ送信する。これにより、解析サーバの学習部762は、予測部561が使用する学習済みの機械学習モデルを随時更新することができる。
【0074】
レシピサーバ5の予測部561は、学習部762から学習済みの機械学習モデルを受信した場合に、ストレージ53に保存する。研磨装置1のプロセッサ10は、テーブル回転モータの電流値(モータ電流)を取得する毎に、そのデータを予測部561へ出力する。レシピサーバ5の予測部561は、研磨装置1からテーブル回転モータの電流値(モータ電流)を受信する毎に、研磨開始からそれまでに受信したテーブル回転モータの電流値(モータ電流)の時系列データを学習済みの機械学習モデルを入力して、研磨終点タイミングの候補値毎の正解確率を出力する。これにより、予測部561は、刻一刻と変化するモータ電流について、それまでのモータ電流の時系列データから、刻一刻と研磨終点タイミングの候補値毎の正解確率を出力し、その候補値の正解確率が閾値確率(例えば、90%)を超えた場合に、その研磨終点タイミングの予測値を、出力する研磨終点タイミングとする。
【0075】
このように、予測部561は、センサ(ここでは一例としてテーブルモータ電流検出部45)によって検知された物理量(ここでは一例としてテーブル回転モータの電流値)の時系列データを、学習済みの機械学習モデルに入力することによって、研磨を終了するタイミングである研磨終点タイミングを出力する。これにより、過去に複数の極小点(または極大点)が現れた場合におけるテーブル回転モータの電流値の時系列データとそのときの正しい研磨終点タイミングを用いて学習しているため、テーブル回転モータの電流値の微分値の時系列波形に、複数の極小点(または極大点)が現れる場合であっても、いずれの極小点(または極大点)のタイミングが正しい研磨終点タイミングであるかを予測することができる。
【0076】
レシピサーバ5の予測部561は、当該出力する研磨終点タイミングを研磨装置1に送信するよう制御する。これにより、研磨装置1のプロセッサ10は、研磨終点タイミングを取得することができる。
【0077】
なお、学習用のデータセットの入力として、過去のモータ電流値の時系列データを用いることとして説明するが、これに限らず、過去のモータ電流値の微分値の時系列データを用いてもよい。その場合、選別部761は、センサによって検知された物理量(ここでは一例としてテーブル回転モータの電流値)の時系列データを時間で微分した時系列データに基づいて、当該時間で微分した時系列データを選別してもよい。そして、学習部762は、選別部761によって選別された、「物理量(ここでは一例としてテーブル回転モータの電流値)の時系列データを時間で微分した時系列データ」を入力とし、研磨終点タイミングを出力とする学習用のデータセットとして用いて機械学習することによって学習済みの機械学習モデルを生成してもよい。
【0078】
その場合、機械学習モデルは、物理量(ここでは一例としてテーブル回転モータの電流値)の時系列データを時間で微分した時系列データを入力とし研磨終点タイミングを出力とする学習用のデータセットとして用いて機械学習したモデルである。またその場合、予測部561は、センサ(ここでは一例としてテーブルモータ電流検出部45)によって検知された物理量(ここでは一例としてテーブル回転モータの電流値)の時系列データを時間で微分した時系列データを、学習済みの機械学習モデルに入力することによって、研磨を終了するタイミングである研磨終点タイミングを出力する。
【0079】
図12は、本実施形態に係る処理条件(レシピ)の更新処理について説明するための模式図である。研磨装置1のプロセッサ10は、ウエハのロットと、水/またはスラリーの流量、研磨圧力、研磨テーブル回転数、またはトップリング回転数などの第2の物理量をレシピサーバ5へ出力する。ここで、第2の物理量は、対象の基板の処理中における物理量であって、基板処理装置(ここでは一例として研磨装置1)に設置された第2のセンサ(ここでは、一例として、センサ21~24)によって検知された物理量である。
【0080】
レシピサーバ5の抽出部562は、ストレージ53を参照して、処理されている対象の基板のロット(ここでは一例としてプロセッサ10から受信したウエハのロット)に対応する過去の物理量(例えば、テーブル回転モータの電流値、水/またはスラリーの流量、研磨圧力、研磨テーブル回転数、及び/またはトップリング回転数などの少なくとも一つ)の時系列データを抽出する。ここで、ストレージ53には、基板のロットと、当該基板処理中の過去の物理量(例えば、テーブル回転モータの電流値、水/またはスラリーの流量、研磨圧力、研磨テーブル回転数、及び/またはトップリング回転数などの少なくとも一つ)の時系列データが関連付けられて記憶されている。その際、例えば抽出部562は、ストレージ53において、処理されている対象の基板のロットに対応する過去の時系列データのうちの一つまたは複数を抽出してもよいし、当該時系列データの平均値、当該時系列データの中央値などの統計値を抽出してもよい。
【0081】
そして抽出部562は、この抽出された時系列データを、フィルタデータに含まれるデータの一つとして、アラームサーバ6へ送信する通信回路52を制御する。
【0082】
アラームサーバ6の判定部661は、センサ(ここでは一例としてテーブルモータ電流検出部45、またはセンサ21~24)によって検知された物理量(例えば、テーブル回転モータの電流値、水/またはスラリーの流量、研磨圧力、研磨テーブル回転数、及び/またはトップリング回転数などの少なくとも一つ)の時系列データと、前記抽出部562によって抽出された過去の時系列データとを比較し、当該物理量の時系列変化に異常があるか否か判定する。この構成によれば、研磨装置1の物理量の時系列データに異常があることを自動的に検出することができるので、当該異常の検出の時間とコストを低減し、省人、省エネ、及び/または省コスト化することができる。
【0083】
例えば、今回、テーブルモータ電流検出部45によって検知された物理量の時系列データが、抽出部562によって抽出された時系列データを基準として設定される範囲から外れている場合、判定部661は、異常があると判定し、一方、抽出部562によって抽出された時系列データを基準として設定される範囲内である場合、異常がないと判定する。判定部661は、異常があると判定した場合、研磨装置の処理条件(レシピ)を更新するために、処理条件(レシピ)を予知保全サーバ8へ要求する。
【0084】
これに応じて、予知保全サーバ8の決定部861は、判定部661によって異常があると判定された場合、処理条件(レシピ)を再度決定する。決定部861は、この再度決定した処理条件(レシピ)をアラームサーバ6へ送信するよう通信回路82を制御する。 この再度決定された処理条件(レシピ)を取得した更新制御部662は、決定部861によって決定された処理条件で更新するよう制御する。その際、更新制御部662は、研磨装置1へこの処理条件を送信するよう通信回路62を制御する。 このように自動で異常を判定し、(1)レシピの自動更新、(2)レシピの更新後、当該レシピ更新の結果報告、(3)レシピを更新してもそれでも異常のときはアラートを通知する。これにより、メンテナンス担当者が迅速に動きつつ、自動で動くところは自動で動くことにより省力化することができる。
【0085】
この構成によれば、研磨装置1の物理量の時系列データに異常がある場合に、処理条件(レシピ)を更新することができるので、異常に対する対応策の作成等の時間とコストを低減し、省人、省エネ、及び/または省コスト化することができる。
【0086】
図13は、本実施形態に係るメンテナンス要否判定処理について説明するための模式図である。図13に示すように、プロセッサ10は、異常履歴と、センサ(ここでは一例としてテーブルモータ電流検出部45、及び/またはセンサ21~24)によって検知された異常発生時の対象の物理量の時系列データを含む関連データセットと、をメンテナンス要否判定部663へ送信するよう通信回路11を制御する。また、プロセッサ10は、ウエハのロットを抽出部562へ送信するよう通信回路11を制御する。
【0087】
ストレージ53(第1のストレージ)には、基板のロットに対して、当該基板処理中の過去の物理量の時系列データが少なくとも一つ関連付けられて記憶されている。抽出部562は、ストレージ53(第1のストレージ)を参照して、処理されている対象の基板のロットに対応する過去の物理量の時系列データ(例えば、テーブル回転モータの電流値、水/またはスラリーの流量、研磨圧力、研磨テーブル回転数、及び/またはトップリング回転数などの少なくとも一つ)を抽出する。この抽出された過去の物理量の時系列データ(過去のセンサ値の時系列データ)は、メンテナンス要否判定部663へ送信される。
【0088】
メンテナンス要否判定部663は、センサここでは一例としてテーブルモータ電流検出部45、及び/またはセンサ21~24)によって検知された異常発生時の物理量の時系列データと、前記抽出部562によって抽出された過去の物理量の時系列データを比較して、メンテナンス要否を判定する。
【0089】
図14は、メンテナンス要否判定部663における比較処理を説明するための図である。図14に示すように、異常発生時の物理量の時系列データとして、モータの電流の時系列変化W1と、スラリーの流量の時系列変化W2、研磨圧力の時系列変化W3が示されている。一方、過去のスラリーの流量の時系列データの平均AW、平均AW-2σ(σは標準偏差)、平均AW+2σが示されており、スラリーの流量の時系列変化W2が、過去のスラリーの流量の時系列データの平均AWを基準とする予め設定された範囲(例えば、AW-2σ~AW+2σ)から逸脱していることが示されている。このように、異常発生時の物理量の時系列データが、同じ物理量の過去の時系列データを基準とする予め設定された範囲から外れる場合(または統計的に優位に外れる場合)、メンテナンス要否判定部663は、メンテナンスが必要と判定する。また、この場合、メンテナンス要否判定部663は、スラリーの流量に異常があり、モータの電流、研磨圧力に異常がないと判定する。メンテナンス要否判定部663は、判定したメンテナンス要否と、異常発生時の物理量の時系列データ(異常発生時のセンサ値の時系列データ)を解析サーバ7へ送信するよう通信回路62を制御する。なお、メンテナンス要否判定部663は、比較した複数のパラメータ(物理量の時系列データ)のうち、一つのパラメータ異常または複数のパラメータ異常を検知する。
【0090】
図7で上述したように、解析サーバ7のストレージ73(第2のストレージ)には、少なくとも一つ以上の物理量の異常の有無の組み合わせと、異常の要因及び/または異常の解決法とが関連付けられて記憶されている。解析サーバ7の要因分析部763は、メンテナンス要否判定部663によりメンテナンスが必要と判定された場合、ストレージ73(第2のストレージ)を参照して、物理量の異常に有無の組み合わせに応じた異常の要因及び/または異常の解決法を出力する。解析サーバ7の要因分析部763は、異常発生時の物理量の時系列データ(異常発生時のセンサ値の時系列データ)と異常の要因及び/または異常の解決法を端末装置9に送信するよう通信回路72を制御する。そして、これらの情報を受信した端末装置9は、これらの情報を表示する。これにより、基板処理装置のメンテナンス要員は、端末装置9でこれらの情報を確認することで、即時に異常の要因及び/または異常の解決法を把握することができるので、現地の研磨装置に行くなどして、迅速に研磨装置の異常を解決することができる。
【0091】
以上、本実施形態に係る基板処理システムは、基板処理装置に設置され、対象の基板の処理中における対象の物理量を検知するセンサ(ここでは一例としてテーブルモータ電流検出部45)と、当該センサ(ここでは一例としてテーブルモータ電流検出部45)によって検知された物理量(ここでは一例としてテーブル回転モータの電流値)の時系列データまたは当該物理量(ここでは一例としてテーブル回転モータの電流値)の時系列データを時間で微分した時系列データを、学習済みの機械学習モデルに入力することによって、研磨を終了するタイミングである研磨終点タイミングを出力する予測部と、を備える。ここで、当該機械学習モデルは、過去の前記物理量(ここでは一例としてテーブル回転モータの電流値)の時系列データまたは当該過去の物理量(ここでは一例としてテーブル回転モータの電流値)の時系列データを時間で微分した時系列データを入力とし過去の研磨終点タイミングを出力とする学習用のデータセットとして用いて機械学習したモデルである。
【0092】
この構成によれば、研磨終点タイミングを自動で予測できるので、研磨終点タイミングの予測にかかる時間とコストを低減し、省人、省エネ、及び/または省コスト化することができる。また、従来、テーブル回転モータの電流値の時系列データを時間で微分した時系列データを用いた場合に極小点(または極大点)が複数発生して、どの極小点(または極大点)の時刻が研磨終点タイミングであるかリアルタイムでは分からないという問題があった。これに対して、学習後の機械学習モデルは、過去の物理量の時系列データまたは当該過去の物理量の時系列データを時間で微分した時系列データを入力とし過去の研磨終点タイミングを出力とする学習用のデータセットで学習しているので、未知の物理量の時系列データまたは当該物理量の時系列データを時間で微分した時系列データが入力された場合であっても、正しい研磨終点タイミングを出力できる可能性を向上させることができる。
【0093】
<第2の実施形態>
続いて、第2の実施形態について説明する。図15は、第2の実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。図15に示すように、第2の実施形態に係る基板処理システムS2は、第1の実施形態に係る基板処理システムS1と比べて、工場管理センターにFogサーバ2が設けられている。Fogサーバ2は、後述する図17におけるFogサーバの機能を実現するために、分析データの各サーバから情報を取得する。
【0094】
<第3の実施形態>
図16は、第3の実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。図16に示すように、第3の実施形態に係る基板処理システムS3は、第2の実施形態に係る基板処理システムS2に比べて、工場毎にサーバ90が設けられている。サーバ90は、ゲートウェイサーバとして機能する。サーバ90は、グローバルネットワークGNに接続されるとともに、対応するローカルエリアネットワークLN-i(iは1からMまでの整数)に接続されている。サーバ90は、各工場におけるメンテナンス用途で用いられる。
【0095】
図17は、第1~3の実施形態に係る基板処理システムにおける各動作部位における機能、機構、IoT構成、メリットと理由についてまとめた表である。 研磨装置1(内のプロセッサ)は、いわゆるエッジコンピューティングにおけるエッジつまり、装置内のコントローラや装置近傍のゲートウェイ等に設置されたプロセッサであり、以下の機能を有してもよい。 (1)研磨装置1のプロセッサ10は、測定されたテーブルのトルクを表すテーブル回転モータの電流値(トルクTT)、トップリングの回転モータ電流値(トルク)(TR)、トップリング揺動回転モータの電流値(トルクTROT)、光学式膜厚センサの出力信号(SOPM)、または渦電流式膜厚センサの出力信号を用いて、研磨終点タイミングを検知する。
【0096】
(2)研磨装置1のプロセッサ10は、測定されたパッド温度、メンブレン押圧分布、回転数、または膜厚分布を用いて、研磨均一化、パッド温度コントロール、メンブレン押圧コントロール、テーブルもしくはトップリングの回転コントロールを実行する。
【0097】
(3)研磨装置1のプロセッサ10は、高速判定/更新条件実施により、レシピ更新(高速処理/データ保存無)を実行する。
【0098】
工場管理センターのFogサーバ2のプロセッサは、(1)プロセス/搬送、(2)研磨時間、(3)使用時間、イベント種/回数、(4)研磨条件変動履歴、(5)レシピ更新、イベント種/回数、(6)イベント種/回数、前後の条件、(7)推奨、警告通知の機構を有する。
これにより、工場管理センターのFogサーバ2のプロセッサは、(1)警告/異常管理、(2)運転履歴管理、(3)消耗品管理、(4)運転状態管理、(5)レシピ管理、(6)緊急回避動作、(7)交換/メンテナンス通知、主要データ蓄積と見える化、簡便な関連性/傾向分析と更新の機能を有する。
【0099】
このように、Fogサーバ2は、工場内複数装置のデータ管理を行う。これにより、工場内の多数装置の状態管理を一元に行うことができ、装置間の短期の傾向分析から次段階の対応及び更新を実施することができる。
【0100】
分析センターACの解析サーバ7のプロセッサ76は、多量データ分類、相関解析、影響解析と改良条件、設定された関数などを用いて、異常発生時に要因を解析(または分析)する。 分析センターACの予知保全サーバ8のプロセッサ86は、研磨条件を最適化した処理条件(改良レシピ)を決定し、決定した処理条件(改良レシピ)で、処理条件(レシピ)を更新するよう制御する。
【0101】
また、分析センターACの予知保全サーバ8のプロセッサ86は、研磨装置1の消耗品の判断モデルを用いて、研磨装置1の消耗品の交換時期を予測し、この消耗品の判断モデルを更新等する毎に、消耗品の交換時期を更新する。これにより、研磨装置1の消耗品の交換時期を適切に予測することができるので、研磨装置1を保全することができる。
分析センターACの解析サーバ7のプロセッサ76または予知保全サーバ8のプロセッサ86は、多装置のデータ解析とレシピ改良等(パラメータ相関分析/自動プロセス判定等)、長期的な傾向分析と更新を実施してもよい。
【0102】
これらの実行の際、分析センターACの解析サーバ7及び予知保全サーバ8は、多工場からのデータ蓄積と活用をする。これにより、多数工場/装置からのデータを活用して、処理条件(研磨条件、レシピ)の傾向分析もしくは影響分析を実施する。また多数工場/装置からのデータを活用して、改良モデルもしくは判断基準を作り、これらの更新されたもの(更新版)を、工場センターのFogサーバ2に送ることによってFogサーバ2で実行することができる。すなわち、工場センターのFogサーバ2で使うレシピ、モデル等の更新ができる。また、分析センターACの解析サーバ7のプロセッサは、エッジで行う終点処理等を行うときのゆるやかな経時的傾向(例えば、月または日レベル)を分析して、改良したレシピをエッジのプロセッサ(またはコントローラ)に送って対象の研磨装置のレシピを更新してもよい。例えば、研磨装置の終点検知を行っている波形データ(例えば、トルクTTの波形データ)の集積がデータセンター(または分析センター)で行われて、該当する研磨装置の波形ノイズの除去の解析が分析センターACの解析サーバ7のプロセッサで行われ、ACの解析サーバ7のプロセッサがノイズ分離を行う前処理用学習済モデル(チューニングされたニューラルネットワーク)を生成して用いてもよい。分析センターACよりエッジのプロセッサまたはコントローラに更新用レシピが送られて、エッジのプロセッサがレシピの更新を行い、ノイズ除去の前処理用学習モデルを用いることも可能である。これらのレシピの更新は、ネットワーク通信により自動で行うことができる。また、通信できないときは、現場にて人手により更新することも可能である。
【0103】
なお、これらの分析センターACにおける処理は、クラウドで実行されてもよい。
【0104】
エッジ側(例えば研磨装置1)で高速処理が必要な場合(例えば、図16のエッジの機能を実現する場合)、エッジコンピューティングで処理する。研磨装置1内のコントローラ(もしくはプロセッサ)もしくはゲートウェイ側にあるサーバ90は、例えば、100ms以下の処理が必要な場合、例えばオンラインで終点予測(波形予測)をする場合など経時変化対応が必要な場合、処理を実行する。
図16におけるFogサーバが実行する機能の処理、分析センターの各サーバの処理は、管理処理であるから処理がそれほど早くなくてもよいので、Fogサーバまたは分析センターの各サーバで実行してもよい。
【0105】
<人工知能(AI)の説明>
なお、学習済みの(チューニングされた)機械学習モデルは、入力が、研磨開始から予測時点までのモータ電流の時系列データ、出力が研磨終点タイミングの候補値毎の正解確率としたが、上記の構成に限ったものではない。
機械学習モデルの入力は、研磨開始から予測時点までのモータ電流の時系列データ、に加えて、研磨開始から予測時点までのテーブル回転モータの電流値、トップリング回転モータの電流値、テーブルのトルク、基板に光を当てた際に散乱した光強度、基板に磁力線を当てて発生する渦電流による磁力線の強度などのセンサ出力、他のパラメータ(パッド温度、メンブレン押圧、研磨テーブルもしくは研磨テーブル回転数、スラリーの量)などの研磨装置の状態を表す物理量の少なくとも一つであってもよい。これにより、研磨面の均一性が向上し、研磨終点タイミングの時間タイミング精度が更に向上する。
あるいは機械学習モデルの入力は、上記の研磨開始から予測時点までのモータ電流の時系列データに代えて、研磨開始から予測時点までのテーブル回転モータの電流値、トップリング回転モータの電流値、テーブルのトルク、基板に光を当てた際に散乱した光強度、基板に磁力線を当てて発生する渦電流による磁力線の強度などのセンサ出力、他のパラメータ(パッド温度、メンブレン押圧値、テーブル/トップリング回転数、スラリーの流量など)などの研磨装置の状態を表す物理量の少なくとも一つであってもよい。
【0106】
なお、機械学習モデルは、コンピュータプログラム製品として実現されてもよい。例えば、基板の処理を制御するコンピュータプログラム製品であって、非一時的なコンピュータ記録媒体に具現化されたコンピュータプログラム製品であって、プロセッサに、上述した処理の少なくとも一つを実行させるための命令を含む。
また、機械学習モデルの出力は、制御パラメータを出力するためのプログラムであってもよいし、修正後のパラメータであってもよい。
【0107】
<学習データセットの選別について>
学習データセットとしては、上記の実施形態では、終点検知結果として正常な正常データセットを用いたが、これに限ったものではない。終点検知結果として異常な異常データセットであっても、正常データと異常データが混在した混在データセット(例えば、80%以上が正常データの混在データセット)でもよい。
機械学習として、ニューラルネットワーク(例えば、ディープラーニング)、強化学習もしくはサポートベクターマシーンなどを用いて自動学習してもよい。更に、この機械学習は、量子コンピューティングで実現してもよい。
【0108】
<ニューラルネットワークで第1の例>
ここで、機械学習としてニューラルネットワークで実現する例について図18を用いて説明する。図18は、各実施形態に係るニューラルネットワークの例である。図18に示すように、予測部561は、正規化器91、ニューラルネットワーク92、判定処理器93を備える。予測部561は、正規化器91で、上述した研磨装置の状態を表す物理量の時系列データ(例えば、モータ電流の時系列データ)D1~DNを正規化する。正規化したデータd1~dNがニューラルネットワーク92に入力されて、ニューラルネットワーク92は、複数の研磨終点タイミングの候補値毎の正解確率P1~PNを生成する(Nは正の整数)。判定処理器93は、生成した複数の正解確率のうち閾値を超えるものがある場合、当該閾値を超える正解確率Piに対応する研磨終点タイミングの候補値Tiを研磨終点タイミングとして出力する(iはインデックス)。
【0109】
ここでニューラルネットワーク102は、上述した研磨装置の状態を表す物理量の時系列データ(例えば、モータ電流の時系列データ)D1~DNを正規化したデータd1~dNを受け取る複数の入力ノードと、研磨終点タイミング毎に割り当てられた出力ノードであって正解確率を出力する複数の出力ノードと、入力が少なくとも一つ以上の入力ノードの出力に接続され且つ出力が少なくとも一つ以上の出力ノードの入力に接続された複数の隠れノードとを備える。
【0110】
ニューラルネットワーク102は、一部もしくは全てがソフトウェアで実現されてもよいし、一部もしくは全てがハードウェアで実現されてもよい。ニューラルネットワーク102をハードウェアで実現する場合、例えば、図18に示すように、ニューラルネットワーク102は、入力ノードを構成する第1のフィルタ921と、隠れノードを構成する第2のフィルタ922と、出力ノードを構成する第3のフィルタ923とを備えるようにしてもよい。
【0111】
<第4の実施形態>
続いて第4の実施形態について説明する。図19は、第4の実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。図16の第3の実施形態に係る基盤処理システムでは、Fogサーバ2がローカルエリアネットワークLN-iに接続されていたのに対して、フォグコンピュータ2bがサーバ100に接続されている点が異なっている。これにより、フォグコンピュータ2bには、情報処理装置の一例であるサーバ100によって処理されたデータのみが送信される。なお、図16と比べて、予知保全システム8が予知保全システム8bに変更され、端末装置9が削除された構成になっている。
【0112】
<接続形態と機能要件>
(1)工場内にサーバ100が設置されている。該サーバ100にて、複数の基盤処理装置(半導体製造装置ともいう、ここでは一例として研磨装置)の稼働データ収集とデータ解析が可能である。例えば、研磨条件に対する装置間の差異分析が可能である。その差異に応じた更新用パラメータ生成と更新用のデータ送信等が可能である。又、該サーバ100は工場管理用のフォグコンピュータ(例えば、フォグサーバー)2bや管理者用のPC3に接続が可能である。工場管理者がPC3からサーバ100にアクセスしてデータ解析や更新用パラメータ生成が可能である。また、サーバ100からフォグコンピュータbや管理者用のPC3にデータのダウンロードが可能であり、工場管理者はフォグコンピュータ2b又はPC3にてデータ解析や更新用パラメータの生成が可能となる。
【0113】
(2)更に、サービス提供者が工場外部や工場の装置設置建屋外の場所(ベンダールーム等)から該サーバ100に接続可能である。サービス提供者は複数の基板処理装置(半導体製造装置ともいう、例えば研磨装置)のデータ解析が可能となる。また例えば研磨装置の研磨パラメータ変動、研磨結果の相関分析や研磨均一性の変動、均一性維持のための更新用パラメータ生成、該更新用パラメータの該当装置への送信とパラメータ更新等が可能となる。
【0114】
(3)基板処理装置(半導体製造装置ともいう)は、研磨装置(CMP装置ともいう)、めっき装置、ベベル研磨装置、検査装置、パッケージ基板研磨装置、露光装置、エッチング装置、研磨装置、洗浄装置、成膜装置等である。多種の装置のデータを用いる場合には、プロセス工程前後で使用する装置列の履歴やパラメータ変動をモニタリングしてデータ解析を行い、異常検知、コンディショニング、消耗部品交換予定作成等が可能となる。
【0115】
<サーバ100の機能の概要>
サーバ100は、研磨装置それぞれから、研磨パラメータ及び/またはセンサ検出値などのデータを収集する:
サーバ100は、研磨装置の間の研磨状態の差を最小化するよう、研磨装置それぞれの研磨パラメータを調節する。
サーバ100は、センサ検出値を用いて、トラブル要因を分析する。これにより、分析の早期化を実現し、トラブルを未然に防止する。
【0116】
<サーバ100の機能及び処理項目>
1.サーバ100のプロセッサが研磨装置1から収集する収集データ
収集データは、例えば、以下の少なくともいずれかである。消耗品使用時間(リテーナリング、パッド、メンブレン、ドレッサ具、ブラシ、コマ)、処理枚数/ユニット、研磨中トルク変動(モータ電流)、研磨装置に内蔵された膜厚測定器(In-Line Thickness Metrology:ITM)による膜厚測定結果、終点検出(EndPoint Detection: EPD)データ、環境データ(パッド温度、研磨ユニット温度・湿度、スラリ温度)、ウェハ搬送データ(位置、トルク、速度、加速度)などである。
【0117】
2.研磨装置間差の低減(望ましくは最小化)
サーバ100のプロセッサは、トルクデータ(例えば、研磨テーブル回転用のモータ電流)や他のパラメータのうちで、
(1)「研磨条件(例えば、研磨量など)と相関のあるパラメータグループ(すなわち研磨条件に利くパラメータグループ)、
(2)「研磨テーブルコンディション(状態)」と相関のあるパラメータグループ(すなわち研磨テーブルコンディション(状態)に利くパラメータグループ)、または
(3)「ドレッシング均一性」と相関のあるパラメータグループ(すなわちドレッシング均一性」に利くパラメータグループ)、
を抽出する。
ここで、その抽出方法は、主成分分析における固有値を求めることによって、それぞれ相関のあるパラメータを抽出してもよい。
【0118】
そして、サーバ100のプロセッサは、「研磨条件(例えば、研磨量など)が、研磨装置の間での違いが小さくなるように、研磨条件に利くパラメータグループのパラメータを調節してもよい。
それに加えて/替えて、サーバ100のプロセッサは、「研磨テーブルコンディション(状態)」が、研磨装置の間での違いが小さくなるように、
研磨テーブルコンディション(状態)に利くパラメータグループのパラメータを調節してもよい。
更に加えて/替えて、「ドレッシング均一性」が、研磨装置の間での違いが小さくなるように、研磨テーブルコンディション(状態)に利くパラメータグループのパラメータを調節してもよい。
【0119】
初期に相関の高いパラメータであっても、時間経過とともに相関が変動するので、経時的に相関を監視する必要がある。そこで、その一例として、サーバ100のプロセッサは、相関のあるパラメータの相関を表す相関値(例えば相関係数)の累積値である累積寄与データを研磨装置毎に算出し、この累積寄与データの研磨装置の間のばらつきを監視してもよい。そして、サーバ100のプロセッサは、ばらつきが所定の範囲から外れる場合、異常の兆候があるとみなして、パラメータ(例えば、当該相関値の高いパラメータ)を更新してもよい。ここで、相関を表す相関値については、相関値が閾値(例えば0.5)以上の強い相関があるパラメータを選んでもよい。
【0120】
サーバ100のプロセッサは、経時的に、相関のあるパラメータの相関値を監視して、相関係数が予測範囲から外れた場合、パラメータ(例えば、当該相関値の高いパラメータ)を更新する。
また例えば、サーバ100のプロセッサは、元々の相関値が閾値より低かったが、相関値が閾値より高くなったパラメータが新たに出現した場合、当該新たなパラメータを更新してもよい。
【0121】
3.トラブル要因分析の早期化
サーバ100のプロセッサは、相関値の高いパラメータを優先して、研磨装置間で比較してもよい。そしてサーバ100のプロセッサは、相関値の高いパラメータのばらつき(ずれ度合い、例えば、差など)が、通常、予測される範囲から外れた場合、トラブル要因であると検出して、パラメータ(例えば、当該相関値の高いパラメータ)を更新してもよい。
【0122】
4.トラブル未然防止
トラブルを未然に防止するために、サーバ100のプロセッサは、相関値の高いパラメータのばらつき(例えばずれ度合い、例えば、差など)が、閾値を超えた場合、メンテナンスを促す情報を出力してもよい。例えば、サーバ100のプロセッサは、あとX(Xは予め決められた数字)時間後にメンテナンスをした方がよい旨を出力してもよい。
【0123】
これにより、相関値の高いパラメータのばらつき(例えばずれ度合い)をベースとした不具合の予兆を監視することができる。また、効率的に研磨装置(CMP装置)の稼働データを収集、蓄積、可視化し、解析するプラットフォームを構築することができる。また、工場内の基板処理装置(例えば研磨装置)もしくは半導体製造装置について複数の装置のデータをサーバ100に蓄積することができる。
【0124】
<使用例:トラブル要因分析とトラブル未然防止例>
サーバ100は、複数の研磨装置のデータを内蔵もしくは外部のストレージに蓄積しデータ解析を行う。これにより、故障や部品交換によるダウンタイムを最小化する。そのために、サーバ100は例えば、パッド、リテーナリング、メンブレン、回転部モータ等の消耗品使用時間・処理枚数・消耗度評価値・終点検出の研磨時間の経時変化・研磨均一性の経時変化、等のデータ解析と、それに基づいて消耗品交換時期予測値、残りの使用可能時間推定、コンディショニング実施時期の推定等を行う。
次に、サーバ100は例えば、研磨特性維持・安定化(修正する)のために更新用パラメータの生成を行い、更新用パラメータを用いた場合の消耗品交換時期予測値、残りの使用可能時間推定、コンディショニング実施時期の推定を行い、更新パラメータ使用時のメンテンナス時期を推定して、工場管理者またはサービス提供者に通知する。この通知は、メール、メッセージサービスで通知されてもよいし、工場管理者のPC3もしくはサービス提供者の端末装置9にインストールされたアプリケーションで通知されてもよい。
なお、上記のトラブル要因分析と未然防止は、サーバ100ではなく、解析システム7及び/または予知保全システム8bで実行されてもよい。
【0125】
以上、第4の実施形態に係る基盤処理システムは、複数の基板処理装置(例えば研磨装置1)に通信回線で接続されているサーバ100と、前記サーバと通信回線で接続されているフォグコンピュータ2bもしくは端末(例えば、PC3)と、を備え、サーバ100は、複数の基板処理装置(例えば研磨装置1)からデータを収集し、当該収集したデータに対して処理を施し、処理結果を前記フォグコンピュータ2bもしくは前記端末(例えば、PC3)へ送信し、前記フォグコンピュータ2bもしくは前記端末(例えば、PC3)は、前記処理結果を受信した場合、当該処理結果を出力するように制御する。
【0126】
この構成により、フォグコンピュータもしくは端末は、サーバが複数の研磨装置1から収集したデータを処理した結果を出力することができる。
【0127】
当該サーバ100は、前記収集したデータから、基板処理条件(例えば研磨条件)、基板処理テーブル状態(例えば研磨テーブル状態)、及び/またはドレッシング均一性と基準以上、相関のあるパラメータを抽出する手段と、前記抽出されたパラメータを基板処理装置(例えば研磨装置)の間で比較し、比較結果に応じて、前記データのうち少なくとも一つのパラメータを更新する手段と、を有する。
【0128】
これにより、基板処理条件(例えば研磨条件)、基板処理テーブル状態(例えば研磨テーブル状態)、及び/またはドレッシング均一性を近づけることができるので、基板処理装置(例えば研磨装置)の間での基盤処理(例えば研磨)のばらつきを低減することができる。
【0129】
なお、上述した実施形態で説明した基板処理システムS1~S4の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ハードウェアで構成する場合には、基板処理システムS1~S3の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0130】
また、基板処理システムS1~S4の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0131】
また、方法の発明においては、全ての工程(ステップ)をコンピュータによって自動制御で実現するようにしてもよい。また、各工程をコンピュータに実施させながら、工程間の進行制御を人の手によって実施するようにしてもよい。また、さらには、全工程のうちの少なくとも一部を人の手によって実施するようにしてもよい。
【0132】
以上、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0133】
1 研磨装置
10 プロセッサ
11 通信回路
2 Fogサーバ
21~24 センサ
30 研磨テーブル
30a テーブル軸
32 研磨パッド
34 トップリングシャフト
35 トップリング
38 研磨液供給機構
4 プロセス装置
40 テーブル回転モータ
41 トップリング回転モータ
45 テーブルモータ電流検出部
5 レシピサーバ
51 入力インタフェース
52 通信回路
53 ストレージ
54 メモリ
55 出力インタフェース
56 プロセッサ
561 予測部
562 抽出部
6 アラームサーバ
61 入力インタフェース
62 通信回路
63 ストレージ
64 メモリ
65 出力インタフェース
66 プロセッサ
661 判定部
662 更新制御部
663 メンテナンス要否判定部
7 解析サーバ
71 入力インタフェース
72 通信回路
73 ストレージ
74 メモリ
75 出力インタフェース
76 プロセッサ
761 選別部
762 学習部
763 要因分析部
8 予知保全サーバ
81 入力インタフェース
82 通信回路
83 ストレージ
84 メモリ
85 出力インタフェース
86 プロセッサ
861 決定部
9 端末装置
90 サーバ
91 正規化器
92 ニューラルネットワーク
93 判定処理器
100 サーバ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19