(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】架橋度が調整された研磨パッドおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B24B 37/24 20120101AFI20240726BHJP
C08G 18/12 20060101ALI20240726BHJP
C08G 18/30 20060101ALI20240726BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20240726BHJP
C08J 5/14 20060101ALI20240726BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
B24B37/24 C
C08G18/12
C08G18/30 020
C08G18/32
B24B37/24 A
C08J5/14 CFF
H01L21/304 622F
(21)【出願番号】P 2022000774
(22)【出願日】2022-01-05
(62)【分割の表示】P 2020147694の分割
【原出願日】2020-09-02
【審査請求日】2023-03-20
(31)【優先権主張番号】10-2019-0136303
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】505232852
【氏名又は名称】エスケー エンパルス カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK enpulse Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1043,Gyeonggi-daero,Pyeongtaek-si,Gyeonggi-do 17784, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ジョンウク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、ウンソン
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ジャンウォン
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-238361(JP,A)
【文献】特開2005-126658(JP,A)
【文献】特開平10-176030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/24
C08G 18/12
C08G 18/30
C08G 18/32
C08J 5/14
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン系樹脂を含む研磨層を含み、
前記ポリウレタン系樹脂は、ウレタン系プレポリマーが硬化されたものであり、
前記ウレタン系プレポリマーは、重合単位としてジイソシアネート、ポリオール、および多官能性低分子化合物を含み、
前記多官能性低分子化合物は500以下の分子量を有し、
前記ポリウレタン系樹脂は、前記ジイソシアネートと反応した多官能性低分子化合物と、前記多官能性低分子化合物によって架橋された重合鎖と、を含み、
前記研磨層は、
ジメチルスルホキシドの中で、
前記研磨層の体積を基準に100%~200%の膨潤率を有し、
前記研磨層の重量を基準に150%~250%の膨潤率を有し、
前記研磨層の引張強度は、5N/mm
2~30N/mm
2であるか、又は、前記研磨層の
破断伸び率は50%~300%である、研磨パッド。
膨潤率(%、体積)=(ジメチルスルホキシドに保管後の体積-初期体積)/初期体積×100
膨潤率(%、重量)=(ジメチルスルホキシドに保管後の重量-初期重量)/初期重量×100
【請求項2】
前記多官能性低分子化合物は、末端に3個~10個の官能基を含み、前記官能基は、ヒドロキシ基、アミン基、およびエポキシ基からなる群より選択される1種以上である、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記多官能性低分子化合物は、グリセリン、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、およびジヒドロゲンモノオキシドからなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記ウレタン系プレポリマーは、前記ウレタン系プレポリマーの重量を基準に、前記多官能性低分子化合物を0.1重量%~5重量%で含む、請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記ウレタン系プレポリマーは、前記ジイソシアネートの総重量を基準に、未反応のジイソシアネートを0.1重量%~5重量%で含む、請求項4に記載の研磨パッド。
【請求項6】
研磨パッドを用いて半導体基板の表面を研磨する段階を含み、
前記研磨パッドはポリウレタン系樹脂を含む研磨層を含み、
前記ポリウレタン系樹脂は、ウレタン系プレポリマーが硬化されたものであり、
前記ウレタン系プレポリマーは、重合単位としてジイソシアネート、ポリオール、および多官能性低分子化合物を含み、
前記多官能性低分子化合物は500以下の分子量を有し、
前記ポリウレタン系樹脂は、前記ジイソシアネートと反応した多官能性低分子化合物と、前記多官能性低分子化合物によって架橋された重合鎖と、を含み、
前記研磨層は、
ジメチルスルホキシドの中で、
前記研磨層の体積を基準に100%~200%の膨潤率を有し、
前記研磨層の重量を基準に150%~250%の膨潤率を有し、
前記研磨層の引張強度は、5N/mm
2~30N/mm
2であるか、又は、前記研磨層の
破断伸び率は50%~300%である、半導体素子の製造方法。
膨潤率(%、体積)=(ジメチルスルホキシドに保管後の体積-初期体積)/初期体積×100
膨潤率(%、重量)=(ジメチルスルホキシドに保管後の重量-初期重量)/初期重量×100
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、架橋度が調整された研磨パッドおよびその製造方法に関するものである。より具体的には、実現例としては、化学機械的研磨(CMP)工程に適用され得る特性および性能を有するように架橋密度が制御された研磨パッド、およびこれを製造する方法、並びにこれを用いた半導体素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程の中でCMP工程は、ウェーハ(wafer)のような半導体基板をヘッドに付着し、プラテン(platen)上に形成された研磨パッドの表面に接触するようにした状態で、スラリーを供給して半導体基板の表面を化学的に反応させながらプラテンとヘッドとを相対運動させ、機械的に半導体基板表面の凹凸部分を平坦化する工程である。
【0003】
研磨パッドは、このようなCMP工程において重要な役割を担う必須の原・副資材として、一般にポリウレタン系樹脂からなり、前記ポリウレタン系樹脂は、ジイソシアネートとポリオールとを反応させて得られたプレポリマー、硬化剤、および発泡剤を含む組成物から調製される(特許文献1を参照)。
【0004】
また、研磨パッドは、表面にスラリーの大きな流れを担う溝(groove)と、微細な流動をサポートする気孔(pore)とを有し、前記気孔は空隙を有する固相発泡剤、不活性ガス、液相材料、繊維質などを用いて形成されるか、または化学的反応によりガスを発生させて形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国公開特許第2016-0027075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
CMP工程で使用される研磨パッドの性能は、研磨パッドを構成するポリウレタン系樹脂の組成と微細気孔の粒径、および研磨パッドの硬度、引張強度、伸び率などの物性により影響を受けることが知られている。特に、ウレタン系プレポリマー(prepolymer)の調製および硬化反応を経て生成される様々な化学構造の中で、架橋によって生成された結合単位が研磨パッドの物性に深く影響を及ぼすこととなる。また、前記ウレタン系プレポリマー内に残留する未反応モノマーによって性質と物性が変化することがあり、これはCMP工程の性能に大きく影響を与える。
【0007】
具体的には、ウレタン系プレポリマー内に存在する未反応ジイソシアネートモノマーは、研磨パッドの製造のための硬化過程において、ゲル化時間(gelation time)を必要以上に短縮させることにより工程制御を難しくし、最終的に研磨パッドの品質も低下させ得る。しかし、原料中のジイソシアネート投入量を減らして、未反応ジイソシアネートモノマーを低減させると、最終研磨パッドの硬度、引張強度などの機械的物性も低くなり、研磨パッドの性能を低下させ得る。
【0008】
そこで、本発明者らが研究した結果、研磨パッドの製造過程において原料に多官能性低分子化合物を一定量含ませると、ウレタン系プレポリマー内の未反応ジイソシアネートモノマーの含有量を下げながら架橋密度を増大させ、機械的物性を向上させることを見出した。
【0009】
したがって、実現例の目的は、CMP工程に適用され得る特性および性能を有するように架橋密度が調整された研磨パッド、その製造方法、およびそれを含む半導体素子の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実現例によると、ポリウレタン系樹脂を含む研磨層を含み、前記ポリウレタン系樹脂は、重合単位としてジイソシアネート、ポリオール、および多官能性低分子化合物を含み、前記多官能性低分子化合物は500以下の分子量を有し、前記研磨層は前記研磨層の体積または重量を基準に、ジメチルスルホキシドの中で100%~250%の膨潤率を有する、研磨パッドが提供される。
【0011】
他の実現例によると、ジイソシアネート、ポリオール、および多官能性低分子化合物を反応させて、ウレタン系プレポリマーを調製する段階と、前記ウレタン系プレポリマーに硬化剤と発泡剤とを混合および硬化させて研磨層を得る段階と、を含み、前記多官能性低分子化合物は500以下の分子量を有し、前記研磨層は前記研磨層の体積または重量を基準に、ジメチルスルホキシドの中で100%~250%の膨潤率を有する、研磨パッドの製造方法が提供される。
【0012】
また他の実現例によると、研磨パッドを用いて半導体基板の表面を研磨する段階を含み、前記研磨パッドはポリウレタン系樹脂を含む研磨層を含み、前記ポリウレタン系樹脂は、重合単位としてジイソシアネート、ポリオール、および多官能性低分子化合物を含み、前記多官能性低分子化合物は500以下の分子量を有し、前記研磨層は前記研磨層の体積または重量を基準に、ジメチルスルホキシドの中で100%~250%の膨潤率を有する、半導体素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
前記実現例による研磨パッドは、研磨層を構成するポリウレタン系樹脂の重合単位として多官能性低分子化合物を含み、調製過程で未反応ジイソシアネートモノマーを減らして、工程性および品質を向上させ架橋密度を増大させ得る。したがって、前記研磨パッドは、CMP工程を含む半導体素子の製造工程に適用され、優れた品質のウェーハなどの半導体素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、一実現例による研磨パッドを製造するためのウレタン系プレポリマーの反応において、多官能性低分子化合物が重合鎖を連結しながら未反応ジイソシアネートモノマーと結合することを模式的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の実現例の説明において、1つの構成要素が他の構成要素の上または下に形成されるものとして記載されることは、1つの構成要素が他の構成要素の上または下に直接、または他の構成要素を介して間接的に形成されるものをすべて含む。
【0016】
本明細書において、ある構成要素を「含む」ということは、特に反する記載がない限り、その外に他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0017】
また、本明細書に記載された構成要素の物性値、寸法などを表すすべての数値範囲は、特に記載がない限り、すべての場合に「約」という用語で修飾されるものと理解するべきである。
【0018】
本明細書において、単数表現は、特に説明がなければ、文脈上解釈される単数または複数を含む意味として解釈される。
【0019】
本明細書において、「重合単位」とは、当該重合体またはプレポリマーを調製する過程で用いられたモノマー、オリゴマー、または添加剤として、当該重合鎖を構成するのに関与した化合物またはそれに由来して重合鎖を実際に構成する単位のことを意味する。
【0020】
[研磨パッド]
一実現例による研磨パッドは、ポリウレタン系樹脂を含む研磨層を含み、前記ポリウレタン系樹脂は、重合単位としてジイソシアネート、ポリオール、および多官能性低分子化合物を含み、前記多官能性低分子化合物は500以下の分子量を有し、前記研磨層は前記研磨層の体積または重量を基準に、ジメチルスルホキシドの中で100%~250%の膨潤率を有する。
【0021】
<多官能性低分子化合物>
前記実現例による研磨パッドは、前記研磨層を構成するポリウレタン系樹脂の重合単位の一つとして多官能性低分子化合物を含み、調製過程で未反応ジイソシアネートモノマーを減らして、工程性および品質を向上させ、架橋密度を増大させ得る。
【0022】
図1は、一実現例による研磨パッドを製造するためのウレタン系プレポリマーの反応において、多官能性低分子化合物が重合鎖を連結しながら、未反応ジイソシアネートモノマーと結合することを模式的に示したものである。
【0023】
図1を参照して、(a)まず、重合単位としてジイソシアネート、ポリオール、および多官能性低分子化合物が混合され、(b)これらの中で、ジイソシアネートおよびポリオールはプレポリマー鎖を形成し、(c)多官能性低分子化合物がプレポリマー鎖を連結しながら、ともに未反応ジイソシアネートと反応することができる。
【0024】
これにより、前記ポリウレタン系樹脂は、前記ジイソシアネートと反応された多官能性低分子化合物と、前記多官能性低分子化合物によって架橋された重合鎖とを含み得る。
【0025】
前記ジイソシアネートと多官能性低分子化合物との反応および前記架橋反応は、NCO基とOH基とが反応してウレタン基(-NH-C(=O)-O-)を形成するウレタン反応を含む。また、前記架橋反応は、アロファネート(allophanate)基またはビュレット(biuret)基を形成する架橋反応をさらに含み得る。
【0026】
前記多官能性低分子化合物は、末端に2個以上の官能基を有する、分子量500以下の化合物を1種以上含み得る。例えば、前記多官能性低分子化合物は、末端に3個以上、3個~10個、3個~7個、または3個~5個の官能基を含み得る。
【0027】
具体的に、前記多官能性低分子化合物は、末端に3個~10個の官能基を含み、前記官能基は、ヒドロキシ基、アミン基、およびエポキシ基からなる群より選択される1種以上であり得る。
【0028】
また、前記多官能性低分子化合物の分子量は、500以下、400以下、300以下、200以下、150以下、または100以下であり得る。具体的に、前記多官能性低分子化合物の分子量は、15~500、30~500、50~400、50~300、または50~200であり得る。
【0029】
具体的に、前記多官能性低分子化合物は、グリセリン、トリメチロールプロパン、エチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、およびジヒドロゲンモノオキシドからなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0030】
前記ウレタン系プレポリマーは、前記ウレタン系プレポリマーの重量を基準に、前記多官能性低分子化合物を0.1重量%~10重量%、具体的に0.1重量%~5重量%で含み得る。より具体的に、前記ウレタン系プレポリマー内の前記多官能性低分子化合物の含有量は、0.1重量%~3重量%、0.1重量%~2重量%、2重量%~5重量%、または3重量%~5重量%であり得る。
【0031】
<ポリウレタン系樹脂>
前記研磨層を構成するポリウレタン系樹脂は、前記ジイソシアネート、ポリオール、および多官能性低分子化合物の重合体を含む。
【0032】
前記ジイソシアネートは、1種以上の芳香族ジイソシアネートおよび/または1種以上の脂肪族ジイソシアネートであり得、例えば、トルエンジイソシアネート(toluene diisocyanate、TDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(1,5-naphthalene diisocyanate、NDI)、パラフェニレンジイソシアネート(p-phenylene diisocyanate、PPDI)、トリジンジイソシアネート(tolidine diisocyanate、TODI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(diphenylmethane diisocyanate、MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate、HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(dicyclohexylmethane diisocyanate、H12MDI)、およびイソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanate、IPDI)からなる群より選択される1つ以上であり得る。
【0033】
具体的な例として、前記ジイソシアネートは、1種以上の芳香族ジイソシアネートを含み、前記1種以上の芳香族ジイソシアネートは、トルエン2,4-ジイソシアネートおよびトルエン2,6-ジイソシアネートを含む。
【0034】
具体的な他の例として、前記1種以上のジイソシアネートは、1種以上の脂肪族ジイソシアネートをさらに含み、前記1種以上の脂肪族ジイソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)などであり得る。
【0035】
前記ポリオールは、ポリウレタンの調製分野で広く認識される通常のポリオールとして、1つまたは2つ以上のヒドロキシル基を有し得、所定の重量平均分子量以上のオリゴマー乃至高分子型ポリオールを含み得る。例えば、前記ポリオールは、ポリエーテルポリオール(polyether polyol)、ポリエステルポリオール(polyester polyol)、ポリカーボネートポリオール(polycarbonate polyol)、ポリカプロラクトンポリオール(polycaprolactone polyol)などを含み得る。具体的に、ポリエーテルポリオールは、2つ以上のアルキレンエーテル(またはアルキレングリコール)繰り返し単位を含有する化合物として、アルキレンエーテル単位の繰り返し数に応じて、オリゴマー乃至高分子に達する様々な大きさを有し得る。また、ポリオールは、このような様々な大きさの化合物が混合された組成物を意味することでもある。
【0036】
また、前記ポリウレタン系樹脂は、重合単位として1種以上のジオールを含み得る。前記ジオールの具体的な例としては、エチレングリコール(EG)、ジエチレングリコール(DEG)、プロピレングリコール(PG)、プロパンジオール(PDO)、メチルプロパンジオール(MP-diol)などが挙げられる。
【0037】
前記ポリウレタン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、500~1000000、5000~1000000、50000~1000000、100000~700000、または500~3000であり得る。
【0038】
前記ポリウレタン系樹脂は、前記ウレタン系プレポリマー由来のものであり得る。例えば、前記ポリウレタン系樹脂は、ウレタン系プレポリマーが硬化されたものであり得、前記ウレタン系プレポリマーは、重合単位として前記ジイソシアネート、前記ポリオールおよび前記多官能性低分子化合物を含み得る。
【0039】
具体的に、前記ウレタン系プレポリマーは、前記ジイソシアネート、前記ポリオールおよび前記多官能性低分子化合物の予備重合反応生成物を含み得る。
【0040】
予備重合反応とは、一般に最終高分子成形品を調製するにおいて、成形しやすいようにモノマーの重合を中間段階で中止させ、比較的低い分子量のポリマーを得る反応のことを意味する。したがって、予備重合反応生成物を含むプレポリマー(prepolymer)は、それ自体で、または他の重合性化合物や硬化剤とさらに反応して、最終製品として形成され得る。例えば、前記ウレタン系プレポリマーの重量平均分子量(Mw)は、500~5000、500~3000、600~2000、または700~1500であり得る。
【0041】
前記ウレタン系プレポリマーは、ジイソシアネートとポリオールとの間の様々な分子量の重合反応物を含む。例えば、前記ウレタン系プレポリマー内で前記ジイソシアネートは、少なくとも1つのNCO基が反応されプレポリマー内の鎖を構成することができる。
【0042】
前記NCO基の反応は、ポリオールとの反応、またはその他の化合物との副反応を含み、特に限定されない。例えば、前記NCO基の反応は、鎖延長反応を含み得る。一例として、前記NCO基の反応は、前記ウレタン系プレポリマーの調製のためにジイソシアネートとポリオールとを反応させる過程において、NCO基とOH基とが反応してウレタン基(-NH-C(=O)-O-)を形成するウレタン反応を含む。
【0043】
また、前記ウレタン系プレポリマーの調製のための反応に使用されたモノマーの一部は、反応に関与しないことがあり得る。したがって、前記ウレタン系プレポリマー内には、反応に関与しないまま残っているモノマーも存在し得る。具体的に、前記ウレタン系プレポリマーは、未反応のジイソシアネートを含み得る。前記「未反応のジイソシアネート」とは、そのNCO基がいずれも反応していない状態で残っているジイソシアネートのことを意味する。
【0044】
前記ウレタン系プレポリマー内の未反応ジイソシアネートは、研磨パッドの製造のための硬化過程において、ゲル化時間を必要以上に短縮させることにより、工程制御を難しくし、最終研磨パッドの品質も低下させ得る。前記実現例によると、前記ウレタン系プレポリマー内の未反応のジイソシアネートの含有量を、前記多官能性低分子化合物の添加によって減らすことができ、その結果、前記ウレタン系プレポリマーは、少ない含有量のジイソシアネートを含み得る。
【0045】
これにより、前記ウレタン系プレポリマーは、前記ジイソシアネートの総重量を基準に、未反応のジイソシアネートを、10重量%以下、7重量%以下、5重量%以下、0重量%~7重量%、1重量%~7重量%、0重量%~5重量%、0.1重量%~5重量%、または1重量%~5重量%で含み得る。具体的に、前記ウレタン系プレポリマーは、前記ジイソシアネートの総重量を基準に、未反応のジイソシアネートを0.1重量%~5重量%で含み得る。この際、前記未反応のジイソシアネートは、未反応の芳香族ジイソシアネートであり得る。
【0046】
前記ウレタン系プレポリマーは、これに含まれているポリマー、オリゴマー、またはモノマーの末端に未反応のNCO基を有し得る。具体的な一例として、前記ウレタン系プレポリマーは、前記ウレタン系プレポリマーの重量を基準に、未反応のNCO基を、5重量%~13重量%、5重量%~10重量%、5重量%~9重量%、6重量%~8重量%、7重量%~9重量%、または7重量%~8重量%で含み得る。具体的な一例として、前記ウレタン系プレポリマーが、前記ウレタン系プレポリマーの重量を基準に、未反応のNCO基を5重量%~10重量%で含み得る。
【0047】
<研磨層>
前記研磨層は、前記ポリウレタン系樹脂を含み、より具体的には多孔質ポリウレタン系樹脂を含む。
【0048】
すなわち、前記研磨層は、ポリウレタン系樹脂、およびポリウレタン系樹脂内に分散されている多数の微細気孔を含み得る。
【0049】
前記研磨層の厚さは、0.8mm~5.0mm、1.0mm~4.0mm、1.0mm~3.0mm、1.5mm~2.5mm、1.7mm~2.3mm、または2.0mm~2.1mmであり得る。
【0050】
前記研磨層の比重は、0.6g/cm3~0.9g/cm3、または0.7g/cm3~0.85g/cm3であり得る。
【0051】
前記研磨層の硬度は、30ショアD~80ショアD、40ショアD~70ショアD、50ショアD~70ショアD、40ショアD~65ショアD、または55ショアD~65ショアDであり得る。
【0052】
前記研磨層の引張強度は、5N/mm2~30N/mm2、10N/mm2~25N/mm2、10N/mm2~20N/mm2、または15N/mm2~30N/mm2であり得る。
【0053】
前記研磨層の伸び率は50%~300%であり得、例えば、50%~150%、100%~300%、150%~250%、または120%~230%であり得る。
【0054】
具体的な例として、前記研磨層は、55ショアD~65ショアDの硬度、10N/mm2~25N/mm2の引張強度、および50%~150%の伸び率を有し得る。
【0055】
前記研磨層の研磨率(removal rate)は、3000Å/1分~5000Å/1分、3000Å/1分~4000Å/1分、4000Å/1分~5000Å/1分、または3500Å/1分~4500Å/1分であり得る。前記研磨率は、研磨層の調製直後(つまり硬化直後)の初期研磨率であり得る。
【0056】
また、前記研磨層のパッド切削率(pad cut rate)は、30μm/hr~60μm/hr、30μm/hr~50μm/hr、40μm/hr~60μm/hr、または40μm/hr~50μm/hrであり得る。
【0057】
前記微細気孔は、前記ポリウレタン系樹脂内に分散されて存在する。
前記微細気孔の平均径は、10μm~50μm、20μm~50μm、20μm~40μm、20μm~30μm、20μm~25μm、または30μm~50μmであり得る。
【0058】
また、前記微細気孔の総面積は、前記研磨層の総面積を基準に、30%~60%、35%~50%、または35%~43%であり得る。また、前記微細気孔の総体積は、前記研磨層の総体積を基準に、30%~70%、または40%~60%であり得る。
【0059】
前記研磨層は、表面に機械的研磨のための溝(groove)を有し得る。前記溝は、機械的研磨のための適切な深さ、幅、および間隔を有し得、特に限定されない。
【0060】
<膨潤率>
前記実現例による研磨パッドは、ジメチルスルホキシド(DMSO)の中で研磨層の膨潤率を調整することにより、CMP性能に影響を与える研磨パッドの特性に深く関連するポリウレタン系樹脂の架橋密度を効果的に実現することができる。
【0061】
前記研磨層は、前記研磨層の体積または重量を基準に、ジメチルスルホキシド中における膨潤率が、100%~250%、100%~200%、100%~150%、150%~250%、または200%~250%であり得る。
【0062】
例えば、前記研磨層は、前記研磨層の体積を基準に、ジメチルスルホキシド中における膨潤率が、100%~200%、100%~150%、または150%~200%であり得る。また、前記研磨層は、前記研磨層の重量を基準に、ジメチルスルホキシド中における膨潤率が、150%~250%、150%~200%、または200%~250%であり得る。
【0063】
具体的に、前記研磨層は、ジメチルスルホキシドの中で、前記研磨層の体積を基準に100%~200%の膨潤率を有し、前記研磨層の重量を基準に150%~250%の膨潤率を有し得る。
【0064】
<支持層>
また、前記研磨パッドは、前記研磨層の一面に配置される支持層をさらに含み得る。前記支持層は、前記研磨層を支持しながら、前記研磨層に加わる衝撃を吸収して分散させる役割をする。
【0065】
前記支持層は、不織布またはスエードを含み得、0.5mm~1mmの厚さおよび60アスカーC~90アスカーCの硬度を有し得る。
【0066】
<接着層>
前記研磨パッドは、前記研磨層と前記支持層との間に配置される接着層をさらに含み得る。
【0067】
前記接着層は、ホットメルト接着剤を含み得る。前記ホットメルト接着剤は、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、エチレン-酢酸ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、およびポリオレフィン樹脂からなる群より選択された1種以上であり得る。具体的に、前記ホットメルト接着剤は、ポリウレタン系樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択された1種以上であり得る。
【0068】
[研磨パッドの製造方法]
一実現例による研磨パッドの製造方法は、ジイソシアネート、ポリオール、および多官能性低分子化合物を反応させてウレタン系プレポリマーを調製する段階と、前記ウレタン系プレポリマーに硬化剤と発泡剤とを混合および硬化させて研磨層を得る段階と、を含み、前記多官能性低分子化合物は500以下の分子量を有し、前記研磨層は前記研磨層の体積または重量を基準に、ジメチルスルホキシドの中で100%~250%の膨潤率を有する。
【0069】
<ウレタン系プレポリマーの調製>
まず、ジイソシアネート、ポリオール、および多官能性低分子化合物を反応させてウレタン系プレポリマーを調製する。
【0070】
前記ウレタン系プレポリマーは、前述のように1種以上のジイソシアネートと、1種以上のポリオールと、1種以上の多官能性低分子化合物とを反応させるが、途中段階で重合を中止させ、比較的低い分子量で得られる。
【0071】
前記ウレタン系プレポリマーの調製段階は、前記ジイソシアネートとポリオールとを反応させる1次反応段階と、前記1次反応の生成物と前記多官能性低分子化合物とを反応させる2次反応段階と、を含み得る。
【0072】
この際、前記2次反応の生成物内の未反応のジイソシアネートの含有量が、前記1次反応の生成物内の未反応のジイソシアネート含有量よりさらに少ないことも有り得る。
【0073】
また、前記ウレタン系プレポリマーの調製段階で投入されるそれぞれの化合物の種類別含有量および反応条件を調整して、プレポリマー内の未反応ジイソシアネートの含有量および最終ポリウレタン系樹脂の架橋密度を調整することができる。
【0074】
前記ウレタン系プレポリマーは、前記ウレタン系プレポリマーの重量を基準に、前記多官能性低分子化合物を0.1重量%~10重量%で含み得る。
【0075】
また、前記ウレタン系プレポリマーは、前記ジイソシアネートの総重量を基準に、未反応のジイソシアネートを0.1重量%~10重量%で含み得る。
【0076】
また、前記プレポリマーの調製の際、追加のイソシアネート、アルコール、またはその他の添加剤がさらに投入され得る。
【0077】
<研磨層の調製>
以降、前記ウレタン系プレポリマーに、硬化剤と発泡剤とを混合および硬化させて研磨層を得る。
【0078】
前記混合は、50℃~150℃の条件で行われ、必要に応じて、真空脱泡条件下で行われ得る。
【0079】
また、前記硬化は、60℃~120℃の温度条件および50kg/m2~200kg/m2の圧力条件下で行われ得る。
【0080】
前記硬化剤は、アミン化合物およびアルコール化合物のいずれか1種以上であり得る。例えば、前記硬化剤は、芳香族アミン、脂肪族アミン、芳香族アルコール、および脂肪族アルコールからなる群より選択される1つ以上の化合物を含み得る。前記硬化剤は、例えば、2つまたはそれ以上の反応性基を有し得る。また、前記硬化剤の分子量は、例えば、50超、100超、150超、200超、300超、または500超であり得る。具体的に、前記硬化剤は、4,4'-メチレンビス(2-クロロアニリン)(MOCA)、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、m-キシリレンジアミン、イソホロンジアミン、ポリプロピレンジアミン、およびポリプロピレントリアミンからなる群より選択される1種以上であり得る。
【0081】
前記ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤は、それぞれの分子内の反応性基(reactive group)のモル数を基準に、1:0.8~1:1.2のモル当量比、または1:0.9~1:1.1のモル当量比で混合され得る。なお、「それぞれの反応性基のモル数基準」とは、例えば、ウレタン系プレポリマーのNCO基のモル数と、硬化剤の反応性基(アミン基、アルコール基など)のモル数とを基準とすることを意味する。したがって、前記ウレタン系プレポリマーおよび硬化剤は、前記で例示されたモル当量比を満足する量で単位時間当たりに投入されるように投入速度が調整され、混合過程に一定の速度で投入され得る。
【0082】
前記発泡剤は、研磨パッドの空隙形成に通常使用されるものであれば、特に制限しない。
【0083】
例えば、前記発泡剤は、中空構造を有する固相発泡剤、揮発性液体を用いた液相発泡剤、および不活性ガスの中から選ばれた1種以上であり得る。
【0084】
前記固相発泡剤は、熱膨張されたマイクロカプセルであり得、これは熱膨張性マイクロカプセルを加熱膨張させて得られたものであり得る。前記熱膨張されたマイクロカプセルは、膨張したマイクロバルーンの構造体として、均一な大きさの粒径を有することにより、気孔の粒径サイズを均一に調整可能な利点を有する。具体的に、前記固相発泡剤は、5μm~200μmの平均粒径を有するマイクロバルーン構造体であり得る。
【0085】
前記熱膨張性マイクロカプセルは、熱可塑性樹脂を含む外皮と、前記外皮の内部に封入された発泡剤とを含み得る。前記熱可塑性樹脂は、塩化ビニリデン系共重合体、アクリロニトリル系共重合体、メタクリロニトリル系共重合体、およびアクリル系共重合体からなる群より選択された1種以上であり得る。さらに、前記発泡剤は、炭素数1個~7個の炭化水素からなる群より選択された1種以上であり得る。
【0086】
前記固相発泡剤は、ウレタン系プレポリマー100重量部を基準に、0.1重量部~2.0重量部の量で使用され得る。具体的に、前記固相発泡剤は、ウレタン系プレポリマー100重量部を基準に、0.3重量部~1.5重量部、または0.5重量部~1.0重量部の量で使用され得る。
【0087】
前記不活性ガスは、ウレタン系プレポリマーと硬化剤との間の反応に関与しないガスであれば、種類は特に限定されない。例えば、前記不活性ガスは、窒素ガス(N2)、二酸化炭素ガス(CO2)、アルゴンガス(Ar)、およびヘリウムガス(He)からなる群より選択される1種以上であり得る。具体的に、前記不活性ガスは、窒素ガス(N2)または二酸化炭素ガス(CO2)であり得る。
【0088】
前記不活性ガスは、ポリウレタン系樹脂組成物の総体積の10%~30%に相当する体積で投入され得る。具体的に、前記不活性ガスは、ポリウレタン系樹脂組成物の総体積の15%~30%に相当する体積で投入され得る。
【0089】
その後、得られた研磨層の表面を切削する工程、表面に溝を加工する工程、下層部との接着工程、検査工程、包装工程等をさらに含み得る。
これらの工程は、通常の研磨パッドの製造方法の通りに行うことができる。
【0090】
[半導体素子の製造方法]
一実現例による半導体素子の製造方法は、先般説明した研磨パッドを用いて半導体基板の表面を研磨する段階を含む。
【0091】
つまり、一実現例による半導体素子の製造方法は、研磨パッドを用いて半導体基板の表面を研磨する段階を含み、前記研磨パッドはポリウレタン系樹脂を含む研磨層を含み、前記ポリウレタン系樹脂は、重合単位としてジイソシアネート、ポリオール、および多官能性低分子化合物を含み、前記多官能性低分子化合物は500以下の分子量を有し、前記研磨層は前記研磨層の体積または重量を基準に、ジメチルスルホキシドの中で100%~250%の膨潤率を有する。
【0092】
具体的に、前記一実現例による研磨パッドをプラテン上に装着した後、半導体基板を前記研磨パッド上に配置する。この際、前記半導体基板の表面は、前記研磨パッドの研磨面に直接接触される。研磨のために、前記研磨パッド上に研磨スラリーが噴射され得る。そお後、前記半導体基板と前記研磨パッドとは互いに相対回転して、前記半導体基板の表面が研磨され得る。
【0093】
(実施例)
以下、実施例によりさらに具体的に説明するが、これらの実施例の範囲に限定されるものではない。
【0094】
(実施例および比較例)
<段階(1)プレポリマーの調製>
トルエンジイソシアネート(TDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、およびジエチレングリコール(DEG)を4口フラスコに投入し、80℃にて3時間予備重合反応を行った。その後、下記表1に記載のそれぞれの添加量で多官能性低分子化合物を添加し、80℃にて2時間さらに反応させ、ウレタン系プレポリマーを調製した。プレポリマーのNCO%および未反応TDI含有量を測定して下記表1に示した。
【0095】
<段階(2)研磨パッドの製造>
プレポリマー、硬化剤、不活性ガス、発泡剤などの原料をそれぞれ供給するためのタンクおよび投入ラインが備えられているキャスティング装置を準備した。前記で調製されたウレタン系プレポリマー、硬化剤(ビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)メタン、イシハラ社)、不活性ガス(N2)、液相発泡剤(FC3283、3M社)、固相発泡剤(AkzoNobel社)、およびシリコーン系界面活性剤(Evonik社)をそれぞれのタンクに充填した。それぞれの投入ラインを介して原料をミキシングヘッドに一定の速度で投入しながら撹拌した。この際、プレポリマーと硬化剤とは、1:1の当量比および10kg/分の合計量で投入された。
【0096】
モールド(1000mm×1000mm×3mm)を用意して80℃に予熱し、前記撹拌済みの原料をモールドに吐出し反応させて、固相ケーキ状の成形体を得た。その後、前記成形体の上端および下端を切削して研磨層を得た。
【0097】
具体的な工程条件およびプレポリマー組成を下記表にまとめた。
【0098】
【0099】
(試験例)
前記実施例および比較例で得られたウレタン系プレポリマーまたは研磨パッドを、以下の項目について試験を行った。
【0100】
(1)未反応TDI含有量
プレポリマーの組成を分析して未反応TDI含有量を測定した。まず、ウレタン系プレポリマーのサンプル5mgをCDCl3に溶解し、室温にて核磁気共鳴(NMR)装置(JEOL 500MHz,90°パルス)を用いて1H-NMRおよび13C-NMR分析を行った。得られたNMRデータから、TDIの反応しているメチル基と反応していないメチル基のピークを積分することにより、ウレタン系プレポリマー内の反応または未反応のTDIモノマーの含有量を算出した。
【0101】
具体的に、2つのNCO基のうち4位置に置換されたNCO基のみポリオールと反応している2,4-TDI(以下「4-反応済み2,4-TDI」という)の重量を100重量部としたとき、2つのNCO基がいずれもポリオールと反応して鎖を形成した2,4-TDI(以下「2,4-反応済み2,4-TDI」という)、2つのNCO基がいずれもポリオールと反応していない2,6-TDI(以下「未反応の2,6-TDI」という)、および2つのNCO基のうち2位置または6位置に置換されたNCO基のみポリオールと反応している2,6-TDI(以下「2-反応済み2,6-TDI」という)の重量部を算出した(その他、2位置のNCOのみ反応している2,4-TDIおよび2つのNCO基がいずれも反応している2,6-TDIはほとんど検出されなかった)。その結果を下記の表にまとめた。
【0102】
【0103】
(2)膨潤率
溝を形成していない状態の研磨層を直径20mm、厚さ2mmに切断してサンプルを作製した。作製されたサンプルの正確なサイズを、ノギス(Vernier Calipers)をもって測定した。小数点以下4桁有効のスケールを用いて、サンプルの重量を測定した。250mLのビーカーに溶媒(DMSO)を50mL満たしてサンプルを入れ、常温(20~25℃)にて24時間保管した。その後、サンプルを取り出し、表面の溶媒をガーゼで2~3回拭いた後、大きさと重量を測定した。
【0104】
下記の計算式により膨潤率(%)を算出した。
膨潤率(%、体積)=(溶媒に保管後の体積-初期体積)/初期体積×100
膨潤率(%、重量)=(溶媒に保管後の重量-初期重量)/初期重量×100
【0105】
(3)硬度
サンプルを5cm×5cm(厚さ:2mm)に裁断し、常温、30℃、50℃、70℃にてそれぞれ12時間保管後、硬度計を用いてショアD硬度およびアスカーC硬度を測定した。
【0106】
(4)比重
サンプルを2cm×5cm(厚さ:2mm)に裁断し、温度25℃にて12時間保管後、比重計を用いて比重を測定した。
【0107】
(5)引張強度
サンプルを4cm×1cm(厚さ:2mm)に裁断し、万能試験機(UTM)により、50mm/分の速度において研磨パッドの破断寸前の最高強度値を測定した。
【0108】
(6)伸び率
サンプルを4cm×1cm(厚さ:2mm)に裁断し、万能試験機(UTM)により、50mm/分の速度において研磨パッドの破断寸前の最大変形量を測定した後、最初の長さに対する最大変形量の割合を百分率(%)で示した。
【0109】
(7)モジュラス
サンプルを4cm×1cm(厚さ:2mm)に裁断し、万能試験機(UTM)により、50mm/分の速度において伸び率が70%のときと伸び率が20%のときとの線を連結した傾きで示した。
【0110】
(8)研磨率
研磨パッドの製造直後の初期研磨率を以下のように測定した。直径300mmのシリコンウェーハに、化学気相蒸着(CVD)工程により酸化ケイ素を蒸着した。CMP装置に研磨パッドを付着し、シリコンウェーハの酸化ケイ素層が研磨パッドの研磨面を向くように設置した。研磨パッド上にか焼セリアスラリーを250mL/分の速度で供給しながら、4.0psiの荷重および150rpmの速度で60秒間酸化ケイ素膜を研磨した。研磨後、シリコンウェーハをキャリアから外し、回転式脱水機(spin dryer)に装着して蒸留水で洗浄した後、窒素により15秒間乾燥した。乾燥されたシリコンウェーハについて分光干渉式ウェーハ厚み計(SI-F80R、Keyence社)を使用して研磨前後の膜厚変化を測定した。その後、下記式を用いて研磨率を計算した。
研磨率(Å/min)=研磨前後の膜厚変化(Å)/研磨時間(min)
【0111】
(9)パッド切削率(pad cut rate)
研磨パッドを10分間の脱イオン水によるフリーコンディショニングを行った後、脱イオン水を1時間噴射しながらコンディショニングを行った。コンディショニングの過程で変化した厚さを測定し、研磨パッドの切削率を算出した。コンディショニングに使用した装置は、CTS社のAP-300HMであり、コンディショニング圧力は6lbf、回転速度は100rpm~110rpmであり、コンディショニングに用いられたディスクは、セソル社のCI-45であった。
その結果を下記の表に示した。
【0112】
【0113】
前記表に示すように、実施例1~3の研磨パッドは、比較例1の研磨パッドに比べてDMSO中の膨潤率が小さく、硬度、引張強度、伸び率および研磨率が優れていることが確認できる。