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特許7527527冷凍菓子用組成物、冷凍菓子用含水クリーム、冷凍菓子、冷凍菓子の融解を遅延させる方法および、冷凍菓子の食感を改良する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-25
(45)【発行日】2024-08-02
(54)【発明の名称】冷凍菓子用組成物、冷凍菓子用含水クリーム、冷凍菓子、冷凍菓子の融解を遅延させる方法および、冷凍菓子の食感を改良する方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 9/34 20060101AFI20240726BHJP
   A23G 9/32 20060101ALI20240726BHJP
   A23G 9/00 20060101ALI20240726BHJP
【FI】
A23G9/34
A23G9/32
A23G9/00 101
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024527838
(86)(22)【出願日】2024-01-19
(86)【国際出願番号】 JP2024001423
【審査請求日】2024-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2023008435
(32)【優先日】2023-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】高崎 大巧
(72)【発明者】
【氏名】松本 俊介
(72)【発明者】
【氏名】佐野 貴士
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/075176(WO,A1)
【文献】特開2004-081197(JP,A)
【文献】特開2003-199499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(a)及びグァーガムを含む冷凍菓子用組成物であって、
前記冷凍菓子用組成物中の前記成分(a)及び前記グァーガムの含有量の合計が80質量%以上100質量%以下であり、
前記冷凍菓子用組成物中の前記成分(a)100質量部に対する前記グァーガムの含有量が2質量部以上100質量部以下である、冷凍菓子用組成物
(a)以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が50質量%以上100質量%以下
【請求項2】
更に、タマリンドシードガム及びカラギーナンを含む、請求項1に記載の冷凍菓子用組成物。
【請求項3】
以下の成分(a)及びグァーガムを含む冷凍菓子用含水クリームであって、
前記冷凍菓子用含水クリーム中の前記成分(a)の含有量が0.1質量%以上4質量%以下であり、
前記冷凍菓子用含水クリーム中の前記グァーガムの含有量が0.01質量%以上1質量%以下である、冷凍菓子用含水クリーム
(a)以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が50質量%以上100質量%以下
【請求項4】
請求項に記載の冷凍菓子用含水クリームを含む、冷凍菓子。
【請求項5】
冷凍菓子に、以下の成分(a)及びグァーガムを含む冷凍菓子用含水クリームを配合することを含む、冷凍菓子の融解を遅延させる方法であって、
前記冷凍菓子用含水クリーム中の前記成分(a)の含有量が0.1質量%以上4質量%以下であり、
前記冷凍菓子用含水クリーム中の前記グァーガムの含有量が0.01質量%以上1質量%以下である、冷凍菓子の融解を遅延させる方法
(a)以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が50質量%以上100質量%以下
【請求項6】
冷凍菓子に、以下の成分(a)及びグァーガムを含む冷凍菓子用含水クリームを配合することを含む、冷凍菓子の食感を改良する方法であって、
前記冷凍菓子用含水クリーム中の前記成分(a)の含有量が0.1質量%以上4質量%以下であり、
前記冷凍菓子用含水クリーム中の前記グァーガムの含有量が0.01質量%以上1質量%以下である、冷凍菓子の食感を改良する方法
(a)以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が50質量%以上100質量%以下
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍菓子用組成物、冷凍菓子用含水クリーム、冷凍菓子、冷凍菓子の融解を遅延させる方法および、冷凍菓子の食感を改良する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ローカストビーンガムは、地中海沿岸、スペイン地方の常緑樹の種子から得られる増粘安定剤で、口溶けがよく、溶けにくく、良好な保形性を保つことができることから、アイスクリーム等の冷凍菓子に広く用いられている。
【0003】
特許文献1には、ローカストビーンガム及びタマリンド種子多糖類を含有することを特徴とするヒートショック耐性が向上した冷菓が開示されている。かかる冷菓は常温で一定時間放置しても冷菓の溶融が見られず、保形性が向上するとされている。
【0004】
近年、ローカストビーンガムは、原料種子の収穫量減少等により世界的に価格高騰が続いており、在庫に余裕が無い状況が続いている。そのため、ローカストビーンガムを用いなくても、口溶けがよく、溶けにくく、良好な保形性を有する冷凍菓子用素材が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-253126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況下、ローカストビーンガムを用いなくても、融解が遅延される冷凍菓子を提供できることが望ましく、また、好ましい食感となる冷凍菓子を提供できることがさらに望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下に示す冷凍菓子用組成物、冷凍菓子用含水クリーム、冷凍菓子、冷凍菓子の融解を遅延させる方法および、冷凍菓子の食感を改良する方法にかかるものである。
[1]
以下の成分(a)及びグァーガムを含む冷凍菓子用組成物。
(a)以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が50質量%以上100質量%以下
[2]
更に、タマリンドシードガム及びカラギーナンを含む、[1]に記載の冷凍菓子用組成物。
[3]
前記冷凍菓子用組成物中の前記成分(a)100質量部に対する前記グァーガムの含有量は、2質量部以上100質量部以下である、[1]または[2]に記載の冷凍菓子用組成物。
[4]
以下の成分(a)及びグァーガムを含む冷凍菓子用含水クリーム。
(a)以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が50質量%以上100質量%以下
[5]
前記冷凍菓子用含水クリーム中に、前記成分(a)を0.1質量%以上1質量%以下含む、[4]に記載の冷凍菓子用含水クリーム。
[6]
前記冷凍菓子用含水クリーム中に、前記グァーガムを0.01質量%以上0.7質量%以下含む、[4]または[5]に記載の冷凍菓子用含水クリーム。
[7]
[4]から[6]のいずれか1項に記載の冷凍菓子用含水クリームを含む、冷凍菓子。
[8]
冷凍菓子に、以下の成分(a)及びグァーガムを配合することを含む、冷凍菓子の融解を遅延させる方法。
(a)以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が50質量%以上100質量%以下
[9]
冷凍菓子に、以下の成分(a)及びグァーガムを配合することを含む、冷凍菓子の食感を改良する方法。
(a)以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が50質量%以上100質量%以下
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、前記成分(a)及びグァーガムを配合することで、冷凍菓子の融解を遅延させることができる。また、本発明の好ましい形態によれば、食感が改良された冷凍菓子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の冷凍菓子用組成物、冷凍菓子用含水クリーム、冷凍菓子、冷凍菓子の融解を遅延させる方法および、冷凍菓子の食感を改良する方法の具体的な実施の形態を以下に説明する。
なお、本明細書において数値範囲の上限値及び下限値を示したときは、上限値及び下限値を適宜組み合わせることができ、それにより得られた数値範囲も開示しているものとする。
【0010】
1.冷凍菓子用組成物
本発明にかかる冷凍菓子用組成物は、以下の成分(a)及びグァーガムを含むことを特徴とする。
(a)以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が50質量%以上100質量%以下
本発明にかかる冷凍菓子用組成物は、前記成分(a)及びグァーガムを含むことで、冷凍菓子に配合したときに、常温での融解を遅延させることができる。また、冷凍菓子の食感を改良することができる。以下、各成分について説明する。
【0011】
<成分(a)>
本発明の冷凍菓子用組成物に用いられる成分(a)は、条件(1)~(4)を満たす粉粒状物である。
条件(1)に関し、冷凍菓子用組成物は、冷凍菓子の融解を遅延させる観点から、成分(a)全体に対して澱粉を75質量%以上含み、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上含む。
また、成分(a)中の澱粉の含有量の上限に制限はなく、成分(a)全体に対して100質量%以下であるが、食品の性状等に応じて99.5質量%以下、99質量%以下等としてもよい。
【0012】
成分(a)において、澱粉は、たとえば食品用の澱粉であり、各種由来のものを用いることができる。たとえば、澱粉として、タピオカ澱粉、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コメ澱粉、豆澱粉などの澱粉;およびこれらの澱粉を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉などから、一種以上を適宜選ぶことができる。冷凍菓子の融解を遅延させる観点から、澱粉は、好ましくはタピオカ澱粉、とうもろこし澱粉、コメ澱粉および豆澱粉から選ばれる一種または二種以上であり、より好ましくは、タピオカ澱粉およびとうもろこし澱粉から選ばれる一種または二種である。
同様の観点から、澱粉の由来原料は、好ましくはキャッサバ、とうもろこし、コメおよび豆からなる群から選ばれる一種または二種以上である。
【0013】
条件(2)に関し、成分(a)は、具体的には、低分子化澱粉と、他の澱粉とを含む。まず、低分子化澱粉について説明する。
低分子化澱粉の原料澱粉中のアミロース含量は、冷凍菓子の融解を遅延させる観点から、たとえば5質量%以上であり、好ましくは12質量%以上、より好ましくは22質量%以上、さらに好ましくは40質量%以上、さらにより好ましくは45質量%以上、よりいっそう好ましくは55質量%以上、さらにまた好ましくは65質量%以上である。なお、低分子化澱粉の原料澱粉中のアミロース含量の上限に制限はなく、100質量%以下であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0014】
低分子化澱粉の原料であるアミロース含量5質量%以上の澱粉として、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ等のとうもろこし澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ハイアミロース小麦澱粉、米澱粉、豆澱粉および、これらの原料を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉からなる群から選択される一種または二種以上を用いることができる。冷凍菓子の融解を遅延させる観点から、アミロース含量5質量%以上の澱粉は、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、タピオカ澱粉および、豆澱粉から選択される一種または二種以上であり、より好ましくはハイアミロースコーンスターチである。ハイアミロースコーンスターチとしては、たとえばアミロース含量40質量%以上のものが入手可能である。アミロース含量5質量%以上の澱粉は、より好ましくはアミロース含量が40質量%以上のコーンスターチである。
【0015】
成分(a)中の低分子化澱粉の含有量は、冷凍菓子の融解を遅延させる観点から、たとえば3質量%以上45質量%以下であり、好ましくは8質量%以上35質量%以下、より好ましくは13質量%以上25質量%以下である。
【0016】
低分子化澱粉のピーク分子量は、冷凍菓子の融解を遅延させる観点から、たとえば3×103以上5×104以下であり、好ましくは8×103以上3×104以下、より好ましくは8×103以上1.5×104以下である。なお、低分子化澱粉のピーク分子量の測定方法については、実施例の項に記載する。
【0017】
ここで、低分子化澱粉は、その製造安定性に優れる観点から、好ましくは、酸処理澱粉、酸化処理澱粉および酵素処理澱粉からなる群から選択される一種または二種以上であり、より好ましくは酸処理澱粉である。
【0018】
酸処理澱粉を得る際の酸処理の条件は問わないが、たとえば、以下のように処理することができる。
まず、原料であるアミロース含量5質量%以上の澱粉と水を反応装置に投入した後、さらに酸を投入する。あるいは水に無機酸をあらかじめ溶解させた酸水と原料の澱粉を反応装置に投入する。酸処理をより安定的におこなう観点からは、反応中の澱粉の全量が水相内に均質に分散した状態、またはスラリー化した状態にあることが望ましい。そのためには、酸処理をおこなう上での澱粉スラリーの濃度を、たとえば10質量%以上50質量%以下、好ましくは20質量%以上40質量%以下の範囲になるように調整する。スラリー濃度が高すぎると、スラリー粘度が上昇し、均一なスラリーの攪拌が難しくなる場合がある。
【0019】
酸処理に用いられる酸として、具体的には塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸が挙げられ、種類、純度などを問わず利用できる。
【0020】
酸処理反応条件については、たとえば酸処理時の無機酸濃度は、酸処理澱粉を安定的に得る観点から、0.05規定度(N)以上4N以下が好ましく、0.1N以上4N以下がより好ましく、0.2N以上3N以下がさらに好ましい。また、同様の観点から、反応温度は、30℃以上70℃以下が好ましく、35℃以上70℃以下がより好ましく、35℃以上65℃以下がさらに好ましく、反応時間は、同様の観点から、0.5時間以上120時間以下が好ましく、1時間以上72時間以下がより好ましく、1時間以上48時間以下がさらに好ましい。
【0021】
成分(a)中の低分子化澱粉以外の澱粉としては、たとえば前述した澱粉の中から選択して使用することができる。好ましくは、成分(a)中の低分子化澱粉以外の澱粉は、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、豆澱粉およびこれらの加工澱粉からなる群から選択される一種または二種以上である。
【0022】
条件(3)に関し、冷凍菓子の融解を遅延させる観点から、成分(a)の25℃における冷水膨潤度はたとえば5以上20以下であり、好ましくは6以上17以下であり、さらに好ましくは6.5以上15以下、さらに好ましくは6.5以上13以下、さらにより好ましくは6.5以上12以下である。
ここで、成分(a)の冷水膨潤度の測定方法については、実施例の項に記載する。
【0023】
条件(4)に関し、成分(a)中の目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量は、冷凍菓子の融解を遅延させる観点から、成分(a)全体に対してたとえば50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらにより好ましくは90質量%以上、よりいっそう好ましくは95質量%以上である。
同様の観点から、成分(a)中の目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量は、成分(a)全体に対して100質量%以下である。
これらの篩は、具体的にはJIS-Z8801-1規格の篩である。
【0024】
前記成分(a)中の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量は、冷凍菓子の融解を遅延させる観点から、成分(a)全体に対してたとえば50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上、よりいっそう好ましくは95質量%以上である。
同様の観点から、成分(a)中の目開き0.25mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量は、成分(a)全体に対して100質量%以下である。
これらの篩は、具体的にはJIS-Z8801-1規格の篩である。
【0025】
成分(a)は、たとえば、国際公開第2021/246477号公報に記載の方法を用いて得ることができる。
冷凍菓子用組成物中の成分(a)の含有量は、冷凍菓子の融解を遅延させる観点から、冷凍菓子用組成物全体に対して好ましくは0.1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下、さらに好ましくは1質量%以上10質量%以下、さらにより好ましくは2質量%以上8質量%以下である。
【0026】
冷凍菓子用含水クリーム中の成分(a)の含有量は、冷凍菓子の融解を遅延させる観点から、冷凍菓子用含水クリーム全体に対して好ましくは0.05質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以上8質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以上5質量%以下である。
【0027】
<グァーガム>
本発明の冷凍菓子用組成物に用いられるグァーガムは、マメ科のグァーの種子の胚乳部から得られる水溶性の多糖類であり、食品に一般に使用されているものであれば特に限定されない。
【0028】
本発明の冷凍菓子用組成物において、前記成分(a)及びグァーガムの配合比は特に限定されないが、冷凍菓子の融解を遅延させる観点から、前記成分(a)100質量部に対し、前記成グァーガムが2質量部以上100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは4質量部以上80質量部以下、さらに好ましくは7質量部以上60質量部以下、特に好ましくは10質量部以上40質量部以下である。
【0029】
本発明の冷凍菓子用組成物に占める前記成分(a)及びグァーガムの含有量の合計は、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、さらにより好ましく98質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0030】
本発明の冷凍菓子用組成物は、前記成分(a)及びグァーガムのほか、本発明の目的および効果を阻害しない範囲であれば、グァーガム以外の増粘多糖類、乳化剤、酸化防止剤、pH調整剤、糖類、甘味料、調味料、色素、香料などを含むことができる。
【0031】
グァーガム以外の増粘多糖類としては、例えば、キサンタンガム、カラギーナン(例えば、カッパカラギーナン、イオタカラギーナン、ラムダカラギーナンなど)、アルギン酸類(例えば、アルギン酸、アルギン酸塩など)、ジェランガム(例えば、脱アシルジェランガム、ネイティブジェランガムなど)、ペクチン(例えば、LMペクチン、HMペクチンなど)、ガラクトマンナン(例えば、タラガム、ローカストビーンガムなど)、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、サバクヨモギシードガム、グルコマンナン、ラムザンガム、ウェランガム、カードラン、プルラン、カラヤガム、トラガントガム、ガティガム、アラビアガム、カシアガム、マクロホモプシスガム、寒天、ゼラチン、デンプン、微結晶セルロース、微小繊維状セルロース、発酵セルロース、セルロース誘導体(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなど)、大豆多糖類、キチン、キトサンなどを挙げることができる。これらは1種で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、冷凍菓子の融解を遅延させる観点から、カラギーナン及びタマリンドシードガムが好ましく、カッパカラギーナン及びタマリンドシードガムがより好ましい。
【0032】
本発明の冷凍菓子用組成物が前記グァーガム以外の増粘多糖類を含有する場合、前記冷凍菓子用組成物に占める前記グァーガム以外の増粘多糖類の含有量は、0質量%超20質量%以下であることが好ましい。
【0033】
本発明の冷凍菓子用組成物は、前記成分(a)及びグァーガム、必要に応じて任意成分を適宜混合して調製することができる。本発明の冷凍菓子用食感改良剤は、冷凍菓子の他の原料に混合する前に調製してもよいし、別々に添加して、冷凍菓子の他の原料と一緒に混合してもよい。
【0034】
本発明の冷凍菓子用組成物を冷凍菓子に配合することにより、冷凍菓子の融解を遅延させることができる。特に、冷凍菓子に含まれる含水クリームに本発明の冷凍菓子用組成物を配合することにより、より効果的に融解を遅延させることができる。また、本発明の好ましい形態によれば、冷凍菓子の食感を改良することができ、濃厚感があり、口溶けがよく、氷晶感が抑えられた冷凍菓子を得ることができる。そのため、ローカストビーンガムを用いない冷凍菓子に本発明の冷凍菓子用組成物を用いることが好適である。
【0035】
本発明の冷凍菓子用組成物を配合する冷凍菓子としては、冷凍温度域(通常-60℃以上0℃未満)で保管され喫食される菓子類であれば特に限定されないが、含水クリームを含むものであることが好ましく、アイスクリーム類、氷菓や、アイスクリーム類を少なくとも一部に含む冷凍菓子、例えば、アイスケーキ、シューアイス、クッキーサンドアイス、アイスモナカ、アイス大福などが挙げられる。
【0036】
ここで「アイスクリーム類」とは、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、又は主要原料としたものを凍結させたものであつて、乳固形分3.0質量%以上を含むもの(発酵乳を除く。)をいい、例えば、厚生労働省の「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(以下「乳等省令」という)で規定されるアイスクリーム(乳固形分15.0%以上、乳脂肪分8.0%以上)、アイスミルク(乳固形分10.0%以上、乳脂肪分3.0%以上)、ラクトアイス(乳固形分3.0%以上、乳脂肪分規定なし)等が挙げられる。
【0037】
2.冷凍菓子用含水クリーム
本発明にかかる冷凍菓子用含水クリームは、以下の成分(a)及びグァーガムを含むことを特徴とする。
(a)以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が50質量%以上100質量%以下
【0038】
成分(a)及びグァーガムについては、前記「1.冷凍菓子用組成物」で述べたとおりである。
【0039】
前記冷凍菓子用含水クリームは、食用油脂および水を含む乳化組成物であれば特に限定されるものではなく、水中油型、油中水型、複合乳化型の何れの乳化型であってもよいが、水中油型乳化組成物であることが好ましい。
【0040】
前記食用油脂は、食用に供される動植物性油脂であれば特に限定されない。
例えば、大豆油、菜種油、コーン油、綿実油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、落花生油、カポック油、月見草油、あまに油、えごま油、パーム油、パーム核油、ヤシ油、カカオ脂、サル脂等の植物油脂;魚油、豚脂、牛脂、乳脂、卵黄油等の動物油脂;中鎖脂肪酸トリグリセリド、およびこれらに、エステル交換、水素添加、分別からなる群から選ばれる1または2以上の加工がなされた加工油脂からなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
前記食用油脂は、冷凍菓子の種類および目的に応じて適宜選択することができる。
【0041】
なお、前記食用油脂としては、食用油脂として配合するもの以外に、冷凍菓子用含水クリームの原料に含まれる油脂も含むこととする。例えば、原料に乳または乳製品を含む場合、これらに含まれる油脂(乳脂)も前記食用油脂に含むこととする。
ここで、「乳」とは、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、生水牛乳、成分調整牛乳、低脂肪牛乳、無脂肪牛乳及び加工乳をいう。また「乳製品」とは、クリーム、バター、バターオイル、チーズ、濃縮ホエイ、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖練乳、無糖脱脂練乳、加糖練乳、加糖脱脂練乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、調製液状乳、発酵乳、乳酸菌飲料及び乳飲料をいう。
また、冷凍菓子用含水クリームの原料に、卵黄、植物性ミルクなど油脂が含まれているものを含む場合は、これらに含まれる油脂も前記食用油脂に含むこととする。
【0042】
前記冷凍菓子用含水クリームに占める前記食用油脂の含有量(油分)は、1質量%以上20質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以上18質量%以下、さらに好ましくは4質量%以上15質量%以下、さらにより好ましくは6質量%以上12質量%以下である。なお、冷凍菓子用含水クリームに含まれる食用油脂の含有量(油分)は、原料に含まれる油分と配合量から算出することができる。
【0043】
本発明の冷凍菓子用含水クリームは、前記成分(a)及びグァーガムを含むことにより、冷凍菓子の融解を遅延させることができる。特に、冷凍菓子に含まれる含水クリームに本発明の冷凍菓子用組成物を配合することにより、より効果的に融解を遅延させることができる。また、本発明の好ましい形態によれば、冷凍菓子の食感を改良することができ、濃厚感があり、口溶けがよく、氷晶感が抑えられた冷凍菓子を得ることができる。
【0044】
冷凍菓子用含水クリームに含まれる水は、食品の製造に用いられるものであれば特に制限されなく、天然水や水道水が挙げられる。また、水として、乳および乳製品に含まれる動物性ミルク;豆乳およびアーモンドミルクなどの植物性ミルク;果汁、野菜ジュースなどの植物搾汁などの水含有液体を使用してもよい。
【0045】
冷凍菓子用含水クリームに占める前記水の含有量(水分)は、30質量%以上90質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以上85質量%以下、さらに好ましくは50質量%以上80質量%以下である。水含有液体を使用する場合は、前記液体中に含まれる水分量を加えた水分の合計量が、前記含有量を満たしていればよい。
【0046】
冷凍菓子用含水クリームは、その他必要に応じて、一般に冷凍菓子用含水クリームに用いられる添加成分、例えば、乳化剤、酸化防止剤、糖類、甘味料、調味料、色素、香料、pH調整剤、具材(例えば、果肉、ナッツ類、クッキー、チョコレートなど)、副材料(例えば、果汁、ココアパウダー、抹茶パウダー)などを含んでいてもよい。
【0047】
冷凍菓子用含水クリームに占める前記成分(a)の含有量は特に限定されないが、前記成分(a)の含有量が、0.1質量%以上4質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.2質量%以上3質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以上2質量%以下、さらにより好ましくは0.4質量%以上1質量%以下である。
また、冷凍菓子用含水クリームに占める前記グァーガムの含有量は特に限定されないが、前記グァーガムの含有量が0.01質量%以上1質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.02質量%以上0.7質量%以下、さらに好ましくは0.03質量%以上0.5質量%以下、さらにより好ましくは0.05質量%以上0.3質量%以下である。
前記成分(a)及びグァーガムの配合比は特に限定されないが、前記成分(a)100質量部に対し、前記グァーガムが1質量部以上100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは4質量以上70質量部以下、さらに好ましくは8質量部以上50質量部以下である。
冷凍菓子用含水クリームに占める前記成分(a)及びグァーガムの含有量の合計は、0.11質量%以上5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.22質量%以上3.7質量%以下、さらに好ましくは0.33質量%以上2.5質量%以下、さらにより好ましくは0.45質量%以上1.3質量%以下である。
前記成分(a)及びグァーガムを上記の範囲で配合することにより、冷凍菓子用含水クリームの融解を遅延させることができる。また、本発明の好ましい形態によれば、食感を改良することができ、濃厚感があり、口溶けがよく、氷晶感が抑えられた冷凍菓子用含水クリームを得ることができる。
【0048】
<冷凍菓子用含水クリームの製造方法>
本発明にかかる冷凍菓子用含水クリームは、例えば、以下の工程にしたがって製造することができる。
(i)攪拌混合工程
まず、前記成分(a)及びグァーガム、食用油脂、水および任意の添加成分を攪拌混合し、均一に分散させて乳化組成物を得る。
攪拌混合は、ミキサーやミキシングタンクなどの装置内で行ってもよい。
任意の添加成分として、香料を用いる場合は、加熱により揮発したり変質したりする場合があるため、均質化処理および殺菌処理を施した後に添加することが好ましい。
前記成分(a)及びグァーガムの添加順序は特に限定されないが、粉体成分と混ぜ合わせてから、液体成分と混ぜ合わせると、より均一に配合することができ、滑らかな食感の冷凍菓子用含水クリームを得ることができるため好ましい。なお、前記成分(a)及びグァーガムは予め混ぜ合わせてから用いてもよいし、別々に添加して他の成分と一緒に混ぜ合わせてもよい。
【0049】
(ii)均質化処理および殺菌処理工程
次に、工程(i)で得られた乳化組成物に対し、均質化処理および殺菌処理を施す。均質化処理と殺菌処理は、どちらを先に行ってもよく、均質化処理を行った後、殺菌処理を行ってもよいし、殺菌処理を行った後、均質化処理を行ってもよい。また、均質化処理を行った後、殺菌処理を施し、さらにその後、均質化処理を行ってもよい。
均質化処理は、食用油脂を粉砕して均質化するために行う処理であり、ホモジナイザー、ホモミクサー、コロイドミル等の公知の装置を用いて行うことができる。
殺菌処理は、低温保持殺菌(63~65℃で30分)、高温保持殺菌(75℃以上で15分以上)、高温短時間殺菌(72℃以上で15秒以上)または超高温殺菌(120~150℃で1~3秒)などの公知の連続加熱方法や、回分式または連続式の間接加熱方法などを採用して行うことができる。
【0050】
(iii)冷却工程
続いて、工程(ii)で得られた乳化組成物を冷却する。冷却温度は特に限定されないが、通常0℃以上10℃以下であり、好ましくは0℃以上8℃以下、より好ましくは0℃以上5℃以下である。この工程により乳化組成物の変質や乳化破壊を防ぐことができる。
冷却後、乳化組成物に香料を添加してもよい。また、必要に応じてエージングしてもよい。エージングすることにより、乳化組成物中の脂肪を固形化し、粘度を上昇させて、組織の滑らかさや保形性を向上させることができる。エージングの時間は特に限定されないが、通常3時間以上24時間以下であり、好ましくは6時間以上18時間以下、より好ましくは12時間以上16時間以下である。
【0051】
(iv)フリージング工程
次に、工程(iii)で得られた乳化組成物をフリージングする。フリージングは、乳化組成物をフリーザー内で急激に冷却して水分を凍結させながら、所定のオーバーラン(通常60~100%)になるように適当量の空気を混入させて行うことが好ましい。冷却温度は、乳化組成物の組成によって適宜選択すればよいが、通常-10℃以上0℃以下であり、好ましくはー8℃以上-1℃以下、より好ましくは-6℃以上-3℃以下である。
【0052】
フリージング後、得られた乳化組成物は、必要に応じて容器に充填され、冷凍温度域(例えば、-60℃以上-18℃以下)で保管される。
上記のようにして、冷凍菓子用含水クリームを製造することができる。
なお、上記の製造方法は一例であり、当業者であれば、冷凍菓子の種類および目的に応じて適宜変更することができる。
【0053】
3.冷凍菓子
本発明にかかる冷凍菓子は、冷凍温度域で保管され喫食される菓子類であり、前記冷凍菓子用含水クリームを少なくとも一部に含むものであれば特に限定されない。冷凍温度域は、通常-60℃以上0℃未満であり、好ましくは-50℃以上-5℃以下、より好ましくは-40℃以上-10℃以下である。また、冷凍温度域は、例えば、-60℃以上-18℃以下であってもよい。
本発明にかかる冷凍菓子としては、前記「1.冷凍菓子用組成物」で述べたようなアイスクリーム類(例えば、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイスなど)、氷菓などの冷凍菓子用含水クリームそれ自体であってもよく、アイスクリーム類を少なくとも一部に含む冷凍菓子、例えば、アイスケーキ、シューアイス、クッキーサンドアイス、アイスモナカ、アイス大福などであってもよい。
本発明にかかる冷凍菓子は、前記冷凍菓子用含水クリームを含むことにより、冷凍菓子の融解を遅延させることができる。特に、冷凍菓子に含まれる含水クリームに本発明の冷凍菓子用組成物を配合することにより、より効果的に融解を遅延させることができる。また、本発明の好ましい形態によれば、冷凍菓子の食感を改良することができ、濃厚感があり、口溶けがよく、氷晶感が抑えられた冷凍菓子を得ることができる。
【0054】
4.冷凍菓子の融解を遅延させる方法
本発明はまた、冷凍菓子に、以下の成分(a)及びグァーガムを配合することにより、冷凍菓子の融解を遅延させる方法を提供する。
(a)以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が50質量%以上100質量%以下
【0055】
前記成分(a)及びグァーガムについては、前記「1.冷凍菓子用組成物」で述べたとおりである。前記成分(a)及びグァーガムは、冷凍菓子、特に冷凍菓子に含まれる含水クリームに配合することが好ましく、それにより冷凍菓子の融解を遅延させることができる。前記成分(a)及びグァーガムの配合量は、前記「2.冷凍菓子用含水クリーム」において述べたとおりである。ここで冷凍菓子の融解を遅延させるとは、例えば10℃~40℃での冷凍菓子の融解が遅くなることを意味している。
【0056】
5.冷凍菓子の食感を改良する方法
本発明はさらに、冷凍菓子に、以下の成分(a)及びグァーガムを配合することにより、冷凍菓子の食感を改良する方法を提供する。
(a)以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が50質量%以上100質量%以下
【0057】
前記成分(a)及びグァーガムについては、前記「1.冷凍菓子用組成物剤」で述べたとおりである。前記成分(a)及びグァーガムは、冷凍菓子、特に冷凍菓子に含まれる含水クリームに配合することが好ましい。前記成分(a)およびグァーガムの配合量は、前記「2.冷凍菓子用含水クリーム」において述べたとおりである。
前記成分(a)及びグァーガムを配合することにより、冷凍菓子の食感を改良することができる。具体的には、濃厚感があり、口溶けがよく、氷晶感が抑えられた冷凍菓子を得ることができる。
【実施例
【0058】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら制限されるものではない。
【0059】
(原料)
冷凍菓子用組成物および冷凍菓子の調製に際し、以下のものを使用した。
(冷凍菓子用組成物の原料)
粉粒状物(後述する「粉粒状物の製造」により得られた粉粒状物)
グァーガム(プロコールU、住友ファーマフード&ケミカル株式会社製)
タマリンドシードガム(グリロイド2A、住友ファーマフード&ケミカル株式会社製)
カッパカラギーナン(GENULACTA carrageenan type L-100-J、CP Kelco社製)
ローカストビーンガム(GRINDSTED LBG047、DuPont Nutrition Biosciences ApS社製)
【0060】
(冷凍菓子の原料)
乳化剤製剤(エマルジーMIF-20、理研ビタミン株式会社製)
脱脂粉乳(スキムミルク、森永乳業株式会社製)
無塩バター(雪印メグミルク株式会社製)
グラニュー糖(ばら印のグラニュ糖、大日本明治製糖株式会社製)
酵素糖化水飴(マルトフレッシュKM-55、群栄化学工業株式会社製)
精製パーム油(株式会社J-オイルミルズ製)
油溶性香料(市販のミルク香料)
水溶性香料(市販のバニラ香料)
【0061】
(粉粒状物の製造)
本例では以下の手順で粉粒状物を製造した。
【0062】
(低分子化澱粉の製造)
粉粒状物の原料となる低分子化澱粉として酸処理ハイアミロースコーンスターチを製造した。
ハイアミロースコーンスターチ(株式会社J-オイルミルズ製、HS-7、アミロース含量70質量%)を水に懸濁して35.6%(w/w)スラリーを調製し、50℃に加温した。そこへ、攪拌しながら4.25Nに調製した塩酸水溶液をスラリー質量比で1/9倍量加え反応を開始した。16時間反応後、3%(w/w)NaOHで中和し、水洗、脱水、乾燥し、酸処理ハイアミロースコーンスターチを得た。
得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチのピーク分子量を後述の方法で測定したところ、ピーク分子量は1.2×10であった。
【0063】
(ピーク分子量の測定方法)
ピーク分子量の測定は、東ソー株式会社製HPLCユニットを使用しておこなった(ポンプDP-8020、RI検出器RS-8021、脱気装置SD-8022)。
(1)試料を粉砕し、JIS-Z8801-1規格の篩で、目開き0.15mm篩下の画分を回収した。この回収画分を移動相に1mg/mLとなるように懸濁し、懸濁液を100℃3分間加熱して完全に溶解した。0.45μmろ過フィルター(ADVANTEC社製、DISMIC-25HP PTFE 0.45μm)を用いてろ過を行い、ろ液を分析試料とした。
(2)以下の分析条件で分子量を測定した。
カラム:TSKgel α-M(7.8mmφ、30cm)(東ソー株式会社製)2本
流量:0.5mL/分
移動相:5mM 硝酸ナトリウム含有90%(v/v)ジメチルスルホキシド溶液
カラム温度:40℃
分析量:0.2mL
(3)検出器データを、ソフトウェア(マルチステーションGPC-8020modelIIデータ収集ver5.70、東ソー株式会社製)にて収集し、分子量ピークを計算した。
検量線には、分子量既知のプルラン(Shodex Standard P-82、昭和電工株式会社製)を使用した。
【0064】
(冷水膨潤度の測定方法)
(1)試料を、水分計(研精工業株式会社、型番MX-50)を用いて、125℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から乾燥物質量を算出した。
(2)この乾燥物質量換算で試料1gを25℃の水50mLに分散した状態にし、30分間25℃の恒温槽の中でゆるやかに撹拌した後、3000rpmで10分間遠心分離(遠心分離機:日立工機社製、日立卓上遠心機CT6E型;ローター:T4SS型スイングローター;アダプター:50TC×2Sアダプター)し、沈殿層と上澄層に分けた。
(3)上澄層を取り除き、沈殿層質量を測定し、これをB(g)とした。
(4)沈殿層を乾固(105℃、恒量)したときの質量をC(g)とした。
(5)BをCで割った値を冷水膨潤度とした。
【0065】
(エクストルーダー処理と篩処理)
コーンスターチ(コーンスターチY、株式会社J-オイルミルズ製)79質量%、上述の手順で得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチ20質量%、および、炭酸カルシウム1質量%を充分に均一になるまで袋内で混合した。2軸エクストルーダー(幸和工業株式会社製KEI-45)を用いて、混合物を加圧加熱処理した。処理条件は、以下の通りである。
原料供給:450g/分
加水:17質量%
バレル温度:原料入口から出口に向かって50℃、70℃および100℃
出口温度:100~110℃
スクリューの回転数250rpm
このようにしてエクストルーダー処理により得られた加熱糊化物を110℃にて乾燥し、水分含量を10質量%に調整した。
次いで、乾燥した加熱糊化物を、卓上カッター粉砕機で粉砕した後、JIS-Z8801-1規格の篩で篩分けした。篩分けした加熱糊化物を、所定の配合割合で混合して粉粒状物を調製した。前述の方法で測定した粉粒状物の25℃における冷水膨潤度は7.3であった。また、粉粒状物の粒径分布を以下に示す。以下の篩は、いずれも、JIS-Z8801-1規格の篩である。
3.35mm篩下、0.25mm篩上:0質量%
0.25mm篩下、0.15mm篩上:36.4質量%
0.15mm篩下、0.075mm篩上:48.0質量%
0.075mm篩下、0.038mm篩上:11.4質量%
0.038mm篩下:4.2質量%
【0066】
(冷凍菓子用組成物の配合と製造)
冷凍菓子用組成物の配合を表1に示した。
【0067】
【表1】
【0068】
(冷凍菓子用組成物の製造)
表1の配合にしたがい、各原料を混合し、冷凍菓子用組成物を得た。
【0069】
(冷凍菓子の配合と製造)
表2の配合にしたがい、冷凍菓子を製造した。
【0070】
【表2】
【0071】
(冷凍菓子の製造)
1)脱脂粉乳と15.035質量部のグラニュー糖をポリ袋に量り取り、混合し、粉体混合物1を得た。
2)0.465質量部のグラニュー糖と冷凍菓子用組成物、乳化剤製剤をポリ袋に量り取り、混合し、粉体混合物2を得た。
3)マントルヒーターに入ったステンレスビーカーに46.72質量部の20℃の水を入れ、ホモミクサー(TKホモミキサーMARKII、特殊機化工業株式会社製)を用いて5000rpmで攪拌しながら、粉体混合物1と粉体混合物2を入れ、更に酵素糖化水飴を入れて5分攪拌混合した。
4)ホモミクサーの回転数を9000rpmに上げて、マントルヒーターで加熱し、50℃まで昇温したら、油溶性香料と50℃に加熱した無塩バター、精製パーム油を加え、更に加熱を続けた。
5)60℃まで昇温したら、そのまま5分保持した。
6)5分保持した後、マントルヒーターを用いて85℃まで加熱した。
7)85℃に到達したら水が58.4質量部含まれるように注水して調整し、液状混合物を得た。
8)1段目を10MPa、2段目を5MPaに設定した高圧ホモジナイザー(APV2000、APV社製)にて、液状混合物を均質化処理し乳化物を得た。
9)均質化処理した乳化物を氷水に漬けて、撹拌機(MAZELA Z、東京理化器械株式会社製)にて250rpmで攪拌しながら5℃まで冷却した。
10)5℃に冷却した乳化物を5℃に設定した恒温槽に入れて16時間保管した。
11)恒温槽から乳化物を取り出し、水溶性香料を添加した攪拌した。
12)水溶性香料を添加した乳化物をアイスクリームフリーザー(型番TBF-5LS、富繁産業株式会社製)に入れて、-5℃になるまで冷却した。
13)-5℃に冷却した乳化物をアイスカップ(PC-30F、東罐興業株式会社製)へ充填してから、-40℃に設定したショックフリーザー(HBC-6B3、ホシザキ株式会社製)に入れて60分急速冷却し、冷凍菓子を得た。得られた冷凍菓子は評価するまで-40℃に設定した冷凍庫(MDF-DU300H-PJ、パナソニック株式会社製)に保管した。
【0072】
(冷凍菓子の評価)
冷凍菓子は、以下に記す方法にて融解性と食感について評価した。
【0073】
(冷凍菓子の融解性)
冷凍庫から取り出した冷凍菓子を直径4cm、高さ2.2cmの円柱状に切り出し質量を測定した上で、目開き2.1mmのスチール製の網の上に置いた。網の上に置いた冷凍菓子を、-40℃に設定したショックフリーザーに入れて1時間放置した。ショックフリーザーから網ごと冷凍菓子を取り出し、予め質量を測定したビーカーの上に置き、25℃で60分放置し、網の下に冷凍菓子からの融け落ちが確認できた時間(融け落ち時間)と、25℃に放置してから20分、40分、および60分後に網から融け落ちた質量を、網の上に置いた時点での冷凍菓子の質量で割った値(融け落ち量)を計測した。なお、融け落ち時間は20分以上を、融け落ち量は20分で0質量%、40分で10質量%以下、融60分で30質量%以下をそれぞれ合格とした。評価結果を表3に示す。
【0074】
(冷凍菓子の食感)
冷凍庫から取り出した冷凍菓子を専門パネラー8人により喫食し、対照例1-1(以降、対照とも記載)の喫食時の評価と比較の上、下記の評価基準に基づき、濃厚感、口溶け、および氷晶感の食感を合議の上、評価した。評価結果を表3に示す。
【0075】
〔濃厚感〕
口内で粘っこく流れがよどむ際に感じられる濃厚感の強さを評価した。
5点 対照よりも濃厚感が非常に強い。
4点 対照よりも濃厚感がある。
3点 対照と同程度の濃厚感がある。
2点 対照よりも濃厚感があまりない。
1点 対照よりも濃厚感がない。
【0076】
〔口溶け〕
咀嚼により冷凍菓子が液体へ変化したと感じる早さを口溶けとして、早く液体へ変化したと感じるほど口溶けがよいと評価した。
5点 対照よりも口溶けが非常によい。
4点 対照よりも口溶けがよい。
3点 対照と同程度の口溶けである。
2点 対照よりも口溶けがあまりよくない。
1点 対照よりも口溶けがよくない。
【0077】
〔氷晶感〕
咀嚼時に口内でシャリシャリと感じられる氷晶感を評価した。
5点 氷晶感がない。
4点 対照よりも氷晶感が弱い。
3点 対照と同程度の氷晶感である。
2点 対照よりも氷晶感がある。
1点 対照よりも非常に氷晶感がある。
【0078】
【表3】
【0079】
表3に示すように実施例1-1~4-1の冷凍菓子は、比較例1-1~2-1よりも融け落ち時間が長く、また、20分~60分後の融け落ち量が少なく合格基準を満たしていた。その中でも実施例1-1と実施例3-1は常温保管時の保形性向上効果があるローカストビーンガムを用いた対照例1-1よりも融け落ち時間が長かった。特に実施例1-1は20~60分までの融け落ち量も対照例1-1よりも少なかった。これらのことから粉粒状物とグァーガムを含む冷凍菓子用組成物を用いた冷凍菓子は、融解が遅延することが明らかとなった。
【0080】
食感についても、表3に示すように実施例1-1~4-1の冷凍菓子の濃厚感、口溶けのいずれにおいても、比較例1-1~2-1、対照例1-1よりも優れていた。また、氷晶感についても実施例1-1および3-1が比較例1-1より優れていた。これらのことから粉粒状物とグァーガムを含む冷凍菓子用組成物を用いた冷凍菓子は、冷凍菓子の食感を改良することが明らかとなった。

【要約】
冷凍菓子の物性を改良する冷凍菓子用組成物を提供する。また、冷凍菓子の食感を改善する冷凍菓子用組成物を提供する。
以下の成分(a)及びグァーガムを含む冷凍菓子用組成物である。
(a)以下の条件(1)~(4)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
(3)25℃における冷水膨潤度が5以上20以下
(4)目開き3.35mmの篩の篩下かつ目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量が50質量%以上100質量%以下