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特許7527579アスパラギン酸組成物、ポリスクシンイミド組成物、ポリアスパラギン酸組成物、及び架橋ポリアスパラギン酸組成物
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  • 特許-アスパラギン酸組成物、ポリスクシンイミド組成物、ポリアスパラギン酸組成物、及び架橋ポリアスパラギン酸組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】アスパラギン酸組成物、ポリスクシンイミド組成物、ポリアスパラギン酸組成物、及び架橋ポリアスパラギン酸組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 73/10 20060101AFI20240729BHJP
   C08G 69/10 20060101ALI20240729BHJP
   C08G 69/48 20060101ALI20240729BHJP
   C08G 59/42 20060101ALI20240729BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20240729BHJP
   C08J 3/24 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
C08G73/10
C08G69/10
C08G69/48
C08G59/42
C08J3/12 CFG
C08J3/24 CFG
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023531456
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2022016512
(87)【国際公開番号】W WO2023276396
(87)【国際公開日】2023-01-05
【審査請求日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2021107638
(32)【優先日】2021-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、環境省、脱炭素社会を支えるプラスティック等資源循環システム構築実証事業(植物由来で生分解性を備えた高吸水性ポリマーの製造実証事業)委託事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】512008233
【氏名又は名称】GreenEarthInstitute株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100215935
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 茂輝
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【弁理士】
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】近藤 明宏
(72)【発明者】
【氏名】岡 康孝
(72)【発明者】
【氏名】笹本 茜
(72)【発明者】
【氏名】荒井 達彦
(72)【発明者】
【氏名】中屋敷 徹
(72)【発明者】
【氏名】三浦 里美
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-316196(JP,A)
【文献】特開昭63-233958(JP,A)
【文献】特開2000-166591(JP,A)
【文献】特開平10-324750(JP,A)
【文献】特開平08-143515(JP,A)
【文献】特開2018-150226(JP,A)
【文献】特表2001-510506(JP,A)
【文献】特開平10-052293(JP,A)
【文献】特開平09-322789(JP,A)
【文献】特開平09-168394(JP,A)
【文献】特開平01-093564(JP,A)
【文献】特開2001-340098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 73/10
C08G 69/10
C08G 69/48
C08G 59/42
C08J 3/12
C08J 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスパラギン酸と、不純物と、を含み、
前記不純物が、アスパラギン酸以外のアミノ酸、有機酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含み、
前記不純物の含有量が0.10質量%以上1.1質量%以下であり、
前記アミノ酸の含有量が、0.10質量%以上1.0質量%以下である、
ポリスクシンイミドを製造するためのスパラギン酸組成物。
【請求項2】
前記アスパラギン酸が、微生物により生産されたものである、請求項1に記載のアスパラギン酸組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のアスパラギン酸組成物を用いて、前記アスパラギン酸の重合反応を行うことを含む、ポリスクシンイミドの製造方法。
【請求項4】
前記重合反応が混錬装置内で行われる、請求項3に記載のポリスクシンイミドの製造方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のアスパラギン酸組成物の重合反応物である、ポリスクシンイミド組成物。
【請求項6】
請求項5に記載のポリスクシンイミド組成物の加水分解物である、ポリアスパラギン酸組成物。
【請求項7】
請求項6に記載のポリアスパラギン酸組成物の架橋反応物である、架橋ポリアスパラギン酸組成物。
【請求項8】
請求項5に記載のポリスクシンイミド組成物の架橋反応物の加水分解物である、架橋ポリアスパラギン酸組成物。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の架橋ポリアスパラギン酸組成物の粒子を含み、前記粒子の表面が無機粒子で修飾されている、表面修飾架橋ポリアスパラギン酸組成物。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の架橋ポリアスパラギン酸組成物、又は請求項9の表面修飾架橋ポリアスパラギン酸組成物を含む、架橋ポリアスパラギン酸含有製品。
【請求項11】
前記架橋ポリアスパラギン酸含有製品が、界面活性剤、増粘剤、減粘剤、膨潤剤、吸水剤、ゲル化剤、結合剤、成膜剤、凝集剤、接着剤、表面改質剤、又は徐放剤である、請求項10に記載の架橋ポリアスパラギン酸含有製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスパラギン酸組成物、並びにポリアスパラギン酸組成物、架橋ポリアスパラギン酸組成物、表面修飾架橋ポリアスパラギン酸組成物、及びそれらの製造方法に関する。また、ポリスクシンイミド組成物、架橋ポリスクシンイミド組成物、及びそれらの製造方法に関する。さらに、架橋ポリアスパラギン酸含有製品、及び架橋ポリアスパラギン酸含有製品の製造方法に関する。
本願は、2021年6月29日に、日本に出願された特願2021-107638号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
ポリアスパラギン酸は、生分解性を有するポリカルボン酸であり、化学構造がポリアクリル酸に類似している。そのため、ポリアスパラギン酸は、ポリアクリル酸を代替する保水性の高い生分解性素材として期待されている。ポリアスパラギン酸を得る方法としては、アスパラギン酸の脱水縮合反応によりポリスクシンイミドを得た後、ポリスクシンイミドをアルカリ加水分解する方法等が知られている(特許文献1)。
【0003】
ポリスクシンイミドの原料となるアスパラギン酸は、工業的には、石油由来のフマル酸とアンモニアを原料として、アスパルターゼを用いて合成される。しかしながら、石油資源の枯渇等の問題から、微生物を利用したバイオプロセスによりアスパラギン酸を製造する方法が検討されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平9-176312号公報
【文献】国際公開第2020/208842号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、アスパラギン酸からポリアスパラギン酸を得る工程では、中間体であるポリスクシンイミドの重合反応速度が遅いと認識していた。アスパラギン酸からポリアスパラギン酸を得る工程を効率化するためには、中間体であるポリスクシンイミドの重合反応速度を速くし、高分子量のポリマーとすることが望ましい。また、アスパラギン酸を用いて、保水性の高い架橋ポリアスパラギン酸を効率的に得られることが望ましい。
【0006】
そこで、本発明は、架橋ポリアスパラギン酸組成物の効率的な製造に使用可能なアスパラギン酸組成物を提供することを課題とする。また、前記アスパラギン酸組成物から得られる、高分子量のポリスクシンイミドを含有するポリスクシンイミド組成物、及び、保水性の高い架橋ポリアスパラギン酸組成物等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]アスパラギン酸と、不純物と、を含み、前記不純物が、アスパラギン酸以外のアミノ酸、有機酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含み、前記不純物の含有量が0.02質量%以上1.1質量%以下である、アスパラギン酸組成物。
[2]前記不純物が前記アスパラギン酸以外のアミノ酸を含む、[1]に記載のアスパラギン酸組成物。
[3]前記アスパラギン酸が、微生物により生産されたものである、[1]又は[2]に記載のアスパラギン酸組成物。
[4][1]~[3]のいずれか1つに記載のアスパラギン酸組成物を用いて、前記アスパラギン酸の重合反応を行うことを含む、ポリスクシンイミドの製造方法。
[5]前記重合反応が混錬装置内で行われる、[4]に記載のポリスクシンイミドの製造方法。
[6]ポリスクシンイミドと、不純物と、を含み、前記不純物が、アスパラギン酸以外のアミノ酸、有機酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含み、前記不純物の含有量が、0.001質量%以上1.1質量%以下である、ポリスクシンイミド組成物。
[7]前記不純物が前記アスパラギン酸以外のアミノ酸を含む、[6]に記載のポリスクシンイミド組成物。
[8][1]~[3]のいずれか1つに記載のアスパラギン酸組成物の重合反応物である、ポリスクシンイミド組成物。
[9][6]~[8]のいずれか1つに記載のポリスクシンイミド組成物の加水分解物である、ポリアスパラギン酸組成物。
[10]ポリアスパラギン酸と、不純物と、を含み、前記不純物が、アスパラギン酸以外のアミノ酸、及び有機酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含み、前記不純物の含有量が、0.001質量%以上1.1質量%以下である、ポリアスパラギン酸組成物。
[11]前記不純物が前記アスパラギン酸以外のアミノ酸又はその塩を含む、[10]に記載のポリアスパラギン酸組成物。
[12][9]~[11]のいずれか1つに記載のポリアスパラギン酸組成物の架橋反応物である、架橋ポリアスパラギン酸組成物。
[13][6]~[8]のいずれか1つに記載のポリスクシンイミド組成物の架橋反応物である、架橋ポリスクシンイミド組成物。
[14][13]に記載の架橋ポリスクシンイミド組成物の加水分解物である、架橋ポリアスパラギン酸組成物。
[15][12]又は[14]に記載の架橋ポリアスパラギン酸組成物の粒子を含み、前記粒子の表面が無機粒子で修飾されている、表面修飾架橋ポリアスパラギン酸組成物。
[16][12]又は[14]に記載の架橋ポリアスパラギン酸組成物、又は[15]に記載の表面修飾架橋ポリアスパラギン酸組成物を含む、架橋ポリアスパラギン酸含有製品。
[17]前記架橋ポリアスパラギン酸含有製品が、界面活性剤、増粘剤、減粘剤、膨潤剤、吸水剤、ゲル化剤、結合剤、成膜剤、凝集剤、接着剤、表面改質剤、又は徐放剤である、[15]に記載の架橋ポリアスパラギン酸含有製品。
[18][1]~[3]のいずれか1つに記載のアスパラギン酸組成物を用いて、前記アスパラギン酸の重合反応を行い、ポリスクシンイミドを含むポリスクシンイミド組成物を得る工程と、前記ポリスクシンイミド組成物を用いて、前記ポリスクシンイミドの加水分解反応を行い、ポリアスパラギン酸を含むポリアスパラギン酸組成物を得る工程と、を含む、ポリアスパラギン酸組成物の製造方法。
[19][18]に記載のポリアスパラギン酸組成物の製造方法により、ポリアスパラギン酸組成物を得る工程と、前記ポリアスパラギン酸組成物を用いて、前記ポリアスパラギン酸の架橋反応を行い、架橋ポリアスパラギン酸を含む架橋ポリアスパラギン酸組成物を得る工程と、を含む、架橋ポリアスパラギン酸組成物の製造方法。
[20][1]~[3]のいずれか1つに記載のアスパラギン酸組成物を用いて、前記アスパラギン酸の重合反応を行い、ポリスクシンイミドを含むポリスクシンイミド組成物を得る工程と、前記ポリスクシンイミド組成物を用いて、前記ポリスクシンイミドの架橋反応を行い、架橋ポリスクシンイミドを含む架橋ポリスクシンイミド組成物を得る工程と、前記架橋ポリスクシンイミド組成物を用いて、前記架橋ポリスクシンイミドの加水分解反応を行い、架橋ポリアスパラギン酸を含む架橋ポリアスパラギン酸組成物を得る工程と、を含む、架橋ポリアスパラギン酸組成物の製造方法。
[21][19]又は[20]に記載の架橋ポリアスパラギン酸組成物の製造方法により、架橋ポリアスパラギン酸組成物を得る工程と、前記架橋ポリアスパラギン酸組成物を用いて、架橋ポリアスパラギン酸含有製品を製造する工程と、を含む、架橋ポリアスパラギン酸含有製品の製造方法。
[22]前記架橋ポリアスパラギン酸含有製品が、界面活性剤、増粘剤、減粘剤、膨潤剤、吸水剤、ゲル化剤、結合剤、成膜剤、凝集剤、接着剤、表面改質剤、又は徐放剤である、[21]に記載の架橋ポリアスパラギン酸含有製品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アスパラギン酸組成物が、所定量のアミノ酸、有機酸等の不純物を含有することにより、当該アスパラギン酸組成物を用いて重合反応を行うことで、高分子量のポリスクシンイミドを含有するポリスクシンイミド組成物を得ることができる。また、前記ポリスクシンイミド組成物から、保水性の高い架橋ポリアスパラギン酸組成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】アスパラギン酸組成物の重合反応で生成されるポリスクシンイミドの重量平均分子量(Mw)を経時的に測定した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態のみに限定されるものではない。本明細書において、「~」は、「~」という記載の前の値以上、「~」という記載の後の値以下を意味する。
[アスパラギン酸組成物]
一態様において、本発明は、ポリスクシンイミドを製造するためのアスパラギン酸組成物を提供する。前記アスパラギン酸組成物は、アスパラギン酸と、不純物と、を含む。前記不純物は、アスパラギン酸以外のアミノ酸、有機酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む。前記アスパラギン酸組成物における前記不純物の含有量は、0.02質量%以上1.1質量%以下である。
【0011】
「アスパラギン酸組成物」とは、アスパラギン酸を主成分として含有する組成物をいう。アスパラギン酸組成物は、ポリスクシンイミドの製造に用いられる。アスパラギン酸組成物は、アスパラギン酸と不純物とを含む。
【0012】
<不純物>
アスパラギン酸組成物における「不純物」とは、アスパラギン酸組成物に含まれるアスパラギン酸以外の成分をいう。一実施形態において、不純物は、アスパラギン酸以外のアミノ酸、有機酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む。
【0013】
「アミノ酸」は、アミノ基及びカルボキシ基の両方を有する有機物である。アスパラギン酸組成物に不純物として含まれるアミノ酸は、アスパラギン酸以外のアミノ酸である。不純物として含まれるアミノ酸は、α-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、及びδ-アミノ酸のいずれであってもよい。アミノ酸は、L体であってもよく、D体であってもよく、これらの混合物であってもよい。一実施形態において、アミノ酸はL体である。不純物は、アスパラギン酸以外のアミノ酸を含むことが好ましい。
【0014】
不純物としてのアミノ酸としては、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリン等が挙げられる。中でも、不純物は、グルタミン酸、アラニン、及びバリンからなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、グルタミン酸及び/又はバリンを含むことがより好ましい。
【0015】
不純物としてのアミノ酸の含有量は、アスパラギン酸100質量部に対して、0質量部以上1.1質量部以下が好ましく、下限は0.001質量部以上でもよく、0.005質量部以上でもよく、0.010質量部以上でもよく、0.015質量部以上でもよく、0.02質量部以上でもよく、0.03質量部以上でもよく、0.05質量部以上でもよく、0.07質量部以上でもよく、0.09質量部以上でもよく、0.10質量部以上でもよく、0.15質量部以上でもよく、0.18質量部以上でもよく、0.20質量部以上でもよく、0.25質量部以上でもよく、また、上限は1.1質量部以下でもよく、1.0質量部以下でもよく、0.98質量部以下でもよく、0.95質量部以下でもよく、0.90質量部以下でもよく、0.80質量部以下でもよく、0.75質量部以下でもよく、0.70質量部以下でもよく、0.50質量部以下でもよく、0.30質量部以下でもよい。これらの上限と下限の数値はいずれの組み合わせでも用いられる。
不純物としてのアミノ酸の含有量は、アスパラギン酸100質量部に対して、0質量部以上1.1質量部以下でもよく、0.02質量部以上1.1質量部以下でもよく、0.02質量部以上1.0質量部以下でもよく、0.001質量部以上0.98質量部以下でもよく、0.005質量部以上0.95質量部以下でもよく、0.010質量部以上0.90質量部以下でもよく、0.020質量部以上0.80質量部以下でもよく、0.05質量部以上0.70質量部以下でもよく、0.05質量部以上0.50質量部以下でもよく、0.05質量部以上0.30質量部以下でもよい。
【0016】
不純物としてのアミノ酸は、塩の形態であってもよい。アミノ酸の塩としては、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウム等)との塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)との塩等が挙げられる。上記不純物としてのアミノ酸で例示した含有量の範囲は、不純物としてのアミノ酸が塩の形態である場合にも適用される。不純物としてアミノ酸とアミノ酸の塩の両方を含む場合、両者の合計含有量に対して、上記例示した含有量の範囲が適用される。
【0017】
「有機酸」は、酸性を示す有機物である。一実施態様において、有機酸は、カルボン酸である。本明細書で「有機酸」という場合、アミノ酸は除外される。
【0018】
不純物としての有機酸としては、例えば、ピルビン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酢酸、及びコハク酸等が挙げられる。
【0019】
不純物としての有機酸の含有量は、アスパラギン酸100質量部に対して、0質量部以上1.1質量部以下が好ましく、上限は0.02質量部以上でもよく、0.03質量部以上でもよく、0.05質量部以上でもよく、0.07質量部以上でもよく、0.09質量部以上でもよく、0.10質量部以上でもよく、0.15質量部以上でもよく、0.18質量部以上でもよく、0.20質量部以上でもよく、0.25質量部以上でもよく、また、上限は1.1質量部以下でもよく、1.0質量部以下でもよく、0.98質量部以下でもよく、0.95質量部以下でもよく、0.90質量部以下でもよく、0.80質量部以下でもよく、0.75質量部以下でもよく、0.70質量部以下でもよく、0.50質量部以下でもよく、0.30質量部以下でもよい。これらの上限と下限の数値はいずれの組み合わせでも用いられる。
不純物としての有機酸の含有量は、アスパラギン酸100質量部に対して、0質量部以上1.1質量部以下でもよく、0.001質量部以上1.1質量部以下でもよく、0.02質量部以上1.1質量部以下でもよく、0.02質量部以上1.0質量部以下でもよく、0.001質量部以上0.98質量部以下でもよく、0.005質量部以上0.95質量部以下でもよく、0.010質量部以上0.90質量部以下でもよく、0.020質量部以上0.80質量部以下でもよく、0.05質量部以上0.70質量部以下でもよく、0.05質量部以上0.50質量部以下でもよく、0.05質量部以上0.30質量部以下でもよい。
【0020】
不純物としての有機酸は、塩の形態であってもよい。有機酸の塩としては、アルカリ金属(ナトリウム、カリウム、リチウム等)との塩、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)との塩等が挙げられる。上記不純物としての有機酸で例示した含有量の範囲は、不純物としての有機酸が塩の形態である場合にも適用される。不純物として有機酸と有機酸の塩の両方を含む場合、両者の合計含有量に対して、上記例示した含有量の範囲が適用される。
【0021】
アスパラギン酸組成物は、アスパラギン酸組成物の全成分合計質量に対して、0.02質量%以上1.1質量%以下の不純物を含む。不純物の含有量は、アスパラギン酸組成物の全成分合計質量に対して、0.021質量%以上1.08質量%以下が好ましく、下限は0.021質量%以上でもよく、0.025質量%以上でもよく、0.03質量%以上でもよく、0.035質量%以上でもよく、0.04質量%以上でもよく、0.045質量%以上でもよく、0.05質量%以上でもよく、0.07質量%以上でもよく、0.09質量部以上でもよく、0.10質量%以上でもよく、0.15質量%以上でもよく、0.18質量%以上でもよく、0.20質量%以上でもよく、0.25質量%以上でもよく、また、上限は1.05質量%以下でもよく、1.0質量%以下でもよく、0.98質量%以下でもよく、0.95質量%以下でもよく、0.90質量%以下でもよく、0.80質量%以下でもよく、0.75質量%以下でもよく、0.70質量部以下でもよく、0.50質量部以下でもよく、0.30質量部以下でもよい。これらの上限と下限の数値はいずれの組み合わせでも用いられる。
不純物の含有量は、アスパラギン酸組成物の全成分合計質量に対して、0.021質量%以上1.1質量%以下でもよく、0.025質量%以上1.1質量%以下でもよく、0.02質量%以上1.0質量%以下でもよく、0.02質量%以上0.98質量%以下でもよく、0.02質量%以上0.95質量%以下でもよく、0.02質量%以上0.90質量%以下でもよく、0.020質量%以上0.80質量%以下でもよく、0.02質量%以上0.70質量%以下でもよく、0.05質量部以上0.50質量部以下でもよく、0.05質量部以上0.30質量部以下でもよい。
不純物の含有量が前記範囲内であることにより、アスパラギン酸の重合反応が促進される。また、高分子量のポリスクシンイミドを得ることができる。
【0022】
不純物は、アスパラギン酸以外のアミノ酸、有機酸、及びそれらの塩以外の成分を含んでもよい。前記成分としては、例えば、硫酸塩等が挙げられる。
【0023】
<アスパラギン酸>
アスパラギン酸は、L体であってもよく、D体であってもよく、これらの混合物であってもよい。一実施形態おいて、アスパラギン酸はL体である。アスパラギン酸は、微生物により生産されたものであってもよく、微生物を用いずに生産されたものであってもよい。微生物を用いずにアスパラギン酸を生産する方法としては、アスパルターゼ等の酵素存在下でフマル酸とアンモニアとを反応させる方法等が挙げられる。
アスパラギン酸組成物中のアスパラギン酸の含有量は、アスパラギン酸組成物の全成分合計質量に対して、98.9質量%以上99.98質量%以下である。アスパラギン酸の含有量は、アスパラギン酸組成物の全成分合計質量に対して、98.95質量%以上99.97質量%以下でもよく、99.00質量%以上99.96質量%以下でもよく、99.02質量%以上99.95質量%以下でもよく、99.05質量%以上99.93質量%以下でもよい。これらの上限と下限の数値はいずれの組み合わせでも用いられる。
【0024】
<アスパラギン酸組成物の製造方法>
アスパラギン酸組成物は、公知の方法で製造することができる。アスパラギン酸組成物の製造方法としては、例えば、アスパルターゼ等の酵素存在下でフマル酸とアンモニアとを反応させる方法、コリネバクテリウム属細菌等のアスパラギン酸生産能を有する微生物を利用する方法等が挙げられる。
【0025】
(微生物を利用する方法)
本明細書において「微生物」は、字義どおりに解釈すれば足り、より具体的には、「微生物」は、古細菌、シアノバクテリア、細菌類等の原核生物であってもよく、菌類等の真核生物であってもよい。本実施形態において「微生物」は、菌類又は細菌類であることが好ましく、細菌類であることがより好ましい。
【0026】
菌類としては、サッカロミケス属酵母(例えば、Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミケス属酵母(例えば、Schizosaccharomyces pombe)、ピチア属酵母(例えば、Pichia pastoris)、クルイウェロマイセス属酵母(Kluyveromyces lactis)、Hansenula polymorpha、ヤロウイア属酵母(例えば、Yarrowia lipolytica)、クリプトコッカス属菌類(例えば、Cryptococcus sp. S-2)、アスペルギルス属菌類(例えば、Aspergillus oryzae)、Pseudozyma属菌類(例えば、Pseudozyma antarctica)等が挙げられる。Saccharomyces cerevisiae、Schizosaccharomyces pombe、Pichia pastoris等は、遺伝子組換え技術や異種蛋白質発現系が確立されていることから、本発明において都合よく利用できる。
【0027】
細菌類としては、例えば、エシェリキア属細菌(例えば、Escherichia coli)、バチルス属細菌(例えば、Bacillus subtilis)、ラクトバシラス属細菌(例えば、Lactobacillus acidophilus)、クロストリジウム属細菌(例えば、Clostridium thermocellum、Clostridium acetobutylicum)ロドシュードモナス属細菌(例えば、Rhodopseudomonas palustris)、ロドバクター属細菌(Rhodobacter capsulatus)、さらに下記に詳述のコリネ型細菌に属する細菌類が挙げられる。本明細書における「微生物」は、遺伝子組換え技術やタンパク質発現系が既に確立されており、細胞が実質的に増殖しない還元条件下での物質生産を可能にするエシェリキア属細菌又はコリネ型細菌であることが好ましく、より好ましくはエシェリキア・コリ又はコリネ型細菌であることが好ましく、最も好ましくはコリネバクテリウム属細菌である。
【0028】
ここで、「コリネ型細菌」とは、バージーズ・マニュアル・デターミネイティブ・バクテリオロジー(Bargeys Manual of Determinative Bacteriology,第8巻,p.599、1974年)に定義されている一群の微生物を言う。
より詳細には、コリネ型細菌としては、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属細菌、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属細菌、アースロバクター(Arthrobacter)属細菌、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属細菌、マイクロコッカス(Micrococcus)属細菌、マイクロバクテリウム(Microbacterium)属細菌等が挙げられる。
【0029】
コリネバクテリウム属細菌としては、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)が挙げられる。
【0030】
微生物を利用する場合、従属栄養細菌の培養に通常用いられる培地を用いて、微生物を培養すればよい。培地としては、炭素源、窒素源、リン源、微量元素、ビタミン等を含む培地が挙げられる。炭素源としては、例えば、糖類(グルコース、スクロース、ラクトース、フルクトース、マルトース、モラセス、デンプン等)、脂肪酸(パルミチン酸、ステアリン酸、リノール酸等)、アルコール(グリセロール、エタノール等)、有機酸(酢酸等)が挙げられる。窒素源としては、例えば、含窒素機化合物(ペプトン、酵母エキス、肉エキス、尿素、アミノ酸等)、無機アンモニウム塩、無機硝酸塩等が挙げられる。リン源としては、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等が挙げられる。微量元素としては、マグネシウム、鉄、亜鉛等が挙げられる。ビタミンとしては、ビオチン、チアミン等が挙げられる。
【0031】
培養条件は、微生物の種類に応じて、適宜選択することができる。
pH条件としては、例えば、pH6~9が挙げられ、pH7~8.5がより好ましい。
温度条件としては、例えば、20~40℃が挙げられ、25~37℃が好ましい。
培養は、振盪培養又は通気培養とすることが好ましい。
【0032】
培養時間は、特に限定されず、微生物の種類及び培地量に応じて、適宜設定することができる。培養時間としては、例えば、15~50時間、又は20~40時間等が挙げられる。
【0033】
培養後、遠心分離又はろ過等により、培養液から菌体を除去して、培養上清を回収する。培養上清には、微生物により生成されたアスパラギン酸に加えて、培地成分、微生物による副産物等の様々な物質が含まれる。そのため、濃縮、等電点晶析、再結晶、活性炭処理、洗浄等の分離・精製処理に一般的に使用される方法を用いて、培養上清からアスパラギン酸を精製する処理を行ってもよい。精製処理により、不純物の含有量を0.02質量%以上1.1質量%以下とすることにより、アスパラギン酸組成物を得ることができる。微生物の培養上清を精製して得たアスパラギン酸組成物は、通常、不純物として、アスパラギン酸以外のアミノ酸、及び有機酸からなる群より選択される少なくとも1種を含有する。
【0034】
フマル酸とアンモニアを酵素触媒下で反応させて、アスパラギン酸を生成させる方法により、アスパラギン酸組成物を得る場合、反応後の反応液を回収し、アスパラギン酸の精製処理を行う。精製処理により、不純物の含有量を0.02質量%以上1.1質量%以下とすることにより、アスパラギン酸組成物を得ることができる。
【0035】
アスパラギン酸の精製処理により、組成物中の不純物の含有量が0.02質量%未満となった場合、アスパラギン酸以外のアミノ酸、有機酸及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種の成分を添加して、不純物の含有量が0.02質量%以上1.1質量%以下となるようにしてもよい。この場合、アスパラギン酸以外のアミノ酸を添加することが好ましい。
【0036】
石油資源の枯渇等の問題から、石油由来製品は、微生物等を利用して生産されたものに代替されていくことが好ましい。ポリスクシンイミドの製造に用いられるアスパラギン酸組成物も、微生物を用いて生産されることが好ましい。しかしながら、微生物の培養上清は、アスパラギン酸以外に、多くの不純物を含むため、石油由来製品と同等の純度(例えば、99.9質量%以上)に精製することは難しい。
一方、本態様のアスパラギン酸組成物は、石油由来製品よりも低い純度で、十分に高分子量のポリスクシンイミドを得ることができる。さらに、本態様のアスパラギン酸組成物を用いることにより、アスパラギン酸の重合速度が促進される(図1参照)。したがって、アスパラギン酸の精製コストを低減することができ、微生物を用いた効率的なプロセスへの転換が期待できる。
【0037】
本態様のアスパラギン酸組成物を用いた場合、所定量のアミノ酸、有機酸等の不純物の存在により、重合環境が改善するため、アスパラギン酸の純度がより高い石油精製品と比較して、アスパラギン酸の重合速度が向上すると考えられる。
【0038】
[ポリスクシンイミドの製造方法]
一態様において、本発明は、前記アスパラギン酸組成物を用いて、アスパラギン酸の重合反応を行うことを含む、ポリスクシンイミドの製造方法を提供する。
【0039】
アスパラギン酸の重合反応は、公知の方法で行うことができる。アスパラギン酸の重合反応は、酸触媒下で行ってもよく、無触媒で行ってもよい。酸触媒としては、例えば、リン酸、亜リン酸、亜リン酸エステル、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。酸触媒の使用量は、特に限定されないが、例えば、アスパラギン酸組成物100質量部に対し、0.001~500質量部が挙げられ、0.01~100質量部が好ましく、0.1~70質量部がより好ましい。
【0040】
アスパラギン酸の重合反応は、固相重合で行ってもよく、溶液重合で行ってもよい。
【0041】
(固相重合)
固相重合は、反応溶媒を用いない重合方法である。重合反応を触媒下で行う場合、重合反応を行う前に、アスパラギン酸組成物に、触媒を添加して、十分に混合しておくことが好ましい。混合温度としては、重合反応が生じない150℃以下であれば特に限定されない。混合温度としては、例えば、20~120℃が挙げられる。混合時間としては、例えば、0.01~50分が挙げられる。
【0042】
固相重合は、アスパラギン酸組成物に触媒を添加した後、混錬装置を用いて行うことができる。酸触媒は、一度に全量を添加してもよく、少量ずつに分けて添加してもよい。
上記混錬装置は、特に限定されないが、重合後の工程が容易となるよう、攪拌翼を備える装置が好ましい。攪拌翼により、重合反応中に重合物を破砕しながら攪拌を行うことができる。上記攪拌翼の種類は、例えば、スクリュー翼、ヘリカルリボン翼、横形2軸翼、バンバリー翼等が挙げられ、その中でもスクリュー翼が好ましい。混錬装置としては、例えばニーダー、押出機、遊星型混合機、ヘリカルブレードミキサー、スクリュー型混合機等が挙げられる。混錬装置は、バッチ式であっても、連続式であってもよい。
【0043】
重合反応は、アスパラギン酸組成物、又はアスパラギン酸組成物及び酸触媒の混合物を反応器に仕込み、加熱することにより行うことができる。重合温度としては、例えば、100~400℃が挙げられ、150~350℃が好ましく、150~280℃がより好ましい。
【0044】
重合反応の際の圧力は、特に限定されず、負圧下で重合反応を行ってもよく、常圧下で重合反応を行ってもよい。圧力としては、例えば、1~100kPaが挙げられる。
【0045】
重合時間は、特に限定されず、所望の長さのポリスクシンイミドが生成されるのに十分な時間であればよい。重合時間としては、例えば、0.5~100時間が挙げられ、1~50時間が好ましく、1~20時間がより好ましい。
【0046】
重合反応は、窒素、アルゴン等の不活性ガス気流下で行ってもよい。また、鎖長延長剤、反応促進剤等の各種添加剤を用いてもよい。
【0047】
重合反応後は、反応混合物を粉砕し、メタノール等の溶剤を用いて洗浄してもよいし、蒸留水等を用いて洗浄してもよい。
洗浄後、乾燥することにより、ポリスクシンイミドの粉末を得ることができる。乾燥方法としては、自然乾燥、加熱乾燥、及び真空乾燥等が挙げられる。
【0048】
(溶液重合)
溶液重合は、反応溶媒を用いる重合方法である。反応溶媒としては、例えば、芳香族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類、エステル類、及び非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。反応溶媒としては、沸点100℃以上の溶媒、好ましくは沸点130℃以上の溶媒が好ましい。芳香族炭化水素類としては、例えば、クメン、メシチレン等が挙げられる。ハロゲン化炭化水素類としては、例えば、クロロトルエン、クロロベンゼン等が挙げられる。エーテル類としては、例えば、アニソール等が挙げられる。エステル類としては、例えば、酢酸-n-アミル等が挙げられる。非プロトン性極性溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、テトラメチル尿素酸、ジメチルスルホキシド、スルホラン及びヘキサメチルホスホロアミド等が挙げられる。反応溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上の混合溶媒でもよい。
中でも、反応溶媒としては、適度な沸点を有することから、クメン、クロロトルエン、キシレン、メシチレン、プソイドキュメン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、スルホラン、及びこれらの2種以上の混合溶媒が好ましい。
反応溶媒の使用量は、特に限定されないが、例えば、アスパラギン酸組成物100質量部に対して、1~5000質量部が挙げられ、5~1000質量部が好ましく、10~500質量部がより好ましい。
【0049】
重合反応は、アスパラギン酸組成物、酸触媒、及び反応溶媒の混合物を反応器に仕込み、生成する水を取り除きながら、加熱することにより行うことができる。重合温度としては、例えば、100~400℃が挙げられ、120~350℃が好ましく、120~280℃がより好ましい。
【0050】
重合反応の際の圧力は、特に限定されず、負圧下で重合反応を行ってもよく、常圧下で重合反応を行ってもよい。
【0051】
重合時間は、特に限定されず、所望の長さのポリスクシンイミドが生成されるのに十分な時間であればよい。重合時間としては、例えば、0.5~100時間が挙げられ、1~75時間が好ましく、さらに1~50時間がより好ましい。
【0052】
重合反応は、窒素、アルゴン等の不活性ガス気流下で行ってもよい。また、鎖長延長剤、反応促進剤等の各種添加剤を用いてもよい。
【0053】
重合反応後は、反応生成物をメタノール等の溶剤を用いて洗浄してもよいし、次いで蒸留水等を用いて洗浄してもよい。
洗浄後、乾燥することにより、ポリスクシンイミドの粉末を得ることができる。乾燥方法としては、自然乾燥、加熱乾燥、及び真空乾燥等が挙げられる。
【0054】
アスパラギン酸組成物の重合反応により得られるポリスクシンイミドの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されない。所望の重量平均分子量のポリスクシンイミドが生成された時点で、重合反応を終了することができる。ポリスクシンイミドのMwとしては、例えば、50,000以上、又は60,000以上が挙げられる。ポリスクシンイミドのMwの範囲としては、例えば、10,000~200,000、又は20,000~200,000が挙げられる。Mwは、GPC法によるポリスチレン換算値である。
【0055】
本態様の方法では、前記アスパラギン酸組成物を用いて、アスパラギン酸の重合反応を行う。そのため、高分子量のポリスクシンイミドを得ることができる。また、アスパラギン酸の重合反応が促進されるため、重合反応時間を短縮することができる。
【0056】
[ポリスクシンイミド組成物]
一態様において、本発明は、ポリスクシンイミド組成物を提供する。前記ポリスクシンイミド組成物は、ポリスクシンイミドと、不純物と、を含む。前記不純物は、アスパラギン酸以外のアミノ酸、有機酸、及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含む。前記ポリスクシンイミド組成物における前記不純物の含有量は、0.001質量%以上1.1質量%以下である。
【0057】
「ポリスクシンイミド組成物」とは、ポリスクシンイミドを主成分として含有する組成物をいう。ポリスクシンイミド組成物は、前記アスパラギン酸組成物の重合反応により得ることができる。例えば、前記ポリスクシンイミドの製造方法を実施することにより、得ることができる。ポリスクシンイミド組成物は、前記アスパラギン酸組成物の重合反応物であるともいえる。
【0058】
ポリスクシンイミド組成物は、ポリスクシンイミドと不純物とを含む。ポリスクシンイミド組成物における「不純物」とは、ポリスクシンイミド組成物に含まれるポリスクシンイミド以外の成分をいう。一実施形態において、不純物は、アスパラギン酸以外のアミノ酸、及び有機酸からなる群より選択される少なくとも1種を含む。不純物は、アスパラギン酸以外のアミノ酸を含むことが好ましい。
【0059】
不純物としてのアミノ酸は、前記アスパラギン酸組成物における不純物としてのアミノ酸と同様のものが挙げられる。不純物としてのアミノ酸の含有量は、ポリスクシンイミド100質量部に対して、0質量部以上1.1質量部以下が好ましく、0.001質量部以上1.1質量部以下でもよく、0.001質量部以上0.5質量部以下でもよく、0.001質量部以上0.3質量部以下でもよい。
不純物としてのアミノ酸は、塩の形態であってもよい。アミノ酸の塩としては、上記と同様のものが挙げられる。上記不純物としてのアミノ酸で例示した含有量の範囲は、不純物としてのアミノ酸が塩の形態である場合にも適用される。不純物としてアミノ酸とアミノ酸の塩の両方を含む場合、両者の合計含有量に対して、上記例示した含有量の範囲が適用される。
【0060】
不純物としての有機酸は、前記アスパラギン酸組成物における不純物としての有機酸と同様のものが挙げられる。不純物としての有機酸の含有量は、ポリスクシンイミド100質量部に対して、0質量部以上1.1質量部以下が好ましく、0.001質量部以上0.5質量部以下がより好ましく、0.001質量部以上0.3質量部以下がさらに好ましい。
不純物としての有機酸は、塩の形態であってもよい。有機酸の塩としては、上記と同様のものが挙げられる。上記不純物としての有機酸で例示した含有量の範囲は、不純物としての有機酸が塩の形態である場合にも適用される。不純物として有機酸と有機酸の塩の両方を含む場合、両者の合計含有量に対して、上記例示した含有量の範囲が適用される。
【0061】
前記不純物の含有量が前記範囲内であることにより、ポリスクシンイミドの加水分解反応及び/又は架橋反応が問題なく促進される。結果として、所望の架橋ポリアスパラギン酸組成物を得ることができる。
【0062】
ポリスクシンイミド組成物が主成分として含むポリスクシンイミドのMwは特に限定されない。ポリスクシンイミドのMwとしては、例えば、50,000以上、又は60,000以上が挙げられる。ポリスクシンイミドのMwの範囲としては、例えば、50,000~200,000、又は60,000~200,000が挙げられる。
【0063】
不純物は、アスパラギン酸以外のアミノ酸、有機酸、及びそれらの塩以外の成分を含んでもよい。前記成分としては、例えば、硫酸塩等が挙げられる。
【0064】
ポリスクシンイミド組成物中のポリスクシンイミドの含有量は、ポリスクシンイミド組成物の全成分の合計質量に対して、例えば、99質量%以上99.999質量%以下である。
【0065】
ポリスクシンイミド組成物は、ポリアスパラギン酸の製造に用いることができる。
【0066】
[ポリアスパラギン酸組成物、ポリアスパラギン酸組成物の製造方法]
一態様において、本発明は、前記ポリスクシンイミド組成物の加水分解物である、ポリアスパラギン酸組成物を提供する。
【0067】
前記ポリスクシンイミド組成物を加水分解することにより、ポリスクシンイミド組成物中のポリスクシンイミドが加水分解されて、ポリアスパラギン酸となる。そのため、前記ポリスクシンイミド組成物の加水分解物として、ポリアスパラギン酸組成物を得ることができる。前記ポリアスパラギン酸組成物において、ポリアスパラギン酸は、通常、塩の形態で存在する。本明細書において、「ポリアスパラギン酸」という用語は、特に明示しない限り、ポリアスパラギン酸の塩も包含する。
ポリアスパラギン酸組成物は、前記スクシンイミド組成物の加水分解物であるため、前記スクシンイミド組成物と同様の不純物を含んでいてもよい。
【0068】
不純物としてのアミノ酸は、前記アスパラギン酸組成物における不純物としてのアミノ酸と同様のものが挙げられる。不純物としてのアミノ酸の含有量は、ポリアスパラギン酸100質量部に対して、0質量部以上1.1質量部以下でもよく、0.02質量部以上1.1質量部以下でもよく、0.02質量部以上1.0質量部以下でもよく、0.001質量部以上0.98質量部以下でもよく、0.005質量部以上0.95質量部以下でもよく、0.010質量部以上0.90質量部以下でもよく、0.020質量部以上0.80質量部以下でもよく、0.05質量部以上0.70質量部以下でもよく、0.05質量部以上0.50質量部以下でもよく、0.05質量部以上0.30質量部以下でもよい。これらの上限と下限の数値はいずれの組み合わせでも用いられる。
不純物としてのアミノ酸は、塩の形態であってもよい。アミノ酸の塩としては、上記と同様のものが挙げられる。上記不純物としてのアミノ酸で例示した含有量の範囲は、不純物としてのアミノ酸が塩の形態である場合にも適用される。不純物としてアミノ酸とアミノ酸の塩の両方を含む場合、両者の合計含有量に対して、上記例示した含有量の範囲が適用される。
【0069】
不純物としての有機酸の含有量は、ポリアスパラギン酸100質量部に対して、0質量部以上1.1質量部以下でもよく、0.001質量部以上1.1質量部以下でもよく、0.02質量部以上1.1質量部以下でもよく、0.02質量部以上1.0質量部以下でもよく、0.001質量部以上0.98質量部以下でもよく、0.005質量部以上0.95質量部以下でもよく、0.010質量部以上0.90質量部以下でもよく、0.020質量部以上0.80質量部以下でもよく、0.05質量部以上0.70質量部以下でもよく、0.05質量部以上0.50質量部以下でもよく、0.05質量部以上0.30質量部以下でもよい。これらの上限と下限の数値はいずれの組み合わせでも用いられる。
不純物としての有機酸は、塩の形態であってもよい。有機酸の塩としては、上記と同様のものが挙げられる。上記不純物としての有機酸で例示した含有量の範囲は、不純物としての有機酸が塩の形態である場合にも適用される。不純物として有機酸と有機酸の塩の両方を含む場合、両者の合計含有量に対して、上記例示した含有量の範囲が適用される。
【0070】
ポリアスパラギン酸組成物は、ポリアスパラギン酸組成物の全成分合計質量に対して、0.02質量%以上1.1質量%以下の不純物を含む。不純物の含有量は、ポリアスパラギン酸組成物の全成分合計質量に対して、0.021質量%以上1.1質量%以下でもよく、0.025質量%以上1.1質量%以下でもよく、0.02質量%以上1.0質量%以下でもよく、0.02質量%以上0.98質量%以下でもよく、0.02質量%以上0.95質量%以下でもよく、0.02質量%以上0.90質量%以下でもよく、0.020質量%以上0.80質量%以下でもよく、0.02質量%以上0.70質量%以下でもよく、0.05質量部以上0.50質量部以下でもよく、0.05質量部以上0.30質量部以下でもよい。これらの上限と下限の数値はいずれの組み合わせでも用いられる。
【0071】
したがって、一態様において、本発明は、前記アスパラギン酸組成物を用いて、前記アスパラギン酸の重合反応を行い、ポリスクシンイミドを含むポリスクシンイミド組成物を得る工程(以下、「工程(i)」ともいう)と、前記ポリスクシンイミド組成物を用いて、前記ポリスクシンイミドの加水分解反応を行い、ポリアスパラギン酸を含むポリアスパラギン酸組成物を得る工程(以下、「工程(ii)」ともいう)と、を含む、ポリアスパラギン酸組成物の製造方法を提供する。
【0072】
<工程(i)>
工程(i)は、前記アスパラギン酸組成物を用いて、前記アスパラギン酸の重合反応を行い、ポリスクシンイミドを含むポリスクシンイミド組成物を得る工程である。工程(i)は、前記[ポリスクシンイミドの製造方法]の項に記載の方法と同様に行うことができる。
【0073】
<工程(ii)>
工程(ii)は、前記ポリスクシンイミド組成物を用いて、前記ポリスクシンイミドの加水分解反応を行い、ポリアスパラギン酸を含むポリアスパラギン酸組成物を得る工程である。
【0074】
ポリスクシンイミド組成物中のポリスクシンイミドの加水分解反応は、公知の方法により行うことができる。加水分解反応は、アルカリ条件下で行うことができる。例えば、ポリスクシンイミド組成物に、塩基を添加してポリスクシンイミドと反応させることにより、ポリスクシンイミドの加水分解反応を行うことができる。
【0075】
塩基としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アンモニア等が挙げられる。アルカリ金属としては、カリウム、ナトリウム、リチウム等が挙げられる。アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられる。中でも、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、NaOH、KOH、LiOH等がより好ましく、NaOHの水溶液がさらに好ましい。塩基は、アルカリ水溶液として前記ポリスクシンイミド組成物に添加することが好ましい。アルカリ水溶液は、25℃におけるpHが10~14であることが好ましく、12~14であることがより好ましい。アルカリ水溶液における塩基の濃度は、特に限定されないが、例えば、0.5~50質量%が挙げられる。
【0076】
塩基の使用量は、ポリスクシンイミド組成物中のポリスクシンイミドをポリアスパラギン酸に加水分解するのに十分な量であればよい。例えば、塩基のモル数は、前記ポリスクシンイミド組成物中のポリスクシンイミドが有するカルボキシ基及びイミド基を合わせたモル数の90~120%の範囲内とすることができる。
【0077】
加水分解反応における温度は、ポリマー主鎖の加水分解が起こらない温度であればよい。加水分解反応における温度としては、例えば、10~70℃が好ましく、40~60℃がより好ましい。
加水分解反応の時間は、特に限定されず、前記ポリスクシンイミド組成物中のポリスクシンイミドを、ポリアスパラギン酸に加水分解するのに十分な時間であればよく、ポリスクシンイミド組成物の量に応じて、適宜選択することができる。加水分解反応の時間としては、例えば、1分~100時間が挙げられ、30分~50時間が好ましく、1時間~10時間がより好ましい。
【0078】
工程(ii)で得られるポリアスパラギン酸組成物中のポリアスパラギン酸は、塩の形態である。塩基としてアルカリ金属の水酸化物又は炭酸塩を用いた場合、ポリアスパラギン酸は、前記アルカリ金属との塩の形態である。塩基としてアルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩を用いた場合、ポリアスパラギン酸は、前記アルカリ土類金属との塩の形態である。塩基としてアンモニアを用いた場合、ポリアスパラギン酸は、前記アンモニウム塩の形態である。前記ポリアスパラギン酸の塩は、適宜酸で中和して、塩を形成していないポリアスパラギン酸としてもよい。
【0079】
ポリアスパラギン酸組成物は、スクシンイミドの構成単位が一部に残留したポリマーを含有してもよい。例えば、ポリアスパラギン酸組成物は、アスパラギン酸構成単位と、ポリスクシンイミド構成単位とを有するポリマーを含有してもよい。前記ポリマーにおけるスクシンイミド構成単位の割合は、当該ポリマーの全構成単位に対し、3モル%以下が好ましく、1モル%以下がより好ましい。
【0080】
[架橋ポリアスパラギン酸組成物、架橋ポリアスパラギン酸組成物の製造方法]
一態様において、本発明は、前記ポリアスパラギン酸組成物の架橋反応物である、架橋ポリアスパラギン酸組成物を提供する。
【0081】
前記ポリアスパラギン酸組成物の架橋反応を行うことにより、ポリアスパラギン酸組成物中のポリアスパラギン酸が架橋されて、架橋ポリアスパラギン酸となる。そのため、前記ポリアスパラギン酸組成物の架橋反応物として、架橋ポリアスパラギン酸組成物を得ることができる。前記架橋ポリアスパラギン酸組成物において、架橋ポリアスパラギン酸は、塩の形態であってもよく、塩の形態でなくてもよい。本明細書において、「架橋ポリアスパラギン酸」という用語は、架橋ポリアスパラギン酸の塩も包含する。
架橋ポリアスパラギン酸組成物は、前記ポリアスパラギン酸組成物の架橋反応物であるため、前記ポリアスパラギン酸組成物と同様の不純物を含んでいてもよい。
【0082】
したがって、一態様において、本発明は、前記ポリアスパラギン酸組成物の製造方法により、ポリアスパラギン酸組成物を得る工程(以下、「工程(iii)」ともいう)と、前記ポリアスパラギン酸組成物を用いて、前記ポリアスパラギン酸の架橋反応を行い、架橋ポリアスパラギン酸を含む架橋ポリアスパラギン酸組成物を得る工程(以下、「工程(iv)」ともいう)と、を含む、架橋ポリアスパラギン酸組成物の製造方法を提供する。
【0083】
<工程(iii)>
工程(iii)は、前記ポリアスパラギン酸組成物の製造方法により、ポリアスパラギン酸組成物を得る工程である。工程(iii)は、前記[ポリアスパラギン酸組成物、ポリアスパラギン酸組成物の製造方法]の項に記載の方法と同様に行うことができる。
【0084】
<工程(iv)>
工程(iv)は、前記ポリアスパラギン酸組成物を用いて、前記ポリアスパラギン酸の架橋反応を行い、架橋ポリアスパラギン酸を含む架橋ポリアスパラギン酸組成物を得る工程である。
【0085】
ポリアスパラギン酸組成物中のポリアスパラギン酸の架橋反応は、公知の方法により行うことができる。架橋反応は、架橋剤を用いて行うことができる。例えば、ポリアスパラギン酸組成物に、架橋剤を添加してポリアスパラギン酸と反応させることにより、ポリアスパラギン酸の架橋反応を行うことができる。あるいは、ポリアスパラギン酸組成物にγ線を照射することにより、ポリアスパラギン酸の架橋反応を行うことができる。
【0086】
架橋剤は、特に限定されず、公知の架橋剤を用いることができる。架橋剤としては、例えば、多価エポキシ化合物、塩基性ポリアミノ酸化合物等が挙げられる。
【0087】
多価エポキシ化合物としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル等のアルカンポリオール(例えば炭素原子数2~6)及びポリ(アルキレングリコール)(例えば炭素原子数2~6)のポリグリシジルエーテル;ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、エリスリトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールエタンポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル等のアルカンポリオール(例えば炭素原子数2~6)及びポリ(アルキレングリコール)(例えば炭素原子数2~6)のポリグリシジルエーテル;1,2,3,4-ジエポキシブタン、1,2,4,5-ジエポキシペンタン、1,2,5,6-ジエポキシヘキサン、1,2,7,8-ジエポキシオクタン、1,4-及び1,3-ジビニルベンゼンエポキシド等のジエポキシアルカン(例えば炭素原子数4~8);4,4’-イソプロピリデンジフェノールジグリシジルエーテル(ビスフェノールAジグリシジルエーテル)及びヒドロキノンジグリシジルエーテル等のポリフェノールポリグリシジルエーテル(例えば炭素原子数6~15)等が挙げられる。多価エポキシ化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
塩基性ポリアミノ酸化合物としては、例えば、グリシン-リジン、リジン-グリシン、アラニン-リジン、リジン-フェニルアラニン等の塩基性アミノ酸を含む二量体;ポリリジン、ポリアルギニン、リジンとアルギニンとの共重合体、塩基性アミノ酸と他のアミノ酸との共重合体等が挙げられる。塩基性ポリアミノ酸化合物は、無機酸や有機酸等との間で塩を形成していてもよい。塩基性ポリアミノ酸化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0089】
架橋剤の使用量は、ポリアスパラギン酸組成物中のポリアスパラギン酸が架橋するのに十分な量であればよい。架橋剤の使用量は、ポリアスパラギン酸を架橋させる程度応じて、適宜選択することができる。架橋剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、ポリアスパラギン酸組成物100質量部に対して、0.5~50質量部が挙げられ、1~20質量部が好ましく、10~10質量部がより好ましい。
【0090】
架橋反応における温度は、架橋剤の種類に応じて適宜選択することができる。架橋剤が多価エポキシ化合物である場合、架橋反応の温度としては、例えば、10~120℃が好ましく、20~60℃がより好ましい。架橋剤が塩基性ポリアミノ酸化合物である場合、架橋反応の温度は、10~120℃が好ましく、30~80℃がより好ましい。
架橋反応の時間は、特に限定されず、前記ポリアスパラギン酸組成物中のポリアスパラギン酸が架橋するのに十分な時間であればよく、ポリアスパラギン酸組成物の量に応じて、適宜選択することができる。架橋反応の時間としては、例えば、1分~100時間が挙げられる。架橋反応の時間は、特に限定されないが、例えば、1分~50時間が好ましく、1分~10時間がより好ましい。
【0091】
工程(iv)で用いるポリアスパラギン酸組成物中のポリアスパラギン酸は、塩の形態であってもよく、塩の形態でなくてもよい。工程(iv)で塩の形態のポリアスパラギン酸組成物を用いた場合、得られる架橋ポリアスパラギン酸組成物中の架橋ポリアスパラギン酸は、塩の形態である。工程(iv)で塩の形態ではないポリアスパラギン酸組成物を用いた場合、得られる架橋ポリアスパラギン酸組成物中の架橋ポリアスパラギン酸は、塩の形態ではない。架橋ポリアスパラギン酸中の架橋ポリアスパラギン酸が塩の形態である場合、適宜、酸で中和して、塩の形態ではない架橋ポリアスパラギン酸としてもよい。
【0092】
[架橋ポリスクシンイミド組成物、架橋ポリスクシンイミド組成物の製造方法]
一態様において、本発明は、前記ポリスクシンイミド組成物の架橋反応物である、架橋ポリスクシンイミド組成物を提供する。
一態様において、本発明は、前記架橋ポリスクシンイミド組成物の加水分解物である、架橋ポリアスパラギン酸組成物を提供する。
【0093】
前記ポリスクシンイミド組成物の架橋反応を行うことにより、ポリスクシンイミド組成物中のポリスクシンイミドが架橋されて、架橋ポリスクシンイミドとなる。そのため、前記ポリスクシンイミド組成物の架橋反応物として、架橋ポリスクシンイミド組成物を得ることができる。
架橋ポリスクシンイミド組成物は、前記ポリスクシンイミド組成物の架橋反応物であるため、前記ポリスクシンイミド組成物と同様の不純物を含んでいてもよい。
【0094】
前記架橋ポリスクシンイミド組成物の加水分解反応を行うことにより、架橋ポリスクシンイミド組成物中の架橋ポリスクシンイミドが加水分解されて、架橋ポリアスパラギン酸となる。そのため、前記架橋ポリスクシンイミド組成物の加水分解物として、架橋ポリアスパラギン酸組成物を得ることができる。前記架橋ポリアスパラギン酸組成物において、架橋ポリアスパラギン酸は、通常、塩の形態で存在する。本明細書において、「架橋ポリアスパラギン酸」という用語は、特に明示しない限り、架橋ポリアスパラギン酸の塩も包含する。
架橋ポリアスパラギン酸組成物は、前記架橋ポリスクシンイミド組成物の加水分解物であるため、前記架橋ポリスクシンイミド組成物と同様の不純物を含んでいてもよい。
【0095】
したがって、一態様において、本発明は、前記アスパラギン酸組成物を用いて、前記アスパラギン酸の重合反応を行い、ポリスクシンイミドを含むポリスクシンイミド組成物を得る工程(以下、「工程(I)」ともいう)と、前記ポリスクシンイミド組成物を用いて、前記ポリスクシンイミドの架橋反応を行い、架橋ポリスクシンイミドを含む架橋ポリスクシンイミド組成物を得る工程(以下、「工程(II)」ともいう)と、前記架橋ポリスクシンイミド組成物を用いて、前記架橋ポリスクシンイミドの加水分解反応を行い、架橋ポリアスパラギン酸を含む架橋ポリアスパラギン酸組成物を得る工程(以下、「工程(III)」ともいう)と、を含む、架橋ポリアスパラギン酸組成物の製造方法を提供する。
【0096】
<工程(I)>
工程(I)は、前記アスパラギン酸組成物を用いて、前記アスパラギン酸の重合反応を行い、ポリスクシンイミドを含むポリスクシンイミド組成物を得る工程である。工程(I)は、前記[ポリスクシンイミドの製造方法]の項に記載の方法と同様に行うことができる。
【0097】
<工程(II)>
工程(II)は、前記ポリスクシンイミド組成物を用いて、前記ポリスクシンイミドの架橋反応を行い、架橋ポリスクシンイミドを含む架橋ポリスクシンイミド組成物を得る工程である。
【0098】
ポリスクシンイミド組成物中のポリスクシンイミドの架橋反応は、公知の方法により行うことができる。架橋反応は、架橋剤を用いて行うことができる。例えば、ポリスクシンイミド組成物に、架橋剤を添加してポリスクシンイミドと反応させることにより、ポリスクシンイミドの架橋反応を行うことができる。あるいは、ポリスクシンイミド組成物にγ線を照射することにより、ポリスクシンイミドの架橋反応を行うことができる。
【0099】
架橋剤は、特に限定されず、公知の架橋剤を用いることができる。架橋剤としては、例えば、アミン化合物、ヒドラジン、キトサン等が挙げられる。
【0100】
アミン化合物としては、例えば、2個以上のアミノ基を有する有機化合物が挙げられる。前記アミノ基としては、一級アミノ基、及び二級アミノ基が挙げられる。ポリスクシンイミドとの反応性が高く、架橋度の調整が容易であることから、アミノ基としては、一級アミノ基が好ましい。アミノ基は、ポリスクシンイミドとの反応性が高いことから、脂肪族炭化水素基の水素原子を置換するアミノ基が好ましい。アミノ基の具体例としては、例えば、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ベンジルアミノ基等が挙げられる。
アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、テトラデカメチレンジアミン、ヘキサデカメチレンジアミン、1-アミノ-2,2-ビス(アミノメチル)ブタン、テトラアミノメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;ノルボルネンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3,5-トリアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン;フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ポリアミン;塩基性アミノ酸若しくはそれらのエステル類等のポリアミン;モノアミノ化合物の分子1個以上が1個以上のジスルフィド結合により結合した化合物(例えばシスタミン)若しくはその誘導体等のポリアミンが挙げられる。アミン化合物は、リジン、シスチン、オルニチン等の2個以上のアミノ基を有するアミノ酸若しくはそれらの塩又はそれらのエステル類等であってもよい。
【0101】
さらに、3官能以上のアミン化合物の具体例としては、例えば、1,1,1-トリス(2’-アミノメチル)エタン、テトラキス(2’-アミノメチル)メタン、1,1,1-トリス(2’-アミノエチル)エタン、テトラキス(2’-アミノエチル)メタン、1,1,1-トリス(2’-アミノプロピル)エタン、テトラキス(2’-アミノプロピル)メタン、1,1,1-トリス(2’-アミノブチル)エタン、テトラキス(2’-アミノブチル)メタン、1,2,3-トリス(アミノメチル)ベンゼン、1,2,4-トリス(アミノメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(アミノメチル)ベンゼン等も挙げられる。
【0102】
架橋剤は、アミン化合物の重合体であってもよい。重合体である架橋剤の具体例としては、例えば、グリシン-リジン、アラニン-リジン、グリシン-オルニチン、アラニン-オルニチン等のC末端に塩基性アミノ酸を有するジペプチド;リジン-グリシン、リジン-アラニン、オルニチン-グリシン、オルニチン-アラニン、リジン-リジン、オルニチン-リジン、リジン-オルニチン、オルニチン-オルニチン等のN末端に塩基性アミノ酸を有するジペプチド;グリシン-グリシン-リジン、グリシン-リジン-グリシン、グリシン-グリシン-オルニチン、グリシン-オルニチン-グリシン、リジン-リジン-リジン、オルニチン-オルニチン-オルニチン、グリシン-グリシン-グリシン-リジン、グリシン-オルニチン-グリシン-グリシン等の塩基性アミノ酸を少なくとも1つ以上含むオリゴペプチド;ポリリジン、ポリアルギニン、リジンとアルギニンとの共重合体、リジンとアスパラギン酸との共重合体、リジンとグルタミン酸との共重合体、塩基性アミノ酸と他のアミノ酸との共重合体等のポリペプチド;ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、キトサン、ペプチド等のアミノ基含有モノマーの重合体等が挙げられる。架橋剤が重合体である場合、重合体の重合度は特に限定されず、反応に用いる有機溶媒への溶解性等を考慮して適宜選択することができる。
【0103】
生分解性が高く、ポリスクシンイミドとの反応性に優れた架橋剤としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、リジン、オルニチン、シスタミン等が挙げられる。
【0104】
架橋剤の使用量は、ポリスクシンイミド組成物中のポリスクシンイミドが架橋するのに十分な量であればよい。架橋剤の使用量は、ポリスクシンイミドを架橋させる程度に応じて、適宜選択することができる。架橋剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、ポリスクシンイミド組成物100質量部に対して、0.5~50質量部が挙げられ、1~20質量部が好ましく、10~10質量部がより好ましい。
【0105】
架橋反応における温度は、架橋剤の種類に応じて適宜選択することができる。架橋反応の温度としては、例えば、10~120℃が好ましく、20~60℃がより好ましい。
架橋反応の時間は、特に限定されず、前記ポリスクシンイミド組成物中のポリスクシンイミドが架橋するのに十分な時間であればよく、ポリスクシンイミド組成物の量に応じて、適宜選択することができる。架橋反応の時間としては、例えば、1分~100時間が挙げられる。架橋反応の時間は、特に限定されないが、例えば、1分~50時間が好ましく、1分~10時間がより好ましい。
架橋反応は、有機溶媒中で行ってもよく、水溶液中で行ってもよい。架橋反応に用いる溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等のグリコール類;メチルグリコソルブ、エチルグリコソルブ等のグリコソルブ類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル;石油エーテル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、デカリン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジフェニルエーテル、アニソール等の芳香族エーテル類;クレゾール等のフェノール類等が挙げられる。
さらに、架橋反応に用いる溶媒としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等が挙げられる。これらの溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0106】
<工程(III)>
工程(III)は、前記架橋ポリスクシンイミド組成物を用いて、前記架橋ポリスクシンイミドの加水分解反応を行い、架橋ポリアスパラギン酸を含む架橋ポリアスパラギン酸組成物を得る工程である。
【0107】
架橋ポリスクシンイミド組成物中の架橋ポリスクシンイミドの加水分解反応は、公知の方法により行うことができる。加水分解反応は、アルカリ条件下で行うことができる。例えば、架橋ポリスクシンイミド組成物に、塩基を添加して架橋ポリスクシンイミドと反応させることにより、架橋ポリスクシンイミドの加水分解反応を行うことができる。
【0108】
塩基としては、例えば、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アンモニア、有機アミン化合物(トリエチルアミン、N-メチルモルホリン、トリエタノールアミン、ジイソプロピルエチルアミンなど)等が挙げられる。アルカリ金属及びアルカリ土類金属としては、上記と同様のものが挙げられる。
【0109】
塩基の使用量は、架橋ポリスクシンイミド組成物中の架橋ポリスクシンイミドを架橋ポリアスパラギン酸に加水分解するのに十分な量であればよい。例えば、塩基のモル数は、前記架橋ポリスクシンイミド組成物中の架橋ポリスクシンイミドが有するカルボキシ基及びイミド基を合わせたモル数の90~120%の範囲内とすることができる。
【0110】
加水分解反応における温度は、ポリマー主鎖の加水分解が起こらない温度であればよい。加水分解反応における温度としては、例えば、10~70℃が好ましく、40~60℃がより好ましい。
加水分解反応の時間は、特に限定されず、架橋ポリスクシンイミド組成物中の架橋ポリスクシンイミドを架橋ポリアスパラギン酸に加水分解するのに十分な時間であればよく、架橋ポリスクシンイミド組成物の量に応じて、適宜選択することができる。加水分解反応の時間としては、例えば、1分~100時間が挙げられる。30分~50時間が好ましく、1時間~10時間がより好ましい。
【0111】
工程(III)で得られる架橋ポリアスパラギン酸組成物中の架橋ポリアスパラギン酸は、塩の形態である。塩基としてアルカリ金属の水酸化物又は炭酸塩を用いた場合、架橋ポリアスパラギン酸は、前記アルカリ金属との塩の形態である。塩基として架橋アルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩を用いた場合、架橋ポリアスパラギン酸は、前記アルカリ土類金属との塩の形態である。塩基としてアンモニアを用いた場合、架橋ポリアスパラギン酸は、前記アンモニウム塩の形態である。塩基として有機アミンを用いた場合、架橋ポリアスパラギン酸は、前記有機アミンとの塩の形態である。前記架橋ポリアスパラギン酸の塩は、適宜酸で中和して、塩を形成していない架橋ポリアスパラギン酸としてもよい。
【0112】
架橋ポリアスパラギン酸組成物は、スクシンイミドの構成単位が一部に残留したポリマーを含有してもよい。例えば、架橋ポリアスパラギン酸組成物は、アスパラギン酸構成単位と、ポリスクシンイミド構成単位とを有するポリマーを含有してもよい。前記ポリマーにおけるスクシンイミド構成単位の割合は、当該ポリマーの全構成単位に対し、3モル%以下が好ましく、1モル%以下がより好ましい。
【0113】
[表面修飾架橋ポリアスパラギン酸組成物]
一態様において、本発明は、表面修飾架橋ポリアスパラギン酸組成物を提供する。前記表面修飾架橋ポリアスパラギン酸組成物は、前記架橋ポリアスパラギン酸組成物の粒子を含む。前記粒子の表面は、無機粒子で修飾されている。
【0114】
架橋ポリアスパラギン酸組成物は、粒子状であってもよく、その粒子表面が無機粒子で修飾されていてもよい。無機粒子は、水不溶性の無機粒子であることが好ましい。無機粒子は、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、二酸化ケイ素などの金属酸化物が挙げられる。
架橋ポリアスパラギン酸組成物の粒子は、乾燥させた架橋ポリアスパラギン酸組成物を物理的に粉砕するなどして得ることができる。架橋ポリアスパラギン酸組成物の粒子に、フュームドシリカ等の無機粒子を反応させることにより、表面修飾架橋ポリアスパラギン酸組成物を得ることができる。架橋ポリアスパラギン酸組成物粒子と無機粒子との反応は、例えば、100~200℃に加熱することにより、行うことができる。反応時間は特に限定されないが、例えば、10~60分等が挙げられる。
【0115】
[架橋ポリアスパラギン酸含有製品]
一態様において、本発明は、架橋ポリアスパラギン酸組成物を含む、架橋ポリアスパラギン酸含有製品を提供する。
【0116】
一態様において、本発明は、前記架橋ポリアスパラギン酸組成物の製造方法により、架橋ポリアスパラギン酸組成物を得る工程と、前記架橋ポリアスパラギン酸組成物を用いて、架橋ポリアスパラギン酸含有製品を製造する工程と、を含む、架橋ポリアスパラギン酸含有製品の製造方法を提供する。
【0117】
上述のようにして得られた架橋ポリアスパラギン酸組成物は、種々の用途に用いることができる。「架橋ポリアスパラギン酸含有製品」とは、前記架橋ポリアスパラギン酸組成物を含有する製品をいう。架橋ポリアスパラギン酸含有製品は、前記架橋ポリアスパラギン酸組成物を含有する製品であれば、特に限定されない。架橋ポリアスパラギン酸含有製品としては、例えば、界面活性剤、増粘剤、減粘剤、膨潤剤、吸水剤、ゲル化剤、結合剤、成膜剤、凝集剤、接着剤、表面改質剤、又は徐放剤等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0118】
架橋ポリアスパラギン酸組成物の界面活性作用を利用した場合の製品例としては、例えば、乳化剤、エマルジョンブレーカー、分散剤、凝集剤、帯電防止剤等が挙げられる。分散剤の例としては、例えば、顔料分散剤、農薬粒剤用分散剤、微粉炭用分散剤、セメント分散剤、コンクリート混和剤、潤滑油用清浄分散剤、流動点降下剤、プラスチック着色助剤、相溶化剤等が挙げられる。凝集剤の例としては、例えば、高分子凝集剤、ろ水性・歩留り向上剤、汚泥の凝固剤等が挙げられる。架橋ポリアスパラギン酸組成物の界面活性作用を利用した場合の製品例としては、均染剤、緩染剤、発泡剤、増泡剤、起泡増泡剤、泡安定化剤、シャボン玉液、消泡剤、可溶化剤、切り花の延命剤、滑剤等もまた挙げられる。
【0119】
架橋ポリアスパラギン酸組成物の増粘作用を利用した場合の製品例としては、例えば、安定剤、パップ剤、焼き入れ油用高分子、作動液用高分子、原油増産用高分子(例えば、採鉱若しくは坑井掘削において用いる高分子(例えば、一時的シール物質、石油掘削補助用分散液、流動性制御材若しくは坑井処理流体における高分子)、捺染用のり剤等が挙げられる。架橋ポリアスパラギン酸組成物の減粘作用を利用した場合の製品例としては、可塑剤等が挙げられる。
【0120】
架橋ポリアスパラギン酸組成物の膨潤作用を利用した場合の製品例としては、例えば、薬剤用担体、薬剤揮散剤、薬剤保持体、通信ケーブル用止水材等の電気機器関連資材、ガスケット・パッキング、土木用のシーリング材、建築用のシーリング材、シールド工法の逸泥防止剤、水膨潤性玩具、シーラント、人工雪等が挙げられる。
【0121】
架橋ポリアスパラギン酸組成物の吸水作用を利用した場合の製品例としては、例えば、保湿剤、除湿剤、調湿剤、吸湿剤、保水材等が挙げられる。さらに、これらを用いた製品として、生理用品、おむつ、母乳パット、失禁用パッド、医療用アンダーパット、使い捨て雑巾、ペット用シート、携帯用トイレ、使い捨てカイロ、創傷保護用ドレッシング材、医療用血液吸収体、吸汗性繊維、ぬれティッシュー、消臭除湿シート、食品鮮度保持剤、食品等の分野における脱水剤、ドリップ吸収性シート等の食品包装材、生鮮野菜運搬用吸水性シート等の運搬用資材、結露防止用建築材料、インクジェット用記録紙、プリント配線板用防湿コーティング剤、コンクリート用防水剤、ガソリンの脱水剤、ガソリンの水分除去剤、油類の脱水剤、油類の水分除去剤等が挙げられる。農業分野における製品例としては、例えば、保水材、土壌改良剤、フローラルフォーム(切り花の固定化材)、育苗用苗床、水耕栽培植生シート、種子テープ、流体播種用媒体、結露防止用農業用シート、灌注液等が挙げられる。
【0122】
架橋ポリアスパラギン酸組成物のゲル化作用を利用した場合の製品例としては、例えば、消臭剤、脱臭剤、保冷材、吸油性高分子等が挙げられる。
【0123】
架橋ポリアスパラギン酸組成物の結合作用を利用した場合の製品例として、スケール防止剤、歯石沈着防止剤、重金属類溶出抑制剤、重金属類固定化剤、セレン処理剤、エポキシ樹脂硬化剤、ビルダー、樹脂強化剤、染料固着剤、繊維用防染加工剤、布加工薬剤、洗濯用消臭抗菌仕上げ剤等が挙げられる。
【0124】
架橋ポリアスパラギン酸組成物の成膜作用を利用した場合の製品例としては、例えば、防錆剤、包装材料(例えば、食品、医薬品若しくは電子材料等の包装材料)、一般工業用フィルム、包装材料用フィルム、コーティング剤、塗料、インキ、インクジェットインク、水性インキ、ボールペン用インキ、金属光沢色インキ、消去可能なインキ、筆記具用レフィル、錠剤コーティング剤、内側空間に薬剤を格納するためのシームレスのカプセル基剤、フロアポリッシュ用高分子、塗料用高分子、マスキング剤、プラスチック・ハードコート剤、フォトレジスト用高分子、電磁波シールド用コーティング剤、消火剤等が挙げられる。
【0125】
架橋ポリアスパラギン酸組成物の凝集又は接着作用を利用した場合の製品例としては、例えば、培養細胞シート、凝着剤、印刷インキ用バインダー、水溶性バインダー、不織布用バインダー、プラスチック強化繊維用バインダー、電子写真トナー用バインダー、磁気テープ用バインダー、レジンコンクリート用バインダー、鋳物砂用バインダー、ファインセラミック用バインダー、シール材(例えば、電子機器若しくは光ファイバー等のシール材)、接着剤等が挙げられる。
【0126】
架橋ポリアスパラギン酸組成物の表面改質作用を利用した場合の製品例としては、例えば、繊維処理剤、麺質改良剤若しくはプライマー等が挙げられる。
【0127】
架橋ポリアスパラギン酸組成物の徐放作用を利用した場合の製品例としては、例えば、徐放剤(例えば、化粧料、医薬、農薬若しくは肥料等の有効成分を徐放する基材等)が挙げられる。
【0128】
また、上記製品を原材料として含有する製品として、化粧品、香粧品、医薬品、医薬部外品、医薬関連材料、医療関連用品、保健関連用品、衛生製品、生活用品、農業資材、食品関連材料、土木関連材料、建築関連材料、電気機器関連材料、電子機器関連材料、筆記関連材料、塗装関連材料、印刷関連材料、電子印刷関連材料、製造プロセス関連材料、分析関連材料、坑井関連材料、染色関連材料、布処理関連材料、製紙関連材料、環境対策処理用材料、バインダー等への応用が可能である。
【0129】
架橋ポリアスパラギン酸含有製品は、原材料として架橋ポリアスパラギン酸組成物を用いて、製品に応じた公知の方法により製造することができる。
【実施例
【0130】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0131】
[アスパラギン酸組成物を用いた重合反応の評価]
<アスパラギン酸組成物の調製>
(実施例1、実施例2、比較例1)
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)を培養し、培養上清を精製して、各例のアスパラギン酸組成物を得た。
【0132】
(参考例1)
YIXING QIANCHENG BIO-ENGINEERING社製のL-アスパラギン酸を購入し、アスパラギン酸組成物として用いた。
【0133】
<アスパラギン酸組成物の組成分析>
アミノ酸は、アミノ酸分析計により分析した。有機酸は、高速液体クロマトグラフィーにより分析した。各例のアスパラギン酸組成物の組成を表1に示す。表1中の数値は、アスパラギン酸組成物の全質量(100質量%)に対する質量%である。「0.00」は、0.005質量%未満を示す。
【0134】
【表1】
【0135】
<固相重合によるポリスクシンイミドの製造(1)>
各例のアスパラギン酸組成物を用いて、固相重合により、ポリスクシンイミドを合成した。アスパラギン酸組成物160質量部と、85%リン酸97質量部とを乳鉢で混合し、トレイに移し替えて、190℃、1.3kPaで、6時間反応させた。反応中、適宜サンプリングを行い、ポリスクシンイミドの重量平均分子量(Mw)を測定した。
反応混合物を粉砕した後、蒸留水を用いて、ろ液が中性になるまで洗浄した。洗浄後の組成物を80℃で真空乾燥し、ポリスクシンイミド組成物を得た。
【0136】
<固相重合によるポリスクシンイミドの製造(2a)>
各例のアスパラギン酸組成物を用いて、固相重合により、ポリスクシンイミドを合成した。アスパラギン酸組成物160質量部と、85%リン酸83質量部とを乳鉢で混合し、トレイに移し替えて、190℃、1.3kPaで、6時間反応させた。反応中、適宜サンプリングを行い、ポリスクシンイミドの重量平均分子量(Mw)を測定した。
反応混合物を粉砕した後、蒸留水を用いて、ろ液が中性になるまで洗浄した。洗浄後の組成物を80℃で真空乾燥し、ポリスクシンイミド組成物を得た。
【0137】
<ニーダー(混錬機)を用いた固相重合によるポリスクシンイミドの製造(2b)>
各例のアスパラギン酸組成物を用いて、ニーダーを用いた固相重合により、ポリスクシンイミドを合成した。アスパラギン酸組成物160質量部と、85%リン酸97質量部とをバンバリー翼を有するニーダーに投入し、10分間混合した。その後、ニーダーに備え付けられたヒーターブロックを使用し、常温から内温190℃まで加熱しながら攪拌した。190℃到達後9.3kPaの減圧状態にし、3時間反応させた。反応混合物を粉砕した後、蒸留水を用いて、ろ液が中性になるまで洗浄した。洗浄後の組成物を80℃で真空乾燥し、ポリスクシンイミド組成物を得た。
【0138】
<ポリスクシンイミドの重量平均分子量(Mw)の測定>
ポリスクシンイミドの重量平均分子量(Mw)は、GPC法(示差屈折計)によるポリスチレン換算値を求めた。測定には、G1000HHRカラム、G4000HHRカラム、及びGMHHR-Hカラム(TSKgel(登録商標)、東ソー株式会社)を使用した。溶離液には、10mM臭化リチウムを含むジメチルホルムアミドを使用した。
【0139】
<結果>
結果を図1に示す。図1の凡例において、括弧内は、固相重合によるポリスクシンイミドの製造方法を示す。(1)は上記製造(1)の方法を用いたことを示し、(2a)は上記製造(2a)の方法を用いたことを示す。実施例1及び実施例2のアスパラギン酸組成物は、参考例1よりも不純物含有量が多いにもかかわらず、参考例1と比較して、重合反応の進行が速く、Mwの大きいポリスクシンイミドが得られた。
一方、比較例1は、実施例及び参考例と比較して、重合速度が遅く、ポリスクシンイミドのMwも小さかった。
【0140】
<溶液重合によるポリスクシンイミドの製造>
(実施例3)
攪拌機、温度計、Dean-Stark trap、及び窒素導入管を備えた1Lフラスコに、実施例2で得たアスパラギン酸組成物60質量部、メシチレン140質量部、スルホラン60質量部、及び85%リン酸2.6質量部を仕込み、撹拌状態を調整しながら均一なスラリー状態にした。オイルバスにて加熱還流下、共沸した水を除去しながら、反応を継続した。反応終了後、内容物をろ別し、メタノール洗浄し、さらに、蒸留水を用いて、ろ液が中性になるまで洗浄した。洗浄後の組成物を80℃で真空乾燥し、重量平均分子量49,000のポリスクシンイミド組成物を得た。
【0141】
(実施例4)
反応溶媒を、キシレン80質量部及びスルホラン100質量部に変えた以外は実施例3と同様にして、ポリスクシンイミド組成物の合成を行った。その結果、重量平均分子量80,000のポリスクシンイミド組成物を得た。
【0142】
(実施例5)
反応溶媒を、キシレン100質量部及びスルホラン100質量部に変えた以外は実施例3と同様にして、ポリスクシンイミド組成物の合成を行った。その結果、重量平均分子量111,000のポリスクシンイミド組成物を得た。
【0143】
[架橋アスパラギン酸組成物の評価]
<架橋ポリアスパラギン酸組成物の製造>
(実施例6~実施例13)
実施例2のアスパラギン酸組成物を用いて、<固相重合によるポリスクシンイミドの製造(2a)>に記載の方法により、ポリスクシンイミド組成物を得た。前記ポリスクシンイミド組成物を用いて以下の方法により架橋ポリアスパラギン酸組成物を製造した。
ポリスクシンイミド組成物100質量部を、イオン交換水167質量部に分散させた。前記分散液を撹拌しながら、48%水酸化ナトリウム水溶液86質量部を、滴下ロートを用いて滴下した。滴下終了後、溶け残りがなくなるまで撹拌を継続し、不揮発分(Nonvolatiel:NV)40%のポリアスパラギン酸組成物を得た。得られたポリアスパラギン酸組成物は、ポリアスパラギン酸ナトリウムの水溶液であった。
ポリアスパラギン酸組成物150gのpHを調整した。エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE;デナコールEX―810、ナガセケムテックス社製)を表2に示す各例の添加量で、ポリアスパラギン酸組成物に添加し、60℃にて反応させた。ゲル化を確認できるまで反応させた後、ゲルを回収し、水洗した後、凍結乾燥により、各例の架橋ポリアスパラギン酸組成物の固体を得た。得られた架橋ポリアスパラギン酸組成物中、架橋ポリアスパラギン酸は、ナトリウム塩の形態で存在した。
【0144】
<架橋ポリアスパラギン酸組成物の製造>
(実施例14、15)
実施例2のアスパラギン酸組成物を用いて、<ニーダー固相重合によるポリスクシンイミドの製造(2b)>に記載の方法により、ポリスクシンイミド組成物を得た。前記ポリスクシンイミド組成物を用いたこと以外は、実施例6~実施例13と同様の方法で、ポリスクシンイミド組成物から架橋ポリアスパラギン酸組成物を製造した。
【0145】
<架橋ポリアスパラギン酸組成物の製造>
(実施例16~21)
実施例2のアスパラギン酸組成物を用いて、<固相重合によるポリスクシンイミドの製造(2a)>に記載の方法により、ポリスクシンイミド組成物を得た。前記ポリスクシンイミド組成物を用い、以下の方法にて架橋ポリアスパラギン酸組成物を製造した。
【0146】
(実施例16、17)
ポリスクシンイミド10質量部をジメチルホルムアミド40質量部に混合し、60℃で5時間撹拌して溶解した。溶液を40℃に加温しながら、ヘキサメチレンジアミン(HDA)0.24質量部及びジメチルホルムアミド2.2質量部を混合した溶液を滴下し、40℃に保ったまま48時間反応した。得られたゲルをイオン交換水500質量部に加え、ミキサーで粉砕した。濾別した後、メタノール150質量部で1時間洗浄し、60℃にて真空乾燥することにより、架橋ポリスクシンイミド組成物(PCI-1)10.1gを得た。この場合の架橋度は2.0モル%であった。
上記で得た架橋ポリスクシンイミド組成物(PCI-1)3.0質量部をメタノール20質量部及びイオン交換水10質量部の混合溶媒に分散させた。48%水酸化ナトリウム2.4質量部とメタノール2.4質量部とを混合した溶液を10分割し、30分ごとに前記分散液に添加した後、15時間反応させた。反応液をメタノール400質量部に投入し、沈殿物を濾別回収した後、さらにメタノール100質量部で洗浄した。60℃にて真空乾燥し、架橋ポリアスパラギン酸組成物(架橋ポリアスパラギン酸ナトリウム)3.0g得た。
【0147】
(実施例18、19)
ヘキサメチレンジアミン(HDA)及びジメチルホルムアミドの使用量をそれぞれ0.36質量部及び3.2質量部としたこと以外は、実施例16、17と同様の方法で、架橋ポリスクシンイミド組成物(PCI-2)10.1gを得た。この場合の架橋度は3.0モル%であった。
前記架橋ポリスクシンイミド組成物(PCI-2)を用いたこと以外は、実施例16、17と同様の方法で、架橋ポリアスパラギン酸組成物(架橋ポリアスパラギン酸ナトリウム)3.0gを得た。
(実施例20、21)
ヘキサメチレンジアミン(HDA)及びジメチルホルムアミドの使用量をそれぞれ0.48部及び4.3部としたこと以外は実施例16、17と同様の方法で、架橋ポリアスパラギン酸組成物(架橋ポリアスパラギン酸ナトリウム)3.0gを得た。この場合の架橋度は4.0モル%であった。
【0148】
(比較例2)
比較例1のアスパラギン酸組成物を用いて、<固相重合によるポリスクシンイミドの製造(1)>に記載の方法により、ポリスクシンイミド組成物を得た。前記ポリスクシンイミド組成物を用いたこと以外は、上記実施例6~13と同様の方法で、ポリアスパラギン酸組成物を得た。得られたポリアスパラギン酸組成物150gのpHを調整して、表2に示す添加量でEGDEを添加し、60℃で反応させた。反応液のゲル化を確認することができず、架橋ポリアスパラギン酸組成物の固体を得ることができなかった。これは、ポリアスパラギン酸組成物中のポリアスパラギン酸のポリマー鎖が、架橋によりゲル化するのに十分な長さを有しなかったためと考えられた。
【0149】
<架橋ポリアスパラギン酸組成物の表面処理方法>
実施例7、9、11、13、15、17、19、21の架橋アスパラギン酸組成物について、以下の方法に従い、表面処理を行った。
乳鉢で粉砕し粒径150~710μmとなるようにメッシュ・パスした架橋ポリアスパラギン酸組成物100質量部に、フュームドシリカ(アエロジル200 日本アエロジル株式会社製)0.5質量部を添加し、よく混合した。次いで、140℃で20分加熱し、表面処理した架橋ポリアスパラギン酸組成物の固体を得た。
【0150】
<架橋ポリアスパラギン酸組成物の吸水性の評価>
架橋ポリアスパラギン酸の吸水性の評価は、生理食塩水を用いて、ティーバッグ法(JIS K-7223)に従って実施した。吸水量は以下の式より算出した。
【0151】
吸水量[g-water/g]=
{(吸水後重量)-(吸水後ブランク重量)-(サンプル重量)}/(サンプル重量)
【0152】
<架橋ポリアスパラギン酸組成物の保水性の評価>
架橋ポリアスパラギン酸の保水性の評価は、ティーバッグ法による吸水量の評価の後、遠心脱水機で25℃、150G×2分の条件で脱水し、脱水後のティーバッグの重量を測定することにより行った。保水量は以下の式より算出した。
【0153】
保水量[g-water/g]=
{(脱水後重量)-(脱水後ブランク重量)-(サンプル重量)}/(サンプル重量)
【0154】
<架橋ポリアスパラギン酸組成物の通液性の評価>
架橋ポリアスパラギン酸組成物の通液性の評価は、特開2012-41439号公報等に記載の方法を参考にして実施した。具体的には、架橋ポリアスパラギン酸組成物0.32gを150mL生理食塩水(NaCl 0.9質量%)に30分間浸漬して膨潤ゲル粒子を調製した。次いで、垂直に立てた円筒(直径(内径)25.4mm、長さ40cm、底部から40mlの位置及び60mLの位置に目盛り線を有する)の底部に、金網(目開き106μm、JIS Z8801-1:2006)と、開閉自在のコック(内径5mm、長さ10cm)とを有する濾過円筒管内に、コックを閉鎖した状態で、調製した膨潤ゲル粒子を生理食塩水と共に移した。次いで、膨潤ゲル粒子の上に、円形金網(目開き150μm、直径25mm)を、金網と膨潤ゲル粒子とが接触するように載せた。円形金網は、金網面に対して加圧軸(重さ22g、長さ47cm)が垂直に結合しているものを用いた。さらに、加圧軸におもり{88.5g}を載せ、1分間静置した。引き続き、コックを開き、濾過円筒管内の液面が60mL目盛り線から40mL目盛り線になるのに要する時間(T1;秒)を計測した。生理食塩水及び測定雰囲気の温度は25℃±2℃とした。通液性は以下の式より算出した。
【0155】
通液性[mL/min]=20mL×60/(T1-T2)
T1:測定試料を生理食塩水20mLが通過する時間(秒)
T2:測定試料のない場合の生理食塩水20mLが通過する時間(秒)
【0156】
上記吸水量、保水量、及び通液性の評価結果を表2、3にまとめた。表2、3中、「ゲル化」は、ゲル化した架橋ポリアスパラギン酸組成物が得られたか否かを示す(A:ゲル化した;B:ゲル化せず)。表2中、「ND」は検出限界以下を示す。
【0157】
【表2】
【0158】
【表3】
【0159】
表2、3の結果から、実施例6~21の架橋ポリアスパラギン酸組成物は、優れた吸水性及び保水性を有していることが確認された。
実施例9、実施例11、実施例13、実施例15、実施例17、実施例19、及び実施例21の表面処理をした架橋ポリアスパラギン酸組成物は、優れた通液性を示すことが確認された。実施例7の表面処理した架橋ポリアスパラギン酸組成物では、表面処理による通液性の向上は確認されなかった。これは架橋ポリアスパラギン酸組成物を得るための架橋剤量が少なかったため、十分な架橋密度が得られず、柔らかいゲルしか形成することができなかったためと考えられる。そのため、通液性が確保できなかったと考えられる。
【0160】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明および図示してきたが、これらは本発明を例示するものであり、限定的なものとみなされるべきではないことを理解すべきである。本発明の精神または範囲から逸脱することなく、追加、省略、置換、およびその他の変更を行うことができる。したがって、本発明は、前述の説明によって限定されるものとはみなされず、添付の請求項の範囲によってのみ限定される。
図1