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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/08 20060101AFI20240729BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20240729BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20240729BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
B23Q11/08 A
B24B7/04 A
B24B55/06
B23Q11/00 P
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020189982
(22)【出願日】2020-11-16
(65)【公開番号】P2022079045
(43)【公開日】2022-05-26
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(74)【代理人】
【識別番号】100185959
【弁理士】
【氏名又は名称】今藤 敏和
(72)【発明者】
【氏名】守屋 宗幸
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-212789(JP,A)
【文献】特開2017-001158(JP,A)
【文献】実開平01-166045(JP,U)
【文献】特開2020-028966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q11/00-13/00
B24B 5/00- 7/30
B24B53/00-57/04
B24B37/00
H01L21/304
B05B 1/00
B05B 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、
スピンドルと、該スピンドルを回転可能に保持するスピンドルハウジングと、該スピンドルハウジングの下方に突出する該スピンドルの下端部に固定されたマウント部とを有し、該保持面で保持された該被加工物を、該マウント部の下面側に装着された加工工具で加工する加工ユニットと、
該加工ユニットを下方向に加工送りする加工送り機構と、
該マウント部が貫通可能な開口部を有し、該チャックテーブル及び該マウント部を被覆可能な加工室カバーと、
該開口部の外周部に着脱自在に連結された環状の下連結部と、該スピンドルハウジングに対して固定された環状の上連結部と、該上連結部及び該下連結部を接続し、該加工ユニットの昇降に追従して伸縮可能な筒状の蛇腹部と、を有する伸縮カバー部と、
該蛇腹部の内側において、該上連結部から該下連結部に向かって気体の流れを形成する気体流形成ユニットと、
該チャックテーブルを移動させる移動機構と、
を備え
該加工室カバーは、該開口部が設けられた上板と、側板と、背板と、該チャックテーブルの出入りを可能にするための切り欠きが設けられた前板と、を有し、
該移動機構は、該下連結部が該加工室カバーに連結された状態で該切り欠きを通じて該加工室カバーに対して該チャックテーブルを出入りさせることができることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
該気体流形成ユニットは、
該上連結部に配置された1つのノズルと、
該上連結部の周方向に沿って該上連結部に離散的に配置された複数のノズルと、
該上連結部に配置された環状ノズルと、
のいずれかを有することを特徴とする請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
該気体流形成ユニットは、該上連結部の周方向に沿って該上連結部に離散的に配置された複数のノズルを有し、
各ノズルの向きは上下方向から所定角度だけ傾けられており、各ノズルから気体を噴射することにより該蛇腹部の内側では旋回流が形成されることを特徴とする請求項1に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルと、スピンドルと、スピンドルの下端部に固定されたマウント部と、を有し、チャックテーブルの保持面で保持された被加工物を、マウント部の下面側に装着された加工工具で加工する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物を研削するための研削装置は、被加工物を吸引保持するためのチャックテーブルを備える。チャックテーブルの上方には、円柱状のスピンドルと、当該スピンドルを回転可能に収容したスピンドルハウジングとが、配置されている。
【0003】
スピンドルの上端部には、モータが連結されており、スピンドルハウジングから突出しているスピンドルの下端部には、円盤状のホイールマウントが固定されている。このホイールマウントの下面側には、円環状の研削ホイールが装着される。
【0004】
スピンドルハウジング、スピンドル、モータ、ホイールマウント、研削ホイール等は、研削ユニットを構成する。スピンドルハウジングには、研削送り機構が連結されており、研削送り機構により、研削ユニットは上下方向に移動可能である。
【0005】
研削装置には、チャックテーブルと、研削ホイールと、を覆うための、加工室カバーが設けられる場合がある。加工室カバーの上板には、ホイールマウント及び研削ホイールが出入り可能な開口部が形成されており、被加工物の研削時に、研削ホイールは、加工室カバーで覆われる空間(加工室)内に配置される。
【0006】
研削時には、研削水を供給しながら被加工物を研削するので研削屑を含んだ研削水がミスト状になり周囲に飛散するが、ミスト状の研削水の飛散範囲は、加工室カバーによりある程度制限される。但し、ミスト状の研削水は、加工室カバーの上板の開口部から上方に漏れ出る。
【0007】
ところで、研磨装置においては、研磨粉等の飛散を防止するために、上板の開口部の外周部の上方に、上下方向に伸縮可能な筒状の蛇腹部を設けることが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
仮に、この蛇腹部を研削装置に設ければ、蛇腹部の内側に多数の研削屑が付着することとなる。メンテナンス時には、蛇腹部の下端部が上端部に接触する様に蛇腹部を縮めるが、このとき、蛇腹部の内側に付着した研削屑が落下して、保持面や、加工室内に配置された機器(厚さ測定器、研削水供給ノズル等)に、研削屑が付着する。
【0009】
保持面に研削屑が付着すると、研削時に、被加工物の割れ、欠け等の不具合が生じる。また、加工室内に配置された各機器に研削屑が付着すると、各機器の動作に不具合が生じる。例えば、厚さ測定器で被加工物の厚さが正確に測定できない、研削水供給ノズルから被加工物の研削領域へ研削水が供給されない等の不具合が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2017-80823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、上下方向に伸縮可能な蛇腹部の内側に付着する研削屑の量を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、被加工物を保持する保持面を有するチャックテーブルと、スピンドルと、該スピンドルを回転可能に保持するスピンドルハウジングと、該スピンドルハウジングの下方に突出する該スピンドルの下端部に固定されたマウント部とを有し、該保持面で保持された該被加工物を、該マウント部の下面側に装着された加工工具で加工する加工ユニットと、該加工ユニットを下方向に加工送りする加工送り機構と、該マウント部が貫通可能な開口部を有し、該チャックテーブル及び該マウント部を被覆可能な加工室カバーと、該開口部の外周部に着脱自在に連結された環状の下連結部と、該スピンドルハウジングに対して固定された環状の上連結部と、該上連結部及び該下連結部を接続し、該加工ユニットの昇降に追従して伸縮可能な筒状の蛇腹部と、を有する伸縮カバー部と、該蛇腹部の内側において、該上連結部から該下連結部に向かって気体の流れを形成する気体流形成ユニットと、該チャックテーブルを移動させる移動機構と、を備え、該加工室カバーは、該開口部が設けられた上板と、側板と、背板と、該チャックテーブルの出入りを可能にするための切り欠きが設けられた前板と、を有し、該移動機構は、該下連結部が該加工室カバーに連結された状態で該切り欠きを通じて該加工室カバーに対して該チャックテーブルを出入りさせることができる加工装置が提供される。
【0013】
好ましくは、該気体流形成ユニットは、該上連結部に配置された1つのノズルと、該上連結部の周方向に沿って該上連結部に離散的に配置された複数のノズルと、該上連結部に配置された環状ノズルと、のいずれかを有する。また、好ましくは、該気体流形成ユニットは、該上連結部の周方向に沿って該上連結部に離散的に配置された複数のノズルを有し、各ノズルの向きは上下方向から所定角度だけ傾けられており、各ノズルから気体を噴射することにより該蛇腹部の内側では旋回流が形成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係る加工装置は、上連結部と、下連結部と、上連結部及び下連結部を接続する蛇腹部と、を有する伸縮カバー部を有する。加工装置は、更に、蛇腹部の内側において、上連結部から下連結部に向かって気体の流れを形成する気体流形成ユニットを備える。
【0015】
気体流形成ユニットにより形成される気体の流れにより、加工室カバーの内側から蛇腹部へ、加工屑を含んだミスト状の研削水が上昇し難くなる。それゆえ、蛇腹部の内側に付着する研削屑の量を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】研削装置の斜視図である。
図2】研削装置の一部断面側面図である。
図3図3(A)は加工室カバーの斜視図であり、図3(B)は加工室カバーと伸縮カバー部との斜視図である。
図4図4(A)はノズルの配置の一例を示す上リングの上面図であり、図4(B)はノズルの配置の他の例を示す上リングの上面図である。
図5】第2の実施形態に係る研削装置の一部断面側面図である。
図6図6(A)は複数のノズルの配置の一例を示す上リングの上面図であり、図6(B)は複数のノズルの配置の他の例を示す上リングの上面図である。
図7】第3の実施形態に係るノズルの配置の一例を示す上リングの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。図1は、第1の実施形態に係る研削装置(加工装置)2の斜視図である。図1に示すX軸方向(前後方向)、Y軸方向、及び、Z軸方向(上下方向、加工送り方向)は互いに直交する。
【0018】
本実施形態の研削装置2は、被加工物11の研削を行うが、研削装置2への被加工物11の搬入、搬出等は作業者により行われるマニュアル式である。なお、研削装置2は、被加工物11の搬入、研削、洗浄及び搬出を自動的に行うフルオート式であってもよい。
【0019】
研削装置2は、構成要素を支持する基台4を有する。基台4の上面には、X軸方向に長手部を有する矩形状の開口4aが形成されている。開口4a内には、チャックテーブル6をX軸方向に沿って移動させるX軸移動機構8が設けられている。
【0020】
ここで、図2を参照し、チャックテーブル6等について説明する。図2は、研削装置2の一部断面側面図である。チャックテーブル6は、セラミックス等で形成された円盤状の枠体10を有する。枠体10の上面側には、円盤状の凹部が形成されている。
【0021】
この凹部には多孔質セラミックスで形成された円盤状のポーラス板12が固定されている。ポーラス板12は、略平坦な底面と、外周から中央に向かうにつれて厚さが増加する上面と、を有する。つまり、ポーラス板12の上面は、外周部に比べて中央部が僅かに突出する円錐面である。
【0022】
枠体10の凹部の底面には、放射状に形成された複数の流路(不図示)が形成されている。また、枠体10には、当該複数の流路に接続し、枠体10の底面の中心を貫通する様に、中央流路(不図示)が形成されている。
【0023】
中央流路には、真空ポンプ等の吸引源(不図示)が接続されており、吸引源を動作させるとポーラス板12の上面には負圧が伝達される。それゆえ、ポーラス板12の上面は、被加工物11を吸引保持する保持面6aとして機能する。
【0024】
チャックテーブル6は、円盤状のテーブルベース14の上にベアリング(不図示)を介して回転可能に連結されている。テーブルベース14には、貫通孔(不図示)が形成されている。
【0025】
テーブルベース14の下方には、モータ等の回転駆動源16が配置されており、回転駆動源16の回転軸16aは、テーブルベース14の中央部に形成された貫通孔を介してチャックテーブル6の底部に連結されている。
【0026】
回転駆動源16を動作させると、チャックテーブル6は、回転軸16aの周りに回転する。テーブルベース14の下部、且つ、回転駆動源16の周囲には、テーブルベース14を支持し、Z軸方向に対する回転軸16aの傾きを調整する傾き調整機構(不図示)が設けられている。
【0027】
傾き調整機構は、例えば、1つの固定軸と、2つの可動軸とを、有する。可動軸によりテーブルベース14を支持する高さ位置を調整することで、Z軸方向に対する回転軸16aの傾きが決定される。
【0028】
回転軸16aは、保持面6aの一部がX-Y平面と略平行になる様に、その傾き角度が調整される。傾き調整機構は、矩形状の移動板18で支持されている。移動板18は、X軸方向と略平行に配置された一対のガイドレール20上にスライド可能に取り付けられている。なお、図2では、1つのガイドレール20を示す。
【0029】
移動板18の下面側には、ナット部22が設けられている。ナット部22には、X軸方向と略平行に配置されたボールねじ24が、回転可能に連結されている。ボールねじ24の後方(X軸方向の一方)の端部には、パルスモータ等の回転駆動源26が連結されている。
【0030】
移動板18、ガイドレール20、ナット部22、ボールねじ24及び回転駆動源26は、X軸移動機構8を構成する。X軸移動機構8により、チャックテーブル6は、開口4aの前方(X軸方向の他方)に位置する搬入搬出領域A1と、開口4aの後方に位置する研削領域A2と、の間を移動する。
【0031】
搬入搬出領域A1に配置されたチャックテーブル6には、円盤状の被加工物11の表面11a側が載置される。被加工物11は、例えば、表面11a側に複数のデバイス(不図示)が形成されたシリコン製の円盤状のウェーハである。
【0032】
但し、被加工物11は、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)等の化合物で形成されてもよく、その他の材料で形成されてもよい。被加工物11の表面11a側には、樹脂製の保護テープ13が貼り付けられる。
【0033】
被加工物11は、保護テープ13を介してその表面11a側が保持面6aで保持されると、その裏面11b側が上方に露出する。チャックテーブル6の周囲には、保持面6aが露出する態様でチャックテーブルカバー28が設けられている。
【0034】
チャックテーブルカバー28のX軸方向の両側には、蛇腹カバー30が設けられている。蛇腹カバー30は、チャックテーブル6のX軸方向の移動に応じて、X軸方向に沿って伸縮する。基台4の後方側には、四角柱状のコラム32が設けられている。
【0035】
コラム32の前方側には、研削送り機構(加工送り機構)34が設けられている。研削送り機構34は、コラム32の前面に固定された一対のレール36を有する。各レール36には、スライダ38を介してZ軸移動板40がスライド可能に取り付けられている。
【0036】
Z軸移動板40の後方側には、ナット部42が設けられている。ナット部42には、一対のレール36の間においてZ軸方向に沿って設けられたボールねじ44が、回転可能な態様で連結している。
【0037】
ボールねじ44の上端部には、パルスモータ等の回転駆動源46が連結されている。回転駆動源46でボールねじ44を回転させれば、Z軸移動板40は、レール36に沿ってZ軸方向に移動する。
【0038】
Z軸移動板40の前面には、研削送り機構34によってZ軸方向に移動可能な態様で研削ユニット(加工ユニット)48が固定されている。研削ユニット48は、Z軸移動板40の前面に固定された円筒状の保持部材50を有する。
【0039】
保持部材50の内側には、Z軸方向に略平行に配置された円筒状のスピンドルハウジング52が配置されている。スピンドルハウジング52内には、Z軸方向に略平行に配置された円柱状のスピンドル54の一部が回転可能に保持されている。
【0040】
スピンドル54の上端部には、サーボモータ等の回転駆動源54aが連結されている。スピンドル54の下端部は、スピンドルハウジング52の下端よりも下方に突出しており、スピンドル54の下端部には、円盤状のマウント部(ホイールマウント)56が固定されている。
【0041】
マウント部56の下面側には、ねじ等の固定部材(不図示)により、環状の研削ホイール(加工工具)58が装着されている。研削ホイール58は、アルミニウム合金等の金属材料で形成された円環状のホイール基台58aと、ホイール基台58aの下面側に固定された複数の研削砥石58bと、を有する。
【0042】
複数の研削砥石58bは、ホイール基台58aの下面の周方向に沿って、隣り合う研削砥石58b同士の間に間隙が設けられる態様で環状に配列されている。研削砥石58bは、例えば、金属、セラミックス、樹脂等の結合材に、ダイヤモンド、cBN(cubic Boron Nitride)等の砥粒を混合した後、成型、焼成等を経て形成される。
【0043】
ホイール基台58aの研削砥石58bよりも内側には、ホイール基台58aの下面の周方向に沿って離散的に、複数の研削水供給口(不図示)が設けられている。また、ホイール基台58a、マウント部56、スピンドル54等には、各研削水供給口に、純水等の研削水を供給するための流路(不図示)が設けられている。
【0044】
当該流路の一端には、研削水供給ユニット(不図示)が接続されている。研削時には、研削砥石58bへ研削水が供給されるので、研削屑を含んだ研削水が周囲に飛散する。この研削屑を含んだ研削水の飛散範囲を低減するために、研削領域A2には加工室カバー60が設けられている。
【0045】
図3(A)は、加工室カバー60の斜視図である。なお、図1では、加工室カバー60は破線で示されている。加工室カバー60は、矩形状の上板62を有する。この上板62には、マウント部56及び研削ホイール58が貫通可能な径を有する開口部62aが形成されている。
【0046】
上板62の外周部には、上板62から下方に突出する態様で、前板64、側板66a,66b及び背板68が接続されている。側板66a,66bと、前板64とは、互いに接続されており、側板66a,66bと、背板68とも、互いに接続されている。
【0047】
前板64には、チャックテーブル6の出入りを可能にするための矩形状の切り欠き64aが形成されている。切り欠き64aの上端は、保持面6aで表面11a側が保持された被加工物11の裏面11bよりも高い位置にある。
【0048】
加工室カバー60、チャックテーブルカバー28等で規定される空間は、加工室60a(図2参照)となる。加工室カバー60等は、マウント部56と、研削ホイール58と、研削領域A2に配置されたチャックテーブル6との、各側方を少なくとも被覆可能である。
【0049】
研削ホイール58の交換時や研削装置2のメンテナンス時には、加工室60aは開放可能である。例えば、加工室カバー60は分解可能に構成されており、メンテナンス時には、加工室カバー60を分解することで、加工室60aが開放される。
【0050】
図3(B)に示す様に、加工室カバー60の上板62には、伸縮カバー部70が設けられている。図3(B)は、加工室カバー60と、伸縮カバー部70との、斜視図である。なお、図1及び図3(A)では、便宜上、伸縮カバー部70を省略している。
【0051】
伸縮カバー部70は、それぞれ金属で形成された環状の下リング(下連結部)72と、上リング(上連結部)74と、を有する。下リング72は、上板62の開口部62aの外周部に、着脱自在に連結される。
【0052】
例えば、下リング72と接触する上板62の開口部62aの外周部には、永久磁石(不図示)が設けられる。下リング72を上板62に接触させれば、下リング72は磁力により上板62に連結される。
【0053】
但し、下リング72と上板62との連結は、磁力に限定されるものではない。下リング72と上板62とは、手動開閉式又は自動開閉式のクランプ機構(不図示)により、着脱自在に連結されてもよい。
【0054】
これに対して、上リング74は、ねじ等の固定部材(不図示)を介して、スピンドルハウジング52に設けられたフランジ52aに固定されている。また、上リング74には、下リング72を仮止めするための永久磁石(不図示)が設けられている。
【0055】
下リング72を上板62から取り外して上昇させて上リング74に接触させると、下リング72は上リング74に接触した状態で磁力により保持される。下リング72と、上リング74とは、Z軸方向に伸縮可能な筒状の蛇腹部76で接続されている。
【0056】
蛇腹部76の内側には、スピンドルハウジング52及びスピンドル54が配置されている。例えば、研削ユニット48がZ軸方向に沿って昇降する場合、研削ユニット48の昇降に追従して、蛇腹部76は変形する。
【0057】
被加工物11の研削時には、まず、保持面6aで面11側を吸引保持したチャックテーブル6を研削領域A2に移動する(図2参照)。そして、チャックテーブル6を回転軸16aの周りに回転させる。
【0058】
更に、研削水供給口から研削水を供給しながら、スピンドル54を回転させ、加えて、研削ユニット48を研削送り機構34で下方向に加工送りする。研削砥石58bが被加工物11の面11に接すると、面11側が研削される。
【0059】
研削時には、研削屑を含んだ研削水がミスト状になり周囲に飛散するが、ミスト状の研削水の飛散範囲は、加工室カバー60によりある程度低減される。なお、加工室60a内に充満するミスト状の研削水は、所定のダクト(不図示)を介して加工室60aに連結された吸引装置(不図示)で吸引される。
【0060】
しかし、吸引装置で加工室60aを吸引しても、完全にはミスト状の研削水を吸引できない。それゆえ、ミスト状の研削水の一部は、上板62の開口部62aから上方に漏れ出て、蛇腹部76の内側には、多数の研削屑が付着する。
【0061】
従って、研削装置2のメンテナンス時に、下リング72が上リング74に接する様に蛇腹部76を縮めると、研削屑が落下して、保持面6aや、加工室60a内に配置された機器に、研削屑が付着する。
【0062】
機器の一例としては、開口4aの近傍において加工室60a内に配置されており、研削時に被加工物11の厚さを測定するための接触式の厚さ測定器78(図1参照)がある。また、機器の他の例としては、研削ホイール58とは別途独立に、被加工物11の被研削領域へ研削水を供給するための研削水供給ノズル(不図示)がある。
【0063】
図2に示す様に、本実施形態では、この様な機器や保持面6aへの研削屑の落下を防止するために、被加工物11の研削中に、蛇腹部76の内側において上リング74から下リング72に向かって気体の流れを形成するための気体流形成ユニット80を設ける。
【0064】
本実施形態の気体流形成ユニット80は、エア供給ユニット82を有する。エア供給ユニット82は、エア(気体)を圧縮するためのコンプレッサ(不図示)、圧縮エアを貯めるエアタンク(不図示)、圧縮エアをエアタンクから供給する際にエアからダストを取り除くフィルタ等を含む。
【0065】
但し、気体流形成ユニット80から供給される気体は、エアに限定されない。例えば、エア供給ユニット82に代えて、不活性ガス供給源(不図示)を設けることにより、気体流形成ユニット80は、蛇腹部76の内側において不活性ガスの流れを形成してもよい。
【0066】
本実施形態のエア供給ユニット82には、1つのエア供給路84の一端が接続されており、エア供給路84の他端には、1つのノズル86が接続されている。また、エア供給路84には、エアの噴射と、エアの噴射停止とを制御するための電磁弁(不図示)が設けられている。
【0067】
ノズル86は、上リング74の一部に形成され蛇腹部76の内側に連通する貫通開口(不図示)に固定されている(図4(A)参照)。図4(A)は、ノズル86の配置の一例を示す上リング74の上面図である。
【0068】
ノズル86は、上リング74に固定されたフランジ52aの外周端部よりも外側に位置する。ノズル86からは、蛇腹部76内に乱流が起きない程度の所定の流量で、エアが噴射される。例えば、100(L/min)の流量でエアが噴射される。
【0069】
ノズル86から噴射されるエアにより、蛇腹部76内には下向きのエアの流れが形成される。この下向きのエアの流れにより、加工室60aから蛇腹部76へ、加工屑を含んだミスト状の研削水が飛散し難くなるので、蛇腹部76の内側に付着する研削屑の量を低減できる。
【0070】
ノズル86からエアを噴射するタイミング及び時間並びに流量は、研削装置2の制御部(不図示)により制御される。制御部は、エア供給路84に設けられた電磁弁の開閉を制御することで、例えば、スピンドル54の回転開始時から回転終了時まで、ノズル86からエアを噴射させる。
【0071】
制御部は、エア供給路84及びノズル86に加えて、チャックテーブル6、X軸移動機構8、研削送り機構34等の動作を制御する。制御部は、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置や、フラッシュメモリ等の記憶装置を含むコンピュータによって構成される。
【0072】
記憶装置に記憶されるプログラム等のソフトウェアに従い処理装置を動作させることによって、制御部は、ソフトウェアと処理装置(ハードウェア資源)とが協働した具体的手段として機能する。
【0073】
なお、ノズル86の配置は、図4(A)に限定されない。ノズル86は、図4(B)に示す様に、上リング74の内周縁74aに接し、且つ、スピンドルハウジング52の外側に位置する様に配置されてもよい。図4(B)は、ノズル86の配置の他の例を示す上リング74の上面図である。
【0074】
また、ノズル86の配置は、上リング74の内周縁74aの前方側に限定されず、内周縁74aの後方側等の任意の位置に配置してもよい。いずれにしても、下向きのエアの流れにより、蛇腹部76の内側に付着する研削屑の量を低減できる。
【0075】
次に、第2の実施形態について説明する。図5は、第2の実施形態に係る研削装置92の一部断面側面図である。研削装置92は、エア供給路84の他端側に複数のノズル86が連結されている。係る点が、第1の実施形態と異なる。
【0076】
図6(A)は、複数のノズル86の配置の一例を示す上リング74の上面図である。上リング74には、上リング74の周方向に沿って離散的に形成された複数の貫通開口(不図示)が形成されており、各貫通開口には1つのノズル86が固定されている。
【0077】
なお、複数のノズル86の配置は、図6(A)に限定されない。複数のノズル86は、図6(B)に示す様に、上リング74の内周縁74aに接し、且つ、スピンドルハウジング52の外側に位置する様に配置されてもよい。図6(B)は、複数のノズル86の配置の他の例を示す上リング74の上面図である。
【0078】
複数のノズル86の数は、4つに限定されるものではない。3つ、又は、5つ以上のノズル86が、上リング74の周方向に沿って離散的に配置されてもよい。複数のノズル86は、上リング74の周方向に沿って略等間隔で配置されてよい。
【0079】
複数のノズル86を設けることにより、1つのノズル86を設ける場合と比較して、蛇腹部76の内側において下向きのエアの流れが形成されない領域を低減できる。それゆえ、第1の実施形態に比べて、蛇腹部76の内側に付着する研削屑の量を更に低減できる。
【0080】
一例において、上リング74の周方向に沿って略等間隔で24個のノズル86を設けて、各ノズル86から100(L/min)の流量でエアを噴射する。なお、各ノズル86の向きをZ軸方向から所定角度だけ傾けることにより、蛇腹部76の内側に旋回流を形成してもよい。
【0081】
次に、第3の実施形態について説明する。図7は、第3の実施形態に係る1つのノズル86の配置の一例を示す上リング74の上面図である。第3の実施形態では、エア供給路84の他端側に1つの環状ノズル86aが連結されている。係る点が、第1の実施形態と異なる。
【0082】
環状ノズル86aは、上リング74の内周縁74aに接する様に配置されている。環状ノズル86aは、スピンドルハウジング52の径よりも大きく、且つ、内周縁74aの径よりも小さい所定幅の径を有する環状の開口(不図示)を備える。
【0083】
環状ノズル86aにより、蛇腹部76内には下向きのエアの流れが形成される。特に、環状ノズル86aは、スピンドルハウジング52の側面の周方向に渡って満遍なく下向きのエアの流れを形成できるので、第1及び第2の実施形態に比べて、蛇腹部76の内側に付着する研削屑の量を更に低減できる。
【0084】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、気体流形成ユニット80は、エア供給ユニット82と、エア供給路84と、1以上のノズル86又は環状ノズル86aとに加えて、吸引ユニット(不図示)を含むことができる。
【0085】
吸引ユニットは、エジェクタ等の負圧発生源を有する。負圧発生源には、流路の一端が接続され、当該流路の他端は、下リング72に配置される。吸引ユニットにより、蛇腹部76の内側からエア等を吸引することで、より強力な下向きのエアの流れを蛇腹部76の内側に形成できる。
【0086】
ところで、上述の実施形態では、研削装置2,92について説明したが、伸縮カバー部70及び気体流形成ユニット80は、研磨装置(加工装置)にも適用できる。研磨装置において、円盤状のマウント部56の底面側には、各々円盤状のベース部材と研磨パッドとを有する加工工具が装着される。
【0087】
湿式の研磨では、下向きのエアの流れにより、研磨屑を含んだミスト状の研磨液等が、加工室60aから蛇腹部76へ飛散し難くなる。また、乾式の研磨では、下向きのエアの流れにより、研磨粉が、加工室60aから蛇腹部76へ飛散し難くなる。
【0088】
それゆえ、蛇腹部76の内側に付着する研磨屑の量を低減できる。なお、研磨装置においても、気体流形成ユニット80に加えて、吸引ユニットを設けることにより、より強力な下向きのエアの流れを蛇腹部76の内側に形成できる。
【符号の説明】
【0089】
2,92:研削装置(加工装置)
4:基台、4a:開口、6:チャックテーブル、6a:保持面、8:X軸移動機構
10:枠体、12:ポーラス板
11:被加工物、11a:表面、11b:裏面、13:保護テープ
14:テーブルベース、16:回転駆動源、16a:回転軸
18:移動板、20:ガイドレール
22:ナット部、24:ボールねじ、26:回転駆動源
28:チャックテーブルカバー、30:蛇腹カバー
32:コラム、34:研削送り機構(加工送り機構)
36:レール、38:スライダ、40:Z軸移動板
42:ナット部、44:ボールねじ、46:回転駆動源
48:研削ユニット(加工ユニット)、50:保持部材
52:スピンドルハウジング、52a:フランジ
54:スピンドル、54a:回転駆動源、56:マウント部
58:研削ホイール(加工工具)、58a:ホイール基台、58b:研削砥石
60:加工室カバー、60a:加工室
62:上板、62a:開口部
64:前板、64a:切り欠き、66a,66b:側板、68:背板
70:伸縮カバー部、72:下リング(下連結部)、74:上リング(上連結部)
74a:内周縁、76:蛇腹部、78:厚さ測定器
80:気体流形成ユニット、82:エア供給ユニット、84:エア供給路
86:ノズル、86a:環状ノズル
A1:搬入搬出領域、A2:研削領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7