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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20240729BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240729BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H01L21/31 C
H01L21/302 101G
H01L21/68 R
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020176562
(22)【出願日】2020-10-21
(65)【公開番号】P2021090042
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】62/942,660
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】野沢 俊久
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0340225(US,A1)
【文献】特開2004-031594(JP,A)
【文献】特開2006-049869(JP,A)
【文献】特開2018-204104(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0040198(US,A1)
【文献】特開2013-140950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/31
H01L 21/3065
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバと、
前記チャンバの中に設けられた上部カバーと、
誘電体の環状部と、前記環状部に埋め込まれた埋込電極と、を有し、前記チャンバの中に設けられた静電チャックと、
前記上部カバーと前記静電チャックの下の領域にプラズマを生成するように構成されたプラズマユニットと、を備え、
前記環状部は、前記上部カバーの直下に位置する環状の第1上面と、前記上部カバーの直下に位置し前記第1上面を囲み前記第1上面より高さが高い第2上面と、を有することを特徴とする基板処理装置。
【請求項2】
前記プラズマユニットは、前記上部カバーの下に前記上部カバーと対向して設けられたシャワープレートを備えたことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記上部カバーはグランド電極として提供されたことを特徴とする請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記プラズマユニットは、マイクロ波プラズマ生成装置を備えたことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記プラズマユニットは、誘導結合プラズマ装置を備えたことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記上部カバーの下面は、第1下面と、前記第1下面を囲み前記第1下面よりも下にある第2下面とを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記第2下面の直下に前記第2上面があり、前記第2下面と前記第2上面が接触すると、前記上部カバーと前記静電チャックの間を介した気体の流通が妨げられることを特徴とする請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記上部カバーの下面と前記第2上面が接触すると、前記上部カバーの下面と前記第2上面の間を介した気体の流通が妨げられることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記上部カバーを前記チャンバの内で上下動させるように構成された第1昇降機構と、
前記静電チャックを前記チャンバの内で上下動させるように構成された第2昇降機構と、を備えたことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記埋込電極は、第1上面の直下にあることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記上部カバーの直下から退避できるように設けられた支持ピンを備えたことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
上部カバーの直下に提供された支持ピンの上に基板をのせることと、
静電チャックの環状の第1上面で前記基板の下面の外縁部分を支持しつつ前記基板の下面中央部を露出させることと、
前記上部カバーと前記基板の接触を避けつつ、前記第1上面を囲み前記第1上面より高さが高い前記静電チャックの第2上面と前記上部カバーとを密着させることと、
前記静電チャックによって前記基板を前記第1上面に吸着させた状態で、前記基板の下面中央部にプラズマ処理を施すことと、をこの順に備えた基板処理方法。
【請求項13】
前記プラズマ処理の最中は、前記基板と、前記静電チャックと、前記上部カバーとによって囲まれた密閉空間ができることを特徴とする請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
前記静電チャックによって、前記基板の下面の外縁部分の全体が前記第1上面に吸着することを特徴とする請求項12又は13に記載の基板処理方法。
【請求項15】
前記プラズマ処理では、前記基板の下面中央部に酸化膜又は窒化膜を形成することを特徴とする請求項12から14のいずれか1項に記載の基板処理方法。
【請求項16】
基板の下面の外縁部分を静電チャックで保持しつつ、前記基板の上面に上部カバーを対向させることで前記基板の上面の上方の空間を前記上部カバーで覆われた密閉空間とすることと、
前記静電チャックで前記基板を静電吸着した状態で、前記基板の下面中央部にプラズマ処理を施すことと、を備えた基板処理方法。
【請求項17】
前記プラズマ処理では、前記基板の上面への成膜を抑制しつつ、前記基板の下面に膜を形成することを特徴とする請求項16に記載の基板処理方法。
【請求項18】
前記プラズマ処理により前記基板の反りが緩和されることを特徴とする請求項17に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は基板処理装置、基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第9,881,788号明細書には、基板の前面または背面のいずれかに応力補償層および犠牲層を堆積させるための方法および装置が開示されている。具体的には、ウエハが表面を上に向けた状態で裏面堆積が行われる。このような前面又は背面への層の堆積は、ウエハの前面への堆積により導入される応力を低減するために実行され得る。裏面堆積は、フォトリソグラフィなどの堆積後処理中に発生する裏面粒子関連の問題を最小限に抑えるために実行されてもよい。このような技術の改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第9,881,788号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、基板の下面へのプラズマ処理を可能とする基板処理装置と基板処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る基板処理装置は、チャンバと、該チャンバの中に設けられた上部カバーと、誘電体の環状部と、該環状部に埋め込まれた埋込電極と、を有し、該チャンバの中に設けられた静電チャックと、該上部カバーと該静電チャックの下の領域にプラズマを生成するように構成されたプラズマユニットと、を備え、該環状部は、該上部カバーの直下に位置する環状の第1上面と、該上部カバーの直下に位置し該第1上面を囲み該第1上面より高さが高い第2上面と、を有することを特徴とする。
【0006】
本開示のその他の特徴は以下に明らかにする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板の下面へのプラズマ処理を可能とする基板処理装置と基板処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】基板処理装置の構成例を示す断面図である。
図2】静電チャックの平面図である。
図3】回転アームを回転させたことを示す断面図である。
図4】回転アームの構成例を示す平面図である。
図5】回転アームと静電チャックの平面図である。
図6】基板の導入を示す断面図である。
図7】基板と静電チャックの接触を示す断面図である。
図8】静電チャックに支持された基板の平面図である。
図9】プラズマ処理の一例を示す断面図である。
図10A】別の例に係る基板処理装置の構成例を示す断面図である。
図10B図10Aの一部拡大図である。
図11】マイクロ波プラズマ生成装置を備える基板処理装置の構成例を示す断面図である。
図12】誘導結合プラズマ装置を備える基板処理装置の構成例を示す断面図である。
図13】誘導結合プラズマ装置を備える基板処理装置の別の構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
基板処理装置、基板処理方法について図面を参照して説明する。同じ又は対応する構成要素には同じ符号を付し、説明の繰り返しを省略する場合がある。
【0010】
実施の形態.
図1は、実施の形態に係る基板処理装置の構成例を示す断面図である。この基板処理装置は平行平板方式のプラズマ処理装置である。チャンバ10にはドア12が取り付けられ、チャンバ10の中に基板を提供したり、チャンバ10から基板を取り出したりすることができる。チャンバ10は、Dual Chamber Module(DCM) の一部、又はQuad Chamber Module (QCM)の一部として提供され得る。チャンバ10の中には上部カバー14が設けられている。一例によれば、上部カバー14はグランド電極として提供される。グランド電極とは接地用の電極である。
【0011】
上部カバー14は、軸部分14aと、軸部分14aにつながっている円板部分14bを備えている。軸部分14aは、z正負方向に移動可能な第1昇降機構16に固定され、z正負方向に移動可能となっている。一例によれば、軸部分14aに固定された板16aがベローズ16bの上端に固定され、チャンバ10に固定された板16cをベローズ16bの下端に固定することで第1昇降機構16が提供される。第1昇降機構16として、上部カバー14をチャンバ10の内で上下動させる様々な構成を採用することができる。
【0012】
円板部分14bは平面視で円形又は略円形となっている。上部カバー14の下面である円板部分14bの下面は、例えば、第1下面14cと、第1下面14cを囲み第1下面14cよりも下にある第2下面14dとを有している。そのため、円板部分14bの下面は中央に窪みを有する形状となっている。
【0013】
グランド電極である上部カバー14は、平行平板構造の上部電極として機能する。プラズマカップリングと放電防止のために、第1下面14cと第2下面14dの高さの差は例えば1mm以下とすることができる。
【0014】
チャンバ10の中には静電チャック20が設けられている。静電チャック20は、支持体20a、支持体20aの下端につながっている環状部20b、及びこれらに埋め込まれた埋込電極20cを備えている。支持体20aは第2昇降機構22に固定されている。第2昇降機構22は、静電チャック20をチャンバ10の内で上下動させるように構成されている。一例によれば、支持体20aに固定された板22aがベローズ22bの上端に固定され、チャンバ10に固定された板22cをベローズ22bの下端に固定することで第2昇降機構22が提供される。第2昇降機構22として、静電チャック20をチャンバ10の中で上下動させる様々な構成を採用することができる。
【0015】
支持体20aと環状部20bは例えば誘電体で形成することができる。環状部20bは平面視で環状になっている。環状部20bは、上部カバー14の直下に位置する環状の第1上面20dと、上部カバー14の直下に位置し第1上面20dを囲む第2上面20eを有している。第2上面20eは第1上面20dより高さが高い。第1上面20dと第2上面20eの高さの差は、例えば処理対象となる基板の厚みより大きい。
【0016】
図2は、静電チャック20の平面図である。環状部20bは円形又は略円形に形成されている。第1上面20dが環状の面を提供し、第2上面20eは第1上面20dを囲む環状の面を提供している。図2における破線は埋込電極20cを示す。埋込電極20cは、支持体20aと、環状部20bに埋め込まれている。外部の電源から埋込電極20cに正又は負の電圧を印加すると誘電体である環状部20bに誘電分極が起こる。
【0017】
図1には埋込電極20cが第1上面20dの直下にあることが示されている。そのため、埋込電極20cに電圧を印加すると第1上面20dとその近傍が誘電分極する。このように帯電が発生した状態で第1上面20dの上にシリコン基板などの分極しやすい基板をのせると、環状部20bと基板にクーロン力による引力が生じ、基板を環状部20bに把持することができる。環状部20bで基板を把持するので、支持体20aを誘電分極させる必要はない。そこで、例えば支持体20aとしてセラミック管を提供し、そのセラミック管の中に埋込電極20cを通すことができる。
【0018】
図1には、チャンバ10の内壁近傍にある回転アーム30が示されている。回転アーム30は、例えばQCMを構成する4つのチャンバの中で基板を搬送するために設けられている。
【0019】
基板処理装置は、上部カバー14と静電チャック20の下の領域にプラズマを生成するように構成されたプラズマユニットを備えている。一例によれば、環状部20bに囲まれた領域の直下にプラズマを提供できれば足りる。図1の例では、プラズマユニットは、シャワープレート34、ガス源41、42及びRF電源43を備えている。シャワープレート34は、上部カバー14の下に上部カバー14と対向して設けられている。シャワープレート34は、ガス源41、42からz正方向にガスを提供するためのスリットを有するプレート36、40と、プレート間に設けられたスペーサ38を備えている。シャワープレート34の全体を金属とすることができる。別の例によれば、少なくともプレート40を金属とする。ガス源41、42は、プラズマ処理に必要なガスを提供する。RF電源43は、ガスをプラズマ状態とするための高周波電力をシャワープレート34に提供する。
【0020】
このように、基板処理装置は、上部カバー14とシャワープレート34を有する平行平板構造によってプラズマ処理を可能とするものである。
【0021】
この基板処理装置を用いた基板処理方法の例を説明する。図3は、基板をチャンバ内に搬入する直前の基板処理装置の断面図である。図3に示されるとおり、第1昇降機構16を例えばモータ50によって動かすことで上部カバー14を上方に退避させる。さらに、第2昇降機構22を例えばモータ52によって動かすことで静電チャック20を上方に退避させる。
【0022】
その後、回転アーム30を回転させて、回転アームの一部である支持ピンをチャンバ10の中の基板受け取りポジションへ提供する。図4は、回転アーム30の構成例を示す平面図である。この例では、4つのチャンバを有するQCMが提供されている。回転アーム30を回転させることによって4つのチャンバ10の中のいずれか1つに、基板を支持するための支持ピン30a、30b、30cを提供する。
【0023】
図5は、支持ピン30a、30b、30cと静電チャック20の平面図である。支持ピン30a、30b、30cは、静電チャック20の環状部20bに囲まれた位置に配置される。
【0024】
次に、静電チャック20を下降させて、環状部20bを支持ピン30a、30b、30cの上端より下に位置させた上で、上部カバー14の直下に提供された支持ピン30a、30b、30cの上に基板をのせる。図6は、支持ピン30a、30b、30cに基板54をのせたことを示す図である。例えば基板54を支持した外部のアームがドア12を通って支持ピン30a、30b、30cの上に基板54を提供する。基板54は上面54aと下面54bを有している。基板54は、例えばシリコン又はワイドバンドギャップ半導体を材料とするウエハである。
【0025】
次に、環状部20bを上方向に移動させることで、環状の第1上面20dを基板54の下面の外縁部分に接触させる。図7は、第1上面20dと、基板54の下面54bの外縁部分とが接触した状態を示す図である。環状部20bが支持ピン30a、30b、30cの上端よりも上に移動する過程で、支持ピン30a、30b、30cと基板54が離れ、第1上面20dが基板54の下面の外縁部分を支持しつつ基板54の下面中央部を露出させる。その後、回転アーム30を回転させて、支持ピンを上部カバー14の直下から退避させる。
【0026】
図8は、図7の静電チャック20と基板54の平面図である。図8では、基板54が第1上面20dに接した結果、第1上面20dの全体又は大部分は平面視できず、第2上面20eが表れている。第1上面20dの内縁が破線で表現されている。
【0027】
次に、上部カバー14と基板54の接触を避けつつ、第2上面20eと上部カバー14とを密着させる。図9には、静電チャック20の第2上面20eと上部カバー14の第2下面14dを密着させたことが示されている。この例では、上部カバー14を下方に移動させることで、第2上面20eと、第2下面14dを密着させる。一例によれば、上部カバー14に、第2下面14dより上に位置する第1下面14cを設けることで、上部カバー14と基板54の接触を防止できる。
【0028】
第2下面14dの直下に第2上面20eがあり、第2下面14dと第2上面20eが接触すると、上部カバー14と静電チャック20の間を介した気体の流通が妨げられる。別の例において、上部カバー14の円板部分14bの下面を平坦にした場合は、上部カバーの下面と第2上面20eが接触することで、上部カバーの下面と第2上面20eの間を介した気体の流通が妨げられる。さらに、静電チャック20によって、基板54の下面54bの外縁部分の全体が第1上面20dに吸着する。
【0029】
一例によれば、図9に示す状態では、基板54、静電チャック20及び上部カバー14によって囲まれた空間が密閉空間になる。この場合、ガス源41、42から供給されたガスと、平行平板間に提供されたプラズマは、実質的に当該密閉空間には提供されない。
【0030】
次いで、基板54の下面54bにプラズマ処理を施す。具体的には、静電チャック20によって基板54を第1上面20dに吸着させた状態で、前述のプラズマユニットを用いて基板54の下面中央部にプラズマ処理を施す。一例によれば、プラズマ処理の最中は、基板54と、静電チャック20と、上部カバー14とによって囲まれた空間を密閉空間とすることで、基板54の上面54aへの有意なプラズマ処理を防止する。
【0031】
基板54の上面54a側はデバイスが形成されたデバイス面とし得る。その場合、基板54と上部カバー14の接触を回避することは、デバイスの保護を可能とする。上部カバー14の下面に図1に示す凹部を設けることは、この接触の回避を確実にする。
【0032】
プラズマ処理として、成膜、基板に形成された膜の改質、又はエッチングを採用し得る。一例によれば、プラズマ処理では、基板54の下面54bの中央部に酸化膜又は窒化膜を形成する。このプラズマ処理では、基板54の上面54aへの成膜を抑制しつつ、基板54の下面54bに膜を形成することができる。一例によれば、プラズマ処理により基板54の下面54bの中央部に成膜された膜は、基板54の反りを緩和する。
【0033】
このように、基板54の下面54bの外縁部分を静電チャック20で保持しつつ、基板54の上面54aに上部カバー14を対向させることで、基板54の上面54aの上方の空間を上部カバー14で覆われた密閉空間とする。静電チャック20で基板54を静電吸着した状態で、基板54の下面中央部にプラズマ処理を施すことができる。なお、静電チャック20による基板54の把持の有無は任意のタイミングで切り替えることができる。
【0034】
図10Aは、別の例に係る基板処理装置の断面図である。図10Aは、ウエハ451の裏側に成膜することができる装置400の簡素化された断面図である(ウエハ451は、図10Aにおいて黒い水平線として示されている)。図10Bは、装置400の一部の拡大図を示している。特に、図10Bは、ウエハ451が装置400内でどのように支持されるかを示している。ウエハ451は、その外縁部分又はその近くにおいて、ウエハ支持リング453によって支持される。支持リング453は、支持接触領域と呼ばれる領域において、ウエハエッジの近くで、ウエハ451の底面に接触することができる。支持接触領域は環状形状であり、ウエハの実質的に裏側全体(例えば、表面積で測定して少なくとも約95%、または少なくとも約99%)が堆積中に露出するように非常に小さくてもよい。いくつかの実施形態では、ウエハの底部上の支持接触領域は、ウエハの縁から内側に約5mm以下、例えば約1mm以下延びる。図10Bの例では、支持接触領域は、ウエハ451の底部にあり、ウエハの外縁から距離461だけ内側に延びる。支持リング453はまた、ウエハエッジ近くのウエハの上面に接触し得る。これらの場合、支持接触領域はウエハの上面まで延びる。この実施形態では、支持リングの局所断面を(図10Bに示されるようなL字型ではなく)C字型として、支持リングがウエハの外縁部分の一部の下および上に延びるようにすることができる。支持リングがウエハの上面に接触する場合、支持リングがウエハの上面を損傷しないように注意すべきである。このような注意には、支持リングが、アクティブ領域ではなく、定義された小さな領域(サポート接触領域)でのみウエハ上面に接触するようにすることが含まれ得る。いくつかの実施形態では、ウエハの上部の支持接触領域は、ウエハのエッジから半径方向内側に約0.5mm以下、または約0.25mm以下だけ延びる。
【0035】
いくつかの実施形態では、支持リングは、ウエハをその外縁部分またはその周辺で支持する別のウエハ支持機構で置き換えることができる。一例として、ウエハをその外縁近傍の異なる位置で支持する、分離された3つ以上のペグを用いることができる。一例によれば、ペグがウエハを包み込み、処理中にウエハを所定の位置に固定することができる。ペグ(または他の支持機構)は、上記の支持接触領域内でウエハに接触し得る。
【0036】
いずれの場合でも、基板を保持するためのメカニズムは、ウエハの上面がリアクタのどの部分にも実質的に接触しないように設計することができる。すなわち、この実施形態では、ウエハ451の上面と、ウエハ支持機構453(例えば、支持リング、ペグなど)または装置の他の部分との間の接触は、ウエハの端の近くでのみ起こる。
【0037】
ウエハの上面には、非アクティブな外縁領域に囲まれ、デバイスが製造される部分であるアクティブ領域が含まれる。非アクティブ外縁領域は、ウエハの形状に起因して存在し、同時に、処理に伴うウエハハンドリングの必要性に起因して存在する。ウエハの上面の活性領域がリアクタのどの部分にも接触しないようにすることにより、ウエハの上面への損傷を最小限にしたり完全に回避したりすることができる。基板が個々のデバイスに切断されるとき、通常は外縁の非アクティブ領域が除去され破棄されるため、上面の端で発生する接触は多くの場合問題にならない。そのため、この領域で発生する接触は、ウエハ上に形成される最終的なデバイスにとって致命的ではない。
【0038】
図10Aおよび図10Bの実施形態に戻る。支持リング453は、堆積領域459上にウエハ451を保持する。堆積領域459は、ウエハ451に対し、反応ガスが導入され、反応し、そして堆積される領域である。堆積領域459は、少なくともウエハ451とほぼ同一の広がりを有する。堆積領域459の底部は、この実施形態ではシャワーヘッド463としても機能する下面463によって定義され得る。下面463は、典型的には、ウエハ451と実質的に平行である。堆積領域459の高さ(ウエハ451の底面と下面との間の距離として測定される)は、多くの場合、比較的小さくてもよい。例えば、堆積領域459の高さは、約5~30mmの間、又は約15~25mmの間とし得る。いくつかの実施形態では、下部電極/シャワーヘッド上面463と、支持リング453の少なくとも1つは、堆積領域459の高さを調整することができるように移動可能である。前述のように、下面463は、堆積領域459の底部を定義する。様々な実施形態では、下面463には(例えば、RF電源で)電力が供給される。いくつかの実施形態では、下面463は、必要に応じてプロセスガスを提供するためのシャワーヘッドとして機能するように適合されている。他の実施形態では、下面463はより単純であり、プロセスガスは代替の入口を通して提供され得る。
【0039】
様々な異なるタイプのプラズマを使用することができる。例えば、堆積領域459で直接プラズマ生成したり(ダイレクトプラズマ)、異なる場所で生成されたプラズマが堆積領域にパイプで送られたりする(リモートプラズマ)。任意の適切なプラズマ発生装置を使用することができる。様々な実施形態において、プラズマは、ウエハ451の下の電力印加された下部電極/シャワーヘッド463と、ウエハの上の接地された上部電極/上面455と、の間に生成される容量結合プラズマである。
【0040】
ウエハ451の上には小さな上面ギャップ457がある。このギャップ457は、ウエハ451の上面とリアクションチャンバ内の上面455との間に延びる。図10Aのギャップのサイズは、説明のために誇張されている。上面455は、ヒーター、接地プレート、チャンバ天井、または別のタイプのプレート/表面であり得る。多くの場合、この上面455は電極として機能する。いくつかの実施形態では、上面ギャップ457の高さは、約0.5mm以下、例えば、約0.35mm以下である。これらまたは他の実施形態では、上面ギャップ457の高さは、少なくとも約0.1mm以上、例えば、少なくとも約0.25mm以上であり得る。多くの場合、この上面455は、ウエハに実質的に平行である。この上面/電極455はまた、ウエハ支持リング453と接触するように、図10Bに示されるように基板の外縁の近傍まで延びることができる。堆積中、不活性ガス(例えば、N2、Alなど)は、上面入口465から導入され、ウエハ451の上面を通過する。
【0041】
上面入口465は、不活性ガスがウエハの中心から外側に流れるように、ウエハ451の中心またはその近くに配置することができる。この外向きに流れる不活性ガスは、堆積を引き起こすガスが、上面ギャップ457に入らず、ウエハ451の上面と接触しないことを確実にするのに役立つ。換言すれば、不活性ガス流は、裏面堆積中にウエハ451の上面に材料が堆積しないことを確実にするのに役立つ。ウエハ451の上面をさらに保護するために、上面ギャップ457は、プラズマシースの厚さよりも小さくなるように設計され得る。これは、プラズマが基板を損傷する可能性のある上面のギャップに入らないようにするのに役立つ。
【0042】
多くの場合、プラズマは、上部電極と下部電極の間で生成される容量結合プラズマである。場合によっては、上部電極がアースに接続され、下部電極がRF電源に接続されることがある。下部電極は、プラズマから電子を収集するために部分的に動作する場合がある。デュアルRF(例えば、LFおよびHFの両方の周波数および電力を使用および制御する)を使用して、様々な場合に堆積膜の応力を調整することができる。
【0043】
いつかの実施形態では、裏面堆積リアクタは、裏面堆積を実行するように変更されたベベル洗浄装置である。変更できる処理装置の一例は、カリフォルニア州フリーモントのラムリサーチのCoronus(登録商標)プラズマベベルクリーン装置である。この装置は、以下の米国特許でさらに議論されており、それらのそれぞれは、参照によりその全体が組み込まれている。
2007年1月26日に出願され「BEVEL ETCHER WITH GAP CONTROL」と題された米国特許第7,858,898号。
2007年1月26日に出願され「CONFIGURABLE BEVEL ETCHER」と題された米国特許第7,943,007号。
2009年12月17日に出願され「METHOD AND APPARATUS FOR PROCESSING BEVEL EDGE」と題された米国特許第8,562,750号。
【0044】
裏面堆積を実行するのに有用な変更は、通常、以下のものを含む。
・異なるウエハホルダ(例えば、ウエハの外縁部分を支持し、処理中にウエハの裏面がプラズマに曝されたままとなることを可能にする環状ウエハホルダ)の設置。
・異なるガス供給システムの設置(または変更)(例えば、ウエハの裏側の下の堆積領域に堆積ガスを供給しつつ、ウエハの上面の上の上面ギャップに不活性ガスを供給するためのシステム)。
さらに、ヒーターおよび/または接地板は、ウエハの上に追加され得る。
【0045】
図10Aおよび10Bに示されるように、埋め込み電極453aをウエハ支持リング453に埋め込むことで、上で説明したようにウエハ支持リング453を静電チャックとして機能させることができる。いくつかの例では、埋め込み電極453aは、静電チャック機能を確実にするために、ウエハ451の真下に配置され得る。換言すれば、埋め込み電極453aは、距離461の真下の位置まで延びる。
【0046】
図11は、別の例に係る基板処理装置の断面図である。この例では、プラズマユニットとして、マイクロ波プラズマ生成装置を備える。チャンバ10の中には複数のロッド64が設けられている。ロッド64は、導体60と、導体60を囲む誘電体62を備えている。同軸導波管からこの誘電体62の中にマイクロ波を提供する。すなわち、同軸導波管のマイクロ波投入部から投入されたマイクロ波は、最終的に複数本のロッド64まで到達する。そして、マイクロ波エネルギはロッド64の誘電体62の外に電界を生じさせ、これによりプラズマ70を生成させる。このようにマイクロ波プラズマ生成装置では、複数のロッド64でプラズマを生成する。静電チャック20によって、基板54を第1上面20dに静電吸着させることができる。
【0047】
マイクロ波プラズマ生成装置を用いる場合には、上部カバー14は平行平板として用いられず、基板54のカバーとして機能する。そのため、基板54と上部カバー14の接触を避けるために、第1下面14cと第2下面14dの高さの差を大きくすることができる。換言すれば、上部カバー14の下面中央部に深い凹部を設けることができる。さらに、平行平板の場合、基板54の反りのばらつきによって基板から上部カバーまでの距離がばらつき、プラズマ密度が変化しえるが、マイクロ波プラズマ生成装置を用いることでそのような問題もなくなる。
【0048】
図12は、別の例に係る基板処理装置の断面図である。この例では、プラズマユニットとして、誘導結合プラズマ装置を備える。ICPリアクタ120は高密度プラズマで基板を処理することができる。適切なICPリアクタにはLAM Research Corp. Fremont、CAのTCP.TMシステムが含まれる。本明細書に組み込まれる、Ogleによる米国特許第4,948,458号も参照されたい。リアクタは、基板123に隣接してプラズマ122が生成されるプロセスチャンバ121を含む。上部カバー124は、基板123の上に設けられている。基板123の温度制御は、導管125を介して基板と上部カバー124との間の空間にヘリウムガスを供給することによって達成される。上部カバー124は、加熱される陽極酸化アルミニウム電極、又は埋め込み電極を有するセラミック材料を含み得る。この上部カバー124には、RF電源126およびRF整合を提供するための関連回路127などによって電力が供給される。処理中の基板123の温度は、温度プローブ29に取り付けられた温度監視装置128によって監視される。
【0049】
チャンバ121の内に真空を提供するために、ターボポンプがアウトレットポートに接続され、圧力制御弁を使用して所望の真空圧力を維持することができる。プロセスガスは、誘電体ウィンドウ133の近傍に延びるガス分配リングに反応物ガスを供給する導管131、132によってチャンバ121に供給することができる。別の例によれば、プロセスガスは、誘電体シャワーヘッドウィンドウを通して供給することができる。ウィンドウの近くのチャンバの外側に配置された外部誘導コイル134には、インピーダンス整合などのためにRF電源135および関連する回路136によってRF電力が供給される。
【0050】
明らかなことであるが、外部誘導コイル134は実質的に平面であり、一般に、平面スパイラルまたは一連の同心リングとなるように形成された単一の導電性要素を含む。このような平面構成により、より長い導電性要素を使用してコイルの直径を大きくし、コイルを容易にスケールアップすることができる。これにより、大きな基板を格納できたり、広い領域にわたって均一なプラズマを生成するために複数のコイル配置を使用したりすることができる。チャンバ内で基板が処理されるとき、RF電源135はコイル134に好ましくは約100kHz~27MHzのRF電流を提供し、より好ましくは13.56MHzのRF電流を供給する。さらに、RF電源126はカバー124に好ましくは約100kHz~27MHzの範囲のRF電流を供給し、より好ましくは400kHz、4MHz、または13.56MHzのRF電流を供給する。電極にRF電力を供給することにより、基板の表面下に大きなDCシース電圧を供給することができる。
【0051】
RFバイアスが基板に印加され、ギャップフィリング工程中に、成長中の膜のイオンボンバードメントを生成する。RF周波数は、定常状態のシースを維持するために必要な値(数百kHz)を超える値とすることができる。基板バイアスは、膜の特性に多くの有益な効果をもたらし、ギャップフィリング工程で成長中の膜を同時にスパッタリングするためにも使用できる。これにより、狭く、アスペクト比が高いギャップを、高品質の誘電体で迅速に埋めることができる。RFバイアスは、キャップ層の堆積ステップで使用できる。
【0052】
ICPリアクタ120は、本開示のギャップフィリングプロセスを実行するために使用することができ、ここで、重い希ガスを使用して、0.5mu.m未満の高アスペクト比ギャップのボイドフリーフィリングのためのetch-to-deposition rate ratio(EDR)を増加させることができる。ギャップフィリングプロセスは、本明細書に組み込まれる文献である、1996年3月29日に出願された「IMPROVED METHOD OF HIGH DENSITY PLASMA CVD GAP-FILLING」と題された米国特許出願第08/623,825号にさらに開示されている。
【0053】
図12の基板処理装置には、前述した静電チャック20が提供される。静電チャック20は基板123の下面の外縁部分を静電吸着するために設けられる。静電チャック20で基板123を保持し、基板123の下面に例えば成膜などのプラズマ処理が施される。
【0054】
図13は、別の例に係る基板処理装置の断面図である。図13の装置は、図12の装置と類似しているが、上部カバー124と第2上面20eが接する点で図12の構成と異なる。基板123の上面側において、基板123、静電チャック20及び上部カバー124によって密閉空間を提供することは、基板123の上面へのプラズマ処理の抑制に貢献する。
【符号の説明】
【0055】
10 チャンバ、 12 ドア、 14 上部カバー、 16 第1昇降機構、 20 静電チャック、 22 第2昇降機構、 34 シャワープレート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13