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特許7528038静電チャック、基板支持器、プラズマ処理装置及び静電チャックの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】静電チャック、基板支持器、プラズマ処理装置及び静電チャックの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240729BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021136616
(22)【出願日】2021-08-24
(65)【公開番号】P2023031112
(43)【公開日】2023-03-08
【審査請求日】2024-03-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】川端 淳史
【審査官】境 周一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-085129(JP,A)
【文献】特開2006-013256(JP,A)
【文献】特開2006-013257(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を静電吸着する静電チャックであって、
第1のセラミックス粒子で形成され、前記静電チャックに吸着された基板と対向する基板対向面を有するチャック本体と、
前記チャック本体の前記基板対向面に形成された複数の凸部と、を備え、
前記凸部それぞれの、少なくとも先端側層を除いた部分は、粒子の長径が20μm以上2000μm以下の第2のセラミックス粒子で形成され、気孔率が0.1%以上1.0%以下である、静電チャック。
【請求項2】
前記凸部の最先端面の表面粗さは、算術平均粗さRaで0.01μm以下である、請求項1に記載の静電チャック。
【請求項3】
前記凸部それぞれの先端側層は、単結晶板である、請求項2に記載の静電チャック。
【請求項4】
前記凸部それぞれは、先端側層を含む全体が、粒子の長径が20μm以上2000μm以下の前記第2のセラミックス粒子で形成され、気孔率が0.1%以上1.0%以下である、請求項2に記載の静電チャック。
【請求項5】
前記チャック本体の前記基板対向面の表面粗さは、算術平均粗さRaで0.01μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の静電チャック。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の静電チャックと、
前記静電チャックが上面に設けられる基台と、を備える、基板支持器。
【請求項7】
請求項6に記載の基板支持器と、
減圧可能に構成され、前記基板支持器を収容する処理チャンバと、を備える、プラズマ処理装置。
【請求項8】
基板を静電吸着する静電チャックであって、
第1のセラミックス粒子で形成され、前記静電チャックに吸着された基板と対向する基板対向面を有するチャック本体と、
前記チャック本体の前記基板対向面に形成された複数の凸部と、を備え、
前記チャック本体の前記基板対向面上に第2のセラミックス粒子の層を形成した後、前記第2のセラミックス粒子の層における前記凸部に対応する部分に光を選択的に照射し、被照射部分の前記第2のセラミックス粒子の長径を20μm以上2000μm以下とすると共に、前記被照射部分の気孔率を0.1%以上1.0%以下とし、その後、前記第2のセラミックス粒子の層における未照射部分を除去することで、前記複数の凸部が形成される、静電チャック。
【請求項9】
基板を静電吸着する静電チャックの製造方法であって、
(A)第1のセラミックス粒子で形成され、前記静電チャックに吸着された基板と対向する基板対向面を有するチャック本体を準備する工程と、
(B)前記チャック本体の前記基板対向面に(前記チャック本体の前記基板対向面から突出する)複数の凸部を形成する工程と、を含み、
前記(B)工程は、
(a)前記チャック本体の前記基板対向面上に第2のセラミックス粒子の層を形成する工程と、
(b)前記第2のセラミックス粒子の層における前記凸部に対応する部分に光を選択的に照射し、被照射部分の前記第2のセラミックス粒子の長径を20μm以上2000μm以下とすると共に、前記被照射部分の気孔率を0.1%以上1.0%以下とする工程と、
(c)前記第2のセラミックス粒子の層における未照射部分を除去し、前記凸部を形成する工程と、を含む、静電チャックの製造方法。
【請求項10】
前記(B)工程は、(d)前記第2のセラミックス粒子の層における前記凸部に対応する部分の上に、前記光を透過する単結晶板を載置する工程をさらに含み、
前記(b)工程は、前記第2のセラミックス粒子の層に、前記単結晶板を介して前記光を照射し、
前記(c)工程は、前記未照射部分を除去し、先端側層が前記単結晶板である前記凸部を形成する、請求項9に記載の静電チャックの製造方法。
【請求項11】
前記(b)工程は、
前記光を透過する透明板を、前記第2のセラミックス粒子の層に載置された複数の前記単結晶板にまとめて接触するように押し当てる工程と、
前記第2のセラミックス粒子の層に、前記透明板及び前記単結晶板を介して前記光を照射する工程と、を含む、請求項10に記載の静電チャックの製造方法。
【請求項12】
前記(c)工程は、前記未照射部分を除去し、先端側層を含む全体が粒子の長径が20μm以上2000μm以下の前記第2のセラミックス粒子で形成され且つ気孔率が0.1%以上1.0%以下の、前記凸部を形成し、
前記(B)工程は、前記凸部の最先端面を研磨し、当該最先端面の表面粗さを、算術平均粗さで0.01μmとする工程をさらに含む、請求項9に記載の静電チャックの製造方法。
【請求項13】
前記(A)工程は、前記チャック本体の前記基板対向面を研磨し、当該基板対向面の表面粗さを、算術平均粗さRaで0.01μmとする工程を含む、請求項9~12のいずれか1項に記載の静電チャックの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、静電チャック、基板支持器、プラズマ処理装置及び静電チャックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、板状試料を静電吸着するための内部電極を内蔵した基体の一主面に静電吸着面を形成し、この静電吸着面に複数の突起部を設け、これら複数の突起部のうちの一部または全部の突起部の頂面に1つ以上の微小突起部を設けた静電チャック装置が開示されている。上記静電チャック装置において、突起部及び微小突起部は、セラミックスからなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-207842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示にかかる技術は、静電チャックからのパーティクルの発生を抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、基板を静電吸着する静電チャックであって、第1のセラミックス粒子で形成され、前記静電チャックに吸着された基板と対向する基板対向面を有するチャック本体と、前記チャック本体の前記基板対向面に形成された複数の凸部と、を備え、前記凸部それぞれの、少なくとも先端側層を除いた部分は、粒子の長径が20μm以上2000μm以下の第2のセラミックス粒子で形成され、気孔率が0.1%以上1.0%以下である。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、静電チャックからのパーティクルの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】プラズマ処理システムの構成例を説明するための図である。
図2】容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
図3】基板支持器の構成例の概略を示す断面図である。
図4】静電チャックの部分拡大断面図である。
図5】第1実施形態にかかる静電チャックの製造方法を説明するためのフローチャートである。
図6】第1実施形態にかかる静電チャックの製造方法の各工程時における、セラミック部材の状態を示す図である。
図7】ステップS2c時のセラミック部材の状態の一例を示す図である。
図8】第2実施形態にかかる静電チャックの部分拡大断面図である。
図9】第2実施形態にかかる静電チャックの製造方法を説明するためのフローチャートである。
図10】第2実施形態にかかる静電チャックの製造方法の各工程時における、セラミック部材の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
半導体デバイスの製造工程では、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」という。)等の基板にプラズマ処理が行われる。プラズマ処理では、処理ガスを励起させることによりプラズマを生成し、当該プラズマによって基板を処理する。
【0009】
プラズマ処理は、処理チャンバと基板支持器とを備えるプラズマ処理装置で行われる。処理チャンバは基板支持器を収容する。基板支持器は基板を静電吸着する静電チャックを有する。静電チャックとしては、絶縁体により形成されるチャック本体の表面から突出する凸部を複数有し、これら凸部の頂面で基板を支持するものがある。凸部は、例えば、平均粒子径が20μm以下等の微小なセラミックス粒子の焼結体で構成される。
【0010】
ところで、プラズマ処理装置では、静電チャックの静電吸着面に付着した汚染物等を除去するために、静電チャック上に基板が載置されていない状態でプラズマを用いて処理チャンバ内をクリーニングするドライクリーニングが行われる。静電チャックの上記凸部が上述のような微小なセラミックス粒子の焼結体で構成される場合、プラズマを用いてドライクリーニングを行ったときに、セラミック粒子が脱落する現象すなわち脱粒が生じることがある。脱落したセラミック粒子は、基板等を汚染する原因となる。
【0011】
そこで、本開示にかかる技術は、静電チャックからの汚染原因物質すなわちパーティクルの発生を抑制する。以下、本実施形態にかかる静電チャック、基板支持器、プラズマ処理装置及び静電チャックの製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
<プラズマ処理システム>
先ず、一実施形態にかかるプラズマ処理システムについて、図1を用いて説明する。図1は、プラズマ処理システムの構成例を説明するための図である。
【0013】
一実施形態において、プラズマ処理システムは、プラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理システムは、基板処理システムの一例であり、プラズマ処理装置1は、基板処理装置の一例である。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、基板支持器11及びプラズマ生成部12を含む。プラズマ処理チャンバ10は、プラズマ処理空間を有する。また、プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間に供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。ガス供給口は、後述するガス供給部20に接続され、ガス排出口は、後述する排気システム40に接続される。基板支持器11は、プラズマ処理空間内に配置され、基板を支持するための基板支持面を有する。
【0014】
プラズマ生成部12は、プラズマ処理空間内に供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマを生成するように構成される。プラズマ処理空間において形成されるプラズマは、容量結合プラズマ(CCP;Capacitively Coupled Plasma)、誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)、ECRプラズマ(Electron-Cyclotron-resonance plasma)、ヘリコン波励起プラズマ(HWP:Helicon Wave Plasma)、又は、表面波プラズマ(SWP:Surface Wave Plasma)等であってもよい。また、AC(Alternating Current)プラズマ生成部及びDC(Direct Current)プラズマ生成部を含む、種々のタイプのプラズマ生成部が用いられてもよい。一実施形態において、ACプラズマ生成部で用いられるAC信号(AC電力)は、100kHz~10GHzの範囲内の周波数を有する。従って、AC信号は、RF(Radio Frequency)信号及びマイクロ波信号を含む。一実施形態において、RF信号は、100kHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。
【0015】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、処理部2a1、記憶部2a2及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aにより実現される。処理部2a1は、記憶部2a2からプログラムを読み出し、読み出されたプログラムを実行することにより種々の制御動作を行うように構成され得る。このプログラムは、予め記憶部2a2に格納されていてもよく、必要なときに、媒体を介して取得されてもよい。取得されたプログラムは、記憶部2a2に格納され、処理部2a1によって記憶部2a2から読み出されて実行される。媒体は、コンピュータ2aに読み取り可能な種々の記憶媒体であってもよく、通信インターフェース2a3に接続されている通信回線であってもよい。処理部2a1は、CPU(Central Processing Unit)であってもよい。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0016】
<プラズマ処理装置>
以下に、プラズマ処理装置1の一例としての容量結合型のプラズマ処理装置の構成例について説明する。図2は、容量結合型のプラズマ処理装置の構成例を説明するための図である。
【0017】
容量結合型のプラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持器11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持器11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持器11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持器11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は接地される。シャワーヘッド13及び基板支持器11は、プラズマ処理チャンバ10の筐体とは電気的に絶縁される。
【0018】
基板支持器11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板Wを支持するための中央領域111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域111bとを有する。ウェハは基板Wの一例である。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。従って、中央領域111aは、基板Wを支持するための基板支持面とも呼ばれ、環状領域111bは、リングアセンブリ112を支持するためのリング支持面とも呼ばれる。
【0019】
一実施形態において、本体部111は、基台113及び静電チャック114を含む。基台113は、導電性部材を含む。基台113の導電性部材は下部電極として機能し得る。静電チャック114は、基台113の上に配置される。静電チャック114は、セラミック部材200とセラミック部材200内に配置される静電電極201とを含む。静電チャック114は、中央領域111aを有する。一実施形態において、静電チャック114は、環状領域111bも有する。なお、環状静電チャックや環状絶縁部材115のような、静電チャック114を囲む他の部材が環状領域111bを有してもよい。この場合、リングアセンブリ112は、環状静電チャック又は環状絶縁部材115の上に配置されてもよく、静電チャック114と環状静電チャック又は環状絶縁部材115との両方の上に配置されてもよい。また、後述するRF電源31及び/又はDC電源32に結合される少なくとも1つのRF/DC電極がセラミック部材200内に配置されてもよい。この場合、少なくとも1つのRF/DC電極が下部電極として機能する。後述するバイアスRF信号及び/又はDC信号が少なくとも1つのRF/DC電極に供給される場合、RF/DC電極はバイアス電極とも呼ばれる。なお、基台113の導電性部材と少なくとも1つのRF/DC電極とが複数の下部電極として機能してもよい。また、静電電極201が下部電極として機能してもよい。従って、基板支持器11は、少なくとも1つの下部電極を含む。
【0020】
リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。一実施形態において、1又は複数の環状部材は、1又は複数のエッジリングと少なくとも1つのカバーリングとを含む。エッジリングは、導電性材料又は絶縁材料で形成され、カバーリングは、絶縁材料で形成される。
【0021】
また、基板支持器11は、静電チャック114、リングアセンブリ112及び基板Wのうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路113a、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路113aには、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。一実施形態において、流路113aが基台113内に形成され、1又は複数のヒータが静電チャック114のセラミック部材200内に配置される。また、基板支持器11は、基板Wの裏面と中央領域111aとの間の間隙に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0022】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。また、シャワーヘッド13は、少なくとも1つの上部電極を含む。なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0023】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する少なくとも1つの流量変調デバイスを含んでもよい。
【0024】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、少なくとも1つのRF信号(RF電力)を少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ生成部12の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を少なくとも1つの下部電極に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0025】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、10MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に供給される。
【0026】
第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して少なくとも1つの下部電極に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。バイアスRF信号の周波数は、ソースRF信号の周波数と同じであっても異なっていてもよい。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号の周波数よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、100kHz~60MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、少なくとも1つの下部電極に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0027】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、少なくとも1つの下部電極に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のDC信号は、少なくとも1つの下部電極に印加される。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、少なくとも1つの上部電極に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、少なくとも1つの上部電極に印加される。
【0028】
種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号がパルス化されてもよい。この場合、電圧パルスのシーケンスが少なくとも1つの下部電極及び/又は少なくとも1つの上部電極に印加される。電圧パルスは、矩形、台形、三角形又はこれらの組み合わせのパルス波形を有してもよい。一実施形態において、DC信号から電圧パルスのシーケンスを生成するための波形生成部が第1のDC生成部32aと少なくとも1つの下部電極との間に接続される。従って、第1のDC生成部32a及び波形生成部は、電圧パルス生成部を構成する。第2のDC生成部32b及び波形生成部が電圧パルス生成部を構成する場合、電圧パルス生成部は、少なくとも1つの上部電極に接続される。電圧パルスは、正の極性を有してもよく、負の極性を有してもよい。また、電圧パルスのシーケンスは、1周期内に1又は複数の正極性電圧パルスと1又は複数の負極性電圧パルスとを含んでもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0029】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0030】
(第1実施形態)
<基板支持器>
次に、第1実施形態にかかる基板支持器11の構成を、図3及び図4を用いて説明する。図3は、基板支持器11の構成例の概略を示す断面図である。図4は、静電チャック114の部分拡大断面図である。
【0031】
前述のように、基板支持器11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。
また、一実施形態において、本体部111は、基台113、静電チャック114及び環状絶縁部材115を含む。
【0032】
基台113は例えばAl等の導電性材料で形成されている。一実施形態において、基台113と静電チャック114は、例えば接着等により一体化されている。同様に、基台113と環状絶縁部材115は、例えば接着等により一体化されている。
【0033】
一実施形態において、静電チャック114は、基台113の中央部の上に設けられ、その上面が前述の中央領域111a(以下、基板支持面111aという。)となる。
静電チャック114は、基板Wを静電吸着するものであり、具体的には、基板Wを静電吸着して支持するものである。なお、静電チャック114は、クーロン力によって基板Wを電気的に吸着してもよいし、ジョンソン‐ラーベック力によって基板Wを電気的に吸着してもよい。静電チャック114は、図3及び図4に示すように、チャック本体としてのセラミック部材200と、複数(例えば10~100000個)の凸部210とを含む。
【0034】
セラミック部材200は、第1のセラミックス粒子で形成される。
第1のセラミックス粒子は、例えば、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化イットリウム、窒化アルミニウムの少なくともいずれか1つの粒子を含む。セラミック部材200は、第1のセラミックス粒子を焼結して形成される。焼結後のセラミック部材200における、第1のセラミックス粒子で形成された部分の気孔率(気孔率とは、総体積に対する気孔の体積割合(%))は、凸部210と同等またはそれ以下であり、例えば1%以下である。また、焼結後のセラミック部材200の第1のセラミックス粒子の粒径(例えば長径)は、凸部210の後述の第2のセラミックス粒子の長径より小さく、例えば1μm以下である。このように小さな第1のセラミックス粒子を用いて、気孔率1%以下すなわち緻密に、セラミック部材200を形成することで、プラズマ処理チャンバ10内をドライクリーニングしたときに、第1のセラミックス粒子が脱落するのを抑制することができる。
【0035】
セラミック部材200の上面200aは、静電チャック114に静電吸着された基板Wと対向する基板対向面となる。言い換えると、セラミック部材200は、上記基板対向面200aを有する。一実施形態において、基板対向面200aの表面粗さは、算術平均粗さRaで0.01μm以下である。このような表面粗さとなるように、基板対向面200aを研磨等の加工することにより、基板対向面200aに存在していた、脱落しやすい第1のセラミックス粒子を予め除去することができる。
【0036】
さらに、セラミック部材200の内部には、基板Wを静電吸着するための静電電極201が設けられている。静電電極201には、直流電源(図示せず)からの直流電圧が印加される。これにより生じる静電力により、基板支持面111aに基板Wが吸着保持される。
【0037】
一実施形態において、セラミック部材200の周縁部には、中央部より高く形成された環状壁部202が設けられている。
また、セラミック部材200は、例えば、基板Wの直径よりも小径に形成されており、基板Wが基板支持面111aに載置されたときに、基板Wの周縁部がセラミック部材200から張り出すようになっている。
【0038】
各凸部210は、セラミック部材200の基板対向面200aに、当該基板対向面200aから突出するように形成されている。静電チャック114は、凸部210の最先端面210aで基板Wを支持する。各凸部210は、柱状(具体的には例えば円柱状)に形成される。
【0039】
また、各凸部210の先端側層212を除いた部分(以下、根元側層)211は、第2のセラミックス粒子で形成される。具体的には、各凸部210の根元側層211は、第2のセラミックス粒子を光により焼結して形成される。焼結後の根元側層211の第2のセラミックス粒子の長径は、20μm以上2000μm以下、より好ましくは、50μm以上1000μm以下、より好ましくは、100μm以上500μm以下である。また、焼結後の根元側層211の気孔率は0.1%以上1.0%以下である。
第2のセラミックス粒子には、セラミック部材200及び先端側層212を構成する後述の単結晶板との接合性に優れたセラミックス粒子が用いられる。一実施形態において、第2のセラミックス粒子の種類は、第1のセラミックス粒子と同じである。ただし、第2のセラミックス粒子の種類は、第1のセラミックス粒子と一部または全部が異なっていてもよい。
【0040】
さらに、各凸部210の最先端面210aの表面粗さは、例えば、算術平均粗さRaで0.01μm以下である。
本実施形態では、各凸部210における、最先端面210aを含む先端側層212が、単結晶板で構成されることにより、各凸部210の最先端面210aの表面粗さが上述のように算術平均粗さで0.01μm以下とされる。
【0041】
先端側層212を構成する単結晶板の材料には、第2のセラミックス粒子の焼結に用いる光を透過可能な材料が用いられる。また、先端側層212を構成する単結晶板の材料は高度が高く摩耗に強いものが好ましい。先端側層212を構成する単結晶板の材料としては、例えば、サファイア(酸化アルミニウム)、マグネシア(酸化マグネシウム)、イットリア(酸化イットリウム)等が用いられる。サファイアの単結晶板を用いる場合、最先端面210aとなる面の面方位がc面であるものを用いてもよい。サファイアの単結晶板のc面は原子密度が高いため、である。
【0042】
根元側層211及び先端側層212(すなわち単結晶板)の厚さは、それぞれ10~100μmである。また、根元側層211及び先端側層(すなわち単結晶板)それぞれの平面視における面積すなわち各凸部210の平面視における面積は、例えば7×10-2mm~4.0mmである。
【0043】
最先端面210aの形状は例えば平面である。ただし、最先端面210aの形状は先端に向けて細くなる曲面であってもよい。例えば、HARC(High Aspecto Ratio Contact)系のプロセス等の高パワーのプロセスを行うプラズマ処理装置1の場合には、接触面積が一様であることが要求されるため、最先端面210aの形状は平面とされる。また、例えば、冷却ガスによる冷却が主である、logic系のプロセス等の低パワーのプロセスを行うプラズマ処理装置1の場合には、残留電荷対策の観点から接触面積が小さい方が良いため、最先端面210aの形状は曲面とされる。
なお、最先端面210aの形状を曲面とする場合、単結晶板として例えば半球状のものが用いられる。半球状等の曲面を有する単結晶板は例えば平板状の単結晶板を研磨することにより作製可能である。
【0044】
環状絶縁部材115は、静電チャック114を囲むように、基台113の周縁部の上に設けられ、その上面がリング支持面111bとなる。リング支持面111bの位置は、基板支持面111aより低い。
環状絶縁部材115の内部にリングアセンブリ112を静電吸着するための静電電極201を設け、環状静電チャックとしてもよい。
環状絶縁部材115(または環状静電チャック)は、静電チャック114と一体化されていてもよい。
【0045】
一実施形態において、リングアセンブリ112は、リング支持面111bに支持されたときに、当該リングアセンブリ112の内周部が、セラミック部材200から前述のように張り出した基板Wの周縁部の下側にもぐり込むように形成されていてもよい。
【0046】
<静電チャック114の製造方法>
続いて、第1実施形態にかかる静電チャック114の製造方法について、図5図7を用いて説明する。図5は、第1実施形態にかかる静電チャック114の製造方法を説明するためのフローチャートである。図6は、第1実施形態にかかる静電チャック114の製造方法の各工程時における、セラミック部材200の状態を示す図である。図7は、後述のステップS2c時の、セラミック部材200の状態の一例を示す図である。
【0047】
静電チャック114を製造する場合、まず、セラミック部材200が準備される(ステップS1)。具体的には、例えば、第1のセラミックス粒子が金型等を用いて板状に成形され、その後、第1のセラミックス粒子の成形体が加圧された状態で焼結され、板状の焼結体が作製される。上記板状の焼結体は2枚作製される。2枚の板状の焼結体が、その間に静電電極201が形成された後に接合され、セラミック部材200が作製される。
【0048】
また、セラミック部材200が、環状壁部202を有する場合、研削加工やブラスト加工等により、環状壁部202が形成される。
さらに、ステップS1において、セラミック部材200の基板対向面200aが、その表面粗さが算術平均粗さRaで0.01μm以下となるように研磨されてもよい。この研磨は、2枚の板状の焼結体の接合前に行ってもよいし、接合後に行ってもよい。また、セラミック部材200が環状壁部202を有する場合、基板対向面200aの研磨は、環状壁部202の形成後に行われる。
【0049】
次いで、セラミック部材200の基板対向面200aに複数の凸部210が形成される(ステップS2)。
【0050】
具体的には、例えば以下のステップS2a~S2dが行われる。
まず、図6(A)に示すように、セラミック部材200の基板対向面200a上に第2のセラミックス粒子の層Lが形成される(ステップS2a)。より具体的には、セラミック部材200の基板対向面200a上に、焼結後に気孔率が1%以下になるような粒度分布の第2のセラミックス粒子の層Lが加圧成形される。加圧成形された第2のセラミックス粒子の層Lの厚さは10μm~100μmである。一実施形態において、第1のセラミックス粒子及び第2のセラミックス粒子に酸化アルミニウムの粒子が用いられ、サファイアの単結晶板Bが用いられる。また、他の実施形態において、第1のセラミックス粒子に酸化アルミニウムの粒子が用いられ、イットリアの単結晶板Bが用いられ、第2のセラミックス粒子には、酸化アルミニウムの粒子と酸化イットリウムの粒子の混合粒子が用いられる。
【0051】
その後、図6(B)に示すように、第2のセラミックス粒子の層Lにおける、凸部210に対応する部分の上に、第2のセラミックス粒子の焼結に用いる光を透過する単結晶板B(具体的には単結晶板のチップ)が載置される(ステップS2b)。単結晶板Bは、凸部210に対応する部分それぞれに載置される。各単結晶板Bは凸部210の先端側層212に対応する大きさを有する。
【0052】
続いて、第2のセラミックス粒子の層Lにおける凸部210に対応する部分に、光が選択的に照射され、被照射部分L1が焼結される(ステップS2c)。具体的には、図6(C)に示すように、第2のセラミックス粒子の層Lにおける凸部210に対応する部分に、単結晶板Bを介してレーザ光Eが照射され、被照射部分L1が焼結される。これにより、当該被照射部分L1の第2のセラミックス粒子の長径及び被照射部分L1の気孔率が適正化される。具体的には、例えば、光照射による焼結により、被照射部分L1の第2のセラミックス粒子の長径が20μm以上2000μm以下とされると共に、被照射部分L1の気孔率が0.1%以上1.0%以下とされる。また、レーザ光の照射により、第2のセラミックス粒子の層Lにおける被照射部分L1と単結晶板Bが接合され、且つ、被照射部分L1とセラミック部材200とが接合される。言い換えると、レーザ光の照射により、セラミック部材200と単結晶板Bとが被照射部分L1を介して接合される。
【0053】
第2のセラミックス粒子の焼結に用いる光の波長は、第2のセラミックス粒子の種類に応じて選択される。第2のセラミックス粒子が酸化アルミニウムの場合、例えば波長が500nm~1100nmの光を用いてよい。一例として、Nd:YAGレーザ(1064nm)又はHe-Neレーザ(543nm)を用いてよい。
【0054】
光照射の際、当該光を透過する板状部材である透明板Dが、図7に示すように、単結晶板Bが載置されたセラミック部材200に押し当てられてもよい。そして、透明板Dが押し当てられた状態で、第2のセラミックス粒子の層Lにおける凸部210に対応する部分に、透明板D及び単結晶板Bを介して焼結用の光が照射されてもよい。この場合、透明板Dは、第2のセラミックス粒子の層Lに載置された複数の単結晶板Bにまとめて接触するように上方から押し当てられる。
【0055】
なお、透明板Dとしては、反り及びうねりが小さく平坦(例えば平面度が0.5μm以下)なものが用いられる。また、透明板Dは、単結晶板Bとの接触面の表面粗さが、例えば、セラミック部材200の基板対向面200aと同等とされる。
透明板Dは、例えばサファイア等の単結晶の板材である。ただし、透明板Dは、第2のセラミックス粒子の焼結に用いる光を透過可能であれば、多結晶の板材であってもよい。また、透明板Dは、第2のセラミックス粒子の焼結に用いる光を透過可能であれば、SiウェハやGeウェハであってもよい。
【0056】
次いで、図6(D)に示すように、第2のセラミックス粒子の層Lにおける光の未照射部分L2すなわち未焼結の第2のセラミックス粒子が除去され、単結晶板Bを有する凸部210が形成される(ステップS2d)。未照射部分L2の除去は例えば超音波洗浄等の洗浄により行われる。
【0057】
以上により、本実施形態にかかる静電チャック114が作製される。
基板支持器11を得るための、静電チャック114と基台113との接合は、例えば静電チャック114の完成後に行われる。ただし、凸部210を形成前のセラミック部材200と基台113とを接合した後、基台113と接合されたセラミック部材200に対し凸部210を形成してもよい。言い換えると、ステップS1において、セラミック部材200と基台113とが接合されてもよい。
【0058】
<第1実施形態の主な効果>
以上のように、本実施形態にかかる静電チャック114は、各凸部210の根元側層211が、粒子の長径が20μm以上2000μm以下の第2のセラミックス粒子で形成され、気孔率が0.1%以上1.0%以下である。つまり、各凸部210の根元側層211が、大きなセラミックス粒子で緻密に形成されている。セラミックス粒子が大きいとセラミックス粒子の粒子界面が広く、また、気孔率が小さく緻密であると、セラミックス粒子間の結合が強い。したがって、プラズマを用いてプラズマ処理チャンバ10内のドライクリーニングを行ったときに、根元側層211を構成するセラミックス粒子が脱落するのを抑制することができる。このように、本実施形態によれば、静電チャック114からのパーティクルの発生を抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態にかかる静電チャック114は、各凸部210の基板支持面111aとなる最先端面210aの表面粗さが、算術平均粗さRaで0.01μm以下である。したがって、基板Wを静電チャック114に静電吸着したときに、基板Wから基板支持面111aに局所的に大きな力が加わり、凸部210が破損することを抑制することができる。また、破損により凸部210と基板Wとの接触状態が変化し基板Wと静電チャック114との間の熱伝導性が変化することを抑制することができる。基板Wと静電チャック114との間の熱伝導性が変化すると、静電チャック114を有する基板支持器11に含まれる温調モジュールによる基板Wの温度調節を適切に行うことが難しくなるが、本実施形態によればこれを抑制することができる。
【0060】
凸部210全体が、本実施形態と異なり、粒径(例えば長径)が1μm以下等の小さなセラミックス粒子で形成される場合、セラミックス粒子の粒子界面が狭いため、凸部210の最先端面210aと基板Wとが接触することにより、最先端面210aから、凸部210を構成するセラミックス粒子が脱落しやすい。同様に、プラズマを用いたプラズマ処理チャンバ10内のドライクリーニングにより、凸部210の最先端面210aからの脱粒が生じやすい。それに対し、本実施形態では、凸部210の、最先端面210aを含む先端側層212が単結晶板で形成されている。したがって、セラミックス粒子間の粒界のようなものが存在しないため、最先端面210aと基板Wとの接触や、プラズマを用いたプラズマ処理チャンバ10内のドライクリーニングによる、最先端面210aからの脱粒を抑制することができる。
【0061】
さらに、本実施形態にかかる静電チャック114の製造方法では、基板対向面200aを有するセラミック部材200を作製した後、基板対向面200a上に凸部210を形成する。本実施形態にかかる方法と異なる方法としては、セラミックスの板材から切削により凸部210と同形状の凸部を形成し併せて基板対向面を形成する方法(以下、比較の方法)が考えられる。この比較の方法では、基板対向面に自由に加工を施すことは困難である。それに対し、本実施形態に係る静電チャック114の製造方法では、基板対向面200aに自由に加工を施すことができ、そのため、脱粒を抑制可能な加工を施すことができる。基板対向面200aに対する、脱粒を抑制可能な加工とは、基板対向面200aの表面粗さを算術平均粗さRaで0.01μm以下とする研磨加工である。このような研磨加工により、セラミック部材200の形成時すなわち第1のセラミックス粒子の焼結時に基板対向面200aに存在していた、脱落しやすい第1のセラミックス粒子を除去することができる。
【0062】
また、本実施形態にかかる静電チャック114の製造方法では、前述のように、凸部210を形成するための光照射の際に、透明板Dを押し当ててもよい。このように押し当てることで、光による焼結後の単結晶板Bの頂面の高さ(具体的にはセラミック部材200の基板対向面200aから単結晶板Bの頂面までの距離)が単結晶板B間でばらつくのを抑制することができる。したがって、各凸部210の最先端面210aを基板Wに接触させることができる。言い換えると、凸部210の基板Wへの接触状態が凸部210間でばらつくのを抑制することができる。
また、前述のように、透明板DはSiウェハであってもよい。この場合、処理対象の基板WもSiウェハであれば、実際の処理時の基板Wの状態を模擬しながら、凸部210を形成することができるため、凸部210の基板Wへの接触状態がばらつくのをさらに抑制することができる。
【0063】
本実施形態にかかる静電チャック114では、凸部210が消耗したり変形してしまったりした場合に、消耗等した古い凸部210が残った状態のまま、適切な形状の新しい凸部210を形成することができ、すなわち、凸部210を再生することができる。具体的には、古い凸部210が残った状態のまま、基板対向面200aに対する第2のセラミックス粒子の層の形成や単結晶板Bの載置、光焼結等を再度行うことで、凸部210を再生することができる。なお、新たな凸部210は、例えば、古い凸部210が形成されていない領域に形成される。また、古い凸部210は消耗により低くなっているため除去は不要である。したがって、凸部210を再生するにあたり、古い凸部210を除去する必要がある場合に比べて、容易に凸部210を再生することができる。
【0064】
本実施形態にかかる静電チャック114は上述のようにして凸部210を再生可能であるため、以下の効果がある。
すなわち、前述の比較の方法で形成された静電チャックの凸部が消耗した場合、凸部を再生する方法として、本実施形態にかかるセラミック部材200に相当する部分に再度切削を施す方法が考えられる。しかし、この方法では、再度の切削により、または、再度の切削を繰り返すことにより、セラミック部材200に相当する部分が薄くなり、基台113に電圧を印加した時等にセラミック部材200に絶縁破壊が生じるおそれがある。それに対し、本実施形態にかかる静電チャック114の場合、凸部210の再生にあたり、セラミック部材200の切削は不要でありセラミック部材200が薄くならないため、上述のような絶縁破壊が生じるおそれがない。
また、本実施形態にかかる静電チャック114の場合、凸部210の再生にあたり、基台113からの静電チャック114の剥離を行ってもよいし、行わなくてもよい。剥離を行わない場合には、剥離を行う場合に比べて、容易に凸部210を再生することができる。
【0065】
なお、本実施形態では、凸部210の摩耗により生じる異物はその大きさが原子サイズレベルであるため、基板Wの汚染原因とはならない。
【0066】
以上では、凸部210に単結晶板を用いたが、第2のセラミックス粒子を焼結するための光を透過可能であり且つ各結晶の長径が20μm以上2000μm以下であれば、多結晶板を凸部210に用いてもよい。
【0067】
(第2実施形態)
<静電チャック>
次に、第2実施形態にかかる静電チャックの構成を、図8を用いて説明する。図8は、第2実施形態にかかる静電チャックの部分拡大断面図である。
【0068】
図8の本実施形態にかかる静電チャック114aと第2実施形態にかかる静電チャック114とでは凸部の構成が異なる。
第1実施形態にかかる静電チャック114の各凸部210は、根元側層211が第2のセラミックス粒子で形成され、先端側層212が単結晶板であった。それに対し、本実施形態にかかる静電チャック114aの各凸部300は、根元側層301を含むその全体が第2のセラミックス粒子で形成されている。具体的には、各凸部300は、第2のセラミックス粒子を光により焼結して形成される。焼結後の凸部300の第2のセラミックス粒子の粒径は20μm以上2000μm以下、より好ましくは、50μm以上1000μm以下、より好ましくは、100μm~500μmである。また、焼結後の凸部300の気孔率は0.1%以上1.0%以下である。
【0069】
さらに、各凸部300の最先端面300aの表面粗さは、例えば、第1実施形態にかかる凸部210と同様、算術平均粗さRaで0.01μm以下である。
本実施形態では、各凸部300の最先端面300aは、研磨加工等の加工により、上述のような表面粗さとなっている。
【0070】
凸部300の高さは、例えば20~200μmである。
凸部300のその他の形状や寸法は第1実施形態にかかる凸部210と同様である。
【0071】
<静電チャック114aの製造方法>
続いて、第2実施形態にかかる静電チャック114aの製造方法について、図9及び図10を用いて説明する。図9は、第2実施形態にかかる静電チャック114aの製造方法を説明するためのフローチャートである。図10は、第2実施形態にかかる静電チャック114aの製造方法の各工程時における、セラミック部材200の状態を示す図である。
【0072】
静電チャック114aを製造する場合、まず、セラミック部材200が準備される(ステップS1)。
【0073】
次いで、セラミック部材200の基板対向面200aに複数の凸部300が形成される(ステップS11)。
【0074】
具体的には、例えば以下のステップS11a~S11dが行われる。
まず、図10(A)に示すように、セラミック部材200の基板対向面200a上に第2のセラミックス粒子の層Mが形成される(ステップS11a)。より具体的には、セラミック部材200の基板対向面200a上に、焼結後に気孔率が1%以下になるような粒度分布の第2のセラミックス粒子の層Mが加圧成形される。成形された第2のセラミックス粒子の層Mの厚さは例えば20μm~200μmである。
【0075】
その後、図10(B)に示すように、第2のセラミックス粒子の層Lにおける凸部300に対応する部分に、光(具体的にはレーザ光E)が選択的に照射され、被照射部分M1が焼結される(ステップS11b)。これにより、当該被照射部分M1の第2のセラミックス粒子の長径及び被照射部分M1の気孔率が適正化される。具体的には、光照射による焼結により、例えば、被照射部分M1の第2のセラミックス粒子の長径が20μm以上2000μm以下とされると共に、被照射部分M1の気孔率が0.1%以上1.0%以下とされる。また、レーザ光の照射により、第2のセラミックス粒子の層Mにおける被照射部分M1とセラミック部材200とが接合される。
【0076】
次いで、図10(C)に示すように、第2のセラミックス粒子の層Mにおける光の未照射部分M2すなわち未焼結の第2のセラミックス粒子が除去され、凸部300が形成される(ステップS11c)。未照射部分M2の除去は例えば超音波洗浄等の洗浄により行われる。
【0077】
続いて、凸部300の最先端面300aが研磨される(ステップS11d)。これにより、各凸部300の最先端面300aの表面粗さが、算術平均粗さRaで0.01μm以下とされる。
【0078】
以上により、本実施形態にかかる静電チャック114aが作製される。
【0079】
<第2実施形態の主な効果>
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
本実施形態にかかる静電チャック114aは、各凸部300の少なくとも根元側層301が、粒子の長径が20μm以上2000μm以下の第2のセラミックス粒子で形成され、気孔率が0.1%以上1.0%以下である。したがって、プラズマを用いたプラズマ処理チャンバ10内のドライクリーニングを行ったときに、凸部300の根元側層301を構成するセラミックス粒子が脱落するのを抑制することができる。
【0080】
また、本実施形態にかかる静電チャック114aも、基板支持面111aとなる最先端面300aの表面粗さが、算術平均粗さRaで0.01μm以下である。したがって、基板Wを静電チャック114aに静電吸着したときに、基板Wから基板支持面111aに局所的に大きな力が加わり、凸部300が破損することを抑制することができる。また、破損により凸部300と基板Wとの接触状態が変化し基板Wと静電チャック114aとの間の熱伝導性が変化することを抑制することができる。
【0081】
本実施形態では、凸部210が、最先端面210aを含め、粒子の長径が20μm以上2000μm以下という比較的大きな第2のセラミックス粒子で形成されている。したがって、セラミックス粒子の粒子界面が広いため、最先端面210aと基板Wとの接触や、プラズマを用いたプラズマ処理チャンバ10内のドライクリーニングによる、最先端面300aからの脱粒を抑制することができる。
【0082】
さらに、本実施形態にかかる静電チャック114aの製造方法では、第1実施形態にかかる製造方法と同様、基板対向面200aに自由に加工を施すことができ、脱粒を抑制可能な加工を施すことができる。
【0083】
本実施形態にかかる静電チャック114aでは、第1実施形態にかかる静電チャック114と同様、凸部300が消耗したり変形してしまったりした場合に、消耗等した古い凸部300が残った状態のまま、適切な形状の新しい凸部300を形成することができる。例えば、消耗し短くなった古い凸部300が埋まるよう基板対向面200aに第2のセラミックス粒子の層を形成した後、古い凸部300が存在する位置に光を照射すること等により、古い凸部300を元の高さ(長さ)を有するように再生することができる。したがって、第1実施形態にかかる静電チャック114と同様、凸部300の再生にあたり、セラミック部材200に絶縁破壊が生じるおそれがなく、また、容易に凸部300を再生することができる。
【0084】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0085】
114、114a 静電チャック
200 セラミック部材
200a 基板対向面
210、300 凸部
211、301 根元側層
212 先端側層
300 凸部
300a 最先端面
E レーザ光
L、M 第2のセラミックス粒子の層
L1、M1 被照射部分
L2、M2 未照射部分
W 基板
図1
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図3
図4
図5
図6
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図10