(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】積層体、積層体の製造方法、積層体を含む画像表示装置用表面保護フィルム、積層体を備えた物品及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 1/14 20150101AFI20240729BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240729BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G02B1/14
B32B27/00 101
B32B27/30 A
(21)【出願番号】P 2022534057
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(86)【国際出願番号】 JP2021024622
(87)【国際公開番号】W WO2022004746
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-10-31
(31)【優先権主張番号】P 2020111729
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020126625
(32)【優先日】2020-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021095313
(32)【優先日】2021-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021106801
(32)【優先日】2021-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】芥川 暢之
(72)【発明者】
【氏名】松本 彩子
(72)【発明者】
【氏名】田村 顕夫
(72)【発明者】
【氏名】北村 哲
(72)【発明者】
【氏名】加藤 考浩
(72)【発明者】
【氏名】吉政 慶介
【審査官】中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-071392(JP,A)
【文献】特開2017-198963(JP,A)
【文献】特開2003-147017(JP,A)
【文献】特開2016-188354(JP,A)
【文献】特開2016-166307(JP,A)
【文献】国際公開第2019/146659(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/188442(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/207957(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/235072(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/021931(WO,A1)
【文献】特許第7373074(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/14
B32B 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体であって、
前記ハードコート層は、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも一方を含む構成単位(a)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)とを有するポリマー(S)、及び、前記ポリマー(S)とは異なるカチオン重合性基を含む構成単位を有するポリマー(a1)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含み、
前記耐擦傷層は、ラジカル重合性化合物(c1)及び酸発生剤を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含
み、
フッ素原子を含有する化合物を含む、積層体。
【請求項2】
基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体であって、
前記ハードコート層は、ケトン基を含む構成単位(a)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)とを有するポリマー(S)、及び、前記ポリマー(S)とは異なるカチオン重合性基を含む構成単位を有するポリマー(a1)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含み、
前記耐擦傷層は、ラジカル重合性化合物(c1)及び酸発生剤を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含
み、
フッ素原子を含有する化合物を含む、積層体。
【請求項3】
前記ポリマー(a1)がポリシルセスキオキサンである、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記酸発生剤が熱酸発生剤である、請求項1~3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
前記耐擦傷層形成用組成物が、更に、ラジカル重合開始剤を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
前記ポリマー(S)中の前記構成単位(a)の含有量が、前記ポリマー(S)に含まれる構成単位の全体に対して3モル%以上50モル%未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
前記ポリマー(S)が(メタ)アクリルポリマー又はポリシルセスキオキサンである、請求項1~6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
前記構成単位(b)の前記カチオン重合性基が下記一般式(C1)~(C3)のいずれかで表される基である、請求項1~7のいずれか1項に記載の積層体。
【化1】
一般式(C1)~(C3)中、*は結合位置を表す。一般式(C3)中、R
Cは水素原子又は置換基を表す。
【請求項9】
前記構成単位(c)の前記ラジカル重合性基が(メタ)アクリロイル基である、請求項1~8のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項10】
前記耐擦傷層を内側にして、曲率半径2mmで180°折り曲げ試験を30万回繰り返し行った場合にクラックが発生しない、請求項1~9のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項11】
#0000番のスチールウールで1kg/cm
2の荷重をかけながら、前記耐擦傷層の表面を往復100回擦った場合に傷が生じない、請求項1~10のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項12】
前記耐擦傷層の膜厚が、3.0μm未満である、請求項1~11のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項13】
前記基材が、イミド系ポリマー及びアラミド系ポリマーから選ばれる少なくとも1種のポリマーを含有する、請求項1~12のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項14】
前記ハードコート層形成用組成物が、前記ポリマー(S)を、前記ハードコート層形成用組成物の全固形分に対して、0.001~5質量%含有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項15】
基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体の製造方法であって、下記工程(I)~(V)を含む積層体の製造方法。
(I)基材上に、フッ素原子を含有する基及び酸開裂性基を含む構成単位(Ta)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を含む構成単位(c)とを有するポリマー(TS)、及びカチオン重合性基を有するポリマー(a1)を含むハードコート層形成用組成物を塗布してハードコート層塗膜を形成する工程
(II)カチオン重合により前記ハードコート層塗膜を硬化する工程
(III)前記ハードコート層塗膜上に、ラジカル重合性化合物(c1)、酸発生剤及びラジカル重合開始剤を含む耐擦傷層形成用組成物を塗布して耐擦傷層塗膜を形成する工程
(IV)前記耐擦傷層塗膜を加熱すること又は前記耐擦傷層塗膜に光を照射することにより、前記耐擦傷層塗膜中の酸発生剤から酸を発生させ、前記ハードコート層塗膜の表面に偏在した前記ポリマー(TS)の構成単位(Ta)の酸開裂性基を開裂させ、前記ポリマー(TS)からフッ素原子を含有する基を切り離す工程
(V)ラジカル重合により前記耐擦傷層塗膜を硬化する工程
【請求項16】
前記酸開裂性基が下記一般式(1)で表される構造を含む、請求項15に記載の積層体の製造方法。
【化2】
一般式(1)中、
X
1及びX
2は各々独立に酸素原子又は硫黄原子を表す。
R
1及びR
2は各々独立に水素原子又は置換基を表し、R
1及びR
2のうち少なくとも一方は置換基を表す。R
1とR
2とは結合して環を形成しても良い。R
1及びR
2の少なくとも一方は構成単位(Ta)の一般式(1)で表される基以外の部分と結合して環を形成しても良い。
m及びnは各々独立に0又は1を表す。ただし、R
1又はR
2が水素原子を表す場合、nは1を表す。
*1及び*2は結合位置を表す。
【請求項17】
請求項1~14のいずれか1項に記載の積層体を含む、画像表示装置用表面保護フィルム。
【請求項18】
請求項1~14のいずれか1項に記載の積層体を備えた物品。
【請求項19】
請求項1~14のいずれか1項に記載の積層体を表面保護フィルムとして備えた画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、積層体の製造方法、積層体を含む画像表示装置用表面保護フィルム、積層体を備えた物品及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)やマイクロLED(Light Emitting Diode)、マイクロOLED(Organic Light Emitting Diode)のような画像表示装置では、表示面への傷付きを防止するために、基材上にハードコート層を有する積層体(ハードコートフィルム)を設けることが好適である。
【0003】
たとえば、特許文献1には、基材上に、カチオン硬化性シリコーン樹脂及びレベリング剤を含む硬化性組成物の硬化物からなるハードコート層を有するハードコートフィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、たとえばスマートフォンなどにおいて、極薄型のフレキシブルなディスプレイに対するニーズが高まってきており、これに伴って、耐擦傷性と繰り返し折り曲げ耐性(繰り返し折り曲げてもクラックが発生しない性質)を両立することができる光学フィルムが強く求められている。
また、特に連続塗布機を用いて基材上にハードコート層形成用組成物を塗布し、乾燥し、硬化してハードコートフィルムを連続的に大量生産する場合に、初期乾燥の段階でハードコート層の表面に、ゆず肌状の凹凸が発生するという問題があった。
【0006】
本発明の課題は、耐擦傷性及び繰り返し折り曲げ耐性に優れ、かつ表面のゆず肌状の凹凸の発生が抑制された積層体、上記積層体の製造方法、上記積層体を含む画像表示装置用表面保護フィルム、上記積層体を備えた物品及び画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討し、下記手段により上記課題が解消できることを見出した。
[1]
基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体であって、
上記ハードコート層は、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも一方を含む構成単位(a)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)とを有するポリマー(S)、及び、上記ポリマー(S)とは異なるカチオン重合性基を含む構成単位を有するポリマー(a1)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含み、
上記耐擦傷層は、ラジカル重合性化合物(c1)及び酸発生剤を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含
み、
フッ素原子を含有する化合物を含む、積層体。
[2]
基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体であって、
上記ハードコート層は、ケトン基を含む構成単位(a)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)とを有するポリマー(S)、及び、上記ポリマー(S)とは異なるカチオン重合性基を含む構成単位を有するポリマー(a1)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含み、
上記耐擦傷層は、ラジカル重合性化合物(c1)及び酸発生剤を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含
み、
フッ素原子を含有する化合物を含む、積層体。
[3]
上記ポリマー(a1)がポリシルセスキオキサンである、[1]又は[2]に記載の積層体。
[4]
上記酸発生剤が熱酸発生剤である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の積層体。
[5]
上記耐擦傷層形成用組成物が、更に、ラジカル重合開始剤を含む、[1]~[4]のいずれか1つに記載の積層体。
[6]
上記ポリマー(S)中の上記構成単位(a)の含有量が、上記ポリマー(S)に含まれる構成単位の全体に対して3モル%以上50モル%未満である、[1]~[5]のいずれか1つに記載の積層体。
[7]
上記ポリマー(S)が(メタ)アクリルポリマー又はポリシルセスキオキサンである、[1]~[6]のいずれか1つに記載の積層体。
[8]
上記構成単位(b)の上記カチオン重合性基が下記一般式(C1)~(C3)のいずれかで表される基である、[1]~[7]のいずれか1つに記載の積層体。
【化101】
一般式(C1)~(C3)中、*は結合位置を表す。一般式(C3)中、R
Cは水素原子又は置換基を表す。
[9]
上記構成単位(c)の上記ラジカル重合性基が(メタ)アクリロイル基である、[1]~[8]のいずれか1つに記載の積層体。
[10]
上記耐擦傷層を内側にして、曲率半径2mmで180°折り曲げ試験を30万回繰り返し行った場合にクラックが発生しない、[1]~[9]のいずれか1つに記載の積層体。[11]
#0000番のスチールウールで1kg/cm
2の荷重をかけながら、上記耐擦傷層の表面を往復100回擦った場合に傷が生じない、[1]~[10]のいずれか1つに記載の積層体。
[12]
上記耐擦傷層の膜厚が、3.0μm未満である、[1]~[11]のいずれか1つに記載の積層体。
[13]
上記基材が、イミド系ポリマー及びアラミド系ポリマーから選ばれる少なくとも1種のポリマーを含有する、[1]~[12]のいずれか1つに記載の積層体。
[14]
上記ハードコート層形成用組成物が、上記ポリマー(S)を、上記ハードコート層形成用組成物の全固形分に対して、0.001~5質量%含有する、[1]~[13]のいずれか1つに記載の積層体。
[15]
基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体の製造方法であって、下記工程(I)~(V)を含む積層体の製造方法。
(I)基材上に、フッ素原子を含有する基及び酸開裂性基を含む構成単位(Ta)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を含む構成単位(c)とを有するポリマー(TS)、及びカチオン重合性基を有するポリマー(a1)を含むハードコート層形成用組成物を塗布してハードコート層塗膜を形成する工程
(II)カチオン重合により上記ハードコート層塗膜を硬化する工程
(III)上記ハードコート層塗膜上に、ラジカル重合性化合物(c1)、酸発生剤及びラジカル重合開始剤を含む耐擦傷層形成用組成物を塗布して耐擦傷層塗膜を形成する工程
(IV)上記耐擦傷層塗膜を加熱すること又は上記耐擦傷層塗膜に光を照射することにより、上記耐擦傷層塗膜中の酸発生剤から酸を発生させ、上記ハードコート層塗膜の表面に偏在した上記ポリマー(TS)の構成単位(Ta)の酸開裂性基を開裂させ、上記ポリマー(TS)からフッ素原子を含有する基を切り離す工程
(V)ラジカル重合により上記耐擦傷層塗膜を硬化する工程
[16]
上記酸開裂性基が下記一般式(1)で表される構造を含む、[15]に記載の積層体の製造方法。
【化102】
一般式(1)中、
X
1及びX
2は各々独立に酸素原子又は硫黄原子を表す。
R
1及びR
2は各々独立に水素原子又は置換基を表し、R
1及びR
2のうち少なくとも一方は置換基を表す。R
1とR
2とは結合して環を形成しても良い。R
1及びR
2の少なくとも一方は構成単位(Ta)の一般式(1)で表される基以外の部分と結合して環を形成しても良い。
m及びnは各々独立に0又は1を表す。ただし、R
1又はR
2が水素原子を表す場合、nは1を表す。
*1及び*2は結合位置を表す。
[17]
[1]~[14]のいずれか1つに記載の積層体を含む、画像表示装置用表面保護フィルム。
[18]
[1]~[14]のいずれか1つに記載の積層体を備えた物品。
[19]
[1]~[14]のいずれか1つに記載の積層体を表面保護フィルムとして備えた画像表示装置。
本発明は、上記[1]~[19]に係るものであるが、本明細書には参考のためその他の事項についても記載した。
【0008】
<1>
基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体であって、
上記ハードコート層は、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも一方を含む構成単位(a)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)とを有するポリマー(S)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含み、
上記耐擦傷層は、ラジカル重合性化合物(c1)及び酸発生剤を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含む、積層体。
<2>
基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体であって、
上記ハードコート層は、ケトン基を含む構成単位(a)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)とを有するポリマー(S)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含み、
上記耐擦傷層は、ラジカル重合性化合物(c1)及び酸発生剤を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含む、積層体。
<3>
上記ハードコート層形成用組成物が、更に、上記ポリマー(S)とは異なるカチオン重合性基を含む構成単位を有するポリマー(a1)を含む、<1>又は<2>に記載の積層体。
<4>
上記ポリマー(a1)がポリシルセスキオキサンである、<3>に記載の積層体。
<5>
上記酸発生剤が熱酸発生剤である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の積層体。
<6>
上記耐擦傷層形成用組成物が、更に、ラジカル重合開始剤を含む、<1>~<5>のいずれか1つに記載の積層体。
<7>
上記ポリマー(S)中の上記構成単位(a)の含有量が、上記ポリマー(S)に含まれる構成単位の全体に対して3モル%以上50モル%未満である、<1>~<6>のいずれか1つに記載の積層体。
<8>
上記ポリマー(S)が(メタ)アクリルポリマー又はポリシルセスキオキサンである、<1>~<7>のいずれか1つに記載の積層体。
<9>
上記構成単位(b)の上記カチオン重合性基が下記一般式(C1)~(C3)のいずれかで表される基である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の積層体。
【0009】
【0010】
一般式(C1)~(C3)中、*は結合位置を表す。一般式(C3)中、RCは水素原子又は置換基を表す。
<10>
上記構成単位(c)の上記ラジカル重合性基が(メタ)アクリロイル基である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の積層体。
<11>
上記耐擦傷層を内側にして、曲率半径2mmで180°折り曲げ試験を30万回繰り返し行った場合にクラックが発生しない、<1>~<10>のいずれか1つに記載の積層体。
<12>
#0000番のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら、上記耐擦傷層の表面を往復100回擦った場合に傷が生じない、<1>~<11>のいずれか1つに記載の積層体。
<13>
上記耐擦傷層の膜厚が、3.0μm未満である、<1>~<12>のいずれか1つに記載の積層体。
<14>
上記基材が、イミド系ポリマー及びアラミド系ポリマーから選ばれる少なくとも1種のポリマーを含有する、<1>~<13>のいずれか1つに記載の積層体。
<15>
上記ハードコート層形成用組成物が、上記ポリマー(S)を、上記ハードコート層形成用組成物の全固形分に対して、0.001~5質量%含有する、<1>~<14>のいずれか1つに記載の積層体。
<16>
基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体の製造方法であって、下記工程(I)~(V)を含む積層体の製造方法。
(I)基材上に、フッ素原子を含有する基及び酸開裂性基を含む構成単位(Ta)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を含む構成単位(c)とを有するポリマー(TS)、及びカチオン重合性基を有するポリマー(a1)を含むハードコート層形成用組成物を塗布してハードコート層塗膜を形成する工程
(II)カチオン重合により上記ハードコート層塗膜を硬化する工程
(III)上記ハードコート層塗膜上に、ラジカル重合性化合物(c1)、酸発生剤及びラジカル重合開始剤を含む耐擦傷層形成用組成物を塗布して耐擦傷層塗膜を形成する工程
(IV)上記耐擦傷層塗膜を加熱すること又は上記耐擦傷層塗膜に光を照射することにより、上記耐擦傷層塗膜中の酸発生剤から酸を発生させ、上記ハードコート層塗膜の表面に偏在した上記ポリマー(TS)の構成単位(Ta)の酸開裂性基を開裂させ、上記ポリマー(TS)からフッ素原子を含有する基を切り離す工程
(V)ラジカル重合により上記耐擦傷層塗膜を硬化する工程
<17>
<1>~<15>のいずれか1つに記載の積層体を含む、画像表示装置用表面保護フィルム。
<18>
<1>~<15>のいずれか1つに記載の積層体を備えた物品。
<19>
<1>~<15>のいずれか1つに記載の積層体を表面保護フィルムとして備えた画像表示装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐擦傷性及び繰り返し折り曲げ耐性に優れ、かつ表面のゆず肌状の凹凸の発生が抑制された積層体、上記積層体の製造方法、上記積層体を含む画像表示装置用表面保護フィルム、上記積層体を備えた物品及び画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)~(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」との記載は、「アクリレート及びメタクリレートの少なくともいずれか」の意味を表す。「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリロイル」等も同様である。
本明細書において、各成分は、各成分に該当する物質を1種単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上の物質を併用する場合、その成分についての含有量とは、特段の断りが無い限り、併用した物質の合計の含有量を指す。
また、本明細書において表記される2価の基の結合方向は特に限定されない。
【0013】
[積層体]
本発明の積層体は、
基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体であって、
上記ハードコート層は、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも一方を含む構成単位(a)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)とを有するポリマー(S)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含み、
上記耐擦傷層は、ラジカル重合性化合物(c1)及び酸発生剤を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含む、積層体である。
【0014】
また、本発明の積層体は、
基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体であって、
上記ハードコート層は、ケトン基を含む構成単位(a)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)とを有するポリマー(S)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含み、
上記耐擦傷層は、ラジカル重合性化合物(c1)及び酸発生剤を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含む、積層体であってもよい。
【0015】
本発明の積層体が、耐擦傷性及び繰り返し折り曲げ耐性に優れ、かつ表面のゆず肌状の凹凸の発生が抑制されている理由について、詳細は明らかではないが、本発明者らは以下のように推測している。
後述するポリマー(a1)のようなカチオン重合性基を有する硬化性化合物は、ハードコート層に硬度と耐屈曲性を付与でき得る素材である。更に耐擦傷性を付与するために、カチオン重合性基を有する硬化性化合物を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含むハードコート層上に、ラジカル重合性化合物(c1)を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含む耐擦傷層を形成することが考えられる。しかしながら、この場合、ハードコート層がカチオン重合系である一方、耐擦傷層がラジカル重合系であるため、両層の重合系が異なっており、層間の密着性が弱くなり、十分な耐擦傷性が得られなかったものと考えられる。
本発明の積層体におけるハードコート層は、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも一方を含む構成単位(a)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)とを有するポリマー(S)を含有するハードコート層形成用組成物の硬化物を含有するものであり、上記ポリマー(S)が、ハードコート層と耐擦傷層との層間密着剤として機能することで層間の密着性が強くなり、耐擦傷性が向上したと考えられる。
なお、上記ポリマー(S)は、ケトン基を含む構成単位(a)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)とを有するポリマーであってもよい。
上記ポリマー(S)は、フッ素原子を含有する基及び酸開裂性基を含む構成単位(Ta)と上記構成単位(b)と上記構成単位(c)とを有するポリマー(TS)から生成するものであることが好ましい。より詳細には、ポリマー(S)は、ポリマー(TS)の構成単位(Ta)の酸開裂性基が、積層体の製造過程で発生する酸の作用により開裂することで生成するものであることが好ましい。ポリマー(TS)の好ましい態様は、フッ素原子を含有する基を有するため、ポリマー(TS)を含有するハードコート層形成用組成物を塗布すると、ポリマー(TS)はハードコート層表面(空気界面側表面)に偏在することができる。これにより、ハードコート層と耐擦傷層の層間を効率良く密着させることができる。
ポリマー(TS)又はポリマー(S)は、カチオン重合性基を有するため、ハードコート層の素材としてポリマー(a1)のようなカチオン重合性基を有する硬化性化合物を用いた場合に重合反応により結合することができる。
また、ポリマー(TS)又はポリマー(S)は、ラジカル重合性基を有するため、耐擦傷層の素材であるラジカル重合性化合物(c1)と重合反応により結合することができる。
このように、ポリマー(TS)又はポリマー(S)は、ハードコート層の素材と耐擦傷層の素材の両方と結合することができるため、層間の密着性を高めることができ、これによって、耐擦傷性を向上することができると考えられる。
また、特に連続塗布機を用いて積層体を連続的に大量生産する場合には、ハードコート層の表面に、ゆず肌状の凹凸が発生しやすかった。表面の面状を改善するためには、一般的には、例えば含フッ素界面活性剤(レベリング剤)をハードコート層形成用組成物に添加し、ハードコート層形成用組成物の表面張力を下げるという対策が考えられる。しかし、含フッ素界面活性剤を用いると表面の面状は改善するものの、ハードコート層の表面に偏在した含フッ素界面活性剤の影響でハードコート層と耐擦傷層との間の結合の形成が阻害され、層間の密着性が低下し、十分な耐擦傷性が得られないという問題があった。
これに対して、上記ポリマー(TS)を含むハードコート層形成用組成物を用いると、構成単位(Ta)の酸開裂性基は、耐擦傷層形成用組成物中の酸発生剤から発生した酸により開裂する。そして、酸開裂性基の開裂によりポリマー(TS)からフッ素原子を含有する基が切り離されるため、その後のラジカル重合反応が効率よく進行し、ハードコート層と耐擦傷層との間の結合が形成されるため、ハードコート層と耐擦傷層との密着性が高くなり、優れた耐擦傷性が得られるものと考えられる。
前述のように、ポリマー(TS)の酸開裂性基が開裂すると、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも一方が生成するため、ポリマー(S)が生成する。
なお、ポリマー(TS)として、酸開裂性基が開裂するとケトン基が生成するポリマーを用いることで、ケトン基を含む構成単位(a)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)とを有するポリマー(S)が生成する。
【0016】
<基材>
本発明の積層体は基材を有する。
基材は、可視光領域の透過率が70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、90%以上であることが更に好ましい。
【0017】
(ポリマー)
基材はポリマーを含むことが好ましい。
ポリマーとしては、光学的な透明性、機械的強度、熱安定性などに優れるポリマーが好ましい。
【0018】
ポリマーとしては、例えば、ポリカーボネート系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系ポリマー、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)等のスチレン系ポリマーなどが挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂、エチレン・プロピレン共重合体などのポリオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリル系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、ナイロン、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー、イミド系ポリマー、スルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、ビニルアルコール系ポリマー、ビニルブチラール系ポリマー、アリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、エポキシ系ポリマー、トリアセチルセルロースに代表されるセルロース系ポリマー、又は上記ポリマー同士の共重合体、上記ポリマー同士を混合したポリマーも挙げられる。
【0019】
特に、芳香族ポリアミド等のアミド系ポリマー及びイミド系ポリマーは、JIS(日本工業規格) P8115(2001)に従いMIT試験機によって測定した破断折り曲げ回数が大きく、硬度も比較的高いことから、基材として好ましく用いることができる。例えば、特許第5699454号公報の実施例1にあるような芳香族ポリアミド、特表2015-508345号公報、特表2016-521216号公報、及びWO2017/014287号公報に記載のポリイミドを基材として好ましく用いることができる。
アミド系ポリマーとしては、芳香族ポリアミド(アラミド系ポリマー)が好ましい。
基材は、イミド系ポリマー及びアラミド系ポリマーから選ばれる少なくとも1種のポリマーを含有することが好ましい。
【0020】
また、基材は、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の紫外線硬化型、熱硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
【0021】
(柔軟化素材)
基材は、上記ポリマーを更に柔軟化する素材(柔軟化素材)を含有しても良い。柔軟化素材とは、破断折り曲げ回数を向上させる化合物を指し、柔軟化素材としては、ゴム質弾性体、脆性改良剤、可塑剤、スライドリングポリマー等を用いることが出来る。
柔軟化素材として具体的には、特開2016-167043号公報における段落番号[0051]~[0114]に記載の柔軟化素材を好適に用いることができる。
【0022】
柔軟化素材は、ポリマーに単独で混合しても良いし、複数を適宜併用して混合しても良いし、また、ポリマーと混合せずに、柔軟化素材のみを単独又は複数併用で用いて基材としても良い。
【0023】
これらの柔軟化素材を混合する量は、特に制限はなく、単独で十分な破断折り曲げ回数を持つポリマーを単独でフィルムの基材としても良いし、柔軟化素材を混合しても良いし、すべてを柔軟化素材(100%)として十分な破断折り曲げ回数を持たせても良い。
【0024】
(その他の添加剤)
基材には、用途に応じた種々の添加剤(例えば、紫外線吸収剤、マット剤、酸化防止剤、剥離促進剤、レターデーション(光学異方性)調節剤、など)を添加できる。それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点又は沸点において特に限定されるものではない。また添加剤を添加する時期は基材を作製する工程において何れの時点で添加しても良く、素材調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
その他の添加剤としては、特開2016-167043号公報における段落番号[0117]~[0122]に記載の添加剤を好適に用いることができる。
【0025】
以上の添加剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0026】
(基材の厚み)
基材はフィルム状であることが好ましい。
基材の厚みは、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることが更に好ましく、50μm以下であることが最も好ましい。基材の厚みが薄くなれば、折り曲げ時の表面と裏面の曲率差が小さくなり、クラック等が発生し難くなり、複数回の折り曲げでも、基材の破断が生じなくなる。一方、基材の取り扱いの容易さの観点から基材の厚みは3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましく、15μm以上が最も好ましい。
【0027】
(基材の作製方法)
基材は、熱可塑性のポリマーを熱溶融して製膜しても良いし、ポリマーを均一に溶解した溶液から溶液製膜(ソルベントキャスト法)によって製膜しても良い。熱溶融製膜の場合は、上述の柔軟化素材及び種々の添加剤を、熱溶融時に加えることができる。一方、基材を溶液製膜法で作製する場合は、ポリマー溶液(以下、ドープともいう)には、各調製工程において上述の柔軟化素材及び種々の添加剤を加えることができる。またその添加する時期はドープ作製工程において何れでも添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。
【0028】
塗膜の乾燥、及び/又はベーキングのために、塗膜を加熱してもよい。塗膜の加熱温度は、通常50~350℃である。塗膜の加熱は、不活性雰囲気下又は減圧下で行ってもよい。塗膜を加熱することにより溶媒を蒸発させ、除去することができる。基材は、塗膜を50~150℃で乾燥する工程と、乾燥後の塗膜を180~350℃でベーキングする工程とを含む方法により、形成されてもよい。
【0029】
基材の少なくとも一方の面には、表面処理を施してもよい。
【0030】
<ハードコート層>
本発明の積層体はハードコート層を有する。
ハードコート層は、基材の少なくとも一方の面上に形成されている。
本発明の積層体は、少なくとも1層のハードコート層を、基材と耐擦傷層との間に有する。
本発明の積層体のハードコート層は、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも一方を含む構成単位(a)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)とを有するポリマー(S)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含む。以下、この態様のハードコート層を「第一の態様」とも呼ぶ。
【0031】
また、本発明の積層体のハードコート層は、ケトン基を含む構成単位(a)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)とを有するポリマー(S)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含むものであってもよい(以下、この態様のハードコート層を「第二の態様」とも呼ぶ)。第二の態様については後述する。
【0032】
(ポリマー(S))
ポリマー(S)について説明する。
ポリマー(S)の主鎖構造は特に限定されず、公知のいずれの主鎖構造であっても良い。ポリマー(S)の種類としては、例えば、(メタ)アクリルポリマー、スチレンポリマー、シクロオレフィンポリマー、メチルペンテンポリマー、芳香族ポリエステル、(メタ)アクリルアミドポリマー、ポリシルセスキオキサン等が挙げられ、(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリルアミドポリマー又はポリシルセスキオキサンであることが好ましく、(メタ)アクリルポリマー又はポリシルセスキオキサンであることがより好ましい。
【0033】
〔ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも一方を含む構成単位(a)〕
ポリマー(S)は、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも一方を含む構成単位(a)(単に「構成単位(a)」とも呼ぶ。)を有する。
【0034】
ポリマー(S)が(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリルアミドポリマー等の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーのラジカル重合によって合成されるポリマーである場合、構成単位(a)は下記一般式(HA-1)で表される構成単位であることが好ましい。
【0035】
【0036】
一般式(HA-1)中、Ra1は水素原子、メチル基、-CH2ORZ1又は-CH2COORZ2を表す。RZ1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。RZ2は水素原子又はメチル基を表す。Aは-O-又は-NRZ3-を表す。L1は単結合又は2価の連結基を表す。mは0又は1を表す。RZ3は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0037】
一般式(HA-1)中、Ra1は水素原子、メチル基、-CH2ORZ1又は-CH2COORZ2を表し、水素原子又はメチル基を表すことが好ましい。
一般式(HA-1)中、Aは-O-又は-NRZ3-を表し、-O-又は-NH-を表すことが好ましく、-O-を表すことがより好ましい。
【0038】
一般式(HA-1)中、L1は単結合又は2価の連結基を表す。L1が2価の連結基を表す場合、2価の連結基としては、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO2-、-NR-、炭素数1~20の有機連結基(例えば、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいシクロアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基など)、又はこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基などが挙げられる。上記Rは水素原子又は置換基を表す。
【0039】
上記Rが置換基を表す場合の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、シアノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、および、ヒドロキシ基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、および、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、または、塩素原子が好ましい。
アルキル基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状、炭素数3~18の分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~4の直鎖状アルキル基がより好ましく、メチル基またはエチル基が更に好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が更に好ましい。
アリール基としては、例えば、炭素数6~12のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、α-メチルフェニル基、および、ナフチル基が挙げられ、フェニル基が好ましい。
アリールオキシ基は、芳香族複素環オキシ基であってもよく、例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基、イミダゾイルオキシ基、ベンゾイミダゾイルオキシ基、ピリジン-4-イルオキシ基、ピリミジニルオキシ基、キナゾリニルオキシ基、プリニルオキシ基、および、チオフェン-3-イルオキシ基が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、および、エトキシカルボニル基が挙げられる。
【0040】
L1は単結合、又は、炭素数1~10のアルキレン基、-O-、-CO-、-COO-、-S-若しくはこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基であることが好ましく、単結合、又は、炭素数1~6のアルキレン基、-O-、-CO-、-COO-、-S-若しくはこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基であることがより好ましい。
【0041】
一般式(HA-1)中、mは0又は1を表し、0を表すことが好ましい。
【0042】
ポリマー(S)がポリシルセスキオキサンである場合、構成単位(a)は下記一般式(HS-1)で表される構成単位であることが好ましい。
【0043】
【0044】
一般式(HS-1)中、L1は単結合又は2価の連結基を表す。mは0又は1を表す。
【0045】
一般式(HS-1)中、「SiO1.5」は、ポリシルセスキオキサン中のシロキサン結合(Si-O-Si)により構成される構造部分(シルセスキオキサン単位)を表す。
ポリシルセスキオキサンとは、加水分解性三官能シラン化合物に由来するシロキサン構成単位を有するネットワーク型ポリマー又は多面体クラスターであり、シロキサン結合によって、ランダム構造、ラダー構造、ケージ構造などを形成し得る。
以下、本明細書に記載されている「SiO1.5」は全て上記と同様である。
【0046】
一般式(HS-1)中、L1は単結合又は2価の連結基を表す。L1の具体例及び好ましい範囲は、上記一般式(HA-1)中のL1と同じである。
【0047】
一般式(HS-1)中、mは0又は1を表し、0を表すことが好ましい。
【0048】
ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも一方を含む構成単位(a)の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0049】
【0050】
【0051】
積層体の耐擦傷性を向上させる観点から、ポリマー(S)中の構成単位(a)の含有量は、ポリマー(S)に含まれる構成単位の全体に対して、3モル%以上50モル%未満であることが好ましく、5モル%以上40モル%未満であることがより好ましく、7モル%以上30モル%未満であることが更に好ましく、10モル%以上20モル%未満であることが特に好ましく、10モル%以上15モル%未満であることが最も好ましい。
【0052】
ポリマー(S)の構成単位(a)は、フッ素原子を含有する基及び酸開裂性基を含む構成単位(Ta)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を含む構成単位(c)とを有するポリマー(TS)の酸開裂性基が開裂することによって生成したものであることが好ましい。
【0053】
〔フッ素原子を含有する基及び酸開裂性基を含む構成単位(Ta)〕
フッ素原子を含有する基及び酸開裂性基を含む構成単位(Ta)(単に「構成単位(Ta)」とも呼ぶ。)について説明する。
【0054】
(フッ素原子を含有する基)
構成単位(Ta)に含まれるフッ素原子を含有する基(「フッ素含有基」とも呼ぶ。)は、少なくとも1つのフッ素原子を含んでなる基であり、例えば、フッ素原子、少なくとも1つのフッ素原子を有する有機基などが挙げられる。上記有機基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~20であることが好ましく、炭素数2~15であることがより好ましく、炭素数4~10であることが更に好ましく、炭素数4~8であることが特に好ましい。上記有機基は直鎖構造であっても分岐構造であっても環状構造であっても良い。上記有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わせてなる基が挙げられ、アルキル基であることが好ましい。また、上記アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基は、フッ素原子以外に更に置換基を有していてもよい。
フッ素含有基は、フルオロアルキル基又はフルオロポリエーテル基であることが好ましい。フルオロポリエーテル基とは、複数のフッ化炭素基がエーテル結合で結合された2価の基である。フルオロポリエーテル基は、複数のフルオロアルキレン基がエーテル結合で結合された2価の基であることが好ましく、複数のパーフルオロアルキレン基がエーテル結合で結合された2価の基(パーフルオロポリエーテル基)であることが好ましい。
フッ素含有基は、炭素数1~20のフルオロアルキル基であることが好ましく、炭素数2~15のフルオロアルキル基であることがより好ましく、炭素数4~10のフルオロアルキル基であることが更に好ましく、炭素数4~8のフルオロアルキル基であることが特に好ましい。
1つのフッ素含有基に含まれるフッ素原子の数は、3個以上17個以下であることが好ましく、5個以上15個以下であることがより好ましく、9個以上13個以下であることが更に好ましい。
【0055】
フッ素含有基は、下記一般式(f-1)で表される基であることが好ましい。
【0056】
【0057】
一般式(f-1)中、q1は0~12の整数を表し、q2は1~8の整数を表し、Rq1は水素原子又はフッ素原子を表す。*は結合位置を表す。
q1は1~7の整数を表すことが好ましく、1~5の整数を表すことがより好ましく、1又は2を表すことが更に好ましい。
q2は2~8の整数を表すことが好ましく、4~8の整数を表すことがより好ましく、4~6の整数を表すことが更に好ましい。
Rq1はフッ素原子を表すことが好ましい。
【0058】
(酸開裂性基)
構成単位(Ta)に含まれる酸開裂性基は、酸の作用により開裂する基であり、典型的には酸の作用により開裂して、ヒドロキシ基又はカルボキシ基を生じる基である。
酸開裂性基は下記一般式(1)で表される構造を含むことが好ましい。
【0059】
【0060】
一般式(1)中、
X1及びX2は各々独立に酸素原子又は硫黄原子を表す。
R1及びR2は各々独立に水素原子又は置換基を表し、R1及びR2のうち少なくとも一方は置換基を表す。R1とR2とは結合して環を形成しても良い。R1及びR2の少なくとも一方は構成単位(Ta)の一般式(1)で表される基以外の部分と結合して環を形成しても良い。
m及びnは各々独立に0又は1を表す。ただし、R1又はR2が水素原子を表す場合、nは1を表す。
*1及び*2は結合位置を表す。
【0061】
一般式(1)中、X1及びX2は各々独立に酸素原子又は硫黄原子を表し、酸素原子を表すことが好ましい。
【0062】
一般式(1)中、R1及びR2は各々独立に水素原子又は置換基を表す。R1及びR2が置換基を表す場合の置換基の種類は特に限定されず、公知のいずれの置換基であっても良い。置換基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、リン酸アミド基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシ基、ニトロ基、シリル基が挙げられる。また、これらの置換基が更に1個以上の置換基を有することができる場合は、更なる置換基として上記した置換基などを有していても良い。
R1及びR2が置換基を表す場合の置換基は、有機基であることが好ましく、上記有機基は直鎖構造であっても分岐構造であっても環状構造であっても良い。上記有機基は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、アルコキシ基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わせてなる基であることが好ましく、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアルコキシ基であることが更に好ましい。上記有機基の炭素数は特に限定されないが、1~20であることが好ましく、1~10であることがより好ましい。上記有機基は更に置換基を有していても良い。
ただし、R1及びR2のうち少なくとも一方は置換基を表す。すなわち、R1及びR2が両方とも水素原子を表す場合はない。
【0063】
R1とR2とは結合して環を形成しても良く、上記環は炭素数3~20の脂肪族炭化水素環であることが好ましく、炭素数4~12の脂肪族炭化水素環であることがより好ましい。上記脂肪族炭化水素環は置換基を有していても良い。また上記脂肪族炭化水素環は、環員の炭素-炭素結合間に、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-S-、-SO2-、-NR-又はこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基を有していても良い。上記Rは水素原子又は置換基を表す。上記Rが置換基を表す場合の置換基の例は、上記一般式(HA-1)中のL1が-NR-を表す場合のRが置換基を表す場合の置換基の例と同様である。
【0064】
mは0又は1を表し、0を表すことが好ましい。
nは0又は1を表し、1を表すことが好ましい。
【0065】
一般式(1)中、*1及び*2は結合位置を表す。*1及び*2には、構成単位(Ta)の一般式(1)で表される構造以外の部分構造(水素原子などの1つの原子、又はフッ素含有基やポリマー(TS)の主鎖などの複数の原子からなる原子団)が結合する。
【0066】
構成単位(Ta)はフッ素含有基と酸開裂性基を含むが、構成単位(Ta)のより具体的な態様としては以下の態様が挙げられる。
1) 一般式(1)中の*2に直接又は連結基を介してフッ素含有基が結合する態様
2) 一般式(1)中のR1及びR2のうち少なくとも一方にフッ素含有基が結合する態様
3) 一般式(1)中の*1に直接又は連結基を介してフッ素含有基が結合する態様
【0067】
上記1)、3)における連結基としては、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-S-、-SO2-、-NR-又はこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基が挙げられ、-O-又は-S-が好ましい。上記Rは水素原子又は置換基を表す。上記Rが置換基を表す場合の置換基の例は、上記一般式(HA-1)中のL1が-NR-を表す場合のRが置換基を表す場合の置換基の例と同様である。
【0068】
構成単位(Ta)は、アセタール構造、チオアセタール構造又はジチオアセタール構造を有することが好ましい。
アセタール構造は下記一般式(AC1)又は(AC2)で表される構造であることが好ましい。
チオアセタール構造は下記一般式(SA1)、(SA2)又は(SA3)で表される構造であることが好ましい。
ジチオアセタール構造は下記一般式(DS1)又は(DS2)で表される構造であることが好ましい。
【0069】
【0070】
一般式(AC1)、(SA1)及び(DS1)中、R1及びR2は各々独立に水素原子又は置換基を表し、R1及びR2のうち少なくとも一方は置換基を表す。R1とR2とは結合して環を形成しても良い。
一般式(AC2)、(SA2)、(SA3)及び(DS2)中、R3は置換基を表し、kは0~3の整数を表す。kが2又は3を表す場合、複数のR3は同じでも異なっていても良い。
一般式(AC1)、(AC2)、(SA1)、(SA2)、(SA3)、(DS1)及び(DS2)中、*は結合位置を表す。
【0071】
一般式(AC1)、(SA1)及び(DS1)中、R1及びR2は各々上記一般式(1)中におけるものと同じ意味を表し、具体例及び好ましい範囲も同じである。
一般式(AC2)、(SA2)、(SA3)及び(DS2)中、R3は置換基を表し、具体例及び好ましい範囲は、上記一般式(1)中のR1及びR2が置換基を表す場合の置換基として挙げたものと同様である。
kは0又は1を表すことが好ましい。
【0072】
ポリマー(TS)が(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリルアミドポリマー等の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーのラジカル重合によって合成されるポリマーである場合、構成単位(Ta)は下記一般式(A-1)~(A-5)のいずれかで表される構成単位であることが好ましい。
【0073】
【0074】
上記一般式中、Ra1は水素原子、メチル基、-CH2ORZ1又は-CH2COORZ2を表す。RZ1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。RZ2は水素原子又はメチル基を表す。Aは-O-又は-NRZ3-を表す。RZ3は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。L1は単結合又は2価の連結基を表す。Q1はフッ素原子を含有する基を表す。L2は単結合又は2価の連結基を表す。X1、X2、m、n、R1及びR2は各々一般式(1)中におけるものと同じ意味を表す。R3及びkは各々一般式(AC2)中におけるものと同じ意味を表す。
【0075】
一般式(A-1)~(A-4)中、Ra1は水素原子、メチル基、-CH2ORZ1又は-CH2COORZ2を表し、水素原子又はメチル基を表すことが好ましい。
一般式(A-1)~(A-4)中、Aは-O-又は-NRZ3-を表し、-O-又は-NH-を表すことが好ましく、-O-を表すことがより好ましい。
【0076】
一般式(A-1)~(A-4)中、L1は単結合又は2価の連結基を表す。L1が2価の連結基を表す場合、2価の連結基としては、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO2-、-NR-、炭素数1~20の有機連結基(例えば、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいシクロアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基など)、又はこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基などが挙げられる。上記Rは水素原子又は置換基を表す。上記Rが置換基を表す場合の置換基の例は、上記一般式(HA-1)中のL1が-NR-を表す場合のRが置換基を表す場合の置換基の例と同様である。
L1は単結合、又は、炭素数1~10のアルキレン基、-O-、-CO-、-COO-、-S-若しくはこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基であることが好ましく、単結合、又は、炭素数1~6のアルキレン基、-O-、-CO-、-COO-、-S-若しくはこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基であることがより好ましい。
【0077】
一般式(A-1)~(A-5)中、Q1はフッ素原子を含有する基を表す。フッ素原子を含有する基については前述したものと同様である。
【0078】
一般式(A-1)~(A-5)中、L2は単結合又は2価の連結基を表す。L2が2価の連結基を表す場合の具体例及び好ましい範囲は上記L1が2価の連結基を表す場合の具体例と同じである。
【0079】
上記一般式(A-1)~(A-5)におけるX1、X2、m、n、R1及びR2は各々一般式(1)中におけるものと同じ意味を表し、具体例及び好ましい範囲も同じである。また、R3及びkは各々一般式(AC2)中におけるものと同じ意味を表し、具体例及び好ましい範囲も同じである。
【0080】
ポリマー(TS)がポリシルセスキオキサンである場合、構成単位(Ta)は下記一般式(S-1)~(S-4)のいずれかで表される構成単位であることが好ましい。
【0081】
【0082】
上記一般式中、L1は単結合又は2価の連結基を表す。Q1はフッ素原子を含有する基を表す。L2は単結合又は2価の連結基を表す。X1、X2、m、n、R1及びR2は各々一般式(1)中におけるものと同じ意味を表す。R3及びkは各々一般式(AC2)中におけるものと同じ意味を表す。
【0083】
一般式(S-1)~(S-4)中、L1は単結合又は2価の連結基を表す。L1の具体例及び好ましい範囲は、一般式(A-1)~(A-4)中のL1と同じである。
【0084】
一般式(S-1)~(S-4)中、Q1はフッ素原子を含有する基を表す。フッ素原子を含有する基については前述したものと同様である。
【0085】
一般式(S-1)~(S-4)中、L2は単結合又は2価の連結基を表す。L2の具体例及び好ましい範囲は上記L1と同じである。
【0086】
上記一般式(S-1)~(S-4)におけるX1、X2、m、n、R1及びR2は各々一般式(1)中におけるものと同じ意味を表し、具体例及び好ましい範囲も同じである。また、R3及びkは各々一般式(AC2)中におけるものと同じ意味を表し、具体例及び好ましい範囲も同じである。
【0087】
フッ素原子を含有する基及び酸開裂性基を含む構成単位(Ta)の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。下記s及びtは各々独立に0~10の整数を表す。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
ポリマー(TS)中の構成単位(Ta)の含有量の好ましい範囲は、前述のポリマー(S)中の構成単位(a)の含有量の好ましい範囲と同様である。
【0093】
〔カチオン重合性基を含む構成単位(b)〕
ポリマー(S)は、カチオン重合性基を含む構成単位(b)(単に「構成単位(b)」とも呼ぶ。)を有する。
構成単位(b)のカチオン重合性基は、特に限定されず、公知のいずれのカチオン重合性基であっても良い。カチオン重合性基としては、例えば、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニルオキシ基などを挙げることができる。
カチオン重合性基としては、脂環式エーテル基又はビニルオキシ基が好ましく、エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基、オキセタニル基又はビニルオキシ基がより好ましく、エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基又はオキセタニル基が更に好ましく、エポキシ基又はエポキシシクロヘキシル基が最も好ましい。なお、上記した各基は置換基を有していてもよい。
【0094】
カチオン重合性基は下記式(C1)~(C3)のいずれかで表される基であることが好ましい。
【0095】
【0096】
式(C1)~(C3)中、*は結合位置を表す。式(C3)中、RCは水素原子又は置換基を表す。
【0097】
式(C3)中のRCが置換基を表す場合の置換基は特に限定されないが、アルキル基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキル基であることがより好ましい。炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。
RCは水素原子、メチル基又はエチル基を表すことが好ましく、メチル基又はエチル基を表すことがより好ましい。
【0098】
ポリマー(S)が(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリルアミドポリマー等の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーのラジカル重合によって合成されるポリマーである場合、構成単位(b)は下記一般式(CA-1)~(CA-3)のいずれかで表される構成単位であることが好ましい。
【0099】
【0100】
一般式(CA-1)~(CA-3)中、Ra1は水素原子、メチル基、-CH2ORZ1又は-CH2COORZ2を表す。RZ1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。RZ2は水素原子又はメチル基を表す。Aは-O-又は-NRZ3-を表す。RZ3は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。L3は単結合又は2価の連結基を表す。一般式(CA-3)中、RCは上記式(C3)中におけるものと同じ意味を表す。
【0101】
一般式(CA-1)~(CA-3)中、Ra1は水素原子、メチル基、-CH2ORZ1又は-CH2COORZ2を表し、水素原子又はメチル基を表すことが好ましい。
一般式(CA-1)~(CA-3)中、Aは-O-又は-NRZ3-を表し、-O-又は-NH-を表すことが好ましく、-O-を表すことがより好ましい。
【0102】
一般式(CA-1)~(CA-3)中、L3は単結合又は2価の連結基を表す。L3の具体例及び好ましい範囲は、前述の一般式(A-1)~(A-4)中のL1と同じである。
【0103】
一般式(CA-3)中、RCは上記式(C3)中におけるものと同じ意味を表し、具体例及び好ましい範囲も同じである。
【0104】
ポリマー(S)がポリシルセスキオキサンである場合、構成単位(b)は下記一般式(CS-1)~(CS-3)のいずれかで表される構成単位であることが好ましい。
【0105】
【0106】
一般式(CS-1)~(CS-3)中、L3は単結合又は2価の連結基を表す。一般式(CS-3)中、RCは上記式(C3)中におけるものと同じ意味を表す。
【0107】
一般式(CS-1)~(CS-3)中、L3は単結合又は2価の連結基を表す。L3の具体例及び好ましい範囲は、前述の一般式(A-1)~(A-4)中のL1と同じである。
【0108】
一般式(CS-3)中、RCは上記式(C3)中におけるものと同じ意味を表し、具体例及び好ましい範囲も同じである。
【0109】
カチオン重合性基を含む構成単位(b)の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0110】
【0111】
【0112】
積層体の耐擦傷性を向上させる観点から、ポリマー(S)中の構成単位(b)の含有量は、ポリマー(S)に含まれる構成単位の全体に対して、15モル%以上90モル%未満であることが好ましく、20モル%以上80モル%未満であることがより好ましく、25モル%以上70モル%未満であることが更に好ましく、30モル%以上60モル%未満であることが特に好ましい。
【0113】
〔ラジカル重合性基を含む構成単位(c)〕
ポリマー(S)は、ラジカル重合性基を含む構成単位(c)(単に「構成単位(c)」とも呼ぶ。)を有する。
構成単位(c)のラジカル重合性基は、特に限定されず、公知のいずれのラジカル重合性基であっても良い。ラジカル重合性基は重合性不飽和基であることが好ましい。重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基、スチリル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。なお、上記した各基は置換基を有していてもよい。
【0114】
ポリマー(S)が(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリルアミドポリマー等の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーのラジカル重合によって合成されるポリマーである場合、構成単位(c)は下記一般式(RA-1)又は(RA-2)で表される構成単位であることが好ましい。
【0115】
【0116】
一般式(RA-1)及び(RA-2)中、Ra1は水素原子、メチル基、-CH2ORZ1又は-CH2COORZ2を表す。RZ1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。RZ2は水素原子又はメチル基を表す。を表す。Aは-O-又は-NRZ3-を表す。RZ3は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。L4は単結合又は2価の連結基を表す。一般式(RA-1)中、Ra2は水素原子又はメチル基を表す。
【0117】
一般式(RA-1)及び(RA-2)中、Ra1は水素原子、メチル基、-CH2ORZ1又は-CH2COORZ2を表し、水素原子又はメチル基を表すことが好ましい。
一般式(RA-1)及び(RA-2)中、Aは-O-又は-NRZ3-を表し、-O-又は-NH-を表すことが好ましく、-O-を表すことがより好ましい。
【0118】
一般式(RA-1)及び(RA-2)中、L4は単結合又は2価の連結基を表す。L4の具体例及び好ましい範囲は、前述の一般式(A-1)~(A-4)中のL1と同じである。
【0119】
ポリマー(S)がポリシルセスキオキサンである場合、構成単位(b)は下記一般式(RS-1)又は(RS-2)で表される構成単位であることが好ましい。
【0120】
【0121】
一般式(RS-1)及び(RS-2)中、L4は単結合又は2価の連結基を表す。一般式(RS-1)中、Ra2は水素原子又はメチル基を表す。
【0122】
一般式(RS-1)及び(RS-2)中、L4は単結合又は2価の連結基を表す。L4の具体例及び好ましい範囲は、前述の一般式(A-1)~(A-4)中のL1と同じである。
【0123】
1つの構成単位(c)に、複数のラジカル重合性基を有していてもよい。1つの構成単位(c)に、複数のラジカル重合性基を有する場合、ラジカル重合性基を2~5個有することが好ましく、2~4個有することがより好ましく、2~3個有することが更に好ましく、2個有することが特に好ましい。
【0124】
ポリマー(S)が(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリルアミドポリマー等の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーのラジカル重合によって合成されるポリマーである場合、構成単位(c)は下記一般式(Z-1)で表される構成単位であることも好ましい。
【0125】
【0126】
一般式(Z-1)中、
D1は水素原子、メチル基、-CH2ORZ1又は-CH2COORZ2を表す。RZ1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。RZ2は水素原子又はメチル基を表す。
A1は-O-又は-NRZ3-を表す。RZ3は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
wは2~5の整数を表す。
LZ1は脂肪族基及び芳香族基からなる群より選ばれる少なくとも1つを有するw+1価の連結基を表す。上記脂肪族基に含まれる1つ以上の-CH2-はそれぞれ独立に-CO-、-O-又は-NRZ4-に置き換わってもよい。RZ4は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。RZ4が複数存在する場合、複数のRZ4は同一でも異なっていてもよい。
LZ2はアルキレン基、アリーレン基、-CO-、-O-、及び-NRZ5-からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する2価の連結基、又は単結合を表す。RZ5は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。RZ5が複数存在する場合、複数のRZ5は同一でも異なっていてもよい。
E1は下記一般式(Ea-1)又は(Ea-2)で表される基を表す。
【0127】
【0128】
一般式(Ea-1)及び(Ea-2)中、
RE1及びRE2はそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表す。
RE3は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
*は結合位置を表す。
【0129】
D1は水素原子、メチル基、-CH2ORZ1又は-CH2COORZ2を表す。RZ1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、水素原子又はメチル基を表すことが好ましく、水素原子を表すことがより好ましい。
D1は水素原子又はメチル基を表すことが好ましい。
【0130】
A1は-O-又は-NRZ3-を表す。
RZ3は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、水素原子又はメチル基を表すことが好ましく、水素原子を表すことがより好ましい。
A1は-O-又は-NH-を表すことが好ましく、-O-を表すことがより好ましい。
【0131】
wは2~4の整数を表すことが好ましく、2又は3を表すことがより好ましく、2を表すことが更に好ましい。
【0132】
RZ4は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、水素原子又はメチル基を表すことが好ましく、水素原子を表すことがより好ましい。
LZ1は脂肪族基及び芳香族基からなる群より選ばれる少なくとも1つを有するw+1価の連結基を表す。上記芳香族基は、芳香族炭化水素基であることが好ましく、炭素数6~10の芳香族炭化水素基であることがより好ましい。
LZ1はw+1価の脂肪族基を表すことが好ましく、炭素数1~10のw+1価の脂肪族炭化水素基を表すことがより好ましく、炭素数1~5のw+1価の脂肪族炭化水素基を表すことがより好ましく、炭素数1~3のw+1価の脂肪族炭化水素基を表すことが更に好ましい。w+1価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。w+1価の脂肪族炭化水素基は、アルキレン基から任意のw-1個の水素原子を除してなる基であることが好ましい。
【0133】
LZ2はアルキレン基、アリーレン基、-CO-、-O-、及び-NRZ5-からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する2価の連結基、又は単結合を表す。
RZ5は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、水素原子又はメチル基を表すことが好ましく、水素原子を表すことがより好ましい。
上記アルキレン基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素数1~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~5のアルキレン基であるがより好ましく、炭素数1~3のアルキレン基であることが更に好ましい。
上記アリール基は、炭素数6~10のアリール基であることが好ましい。
LZ2はアルキレン基、-CO-、-O-、及び-NRZ5-からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する2価の連結基、又は単結合を表すことが好ましく、アルキレン基、-CO-、及び-O-からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する2価の連結基、又は単結合を表すことがより好ましく、アルキレン基又は単結合を表すことがより好ましい。
【0134】
耐擦傷性が向上するという理由から、LZ1とLZ2とからなる基(-LZ1-(LZ2)w-)が炭素原子、水素原子及び酸素原子からなる群より選択される1種以上の原子からなることが好ましく、炭素原子及び水素原子からなることがより好ましい。LZ1とLZ2に含まれる炭素原子数が合計で1~6であることが好ましく、1~5であることがより好ましく、1~4であることが更に好ましく、1~3であることが特に好ましい。LZ1とLZ2に含まれる酸素原子数が合計で0~4であることが好ましく、0~2であることがより好ましい。
【0135】
一般式(Ea-2)中、RE3は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、水素原子又はメチル基を表すことが好ましく、水素原子を表すことがより好ましい。
E1は一般式(Ea-1)で表される基を表すことが好ましい。
【0136】
ラジカル重合性基を含む構成単位(c)の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
積層体の耐擦傷性を向上させる観点から、ポリマー(S)中の構成単位(c)の含有量は、ポリマー(S)に含まれる構成単位の全体に対して、15モル%以上90モル%未満であることが好ましく、20モル%以上80モル%未満であることがより好ましく、25モル%以上70モル%未満であることが更に好ましく、30モル%以上60モル%未満であることが特に好ましい。
【0141】
ポリマー(S)は、上記構成単位(a)~(c)に加えて、任意のその他の構成単位を有していても良い。
【0142】
ポリマー(S)が(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリルアミドポリマー等のラジカル重合によって合成されるポリマーである場合、ポリマー(S)の重量平均分子量(Mw)は、8000以上80000未満であることが好ましく、10000以上70000未満であることがより好ましく、12000以上60000未満であることが更に好ましい。
【0143】
ポリマー(S)がポリシルセスキオキサンである場合、ポリマー(S)の重量平均分子量(Mw)は、500~50000であることが好ましく、1000~30000であることがより好ましく、1500~12000であることが更に好ましい。
【0144】
ポリマー(S)の分子量分散度(Mw/Mn)は、例えば1.00~4.00であり、好ましくは1.10~3.70であり、より好ましくは1.20~3.00であり、さらに好ましくは1.20~2.50である。Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。
【0145】
ポリマー(S)の重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分散度は、特に断りがない限り、GPCの測定値(ポリスチレン換算)である。重量平均分子量は、具体的には装置としてHLC-8220(東ソー株式会社製)を用意し、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、カラムとしてTSKgel(登録商標)G3000HXL+TSKgel(登録商標)G2000HXLを用い、温度23℃、流量1mL/minの条件下、示差屈折率(RI)検出器を用いて測定する。
【0146】
ポリマー(S)の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
ポリマー(TS)の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
<ポリマー(TS)の製造方法>
ポリマー(TS)は公知の方法により製造することができる。
ポリマー(TS)が(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリルアミドポリマー等のラジカル重合によって合成されるポリマーである場合、例えば、フッ素原子を含有する基及び酸開裂性基を含むモノマー、カチオン重合性基を含むモノマー、ラジカル重合性基を含むモノマー、及び任意のその他のモノマーを混合し、有機溶媒中で、ラジカル重合開始剤を用いて重合することにより製造することができる。ただし、酸開裂性基の開裂を防ぐためにポリマー(TS)の製造は酸性条件では行わないことが好ましい。また、ラジカル重合の際には構成単位(c)のラジカル重合性基の反応を防ぐために公知の方法により保護することが好ましい。
【0162】
ポリマー(TS)がポリシルセスキオキサンである場合、例えば、加水分解性シラン化合物を加水分解及び縮合させる方法により製造できる。上記加水分解性シラン化合物としては、フッ素原子を含有する基及び酸開裂性基を含む加水分解性三官能シラン化合物、カチオン重合性基を含む加水分解性三官能シラン化合物、ラジカル重合性基を含む加水分解性三官能シラン化合物、及び任意のその他の加水分解性シラン化合物を使用することができる。
上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、溶媒の存在下で行うことも、非存在下で行うこともでき、溶媒の存在下で行うことが好ましい。
上記加水分解性シラン化合物の加水分解及び縮合反応は、触媒及び水の存在下で進行させることが好ましい。ただし、酸開裂性基の開裂を防ぐためにポリマー(TS)の製造は酸性条件では行わないことが好ましいため、酸触媒は使用しないことが好ましい。
上記加水分解及び縮合反応の反応温度は、特に限定されず、例えば40~100℃であり、好ましくは45~80℃である。また、上記加水分解及び縮合反応の反応時間は、特に限定されず、例えば0.1~15時間であり、好ましくは1.5~10時間である。また、上記加水分解及び縮合反応は、常圧下で行うこともできるし、加圧下又は減圧下で行うこともできる。なお、上記加水分解及び縮合反応を行う際の雰囲気は、例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気等の不活性ガス雰囲気下、空気下等の酸素存在下等のいずれであってもよいが、不活性ガス雰囲気下が好ましい。
【0163】
ポリマー(S)は、ポリマー(TS)中の構成単位(Ta)の酸開裂性基を開裂させることで製造することができる。
【0164】
ハードコート層形成用組成物中のポリマー(S)の含有率は、特に限定されないが、面状及び耐擦傷性の観点から、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、0.001~5質量%であることが好ましく、0.01~3質量%であることがより好ましく、0.03~2質量%であることが更に好ましく、0.05~1質量%であることが特に好ましい。
なお、全固形分とは溶媒以外の全成分のことである。
【0165】
ハードコート層形成用組成物中、ポリマー(S)は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。
【0166】
[第二の態様]
本発明の積層体のハードコート層は、ケトン基を含む構成単位(a)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を有する構成単位(c)とを有するポリマー(S)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含むもの(第二の態様)であってもよい。
以下、第二の態様について説明する。
第二の態様のポリマー(S)を、ポリマー(KS)とも呼ぶ。
【0167】
(ポリマー(KS))
ポリマー(KS)の主鎖構造は特に限定されず、公知のいずれの主鎖構造であっても良い。ポリマー(KS)の種類としては、例えば、(メタ)アクリルポリマー、スチレンポリマー、シクロオレフィンポリマー、メチルペンテンポリマー、芳香族ポリエステル、(メタ)アクリルアミドポリマー、ポリシルセスキオキサン等が挙げられ、(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリルアミドポリマー又はポリシルセスキオキサンであることが好ましく、(メタ)アクリルポリマー又はポリシルセスキオキサンであることがより好ましい。
【0168】
〔ケトン基を含む構成単位(a)〕
ポリマー(KS)は、ケトン基を含む構成単位(a)を有する。
ケトン基を含む構成単位(a)を、構成単位(Ka)とも呼ぶ。
構成単位(Ka)のケトン基は、特に限定されないが、下記一般式(K)で表される基であることが好ましい。
【0169】
【0170】
一般式(K)中、Rb1は水素原子又は置換基を表す。*は結合位置を表す。
【0171】
Rb1は水素原子又は置換基を表し、置換基を表すことが好ましい。
Rb1の一態様が表す置換基の種類は特に限定されず、公知の置換基が挙げられる。
置換基としては、例えば、酸素原子を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基、および、酸素原子を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基が挙げられ、より具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基および、これらを組み合わせた基が挙げられる。なお、上記置換基は、さらに置換基で置換されていてもよい。
なかでも、Rb1の一態様が表す置換基としては、炭素数1~18の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1~12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~8の直鎖状アルキル基または炭素数3~8の分岐状アルキル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0172】
ポリマー(KS)が(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリルアミドポリマー等の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーのラジカル重合によって合成されるポリマーである場合、構成単位(Ka)は下記一般式(KA-1)で表される構成単位であることが好ましい。
【0173】
【0174】
一般式(KA-1)中、Ra1は水素原子、メチル基、-CH2ORZ1又は-CH2COORZ2を表す。RZ1は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。RZ2は水素原子又はメチル基を表す。Aは-O-又は-NRZ3-を表す。RZ3は水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。L1は単結合又は2価の連結基を表す。Rb1は水素原子又は置換基を表す。
【0175】
一般式(KA-1)中、Ra1は水素原子、メチル基、-CH2ORZ1又は-CH2COORZ2を表し、水素原子又はメチル基を表すことが好ましい。
一般式(KA-1)中、Aは-O-又は-NRZ3-を表し、-O-又は-NH-を表すことが好ましく、-O-を表すことがより好ましい。
【0176】
一般式(KA-1)中、L1は単結合又は2価の連結基を表す。L1が2価の連結基を表す場合、2価の連結基としては、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO2-、-NR-、炭素数1~20の有機連結基(例えば、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいシクロアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基など)、又はこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基などが挙げられる。上記Rは水素原子又は置換基を表す。
L1は単結合、又は、炭素数1~10のアルキレン基、-O-、-CO-、-COO-、-S-若しくはこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基であることが好ましく、単結合、又は、炭素数1~6のアルキレン基、-O-、-CO-、-COO-、-S-若しくはこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基であることがより好ましい。
【0177】
一般式(KA-1)中、Rb1は水素原子又は置換基を表す。Rb1の具体例及び好ましい範囲は、上記一般式(K)中のRb1と同じである。
【0178】
ポリマー(KS)がポリシルセスキオキサンである場合、構成単位(Ka)は下記一般式(KS-1)で表される構成単位であることが好ましい。
【0179】
【0180】
一般式(KS-1)中、L1は単結合又は2価の連結基を表す。Rb1は水素原子又は置換基を表す。
【0181】
一般式(KS-1)中、「SiO1.5」は、ポリシルセスキオキサン中のシロキサン結合(Si-O-Si)により構成される構造部分(シルセスキオキサン単位)を表す。
ポリシルセスキオキサンとは、加水分解性三官能シラン化合物に由来するシロキサン構成単位を有するネットワーク型ポリマー又は多面体クラスターであり、シロキサン結合によって、ランダム構造、ラダー構造、ケージ構造などを形成し得る。
【0182】
一般式(KS-1)中、L1は単結合又は2価の連結基を表す。L1の具体例及び好ましい範囲は、上記一般式(KA-1)中のL1と同じである。
【0183】
一般式(KS-1)中、Rb1は水素原子又は置換基を表す。Rb1の具体例及び好ましい範囲は、上記一般式(K)中のRb1と同じである。
【0184】
ケトン基を含む構成単位(a)(構成単位(Ka))の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0185】
【0186】
積層体の耐擦傷性を向上させる観点から、ポリマー(KS)中の構成単位(Ka)の含有量は、ポリマー(KS)に含まれる構成単位の全体に対して、3モル%以上50モル%未満であることが好ましく、5モル%以上40モル%未満であることがより好ましく、7モル%以上30モル%未満であることが更に好ましく、7モル%以上20モル%未満であることが特に好ましく、7モル%以上15モル%未満であることが最も好ましい。
【0187】
ポリマー(KS)の構成単位(Ka)は、酸開裂性基を含む構成単位(KTa)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を含む構成単位(c)とを有するポリマー(KTS)の酸開裂性基が開裂することによって生成したものであることが好ましい。
【0188】
〔酸開裂性基を含む構成単位(KTa)〕
酸開裂性基を含む構成単位(KTa)(単に「構成単位(KTa)」とも呼ぶ。)について説明する。
構成単位(KTa)は、フッ素原子を含有する基及び酸開裂性基を含む構成単位であることが好ましい。
【0189】
(酸開裂性基)
構成単位(KTa)に含まれる酸開裂性基は、酸の作用により開裂する基であり、典型的には酸の作用により開裂して、ケトン基を生じる基である。
【0190】
構成単位(KTa)は下記一般式(B1)又は(B2)で表される基を含むことが好ましい。
酸開裂性基の開裂速度制御によって耐擦傷性を向上できるという理由から、構成単位(KTa)は、下記一般式(B1)で表される基を含む構成単位であることが好ましい。
【0191】
【0192】
一般式(B1)及び(B2)中、*は、結合位置を表す。
nは、1以上の整数を表す。
mは、2以上の整数を表す。
Rb1は、水素原子又は置換基を表す。
Rb2、Rb3及びRb4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。ただし、2個のRb3は、互いに結合して環を形成していてもよく、複数のRb2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、複数のRb3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、複数のRb4は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
Lb1は、n+1価の連結基を表す。ただし、複数のLb1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
Lb2は、m+1価の連結基を表す。
Zは、フッ素原子を含有する基、または、オルガノシロキサン基を表す。ただし、複数のZは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0193】
上記一般式(B1)中、Rb1は、水素原子または置換基を表し、置換基を表すことが好ましい。
Rb1の一態様が表す置換基の種類は特に限定されず、公知の置換基が挙げられる。
置換基としては、例えば、酸素原子を有していてもよい1価の脂肪族炭化水素基、および、酸素原子を有していてもよい1価の芳香族炭化水素基が挙げられ、より具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アシルオキシ基および、これらを組み合わせた基が挙げられる。なお、上記置換基は、さらに置換基で置換されていてもよい。
なかでも、Rb1の一態様が表す置換基としては、炭素数1~18の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1~12のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~8の直鎖状アルキル基または炭素数3~8の分岐状アルキル基であることが更に好ましく、メチル基であることが特に好ましい。
【0194】
上記一般式(B1)中、Rb2は、水素原子または置換基を表す。ただし、複数のRb2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
Rb2の一態様が表す置換基の種類は特に限定されず、公知の置換基が挙げられ、上記一般式(B1)中のRb1の一態様が表す置換基で例示した基が挙げられる。なかでも、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~8の直鎖状アルキル基または炭素数3~8の分岐状アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
また、Rb2は、水素原子を表すことが好ましい。
【0195】
上記一般式(B1)中、Lb1は、n+1価の連結基を表す。ただし、複数のLb1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
n+1価の連結基としては、酸開裂性基の開裂速度制御によって耐擦傷性を向上できるという理由から、置換基を有していてもよい炭素数1~24のn+1価の炭化水素基であって、炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい炭化水素基が好ましく、炭素数1~10の酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0196】
n+1価の連結基に含まれる炭素数は特に限定されず、酸開裂性基の開裂速度制御によって耐擦傷性を向上できるという理由から、1~24が好ましく、1~10がより好ましい。
【0197】
n+1価の連結基としては、2~4価の連結基が好ましく、2~3価の連結基がより好ましく、2価の連結基が更に好ましい。
2価の連結基としては、例えば、置換基を有していてもよい2価の炭化水素基、2価の複素環基、-O-、-S-、-N(Q)-、-CO-、または、これらを組み合わせた基が挙げられる。Qは、水素原子または置換基を表す。
2価の炭化水素基としては、例えば、炭素数1~10(好ましくは、1~5)のアルキレン基、炭素数1~10のアルケニレン基、および、炭素数1~10のアルキニレン基などの2価の脂肪族炭化水素基;アリーレン基などの2価の芳香族炭化水素基;が挙げられる。
2価の複素環基としては、例えば、2価の芳香族複素環基が挙げられ、具体的には、ピリジレン基(ピリジン-ジイル基)、ピリダジン-ジイル基、イミダゾール-ジイル基、チエニレン(チオフェン-ジイル基)、キノリレン基(キノリン-ジイル基)などが挙げられる。
また、これらを組み合わせた基としては、上述した、2価の炭化水素基、2価の複素環基、-O-、-S-、-N(Q)-、および、-CO-からなる群から選択される2種以上を組み合わせた基が挙げられ、例えば、-O-2価の炭化水素基-、-(O-2価の炭化水素基)p-O-(pは、1以上の整数を表す)、および、-2価の炭化水素基-O-CO-などが挙げられる。
これらの2価の連結基のうち、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基、炭素数3~10の分岐鎖状のアルキレン基、炭素数3~10の環状のアルキレン基、炭素数6~12のアリーレン基、および、-O-からなる群から選択される少なくとも2以上の基を組み合わせた2価の連結基であることが好ましい。
Lb1はアルキレン基であることが特に好ましい。
【0198】
2価の炭化水素基および2価の複素環基が有していてもよい置換基、ならびに、Qで表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、シアノ基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、および、ヒドロキシ基が挙げられる。
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、および、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子、または、塩素原子が好ましい。
アルキル基としては、例えば、炭素数1~18の直鎖状、炭素数3~18の分岐鎖状または環状のアルキル基が好ましく、炭素数1~4の直鎖状アルキル基がより好ましく、メチル基またはエチル基が更に好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、炭素数1~18のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~4のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基またはエトキシ基が更に好ましい。
アリール基としては、例えば、炭素数6~12のアリール基が挙げられ、例えば、フェニル基、α-メチルフェニル基、および、ナフチル基が挙げられ、フェニル基が好ましい。
アリールオキシ基は、芳香族複素環オキシ基であってもよく、例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基、イミダゾイルオキシ基、ベンゾイミダゾイルオキシ基、ピリジン-4-イルオキシ基、ピリミジニルオキシ基、キナゾリニルオキシ基、プリニルオキシ基、および、チオフェン-3-イルオキシ基が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基、および、エトキシカルボニル基が挙げられる。
【0199】
上記一般式(B1)中、Zは、フッ素原子を含有する基、または、オルガノシロキサン基を表す。ただし、複数のZは、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0200】
(フッ素原子を含有する基)
Zの一態様が表すフッ素原子を含有する基(「フッ素含有基」とも呼ぶ。)は、少なくとも1つのフッ素原子を含んでなる基であり、例えば、フッ素原子、少なくとも1つのフッ素原子を有する有機基などが挙げられる。上記有機基の炭素数は特に限定されないが、炭素数1~30であることが好ましく、1~20であることがより好ましく、2~15であることが更に好ましく、3~10であることが特に好ましく、炭素数4~10であることがより一層好ましく、炭素数4~8であることが最も好ましい。上記有機基は直鎖構造であっても分岐構造であっても環状構造であっても良い。上記有機基としては、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、及びこれらの少なくとも2つを組み合わせてなる基が挙げられ、アルキル基であることが好ましい。また、上記アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基は、フッ素原子以外に更に置換基を有していてもよい。
フッ素含有基は、フルオロアルキル基又はフルオロポリエーテル基であることが好ましい。フルオロポリエーテル基とは、複数のフッ化炭素基がエーテル結合で結合された2価の基である。フルオロポリエーテル基は、複数のフルオロアルキレン基がエーテル結合で結合された2価の基であることが好ましく、複数のパーフルオロアルキレン基がエーテル結合で結合された2価の基(パーフルオロポリエーテル基)であることが好ましい。
フッ素含有基は、炭素数1~20のフルオロアルキル基であることが好ましく、炭素数2~15のフルオロアルキル基であることがより好ましく、炭素数4~10のフルオロアルキル基であることが更に好ましく、炭素数4~8のフルオロアルキル基であることが特に好ましい。
1つのフッ素含有基に含まれるフッ素原子の数は、3個以上17個以下であることが好ましく、5個以上15個以下であることがより好ましく、9個以上13個以下であることが更に好ましい。
【0201】
Zの一態様が表すフッ素原子を含有する基は、フッ素原子を有する脂肪族炭化水素基であることが好ましい。上記脂肪族炭化水素基は、酸素原子を有していてもよい。フッ素原子を含有する基としては、例えば、フッ素原子含有アルキル基、フッ素原子含有アルキル基を構成する-CH2-の1個以上が-O-で置換されたもの、フッ素原子含有アルケニル基などが挙げられる。
ここで、フッ素原子含有アルキル基としては、アルキル基を構成する-CH2-の水素原子の一部がフッ素原子に置換されたアルキル基や、アルキル基を構成する一部の炭素原子がフッ素原子を含有する置換基(例えば、-CF3)を有するものであってもよいが、アルキル基を構成する-CH2-の水素原子が全てフッ素原子に置換されたパーフルオロアルキル基が好ましく、-(CF2)faCF3がより好ましい。なお、faは、0~12の整数を表す。
また、フッ素原子含有アルキル基を構成する-CH2-の1個以上が-O-で置換されたものとしては、例えば、-(CF2)fbOC(CF3)3、-CF2CF2O(CF2CF2O)fcCF2CF2CF3、-CF(CF3)OCF2CF(CF3)OCF2CF2CF3などが挙げられる。なお、fbは、1~10の整数を表し、fcは、1~10の整数を表す。
また、フッ素原子含有アルケニル基としては、例えば、-C(CF3)=C(CF(CF3)2)2などが挙げられる。
フッ素原子を有する脂肪族炭化水素基の炭素数は特に限定されず、1~30が好ましく、3~20がより好ましく、3~10がさらに好ましい。
フッ素原子を有する脂肪族炭化水素基に含まれるフッ素原子の数は特に限定されず、1~30が好ましく、5~25がより好ましく、7~20がさらに好ましい。
【0202】
フッ素含有基は、下記一般式(f-1)で表される基であることが好ましい。
【0203】
【0204】
一般式(f-1)中、q1は0~12の整数を表し、q2は1~8の整数を表し、Rq1は水素原子又はフッ素原子を表す。*は結合位置を表す。
q1は1~7の整数を表すことが好ましく、1~5の整数を表すことがより好ましく、1又は2を表すことが更に好ましい。
q2は2~8の整数を表すことが好ましく、4~8の整数を表すことがより好ましく、4~6の整数を表すことが更に好ましい。
Rq1はフッ素原子を表すことが好ましい。
【0205】
Zの一態様が表すオルガノシロキサン基としては、例えば、-SiR30R31-OR32、-(SiR33R34-O-)sm-R35が挙げられる。なお、R30~R35は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、アルキル基、脂環式炭化水素基または芳香族炭化水素基を表し、smは1~100の整数を表す。
【0206】
上記一般式(B1)中、nは、1以上の整数を表す。なかでも、合成適性の観点から、1~5の整数が好ましく、1~3の整数がより好ましく、1が更に好ましい。
【0207】
上記一般式(B2)中、Rb3は、水素原子または置換基を表す。ただし、2個のRb3は、互いに結合して環を形成していてもよく、また、複数のRb3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
Rb3の一態様が表す置換基の種類は特に限定されず、公知の置換基が挙げられ、上記式(B1)中のRb1の一態様が表す置換基で例示した基が挙げられる。なかでも、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~8の直鎖状アルキル基または炭素数3~8の分岐状アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
また、Rb3は、2個のRb3が互いに結合して環を形成していることが好ましく、2個のRb3が互いに結合してシクロヘキサン環を形成していることがより好ましい。
【0208】
上記一般式(B2)中、Rb4は、水素原子または置換基を表す。ただし、複数のRb4は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
Rb4の一態様が表す置換基の種類は特に限定されず、公知の置換基が挙げられ、上記式(B1)中のRb1の一態様が表す置換基で例示した基が挙げられる。なかでも、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~8の直鎖状アルキル基または炭素数3~8の分岐状アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
また、Rb4は、水素原子を表すことが好ましい。
【0209】
上記一般式(B2)中、Lb2は、m+1価の連結基を表す。
m+1価の連結基としては、酸開裂性基の開裂速度制御によって耐擦傷性を向上できるという理由から、置換基を有していてもよい炭素数1~24のm+1価の炭化水素基であって、炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい炭化水素基が好ましく、炭素数1~10の酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0210】
m+1価の連結基に含まれる炭素数は特に限定されず、酸開裂性基の開裂速度制御によって耐擦傷性を向上できるという理由から、1~24が好ましく、1~10がより好ましい。
【0211】
m+1価の連結基としては、3~4価の連結基が好ましく、4価の連結基がより好ましい。
4価の連結基としては、下記式(3)で表される連結基が好ましい。
-C(Rb5)3-b(-Lb3-*)b ・・・(3)
上記式(3)中、Rb5はアルキル基を表し、Lb3は2価の連結基を表し、*はZとの結合位置を表し、bは1~3の整数を表す。
ここで、Rb5が表すアルキル基としては、例えば、炭素数1~6のアルキル基が挙げられ、より具体的には、メチル基、エチル基、および、n-プロピル基が挙げられる。
また、Lb3が表す2価の連結基としては、例えば、上記一般式(B1)中のLb1の一態様が表す2価の連結基で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0212】
上記一般式(B2)中、Zは、フッ素原子を有する脂肪族炭化水素基、または、オルガノシロキサン基を表し、上記一般式(B1)中のZと同様である。
【0213】
上記一般式(B2)中、mは、2以上の整数を表す。なかでも、合成適性の観点から、2~4の整数が好ましく、2~3の整数がより好ましい。
【0214】
構成単位(KTa)は、下記一般式(10)又は(20)で表される構成単位であることが好ましい。
【0215】
【0216】
上記一般式(10)および(20)中、rおよびsは、それぞれ独立に、1以上の整数を表す。
RB1およびRB2は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を表す。
Y1およびY2は、それぞれ独立に、-O-、または、-NRZ-を表す。ただし、RZは、水素原子または置換基を表す。
LB1は、r+1価の連結基を表す。
LB2は、s+1価の連結基を表す。
B1は、上記一般式(B1)で表される基を表す。ただし、上記一般式(B1)中の*が、LB1との結合位置を表し、rが2以上の整数である場合、複数のB1は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
B2は、上記一般式(B2)で表される基を表す。ただし、上記一般式(B2)中の*が、LB2との結合位置を表し、sが2以上の整数である場合、複数のB2は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0217】
上記一般式(10)中、RB1は、水素原子または置換基を表す。
RB1の一態様が表す置換基の種類は特に限定されず、公知の置換基が挙げられ、上記一般式(B1)中のRb1の一態様が表す置換基で例示した基が挙げられる。なかでも、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~8の直鎖状アルキル基または炭素数3~8の分岐状アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
また、RB1としては、水素原子またはメチル基を表すことが好ましい。
【0218】
上記一般式(10)中、Y1は、-O-、または、-NRZ-を表す。ただし、RZは、水素原子または置換基を表す。
ここで、RZの一態様が表す置換基の種類は特に限定されず、公知の置換基が挙げられ、上記一般式(B1)中のRb1の一態様が表す置換基で例示した基が挙げられる。なかでも、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~8の直鎖状アルキル基または炭素数3~8の分岐状アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
また、Y1としては、-O-、または、-NH-を表すことが好ましく、-O-を表すことがより好ましい。
【0219】
上記一般式(10)中、LB1は、r+1価の連結基を表す。
r+1価の連結基としては、置換基を有していてもよい炭素数1~24のr+1価の炭化水素基であって、炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい炭化水素基が好ましく、炭素数1~10の酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0220】
r+1価の連結基に含まれる炭素数は特に限定されず、1~24が好ましく、1~10がより好ましい。
【0221】
r+1価の連結基としては、2~3価の連結基が好ましく、2価の連結基がより好ましい。
2価の連結基としては、例えば、上記一般式(B1)中のLb1の一態様が表す2価の連結基で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0222】
上記一般式(10)中、rは、1以上の整数を表す。なかでも、合成適性の観点から、1~3の整数が好ましく、1~2の整数がより好ましく、1が更に好ましい。
【0223】
上記一般式(20)中、RB2は、水素原子または置換基を表す。
RB2の一態様が表す置換基の種類は特に限定されず、公知の置換基が挙げられ、上記一般式(B1)中のRb1の一態様が表す置換基で例示した基が挙げられる。なかでも、なかでも、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~8の直鎖状アルキル基または炭素数3~8の分岐状アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
また、RB2としては、水素原子またはメチル基を表すことが好ましい。
【0224】
上記一般式(20)中、Y2は、-O-、または、-NRZ-を表す。ただし、RZは、水素原子または置換基を表す。
ここで、RZの一態様が表す置換基の種類は特に限定されず、公知の置換基が挙げられ、上記一般式(B1)中のRb1の一態様が表す置換基で例示した基が挙げられる。なかでも、炭素数1~12のアルキル基が好ましく、炭素数1~8の直鎖状アルキル基または炭素数3~8の分岐状アルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
また、Y2としては、-O-、または、-NH-を表すことが好ましく、-O-を表すことがより好ましい。
【0225】
上記一般式(20)中、LB2は、s+1価の連結基を表す。
s+1価の連結基としては、置換基を有していてもよい炭素数1~24のs+1価の炭化水素基であって、炭化水素基を構成する炭素原子の一部がヘテロ原子で置換されていてもよい炭化水素基が好ましく、炭素数1~10の酸素原子または窒素原子を含んでいてもよい脂肪族炭化水素基がより好ましい。
【0226】
s+1価の連結基に含まれる炭素数は特に限定されず、1~24が好ましく、1~10がより好ましい。
【0227】
s+1価の連結基としては、2価の連結基が好ましい。
2価の連結基としては、例えば、上記一般式(B1)中のLb1の一態様が表す2価の連結基で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0228】
上記一般式(20)中、sは、1以上の整数を表す。なかでも、合成適性の観点から、1~2の整数が好ましく、1がより好ましい。
【0229】
構成単位(KTa)の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。nは0~10の整数を表し、1~10の整数を表すことが好ましく、1~4の整数を表すことがより好ましい。
【0230】
【0231】
【0232】
ポリマー(KTS)中の構成単位(KTa)の含有量の好ましい範囲は、前述のポリマー(KS)中の構成単位(Ka)の含有量の好ましい範囲と同様である。
【0233】
ポリマー(KS)が有するカチオン重合性基を含む構成単位(b)は、前述した第一の態様のポリマー(S)が有するカチオン重合性基を含む構成単位(b)と同様である。
【0234】
積層体の耐擦傷性を向上させる観点から、ポリマー(KS)中の構成単位(b)の含有量は、ポリマー(KS)に含まれる構成単位の全体に対して、10モル%以上90モル%未満であることが好ましく、15モル%以上70モル%未満であることがより好ましく、20モル%以上60モル%未満であることが更に好ましく、20モル%以上50モル%未満であることが特に好ましい。
【0235】
ポリマー(KS)が有するラジカル重合性基を有する構成単位(c)は、前述した第一の態様のポリマー(S)が有するラジカル重合性基を有する構成単位(c)と同様である。
【0236】
積層体の耐擦傷性を向上させる観点から、ポリマー(KS)中の構成単位(c)の含有量は、ポリマー(KS)に含まれる構成単位の全体に対して、10モル%以上90モル%未満であることが好ましく、20モル%以上80モル%未満であることがより好ましく、25モル%以上70モル%未満であることが更に好ましく、30モル%以上70モル%未満であることが特に好ましく、40モル%以上70モル%未満であることが最も好ましい。
【0237】
ポリマー(KS)は、上記構成単位(a)~(c)に加えて、任意のその他の構成単位を有していても良い。
【0238】
ポリマー(KS)が(メタ)アクリルポリマー、(メタ)アクリルアミドポリマー等のラジカル重合によって合成されるポリマーである場合、ポリマー(KS)の重量平均分子量(Mw)は、8000以上80000未満であることが好ましく、10000以上70000未満であることがより好ましく、12000以上60000未満であることが更に好ましい。
【0239】
ポリマー(KS)がポリシルセスキオキサンである場合、ポリマー(KS)の重量平均分子量(Mw)は、500~50000であることが好ましく、1000~30000であることがより好ましく、1500~12000であることが更に好ましい。
【0240】
ポリマー(KS)の分子量分散度(Mw/Mn)は、例えば1.00~4.00であり、好ましくは1.10~3.70であり、より好ましくは1.20~3.00である。Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。
【0241】
ポリマー(KS)の重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分散度は、特に断りがない限り、GPCの測定値(ポリスチレン換算)である。重量平均分子量は、具体的には装置としてHLC-8220(東ソー株式会社製)を用意し、溶離液としてテトラヒドロフランを用い、カラムとしてTSKgel(登録商標)G3000HXL+TSKgel(登録商標)G2000HXLを用い、温度23℃、流量1mL/minの条件下、示差屈折率(RI)検出器を用いて測定する。
【0242】
ポリマー(KS)の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0243】
【0244】
【0245】
ポリマー(KTS)の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0246】
【0247】
【0248】
<ポリマー(KTS)の製造方法>
ポリマー(KTS)は公知の方法により製造することができる。具体的な方法は、前述した第一の態様のポリマー(TS)の製造方法と同様である。
【0249】
ポリマー(KS)は、ポリマー(KTS)中の構成単位(KTa)の酸開裂性基を開裂させることで製造することができる。
【0250】
ハードコート層形成用組成物中のポリマー(KS)の含有率は、特に限定されないが、面状及び耐擦傷性の観点から、ハードコート層形成用組成物中の全固形分に対して、0.001~5質量%であることが好ましく、0.01~4質量%であることがより好ましく、0.1~3質量%であることが更に好ましく、0.5~3質量%であることが特に好ましく、1~3質量%であることが一層好ましく、1.5~3質量%であることが最も好ましい。
なお、全固形分とは溶媒以外の全成分のことである。
【0251】
ハードコート層形成用組成物中、ポリマー(KS)は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。
【0252】
以下、ハードコート層形成用組成物が含んでいても良いその他の成分について説明する。
【0253】
(カチオン重合性基を含む構成単位を有するポリマー(a1))
ハードコート層形成用組成物は、ポリマー(S)に加えて、更に、カチオン重合性基を含む構成単位を有するポリマー(a1)(単に「ポリマー(a1)」とも呼ぶ)を含むことが好ましい。
ポリマー(a1)は、前述のポリマー(S)とは異なる成分である。
ポリマー(a1)のカチオン重合性基は特に限定されず、公知のいずれのカチオン重合性基であっても良い。カチオン重合性基としては、例えば、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニルオキシ基などを挙げることができる。
カチオン重合性基としては、脂環式エーテル基又はビニルオキシ基が好ましく、エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基、オキセタニル基又はビニルオキシ基がより好ましく、エポキシ基、エポキシシクロヘキシル基又はオキセタニル基が更に好ましく、エポキシ基又はエポキシシクロヘキシル基が最も好ましい。なお、上記した各基は置換基を有していても良い。
【0254】
カチオン重合性基は下記式(ca1)~(ca3)のいずれかで表される基であることが好ましい。
【0255】
【0256】
式(ca1)~(ca3)中、*は結合位置を表す。式(ca3)中、Rcaは水素原子又は置換基を表す。
【0257】
式(ca3)中のRcaが置換基を表す場合の置換基の具体例及び好ましい範囲は前述の式(C3)中のRCが置換基を表す場合の置換基と同様である。
【0258】
ポリマー(a1)はポリシルセスキオキサンであることが好ましい。
ポリマー(a1)は、下記一般式(csa-1)~(csa-3)のいずれかで表される構成単位を有することが好ましい。
【0259】
【0260】
一般式(csa-1)~(csa-3)中、L5は単結合又は2価の連結基を表す。一般式(csa-3)中、Rcaは上記式(ca3)中におけるものと同じ意味を表す。
【0261】
一般式(csa-1)~(csa-3)中、L5は単結合又は2価の連結基を表す。L5が2価の連結基を表す場合、2価の連結基としては、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO2-、-NR-、炭素数1~20の有機連結基(例えば、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいシクロアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基など)、又はこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基などが挙げられる。上記Rは水素原子又は置換基を表す。
L5は単結合、又は、炭素数1~10のアルキレン基、-O-、-CO-、-COO-、-S-若しくはこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基であることが好ましく、単結合、又は、炭素数1~6のアルキレン基、-O-、-CO-、-COO-、-S-若しくはこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基であることがより好ましい。
【0262】
一般式(csa-3)中、Rcaは上記式(ca3)中におけるものと同じ意味を表し、具体例及び好ましい範囲も同じである。
【0263】
ポリマー(a1)における上記一般式(csa-1)~(csa-3)のいずれかで表される構成単位の含有量は、ポリマー(a1)に含まれる構成単位の全体に対して、50モル%以上100モル%以下であることが好ましく、70モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、90モル%以上100モル%以下であることが更に好ましい。
【0264】
ポリマー(a1)は、上記一般式(csa-1)~(csa-3)のいずれかで表される構成単位に加えて、その他の任意の構成単位を有していても良い。
【0265】
ポリマー(a1)のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500~8000であり、より好ましくは1000~7000であり、更に好ましくは1500~6000である。
【0266】
ポリマー(a1)のGPCによる標準ポリスチレン換算の分子量分散度(Mw/Mn)は、例えば1.0~4.0であり、好ましくは1.1~3.7であり、より好ましくは1.2~3.3である。Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。
【0267】
ポリマー(a1)の重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分散度の測定方法は、前述のポリマー(S)の重量平均分子量及び分子量分散度の測定方法と同様である。
【0268】
ポリマー(a1)は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。
【0269】
ハードコート層形成用組成物におけるポリマー(a1)の含有率は、ハードコート層形成用組成物の全固形分に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが更に好ましい。ハードコート層形成用組成物におけるポリマー(a1)の含有率の上限は、ハードコート層形成用組成物の全固形分に対して、99.9質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましく、97質量%以下であることが更に好ましい。
【0270】
(カチオン重合開始剤)
ハードコート層形成用組成物は、カチオン重合開始剤を含んでいても良い。特に、ハードコート層形成用組成物中に前述のポリマー(a1)を含む場合は、カチオン重合開始剤を含むことが好ましい。
【0271】
カチオン重合開始剤は、光カチオン重合開始剤であっても良いし、熱カチオン重合開始剤であっても良い。
カチオン重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ヨードニウム塩(例えばジアリールヨードニウム塩)、トリアリールスルホニウム塩、ジアゾニウム塩、イミニウム塩などが挙げられる。より具体的には、例えば、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム及びピリジニウムから選ばれる少なくとも1種のカチオンと、BF4
-、PF6
-、SbF6
-、AsF6
-、CF3SO3
-、(CF3SO2)2N-及びB(C6F5)4
-から選ばれる少なくとも1種のアニオンとから構成されるオニウム塩、アルミニウム錯体等のカチオン重合開始剤が挙げられる。
カチオン重合開始剤は、公知の方法で合成可能であり、市販品としても入手可能である。市販品としては、例えば、日本曹達社製CI-1370、CI-2064、CI-2397、CI-2624、CI-2639、CI-2734、CI-2758、CI-2823、CI-2855およびCI-5102等、ローディア社製PHOTOINITIATOR2047等、ユニオンカーバイト社製UVI-6974、UVI-6990、サンアプロ社製CPI-10P、CPI-100P、CPI-101P、CPI-110P、TA-100等、三新化学工業社製サンエイドSI-B2A、サンエイドSI-B3A等を挙げることができる。
【0272】
ヨードニウム塩系の光カチオン重合開始剤の具体的な市販品としては、例えば、東京化成社製B2380、みどり化学社製BBI-102、富士フイルム和光純薬製WPI-113、富士フイルム和光純薬製WPI-124、富士フイルム和光純薬製WPI-169、富士フイルム和光純薬製WPI-170、東洋合成化学社製DTBPI-PFBSを挙げることができる。
【0273】
カチオン重合開始剤は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。
ハードコート層形成用組成物中のカチオン重合開始剤の含有率は、特に限定されるものではないが、例えばポリマー(a1)100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましい。
【0274】
(溶媒)
ハードコート層形成用組成物は溶媒を含んでいても良い。
溶媒としては、有機溶媒が好ましく、有機溶媒の一種又は二種以上を任意の割合で混合して用いることができる。有機溶媒の具体例としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール等のアルコール類;アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;エチルセロソルブ等のセロソルブ類;トルエン、キシレン等の芳香族類;プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ジアセトンアルコール等が挙げられる。
ハードコート層形成用組成物における溶媒の含有率は、ハードコート層形成用組成物の塗布適性を確保できる範囲で適宜調整することができる。例えば、ハードコート層形成用組成物の全固形分100質量部に対して、50~500質量部とすることができ、好ましくは80~200質量部とすることができる。
ハードコート層形成用組成物は、通常、液の形態をとる。
ハードコート層形成用組成物の固形分の濃度は、通常、10~90質量%であり、好ましくは20~80質量%であり、特に好ましくは40~70質量%である。
【0275】
(その他の添加剤)
ハードコート層形成用組成物は、上記以外の成分を含有していてもよく、たとえば、無機微粒子、分散剤、レベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等を含有していてもよい。
【0276】
本発明に用いるハードコート層形成用組成物は、以上説明した各種成分を同時に、又は任意の順序で順次混合することにより調製することができる。調製方法は特に限定されるものではなく、調製には公知の攪拌機等を用いることができる。
【0277】
(ハードコート層形成用組成物の硬化物)
本発明の積層体のハードコート層は、ポリマー(S)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含むものであり、好ましくは、ポリマー(S)、ポリマー(a1)及びカチオン重合開始剤を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含むものである。
ハードコート層形成用組成物の硬化物は、少なくとも、ポリマー(S)のカチオン重合性基とポリマー(a1)のカチオン重合性基とが重合反応により結合してなる硬化物を含むことが好ましい。
本発明の積層体のハードコート層における、上記ハードコート層形成用組成物の硬化物の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましい。
【0278】
(ハードコート層の膜厚)
ハードコート層の膜厚は特に限定されないが、5~50μmであることが好ましく、7~40μmであることがより好ましく、10~37μmであることが更に好ましい。
ハードコート層の膜厚は、積層体の断面を光学顕微鏡で観察して算出する。断面試料は、断面切削装置ウルトラミクロトームを用いたミクロトーム法や、集束イオンビーム(FIB)装置を用いた断面加工法などにより作成できる。
【0279】
<耐擦傷層>
本発明の積層体は耐擦傷層を有する。
耐擦傷層は、ハードコート層上に形成されている。
本発明の積層体は、少なくとも1層の耐擦傷層を、ハードコート層の基材側とは反対側の表面上に有する。
本発明の積層体の耐擦傷層は、ラジカル重合性化合物(c1)及び酸発生剤を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含む。
【0280】
(ラジカル重合性化合物(c1))
ラジカル重合性化合物(c1)(「化合物(c1)」ともいう。)について説明する。
化合物(c1)は、ラジカル重合性基を有する化合物である。
化合物(c1)におけるラジカル重合性基は特に限定されず、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができる。ラジカル重合性基としては、重合性不飽和基が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。なお、上記した各基は置換基を有していてもよい。
化合物(c1)は、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることが好ましく、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であることがより好ましい。
化合物(c1)の分子量は特に限定されず、モノマーでもよいし、オリゴマーでもよいし、ポリマーでもよい。
上記化合物(c1)の具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等が好適に例示される。
1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステルが挙げられる。具体的には、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート,ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、高架橋という点ではペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、もしくはジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、又はこれらの混合物が好ましい。
【0281】
化合物(c1)はポリシルセスキオキサンであっても良い。
化合物(c1)がポリシルセスキオキサンである場合、化合物(c1)は下記一般式(RSA-1)又は(RSA-2)で表される構成単位を有することが好ましい。
【0282】
【0283】
一般式(RSA-1)及び(RSA-2)中、L6は単結合又は2価の連結基を表す。一般式(RSA-1)中、Ra2は水素原子又はメチル基を表す。
【0284】
一般式(RSA-1)及び(RSA-2)中、L6は単結合又は2価の連結基を表す。L6が2価の連結基を表す場合、2価の連結基としては、-O-、-CO-、-COO-、-S-、-SO2-、-NR-、炭素数1~20の有機連結基(例えば、置換基を有してもよいアルキレン基、置換基を有してもよいシクロアルキレン基、置換基を有してもよいアリーレン基など)、又はこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基などが挙げられる。上記Rは水素原子又は置換基を表す。
L6は単結合、又は、炭素数1~10のアルキレン基、-O-、-CO-、-COO-、-S-若しくはこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基であることが好ましく、単結合、又は、炭素数1~6のアルキレン基、-O-、-CO-、-COO-、-S-若しくはこれらを2つ以上組み合わせてなる連結基であることがより好ましい。
【0285】
化合物(c1)がポリシルセスキオキサンである場合、化合物(c1)における上記一般式(RSA-1)又は(RSA-2)で表される構成単位の含有量は、化合物(c1)に含まれる構成単位の全体に対して、10モル%以上100モル%以下であることが好ましく、30モル%以上100モル%以下であることがより好ましく、50モル%以上100モル%以下であることが更に好ましい。
【0286】
化合物(c1)がポリシルセスキオキサンである場合、化合物(c1)は、上記一般式(RSA-1)又は(RSA-2)で表される構成単位に加えて、その他の任意の構成単位を有していても良い。
【0287】
化合物(c1)がポリシルセスキオキサンである場合、化合物(c1)のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500~6000であり、より好ましくは1000~4500であり、更に好ましくは1500~3000である。
【0288】
化合物(c1)がポリシルセスキオキサンである場合、化合物(c1)のGPCによる標準ポリスチレン換算の分子量分散度(Mw/Mn)は、例えば1.0~4.0であり、好ましくは1.1~3.7であり、より好ましくは1.2~3.0であり、さらに好ましくは1.3~2.5である。Mwは重量平均分子量を表し、Mnは数平均分子量を表す。
【0289】
化合物(c1)の重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分散度の測定方法は、前述のポリマー(S)の重量平均分子量及び分子量分散度の測定方法と同様である。
【0290】
化合物(c1)は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。
【0291】
耐擦傷層形成用組成物中の化合物(c1)の含有率は、耐擦傷層形成用組成物中の全固形分に対して、80質量%以上99.9質量%以下であることが好ましく、85質量%以上99.7質量%以下がより好ましく、90質量%以上99.5質量%以下が更に好ましい。
【0292】
(酸発生剤)
耐擦傷層形成用組成物に含まれる酸発生剤は特に限定されない。酸発生剤は光の照射により酸を発生する光酸発生剤であっても良いし、熱により酸を発生する熱酸発生剤であっても良い。
酸発生剤としては、特に限定されないが、例えば、スルホニウム塩、アンモニウム塩、ヨードニウム塩(例えばジアリールヨードニウム塩)、トリアリールスルホニウム塩、ジアゾニウム塩、イミニウム塩などが挙げられる。より具体的には、例えば、芳香族スルホニウム、芳香族ヨードニウム、芳香族ジアゾニウム及びピリジニウムから選ばれる少なくとも1種のカチオンと、BF4
-、PF6
-、SbF6
-、AsF6
-、CF3SO3
-、(CF3SO2)2N-及びB(C6F5)4
-から選ばれる少なくとも1種のアニオンとから構成されるオニウム塩、アルミニウム錯体等の酸発生剤が挙げられる。
酸発生剤は、公知の方法で合成可能であり、市販品としても入手可能である。市販品としては、例えば、日本曹達社製CI-1370、CI-2064、CI-2397、CI-2624、CI-2639、CI-2734、CI-2758、CI-2823、CI-2855およびCI-5102等、ローディア社製PHOTOINITIATOR2047等、ユニオンカーバイト社製UVI-6974、UVI-6990、サンアプロ社製CPI-10P、CPI-100P、CPI-101P、CPI-110P、TA-100等、三新化学工業社製サンエイドSI-B2A、サンエイドSI-B3A等を挙げることができる。
【0293】
ヨードニウム塩系の光酸発生剤の具体的な市販品としては、例えば、東京化成社製B2380、みどり化学社製BBI-102、富士フイルム和光純薬製WPI-113、富士フイルム和光純薬製WPI-124、富士フイルム和光純薬製WPI-169、富士フイルム和光純薬製WPI-170、東洋合成化学社製DTBPI-PFBSを挙げることができる。
【0294】
酸発生剤は、熱酸発生剤であることが好ましい。熱酸発生剤は、本発明の積層体を製造する過程における塗膜の乾燥時の熱を利用して酸を発生させることができ、前述のポリマー(TS)の構成単位(Ta)の酸開裂性基を効率良く開裂させることができるため好ましい。
熱酸発生剤としては、具体的には、サンアプロ社製TA-100、三新化学工業社製サンエイドSI-B2A、サンエイドSI-B3Aなどが好ましい。
【0295】
耐擦傷層形成用組成物中の酸発生剤の含有率は、特に限定されるものではないが、例えば、耐擦傷層形成用組成物中の全固形分に対して、0.1~10質量%であることが好ましく、0.3~5質量%であることがより好ましく、0.5~3質量%であることが更に好ましい。
【0296】
(ラジカル重合開始剤)
耐擦傷層形成用組成物は、ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。
耐擦傷層形成用組成物がラジカル重合開始剤を含むことで、前述のハードコート層形成用組成物に含まれるポリマー(S)及び化合物(c1)のラジカル重合性基の重合反応を良好に進行させることができ、ハードコート層塗膜の耐擦傷層塗膜側の表面に偏在しているポリマー(S)と、耐擦傷層塗膜中の化合物(c1)とを結合することができ、ハードコート層と耐擦傷層の密着性を高めることができる。
ラジカル重合開始剤は一種のみ用いてもよく、構造の異なる二種以上を併用してもよい。また、ラジカル重合開始剤は光重合開始剤でも良く、熱重合開始剤でも良い。
ラジカル重合開始剤としては、公知のいずれのラジカル重合開始剤でも用いることができる。
耐擦傷層形成用組成物中のラジカル重合開始剤の含有率は、特に限定されるものではないが、例えば上記化合物(c1)100質量部に対して、0.1~200質量部が好ましく、1~50質量部がより好ましい。
【0297】
(溶媒)
耐擦傷層形成用組成物は、溶媒を含んでいても良い。
溶媒としては、前述のハードコート層形成用組成物が含んでいても良い溶媒と同様である。
耐擦傷層形成用組成物における溶媒の含有率は、耐擦傷層形成用組成物の塗布適性を確保できる範囲で適宜調整することができる。例えば、耐擦傷層形成用組成物の全固形分100質量部に対して、50~500質量部とすることができ、好ましくは80~200質量部とすることができる。
耐擦傷層形成用組成物は、通常、液の形態をとる。
耐擦傷層形成用組成物の固形分の濃度は、通常、10~90質量%であり、好ましくは15~80質量%であり、特に好ましくは20~70質量%である。
【0298】
(その他添加剤)
耐擦傷層形成用組成物は、上記以外の成分を含有していてもよく、たとえば、無機粒子、レベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、滑り剤、溶媒等を含有していてもよい。
特に、滑り剤として下記の含フッ素化合物を含有することが好ましい。
【0299】
[含フッ素化合物]
含フッ素化合物は、モノマー、オリゴマー、ポリマーいずれでもよい。含フッ素化合物は、耐擦傷層中で多官能(メタ)アクリレート化合物(c1)との結合形成あるいは相溶性に寄与する置換基を有していることが好ましい。上記置換基は同一であっても異なっていてもよく、複数個あることが好ましい。上記置換基は重合性基であることが好ましく、ラジカル重合性、カチオン重合性、アニオン重合性、縮重合性及び付加重合性のうちいずれかを示す重合性反応基であることがより好ましい。好ましい置換基の例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基、シンナモイル基、エポキシ基、オキセタニル基、ヒドロキシ基、ポリオキシアルキレン基、カルボキシ基、アミノ基等が挙げられる。置換基としては、ラジカル重合性基が好ましく、アクリロイル基又はメタクリロイル基が特に好ましい。
含フッ素化合物はフッ素原子を含まない化合物とのポリマーであってもオリゴマーであってもよい。
【0300】
上記含フッ素化合物は、下記一般式(F)で表されるフッ素系化合物が好ましい。
一般式(F): (Rf)-[(W)-(RA)nf]mf
(式中、Rfは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基、Wは単結合又は連結基、RAは重合性不飽和基を表す。nfは1~3の整数を表す。mfは1~3の整数を表す。)
【0301】
一般式(F)において、RAは重合性不飽和基を表す。重合性不飽和基は、紫外線や電子線などの活性エネルギー線を照射することによりラジカル重合反応を起こしうる不飽和結合を有する基(すなわち、ラジカル重合性基)であることが好ましく、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、アリル基などが挙げられ、(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、及びこれらの基における任意の水素原子がフッ素原子に置換された基が好ましく用いられる。
【0302】
一般式(F)において、Rfは(パー)フルオロアルキル基又は(パー)フルオロポリエーテル基を表す。
ここで、(パー)フルオロアルキル基は、フルオロアルキル基及びパーフルオロアルキル基のうち少なくとも1種を表し、(パー)フルオロポリエーテル基は、フルオロポリエーテル基及びパーフルオロポリエーテル基のうち少なくとも1種を表す。耐擦傷性の観点では、Rf中のフッ素含有率は高いほうが好ましい。
【0303】
(パー)フルオロアルキル基は、炭素数1~20の基が好ましく、より好ましくは炭素数1~10の基である。
(パー)フルオロアルキル基は、直鎖構造(例えば-CF2CF3、-CH2(CF2)4H、-CH2(CF2)8CF3、-CH2CH2(CF2)4H)であっても、分岐構造(例えば-CH(CF3)2、-CH2CF(CF3)2、-CH(CH3)CF2CF3、-CH(CH3)(CF2)5CF2H)であっても、脂環式構造(好ましくは5員環又は6員環で、例えばパーフルオロシクロへキシル基及びパーフルオロシクロペンチル基並びにこれらの基で置換されたアルキル基)であってもよい。
【0304】
(パー)フルオロポリエーテル基は、(パー)フルオロアルキル基がエーテル結合を有している場合を指し、1価でも2価以上の基であってもよい。フルオロポリエーテル基としては、例えば-CH2OCH2CF2CF3、-CH2CH2OCH2C4F8H、-CH2CH2OCH2CH2C8F17、-CH2CH2OCF2CF2OCF2CF2H、フッ素原子を4個以上有する炭素数4~20のフルオロシクロアルキル基等が挙げられる。また、パーフルオロポリエーテル基としては、例えば、-(CF2O)pf-(CF2CF2O)qf-、-[CF(CF3)CF2O]pf―[CF(CF3)]qf-、-(CF2CF2CF2O)pf-、-(CF2CF2O)pf-などが挙げられる。
上記pf及びqfはそれぞれ独立に0~20の整数を表す。ただしpf+qfは1以上の整数である。
pf及びqfの総計は1~83が好ましく、1~43がより好ましく、5~23がさらに好ましい。
上記含フッ素化合物は、耐擦傷性に優れるという観点から-(CF2O)pf-(CF2CF2O)qf-で表されるパーフルオロポリエーテル基を有することが特に好ましい。
【0305】
本発明においては、含フッ素化合物は、パーフルオロポリエーテル基を有し、かつ重合性不飽和基を一分子中に複数有することが好ましい。
【0306】
一般式(F)において、Wは連結基を表す。Wとしては、例えばアルキレン基、アリーレン基及びヘテロアルキレン基、並びにこれらの基が組み合わさった連結基が挙げられる。これらの連結基は、更に、オキシ基、カルボニル基、カルボニルオキシ基、カルボニルイミノ基及びスルホンアミド基等、並びにこれらの基が組み合わさった官能基を有してもよい。
Wとして、好ましくは、エチレン基、より好ましくは、カルボニルイミノ基と結合したエチレン基である。
【0307】
含フッ素化合物のフッ素原子含有量には特に制限は無いが、20質量%以上が好ましく、30~70質量%がより好ましく、40~70質量%がさらに好ましい。
【0308】
好ましい含フッ素化合物の例としては、ダイキン化学工業(株)製のR-2020、M-2020、R-3833、M-3833及びオプツールDAC(以上商品名)、DIC社製のメガファックF-171、F-172、F-179A、RS-78、RS-90、ディフェンサMCF-300及びMCF-323(以上商品名)が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0309】
耐擦傷性の観点から、一般式(F)において、nfとmfの積(nf×mf)は2以上が好ましく、4以上がより好ましい。
【0310】
重合性不飽和基を有する含フッ素化合物の重量平均分子量(Mw)は、分子排斥クロマトグラフィー、例えばゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定できる。
含フッ素化合物のMwは400以上50000未満が好ましく、400以上30000未満がより好ましく、400以上25000未満が更に好ましい。
【0311】
含フッ素化合物の含有率は特に限定されないが、耐擦傷層形成用組成物中の全固形分に対して、0.01~5質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましく、0.5~5質量%であることが更に好ましく、0.5~2質量%であることが特に好ましい。
【0312】
耐擦傷層形成用組成物は、以上説明した各種成分を同時に又は任意の順序で順次混合することにより調製することができる。調製方法は特に限定されるものではなく、調製には公知の攪拌機等を用いることができる。
【0313】
(耐擦傷層形成用組成物の硬化物)
本発明の積層体の耐擦傷層は、化合物(c1)及び酸発生剤を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含むものであり、好ましくは、化合物(c1)、酸発生剤及びラジカル重合開始剤を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含むものである。
耐擦傷層形成用組成物の硬化物は、少なくとも、化合物(c1)のラジカル重合性基が重合反応してなる硬化物を含むことが好ましい。
本発明の積層体の耐擦傷層における耐擦傷層形成用組成物の硬化物の含有率は、耐擦傷層の全質量に対して60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましい。
【0314】
(耐擦傷層の膜厚)
耐擦傷層の膜厚は、積層体の繰り返し折り曲げ耐性を向上させる観点から、3.0μm未満であることが好ましく、0.1~2.0μmであることがより好ましく、0.1~1.0μmであることが更に好ましい。
【0315】
<繰り返し折り曲げ耐性>
本発明の積層体は、優れた繰り返し折り曲げ耐性を有する。
本発明の積層体は、耐擦傷層を内側にして、曲率半径2mmで180°折り曲げ試験を30万回繰り返し行った場合にクラックが発生しないことが好ましい。
繰り返し折り曲げ耐性は具体的には以下のように測定する。
積層体から幅15mm、長さ150mmの試料フィルムを切り出し、温度25℃、相対湿度65%の状態に1時間以上静置させる。その後、180°耐折度試験機((株)井元製作所製、IMC-0755型)を用いて、耐擦傷層を内側(基材を外側)にして繰り返し折り曲げ耐性の試験を行う。上記試験機は、試料フィルムを直径4mmの棒(円柱)の曲面に沿わせて曲げ角度180°で長手方向の中央部分で折り曲げた後、元に戻す(試料フィルムを広げる)という動作を1回の試験とし、この試験を繰り返し行うものである。上記180°折り曲げ試験を30万回繰り返し行った場合にクラックが発生するか否かを目視で評価する。
【0316】
基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体であって、上記ハードコート層が、前述のポリマー(S)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含み、かつ上記耐擦傷層が、ラジカル重合性化合物(c1)及び酸発生剤を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含む積層体とすることで、上記繰り返し折り曲げ耐性に優れた積層体とすることができる。
【0317】
<耐擦傷性>
本発明の積層体は、優れた耐擦傷性を有する。
本発明の積層体は、#0000番のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら、耐擦傷層の表面を往復100回擦った場合に傷が生じないものであることが好ましく、往復1000回擦った場合に傷が生じないことがより好ましく、往復3000回擦った場合に傷が生じないことが更に好ましい。
耐擦傷性は具体的には以下のように測定する。
積層体の耐擦傷層の表面を、ラビングテスターを用いて、下記条件で擦り試験を行うことで、耐擦傷性の指標とする。
評価環境条件:25℃、相対湿度60%
擦り材:スチールウール(日本スチールウール(株)製、グレードNo.#0000番)
試料と接触するテスターの擦り先端部(2cm×2cm)に巻いて、バンド固定
移動距離(片道):13cm
擦り速度:13cm/秒
荷重:1kg/cm2
先端部接触面積:2cm×2cm
試験後の積層体の擦った面(耐擦傷層の表面)とは逆側の面(基材の表面)に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、スチールウールと接触していた部分に傷が生じたときの擦り回数を計測し評価する。
【0318】
基材と、ハードコート層と、耐擦傷層とをこの順に有する積層体であって、上記ハードコート層が、前述のポリマー(S)を含むハードコート層形成用組成物の硬化物を含み、かつ上記耐擦傷層が、ラジカル重合性化合物(c1)及び酸発生剤を含む耐擦傷層形成用組成物の硬化物を含む積層体とすることで、上記耐擦傷性に優れた積層体とすることができる。
【0319】
<積層体の製造方法>
本発明の積層体の製造方法について説明する。
本発明の積層体の製造方法は、下記工程(I)~(V)を含む製造方法であることが好ましい。
(I)基材上に、フッ素原子を含有する基及び酸開裂性基を含む構成単位(Ta)と、カチオン重合性基を含む構成単位(b)と、ラジカル重合性基を含む構成単位(c)とを有するポリマー(TS)、及びカチオン重合性基を有するポリマー(a1)を含むハードコート層形成用組成物を塗布してハードコート層塗膜を形成する工程
(II)カチオン重合によりハードコート層塗膜を硬化する工程
(III)ハードコート層塗膜上に、ラジカル重合性化合物(c1)、酸発生剤及びラジカル重合開始剤を含む耐擦傷層形成用組成物を塗布して耐擦傷層塗膜を形成する工程
(IV)耐擦傷層塗膜を加熱すること又は耐擦傷層塗膜に光を照射することにより、耐擦傷層塗膜中の酸発生剤から酸を発生させ、ハードコート層塗膜の表面に偏在したポリマー(TS)の構成単位(Ta)の酸開裂性基を開裂させ、ポリマー(TS)からフッ素原子を含有する基を切り離す工程
(V)ラジカル重合により耐擦傷層塗膜を硬化する工程
【0320】
-工程(I)-
工程(I)は、基材上に、前述のポリマー(TS)及び前述のポリマー(a1)を含むハードコート層形成用組成物を塗布してハードコート層塗膜を形成する工程である。
ハードコート層形成用組成物の塗布方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。
【0321】
基材、ポリマー(TS)及びポリマー(a1)については前述したとおりである。
【0322】
-工程(II)-
工程(II)は、カチオン重合によりハードコート層塗膜を硬化する工程である。なお、ハードコート層塗膜を硬化するとは、ハードコート層塗膜に含まれるポリマー(TS)及びポリマー(a1)のカチオン重合性基の少なくとも一部を重合反応させることをいう。
【0323】
ハードコート層塗膜の硬化は、カチオン重合によるものであり、光(典型的には電離放射線)の照射又は加熱により行われることが好ましい。
【0324】
光(典型的には電離放射線)の種類については、特に制限はなく、X線、電子線、紫外線、可視光、赤外線などが挙げられるが、紫外線が好ましく用いられる。例えばハードコート層塗膜が紫外線硬化性であれば、紫外線ランプにより10mJ/cm2~2000mJ/cm2の照射量の紫外線を照射して硬化性化合物を硬化するのが好ましい。50mJ/cm2~1800mJ/cm2であることがより好ましく、100mJ/cm2~1500mJ/cm2であることが更に好ましい。紫外線ランプ種としては、メタルハライドランプや高圧水銀ランプ等が好適に用いられる。
【0325】
熱により硬化する場合、温度に特に制限はないが、80℃以上200℃以下であることが好ましく、100℃以上180℃以下であることがより好ましく、120℃以上160℃以下であることがさらに好ましい。
【0326】
-工程(III)-
工程(III)は、ハードコート層塗膜上に、ラジカル重合性化合物(c1)、酸発生剤及びラジカル重合開始剤を含む耐擦傷層形成用組成物を塗布して耐擦傷層塗膜を形成する工程である。酸発生剤は熱酸発生剤であることが好ましい。
耐擦傷層形成用組成物の塗布方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ローラーコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等が挙げられる。
【0327】
-工程(IV)-
工程(IV)は、耐擦傷層塗膜を加熱すること又は耐擦傷層塗膜に光を照射することにより、耐擦傷層塗膜中の酸発生剤から酸を発生させ、ハードコート層塗膜の表面に偏在したポリマー(TS)の構成単位(Ta)の酸開裂性基を開裂させ、ポリマー(TS)からフッ素原子を含有する基を切り離す工程である。
酸発生剤が熱酸発生剤であり、耐擦傷層塗膜を加熱することにより工程(IV)を行うことが好ましい。光(典型的には電離放射線)の照射よりも加熱の方が時間的な制限が少ないため、より効果的にポリマー(TS)からフッ素原子を含有する基を切り離すことができる。
耐擦傷層塗膜を加熱する場合、加熱されることにより耐擦傷層塗膜が到達する温度に特に制限はないが、50℃以上200℃以下であることが好ましく、100℃以上180℃以下であることがより好ましく、120℃以上160℃以下であることが更に好ましい。
加熱方法は特に限定されないが、例えば、温風の吹き付け、加熱炉内への配置、加熱炉内での搬送、ハードコート層塗膜及び耐擦傷層塗膜が設けられていない面(基材面)からのローラーでの加熱等により行うことができる。
【0328】
-工程(IV)-
工程(IV)は、ラジカル重合により耐擦傷層塗膜を硬化する工程である。
耐擦傷層塗膜の硬化は、ラジカル重合によるものであり、光(典型的には電離放射線)の照射又は加熱に行われることが好ましい。光(典型的には電離放射線)の照射及び加熱については、工程(II)において記載したものと同様である。なお、耐擦傷層塗膜を硬化するとは、耐擦傷層塗膜に含まれるラジカル重合性化合物(c1)のラジカル重合性基の少なくとも一部を重合反応させることをいう。
【0329】
本発明では、上記工程(II)において、ハードコート層塗膜を硬化時に酸素存在下で硬化させることが好ましい。すなわち、工程(II)においてハードコート層塗膜を硬化させつつ、かつ、ハードコート層塗膜の表面に偏在したポリマー(TS)中のラジカル重合性基を含む構成単位(c)同士の重合反応を酸素阻害によって抑制し、構成単位(c)の大部分は未反応の状態を維持する。次いで、工程(III)では、硬化されたハードコート層塗膜上に耐擦傷層形成用組成物を塗布して耐擦傷層塗膜を形成し、次いで、工程(V)では、耐擦傷層塗膜を硬化するとともに、ハードコート層塗膜の完全硬化を行うことが好ましい。ハードコート層塗膜の硬化は、酸素濃度や電離放射線の照射量、加熱の温度及び時間を調節することにより行うことができる。
【0330】
工程(I)と工程(II)の間、工程(II)と工程(III)の間、工程(III)と工程(IV)の間、工程(IV)と工程(V)の間、又は工程(V)の後に、必要に応じて乾燥処理を行ってもよい。乾燥処理は、温風の吹き付け、加熱炉内への配置、加熱炉内での搬送、ハードコート層及び耐擦傷層が設けられていない面(基材面)からのローラーでの加熱等により行うことができる。加熱温度は、溶媒を乾燥除去できる温度に設定すればよく、特に限定されるものではない。ここで加熱温度とは、温風の温度または加熱炉内の雰囲気温度をいうものとする。
【0331】
本発明の積層体は、耐擦傷性及び繰り返し折り曲げ耐性に優れ、かつ表面のゆず肌状の凹凸の発生が抑制されたものであり、例えば、光学フィルム(好ましくはハードコートフィルム)として用いることができる。また、本発明の積層体は、画像表示装置の表面保護フィルムとして用いることができ、例えば、フォルダブルデバイス(フォルダブルディスプレイ)の表面保護フィルムとして用いることができる。フォルダブルデバイスとは、表示画面が変形可能であるフレキシブルディスプレイを採用したデバイスのことであり、表示画面の変形性を利用してデバイス本体(ディスプレイ)を折りたたむことが可能である。
フォルダブルデバイスとしては、例えば、有機エレクトロルミネッセンスデバイスなどが挙げられる。
本発明は、本発明の積層体を含む、画像表示装置用表面保護フィルムにも関する。画像表示装置用表面保護フィルムは、画像表示装置の表示面(ディスプレイ表面)を保護するために、画像表示装置の表面に配置される保護フィルムである。画像表示装置用表面保護フィルムとしては、特にフォルダブルデバイス(フォルダブルディスプレイ)の表面保護フィルムが好ましい。
【0332】
本発明は、本発明の積層体を備えた物品、及び本発明の積層体を表面保護フィルムとして備えた画像表示装置にも関する。
【実施例】
【0333】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はこれによって限定して解釈されるものではない。
【0334】
[実施例A]
【0335】
<基材の作製>
(ポリイミド粉末の製造)
攪拌器、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた1Lの反応器に、窒素気流下、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)832gを加えた後、反応器の温度を25℃にした。ここに、ビストリフルオロメチルベンジジン(TFDB)64.046g(0.2mol)を加えて溶解した。得られた溶液を25℃に維持しながら、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)31.09g(0.07mol)とビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)8.83g(0.03mol)を投入し、一定時間撹拌して反応させた。その後、塩化テレフタロイル(TPC)20.302g(0.1mol)を添加して、固形分濃度13質量%のポリアミック酸溶液を得た。次いで、このポリアミック酸溶液にピリジン25.6g、無水酢酸33.1gを投入して30分撹拌し、さらに70℃で1時間撹拌した後、常温に冷却した。ここにメタノール20Lを加え、沈澱した固形分を濾過して粉砕した。その後、100℃下、真空で6時間乾燥させて、111gのポリイミド粉末を得た。
【0336】
(基材S-1の作製)
100gの上記ポリイミド粉末を670gのN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)に溶かして13質量%の溶液を得た。得られた溶液をステンレス板に流延し、130℃の熱風で30分乾燥させた。その後フィルムをステンレス板から剥離して、フレームにピンで固定し、フィルムが固定されたフレームを真空オーブンに入れ、100℃から300℃まで加熱温度を徐々に上げながら2時間加熱し、その後、徐々に冷却した。冷却後のフィルムをフレームから分離した後、最終熱処理工程として、さらに300℃で30分間熱処理して、ポリイミドフィルムからなる、厚み30μmの基材S-1を得た。
【0337】
<ポリマー(a1)の合成>
(化合物(A1)の合成)
温度計、攪拌装置、還流冷却器、及び窒素導入管を取り付けた1000ミリリットルのフラスコ(反応容器)に、窒素気流下で2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン300ミリモル(73.9g)、トリエチルアミン7.39g、及びMIBK(メチルイソブチルケトン)370gを混合し、純水73.9gを、滴下ロートを使用して30分かけて滴下した。この反応液を80℃に加熱し、重縮合反応を窒素気流下で10時間行った。
その後、反応溶液を冷却し、5質量%食塩水300gを添加し、有機層を抽出した。有機層を5質量%食塩水300g、純水300gで2回、順次洗浄した後、1mmHg、50℃の条件で濃縮し、固形分濃度59.8質量%のMIBK溶液として無色透明の液状の生成物である下記構造式で表される化合物(A1)を87.0g得た。
化合物(A1)の数平均分子量(Mn)は2050であり、分子量分散度(Mw/Mn)は1.9であった。
【0338】
【0339】
(化合物(A2)の合成)
2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(98.6g、400mmol)、アセトン(100g)、炭酸カリウム(553mg、4.0mmol)、純水(76.0g、4000mmol)を混合し、50℃で5時間撹拌した。反応液を室温(23℃)に戻した後、メチルイソブチルケトン(200g)、5質量%食塩水(200g)を添加し、有機層を抽出した。有機層を5質量%食塩水(200g)で2回、純水(200g)で2回洗浄した後、減圧濃縮することにより50.0質量%のメチルイソブチルケトン(MIBK)溶液として化合物(A2)を131.1g得た(収率93%)。化合物(A2)の数平均分子量(Mn)は5610であり、分子量分散度(Mw/Mn)は3.1であった。
【0340】
【0341】
<ポリマー(TS)の合成>
(モノマー1の合成)
100mLナスフラスコに、1,1-ジメトキシシクロヘキサン5.0g、2-ヒドロキシメタクリレート9.0g、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクタノール25.0g、ピリジニウムパラトルエンスルホナート0.87g、及びトルエン30mLを量りとり、40℃で1時間撹拌し、次いで、100mmHgの減圧下で40℃で4時間攪拌した。得られた反応液を室温(23℃)まで冷却した後、飽和炭酸水素ナトリウム水で分液洗浄し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーを行うことにより、下記式で表されるモノマー1を無色液体として8.0g得た(収率40%)。
【0342】
【0343】
(モノマー2の合成)
撹拌羽、温度計、滴下ロートを備えた2000mL三口フラスコに、2-ヒドロキシエチルメタクリレート100g、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)240mLを添加し、氷浴で冷却した。次いで、3-クロロプロピオニルクロリド126.8gを滴下し、氷冷下3時間撹拌した。得られた反応液を室温まで冷却した後、酢酸エチル1000mLを添加し、1mol/L塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水で分液洗浄し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮することにより目的のモノマー2を淡黄色液体として85g得た(収率88%)。
【0344】
【0345】
(ポリマー(TS1-1)の合成)
モノマー1を2.34g、サイクロマーM100(株式会社ダイセル製)を3.60g、モノマー2を4.05g、メチルエチルケトン(MEK)を18.57g、2,2’-アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(重合開始剤、富士フイルム和光純薬株式会社製)を3.760g量りとり、70℃で6時間撹拌した。
反応後、メタノール500mLを用いて再沈殿した。得られた固体をMEK15gで溶解させ、トリエチルアミン5.57g、p-メトキシフェノール0.01gを添加後、60℃で4時間撹拌した。反応液を室温に戻した後、メタノール500mLを用いて再沈殿し、MEK25gで溶解することによりポリマー(TS1-1)を5.1g得た(収率53%)。
下記反応式中、「M100」はサイクロマーM100を表す。また、ポリマー中の各構成単位の含有量(含有比率)の単位は「モル%」である。
【0346】
【0347】
ポリマー(TS1-2)、(TS1-3)、(TS1-4)、(TS1-5)、(TS1-6)、(TS1-7)、(TS2-1)及び(TS3-1)は、ポリマー(TS1-1)の合成に準じた合成法により、それぞれモノマーの種類及び量、重合開始剤の量を変更して合成した。
【0348】
層間密着剤として使用した各ポリマーの構造式、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分散度(Mw/Mn)を以下に示す。下記構造式中の各構成単位の含有量(含有比率)の単位は「モル%」である。
【0349】
【0350】
【0351】
【0352】
【0353】
【0354】
【0355】
【0356】
【0357】
【0358】
【0359】
【0360】
【0361】
ポリマー(TS1-1)に含まれる下記式(Ta1-1)で表される構成単位の酸開裂性基が酸の作用により開裂することで、下記式(a1-1)で表される構成単位が生成する。ポリマー(TS1-2)、(TS1-3)、(TS1-4)、(TS1-5)、(TS1-6)、(TS1-7)、(R-2)及び(R-3)にも下記式(Ta1-1)で表される構成単位が含まれており、同様に酸開裂性基が酸の作用により開裂することで、下記式(a1-1)で表される構成単位が生成する。
【0362】
【0363】
ポリマー(TS2-1)に含まれる下記式(Ta2-1)で表される構成単位の酸開裂性基が酸の作用により開裂することで、下記式(a1-2)で表される構成単位が生成する。
【0364】
【0365】
ポリマー(TS3-1)に含まれる下記式(Ta3-1)で表される構成単位の酸開裂性基が酸の作用により開裂することで、下記式(a1-1)で表される構成単位が生成する。
【0366】
【0367】
[実施例1]
<ハードコート層形成用組成物の調製>
(ハードコート層形成用組成物HC-1)
上記化合物(A1)を含有するMIBK溶液に、ポリマー(TS1-1)(層間密着剤)、CPI-100P及びMIBK(メチルイソブチルケトン)を添加し、各含有成分の含有量を以下のように調整し、ミキシングタンクに投入、攪拌した。得られた組成物を孔径0.45μmのポリプロピレン製フィルターで濾過し、ハードコート層形成用組成物HC-1とした。
【0368】
化合物(A1)のMIBK溶液(固形分濃度59.8質量%)
82.3質量部
層間密着剤のMIBK溶液(固形分濃度52質量%)
0.24質量部
CPI-100P 1.30質量部
MIBK 16.1質量部
【0369】
なお、CPI-100Pは、サンアプロ株式会社製の光カチオン重合開始剤(固形分濃度50質量%)である。
【0370】
<耐擦傷層形成用組成物の調製>
(耐擦傷層形成用組成物SR-1)
下記に記載の組成で各成分をミキシングタンクに投入、攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して耐擦傷層形成用組成物SR-1とした。
化合物(B) 19.39質量部
DPHA 4.85質量部
酸発生剤(SI-B3A) 0.18質量部
イルガキュア127 0.72質量部
RS-90(固形分濃度10質量%) 2.54質量部
メチルエチルケトン 71.02質量部
【0371】
(耐擦傷層形成用組成物SR-2)
下記に記載の組成で各成分をミキシングタンクに投入、攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して耐擦傷層形成用組成物SR-2とした。
化合物(B) 19.27質量部
DPHA 4.82質量部
酸発生剤(SI-B3A) 0.33質量部
イルガキュア127 0.72質量部
RS-90(固形分濃度10質量%) 2.54質量部
メチルエチルケトン 71.02質量部
【0372】
(耐擦傷層形成用組成物SR-3)
下記に記載の組成で各成分をミキシングタンクに投入、攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して耐擦傷層形成用組成物SR-3とした。
化合物(B) 12.05質量部
DPHA 6.03質量部
A-TMMT 6.03質量部
酸発生剤(SI-B3A) 0.33質量部
イルガキュア127 0.71質量部
RS-90(固形分濃度10質量%) 2.54質量部
メチルエチルケトン 71.02質量部
【0373】
化合物(B)は下記構造のポリシルセスキオキサンである。
【0374】
【0375】
耐擦傷層形成用組成物中に用いた化合物は以下のとおりである。
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製
イルガキュア127(Irg.127):光ラジカル重合開始剤、BASF社製
RS-90:滑り剤、DIC(株)製
SI-B3A:熱酸発生剤、三新化学工業社製サンエイドSI-B3A
A-TMMT:NKエステル A-TMMT、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、新中村化学工業(株)製
【0376】
(積層体(ハードコートフィルム)の製造)
厚さ30μmのポリイミド基材S-1上に上記ハードコート層形成用組成物HC-1をワイヤーバー#18を用いて、硬化後の膜厚が20μmとなるようにバー塗布し、基材上にハードコート層塗膜を設けた。
次いで、ハードコート層塗膜を120℃で1分間乾燥した後、25℃、大気雰囲気下の条件にて空冷水銀ランプを用いて、照度18mW/cm2、照射量240mJ/cm2の紫外線を照射した。このようにしてハードコート層塗膜を硬化した。
その後、硬化されたハードコート層塗膜上に、耐擦傷層形成用組成物SR-1をダイコーターを用いて、硬化後の膜厚が0.8μmとなるように塗布した。
次いで、得られた積層体を120℃で1分間乾燥した後、25℃、酸素濃度100ppm、照度60mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射し、さらに100℃、酸素濃度100ppmの条件にて空冷水銀ランプを用いて、照度60mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射することで、ハードコート層塗膜及び耐擦傷層塗膜を完全硬化させた。
その後、得られた積層体を120℃1時間熱処理することで、基材上に、ハードコート層と耐擦傷層を有する実施例1の積層体(ハードコートフィルム)を得た。
【0377】
[実施例2~10、比較例1~4]
ハードコート層に用いる層間密着剤の種類、耐擦傷層に用いる酸発生剤の種類及び添加量(含有率)を下記表1に記載したとおり変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~10、比較例1~4の積層体(ハードコートフィルム)をそれぞれ製造した。
【0378】
[実施例11~13]
ハードコート層に用いるポリマー(a1)の種類、層間密着剤の種類及び添加量(含有率)、耐擦傷層に用いる耐擦傷層形成用組成物の種類、酸発生剤の添加量(含有率)を下記表2に記載したとおり変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例11~13の積層体(ハードコートフィルム)をそれぞれ製造した。
【0379】
TA-100:熱酸発生剤、サンアプロ社製TA-100
SI-B2A:熱酸発生剤、三新化学工業社製サンエイドSI-B2A
【0380】
[積層体(ハードコートフィルム)の評価]
製造した各実施例及び比較例の積層体(ハードコートフィルム)を、以下の方法によって評価した。
【0381】
(耐擦傷性の評価)
製造した各実施例及び比較例の積層体(ハードコートフィルム)の耐擦傷層の表面を、ラビングテスターを用いて、以下の条件で擦り試験を行うことで、耐擦傷性の指標とした。
評価環境条件:25℃、相対湿度60%
擦り材:スチールウール(日本スチールウール(株)製、グレードNo.#0000番)
試料と接触するテスターの擦り先端部(2cm×2cm)に巻いて、バンド固定
移動距離(片道):13cm
擦り速度:13cm/秒
荷重:1kg/cm2
先端部接触面積:2cm×2cm
擦り回数:往復10回、往復100回、往復1000回
試験後のハードコートフィルムの擦った面(耐擦傷層の表面)とは逆側の面(基材の表面)に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、スチールウールと接触していた部分に傷が生じたときの擦り回数を計測し評価した。
A:往復1000回擦った場合に傷が生じない
B:往復100回擦った場合に傷が生じないが、往復1000回擦った場合に傷が生じる
C:往復10回擦った場合に傷が生じないが、往復100回擦った場合に傷が生じる
D:往復10回擦った場合に傷が生じる
【0382】
(繰り返し折り曲げ耐性の評価)
製造した各実施例及び比較例の積層体(ハードコートフィルム)から幅15mm、長さ150mmの試料フィルムを切り出し、温度25℃、相対湿度65%の状態に1時間以上静置させた。その後、180°耐折度試験機((株)井元製作所製、IMC-0755型)を用いて、耐擦傷層を内側(基材を外側)にして繰り返し折り曲げ耐性の試験を行った。使用した試験機は、試料フィルムを直径4mmの棒(円柱)の曲面に沿わせて曲げ角度180°で長手方向の中央部分で折り曲げた後、元に戻す(試料フィルムを広げる)という動作を1回の試験とし、この試験を繰り返し行うものである。上記180°折り曲げ試験を30万回繰り返し行った場合にクラックが発生しないものをAとし、クラックが発生したものをBとして評価した。なお、クラックの発生の有無は目視で評価した。
【0383】
(面状の評価)
製造した各実施例及び比較例のハードコートフィルムのハードコート層及び耐擦傷層を有する側(塗布側)の表面とは逆側の面に、反射を防止するための黒色ポリエチレンテレフタレートフィルムを貼った試料を作成した。周囲が全て黒色の部屋で外光を遮断し、作成した試料の塗布側の正面(表面に垂直な方向)と斜めから三波長蛍光灯(FL20SS・EX-N/18(松下電器産業(株)製)の付いた電気スタンドを用いて、塗布側を目視観察して下記評価基準によって評価した。
A:注意深く見てもゆず肌状の凹凸を含め凹凸が全く視認できない。
B:注意深く見ると、若干の緩やかな周期のゆず肌状の凹凸が観察されるが、気にならない。
C:ゆず肌状の凹凸が面内の1/3未満の面積に存在することが視認される。
D:ゆず肌状の凹凸が面内の1/3以上の面積に存在、又はゆず肌状の凹凸よりも高低差の大きい凹凸が一目見ただけで存在することが視認される。
【0384】
下記表1及び表2中、層間密着剤の含有率(質量%)は、ハードコート層形成用組成物の全固形分に対しての値である。酸発生剤の含有率(質量%)は、耐擦傷層形成用組成物の全固形分に対しての値である。
【0385】
【0386】
【0387】
表1及び表2に示したとおり、実施例1~13の積層体(ハードコートフィルム)は、耐擦傷性及び繰り返し折り曲げ耐性に優れ、かつ表面のゆず肌状の凹凸の発生が抑制されていた。
【0388】
[実施例B]
【0389】
前述の実施例Aで作製したポリイミドフィルムからなる、厚み30μmの基材S-1を実施例Bでも用いた。
【0390】
前述の実施例Aで合成した化合物(A2)を実施例Bでもポリマー(a1)として用いた。
【0391】
【0392】
<ポリマー(KTS)の合成>
(モノマー3の合成)
攪拌機及び滴下ロートを設置した2L反応器内に、グリセリンモノメタクリレート100g、N,N-ジメチルアセトアミド544gを仕込み、反応器内を0℃に冷却しながら、3-クロロプロピオン酸クロライド237.8gを1時間かけて滴下ロートで滴下した。室温に昇温した後、25℃で4時間攪拌して反応させた。得られた反応液を炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で順次洗浄した後に減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより、目的のモノマー3を191g得た(収率90%)。
【0393】
【0394】
(モノマー4の合成)
下記スキームに従い、モノマー4を合成した。
【0395】
【0396】
<bの合成>
2000mLナスフラスコに、2-アセチルブチロラクトン(上記スキーム中、式aで表される化合物)200g、臭化水素水溶液(48%)320g、トルエン300mLを量りとり、60℃で1時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、分液ロートに移しヘキサン100mLを加えた。チオ硫酸ナトリウム10gを加えた飽和炭酸水素ナトリウム水100mLと飽和食塩水100mLで分液洗浄し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮することで褐色液体として化合物b(上記スキーム中、式bで表される化合物)を260.0g得た(収率100%)。
【0397】
<cの合成>
2000mLナスフラスコに、化合物bを256g、ギ酸トリメチル165.6g、p-トルエンスルホン酸一水和物9g、メタノール400mLを量り取り、室温で1時間攪拌した。ジイソプロピルエチルアミン15mLを加え、エバポレーターにて溶媒を留去した。ヘキサン500mL、酢酸エチル50mLを加え、分液ロートに移し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液500mLで2回分液洗浄し、得られた有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、濃縮することで褐色液体として化合物c(上記スキーム中、式cで表される化合物)を248.0g得た(収率76%)。
【0398】
<dの合成>
500mLナスフラスコに、化合物cを50g、p-トルエンスルホン酸一水和物0.45g、1H,1H,2H,2H-パーフルオロヘキサン-1-オール172.5g、ヘキサン100mLを量り取り、77℃でディーンスタークを装着し、6時間攪拌した。
次いで、ジイソプロピルエチルアミン1mLを加え、エバポレーターにて溶媒を留去した。ヘキサン700mL、アセトニトリル400mLを加え、分液ロートに移し、ヘキサン層を分取しエバポレーターで濃縮することで褐色液体として化合物d(上記スキーム中、式dで表される化合物)を73.0g得た(収率46%)。
【0399】
<モノマー4の合成>
300mLナスフラスコに、化合物dを50g、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を50mg、ヨウ化カリウムを1.23g、メタクリル酸ナトリウム12g、N、N-ジメチルアセトアミド50mLを量り取り、80℃で5時間攪拌した。室温まで冷却し、水200mLを加え5分間攪拌後、分液ロートに移し、ヘキサン200mL、酢酸エチル20mLを加えた。分液ロートを振盪させたのち水層を除去した。飽和塩化ナトリウム水溶液を加え、分液洗浄した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して濃縮し、カラムクロマトグラフィーを行うことで、目的のモノマー4を41g得た(収率81%)。
【0400】
ポリマー(TS4-1)、(TS4-2)、(TS4-3)、(TS4-4)、(TS4-5)、(TS4-6)、(TS4-7)及び(TS4-8)は、ポリマー(TS1-1)の合成に準じた合成法により、それぞれモノマーの種類及び量、重合開始剤の量を変更して合成した。
【0401】
層間密着剤として使用した各ポリマーの構造式、重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分散度(Mw/Mn)を以下に示す。下記構造式中の各構成単位の含有量(含有比率)の単位は「モル%」である。
【0402】
【0403】
【0404】
【0405】
【0406】
【0407】
【0408】
【0409】
【0410】
【0411】
【0412】
【0413】
【0414】
ポリマー(TS4-1)に含まれる下記式(Ta4-1)で表される構成単位の酸開裂性基が酸の作用により開裂することで、下記式(a4-1)で表される構成単位が生成する。ポリマー(TS4-2)~(TS4-8)、(R-5)及び(R-6)にも下記式(Ta4-1)で表される構成単位が含まれており、同様に酸開裂性基が酸の作用により開裂することで、下記式(a4-1)で表される構成単位が生成する。
【0415】
【0416】
[実施例14]
<ハードコート層形成用組成物の調製>
(ハードコート層形成用組成物HC-2)
上記化合物(A2)を含有するMIBK溶液に、ポリマー(TS4-1)(層間密着剤)、CPI-100P及びMIBK(メチルイソブチルケトン)を添加し、各含有成分の含有量を以下のように調整し、ミキシングタンクに投入、攪拌した。得られた組成物を孔径0.45μmのポリプロピレン製フィルターで濾過し、ハードコート層形成用組成物HC-2とした。
【0417】
化合物(A2)のMIBK溶液(固形分濃度59.8質量%)
82.3質量部
層間密着剤のMIBK溶液(固形分濃度52質量%)
0.24質量部
CPI-100P 1.30質量部
MIBK 16.1質量部
【0418】
なお、CPI-100Pは、サンアプロ株式会社製の光カチオン重合開始剤(固形分濃度50質量%)である。
【0419】
<耐擦傷層形成用組成物の調製>
(耐擦傷層形成用組成物SR-1)
下記に記載の組成で各成分をミキシングタンクに投入、攪拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して耐擦傷層形成用組成物SR-1とした。
化合物(B) 19.39質量部
DPHA 4.85質量部
酸発生剤(SI-B3A) 0.18質量部
イルガキュア127 0.72質量部
RS-90(固形分濃度10質量%) 2.54質量部
メチルエチルケトン 71.02質量部
【0420】
化合物(B)は下記構造のポリシルセスキオキサンである。
【0421】
【0422】
耐擦傷層形成用組成物中に用いた化合物は以下のとおりである。
DPHA:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物、日本化薬(株)製
イルガキュア127(Irg.127):光ラジカル重合開始剤、BASF社製
RS-90:滑り剤、DIC(株)製
SI-B3A:熱酸発生剤、三新化学工業社製サンエイドSI-B3A
【0423】
(積層体(ハードコートフィルム)の製造)
厚さ30μmのポリイミド基材S-1上に上記ハードコート層形成用組成物HC-2をワイヤーバー#18を用いて、硬化後の膜厚が20μmとなるようにバー塗布し、基材上にハードコート層塗膜を設けた。
次いで、ハードコート層塗膜を120℃で1分間乾燥した後、25℃、大気雰囲気下の条件にて空冷水銀ランプを用いて、照度18mW/cm2、照射量240mJ/cm2の紫外線を照射した。このようにしてハードコート層塗膜を硬化した。
その後、硬化されたハードコート層塗膜上に、耐擦傷層形成用組成物SR-1をダイコーターを用いて、硬化後の膜厚が0.8μmとなるように塗布した。
次いで、得られた積層体を120℃で1分間乾燥した後、25℃、酸素濃度100ppm、照度60mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射し、さらに100℃、酸素濃度100ppmの条件にて空冷水銀ランプを用いて、照度60mW/cm2、照射量600mJ/cm2の紫外線を照射することで、ハードコート層塗膜及び耐擦傷層塗膜を完全硬化させた。
その後、得られた積層体を120℃1時間熱処理することで、基材上に、ハードコート層と耐擦傷層を有する実施例14の積層体(ハードコートフィルム)を得た。
【0424】
[実施例15~27、比較例5~9]
ハードコート層に用いる層間密着剤の種類及び添加量(含有率)、耐擦傷層に用いる酸発生剤の種類及び添加量(含有率)を下記表3に記載したとおり変更した以外は、実施例14と同様にして、実施例15~27、比較例5~9の積層体(ハードコートフィルム)をそれぞれ製造した。
【0425】
[積層体(ハードコートフィルム)の評価]
製造した各実施例及び比較例の積層体(ハードコートフィルム)を、以下の方法によって評価した。
【0426】
(耐擦傷性の評価)
製造した各実施例及び比較例の積層体(ハードコートフィルム)の耐擦傷層の表面を、ラビングテスターを用いて、以下の条件で擦り試験を行うことで、耐擦傷性の指標とした。
評価環境条件:25℃、相対湿度60%
擦り材:スチールウール(日本スチールウール(株)製、グレードNo.#0000番)
試料と接触するテスターの擦り先端部(2cm×2cm)に巻いて、バンド固定
移動距離(片道):13cm
擦り速度:13cm/秒
荷重:1kg/cm2
先端部接触面積:2cm×2cm
擦り回数:往復10回、往復100回、往復1000回、往復3000回
試験後のハードコートフィルムの擦った面(耐擦傷層の表面)とは逆側の面(基材の表面)に油性黒インキを塗り、反射光で目視観察して、スチールウールと接触していた部分に傷が生じたときの擦り回数を計測し評価した。
AA:往復3000回擦った場合に傷が生じない
A:往復1000回擦った場合に傷が生じないが、往復3000回擦った場合に傷が生じる
B:往復100回擦った場合に傷が生じないが、往復1000回擦った場合に傷が生じる
C:往復10回擦った場合に傷が生じないが、往復100回擦った場合に傷が生じる
D:往復10回擦った場合に傷が生じる
【0427】
(繰り返し折り曲げ耐性の評価)
製造した各実施例及び比較例の積層体(ハードコートフィルム)から幅15mm、長さ150mmの試料フィルムを切り出し、温度25℃、相対湿度65%の状態に1時間以上静置させた。その後、180°耐折度試験機((株)井元製作所製、IMC-0755型)を用いて、耐擦傷層を内側(基材を外側)にして繰り返し折り曲げ耐性の試験を行った。使用した試験機は、試料フィルムを直径4mmの棒(円柱)の曲面に沿わせて曲げ角度180°で長手方向の中央部分で折り曲げた後、元に戻す(試料フィルムを広げる)という動作を1回の試験とし、この試験を繰り返し行うものである。上記180°折り曲げ試験を30万回繰り返し行った場合にクラックが発生しないものをAとし、クラックが発生したものをBとして評価した。なお、クラックの発生の有無は目視で評価した。
【0428】
(面状の評価)
製造した各実施例及び比較例のハードコートフィルムのハードコート層及び耐擦傷層を有する側(塗布側)の表面とは逆側の面に、反射を防止するための黒色ポリエチレンテレフタレートフィルムを貼った試料を作成した。周囲が全て黒色の部屋で外光を遮断し、作成した試料の塗布側の正面(表面に垂直な方向)と斜めから三波長蛍光灯(FL20SS・EX-N/18(松下電器産業(株)製)の付いた電気スタンドを用いて、塗布側を目視観察して下記評価基準によって評価した。
A:注意深く見てもゆず肌状の凹凸を含め凹凸が全く視認できない。
B:注意深く見ると、若干の緩やかな周期のゆず肌状の凹凸が観察されるが、気にならない。
C:ゆず肌状の凹凸が面内の1/3未満の面積に存在することが視認される。
D:ゆず肌状の凹凸が面内の1/3以上の面積に存在、又はゆず肌状の凹凸よりも高低差の大きい凹凸が一目見ただけで存在することが視認される。
【0429】
下記表3中、層間密着剤の含有率(質量%)は、ハードコート層形成用組成物の全固形分に対しての値である。酸発生剤の含有率(質量%)は、耐擦傷層形成用組成物の全固形分に対しての値である。
【0430】
【0431】
表3に示したとおり、実施例14~27の積層体(ハードコートフィルム)は、耐擦傷性及び繰り返し折り曲げ耐性に優れ、かつ表面のゆず肌状の凹凸の発生が抑制されていた。
【産業上の利用可能性】
【0432】
本発明によれば、耐擦傷性及び繰り返し折り曲げ耐性に優れ、かつ表面のゆず肌状の凹凸の発生が抑制された積層体、上記積層体の製造方法、上記積層体を含む画像表示装置用表面保護フィルム、上記積層体を備えた物品及び画像表示装置を提供することができる。
【0433】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2020年6月29日出願の日本特許出願(特願2020-111729)、2020年7月27日出願の日本特許出願(特願2020-126625)、2021年6月7日の日本特許出願(特願2021-95313)、及び2021年6月28日の日本特許出願(特願2021-106801)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。