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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-26
(45)【発行日】2024-08-05
(54)【発明の名称】ガス分析装置及びガス分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/00 20060101AFI20240729BHJP
   G01N 1/22 20060101ALI20240729BHJP
   G01M 15/10 20060101ALI20240729BHJP
【FI】
G01N1/00 101S
G01N1/00 101T
G01N1/22 G
G01M15/10
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022551188
(86)(22)【出願日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 JP2021029556
(87)【国際公開番号】W WO2022064889
(87)【国際公開日】2022-03-31
【審査請求日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2020158991
(32)【優先日】2020-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】竹内 肇
(72)【発明者】
【氏名】泉 博満
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-156438(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0255605(US,A1)
【文献】特開2003-028765(JP,A)
【文献】特開2007-101435(JP,A)
【文献】特開2020-095013(JP,A)
【文献】特開2019-086371(JP,A)
【文献】特開2008-020208(JP,A)
【文献】特開2001-194373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M15/00-15/14
G01N 1/00- 1/44
21/00-21/01
21/17-21/61
31/00-31/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルガスを互いに異なる第1分析仕様及び第2分析仕様にて分析可能なガス分析装置であって、
前記サンプルガスが流れる共通内部流路を有する共通マニホールドを備え、
前記共通マニホールドに、前記サンプルガスの流れる流路全体の構成を、前記第1分析仕様に用いられる第1流路構成に切り替える第1アダプタ、又は、前記共通マニホールドに接続されて、前記サンプルガスの流れる流路全体の構成を、前記第2分析仕様に用いられる第2流路構成に切り替える第2アダプタが、択一的に接続されていることを特徴とするガス分析装置。
【請求項2】
前記共通マニホールドには、調圧弁、開閉弁、又はキャピラリの少なくとも1つが設けられており、その調圧弁、開閉弁、又はキャピラリの少なくとも1つが前記第1分析仕様及び前記第2分析仕様の双方に兼用される、請求項1記載のガス分析装置。
【請求項3】
前記共通マニホールドには、前記サンプルガスと反応する触媒を収容する触媒収容部が設けられており、
前記共通マニホールドが、前記第1アダプタを接続した場合と、前記共通マニホールドに前記第2アダプタを接続した場合とで、前記触媒に流れる前記サンプルガスの流量が異なるように構成されている、請求項1又は2記載のガス分析装置。
【請求項4】
前記共通マニホールドが、前記サンプルガスの流量を制御する流量制御素子を有し、
前記第1アダプタが、前記共通マニホールドから前記第1アダプタに流れ込んだ前記サンプルガスを前記共通マニホールドに戻す第1戻し流路を有し、
前記第2アダプタが、前記共通マニホールドから前記第2アダプタに流れ込んだ前記サンプルガスを前記共通マニホールドに戻す第2戻し流路を有し、
前記触媒を通過した後の前記サンプルガスが前記第1戻し流路を経て前記共通マニホールドの前記流量制御素子に流れ込み、
前記触媒を通過する前の前記サンプルガスが前記第2戻し流路を経て前記共通マニホールドの前記流量制御素子に流れ込む、請求項3記載のガス分析装置。
【請求項5】
前記触媒収容部が、触媒を収容する収容空間に着脱可能なスペーサを備え、当該スペーサの着脱により、前記触媒の収容量が小容量となる小容量状態と、前記触媒の収容量が大容量となる大容量状態とに切り替わる、請求項3又は4記載のガス分析装置。
【請求項6】
前記共通マニホールドが、前記第1アダプタ又は前記第2アダプタが接続される複数の接続ポートを有し、
前記第1アダプタが、前記複数の接続ポートの一部又は全部に対応した第1ポートを有し、
前記第2アダプタが、前記複数の接続ポートの一部又は全部に対応した第2ポートを有し、
前記第1ポートの数と前記第2ポートの数とが異なる、請求項1乃至5のうち何れか一項に記載のガス分析装置。
【請求項7】
前記共通内部流路を加熱するヒータを有している、請求項1乃至6のうち何れか一項に記載のガス分析装置。
【請求項8】
前記第1分析仕様及び前記第2分析仕様における測定対象成分が同一である、請求項1乃至7のうち何れか一項に記載のガス分析装置。
【請求項9】
前記測定対象成分が窒素酸化物である、請求項8記載のガス分析装置。
【請求項10】
前記共通マニホールドに択一的に接続されている前記第1アダプタ又は前記第2アダプタが着脱可能である、請求項1乃至9の何れか一項に記載のガス分析装置。
【請求項11】
請求項1乃至10のうち何れか一項に記載のガス分析装置を用いて前記サンプルガスを分析することを特徴とするガス分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両の排ガス等のサンプルガスを分析するガス分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のガス分析装置としては、特許文献1に示すように、排ガス中の窒素酸化物、二酸化炭素、一酸化炭素、アンモニア、メタン等々の種々の成分を分析するべく、これらの測定対象成分に対応した複数種類の分析計を備えたものがある。
【0003】
ところで、上述したガス分析において、分析計としては、測定対象成分それぞれに対して1台設けておけば十分であるとは限らず、同じ測定対象成分に対して複数の分析計を使い分ける場合がある。
【0004】
具体的な事例としては、排ガス中のNO計測の場合、例えば燃料の種類によっては排ガスを加熱して計測できる分析計が用いられたり、NOの排出が抑えられた燃焼方式の車両に対してはより低濃度レンジでの分析が可能な別の分析計が用いられたりすることがある。もちろん、このような分析計の使い分けは、NO計測に限らず、種々の測定対象成分の計測において起こり得ることである。
【0005】
しかしながら、このように複数の分析計を使い分ける場合、それぞれの分析計に用いられる機器や流路構成などの分析仕様が異なるので、複数の分析計を使う分、開発や設計の工数がかかったり、部品点数が多くなったりするといった課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-095013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、互いに異なる分析仕様における部品の共通化を図り、ひいては開発や設計の工数や部品点数の削減できるようにすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係るガス分析装置は、サンプルガスを互いに異なる第1分析仕様及び第2分析仕様にて分析可能なガス分析装置であって、前記サンプルガスが流れる共通内部流路を有する共通マニホールドを備え、前記共通マニホールドに、前記サンプルガスの流れる流路全体の構成を、前記第1分析仕様に用いられる第1流路構成に切り替える第1アダプタ、又は、前記共通マニホールドに接続されて、前記サンプルガスの流れる流路全体の構成を、前記第2分析仕様に用いられる第2流路構成に切り替える第2アダプタが、択一的に接続されていることを特徴とするものである。
【0009】
このように構成されたガス分析装置によれば、第1アダプタ又は第2アダプタが択一的に共通マニホールドに接続されているので、分析仕様を第1分析仕様に設定する場合にも、第2分析仕様に設定する場合にも共通マニホールドを兼用することができる。
これにより、互いに異なる第1分析仕様及び第2分析仕様における部品の共通化が図られ、ひいては開発や設計の工数や部品点数の削減が可能となる。
【0010】
前記共通マニホールドには、調圧弁、開閉弁、又はキャピラリの少なくとも1つが設けられており、その調圧弁、開閉弁、又はキャピラリの少なくとも1つが前記第1分析仕様及び前記第2分析仕様の双方に兼用されることが好ましい。
これならば、調圧弁、開閉弁、又はキャピラリの少なくとも1つを第1分析仕様及び第2分析仕様の双方に兼用しているので、部品点数のさらなる低減を図れる。
【0011】
ところで、二酸化窒素を触媒により一酸化窒素に還元して計測するNO計測では、触媒を通過させるサンプルガスの流量が分析仕様によって異なる場合がある。
このことに鑑みれば、前記共通マニホールドには、前記サンプルガスと反応する触媒を収容する触媒収容部が設けられており、前記共通マニホールドが、前記第1アダプタを接続した場合と、前記共通マニホールドに前記第2アダプタを接続した場合とで、前記触媒に流れる前記サンプルガスの流量が異なるように構成されていることが好ましい。
このような構成であれば、触媒を通過させる流量が互いに異なる第1分析仕様及び第2分析仕様に共通の触媒収容部を用いることができ、その分の部品点数を削減することができる。
【0012】
触媒に流れ込むサンプルガスの流量を異ならせるための具体的な実施態様としては、前記共通マニホールドが、前記サンプルガスの流量を制御する流量制御素子を有し、前記第1アダプタが、前記共通マニホールドから前記第1アダプタに流れ込んだ前記サンプルガスを前記共通マニホールドに戻す第1戻し流路を有し、前記第2アダプタが、前記共通マニホールドから前記第2アダプタに流れ込んだ前記サンプルガスを前記共通マニホールドに戻す第2戻し流路を有し、前記触媒を通過した後の前記サンプルガスが前記第1戻し流路を経て前記共通マニホールドの前記流量制御素子に流れ込み、前記触媒を通過する前の前記サンプルガスが前記第2戻し流路を経て前記共通マニホールドの前記流量制御素子に流れ込む態様を挙げることができる。
【0013】
上述した構成、すなわち触媒を通過させるサンプルガスの流量を異ならせる構成において、サンプルガスの流量が大きい場合には、十分な還元反応を起こすためにそれ相応の触媒量が必要となる。一方で、この大流量に合わせた触媒量は、サンプルガスの流量が小さい場合に、応答速度の低下を招来する。
そこで、前記触媒収容部が、触媒を収容する収容空間に着脱可能なスペーサを備え、当該スペーサの着脱により、前記触媒の収容量が小容量となる小容量状態と、前記触媒の収容量が大容量となる大容量状態とに切り替わることが好ましい。
このような構成であれば、小流量のサンプルガスに対する応答速度の低下を防ぎつつ、大流量のサンプルガスに対する十分な還元反応を担保することが可能となる。しかも、スペーサの着脱により触媒の収容量を簡単に切り替えることができる。
【0014】
より具体的な実施態様としては、前記共通マニホールドが、前記第1アダプタ又は前記第2アダプタが接続される複数の接続ポートを有し、前記第1アダプタが、前記複数の接続ポートの一部又は全部に対応した第1ポートを有し、前記第2アダプタが、前記複数の接続ポートの一部又は全部に対応した第2ポートを有し、前記第1ポートの数と前記第2ポートの数とが異なる態様を挙げることができる。
【0015】
前記共通内部流路を加熱するヒータを有していることが好ましい。
このような構成であれば、サンプルガスを加熱して分析する分析仕様と、サンプルガスを加熱せずに分析する分析仕様とに対応することができる。
【0016】
前記第1分析仕様及び前記第2分析仕様における測定対象成分が同一である態様を挙げることが好ましい。
これならば、より多くの部品を共通化することができ、本発明に係る作用効果をより顕著に発揮させることができる。
【0017】
具体的な実施態様としては、前記測定対象成分が窒素酸化物である態様を挙げることができる。
【0018】
分析仕様を第1分析仕様又は第2分析仕様に切り替え可能にするためには、前記共通マニホールドに択一的に接続されている前記第1アダプタ又は前記第2アダプタが着脱可能であることが好ましい。
【0019】
また、本発明に係るガス分析方法は、上述したガス分析装置を用いて前記サンプルガスを分析することを特徴とする方法であり、このようなガス分析方法によっても、上述したガス分析装置と同様の作法効果を奏し得る。
【発明の効果】
【0020】
このように構成した本発明によれば、互いに異なる分析仕様における部品の共通化を図り、ひいては開発や設計の工数や部品点数の削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】一実施形態のガス分析装置の第1分析仕様における構成を示すフロー図。
図2】本実施形態のガス分析装置の第2分析仕様における構成を示すフロー図。
図3】本実施形態のガス分析装置の構成を示す模式図。
図4】本実施形態のガス分析装置の第1分析仕様における構成の簡略図。
図5】本実施形態のガス分析装置の第2分析仕様における構成を簡略図。
図6】同実施形態の触媒収容部の構成を示す模式図。
【符号の説明】
【0022】
100・・・ガス分析装置
LA ・・・第1流路構成
LB ・・・第2流路構成
10 ・・・検出ユニット
20 ・・・オゾン発生ユニット
30 ・・・共通マニホールド
L3 ・・・共通内部流路
Pb ・・・接続ポート
V1 ・・・調圧弁
V2 ・・・開閉弁
C ・・・キャピラリ
41 ・・・第1アダプタ
42 ・・・第2アダプタ
50 ・・・触媒収容部
51 ・・・スペーサ
COM・・・触媒
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明に係るガス分析装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0024】
本実施形態のガス分析装置は、例えば車両(エンジン車、燃料電池車、ハイブリッド車など)の排ガス等のサンプルガスに含まれる所定の測定対象成分を分析するものである。より具体的には、このガス分析装置は、CLD法(化学発光法)を用いてサンプルガスに含まれる窒素酸化物の濃度や排出量などを測定するものである。
【0025】
なお、サンプルガスとしては、車両の排ガスに限らず、船舶や航空機などの排ガスであっても良いし、大気をサンプルガスとしても良い。また、測定対象成分は窒素酸化物に限らず、一酸化炭素、二酸化炭素、炭化水素、硫黄酸化物、アンモニアなどであっても良く、大気中の成分が測定対象成分であっても良い。分析法に関してもCLD法に限らず、NDIR法やFTIR法など種々の分析法を採用して構わない。
【0026】
具体的にガス分析装置100は、図1及び図2に示すように、サンプルガスを導入する導入ポートPaと、導入ポートPaから導入したサンプルガスに含まれる測定対象成分を検出する検出ユニット10と、導入ポートPa及び検出ユニット10を接続するともにサンプルガスが流れる流体回路Lと、その流体回路Lを構成する流路に設けられた種々の分析用部品や分析用機器(以下、これらを代表して単に分析用部品という)とを備えている。
【0027】
検出ユニット10は、サンプルガスに含まれる測定対象成分を検出する検出器11、12を少なくとも1つ備えたものであり、この実施形態では窒素酸化物を検出する検出器11、12を少なくとも1つ備えている。具体的にこの検出ユニット10は、低濃度レンジの第1検出器11と、高濃度レンジの第2検出器12とを備えている。ただし、検出ユニット10としては必ずしも複数の検出器11、12を備えている必要はなく、1つの検出器11、12のみを備えていても良い。
【0028】
本実施形態の検出器11、12は、化学発光法を用いたものであり、具体的には以下のものである。すなわち、この検出器11、12は、NOを含んだサンプルガスと、オゾン発生ユニット20により発生させたオゾンガスとが導入されるリアクタを備えたものであり、リアクタ内ではオゾンガスによるNOの酸化反応が起こる。このとき生成されるNOの一部が励起状態となり、この励起状態から基底状態に戻る際の励起エネルギーを光子として放出される。この現象は化学発光と呼ばれる。そして、この化学発光の発光強度を光電素子で検出することでサンプルガスのNO濃度を測定することができる。
【0029】
また、本実施形態のガス分析装置100は、サンプルガスに含まれるNO濃度のみならず、NO濃度をも測定するべく、図1及び図2に示すように、サンプルガスに含まれるNOをNOに還元する触媒COMを備えている。触媒COMにサンプルガスを通過させることにより、NOがNOに還元されるので、検出器11、12ではNO(NO+NO)が検出され、NO濃度を測定することが可能となる。さらに、NO濃度からNO濃度を差し引けばNO濃度を算出することも可能である。
【0030】
このように、本実施形態の流体回路Lには、触媒COMが上述した分析用部品の1つとして設けられている。より具体的に説明すると、ここでのガス分析装置100は、図1及び図2に示すように、触媒COMが設けられた還元流路L1と、この還元流路L1から分岐してサンプルガスを触媒COMに通過させることなく検出器11、12に導く分岐流路L2とを備えている。ただし、本発明に係るガス分析装置100としては、例えばNO濃度の測定が不要である場合など、触媒COMや還元流路L1は必ずしも備えている必要はない。
【0031】
然して、このガス分析装置100は、図3図5に示すように、サンプルガスを互いに異なる第1分析仕様及び第2分析仕様にて分析可能なものであり、これらの第1分析仕様及び第2分析仕様に兼用される共通マニホールド30と、この共通マニホールド30に対して択一的に接続されて流路全体の構成を切り替える第1アダプタ41及び第2アダプタ42とを備えている。
なお、図4に示す流路構成は、図1に示す流路構成を理解容易のために簡略化したものであり、図5に示す流路構成は、図2に示す流路構成を理解容易のために簡略化したものである。また、図1及び図2には、説明の便宜上、第1アダプタ41や第2アダプタ42を図示していない。
【0032】
まず、第1分析仕様及び第2分析仕様について説明する。
【0033】
ここでいう分析仕様は、その分析に用いる分析用部品、サンプルガスが流れる流路構成、サンプルガスの流量、サンプルガスの加熱条件(加熱の有無や加熱温度など)、測定対象成分、分析方法などの少なくとも1つを規定するものである。
【0034】
第1分析仕様及び第2分析仕様は、少なくとも流路構成が互いに異なる仕様であり、この実施形態では、それぞれの分析に用いられる分析用部品やサンプルガスの流量なども互いに異なる。また、第1分析仕様及び第2分析仕様における測定対象成分は、この実施形態では同一であり、具体的には窒化酸化物である。ただし、第1分析仕様及び第2分析仕様の測定対象成分が互いに異なる成分であっても構わない。
【0035】
次に、上述した共通マニホールド30、第1アダプタ41、及び第2アダプタ42について説明する。
【0036】
<共通マニホールド30>
共通マニホールド30は、図4及び図5に示すように、第1分析仕様及び第2分析仕様に兼用される共通内部流路L3、言い換えれば、第1分析仕様及び第2分析仕様のいずれにおいてもサンプルガスが流れる共通内部流路L3を有するものである。
【0037】
具体的に共通マニホールド30は、少なくとも上述した導入ポートPaを有するとともに、後述する第1アダプタ41や第2アダプタ42に接続される複数の接続ポートPbを有し、これらの導入ポートPa及び接続ポートPbが共通内部流路L3により接続されている。
【0038】
共通内部流路L3は、図1及び図2に示すように、導入ポートPaから検出ユニット10までのサンプルガスの流路全体の一部であり、第1分析仕様においてサンプルガスが流れる第1流路構成LAの一部を担うとともに、この第1流路構成LAとは別の第2分析仕様においてサンプルガスが流れる第2流路構成LBの一部を担うものである。
【0039】
本実施形態の共通内部流路L3には、開閉弁V1、調圧弁V2、又はキャピラリRの少なくとも1つが分析用部品として設けられており、これらのうちの1つ又は複数の分析用部品が第1分析仕様及び第2分析仕様に兼用される。また、これらのうちの1つ又は複数の分析用部品は、第1分析仕様及び第2分析仕様の何れか一方の専用部品として用いられても良い。例えば、第1分析仕様では開閉弁V1、調圧弁V2、又はキャピラリRの少なくとも1つが第1分析用部品として用意されており、第2分析仕様では開閉弁V1、調圧弁V2、又はキャピラリRの少なくとも1つが第2分析用部品として用意されており、共通マニホールドに30に第1アダプタ41を接続した場合に第1分析用部品が用いられ、共通マニホールド30に第2アダプタ42を接続した場合に第2分析用部品が用いられるように構成されていても良い。
【0040】
さらに、本実施形態の共通内部流路L3には、図1図5に示すように、上述した触媒COMを収容する触媒収容部50が設けられており、この触媒収容部50も第1分析仕様及び第2分析仕様に兼用される。
【0041】
ここで、本実施形態のガス分析装置100は、第1分析仕様において触媒COMを通過するサンプルガスの流量が、第2分析仕様おいて触媒COMを通過するサンプルガス流量よりも大きくなるように構成されている。
【0042】
より具体的に説明すると、図1図5に示すように、上述したように共通内部流路L3にはキャピラリRがサンプルガスの流量を制御する流量制御素子として設けられており、このキャピラリRを通過する前にサンプルガスを触媒COMに通過させる仕様が第1分析仕様であり、このキャピラリRを通過した後のサンプルガスを触媒COMに通過させる仕様が第2分析仕様である。これにより、第1分析仕様では、サンプルガスがキャピラリRにより流量を絞られる前に大流量のまま触媒COMに到達し、第2分析仕様では、サンプルガスがキャピラリRにより流量を絞られた後に少流量となって触媒COMに到達する。
【0043】
かかる構成において、触媒収容部50は、図6に示すように、触媒COMの収容量が小容量となる小容量状態50Aと、触媒COMの収容量が大容量となる大容量状態50Bとに切り替わるように構成されている。より具体的に説明すると、本実施形態の触媒収容部50は、同図6に示すように、触媒COMを収容する収容空間5Sに着脱可能なスペーサ51を備えており、このスペーサ51を収容空間5Sに収容した状態が、上述した小容量状態50Aとなり、同スペーサ51を収容空間5Sから取り外した状態が、上述した大容量状態50Bとなる。
【0044】
また、本実施形態の共通マニホールド30には、図4及び図5に示すように、共通内部流路L3を加熱するヒータHがさらにも設けられている。このヒータHは、例えば共通内部流路L3を流れるサンプルガスを所定の加熱温度に加熱するものであり、図示しない制御装置からの制御信号を受け付けてオン・オフが切り替わるものである。
【0045】
<第1アダプタ41>
第1アダプタ41は、図1及び図4に示すように、サンプルガスの流れる流路全体の構成を第1分析仕様に用いられる第1流路構成LAに切り替えるものであり、共通マニホールド30に着脱可能なものである。
【0046】
この第1アダプタ41は、上述した共通マニホールド30に設けられた複数の接続ポートPbの一部又は全部に対応した複数の第1ポートP1を有している。ここでは、第1アダプタ41は、全部の接続ポートPbに対応した第1ポートを有しており、言い換えれば、接続ポートPbの数と第1ポートP1の数は同じである。なお、接続ポートPbの数と第1ポートP1の数とを異ならせても構わない。
【0047】
本実施形態の第1アダプタ41は、サンプルガスを触媒収容部50に収容された触媒COMに導くための第1触媒流通路41aと、共通マニホールド30から流れ込んだサンプルガスを再び共通マニホールド30に戻す第1戻し流路41bと、サンプルガスを検出器11、12に導くための第1検出器流通路41cとを有している。なお、本実施形態のガス分析装置100は、複数の検出器(第1検出器11及び第2検出器12)を備えたものであり、第1アダプタ41は、それぞれの検出器11、12に対応する第1検出器流通路41cを有している。ただし、検出器11、12が1つであれば第1検出器流通路41cは1つであっても良い。
【0048】
かかる構成により、共通マニホールド30の接続ポートPbに第1アダプタ41の第1ポートP1を接続すると、共通マニホールド30の共通内部流路L3と、第1アダプタ41の第1触媒流通路41a、第1戻し流路41b、及び第1検出器流通路41cとが連通し、第1分析仕様に用いられる第1流路構成LAが形成される。
【0049】
この第1分析仕様では、導入ポートPaから導入したサンプルガスは、まず第1触媒流通路41aを経て触媒COMが設けられた還元流路L1又は分岐流路L2に流れ込み、第1戻し流路41bを経て再び共通マニホールド30に流れ込む。その後、共通内部流路L3に設けられたキャピラリRを通過して流量が絞られ、第1検出器流通路41cを経て検出器11、12に導かれる。なお、この実施形態における第1分析仕様では、ヒータHはオフ状態に制御されているが、オン状態に制御されていても構わない。
【0050】
ところで、サンプルガスにHOが存在する場合に、所謂クエンチング作用によってNOに対する感度が下がってしまう。そこで、本実施形態のガス分析装置100は、図1及び図4に示すように、サンプルガスを冷却して除湿する除湿器Cをさらに備えている。そして、この実施形態では、図1及び図4に示すように、第1分析仕様においてサンプルガスが、検出器11、12に到達する前に除湿器Cに流れるように構成されている。なお、除湿器Cは着脱可能なものであっても良いし、据え付けられていても良い。ただし、この除湿器Cは必ずしも設けてある必要はなく、本発明に係るガス分析装置100としては、除湿器Cを備えていない構成であっても良い。
【0051】
<第2アダプタ42>
第2アダプタ42は、図2及び図5に示すように、サンプルガスの流れる流路全体の構成を第2分析仕様に用いられる第2流路構成LBに切り替えるものであり、共通マニホールド30に着脱可能なものである。
【0052】
この第2アダプタ42は、上述した共通マニホールド30に設けられた複数の接続ポートPbの一部又は全部に対応した複数の第2ポートP2を有している。ここでは、第2アダプタ42は、一部のみの接続ポートPbに対応した第2ポートを有しており、言い換えれば、接続ポートPbの数や第1ポートP1の数と、第2ポートP2の数とは異なる。すなわち、第2アダプタ42が共通マニホールド30に接続されると、接続ポートPbの一部が塞がれることになる。なお、接続ポートPbの数や第1ポートP1の数と、第2ポートP2の数とを同じ数にしても構わない。
【0053】
本実施形態の第2アダプタ42は、サンプルガスを触媒収容部50に収容された触媒COMに導くための第2触媒流通路42aと、共通マニホールド30から流れ込んだサンプルガスを再び共通マニホールド30に戻す第2戻し流路42bと、サンプルガスを検出器11、12に導くための第2検出器流通路42cとを有している。なお、本実施形態のガス分析装置100は、複数の検出器(第1検出器11及び第2検出器12)を備えたものであり、第2アダプタ42は、それぞれの検出器11、12に対応する第2検出器流通路42cを有している。ただし、検出器11、12が1つであれば第2検出器流通路42cは1つであっても良い。
【0054】
かかる構成により、共通マニホールド30の接続ポートPbに第2アダプタ42の第2ポートP2を接続すると、共通マニホールド30の共通内部流路L3と、第2アダプタ42の第2触媒流通路42a、第2戻し流路42b、及び第2検出器流通路42cとが連通し、第2分析仕様に用いられる第2流路構成LBが形成される。
【0055】
この第2分析仕様では、導入ポートPaから導入したサンプルガスは、まず第2ポートP2を介して第2アダプタ42に流入し、第2戻し流路42bを経て第2アダプタ42から共通マニホールド30に戻る。その後、共通内部流路L3に設けられたキャピラリRを通過して流量が絞られ、第2触媒流通路42aを経て触媒COMが設けられた還元流路L1又は分岐流路L2に流れ込み、第2検出器流通路42cを経て検出器11、12に導かれる。なお、この実施形態における第2分析仕様では、ヒータHはオン状態に制御されているが、オフ状態に制御されていても構わない。
【0056】
このように構成されたガス分析装置100によれば、第1アダプタ41及び第2アダプタ42を択一的に共通マニホールド30に接続することで、流路全体の構成が第1分析仕様に用いられる第1流路構成LA又は第2分析仕様に用いられる第2流路構成LBに切り替わるので、どちらの分析仕様においても共通マニホールド30を兼用することができる。
これにより、互いに異なる第1分析仕様及び第2分析仕様における部品の共通化が図られ、ひいては開発や設計の工数や部品点数の削減が可能となる。
【0057】
具体的には、共通内部流路L3に設けられている調圧弁V1、開閉弁V2、又はキャピラリRの少なくとも1つや触媒収容部50などを兼用することができ、その分の部品点数を削減することができる。
【0058】
また、触媒収容部50が、スペーサ51の着脱により小容量状態50Aと大容量状態50Bとに切り替わるので、触媒COMを通過するサンプルガスの流量が大きい場合には、触媒収容部50を大容量状態50Bに切り替えることで十分な還元反応を起こすことができ、触媒COMを通過するサンプルガスの流量が小さい場合には、触媒収容部50を小容量状態50Aに切り替えることで応答速度の低下を防ぐことができる。
【0059】
さらに、共通マニホールド30が、共通内部流路L3を加熱するヒータHを有しているので、サンプルガスを加熱して分析する分析仕様と、サンプルガスを加熱せずに分析する分析仕様とに対応することができる。なお、サンプルガスを加熱する分析仕様では、燃料の未燃を防ぐことができる。これにより、未燃の燃料が共通内部流路L3に付着することにより生じるメンテナス等の頻度を少なくすることができる。
【0060】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0061】
例えば、前記実施形態では、第1アダプタ41又は第2アダプタ42が択一的に共通マニホールド30に接続される構成について説明したが、3つ以上のアダプタが択一的に共通マニホールド30に接続される構成であっても良い。
【0062】
また、前記実施形態のガス分析装置100は、NO濃度を測定するものとして説明したが、NO濃度を測定することなく、NO濃度を測定するものであっても良い。この場合、前記実施形態で述べた触媒COMや触媒収容部50は不要である。
【0063】
さらに、本発明に係るガス分析装置100は、前記実施形態ではNOやNOを測定するものとして説明したが、例えば一酸化炭素、二酸化炭素、炭化水素、全炭化水素、硫黄酸化物(SOx)などを測定するものであっても良い。
【0064】
そのうえ、前記実施形態のガス分析装置100は、第1アダプタ41及び第2アダプタ42の双方を備えるものであったが、本発明に係るガス分析装置100としては、第1アダプタ41又は第2アダプタ42の一方のみを備えるものであっても構わない。
すなわち、ガス分析装置100としては、例えば工場出荷時に、分析仕様が第1分析仕様又は第2分析仕様の何れかに予め設定されており、この設定された分析仕様に対応する第1アダプタ41又は第2アダプタが択一的に共通マニホールド30に接続されているもものであっても良い。
このようなガス分析装置100によれば、分析仕様を第1分析仕様に設定する場合にも、第2分析仕様に設定する場合にも共通マニホールドを兼用することができる。これにより、互いに異なる第1分析仕様及び第2分析仕様における部品の共通化が図られ、ひいては開発や設計の工数や部品点数の削減が可能となる。
【0065】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、互いに異なる分析仕様における部品の共通化を図り、ひいては開発や設計の工数や部品点数の削減が可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6