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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】レーザ加熱処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20240730BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01L21/268 G
H01L21/268 J
H01L21/68 N
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020141541
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037414
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-05-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、中小企業庁、「戦略的基盤技術高度化支援事業 ミニマルレーザ水素アニール装置と原子レベルアンチエイリアス(AAA)技術の研究開発」支援事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591023734
【氏名又は名称】坂口電熱株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】金森 義明
(72)【発明者】
【氏名】中山 吉之
(72)【発明者】
【氏名】千葉 貴史
(72)【発明者】
【氏名】寺田 昌男
(72)【発明者】
【氏名】濱田 健吾
(72)【発明者】
【氏名】原 史朗
(72)【発明者】
【氏名】クンプアン ソマワン
(72)【発明者】
【氏名】石田 夕起
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 和重
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏幸
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 雅
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-001642(JP,A)
【文献】特開2012-169308(JP,A)
【文献】特開2004-363130(JP,A)
【文献】特開2014-170792(JP,A)
【文献】特表2018-535545(JP,A)
【文献】特開2001-196322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/268
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハの外周部を支持する複数本のアームと、
前記ウエハの下面に多角形のレーザ光を照射するレーザ光照射装置と、を有し
前記アームが、前記ウエハを等間隔で支持し、
前記多角形が、正n角形(nは4以上8以下)であり、前記アームの下面に頂点が位置することを特徴とするレーザ加熱処理装置。
【請求項2】
水素ガス供給ラインを有し、
水素アニール処理が可能であることを特徴とする請求項1に記載のレーザ加熱処理装置。
【請求項3】
直径4インチ以下のウエハ用であることを特徴とする請求項1または2に記載のレーザ加熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はウエハを加熱処理するためのレーザ加熱処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光をウエハ等に照射して任意の温度にまで加熱し、この加熱温度において所望の処理を行うレーザ加熱処理装置が知られている。
このようなレーザ加熱処理装置として、例えば、特許文献1には、半導体基板の表面の全面に対して複数のレーザ光の光源ユニットを設けて、半導体基板の形状に対応したレーザ光照射装置を設置し、このレーザ光照射装置から半導体基板表面にレーザを照射する装置が、特許文献2には、半導体ウエハ表面にレーザビームを照射させる装置が、特許文献3には、半導体基板表面に対して、それぞれ強度分布を均一にした複数のレーザ光を照射して処理を行う装置が、特許文献4には、ビームの直径がウエハの直径以上である赤外線レーザ光をウエハの裏面に照射する装置が記載されている。
【0003】
ここで、同じ強度のレーザ光を照射していても、ウエハの加熱が均一に行われずに、被加熱物表面の場所によって加熱温度が異なり、加熱ムラが生じる場合がある。加熱ムラが生じた被処理物表面に対して、何らかの処理を行うと、後続する処理結果も加熱ムラを反映して処理ムラが生じ、また、処理ムラに基づく被膜の損傷や劣化、あるいは、ウエハ自体に結晶欠陥を生じ、歩留まりが低下する。
そのため、レーザ加熱処理装置には、ウエハを均一に加熱することが求められている。
なお、このような処理ムラの発生を解決するために、被加熱物表面の加熱を穏やかに行うこと、つまり、加熱による温度の上昇速度を極めて小さくすることにより、被加熱物表面全体を均一な温度としながら加熱する手段がある。しかしながら、そのような穏やかな加熱条件では、ウエハを速やかに加熱できるレーザ加熱を行うことの意義が希薄になり、また加熱工程全体の所要時間が長くなるので、全体の生産性が悪くなることになる。そのため、レーザ加熱処理装置を用いて穏やかに加熱することは、現実的な手段とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-77857号公報
【文献】特開2014-41909号公報
【文献】特開2013-55111号公報
【文献】特開2016-1642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ウエハを均一に加熱することのできるレーザ加熱処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1.ウエハの外周部を支持する複数本のアームと、
前記ウエハの下面に多角形のレーザ光を照射するレーザ光照射装置と、を有し
前記多角形が、前記アームの下面に頂点が位置することを特徴とするレーザ加熱処理装置。
2.前記多角形が、正n角形(nは4以上8以下)であり、
前記アームが、前記ウエハを等間隔で支持することを特徴とする1.に記載のレーザ加熱処理装置。
3.水素ガス供給ラインを有し、
水素アニール処理が可能であることを特徴とする1.または2.に記載のレーザ加熱処理装置。
4.直径4インチ以下のウエハ用であることを特徴とする1.~3.のいずれかに記載のレーザ加熱処理装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明のレーザ加熱処理装置は、ウエハの下面に、その頂点がウエハを支持するアームの下面に位置する多角形のレーザ光を照射するものであり、ウエハと同時にアームを加熱する。本発明のレーザ加熱処理装置は、アームを加熱することにより、ウエハとアームとの温度差を小さくすることができるため、ウエハからアームへの熱逃げを抑制して、ウエハ全体の加熱ムラを非常に小さくすることができる。アームを等間隔で設け、赤外線レーザ光をこのアームの下面に頂点が位置する正n角形(nは4以上8以下)で照射する本発明のレーザ加熱処理装置は、ウエハからアームへの熱逃げがより均一化されており、特に、ウエハ外周縁部を均一に加熱することができる。本発明のレーザ加熱処理装置は、処理の面内均一性が非常に高いため、ウエハ外周縁部も無駄にすることなく用いることができ、歩留まりを高くすることができる。
本発明のレーザ加熱処理装置は、ウエハの全面を非常に均一に加熱するため、加熱の不均一性に由来する処理ムラが非常に小さくなり、特に水素アニール処理装置として好適に用いることができる。
本発明のレーザ加熱処理装置は、加熱ムラの生じやすい直径4インチ以下の小口径のウエハに、特に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第一実施態様であるレーザ加熱処理装置1の概略図。
図2】ホルダの一例の概略図。
図3】アームの先端形状の一例を示す図。
図4】第一実施態様であるレーザ加熱処理装置1によるウエハ下面への赤外線レーザ光照射時の状態を(A)下方から(B)側方から見た模式図。
図5】第二実施態様であるレーザ加熱処理装置2の概略図。
図6】第二実施態様であるレーザ加熱処理装置2によるウエハ下面への赤外線レーザ光照射時の状態を(A)下方から(B)側方から見た模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のレーザ加熱処理装置(以下、加熱処理装置ともいう)は、ウエハの外周部を支持する複数本のアームと、
このウエハの下面に多角形のレーザ光を照射するレーザ光照射装置と、を有し、
この多角形が、アームの下面に頂点が位置することを特徴とする。
【0010】
本発明のレーザ加熱処理装置は、ウエハに対して行われてきた公知の加熱条件下における各種処理を行うことができる。例えば、不純物の活性化アニール、酸化、窒化、拡散、CVD処理、水素アニール、アルゴンアニール等の処理を行うことができる。また、処理の際の温度、時間等の条件も、公知の条件を採用することができる。
【0011】
・第一実施態様
図1に、本発明の第一実施態様である加熱処理装置1の概略図を示す。
加熱処理装置1は、レーザ加熱処理を行うチャンバー11を有し、このチャンバー11内にホルダ12が固定されている。ホルダ12は、等間隔に設けられた6本のアーム13を備え、このアーム13がウエハWを支持している。
【0012】
ウエハWは、シリコン、SiC、III-V族化合物等の各種の公知の材料からなる円形ウエハであれば特に制限されず、集積回路、MEMS等の公知の用途のウエハでよい。また、ウエハは未加工でもよく、加工済みでもよい。
ウエハWの大きさは特に制限されず、直径が10mmのものから450mm、もしくはそれ以上のものまでを対象とすることができる。小口径のウエハは、体積が小さいため、熱逃げによる局所的な温度低下が起こりやすい。本発明のレーザ加熱処理装置は、アームへの熱逃げを抑えることができるため、小口径のウエハに好適に用いることができ、例えば、ウエハWの直径は4インチ以下であることが好ましく、3インチ以下であることがより好ましく、2インチ以下であることが更に好ましい。また、ウエハWの直径は0.5インチ(12.5mm)以上であることが好ましい。
【0013】
チャンバー11は、加熱処理の種類や、ウエハWの材質、大きさ等の条件によって、公知のものの中から選択して用いることができる。チャンバー11は、ウエハWを出し入れするためのゲート(図示せず)を有している。チャンバー11には透過窓111が設けられており、レーザ光照射装置14から照射されるレーザ光Lは、この透過窓111を透過して、ウエハWの下面に、頂点がアーム13の下面に位置する正六角形として照射される。
チャンバー11には、ウエハWの状態を視認または撮影するための窓、ウエハの温度を測定するための放射温度計の測定用窓等を設けることができる。さらに、チャンバー11には、行う処理に応じて、水素ガス供給ライン、酸素ガス供給ライン、アルゴンや窒素等の不活性ガス供給ライン、排気ライン、圧力測定センサ等の配管を接続することができる。
【0014】
レーザ光照射装置14は、少なくとも半導体レーザ発振器と、レーザ光の形状を調整する光学系を備える。半導体レーザ発振器にて発生したレーザ光は、非球面レンズやロッドレンズ等の各種レンズ、ホモジナイザ、エキスパンダ等の複数の光学素子を備える光学系により、アーム13の下面に頂点が位置する正六角形に整形された均一なレーザ光Lに調整されて出射する。
半導体レーザ発振器は、連続発振高出力半導体レーザ発振器やパルス発振する公知の半導体レーザ発振器等を採用することができる。本発明において、照射するレーザ光の波長は、ウエハを加熱できる波長であれば特に限定されず、例えば、400nm~1600nm(可視光~赤外線)が好ましく、780nm~1200nm(赤外線)であることがより好ましく、800nm~1000nmがさらに好ましい。また、ウエハ下面に照射する赤外線レーザ光は、アームの下面に頂点が位置する多角形であればよく、n角形(nは4以上8以下)であることが好ましく、六角形であることがより好ましい。また、正多角形であることが好ましい。
レーザ光Lは、ウエハWの下面に対して垂直に照射することが好ましいが、均一に照射可能な範囲において、ウエハWの下面に対して斜めに照射することもできる。
【0015】
チャンバー11の外部には、ウエハWの下面に対して斜方から向けられた放射温度計15が設けられている。放射温度計15は、透過窓111を通してウエハW下面の温度を測定しているが、透過窓111とは別の熱線透過窓を設けることもできる。
透過窓111、熱線透過窓は、赤外線の透過率が高い材料からなることが必要である。例えば石英、BaF、MgF、CaF、サファイア、ZnSe、ガラス等の赤外線の透過率が高い材料、さらにチャンバー内が減圧にされるときには、機械的強度も有する材料を選択することができる。
【0016】
放射温度計15は、公知のものでよく、1つ以上設置することができる。放射温度計15を1つのみ設置する場合は、例えば、ウエハWの下面中央部、または上面中央部の温度を測定することができる。一つの放射温度計15の向きを逐次で変化することにより、ウエハWの複数箇所における温度分布の測定結果を得ることができる。放射温度計15を複数個設置する場合は、ウエハW下面の中央部や外周縁部等、ウエハW上面の中央部や外周縁部等の複数箇所の温度を同時に測定することができる。さらに必要に応じ、1つ以上の放射温度計15による測定値と目標とする温度を基にして、ウエハW下面の温度が均一、かつ目標とする温度になるように、PID制御等のフィードバック制御を行うことで、レーザ光Lの強度を調整することができる。
【0017】
(ホルダ)
ホルダの一例の概略図を図2に示す。
ホルダ12は、その略中央部分にウエハWの直径よりも大きな円形の開口部121を有し、開口部121の縁から中心に向かって延びる6本のアーム13が等間隔に形成されている。また、ホルダ12は、後述するウエハ移送時に搬送アームが通過するための切欠部122が形成されている。ホルダ12は、ネジ穴により、チャンバー11内に固定される。
本発明において、ホルダとアームの材質は特に制限されないが、熱膨張しにくく、耐熱性、耐熱衝撃性に優れることが好ましい。このような材質としては、例えば、石英、サファイア、アルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素、シリコン、SiCコートグラファイト等を用いることができ、石英が好ましい。本発明において、アームは、ホルダと一体に形成されていてもよく、別体で形成した後、溶接等でホルダに固定することもできる。別体で形成する場合、アームとホルダは同一の材質であることが好ましい。
【0018】
(ウエハの載置)
ウエハWは、図示しないゲートを介して、任意の搬送装置によりチャンバー11内に移送され、アーム13上に載置される。第一実施態様のレーザ加熱処理装置1では、ウエハWは図示しない搬送アーム上に載置して移送されるが、搬送アームはホルダ12の切欠部122を通過してホルダ12と接触しないため、ウエハWを載置した搬送アームをホルダ12の上方から下方に動かすことにより、ウエハWはアーム13上に載置される。
【0019】
図3にアームの先端形状の一例を示す。
アーム13は、その先端にウエハを支持する平坦部131と、平坦部131から連続して外方に向かって上方に傾斜した傾斜部132を備える。アーム13が平坦部131と傾斜部132を備えることにより、ウエハWの位置が多少ずれたとしても、ウエハWは傾斜部132を滑り落ちてアーム13の所定位置(平坦部131)に正確に支持される。また、傾斜部132により、ウエハWがアーム13上で動くことを防止できる。ウエハWが傾斜部132を滑り落ちやすいように、傾斜部132の傾き(図3のθ)は、35°以上であることが好ましく、40°以上であることがより好ましく、45°以上であることが更に好ましい。また、傾斜部132のウエハ面方向の長さは、ウエハ直径の3%以上であることが好ましく、5%以上であることがより好ましい。
【0020】
アーム13の本数は、ウエハWを安定して保持できるのであれば特に制限されないが、4本以上8本以下であることが好ましく、6本であることが最も好ましい。また、アーム13の設置箇所は、ウエハWを安定して保持できるのであれば特に制限されないが、正多角形の頂点位置となるように設置することが好ましい。アーム13をこのように設けることにより、ウエハWを所定位置に正確に、かつ安定して支持できるとともに、後述するウエハWからアーム13への熱逃げを均一化して、ウエハWの加熱ムラを小さくすることができる。
【0021】
(レーザ光照射)
レーザ加熱処理装置1による、ウエハW下面へのレーザ光L照射時の状態を、図4を用いて説明する。図4(A)は下方から、図4(B)は側方から見た模式図である。
レーザ加熱処理装置1は、等間隔に配置された6本のアーム13に支持されたウエハWの下面に、その頂点位置がアーム13の下面に位置する正六角形のレーザ光Lを照射する。
レーザ加熱処理装置1は、正六角形のレーザ光Lを、頂点がアーム13の下面に位置するようにして照射することにより、ウエハWのみならず、アーム13のレーザ光が照射される部分(ウエハWに近接する部分)を加熱することができる。アーム13のウエハWに近接する部分が加熱されると、ウエハWとアーム13との温度差が小さくなるため、ウエハWからアーム13へ逃げる熱量を少なくすることができる。この際、アーム13をより効率的に加熱するために、アーム13の上面、下面、側面、さらにはその内部の1箇所以上に、蒸着処理等により金属膜、金属酸化物膜、窒化ケイ素膜または炭化ケイ素膜を形成することもできる。
【0022】
ウエハWのアーム13に支持された部分では、レーザ光Lはアーム13(平坦部131)を通過した後にウエハWに到達する。ウエハWのアーム13に支持された部分は、アーム13(平坦部131)を通過したレーザ光Lが照射されるため、レーザ光Lが直接照射される他の部分より僅かではあるが加熱されにくい。アーム13は、下方から照射されるレーザ光Lを可能な限り遮蔽しないことが好ましく、平坦部131の面積は、1mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましく、0.2mm以下であることが更に好ましく、0.1mm以下であることが最も好ましい。平坦部131の面積が狭くなると、ウエハWが落下しやすくなるため、平坦部131の面積は0.01mm以上であることが好ましく、0.02mm以上であることがより好ましく、0.03mm以上であることがより好ましい。また、平坦部131の厚さは、0.5mm以下であることが好ましく、0.4mm以下であることがより好ましく、0.3mm以下であることがさらに好ましい。
【0023】
アーム13は、ウエハ径方向と垂直面での断面積が可能な限り小さいことが好ましい。レーザ加熱によりウエハWは1000℃以上に加熱される場合があるが、加熱されて高温となったウエハWからアーム13への熱逃げが起きるため、ウエハWのアーム13に支持された部分とその周辺部は、ウエハWの他の部分よりも低温となる場合がある。アーム13のウエハ径方向と垂直面での断面積を小さくすることにより、ウエハWからアーム13へ逃げる熱量を少なくすることができる。アーム13のウエハ径方向と垂直面での断面積は、2mm以下であることが好ましく、1.5mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることが更に好ましく、0.5mm以下であることが最も好ましい。アーム13のウエハ径方向と垂直面での断面積が狭くなると、アーム13が折れやすくなるため、この断面積は0.05mm以上であることが好ましく、0.1mm以上であることがより好ましく、0.2mm以上であることがより好ましい。
【0024】
レーザ光LのウエハWとアーム13に照射されない部分の面積は小さい方が好ましい。レーザ光LのウエハWとアーム13に照射されない部分は、ウエハWとアーム13の加熱に寄与しない無駄な部分であるとともに、装置の予期せぬ部分が加熱されて故障等の原因となる場合がある。そのため、レーザ光Lは、その多角形の内接円の直径が、ウエハW直径の1.2倍以下であることが好ましく、1.1倍以下であることがより好ましく、1.05倍以下であることが更に好ましい。なお、正六角形のレーザ光Lは、当然にウエハWを内包し、その内接円の直径は、ウエハW直径の1.0倍以上である。
【0025】
・第二実施態様
図5に本発明の第二実施態様であるレーザ加熱処理装置2の概略図を示す。
図5に示す第二の実施態様であるレーザ加熱処理装置2において、第一の実施態様であるレーザ加熱処理装置1と同一部材には同一符号を付す。
第二実施態様であるレーザ加熱処理装置2は、アーム13の下面に頂点が位置する正六角形のレーザ光Laを照射するレーザ光照射装置24aと、ウエハWの外周縁部のみを照射する円環状(リング状)のレーザ光Lbを照射するレーザ光照射装置24bを有する。また、チャンバー11には、水素ガス供給ライン26、排気ライン27が接続されている。なお、チャンバー11には、行う処理に応じて、酸素ガス供給ライン、アルゴンや窒素等の不活性ガス供給ライン、圧力測定センサ等の配管を接続することができる。
【0026】
レーザ光照射装置24aと24bのそれぞれから出射した2つのレーザ光LaとLbは、特定の波長の光は透過するが、その他の波長の光は反射するバンドパスフィルター28を使用して、1つのレーザ光として重ね合わせてウエハWの下面に照射される。なお、図5は、正六角形のレーザ光Laがバンドパスフィルター28で反射し、円環状のレーザ光Lbがバンドパスフィルター28を透過する構成を示すが、その逆にしてもよい。
【0027】
バンドパスフィルター28によって2つのレーザ光を1つのレーザ光とする場合、一方のレーザ光の波長と他方のレーザ光の波長とは30nm以上異なることが好ましく、例えば、880nmと940nmとすることができる。なお、バンドパスフィルターと同様の作用を示す材料として、ダイクロイックミラー、ショートパスフィルター等を使用することもできる。また、1つのレーザ光源からのレーザ光を、ビームスプリッター等で分割した後、別々の光学系で形状を整えた後に、1つのレーザ光に重ね合わせることもできる。
【0028】
レーザ加熱処理装置2は、ウエハWの下面中央部の温度を測定する放射温度計25aと、ウエハWの下面外周縁部の温度を測定する放射温度計25bを有する。そして、この放射温度計25aと25bにより、ウエハW下面の中央部と外周縁部の温度を同時に測定しながら、いずれか、または両方の放射温度計による測定値と目標とする温度を基にして、ウエハW下面の温度が均一、かつ目標とする温度になるように、PID制御等のフィードバック制御を行い、レーザ光La、Lbのいずれか、または両方の強度を調整することができる。レーザ加熱処理装置2は、2本のレーザ光の強度を調整することにより、より厳密な温度制御が可能である。なお、放射温度計は、ウエハWの上面の温度を測定するように設けることもでき、ウエハWの下面と上面の両方の温度を測定するように設けることもできる。
【0029】
(赤外線レーザ光照射)
レーザ加熱処理装置2による、ウエハW下面へレーザ光LaとLb照射時の状態を、図6を用いて説明する。図6(A)は下方から、図6(B)は側方から見た模式図である。
【0030】
レーザ光Laは、その照射域にわたり強度が均一な正六角形であり、レーザ光LbはウエハWの外周縁部に相当する範囲に対応した円環状である。このレーザ光Laとレーザ光Lbを合成し、得られた1本のビームであるレーザ光をウエハWの下面に照射する。
正六角形のレーザ光Laは、上記第一実施態様におけるレーザ光Lと同様である。
円環状のレーザ光Lbを得る手段は、特に限定されず公知の光学素子を組み合わせて得ることができる。例えば、アキシコン凸レンズとアキシコン凹レンズを組み合わせて、断面が円環状に整形されたレーザ光のビームを得ることができる。さらに、回折光学素子(DOE)を採用してレーザ光を成形することもできる。なお、レーザ光Lbは、ウエハの外周縁部に照射されればよく、その外径がウエハWの直径以上であってもよい。ただし、レーザ光LbのウエハWとアーム13に照射されない部分の面積は小さい方が好ましく、レーザ光Lbは、その外径が、ウエハW直径の1.3倍以下であることが好ましく、1.2倍以下であることがより好ましく、1.15倍以下であることが更に好ましい。
【0031】
ここで、ウエハWは、中央部は上面と下面のみが露出しているが、外周縁部は上下に加えて側面も露出している。そのため、ウエハWは、中央から外周縁部に向かうほど、温度が低くなりやすい。加熱温度が高温となるほど、また、ガス給気量(排気量)が多くなるほど、この傾向が顕著となる。特に、ガス雰囲気下でウエハWを加熱処理する場合には、加熱されたウエハWはその周囲のガスに熱を奪われるため、外周縁部は中央部よりも低温になりやすい。
【0032】
レーザ光Laは、その照射域にわたり強度が均一である。レーザ光Lbは、レーザ光Laと一体となって、ウエハWの中央部よりも外周縁部に照射されるレーザ光の強度を強くする。ウエハWの外周縁部のみを照射する円環状(リング状)のレーザ光Lbを照射することにより、特に、高温加熱時やガス雰囲気下での加熱時に、ウエハWの外周縁部の温度が中央部よりも低下することを防止することができる。すなわち、レーザ光Lbは、レーザ光Laのみを照射した際に、ウエハWの外周縁部が、ウエハの中央部よりも多く放熱する熱量に相当する熱量を供給するものであり、強度が均一なレーザ光Laに、円環状のレーザ光Lbを重ね合わせてウエハWに照射することにより、ウエハWの外周縁部から放熱される熱を補い、結果的に均一に加熱することができる。本発明のレーザ加熱処理装置において、この目的を達成できる範囲において、2つのレーザ光La、Lbのそれぞれの強度を調整することができる。
【0033】
(水素アニール処理)
第二実施態様であるレーザ加熱処理装置2は、水素ガス供給ライン26から水素ガスを供給し、排気ライン27から排気して、チャンバー11内を50kPa以下程度に減圧しながら、ウエハWを700℃以上に加熱することにより、水素アニール処理を施すことができる。
なお、水素アニール処理により、Siの融点(1414℃)以下の温度でも、表面エネルギーを最小化する方向にSi原子が移動する。そのため、シリコンウエハに水素アニール処理を施すと、その表面が平滑化(smoothing)して、面が平坦化(flattening)するとともに、角が丸くなる(rounding)。
【0034】
なお、上記した第一、第二の実施態様であるレーザ加熱処理装置1、2は、本発明のレーザ加熱処理装置の一例であり、本発明のレーザ加熱処理装置は、その技術的思想の範囲内において、各開示要素(請求の範囲、明細書及び図面に記載の要素を含む)に対し種々の変形、変更及び改良を含むことができる。また、本発明の特許請求の範囲の範囲内において、各開示要素の多様な組み合わせ・置換ないし選択が可能である。
【符号の説明】
【0035】
W ウエハ

1 第一実施態様である加熱処理装置
11 チャンバー
111 透過窓
12 ホルダ
121 開口部
122 切欠部
13 アーム
131 平坦部
132 傾斜部
14 レーザ光照射装置
L 正六角形のレーザ光
15 放射温度計

2 第二実施態様である加熱処理装置
24a、b レーザ光照射装置
La 正六角形のレーザ光
Lb 円環状のレーザ光
25a、b 放射温度計
26 水素ガス供給ライン
27 排気ライン
28 バンドパスフィルター
図1
図2
図3
図4
図5
図6