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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】化合物
(51)【国際特許分類】
   C07F 15/00 20060101AFI20240730BHJP
   C07C 49/92 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C07F15/00 E CSP
C07C49/92
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020120338
(22)【出願日】2020-07-14
(65)【公開番号】P2022017658
(43)【公開日】2022-01-26
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】秋山 誠治
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-188422(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108409792(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106397490(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106397494(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108409793(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108864194(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108084230(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0062357(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 15/00
C07C 49/92
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表され、前記式(1)中のLが式(2)で表される化合物。
【化1】
【化2】
[式(1)において、
A及びBはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい、ベンゼン環、ナフタレン環、
アントラセン環、フェナントレン環から選ばれる芳香族炭化水素環又はベンゾチオフェン
環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ベンゾフラン環、カルバゾール環、チオ
フェン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピリダジン環、チアゾール環、チア
ジアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環から選ばれる芳香族複素環を表し、
Zはハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基、カルボニル基、アルキルカルボニル
基、アルキルオキシカルボニル基、イミノ基から選ばれる1種のアクセプター性置換基を
表し、
MはIr、Os又はPtを表し、
Lはn価の配位子を表し、
m及びnはそれぞれ独立に、1~3の整数を表す。
式(2)において、
X及びYはそれぞれ独立に、C原子、N原子またはO原子を表す。C原子、N原子及び
O原子は環の一部であり、X及びYをそれぞれ含む環が5員環又は6員環である。]
【請求項2】
Zがトリフルオロメチル基である、請求項1に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規の化合物に関するものである。本発明の化合物は、近赤外域以上に吸収
・発光特性を有するものであり、例えば近赤外発光マーカー、インジケーター、バイオイ
メーシ゛ンク゛、センサー、波長変換フィルム、発光トランジスター、OLED、電気化
学発光セル、フォトダイナミックセラピー、光美容、ナイトビジョンディスプレイ、セキ
ュリティー、偽造防止用途等の部材として好適に用いることができる。
【背景技術】
【0002】
これまで目視による選別、認識等が主流であったが、科学技術の発展とともに、高齢化や
少子化に伴う労働力の減少も相重なって、ロボットを利用した選別・認識へとシフトしつ
つある。目視による選別・認識では可視光を利用するしか出来ないが、ロボットを利用し
た場合には目視では捉えられない近赤外発光も利用することが可能となり、選別・識別精
度の向上が期待できる。さらに近赤外光は細胞を透過するので、バイオイメーシ゛ンク゛
やバイオセンサー、医療診断薬、PDTなどへの展開も期待できる。なかでもIr、Pt
、Osなどの金属錯体は燐光発光を示すことから、特に注目を集めている。
例えば、特許文献1にはキナゾリン骨格を配位子に有するイリジウム錯体は近赤外に発光
を示し、OLED用途として利用できることが報告されている。また、非特許文献1には
キノゾリン骨格の配位子を有するカチオン性イリジウム錯体が、電気化学セルとして利用
できることが示されている。
しかしながら、実用化にはさらなる性能向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国公開2019/0062357号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】Chem. Eur. J. 2019, 25, 5489 - 5497(Cationic IrIII Emitters with Near-Infrared Emission Beyond 800 nmand Their Use in Light-Emitting Electrochemical Cells)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1及び非特許文献1で開示された化合物では、配位子の平面性が高く、凝
集しやすく、昇華性も低いと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく検討を重ねた結果、キナゾリン骨格に電子吸引性基
を導入することにより、上記課題を解決することを見出した。本発明は、このような知見
に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
[1]式(1)で表される化合物。
【0007】
【化1】
【0008】
[式(1)において、
A及びBはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素環又は芳香族複
素環を表し、
Zはアクセプター性置換基を表し、
MはIr、Os又はPtを表し、
Lはn価の配位子を表し、
m及びnはそれぞれ独立に、1~3の整数を表す。]
[2] Lが下記式(2)で表されるものである、請求項1に記載の化合物。
【0009】
【化2】
【0010】
[式(2)において、
X及びYはそれぞれ独立に、C原子、N原子またはO原子を表す。]
【発明の効果】
【0011】
本発明は、近赤外吸収又は発光を有する特定構造の新規化合物を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1で得られた化合物の吸収スペクトルを表す。
図2】実施例1で得られた化合物の発光スペクトルを表す。
図3】実施例2で得られた化合物の吸収スペクトルを表す。
図4】実施例2で得られた化合物の発光スペクトルを表す。
図5】実施例3で得られた化合物の吸収スペクトルを表す。
図6】実施例3で得られた化合物の発光スペクトルを表す。
図7】比較例1で得られた化合物の吸収スペクトルを表す。
図8】比較例1で得られた化合物の発光スペクトルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定さ
れるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形して実施することができる。
【0014】
本発明の新規の化合物は下記式(1)で表される。
【0015】
【化3】
【0016】
[式(1)において、
A及びBはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素環又は芳香族複
素環を表し、
Zはアクセプター性置換基を表し、
MはIr、Os又はPtを表し、
Lはn価の配位子を表し、
m及びnはそれぞれ独立に、1~3の整数を表す。]
【0017】
式(1)で表される化合物が本願発明の効果を奏する理由は定かではないが、以下が考
えられる。式(1)のXが、結合を介してAおよびMに配位するN原子に電子的効果を誘
発し、配位結合を安定化する。そのため、MLCT(電荷移動 Metal to Ligand Charge
Transfer)のエネルギーが小さくなり、長波長発光を誘発する。また、Zが空間を介して
Aと相互作用することにより、式(1)で表される化合物を安定化することが考えられる
【0018】
(A及びB)
A及びBはそれぞれ独立に、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素環又は芳香族
複素環を表す。これらの環は単一又は複数の置換基を有していてもよい。
芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナント
レン環等が挙げられる。
芳香族複素環としては、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン
環、ベンゾフラン環、カルバゾール環、チオフェン環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラ
ジン環、ピリダジン環、チアゾール環、チアジアゾール環、オキサゾール環、オキサジア
ゾール環等が挙げられる。
これらの中でも、Aは電子供与性の環が好ましく、なかでもベンゼン環、ナフタレン環
、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、カル
バゾール環が好ましい。また、Bはベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピリミジン
環、ピラジン環、ピリダジン環、チアゾール環、チアジアゾール環、オキサゾール環、オ
キサジアゾール環等が好ましい。これらの環であることで配位子のバンドギャップが小さ
くなり、近赤外発光が得られる傾向にある。
【0019】
A及びBが有してもよい置換基は、それぞれ独立であり、特に限定されない。具体的に
は、水素原子、重水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していて
もよいアルコキシル基、置換基を有していてもよいアミノ基、ハロゲン、シアノ基、置換
基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいヘテロアリール基、置換基
を有していてもよいシクロアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基
を有していてもよいアルキニル基等が挙げられる。これらの中でも水素原子、重水素原子
、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシル基、置
換基を有していてもよいアミノ基、ハロゲン及びシアノ基が、立体障害が小さくなるため
好ましい。
置換基の数及び位置は特に限定されないが、M(中心金属)に対して反対方向に置換す
る方が、式(1)で表される化合物の安定性が向上する傾向にあるため好ましい。
【0020】
(Z)
Zはアクセプター性置換基を表す。本発明においてアクセプター性置換基とは、共鳴効
果の寄与が少なく、ハメット則による置換基定数(σ値)が0より大きいものを表す。こ
れらの中でも、長波長化の観点から、σ値が0.1以上であることが好ましく、0.3以
上であることがより好ましい。また上限は特に限定されないが、2.0以下であることが
好ましく、1.5以下であることがより好ましい。
アクセプター性置換基は具体的には、ハロゲン、シアノ基、トリフルオロメチル基、カ
ルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルオキシカルボニル基、イミノ基等が挙げら
れる。
また、前記AとZは結合して環を形成していてもよい。
【0021】
[L]
Lはn価の配位子を表し、本発明の特性を損なわない限り特に制限は無い。同一分子内
にLが複数ある場合は同一であっても異なっていてもよい。
Lとしては.下記式(2)で表されるものが好ましい。
【0022】
【化4】
【0023】
式(2)において、X及びYはそれぞれ独立に、C原子、N原子またはO原子を表す。
C原子、N原子及びO原子は環又は基の一部であり、X及びYをそれぞれ含む環又は基が
、結合しているものである。C原子、N原子及びO原子を含む環又は基は特に限定されな
いが、安定性の観点からM、X及びYを含む環が5員環又は6員環であることが好ましい
。具体的には、下記の構造が挙げられる。
【0024】
【化5】
【0025】
Lの好ましい構造を以下の式(2A)~(2F)に例示するが、この限りではない。こ
れらはその構造を保ち得る限りにおいて骨格の炭素原子が窒素原子など他の原子に置き換
わっていてもよいし、さらに置換基を有していてもよい。
Lが置換基を有する場合、その置換基としては、-F、-CN、-CF、炭素数1以
上30以下の、直鎖、分岐もしくは環状アルキル基、炭素数5以上40以下のアリールオ
キシ基、炭素数5以上40以下のアリールチオ基、炭素数10以上40以下のジアリール
アミノ基、炭素数5以上60以下のアラルキル基、炭素数5以上60以下の芳香族基また
炭素数5以上60以下の複素芳香族基等が挙げられる。好ましくは、-F、-CN、-C
、アルキル基、アラルキル基、芳香族基又は複素芳香族基が挙げられ、-F、-CN
、-CF、アルキル基、芳香族基、複素芳香族基がより好ましい。
【0026】
【化6】
【0027】
本発明の式(1)で表される化合物のMとLとの結合様式には特に制限はなく、目的に
応じて適宜選択することができる。例えば、Lの窒素原子及び炭素原子で結合する様式、
Lの2つの窒素原子で結合する様式、Lの2つの炭素原子で結合する様式、Lの炭素原子
及び酸素原子で結合する様式、Lの2つの酸素原子で結合する様式などが挙げられる。
上記のなかでも(2A)又は(2F)が式(1)で表される化合物の安定性が向上する
ことから好ましい。
【0028】
(m及びn)
m及びnはそれぞれ独立に、1~3の整数を表す。MがIr又はOsの場合n+m=3
であり、MがPtの場合n+m=2である。
【0029】
[式(1)で表される化合物の製造方法]
上述した式(1)で表される化合物の製造方法は特に限定されないが、例えば以下スキ
ームが挙げられる。
【0030】
【化7】
【0031】
上記M*としてはIrCl3/xH2O、Ir(acac)3、[Ir(COD)2]2Cl、PtCl2等が挙げられる。
【0032】
[式(1)で表される化合物の物性]
化合物の重量減少極大温度は特に限定されないが、化合物が熱分解しやすいことから4
45℃以下であることが好ましく、440℃以下であることがより好ましい。重量減少極
大温度が上記範囲であることで、昇華性が高く、昇華精製により高純度化できる傾向にあ
り、真空蒸着等のデバイスへの適合性が向上する。
【0033】
[式(1)で表される化合物の具体例]
以下に、式(1)で表される化合物の具体例を示すが、これに限定されるものではない
【0034】
【化8】
【0035】
【化9】
【0036】
【化10】
【0037】
【化11】
【0038】
【化12】
【0039】
【化13】
【0040】
[部材]
本発明の式(1)で表される化合物は、近赤外域以上に吸収・発光特性を有するもので
あり、例えば近赤外発光マーカー、インジケーター、バイオイメーシ゛ンク゛、センサー
、波長変換フィルム、発光トランジスター、OLED、電気化学発光セル、フォトダイナ
ミックセラピー、光美容、ナイトビジョンディスプレイ、セキュリティー、偽造防止用途
等の部材として好適に用いることができる。
【実施例
【0041】
[合成例1]
【0042】
【化14】
【0043】
Chemistry of Heterocyclic Compounds 2015, 51(3), 259-268の処方を基に合成を行い
、目的物を得た。
[化合物1の合成]
【0044】
【化15】
【0045】
窒素雰囲気下、Ethyl trifluoropyruvate (7.85g、46.14mmol)のエタノ
ール(80mL)溶液に、o-phenylenediamine(4.99g、1.0equiv.)を添加し、4時
間還流下撹拌した。
減圧下に溶媒を留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘ
キサン=1/4) で精製し、化合物1(黄色粉体、7.62g、収率 77.1%)を得た。
【0046】
[化合物2の合成]
【0047】
【化16】
【0048】
窒素雰囲気下、化合物1(7.50g、35.02mmol)をオキシ塩化燐(75mL)
に室温で加え、8時間還流させると溶解して反応が進行した。
室温へ冷却後、減圧下溶媒を留去し残渣を、撹拌した氷水(200mL)へ滴下し暫く撹
拌した。
得られた沈殿を濾取、精製水(100mL)、ジエチルエーテル(100mL)で順次洗
浄後、風乾、真空減圧下乾燥し、化合物2 (淡褐色粉体、7,27g、収率 89.2%)
を得た。
【0049】
[化合物3の合成]
【0050】
【化17】
【0051】
窒素雰囲気下、化合物2(3.70g、15.48mmol)、フェニルボロン酸(2.
45g、1.3equiv.)、DME (40mL)、2Mリン酸三カリウム水溶液(19.3m
L、2.5equiv.)を仕込み、室温にて20分間窒素バブリングした後、Pd(pph3)4 (89
4mg、5mol%)を加え、9時間還流撹拌した。
室温へ冷却後、トルエン(50mL×2 回)抽出を行った。有機層を合わせ、精製水(5
0mL)で1回洗浄後、無水芒硝乾燥、濾過、濾液を濃縮した。
得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘキサン=1/4)
で精製し、化合物3(黄色粉体、3.88g、収率 91.4%)を得た。
【実施例1】
【0052】
【化18】
【0053】
窒素雰囲気下、塩化イリジウム-3.64水和物(127mg、0.3473mmol)
を精製水(1mL)で溶解し、diglyme(4mL)と化合物3 (200mg、2.1equiv.)を
加え、油浴50℃設定にし、30分間窒素バブリングした。その後、N,N-diisopropyleth
ylamine(94mg、2.1equiv.)を加え、120℃まで昇温しながら3時間撹拌し、次
いで昇温し、19時間還流撹拌した。
室温へ放冷後、ジクロロメタン(40mL)と精製水(10mL)を加え抽出し、無水芒硝
乾燥、濾過、濾液を濃縮後、残渣をメタノール(5mL)で懸洗、濾取し、黒色粉体の化合
物4(159mg)を得た。
【0054】
窒素雰囲気下、化合物4(150mg、0.1938mmol)、アセチルアセトン(2
5mg、1.3equiv.)、2-ethoxyethanol(3mL)を室温撹拌し、t-BuOK (28mg、1
.3equiv.)を投入した。得られた混合物を40℃にて2時間撹拌した。
氷冷した後、精製水(4mL)でquenchし、ジクロロメタン(20mL×2回)抽出した。
有機層を合わせ、精製水(5mL)で1回洗浄後、無水芒硝乾燥、濾過を行い、濾液を濃縮
した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル/ジクロロメタ
ン:1/19)で精製し、NIR-1(黒褐色粉体、115mg、収率70.9%、LC純
度 99.4%)を得た。
また、得られたNIR-1の吸収スペクトル、発光スペクトルを測定した。なお、吸収
スペクトルは、日立製作所のU3900分光光度計を用い、10-5mol/Lの脱気し
た塩化メチレン溶液を調液し、測定した。発光スペクトルは、日本分光株式会社の紫外可
視近赤外分光光度計V-7200を用い、10-5mol/Lの脱気した塩化メチレン溶
液を調液し、測定した。測定結果を図1及び2に示す。
【実施例2】
【0055】
【化19】
【0056】
【化20】
【0057】
Ethyl trifluoropyruvate(5.00g、29.40mmol)と2,3-diaminonaphthalen
e(4.65g、1eq.) を用いて、化合物1と同様の合成を行うことにより、化合物5(6
.46g、収率83.2%)を得た。
【0058】
【化21】
【0059】
化合物5(6.42g、24.30mmol)を用いて、化合物2と同様の合成を行うこ
とにより、化合物6(6.66g、収率97.0%)を得た。
【0060】
【化22】
【0061】
化合物6(6.61g、23.39mmol)を用いて、化合物4と同様の合成を行うこ
とにより、化合物7(5.67g、収率74.8%)を得た。
【0062】
【化23】
【0063】
窒素雰囲気下、塩化イリジウム-3.64水和物(535mg、1.468mmol)を
精製水(2mL)で溶解し、diglyme(20mL)と化合物7 (1.000g、2.1equiv.)
を加え、油浴50℃設定にし、30分間窒素バブリングした。その後、triethylamine(4
30μL、2.1equiv.)を加え、120℃まで昇温しながら1時間撹拌し、次いで昇温
し、15時間還流撹拌した。
室温へ放冷後、ジクロロメタン(100mL)と精製水(20mL)を加え抽出し、無水芒
硝乾燥、濾過を行い、濾液を濃縮した。得られた残渣をメタノールで懸洗、濾取し、黒色
粉体の化合物8(286mg、収率 22.3%)を得た。
【0064】
窒素雰囲気下、化合物8(250mg、0.2860mmol)、アセチルアセトン(3
7mg、1.3equiv.)、2-ethoxyethanol(3mL)を室温撹拌し、t-BuOK (42mg、1
.3equiv.)を投入した。得られた混合物を40℃にて2時間撹拌した。
【0065】
氷冷した後、精製水(4mL)でquench し、ジクロロメタン(20mL×2 回)抽出した
。有機層を合わせ、精製水(5mL)で1回洗浄後、無水芒硝乾燥、濾過、濾液を濃縮した

得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(関東化学, シリカゲル60N、
球状中性、40-50μm、10g)を用いて、酢酸エチル/ジクロロメタン=(1/40
~1/19)で精製し、NIR-2 (黒色粉体,、239mg、収率 89.1%、LC 純
度 98.2%)を得た。
【0066】
得られたNIR-2の吸収スペクトル、発光スペクトルを実施例1と同様の方法で測定
した。測定結果を図3及び5に示す。
【実施例3】
【0067】
【化24】
【0068】
窒素雰囲気下、化合物9(3.500g、15.05mmol)、ナフタレン-2-イル
ボロン酸(3.36g、1.3equiv.)、DME(40mL)、2Mリン酸三カリウム水溶液
(18.8mL、2.5equiv.)を仕込み、室温にて20分間窒素バブリングした後、Pd(p
ph3)4 (894mg、5mol%)を加え、16時間還流撹拌した。
室温へ冷却後、トルエン(50mL×2回)抽出を行った。有機層を合わせ、精製水(5
0mL)で1回洗浄後、無水芒硝乾燥、濾過、濾液を濃縮した。得られた残渣をシリカゲ
ルカラムクロマトグラフィー(展開液 ジクロロメタン/ヘキサン=1/4)し、化合物10
(白色粉体、3.931g)を収率 80.6%で得た。
【0069】
【化25】
【0070】
窒素雰囲気下、塩化イリジウム-3.64水和物(534mg、1.468mmol)を
精製水(5mL)で溶解し、diglyme(20mL)と化合物10(1.000g、3.084m
mol、2.1equiv.)を加え、、油浴50℃設定にし、30分間窒素バブリングした。
その後、N,N-diisopropylethylamine(399mg、2.1equiv.)を加え、120℃ま
で昇温しながら2時間撹拌し、次いで昇温し、21時間還流撹拌した。室温へ放冷後、ジ
クロロメタン(40mL)と精製水(10mL)を加え抽出し、無水芒硝乾燥、濾過、濾液を
濃縮後、残渣をメタノール(9mL)で懸洗、濾取し、黒色粉体の化合物11(424mg)
を収率33.0%で得た。
続いて、窒素雰囲気下、化合物11(401mg、0.4587mmol)、アセチルア
セトン(60mg、1.3equiv.)、2-ethoxyethanol(7mL)を室温撹拌し、t-BuOK (6
76mg、1.3equiv.)を投入した。得られた混合物を40℃にて2時間20分間撹拌
した。氷冷した後、精製水(10mL)でquench し、ジクロロメタン(30mL×2回)抽
出した。有機層を合わせ、精製水(10mL)で1回洗浄後、無水芒硝乾燥、濾過を行い、
濾液を濃縮した。
得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開液トルエン/ヘキサン=1/
4出)で精製し、濃縮残渣をメタノールで懸洗濾取し、NIR-3(黒褐色粉体、296m
g、収率68.8%、LC純度 96.2%)を得た。
また、得られたNIR-3の吸収スペクトル、発光スペクトルを実施例1と同様に測定
した。測定結果を図5及び6に示す。
【0071】
[比較例1]
文献(J. Mater. Chem. C, 2013, 1, 6446-6454)をもとに、以下化合物Aを合成した
。化合物Aの吸収スペクトル、発光スペクトルを実施例1と同様に測定した。測定結果を
図7及び8に示す。
【0072】
【化26】
【0073】
実施例1~3及び比較例1で得られた各化合物について、TG-DTAにより重量現象
極大温度及び発光極大波長の測定を行った。結果を表1に示す。なお、重量現象極大温度
及び発光極大は、SII EXSTAR6000を用いて測定した。N 200mL/minにてAl容器
を使用し、40-600℃まで10℃/minで昇温し測定した。
【0074】
【表1】
【0075】
実施例1~3の化合物は比較例1の化合物と比較し、重量減少極大温度が低いため、昇
華性が高く、昇華精製による高純度化が期待できる。また、真空蒸着など、デバイス作製
にもより適していると推測される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8