(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】立体造形装置、及び立体造形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 64/40 20170101AFI20240730BHJP
B22F 10/22 20210101ALI20240730BHJP
B22F 12/10 20210101ALI20240730BHJP
B22F 12/33 20210101ALI20240730BHJP
B22F 12/41 20210101ALI20240730BHJP
B22F 12/45 20210101ALI20240730BHJP
B22F 12/50 20210101ALI20240730BHJP
B22F 12/63 20210101ALI20240730BHJP
B22F 12/67 20210101ALI20240730BHJP
B28B 1/30 20060101ALI20240730BHJP
B29C 64/141 20170101ALI20240730BHJP
B29C 64/188 20170101ALI20240730BHJP
B29C 64/214 20170101ALI20240730BHJP
B29C 64/218 20170101ALI20240730BHJP
B29C 64/223 20170101ALI20240730BHJP
B29C 64/236 20170101ALI20240730BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20240730BHJP
B29C 64/277 20170101ALI20240730BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20240730BHJP
B29C 64/321 20170101ALI20240730BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240730BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240730BHJP
【FI】
B29C64/40
B22F10/22
B22F12/10
B22F12/33
B22F12/41
B22F12/45
B22F12/50
B22F12/63
B22F12/67
B28B1/30
B29C64/141
B29C64/188
B29C64/214
B29C64/218
B29C64/223
B29C64/236
B29C64/268
B29C64/277
B29C64/295
B29C64/321
B33Y10/00
B33Y30/00
(21)【出願番号】P 2020120798
(22)【出願日】2020-07-14
【審査請求日】2023-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】竹内 惇
(72)【発明者】
【氏名】藤田 貴史
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/108821(WO,A1)
【文献】特開2013-136169(JP,A)
【文献】国際公開第2016/136722(WO,A1)
【文献】特開平01-232027(JP,A)
【文献】特開2018-080359(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B22F 1/00-12/90
B28B 1/30
B33Y 10/00-99/00
G03G 13/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造形台上に立体造形物を造形する立体造形装置であって、
粉体状の造形材を飛翔させて前記造形台上の第1領域に着弾させる飛翔部と、
前記第1領域内の第2領域にある前記造形材を加熱する加熱部と、
前記第2領域にある前記造形材を支持する支持体を、余剰造形材により前記第2領域の周囲に形成する支持体形成部と、を有
し、
前記支持体形成部は、
前記第1領域を決定する領域決定部と、
前記第2領域にある前記余剰造形材を前記第2領域の周囲に移動させる移動部と、を有し、
前記移動部は、前記第2領域にある前記余剰造形材を所定方向に移動させ、
前記領域決定部は、前記所定方向に応じて前記第1領域を決定する
立体造形装置。
【請求項2】
前記領域決定部は、前記第2領域の周囲領域のうち、前記所定方向の前記周囲領域にある前記余剰造形材の量が、前記所定方向以外の方向の前記周囲領域にある前記余剰造形材の量より少なくなるように、前記第1領域を決定する
請求項
1に記載の立体造形装置。
【請求項3】
前記移動部は、前記第2領域にある前記造形材により形成される造形層の表面を平坦化する平坦化機構を含む
請求項
1、又は2に記載の立体造形装置。
【請求項4】
前記平坦化機構は、前記加熱部による加熱前に、前記造形層の表面を平坦化する
請求項
3に記載の立体造形装置。
【請求項5】
前記平坦化機構は、複数の前記造形層が積層されるごとに前記造形層の表面を平坦化する
請求項
3、又は
4に記載の立体造形装置。
【請求項6】
造形台上に立体造形物を造形する立体造形装置による立体造形方法であって、
飛翔部により、粉体状の造形材を飛翔させて前記造形台上の第1領域に着弾させる工程と、
加熱部により、前記第1領域内の第2領域にある前記造形材を加熱する工程と、
支持体形成部により、前記第2領域にある前記造形材を支持する支持体を、余剰造形材により前記第2領域の周囲に形成する工程と、を行
い、
前記支持体形成部は、
領域決定部により、前記第1領域を決定し、
移動部により、
前記第2領域にある前記余剰造形材を前記第2領域の周囲に移動させ、
前記移動部は、前記第2領域にある前記余剰造形材を所定方向に移動させ、
前記領域決定部は、前記所定方向に応じて前記第1領域を決定する
立体造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体造形装置、及び立体造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な分野で立体造形物の造形が活用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、造形材による造形層を平坦化する平坦化部材の前進方向側にある余剰造形材を吸引し、再利用する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の構成では、余剰造形材の吸引手段が必要なため装置が複雑化する場合がある。
【0005】
本発明は、簡便な手段で余剰造形材を再利用しながら造形することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、造形台上に立体造形物を造形する立体造形装置であって、粉体状の造形材を飛翔させて前記造形台上の第1領域に着弾させる飛翔部と、前記第1領域内の第2領域にある前記造形材を加熱する加熱部と、前記第2領域にある前記造形材を支持する支持体を、余剰造形材により前記第2領域の周囲に形成する支持体形成部と、を有し、前記支持体形成部は、前記第1領域を決定する領域決定部と、前記第2領域にある前記余剰造形材を前記第2領域の周囲に移動させる移動部と、を有し、前記移動部は、前記第2領域にある前記余剰造形材を所定方向に移動させ、前記領域決定部は、前記所定方向に応じて前記第1領域を決定する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡便な手段で余剰造形材を再利用しながら造形できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る立体造形装置の全体構成例を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係る立体造形装置の全体動作例を示すフロー図である。
【
図4】平坦化機構の動作例を示す図であり、(a)は平坦化ローラの動作例を示す図、(b)は平坦化ブレードの動作例を示す図である。
【
図5】第1及び第2領域例の図であり、(a)は第1領域の図、(b)は(a)のA-A矢視断面図、(c)は第2領域の図、(d)は(c)のB-B矢視断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る立体造形装置による造形動作例を示す図であり、(a)乃至(f)は一連の動作を示す図である。
【
図8】第1領域の各種決定例の図であり、(a)は第1例の図、(b)は(a)のC-C矢視断面図、(c)は第2例の図、(d)は(c)のD-D矢視断面図、(e)は第3例の図、(f)は(e)のE-E矢視断面図である。
【
図10】第2実施形態に係る立体造形装置の全体構成例を示す図である。
【
図11】平坦化ローラの動作例を示す図であり、(a)は第1例の図、(b)は第2例の図である。
【
図12】平坦化ローラの周辺構成例を示す図である。
【
図13】第2実施形態に係る立体造形装置の動作例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。なお、各図面において、同一の構成部には同一符号を付し、重複した説明を適宜省略する。また以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための立体造形装置を例示するものであって、本発明を以下に示す実施形態に限定するものではない。
【0010】
以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。
【0011】
実施形態に係る立体造形装置は、造形台上に立体造形物を造形する立体造形装置である。
【0012】
実施形態では、造形材を飛翔させて造形台上の第1領域に着弾させ、第1領域内の第2領域にある造形材を加熱し、第2領域にある造形材を支持する支持体を、余剰造形材により第2領域の周囲に形成する。造形層表面の平坦化で生じた余剰造形材を造形層表面の平坦化と同時に(並行して)支持体として再利用することで、簡便な手段で余剰造形材を再利用しながら造形可能にする。ここで、余剰造形材とは、造形材のうち、立体造形物を構成する造形物としては使用されない造形材をいう。
【0013】
なお、実施形態では、造形過程にある造形物を単に造形物とし、造形が終了した造形物を立体造形物として区別して表記する。
【0014】
[第1実施形態]
まず、第1実施形態に係る立体造形装置100ついて説明する。
【0015】
<立体造形装置100の全体構成例>
図1を参照して、立体造形装置100の全体構成を説明する。
図1は立体造形装置100の全体構成の一例を説明する図である。
【0016】
図1に示すように、立体造形装置100は、担持体ベルト111と、造形材供給ユニット112と、平坦化ローラ113と、飛翔用レーザ115と、溶融用レーザ116と、クリーニングブレード117と、回収ケース118とを有する。また造形ステージ301と、ヒータ302と、制御部400とを有する。
【0017】
立体造形装置100は、担持体ベルト111に担持された粉体状の造形材201を、飛翔用レーザ115による飛翔用レーザ光115aの照射により飛翔させて造形物200上に着弾させて造形層を形成する。その後、造形層を加熱して、溶融、固化することで造形を行う。
【0018】
造形ステージ301は、立体造形物が造形される造形台の一例である。造形ステージ301は、y軸方向に往復移動可能であり、またz軸方向に例えば造形厚み0.1mmピッチで昇降可能である。造形ステージ301の下方(z軸負方向側)にはヒータ302が設けられ、造形ステージ301は造形材201に合わせて温度制御可能に構成されている。
【0019】
担持体ベルト111は、造形材201を担持して周回走行可能な無端のベルト状部材である。担持体ベルト111は、造形ステージ301の上方(z軸正方向側)に配置され、支持ローラ133,134,135に架け回されて支持されている。
【0020】
支持ローラ133,134,135のうちの少なくとも1つは、モータ等の駆動源に接続された駆動ローラである。駆動ローラの回転に伴い、担持体ベルト111は矢印で示す走行方向110に沿って周回走行する。支持ローラ133,134,135のうちの駆動ローラ以外の支持ローラは従動ローラであり、担持体ベルト111の回転に伴って従動回転する。
【0021】
担持体ベルト111は、例えばPET(Poly Ethylene Terephthalate)フィルムで構成できるが、これに限定されるものではなく、ポリイミドフィルム等の樹脂やガラスフィルムで構成することもできる。
【0022】
担持体ベルト111による造形材201の担持は、本実施形態では主にファンデルワールス力によって行っている。また造形材201の抵抗値が高い場合、静電的な付着力だけでも担持できる。
【0023】
造形材供給ユニット112は、担持ローラ121と、供給ローラ122と、規制ブレード123とを有し、造形材供給ユニット112内に貯留された造形材201を担持体ベルト111に供給する。造形材供給ユニット112は、担持体ベルト111の周囲に配置されている。
【0024】
供給ローラ122は、造形材供給ユニット112内に貯留された造形材201を担持ローラ121に供給するローラである。担持ローラ121は、造形材201を周面に担持して担持体ベルト111に受け渡すローラである。規制ブレード123は、担持ローラ121の周面に担持された造形材201を擦って造形材201の凝集を解くことで、担持ローラ121の周面に造形材201の薄層を形成する。
【0025】
造形材供給ユニット112は、担持ローラ121の周面の造形材201を担持体ベルト111に当接することで、担持体ベルト111に造形材201を供給できる。
【0026】
造形材201は、目的とする立体造形物に応じて適宜選択されるべきものであるが、樹脂の場合、例えば、非晶性樹脂であるPC(ポリカーボネート)やABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、PEI(ポリエーテルイミド)、結晶性樹脂であるPA12(ポリアミド12)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、PSU(ポリスルホン)、PA66(ポリアミド66)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、LCP(液晶ポリマー)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、POM(ポリアセタール)、PSF(ポリサルホン)、PA6(ポリアミド6)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)等である。
【0027】
また造形材201は、樹脂の他、金属、セラミック、液体等の種々の材料を用いることもできる。
【0028】
飛翔用レーザ115は、担持体ベルト111の内側に配置され、担持体ベルト111に内側からパルス状の飛翔用レーザ光115aを照射することで、担持体ベルト111に担持された造形材201を飛翔させて造形ステージ301上の第1領域に着弾させる飛翔部の一例である。ここで、第1領域は、飛翔させた造形材201を着弾させる領域であり、予め定められた領域である。
【0029】
また
図1では図示を省略するが、飛翔用レーザ115は、ガルバノミラー等の光走査部を有する。光走査部は、飛翔用レーザ光115aを反射するミラーの角度を変化させることで飛翔用レーザ光115aをx軸方向に走査する。飛翔用レーザ115は、光走査部により飛翔用レーザ光115aの照射位置を変化させながら、x軸方向における所定の位置に選択的に飛翔用レーザ光115aを照射できる。
【0030】
造形材201は、飛翔用レーザ光115aを照射されることで、造形材201の付着力が開放され、下向き(z軸負方向)に落下する。従来知られている文献(レーザーパルスによる単一高分子微粒子の飛跳現象 福本ら 1997)ではレーザにより局所的に膨張し重心が瞬間的に移動することで飛翔するメカニズムが推定されている。
【0031】
またUS006025110A等に記載されているレーザ転写LIFT(Laser Induced Forward Transfer)は、担持体に密着した箔状、液状の材料をレーザ照射により非接触転写するものである。局部的に加熱されて材料が気化することにより、担持体ベルト111の表面から飛翔用レーザ光115aの照射方向に沿って飛翔する。
【0032】
パルスレーザ光は、瞬間的に高いエネルギーを付与でき、またCW(Continuous Wave)レーザ光と異なり、全体を加熱溶融させることなく飛翔させることができるため、造形材201を飛翔させるレーザ光として好適である。
【0033】
飛翔用レーザ115のレーザ光源としては、特に制限はなく、ピコ秒からマイクロ秒等のパルス発振可能なものを適用可能である。固体レーザとしては、YAGレーザ、チタンサファイアレーザ等がある。気体レーザとしては、アルゴンレーザ、ヘリウムネオンレーザ、炭酸ガスレーザ等がある。半導体レーザも小型で好ましい。レーザの波長としては、適宜選択することができるが、300nm以上11μm以下が好ましい。
【0034】
飛翔用レーザ光115aにより飛翔された造形材201により、造形ステージ301又は造形物200上には、造形材201が堆積した造形層が形成される。
【0035】
平坦化ローラ113は、第2領域にある造形材201により形成される造形層の表面(z軸正方向側の面)を平坦化する平坦化機構の一例である。平坦化ローラ113は、造形ステージ301の上方に配置されている。
【0036】
造形物200の表面は、飛翔用レーザ光115aによって飛翔された造形材201が堆積し、造形層を形成した状態であるが、飛翔のバラつき等の影響で造形層の表面に凹凸ができて平坦にならない場合がある。平坦化ローラ113により所定の高さ以上の余剰造形材を圧接して移動させることで、造形層の表面を摺り切り、平坦化できる。平坦化ローラ113は所定の位置に固定されており、造形ステージ301のy軸正方向への移動に伴って、余剰造形材は平坦化ローラ113に圧接されてy軸負方向側に相対移動する。
【0037】
平坦化ローラ113は、第2領域にある造形材201を支持する支持体を、余剰造形材により第2領域の周囲に形成する支持体形成部114に含まれる。また平坦化ローラ113は、第2領域にある余剰造形材を第2領域の周囲に移動させる移動部の一例である。平坦化ローラ113は、第2領域にある造形材201により形成される造形層の表面の余剰造形材を、第2領域の周囲に移動させることができる。
【0038】
溶融用レーザ116は、第1領域内の第2領域にある造形材を加熱する加熱部の一例である。溶融用レーザ116は、パルス光を積極的に用いる必要はなく、連続波のレーザが適している。溶融用レーザ116は、造形ステージ301上で造形される造形物200の表面を加熱して溶融状態にする。1つ又は複数のエネルギーを付与する手段のエネルギーによって溶融状態になればよく、レーザによる加熱以外にも対流、ランプ、誘導加熱、誘電加熱など適用可能である。
【0039】
造形物200の表面は、1層の造形層ごとの造形物200の表面であってもよいし、2層又は3層等の複数の造形層ごとの造形物200の表面であってもよい。また、各層の一部でもよいし全体でもよい。つまり、最表層の一部が含まれていることが重要である。
【0040】
溶融用レーザ116による溶融用レーザ光116aと、飛翔用レーザ115の飛翔用レーザ光115aの照射位置は調整可能で、材料種や造形速度等で調整位置を切り替えることもできる。両者の距離が離れていると造形時間が長くなるため、距離は近いことが望ましい。
【0041】
クリーニングブレード117は、担持体ベルト111の周囲で、造形物200を造形する領域よりも担持体ベルト111の走行方向下流側に配置され、担持体ベルト111上に残存する造形材201を除去する。クリーニングブレード117で掻き落とされた造形材201は回収ケース118で回収される。
【0042】
制御部400は、電気回路により構成され、
図2で次述する各種機能を実現する。なお、機能の一部をソフトウェア(CPU;Central Processing Unit)によって実現し、また複数の回路又は複数のソフトウェアによって実現することもできる。また、制御部400の配置位置に特段の制限はなく、適宜選択可能である。
【0043】
<制御部400の機能構成例>
次に、
図2を参照して、制御部400の機能構成について説明する。
図2は、制御部400の機能構成の一例を説明するブロック図である。なお、
図2では、説明を分かりやすくするために制御部400の機能構成における主要な要素のみを示している。
図2に示すように、制御部400は、領域決定部401と、ステージ制御部402と、レーザ制御部403とを有する。
【0044】
ここで、飛翔用レーザ光115aにより飛翔される造形材201は、造形ステージ301上又は造形物200上に着弾するが、着弾位置がばらつく場合がある。そのため、この着弾ばらつきを加味して造形材201の着弾領域に対応する第1領域を決定することが好ましい。
【0045】
要求造形精度より着弾ばらつきが小さい場合は、溶融用レーザ116による加熱領域である第2領域と第1領域を同じ領域にしてもよい。しかし、要求造形精度より着弾ばらつきが大きい場合、着弾ばらつきの影響を小さくするため、第1領域を第2領域より大きくすることが好ましい。
【0046】
一方、第1領域を第2領域より大きくすると、第2領域の周囲に、立体造形物を構成する造形物としては使用されない余剰造形材が生じる。実施形態では、このような第2領域の周囲にある余剰造形材を、造形物200における造形材201を支持する支持体として再利用する。
【0047】
例えば、支持体がない場合には、造形物200上に新たに堆積する造形材201は、造形物200の端部等で落下して狙いの位置から移動しやすくなる。支持体は、造形材201を支持することで、このような造形材201の落下を防止する。また、造形物200がオーバーハング部(はみ出し部)を含む場合には、支持体はオーバーハング部を支える機能も有する。
【0048】
また実施形態では、平坦化ローラ113(
図1参照)により第2領域の周囲に移動される余剰造形材も支持体として再利用する。この際に、平坦化ローラ113による余剰造形材の移動は、第2領域の周囲にある四方の周囲領域のうちの1つの周囲領域に向けて行われるため、該周囲領域のみ余剰造形材の量が多くなる場合がある。
【0049】
そのため、実施形態では、第2領域の四方の周囲領域のうち、余剰造形材を移動させる周囲領域は、他の三方の領域と比較して予め面積を小さくし、余剰造形材の量が少なくなるようにする。これにより、平坦化ローラ113によって余剰造形材が移動された際に、第2領域の四方の周囲領域における余剰造形材の量を均等にできる。
【0050】
領域決定部401は、以上のように、要求造形精度、支持体として機能させるために必要な余剰造形材の量、及び平坦化ローラ113による余剰造形材の移動方向に基づいて第1領域を決定する。そして、決定した第1領域の情報をステージ制御部402及びレーザ制御部403に提供する。
【0051】
ここで、領域決定部401は、支持体形成部114(
図1参照)に含まれ、第1領域を決定する領域決定部に対応する。換言すると、本実施形態では、支持体形成部114は、平坦化ローラ113と、領域決定部401とを含んで構成されている。
【0052】
ステージ制御部402は、第1領域の情報に基づき、造形ステージ301を制御し、レーザ制御部403は、飛翔用レーザ115による飛翔用レーザ光115aの照射を制御する。これにより、造形材201を飛翔させて第1領域に造形材201を着弾させることができる。
【0053】
<立体造形装置100の動作例>
次に、立体造形装置100の動作について説明する。
【0054】
(全体動作例)
まず、
図3を参照して、立体造形装置100の全体動作について説明する。
図3は、立体造形装置100の全体動作の一例を説明するフローチャートである。適宜、
図1の構成図も参照して説明する。
【0055】
ステップS31において、飛翔用レーザ115は、担持体ベルト111に飛翔用レーザ光115aを照射し、担持体ベルト111に担持された造形材201を飛翔させる。飛翔した造形材201は、造形ステージ301又は造形物200上に着弾し、第1領域に造形層が形成される。
【0056】
続いて、ステップS32において、造形ステージ301は、y軸正方向に移動し、平坦化ローラ113は、造形層の表面に圧接して余剰造形材をy軸負方向に相対移動させる。これにより、造形層の表面が平坦化される。
【0057】
続いて、ステップS33において、溶融用レーザ116は、溶融用レーザ光116aを照射して、第1領域内の第2領域を加熱する。第2領域にある造形材201は、加熱により溶融し、造形ステージ301又は造形物200上に固着する。
【0058】
続いて、ステップS34において、立体造形装置100は、造形物200が所定の高さに達したか否かを判定する。
【0059】
ステップS34で、達したと判定された場合には(ステップS34、Yes)、動作は終了する。一方、達していないと判定された場合には(ステップS34、No)、動作はステップS31に戻り、ステップS31以降の処理が繰り返される。
【0060】
このようにして、立体造形物を造形することができる。
【0061】
(平坦化機構の動作例)
次に、
図4を参照して、平坦化機構の動作について説明する。
図4は、平坦化機構の動作の一例を説明する図であり、(a)は、平坦化ローラ113の動作例を示す図、(b)は平坦化ブレードの動作例を示す図である。
【0062】
図4(a)に示すように、平坦化ローラ113は、造形ステージ301又は造形物200上に着弾した造形材により形成される造形層202のz軸正方向側の表面に、造形ステージ301に対する所定の高さで当接する。
【0063】
造形ステージ301がy軸正方向側に移動することで、造形層202の表面における余剰造形材203をy軸負方向側に相対移動して、造形層202の表面を摺り切ることができる。
【0064】
平坦化ローラ113の回転軸は固定されており、造形層202に当接する箇所で造形ステージ301の移動方向(y軸正方向)と反対向きになる回転方向113'に沿って回転しながら余剰造形材203を移動させる。
【0065】
図4(a)における造形物200の表面領域は、溶融用レーザ光による加熱領域である第2領域に該当する。余剰造形材203は、平坦化ローラ113によって、造形物200のy軸負方向側における第2領域の周辺領域に移動される。
【0066】
なお、本実施形態では平坦化ローラ113の回転軸を固定する構成を例示するが、平坦化ローラ113の回転軸をy軸方向に移動可能に構成することもできる。また、平坦化ローラ113の回転方向113'は、造形層202に当接する箇所で造形ステージ301の移動方向と同じ向きになる方向に回転させてもよい。
【0067】
また、
図4(b)に示すように、平坦化機構として平坦化ブレード113aを使用することもできる。平坦化ブレード113aは、テーパ形状を有する板状部材であり、造形ステージ301に移動方向(y軸正方向)に対して所定角度になるように固定されている。
【0068】
造形ステージ301の移動に伴って、造形層202の表面に圧接して、造形層202の表面における余剰造形材203をy軸負方向側に相対移動して、造形層202の表面を摺り切ることができる。余剰造形材203の移動については、
図4(a)で説明したものと同様であるため、重複する説明を省略する。
【0069】
(第1領域及び第2領域の一例)
次に、
図5を参照して、造形層における第1領域及び第2領域について説明する。
図5は、第1領域及び第2領域の一例を説明する図であり、(a)は第1領域を示す図、(b)は(a)のA-A矢視断面図、(c)は第2領域を示す図、(d)は(c)のB-B矢視断面図である。
【0070】
図5(a),(b)に示すように、第1領域202'は、造形ステージ301に着弾した造形材により造形層202が形成された領域に等しい。第1領域202'は、要求造形精度、支持体として機能させるために必要な余剰造形材の量、及び平坦化ローラ113による余剰造形材の移動方向に基づいて、領域決定部401により決定される。
【0071】
また
図5(c),(d)に示すように、第2領域200'は、造形層202内で溶融用レーザ光により加熱される領域に該当する。溶融用レーザ光により加熱される領域は、加熱による溶融、固化後に造形物200を構成するため、第2領域200'と造形物200の領域はほぼ同じ領域になる。
【0072】
造形層202は、溶融用レーザ光による加熱で溶融し、これにより造形層202を構成する造形材間の空隙が無くなるため、収縮して加熱されていない領域と比較して高さ(z軸方向の長さ)が低くなる。
【0073】
造形層202における第2領域200'の周囲の領域には余剰造形材があるが、造形物200上(z軸正方向側)に次の造形層202を形成する際に、造形層202における端部に位置する造形材等が造形層から転がる等して落下することを防ぐ支持体204として機能する。支持体204は、造形物200の四方の周辺領域に形成され、四方の端部からそれぞれ造形材が落下することを防止する。
【0074】
(立体造形装置100による造形動作例)
次に、
図6を参照して、立体造形装置100による造形動作について説明する。
図6は、立体造形装置100による造形動作の一例を説明する図であり、(a)乃至(f)は一連の動作を説明する図である。
図6(a)乃至(c)は1層目の造形層の造形動作を示し、
図6(d)乃至(f)は2層目の造形層の造形動作を示している。
【0075】
図6(a)に示すように、造形層202を形成後、造形層202の表面(z軸正方向側の表面)は平坦化ローラにより平坦化される。
【0076】
次に、
図6(b)に示すように、平坦化ローラにより移動された造形層202の表面の余剰造形材が、移動方向203a(所定方向の一例)に沿って第2領域200'のy軸負方向側に移動される。この移動された余剰造形材と、第2領域200'のy軸正方向側に予め設けられた周囲領域の余剰造形材203(
図6(a))とにより、支持体204が形成される。
【0077】
ここで、第2領域200'の四方の周囲領域に設けられた余剰造形材203は、それぞれ支持体204として機能するが、四方の周辺領域のうち、y軸負方向側の周辺領域では、平坦化ローラにより造形層202の表面の余剰造形材が移動される。そのため、四方の周辺領域に予め均等な量で余剰造形材203を設けると、y軸負方向側の周辺領域だけ、余剰造形材の量が多くなる場合がある。
【0078】
そのため、
図6(a)に示すように、y軸負方向側の周辺領域の幅Y2は、y軸負方向側以外の周辺領域の幅Y1と比較して小さくなっている(Y2<Y1)。換言すると、平坦化ローラによる余剰造形材の移動方向に基づき、y軸負方向側の周辺領域の幅Y2が決定され、また第1領域202'の幅が決定されている。
【0079】
これにより、平坦化ローラにより造形層202の表面の余剰造形材が移動された際に、四方の周辺領域の余剰造形材の量が均等になるようになっている。
【0080】
次に、
図6(c)に示すように、第2領域200'が加熱され、溶融、固化して1層目の造形層による造形物200が造形される。
【0081】
次に、
図6(d)に示すように、2層目の造形層202が造形物200上に形成され、
図6(e)に示すように、2層目の造形層202の表面が平坦化ローラにより平坦化され、第2領域200'の周囲領域に支持体204が形成される。なお、
図6(d)における境界面204a(太線部分)は、支持体204と2層目の造形層との境界面である。
【0082】
その後、
図6(f)に示すように、第2領域200'が加熱され、溶融、固化して1層目と2層目の造形層による造形物200が造形される。
【0083】
各造形層の形成及び造形において、
図6(d)乃至(f)の動作が繰り返される。
【0084】
ここで、造形層202は、飛翔に伴う造形材の着弾ばらつきが存在するため、造形層202の高さのばらつきが発生し造形精度が低下する場合がある。
【0085】
これを回避するために、立体造形物の形状に基づき推定される造形層202の高さのばらつきに応じて、造形層202の面積や高さ(厚み)を調整することも考えられるが、ばらつきが大きくなると、調整が困難になる場合がある。
【0086】
これに対し、本実施形態では、溶融用レーザ光による加熱の前に平坦化ローラで造形層を平坦化するため、加熱前には必ず造形層の表面が平坦化され、造形精度が維持できるようになっている。
【0087】
<第1領域の各種決定例>
次に、
図7乃至
図9を参照して、領域決定部401(
図2参照)による第1領域の各種決定例を説明する。
【0088】
ここで、余剰造形材により形成される支持体は、造形物の造形に伴って高さが高くなると崩落する場合がある。崩落の際、支持体を構成する造形材の性質や堆積条件に応じて安息角を保って崩落させる方が好ましい。ここで、安息角とは、一定の高さから造形材を落下させて堆積させる場合、崩落を防いで安定性を保つために、 形成する造形材の山の斜面と水平面とのなす角度をいう。
【0089】
図7は、このような安息角を説明する図であり、造形物200及び支持体204の断面図である。
図7における支持体204の斜面と水平面とのなす角度が、安息角θに該当する。
【0090】
図7に示すように、造形物200は、最上面の高さまで側面が支持体204に支持されたほうが好ましい。造形層を平坦化する際に移動される余剰造形材も支持体204を構成するため、狙いの造形物に対する第1領域は、この安息角及び余剰造形材の量を考慮して決定されることが好ましい。
【0091】
ここで、
図8は、第1領域の決定例を説明する図であり、(a)は第1例を示す図、(b)は(a)のC-C矢視断面図、(c)は第2例を示す図、(d)は(c)のD-D矢視断面図、(e)は第3例を示す図、(f)は(e)のE-E矢視断面図である。また
図9は、第1領域の第4決定例を示す図である。
【0092】
図8(a)に示すように、造形物の狙いの寸法をx軸方向で幅X0、y軸方向で幅Y0、z軸方向で高さZ0とし、x軸方向における第1領域と第2領域の幅の差をX1+X2、y軸方向における第1領域と第2領域の幅の差をY1+Y2とする。また
図8(f)に示すように、最上面(z軸正方向)側の支持体204と造形物200のy軸方向における狙いの差をY4とし、最下面(z軸正方向)側をY3とする。
【0093】
図8(c),(d)に示すように、y軸負方向側に余剰造形材203を移動させ、造形物200のy軸負方向側の面を支持する支持粉体として機能させるが、幅Y2を幅Y1より小さくすることで、造形材の使用量を低減できる。
【0094】
差Y4は、造形材の着弾ばらつきを考慮して決めることが好ましい。例えば0.1乃至1mm程度が好適である。安息角θは次式で算出される値が目安となる。
θ=tan-1{Z0/(Y3-Y4)}
【0095】
図8(d)の側面図と、
図8(f)の側面図の間で、余剰造形材の体積保存を仮定すると、幅Y1は以下の式で算出される値が目安となる。
Y1=√{(Y3
2+Y3・Y4+Y4
2)/3}
長さX1及びX2についても同様でX1=X2=Y1でよい。
【0096】
また平坦化の際に、造形層202の表面(z軸正方向側)から除去する造形材の厚みをδZ(
図4(a)参照)とし、積層数をNとし、α=N・δZ/Z0、粉体層の加熱溶融前後での高さの比をβ(加熱後の高さを基準)とする。同様に、
図8(b)側面図、
図8(d)の側面図の間で、余剰造形材の体積保存を仮定すると、幅Y2は次式で算出できる。
Y2=(-α)・Y0/(α+β)+Y1・{2/(α+β)-1}
【0097】
幅Y2が0より小さくなる場合は、余剰造形材が支持体に必要な量に比べて多すぎることを意味し、Y2=0とすればよい。
【0098】
本実施形態では、造形層1層ごとに平坦化を行う場合を例示したが、造形層M層を形成し、加熱するたびに平坦化を行う場合は、α=N・δZ/(M・Z0)として計算すればよい。
【0099】
特に支持体は加熱及び溶融による高さの目減りがないため、支持体上の余剰造形材が多くなり、支持体の量が必要以上となりやすい。そのため、造形中に、
図8(a)の領域を第1領域202'にする層と、
図9のように第2領域200'より僅かに広い程度に絞った領域を第1領域202'にする層とを組み合わせることが好ましい。
【0100】
図9における幅X5と幅Y5は、幅Y4と同様に着弾ばらつきを考慮して決めることが好ましい。例えば0.1乃至1mm程度が好適である。
【0101】
全ての層数に対する第1領域を
図8(a)に示す領域とする層数の割合をγとし、
図9に示す領域とする層数を1-γとすると、幅Y2は次式で算出できる。
Y2=(-α)・Y0/{(α+β)・γ}+{2/{(α+β)・γ}-1}・Y1
【0102】
幅Y5は微小であるため、ここでの計算では無視している。なお、支持体の高さが不足しないように、γ>1/(α+β)であることが好ましい。Y2<0と計算される場合はY2=0とすればよい。
【0103】
以上、各パラメータの見積もり方を説明したが、造形層の崩れ等でばらつきが発生するので、多少余裕を持った値とすることが望ましい。
【0104】
<立体造形装置100の作用効果>
以上説明したように、本実施形態では、造形材を飛翔させて造形台上の第1領域に着弾させ、第1領域内の第2領域にある造形材を加熱し、第2領域にある造形材を支持する支持体を、余剰造形材により第2領域の周囲に形成する。
【0105】
例えば、要求造形精度、又は支持体として機能させるために必要な余剰造形材の量等に基づいて、第2領域を包含する第1領域を決定することで、余剰造形材により第2領域の周囲に支持体を形成する。
【0106】
或いは、平坦化ローラ等の移動部により余剰造形材を前記第2領域の周囲に移動させることで、余剰造形材により第2領域の周囲に支持体を形成する。
【0107】
余剰造形材を造形材として再利用するためには、余剰造形材を回収する手段が必要となり、装置が複雑化する場合がある。
【0108】
造形層の平坦化と同時に(並行して)余剰造形材を支持体として再利用することで、簡便な手段で余剰造形材を再利用しながら造形できる。また余剰造形材を再利用することで、造形材の無駄を低減できる。
【0109】
また、本実施形態では、移動部により余剰造形材を移動させる所定方向(移動方向203a)に応じて第1領域を決定する。より具体的には、第2領域の四方の周囲領域のうち、所定方向の周囲領域にある余剰造形材の量が、所定方向以外の方向の周囲領域にある余剰造形材の量より少なくなるように、第1領域を決定する。これにより、第2領域の四方の周囲領域にある余剰造形材の量を均等にすることができ、支持体の作用効果を均等に得ることができる。
【0110】
また本実施形態では、造形層の表面を平坦化する平坦化機構を有し、溶融用レーザ光による加熱の前に平坦化ローラで造形層を平坦化する。これにより、加熱前には必ず造形層の表面を平坦化でき、造形精度を維持できる。
【0111】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る立体造形装置100aについて説明する。なお、実施形態と説明したものと同一の構成部には同一の部品番号を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0112】
<立体造形装置100aの全体構成例>
図10は、立体造形装置100aの全体構成の一例を説明する図である。
図10に示すように、立体造形装置100aは、担持体フィルム111aと、繰り出しロール111Aと、巻取りロール111Bと、造形材供給ユニット112aと、平坦化ローラ113bと、反射板119とを有する。
【0113】
担持体フィルム111aは、造形ステージ301の上方(z軸正方向側)に配置され、造形材201を担持して移送するフィルム状の担持体である。担持体フィルム111aは、繰り出しロール111A及び巻取りロール111Bを含む複数のローラによって支持されている。担持体フィルム111aには、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリフッ化ビニリデン等を含んで構成された樹脂フィルム等を使用できる。
【0114】
繰り出しロール111Aから巻取りロール111Bに巻き取られることで、担持体フィルム111aが走行方向110に沿って走行し、担持した造形材201が造形ステージ301上に造形される造形物200の上方まで移送される。
【0115】
造形材供給ユニット112aは、担持体フィルム111aの周囲に配置され、担持体フィルム111aの表面に造形材201を供給する。造形材供給ユニット112aは、内部に造形材201が供給されて矢印方向に回転するメッシュローラ121aと、メッシュローラ121a内で造形材201を摺って擦るブレード123aとを有する。造形材供給ユニット112aは、ブレード123aで造形材201を摺って擦りながら凝集を解くことで、メッシュローラ121aを通過させ、担持体フィルム111aの周面に造形材201の薄層を形成する。
【0116】
メッシュローラ121aのメッシュの開目は造形材201の平均粒径より20~30%大きいものが好ましい。金属線を編んだものを使用できるが、電鋳などで作製されるフラットなメッシュがより好ましい。また、ブレード123aの当接方法は、トレーリングでもよいし、カウンタ等の他の当接方法でもよく、適宜選択可能である。メッシュの開目には、造形材201が詰まることがあるが、開目より細い繊維からなるブラシをメッシュローラ外周から接触させることで、詰まりを解消できる。
【0117】
反射板119は、溶融用レーザ光116aを偏向させることができる。反射板119として、誘電体多層膜で構成された反射ミラー等を用いることができる。
【0118】
平坦化ローラ113bは、y軸方向に往復移動可能に構成されている。ここで、
図11は、平坦化ローラ113bの動作の一例を説明する図であり、(a)は第1例を示す図、(b)は第2例を示す図である。
【0119】
図11(a)に示す例では、平坦化ローラ113bは、ローラ軸がx軸方向に沿うように配置される。造形材の飛翔による造形層202の形成が終了後、造形ステージ301をy軸正方向に沿う移動方向113dに移動させ、担持体フィルム111a、又は溶融用レーザ光の照射位置と干渉しない位置まで造形層202を移動させて停止する。
【0120】
次に、造形ステージ301と平坦化ローラ113bとのz軸方向における距離が所定値になるように造形ステージ301をz軸方向に上昇させる。この状態で平坦化ローラ113bをz軸負方向側に移動させて造形層202の表面に当接させて摺り切りをし、平坦化する。平坦化が終了後、造形ステージ301をz軸方向における所定高さまで下降させ、造形ステージ301をy軸負方向側に移動させる。その後、溶融用レーザによる加熱を行う。
【0121】
図11(b)に示す例では、造形層202を含む平面であるxy平面内において、平坦化ローラ113bのローラ軸が造形ステージ301の移動方向113dに対して傾くようにして、平坦化ローラ113bが配置されている。このようにすることで、余剰造形材をy軸方向だけでなく、x軸方向にも移動させることができる。
【0122】
平坦化する際の平坦化ローラ113bの移動方向を積層毎に入れ替えると、余剰造形材の移動先の偏りをなくせるため、より好適である。また1層ごとに造形層202の平坦化を行わずに、複数層の造形層を形成後に1回の平坦化を行うようにすると、1層ごとに平坦化を行わないため、造形時間を短縮できる。さらに、造形層202の形成及び造形層202の加熱溶融を複数回繰り返した後、造形層202を形成した後に平坦化を行ってもよい。これによりさらに造形時間を短縮できる。
【0123】
また、平坦化ローラ113bの周辺にスクレーパ等の構成を設けることもできる。
図12は、平坦化ローラ113bの周辺構成の一例を説明する図である。
図12に示すように、平坦化ローラ113bの周辺には、スクレーパ140と、余剰回収ケース141が設けられている。
【0124】
スクレーパ140は、平坦化ローラ113bの所定のクリーニング位置に設けられ、クリーニング位置まで移動された平坦化ローラ113bの表面に付着した余剰造形材を擦って除去することで、平坦化ローラ113bの表面をクリーニングする。
【0125】
余剰回収ケース141は、スクレーパ140により除去された余剰造形材を回収するケースである。
【0126】
<立体造形装置100aによる造形動作例>
図13は、立体造形装置100aによる造形動作例を説明するフローチャートである。
【0127】
まず、ステップS131において、飛翔用レーザ115は、担持体フィルム111aに飛翔用レーザ光115aを照射し、担持体フィルム111aに担持された造形材201を飛翔させる。飛翔した造形材201は、造形ステージ301又は造形物200上に着弾し、第1領域に造形層が形成される。
【0128】
続いて、ステップS132において、立体造形装置100aは、造形層の層数が平坦化を行う層数に達したか否かを判定する。
【0129】
ステップS132で達したと判定された場合には(ステップS132、Yes)、動作はステップS133に移行する。一方、達していないと判定された場合には(ステップS132、No)、動作はステップS134に移行する。
【0130】
続いて、ステップS133において、造形ステージ301は、y軸正方向に移動して平坦化を行う位置に到達後に停止する。その後、平坦化ローラ113bは、移動方向113dに沿って移動しながら造形層の表面に圧接して余剰造形材を移動させる。これにより、造形層の表面が平坦化される。
【0131】
続いて、ステップS134において、溶融用レーザ116は、溶融用レーザ光116aを照射して、造形層の表面における第1領域内の第2領域を加熱する。第2領域にある造形材201は、加熱により溶融し、造形ステージ301又は造形物200上に固着する。
【0132】
続いて、ステップS135において、立体造形装置100は、造形物200が所定の高さに達したか否かを判定する。
【0133】
ステップS135で、達したと判定された場合には(ステップS135、Yes)、動作は終了する。一方、達していないと判定された場合には(ステップS135、No)、動作はステップS131に戻り、ステップS131以降の処理が繰り返される。
【0134】
このようにして、立体造形物を造形することができる。
【0135】
以上、本発明の好ましい実施形態及び実施例について詳述したが、本発明はこれらの実施形態及び実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形又は変更が可能である。
【0136】
なお、実施形態は、造形材により形成される薄層である造形層を積み上げて造形する装置であれば、各種の造形方式のものに適用可能である。
【0137】
また、上記で用いた序数、数量等の数字は、全て本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明は例示された数字に制限されない。また、構成要素間の接続関係は、本発明の技術を具体的に説明するために例示するものであり、本発明の機能を実現する接続関係はこれに限定されない。
【0138】
また、実施形態は立体造形方法も含む。例えば、立体造形方法は、造形台上に立体造形物を造形する立体造形装置による立体造形方法であって、造形材を飛翔させて前記造形台上の第1領域に着弾させる工程と、前記第1領域内の第2領域にある前記造形材を加熱する工程と、前記第2領域にある前記造形材を支持する支持体を、余剰造形材により前記第2領域の周囲に形成する工程と、を行う。このような立体造形方法により、上述した立体造形装置と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0139】
100 立体造形装置
111 担持体ベルト
111a 担持体フィルム
111A 繰り出しロール
111B 巻取りロール
112 造形材供給ユニット
113 平坦化ローラ(移動部の一例、平坦化機構の一例)
114 支持体形成部
115 飛翔用レーザ(飛翔部の一例)
115a 飛翔用レーザ光
116 溶融用レーザ(加熱部の一例)
116a 溶融用レーザ光
117 クリーニングブレード
118 回収ケース
119 反射板
140 スクレーパ
141 余剰回収ケース
200 造形物
200' 第2領域
201 造形材
202 造形層
202' 第1領域
203 余剰造形材
204 支持体
301 造形ステージ
302 ヒータ
400 制御部
401 領域決定部
402 ステージ制御部
403 レーザ制御部
θ 安息角
【先行技術文献】
【特許文献】
【0140】