(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ワイヤハーネスの製造方法及びワイヤハーネスの製造装置
(51)【国際特許分類】
H01B 13/012 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
H01B13/012 Z
(21)【出願番号】P 2020163924
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓実
(72)【発明者】
【氏名】青木 克樹
(72)【発明者】
【氏名】藤本 憲一朗
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-055974(JP,A)
【文献】特開2020-009721(JP,A)
【文献】特開2003-022720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線が束ねられたワイヤハーネスの製造方法において、
測定対象の図形に関する図形データ、前記測定対象の前記図形データに基づく図形の
一次元方向の長さの数値を表した数値データ及び
前記ワイヤハーネスを構成する
前記複数の電線の配置を表した配置データを含む図面データに基づいて、あらかじめ決められた出力倍率に応じた大きさ
で、前記複数の電線が2次元的に配置される様子を表した第1ネイルボード図を出力する第1出力工程と、
前記第1出力工程により前記出力倍率で出力された前記第1ネイルボード図において表された前記図形データに基づく図形の
一次元方向の長さと、前記数値データとの差に基づいた補正倍率
で、前記第1ネイルボード図を縮小または拡大することにより、前記複数の電線が2次元的に配置される様子を表した第2ネイルボード図を出力する第2出力工程と、を有する、
ワイヤハーネスの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のワイヤハーネスの製造方法であって、
前記第1出力工程において出力される前記第1ネイルボード図及び前記第2出力工程において出力される前記第2ネイルボード図は、表示装置が備える少なくとも1つの表示画面に表示された画像である、
ワイヤハーネスの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載のワイヤハーネスの製造方法であって、
前記第1出力工程において出力される前記第1ネイルボード図及び前記第2出力工程において出力される前記第2ネイルボード図は、印刷装置により出力がなされた印刷物である、
ワイヤハーネスの製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のワイヤハーネスの製造方法であって、
入力装置により入力された前記補正倍率を取得する倍率取得工程を更に備え、
前記第2出力工程は、前記倍率取得工程により取得された前記補正倍率に応じて、前記第2ネイルボード図を出力する、
ワイヤハーネスの製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のワイヤハーネスの製造方法であって、
入力装置により入力された前記第1ネイルボード図に表された前記図形データが表す図形の長さと、前記数値データが示す前記測定対象の長さを取得する、長さ取得工程と、
前記長さ取得工程により取得された前記図形データが表す図形の長さと、前記数値データが示す前記測定対象の長さに基づいて前記補正倍率を算出する補正倍率算出工程を更に備え、
前記第2出力工程は、前記補正倍率算出工程により算出された前記補正倍率に応じて、前記第2ネイルボード図を出力する、
ワイヤハーネスの製造方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のワイヤハーネスの製造方法であって 前記図面データが表す前記第1ネイルボード図の形状は長方形状であって、前記図形データが表す図形は、長尺状に形成され、前記長尺状に形成された長手方向が、前記第1ネイルボード図の前記長方形状の長手方向に沿って配置される、
ワイヤハーネスの製造方法。
【請求項7】
複数の電線が束ねられたワイヤハーネスの製造装置において、
測定対象の図形データ、前記測定対象の
一次元方向の長さの数値を表した数値データ及び
前記ワイヤハーネスを構成する
前記複数の電線の配置を表した配置データを含む図面データに基づいて、あらかじめ決められた出力倍率に応じた大きさ
で、前記複数の電線が2次元的に配置される様子を表した第1ネイルボード図を出力するように構成された第1出力部と、
前記第1出力部により前記出力倍率で出力された前記第1ネイルボード図において表された前記図形データが表す図形の
一次元方向の長さと、前記数値データとの差に基づいた補正倍率
で、前記第1ネイルボード図を縮小または拡大することにより、前記複数の電線が2次元的に配置される様子を表した第2ネイルボード図を出力するように構成された第2出力部と、を有する、
ワイヤハーネスの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ワイヤハーネスの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車及び電車の車体や航空機の機体などに用いられるワイヤハーネスは、複数の電線を束ねて構成されている。ワイヤハーネスを製造する際には、ネイルボード図が用いられる。ここで、ネイルボード図とは、製造されるワイヤハーネスの形状、言い換えると、ワイヤハーネスを構成する電線の配置を表した図である。あらかじめ設定した電線長となるように各電線が切断され、ネイルボード図に表された電線の配置に沿って、複数の電線が布設される。そして、布設された電線や電線束のあらかじめ決められた位置に部品が取り付けられることにより、ワイヤハーネスの製造が行われる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ネイルボード図は、図面データに基づいて出力される。図面データに基づいたネイルボード図の出力は、例えば、紙への図面の印刷や表示画面への図面を表した画像の表示により行われる。ネイルボード図には、電線が布設されるため、ワイヤハーネスの実寸と同じ大きさに出力されることが好ましい。
【0005】
しかしながら、印刷又は表示により出力されるネイルボード図は、図面データが表す大きさと異なる大きさに拡大又は縮小されて出力される可能性がある。言い換えると、ワイヤハーネスを形成するために布設される電線の大きさと、出力されたネイルボード図が表す電線の大きさとが異なる可能性がある。特に、電車の車体や航空機の機体などに用いられるワイヤハーネスは、自動車の車両に用いられるワイヤハーネスに比べて大きい。そのため、出力されたネイルボード図が実寸の大きさと異なる大きさとなる倍率に拡大又は縮小されて出力された場合には、その倍率の影響が大きい。これにより、ワイヤハーネスを形成するために布設される電線の大きさと、出力されたネイルボード図が表す電線の大きさとが大きく異なることとなる。
【0006】
本開示は、出力されるネイルボード図の図面又は画像において表されたワイヤハーネスを構成する電線の大きさと、布設されるワイヤハーネスの材料となる電線との大きさとの誤差を低減する、ワイヤハーネスを製造する製造方法及び製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、ワイヤハーネスの製造方法であって、第1出力工程と、第2出力工程と、を有する。第1出力工程では、測定対象の図形に関する図形データ、測定対象の図形データに基づく図形の長さの数値を表した数値データ及びワイヤハーネスを構成する電線の配置を表した配置データを含む図面データに基づいて、あらかじめ決められた出力倍率に応じた大きさの第1ネイルボード図を出力する。第2出力工程では、第1出力工程により出力倍率で出力された第1ネイルボード図において表された図形データに基づく図形の長さと、数値データとの差に基づいた補正倍率に応じた大きさの第2ネイルボード図を出力する。
【0008】
このような構成によれば、第2ネイルボード図は、補正倍率で補正されることにより、図面上の長さと測定された長さとの誤差を低減された状態で出力される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態における製造システムの構成の一例を表したブロック図である。
【
図2】本実施形態における、鉄道車両の車体に搭載された機器の間をつなぐ電線501が複数束ねられたワイヤハーネス500の構成の一例を表した模式図である。
【
図3】本実施形態における製造装置の構成の一例を表した模式図である。
【
図5】作成されるネイルボード図の一例を表した図である。
【
図6】印刷装置を備える製造システムの変形例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[1.構成]
この開示の一実施形態に係るワイヤハーネス500の製造方法及び製造システム1について、
図1から
図5を参照しながら説明する。本実施形態では、本開示の製造システム1が鉄道車両(移動体)の車体に配線されるワイヤハーネス500の製造に用いられるシステムである例に適用して説明する。
【0011】
図2は、本実施形態における、鉄道車両の車体に搭載された機器の間をつなぐ電線501が複数束ねられたワイヤハーネス500の構成の一例を表した模式図である。
電線501は、接続された機器の間で電力や電気信号などを伝える。電線501の端部には、接続される機器に対応した形状を有するコネクタ502が取り付けられている。
【0012】
ワイヤハーネス500には、複数の電線501を束ねて拘束する拘束部材503が設けられている。拘束部材503としては、粘着テープや、チューブ、結束バンドなどの樹脂製の結束部材や、金属製の結束部材や、ロウ引き紐などを例示することができる。なお、結束部材には貫通孔が設けられていてもよい。貫通孔は、結束部材により束ねられたワイヤハーネス500を、鉄道車両の車体に固定する際に用いられるボルトなどの固定部材が挿通されるものである。
【0013】
本実施形態では、拘束部材503が粘着テープである例に適用して説明する。ワイヤハーネス500における複数の電線501が束ねられた部分を幹線511、幹線511から電線501が分かれる位置を分岐点512、幹線511から分かれた先の部分を枝線513とも表記する。
【0014】
図1及び
図3を用いて製造システム1の構成及び製造装置200の構成について説明する。
図1は、本実施形態における製造システム1の構成の一例を表したブロック図である。また、
図3は、本実施形態における製造装置200の構成の一例を表した模式図である。
【0015】
製造システム1には、
図1及び
図3に示すように、ワイヤハーネス500の製造を行う製造装置200を有している。また、製造システム1には、更に、ワイヤハーネス500の設計を行う設計装置100を有する例に適用して説明する。設計装置100及び製造装置200の間は、専用の情報通信回線又は情報通信網を介して情報通信可能に接続されている。
【0016】
設計装置100は、例えば、仮想の空間である設計空間の中でワイヤハーネス500の設計を行い、図面データを作成するものである。本実施形態では設計装置100が、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するパーソナルコンピュータやサーバなどの情報処理機器である例に適用して説明する。
【0017】
なお、図面データを出力できる構成であれば、設計装置100に限定されるものではなく、例えば、図面データを記憶する構成であってもよい。また、図面データを記憶する構成は、設計装置100に備えられるものに限定されるものではなく、製造装置200に備えられてもよい。
【0018】
図面データには、出力されるネイルボード図を表したデータが含まれる。ネイルボード図を表したデータには、測定対象の図形データと、測定対象の長さの数値を表した数値データと、ワイヤハーネス500のデータとが含まれる。
【0019】
ここでいう測定対象の図形データとは、長さを測定される対象となる図形をネイルボード図に出力するためのデータである。すなわち、測定対象の図形データは図形の形状そのものを表すものであってもよい。また図形データは、図形を表示可能なように数値で表したデータであってもよい。すなわち、図形データは当該図形データに基づいて図形を出力可能な者であればよい、測定対象の図形データが表す図形は、本実施形態では、出力されるネイルボード図において定規のように長尺状に表される例に適用して説明する。また、測定対象の図形データが表す図形は、図面の輪郭を構成する四辺の内の一つの辺に沿って配置されるものであってもよい。さらに、測定対象の図形データが表す図形の長手方向は、例えば、図面データが表す図面が長方形に形成されている場合には、当該長方形の長手方向に沿って配置される。
【0020】
数値データは、測定対象の2点の間の長さを少なくとも表す数値である。また、測定対象の図形データが表す図形が定規のように長尺状に表されるものである場合には、図形データが表す当該長尺状の図形の長手方向に沿った長さを示すものであってもよい。
【0021】
ワイヤハーネス500のデータには、ワイヤハーネス500を構成する電線501の配置を表した情報である配置データが含まれる。配置データは、当該ワイヤハーネス500の幹線511の長さ情報や、分岐点512の位置情報や、枝線513の長さ情報などのワイヤハーネス500の形状に関する情報である。また、ワイヤハーネス500のデータには、当該ワイヤハーネス500を2次元図面として表示可能な情報が含まれる。さらに、ワイヤハーネス500のデータには、当該ワイヤハーネス500を構成する電線501の長さの情報が含まれる。
【0022】
また、ワイヤハーネス500のデータには、当該ワイヤハーネス500を構成する電線501の径情報や、枝線513を構成する電線501を特定する情報など、ワイヤハーネス500を構成する電線501に関する情報が含まれてもよい。
【0023】
図面データには、さらに電線501の分岐の位置に拘束する拘束部材情報が含まれてもよい。拘束部材情報には、拘束部材503の種類の情報、拘束する回数である巻き数の情報、拘束した後の電線501の束の外径の情報、拘束部材503の長さ(使用量)、拘束する位置の情報が含まれていてもよい。
【0024】
また、図面データには、ハーネス用デジタルボード情報を含んでいてもよい。ハーネス用デジタルボード情報には、例えば、ワイヤハーネス500を構成する電線501を特定する情報や、電線501に取り付けられるコネクタ502を特定する情報が含まれてもよい。
【0025】
図面データには、出力される対象であるボード表示部202の大きさに関するサイズ情報が含まれていてもよい。ボード表示部202の詳細は後述するが、ボード表示部202は、図面データが表示される表示面であり、ハーネス用デジタルボード201におけるワイヤハーネス500を作成する際に電線501が置かれる(布設される)配置面でもある。
【0026】
製造装置200は、ワイヤハーネス500を製造に用いられる。製造装置200は、
図1及び
図3に示すように、ハーネス用デジタルボード201と、制御用コンピュータ211と、データサーバ221と、を備える。
【0027】
ハーネス用デジタルボード201は、ワイヤハーネス500の製造に用いられる机状に形成されたものである。ハーネス用デジタルボード201には、ワイヤハーネス500の製造に用いられる作業台でもあるボード表示部202が設けられている。ハーネス用デジタルボード201を構成するボード表示部202の数は複数であってもよい。ボード表示部202は、それぞれ外形形状が四角形に形成され、それぞれの辺同士が接することにより、ハーネス用デジタルボード201を構成してもよい。
【0028】
ボード表示部202は、ワイヤハーネス500の製造に必要な広さ及び長さを有する面である。ボード表示部202は、ワイヤハーネス500が製造される面であるとともに、デジタル情報である図面データが表示される表示面でもある。ボード表示部202は制御用コンピュータ211と情報通信可能に接続され、表示する図面データに関する情報が制御用コンピュータ211から送られている。
【0029】
ハーネス用デジタルボード201は、製造されるハーネスの長さに応じた大きさのものが用いられてもよい。例えば、製造されるハーネスの大きさがより大きいものを製造する場合には、より大きいハーネス用デジタルボード201が用いられてもよい。ここで、ハーネス用デジタルボード201の大きさは、例えば、ハーネス用デジタルボード201を構成するボード表示部202の枚数を多くすることにより実現してもよく、ハーネス用デジタルボード201を構成するボード表示部202のそれぞれの大きさをより大きくすることで実現してもよい。
【0030】
本実施形態では、ボード表示部202の表示面が液晶ディスプレイである例に適用して説明する。なお、ボード表示部202の表示面は、上述の液晶ディスプレイに限られるものではなく、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイであってもよいし、プロジェクターによりネイルボード図が投影される投影面であってもよい。
【0031】
制御用コンピュータ211は、ハーネス用デジタルボード201におけるネイルボード図の表示を制御するものである。
本実施形態では制御用コンピュータ211が、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するパーソナルコンピュータなどの情報処理機器である例に適用して説明する。
【0032】
上述のROM等の記憶装置に記憶されているプログラムは、
図3に示すように、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェースを協働させて入出力部212、制御部213として機能させるものである。
【0033】
入出力部212は、設計装置100、ボード表示部202、データサーバ221と情報通信可能に接続されるものである。本実施形態では、入出力部212とボード表示部202及びデータサーバ221との間は、例えば、LAN(Local Area Network)ケーブル等を用いた方式による有線情報通信が可能に接続され、入出力部212と設計装置100との間は、情報通信網を用いた情報通信が可能に接続される例に適用して説明する。
【0034】
制御部213は、ボード表示部202の動作を制御する制御信号を生成するものである。また、制御部213は、データサーバ221にワイヤハーネス500の製造に関する情報を記憶させるものである。
【0035】
データサーバ221は、LANケーブル等で構成された情報通信網を介して制御用コンピュータ211と情報通信可能に接続されたサーバである。本実施形態ではデータサーバ221が、CPU(中央演算処理ユニット)、ROM、RAM、入出力インタフェース等を有するサーバなどの情報処理機器である例に適用して説明する。
【0036】
上述のROM等の記憶装置に記憶されているプログラムは、
図3に示すように、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェースを協働させて記憶部222として機能させるものである。記憶部222は、制御用コンピュータ211が取得した作業履歴や検査結果などのワイヤハーネス500の製造に関する情報を記憶するものである。また、記憶部222は、図面データを含む製造に用いられる情報を記憶するものであってもよい。
【0037】
なお、ハーネス用デジタルボード201が表示装置としての構成の一例に相当し、ボード表示部202が表示画面としての構成の一例に相当する。
[2.作用]
次に、制御部213が実行するネイルボード図の出力処理について
図4を参照しながら説明する。
【0038】
S110で、制御部213は、設計装置100から図面データの取得を行う。設計装置100から図面データの取得は、製造装置200から設計装置100に図面データを要求することにより取得されるものであってもよく、設計装置100に所定の操作をし、図面データを製造装置200に送信することにより、製造装置200に図面データを取得させるものであってもよい。なお、図面データの取得は、設計装置100から行うものに限定されるものではなく、あらかじめ製造装置200に記憶されているデータを取得するものであってもよい。製造装置200における図面データの記憶は、例えば、記憶部222にされるものであってもよい。
【0039】
S120で、制御部213は、S110で取得した図面データに基づいて、ハーネス用デジタルボード201に第1ネイルボード図の出力を行う。第1ネイルボード図は、測定対象の図形データ、測定対象の長さの数値を表した数値データ及びハーネスを構成する電線501の配置を表した配置データを含む図面データに基づいて、あらかじめ決められた出力倍率に応じた大きさで使用可能な態様でハーネス用デジタルボード201が備えるボード表示部202に表示される。すなわち、本実施形態では、第1ネイルボード図は、ボード表示部202に表示する画像で表される。ここでいう使用可能な態様とは、少なくともハーネス用デジタルボード201に電線501を布設し、ワイヤハーネス500を製造できる態様をいう。
【0040】
また、本実施形態では、第1ネイルボード図の表示はハーネス用デジタルボード201のボード表示部202には、表示による誤差、言い換えると出力倍率の誤差がない場合には、図面データにより表示されるワイヤハーネス500は、ワイヤハーネス500の長さ方向において、実物のワイヤハーネス500と同じ長さ(実寸大又は1/1スケール)で表示される。すなわち、第1ネイルボード図は、表示による誤差が許容された画像である。
【0041】
なお、ここでいう表示による誤差とは、図面データの表す長さと、表示された第1ネイルボード図における長さとの間に生じる誤差のことをいう。
また、本実施形態では、第1ネイルボード図は、使用可能な態様で、ハーネス用デジタルボード201のボード表示部202に表示される例に適用して説明する。ここでいう使用可能な態様での表示とは、当該表示に沿ってワイヤハーネス500の材料である電線501を布設できる大きさに表示されるものをいう。なお、第1ネイルボード図は、使用可能な態様で表示されるものに限定されるものではなく、少なくとも測定対象の図形データが表す図形の長さが作業者により測定可能な態様で表示されるものであればよい。以下では、S120での処理を第1出力処理とも表記する。
【0042】
S130で、制御部213は、製造装置200に対する入出力部212を用いた入力を待機する。S130において、製造装置200に対する入力を待機している状態を、以下では入力待機状態とも表記する。
【0043】
ここで、製造装置200に対する入力は、補正倍率の入力である例に適用して説明する。
補正倍率は、数値データと、第1ネイルボード図における測定対象の図形データが表す図形の長さの差に基づく値である。すなわち、第1出力工程により出力倍率で出力された第1ネイルボード図において表された測定対象の図形データが表す図形の長さと、第1ネイルボード図において表された数値データが示す測定対象の長さとの差に基づいた値である。具体的には、第1出力工程により出力倍率で出力された第1ネイルボード図において表された測定対象の図形データが表す図形の長さと、第1ネイルボード図において表された数値データが示す測定対象の長さとの比率又は割合、数値データを測定された長さで割った商により求められてもよい。
【0044】
例えば、測定対象の数値データが表す長さを1とした場合に、第1ネイルボード図において表された測定対象の図形データが表す図形の長さの比率が1.05であった場合、当該1.05の逆数である、0.952…が補正倍率として求められる。また、例えば、測定対象の数値データが表す長さが1000mmに対して、第1ネイルボード図において、測定された長さが、990mmであった場合に、補正倍率を1000mm/990mmとして1.01として算出してもよい。
【0045】
なお、補正倍率の計算はこのような計算方法に限定されるものではなく、出力された第1ネイルボード図における測定対象の図形データが表す図形の長さと数値データが表す測定対象の長さの差が小さくなるように乗算されるものであればよい。すなわち、補正倍率は、数値データが表す測定対象の長さと、出力されたネイルボード図における測定対象の図形データが表す図形の長さの差が小さくなるように補正する倍率である。
【0046】
また、製造装置200に対する補正倍率の入力は、入出力部212を用いた入力であってもよい。ここで、補正倍率の入力は、補正倍率そのものを入力するものであってもよく、補正倍率を算出するために必要となる第1ネイルボード図における測定対象の図形データが表す図形の長さを入力するものであってもよい。さらに、数値データが表す長さの数値値を入力するものであってもよい。また、数値データが表す長さの値が固定されており、当該長さに対応した測定対象の図形データが表す図形の部分の長さを測定し、測定された対象の部分の長さを入力することにより補正倍率を算出するものであってもよい。
【0047】
また、ここでは、製造装置200を操作する作業者が入力を行う例に適用して説明したが、製造装置200を操作する作業者が入力するものに限定するものではなく、例えば、撮像装置などを用いて、S120で出力された第1ネイルボード図を撮像し、当該撮像装置から当該測定対象の図形データが表す図形の長さを取得し、補正倍率を算出する構成であってもよい。
【0048】
S140で、制御部213は、入力待機状態において、作業者から製造装置200への補正倍率の入力、又は補正倍率を算出するために必要な値の入力があったか否かを判定する。
【0049】
制御部213は、S140で、入力待機状態において、作業者から製造装置200への入力が無かったと判定した場合には、引き続きS140での処理を実行し続ける。すなわち、制御部213は、入力待機状態を継続する。
【0050】
一方、制御部213は、S140で、補正倍率の入力があったと判定した場合には、S150に処理を移行する。
S150で、制御部213は、補正倍率の取得を行う。具体的には、S140で入力された補正倍率を取得する。
【0051】
S160で、制御部213は、出力倍率の補正を行う。出力倍率の補正は、例えば、S120で第1出力を行った際の倍率を出力倍率として、当該出力倍率に補正倍率を乗算させることにより行われてもよい。なお、S120での出力倍率が等倍であった場合、すなわち、図面データにおいてサイズが定められ、そのサイズの図面データをそのまま出力した場合には、S160においては、S120での出力倍率を補正倍率に置き換えることにより、出力倍率の補正が行われてもよい。
【0052】
S170で、制御部213は、S160において補正された出力倍率にて、ネイルボード図の出力を行い、出力処理を終了する。以下では、S170で出力されるネイルボード図を第2ネイルボード図とも記載する。また、S170での処理を第2出力処理とも記載する。第2ネイルボード図の出力は、S120と同様に、ハーネス用デジタルボード201に表示される。
【0053】
なお、S120での第1出力処理が第1出力工程の一例に相当し、S150での処理が倍率取得工程の一例に相当する。S160での第2出力工程が第2出力工程の一例に相当する。
【0054】
[3.効果]
(1)上記実施形態において、第1出力工程では、測定対象の図形データ、測定対象の長さの数値を表した数値データ及びハーネスを構成する電線501の配置を表した配置データを含む図面データに基づいて、あらかじめ決められた出力倍率に応じた大きさの第1ネイルボード図を使用可能な態様で出力する。第2出力工程では、第1出力工程により出力倍率で出力された第1ネイルボード図において表された測定対象の図形データが表す図形の長さと、第1ネイルボード図において表された数値データが示す測定対象の長さとの差に基づいた補正倍率に応じた大きさの第2ネイルボード図を使用可能な態様で出力する。
【0055】
このような構成によれば、補正倍率で補正された第2ネイルボード図は、補正倍率で補正されることにより、図面上の長さと測定された長さとの誤差が低減される。その結果、電線501を布設させ、作成されたワイヤハーネスにおいて、ワイヤハーネスを構成する電線501同士の位置のずれを低減させやすくすることができる。また、作成されたワイヤハーネスにおける電線の長さと、図面データにおける電線の長さとの誤差を低減することができる。
【0056】
(2)上記実施形態では、第1出力工程において出力される第1ネイルボード図及び第2出力工程において出力される第2ネイルボード図は、ハーネス用デジタルボード201が備える少なくとも1つのボード表示部202に使用可能な態様で表示された画像である。
【0057】
このような構成によれば、表示部202に表示がなされ、補正倍率により誤差が低減された第2ネイルボード図に電線501を布設し、部品を取り付けることによりワイヤハーネス500を製造することができる。
【0058】
(3)上記実施形態では、S150で入力装置により入力された補正倍率を取得する倍率取得工程を備える。S170での第2出力処理に相当する第2出力工程では、倍率取得工程により取得された補正倍率に応じた大きさの第2ネイルボード図が出力される。
【0059】
このような構成によれば、入力された補正倍率に応じて第2ネイルボード図の出力される大きさを補正することができるため、図面上の長さと測定された長さの誤差を低減させることができる。
【0060】
(4)上記実施形態では、図面データが表す第1ネイルボード図の形状は長方形状であって、測定対象の図形データが表す図形は、長尺状に形成され、長尺状に形成された長手方向が、第1ネイルボード図の長方形状の長手方向に沿って配置されてもよい。
【0061】
このような構成によれば、第1ネイルボード図において表示された長さと、図面データの長さとの誤差を測定しやすくすることができる。すなわち、長尺方向の方が拡大又は縮小がなされた際に受ける影響が大きい。このため、図面データにおける長さと、出力された第1ネイルボード図における長さとの間に生じている誤差の測定が行いやすくすることができる。
【0062】
[4.他の実施形態]
(1)本開示の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0063】
(2)上記実施形態では、第1ネイルボード図及び第2ネイルボード図の出力は、ハーネス用デジタルボード201に備えられるボード表示部202への表示によりなされる。しかしながら、第1ネイルボード図及び第2ネイルボード図の出力は、ハーネス用デジタルボード201に備えられるボード表示部202への表示によりなされるものに限定されるものではない。変形例として、
図6に印刷装置300を備える製造システム2の例を示す。例えば、
図6に示すように製造システム2は、印刷装置300を備え、当該印刷装置300から、第1ネイルボード図及び第2ネイルボード図が印刷により出力されるものであってもよい。すなわち、製造システム2は、
図6に示すように、ハーネス用デジタルボード201の代わりに印刷装置300が設けられるものであってもよく、ハーネス用デジタルボード201と共に印刷装置300が備えられてもよい。
【0064】
言い換えると、上記実施形態では、第1出力工程において第1ネイルボード図及び第2出力工程において第2ネイルボード図はハーネス用デジタルボード201に備えられるボード表示部202に出力される画像である。しかしながら、第1ネイルボード図及び第2ネイルボード図は、画像として表示されるものに限定されるものではなく、それぞれ印刷装置300により出力がなされた印刷物であってもよい。また、印刷により出力される、ハーネス用デジタルボード201の代わりにネイルボードが用いられてもよい。ネイルボードは、ネイルボード図である第1ネイルボード図及び第2ネイルボード図を貼り付け、貼り付けられたネイルボード図に沿って電線501を布設させることができるように用いられてもよい。
【0065】
(3)上記実施形態では、入力装置を用いて入力された補正倍率をS150において制御部213は取得する。しかしながら、制御部213は補正倍率を直接取得するものに限定されるものではない。具体的には、長さ取得工程と補正倍率算出工程とを備えてもよい。長さ取得工程では、入力装置により入力された第1ネイルボード図に表された測定対象の図形データが表す図形の長さを取得する。また、数値データが示す測定対象の長さを取得する。補正倍率算出工程では、数値データが示す測定対象の長さに基づいて補正倍率を算出する。そして、第2出力工程は、補正倍率算出工程により算出された補正倍率に応じて、第2ネイルボード図を出力してもよい。
【0066】
このような構成によれば、補正倍率を入力するために測定対象の図形データが表す図形の長さと数値データとを用いて算出する必要がない。また、入力するための補正倍率を算出する過程において、算出に誤りが生じる可能性を低減させることができる。
【0067】
(4)上記実施形態では、本開示の製造システム1が鉄道車両(移動体)の車体に配線されるワイヤハーネス500を製造するシステムである例に適用して説明した。
しかしながら、製造システム1の製造の対象となるワイヤハーネス500は鉄道車両の車体に配線されるものに限定されない。製造システム1の製造の対象は、例えば、航空機などの機体に配線されるものであってもよい。
【0068】
また、自動車の車体よりも一般的に大きい航空機の機体や鉄道車両の車体は大きいため、航空機の機体や鉄道車両の車体に配線されるワイヤハーネス500は、自動車の車体に配線されるワイヤハーネス500よりも長いものが用いられる。そのため、より長いワイヤハーネス500のネイルボード図が実寸大と異なる倍率で出力された際には、より誤差が大きくなるが、本開示の製造システムを用いて倍率を補正することにより、出力されるワイヤハーネス500のネイルボード図の誤差を小さくすることができる。
【0069】
しかしながら、製造システム1が製造する対象となるワイヤハーネス500は、自動車の車体よりも一般的に大きい航空機の機体や鉄道車両の車体に適用されるものに限定されるものではなく、自動車の車体に用いられるワイヤハーネスの製造に用いられてもよい。例えば、大型車両の車体に配線されるワイヤハーネスの製造に用いられるものでもあってもよく、一般的な車両、小型車両の車体に配線されるワイヤハーネスの製造に用いられてもよい。
【0070】
(5)上記実施形態では、測定対象の図形データが表す図形は、第1ネイルボード図において、定規のような長尺状の表示で表されるが、測定対象の図形データが表す図形は、そのような表示態様で表示されるものに限定されるものではない。また、出力された第1ネイルボード図において、長さが測定できるものであればよく、例えば、電線の一部の長さの決められた範囲を測定対象の図形データが表す図形として設定するものであってもよい。
【0071】
(6)上記実施形態における、測定対象の図形データが表す図形の長さの測定や補正倍率の算出、ワイヤハーネス500の製造は、機械を用いて自動的になされるように構成されていてもよい。
【0072】
(7)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【符号の説明】
【0073】
1,2…製造システム、100…設計装置、200…製造装置、201…ハーネス用デジタルボード、202…ボード表示部、211…制御用コンピュータ、212…入出力部、213…制御部、221…データサーバ、222…記憶部、300…印刷装置、500…ワイヤハーネス、501…電線、502…コネクタ、503…拘束部材、511…幹線、512…分岐点、513…枝線。