IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友大阪セメント株式会社の特許一覧

特許7528691光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置
<>
  • 特許-光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置 図1
  • 特許-光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置 図2
  • 特許-光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置 図3
  • 特許-光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置 図4
  • 特許-光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置 図5
  • 特許-光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置 図6
  • 特許-光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置 図7
  • 特許-光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置 図8
  • 特許-光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置 図9
  • 特許-光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置 図10
  • 特許-光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置 図11
  • 特許-光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置 図12
  • 特許-光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置 図13
  • 特許-光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置 図14
  • 特許-光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/035 20060101AFI20240730BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20240730BHJP
   G02F 1/01 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G02F1/035
G02B6/122 311
G02F1/01 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020165003
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022056980
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【弁理士】
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】平田 章太郎
(72)【発明者】
【氏名】高野 真悟
(72)【発明者】
【氏名】片岡 優
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111458793(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0045686(US,A1)
【文献】特開2010-230741(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0184792(US,A1)
【文献】特開2005-241711(JP,A)
【文献】特開2020-091378(JP,A)
【文献】特開2016-090711(JP,A)
【文献】米国特許第07643710(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第110632702(CN,A)
【文献】特開平07-074396(JP,A)
【文献】米国特許第09547129(US,B1)
【文献】特開2015-206969(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0384003(US,A1)
【文献】米国特許第06571039(US,B1)
【文献】特開2006-284961(JP,A)
【文献】特開2016-071256(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00 - 1/125
G02F 1/21 - 7/00
G02B 6/12 - 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する材料で形成される層にリブ部を設け、該リブ部がリブ型の光導波路を構成し、前記電気光学効果を有する材料で形成される層を支持する補強基板とを備えた光導波路素子において、
前記リブ型の光導波路の一端には、前記リブ型の光導波路に連続してスポットサイ変換部分が設けられており、
該スポットサイ変換部分は、前記リブ型の光導波路の一端が該補強基板の端面に向かって幅が細くなるテーパー部を含む上側の光導波路部分と、
該リブ部の両側にある前記電気光学効果を有する材料で形成される層を削って形成され、該補強基板の該端面に向かって幅が細くなるテーパー部を含む下側の光導波路部分とを備え、
該補強基板の該端面の付近では、前記下側の光導波路部分の下側にある該補強基板の厚みよりも、該補強基板の厚みがより薄く設定され、かつ、前記下側の光導波路部分のテーパー部の形状に合わせて、該補強基板が薄く構成されており、
また、前記上側の光導波路部分のテーパー部と前記下側の光導波路部分のテーパー部とを共に覆い、該補強基板を構成する材料より屈折率の高い材料で構成した構造体を備え、さらに、該構造体を覆うように、該構造体を構成する材料より屈折率の低い材料で構成した被覆層を配置して構成され、
前記上側の光導波路部分の幅は、前記下側の光導波路部分の幅よりも常に狭くなるよう構成されていることを特徴とする光導波路素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光導波路素子において、該被覆層は接着剤で構成され、該被覆層は、該構造体の上側に配置される上側補強基板を、該光導波路や該構造体が形成された該補強基板側に接合する接着層として機能することを特徴とする光導波路素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光導波路素子は、該光導波路素子は筐体内に収容され、該光導波路素子に光波を入力又は出力する光ファイバを備えることを特徴とする光変調デバイス。
【請求項4】
請求項に記載の光変調デバイスにおいて、前記リブ型の光導波路を伝搬する光波のモードフィールド径は、3μmより小さく、該光ファイバのモードフィールド径は、3μm以上であることを特徴とする光変調デバイス。
【請求項5】
請求項又はに記載の光変調デバイスにおいて、該光導波路素子は前記リブ型の光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極を備え、該光導波路素子の変調電極に入力する変調信号を増幅する電子回路を該筐体の内部に有することを特徴とする光変調デバイス。
【請求項6】
請求項乃至のいずれかに記載の光変調デバイスと、該光変調デバイスに変調動作を行わせる変調信号を出力する電子回路とを有することを特徴とする光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置に関し、特に、電気光学効果を有する材料で形成されるリブ型の光導波路と、該光導波路を支持する補強基板とを備えた光導波路素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信分野における情報量の増大に伴い、長距離伝送の光通信だけでなく、都市間やデータセンター間に用いている光通信の高速化、大容量化が望まれている。しかも、基地局のスペースによる制限もあることから、光変調器の高速化と小型化に対するニーズが高くなっている。
【0003】
特に、光変調器の小型化には、光導波路の光閉じ込め効果を強くすることで、光導波路の曲げ半径を小さくし、例えば、光導波路素子に入射する光波と出射する光波の方向を90度又は180度曲げるなど、小型化に適した光変調器を作製することができる。このような光閉じ込めを強くするには、例えば、伝搬する光波のモードフィールド径(MFD)を3μm以下に設定するなど、光導波路の微細化が有効である。
【0004】
電気光学効果を有するLiNbO(以下、LN)は、電気信号を光信号に変換する際に、歪みが少なく、光損失が低いことから、長距離向け光変調器として用いられているが、従来の光導波路のMFDは10μm程度であり、曲げ半径は数10mmと大きいことから、小型化が困難であった。しかしながら、近年では、研磨技術、貼り合わせ技術の向上によりLN薄板化が可能となり、MFDが1μm程度のLN光導波路素子の研究開発が進んでいる。
【0005】
一方、光ファイバのMFDは10μm程度であり、3μmよりも小さいMFDを有する微細光導波路を含む光導波路素子において、素子端面より光を入射する際に、光ファイバを素子端面に直接接合した場合、大きな挿入損失が発生する。この不具合を解消するには、入射する光波に対しては、MFDが3μm以上のスポットサイズの光波を、MFDが3μm以下に絞り込み、また、出射する光波に対しては、逆に拡大するスポットサイズ変換器(SSC)をチップ内に設けることが検討されている。
【0006】
一般的なSSCは、特許文献1乃至3に示すように、光導波路の端部に向かって、二次元的または三次元的に光導波路の幅や厚みを拡大するテーパー型が用いられる。この方法のメリットは、デザインが簡易であることが挙げられるが、光導波路を広げることで、マルチモードを誘起してしまうことから、使用可能なデザインに制限があり、光変調器には向いていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開WO2012/042708号
【文献】国際公開WO2013/146818号
【文献】特許第6369036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、光導波路素子の小型化を図りながら、光ファイバ等との結合に係る挿入損失を抑制した光導波路素子を提供することである。さらには、その光導波路素子を用いた光変調デバイス並びに光送信装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の光導波路素子及びそれを用いた光変調デバイス並びに光送信装置は、以下の技術的特徴を有する。
【0010】
(1) 電気光学効果を有する材料で形成される層にリブ部を設け、該リブ部がリブ型の光導波路を構成し、前記電気光学効果を有する材料で形成される層を支持する補強基板とを備えた光導波路素子において、前記リブ型の光導波路の一端には、前記リブ型の光導波路に連続してスポットサイズ変換部分が設けられており、該スポットサイズ変換部分は、前記リブ型の光導波路の一端が該補強基板の端面に向かって幅が細くなるテーパー部を含む上側の光導波路部分と該リブ部の両側にある前記電気光学効果を有する材料で形成される層を削って形成され、該補強基板の該端面に向かって幅が細くなるテーパー部を含む下側の光導波路部分とを備え、該補強基板の該端面の付近では、前記下側の光導波路部分の下側にある該補強基板の厚みよりも、該補強基板の厚みがより薄く設定され、かつ、前記下側の光導波路部分のテーパ部の形状に合わせて、該補強基板が薄く構成されており、また、前記上側の光導波路部分のテーパー部と前記下側の光導波路部分のテーパー部とを共に覆い、該補強基板を構成する材料より屈折率の高い材料で構成した構造体を備え、さらに、該構造体を覆うように、該構造体を構成する材料より屈折率の低い材料で構成した被覆層を配置して構成され、前記上側の光導波路部分の幅は、前記下側の光導波路部分の幅よりも常に狭くなるように構成されていることを特徴とする。
【0012】
) 上記(1)に記載の光導波路素子において、該被覆層は接着剤で構成され、該被覆層は、該構造体の上側に配置される上側補強基板を、該光導波路や該構造体が形成された該補強基板側に接合する接着層として機能することを特徴とする。
【0015】
) 上記(1)又は(2)に記載の光導波路素子は、該光導波路素子は筐体内に収容され、該光導波路素子に光波を入力又は出力する光ファイバを備えることを特徴とする光変調デバイスである。
) 上記()に記載の光変調デバイスにおいて、前記リブ型の光導波路を伝搬する光波のモードフィールド径は、3μmより小さく、該光ファイバのモードフィールド径は、3μm以上であることを特徴とする。
【0016】
) 上記()又は()に記載の光変調デバイスにおいて、該光導波路素子は前記リブ型の光導波路を伝搬する光波を変調するための変調電極を備え、該光導波路素子の変調電極に入力する変調信号を増幅する電子回路を該筐体の内部に有することを特徴とする。
【0017】
) 上記()乃至()のいずれかに記載の光変調デバイスと、該光変調デバイスに変調動作を行わせる変調信号を出力する電子回路とを有することを特徴とする光送信装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、電気光学効果を有する材料で形成される層にリブ部を設け、該リブ部がリブ型の光導波路を構成し、前記電気光学効果を有する材料で形成される層を支持する補強基板とを備えた光導波路素子において、前記リブ型の光導波路の一端には、前記リブ型の光導波路に連続してスポットサイズ変換部分が設けられており、該スポットサイズ変換部分は、前記リブ型の光導波路の一端が該補強基板の端面に向かって幅が細くなるテーパー部を含む上側の光導波路部分と、該リブ部の両側にある前記電気光学効果を有する材料で形成された層を削って形成され、該補強基板の該端面に向かって幅が細くなるテーパー部を含む下側の光導波路部分とを備え、該補強基板の該端面の付近では、前記下側の光導波路部分の下側にある該補強基板の厚みよりも、該補強基板の厚みがより薄く設定され、かつ、前記下側の光導波路部分のテーパ部の形状に合わせて、該補強基板が薄く構成されており、また、前記上側の光導波路部分のテーパー部と前記下側の光導波路部分のテーパー部とを共に覆い、該補強基板を構成する材料より屈折率の高い材料で構成した構造体を備え、さらに、該構造体を覆うように、該構造体を構成する材料より屈折率の低い材料で構成した被覆層を配置して構成され、前記上側の光導波路部分の幅は、前記下側の光導波路部分の幅よりも常に狭くなるように構成されているため、マルチモード光の発生を抑制しながら、光波のMFDを縮小又は拡大できるため、光ファイバ等との結合に係る挿入損失を抑制し、小型化に適した光導波路素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の光導波路素子の一例を示す斜視図である。
図2図1の光導波路素子のX-X’における断面図である。
図3図1の光導波路素子の平面図である。
図4図3の各点線における断面図である。
図5】2段階のエッチング工程によるリブ形状の変化を説明する図である。
図6図5の2段階エッチング処理を施した光導波路の端部の形状を説明する図である。
図7】本発明の光導波路素子に使用される光導波路の他の形状を示す斜視図である。
図8図7に示す形状の光導波路を備えた光導波路素子を示す斜視図である。
図9図8の光導波路素子のX-X’における断面図である。
図10図8の光導波路素子の平面図である。
図11図10の各点線における断面図である。
図12】本発明の光導波路素子の補強基板の一部の厚みを薄くした実施例を説明する斜視図である。
図13】補強基板の厚みを薄くする部分を説明する図である。
図14図13(a)における点線A-A’における断面図である。
図15】本発明の光変調デバイス及び光送信装置を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の光導波路素子について、好適例を用いて詳細に説明する。
なお、以下の説明では、光導波路の端部の構造は、出射部を中心に説明するが、入射部であっても同様に構成できることは言うまでもない。
本発明の光導波路素子は、図1乃至4に示すように、電気光学効果を有する材料(1)で形成されるリブ型の光導波路10と、該光導波路を支持する補強基板2とを備えた光導波路素子において、該光導波路の一端は、該補強基板の端面に向かって幅が細くなるテーパー部分11を構成し、該テーパー部分を覆うように、該補強基板を構成する材料より屈折率の高い材料で構成した構造体3を備え、該構造体を覆うように、該構造体を構成する材料より屈折率の低い材料で構成した被覆層4を配置したことを特徴とする。
【0021】
本発明の光導波路素子に使用される光導波路を構成する材料としては、電気光学効果を有する強誘電体材料、具体的には、ニオブ酸リチウム(LN)やタンタル酸リチウム(LT)、PLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)などの基板や、これらの材料によるエピタキシャル膜などが利用可能である。また、半導体材料や有機材料など種々の材料も光導波路素子の基板として利用可能である。
【0022】
本発明で使用される光導波路10の厚みは、数μm程度の極めて細いものであり、LNなどの結晶基板を機械的に研磨して薄板化する方法や、LNなどのエピタキシャル膜を使用する方法がある。エピタキシャル膜の場合には、例えば、SiO基板、サファイア単結晶基板やシリコン単結晶基板など、単結晶基板の結晶方位に合わせて、エピタキシャル膜を、スパッタ法、CVD法、ゾルゲル法などで形成する。
【0023】
導波層の厚みが薄いため、光導波路素子の機械的強度を高めるため、光導波路10の裏面側には、補強基板2が配置される。補強基板2は、SiO基板などのように、導波層より低屈折率の材料が好ましい。補強基板2上に光導波路10を構成する層1を直接接合したり、補強基板2を結晶成長の土台として使用し、エピタキシャル膜の光導波路を構成する層を設けることも可能である。
【0024】
光導波路を構成するリブ型の突起の形成方法は、光導波路を形成する層(例えばLN層)を、ドライ又はウェットエッチングすることで形成することができる。また、リブ部の屈折率を高めるため、リブ部の位置にTiなどの高屈折率材料を熱拡散する方法も併せて使用することも可能である。
【0025】
本発明の光導波路素子の特徴は、図1又は3に示すように、リブ型の光導波路10の一端(光波の入射部又は出射部)は、補強基板2の端面に向かって幅が細くなるテーパー部分11、所謂、「逆テーパー形状」を採用したことである。これは、従来の特許文献1乃至3の端部に向かって幅が広く又は厚みが厚くなるテーパー形状とは、全く異なる形状となっている。なお、図1又は図3では、光導波路の幅が変化する逆テーパー形状を例示したが、本発明はこのような形状に限定されず、コア部とクラッド部の屈折率差が光波をシングルモード伝搬させる上で担保可能な範囲において、例えば、厚さが徐々に薄くなるものや、幅が細くなると同時に厚さも薄くなるものなどを採用することも可能である。
【0026】
また、幅が絞られたテーパー部分を覆うように、補強基板2を構成する材料より屈折率の高い材料で構成した構造体3を備えている。この構造体の屈折率は、光導波路10を構成する材料の屈折率よりも低くなっている。構造体3の材料としては、ガラスなどの無機材料や、屈折率を高めた樹脂系材料を使用することが可能である。SSCの耐久性を考慮した場合は、無機材料で構成することが好ましい。
【0027】
構造体3を接着剤やフォトレジスト(永久レジスト)などの樹脂材料で形成すると、樹脂を塗布した際に、光導波路10の近傍に気泡が入り込みやすくなる。このため、無機材料をスパッタリング法などで成膜して構成することが、より好ましい。
【0028】
さらに、構造体3を覆うように、該構造体を構成する材料より屈折率の低い材料で構成した被覆層4を配置している。被覆層は、接着剤などの樹脂層が利用できるが、空気層であっても良い。また、図2に示すように、被覆層4を接着剤で構成し、構造体3の上側に配置される上側補強基板5を、光導波路10や構造体3が形成された補強基板(2)側に接合する接着層として機能させることも可能である。この上側補強基板5は、光導波路素子の端面の機械的強度を高めるととともに、当該端面に光ファイバや光学ブロックを直接接合する際の支持手段の役割も果たす。このような支持手段により光ファイバと光導波路の光軸合わせが容易になり、異なるMFDでの接続の場合であっても接続損失の低減を図ることができる。
【0029】
図3の点線A-A’からD-D’における各断面を図4の(a)乃至(d)に示している。これらの構成により、図4(a)のリブ型の光導波路10から、図4(d)の構造体3をコア部とし、補強基板2や被覆層4をクラッドとする光導波路に、図4の(a)から(d)へと、徐々に光導波路を切換え、伝搬する光波のスポットサイズ変換も併せて実現している。例えば、光導波路10を伝搬する光波のMFDが1μmであるものを、シングルモードを維持しながら、図4(d)の段階では、光波のMFDを3μm程度に拡大することが可能である。
【0030】
ここで、逆テーパー形状の光導波路11を作成するには、幅の狭い部分でエッチングマスクが剥離するのを防止するため、エッチングマスク自体を薄くする必要がある。しかし、薄くするとリブ型の光導波路を作成するのに1回のエッチング工程では困難である。このため、図5に示すように、図5(a)から(c)のエッチング工程と図5(d)から(f)のエッチング工程の2段階に分けて行うことが考えられる。しかしながら、リブRBの深さ(高さ)は得られるが、LNは斜めにエッチングされるため光導波路の幅Yが幅Zに変化し、より細くなる。図5の符号PR1及びPR2はフォトレジストであり、図5(a)及び(d)の点線は、レジストパターンで除去される境界を示している。
【0031】
図6は、図5のように、一度作成した光導波路10のパターンの上にレジストパターンを配置し、光導波路10の周辺のLNをさらに除去して、光導波路10の深さをより深くした場合を示している。この場合には、斜線部で示した部分がさらに削られることとなり、光導波路12の幅がより細くなる。逆テーパー形状の幅も急激に細くなるため、伝搬損失が大きくなる。
【0032】
逆テーパー形状を設計通りに維持するため、本発明の光導波路素子では、図7に示すように、テーパー部分(11,15)は多段に積み重ねた形状の光導波路(10,14)で構成され、上側に配置される光導波路10の幅W1が下側に配置される光導波路14の幅W2よりも狭くなるよう構成されている。
【0033】
図7のような光導波路を形成するには、1回目は、光導波路10の形状に合わせたレジストパターンでエッチングを行い、2回目は、光導波路14の形状に合わせたレジストパターンでエッチングを行う。なお、図7(又は図1)では、テーパー部近傍は、補強基板2が露出するまでエッチングを行っているが、極めて薄いLN部分が残っていても良い。
【0034】
図8乃至図11は、図7に示すテーパー部分の形状を採用したSSCである。図8に示すように、光導波路を構成する材料であるLN(1)は、光導波路から離れた部分16は、特に取り除かず、残しておいても良い。図8のテーパー部では、2段に積み重ねテーパー部(11,15)で構成しているが、2段に限らず3段以上であっても良い。
【0035】
光導波路のテーパー部を覆うように、構造体3が配置される。構造体3は上述したものと同様である。さらに、図9に示すように、被覆層4、上側補強基板5が、図2と同様に配置される。当然、被覆層4を空気層で置き換えることも可能であることは言うまでもない。
【0036】
図10の点線A-A’からD-D’における断面図を図11(a)乃至(d)に示している。図11(a)の光導波路10を伝搬する光波のMFDは、図11(a)から(d)へと徐々に変化し、最終的に、図11(d)のような、コア部3とクラッド部(2及び4)からなる光導波路へと光波のMFDは徐々に拡大されている。
【0037】
図1の形状のSSCと図8のSSCとの伝搬損失についてシミュレーションによる比較を行った。各部材の屈折率は、光導波路10が2.138、補強基板2が1.494、構造体3が1.575、及び被覆層4が1.542と仮定した。図1の光導波路を構成する材料の層1の厚さは0.2μm、層1の表面から突出している光導波路10の厚さ0.6μm、光導波路10の幅1.3μmとした。図8のテーパー部11を構成する光導波路の幅1.3μm、テーパー部15を構成する光導波路の幅3.0と仮定した。
【0038】
シミュレーションの結果、図8のように2段のテーパー部で構成する方が、1段のテーパー部で構成するものと比較し、伝搬損失が0.41から0.05(Loss/dB)に改善することが確認できた。また、光ファイバの結合損も考慮すると、光導波路10からSSC部分を経て光ファイバに伝搬する光波の伝搬損失は、0.73から0.32(Loss/dB)に改善した。
【0039】
また、図12及び13に示すように、テーパー部分(15)の下側の補強基板2の厚みよりも、補強基板の端面付近(図12の右下側)の補強基板20の厚みを、同等もしくは、より薄く構成することも可能である。図13は、薄くなった補強基板20の部分(補強基板2でより深く削る領域)をR1~R3の網掛け部分として示したものである。図13(a)の光導波路素子の端面付近のみ、補強基板2を薄くする場合に限らず、図13(c)のように、テーパー部15の形状に合わせて、補強基板2を薄く構成することも可能である。
【0040】
図14は、図13(a)の点線A-A’における断面図であり、図14の図中に示す白抜きの十字は、光導波路のテーパー部11の先端位置を重ね合わせて表示したものである。このように、補強基板2をより薄く構成する部分を設けることにより、光導波路10の先端であるテーパー部分11の位置を、構造体3をコア部とする光導波路の中心位置に調整することも可能となり伝搬損失を低減することができる。
【0041】
本発明の光導波路素子では、素子内の光導波路を伝搬する光波のMFDは3μmより小さく(例えば、1μm程度)、光導波路素子に接続され、素子内の光導波路に光波を入力又は出力する光ファイバのモードフィールド径は、3μm以上(例えば、10μm)である。これにより、通常の光ファイバを使用しながら、光導波路素子内の光導波路の曲率半径を小さくでき、光導波路素子の小型化に寄与する。
【0042】
本発明の光導波路素子は、光導波路10を伝搬する光波を変調する変調電極を設け、図15のように、筐体8内に収容される。さらに、光導波路に光波を入出力する光ファイバFを設けることで、光変調デバイスMDを構成することができる。図15では、光ファイバは、筐体の側壁を貫通する貫通孔を介して筐体内に導入し、光導波路素子に直接接合されている。光導波路素子と光ファイバとは、空間光学系を介して光学的に接続することも可能である。
【0043】
光変調デバイスMDに変調動作を行わせる変調信号を出力する電子回路(デジタル信号プロセッサーDSP)を、光変調デバイスMDに接続することにより、光送信装置OTAを構成することが可能である。光導波路素子に印加する変調信号は増幅する必要があるため、ドライバ回路DRVが使用される。ドライバ回路DRVやデジタル信号プロセッサーDSPは、筐体8の外部に配置することも可能であるが、筐体8内に配置することも可能である。特に、ドライバ回路DRVを筐体内に配置することで、ドライバ回路からの変調信号の伝搬損失をより低減することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明によれば、光導波路素子の小型化を図りながら、光ファイバ等との結合に係る挿入損失を抑制した光導波路素子を提供することが可能となる。さらには、その光導波路素子を用いた光変調デバイス並びに光送信装置を提供することも可能となる。
【符号の説明】
【0045】
1 電気光学効果を有する材料で形成される層
2 補強基板
3 構造体
4 被覆層
5 上側補強基板
10 光導波路
11,15 テーパー部
MD 光変調デバイス
OTA 光送信装置

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15