(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】布帛用撥水撥油処理剤
(51)【国際特許分類】
C09K 3/18 20060101AFI20240730BHJP
D06M 15/227 20060101ALI20240730BHJP
D06M 15/263 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C09K3/18 104
D06M15/227
D06M15/263
(21)【出願番号】P 2020170364
(22)【出願日】2020-10-08
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】木村 吉延
(72)【発明者】
【氏名】梶川 正浩
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-104632(JP,A)
【文献】特公昭49-010315(JP,B1)
【文献】特公昭47-017438(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/18
C09K3/00
D06M13/00-15/715
C08F2/00-2/60
C08F251/00-297/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂(a1)、及びアクリル重合体(a2)を有するポリオレフィン複合アクリル樹脂(A)と、水性媒体(B)
と、1級ジアミン構造を有するアミノ変性シリコーンオイルとを含有
し、フッ素化合物を含まない、布帛用撥水撥油処理剤
の製造方法であって、前記アクリル重合体(a2)の単量体原料中のアルキル(メタ)アクリレートが40~99質量%
であり、前記ポリオレフィン樹脂(a1)の存在下、前記アクリル重合体(a2)の単量体原料をラジカル重合して得られることを特徴とする布帛用撥水撥油処理剤
の製造方法。
【請求項2】
前記ポリオレフィン樹脂(a1)の融点が50~90℃である請求項1記載の布帛用撥水撥油処理剤
の製造方法。
【請求項3】
前記ポリオレフィン樹脂(a1)の重量平均分子量が20,000~100,000である請求項1又は2記載の布帛用撥水撥油処理剤
の製造方法。
【請求項4】
前記ポリオレフィン樹脂(a1)と前記アクリル重合体(a2)との質量比[(a1)/(a2)]が、10/90~40/60の範囲である請求項1~3のいずれか1項記載の布帛用撥水撥油処理剤
の製造方法。
【請求項5】
カチオン分散剤を含有する請求項1~
4いずれか1項記載の布帛用撥水撥油処理剤
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布帛用撥水撥油処理剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、フッ素系撥水剤を繊維製品等に処理することにより、その表面に撥水性が付与された繊維製品が知られている。しかしながら、フッ素化合物は、環境負荷への懸念があり、また、使用時に高温での熱処理を要すること等から、フッ素化合物を含まない処理剤の検討がなされている。
【0003】
このような中、炭素原子数が6~24のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル及び(無水)マレイン酸を必須原料とするアクリル樹脂と、塩基性化合物と、水性媒体とを含有する布帛用撥水撥油処理剤が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、前記特許文献1に記載された撥水処理剤を高密度生地に使用した場合、撥水性が十分に発現しない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、環境への負荷が懸念されるフッ素化合物を含まず、高密度生地に使用した場合においても、生地への均染性に優れ、優れた撥水性及び撥油性を発現可能な布帛用撥水撥油処理剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の課題を解決するため鋭意研究した結果、特定のポリオレフィン複合アクリル樹脂と、水性媒体とを含有する布帛用撥水撥油処理剤が、上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリオレフィン樹脂(a1)、及びアクリル重合体(a2)を有するポリオレフィン複合アクリル樹脂(A)と、水性媒体(B)とを含有する布帛用撥水撥油処理剤であって、前記アクリル重合体(a2)の単量体原料中のアルキル(メタ)アクリレートが40~99質量%であり、(メタ)アクリル酸が0.5~5質量%であることを特徴とする布帛用撥水撥油処理剤に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の布帛用撥水撥油処理剤は、基材に優れた撥水性及び撥油性を付与できることから、綿、絹、羊毛、麻、ポリエチレン、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、及びレーヨン等の繊維からなる布帛の撥水処理剤として好適に使用することができる。特に高密度生地の撥水処理剤として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の布帛用撥水撥油処理剤は、ポリオレフィン樹脂(a1)、及びアクリル重合体(a2)を有するポリオレフィン複合アクリル樹脂(A)と、水性媒体(B)とを含有する布帛用撥水撥油処理剤であって、前記アクリル重合体(a2)の単量体原料中のアルキル(メタ)アクリレートが40~99質量%であり、(メタ)アクリル酸が0.5~5質量%であるものである。
【0011】
前記ポリオレフィン樹脂(a1)としては、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、超々低密度ポリエチレン、ポリメチルペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、プロピレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテンランダム共重合体、プロピレンと炭素数5~12のα-オレフィンとからなる共重合体、プロピレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体、ポリブテン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルトリメトキシシラン共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、及びその水素添加物等が挙げられる。なお、前記ポリオレフィン樹脂(a1)は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0012】
前記ポリオレフィン樹脂(a1)の融点は、布帛への加工性に優れ、撥水性及び撥油性がより効果的に発現することから、50~100℃であることが好ましく、60~90℃であることがより好ましい。
【0013】
前記ポリオレフィン樹脂(a1)の重量平均分子量は、撥水性がより向上することから、20,000~100,000が好ましく、30,000~60,000がより好ましい。
【0014】
本発明における樹脂の平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略記する。)測定に基づきポリスチレン換算した値である。
【0015】
また、前記ポリオレフィン樹脂(a1)は、撥水性がより向上することから、ポリプロピレンであることが好ましい。
【0016】
前記アクリル重合体(a2)は、アルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、必要に応じて、その他の不飽和単量体を重合して得られる。
【0017】
前記アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、これらのアルキル(メタ)アクリレートは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0018】
また、前記アルキル(メタ)アクリレートとしては、撥水性がより向上することから、炭素原子数が6以上のアルキル(メタ)アクリレートを50~95質量%使用することが好ましい。
【0019】
前記アルキル(メタ)アクリレートとしては、布帛との親和性がより向上することから、メチルメタクリレートを使用することが好ましい。
【0020】
前記アクリル重合体(a2)の単量体原料中のアルキル(メタ)アクリレートは、40~99質量%であるが、60~90質量%が好ましい。
【0021】
前記アクリル重合体(a2)の単量体原料中の(メタ)アクリル酸は、0.5~5質量部であるが、布帛への浸透性がより向上することから、0.8~3.5質量%が好ましい。
【0022】
前記その他の不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、γ―メタクリロキシプロピルトリメトシキシラン、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル酸-1,4-ブタンジオール、ジ(メタ)アクリル酸-1,6-ヘキサンジオール、トリ(メタ)アクリル酸トリメチロールプロパン、ジ(メタ)アクリル酸グリセリン等のアクリル酸エステル;スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン化合物;(無水)マレイン酸、フマル酸、(無水)シトラコン酸、メサコン酸、(無水)イタコン酸、(無水)アコニット酸等の不飽和カルボン酸が挙げられる。なお、これらのその他の単量体は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0023】
なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートとアクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリル酸」とは、メタクリル酸とアクリル酸の一方又は両方をいい、「(無水)マレイン酸」とは、無水マレイン酸とマレイン酸の一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、メタクリロイル基とアクリロイル基の一方又は両方をいう。
【0024】
前記その他の不飽和単量体の使用量は、不飽和単量体原料の合計100質量%から上記のアルキル(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸の比率を除いた残部となる。
【0025】
前記ポリオレフィン樹脂(a1)と前記アクリル重合体(a2)との質量比[(a1)/(a2)]は、布帛への均染性がより向上することから、10/90~40/60の範囲が好ましく、20/80~35/65の範囲がより好ましい。
【0026】
前記ポリオレフィン複合アクリル樹脂(A)の製造方法としては、簡便に前記ポリオレフィン複合アクリル樹脂(A)を得られることから、水中重合法又は乳化重合法が好ましい。
【0027】
乳化重合法により、前記ポリオレフィン複合アクリル樹脂(A)を得る方法としては、例えば、水性媒体中で、前記ポリオレフィン樹脂(a1)、乳化剤、及び重合開始剤存在下、前記アクリル重合体(a2)の単量体原料を50~100℃の温度でラジカル重合する方法が挙げられる。
【0028】
前記乳化剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル及びその塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンア
ルキルエーテルの硫酸ハーフエステル塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩等の陰イオン性乳化剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジフェニルエーテル、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロック共重合体、アセチレンジオール系等の非イオン性乳化剤;アルキルアンモニウム塩等の陽イオン性乳化剤;アルキル(アミド)ベタイン、アルキルジメチルアミンオキシド等の両イオン性乳化剤などが挙げられる。なお、これらの乳化剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。なお、前記単量体(a1)を乳化剤として使用することもできる。
【0029】
前記重合開始剤としては、例えば、2,2’-アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、アゾビスシアノ吉草酸等のアゾ化合物;tert-ブチルパーオキシピバレート、tert-ブチルパーオキシベンゾエート、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物;過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物などが挙げられる。なお、これらの重合体開始剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。また、これらの重合開始剤は、重合体の原料となる単量体の合計に対して、0.1~10質量%の範囲内で使用することが好ましい。
【0030】
前記ポリオレフィン複合アクリル樹脂(A)の分散安定性がより向上することから、塩基性化合物及び/又は酸性化合物により、pHを調整することが好ましく、前記塩基性化合物としては、例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、2-アミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール等の有機アミン;アンモニア(水)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の無機塩基性化合物;テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラ-n-ブチルアンモニウムハイドロオキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムハイドロオキサイドの四級アンモニウムハイドロオキサイドなどが挙げられる。なお、これらの塩基性化合物は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0031】
前記酸性化合物としては、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸または乳酸等のカルボン酸化合物;燐酸モノメチルエステル、燐酸ジメチルエステル等の燐酸のモノエステルまたはジエステル;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸化合物;塩酸、硫酸、硝酸、燐酸等の無機酸などである。これらの中でも、カルボン酸化合物が好ましい。なお、これらの酸性化合物は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0032】
前記水性媒体(B)としては、水、水と混和する有機溶剤、及び、これらの混合物が挙げられる。水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール及びイソプロパノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル;N-メチル-2-ピロリドン等のラクタム等が挙げられる。本発明では、水のみを用いても良く、また水及び水と混和する有機溶剤との混合物を用いても良く、水と混和する有機溶剤のみを用いても良い。安全性や環境に対する負荷の点から、水のみ、または、水及び水と混和する有機溶剤との混合物が好ましく、水のみを使用することが特に好ましい。
【0033】
前記水性媒体(B)は、前記ポリオレフィン複合アクリル樹脂(A)を水中重合法および乳化重合法により製造する際に使用される水性媒体をそのまま使用することが、簡便であり好ましい。
【0034】
本発明の布帛用撥水撥油処理剤は、前記ポリオレフィン複合アクリル樹脂(A)及び前記水性媒体(B)を含有するものであるが、乳化重合法等により得られた、前記ポリオレフィン複合アクリル樹脂(A)が前記水性媒体(B)に分散したものであることが好ましい。
【0035】
また、必要に応じて脱溶剤工程を経ることにより、本発明の布帛用撥水撥油処理剤中の有機溶剤量を低減することができる。
【0036】
また、本発明の布帛用撥水撥油処理剤は、必要に応じて、撥水剤、撥油剤、分散剤、硬化触媒、潤滑剤、充填剤、チキソ付与剤、粘着付与剤、ワックス、熱安定剤、耐光安定剤、蛍光増白剤、発泡剤等の添加剤、pH調整剤、レベリング剤、ゲル化防止剤、分散安定剤、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、耐熱性付与剤、無機充填剤、有機充填剤、可塑剤、補強剤、触媒、抗菌剤、防カビ剤、防錆剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、顔料、染料、導電性付与剤、帯電防止剤、透湿性向上剤、撥油剤、中空発泡体、結晶水含有化合物、難燃剤、吸水剤、吸湿剤、消臭剤、整泡剤、消泡剤、防黴剤、防腐剤、防藻剤、顔料分散剤、ブロッキング防止剤、加水分解防止剤等を併用することができる。
【0037】
本発明の布帛用撥水撥油処理剤は、ハロゲン化合物を含有することなく、より撥水性及び撥油性を向上できることから、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル等のシリコーンオイルを含有していることが好ましく、これらの中でも、アミノ変性シリコーンオイルがより好ましく、1級ジアミン構造を有するアミノ変性シリコーンオイルがさらに好ましい。なお、これらのシリコーンオイルは、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0038】
布帛用撥水撥油処理剤中の前記シリコーンオイルの含有量は、撥水性、撥油性、及び柔軟性をより向上できることから、1~10質量%が好ましく、2~8質量%がより好ましい。
【0039】
本発明の布帛用撥水撥油処理剤は、各成分の分散状態をより均質なものにすることができることから、カチオン分散剤を含有していることが好ましく、アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム等を含有していることがより好ましい。なお、これらのカチオン分散剤は、単独で用いることも2種以上併用することもできる。
【0040】
布帛用撥水撥油処理剤中の前記カチオン分散剤の含有量は、各成分の分散状態をより均質なものにできることから、0.05~3質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましい。
【0041】
本発明の布帛用撥水撥油処理剤を用いて処理可能な布帛としては、例えば、綿、絹、羊毛、麻、ポリエチレン、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨン等の繊維からなる布帛が挙げられる。
【実施例】
【0042】
以下に本発明を具体的な実施例を挙げてより詳細に説明する。なお、平均分子量は、下記のGPC測定条件で測定したものである。
【0043】
[GPC測定条件]
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度4mg/mLのテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の単分散ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0044】
(単分散ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0045】
(実施例1:布帛用撥水撥油処理剤(1)の製造及び評価)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに軟水を130質量部仕込み70℃に昇温。ポリプロピレン樹脂(出光石油化学株式会社製「エルモーデュS-400」)32質量部、メチルシクロヘキサン110質量部を仕込み、これにシクロヘキシルメタクリレート96.7質量部、メチルメタクリレート:29.8質量部、メタクリル酸:20質量部、γ―メタクリロキシプロピルトリメトシキシラン1質量部、ラウリルメルカプタン1質量部、KF-96(信越化学工業株式会社製)16質量部、ノイゲンTSD-200D(第一工業製薬株式会社製)6質量部、ニューコール707-SF(日本乳化剤株式会社製)12質量部、軟水115質量部を乳化した乳化液をフラスコに滴下、PZ-69(日本油脂株式会社製)0.8質量部、SFS(住友精化株式会社製):0.3質量部を3時間かけて滴下し、70℃にて反応を行った。中和後120分間ホールド。これを60℃減圧(0.080~0.095MPa)下、脱溶剤(約60分)、冷却を行い、不揮発分27.2質量%のポリオレフィン複合アクリル樹脂(A-1)の水分散体を得た。この水分散体93.3質量部にアミノ変性シリコーンオイル(ダウ東レ株式会社製「DOWSIL SF-8417」)4質量部、アルキルトリメチルアンモニウム0.7質量部、メタノール2質量部を混合しその後、イオン交換水にて不揮発分を6質量%まで希釈し、布帛用撥水撥油処理剤(1)を得た。
【0046】
(実施例2:布帛用撥水撥油処理剤(2)の製造及び評価)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに軟水を130質量部仕込み70℃に昇温。ポリプロピレン樹脂(出光石油化学株式会社製「エルモーデュS-400」)32質量部、メチルシクロヘキサン110質量部を仕込み、これにシクロヘキシルメタクリレート96.7質量部、メチルメタクリレート29.8質量部、メタクリル酸:20質量部、γ―メタクリロキシプロピルトリメトシキシラン1質量部、ラウリルメルカプタン1質量部、ノイゲンTSD-200D(第一工業製薬株式会社製)6質量部、ニューコール707-SF(日本乳化剤株式会社製):12質量部、軟水115質量部を乳化した乳化液をフラスコに滴下、PZ-69(日本油脂株式会社製)0.8質量部、CP(要注釈)0.3質量部を3時間かけて滴下し、70℃にて反応を行った。中和後120分間ホールド。これを60℃減圧(0.080~0.095MPa)下、脱溶剤(約60分)、冷却を行い、不揮発分27.2質量%のポリオレフィン複合アクリル樹脂(A-1)の水分散体を得た。この水分散体93.3質量部にアミノ変性シリコーンオイル(ダウ東レ株式会社製「DOWSIL SF-8417」)4質量部、アルキルトリメチルアンモニウム0.7質量部、メタノール2質量部を混合しその後、イオン交換水にて不揮発分を6質量%まで希釈し、布帛用撥水撥油処理剤(2)を得た。
【0047】
(比較例1:布帛用撥水撥油処理剤(R1)の製造及び評価)
攪拌機、還流冷却管、温度計および窒素吹き込み管を備えた4つ口フラスコに軟水400質量部、アクリル酸5質量部、3-(アクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド45質量部、アクリルアマイド50質量部を部仕込み65℃に昇温。過硫酸アンモニウム0.72質量部、防腐剤MBS 0.08質量部を投入し、65℃にて反応を行った。不揮発分5質量%の水性アクリル系樹脂組成物を得た。この水性アクリル系樹脂組成物93.3質量部にアミノ変性シリコーンオイル(ダウ東レ株式会社製「DOWSIL SF-8417」)4質量部、アルキルトリメチルアンモニウム0.7質量部、メタノール2質量部を混合しその後、イオン交換水にて不揮発分を6質量%まで希釈し、布帛用撥水撥油処理剤(R1)を得た。
【0048】
[撥水撥油処理基材の作製]
上記で得られた布帛用撥水撥油処理剤をマングル塗工機にて基布(高密度ナイロン生地又は高密度ポリエステル生地)に乾燥後1g/m2の目付け量にて塗工し、120℃で5分間、さらに150℃で10分間乾燥し、撥水撥油処理基材を得た。
【0049】
[均染性の評価]
上記で得た下記の基準により、均染性を評価した。
5:染ムラ無し
4:染ムラ小
3:染ムラ大
2:油染み小
1:油染み大
【0050】
[撥水性の評価]
上記で得た撥水処理基材について、JIS L1092に準拠し、下記の基準により、撥水性を評価した。
5:水滴が分割せず、拭取り後跡無し
4:水滴分離、拭取り後跡無し
3:滴下時滲み無し拭取り後跡あり
2:滴下後滲込跡
1:完全浸込
【0051】
[撥油性の評価]
上記で得た撥水処理基材について、AATCC118に準拠し、下記の基準により、撥油性を評価した。
5:油滴広がり無し、拭取後滲無し
4:油滴広がり有り、拭取後滲無し
3:油滴広がり無し、拭取後滲有り
2:油滴広がり有り、拭取後滲有り
1:油滴滴下後1分内に滲込み(不完全)
0:油滴滴下後1分内完全滲込み
【0052】
上記の実施例1~2及び比較例1の組成及び評価結果を表1に示す。
【0053】
【0054】
表中の略号は以下のものである。
S-400:出光石油化学株式会社製「エルモーデュS-400」
CHMA:シクロヘキシルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
AA:アクリル酸
MPTMS:γ-メタクリロキシプロピルトリメトシキシラン
DMAPPA:3-(アクリロイルアミノ)プロピルトリメチルアンモニウムクロリド
AM:アクリルアマイド
【0055】
実施例1及び2の本発明の布帛用撥水撥油処理剤は、均染性に優れ、優れた撥水性及び撥油性を付与できることが確認された。
【0056】
一方、比較例1は、ポリオレフィン樹脂(a1)を含有しない例であるが、均染性が劣り、撥水性も不十分であることが確認された。