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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】搬送装置、画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 9/00 20060101AFI20240730BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B65H9/00 A
B65H9/00 J
G03G15/00 450
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020174649
(22)【出願日】2020-10-16
(65)【公開番号】P2022065880
(43)【公開日】2022-04-28
【審査請求日】2023-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】江川 知宏
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-158838(JP,A)
【文献】特開2018-095466(JP,A)
【文献】特開2018-090404(JP,A)
【文献】特開2019-119551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 9/00
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートの位置を補正する補正部材と、
前記シートの搬送方向に並んで配置された、前記シートの側端を検知する少なくとも3つの検知機構と、
を備えた搬送装置であって、
搬送するシートのシート搬送方向長さに応じて、異なる前記検知機構が前記シートを検知し、前記補正部材が前記シートの位置を補正することを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
搬送する全ての大きさのシートで共通して、前記検知機構のうち、最もシート搬送方向下流側に配置された検知機構を少なくとも用いて前記シートを検知し、前記補正部材が前記シートの位置を補正する請求項1記載の搬送装置。
【請求項3】
前記検知機構として、前記補正部材の前記シート搬送方向上流側に配置された上流側検知機構と、前記補正部材の前記シート搬送方向下流側に配置された第一下流側検知機構および第二下流側検知機構とを備え、
前記第二下流側検知機構は前記第一下流側検知機構よりも前記シート搬送方向下流側に配置され、
前記シート搬送方向長さの相対的に大きいシートの場合には、前記上流側検知機構および前記第二下流側検知機構により前記シートを検知して、前記補正部材が前記シートの位置を補正し、
前記シート搬送方向長さの相対的に小さいシートの場合には、前記第一下流側検知機構および前記第二下流側検知機構により前記シートを検知して、前記補正部材が前記シートの位置を補正する請求項1または2記載の搬送装置。
【請求項4】
前記上流側検知機構よりも前記シート搬送方向上流側に配置され、前記シートの側端を検知する他の上流側検知機構をさらに備え、
前記上流側検知機構および前記他の上流側検知機構により前記シートを検知して前記補正部材が前記シートの位置を補正し、
前記シート搬送方向長さの相対的に大きいシートの場合には、前記上流側検知機構および前記第二下流側検知機構により前記シートを検知して前記補正部材が前記シートの位置を再度補正し、
前記シート搬送方向長さの相対的に小さいシートの場合には、前記第一下流側検知機構および前記第二下流側検知機構により前記シートを検知して前記補正部材が前記シートの位置を再度補正する請求項3記載の搬送装置。
【請求項5】
請求項1から4いずれか1項に記載の搬送装置を備えた画像形成装置。
【請求項6】
前記検知機構のうち最もシート搬送方向下流側の検知機構は、前記シートに画像を形成する画像形成位置よりも前記シート搬送方向上流側に配置される請求項5記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートを搬送する搬送装置では、搬送時におけるシートの斜行や幅方向のズレ等のシートの位置ズレが問題となる。例えば、シートに画像を形成する画像形成装置では、シートの上記位置ズレにより、シートに形成される画像位置が理想の位置からずれてしまうことが問題になる。
【0003】
そして、このようなシートの位置ズレを補正する搬送装置として、例えば特許文献1(特開2016-175776号公報)の搬送装置には、シートを挟持して搬送すると共にその位置を補正する挟持ローラと、挟持ローラの上流側に第一CISおよび第二CISと、挟持ローラの下流側に第三CISとが配置される。第一CISおよび第二CISによりシートを検知して挟持ローラがシートの位置を補正した後、第二CISおよび第三CISによりシートを検知して挟持ローラがシートの位置を再補正する。この再補正動作により、シートの位置補正精度を高め、より下流側までシートの位置を補正できる。
【0004】
しかし、特許文献1の発明では、搬送するシートのシート搬送方向長さが小さいと、シートが第二CISおよび第三CISにわたって対向せず、第二CISおよび第三CISによって同時にシートを検知することができなかった。この場合、上記の再補正動作が行えなくなってしまう。また、第三CISをより上流側に配置して第二CISと第三CISとの間隔を狭めることで、小サイズのシートでの再補正動作を可能にすることも考えられる。しかしこの場合、搬送装置がシートを検知できる範囲が狭まり、より下流側で生じる位置ズレが検知できないという別の問題が生じてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シート搬送方向の長さが小さいシートの位置補正精度を高めることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、シートの位置を補正する補正部材と、前記シートの搬送方向に並んで配置された、前記シートの側端を検知する少なくとも3つの検知機構と、を備えた搬送装置であって、搬送するシートのシート搬送方向長さに応じて、異なる検知機構が前記シートを検知し、前記補正部材が前記シートの位置を補正する搬送装置を特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の搬送装置は、シート搬送方向の長さが小さいシートの位置補正精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】画像形成装置の概略構成図である。
図2】本実施形態に係る搬送装置を示す図で、(a)図が平面図、(b)図が側面図である。
図3】本実施形態に係る搬送装置の各動作を示す図である。
図4】本実施形態に係る搬送装置の各動作を示す図である。
図5】本実施形態に係る搬送装置の各動作を示す図である。
図6】本実施形態に係る搬送装置の各動作を示す図である。
図7】本実施形態に係る搬送装置の各動作を示す図である。
図8】本実施形態に係る搬送装置の各動作を示す図である。
図9】小サイズの用紙を通紙時の搬送装置の各動作を示す図である。
図10】用紙の斜行量を算出する方法を示す図である。
図11】搬送装置の各動作を示すフロー図である。
図12】搬送装置の制御部の構成を示すブロック図である。
図13】挟持ローラおよびその周辺構成を示す断面図である。
図14図13のb-b線矢視平面図である。
図15】ローラ保持部材の幅方向移動動作と搬送面に沿う方向の回転動作を示す図である。
図16】ローラ保持部材の幅方向の移動量Δyと搬送面に沿う方向の回転量Δxを示す図である。
図17】異なる実施形態の画像形成装置を示す概略構成図である。
図18】後処理装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
図1に示すカラー画像形成装置1には、4つのプロセスユニット9Y,9M,9C,9Bkが着脱可能に設けられた作像部3が配置されている。各プロセスユニット9Y,9M,9C,9Bkは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
【0011】
具体的な各プロセスユニット9としては、表面上に現像剤としてのトナーを担持可能なドラム状の回転体である感光体ドラム10と、感光体ドラム10の表面を一様に帯電させる帯電ローラ11や、感光体ドラム10の表面にトナーを供給する現像装置12、クリーニング装置等を備えている。
【0012】
プロセスユニット9の上方には、露光部が配置されている。露光部は、画像データに基づいて、レーザ光を発するように構成されている。
【0013】
作像部3の直下には転写部4が配置されている。転写部4は、駆動ローラ13、二次転写対向ローラ15、複数のテンションローラ、これらのローラによって周回走行可能に張架されている無端状の中間転写ベルト16、各プロセスユニット9の感光体ドラム10に対して中間転写ベルト16を挟んだ対向位置に配置されている一次転写ローラ17等で構成されている。各一次転写ローラ17はそれぞれの位置で中間転写ベルト16の内周面を押圧しており、中間転写ベルト16の押圧された部分と各感光体ドラム10とが接触する箇所に一次転写ニップが形成されている。
【0014】
また、中間転写ベルト16の駆動ローラ13と、中間転写ベルト16を挟んで駆動ローラ13に対向した位置には二次転写ローラ18が配設されている。二次転写ローラ18は中間転写ベルト16の外周面を押圧しており、二次転写ローラ18と中間転写ベルト16とが接触する箇所に二次転写ニップが形成されている。
【0015】
給紙部5は、画像形成装置1の下部に位置しており、シートあるいは記録媒体としての用紙Pを収容したシート積載部としての給紙カセット19や、各給紙カセットから用紙Pを搬出する給紙ローラ20等からなっている。
【0016】
搬送路6は、給紙部5から搬出された用紙Pを搬送する搬送経路である。搬送路6上には、複数の搬送ローラ対が、後述する排紙部に至るまで、適宜配置されている。
【0017】
搬送路6上で、給紙部5よりも用紙搬送方向下流側で二次転写ニップ位置よりも上流側には、搬送路6上における用紙Pの位置ズレを補正し、用紙Pを下流側へ搬送する搬送装置30が設けられる。
【0018】
定着装置7は、加熱源によって加熱される定着ローラ22、その定着ローラ22を加圧可能な加圧ローラ23等を有している。
【0019】
排紙部8は、画像形成装置1の搬送路6の最下流に設けられる。この排紙部8には、用紙Pを外部へ排出するための一対の排紙ローラ24と、排出された用紙Pをストックするための排紙トレイ25とが配設されている。
【0020】
搬送路6は、排紙部8に至る経路とは別に、定着装置7の下流で分流する反転搬送路6aが設けられる。反転搬送路6aは、その末端で給紙部5から続く搬送路6に合流する。
【0021】
以下、図1を参照して上記画像形成装置1の基本的動作について説明する。
【0022】
画像形成装置1において、画像形成動作が開始されると、各プロセスユニット9Y,9C,9M,9Bkの感光体ドラム10の表面に静電潜像が形成される。各感光体ドラム10に露光部によって露光される画像情報は、所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタおよびブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。各感光体ドラム10上には静電潜像が形成され、各現像装置に蓄えられたトナーが、ドラム状の現像ローラによって感光体ドラム10に供給されることにより、静電潜像は顕像であるトナー画像(現像剤像)として可視像化される。
【0023】
転写部4では、駆動ローラ13の回転駆動により中間転写ベルト16が図の矢印Aの方向に走行駆動される。また、各一次転写ローラ17には、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、一次転写ニップにおいて転写電界が形成され、各感光体ドラム10に形成されたトナー画像は一次転写ニップにて中間転写ベルト16上に順次重ね合わせて転写される。このように、例えば、作像部3、露光部、転写部4等は、用紙Pに画像を形成する画像形成部として機能する。
【0024】
一方、画像形成動作が開始されると、画像形成装置1の下部では、給紙部5の給紙ローラ20が回転駆動することによって、給紙カセット19に収容された用紙Pが搬送路6に送り出される。
【0025】
搬送路6に送り出された用紙Pは、搬送路6上の搬送装置30やローラ対によって下流側へ搬送される(矢印Bの搬送方向参照)と共に、搬送装置30によってその位置ズレを補正され、二次転写ローラ18と二次転写対向ローラ15との間に形成される二次転写ニップへ送られる。このとき、中間転写ベルト16上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、二次転写ニップに転写電界が形成されている。二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト16上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。
【0026】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置7へと搬送され、定着ローラ22と加圧ローラ23とによって用紙Pが加熱および加圧されてトナー画像が用紙Pに定着される。そして、トナー画像が定着された用紙Pは、定着ローラ22から分離され定着ローラ22から分離され、搬送ローラ対によって搬送され、排紙部8において排紙ローラ24によって排紙トレイ25へと排出される。
【0027】
用紙Pに両面印刷がされる場合には、上記のようにおもて面(第一面)への画像形成動作が終了した後、用紙Pが排紙ローラ24へ搬送され、用紙Pの後端が排紙ローラ24を抜けるまでのタイミングで、排紙ローラ24が逆回転し、用紙Pが逆方向へ搬送されて反転搬送路6aへ送り出される。その後、用紙Pは、反転搬送ローラによって反転搬送路6a上を搬送されて、表裏反転した状態で、再び搬送路6の搬送装置30よりも上流側へ送られる。そして、用紙Pは、搬送装置30によってその位置ズレを補正された後、裏面(第二面)への画像の転写、定着が行われ、排紙ローラ24によって排紙トレイ25へと排出される。
【0028】
以上の説明は、用紙P上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作である。しかし、4つのプロセスユニット9Y,9C,9M,9Bkのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニット9を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0029】
図2(a)および図2(b)に示すように、搬送装置30は、用紙Pを搬送する搬送ローラ31、挟持ローラ(補正部材)32を有する。また搬送装置30は、用紙Pの側端を検知する検知機構として、第一CIS(他の上流側検知機構)34,第二CIS(上流側検知機構)35、第三CIS(第一下流側検知機構)36、および、第四CIS(第二下流側検知機構)37を有する。挟持ローラ32の用紙搬送方向下流側には、二次転写ローラ18が設けられる。以下、用紙Pの搬送方向Bを単に搬送方向、搬送方向の上流側、下流側(図2aの左側、右側)を、単に、上流側、下流側とも呼ぶ。また、用紙Pの幅方向を単に幅方向とも呼ぶ。
【0030】
搬送ローラ31および挟持ローラ32は、一対のローラによって構成される搬送部材であり、ローラ同士のニップ部に用紙Pを挟持した状態で各ローラが回転駆動することにより、用紙Pを下流側へ搬送できる。
【0031】
挟持ローラ32は、用紙Pの仮想搬送面に沿う方向に回転可能(図2aの両矢印C方向参照)、そして、幅方向に移動可能に設けられる(図2aの両矢印D方向参照)。これらの動作により、挟持した用紙Pを回転あるいは幅方向に移動させ、用紙Pの斜行あるいは幅方向の位置ズレを補正できる。なお、以下、挟持ローラ32については、用紙Pを搬送するためのローラの回転を、単に回転、斜行補正のための回転である上記の矢印C方向の回転を、搬送面に沿う方向の回転と記載して区別する。なお、上記の仮想搬送面とは、図2(a)の紙面に平行な面であり、用紙Pの搬送方向に平行で、用紙Pの厚み方向に直交する面である。
【0032】
このように、挟持ローラ32は、用紙Pの位置を補正する補正部材である。なお、ここで言う、用紙Pの位置(シートの位置)とは、用紙Pの回転方向の位置(つまり、用紙Pの搬送方向である図2aの左右方向に平行な直線に対する用紙Pの回転角度)あるいは用紙Pの幅方向の位置、あるいはその両方のことであり、用紙Pの位置補正(シートの位置補正)とは、用紙Pの、上記回転方向の位置を補正すること(斜行を補正すること)、あるいは、幅方向の位置を補正すること、の少なくともいずれか一方のことを指す。
【0033】
第一CIS34、第二CIS35、第三CIS36、および、第四CIS37は、LED等の発光素子とフォトダイオード等の受光素子とからなるフォトセンサが、用紙Pの幅方向に複数並設されたコンタクトイメージセンサである。ただし、用紙Pの側端位置を検知できれば、各検知機構の構成はこれに限らない。
【0034】
第一CIS34および第二CIS35は、搬送ローラ31よりも下流側で、挟持ローラ32よりも上流側に設けられる。また、第三CIS36および第四CIS37は、挟持ローラ32よりも下流側で、画像形成装置の二次転写位置(用紙Pに対して画像を形成する画像形成位置としての画像転写位置)である二次転写ローラ18(および二次転写対向ローラ15)よりも上流側に設けられる。特に第四CIS37は、二次転写ローラ18の近傍に配置される。
【0035】
次に、搬送装置30が、用紙Pを搬送しながらその位置ズレを補正する過程について、図3図10、および、図11のフロー図を用いて説明する。以下の説明では、まず、大きなサイズの用紙を搬送する場合について説明する。大きなサイズの用紙とは、後述する小サイズの用紙よりも搬送方向の長さの相対的に大きい用紙で、具体的には、その搬送方向の長さが第二CIS35と第四CIS37の間隔よりも大きな用紙を搬送する場合について説明する。
【0036】
図3(a)および図3(b)に示すように、用紙Pは、搬送ローラ31によって搬送されて第一CIS34、次に第二CIS35に到達する(図11のステップS1)。そして、これらのCISによって用紙Pの位置が検知され、用紙Pの斜行量および幅方向の位置ズレ量が算出される(ステップS2)。
【0037】
具体的な用紙P1の斜行量および幅方向の位置ズレ量の算出方法の一例を、図10を用いて説明する。
図10に示すように、第一CIS34および第二CIS35により、用紙部分と非用紙部分の境目を検知することができ、用紙Pの側端Paを検知することができる。具体的には、第一CIS34により点Pa1の幅方向位置L1を、第二CIS35により点Pa2の幅方向位置L2を検知することができる。そして、用紙Pの幅方向の位置ズレ量は、例えば、幅方向位置L1と幅方向位置L2を平均することによって求めることができる。また、用紙P1の傾斜角(斜行量)θは、第一CIS34と第二CIS35との搬送方向の距離Mを用いて、
TANθ=(L1-L2)/M・・・(1)
と表すことができる。この式(1)により用紙Pの斜行量を求めることができる。なお、用紙Pの幅方向の位置ズレ量については、一つのCISによって検知することも可能であり、例えば、図2の位置でその検知を行ってもよいし、複数のCISを用いてもよい。
【0038】
そして、図4(a)および図4(b)に示すように、算出された用紙Pの斜行量および幅方向の位置ズレ量を補正量として、挟持ローラ32が迎え動作を行う(ステップS3)。迎え動作は、用紙P1の斜行の方向、および、幅方向の位置ズレ方向へ、その位置ズレ量の分だけ、基準位置から移動する動作である。言い換えると、挟持ローラ32が、位置ズレした用紙P1に正対した状態で迎え入れることができるように、移動する動作である。また、挟持ローラ32の基準位置は、挟持ローラ32を構成する一対のローラの軸線方向が、搬送面に沿う方向のうち、用紙Pの搬送方向に対して直交する方向に配置された位置である(図3a参照)。
【0039】
図5(a)および図5(b)に示すように、用紙Pが挟持ローラ32に到達すると、用紙Pは挟持されてさらに下流側へ搬送される(ステップS4)。また、上流側の搬送ローラ31は、用紙Pから離間する。
【0040】
図6(a)および図6(b)に示すように、挟持ローラ32は、用紙Pを搬送すると共に、用紙Pの位置ズレを補正する戻し動作を行う(ステップS5)。この戻し動作は、挟持ローラ32が搬送面に沿う方向の回転および幅方向の移動を行う動作であり、用紙Pの先端が下流の第四CIS37に到達するまでの間に行われる。なお、挟持ローラ32は、戻し動作により基準位置へ移動する。
【0041】
次に、図7(a)および図7(b)に示すように、用紙Pが第四CIS37に到達すると(ステップS6)、大きいサイズの用紙の場合には(ステップS7のYes)、第二CIS35および第四CIS37によって用紙Pが再度検知され、用紙Pの斜行量および幅方向の位置ズレ量が算出される(ステップS8)。この際、第三CIS36による用紙Pの検知動作を同時に行って、より検知精度を高めてもよい。なお、この位置ズレ量の算出方法は、前述した算出方法と同様である。
【0042】
そして、算出された用紙Pの位置ズレ量に基づいて、挟持ローラ32が用紙Pを再度補正する(以下、この動作を用紙の再補正動作と呼ぶ。ステップS10参照。)。再補正動作を行うことにより、一度目の補正動作(ステップS2~S5)で補正できなかった位置ズレ、例えば、挟持ローラ32が用紙Pを挟持した際に生じた位置ズレなどの一度目の検知動作後の位置ズレを補正できる。
【0043】
この再補正動作時には、第二CIS35および第四CIS37によって、時々刻々の用紙Pの位置検知が繰り返され、その都度、挟持ローラ32の補正動作にフィードバックされるフィードバック制御が行われる。これにより、用紙Pの位置ズレ量を高精度に補正できる。以上の第二CIS35および第四CIS37による検知動作は、用紙Pの後端が第二CIS35を通過するまでの間、行われる。ただし、第三CIS36および第四CIS37により、検知動作を継続してもよい。また、再補正動作は、用紙Pが下流のローラに到達するまでの間に完了する。
【0044】
そして、図8(a)および図8(b)に示すように、位置ズレを補正された用紙Pは、下流の二次転写ローラ18に到達し(ステップS11)、画像の二次転写位置である二次転写ローラ18と二次転写対向ローラ15とのニップ位置にて画像を転写される。以上のようにして、搬送装置30による用紙Pの搬送動作および搬送動作中の位置ズレ補正動作が行われる。このように、用紙Pは、その位置ズレを補正された状態で二次転写位置に到達し、画像が転写される。また、用紙Pの搬送を終えた挟持ローラ32は、次の用紙の搬送に備えるために再び搬送路に正対した位置である基準位置(図2a参照)に復帰する。
【0045】
ところで、画像形成装置1は様々なサイズの用紙に対応している。そして、小サイズの用紙Pが搬送される場合には、図9(a)および図9(b)に示すように、用紙Pの先端Pbが第四CIS37に到達した時点で、用紙Pの後端Pcが第二CIS35を通過しており、第二CIS35と第四CIS37による同時の検知ができない。従って、小サイズの用紙Pの場合には(図11のステップS7のYes)、第三CIS36および第四CIS37によって用紙Pが検知され(ステップS9)、用紙Pの位置ズレ量が算出される。なお、小サイズの用紙とは、その搬送方向長さFが、第二CIS35と第四CIS37との間隔Eよりも小さい用紙である。なお、厳密には、用紙は斜行によってその搬送方向の先端および後端の位置が変化するため、その変化分の+αの長さを加味して間隔Eを設定する必要がある。従って、本実施形態の小サイズの用紙とは、その搬送方向長さが間隔E+α未満の用紙であり、大サイズの用紙とは、その搬送方向長さが間隔E+α以上の用紙とすることができる。
【0046】
そして、算出された位置ズレ量に基づいて、挟持ローラ32が再補正動作を行う(ステップS10)。大きなサイズの用紙の場合と同様、位置ズレを補正された用紙Pは、下流の二次転写ローラ18に到達し、二次転写位置にて画像を転写される(ステップS11)。
【0047】
以上のように本実施形態では、二次転写前の用紙Pの位置を補正することで、用紙Pに形成される画像の位置精度を高めることができる。また、両面印刷が行われる場合にも、第二面である裏面に画像を転写する前に用紙Pの位置を補正することができ、同じく用紙Pに形成される画像の位置精度を高めることができる。
【0048】
また本実施形態では、挟持ローラ32の下流側に2つの検知機構である第三CIS36および第四CIS37を配置する。これにより、大きなサイズの用紙の場合と小サイズの用紙の場合とで共に、より下流側の第四CIS37の検知結果を用いた再補正動作が可能になる。つまり、大きなサイズの用紙の場合には、第二CIS35および第四CIS37による検知結果に基づいて再補正動作を実施する。そして、第二CIS35および第四CIS37による同時の検知ができない小サイズの用紙の場合には、第二CIS35に代えて第三CIS36を用い、第三CIS36および第四CIS37による検知結果に基づいて再補正動作を実施する。より下流側の第四CIS37の検知結果を用いることで、再補正動作において、より下流側での位置ズレを加味して用紙Pの位置補正が可能になる。特に本実施形態では、下流側の第四CIS37を、二次転写ローラ18の上流側近傍に配置することで、二次転写位置直前までの位置ズレを加味した補正が可能になる。以上のことから、用紙の位置ズレを高精度に補正し、用紙に転写される画像の位置ズレを高精度に抑制できる。
【0049】
図12は、以上の搬送装置30の各動作を制御する制御部の構成を示すブロック図である。
図12に示すように、制御部60は、第一モータ制御部61と、第二モータ制御部62と、補正量算出部63と、用紙サイズ取得部64とを有する。本実施形態では、制御部60は画像形成装置本体側に設けられるが、必ずしもこれに限らず、搬送装置に設けられていてもよい。
【0050】
画像形成装置1本体には、ユーザが操作可能な、操作部としてのオペレーションパネル70が設けられる。ユーザは印刷をおこなう用紙P、すなわち給紙部5(または後述の図17の給紙部210)に積載する用紙Pのサイズをオペレーションパネル70上で入力する。用紙サイズ取得部64は、ユーザによるオペレーションパネル70の操作により入力された用紙サイズの情報を取得する。制御部60は、取得した用紙サイズが小サイズであるかどうかを判断し(図11のステップS7)、前述の検知動作に用いるCISを異ならせる(図11のステップS8,S9)。なお、オペレーションパネル70は画像形成装置1上に設置されたものではなく、ネットワークを介して制御部60に接続されたものであってもよい。また、オペレーションパネル70から用紙サイズ情報を取得する方式に代えて、画像形成装置1が、給紙部5(給紙部210)に積載された用紙Pのサイズを検知するセンサをそなえ、当該センサの検知結果に基づいて、制御部60が用紙サイズ情報を取得する方式にしてもよい。
【0051】
第一モータ制御部61および第二モータ制御部62は、補正量算出部63から送られた補正量の情報に基づいて、挟持ローラ32の各移動動作を制御する部分である。
【0052】
第一モータ制御部61は、挟持ローラ32の搬送面に沿う方向の回転動作を制御する部分である。第一モータ制御部61からの信号により、第一モータドライバ611が第一モータ612を駆動させて挟持ローラ32を搬送面に沿う方向に回転させる。そして、第一モータエンコーダ613により、挟持ローラ32の搬送面に沿う方向の回転量を検出する。
【0053】
第二モータ制御部62は、挟持ローラ32の幅方向の移動動作を制御する部分である。第二モータ制御部62からの信号により、第二モータドライバ621が第二モータ622を駆動させて挟持ローラ32を幅方向に移動させる。そして、第二モータエンコーダ623により、挟持ローラ32の幅方向の移動量を検出する。
【0054】
これらの第一モータ612および第二モータ622は、挟持ローラ32の迎え動作(図11のステップS3)、戻し動作(ステップS5)、再補正動作(ステップS10)、そして、基準位置への復帰動作の際に駆動されることになる。
【0055】
補正量算出部63は、各CISから受け取った検知情報から、用紙Pの斜行量および幅方向の位置ズレ量を算出する。そして、補正量算出部63は、この位置ズレ量の情報を第一モータ制御部61および第二モータ制御部62に送る。
【0056】
第一モータ制御部61および第二モータ制御部62は、補正量算出部63から入力された補正量(移動量)に従って、各モータを駆動させ、挟持ローラ32を用紙に沿った方向へ回転および幅方向に移動させる。
【0057】
以上のように、制御部60が、各CISの検知情報に基づいて挟持ローラ32を移動させ、用紙Pの位置ズレを補正できる。
【0058】
次に、前述した各動作を行う挟持ローラ32について、図13図16を用いて、より詳細にその構成を説明する。挟持ローラ32が行う具体的な動作としては、用紙を搬送するための回転動作、位置ズレを補正するための搬送面に沿う方向の回転動作、および、幅方向への移動動作等がある。
【0059】
挟持ローラ32は、ローラ移動機構により、搬送面に沿う方向の回転動作および幅方向への移動動作を行うことができる。このローラ移動機構は、図13に示すように、本体フレーム151の上に固定されたベースフレーム152を有する。このベースフレーム152は上下2枚の水平板153、154を有し、上側水平板154の上に、挟持ローラ32を支持するローラ保持部材110が水平方向に可動に配設されている。
【0060】
図14に示すように、上側水平板154の上面における、ローラ保持部材110の底面の四隅に対応する位置に、4個のフリーベアリング111(ボールトランスファー)が配設されている。フリーベアリング111の上に、ローラ保持部材110が水平方向で前後左右に移動可能に配設されている。なお、図14の矢印は、用紙の搬送方向を示している。
【0061】
フリーベアリング111は公知のように台座の凹部に鋼球が回転自在に嵌め込まれたもので、鋼球の頂部がローラ保持部材110の底面に点接触している。フリーベアリング111の最低数は3個であるが、図示例では4個配設してローラ保持部材110の安定移動化を図っている。
【0062】
図13に示すように、ローラ保持部材110は、用紙Pの搬送方向と直交する方向に延びた板状フレームで構成されている。板状フレームの両端は上方に向けて直角に折曲され、この折曲部分に軸受114、115が上下に並んで固定されている。ローラ保持部材110の下面の片側には、用紙Pの搬送方向と直交する方向において所定長さで延びた回動受け部110bが、ローラ保持部材110の下面に垂直に一体形成されている。
【0063】
挟持ローラ32は、下段側の駆動ローラ32bと上段側の従動ローラ32aとで構成されている。上段側の従動ローラ32aの回転軸はローラ保持部材110の上側の軸受114に支持され、下段側の駆動ローラ32bの回転軸はローラ保持部材110の下側の軸受115に支持されている。
【0064】
下側の軸受115から外側に突出した駆動ローラ32bの回転軸にロータリーエンコーダ144が装着されている。そしてロータリーエンコーダ144で検知される駆動ローラ32bの回転数に基づいて、後述する回転数可変型ローラ駆動モータ140が駆動され、そして従動ローラ32aが駆動ローラ32bの回転に従動して回転するようになっている。
【0065】
ローラ保持部材110の片側下面には、下方に向けて短く突出した被ガイド部としての支軸110aが固定されている。この支軸110aの下端部にガイドコロ136が回転可能に装着され、また支軸110aの中間部にはカムフォロワ135が回転可能に装着されている。
【0066】
下側水平板153に、第1モータ120、第2モータ130及びロータリーエンコーダ128、138が左右方向に並んで配設されている。一方の第1モータ120は斜行補正用であって、その回転軸に駆動プーリ121が固定されている。他方の第2モータ130は幅方向の位置ズレ補正用であって、その回転軸に別の駆動プーリ131が固定されている。
【0067】
なお、一方のロータリーエンコーダ128に代えて、後述の第1回動カム124やレバー部材125の動きと位置を検知する任意のエンコーダ(例えばリニアエンコーダ)や任意のセンサ(例えばレーザ変位計)を設けてもよい。また他方のロータリーエンコーダ138に代えて、後述のシフトカム134やローラ保持部材110の動きと位置を検知する任意のエンコーダ(例えばリニアエンコーダ)や任意のセンサ(例えばレーザ変位計)を設けてもよい。
【0068】
上下の水平板153、154の間に、従動プーリ122、132が回転可能に支持されている。従動プーリ122、132の回転軸122a、132aの上下両端部は、上下の水平板153、154にそれぞれ回転可能に軸支されている。回転軸122aと132aは互いに平行である。そして、それぞれの駆動プーリ121、131と従動プーリ122、132との間に、タイミングベルト123、133が架け渡されている。
【0069】
下側水平板153から下方に突出した従動プーリ122、132の回転軸122a、132aに、ロータリーエンコーダ128、138の回転側部品である回転板128a、138aが固定されている。この回転板128a、138aの周縁部には複数のスリットが連続的に形成され、周縁部を上下に挟むようにしてロータリーエンコーダ128、138の固定側部品である投受光器が配設されている。
【0070】
上側水平板154から上方に突出した従動プーリ122、132の回転軸122a、132aの上端部に、第1回動カム124、シフトカム134が固定されている。第1回動カム124、シフトカム134のカム曲線はそれぞれ等速度カム曲線となるように形成されている。等速度カムを使用することで、第1回動カム124、シフトカム134の回転角と後述のカムフォロワ126、135の直動移動距離が比例関係になり、支軸110aのシフト位置制御やレバー部材125の回動制御が容易になる。
【0071】
片側のシフトカム134に隣接する位置の上側水平板154に、用紙搬送方向と直交する方向に延びたガイド部としての長穴154aが形成されている。この長穴154aに、支軸110aの下端部のガイドコロ136が挿入されている。図14に示すように、支軸110aの中間部のカムフォロワ135は、シフトカム134の周縁部のカム面に、引張バネ113の力で当接している。長穴154aはガイドコロ136を直線上に移動案内するためのもので、長穴に代えて長溝とすることも可能である。
【0072】
シフトカム134とは反対側の上側水平板154上に支点軸154bが突設され、この支点軸154bにレバー部材125が水平方向に回動可能に配設されている。このレバー部材125の両端部上に一体形成された支軸125a、125bに、カムフォロワ126と第1押圧部としての作用コロ127が玉軸受などの任意の軸受材を介して回転可能に装着されている。カムフォロワ126の外周面は、第1引張バネ112のバネ力で第1回動カム124の外周面に当接している。作用コロ127の外周面は第1引張バネ112のバネ力で回動受け部110bに当接している。
【0073】
すなわち、図13に示すように、斜行補正用の第1モータ120、駆動プーリ121、タイミングベルト123、従動プーリ122、第1回動カム124及びレバー部材125、作用コロ127によって、第1押圧部としての作用コロ127を用紙Pの搬送路の方向で前後動する第1駆動部が構成されている。
【0074】
また、幅方向の位置ズレ補正用の第2モータ130、駆動プーリ131、タイミングベルト133、従動プーリ132及びシフトカム134によって、被ガイド部としての支軸110aにカムフォロワ135を介して当接した第2押圧部(カム外周面)を有し、支軸110aを用紙Pの搬送路と直交する方向で左右動する第2駆動部が構成されている。
【0075】
本体フレーム151上であって挟持ローラ32の軸方向一端側に、ブラケット155が垂直に配設されている。このブラケット155の外側面に、挟持ローラ32の駆動ローラ32bを回転駆動するための回転数可変型ローラ駆動モータ140が固定されている。ローラ駆動モータ140の回転軸はブラケット155の内側に向けて水平に突出し、この内側に突出した回転軸にピニオン141が固定されている。ピニオン141はブラケット155の内側に軸支された減速ギア142と噛み合わされている。
【0076】
減速ギア142の回転軸142aは、2段スプラインカップリング143を介して、挟持ローラ32の駆動ローラ32bの回転軸32b1に連結されている。これにより、ローラ駆動モータ140の回転駆動力がピニオン141、減速ギア142及び2段スプラインカップリング143を介して駆動ローラ32bに伝達され、挟持ローラ32が回転駆動される。したがって、挟持ローラ32が用紙Pを挟持した状態で駆動ローラ32bがローラ駆動モータ140で回転することで用紙Pを任意の搬送速度で搬送することができる。
【0077】
2段スプラインカップリング143は一種の等速自在継手であって、図13の部分拡大図に示すように、第1スプラインギア143a、第2スプラインギア143b、中間スプラインギア143c、ガイドリング143d等で構成されている。
【0078】
第1スプラインギア143aは外歯車であって、第1駆動部の減速ギア142と共に回転する回転軸142aに設置されている。回転軸142aは、ブラケット155に軸受を介して回転可能に保持されている。
【0079】
第2スプラインギア143bも外歯車であって、挟持ローラ32の駆動ローラ32bの回転軸32b1に連結されている。中間スプラインギア143cは内歯車であって、挟持ローラ32(ローラ保持部材110)が幅方向に移動しても2つのスプラインギア143a、143bに常に噛合するように幅方向に延設されている。また、2つのスプラインギア143a、143bは、挟持ローラ32(ローラ保持部材110)が斜め方向に回動しても中間スプラインギア143cに噛合するようにクラウン状に形成されている。
【0080】
このような2段スプラインカップリング143を用いることで、挟持ローラ32が良好に回転駆動される。すなわち、挟持ローラ32が支軸110aを中心にして略水平面方向に回動したり、幅方向にスライド移動したりしても、固定側のローラ駆動モータ140の駆動力が、挟持ローラ32の駆動ローラ32bに精度よく確実に伝達される。
【0081】
なお、ガイドリング143dは中間スプラインギア143cの幅方向両端部にそれぞれ設置された略環状のストッパ部材であって、2つのスプラインギア143a、143bが幅方向に相対的に移動して2段スプラインカップリング143から脱落するのを防止する。
【0082】
図15(a)~(d)は、挟持ローラ32の位置ズレ補正時の動作を示す図で、図15(b)と図15(c)は、用紙Pの斜行補正と幅方向の位置ズレ補正の動作を分かりやすく示すために、斜行補正と幅方向の位置ズレ補正の動作を分けて示した図である。実際には、図15(d)のように斜行補正動作と幅方向の位置ズレ補正動作が組み合わせて行われる。
【0083】
図15(a)→(b)は用紙Pの幅方向の位置ズレ補正動作を示したものである。すなわち、第2モータ130が駆動されてシフトカム134が回転されると、シフトカム134によって第2引張バネ113のバネ力に抗するようにローラ保持部材110が右側にスライド移動する。この際、カムフォロワ135は回転しながらシフトカム134の外周を移動するので、幅方向の位置ズレ補正用の第2モータ130に作用するローラ保持部材110の移動負荷が小さくて済む。
【0084】
また、レバー部材125の作用コロ127は、第1引張バネ112の力を受けながら回動受け部110bの面上を転動するので、ローラ保持部材110のスライド移動がスムーズである。換言すると、作用コロ127がローラ保持部材110の幅方向シフト移動による摩擦負荷を受けないので、ローラ保持部材110のスムーズな回動とシフト移動が可能となっている。なお、第1回動カム124が停止している状態では回動受け部110bも用紙搬送方向では停止したままであるから用紙Pの斜行補正動作は発生しない。
【0085】
図15(a)→(c)は用紙Pの斜行補正動作を示したものである。すなわち、第1モータ120が駆動されて第1回動カム124が回転されると、レバー部材125が第1回動カム124に押動されて支点軸154bを中心に反時計方向に回動する。
【0086】
この結果、ローラ保持部材110が回動受け部110bの位置でレバー部材125の作用コロ127に押動され、第1引張バネ112のバネ力に抗するようにローラ保持部材110が右端の支軸110aを中心として反時計方向に回動する。この際、カムフォロワ126、135は回転しながら第1回動カム124、シフトカム134の外周をそれぞれ移動するので、斜行補正用の第1モータ120に作用するローラ保持部材110の回動負荷が小さくて済む。
【0087】
図15(a)→(d)は用紙Pの幅方向の位置ズレ補正動作と斜行補正動作の組み合わせを示したものである。すなわち、第1モータ120が駆動されて第1回動カム124が回転され、かつ、第2モータ130が駆動されてシフトカム134が回転されると、前述した(b)の幅方向の位置ズレ補正動作と(c)の斜行補正動作が組み合わされた動作が発生する。
【0088】
このように本実施形態では、用紙の搬送路の幅方向に移動可能かつ支軸110aを中心に回転可能なローラ保持部材110に挟持ローラ32を保持し、固定側のローラ駆動モータ140の回転駆動力は2段スプラインカップリング143を介して挟持ローラ32に伝達するようにしている。したがって、ローラ駆動モータ140及び幅方向の位置ズレ補正用の第2モータ130を固定側配置とすることが可能となり、ローラ保持部材110から上の構造の軽量化により斜行補正の応答性向上を図れる。
【0089】
前述した幅方向の位置ズレ補正と斜行補正において、図16に示すように、1)用紙Pの斜行量をθ、2)幅方向の位置ズレ補正量をΔy、3)用紙の幅方向基準位置(被ガイド部である支軸110aの初期位置)と、第1駆動部の第1押圧部としての作用コロ127の支軸125bの中心との間の距離をdとする。なおΔyは、図16で用紙の幅方向基準位置から右側がプラス、左側がマイナスである。また、図16の矢印Bは、用紙の搬送方向を示している。
【0090】
この場合、作用コロ127で前後動する回動受け部110bの前後動距離をΔxとしたとき、下記の数式(2)で演算した結果に基づいて、制御部によって第1駆動部としての斜行補正用の第1モータ120が制御される。
Δx=(d+Δy)tanθ …(2)
【0091】
(2)式においてΔxを演算するに際し、tanθに対して単にdを掛けるのではなく、(d+Δy)を掛ける理由は次の通りである。すなわち、前述したように図15(b)の幅方向の位置ズレ補正動作又は図15(c)の斜行補正動作のみが発生することは稀であり、通常は図15(d)のように斜行補正動作と幅方向の位置ズレ補正動作が組み合わされた形となる。
【0092】
したがって、Δyを無視して後述する数式(3)で演算したΔxでローラ保持部材110を回動(迎え作動)させると、迎え作動が大きくなり過ぎたり小さくなり過ぎたりする。つまり幅方向の位置ズレ補正に伴う斜行補正誤差が発生する。
【0093】
例えば図16のように幅方向の位置ズレ補正のため支軸110aがΔyだけ右側に移動した場合、この移動を考慮せずに斜行補正用の第1モータ120を駆動して回動受け部110bをΔxだけ移動すると、斜行量を補正しきれない。つまり、制御部は下記の数式(3)でΔxを演算するので、迎え作動量が小さ過ぎる結果、その復動時の等量の戻し作動量では斜行量を補正しきれない。
Δx=d・tanθ …(3)
【0094】
この反対に図16で幅方向の位置ズレ補正のため、支軸110aがΔyだけ反対側(すなわち左側)に移動した場合を考えると、この移動を考慮せずに斜行補正用の第1モータ120を駆動して回動受け部110bをΔxだけ移動すると、今度は斜行量の補正し過ぎとなる。つまり、迎え作動量が大き過ぎる結果、その復動時の等量の戻し作動量では大き過ぎて斜行量の補正し過ぎとなる。従って、数式(2)を用いて斜行補正用の第1モータ120を制御する。
【0095】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0096】
本発明に係る画像形成装置は、図1に示すカラー画像形成装置に限らず、モノクロ画像形成装置や、複写機、プリンタ、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等であってもよい。また電子写真方式の画像形成装置に限らず、搬送されるシートに液体を吐出する液体吐出装置にも適用可能である。
【0097】
例えば、液体吐出装置として、インクジェット方式の画像形成装置に設置される搬送装置に対しても本発明を適用することができる。また、本発明の搬送装置は、画像形成されたシート(用紙)を後処理する後処理装置にも適用することができる。以下、図17を用いてインクジェット方式の画像形成装置について、図18を用いて後処理装置について説明する。
【0098】
図17に示すように、インクジェット方式の画像形成装置1は、給紙部210と、搬送装置220と、画像形成部230と、乾燥部240と、排紙部250とを備えている。
【0099】
給紙部210から送り出された用紙Pは、搬送装置220によって搬送されると共に、前述した実施形態と同様、用紙Pの幅方向の位置ズレおよび斜行が補正された状態で、画像形成部230へ送り出される。
【0100】
画像形成部230においては、用紙Pが円筒形状ドラム231に位置決めされ、円筒形状ドラム231の回転によって図中矢印方向へ搬送される。そして、各色の吐出ヘッド232の下部(用紙Pへの画像形成位置)に所定のタイミングで用紙Pが搬送され、各色のインクが用紙Pに吐き出され、用紙Pの表面上に画像が形成される。
【0101】
画像形成部230によって画像が形成された用紙Pは、乾燥部240に搬送されてインク中の水分を蒸発させた後、排紙部250にて、作業者が取り出し可能な位置に排出される。
【0102】
両面印刷が行われる場合には、乾燥工程の後、用紙Pが反転搬送路260へ送られて、用紙Pの表裏が反転した状態で、再び搬送装置220へ送り出される。これにより、裏面への画像形成時においても、用紙Pの位置ズレが補正された状態で、画像形成部230の画像形成位置(円筒形状ドラム231と各色の吐出ヘッド232の対向位置)において用紙Pに画像が形成される。その後、乾燥部240にてインク中の水分を蒸発させた後、排紙部250にて、作業者が取り出し可能な位置に排出される。
【0103】
図18に、後処理装置に本発明を適用した実施形態を示す。図18に示す後処理装置300は、用紙Pにパンチ処理を行う穿孔装置310と、用紙Pに綴じ処理を行うステープル処理装置320と、用紙Pに中折り処理を行う折り処理装置330と、複数のトレイ(積載部)341,342,343とを備えている。後処理装置300は、画像形成装置1から搬送された用紙Pを3つの搬送経路Q1~Q3のうちいずれかの搬送経路に搬送して、異なる後処理を施す。
【0104】
第1搬送経路Q1は、穿孔装置310によってパンチ処理が施された用紙P、又はパンチ処理が施されない用紙Pを、第1トレイ341へ搬送するための経路である。第2搬送経路Q2は、用紙Pをステープル処理装置320へ搬送して、綴じ処理が施された用紙Pを第2トレイ342へ搬送するための経路である。第3搬送経路Q3は、用紙Pを折り処理装置330へ搬送して、中折り処理された用紙Pを第3トレイ343へ搬送するための経路である。
【0105】
ここで、画像形成装置1から後処理装置300に搬送された用紙Pは、まず、穿孔装置310の上流側に設けられたレジスト対向ローラ301およびレジストローラ302によって、前述と同様に用紙Pの斜行補正と幅方向の位置ズレ補正が行われる。これにより、その後のパンチ処理、綴じ処理又は中折り処理の精度向上を図れるようになる。
【0106】
本発明に係るシート搬送装置が搬送する「シート」は、紙、コート紙、OHPシート、ラベル紙、フィルム、布帛等を含む。さらに、「シート」は、樹脂製シート、表裏面の保護紙、金属製シート、銅箔等の金属箔やメッキ処理等を施した電子回路基板材、特殊フィルム、プラスチックフィルム、プリプレグ、電子回路基板用シート等を含む。プリプレグは、炭素繊維等に予め樹脂が含浸してあるシート状の材料である。プリプレグの例としては、炭素繊維やガラスクロスのような繊維状補強材に、硬化剤、着色剤などの添加物を混合した熱硬化性樹脂等を含浸させ、加熱または乾燥して半硬化状態にしたシート状の強化プラスチック成形材料が含まれる。
【0107】
また、シート搬送装置の構成を備えた「画像形成装置」は、紙、OHPシート、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体に現像剤やインクを付着させて画像形成を行なう装置を含む。また、「画像形成」は、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することをも含む。
【符号の説明】
【0108】
1 画像形成装置
6 搬送路
30 搬送装置
32 挟持ローラ(補正部材)
34 第一CIS(他の上流側検知機構)
35 第二CIS(上流側検知機構)
36 第三CIS(第一下流側検知機構)
37 第四CIS(第二下流側検知機構)
60 制御部
B 用紙搬送方向
C 用紙表面に沿う回転の方向
D 幅方向の移動方向
P 用紙(シート)
Pa 用紙の側端
Pb 用紙の先端
Pc 用紙の後端
【先行技術文献】
【特許文献】
【0109】
【文献】特開2016-175776号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18