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特許7528807硫黄溶融設備及びこれを用いた溶融硫黄の製造方法
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  • 特許-硫黄溶融設備及びこれを用いた溶融硫黄の製造方法 図1
  • 特許-硫黄溶融設備及びこれを用いた溶融硫黄の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】硫黄溶融設備及びこれを用いた溶融硫黄の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 17/00 20060101AFI20240730BHJP
   F27D 3/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C01B17/00 Z
F27D3/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021017028
(22)【出願日】2021-02-05
(65)【公開番号】P2022120250
(43)【公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 拓二
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 智孝
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-159830(JP,A)
【文献】特開昭52-056095(JP,A)
【文献】特開平11-047905(JP,A)
【文献】特開2011-206680(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 17/00 - 17/98
F27D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体硫黄を溶融して貯留する溶融槽と、該溶融槽の上部に設けられた該固体硫黄の投入用の2箇所の原料投入部とから構成される硫黄溶融設備であって、前記2箇所の原料投入部の各々は、鉛直方向に延在する筒状体と、該筒状体の上端部に接続する漏斗状体とからなり、前記2箇所の原料投入部のうち少なくとも一方の筒状体の下端開口部が前記溶融槽内において維持されている液体硫黄の液面より下方に位置していることを特徴とする硫黄溶融設備。
【請求項2】
前記2箇所の原料投入部のうち少なくとも一方の筒状体の下端開口部は、前記液面からの深さが20mm以上であることを特徴とする、請求項1記載の硫黄溶融設備。
【請求項3】
前記液体硫黄の液面は、前記溶融槽内に設けた堰を該液体硫黄がオーバーフローすることにより維持されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の硫黄溶融設備。
【請求項4】
前記溶融槽内の液体硫黄は、125℃以上150℃以下に液温が調整されていること特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の硫黄溶融設備。
【請求項5】
前記液体硫黄は、硫化水素製造プロセスの原料として用いられることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の硫黄溶融設備。
【請求項6】
上部に2箇所の原料投入部を有する溶融槽を用いて固体硫黄から溶融硫黄を製造する方法であって、前記2箇所の原料投入部のうちの一方から固体硫黄を投入する際は、前記2箇所の原料投入部の少なくとも一方の下端開口部を前記溶融槽内の液体硫黄によって液封状態にしておくことを特徴とする溶融硫黄の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硫黄溶融設備及びこれを用いた溶融硫黄の製造方法に関し、特に、硫化水素ガス製造用の原料として使用する固体硫黄を溶融して一時的に貯留する硫黄溶融設備及びこれを用いた溶融硫黄の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
低ニッケル品位のニッケル酸化鉱石を原料に用いる場合に適した製錬法として、High Pressure Acid Leaching(HPAL)法と称する湿式製錬法が知られている。このHPAL法は、原料のニッケル酸化鉱石に水を加えて調製した鉱石スラリーを硫酸と共にオートクレーブに装入し、更に高圧蒸気を吹き込んで高温高圧下で反応させることで有価金属のニッケル及びコバルトを酸浸出させるものであり、得られたニッケルやコバルトを含む浸出液に対して、鉄分や亜鉛分などの不純物を除去した後、硫化水素ガスによる硫化処理を行なうことにより、これらニッケル及びコバルトは混合硫化物として回収される。
【0003】
上記の硫化処理に用いる硫化水素ガスは、例えば特許文献1に開示されているような硫化水素製造装置から一般的に供給される。この特許文献1の硫化水素製造装置は、水素精製設備によって生成される水素ガスと、液体硫黄とを触媒の存在下で反応させることで硫化水素ガスが生成される。硫黄の融点は約120℃であるため、上記の液体硫黄は例えば特許文献2に開示されているような硫黄溶融設備で一般的に作製される。この特許文献2の硫黄溶融設備は、溶融された液体硫黄を貯留する溶融槽と、該溶融槽内に原料の固体硫黄を投入するシュートと、該投入された固体硫黄を熱媒により加熱して溶融するスチームコイルなどの加熱手段と、溶融した硫黄を撹拌する撹拌機とから構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-142963号公報
【文献】特開昭52-56095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献2のような構造の硫黄溶融設備では、固体硫黄が充填されているフレキシブルコンテナバッグ(以下、フレコンバッグと称する)のクレーン等による上記のシュートの上方までの搬送、このフレコンバッグの解袋による固体硫黄の溶融槽内への投入、及び該投入後の空になったフレコンバッグの後片付け等の作業が必要になる。そのため、固体硫黄の投入部を2箇所に設けて固体硫黄を交互に溶融槽内に投入することで、上記の投入作業の作業効率を高めることが行なわれており、これにより単位時間当たりの固体硫黄の投入量を増やすことが可能になる。
【0006】
しかしながら、加熱状態が維持されている溶融槽内の液体硫黄に常温の固体硫黄が投入されると、液体硫黄の温度が投入した部分において局所的に低下するため、上記のように2箇所の投入部のうちの一方から固体硫黄を投入したときは、固体硫黄を投入した側の投入部の下方に滞留している液体硫黄の液温が、固体硫黄を投入していない側の投入部の下方に滞留している液体硫黄の液温よりも低下する。
【0007】
このように、2箇所の投入部の下方にそれぞれ滞留している液体硫黄同士で温度差が生ずると、その影響を受けて、液面を介して存在する該溶融槽内の気相部においても2箇所の投入部の下方にそれぞれ存在するガス同士で温度差が生じる。その結果、固体硫黄を投入した側の投入部の下方の気相部に向って、固体硫黄を投入していない側の投入部の下方の気相部からガスの流れが発生し、更にはこの固体硫黄を投入していない側の投入部から溶融槽の外部の空気が溶融槽内に流れ込むことになる。
【0008】
上記の溶融槽内に流れ込んだ外部空気は、該溶融槽内の気相部に漂うガスや微粉を巻き込んで上記の固体硫黄を投入した側の投入部から溶融槽外に放出されるため、該溶融槽の周囲の作業環境を悪化させることが問題になっていた。本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、硫黄溶融設備に設けた2箇所の投入部のうちの一方から固体硫黄を槽内に投入する際に、外部空気がもう一方の投入部から溶融槽内に流れ込んで該溶融槽内のガスを伴って該投入した側の投入部から該溶融槽外に放出される問題を防ぐことが可能な硫黄溶融設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る硫黄溶融設備は、固体硫黄を溶融して貯留する溶融槽と、該溶融槽の上部に設けられた該固体硫黄の投入用の2箇所の原料投入部とから構成される硫黄溶融設備であって、前記2箇所の原料投入部の各々は、鉛直方向に延在する筒状体と、該筒状体の上端部に接続する漏斗状体とからなり、前記2箇所の原料投入部のうち少なくとも一方の筒状体の下端開口部が前記溶融槽内において維持されている液体硫黄の液面より下方に位置していることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る溶融硫黄の製造方法は、上部に2箇所の原料投入部を有する溶融槽を用いて固体硫黄から溶融硫黄を製造する方法であって、前記2箇所の原料投入部のうちの一方から固体硫黄を投入する際は、前記2箇所の原料投入部の少なくとも一方の下端開口部を前記溶融槽内の液体硫黄によって液封状態にしておくことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、溶融槽に設けた2箇所の投入部のうちの一方から固体硫黄を投入する際、外部空気がもう一方の投入部から溶融槽内に流れ込んで該溶融槽内のガスを伴って該投入した側の投入部から溶融槽外に放出される問題を防ぐことができる。これにより、該溶融槽の周囲の作業環境を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の硫黄溶融設備を用いて作製される液体硫黄を原料として製造した硫化水素ガスが硫化剤として添加されるHPAL法による湿式製錬プロセスのブロックフロー図である。
図2】本発明の硫黄溶融設備の一具体例の模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.硫化水素製造プロセス
先ず、本発明の硫黄溶融設備を用いて作製した液体硫黄を原料とする硫化水素製造プロセスについて説明する。硫化水素の製造プロセスとしては、触媒の存在下で硫黄と水素とを反応させて硫化水素を生成する触媒反応法と、触媒を用いないで硫黄と水素とを反応させて硫化水素を生成する無触媒反応法とが知られている。前者の触媒反応法により硫化水素を製造する設備では、例えば貯留槽内の液体硫黄を加熱することで発生させた硫黄ガスと、別途用意した水素ガスとを触媒が充填された反応管内に導入し、この反応管内で例えば圧力5~50kPaG程度、温度300~400℃程度の条件で反応させることで硫化水素ガスが生成される。一方、後者の無触媒反応法により硫化水素を製造する設備では、例えば圧力約800kPaG、温度約470℃の高温高圧条件下の反応容器内に保持されている液体硫黄内に水素ガスを吹き込み、この水素ガスが該液体硫黄内を上昇する間にその気液界面において液体硫黄と反応させることで硫化水素ガスが生成される。
【0014】
上記の触媒反応法及び無触媒反応法のいずれの製造設備においても、生成した硫化水素ガスには未反応の硫黄ガスが含まれうるので、一般的には生成した硫化水素ガスを熱交換器に導入し、ここで冷媒を用いて冷却することにより該硫黄ガスを凝縮させて分離除去することが行なわれる。このようにして硫黄ガスが除去された後の硫化水素ガスは、更に必要に応じて温水による洗浄により純度が高められた後、残存する水分を乾燥等により除去することで高純度の硫化水素ガスが得られる。
【0015】
2.湿式製錬プロセス
上記の硫化水素製造プロセスで製造された硫化水素ガスは、HPAL法によるニッケル酸化鉱石の湿式製錬プロセスにおいて硫化剤として使用される。この湿式製錬プロセスは、図1に示すように、前処理工程S1、浸出工程S2、向流多段洗浄工程S3、中和工程S4、脱亜鉛工程S5、ニッケル回収工程S6、及び最終中和工程S7の一連の湿式処理工程から一般的に構成される。
【0016】
これら工程の各々について説明すると、前処理工程S1では、原料のニッケル酸化鉱石に対して粉砕及び湿式分級を行なうことにより所定の粒度を有するニッケル酸化鉱石を含んだ鉱石スラリーの調製を行なう。浸出工程S2では、得られた鉱石スラリーを硫酸と共にオートクレーブに装入し、更に高圧蒸気を吹き込んで高温高圧下で浸出処理を行なうことで、有価金属のニッケル及びコバルトを浸出させて浸出スラリーを生成する。向流多段洗浄工程S3では、得られた浸出スラリーを直列に接続したシックナー群の先頭に導入し、反対側から導入した洗浄液と互いに向流に流すことで該浸出スラリーを洗浄しながらこれに含まれる浸出残渣を除去して浸出液を得る。中和工程S4では、得られた浸出液に中和剤を添加して鉄分等の不純物を中和澱物の形態で分離除去して中和終液を得る。脱亜鉛工程S5では、得られた中和終液に硫化剤として上記の硫化水素ガスを添加して不純物の亜鉛を亜鉛硫化物として分離除去することでニッケル及びコバルトを含む母液を得る。ニッケル回収工程S6では、得られた母液に硫化剤として上記の硫化水素ガスを添加してニッケル及びコバルトから混合硫化物を生成して回収する。最終中和工程S7では、ニッケル回収工程S6から排出されるニッケル貧液及び向流多段洗浄工程S3から排出される浸出残渣に中和剤を添加して無害化処理を行なう。
【0017】
3.硫黄溶融プロセス
次に、本発明の実施形態の硫黄溶融設備及びこれを用いた溶融硫黄の製造方法について説明する。図2に示すように、本発明の実施形態の硫黄溶融設備は、上面が天板で覆われた略直方体形状のステンレス製の溶融槽1と、該溶融槽1内に投入された固体硫黄SSの溶融用、及び該溶融槽1内に好ましくは125℃以上150℃以下の液温で貯留されている液体硫黄LSの保温用の蒸気が導入される複数の蒸気コイル2と、該溶融槽1内の液体硫黄LSを撹拌する撹拌機3と、クレーン等に吊り下げられた状態のフレコンバッグBを解袋してその内部に充填されている固体硫黄SSを該溶融槽1内に投入する際に周囲に飛び散らないようにガイドする原料投入部としての2個のシュート4、4と、溶融槽1内の液体硫黄LSをオーバーフローさせることでその液面レベルを一定に維持する堰5と、溶融槽1内において上記の堰5によって支切られている抜出部に設けられており、上記オーバーフローした液体硫黄LSの抜出用の縦型ポンプ6と、該抜出部に戻される液体硫黄に含まれる硫化水素ガスが溶融槽1の気相部に拡散するのを防止する遮蔽板7とから主に構成される。
【0018】
上記のように2個のシュート4、4を設ける理由は、これら2個のシュート4、4を交互に用いて固体硫黄SSを溶融槽1内に投入することで、一方のシュートから固体硫黄を投入している間に、もう一方のシュートにおいて投入済みの空のフレコンバッグBを後片付けたり、次に投入する固体硫黄SSのフレコンバッグBをもう一方のシュートに向けてクレーンにより搬送したりする等の作業を行なうことができるので、単位時間当たりの固体硫黄SSの投入量を増やして液体硫黄LSの生産性を高めることができるからである。フレコンバッグBから投入した固体硫黄SSを溶融することで作製された所定の液温を有する液体硫黄LSは、上記の堰5で支切られている抜出部にオーバーフローにより流れ込んだ後、縦型ポンプ6によって抜き出されて前述した硫化水素の製造設備に移送され、そこで原料として使用される。
【0019】
ところで、容量1m程度の一般的なフレコンバッグBを解袋してその内の粉粒状の固体硫黄SSを例えば図2に示すように溶融槽1の上部に設けた左側のシュート4から一度に投入した場合、固体硫黄SSは投入時は常温であるため直ぐには溶融せず、溶融槽1内において固体硫黄SSが投入された左側の下方の底部に一部堆積する。これにより、溶融槽1内の液体硫黄LSのうち該固体硫黄SSが投入された左側の温度が局所的に低下し、溶融槽1内の液体硫黄において温度勾配が生ずる。この影響を受けて、溶融槽1の気相部のうち、この固体硫黄SSを投入した左側のシュート4の下方側の温度が固体硫黄SSを投入していない右側のシュート4の下方側の温度よりも低くなる。このように、溶融槽1内の気相部において温度勾配が生ずると、該気相部において気流が発生する。
【0020】
具体的には、左側のシュート4から固体硫黄SSを投入した場合は、図2の白矢印に示すように、溶融槽1内の気相部において、右側のシュート4の下方側に存在している高温のガスが、これよりも低温のガスが存在している左側のシュート4の下方側に流れ込む。この気相部におけるガスの流れに起因して、従来の溶融槽では、溶融槽の外部空気が固体硫黄を投入しない側のシュートから溶融槽内部に流れ込み、この溶融槽内部に流れ込んだ外部空気が溶融槽内のガスを伴って固体硫黄を投入した側のシュートから溶融槽外部に放出されるため、溶融槽の周囲の環境悪化を招いていた。このガスの流れは、溶融槽内の液体硫黄の温度勾配がほぼなくなるまで続くことになる。
【0021】
これに対して、本発明の実施形態の硫黄溶融設備は、固体硫黄の投入用の2個のシュート4、4のうち少なくとも一方の下端開口部が、液体硫黄LSの液面下に常時位置することで浸漬している。これにより、上記の従来の溶融槽のような固体硫黄SSの投入時に生じるガスの流れが遮断されるので、固体硫黄SSを投入した側のシュートを介して溶融槽1内の気相部のガスが溶融槽1の外部に放出されなくなり、この放出したガスによる溶融槽1の周囲の環境悪化の問題を抑制することができる。
【0022】
具体的には、図2に示すように、上記の2個のシュート4、4の各々を、鉛直方向に延在する筒状体と、該筒状体の上端部に接続する漏斗状体とで構成する。そして、これらシュート4、4のいずれか一方又は両方の上記筒状体の下端開口部を、溶融槽1内においてオーバーフローにより維持されている液体硫黄LSに常時浸漬させる。この場合、常時浸漬させる下端開口部の液面NLLからの深さDは20mm以上が好ましい。
【0023】
上記のように、上記2個のシュート4、4のうち、少なくとも一方の下端開口部を液体硫黄LSに常時浸漬した状態にすることで、当該下端開口部が液体硫黄LSで液封されるので、固体硫黄SSの投入時に溶融槽1の外部空気が2個のシュート4、4のうちの一方から溶融槽1内に流れ込んで溶融槽1内のガスを伴ってもう一方から溶融槽1外部に放出される問題を防ぐことができる。なお、少なくとも一方のシュートの下端開口部の液面NLLからの深さDを好ましくは20mm以上とする理由は、固体硫黄SSの投入や撹拌機3による撹拌等により生ずる液面NLLの変動によって上記下端開口部が液封されなくなるのを防ぐためである。
【0024】
上記の2個のシュート4、4のいずれか一方の下端開口部のみが液体硫黄LSの液面下に位置する構造であれば、その下端開口部の液面NLLからの深さDの上限については特に限定はないが、図2に示すように上記の2個のシュート4、4の両方の下端開口部が液体硫黄LSの液面NLLより下方に位置する構造の場合は、これら2個のシュート4、4の少なくとも一方の下端開口部は、液体硫黄LSの液面NLLからの深さDを概ね50mm以上100mm以下とするのが好ましい。その理由は、一般的に溶融槽1の気相部には、引火防止や腐食防止のため、1~2kPaG程度に微加圧された窒素ガスが窒素ガス供給配管から導入されると共に排気されており、何等かのトラブルによりこの窒素ガスが排気されなくなったとき、これら2個のシュート4、4の少なくとも一方から窒素ガスが吹き抜けるようにするためである。なお、溶融槽1の気相部から排出される上記排気ガスは、上記抜出部からブリーザー弁を介して抜き出される硫化水素ガスを含む排ガスと共にスクラバ等のガス処理設備(環集設備とも称する)で処理される。
【符号の説明】
【0025】
1 溶融槽
2 蒸気コイル
3 撹拌機
4 シュート
右側シュート
左側シュート
5 堰
6 縦型ポンプ
7 遮蔽板
B フレコンバッグ
LS 液体硫黄
SS 固体硫黄
図1
図2