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特許7528834光導波路素子、光変調器、光変調モジュール、及び光送信装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】光導波路素子、光変調器、光変調モジュール、及び光送信装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/125 20060101AFI20240730BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20240730BHJP
   G02B 6/30 20060101ALI20240730BHJP
   G02B 6/122 20060101ALI20240730BHJP
   G02F 1/035 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
G02B6/125 311
G02B6/125 301
G02B6/12 361
G02B6/30
G02B6/125
G02B6/122 311
G02F1/035
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021050406
(22)【出願日】2021-03-24
(65)【公開番号】P2022148650
(43)【公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中田 悠
(72)【発明者】
【氏名】片岡 優
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 徳一
【審査官】岸 智史
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110609399(CN,A)
【文献】特開平06-018735(JP,A)
【文献】特開平06-094425(JP,A)
【文献】国際公開第2011/152202(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/047079(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111025470(CN,A)
【文献】国際公開第2021/049004(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の面内において第1方向と当該第1方向に対し逆方向の第2方向との間で光を折り返す複数の光導波路と、を含む光導波路素子であって、
前記複数の光導波路は、互いに所定距離を隔てて前記第1方向に直線状に延在する第1部分および前記第1方向とは異なる第3方向に直線状に延在する第2部分と、前記第2方向に直線状に延在する第3部分と、を有し、
前記第3方向に延在する前記第2部分が前記第1方向に沿って最も内側にある前記光導波路を除き、前記複数の光導波路のそれぞれは、前記第3方向に延在する前記第2部分が前記第1方向に沿ってより内側にある他の前記光導波路と、前記第3部分において交差する交差部を有する、
光導波路素子。
【請求項2】
前記複数の光導波路の前記第2部分の長さは、前記第2部分が前記第1方向に沿って最も外側にある前記光導波路から最も内側にある前記光導波路の順に、増加するよう構成される、
請求項1に記載の光導波路素子。
【請求項3】
前記第3方向に直線状に延在する線分であって前記複数の光導波路の第1部分のすべて及び第3部分のすべてと交差する線分を引いたとき、
前記複数の光導波路は、前記第1部分と前記線分との交点から、前記第3部分と前記線分との交点までの、当該光導波路に沿った長さ又は光路長が互いに等しい、
請求項1または2に記載の光導波路素子。
【請求項4】
前記複数の光導波路のうち、少なくとも二つの隣り合う前記光導波路は、互いの間隔の中心線の延在方向に関し線対称に、当該中心線の延在方向に沿って互いの間隔が広く又は狭くなる遷移部を含む、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項5】
前記複数の光導波路は、
前記基板上に延在する凸部により構成される凸状光導波路であって、
互いに交差する前記交差部における導波路幅が、前記交差部以外における導波路幅よりも広く構成されている、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項6】
前記複数の光導波路は、隣接する前記交差部の間の導波路幅が前記交差部における導波路幅と同じである、
請求項5に記載の光導波路素子。
【請求項7】
前記複数の光導波路は、マッハツェンダ型光導波路の並行導波路を構成する、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項8】
前記複数の光導波路は、ネスト型マッハツェンダ型光導波路を構成するそれぞれ2つのマッハツェンダ型光導波路の、それぞれの並行導波路を構成する、
請求項7に記載の光導波路素子。
【請求項9】
光の変調を行う光変調素子である請求項1ないし8のいずれか一項に記載の光導波路素子と、
前記光導波路素子を収容する筐体と、
前記光導波路素子に光を入力する光ファイバと、
前記光導波路素子が出力する光を前記筐体の外部へ導く光ファイバと、
を備える光変調器。
【請求項10】
光の変調を行う光変調素子である請求項1ないし8のいずれか一項に記載の光導波路素子と、
前記光導波路素子を収容する筐体と、
前記光導波路素子に光を入力する光ファイバと、
前記光導波路素子が出力する光を前記筐体の外部へ導く光ファイバと、
前記光導波路素子を駆動する駆動回路と、
を備える光変調モジュール。
【請求項11】
請求項9に記載の光変調器または請求項10に記載の光変調モジュールと、
前記光導波路素子に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路と、
を備える光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子、光変調器、光変調モジュール、及び光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速/大容量光ファイバ通信システムにおいては、基板上に形成された光導波路と、光導波路を伝搬する光波を制御する制御電極と、で構成される光導波路素子としての光変調素子を組み込んだ光変調器が多く用いられている。中でも、電気光学効果を有するLiNbO(以下、LNともいう)を基板に用いた光変調素子は、光の損失が少なく且つ広帯域な光変調特性を実現し得ることから、高速/大容量光ファイバ通信システムに広く用いられている。
【0003】
特に、光ファイバ通信システムにおける変調方式は、近年の伝送容量の増大化の流れを受け、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)やQAM(Quadrature amplitude modulation)、DP-QPSK(Dual Polarization - Quadrature Phase Shift Keying)等、多値変調や、多値変調に偏波多重を取り入れた伝送フォーマットが主流となっており、基幹光伝送ネットワークにおいて用いられるほか、メトロネットワークにも導入されつつある。
【0004】
近年のインターネットサービスの加速的な普及は通信トラフィックのより一層の増大を招き、光変調素子の更なる小型化、広帯域化、省電力化の検討が今も進められている。
【0005】
光変調素子の小型化、広帯域化、省電力化の一つの策として、例えば、基板中における信号電界と導波光との相互作用をより強めるべく(すなわち、電界効率を高めるべく)薄膜化もしくは薄板化したLN基板(例えば、厚さ20μm以下)の表面に帯状の凸部を形成することで構成されるリブ型光導波路またはリッジ型光導波路(以下、総称して凸状光導波路という)を用いた光変調器も実用化されつつある(例えば、特許文献1、2)。
【0006】
また、光変調素子そのものの小型化に加えて、高周波信号の損失を防ぎ広帯域化をはかるために、電子回路と光変調素子とを一つの筺体に収容し、光変調モジュールとして集積化する等の取り組みも進められている。例えば、光変調素子と当該光変調素子を駆動する高周波ドライバアンプとを一つの筺体内に集積して収容し、光入出力部を当該筺体の一の面に並列配置することで、小型・広帯域化を図った光変調モジュールが提案されている。
【0007】
このような、筐体の一の面に光入出力部を並列配置する光変調モジュールに適した光変調素子の一の例として、特許文献3には、2つのネスト型マッハツェンダ形光導波路を備えてDP-QPSK変調を行う半導体光変調器において、それぞれのネスト型マッハツェンダ形光導波路を、光入力ポートと光出力ポートとが基板の一の辺に配されるように、4本の並行導波路(アーム導波路)の光の伝搬方向を折り返すよう構成することが記載されている。また、特許文献3には、上記4本の並行導波路の光路長が互いに同じとなるように、少なくとも3本の並行導波路に蛇行区間を設けることが記載されている。
【0008】
また、光入出力部を並列配置する光変調モジュールに適した光変調素子の他の例として、特許文献4には、2つのネスト型マッハツェンダ形光導波路を備えてDP-QPSK変調を行う光変調器において、上記2つのネスト型マッハツェンダ形光導波路を構成する8つの並行導波路を並行に湾曲させて光の伝搬方向を折り返すことが記載されている。
【0009】
しかしながら、特許文献3に記載のものは、並行導波路に光路長合わせのための蛇行区間を設けるため、設計が複雑になると共に、当該蛇行区間を含む曲がり部分の数が並行導波路間で異なるものとなりやすい。このため、特許文献1に記載の光変調器では、光変調動作における消光比が低下して、伝送信号の信号空間ダイヤグラムにおける信号配列のひずみを招き得る。
【0010】
また、特許文献4に記載のものは、ネスト型マッハツェンダ形光導波路に含まれる複数の並行導波路が並行に湾曲することで折り返される構成となっているため、光変調素子としての小型化が困難になると共に、それら並行導波路間の光路長が互いに大きく異なるものとなりやすい。このような並行導波路間の光路長差は、変調動作おけるバイアス点電圧の光波長依存性や温度依存性の増加となって現れ、光変調動作の安定性に悪影響を与え得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2007-264548号公報
【文献】国際公開第2018-031916号明細書
【文献】特開2019-152732号公報
【文献】特開2019-15791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記背景より、光の伝搬方向の折り返し部分を含んだ複数の光導波路を含む光導波路素子において、素子サイズの小型化を図りつつ、それら光導波路の互いの間での光路長差の発生を抑制し得る構成を実現することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一の態様は、基板と、前記基板の面内において第1方向と当該第1方向に対し逆方向の第2方向との間で光を折り返す複数の光導波路と、を含む光導波路素子であって、前記複数の光導波路は、互いに所定距離を隔てて前記第1方向に直線状に延在する第1部分および前記第1方向とは異なる第3方向に直線状に延在する第2部分と、前記第2方向に直線状に延在する第3部分と、を有し、前記第3方向に延在する前記第2部分が前記第1方向に沿って最も内側にある前記光導波路を除き、前記複数の光導波路のそれぞれは、前記第3方向に延在する前記第2部分が前記第1方向に沿ってより内側にある他の前記光導波路と、前記第3部分において交差する交差部を有する、光導波路素子である。
本発明の他の態様によると、前記複数の光導波路の前記第2部分の長さは、前記第2部分が前記第1方向に沿って最も外側にある前記光導波路から最も内側にある前記光導波路の順に、増加するよう構成される。
本発明の他の態様によると、前記第3方向に直線状に延在する線分であって前記複数の光導波路の第1部分のすべて及び第3部分のすべてと交差する線分を引いたとき、前記複数の光導波路は、前記第1部分と前記線分との交点から、前記第3部分と前記線分との交点までの、当該光導波路に沿った長さ又は光路長が互いに等しい。
本発明の他の態様によると、前記複数の光導波路のうち、少なくとも二つの隣り合う前記光導波路は、互いの間隔の中心線の延在方向に関し線対称に、当該中心線の延在方向に沿って互いの間隔が広く又は狭くなる遷移部を含む。
本発明の他の態様によると、前記複数の光導波路は、前記基板上に延在する凸部により構成される凸状光導波路であって、互いに交差する前記交差部における導波路幅が、前記交差部以外における導波路幅よりも広く構成されている。
本発明の他の態様によると、前記複数の光導波路は、隣接する前記交差部の間の導波路幅が前記交差部における導波路幅と同じである。
本発明の他の態様によると、前記複数の光導波路は、マッハツェンダ型光導波路の並行導波路を構成する。
本発明の他の態様によると、前記複数の光導波路は、ネスト型マッハツェンダ型光導波路を構成するそれぞれ2つのマッハツェンダ型光導波路の、それぞれの並行導波路を構成する。
本発明の他の態様は、上記いずれかの光変調素子である光導波路素子と、前記光導波路素子を収容する筐体と、前記光導波路素子に光を入力する光ファイバと、前記光導波路素子が出力する光を前記筐体の外部へ導く光ファイバと、を備える光変調器である。
本発明の他の態様は、上記いずれかの光変調素子である光導波路素子と、前記光導波路素子を収容する筐体と、前記光導波路素子に光を入力する光ファイバと、前記光導波路素子が出力する光を前記筐体の外部へ導く光ファイバと、前記光導波路素子を駆動する駆動回路と、を備える光変調モジュールである。
本発明の更に他の態様は、前記光変調器または前記光変調モジュールと、前記光導波路素子に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路と、を備える光送信装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光の伝搬方向の折り返し部分を含んだ複数の光導波路を含む光導波路素子において、素子サイズの小型化を図りつつ、それら光導波路の互いの間での光路長差の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施形態に係る光変調素子の構成を示す図である。
図2図1に示す光変調素子のII-II断面図である。
図3図1に示す光変調素子の光折り返し部B1の部分詳細図である。
図4図1に示す光変調素子の光折り返し部B1の変形例である。
図5図3に示す光折り返し部B1におけるC1部の部分詳細図である。
図6】本発明の第1の実施形態の変形例に係る光変調素子の構成を示す図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る光変調素子の構成を示す図である。
図8】本発明の第3の実施形態に係る光変調素子の構成を示す図である。
図9図8に示す光変調素子の光折り返し部B2の部分詳細図である。
図10図9に示す光折り返し部B2におけるC2部の部分詳細図である。
図11】本発明の第4の実施形態に係る光変調素子の構成を示す図である。
図12】本発明の第4の実施形態の変形例に係る光変調素子の構成を示す図である。
図13】本発明の第5の実施形態に係る光変調器の構成を示す図である。
図14】本発明の第6の実施形態に係る光変調モジュールの構成を示す図である。
図15】本発明の第7の実施形態に係る光送信装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光導波路素子である光変調素子100の構成を示す図である。光変調素子100は、基板102に形成された光導波路104(図示太い破線)で構成される。
【0017】
基板102は、例えば、XカットのLN基板である。基板102は、例えば矩形であり、図示上下方向に延在する辺110a、110bと、図示左右に延在する辺110c、110dと、を有する。なお、図1においては、図示右上部に示す座標軸のとおり、図1の紙面の奥へ(オモテ面からウラ面へ)向かう法線方向をX方向、図示右方向をY方向、図示下方向をZ方向とする。これら座標軸は、直交座標軸であり、例えばLN基板である基板102の結晶軸であるX軸、Y軸、Z軸に対応する。
【0018】
光導波路104は、図示2つの太線矢印で示すように、基板102の図示左の辺110aの上側の端部から光が入力され、辺110aの下側の端部から光を出力する。
【0019】
光導波路104は、基板102の面内において第1方向に伝搬する光をそれぞれ第1方向と逆方向である第2方向へ折り返す複数の光導波路として、折返し導波路106-1及び106-2の2つの光導波路を含む。本実施形態では、第1方向は+Y方向、第2方向は-Y方向、第3方向(後述)は+Z方向である。また、本実施形態では、折返し導波路106-1及び106-2は、マッハツェンダ型光導波路108を構成する2つの並行導波路である。
【0020】
基板102上には、マッハツェンダ型光導波路108に変調動作を行わせるための信号電極120と、マッハツェンダ型光導波路108を所定の初期動作バイアス点に設定し、さらにDCドリフトや温度ドリフトによるバイアス点の変動を補償して動作点を調整するためのバイアス電極124が設けられている。
【0021】
信号電極120は、折返し導波路106-1及び106-2のうち、第2方向に沿って延在する第3部分116-1と116-2(後述)との間に形成される。一般に信号電極はその両側に配置された接地電極(不図示)との間で、いわゆるコプレーナ型の高周波信号線路を形成する。信号電極120の図示右方の端部に設けられたパッド122aには、マッハツェンダ型光導波路108に変調動作を行わせるための高周波電気信号の伝送線路(不図示)が、ワイヤボンディング等によりに接続される。また、信号電極120の図示左方の端部に設けられたパッド122bには、終端抵抗(不図示)が接続される。これにより、パッド122bに入力された高周波電気信号は、進行波となって信号電極120を伝搬し、マッハツェンダ型光導波路108を伝搬する光波を変調する。以上は、XカットのLN基板を用いた場合を説明したが、本発明は、その他の基板でも適用可能である。例えばZカットのLN基板を用いた場合は、折り返し導波路の間ではなく、導波路上に電極が配置される。
【0022】
基板102は、例えば20μm以下(例えば2μm)の厚さに加工され薄膜化されている。光導波路104は、薄膜化された基板102の表面に形成された、帯状に延在する凸部で構成された凸状光導波路(例えば、リブ型光導波路又はリッジ型光導波路)である。
【0023】
図2は、図1におけるII-II断面矢視図である。基板102は、その裏面(図示下側の面)が、接着層130を介してガラス等の支持板132に接着されている。支持板132は、接着に限らず、直接に又は接合層を介して、基板102と接合されていてもよい。また、基板102は、支持板132の上に製膜などにより形成されるものとすることもできる。基板102上には、折返し導波路106-1および106-2(詳細には、後述する第1部分112-1および112-2)が、それぞれ、基板102に形成された凸部134-1および134-2により凸状光導波路として構成されている。また、基板102上には、折返し導波路106-1および106-2をそれぞれ挟む位置に、バイアス電極124が形成されている。なお、図示2つの点線楕円は、それぞれ、凸状光導波路である折返し導波路106-1および106-2を伝搬する光を模式的に示している。
【0024】
図1を参照し、折返し導波路106-1および106-2は、それぞれ、互いに所定距離を隔てて第1方向(+Y方向)に延在する第1部分112-1および112-2並びに第1方向と異なる第3方向(+Z方向)に延在する第2部分114-1および114-2と、第2方向(-Y方向)に延在する第3部分116-1および116-2と、を有する。
【0025】
図3は、図1に示す光折り返し部B1(図示一点鎖線の矩形の枠内)の部分詳細図である。図3において、第1部分112-1、112-2と第2部分114-1、114-2との間、第2部分114-1、114-2と第3部分116-1、116-2との間は、それぞれ、例えば円弧や曲線で接続されている。
【0026】
特に、本実施形態では、折返し導波路106-1の第3部分116-1は、折返し導波路106-2の第2部分114-2と交差する交差部140を有する。すなわち、折返し導波路106-1および106-2のうち、第2部分が第1方向に沿って遠い側(外側)にある折返し導波路106-1の第3部分116-1は、第2部分が第1方向に沿ってより近い側(内側)にある折返し導波路106-2の第2部分114-2と、交差部140において交差する。
【0027】
これにより、複数の並行導波路が互いに交差することなく光の伝搬方向を180度折り返す従来の構成に比べて、光変調素子100では、並行導波路間における光路差の発生を抑制または回避することができる。
【0028】
ここで、理解を容易にするため、第1部分112-1、112-2と第2部分114-1、114-2との間、および第2部分114-1、114-2と第3部分116-1、116-2との間が、円弧を介さず直接に接続されているとする。また、図3において、第3方向(+Z方向)に延在する線分であって、折返し導波路106-1、106-2の第1部分112-1、112-2および第3部分116-1、116-2と交差する線分160を考える。また、線分160と、第1部分112-1、112-2との交点を、それぞれ、点A1、A2とする。また、線分160と、第3部分116-1、116-2との交点を、それぞれ、点A3、A4とする。
【0029】
さらに、線分160と、第1方向において最も内側の第2部分114-2と、の間の、第1方向に沿った距離をL10とする。また、第2部分114-2と114b-1との間の、第1方向に沿った距離をL12とする。
【0030】
また、第2部分114-1および114-2の、第3方向に沿った長さを、それぞれ、L14およびL16とする。また、点A1から点A3に至る折返し導波路106-1の長さをL18、点A2から点A4に至る折返し導波路106-2の長さをL20とする。
【0031】
このとき、L18およびL20は、次式で表される。
L18=2×(L10+L12)+L14 (1)
L20=2×L10+L16 (2)
【0032】
上式(1)(2)において、次式が成り立てば、折返し導波路106-1、106-2は、互いの間の光路差がゼロとなる。
L18=L20 (3)
【0033】
式(3)の条件のもとに、式(1)(2)を用いて次式を得る。
L16=L14+2×L12 (4)
【0034】
図3を見てわかるように、光折り返し部B1において、折返し導波路106-1は、折返し導波路106-2に対し、第1方向に向かって間隔L12の2倍の距離を遠回りする。したがって、式(4)のように、折返し導波路106-1の第2部分114-1の長さL14に対して、折返し導波路106-2の第2部分114-2の長さL16を間隔L12の2倍長くすることで、折返し導波路106-1と106-2との間の光路差はゼロとなる。
【0035】
なお、式(4)の導出に当たっては、上述したように、第1部分112-1、112-2と第2部分114-1、114-2との間、および第2部分114-1、114-2と第3部分116-1、116-2と間が、それぞれ直接に接続されているものと仮定した。ただし、当業者において明らかなように、第1部分112-1、112-2と第2部分114-1、114-2との間、第2部分114-1、114-2と第3部分116-1、116-2との間のそれぞれが、円弧や曲線を介して接続される場合にも、上記と同様の幾何学的考察により、折返し導波路106-1と折返し導波路106-2との間の光路差をゼロとするための条件式が導かれ得る。また、本実施形態では第1部分112-1と112-2の間隔が第3部分116-1と116-2の間隔よりも狭くなっているが、この大小関係が逆となっていても同様の効果を得ることができる。
【0036】
また、当業者において明らかなように、第2部分114-1、114-2の延在方向である第3方向が+Z方向から傾いている図4のような変形例の場合にも、同様の考察によりゼロ光路差の条件式を導き得る。
【0037】
図3を参照し、折返し導波路106-1の第3部分116-1と折返し導波路106-2の第2部分114-2との交差部140は、折返し導波路106-1および折返し導波路106-2の導波路幅を一定にしたまま、これらの導波路が単純に交差する構成とすると、当該交差部140において光損失を生じさせる。凸状導波路である折返し導波路106-1および折返し導波路106-2のそれぞれを伝搬する基本モードの光は、交差部140を構成する基板102上の凸部の側壁の状態の変化の影響を受けて、反射波を発生し得るためである。
【0038】
本実施形態では、このような交差部140における光損失を低減するため、交差部140における折返し導波路106-1および折返し導波路106-2の導波路幅は、交差部140以外におけるこれら光導波路の導波路幅よりも広く構成されている。
【0039】
図5は、図3における交差部140を含むC1部の部分詳細図である。図5に示すように、交差部140を構成する折返し導波路106-1の第3部分116-1および折返し導波路106-2の第2部分114-2の導波路幅は、それぞれ、交差部140以外の他の部分に比べて広く形成されている。これにより、折返し導波路106-1の第3部分116-1および折返し導波路106-2の第2部分114-2をそれぞれ伝搬する光は、交差部140を通過する際に、これら光導波路を構成する基板102上の凸部の側壁の状態の変化の影響を受けにくくなり、交差部140における光損失が低減される。
【0040】
また、図5に示す構成においては、交差部140の前後における折返し導波路106-1の第3部分116-1および折返し導波路106-2の第2部分114-2の導波路幅の変化部分では、それらの導波路幅がテーパ状に変化するように形成されている。これにより、導波路幅の変化部分における光散乱や伝搬モード変換等に起因する光損失も低減される。
【0041】
上記の構成を有する光変調素子100では、上述したように、第2部分が第1方向に沿って遠い側(外側)にある折返し導波路106-1の第3部分116-1は、第2部分が第1方向に沿ってより近い側(内側)にある折返し導波路106-2の第2部分114-2と交差する。
【0042】
これにより、複数の並行導波路が互いに交差することなく光の伝搬方向を180度折り返す従来の構成に比べて、光変調素子100では、並行導波路間における光路差の発生を抑制又は回避することができる。
【0043】
このため、光変調素子100では、光路差を低減するための蛇行導波路を設ける必要がなく、基板102のサイズを小さくすることができる。
【0044】
また、光変調素子100では、折返し導波路106-1及び折返し導波路106-2を湾曲させることで第1方向に伝搬する光を第2方向へ折り返すのではなく、第1方向と異なる第3方向(例えば、第1方向に直交する方向)へ光を伝搬する第2部分114-1、114-2を介して光を折り返すので、複数の並行導波路の湾曲部により光を折り返す従来の構成に比べて、基板102のサイズを小さくすることができる。
【0045】
したがって、光変調素子100では、素子サイズの小型化を図りつつ、光折り返し部分を含む2本の光導波路(折返し導波路106-1および折返し導波路106-2)の間での光路長差の発生を抑制ないし回避することができる。その結果、光変調素子100では、バイアス点の波長依存性や消光比の劣化の少ない、安定な変調特性を実現することができる。
【0046】
[第1実施形態の変形例]
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。図6は、第1の実施形態に係る光変調素子100の変形例である光変調素子100-1の構成を示す図である。なお、図6において、図1に示す光変調素子100と同様の構成要素については、図1における符号と同一の符号で示し、上述した図1における説明を援用する。
【0047】
図6に示す光変調素子100-1は、図1に示す光変調素子100と同様の構成を有するが、信号電極120および光導波路104に代えて、信号電極120aおよび光導波路104aを有する点が異なる。光導波路104aは、折返し導波路106a-1および折返し導波路106a-2を有し、図1に示すマッハツェンダ型光導波路108と同様のマッハツェンダ型光導波路108aを構成する。折返し導波路106a-1および折返し導波路106a-2は、第3部分116-1及び116-2に代えて、第3部分116a-1および116a-2を有する。
【0048】
第3部分116a-1及び116a-2は、図1に示す第3部分116-1および116-2と同様の構成を有するが、互いの間隔の中心線150に関し線対称に、当該中心線150の延在方向に沿って互いの間隔が変化する遷移部152を有する点が異なる。
【0049】
上記の構成を有する光変調素子100-1では、遷移部152を有することにより、信号電極120aが形成される電極形成区間における第3部分116a-1と116a-2との間隔を調整することができる。このため、当該間隔を調整して、信号電極120aと第3部分116a-1および116a-2との間の間隔をそれぞれ一定に保ちつつ、信号電極120aの電極幅や接地電極(不図示)との間隔を図1に示す信号電極120に比べて狭く又は広く調整することができる。
【0050】
これにより、光変調素子100-1では、光変調素子100と同様に折返し導波路106a-1および折返し導波路106a-2における光路差の発生を抑制又は回避し得ることに加えて、信号電極120aから第3部分116a-1、116a-2に加わる電界を高く維持しつつ、信号電極120aが構成する高周波伝送線路のインピーダンスの設計自由度を向上することができる。
【0051】
なお、本実施形態では、遷移部152は第3部分116-1、116-2にあるものとしたが、このような遷移部の場所は第3部分には限らない。遷移部は、信号電極が形成される位置に合わせて、第1部分112-1、112-2及び又は第2部分114-1、114-2に設けられていてもよい。すなわち、遷移部は、複数の折返し導波路のうち、少なくとも二つの隣り合う折返し導波路の任意の位置に、当該二つの折返し導波路の互いの間隔の中心線に関して線対称に、当該中心線の延在方向に沿って互いの間隔が広く又は狭くなるように形成されるものとすることができる。
【0052】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図7は、第2の実施形態に係る光変調素子200の構成を示す図である。光変調素子200は、図1に示すマッハツェンダ型光導波路108を2つ含むネスト型マッハツェンダ型光導波路で構成されている。
【0053】
具体的には、光変調素子200は、基板202に形成された光導波路204(図示太い破線)で構成されている。基板202は、図1における基板102と同様に、例えば、XカットのLN基板である。基板202は、基板102と同様に、例えば矩形であり、図示上下方向に延在する辺210a、210bと、図示左右に延在する辺210c、210dと、を有する。なお、図7においては、図示右上部に示す座標軸のとおり、図7の紙面の奥へ(オモテ面からウラ面へ)向かう法線方向をX方向、図示右方向をY方向、図示下方向をZ方向とする。これら座標軸は、例えば、LN基板である基板202の結晶軸であるX軸、Y軸、Z軸に対応する。
【0054】
基板202は、例えば20μm以下(例えば2μm)の厚さに加工され薄膜化されている。光導波路204は、薄膜化された基板202の表面に形成された、帯状に延在する凸部で構成された凸状光導波路(例えば、リブ型光導波路又はリッジ型光導波路)である。
【0055】
光導波路204は、2つのマッハツェンダ型光導波路208a、208bを含むネスト型マッハツェンダ型光導波路260を構成する。光導波路204は、図示2つの太線矢印で示すように、基板102の図示左の辺110aの上側の端部から光が入力され、辺110aの下側の端部から光を出力する。
【0056】
マッハツェンダ型光導波路208a、208bは、それぞれ、図1に示すマッハツェンダ型光導波路108と同様に構成されている。
【0057】
すなわち、マッハツェンダ型光導波路208aは、折返し導波路206a-1及び206a-2を有する。折返し導波路206a-1及び折返し導波路206a-2は、それぞれ、互いに所定距離を隔てて第1方向(+Y方向)に延在する第1部分212a-1及び212a-2並びに第1方向と異なる第3方向(+Z方向)に延在する第2部分214a-1及び214a-2を有する。また、折返し導波路206a-1及び206a-2は、第2方向(-Y方向)に延在する第3部分216a-1及び216a-2を有する。
【0058】
そして、第2部分が第1方向に沿って外側にある折返し導波路206a-1の第3部分216a-1は、第2部分が第1方向に沿って内側にある折返し導波路206a-2の第2部分214a-2と交差する交差部240aを有する。
【0059】
同様に、マッハツェンダ型光導波路208bは、折返し導波路206b-1及び206b-2を有する。折返し導波路206b-1及び折返し導波路206b-2は、それぞれ、互いに所定距離を隔てて第1方向(+Y方向)に延在する第1部分212b-1及び212b-2並びに第1方向と異なる第3方向(+Z方向)に延在する第2部分214b-1及び214b-2を有する。また、折返し導波路206b-1及び206b-2は、第2方向(-Y方向)に延在する第3部分216b-1及び216b-2を有する。
【0060】
そして、第2部分が第1方向に沿って外側にある折返し導波路206b-1の第3部分216b-1は、第2部分が第1方向に沿って内側にある折返し導波路206b-2の第2部分214b-2と交差する交差部240bを有する。
【0061】
基板202上には、また、バイアス電極224、226と、マッハツェンダ型光導波路208aおよび208bのそれぞれに変調動作を行わせるための信号電極220aおよび220bが形成されている。
【0062】
上記の構成を有する光変調素子200では、マッハツェンダ型光導波路208aおよび208bが、それぞれ、図1に示すマッハツェンダ型光導波路108と同様に構成されている。このため、マッハツェンダ型光導波路208aおよび208bのそれぞれにおいて、折返し導波路206a-1と折返し導波路206a-2との間の光路差、および折返し導波路206b-1と折返し導波路206b-2との間の光路差が、低減またはゼロとなるように構成され得る。
【0063】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。上述した第2の実施形態に係る光変調素子200では、マッハツェンダ型光導波路208aの折返し導波路206a-1および206a-2の長さと、マッハツェンダ型光導波路208bの折返し導波路206b-1および206b-2の長さと、が異なるため、マッハツェンダ型光導波路208aとマッハツェンダ型光導波路208bとの間で光路差が生じる。この場合、上記光路差の程度によっては、ネスト型マッハツェンダ型光導波路260に変調動作を行わせる際のバイアス電圧が、入力される光の波長に依存して大きく変動してしまうなどの、動作安定性への悪影響を生じてしまう場合があり得る。
【0064】
これに対し、第3の実施形態に係る光変調素子では、ネスト型マッハツェンダ型光導波路を構成する2つのマッハツェンダ型光導波路の合計4本の並行導波路の長さ(又は光路長)を合わせて、上記2つのマッハツェンダ型光導波路間での上記光路差をも低減しまたは解消する。
【0065】
図8は、第3の実施形態に係る光変調素子300の構成を示す図である。なお、図8において、図7に示す光変調素子200と同じ構成要素については、図7における符号と同一の符号を用いて示すものとし、上述した図7についての説明を援用する。本実施形態においても、第1方向は+Y方向、第2方向は-Y方向、第3方向は+Z方向である。
【0066】
図8に示す光変調素子300は、図7に示す光変調素子200と同様の構成を有するが、光導波路204に代えて、光導波路304を有する点が異なる。
【0067】
光導波路304は、基板202の面内において第1方向に伝搬する光をそれぞれ第1方向と逆方向である第2方向へ折り返す複数の光導波路として、折返し導波路306a-1、306a-2、306b-1、および306b-2の4つの光導波路を含む。(以下、折返し導波路306-1、306-2、306-3、および306-4を総称して折返し導波路306ともいうものとする。)
【0068】
本実施形態では、折返し導波路306a-1及び306a-2は、マッハツェンダ型光導波路308aの2つの並行導波路を構成する。また、折返し導波路306b-1及び306b-2は、マッハツェンダ型光導波路308bの2つの並行導波路を構成する。そして、マッハツェンダ型光導波路308aと308bとで、ネスト型マッハツェンダ型光導波路350を構成している。
【0069】
折返し導波路306a-1、306a-2、306b-1、および306b-2は、それぞれ、互いに所定距離を隔てて第1方向(+Y方向)に延在する第1部分312a-1、312a-2、312b-1および312b-2を有する。また、折返し導波路306a-1、306a-2、306b-1、および306b-2は、それぞれ、互いに所定距離を隔てて第1方向と異なる第3方向(+Z方向)に延在する第2部分314a-1、314a-2、314b-1および314b-2を有する。また、折返し導波路306a-1、306a-2、306b-1、および306b-2は、それぞれ、互いに所定距離を隔てて第2方向(-Y方向)に延在する第3部分316a-1、316a-2、316b-1および316b-2を有する。
【0070】
以下、第1部分312a-1、312a-2、312b-1および312b-2を総称して第1部分312ともいい、第2部分314a-1、314a-2、314b-1および314b-2を総称して第2部分314ともいう。また、第3部分316a-1、316a-2、316b-1および316b-2を総称して第3部分316ともいうものとする。
【0071】
図9は、図8に示す光折り返し部B2(図示一点鎖線の矩形の枠内)の部分詳細図である。図9において、第1部分312と第2部分314との間、第2部分314と第3部分316との間は、それぞれ、例えば円弧または曲線で接続されている。
【0072】
特に、本実施形態では、第3方向(+Z方向)に延在する第2部分314が第1方向(+Y方向)に沿って最も内側に存在する折返し導波路306b-2を除き、折返し導波路306のそれぞれは、第3方向に延在する第2部分314が第1方向においてより内側に存在する他の折返し導波路と、第3部分316において交差する。
【0073】
すなわち、折返し導波路306a-1に着目すると、他の折返し導波路306a-2、306b-1、および306b-2は、それぞれの第2部分314が、折返し導波路306a-1の第2部分314a-1に対し、第1方向(+Y方向)においてより内側に存在する。そして、折返し導波路306a-1の第3部分316a-1は、上記第2部分314がより内側に存在する折返し導波路306a-2、306b-1、および306b-2の第2部分314a-2、314b-1、及び314b-2と交差して、交差部340a、340b、および340cを形成している。
【0074】
また、折返し導波路306a-2に着目すると、他の折返し導波路306b-1および306b-2は、それぞれの第2部分314が、折返し導波路306a-2の第2部分314a-2に対し、第1方向(+Y方向)においてより内側に存在する。そして、折返し導波路306a-2の第3部分316a-2は、上記第2部分314がより内側に存在する折返し導波路306b-1および306b-2の第2部分314b-1及び314b-2と交差して、交差部340dおよび340eを形成している。
【0075】
また、折返し導波路306b-1に着目すると、他の折返し導波路306b-2は、その第2部分314b-2が、折返し導波路306b-1の第2部分314b-1に対し、第1方向(+Y方向)においてより内側に存在する。そして、折返し導波路306b-1の第3部分316b-1は、折返し導波路306b-2の第2部分314b-2と交差して、交差部340fを形成している。以下、交差部340a、340b、340c、340d、340e、340fを総称して交差部340ともいう。
【0076】
これにより、複数の並行導波路が互いに交差することなく光の伝搬方向を180度折り返す従来の構成に比べて、光変調素子300では、ネスト型マッハツェンダ型光導波路350が含む4つの並行導波路を構成する4つの折返し導波路306の、互いの間における光路差の発生を抑制し又は回避することができる。
【0077】
ここで、理解を容易にするため、第1部分312と第2部分314との間、および第2部分314と第3部分316との間が、円弧を介さず直接に接続されているとする。また、図9において、第3方向(+Z方向)に延在する線分であって、折返し導波路306の第1部分312と第3部分316のすべてと交差する線分360を考える。また、線分360と、第1部分312a-1、312a-2、312b-1、及び312b-2との交点を、それぞれ、点A31、A32、A33、A34とする。また、線分360と、第3部分316a-1、316a-2、316b-1、及び316b-2との交点を、それぞれ、点A35、A36、A37、A38とする。
【0078】
さらに、線分360と、第1方向において最も内側の第2部分314b-2と、の間の、第1方向に沿った距離をL30とする。また、第2部分314b-2と314b-1との間、314b-1と314a-2との間、及び314a-2と314a-1との間の、第1方向に沿った距離を、それぞれ、L31、L32、およびL33とする。
【0079】
また、第2部分314a-1、314a-2、314b-1、及び314b-2の、第3方向に沿った長さを、それぞれ、L34、L35、L36、およびL37とする。
【0080】
また、点A31から点A35に至る折返し導波路306a-1の長さをL41、点A32から点A36に至る折返し導波路306a-2の長さをL42、点A33から点A37に至る折返し導波路306b-1の長さをL43、点A34から点A38に至る折返し導波路306b-2の長さをL44とする。
【0081】
このとき、L41、L42、L43、およびL44は、次式で表される。
L41=2×(L30+L31+L32+L33)+L34 (5)
L42=2×(L30+L31+L32)+L35 (6)
L43=2×(L30+L31)+L36 (7)
L44=2×L30+L37 (8)
【0082】
上記式(5)(6)(7)(8)において、次式が成り立てば、折返し導波路306は、互いの間の光路差がゼロとなる。
L41=L42=L43=L44 (9)
【0083】
式(9)の条件のもとに、式(5)(6)(7)(8)を用いて次式を得る。
L35=L34+2×L33 (10)
L36=L34+2×(L32+L33) (11)
L37=L34+2×(L31+L32+L33) (12)
【0084】
式(10)(11)(12)より、図9に示す構成において、第2部分314が第1方向に沿って最も外側にある折返し導波路306(すなわち、折返し導波路306a-1)から、第2部分314が第1方向に沿って最も内側にある折返し導波路306(すなわち折返し導波路306b-2)の順に、折返し導波路306の第2部分314の長さが、所定の長さ分増加するよう構成すれば、折返し導波路306の相互の光路差をゼロにできることがわかる。上記所定の長さは、式(10)(11)(12)から明らかなように、第2部分314の相互の間隔に応じた長さである。
【0085】
なお、式(10)(11)(12)の導出に当たっては、上述したように、第1部分312と第2部分314との間、および第2部分314と第3部分316と間が、それぞれ直接に接続されているものと仮定した。ただし、当業者において明らかなように、第1部分312と第2部分314との間、および第2部分314と第3部分316と間が、円弧や曲線を介して接続される場合にも、上記と同様の幾何学的考察により、折返し導波路306の相互の光路差をゼロとするための条件が導かれ得る。
【0086】
また、当業者において明らかなように、第2部分314の延在方向である第3方向が+Z方向から傾いている場合にも、同様の考察により上記光路差をゼロとするための条件が導かれ得る。
【0087】
なお、光損失の発生要因となり得る6つの交差部340については、光変調素子300においても、図5に示す交差部140と同様に、これらの交差部340における折返し導波路306の導波路幅が、交差部340以外における折返し導波路306の導波路幅よりも広く構成されている。図10は、図9における交差部340を含むC2部の部分詳細図である。特に、光変調素子300では、折返し導波路306は、隣接する交差部340の間の導波路幅が、交差部340における導波路幅と同じ幅で形成されている。これにより、折返し導波路306において導波路幅が変化する部分の数を低減して、折返し導波路306における光損失の増加を抑制することができる。
【0088】
その結果、光変調素子300では、バイアス点の波長依存性が少なく、消光比の劣化がなく、且つ低損失であって安定な、変調特性を実現することができる。
【0089】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図11は、第4の実施形態に係る光変調素子400の構成を示す図である。本実施形態に係る光変調素子400は、図8に示すネスト型マッハツェンダ型光導波路350と同様のネスト型マッハツェンダ型光導波路を2つ用いて構成されるDP-QPSK光変調素子である。
【0090】
光変調素子400は、基板402に形成された光導波路404(図示太い破線)で構成されている。基板402は、図1における基板102と同様に、例えば、XカットのLN基板である。基板402は、基板102と同様に、例えば矩形であり、図示上下方向に延在する辺406a、406bと、図示左右に延在する辺406c、406dと、を有する。なお、図11においては、図示右上部に示す座標軸のとおり、図11の紙面の奥へ(オモテ面からウラ面へ)向かう法線方向をX方向、図示右方向をY方向、図示下方向をZ方向とする。これら座標軸は、例えば、LN基板である基板402の結晶軸であるX軸、Y軸、Z軸に対応する。
【0091】
基板402は、例えば20μm以下(例えば2μm)の厚さに加工され薄膜化されており、光導波路404は、薄膜化された基板402の表面に形成された、帯状に延在する凸部で構成された凸状光導波路(例えば、リブ型光導波路又はリッジ型光導波路)である。
【0092】
光導波路404は、2つのネスト型マッハツェンダ型光導波路410aおよび410bにより構成されるDP-QPSK変調器である。光導波路404には、図示太線矢印で示すように、基板402の図示左の辺406aの上側の端部から光が入力される。入力された光は、分岐導波路412により2つの光に分岐され、分岐された2つの光は、2つのネスト型マッハツェンダ型光導波路410aおよび410bによりそれぞれ変調される。
【0093】
ネスト型マッハツェンダ型光導波路410aは、2つのマッハツェンダ型光導波路420aおよび420bにより構成される。ネスト型マッハツェンダ型光導波路410aは、基板402の面内において第1方向に伝搬する光をそれぞれ第1方向と逆方向である第2方向へ折り返す複数の光導波路として、4つの折返し導波路430a-1、430a-2、430b-1、および430b-2を含む。本実施形態においても、第1方向は+Y方向、第2方向は-Y方向、第3方向(後述)は+Z方向である。以下、折返し導波路430a-1、430a-2、430b-1、および430b-2を総称して、折返し導波路430ともいうものとする。
【0094】
折返し導波路430a-1および430a-2は、マッハツェンダ型光導波路420aの2つの並行導波路を構成し、折返し導波路430b-1および430b-2は、マッハツェンダ型光導波路420bの2つの並行導波路を構成する。
【0095】
同様に、ネスト型マッハツェンダ型光導波路410bは、2つのマッハツェンダ型光導波路422aおよび422bにより構成され、ネスト型マッハツェンダ型光導波路410bは、基板402の面内において第1方向に伝搬する光をそれぞれ第1方向と逆方向である第2方向へ折り返す複数の光導波路として、4つの折返し導波路440a-1、440a-2、440b-1、および440b-2を含む。折返し導波路440a-1および440a-2は、マッハツェンダ型光導波路422aの2つの並行導波路を構成し、折返し導波路440b-1および440b-2は、マッハツェンダ型光導波路422bの2つの並行導波路を構成する。以下、折返し導波路440a-1、440a-2、440b-1、および440b-2を総称して、折返し導波路440ともいうものとする。
【0096】
基板402上には、2つのネスト型マッハツェンダ型光導波路410a、410bのバイアス電圧を調整するためのバイアス電極424a、424b、および424cが設けられている。また、基板402上には、4つのマッハツェンダ型光導波路420a、420b、422a、および422bのそれぞれに変調動作を行わせるための、4つの信号電極426a、426b、426c、および426dも設けられている。
【0097】
ネスト型マッハツェンダ型光導波路410aが有する折返し導波路430は、図8に示すネスト型マッハツェンダ型光導波路350が有する折返し導波路306と同様に構成されている。すなわち、折返し導波路430a-1、430a-2、430b-1、および430b-2は、それぞれ、互いに所定距離を隔てて第1方向(+Y方向)に延在する第1部分432a-1、432a-2、432b-1、および432b-2を有する。
【0098】
また、折返し導波路430a-1、430a-2、430b-1、および430b-2は、それぞれ、互いに所定距離を隔てて第1方向と異なる第3方向(+Z方向)に延在する第2部分434a-1、434a-2、434b-1、および434b-2を有する。また、折返し導波路430a-1、430a-2、430b-1、および430b-2は、それぞれ、互いに所定距離を隔てて第2方向(-Y方向)に延在する第3部分436a-1、436a-2、436b-1、および436b-2を有する。
【0099】
以下、第1部分432a-1、432a-2、432b-1、および432b-2を総称して第1部分432ともいい、第2部分434a-1、434a-2、434b-1、および434b-2を総称して第2部分434ともいう。また、第3部分436a-1、436a-2、436b-1、および436b-2を総称して第3部分436ともいうものとする。
【0100】
そして、第3方向(+Z方向)に延在する第2部分434が第1方向(+Y方向)に沿って最も内側にある折返し導波路430b-2を除き、折返し導波路430のそれぞれは、第3方向に延在する第2部分434が第1方向においてより内側にある他の折返し導波路と、第3部分436において交差している。これにより、折返し導波路430の互いの間での光路差は、低減又は解消され得る。
【0101】
同様に、ネスト型マッハツェンダ型光導波路410bが有する折返し導波路440は、図8に示すネスト型マッハツェンダ型光導波路350が有する折返し導波路306と同様に構成されている。すなわち、折返し導波路440a-1、440a-2、440b-1、および440b-2は、それぞれ、互いに所定距離を隔てて第1方向(+Y方向)に延在する第1部分442a-1、442a-2、442b-1、および442b-2を有する。
【0102】
また、折返し導波路440a-1、440a-2、440b-1、および440b-2は、それぞれ、互いに所定距離を隔てて第1方向と異なる第3方向(+Z方向)に延在する第2部分444a-1、444a-2、444b-1、および444b-2を有する。また、折返し導波路440a-1、440a-2、440b-1、および440b-2は、それぞれ、互いに所定距離を隔てて第2方向(-Y方向)に延在する第3部分446a-1、446a-2、446b-1、および446b-2を有する。
【0103】
以下、第1部分442a-1、442a-2、442b-1、および442b-2を総称して第1部分442ともいい、第2部分444a-1、444a-2、444b-1、および444b-2を総称して第2部分444ともいう。また、第3部分446a-1、446a-2、446b-1、および446b-2を総称して第3部分446ともいうものとする。
【0104】
そして、第3方向(+Z方向)に延在する第2部分444が第1方向(+Y方向)に沿って最も内側にある折返し導波路440b-2を除き、折返し導波路440のそれぞれは、第3方向に延在する第2部分444が、第1方向においてより内側にある他の折返し導波路と、第3部分446において交差している。これにより、折返し導波路440の互いの間での光路差は、低減又は解消され得る。
【0105】
上記の構成により、光変調素子400では、ネスト型マッハツェンダ型光導波路410aおよび410bのそれぞれにおいては、これらのネスト型マッハツェンダ型光導波路410aおよび410bのそれぞれの並行導波路の光路差を低減又は解消して、波長依存性の少ない安定な変調動作を実現することができる。
【0106】
ネスト型マッハツェンダ型光導波路410aおよび410bにより変調された2つの光(変調光)は、それぞれ、出力導波路414aおよび414bから基板402の外部へ出力される。出力された2つの変調光は、例えば、基板402の外部に設けられた偏波合成器(不図示)により、一つのビームで構成される伝送用光信号となり、伝送用光ファイバケーブル(不図示)に入力されて伝送される。
【0107】
なお、ネスト型マッハツェンダ型光導波路410aと410bとの間に残る光路差により、上記2つの変調光の間に発生し得る信号間のタイミングずれ(スキュー)については、信号電極426a、426b、426c、426dに入力する高周波のデータ信号に上記の信号間のスキューを補償するように遅延を持たせればよい。このようなデータ信号への遅延の付与は、例えばDSP(デジタル・シグナル・プロセサ)により行うものとすることができる。
【0108】
[第4実施形態の変形例]
次に、上述した第4の実施形態に係る光変調素子400の変形例について説明する。図12は、第4の実施形態の変形例に係る光変調素子400-1の構成を示す図である。なお、図12において、図11に示す構成要素と同じ構成要素については、図11に示す符号と同一の符号を用いるものとし、上述した図11についての説明を援用する。
【0109】
光変調素子400-1は、図11に示す光変調素子400と同様の構成を有するが、信号電極426a、426b、426c、および426dに代えて、信号電極526a、526b、526c、および526dを有する点が異なる。信号電極526a、526b、526c、および526dは、図11に示す信号電極426a、426b、426c、および426dを有するが、それらの電極幅が信号電極426a、426b、426c、および426dの電極幅と異なる。以下、信号電極526a、526b、526c、および526dを総称して信号電極526ともいうものとする。
【0110】
光変調素子400-1は、光導波路404に代えて光導波路504を有する点が、図11に示す光変調素子400と異なる。光導波路504は、図11に示す光導波路404と同様の構成を有するが、ネスト型マッハツェンダ型光導波路410aおよび410bに代えて、ネスト型マッハツェンダ型光導波路510aおよび510bを有する点が異なる。
【0111】
ネスト型マッハツェンダ型光導波路510aは、ネスト型マッハツェンダ型光導波路410aと同様の構成を有するが、図11に示す折返し導波路430a-1、430a-2、430b-1、および430b-2に代えて、折返し導波路530a-1、530a-2、530b-1、および530b-2を有する点が異なる。以下、折返し導波路530a-1、530a-2、530b-1、および530b-2を総称して折返し導波路530ともいうものとする。
【0112】
また、ネスト型マッハツェンダ型光導波路510aは、図11に示すマッハツェンダ型光導波路420aおよび420bに代えて、マッハツェンダ型光導波路520aおよび520bを有する点が異なる。マッハツェンダ型光導波路520aは、折返し導波路530a-1および530a-2を並行導波路として含み、マッハツェンダ型光導波路520bは、折返し導波路530b-1および530b-2を並行導波路として含む。
【0113】
折返し導波路530a-1、530a-2、530b-1、および530b-2は、図11に示す折返し導波路430a-1、430a-2、430b-1、および430b-2と同様の構成を有するが、図11に示す第3部分436a-1、436a-2、436b-1、および436b-2に代えて、第3部分536a-1、536a-2、536b-1、および536b-2を有する点が異なる。以下、第3部分536a-1、536a-2、536b-1、および536b-2を総称して第3部分536ともいうものとする。
【0114】
そして、第3部分536a-1および536a-2は、図11に示す第3部分436a-1および436a-2と同様の構成を有するが、互いの間隔の中心線560aに関し線対称に、当該中心線560aの延在方向に沿って互いの間隔が変化する遷移部550aを有する点が異なる。また、第3部分536b-1および536b-2は、図11に示す第3部分436b-1および436b-2と同様の構成を有するが、互いの間隔の中心線560bに関し線対称に、当該中心線560bの延在方向に沿って互いの間隔が変化する遷移部550bを有する点が異なる。
【0115】
同様に、ネスト型マッハツェンダ型光導波路510bは、図11に示すネスト型マッハツェンダ型光導波路410bと同様の構成を有するが、折返し導波路440a-1、440a-2、440b-1、および440b-2に代えて、折返し導波路540a-1、540a-2、540b-1、および540b-2を有する点が異なる。以下、折返し導波路540a-1、540a-2、540b-1、および540b-2を総称して折返し導波路540ともいうものとする。
【0116】
また、ネスト型マッハツェンダ型光導波路510bは、図11に示すマッハツェンダ型光導波路422aおよび422bに代えて、マッハツェンダ型光導波路522aおよび522bを有する点が異なる。マッハツェンダ型光導波路522aは、折返し導波路540a-1および540a-2を並行導波路として含み、マッハツェンダ型光導波路522bは、折返し導波路540b-1および540b-2を並行導波路として含む。
【0117】
折返し導波路540a-1、540a-2、540b-1、および540b-2は、図11に示す折返し導波路440a-1、440a-2、440b-1、および440b-2と同様の構成を有するが、図11に示す第3部分446a-1、446a-2、446b-1、および446b-2に代えて、第3部分546a-1、546a-2、546b-1、および546b-2を有する点が異なる。以下、第3部分546a-1、546a-2、546b-1、および546b-2を総称して第3部分546ともいうものとする。
【0118】
そして、第3部分546a-1および546a-2は、図11に示す第3部分446a-1および446a-2と同様の構成を有するが、互いの間隔の中心線560cに関し線対称に、当該中心線560cの延在方向に沿って互いの間隔が変化する遷移部550cを有する点が異なる。また、第3部分546b-1および546b-2は、図11に示す第3部分446b-1および446b-2と同様の構成を有するが、互いの間隔の中心線560dに関し線対称に、当該中心線560dの延在方向に沿って互いの間隔が変化する遷移部550dを有する点が異なる。以下、遷移部550a、550b、550c、および550dを総称して、遷移部550ともいうものとする。
【0119】
上記の構成を有する光変調素子400-1では、遷移部550を有することにより、信号電極526が形成される第3部分536及び546のそれぞれにおける互いの間隔を調整することができる。このため、当該間隔を調整して、信号電極526と第3部分536および546との間隔をそれぞれ一定に保ちつつ、信号電極526の電極幅を調整することができる。
【0120】
これにより光変調素子400-1では、光変調素子400と同様に、ネスト型マッハツェンダ型光導波路510aおよび510bのそれぞれにおいて、波長依存性の少ない安定な変調動作を実現することができると共に、図6に示す光変調素子100-1と同様に、信号電極526から第3部分536、546に加わる電界を高く維持しつつ、信号電極526が構成する高周波伝送線路のインピーダンスの設計自由度を向上することができる。
【0121】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。本実施形態は、上述したいずれかの実施形態または変形例に係る光変調素子を用いた光変調器である。図13は、第5の実施形態に係る光変調器600の構成を示す図である。光変調器600は、筐体602と、当該筐体602内に収容された光変調素子604と、中継基板606と、を有する。光変調素子604は、上述した第1ないし第4の実施形態又は変形例に係る光変調素子400、400-1のいずれかである。筐体602は、最終的にはその開口部に板体であるカバー(不図示)が固定されて、その内部が気密封止される。中継基板606と筐体602の側壁は、一体化した積層セラミックスで構成される場合もあり、側壁部のセラミックス内層にも配線が配置されることもある。
【0122】
光変調器600は、また、光変調素子604の変調に用いる高周波電気信号を入力するための信号ピン608と、光変調素子604の動作点の調整に用いる電気信号を入力するための信号ピン610と、を有する。
【0123】
さらに、光変調器600は、筐体602内に光を入力するための入力光ファイバ614と、光変調素子604により変調された光を筐体602の外部へ導く出力光ファイバ620と、を筐体602の同一面(本実施形態では、図示左側の面)に有する。
【0124】
ここで、入力光ファイバ614及び出力光ファイバ620は、固定部材であるサポート622及び624を介して筐体602にそれぞれ固定されている。入力光ファイバ614から入力された光は、サポート622内に配されたレンズ630によりコリメートされた後、入力光学ユニット634を介して光変調素子604へ入力される。入力光学ユニット634は、例えばレンズであるが、必要に応じてビーム位置をシフトさせるビームシフタを含み得る。ただし、これは一例であって、光変調素子604への光の入力は、従来技術に従い、例えば、入力光ファイバ614を、サポート622を介して筐体602内に導入し、当該導入した入力光ファイバ614の端面を光変調素子604の基板102、202、または402の端面に接続することで行うものとすることもできる。
【0125】
光変調素子604から出力される光は、出力光学ユニット616と、サポート624に配されたレンズ618と、を介して出力光ファイバ620に結合される。出力光学ユニット616は、例えばレンズであるが、光変調素子604が上述したDP-QPSK変調器を構成する光変調素子400または400-1であるときは、2つの変調された光を一つのビームに結合する偏波合成器やビーム位置をシフトさせるビームシフタを含み得る。また入力光学ユニットと出力光学ユニットはその一部の部品を一体化することもできる。
【0126】
中継基板606は、当該中継基板606に形成された導体パターン(不図示)により、信号ピン608から入力される高周波電気信号および信号ピン610から入力される動作点(バイアス点)調整用等の電気信号を、光変調素子604へ中継する。中継基板606上の上記導体パターンは、例えばワイヤボンディング等により、光変調素子604の電極の一端を構成するパッド(後述)にそれぞれ接続される。また、光変調器600は、所定のインピーダンスを有する終端器612を筐体602内に備える。
【0127】
上記の構成を有する光変調器600は、上述した第1ないし第4の実施形態又は変形例に係る光変調素子400、400-1のいずれかである光変調素子604を用いて構成されるので、筐体602の小型化を図りつつ、波長依存性の少ない良好な光伝送を実現し得る。なお、光変調素子100、100-1、200,300を用いる場合は、筐体のピンの位置や終端基板の配置位置を適宜調整することで実現できる。
【0128】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。本実施形態は、上述したいずれかの実施形態または変形例に係る光変調素子を用いた光変調モジュール700である。図14は、本実施形態に係る光変調モジュール700の構成を示す図である。図14において、図13に示す第5の実施形態に係る光変調器600と同一の構成要素については、図13に示す符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した図13についての説明を援用する。
【0129】
光変調モジュール700は、図13に示す光変調器600と同様の構成を有するが、中継基板606に代えて、回路基板706を備える点が、光変調器600と異なる。回路基板706は、駆動回路708を含む電子回路を備える。駆動回路708は、信号ピン608を介して外部から供給される例えば変調信号に基づいて、光変調素子604を駆動する高周波電気信号を生成し、当該生成した高周波電気信号を光変調素子604へ出力する。なお、駆動回路708は、回路基板706上に配置されても良いし、回路基板706と光変調素子604の間に配置されていても良い。回路基板706と筐体602の側壁は、一体化した積層セラミックスで構成される場合もあり、側壁部のセラミックス内層にも配線が配置されることもある。
【0130】
上記の構成を有する光変調モジュール700は、上述した第1ないし第4の実施形態又は変形例に係る光変調素子100、100-1、200、300、400、および400-1(以下、総称して光変調素子100等ともいう)のいずれかである光変調素子604を用いて構成されるので、上述した第5の実施形態に係る光変調器600と同様に、筐体602の小型化を図りつつ、波長依存性の少ない良好な光伝送を実現し得る。なお、光変調素子100、100-1、200,300を用いる場合は、筐体のピンの位置や終端基板の配置位置を適宜調整することで実現できる。
【0131】
[第7実施形態]
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。本実施形態は、第5の実施形態に係る光変調器600を搭載した光送信装置800である。図15は、本実施形態に係る光送信装置800の構成を示す図である。この光送信装置800は、光変調器600と、光変調器600に光を入射する光源804と、変調器駆動部806と、変調信号生成部808と、を有する。なお、光変調器600及び変調器駆動部806に代えて、上述した光変調モジュール700を用いることもできる。
【0132】
変調信号生成部808は、光変調器600に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路であり、外部から与えられる送信データに基づき、光変調器600に当該変調データに従った光変調動作を行わせるための高周波信号である変調信号を生成して、変調器駆動部806へ出力する。
【0133】
変調器駆動部806は、変調信号生成部808から入力される変調信号を増幅して、光変調器600が備える光変調素子604の信号電極を駆動するための高周波電気信号を出力する。尚、上述したように、光変調器600および変調器駆動部806に代えて、例えば変調器駆動部806に相当する回路を含む駆動回路708を筐体602の内部に備えた、光変調モジュール700を用いることもできる。
【0134】
上記高周波電気信号は、光変調器600の信号ピン608に入力されて、光変調素子604を駆動する。これにより、光源804から出力された光は、光変調器600により変調され、変調光となって光送信装置800から出力される。また光送信装置だけでなく、受信器と組み合わせた送受信装置とすることも可能である。
【0135】
上記の構成を有する光送信装置800は、上述した第5の実施形態に係る光変調器600および第6の実施形態に係る光変調モジュール700と同様に、小型で且つ波長依存性の少ない変調動作が可能な光変調素子604を用いているので、良好な変調特性を実現して、良好な光伝送を行うことができる。
【0136】
なお、本発明は上記実施形態の構成およびその代替構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0137】
例えば、上述した実施形態では、折返し導波路(例えば、折返し導波路306)は、第1方向に伝搬する光を第2方向へ折り返すものとしたが、折返し導波路を伝搬する光の方向は可逆である。したがって、上述した折返し導波路のそれぞれは、第2方向に伝搬する光を第1方向へ折り返すものとすることができる。
【0138】
また、上述した実施形態では、光導波路素子は、光の変調を行う光変調素子100等であるものとしたが、本発明に従う光導波路素子は、光変調素子には限られない。光導波路素子は、それぞれが光の伝搬方向を互いに同じ方向へ反転させる複数の光導波路で構成される光折り返し部を有する限りにおいて、任意の機能を有する素子であるものとすることができる。そのような光導波路素子は、例えば、光スイッチ、偏光制御器、光方向性結合器、光減衰器等々であり得る。
【0139】
また、光変調素子100等を構成する基板102、202、402(以下、基板102等)はXカットのLN基板であるものとしたが、基板102等はこれには限られない。基板102等は、例えば、Zカット等の他の結晶方位を持つLN基板でもよい。また、基板102等は、光導波路を形成し得る限りLN以外の任意の材料で構成されるものとすることができる。そのような材料は、例えば、タンタル酸リチウム等の他の強誘電体材料、InP、Si等の半導体材料であるものとすることができる。例えば、光変調素子100等は、基板102等としてSiを用いたいわゆるシリコンフォトニクス・デバイスとして構成されるものとすることができる。
【0140】
以上説明したように、例えば光導波路素子である光変調素子300は、基板202と、基板202の面内において第1方向(+Y方向)に伝搬する光を第1方向と逆方向である第2方向(-Y方向)へ折り返す複数の折返し導波路306と、を含む。複数の折返し導波路306は、互いに所定距離を隔てて第1方向に延在する第1部分312と、第1方向と異なる第3方向(+Z方向)に延在する第2部分314と、第2方向に延在する第3部分316と、を有する。そして、第3方向に延在する第2部分314が第1方向に沿って最も内側にある折返し導波路306b-2を除き、複数の折返し導波路306のそれぞれは、第3方向に延在する第2部分314が第1方向に沿ってより内側にある他の折返し導波路306と、第3部分316において交差する。
【0141】
この構成によれば、素子サイズの小型化を図りつつ、複数の折返し導波路306の互いの間での光路長差の発生を抑制することができる。その結果、波長依存性の少ない、安定な動作を実現することができる。
【0142】
また、光変調素子300では、複数の折返し導波路306の第2部分314の長さは、第2部分314が第1方向に沿って最も外側にある折返し導波路306から最も内側にある折返し導波路306の順に、増加するよう構成される。この構成によれば、複数の折返し導波路306間の光路差が効果的に補償され得る。
【0143】
また、光変調素子300では、第3方向(+Z方向)に延在する線分であって折返し導波路306の第1部分312のすべて及び第3部分316のすべてと交差する線分360を引いたとき、それらの折返し導波路306は、第1部分と線分360との交点から、第3部分と線分360との交点までの、当該折返し導波路306に沿った長さ又は光路長が互いに等しい。この構成によれば、素子サイズの小型化を図りつつ、複数の折返し導波路306の互いの間での光路長差の発生が抑制または防止される。その結果、波長依存性の少ない、安定な動作が実現される。
【0144】
また、光変調素子400-1では、複数の折返し導波路530、540のうち、少なくとも二つの隣り合う折返し導波路530、540は、例えば第3部分536、546において、互いの間の間隔の中央にあって当該折返し導波路530、540の長さ方向(すなわち、第3方向における折返し導波路530、540の長さ方向である第2方向)に延在する線560に関し、当該長さ方向(すなわち第2方向)に沿って互いの間隔が線対称に広く又は狭くなる遷移部550を含む。
【0145】
この構成によれば、例えば、第3部分536、546に形成する信号電極526から第3部分536、546に加わる電界を高く維持しつつ、信号電極526が構成する高周波伝送線路のインピーダンスの設計自由度を向上することができる。
【0146】
また、光変調素子300では、複数の折返し導波路306は、基板202上に延在する凸部により構成される凸状光導波路であって、互いに交差する交差部340における導波路幅が、交差部340以外における導波路幅よりも広く構成されている。この構成によれば、交差部340における光損失を低減して、低損失の光変調素子300を実現し得る。
【0147】
また、光変調素子300では、複数の折返し導波路306は、隣接する交差部340の間の導波路幅が交差部340における導波路幅と同じである。この構成によれば、折返し導波路306において導波路幅が変化する部分の数を低減して、折返し導波路306における光損失の増加を抑制することができる。
【0148】
また、光変調素子100等では、複数の折返し導波路(例えば折返し導波路106-1、106-2)は、マッハツェンダ型光導波路(例えば、マッハツェンダ型光導波路108)の並行導波路を構成する。この構成によれば、2本の並行導波路における光路差の程度がその光学特性に大きく影響するマッハツェンダ型光導波路において、低波長依存性等の良好な特性を実現し得る。
【0149】
また、光変調素子300では、複数の折返し導波路306は、ネスト型マッハツェンダ型光導波路を構成するそれぞれ2つのマッハツェンダ型光導波路の、それぞれの並行導波路を構成する。この構成によれば、合計4本の並行導波路における光路差の程度がその光学特性に大きく影響するネスト型マッハツェンダ型光導波路において、低波長依存性等の良好な特性を実現し得る。
【0150】
また、第5の実施形態に係る光変調器600は、光変調素子100等のいずれかである光変調素子604と、光変調素子604を収容する筐体602と、を備える。光変調器600は、また、光変調素子604に光を入力する入力光ファイバ614と、光変調素子604が出力する光を筐体602の外部へ導く出力光ファイバ620と、を備える。
【0151】
また、第6の実施形態に係る光変調モジュール700は、光変調素子100等のいずれかである光変調素子604と、光変調素子604を収容する筐体602と、を備える。光変調モジュール700は、また、光変調素子604に光を入力する入力光ファイバ614と、光変調素子604が出力する光を筐体602の外部へ導く出力光ファイバ620と、を備える。光変調モジュール700は、さらに、光変調素子604を駆動する駆動回路708を備える。
【0152】
また、第7の実施形態に係る光送信装置800は、光変調器600または光変調モジュール700と、光変調素子604に変調動作を行わせるための電気信号を生成する電子回路である変調信号生成部808と、を備える。
【0153】
これらの構成によれば、この構成によれば、筐体の小型化を図りつつ、波長依存性の少ない良好な光伝送を実現し得る光変調器600、光変調モジュール700、又は光送信装置800を実現することができる。
【符号の説明】
【0154】
100、100-1、200、300、400、400-1、604…光変調素子、102、202、402…基板、104、104a、204、304、404、504…光導波路、106-1、106-2、106a-1、106a-2、206a-1、206a-2、206b-1、206b-2、306、306a-1、306a-2、306b-1、306b-2、430、430a-1、430a-2、430b-1、430b-2、440、440a-1、440a-2、440b-1、440b-2、530、530a-1、530a-2、530b-1、530b-2、540、540a-1、540a-2、540b-1、540b-2…折返し導波路、108、108a、208a、208b、308a、308b、420a、420b、422a、422b、520a、520b、522a、522b…マッハツェンダ型光導波路、110a、110b、110c、110d、210a、210b、210c、210d、406a、406b、406c、406d…辺、112-1、112-2、212a-1、212a-2、212b-1、212b-2、312、312a-1、312a-2、312b-1、312b-2、432、432a-1、432a-2、432b-1、432b-2、442、442a-1、442a-2、442b-1、442b-2…第1部分、114-1、114-2、214a-1、214a-2、214b-1、214b-2、314、314a-1、314a-2、314b-1、314b-2、434、434a-1、434a-2、434b-1、434b-2、444、444a-1、444a-2、444b-1、444b-2…第2部分、116-1、116-2、116a-1、116a-2、216a-1、216a-2、216b-1、216b-2、316、316a-1、316a-2、316b-1、316b-2、436、436a-1、436a-2、436b-1、436b-2、446、446a-1、446a-2、446b-1、446b-2、536、536a-1、536a-2、536b-1、536b-2、546、546a-1、546a-2、546b-1、546b-2…第3部分、120、120a、220a、220b、426a、426b、426c、426d…信号電極、122a、122b…パッド、124、224、226、424a、424b、424c…バイアス電極、130…接着層、132…支持板、134-1、134-2…凸部、140、240a、240b、340a、340b、340c、340d、340e、340f…交差部、150、560a、560b、560c、560d…中心線、152、550a、550b、550c、550d…遷移部、260、350、410a、410b、510a、510b…ネスト型マッハツェンダ型光導波路、412…分岐導波路、414a、414b…出力導波路、600…光変調器、602…筐体、606…中継基板、608、610…信号ピン、612…終端器、614…入力光ファイバ、616…出力光学ユニット、618、630…レンズ、622、624…サポート、634…入力光学ユニット、700…光変調モジュール、706…回路基板、708…駆動回路、800…光送信装置、804…光源、806…変調器駆動部、808…変調信号生成部。
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