(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】光干渉断層撮影装置及び光学モジュール
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20240730BHJP
A61B 3/113 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
A61B3/10 100
A61B3/113
A61B3/10 300
(21)【出願番号】P 2021522820
(86)(22)【出願日】2020-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2020020946
(87)【国際公開番号】W WO2020241699
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】P 2019102482
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 泰史
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-169672(JP,A)
【文献】特開2005-287782(JP,A)
【文献】特開2014-128620(JP,A)
【文献】特開2016-049243(JP,A)
【文献】特開平09-149914(JP,A)
【文献】特開2006-212153(JP,A)
【文献】特開2007-127425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光干渉断層撮影のための光を発生する光源と、
前記光源からの光を参照光と測定光とに分割する光分割手段と、
前記測定光を走査するための走査手段と、
前記測定光の光路に配置され、前記走査手段により走査された測定光を被検眼に出射する光学素子と、
前記光学素子を、前記光学素子の光軸に交差する面内で移動させる光学素子駆動手段と、
前記被検眼の動きを検出する動き検出手段と、
前記動き検出手段により検出された前記被検眼の動き情報に基づいて、前記光学素子駆動手段を制御する駆動制御手段と、
前記被検眼からの戻り光と、前記参照光との合成により得られる干渉光を検出する干渉光検出手段と、
前記干渉光検出手段により検出された検出信号に基づいて、前記被検眼の断層画像を形成する画像生成手段と、
を備え
る光干渉断層撮影装置であって、
前記光学素子、前記光学素子駆動手段および前記動き検出手段は、光学モジュールとしてモジュール化されている
ことを特徴とする光干渉断層撮影装置。
【請求項2】
前記駆動制御手段は、前記測定光が前記被検眼に照射されている期間、前記光学素子駆動手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の光干渉断層撮影装置。
【請求項3】
前記被検眼の動きを検出する動き検出手段は、
赤外光を発生する赤外光源と、
前記被検眼で反射された前記赤外光の反射光を受光して、複数の前記被検眼の反射光像を逐次出力する受光素子と、
を備え、
前記受光素子から出力された前記複数の
前記被検眼の反射光像に基づいて、前記被検眼の動き情報を算出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光干渉断層撮影装置。
【請求項4】
前記受光素子はエリアセンサであって、前記被検眼の前眼部を撮影することを特徴とする請求項
3に記載の光干渉断層撮影装置。
【請求項5】
前記光学モジュールは、固視灯を備えることを特徴とする請求項
1から請求項4の何れか1項に記載の光干渉断層撮影装置。
【請求項6】
前記光学モジュールを前記測定光の光路に挿脱するための光学モジュール駆動手段を備えることを特徴とする
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の光干渉断層撮影装置。
【請求項7】
前記光学素子はレンズである、
ことを特徴とする請求項1から請求項
6の何れか1項に記載の光干渉断層撮影装置。
【請求項8】
被検眼を経由した測定光と参照光との干渉光から断層画像を取得する光干渉断層撮影装置に着脱可能な光学モジュールであって、
前記測定光の光路に配置される光学素子と、
前記光学素子を前記光学素子の光軸と交差する面内で移動させる光学素子駆動手段と、
前記被検眼の動きを検出する動き検出手段と、
を備えることを特徴とする光学モジュール。
【請求項9】
前記動き検出手段は、
前記被検眼に対して赤外光を照射する赤外光源と、
前記被検眼で反射された前記赤外光の反射光を受光して、前記被検眼の反射光像を取得する受光素子と、
を備えることを特徴とする請求項
8に記載の光学モジュール。
【請求項10】
固視灯をさらに備えることを特徴とする請求項
8または請求項
9に記載の光学モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、光干渉断層画像撮影装置および光学モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2009/0149742号公報には、被検眼前眼部の断層画像の取得中に、角膜頂点と装置本体との位置関係を一定に保つように、装置本体を追従移動させるオートアイトラッキング手段を備える前眼部光干渉断層撮影装置が開示されている。
【0003】
装置本体を追従移動させるような大掛かりな構成でなく、より簡便な構成でアイ・トラッキングを実行できる光干渉断層撮影装置が要望されている。
【発明の概要】
【0004】
本開示の技術の第1の態様の光干渉断層撮影装置は、光干渉断層撮影のための光を発生する光源と、前記光源からの光を参照光と測定光とに分割する光分割手段と、前記測定光を走査するための走査手段と、前記測定光の光路に配置され、前記走査手段により走査された測定光を被検眼に出射する光学素子と、前記光学素子を、前記光学素子の光軸に交差する面内で移動させる光学素子駆動手段と、前記被検眼の動きを検出する動き検出手段と、前記動き検出手段により検出された前記被検眼の動き情報に基づいて、前記光学素子駆動手段を制御する駆動制御手段と、前記被検眼からの戻り光と、前記参照光との合成により得られる干渉光を検出する干渉光検出手段と、前記干渉光検出手段により検出された検出信号に基づいて、前記被検眼の断層画像を形成する画像生成手段と、を備えることを特徴とする。
【0005】
本開示の技術の第2の態様の光干渉断層撮影装置は、被検眼を経由した測定光と参照光との干渉光から断層画像を生成する光干渉断層撮影装置であって、前記被検眼の後眼部の断層画像を生成する後眼部観察モードと、前記被検眼の前眼部の断層画像を生成する前眼部観察モードとを有し、前記後眼部観察モードまたは前記前眼部観察モードのいずれかに設定するモード選択手段と、前記モード選択手段が前記後眼部観察モードを選択した場合、前記測定光の前記後眼部での照射位置を前記被検眼の動きに追従させる第1アイ・トラッキング制御を実行し、前記モード選択手段が前記前眼部観察モードを選択した場合、前記測定光の前記前眼部での照射位置を前記被検眼の動きに追従させる第2アイ・トラッキング制御を実行するトラッキング実行手段と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本開示の技術の第3の態様の光学モジュールは、被検眼を経由した測定光と参照光との干渉光から断層画像を取得する光干渉断層撮影装置に着脱可能な光学モジュールであって、前記測定光の光路に配置される光学素子と、前記光学素子を前記光学素子の光軸と交差する面内で移動させる光学素子駆動手段と、を備えることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の眼科装置の概略構成図である。
【
図2】第1実施形態の撮影光学系の概略構成図である。
【
図3】前眼部観察用の光学モジュールが、対物レンズの光路に挿入されていない場合の撮影光学系の概略構成図である。
【
図4】前眼部観察用の光学モジュールが、対物レンズの光路に挿入されている場合の撮影光学系の概略構成図である。
【
図5】上図は、前眼部観察用の光学モジュールが第1レンズ群と第2レンズ群との間の光路に挿入されていない場合の第1レンズ群及び第2レンズ群の概略光学構成図であり、下図は、前眼部用のモジュールが第1レンズ群と第2レンズ群との間の光路に挿入されている場合の第1レンズ群及び第2レンズ群の概略光学構成図である。
【
図6】光干渉断層画像生成処理のフローチャートである。
【
図7】第2実施形態の撮影光学系の概略構成図である。
【
図8】第3実施形態の撮影光学系の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示の技術の実施形態を詳細に説明する。
【0009】
[第1実施形態]
【0010】
以下、本開示の技術の第1実施形態に係る眼科装置110について図面を参照して説明する。
【0011】
図1には、眼科装置110の概略構成が示されている。
【0012】
説明の便宜上、走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope)を「SLO」と称する。また、光干渉断層計(Optical Coherence Tomography)を「OCT」と称する。
【0013】
なお、眼科装置110が水平面に設置された場合の水平方向を「X方向」、水平面に対する垂直方向を「Y方向」、撮影光学系116Aの光軸方向を「Z方向」とする。従って、X方向、Y方向、およびZ方向は互いに垂直である。
【0014】
眼科装置110は、撮影装置14および制御装置16を含む。撮影装置14は、被検眼12の眼底12Aの画像を取得するSLOユニット18と、被検眼12の断層画像を取得するOCTユニット20とを備えている。以下、SLOユニット18により取得されたSLOデータに基づいて生成された眼底画像をSLO画像と称する。また、OCTユニット20により取得されたOCTデータに基づいて生成された断層画像をOCT画像と称する。なお、SLO画像は、二次元眼底画像と言及されることもある。また、OCT画像は、被検眼12の撮影部位に応じて、眼底断層画像、前眼部断層画像と言及されることもある。
眼科装置110は、本開示の技術の「光干渉断層撮影装置」の一例である。
【0015】
制御装置16は、CPU(Central Processing Unit(中央処理装置))16A、RAM(Random Access Memory)16B、ROM(Read-Only memory)16C、および入出力(I/O)ポート16Dを有するコンピュータを備えている。
CPU16Aは、本開示の技術の「駆動制御手段」の一例である。
【0016】
制御装置16は、I/Oポート16Dを介してCPU16Aに接続された入力/表示装置16Eを備えている。入力/表示装置16Eは、被検眼12の画像を表示したり、ユーザから各種指示を受け付けたりするグラフィックユーザインターフェースを有する。入力/表示装置16Eは、タッチパネル・ディスプレイを用いることができる。
【0017】
また、制御装置16は、I/Oポート16Dに接続された画像処理装置17を備えている。画像処理装置17は、撮影装置14によって得られたデータに基づき被検眼12の画像を生成する。
画像処理装置17は、本開示の技術の「画像生成手段」の一例である。
【0018】
上記のように、
図1では、眼科装置110の制御装置16が入力/表示装置16Eを備えているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、眼科装置110の制御装置16は入力/表示装置16Eを備えず、眼科装置110とは物理的に独立した別個の入力/表示装置を備えるようにしてもよい。この場合、当該表示装置は、制御装置16のCPU16Aの制御下で動作する画像処理プロセッサユニットを備える。画像処理プロセッサユニットが、CPU16Aが出力指示した画像信号に基づいて、SLO画像等を表示するようにしてもよい。
【0019】
撮影装置14は、制御装置16の制御下で作動する。撮影装置14は、SLOユニット18、撮影光学系116A、およびOCTユニット20を含む。撮影光学系116Aは、CPU16Aの制御下で、撮影光学系駆動部116MによりX、Y、Z方向に移動される。撮影装置14と被検眼12とのアラインメント(位置合わせ)は、例えば、撮影装置14や、眼科装置110をX、Y、Z方向に移動させることにより、行われてもよい。
【0020】
SLOシステムは、
図1に示す制御装置16、SLOユニット18、および撮影光学系116Aによって実現される。
【0021】
SLOユニット18は、複数の光源を備えている。例えば、
図1に示されるように、SLOユニット18は、B光(青色光)の光源40、G光(緑色光)の光源42、R光(赤色光)の光源44、およびIR光(赤外線(例えば、近赤外光))の光源46を備える。各光源40、42、44、46から出射された光は、各光学部材48、50、52、54、56を介して同一光路に指向される。光学部材48、56は、ミラーであり、光学部材50、52、54は、ビームスプリッタ―である。B光は、光学部材48、50、54を経由して、撮影光学系116Aの光路に導かれる。G光は、光学部材50、54を経由して、撮影光学系116Aの光路に導かれる。R光は、光学部材52、54を経由して、撮影光学系116Aの光路に導かれる。IR光は、光学部材56、52を経由して、撮影光学系116Aの光路に導かれる。なお、光源40、42、44、46としては、LED光源や、レーザ光源を用いることができる。なお、以下には、レーザ光源を用いた例を説明する。光学部材48、56として、全反射ミラーを用いることができる。また、光学部材50、52、54として、ダイクロイックミラー、ハーフミラー等を用いることができる。
【0022】
SLOユニット18は、G光、R光、B光およびIR光をそれぞれ個別に発する発光モードや、それら全てを同時にもしくは幾つかを同時に発する発光モードなど、各種発光モードを切り替え可能に構成されている。
図1に示す例では、B光(青色光)の光源40、G光の光源42、R光の光源44、およびIR光の光源46の4つの光源を備えるが、本開示の技術は、これに限定されない。例えば、SLOユニット18は、更に、白色光の光源を更に備えていてもよい。この場合、上記各種発光モードに加えて、白色光のみを発する発光モード等を設定してもよい。
【0023】
SLOユニット18から撮影光学系116Aに入射されたレーザ光は、後述する走査部(120、142)によってX方向およびY方向に走査される。走査光は瞳孔27を経由して、被検眼12の後眼部(例えば、眼底12A)に照射される。眼底12Aにより反射された反射光は、撮影光学系116Aを経由してSLOユニット18へ入射される。
【0024】
眼底12Aで反射された反射光は、SLOユニット18に設けられた光検出素子70、72、74、76で検出される。本実施形態では、複数の光源、すなわち、B光源40、G光源42、R光源44およびIR光源46に対応させて、SLOユニット18は、B光検出素子70、G光検出素子72、R光検出素子74およびIR光検出素子76を備える。B光検出素子70は、ビームスプリッタ64で反射されたB光を検出する。G光検出素子72は、ビームスプリッタ64を透過し、ビームスプリッタ58で反射されたG光を検出する。R光検出素子74は、ビームスプリッタ64、58を透過し、ビームスプリッタ60で反射されたR光を検出する。IR光検出素子76は、ビームスプリッタ64、58、60を透過し、ビームスプリッタ62で反射されたIR光を検出する。光検出素子70、72、74、76として、例えば、APD(avalanche photodiode:アバランシェ・フォトダイオード)が挙げられる。
【0025】
画像処理装置17は、CPU16Aの制御のもと、B光検出素子70、G光検出素子72、R光検出素子74、およびIR光検出素子76のそれぞれで検出された信号を用いて、各色に対応するSLO画像を生成する。各色に対応するSLO画像には、B光検出素子70で検出された信号を用いて生成されたB-SLO画像、G光検出素子72で検出された信号を用いて生成されたG-SLO画像、R光検出素子74で検出された信号を用いて生成されたR-SLO画像、及びIR光検出素子76で検出された信号を用いて生成されたIR-SLO画像である。また、B光源40、G光源42、R光源44が同時に発光する発光モードの場合、R光検出素子74、G光検出素子72、及びB光検出素子70で検出されたそれぞれの信号を用いて生成されたR-SLO画像、G-SLO画像およびB-SLO画像から、RGB-SLO画像を合成してもよい。また、G光源42、R光源44が同時に発光する発光モードの場合、R光検出素子74及びG光検出素子72で検出されたそれぞれの信号を用いて生成されたR-SLO画像およびG-SLO画像から、RG-SLO画像を合成してもよい。第1実施形態では、SLO画像としてRG-SLO画像が用いられるが、これに限定されず、他のSLO画像を用いることができる。
ビームスプリッタ58、60、62、64として、ダイクロイックミラー、ハーフミラー等を用いることができる。
【0026】
OCTシステムは、
図1に示す制御装置16、OCTユニット20、および撮影光学系116Aによって実現される三次元画像取得装置である。OCTユニット20は、光源20A、センサ(検出素子)20B、第1の光カプラ20C、参照光学系20D、コリメートレンズ20E、および第2の光カプラ20Fを含む。
【0027】
光源20Aは、光干渉断層撮影のための光を発生する。光源20Aとしては、例えば、スーパールミネセントダイオード(Super Luminescent Diode;SLD)を用いることができる。光源20Aは、広いスペクトル幅をもつ広帯域光源の低干渉性の光を発生する。光源20Aから射出された光は、第1の光カプラ20Cで分割される。分割された一方の光は、測定光として、コリメートレンズ20Eで平行光にされた後、撮影光学系116Aに入射される。測定光は、後述する走査部(148、142)によってX方向およびY方向に走査される。走査光は、被検眼の前眼部や、瞳孔27を経由して後眼部に照射される。前眼部又は後眼部で反射された測定光は、撮影光学系116Aを経由してOCTユニット20へ入射され、コリメートレンズ20Eおよび第1の光カプラ20Cを介して、第2の光カプラ20Fに入射する。なお、本実施形態では、光源20AとしてSLDを用いるSD-OCTが例示されているが、これに限定されず、SLDに替えて波長掃引光源を用いるSS-OCTが採用されてもよい。
第1の光カプラ20Cは、本開示の技術の「光分割手段」の一例である。走査部(148、142)は、本開示の技術の「走査手段」の一例である。
【0028】
光源20Aから射出され、第1の光カプラ20Cで分割された他方の光は、参照光として、参照光学系20Dへ入射され、参照光学系20Dを経由して、第2の光カプラ20Fに入射する。
【0029】
被検眼12で反射および散乱された測定光(戻り光)と、参照光とは、第2の光カプラ20Fで合成されて干渉光が生成される。干渉光はセンサ20Bで検出される。画像処理装置17は、センサ20Bからの検出信号(OCTデータ)に基づいて、断層画像を生成する。
センサ20Bは、本開示の技術の「干渉光検出手段」の一例である。
【0030】
第1実施形態では、OCTシステムは、被検眼12の前眼部又は後眼部の断層画像を生成する。
【0031】
被検眼12の前眼部は、前眼セグメントとして、例えば、角膜、虹彩、隅角、水晶体、毛様体、および硝子体の一部を含む部分である。被検眼12の後眼部は、後眼セグメントとして、例えば、 硝子体の残りの一部、網膜、脈絡膜、及び強膜を含む部分である。なお、前眼部に属する硝子体は、硝子体の内、水晶体の最も眼球中心に近い点を通るX-Y平面を境界として、角膜側の部分であり、後眼部に属する硝子体は、硝子体の内、前眼部に属する硝子体以外の部分である。
OCTシステムは、被検眼12の前眼部が撮影対象部位である場合、例えば、角膜の断層画像を生成する。また、被検眼12の後眼部が撮影対象部位である場合、OCTシステムは、例えば、網膜の断層画像を生成する。
【0032】
図2には、撮影光学系116Aの概略構成が示されている。撮影光学系116Aは、被検眼12側から順に配置された対物レンズ130、ビームスプリッタ178、水平走査部142、リレーレンズ装置140、ビームスプリッタ147、垂直走査部120、148、フォーカス調整装置150、及びコリメータレンズ156を備えている。
ビームスプリッタ178、147として、例えば、ダイクロイックミラー、ハーフミラー等を用いることができる。
【0033】
水平走査部142は、リレーレンズ装置140を介して入射したSLOのレーザ光およびOCTの測定光を水平方向に走査する光学スキャナである。本実施形態では、水平走査部142は、SLO光学系およびOCT光学系とで共用されているが、この限りでない。SLO光学系およびOCT光学系のそれぞれに水平走査部を設けてもよい。
【0034】
コリメータレンズ156は、OCTユニット20から出射した光が進むファイバの端部158から出射される測定光を平行光にする。
【0035】
フォーカス調整装置150は、複数のレンズ152、154を備える。被検眼12における撮影部位に応じて、複数のレンズ152、154のそれぞれを、適宜光軸方向に移動させることにより、被検眼12における測定光のフォーカス位置を調整する。なお、図示しないが、フォーカス検出装置を備える場合には、焦点検出の状態に応じてフォーカス調整装置にてレンズ152、154を駆動して、自動的に焦点合わせをおこなうようにして、オートフォーカス装置を実現することが可能である。
【0036】
垂直走査部148は、フォーカス調整装置150を介して入射した測定光を垂直方向に走査する光学スキャナである。
【0037】
垂直走査部120は、SLOユニット18から入射したレーザ光を垂直方向に走査する光学スキャナである。
【0038】
リレーレンズ装置140は、複数の正のパワーを有するレンズ144、146を備える。複数のレンズ144、146により、垂直走査部120、148の位置と水平走査部142の位置とが共役になるように、リレーレンズ装置140が構成されている。より具体的には、両走査部の角度走査の中心位置が共役になるように、リレーレンズ装置140が構成されている。
【0039】
ビームスプリッタ147は、リレーレンズ装置140と垂直走査部148との間に、配置されている。ビームスプリッタ147は、SLO光学系とOCT光学系とを合成する光学部材であって、SLOユニット18から出射されたSLO光をリレーレンズ装置140に向けて反射するとともに、OCTユニット20から出射された測定光をリレーレンズ装置140に向けて透過する。OCTユニット20から出射された測定光は、垂直走査部148および水平走査部142によって二次元走査される。また、SLOユニット18から出射された光は、SLO光学系を構成する垂直走査部120および水平走査部142により二次元走査される。
垂直走査部120の走査速度は、本実施形態では、垂直走査部148の走査速度より、例えば、複数倍早い。よって、OCTユニット20から出射された測定光が垂直走査部148により1回垂直走査される間に、SLOユニット18から出射された光が垂直走査部120により複数回垂直走査される。
【0040】
二次元走査されたOCT測定光およびSLOレーザ光はそれぞれ、共通光学系を構成する対物レンズ130を介して被検眼12へ入射される。被検眼12で反射されたSLOレーザ光は、対物レンズ130、水平走査部142、リレーレンズ装置140、ビームスプリッタ147および垂直走査部120を経由して、SLOユニット18に入射される。また、被検眼12を経由したOCT測定光は、対物レンズ130、水平走査部142、リレーレンズ装置140、ビームスプリッタ147、垂直走査部148、フォーカス調整装置150、およびコリメータレンズ156を経由して、OCTユニット20へ入射される。
【0041】
水平走査部142及び垂直走査部120、148としては、例えば、レゾナントスキャナ、ガルバノミラー、ポリゴンミラー、回転ミラー、ダボプリズム、ダブルダボプリズム、ローテーションプリズム、MEMSミラースキャナー、音響光学素子(AOM)等が好適に用いられる。本実施形態では、垂直走査部148としてガルバノミラーが、また、垂直走査部120としてポリゴンミラーが用いられている。なお、ポリゴンミラーや、ガルバノミラーなどの光学スキャナに替えて、MEMSミラースキャナーなどの二次元光学スキャナを用いる場合には、入射光をその反射素子で二次元的に角度走査することが可能であるため、リレーレンズ装置140を無くしてもよい。
【0042】
対物レンズ130は、水平走査部142側から順に、第1レンズ群134と第2レンズ群132とを備え、少なくとも第2レンズ群132は全体として正のパワーを有する正レンズ群である。第1実施形態では、第1レンズ群134も全体として正のパワーを有する正レンズ群である。第1レンズ群134及び第2レンズ群132の各々は、少なくとも1つの正レンズを備える。第1レンズ群134及び第2レンズ群132の各々が複数のレンズを備える場合、第1レンズ群134及び第2レンズ群132の各々は全体として正のパワーを有すれば、負レンズを含んでいてもよい。
【0043】
対物レンズ130を構成する第1レンズ群134と第2レンズ群132とは、対物レンズにおけるレンズ面間の光軸上での最大空気間隔によって隔てられている。なお、第1レンズ群134と第2レンズ群132との間の位置に、パワーを有しないガラス板があったとしても、当該ガラス板は、第1レンズ群134及び第2レンズ群132の何れかに属するレンズとしては考慮されず、第1レンズ群134と第2レンズ群132とは、最大空気間隔によって隔てられるとされる。
【0044】
撮影光学系116Aは、対物レンズ130の光路中に挿脱可能な光学モジュールとして、前眼部観察用の光学モジュール136と、光学モジュール136の挿脱状態を検知するセンサ130Sとを備えている。第1実施形態では、後に詳述する通り、光学モジュール136が対物レンズ130の光路中に配置されない場合、観察光学系として、後眼部観察光学系300(
図3も参照)が構成され、眼科装置110はそれにより被検眼12の後眼部の画像を取得する。一方、光学モジュール136が対物レンズ130の光路中に挿入された場合、観察光学系として、前眼部観察光学系400(
図4も参照)が構成され、眼科装置110はそれにより被検眼12の前眼部の画像を取得する。第1実施形態では、後に詳述する通り、光学モジュール136は、オペレータ(例えば、眼科医)によりマニュアルまたは自動で観察光学系の光路に挿脱される。光学モジュール136は、図示しないレール上を移動し、あるいは、ターレットの回転移動により、第1レンズ群134と第2レンズ群132との間の光路中に挿入され、または光路中から抜去される。前眼部観察用の光学モジュール136の挿脱状態を検知するセンサ130Sは、光学モジュール136が撮影光学系に挿入されたこと、または、そこから取り外されたこと、のいずれかを検出するセンサであってもよいし、両方を検出できるセンサであってもよい。
センサ130Sは、本開示の技術の「挿入検知手段」の一例である。
【0045】
以下、本実施形態において、前眼部観察用の光学モジュール136が撮影光学系の光路中に配置されていない状態で被検眼12を観察する場合を、後眼部観察モード(第1モード)と称する。また、光学モジュール136が撮影光学系の光路中に配置された状態で被検眼12を観察する場合を、前眼部観察モード(第2モード)と称する。
【0046】
撮影光学系116Aは、
図2に示されるように、前眼部観察用の光学モジュール136と異なる光学モジュール138をさらに備える。光学モジュール138は、主に、後眼部観察モードで使用されるため、以下、後眼部観察用の光学モジュール138と称する。後眼部観察用の光学モジュール138はビームスプリッタ178を備えている。ビームスプリッタ178は、対物レンズ130と水平走査部142との間、より具体的には、第1レンズ群134と水平走査部142との間の光路中に配置される。
【0047】
次に、
図3及び
図4を参照して、後眼部観察モードおよび前眼部観察モードにおける各々の撮影光学系116Aの構成を説明する。
図3は、後眼部観察モードにおける後眼部観察光学系300を示している。前眼部観察用の光学モジュール136は、対物レンズ130の光路から抜去されている。
図4は、前眼部観察モードにおける前眼部観察光学系400を示している。前眼部観察用の光学モジュール136は、対物レンズ130の光路、具体的には水平走査部142側の第1レンズ群134と被検眼側の第2レンズ群132との間の光路中に挿入されている。後眼部観察光学系300(
図3)において、水平走査部142に代表される走査面から供給される平行光束の3つの角度の平行光束が、2つの正レンズ群(第1レンズ群134及び第2レンズ群132)を通して被検眼12の眼底12Aで集光される光線の様子が示されている。また、前眼部観察光学系400(
図4)において、水平走査部142から共有される同じく3つの角度の平行光束が2つの正レンズ群(第1レンズ群134及び第2レンズ群132)と、その間に挿入された光学素子(詳細には後述する負レンズ162)とにより、被検眼12の角膜に集光される光線が示されている。
【0048】
後眼部観察光学系300では、
図2に示されるように、垂直走査部120、148及び水平走査部142は、被検眼12の瞳孔位置Ppに共役となるように、配置される。SLO光学系において、垂直走査部120および水平走査部142により走査されるSLOレーザ光は、対物レンズ130を経由して、被検眼12の瞳孔位置Ppを中心として2次元的に角度走査される。その結果、SLOレーザ光の集光点が、眼底12Aにおいて2次元走査される。また、OCT光学系においても同様に、垂直走査部148および水平走査部142により走査される測定光は、対物レンズ130を経由して、被検眼12の瞳孔位置Ppを中心として二次元的に角度走査される。その結果、測定光の集光点が、眼底12Aにおいて二次元走査される。後眼部観察光学系300を用いて画像取得する後眼部観察モードでは、SLOユニット18により眼底二次元画像が、OCTユニット20により眼底断層画像がそれぞれ取得される。後述するように、OCTユニット20による眼底断層画像の取得期間、SLOユニット18は眼底二次元画像を継続して逐次取得する。逐次取得される複数のSLO画像は、OCT撮影時のアイ・トラッキング用の画像として利用される。
【0049】
前眼部観察光学系400では、
図4に示されるように、前眼部観察用の光学モジュール136が、対物レンズ130の光路中、具体的には、対物レンズ130を構成する正屈折力の第1レンズ群134と正屈折力の第2レンズ群132との間の光路中に挿入されている。光学モジュール136は、その内部にレンズ等の光学素子を有する。本実施形態では、光学素子は、切換レンズとしての負のパワーを有するレンズ162である。負レンズ162が対物レンズ130の光軸上に配置されると、負レンズ162は、後眼部観察光学系300を前眼部観察光学系400へ切り換えるための切換えレンズとして作用する。以下では、レンズ162を、負レンズ162と称したり切換レンズ162と称したりする。負レンズ162が対物レンズ130の光路に挿入された場合、水平走査部142の走査位置と被検眼12の瞳孔位置Ppとは共役にならず、水平走査部142の走査位置からの平行光は前眼部に集光される。負レンズ162を通過する光束の径は、第1レンズ群134及び第2レンズ群132の各々を通過する光束径よりも小さい。よって、負レンズ162の有効径は対物レンズ130を構成するレンズ群の有効径に比べて小さい。負レンズ162は、第1レンズ群134および第2レンズ群132に比べて小型である。そのため、光学モジュール136を小型に構成できる。なお、光学素子としては、負レンズ162に限定されず、負レンズ162に代えて、例えば、フレネルレンズ、DОE(Diffractive Optical Element)等の光学部材が用いられてもよい。
【0050】
次に、前眼部観察用の光学モジュール136の構成および機能を詳説する。
図3に示すように、光学モジュール136は、上述した切換レンズ162のほか、切換レンズ駆動部162M、ビームスプリッタ170、固視灯164、カメラ166A、166B、及び照明装置168A、168Bを備えている。光学素子駆動部としての切換レンズ駆動部162Mは、CPU16Aの制御下で、対物レンズ130の光軸に交差する面内、例えば、光軸に直交する平面内で、切換レンズ162を微小に移動させる。固視灯164は可視光を発生し、被検眼12の視線を誘導かつ固定するために使用される。照明装置168A、168Bは赤外光源であり、被検眼12の前眼部を照明するために使用される。赤外光源は、例えば、OCTユニット20から出射される測定光の波長よりも長波長もしくは短波長の赤外光を発する。カメラ166A、166Bは、被検眼12の前眼部で反射された赤外光の反射光を受光して、前眼部、例えば、角膜反射光像を生成する。ビームスプリッタ170は、OCT測定光を透過するとともに、固視灯164から出射された可視光および照明装置168A、168Bから出射された赤外光を反射する。ビームスプリッタ170により反射された可視光および赤外光は、対物レンズ130の第2レンズ群132を経由して被検眼12へ指向される。前眼部で反射された赤外光は、ビームスプリッタ170で反射されてカメラ166A、166Bで検出される。なお、カメラ166A、166Bは、好適には、CCDエリアセンサやCMOSエリアセンサなどの受光素子を備え、時系列に複数の被検眼12の反射光像を、例えば、動画として出力するよう制御される。カメラ166A、166Bのそれぞれは、被検眼12の前眼部を異なる方向から撮影する。CPU16Aは、カメラ166A、166Bのそれぞれから得られた前眼部の画像(例えば、角膜反射光像)を処理して、被検眼12の前眼部や瞳孔の位置を計算する。算出された前眼部や瞳孔の位置情報は、前眼部のOCT撮影の開始前に、被検眼12と眼科装置110との位置合わせに利用される。
カメラ166A、166Bは、本開示の技術の「受光素子」の一例である。照明装置168A、168B、カメラ166A、166B、およびCPU16Aは、本開示の技術の「動き検出手段」の一例である。
【0051】
CPU16Aで算出された前眼部や瞳孔の位置情報、すなわち、被検眼12の動きに関する情報は、前眼部の断層画像の取得期間、アイ・トラッキングを実行するための情報として使用される。前眼部観察モードでは、アイ・トラッキングは、CPU16Aが算出した前眼部や瞳孔の位置情報に基づき、切換レンズ162の位置を切換レンズ駆動部162Mが変化させることにより、実現される。OCTの測定光は、
図4に示されるように、切換レンズ162を通って被検眼12の前眼部に照射される。切換レンズ駆動部162Mは、切換レンズ162を対物レンズ130の光軸に交差する面内で移動させることによって、測定光の前眼部における照射位置を変更する。CPU16Aは、リアルタイムで算出した前眼部や瞳孔の位置情報に基づいて、切換レンズ駆動部162Mを制御して切換レンズ162を動かす。その結果、CPU16Aは、被検眼12の動きに合わせて、被検眼12の前眼部における測定光の照射位置を変更する。切換レンズ162の駆動の範囲は、上記の通り、対物レンズ130の光軸に交差する面内であり、例えば、光軸に垂直な平面や、光軸上の一点を中心として光軸に交差する曲面が挙げられる。なお、切換レンズ駆動部162Mとして、カメラ等で利用される防振レンズ機構を使うことができる。これらの技術として、例えば、特開2007-240736号公報、特開2009-282448号公報、特開2010-011302号公報、特開2012-173301号公報が挙げられる。特段の定めがない限り、これら文献の内容は参照として組み込まれる。
【0052】
次に、後眼部観察用の光学モジュール138の構成および機能を詳説する。後眼部観察用の光学モジュール138は、
図2に示されるように、水平走査部142と、対物レンズ130との間の光路に配置される。後眼部観察用の光学モジュール138は、ビームスプリッタ178と、モジュール本体138Hとを備えている。モジュール本体138Hは、固視灯172、カメラ174A、174B、及び照明装置176A、176Bを備えている。
【0053】
固視灯172は、被検眼12の視線を誘導かつ固定するための可視光を発する。固視灯172から発せられた可視光は、ビームスプリッタ178で反射されて、対物レンズ130を介して、被検眼12に入射する。
【0054】
照明装置176A、176Bは、被検眼12の前眼部を照明するための照明光として赤外光を発する。赤外光源は、例えば、OCTユニット20から出射される測定光や、SLOユニット18から出射されるIR光と異なる波長の赤外光を出射する。照明光は、ビームスプリッタ178で反射されて、対物レンズ130を介して、被検眼12の前眼部を照明する。
【0055】
カメラ174A、174Bは、被検眼12の前眼部で反射された照明光の反射光を受光して、前眼部、例えば、角膜反射光像を生成する。被検眼12の前眼部は、異なる方向から2つのカメラ174A、174Bにより撮影される。ビームスプリッタ178は、OCTユニット20から出射される測定光や、SLOユニット18から出射されるIR光を透過するとともに、固視灯172から放射された可視光および照明装置176A、176Bから放射された赤外光を反射する。ビームスプリッタ178で反射された可視光および赤外光は、対物レンズ130を経由して被検眼12へ指向される。前眼部で反射された赤外光は、ビームスプリッタ178で反射されてカメラ174A、174Bで検出される。なお、カメラ166A、166Bは、好適には、CCDエリアセンサやCMOSエリアセンサなどの受光素子を備え、時系列に複数の被検眼12の反射光像を、例えば、動画として出力するよう制御される。カメラ166A、166Bのそれぞれは、被検眼12の前眼部を異なる方向から撮影する。CPU16Aは、各々により得られた前眼部の画像を処理して、被検眼12の前眼部や瞳孔の位置を計算する。算出された前眼部や瞳孔の位置情報は、後眼部断層撮影の開始前に、被検眼12と眼科装置110との位置合わせに利用される。
【0056】
本実施形態では、光学モジュール138は常に、撮影光学系116Aの光路に挿入された例を説明するが、この限りでない。光学モジュール138は、例えば、撮影光学系116Aの光路に挿脱可能に構成されており、前眼部観察モードの間、撮影光学系116Aの光路から抜去してもよい。この場合、光学モジュール138は、オペレータ(例えば、眼科医)によりマニュアル又は自動で操作され、図示しないレール上を移動し、或いはターレットの回転移動により、観察光学系の光路中に挿入または抜去される。
【0057】
次に、後眼部観察モードおよび前眼部観察モードにおける光学的構成について説明する。
図5の上図には、後眼部観察モード(第1モード)における後眼部観察光学系の概要を示している。前眼部観察用の光学モジュール136は、対物レンズ130の光路に挿入されていない。一方、
図5の下図には、前眼部観察モード(第2モード)における前眼部観察光学系の概要を示している。光学モジュール136が、対物レンズ130の光路に挿入されている。なお、前眼部観察光学系の概略図において、説明の簡便のため、光学モジュール136として切換レンズ162のみが示されている。
【0058】
後眼部観察光学系(
図5上図)において、対物レンズ130を構成する複数のレンズ群、すなわち、正の第1レンズ群134と正の第2レンズ群132とは、アフォーカル系を形成し、水平走査部142での走査中心(図中Ps)は、被検眼12の瞳孔位置Ppと共役になる。ここで、第1レンズ群134と第2レンズ群132のそれぞれの焦点距離を、f1、f2とすると、第1レンズ群134と第2レンズ群132との間の距離(群間隔)dは、
d=f1+f2
である。
倍率βは、
β=-f2/f1
である。
【0059】
第1実施形態の後眼部観察モード(第1モード)では、水平走査部142の走査位置Psは、被検眼12の瞳孔位置Ppと共役になっている。水平走査部142の走査位置Psからの平行光は被検眼12の瞳孔位置Ppを所定の角度でほぼ平行光として通過し、被検眼12によって眼底12Aに集光される。OCTユニット20から出射された測定光の、眼底12Aでの集光位置は、垂直走査部120の位置及び水平走査部142の位置(Ps)での走査角度に依存して決定される。これにより、眼底12Aの撮影や観察において、所望の走査位置や走査範囲を設定できる。
【0060】
次に、前眼部観察光学系(
図5下図)について説明する。この観察光学系では、前眼部観察用の光学モジュール136の切換レンズ162が対物レンズ130の光路に挿入されている。
【0061】
前眼部観察モード(第2モード)では、負レンズである切換レンズ162が、第1レンズ群134と第2レンズ群132との間に挿入される。前眼部観察モード(第2モード)では、水平走査部142の走査位置Psと被検眼12の瞳孔位置Ppとは共役になっておらず、水平走査部142の走査位置Psからの平行光は前眼部に集光される。OCTユニット20から出射された測定光の、前眼部での集光位置は、走査部の位置(Ps)での走査角度に依存して決定される。これにより、前眼部観察が可能となる。
【0062】
ここで、前眼部観察モード(第2モード)における切換レンズ162の配置について説明する。切換レンズ162の焦点距離をf3、第1レンズ群134と切換レンズ162との間の距離をx、走査位置Psから平行光が第1レンズ群134に入射した場合の切換レンズ162の物体距離をS3、像距離をS3’とする。なお、図中の像位置P3’は、走査位置Psから平行光が第1レンズ群134に入射した場合の切換レンズ162による像位置であり、像位置P3’は被検眼12の瞳孔位置Ppと共役になっている。切換レンズ162についての結像式より、
【数1】
である。
S3=f1-x
より、
【数2】
が得られる。
【0063】
次に、第2レンズ群132についても同様に、走査位置Psから平行光が第1レンズ群134に入射した場合の第2レンズ群132の物体距離をS2、像距離をS2’とすると、第2レンズ群132についての結像式より、
【数3】
である。なお、S2’は、実質的には第2レンズ群132と被検眼12との距離、いわゆる作動距離WD(Working Distance(ワーキングディスタンス))である。また、
図5から理解されるように、
S2=S3’+d-x
であり、これより、
【数4】
が得られる。
【0064】
上記(1)式を(2)式に代入すると、
【数5】
が得られる。
上記(3)式をxについて整理すると以下の式を得る。
【数6】
【0065】
この(4)式により、切換レンズ162の焦点距離f3を決めるとその位置xの値が求められる。
【0066】
なお、2つの正の第1レンズ群134と第2レンズ群132との間の光を平行光とする場合には、f2=S2’となるため、上記(3)式より、
x=f1+f3・・・(5)
の簡潔な関係式(5)となる。
【0067】
近似的には、この関係式(5)で第1レンズ群134と第2レンズ群132との間に切換レンズ162を配置して構成することが可能である。この関係式(5)は、2つの正の第1レンズ群134と第2レンズ群132が完全なアフォーカル系であり、しかも両群間の光が完全な平行光の場合ではあるが、原理的な構成といえる。実用解としては、前眼部観察モード(第2モード)に好適な収差構造とするために適宜の収差計算により各レンズの形状、厚さや屈折率などを適宜に選択することはいうまでもない。
【0068】
第1実施形態では、
図5に示した通り、後眼部観察モード(第1モード)であっても、前眼部観察モード(第2モード)であっても、第2レンズ群132と被検眼12との間の距離(作動距離WD)は変わらない。よって、各観察モードの変更に応じて、被検眼12と撮影光学系116Aとのアラインメントを再調整する必要がないため、被検者に移動を強いる必要がない。前眼部撮影と後眼部撮影との切替えをスムーズかつ迅速に行うことが可能であるため、一連の撮影にかかる時間を短縮できる。加えて、切換レンズ162は小型であるため、切換レンズ162の挿脱機構は簡単かつ小型に実現できる。
【0069】
次に、第1実施形態に係る眼科装置110を用いて、被検眼12の断層画像を取得する方法を説明する。
図6には、断層画像生成処理のフローチャートが示されている。断層画像生成処理は、図示しない断層画像生成スタートボタンがオンされた場合にスタートする。断層画像生成処理は、CPU16Aが、ROM16Cに記憶された断層画像生成処理プログラムを実行することにより、実現される。なお、断層画像生成処理プログラムは、ROM16Cに代えて図示しない外部記憶装置に記憶するようにしてもよい。
【0070】
まず初めに、被検眼12の後眼部、例えば、眼底12Aの断層画像を取得しようとする場合、オペレータは、前眼部観察用の光学モジュール136を使用しない(
図3参照)。一方、被検眼12の前眼部、例えば、角膜の断層画像を生成しようとする場合、オペレータは、光学モジュール136を撮影光学系116Aの光路に挿入する(
図4参照)。
【0071】
ステップ202で、CPU16Aは、センサ130Sからの信号の入力状態に基づいて、光学モジュール136が撮影光学系116Aに挿入されているか否かを判断する。
【0072】
光学モジュール136が光路に挿入されていると判断された場合、断層画像生成処理は、ステップ204に進む。ステップ204では、観察モードは、前眼部観察モード(第2モード)に設定される。
【0073】
光学モジュール136が光路に挿入されていないと判断された場合、断層画像生成処理は、ステップ214に進む。ステップ214では、観察モードは、後眼部観察モード(第2モード)に設定される。
CPU16Aとステップ202の処理は、本開示の技術の「モード選択手段」の一例である。即ち、CPU16Aは、ステップ202の判断結果に応じて、後眼部観察モード(第1モード)または前眼部観察モード(第2モード)のいずれかに設定する。
【0074】
ステップ204では、光学モジュール136を用いて、被検眼12と撮影光学系116Aとのアライメントを行う。具体的には、CPU16Aは、固視灯164、照明装置168A、168Bおよびカメラ166A、166Bをオンする。
オペレータは患者に固視灯164を注視するように促す。患者が固視灯164を正面から注視したとき、被検眼12の視線は撮影光学系116Aの光軸に一致する。CPU16Aは、カメラ166A、166Bから出力された被検眼12の前眼部画像を入力/表示装置16Eのモニタに表示する。オペレータは、入力/表示装置16Eのモニタに表示された前眼部画像から、被検眼12の瞳孔が適切な位置にあるか否かを確認する。
【0075】
被検眼12と撮影光学系116Aとのアラインメントは、CPU16Aによって自動化してもよい。CPU16Aは、カメラ166A、166Bから出力される、被検眼12の前眼部の静止画像又は動画における、例えば、角膜反射光像に基づいて、角膜の頂点(中心位置)を検出する。CPU16Aは、検出された角膜の頂点と撮影光学系116A(眼科装置110)の光軸とのずれ(ずれ量及びずれの方向)を計算する。CPU16Aは、ずれ量及びずれの方向に基づいて、撮影光学系116Aの光軸が角膜の頂点の位置に一致するように、撮影光学系駆動部116Mを制御して、撮影光学系116Aを移動するようにしてもよい。なお、XY方向での微調整のために、切換レンズ駆動部162Mを制御して切換レンズ162を撮影光学系116Aの光軸に交差する面内で移動させてもよい。
【0076】
被検眼12と撮影光学系116Aとのアライメントが完了すると、断層画像生成処理は、ステップ206に進む。ステップ206では、CPU16Aは、被検眼12の前眼部の三次元画像データを取得するためにOCTスキャンを開始する。具体的には、CPU16Aは、OCTユニット20を稼働させると共に、水平走査部142及び垂直走査部148を制御し、被検眼12の前眼部の予め指定された領域において、測定光を2次元走査する。
【0077】
ところで、被検眼12の前眼部の指定された領域において測定光を2次元走査している間、患者が固視灯164を注視していても、意図せずに、固視微動等により被検眼12が動くことがある。意図しない被検眼の動きにより、OCT画像にモーションアーチファクトが発生する場合があるため、被検眼12の三次元画像データを取得する期間、測定光のスキャン位置の補正、即ち、アイ・トラッキングが実行される。アイ・トラッキングによって、測定光のスキャン位置は、被検眼12の動きにリアルタイムに追従する。そこで、CPU16Aは、ステップ208、210で、測定光の前眼部での照射位置を被検眼12の動きに追従させる処理を実行する。具体的には以下の通りである。
【0078】
ステップ208で、CPU16Aは、光学モジュール136のカメラ166A、166Bを制御して、所定時間毎に、被検眼12の前眼部、例えば、角膜を逐次撮影する。CPU16Aは、カメラ166A、166Bから出力される逐次画像の各々から角膜の中心位置を抽出し、1つ前の画像(n―1番目の画像)における角膜中心位置と、現在の画像(n番目の画像)における角膜中心位置とのずれ情報(ずれ量、ずれの方向、ずれのベクトルなど)を、被検眼12の動きとして計算する。なお、nは、2以上の自然数であり、所定時間毎に角膜を撮影した回数を示す。
ずれ情報(ずれ量、ずれの方向、ずれのベクトルなど)は、本開示の技術の「動き情報」の一例である。
【0079】
ステップ210で、CPU16Aは、前眼部観察モード(第2モード)におけるアイ・トラッキング制御(第2アイ・トラッキング制御)を実行する。このアイ・トラッキング制御では、切換えレンズ162および切換レンズ駆動部162Mが使用される。切換レンズ駆動部162Mは、上述の通り、切換えレンズ162を対物レンズ130の光軸と交差する面内で移動する。切換えレンズ162を微小に移動させることによって、測定光の前眼部における照射位置を変更することができる。具体的には、CPU16Aは、所定時間毎に計算された角膜の中心位置のずれ情報に基づいて、切換レンズ駆動部162Mをフィードバック制御して切換レンズ162を移動させる。その結果、測定光の前眼部における照射位置を、被検眼12の動きに追従させることができる。
【0080】
ステップ212で、CPU16Aは、オペレータにより指定された観察領域についてOCTスキャンが完了したか否かを判断する。OCTスキャンが完了したと判断されなかった場合、断層画像生成処理はステップ208に戻り、OCTスキャンが完了したと判断された場合、断層画像生成処理は終了する。このように、前眼部観察モードにおけるアイ・トラッキング制御(ステップ208、210)は、OCTスキャンが完了するまで、即ち、測定光が被検眼に照射されている期間、実行される。
【0081】
なお、断層画像生成処理が完了する場合、CPU16Aは、光学モジュール136の固視灯164、カメラ166A、166B、及び照明装置168A、168B、ならびに、OCTユニット20等をオフし、前眼部の三次元画像データの取得を終了する。
【0082】
ステップ202で光学モジュール136が対物レンズ130の光路に挿入されていると判断されなかった場合(
図3参照)、ステップ214で、後眼部観察用の光学モジュール138を用いて、被検眼12と撮影光学系116Aとのアライメントが行われる。ステップ214の処理は、後眼部用の光学モジュール138の素子(172~176B)を用いる点で、ステップ204でのアラインメント処理は、ステップ204でのアラインメント処理と同様であるため、その説明を省略する。異なる点は、前眼部観察用の光学モジュール136を使用するか、後眼部観察用の光学モジュール138を使用するか、である。
【0083】
ステップ214で被検眼12と撮影光学系116Aとのアライメントが完了すると、断層画像生成処理は、ステップ216に進む。ステップ216で、CPU16Aは、後眼部の三次元画像データを取得するためにOCTスキャンを開始する。前眼部の三次元画像データの取得(ステップ206)と同様に、被検眼12の後眼部でOCTスキャンが行われている間、被検眼12が固視微動等により動くことがあるので、CPU16Aは、ステップ218、220のアイ・トラッキング処理により、測定光の眼底での照射位置を被検眼12の動きに追従させている。具体的には以下の通りである。
【0084】
ステップ218で、CPU16Aは、SLOユニット18を稼働させて、眼底の三次元データを取得する期間中、眼底二次元画像を連続的に取得する。好適には、CPU16Aは、SLOユニット18からIR光を出射させてIR-SLO画像を取得する。SLO光学系とOCT光学系とは対物レンズ130および水平走査部142を共用するため、SLOユニット18で取得される眼底二次元画像は、オペレータに指定された三次元画像データの取得領域を含む。CPU16Aは、SLOユニット18が逐次取得した眼底二次元画像の各々から少なくとも1つの特徴点を抽出する。特徴点として、例えば、血管のパターン、血管の分岐点、視神経乳頭や黄斑の位置などが挙げられる。CPU16Aは、SLOユニット18から眼底二次元画像を取得する毎に、現在の画像(n番目の画像)から抽出された特徴点と、前回取得した画像(n-1番目の画像)から抽出された特徴点とを比較して、特徴点のずれ情報(ずれ量、ずれの方向、ずれのベクトルなど)を、被検眼12の動きとして計算する。
【0085】
ステップ220で、CPU16Aは、ステップ218で算出されたずれ情報に基づいて、眼底観察モード(第1モード)における第1アイ・トラッキング制御を実行する。具体的には、CPU16Aは、SLO画像を取得する毎に計算された特徴点のずれ情報から、測定光の眼底12Aにおける照射位置が被検眼12の動きに追従するように、水平走査部142、垂直走査部148をフィードバック制御する。
【0086】
ステップ222で、CPU16Aは、オペレータが指定した領域について三次元画像データの取得が完了したか否かを判断する。三次元画像データの取得が完了したと判断されなかった場合、断層画像生成処理はステップ218に戻り、三次元画像データの取得が完了したと判断された場合、断層画像生成処理は終了する。このように、第2アイ・トラッキング制御は、OCTスキャンが終了するまで、即ち、測定光が被検眼に照射されている期間、実行される。
【0087】
なお、断層画像生成処理を完了する場合、CPU16Aは、後眼部観察用の光学モジュール138の固視灯172、カメラ174A、174B、及び照明装置176A、176B、OCTユニット20、SLOユニット18をオフし、後眼部の三次元画像データの取得を終了する。
【0088】
以上説明した第1実施形態にかかる眼科装置110は、前眼部観察用の光学モジュール136を使用して、1つの眼科装置で、被検眼12の後眼部および前眼部の両方の三次元画像データを取得する装置を提供することができる。
【0089】
また、第1実施形態にかかる眼科装置110は、前眼部観察用の光学モジュール136を、対物レンズ130を構成する第1レンズ群134と第2レンズ群132との間の光路に挿脱することによって、後眼部観察光学系と前眼部観察光学系とを切換え可能にするので、対物レンズ130(特に第2レンズ群132)と被検眼12との間の作動距離WDは、それぞれの光学系(300、400)で変わらない。これにより、上記したステップ204(前眼部観察モード)およびステップ214(後眼部観察モード)では、被検眼12と撮影光学系116Aとのアライメントをやり直す必要が無いため、後眼部観察モードと、前眼部観察モードとの切換えがスムーズに行われる。
【0090】
また、第1実施形態にかかる眼科装置110では、前眼部観察用の光学モジュール136の光学素子は、対物レンズ130(第1レンズ群134及び第2レンズ群132)の有効径よりも小さな有効径の小型レンズでよいため、光学モジュール136を小型化することできる。よって、後眼部観察用光学系と前眼部観察光学系との切り換えが簡単である。
【0091】
また、第1実施形態にかかる眼科装置110は、被検眼12の後眼部の三次元画像データを取得する後眼部観察モード(第1モード)と、被検眼12の前眼部の三次元画像データを取得する前眼部観察モード(第2モード)との各々に応じて、アイ・トラッキング制御を切り換えるようにしたので、各モードに最適なアイ・トラッキング制御を実行することができる。また、各モードに応じて光学モジュール136、138を使い分けるため、固視灯の焦点調整など、面倒な調節は不要となる。
【0092】
以上より、第1実施形態では、眼科装置110の利便性を向上させることができる。
【0093】
以上説明した第1実施形態では、オペレータは、マニュアルで、前眼部用の光学モジュール136を、撮影光学系116Aの光路から離脱させたり光路に挿入したりしているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、前眼部用の光学モジュール136を自動的に、光路から離脱させたり光路に挿入したりする機構を備える。そして、図示しない後眼部断層画像生成ボタンがオンされた場合、又は、前眼部断層画像生成ボタンがオンされた場合、CPU16Aは、当該機構を制御して、前眼部観察用の光学モジュール136を自動的に、光路から離脱させ、又は、光路に挿入させる、ようにしてもよい。当該機構は、本開示の技術の「光学モジュール駆動手段」の一例である。
【0094】
第1実施形態では、切換レンズ162は対物レンズ130の光軸に垂直な平面内で移動可能に配置されているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、対物レンズ130の光軸上のある一点を回転中心として、切換レンズ162を回動可能に配置してもよい。この場合、ステップ204、210、214で、対物レンズ130の光軸上のある一点を回転中心として切換レンズ162を曲面内で回動させる。
【0095】
第1実施形態では、被検眼12から順に、対物レンズ130、水平走査部142およびリレーレンズ装置140を、SLO用光学系およびOCT用光学系で共用される共通光学系としているが、本開示の技術はこれに限定されない。SLO用光学系およびOCT用光学系とで水平走査部142を共用する構成に替えて、それぞれの光学系に、水平走査部および垂直走査部を設けても良い。
【0096】
[第2実施形態]
【0097】
次に、第2実施形態を説明する。第2実施形態の構成は、第1実施形態と略同様であるので、同一部分には同一の符号を付してその説明を省略し、主として異なる部分を説明する。
【0098】
図7には、第2実施形態の撮影光学系116Bの概略構成が示されている。
第1実施形態の撮影光学系116Aでは、前眼部観察用の光学モジュール136は、第1レンズ群134と第2レンズ群132との間に挿脱可能に配置されている。
これに対し、第2実施形態の撮影光学系116Bでは、前眼部観察用の光学モジュール136Bは、第2レンズ群132と被検眼12との間に挿脱可能に配置されている。光学モジュール136Bが撮影光学系116Bに挿入されているか否かは、第1実施例と同様に、センサ130Sから出力される信号に基づいて、CPU16Aが判定する。
【0099】
第2実施形態の光学モジュール136Bは、第1実施形態の光学モジュール136の構成と同様に、切換レンズ162B、切換レンズ駆動部162MB、ビームスプリッタ170、固視灯164、カメラ166A、166B、及び照明装置168A、168Bを備えている。各部材の機能等は、第1実施形態の光学モジュール136を構成する各部材と同様なので、切換レンズ162B、切換レンズ駆動部162MBを除いて、図示および説明を省略する。また、第2実施形態の後眼部観察用の光学モジュール138は、第1実施例の後眼部観察用光学モジュールと同じなので、説明を省略する。
【0100】
光学モジュール136Bが撮影光学系116Bに挿入されると、切換レンズ162Bは、対物レンズ130の第2レンズ群132と、被検眼12との間の光路に位置する。第2実施形態の切換レンズ162Bは、正レンズである。第1実施形態と同様に、CPU16Aは、ステップ208および210で説明したように、検出された被検眼12の動きに応じて切換レンズ駆動部162MBを駆動させて、切換レンズ162Bを対物レンズ130の光軸と交差する面内で移動させる。それにより、OCTユニット20から出射された測定光の、被検眼12の前眼部での照射位置を変更し、前眼部の三次元画像データの取得期間、アイ・トラッキング制御が行われる。
【0101】
なお、第2実施形態では、光学モジュール136Bが、第2レンズ群132と被検眼12との間に挿脱されため、眼底観察光学系と、前眼部観察光学系とでは、被検眼12と撮影光学系116Bとの作動距離WDが変ってしまう。そこで、上記したステップ204(前眼部観察モード)およびステップ214(後眼部観察モード)では、被検眼12と撮影光学系116BとのZ軸方向のアライメントが各ステップで実行される。
【0102】
なお、第2実施形態では、第2レンズ群132と被検眼12との間に挿脱される光学素子としての切換レンズ162Bは、正レンズであるが、この限りでない。光学素子が撮影光学系116Bの光路に挿入されたとき、OCTユニット20から出射される測定光が被検眼12の前眼部に集光されればよく、光学素子は、例えば、負のパワーを有するレンズ(負レンズ)としてもよい。
【0103】
[第3実施形態]
【0104】
次に、第3実施形態を説明する。第3実施形態の構成は、第1実施形態と略同様であるので、同一部分には同一の符号を付してその説明を省略し、主として異なる部分を説明する。
【0105】
図8には、前眼部観察用の光学モジュール136Cが挿脱可能に構成された撮影光学系116Cの例が示されている。
【0106】
光学モジュール136Cは、対物レンズ130を構成する第1レンズ群134と水平走査部142との間に挿脱可能に配置されている。撮影光学系116Cから抜去された状態(後眼部観察光学系)の光学モジュール136Cを実線で、また、撮影光学系116Cに挿入された状態(前眼部観察モード)の光学モジュール136Cを破線で示している。光学モジュール136Cが撮影光学系116Cに挿入されているか否かは、第1および第2実施例と同様に、センサ140Dから出力される信号に基づいて、CPU16Aが判定する。
【0107】
第3実施形態にかかる前眼部観察用の光学モジュール136Cは、切換レンズ162Cと、切換レンズ駆動部162MCとを備える。また、第3実施形態にかかる後眼部観察用の光学モジュール138は、図示されるように、第1実施例の後眼部観察用の光学モジュールと同じ構成なので、その説明を省略する。
【0108】
光学モジュール136Cは、第1および第2実施形態の光学モジュール136、136Bと異なり、ビームスプリッタ170、固視灯164、カメラ166A、166B、及び照明装置168A、168Bを備えていない。前眼部観察モードのステップ204において、被検眼12と撮影光学系116Cとの位置合わせは、後眼部観察用の光学モジュール138を用いて行われる。具体的には、ステップ204では、CPU16Aは、後眼部観察用の光学モジュール138の固視灯172、照明装置176A、176Bおよびカメラ174A、174Bをオンする。オペレータは患者に固視灯172を注視するように促す。患者が固視灯を正面から注視したとき、被検眼12の視線は撮影光学系116Cの光軸に一致する。CPU16Aは、カメラ174A、174Bから出力された被検眼12の前眼部画像を入力/表示装置16Eのモニタに表示する。オペレータは、入力/表示装置16Eのモニタに表示された前眼部画像から、被検眼12の瞳孔が適切な位置にあるか否かを確認する。
【0109】
光学モジュール136Cが撮影光学系116Cに挿入されると、切換レンズ162Cは、対物レンズ130の第1レンズ群134と、水平走査部142との間の光路に位置する。第3実施形態の切換レンズ162Cは、負レンズである。第1および第2実施形態と同様に、CPU16Aは、ステップ208および210で説明したように、検出された被検眼12の動きに応じて切換レンズ駆動部162MCを駆動させて、切換レンズ162Cを対物レンズ130の光軸と交差する面内で移動させる。それにより、OCTユニット20から出射された測定光の、被検眼12の前眼部での照射位置を変更し、前眼部の三次元画像データの取得期間、アイ・トラッキング制御が行われる。
【0110】
なお、第3実施形態では、第1レンズ群134と水平走査部142との間に挿脱される光学素子としての切換レンズ162Cは、負レンズであるが、この限りでない。光学素子が撮影光学系116Cの光路に挿入されたとき、OCTユニット20から出射される測定光が被検眼12の前眼部に集光されればよく、光学素子は、例えば、正のパワーを有するレンズ(正レンズ)としてもよい。
【0111】
[更なる変形例]
【0112】
以上説明した各例では、対物レンズ130は正の第1レンズ群134(G1)を備えているが、本開示の技術はこれらに限定されず、第1レンズ群134は、負のパワーを有するレンズ(負レンズ)群としてもよい。
【0113】
前述した各例では更に、フォーカス調整を行うようにしてもよい。ファーカス調整は、オートフォーカス装置のみで行うことに限定されず、オートフォーカス装置を含め、対物レンズの第2レンズ群132から光源側の光学系、例えば、対物レンズの第2レンズ群132、第1レンズ群134、切換レンズ162、レンズ144、146の少なくとも1つを移動させるようにしてもよい。
【0114】
以上説明した各例では更に、パワーが異なる複数の切換レンズ等の光学素子を用意しておき、予め取得した前眼部(例えば、角膜)の形状に応じて、複数の光学素子の中から、角膜の形状等に応じて、角膜位置により集光できる光学素子に切り換えるようにしてもよい。
【0115】
以上説明した各例では更に、前眼部(例えば、角膜)の形状に応じて、第1レンズ群134と第2レンズ群132との間か、水平走査部142と第1レンズ群134との間かの、切換レンズ等の光学素子を挿入する位置を切り替えると共に、パワーが異なる複数の切換レンズ等の光学素子の中から、角膜位置により集光できる光学素子を選択し、切り替えた位置に挿入する。
【0116】
以上説明した各例では更に、後眼部観察モード(第1モード)でも前眼部観察モード(第2モード)でも1つの検出器で干渉光を検出しているが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、検出能力の異なる2つの検出器を備え、後眼部観察モード(第1モード)では、2つの検出器の一方の検出器により、前眼部観察モード(第2モード)では、2つの検出器の他方の検出器により、干渉光を検出するようにしてもよい。
【0117】
以上説明した各例の断層画像生成処理はあくまでも一例である。従って、主旨を逸脱しない範囲内において不要なステップを削除したり、新たなステップを追加したり、処理順序を入れ替えたりしてもよいことは言うまでもない。
【0118】
以上説明した各例では、コンピュータを利用したソフトウェア構成により断層画像生成処理が実現される場合を例示したが、本開示の技術はこれに限定されるものではない。例えば、コンピュータを利用したソフトウェア構成に代えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のハードウェア構成のみによって、断層画像生成処理が実行されるようにしてもよい。断層画像生成処理のうちの一部の処理がソフトウェア構成により実行され、残りの処理がハードウェア構成によって実行されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0119】
110 眼科装置
16A CPU
17 画像処理装置
20B センサ
20C 第1の光カプラ
130S センサ
136 光学モジュール
142 水平走査部
148 垂直走査部
166A、166B カメラ
168A、168B 照明装置