(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】酸性ガス吸着材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 20/30 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
B01J20/30
(21)【出願番号】P 2022183490
(22)【出願日】2022-11-16
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 浩一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 一郎
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1919447(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108212169(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第115041129(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102688742(CN,A)
【文献】特開2002-253960(JP,A)
【文献】特開2002-191966(JP,A)
【文献】特開2011-088126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28,20/30-20/34
B01D 53/02-53/12
B01D 53/34-53/73,53/74-53/85,53/92,53/96
C01F 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸型Mg-Al系層状複水酸化物に、
メタケイ酸ナトリウムと、発泡剤と、水を加えて粒径1~10mmのペレット状もしくは球状の粒状物を造粒する造粒工程と、前記粒状物を熱処理して硬化させる熱処理工程を含む、酸性ガス吸着材の製造方法。
【請求項2】
前記発泡剤が真珠岩または黒曜石である、請求項
1に記載の酸性ガス吸着材の製造方法。
【請求項3】
前記熱処理工程における熱処理温度が150~600℃である、請求項1に記載の酸性ガス吸着材の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の製造方法で製造した酸性ガス吸着材の再生方法であって、
前記炭酸型Mg-Al系層状複水酸化物を使用する酸性排ガス処理で、前記炭酸型Mg-Al系層状複水酸化物から変化したアニオン型Mg-A系層状複水酸化物に、前記酸性排ガス処理後のガスを含む水を接触させて、前記アニオン型Mg-A系層状複水酸化物を前記炭酸型Mg-Al系層状複水酸化物に再生する、再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性ガス吸着材の製造方法に関する。特に、火力発電所や廃棄物焼却施設等から発生する酸性排ガスを効率よく除去する酸性ガス吸着材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電や廃棄物焼却等において発生する燃焼排ガス中には、塩化水素や硫黄酸化物、窒素酸化物等の有害な酸性物質が含まれている。このため、前記酸性物質を含む酸性排ガスについて、該酸性物質を除去するための種々の方法による処理が行われている。
【0003】
このような酸性物質の除去方法において、本出願人は、複数種の酸性物質を同時に処理し、除去することができる効率的な処理技術に関し、酸性ガス吸着材として炭酸型Mg-Al系層状複水酸化物(以下、層状複水酸化物を、LDH(Layered Double Hydroxide)とも言う。)を利用した酸性排ガスの処理方法及び処理剤等を提案している(特許文献1)。
【0004】
炭酸型Mg-Al系LDHは、再生して繰り返し使用することが可能な酸性ガス吸着材であり、特許文献1は、炭酸型Mg-Al系LDHの再生方法に関し、酸性排ガス処理に使用されてアニオン型Mg-A系LDHに変換されたものを炭酸水溶液と混合して、炭酸型Mg-Al系LDHとする技術を開示している。
【0005】
本出願人は、他の再生技術として、酸性排ガスの処理を経て二酸化炭素以外の酸性ガスが除去された処理後ガスを利用して、アニオン型Mg-A系LDHを炭酸型Mg-Al系LDHに再生する技術を開示している(特許文献2)。
【0006】
特許文献2は、酸性ガス吸着材による酸性排ガスの除去と、酸性ガス吸着材の再生処理を、同一の反応塔内で効率的に行う技術、具体的には、炭酸型Mg-Al系LDHを反応塔に充填して、酸性排ガスを通気して酸性ガスの吸着除去を行い、炭酸型Mg-Al系LDHがアニオン型Mg-A系LDHに変化し、酸性排ガス処理能力が低下した場合、切換弁を操作して酸性排ガスの通気先を他の反応塔に切り替えるとともに、アニオン型Mg-A系LDHが充填されている反応塔に前記処理後ガスを導入して再生処理を行う技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6954569号公報
【文献】特許第6898627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の再生処理方法のように、反応塔に充填して使用され、当該反応塔内で、所定のガスを含む水との接触により再生処理が行われる酸性ガス吸着材は、下記の各要件を満足する必要があるが、下記の各要件を満足する酸性ガス吸着材の製造方法は、実用化されていない。
(要件1)反応塔に酸性排ガスや再生ガスを通気するときの通気差圧が実用レベルとなる形状を有する。
(要件2)反応塔に充填し、圧密された状態でも崩壊しない圧壊強度を有する。
(要件3)再生処理時に水と接触しても崩壊しない耐水性を有する。
(要件4)酸性排ガスを連続通気する際に必要な動的吸着量を実現できる開気孔率を有する。
【0009】
例えば、(要件4)の開気孔率と、(要件2)の圧壊強度や(要件3)の耐水性は、トレードオフの関係にあり、従来、上記の各要件を満足する酸性ガス吸着材の実現は難しいと考えられてきた。
【0010】
本発明は、上記の各要件を満足する酸性ガス吸着材の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は鋭意検討の結果、特定の形状に造粒した後に、熱処置を行って硬化させることにより上記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、当該知見に基づくものである。
【0012】
本発明は、以下の〔1〕~〔5〕を提供する。
〔1〕 層状複水酸化物にケイ酸バインダーと水を加えて粒径1~10mmのペレット状もしくは球状の粒状物を造粒する造粒工程と、前記粒状物を熱処理して硬化させる熱処理工程を含む、酸性ガス吸着材の製造方法。
〔2〕 前記造粒工程において、さらに発泡剤を加えて前記粒状物を造粒する、〔1〕に記載の酸性ガス吸着材の製造方法。
〔3〕 前記発泡剤が真珠岩または黒曜石である、〔1〕又は〔2〕に記載の酸性ガス吸着材の製造方法。
〔4〕 前記ケイ酸バインダーがメタケイ酸ナトリウムである、〔1〕~〔3〕の何れかに記載の酸性ガス吸着材の製造方法。
〔5〕 前記熱処理工程における熱処理温度が150~600℃である、〔1〕~〔4〕の何れかに記載の酸性ガス吸着材の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、反応塔に酸性排ガスや再生ガスを通気するときの通気差圧が実用レベルとなる形状を有し、かつ、反応塔に充填して圧密された状態でも崩壊しない圧壊強度を有し、かつ、再生処理時に水と接触しても崩壊しない耐水性を有し、かつ、酸性排ガスを連続通気する際に必要な動的吸着量を実現できる開気孔率を有する、酸性ガス吸着材の製造方法を提供することができる。
【0014】
請求項2に係る発明によれば、LDHにケイ酸塩バインダー、発泡剤、水を添加して混合した後に造粒して得た粒径1~10mmのペレット状もしくは球状の粒状物を熱処理することで、ケイ酸塩バインダーが硬化して耐水性が向上するとともに、発泡剤が発泡して開気孔率が向上し、酸性ガスの粒内拡散が促進されて酸性ガスの動的吸着量が向上する。請求項2の方法で得られた造粒LDHからなる酸性ガス吸着材では、開気孔率が向上したにも関わらず、圧壊強度4N以上が維持される。本明細書において、造粒LDHとは、造粒工程で得た粒状物を熱処理して硬化させたものを意味し、酸性ガス吸着材と同義である。
実機反応塔の充填高さを仮に3mとし、造粒LDHの粒径を5mmとすると、充填層下部の造粒LDHにかかる荷重は0.34Nとなる。安全率を10とすると、造粒LDHの圧壊強度が4N以上であれば実用上十分な圧壊強度と言える。
本明細書において、開気孔率とは、造粒LDH内部における微小な空洞(気孔)のうち、外気と接続している空洞体積の、造粒LDH質量に対する体積/質量%を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施例1、実施例2及び比較例1の耐水性評価結果を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
以下の説明において、数値範囲を示す「A~B」の記載は、端点を含む「A以上B以下」を意味する。
【0017】
本発明は、層状複水酸化物(LDH)にケイ酸バインダーと水を加えて粒径1~10mmのペレット状もしくは球状の粒状物を造粒する造粒工程と、前記粒状物を熱処理して硬化させる熱処理工程を含む。
【0018】
<造粒工程>
〔LDH〕
LDHは、粉末状の炭酸型Mg-Al系層状複水酸化物が好適である。
粉末状の炭酸型Mg-Al系層状複水酸化物の粒径は0.004~0.1mmの範囲が好適である。粒径がこの範囲であると、後述する発泡剤と均一に混合することができる。
【0019】
〔ケイ酸バインダー〕
前記ケイ酸バインダーは、メタケイ酸ナトリウムであることが好ましい。
モノケイ酸はMgやAlと強い相互作用があることが知られている。メタケイ酸ナトリウムは水に容易に溶解し、反応性の高いモノケイ酸となる。メタケイ酸ナトリウムと水を添加することで、Mg-Al系層状複水酸化物とモノケイ酸が反応し、さらにモノケイ酸が重合してポリケイ酸となり、重合が進んでいくことで、圧壊強度と耐水性を付与することができ、反応塔に充填して圧密されても崩壊せず、かつ水に浸漬しても割れや崩壊のない造粒LDHとなる。
メタケイ酸ナトリウムと水は別々に添加してもよいが、均一に混合・分散する観点から、メタケイ酸ナトリウムは水に溶解させた水溶液として添加することが好ましい。
メタケイ酸ナトリウム水溶液の濃度は特に限定しないが1~12質量%が好適である。
【0020】
〔発泡剤〕
造粒工程において、さらに発泡剤を加えて前記粒状物を造粒することが好ましい。
発泡剤は、真珠岩または黒曜石であることが好ましい。
真珠岩または黒曜石はパーライトの原料となる鉱物で、高温で加熱すると発泡する性質がある。
LDHに真珠岩または黒曜石を混合して造粒した粒状物を加熱することで、真珠岩または黒曜石の発泡作用により、造粒LDHの開気孔率が大きくなる。
酸性排ガスを造粒LDHに連続通気したときの動的吸着量は、造粒LDHの粒内開気孔率に依存する。造粒LDHの開気孔率が大きくなることにより、酸性ガスの造粒LDH内部における拡散性が高くなり、酸性ガスを効果的に吸着することができる。
【0021】
〔造粒方法〕
前記ペレット状もしくは球状の粒状物を造粒する方法は特に限定されないが、ドラム型造粒機、皿型造粒機等を使用した転動造粒法;フレキソミックス、バーティカルグラニュレーター等を使用した混合撹拌造粒法;スクリュー型押出造粒機、ロール型押出造粒機、ブレード型押出造粒機、自己成形型押出造粒機等を使用した押出造粒法;打錠形造粒機、ブリケット形造粒機等を使用した圧縮造粒法;吹き上げる流体(主として空気)中にチタン酸塩粉末とバインダーを浮遊懸濁させた状態に保ちながら水やアルコール等のバインダーを噴霧して造粒する流動層造粒法等が挙げられる。このうち、ペレット状に成形する場合は押出造粒法、球状に成形する場合は転動造粒法又は混合撹拌造粒法が好ましい。
【0022】
〔粒径〕
造粒工程で造粒される粒状物の大きさは、粒径1~10mmである。
粒径1mm以上とすることで、反応塔に酸性排ガスや再生ガスを通気するときの通気差圧を実用レベルとすることができる。具体的には、反応塔に通気したときの圧力損失が過度に大きくなることを回避し、ブロアの消費電力を抑制することができる。
粒径10mm以下とすることで、表面積が小さくなることに起因する吸着能の低下を回避し、酸性ガスの吸着能を良好なレベルに維持することができる。
ここで、粒状物の粒径とは、粒状物が球状であればその直径に該当し、ペレット状の場合、当該粒状物を2枚の平行な板で挟んだとき、その板の間隔が最も大きくなる部位の長さ(2枚の板の間隔)を意味する。粒径1~10mmの粒状物とは、篩分けにより目開きが1mmの篩を通過せず、10mmの篩を通過する粒状物である。
【0023】
<熱処理工程>
LDHにケイ酸塩バインダーと水を添加して混合した後に造粒し、その後熱処理することで、バインダーが硬化して、再生時に水と接触しても崩壊せず、反応塔に充填したときに荷重がかかっても崩壊しない圧壊強度の造粒LDHとなる。
また、LDHにケイ酸塩バインダーと発泡剤と水を添加して混合した後に造粒し、その後熱処理することで、発泡剤が発泡して造粒LDHの開気孔率が上がり、酸性ガスの動的吸着量が大きくなる。
【0024】
熱処理工程における熱処理温度は150~600℃であることが好ましい。
熱処理の雰囲気条件は、空気雰囲気又は窒素雰囲気の何れでもよい。
真珠岩または黒曜石の発泡は真珠岩または黒曜石に含まれる水の揮発によるものである。熱処理温度を150℃以上とすることで、発泡の促進のために十分な水の揮発が生じる。熱処理温度を600℃以下とすることで、LDHの結晶が層状構造からスピネル構造へと変化する現象を抑制し、前記結晶構造の変化に起因するイオン交換能の失活を回避し、酸性ガスを吸着する機能を良好に維持することができる。
【実施例】
【0025】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0026】
<実施例1:LDH+メタケイ酸ナトリウム+真珠岩>
粉末状の炭酸型LDH(協和化学工業製キョーワード1000)200gと真珠岩(兵庫県美方産)30gを混合撹拌造粒機(商品名「VG-01」パウレック製)により、回転数400rpmで撹拌しながら12質量%のメタケイ酸ナトリウム水溶液220gをゆっくりと加え、転動造粒により雪だるま式に粒子を成長させた。得られた粗造粒体をさらに湿式押出造粒機(商品名「マルチグランMG-55」ダルトン製)に2.5mm径のダイスを装着して造粒ペレットを作製した。得られた造粒ペレットを球形整粒機(商品名「マルメライザーQJ-230T」ダルトン製)により球形化した後、整粒後の球状成形体を200℃で4時間乾燥させて、粒径2.0~3.0mmの造粒LDH1を得た。
【0027】
<実施例2:LDH+メタケイ酸ナトリウム>
粉末状の炭酸型LDH(協和化学工業製キョーワード1000)200gを混合撹拌造粒機(商品名「VG-01」パウレック製)に投入し、回転数400 rpmで撹拌しながら12質量%のメタケイ酸ナトリウム水溶液200gをゆっくりと加えた後、純水20gを加えて転動造粒により雪だるま式に粒子を成長させた。得られた粗造粒体をさらに湿式押出造粒機(商品名「マルチグランMG-55」,ダルトン製)に2.5mm径のダイスを装着して造粒ペレットを作製した。得られた造粒ペレットを球形整粒機(商品名「マルメライザーQJ-230T」ダルトン製)により球形化した後、整粒後の球状成形体を200℃で4時間乾燥させて、粒径2.0~3.0mmの造粒LDH2を得た。
【0028】
<比較例1:LDH>
粉末状の炭酸型LDH(協和化学工業製キョーワード1000)200gを混合撹拌造粒機(商品名「VG-01」パウレック製)に投入し、回転数400rpmで撹拌しながら純水175gを加えて転動造粒により雪だるま式に粒子を成長させた。得られた粗造粒体をさらに湿式押出造粒機(商品名「マルチグランMG-55」ダルトン製)により2.5mmダイスを用いて造粒ペレットを作製した。次に造粒ペレットを球形整粒機(商品名「マルメライザーQJ-230T」ダルトン製)により球形化した後、整粒後の球状成形体を200℃で4時間乾燥させて、粒径2.0~3.0mmの造粒LDH3を得た。
【0029】
<評価1_耐水性>
造粒LDH1~3をそれぞれ純水に浸漬させて崩壊の有無を目視確認した。メタケイ酸ナトリウムと真珠岩を配合した造粒LDH1(実施例1)およびメタケイ酸ナトリウムのみを配合した造粒LDH2(実施例2)は、純水に浸漬させてから9日間経過しても崩壊は認められなかった。一方、メタケイ酸ナトリウムと真珠岩の何れも配合しない造粒LDH3(比較例1)は水に浸漬すると直ぐに音を発して崩壊した(
図1参照)。
上記の評価結果から、メタケイ酸ナトリウムの添加による耐水性の向上が確認できる。
【0030】
<評価2_開気孔率>
開気孔率の測定は「JIS R 1634:1998 ファインセラミックスの 焼結体密度・開気孔率の測定方法」を参考に以下の手順にて測定を行った。3回測定してその平均で比較した。
手順1. 空ピクノメーターを秤量する(A)。
手順2. 空ピクノメーターに110℃で乾燥した試料を入れて秤量する(B)。
手順3. 110℃乾燥試料が入ったピクノメーターに純水を満たして秤量する(C)。
手順4. 試料をビーカーに移し、3時間以上煮沸した後に放冷する。
手順5. 煮沸後試料をピクノメーターに入れ、純水を満たして秤量する(D)。
手順6. 以下の式で開気効率を算出する。
開気孔率(%)=(D-C)/(B-A)×100
【0031】
造粒LDH1(実施例1)及び造粒LDH2(実施例2)の開気孔率を測定した結果を表1に示す。なお、造粒LDH3(比較例1)は<耐水性>の項で示した通り、純水に浸漬すると崩壊して煮沸ができないため測定できなかった。
【0032】
【0033】
上記の評価結果から、ケイ酸バインダーと発泡剤(真珠岩)の併用(実施例1)によって、造粒LDHの開気孔率が大きくなることが確認できる。
【0034】
<評価3_圧壊強度>
木屋式硬度計にて造粒LDH1(実施例1)、造粒LDH2(実施例2)、造粒LDH3(比較例1)の圧壊強度を測定した。
10粒の圧壊強度を測定しその平均を算出した結果を表2に示す。
【0035】
【0036】
造粒LDH1(実施例1)、造粒LDH2(実施例2)、造粒LDH3(比較例1)の何れの測定結果も、圧壊強度4N以上となった。
前記の評価2で確認したように、造粒LDH1(実施例1)は高い開気孔率を有するにも関わらず、圧壊強度の低下が生じないことが確認できる。高い開気孔率と圧壊強度4N以上の両立は、メタケイ酸ナトリウムの効果と考えられる。
【0037】
<評価4_動的吸着量>
造粒LDH1(実施例1)及び造粒LDH3(比較例1)を、内径57mm、長さ250mmのカラムに、それぞれ60g充填し、塩化水素濃度400ppm、温度150℃の模擬酸性ガスを空塔速度0.4m/secで通気した。50%破過の到達時間から、下記式(1)より動的吸着量を算出した結果を表3に示す。
【0038】
qe=3600VTC1×10-6×273/(273+t)×Mi/22.4/Ziρ・・・(1)
上記式(1)において、qe:動的吸着量[g-ガス/g-造粒LDH]、V:空塔速度[m/s]、T:50%破過到達時間[h]、Ci:酸性ガス濃度[ppm]、t:ガス温度[℃]、Mi:ガス成分の分子量、Zi:充填層高さ[m]、ρ:造粒LDH充填密度[kg/m3]である。
【0039】
【0040】
造粒LDH1(実施例1)の動的吸着量は、造粒LDH3(比較例1)の動的吸着量より大きくなった。
造粒LDH1(実施例1)ではメタケイ酸ナトリウムと真珠岩の配合分だけ、LDH含有量は低くなっているが、評価2で確認したように、開気孔率が大きく、造粒LDHの内部まで利用できることによるものと考えられる。