(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】二次電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 10/659 20140101AFI20240730BHJP
H01M 10/651 20140101ALI20240730BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240730BHJP
H01M 50/233 20210101ALI20240730BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20240730BHJP
H01G 11/18 20130101ALI20240730BHJP
H01G 2/08 20060101ALI20240730BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240730BHJP
【FI】
H01M10/659
H01M10/651
H01M10/625
H01M50/233
H01G11/12
H01G11/18
H01G2/08 A
H01M10/613
(21)【出願番号】P 2023563850
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2022034507
(87)【国際公開番号】W WO2023149009
(87)【国際公開日】2023-08-10
【審査請求日】2023-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2022016441
(32)【優先日】2022-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】藤崎 健一
(72)【発明者】
【氏名】豊村 恭一
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-119841(JP,A)
【文献】特開2021-028361(JP,A)
【文献】特表2020-532078(JP,A)
【文献】特開2018-206605(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/659
H01M 10/651
H01M 10/625
H01M 50/233
H01G 11/12
H01G 11/18
H01G 2/08
H01M 10/613
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂及び前記樹脂中に分散された吸熱剤を含有し、
前記樹脂が、アクリル系エマルジョン樹脂、ウレタン系エマルジョン樹脂、エチレン-酢酸ビニル系エマルジョン樹脂、塩化ビニル系エマルジョン樹脂及びエポキシ系エマルジョン樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、前記樹脂が空隙部を有する吸熱シートがバッテリーセル間に挟持された、二次電池モジュール。
【請求項2】
前記吸熱シートが、さらに蓄熱材を含有する吸熱シートである、請求項1に記載の二次電池モジュール。
【請求項3】
前記吸熱シートが、さらに遮炎層を有する吸熱シートである、請求項1又は2に記載の二次電池モジュール。
【請求項4】
前記吸熱シートが、さらに両側の最外層に粘着層を有する吸熱シートであり、前記バッテリーセルが前記粘着層によって固定されている、請求項1又は2に記載の二次電池モジュール。
【請求項5】
前記吸熱シートが含有する前記吸熱剤が、無機水和物、金属水酸化物及び炭酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種以上である、請求項1又は2に記載の二次電池モジュール。
【請求項6】
前記吸熱シートが、2種以上の吸熱剤を含有する吸熱シートである、請求項1又は2に記載の二次電池モジュール。
【請求項7】
前記吸熱シートの総厚みが、100~20000μmの範囲である吸熱シートである、請求項1又は2に記載の二次電池モジュール。
【請求項8】
前記吸熱シート中の前記樹脂の含有量が5~90質量%の範囲内である、請求項1又は2に記載の二次電池モジュール。
【請求項9】
前記吸熱剤と前記樹脂との量比は、吸熱剤/樹脂で表される固形分質量比で、80/20~15/85である、請求項1又は2に記載の二次電池モジュール。
【請求項10】
前記吸熱シートが、前記吸熱剤及び前記樹脂を含む樹脂組成物の発泡体を有する、請求項1又は2に記載の二次電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン、携帯電話、ビデオカメラ等の小型化に対応し、電池にも小型軽量化の要求が高まり、高性能な二次電池が普及している。また、例えばリチウムイオン二次電池は電気自動車又はハイブリッド車の車載電源としても用いられ、各種性能の向上が図られており、中でも、近年、二次電池の高容量化が進んでいる。
このような高容量化に伴い、高速充電時や高出力放電時の発熱によって二次電池の温度が上昇すると、急激な温度上昇や熱暴走による発火や電池の破損の危険性が生じる。また、二次電池は内部短絡等の原因によっても熱暴走し、発火や発煙等の不具合を生じることがある。今後、超高速の充電化が進むに伴い、発熱量はより高まることが予測され、二次電池の安全性を高めるための昇温抑制方法の開発が求められている。
リチウムイオン二次電池を構成する正極材、負極材、セパレータ、電解液等の各構成要素を収容し密封できる外装材として、従来から用いられる金属製のケースとは異なり、軽量で形状を自由に選択できる外装フィルムの開発が活発である。外装フィルムは例えば基材層、金属層、シーラント層がこの順に積層された多層構造を基本構成とし、シーラント層同士をヒートシールすることで容器に加工でき、例えば、耐火性に優れる電池用外装フィルム(特許文献1参照)等が開示されている。
また、外側の少なくとも一部が耐火性コーティングで覆われている電池セル(特許文献2参照)や、特定の吸熱性無機化合物粒子と結着剤とを含有する断熱層を二次電池の嵌合部の表面に設けた携帯電子機器(特許文献3参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-2425号公報
【文献】特表2013-528911号公報
【文献】特許第5643648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1~3のように、二次電池を収容し密閉する外装部に発熱を吸収する機能を付与しようとすると、その厚さや柔軟性等の強度の制約から吸熱剤の含有量が限られ、吸熱効果が十分とは言えないという課題がある。
本発明の目的は、高速充電時や高出力放電時の発熱による二次電池の急激な温度上昇を抑制し、熱暴走による発火や破損を防止し得る、二次電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記(1)~(8)に関する。
(1) 吸熱剤を含有する吸熱シートがバッテリーセル間に挟持された、二次電池モジュール。(2) 前記吸熱シートが、空隙部を有する吸熱シートである、(1)に記載の二次電池モジュール。(3) 前記吸熱シートが、さらに蓄熱材を含有する吸熱シートである、(1)又は(2)に記載の二次電池モジュール。(4) 前記吸熱シートが、さらに遮炎層を有する吸熱シートである、(1)~(3)のいずれかに記載の二次電池モジュール。(5) 前記吸熱シートが、さらに両側の最外層に粘着層を有する吸熱シートであり、前記バッテリーセルが前記粘着層によって固定されている、(1)~(4)のいずれかに記載の二次電池モジュール。(6) 前記吸熱シートが含有する前記吸熱剤が、無機水和物、金属水酸化物及び炭酸塩よりなる群から選ばれる少なくとも1種以上である、(1)~(5)のいずれかに記載の二次電池モジュール。(7) 前記吸熱シートが、2種以上の吸熱剤を含有する吸熱シートである、(1)~(6)のいずれかに記載の二次電池モジュール。(8) 前記吸熱シートの総厚みが、100~20000μmの範囲である吸熱シートである、(1)~(7)のいずれかに記載の二次電池モジュール。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高速充電時や高出力放電時の発熱による二次電池の急激な温度上昇を抑制し、熱暴走による発火や破損を防止し得る、二次電池モジュールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の二次電池モジュールが備える吸熱シートの一例の模式的断面図である。
【
図2】本発明の二次電池モジュールが備える吸熱シートの一例の模式的断面図である。
【
図3】製造例1で得た吸熱シート1のDSC曲線である。
【
図4】製造例2で得た吸熱シート2のDSC曲線である。
【
図5】製造例3で得た吸熱シート3のDSC曲線である。
【
図6】製造例4で得た吸熱シート4のDSC曲線である。
【
図7】製造例5で得た吸熱シート5のDSC曲線である。
【
図8】吸熱特性2の試験で得られた温度変化を示すチャートである。
【
図9】吸熱特性3の試験で得られた温度変化を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
【0009】
本発明は、吸熱剤を含有する吸熱シートがバッテリーセル間に挟持された、二次電池モジュールである。本発明の構成により、高速充電時や高出力放電時の発熱や、内部短絡等による二次電池の急激な温度上昇を抑制し、熱暴走による発火や発煙等の被害を最小限に抑え、異常高温になったバッテリーセルの熱を吸熱及び消火することで、他のバッテリーセルへの連爆を防止又は遅延することができる。また、前記した発熱や温度上昇に起因するバッテリーセル自体の膨張を抑制できる。
【0010】
以下、本発明の二次電池モジュールを構成する吸熱シートについて説明する。
[吸熱シート]
吸熱シートは吸熱剤及びマトリックスとしての樹脂を含有する層を備える。吸熱シートは吸熱剤及び樹脂を含有する層のみの単層シートであってよい。また、後述する粘着剤層、遮炎層、又は他の任意の構成からなる層をさらに備える積層体であってもよい。
以下、特に断らない場合は、吸熱剤及び樹脂を含有する層のみからなる単層のシートを「吸熱シート」と称する。
【0011】
<吸熱剤>
吸熱剤としては、好ましくは80℃以上の温度に吸熱ピークを有する無機水和物、金属水酸化物及び炭酸塩等が挙げられる。具体的には、例えば硫酸カルシウム2水和物、硫酸マグネシウム7水和物、炭酸水素ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、ハイドロタルサイト、ホウ酸亜鉛の水和物等が挙げられる。中でも、硫酸カルシウム2水和物、炭酸水素ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム及び炭酸カルシウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、硫酸カルシウム2水和物、炭酸水素ナトリウム、水酸化アルミニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。とりわけ、前記吸熱剤としては、硫酸カルシウム2水和物(石こう)、炭酸水素ナトリウム(重曹)を使用することが、前記バッテリーセル等が短時間で温度上昇した場合(例えば数秒間に800℃に達するような場合)であっても、二次電池の熱暴走による発火や破損をより効果的に防止可能なレベルの吸熱効果を発揮できるためさらに好ましく、硫酸カルシウム2水和物(石こう)を使用することが、上記効果に加え、良好な耐水性を維持できるため特に好ましい。吸熱剤は1種類を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0012】
吸熱剤の吸熱開始温度は60℃~750℃の範囲が好ましく、80℃~450℃の範囲がより好ましく、80℃~300℃の範囲がさらに好ましい。
吸熱剤の吸熱ピーク温度は80℃~800℃の範囲が好ましく、100℃~500℃の範囲がより好ましく、100℃~350℃の範囲がさらに好ましい。
吸熱剤の吸熱量は100J/g~1200J/gの範囲が好ましく、300J/g~1200J/gの範囲がより好ましい。
なお、各吸熱剤の吸熱開始温度、吸熱ピーク温度及び吸熱量は、示差走査熱量分析装置(DSC)を用いて、後述する実施例の方法で求めた値である。
【0013】
吸熱シートは、1種類の吸熱剤を単独で含有していてもよく、2種以上の吸熱剤を含有していてもよい。2種以上の吸熱剤を含有する場合、異なる吸熱開始温度又は異なる吸熱ピーク温度を有する、2種以上の吸熱剤を組み合わせるのが好ましい。例えば吸熱開始温度又は吸熱ピーク温度が相対的に低い吸熱剤(吸熱剤1)と、吸熱開始温度又は吸熱ピーク温度が相対的に高い吸熱剤(吸熱剤2)を混合して用いる場合、温度上昇する過程で吸熱反応を連続的に生じさせ、効果的に熱暴走を抑制できる。また、二次電池は例えば電解液が燃焼することが多く、電解液は引火又は発火により燃焼するが、2種以上の吸熱剤を含有させると、引火点及び発火点それぞれに対応した吸熱開始温度を有する吸熱剤を使用することで、より効果的な消火が可能となる。
吸熱剤1と吸熱剤2の吸熱開始温度が、50℃以上異なることが好ましく、100℃以上異なることがより好ましい。あるいは、吸熱剤1と吸熱剤2の吸熱ピーク温度が50℃以上異なることが好ましく、100℃以上異なることがより好ましい。
2種以上の吸熱剤を含有する場合、例えば吸熱剤1と吸熱剤2を含有する場合の各吸熱剤の含有質量比は特に限定されず、吸熱剤1/吸熱剤2の質量比として10/90~90/10の範囲を適宜設定できる。
【0014】
吸熱剤の粒径は1μm~100μmの範囲が好ましく、1μm~80μmの範囲がより好ましい。吸熱剤の粒径が前記範囲内であると、吸熱シート中において吸熱剤が均一に分散しやすくなり、配合量を多くできる観点から有利である。
なお、吸熱剤の粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置により測定したメジアン径(D50)の値である。
【0015】
<樹脂>
吸熱シートを構成する、吸熱剤及び樹脂を含有する層における樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂及びエラストマー樹脂が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えばポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1-ブテン)樹脂、ポリイソブチレン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ノボラック樹脂、ポリウレタン樹脂等の合成樹脂が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の合成樹脂が挙げられる。
エラストマー樹脂としては、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレン-プロピレンゴム、天然ゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ポリスチレン-ポリブタジエンジブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン-ポリイソプレンジブロック共重合体又はその水素添加物、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレントリブロック共重合体又はその水素添加物等が挙げられる。
これらの樹脂は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。吸熱剤の樹脂中の分散性や、吸熱剤及び樹脂を含有する層の機械的強度を向上させる観点から、上記した中でも熱可塑性樹脂が好ましい。
【0016】
また、吸熱剤及び樹脂を含有する層が空隙部を有する構造を形成しやすく、また空隙率の確保が容易である観点から、機械発泡により空隙部を形成し得るエマルジョン樹脂が好ましい。エマルジョン樹脂としては、例えばアクリル系エマルジョン樹脂、ウレタン系エマルジョン樹脂、エチレン-酢酸ビニル系エマルジョン樹脂、塩化ビニル系エマルジョン樹脂、エポキシ系エマルジョン樹脂等が挙げられる。中でも、アクリル系エマルジョン樹脂は、耐熱性や断熱性に優れることから好ましい。
【0017】
アクリル樹脂としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むモノマー成分を重合した樹脂が挙げられる。なお、本明細書において「(メタ)アクリル」はアクリル、メタアクリル及びそれらの双方を総称する用語である。「(メタ)アクリレート」はアクリレート、メタアクリレート及びそれらの双方を総称する用語である。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種類を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0018】
また、アクリル樹脂を得るためのモノマー成分として、上記した(メタ)アクリル酸アルキルエステルの他に、極性基含有モノマーを含んでもよい。極性基含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和基を有するカルボン酸;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート;(メタ)アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルラウリロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和基を有する含窒素モノマーが挙げられる。
【0019】
アクリル樹脂としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレートが好ましく、ポリメチル(メタ)アクリレートがより好ましく、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が更に好ましい。
アクリル樹脂の重量平均分子量は、吸熱剤を吸熱シート中に分散させやすく、また吸熱シートの機械的強度を向上させる観点から、1000~100000が好ましく、5000~90000がより好ましく、20000~80000が更に好ましい。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0020】
エマルジョン樹脂の平均粒子径は、上記吸熱剤の被覆や、樹脂で被覆された吸熱剤を好適に結着しやすい観点から、30nm~1500nmであることが好ましく、50~1000nmであることがより好ましい。なお、エマルジョン樹脂の平均粒子径は、動的光散乱法により測定される50%メジアン径、例えば、日機装(株)製マイクロトラックUPA型粒度分布測定装置により測定される、体積基準での50%メジアン径を平均粒子径とすることができる。
【0021】
吸熱シートは、吸熱剤がマトリックスとしての上記樹脂中に分散した構造であることが好ましい。
また、吸熱シートは、空隙部を有する構造であることが好ましい。この場合、吸熱シートの比重は0.15~1.6であることが好ましく、0.2~1.0であることがより好ましい。本発明の二次電池モジュールを構成する吸熱シートが、空隙部を有する吸熱シートであると、バッテリーセル間の温度影響を断熱性により抑制でき、またクッション性(柔軟性)によりバッテリーセルの膨張による体積変化の緩衝材として作用し、二次電池モジュールの内部圧力上昇を緩和しやすい。さらに、吸熱シートの軽量化が容易であり、加工性も良好となる。
【0022】
吸熱シート中の吸熱剤の含有量は、好適な吸熱性を実現しやすい観点から、吸熱剤及びマトリックスとしての樹脂を含有する層の全成分に対して、10質量%~95質量%の範囲であることが好ましく、50質量%~90質量%の範囲がより好ましく、65質量%~90質量%の範囲がさらに好ましい。
吸熱シート中の樹脂の含有量は、空隙部及び吸熱剤の含有量の調整や、双方の含有量を向上させやすい観点から5~90質量%の範囲であることが好ましく、10~50質量%の範囲がより好ましく、10~35質量%の範囲がさらに好ましい。また、好適な保温性や断熱性を得やすいことから、吸熱剤と樹脂との量比は、吸熱剤/樹脂で表される固形分質量比で、80/20~15/85であることが好ましく、70/30~30/70であることがより好ましい。
【0023】
<蓄熱材>
吸熱シートは、蓄熱材をさらに含有していてもよい。前記した吸熱剤は熱を吸収することにより分解する物質である。これに対して蓄熱材は、固体から液体へ相変化する際に熱を吸収し、一方で液体から固体へ相変化する際に熱を放出する物質であると位置づけられる。相変化を生じる温度(すなわち、融点)が比較的高い蓄熱材を選択すれば、二次電池の充電時等における発熱を蓄熱材が吸収することで、二次電池の急激な温度上昇等を抑制でき、二次電池の劣化や発火等を防止できる。一方、相変化を生じる温度が比較的低い蓄熱材を選択すれば、周辺温度の低下に伴って二次電池の温度が低下した場合、蓄熱材が蓄えた熱を放出することで、二次電池の温度の低下等を防止できる。
二次電池の急激な温度上昇等を抑制し、充電時等における発熱をより良好に吸収する観点から、蓄熱材の融点は15℃~60℃であることが好ましく、20℃~50℃であることがより好ましく、30℃~45℃であることがさらに好ましい。
【0024】
蓄熱材としては特に限定されないが、例えば脂肪酸エステル、アルカン(パラフィン)等が挙げられる。これらの化合物は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
脂肪酸エステルとしては、例えばミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル等が挙げられる。中でもパルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチルが好ましく、ステアリン酸メチルがより好ましい。
アルカンとしては、例えばヘキサデカン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、ヘンイコサン、ドコサン等が挙げられる。中でもヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、ヘンイコサン、ドコサンが好ましく、ノナデカン、イコサン、ヘンイコサン、ドコサンがより好ましく、イコサン、ヘンイコサン、ドコサンがさらに好ましい。
【0025】
かかる蓄熱材は、メラミン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂のような有機材料からなる外殻で被覆された被覆粒子の形態であることが好ましい。この場合、被覆粒子の平均粒子径は特に限定されないが、10μm~3000μmであることが好ましい。かかる範囲の平均粒子径を有する被覆粒子を使用することにより、吸熱シートにおいて、被覆粒子同士の間に空隙部を形成しやすく、かつ良好な成形性を実現しやすくなる。
平均粒子径は30μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましく、100μm以上が特に好ましい。また、好適な空隙部の形成や良好な成形性とともに、被覆粒子を吸熱シートに保持しやすい観点から、平均粒子径は2000μm以下がより好ましく、1000μm以下がさらに好ましい。なお、一次粒子の平均粒子径が上記範囲であることが好ましい。
被覆粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社堀場製作所製、「LA-950V2」)により測定して、得られたメジアン径(体積累積分布の50%に相当する粒径:50%粒径)とすることができる。
【0026】
このような被覆粒子としては市販品を用いてもよい。例えば、メラミン樹脂からなる外殻を有するものとして、三菱製紙社製サーモメモリーFP-16,FP-25,FP-31,FP-39(いずれも商品名)、三木理研工業社製リケンレジンPMCD-15SP,25SP,32SP(いずれも商品名)等;シリカからなる外殻を有するものとして、三木理研工業社製リケンレジンLA-15,LA-25,LA-32(いずれも商品名)等;ポリメチルメタクリレート樹脂からなる外殻を有するものとして、BASF社製MicronalDS5001X,5040X(いずれも商品名)等;ウレタン樹脂からなる外殻を有するものとして、JSR社製の「CALGRIP(登録商標)」シリーズのNJ2021,NJ2721(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0027】
<他の添加剤>
吸熱シートは、必要に応じてさらに他の添加剤を含有していてもよい。他の添加剤としては、例えば難燃剤、ホルムアルデヒド等の有害物質吸着剤、消臭剤、着色顔料等が挙げられる。
難燃剤としては有機系難燃剤、無機系難燃剤を適宜使用できる。
有機系難燃剤としては、例えばリン系化合物、ハロゲン化合物、グアニジン化合物であることが好ましく、具体的にはリン酸第一アンモニウム、リン酸第二アンモニウム、リン酸トリエステル、亜リン酸エステル、ホスホニウム塩、リン酸トリアミド、塩素化パラフィン、臭化アンモニウム、デカブロモビスフェノール、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモエタン、デカブロモジフェニルオキシド、ヘキサブロモフェニルオキシド、ペンタブロモフェニルオキシド、ヘキサブロモベンゼン、塩酸グアニジン、炭酸グアニジン、リン酸グアニル尿素等が挙げられる。
無機系難燃剤としては、例えばアンチモンやアルミニウムの化合物、ホウ素化合物、アンモニウム化合物であることが好ましく、具体的には五酸化アンチモン、三酸化アンチモン、四ホウ酸ナトリウム十水和物(ホウ砂)、硫酸アンモニウム、スルファミン酸アンモニウム等が挙げられる。
難燃剤は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0028】
<吸熱シートの製造方法>
吸熱シートは、吸熱剤及び樹脂を含む組成物を調製し、該組成物を成形することにより製造できる。例えば該組成物を溶剤で希釈した希釈液を離型シート上に塗布し乾燥することで成形することができ、また、樹脂組成物を押出成形、プレス成形、射出成形等により成形してもよい。
樹脂組成物に吸熱剤が比較的多く配合されている場合(例えば、樹脂組成物全量基準で吸熱剤の含有量が50質量%以上の場合)は、吸熱剤の分散性が良好な吸熱シートを得る観点から、溶剤で希釈した樹脂組成物を用いることが好ましい。
樹脂組成物を希釈する際に使用する溶剤は特に限定されず、例えばペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン等の脂肪族又は芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸n-ブチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;エタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール;水等が挙げられる。
樹脂組成物の希釈液は、通常、樹脂が溶剤により溶解され、かつ吸熱剤が溶剤中に分散されたスラリー状となる。例えば、溶媒及び吸熱剤をビーズミル等の分散混合機で攪拌して分散液を作製し、次いでかかる分散液に、予め溶剤に溶解した樹脂溶液を添加して上記分散混合機でさらに攪拌して樹脂組成物の希釈液を作製できる。
樹脂組成物中の吸熱剤の含有量は、吸熱シート中の吸熱剤の/樹脂の量比が上記範囲となるように配合すればよい。
【0029】
また、樹脂組成物の希釈液は、吸熱剤及び前記したエマルジョン樹脂の混合物であってもよい。かかるエマルジョン樹脂を構成する溶剤としては、好適には水、又は水と水溶性溶剤との混合物である水性媒体が挙げられる。ここで水溶性溶剤としてはメタノール、エタノール、イソプロパノール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール、N-メチルピロリドン等の極性溶剤等が挙げられる。
なお、溶剤で希釈した樹脂組成物における固形分濃度は、例えば30~70質量%、好ましくは35~65質量%、より好ましく40~60質量%である。
樹脂組成物中の樹脂の含有量は、例えばアクリル系エマルジョン樹脂を使用する場合には、水性媒体100質量部に対して30~200質量部であることが好ましく、50~150質量部であることがより好ましい。この場合、樹脂組成物の粘度を好適な範囲に調整しやすく、また、安定的に発泡させやすくなる。
【0030】
本発明の二次電池モジュールが好ましい態様として備える、空隙部を有する吸熱シートは、機械発泡又は化学発泡を含む方法により作製できる。
空隙部を有する吸熱シートは、好ましくは、吸熱剤及び前記したエマルジョン樹脂を含有する樹脂組成物を機械発泡させた後、塗布や注型し、乾燥して作製できる。吸熱シートの作製に際しては、樹脂組成物は、乾燥した後に、必要に応じて、熱や紫外線等により硬化させてもよい。
一方、化学発泡による吸熱シートの製造方法としては、熱分解型発泡剤や発泡助剤をさらに含有する上記樹脂組成物を押出機に供給して溶融混練し、シート状に押出してシートを得、さらにシート中の熱分解型発泡剤を発泡させる方法が挙げられる。熱分解型発泡剤としてはアゾジカルボンアミド、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p-トルエンスルホニルセミカルバジド等が挙げられ、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。熱分解型発泡剤の添加量は、発泡倍率、引張強さ、圧縮回復率等を所望の範囲に調整しやすい観点から、通常、樹脂100質量部に対して1質量部~40質量部が好ましく、1質量部~30質量部がより好ましい。また、シート中の熱分解型発泡剤を発泡させる方法は特に限定されず、例えば熱風、赤外線、塩浴又はオイルバスで加熱する方法等が挙げられる。
【0031】
空隙部を有する吸熱シートを作製する際に、樹脂組成物には、必要に応じて界面活性剤、増粘剤、難燃剤、架橋剤等を混合してもよい。
例えば、起泡した泡の微細化や安定化のために、樹脂組成物に界面活性剤を混合することができる。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤等のいずれを使用してもよい。
特に、起泡した泡の安定性を高める観点から、界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤が好ましく、ステアリン酸アンモニウム等の脂肪酸アンモニウム性界面活性剤がより好ましい。界面活性剤は1種を単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。
樹脂組成物に界面活性剤を混合する場合、その含有量は、好適な発泡性を得やすいことから、樹脂100質量部(固形分)に対して30質量部以下であることが好ましく、0.5~20質量部がより好ましく、3~15質量部がさらに好ましい。
起泡した泡の安定性や成膜性を向上させるために、増粘剤を混合することができる。増粘剤としては、例えばアクリル酸系増粘剤、ウレタン系増粘剤、ポリビニルアルコール系増粘剤等が挙げられる。中でもアクリル酸系増粘剤、ウレタン系増粘剤が好ましい。樹脂組成物に増粘剤を混合する場合、その含有量は、樹脂100質量部(固形分)に対して、0.1~10質量部であることが好ましく、0.5~8質量部がより好ましい。
【0032】
また、吸熱シートの機械的強度を向上させる観点から、樹脂組成物に硬化剤を混合してもよい。硬化剤は、使用する樹脂の種類に応じて適宜選択でき、例えばエポキシ系硬化剤、メラミン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤等が挙げられる。
【0033】
<吸熱シートの物性>
吸熱シートの厚さは、100μm~20000μmであることが好ましく、100μm~6000μmであることがより好ましく、100μm~3000μmであることがさらに好ましく、100μm~1000μmであることがよりさらに好ましい。この場合、発泡シートのクッション性、力学的強度、及び加工性等の取扱い性をより向上できる。
【0034】
吸熱シートは、JIS K5600-5-1(1999)に準拠した耐屈曲性試験において割れの生じるマンドレル直径が、25mm以下であることが好ましく、20mm以下であることがより好ましく、16mm以下であることがさらに好ましい。かかる要件を満たす吸熱シートは、好適な柔軟性や各種部材の表面への優れた追従性を確保できる。
また、吸熱シートのJIS L1913(2010)に規定されるガーレ法に準拠して測定した剛軟度は、0.1~30mNであることが好ましく、0.5~20mNであることがより好ましく、1~10mNであることがさらに好ましい。かかる剛軟度を有する吸熱シートも、好適な柔軟性や各種部材の表面への優れた追従性を確保できる。
吸熱シートの引張強さは0.1MPa以上であることが好ましく、0.2MPa以上であることがより好ましい。この場合、柔軟性を有しながらも強靭な吸熱シートとすることができる。また、かかる吸熱シートは、加工時や搬送時等にも割れが生じ難く、好適な加工性や取扱い性、搬送適正、曲げ適性等を発揮し得るため好ましい。
なお、吸熱シートの引張強さの上限は特に限定されないが、15MPa以下であることが好ましく、10MPa以下であることがより好ましく、5MPa以下であることがさらに好ましい。
【0035】
また、吸熱シートの引張破断時の伸び率は、5%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることがさらに好ましい。この場合、吸熱シート20の脆化を抑制することができる。また、かかる吸熱シートは、仮に、加工時や搬送時等に曲げや歪みが生じた場合にも、割れや欠けが生じ難い。
なお、吸熱シートの引張破断時の伸び率の上限は、1000%以下であることが好ましく、500%以下であることがより好ましく、300%以下であることがさらに好ましい。この場合、吸熱シートは、強靭でありながら優れた柔軟性を実現することができる。よって、吸熱シートは、良好な加工性や取扱い性、搬送適正、各種部材の表面への追従性等を得やすい。
【0036】
吸熱シートの引張強さ及び引張破断時の伸び率は、それぞれJIS K6251に規定の方法に準じて測定できる。具体的には、吸熱シートをダンベル状2号形に切り出し、初期の標線間距離を20mmとして2本の標線をつけた試験片を作製する。この試験片を引張り試験機に取り付け、速度200mm/分で引っ張って破断させる。このとき、破断までの最大の力(N)及び破断時の標線間距離(mm)を測定し、以下の式により引張り強さ及び引張り破断時の伸び率を算出できる。
【0037】
引張強さTS(MPa)は、以下の式により算出される。
TS=Fm/Wt
ただし、Fmは最大の力(N)、Wは平行部分の幅(mm)、tは平行部分の厚さ(mm)である。
また、引張り破断時の伸び率Eb(%)は、以下の式により算出される。
Eb=(Lb-L0)/L0×100
ただし、Lbは破断時の標線間距離(mm)、L0は初期の標線間距離(mm)である。
【0038】
[粘着層]
本発明の二次電池モジュールにおける各バッテリーセル間の密着性をより一層向上させる観点から、例えば
図1に示すように、吸熱シートはその両側の最外層にさらに粘着層を有する積層体であってよい。すなわち、本発明の二次電池モジュールにおいて、吸熱シートがさらに有する前記粘着層によって複数のバッテリーセルが固定されている態様でもよい。
粘着層を形成し得る粘着剤としては、例えば天然ゴム、合成ゴム、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ビニルエーテル系樹脂等の樹脂をバインダーとして含有するものが挙げられる。かかる粘着剤の形態は、溶剤系、エマルジョン型、水系、ホットメルト型、紫外線や電子線等の活性エネルギー線硬化型等の無溶剤系のいずれであってもよい。
【0039】
吸熱シートが、その両側の面の最外層に粘着層を有する場合、それぞれの粘着層は同一の粘着力を有するものであっても、異なる粘着力を有するものであってもよい。具体的には、いずれか一方の粘着層がいわゆる強粘着剤層であり、他方が弱粘着剤層であってもよい。また、それぞれの粘着層は同一の組成であっても、異なる組成からなるものであってもよい。二次電池モジュールの解体性を考慮して、粘着層の粘着力を設計することもできる。
粘着層を形成し得る粘着剤は、良好な塗工作業性等を維持する観点で溶媒を含有していることが好ましい。前記溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、ヘキサン等を使用できる。また、水系粘着剤組成物とする場合には、水又は水を主体とする水性溶媒を使用できる。
【0040】
粘着層を形成し得る粘着剤は、必要に応じて粘着付与樹脂、架橋剤、その他の添加剤等を含有していてもよい。
粘着付与樹脂としては、例えば、ロジン系、重合ロジン系、重合ロジンエステル系、ロジンフェノール系、安定化ロジンエステル系、不均化ロジンエステル系、テルペン系、テルペンフェノール系脂、石油樹脂系等の各種粘着付与樹脂が挙げられる。
架橋剤としては、イソシアネート系、エポキシ系、アジリジン系、多価金属塩系、金属キレート系、ケト・ヒドラジド系、オキサゾリン系、カルボジイミド系、シラン系、グリシジル(アルコキシ)エポキシシラン系等の公知の架橋剤が挙げられ、粘着剤層(B)の凝集力を向上させることを目的に使用できる。
その他の添加剤としては、公知の発泡剤、可塑剤、軟化剤、酸化防止剤、ガラスやプラスチック製の繊維・バルーン・ビーズ・金属粉末等の充填剤、顔料・染料等の着色剤、pH調整剤、皮膜形成補助剤、レベリング剤、増粘剤、撥水剤、消泡剤等が挙げられる。これらのその他の添加剤は、本発明の所望の効果を阻害しない範囲で添加できる。
【0041】
粘着層の厚さは10μm以下であることが好ましく、1μm~5μmの範囲がより好ましい。なお、粘着層が前記した吸熱剤を含有していてもよい。
【0042】
[遮炎層]
吸熱シートは、さらに遮炎層を有する積層体であってもよい。吸熱シートが遮炎層を有すると、急激な発熱や温度上昇により二次電池が発火した場合でも炎を遮り、他のバッテリーセルへの延焼の防止や遅延に有効である。なお、吸熱シートが、前記した粘着層及び遮炎層の両方をさらに有する場合は、遮炎層は粘着層の内側に設けられる。
遮炎層としては、無機繊維の織布、不織布、抄造物等からなる無機繊維シート、不燃紙を好適に用いることができる。遮炎層は、例えば
図2に示すように、吸熱シートの一方の表面に無機繊維シートを積層することにより設けることができる。
【0043】
遮炎層に適用できる無機繊維シートの具体例としては、グラスウール、ロックウール、ガラス繊維等からなるガラスクロスが挙げられる。無機繊維シートは、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
遮炎層に適用できる不燃紙の具体例としては、紙に難燃剤を塗布、含浸または内添して自己消火性を持たせ、炎が広がることを抑えたものが挙げられる。ここで難燃剤としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属酸化物、リン酸塩、ホウ酸塩、ステファミン酸塩等の塩基性化合物、ガラス繊維等が挙げられる。
遮炎層の厚みは特に限定されず、例えば10~1000μmの範囲で適宜設定できる。また、遮炎層としての無機繊維シートの単位面積当たりの重量は1~1000mg/cm2であることが好ましい。
【0044】
[熱伝導層]
前記吸熱シートとしては、その片面または両面に熱伝導層を有するものを使用することが、バッテリーセル等が温度上昇した場合(例えば800℃に達するような場合)であっても、熱伝導率が高い熱伝導層によって、熱が面方向に伝達され、前記吸熱剤が熱を効率よく吸熱することで、その表面の温度上昇をより効果的に抑えることができ、その結果、二次電池の熱暴走による発火や破損をより効果的に防止できるため好ましい。さらに、前記熱伝導層がアルミニウム箔などの金属箔であった場合は、輻射熱を反射する効果も得られ、熱暴走により発生した熱の伝達をさらに遅らせることができる。
前記熱伝導層としては、例えばアルミニウム箔、銅箔、鉄箔等の金属箔(金属層)、グラファイトシート等を使用することが好ましく、アルミニウム箔等の金属箔を使用することが、バッテリーセル等が温度上昇した場合であってもその表面の温度上昇をより効果的に抑えることができ、その結果、二次電池の熱暴走による発火や破損をより効果的に防止できるため特に好ましい。また、前記熱伝導層として金属層を使用する場合には、吸熱シートの変形を抑制でき、遮炎性を付与することもできるため特に好ましい。
また、前記熱伝導層としては、複数の材料が積層されたものを使用することもできる。具体的には、前記金属層と前記金属層への密着性を付与可能な繊維材(繊維シート)との積層物を使用することが好ましい。前記熱伝導層としては、より具体的にはアルミニウム箔と紙材との積層物を使用することが、熱伝導層と吸熱シートとの密着性を高めるうえで好ましい。前記アルミニウム箔と紙材とを積層する方法としては、例えばそれらをポリエチレンシートなどでラミネートする方法が挙げられる。
前記熱伝導層としては、厚さ5μm~200μmのものを使用することが好ましく、5μm~50μmのものを使用することが、上記効果と二次電池モジュールの薄型化や軽量化等とを両立するうえで好ましい。
前記熱伝導層の熱伝導率の下限値としては、好ましくは0.045W/m・K以上、より好ましくは1W/m・K以上である。また、前記熱伝導層の熱伝導率の上限値としては、好ましくは1800W/m・K以下、より好ましくは500W/m・K以下であることが好ましい。
【0045】
吸熱シートが、吸熱剤及びマトリックスとしての樹脂を含有する層に加え、粘着層、遮炎層、熱伝導層又は接着層等の他の任意の構成からなる層をさらに備える積層体である場合、かかる積層体の製造方法に特に制限はない。例えば、離型シートの表面に前記した粘着剤を塗工して乾燥等により粘着層を形成し、吸熱シートの両方の表面に粘着層をそれぞれ転写する方法;吸熱シートの一方の表面に、必要に応じて接着剤層を介して遮炎層を重ね合わせ、吸熱シートのもう一方の表面及び遮炎層の表面に、予め作製した粘着層をそれぞれ転写する工程;遮炎層の上に吸熱材を含有する樹脂を塗工して加熱する事で発泡成形する工程;を経て製造できる。また、吸熱シートの両方の表面に、前記した粘着剤を直接塗工及び乾燥して粘着層を形成することでも、かかる積層体を製造できる。
なお、上記した接着剤層を形成可能な接着剤としては、例えばウレタン樹脂系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ポリエステル樹脂系接着剤等が挙げられる。
【0046】
前記吸熱シートの好ましい実施形態としては、具体的には、前記硫酸カルシウム2水和物(石こう)や炭酸水素ナトリウム(重曹)に代表される吸熱剤を含有し、空隙を有し、かつ、前記アルミニウム箔に代表される熱伝導層を有する吸熱シートが挙げられる。
二次電池の発火や破損は、熱暴走(すなわち二次電池を構成するバッテリーセルの温度制御ができない状態)によって引き起こされる場合がある。前記熱暴走は、前記バッテリーセルの温度が約80℃を超えると引き起こされるリスクが高まり、さらに160℃付近まで達すると、バッテリーセル内のセパレーターがメルトダウンしてしまい、急激に温度が上昇し熱暴走を抑制する事が難しくなる。
したがって、吸熱シートには、(1)前記バッテリーセルの温度が160℃に達する前に吸熱して熱暴走を止める事、あるいは160℃に達するまでの時間をできるだけ長くすること(バッテリーセルの温度上昇を抑制すること)と、(2)高温に達したバッテリーセルの熱が、隣接する他のバッテリーセルに伝達することで複数のバッテリーセルの熱暴走の発生を抑制することとを実現できることが求められる。
前記硫酸カルシウム2水和物(石こう)や炭酸水素ナトリウム(重曹)に代表される吸熱剤を含有する吸熱シートは、前記バッテリーセル等が短時間で温度上昇した場合(例えば数秒間に800℃に達するような場合)であっても、上記(1)及び(2)で示すような効果を奏することができ、その結果、二次電池の熱暴走による発火や破損をより効果的に抑制できる。
また、アルミニウム箔をはじめとする熱伝導層を有する吸熱シートは、上記(1)及び(2)で示すような効果を奏することができ、その結果、二次電池の熱暴走による発火や破損をより効果的に抑制できる。
また、前記空隙(多孔)を有する熱吸収シートは、バッテリーセル間の温度影響を断熱性により抑制でき、またクッション性(柔軟性)によりバッテリーセルの膨張による体積変化の緩衝材として作用し、二次電池モジュールの内部圧力上昇を緩和することができる。
一方、二次電池モジュールの更なる薄型化や小型化求められる場合には、前記吸熱シートとしては、空隙を有さないものを使用することが好ましい。具体的には、前記吸熱シートとしては、前記硫酸カルシウム2水和物(石こう)や炭酸水素ナトリウム(重曹)に代表される吸熱剤を含有し、前記アルミニウム箔に代表される金属層を有するものの、空隙を有さない吸熱シートが挙げられる。その厚さは、100μm~10000μmであることが好ましく、100μm~3000μmであることがより好ましい。
【0047】
[二次電池モジュール]
二次電池の種類は特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。中でも、好適な適用対象として、リチウムイオン電池が挙げられる。
【0048】
本発明の二次電池モジュールは、例えば車両等に搭載される二次電池であり、複数のバッテリーセル及びかかる複数のバッテリーセルを収納するケースを有している。
二次電池モジュールを構成するバッテリーセルは、例えば電池用外装フィルムを外装材として、該外装材内に、少なくとも正極材、負極材、セパレータ、正極端子、及び負極端子等を備えた電池素子を封入したバッテリーセルであることができる。
該外装材は、通常は、電池用外装フィルムのシーラント層同士がヒートシールされることで形成されており、周縁にフランジ部(シーラント層同士がヒートシールにより密着している領域)を有する。また、通常は、該フランジ部から、正極材及び負極材の各々に接続された正極端子、及び負極端子が外部に突出している。
【0049】
本発明の二次電池モジュールは、ケース内に収容された隣り合うバッテリーセル間に、前記した吸熱シートが挟持されている。なお、ケースは例えばアルミニウム、鉄、又はこれらを含む金属材料、ポリフェニレンスルフィド等の樹脂材料により形成でき、樹脂材料で形成すると、二次電池モジュールの軽量化に寄与することができる。
吸熱シートのバッテリーセル間への挟持は、例えば、接着剤、融着(超音波融着、高周波融着、熱融着)、粘着剤等により行うことができる。ここで、吸熱シートが更に粘着層を有する積層体である場合には、接着剤や粘着剤のさらなる使用を省略できるので、モジュール作製の作業性の観点から有利である。
かかる構成により、二次電池の充電時等における発熱を、バッテリーセル間に挟持された吸熱シートが吸収することでバッテリーセルの急激な温度上昇等を抑制でき、バッテリーセルの劣化、発火等を未然に防止できる。また、空隙を有する吸熱シートがバッテリーセル間に挟持されていると、バッテリーセル間の温度影響を断熱性により抑制でき、クッション性(柔軟性)によりバッテリーセルの膨張による体積変化の緩衝材として作用し、二次電池モジュールの内部圧力上昇を緩和しやすい。
【実施例】
【0050】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。ただし、本発明は下記の実施例のみに限定されるものではない。本実施例等で使用した化合物を以下に示す。
【0051】
<樹脂>
・樹脂1:「ボンコート5400EF」(製品名、水分散アクリル樹脂エマルジョン、不揮発分50%、DIC社製)・樹脂2:「CNペースト1805」(製品名、塩化ビニル系樹脂ペースト、DIC北日本ポリマー社製)
<整泡剤>
・整泡剤1:「DICNAL M-40」(製品名、スルホン酸型アニオン界面活性剤、DIC社製)
<架橋剤>
・架橋剤1:「DICNAL GX」(製品名、オキサゾリン基含有ポリマー、DIC社製)<吸熱剤>・水酸化アルミニウム:(製品名「水酸化アルミニウム 鹿1級」、関東化学社製)・硫酸カルシウム2水和物:(製品名「硫酸カルシウム2水和物 特級」、関東化学社製)・炭酸水素ナトリウム:(製品名「炭酸水素ナトリウム 特級」、関東化学社製)
<蓄熱剤>
・蓄熱剤1:「ART PEARL NJ38815」(製品名、脂肪酸エステルをウレタン系樹脂からなる外殻で被覆した蓄熱性カプセル粒子、根上工業社製)
【0052】
1.吸熱シートの製造
[製造例1]
樹脂1(水分散アクリル樹脂エマルジョン)100質量部、整泡剤1(スルホン酸型アニオン界面活性剤)6質量部、架橋剤1(オキサゾリン基含有ポリマー)3質量部、を配合してディスパーにて攪拌混合し(2000rpm、3分)、機械発泡用バインダーを作成した。作成した前記バインダーを、発泡倍率が2倍になるように撹拌して泡立て、これに吸熱剤として水酸化アルミニウム240質量部を配合して、更に5分間攪拌を続行して発泡性混合物を得た。
得られた発泡性混合物をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上にアプリケーターにて塗布した。前記塗布したものを予備乾燥として105℃で5分間加熱し、次いで、120℃で3分間加熱した後、前記ポリエチレンテレフタレートフィルムを除去したシート状物を裏返して更に120℃で3分間熱処理して硬化させ、厚さ1mmの吸熱シート1を製造した。
吸熱シート1の比重は0.64、質量は640g/m2、吸熱シート1中の吸熱剤の質量は514g/m2であった。吸熱シート1を切断した断面を電子顕微鏡(キーエンス社製デジタルマイクロスコープVHX-900)で確認した。
【0053】
[製造例2~5]
樹脂1、整泡剤1、架橋剤1、吸熱剤の種類と配合量を表1に示すとおりとした以外は製造例1と同様にして吸熱シート2~5を製造した。
[製造例6]
樹脂2(塩化ビニル系樹脂ペースト)100質量部、及び吸熱剤として水酸化アルミニウム120質量部を混合してプラスチゾル塗工液を調製し、このプラスチゾル塗工液をPETフィルム上にアプリケーターにて塗布した。前記塗布したものを予備乾燥として100℃で5分間加熱し140℃で10分間熱処理して硬化させ、前記PETフィルムを除去することによって、厚さ1mmの吸熱シート6を製造した。
[製造例7]
吸熱剤、及びさらに蓄熱剤1を表1に示すとおり配合した以外は、製造例6と同様にして吸熱シート7を製造した。
【0054】
[製造例8]
吸熱剤を配合しなかった以外は、製造例1と同様にしてシート1を製造した。
[製造例9]
吸熱剤を配合しなかった以外は、製造例6と同様にしてシート2を製造した。
[製造例10]
樹脂2,及び吸熱剤の種類と配合量を表1に示すとおりとした以外は製造例6と同様にしてシート3を製造した。
[製造例11]
吸熱剤を配合せず、蓄熱剤1を表1に示すとおり配合した以外は、製造例6と同様にしてシート4を製造した。
[製造例12]
前記PETフィルムの代わりにガラスクロス(厚さ140μm)を使用し、かつ、前記PETフィルム及び前記ガラスクロスを除去する工程を行わないこと以外は、製造例1と同様の方法で吸熱シート8を得た。
[製造例13]
吸熱シートの代わりに、断熱材1としてポリオレフィンフォームのシート材料(TORAY社製のトーレペフ 品番300050 AG00 熱伝導率0.035W/m・K_)を用意した。
[製造例14]
吸熱シートの代わりに、断熱材2としてエアロシリカゲルとガラス繊維で構成されたシート材料(xiaomei社製のスーパーライトシリカエアロゲル、遮音綿疎水性マット材料 熱伝導率0.012-0.018W/m・K)を用意した。
[製造例15]
前記ガラスクロス(厚さ140μm)の代わりに、アルミニウム箔と紙材との複合シート(DICデコール社製のMLシート)を使用すること以外は、製造例1と同様の方法で吸熱シート9を得た。
【0055】
[実施例1]
製造例1で得られた吸熱シート1をバッテリーセル間に挟持して、二次電池モジュールを作成した。
[実施例2~9、比較例1~4]
製造例で得られた吸熱シート2~9,シート1~4、断熱材1~2をそれぞれ用い、実施例1と同様にして二次電池モジュールを作成した。
【0056】
2.吸熱シート、シート及び断熱材の評価
2-1.成形性
大気中、23℃の条件で、各シートを直径10mmの棒に巻き付けて、吸熱シート、シート及び断熱材の表面における割れ(クラック)の有無を目視で確認した。
[評価基準]
〇:割れ(クラック)が観察されない
×:割れ(クラック)が生じている
【0057】
2-2-1.吸熱特性1
吸熱シートについて、吸熱開始温度及び吸熱ピーク温度を次のようにして測定した。示差走査熱量分析装置(DSC;DSC-7020 日立ハイテク社製)を用いて、窒素雰囲気下、0℃から350℃まで1℃/分で昇温し、このときのDSC測定曲線のベースラインから融解ピークの立ち上がりが開始される温度を吸熱開始温度(℃)とし、DSC測定曲線のベースラインからの差異が最大となる点を吸熱ピーク温度(℃)とした。また、DSC測定曲線のベースラインを基準とした吸熱ピークの積分値を、測定に用いた吸熱剤の質量で除した値を吸熱量(J/g)とした。
各シートのDSC曲線を
図3~
図7に併せて示す。
【0058】
2-2-2.吸熱特性2
縦100mm×横50mm×厚さ1.5mmの長方形の株式会社 八光電機製の発熱ヒーター(30W)を用意し、これを発熱した二次電池セルの代用として吸熱特性2を下記の方法で評価した。
はじめに、前記発熱ヒーターの一方の面に、実施例3、実施例9または比較例5で得られた縦80mm×横50mm×表2記載の厚さの吸熱シートまたはシートを重ね、それらを縦150mm×横150mm×厚さ21mmの四角形の木材2個で挟み固定した。
次に、前記発熱ヒーターを30Wの一定の熱量で発熱させ、前記吸熱シートとそれに接する木材との間の温度Tが160℃に達するまでの時間を測定し、その時間に基づいて吸熱特性2を評価した。前記温度Tは、発熱したセルの吸熱シート等を介して隣に配置されたセルの表面温度に相当する測定点とした。
なお、上記試験において吸熱シートを使用せずに評価した結果を参考例とした。
【0059】
2-2-3.吸熱特性3
コーンカロリーメーター(株式会社 東洋精機製作所_社製)を用い、吸熱シートの吸熱特性3を下記方法で評価した。試験方法はJIS A 5430付属書に準拠し、実施例と比較例の試験体に対して、加熱側の反対面に熱電対を取り付け、その温度変化の測定を行う事で、試験体を介した熱影響の評価を行った。
はじめに、実施例2、実施例3及び比較例6で用意した吸熱シートまたはシートの下面に熱電対を取り付け、側面および下面をアルミニウム伯で包んで抑え枠に入れ、さらに裏面側に無機繊維を充填してから、試験体ホルダーに押し込んだ。前記試験体ホルダーを前記コーンカロリーメーターに設置し、輻射熱電気ヒーターから試験体表面に50kW/m2の輻射熱を照射した。なお前記輻射熱電気ヒーターの温度を実測した所、800℃~850℃であった。
前記実施例及び比較例で用意した吸熱シートや断熱材やシートの加熱側と反対面の温度を測定し、その温度が160℃に達するまでの時間を測定し、その時間に基づいて吸熱特性3を評価した。
【0060】
2-3.燃焼性
各シートを金網に乗せ、大気中、23℃の条件で、金網の下部から炎の先端がシート表面に僅かに触れるようにライターの炎を近づけて15秒間保ち、燃焼性を以下の基準で評価した。
[評価基準]
A:シートに着火しない
B:シートに着火するも、すぐに自己消火する
C:シートが燃焼する
以上の評価結果を表1に併せて示す。
【0061】
【0062】
【0063】
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の二次電池モジュールは高速充電時や高出力放電時の発熱による二次電池の急激な温度上昇を抑制し、熱暴走による発火や破損を防止し得るため、安全性が向上した二次電池として、各種用途に有用である。
【符号の説明】
【0065】
1 吸熱シート
2 粘着層
3 遮炎層