(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】積層体、包装材
(51)【国際特許分類】
B32B 29/00 20060101AFI20240730BHJP
B32B 27/10 20060101ALI20240730BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240730BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20240730BHJP
C08G 18/46 20060101ALI20240730BHJP
C08G 18/68 20060101ALI20240730BHJP
B65D 65/40 20060101ALN20240730BHJP
【FI】
B32B29/00
B32B27/10
B32B27/40
C08G18/42 008
C08G18/46 038
C08G18/68
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2024507129
(86)(22)【出願日】2023-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2023034214
【審査請求日】2024-02-06
(31)【優先権主張番号】P 2022161522
(32)【優先日】2022-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】久保田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 麻世香
(72)【発明者】
【氏名】神山 達哉
(72)【発明者】
【氏名】大原 伸一
【審査官】中西 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-001539(JP,A)
【文献】特開2013-129152(JP,A)
【文献】特開2014-133797(JP,A)
【文献】特開2013-129780(JP,A)
【文献】特開2015-016657(JP,A)
【文献】国際公開第13/027609(WO,A1)
【文献】特表2020-515691(JP,A)
【文献】特表2021-519364(JP,A)
【文献】特表2022-509543(JP,A)
【文献】特開2022-095227(JP,A)
【文献】特開2018-069676(JP,A)
【文献】特開2021-138434(JP,A)
【文献】特表2017-519052(JP,A)
【文献】国際公開第23/112687(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B、C08G、B65D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材と、上記紙基材上に配置されたガスバリアコート層とを含み、
上記ガスバリアコート層が、オルト配向性芳香族多価カルボン酸を含む多価カルボン酸と、多価アルコールとを重縮合して得られるポリエステルポリオール(A1)、イソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A2)、重合性炭素-炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A3)から選ばれる少なくとも一種を含むポリエステルポリオール(A)と、イソシアネート化合物(B)と、有機溶剤(C)と、
イソソルビドとを含む2液硬化型コーティング剤の硬化塗膜であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
紙基材と、ヒートシールフィルムと、上記紙基材の上記ヒートシールフィルム側の面に配置されたガスバリアコート層と、上記ガスバリアコート層と上記ヒートシールフィルムとの間に配置された接着層とを含み、
上記ガスバリアコート層が、オルト配向性芳香族多価カルボン酸を含む多価カルボン酸と、多価アルコールとを重縮合して得られるポリエステルポリオール(A1)、イソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A2)、重合性炭素-炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A3)から選ばれる少なくとも一種を含むポリエステルポリオール(A)と、イソシアネート化合物(B)と、有機溶剤(C)と、
イソソルビドとを含む2液硬化型コーティング剤の硬化塗膜であることを特徴とする積層体。
【請求項3】
紙基材と、ヒートシール剤の乾燥塗膜であるヒートシール層と、ガスバリアコート層とを含み、
上記ガスバリアコート層が、オルト配向性芳香族多価カルボン酸を含む多価カルボン酸と、多価アルコールとを重縮合して得られるポリエステルポリオール(A1)、イソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A2)、重合性炭素-炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A3)から選ばれる少なくとも一種を含むポリエステルポリオール(A)と、イソシアネート化合物(B)と、有機溶剤(C)と、
イソソルビドとを含む2液硬化型コーティング剤の硬化塗膜であることを特徴とする積層体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の積層体からなる紙包装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙を基材とする積層体、包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
外気からの酸素等のガスの侵入を防ぐ目的で、ガスバリア性材料が各方面で使用されている。例えば食品や飲料等の包装に用いられる包装材料は、様々な流通、冷蔵等の保存や加熱殺菌などの処理等から内容物を保護することや、食品長期保存を目的として、酸化を抑えるため外部からの酸素の侵入を防ぐ酸素バリア性や、二酸化炭素バリア性、各種香気成分等に対するバリア性機能が要求されている。
【0003】
紙を基材としガスバリア性を有する包装材料としては、紙基材に、アスペクト比10以上のカオリンを全顔料に対して50質量%~100質量%含有し、ガスバリア層がバインダー樹脂としてポリビニルアルコール樹脂を含有する層を設けた包装材料や(例えば特許文献1参照)、下塗り層を有し特定の透湿度や厚さや密度を有する紙基材上に塩化ビニリデン系共重合体を含有する層を設けた包装材料(例えば特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2013/069788号
【文献】特開2022-129305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながらポリビニルアルコールといった従来よく知られたガスバリア性の樹脂は、水を主成分とした水性溶剤に溶解(分散)した水性コーティング剤として供されるため、乾燥に多量の時間とエネルギーを消費する(特許文献1参照)。また下塗り層(目止め層)を必須とする場合も多い(特許文献2参照)。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みなされたものであって、水性コーティング剤に比べて低エネルギーでの乾燥性に優れ、目止め層を必須とせず、且つ良好なガスバリア性を有する紙積層体及び包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち本発明は、紙基材と、上記紙基材上に配置されたガスバリアコート層とを含み、
上記ガスバリアコート層が、オルト配向性芳香族多価カルボン酸を含む多価カルボン酸と、多価アルコールとを重縮合して得られるポリエステルポリオール(A1)、イソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A2)、重合性炭素-炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A3)から選ばれる少なくとも一種を含むポリエステルポリオール(A)と、イソシアネート化合物(B)と、有機溶剤(C)と、乾燥助剤(D)とを含む2液硬化型コーティング剤の硬化塗膜である積層体を提供する。
【0008】
また本発明は、紙基材と、ヒートシールフィルムと、上記紙基材の上記ヒートシールフィルム側の面に配置されたガスバリアコート層と、上記ガスバリアコート層と上記ヒートシールフィルムとの間に配置された接着層とを含み、
上記ガスバリアコート層が、オルト配向性芳香族多価カルボン酸を含む多価カルボン酸と、多価アルコールとを重縮合して得られるポリエステルポリオール(A1)、イソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A2)、重合性炭素-炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A3)から選ばれる少なくとも一種を含むポリエステルポリオール(A)と、イソシアネート化合物(B)と、有機溶剤(C)と、乾燥助剤(D)とを含む2液硬化型コーティング剤の硬化塗膜である積層体を提供する。
【0009】
また本発明は、紙基材と、ヒートシール剤の乾燥塗膜であるヒートシール層と、ガスバリアコート層とを含み、
上記ガスバリアコート層が、オルト配向性芳香族多価カルボン酸を含む多価カルボン酸と、多価アルコールとを重縮合して得られるポリエステルポリオール(A1)、イソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A2)、重合性炭素-炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A3)から選ばれる少なくとも一種を含むポリエステルポリオール(A)と、イソシアネート化合物(B)と、有機溶剤(C)と、乾燥助剤(D)とを含む2液硬化型コーティング剤の硬化塗膜である積層体を提供する。
【0010】
また本発明は、上記記載の積層体からなる紙包装材を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、水性コーティング剤に比べて低エネルギーでの乾燥性に優れ、目止め層を必須とせず、且つ良好なガスバリア性を有する紙積層体及び包装材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<コーティング剤>
本発明で使用するコーティング剤は、ポリエステルポリオール(A)と、イソシアネート化合物(B)と、有機溶剤(C)と、乾燥助剤(D)とを含む2液硬化型のコーティング剤である。なお本発明で使用するコーティング剤は塗工乾燥することでガスバリア性を示すが、本発明において「ガス」とは、主に酸素を指す。
乾燥助剤(D)はポリエステルポリオール(A)とともにポリオール組成物(I)中に存在していてもよいし、ポリオール組成物(I)、ポリイソシアネート組成物(II)とは別に用意しておき、塗工直前にこれらと混合して用いてもよい。有機溶剤(C)は、ポリオール組成物(I)またはポリイソシアネート組成物(II)のいずれか一方のみに含まれていてもよいし、両方に存在していてもよい。
【0013】
(ポリエステルポリオール(A))
ポリエステルポリオール(A)は多価カルボン酸と多価アルコールとを含むモノマー組成物(A’)の反応生成物であり、オルト配向性芳香族多価カルボン酸を含む多価カルボン酸と、多価アルコールとを重縮合して得られるポリエステルポリオール(A1)、イソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A2)、重合性炭素-炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A3)の少なくとも一種を含む。
【0014】
ポリエステルポリオール(A1)の合成に用いられるオルト配向性多価カルボン酸としては、オルトフタル酸又はその酸無水物、ナフタレン2,3-ジカルボン酸又はその酸無水物、ナフタレン1,2-ジカルボン酸又はその酸無水物、アントラキノン2,3-ジカルボン酸又はその酸無水物、及び2,3-アントラセンカルボン酸又はその酸無水物等が挙げられる。これらの化合物は、芳香環の任意の炭素原子に置換基を有していても良い。該置換基としては、クロロ基、ブロモ基、メチル基、エチル基、i-プロピル基、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、フェノキシ基、メチルチオ基、フェニルチオ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、フタルイミド基、カルボキシル基、カルバモイル基、N-エチルカルバモイル基、フェニル基又はナフチル基等が挙げられる。
【0015】
ポリエステルポリオール(A1)の合成に用いられる多価カルボン酸は、オルト配向性多価カルボン酸以外の多価カルボン酸を含んでいてもよい。オルト配向性多価カルボン酸以外の多価カルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸;無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和結合含有多価カルボン酸;1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族多価カルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ナフタル酸、ビフェニルジカルボン酸、1,2-ビス(フェノキシ)エタン-p,p’-ジカルボン酸及びこれらジカルボン酸の酸無水物或いはエステル形成性誘導体、p-ヒドロキシ安息香酸、p-(2-ヒドロキシエトキシ)安息香酸及びこれらのジヒドロキシカルボン酸のエステル形成性誘導体等の芳香族多価カルボン酸等が挙げられ、1種または2種以上を併用することができる。中でも、コハク酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、イソフタル酸及びその酸無水物が好ましい。
【0016】
多価カルボン酸が、オルト配向性多価カルボン酸以外の多価カルボン酸を含む場合、多価カルボン酸全量に占めるオルト配向性多価カルボン酸の割合が70~100質量%であることが好ましい。
【0017】
ポリエステルポリオール(A1)の合成に用いられる多価アルコールは、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、エチレングリコールおよびグリセリンから選ばれる少なくとも一種を含むことがより好ましい。
【0018】
多価アルコールは上記以外の多価アルコールを併用してもよく、例えば1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、メチルペンタンジオール、ジメチルブタンジオール、ブチルエチルプロパンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール;トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,2,4-ブタントリオール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスルトール等の三価以上の多価アルコール、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコール、ナフタレンジオール、ビフェノール、ビスフェノールA、ヒスフェノールF、テトラメチルビフェノールや、これらのエチレンオキサイド伸長物、水添化脂環族等の芳香族多価フェノール等を例示することができる。
【0019】
ポリエステルポリオール(A1)が3個以上の水酸基を有する場合(便宜上ポリエステルポリオール(a1)とする)、水酸基の一部を酸基で変性してもよい。このようなポリエステルポリオールを以下ではポリエステルポリオール(A1’)ともいう。ポリエステルポリオール(A1’)は、ポリエステルポリオール(a1)に、多価カルボン酸またはその酸無水物を反応させて得られる。多価カルボン酸で変性する水酸基の割合は、ポリエステルポリオール(a1)が備える水酸基の1/3以下とすることが好ましい。変性に用いる多価カルボン酸としては、無水コハク酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸無水物、無水フタル酸、2,3-ナフタレンジカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物、オレイン酸、ソルビン酸等が挙げられるがこれに限定されない。
【0020】
ポリエステルポリオール(A2)は、例えば、イソシアヌル環を有するトリオールと、オルト配向性芳香族多価カルボン酸を含む多価カルボン酸と、多価アルコールとを反応させて得られる。イソシアヌル環を有するトリオールとしては、例えば、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシプロピル)イソシアヌル酸等のイソシアヌル酸のアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。オルト配向性芳香族多価カルボン酸、多価カルボン酸、多価アルコールはポリエステルポリオール(A1)と同様のものを用いることができる。
【0021】
イソシアヌル環を有するトリオール化合物としては1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸、または1,3,5-トリス(2-ヒドロキシプロピル)イソシアヌル酸を用いることが好ましい。オルト配向性芳香族多価カルボン酸としては、オルトフタル酸無水物を用いることが好ましい。多価アルコールとしては、エチレングリコールを用いることが好ましい。
【0022】
ポリエステルポリオール(A3)は、多価カルボン酸、多価アルコールとして重合性炭素-炭素二重結合をもつ成分を使用することにより得られる。
【0023】
重合性炭素-炭素二重結合をもつ多価カルボン酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸及びその酸無水物、3-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸及びその酸無水物等が挙げられる。炭素原子数が少ないほど分子鎖が過剰に柔軟にならずに酸素透過しにくいと推定されることから、無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸が好ましい。
重合性炭素-炭素二重結合をもつ多価アルコールとしては、2-ブテン-1,4-ジオール等があげられる。
【0024】
上記に加えて重合性炭素-炭素二重結合を有しない多価カルボン酸、多価アルコールを併用してもよい。このような多価カルボン酸、多価アルコールとしては、ポリエステルポリオール(A1)、(A2)と同様のものを用いることができる。多価カルボン酸はコハク酸、1,3-シクロペンタンジカルボン酸、オルトフタル酸、オルトフタル酸の酸無水物、イソフタル酸からなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましく、オルトフタル酸及びその酸無水物の少なくとも一種を用いることがより好ましい。多価アルコールはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノールからなる群から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましく、エチレングリコールを用いることがより好ましい。
【0025】
ポリエステルポリオール(A)の水酸基価は、1mgKOH/g以上350mgKOH/g以下であることが好ましい。ポリエステルポリオール(A)が酸基を有する場合、酸価は200mgKOH/g以下であることが好ましい。下限について特に制限はないが、一例として0.5mgKOH/g以上である。0mgKOH/gであってもよい。ポリエステルポリオール(A)の水酸基価はJIS-K0070に記載の水酸基価測定方法にて、酸価はJIS-K0070に記載の酸価測定法にて測定することができる。
【0026】
ポリエステルポリオール(A)の数平均分子量は400~5000であると基材との密着性やガスバリア性とのバランスに優れる程度の架橋密度が得られるため特に好ましい。より好ましくは数平均分子量が500~2500である。数平均分子量は得られた水酸基価と設計上の水酸基の官能基数から計算により求める。
【0027】
ポリエステルポリオール(A)のガラス転移温度は基材への密着性とガスバリア性とのバランスから10℃以上80℃以下であることが好ましく、20℃以上60℃以下であることがより好ましく、35℃以上60℃以下であることがさらに好ましい。
【0028】
ポリエステルポリオール(A)は、ポリエステルポリオール(A1)~(A3)をジイソシアネート化合物との反応によるウレタン伸長により数平均分子量1000~15000としたポリエステルポリウレタンポリオールであってもよい。ウレタン伸長したポリエステルポリオールには一定以上の分子量成分とウレタン結合とが存在するため、優れたガスバリア性を持つコーティング剤とすることができる。
【0029】
(イソシアネート化合物(B))
イソシアネート化合物(B)は複数のイソシアネート基を備える公知の化合物を特に制限なく用いることができる。このようなイソシアネート化合物(B)としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の分子構造内に芳香族構造を持つポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートのNCO基の一部をカルボジイミドで変性した化合物;
【0030】
イソホロンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3-(イソシアナートメチル)シクロヘキサン等の分子構造内に脂環式構造を持つポリイソシアネート;
【0031】
1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の直鎖状脂肪族ポリイソシアネート、これらのポリイソシアネートのNCO基の一部をカルボジイミドで変性した化合物;
【0032】
これらポリイソシアネートのイソシアヌレート体;これらポリイソシアネートのアロファネート体;これらポリイソシアネートのビゥレット体;これらのポリイソシアネートをトリメチロールプロパン変性したアダクト体;これらポリイソシアネートとポリオールとの反応生成物であるポリウレタンポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0033】
イソシアネート化合物(B)としてポリウレタンポリイソシアネートを用いる場合、コーティング剤塗膜の凝集力と柔軟性のバランスの点から、上述したポリイソシアネートとポリオールとを、イソシアネート基と水酸基との当量比[NCO]/[OH]が1.5~5.0となる割合で反応させて得られるものが好ましい。
【0034】
ポリウレタンポリイソシアネートの合成に用いるポリオールとしては、ポリエステルポリオール(A)の原料として例示した多価アルコールや、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を用いることができる。
【0035】
良好なガスバリア性が得られることから、イソシアネート化合物(B)は芳香環を有するイソシアネートまたはその誘導体(イソシアヌレート体、アロファネート体、ビゥレット体、アダクト体、ポリウレタンポリイソシアネート)(B1)を用いることが好ましい。イソシアネート化合物(B1)の具体例としては、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート由来の骨格を有するイソシアネート化合物等が挙げられる。
【0036】
良好なガスバリア性が得られることから、イソシアネート化合物(B)はポリエステルポリオール(A1)、(A2)、(A3)から選ばれる少なくとも一種と芳香環を有するイソシアネートまたはその誘導体(B1)とを、イソシアネート基と水酸基との当量比[NCO]/[OH]が1.5~5.0となる割合で反応させて得られるポリウレタンポリイソシアネート(B2)であることも好ましい。
【0037】
(有機溶剤(C))
本発明で使用するコーティング剤は、ポリエステルポリオール(A)を希釈(溶解)することが可能な有機溶剤(C)を含む。有機溶剤(C)としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、メチレンクロリド、エチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素類、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等が挙げられる。ポリオール組成物(I)またはポリイソシアネート組成物(II)の構成成分の製造時に反応媒体として使用された有機溶剤が、更に塗装時に希釈剤として使用される場合もある。エステル類およびケトン類の少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0038】
(乾燥助剤(D))
乾燥助剤(D)は、有機溶剤(C)の揮発を促進する機能を有する。乾燥助剤(D)としては、イソソルビド、イソマンニド、イソイジド、トリアセチン等が挙げられる。イソソルビドを用いることが好ましい。一般的にポリエステルポリオールと有機溶剤とを含む組成物からは有機溶剤が揮発し難い傾向にあるが、特に上述のポリエステルポリオール(A1)~(A3)を用いたコーティング剤はガスバリア性に優れた塗膜を形成できる反面、その優れたガスバリア性に起因して有機溶剤の揮発を妨げやすい傾向にある。乾燥助剤(D)を含むことにより、乾燥工程において有機溶剤(C)が揮発しやすくなり、ガスバリアコーティング剤が乾燥性に優れ、その硬化塗膜中に有機溶剤(C)が残留し難くなる。
【0039】
また、乾燥助剤(D)は水酸基を有することが好ましい。これにより、イソシアネート化合物(B)と反応して硬化塗膜に組み込まれるため、官能基を持たない添加剤と異なり時間の経過とともにガスバリアコート層から他の層へ移行してしまうおそれがなく、ガスバリアコート層の物性に経時的に与える影響が小さい。なおここでいう乾燥工程とは、ポリオール組成物(I)とポリイソシアネート組成物(II)とを混合、基材に塗布した後、オーブンを通過させ、ガスバリアコーティング剤の塗布膜中に含まれる有機溶剤(C)を揮発させる工程をいう。
【0040】
また、乾燥助剤(D)が有する水酸基は、2級水酸基であることが好ましい。1級水酸基に比べてイソシアネート化合物(B)との反応性が低いため、乾燥工程に至る前にイソシアネート化合物(B)と反応してしまうことを効果的に抑制できる。
【0041】
有機溶剤(C)の残留を効果的に抑制する観点からは、乾燥助剤(D)の配合量はガスバリアコーティング剤の固形分総量の0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましい。ガスバリアコーティング剤の耐ブロッキング性の観点からは30質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0042】
(コーティング剤のその他の成分)
本発明で使用するコーティング剤は、上述の成分以外の成分を含んでいてもよい。これらの成分はポリオール組成物(I)またはポリイソシアネート組成物(II)のいずれかまたは両方に含まれていてもよいし、これらとは別に調整しておき、コーティング剤の塗工直前に混合して用いてもよい。以下では各成分について説明する。
【0043】
(ポリオール(E))
ポリオール組成物(I)はポリエステルポリオール(A)以外のポリオール(E)を含んでいてもよい。ポリオール(E)としては、ポリエステルポリオール、ポリエステルポリエーテルポリオール、ポリエステルポリウレタンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオール(A)の原料として例示した多価アルコール等が挙げられる。
【0044】
ポリエステル骨格を有するポリオールの合成に用いられる多価カルボン酸、多価アルコールとしてはポリエステルポリオール(A)の原料として例示したのと同様のものを用いることができる。ポリウレタン骨格を有するポリオールの合成に用いられるイソシアネート化合物としては、イソシアネート化合物(B)として例示したのと同様のものを用いることができる。ポリエーテルポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、脂肪族ポリオールとエチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、エチルグリシジルエーテル、プロピルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の種々の環状エーテル結合含有化合物との開環重合によって得られるものが挙げられる。
【0045】
ポリオール組成物(I)がポリオール(E)を含む場合、その配合量はポリエステルポリオール(A)とポリオール(E)の配合量の合計100質量部に対して30質量部以下であることが好ましく、20質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上であることがより好ましい。
【0046】
本発明で使用するコーティング剤は無機充填剤(F)を含んでいてもよい。無機充填剤としては、シリカ、アルミナ、アルミニウムフレーク、ガラスフレーク等が挙げられる。特に無機充填剤(F)として板状無機化合物を用いると、ガスバリア性、遮光性等が向上するため好ましい。板状無機化合物としては、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物等)、カオリナイト-蛇紋族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等、アンチゴライト、クリソタイル等)、パイロフィライト-タルク族(パイロフィライト、タルク、ケロライ等)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライト等)、雲母又はマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母等の雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等)、緑泥石族(クッケアイト、スドーアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト等)、ハイドロタルサイト、板状硫酸バリウム、ベーマイト、ポリリン酸アルミニウム等が挙げられる。これらの鉱物は天然粘土鉱物であっても合成粘土鉱物であってもよい。板状無機化合物は1種または2種以上を併用することができる。
【0047】
板状無機化合物は、層間に電荷を有するイオン性のものであってもよいし、電荷を持たない非イオン性のものであってもよい。層間の電荷の有無はコート層のガスバリア性に直接大きな影響を与えない。しかしながらイオン性の板状無機化合物や水に対して膨潤性を有する無機化合物は溶剤型コーティング剤への分散性が劣り、添加量を増加させるとコーティング剤と増粘したり、チキソ性となったりして塗工適性が低下するおそれがある。このため板状無機化合物層間電化を持たない非イオン性であることが好ましい。
【0048】
板状無機化合物の平均粒径は、特に制限されないが、一例として0.1μm以上であることが好ましく、1μm以上であることがより好ましい。0.1μmよりも小さいと、酸素分子の迂回経路が長くならず、ガスバリア性の向上が十分には期待できない。平均粒径の上限は特に制限されないが、粒径が大きすぎると塗工方法によっては塗工面にスジ等の欠陥が生じる場合がある。このため、一例として平均粒径は100μm以下であることが好ましく、20μm以下であることが好ましい。なお本明細書において板状無機化合物の平均粒径とは、板状無機化合物の粒度分布を光散乱式測定装置で測定した場合の出現頻度が最も高い粒径をいう。
【0049】
板状無機化合物のアスペクト比は酸素の迷路効果によるガスバリア性の向上のためには高い方が好ましい。具体的には3以上が好ましく、更に好ましくは10以上、最も好ましくは40以上である。アスペクト比の上限は、一例として500である。
【0050】
ガスバリア性と、有機溶剤(C)の乾燥性とのバランスの観点から、ポリオール組成物(I)とポリイソシアネート組成物(II)の固形分総量に占める無機充填剤(F)の割合が0.001~50質量%であることが好ましく、0.01~40質量%であることがより好ましい。
【0051】
(皮張防止剤(G))
本発明で使用するコーティング剤は、皮張防止剤(G)を含むことも好ましい。皮張防止剤(G)としては、有機溶剤(C)よりも高沸点で、ポリエステルポリオール(A)の溶解性が高い有機溶剤が用いられる。皮張防止剤(G)を含むことでコーティング剤の塗膜内部から有機溶剤(C)が揮発する前に、ガスバリアコート層表面が乾燥して有機溶剤(C)の揮発が妨げられるのを防止することができる。
【0052】
皮張防止剤(G)の具体例としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチルセロソルブ、酢酸プロピル、酢酸ブチル等が挙げられる。
【0053】
ガスバリア性と、有機溶剤(C)の乾燥性とのバランスの観点から、皮張防止剤(G)の配合量は、皮張防止剤(G)を除いたポリオール組成物(I)とポリイソシアネート組成物(II)の総量(有機溶剤(C)などの揮発性成分も含む)100質量部に対して0.1~10質量部とすることが好ましく、1~5質量部とすることが好ましい。
【0054】
(触媒(H))
本発明で使用するコーティング剤は必要に応じて触媒(H)を使用することにより硬化反応を促進することができる。触媒(H)としては、ポリオール組成物(I)とポリイソシアネート組成物(II)のウレタン化反応を促進するものであれば特に制限されず、金属系触媒、アミン系触媒、脂肪族環状アミド化合物、チタンキレート錯体等が例示される。
【0055】
金属系触媒としては、金属錯体系、無機金属系、有機金属系の触媒が挙げられる。金属錯体系の触媒としては、Fe(鉄)、Mn(マンガン)、Cu(銅)、Zr(ジルコニウム)、Th(トリウム)、Ti(チタン)、Al(アルミニウム)、Co(コバルト)からなる群より選ばれる金属のアセチルアセトナート塩、例えば鉄アセチルアセトネート、マンガンアセチルアセトネート、銅アセチルアセトネート、ジルコニアアセチルアセトネート等が例示される。毒性と触媒活性の点から、鉄アセチルアセトネート(Fe(acac)3)またはマンガンアセチルアセトネート(Mn(acac)2)が好ましい。
【0056】
無機金属系の触媒としては、Sn、Fe、Mn、Cu、Zr、Th、Ti、Al、Co等から選ばれるものが挙げられる。
【0057】
有機金属系触媒としては、オクチル酸亜鉛、ネオデカン酸亜鉛、ナフテン酸亜鉛等の有機亜鉛化合物、スタナスジアセテート、スタナスジオクトエート、スタナスジオレエート、スタナスジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジクロライド等の有機錫化合物、オクチル酸ニッケル、ナフテン酸ニッケル等の有機ニッケル化合物、オクチル酸コバルト、ナフテン酸コバルト等の有機コバルト化合物、オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマス、ナフテン酸ビスマス等の有機ビスマス化合物、テトライソプロピルオキシチタネート、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライド等のチタン系化合物等が挙げられる。
【0058】
アミン系触媒としては、トリエチレンジアミン、2-メチルトリエチレンジアミン、キヌクリジン、2-メチルキヌクリジン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチル-(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N,N’,N”,N”-ペンタメチルジプロピレントリアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルエタノールアミン、ジメチルイソプロパノールアミン、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N-ジメチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N-ジメチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)プロパンジアミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)アミン、ビス(ジメチルアミノプロピル)イソプロパノールアミン、3-キヌクリジノール、N,N,N’,N’-テトラメチルグアニジン、1,3,5-トリス(N,N-ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-S-トリアジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7、N-メチル-N’-(2-ジメチルアミノエチル)ピペラジン、N,N’-ジメチルピペラジン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、1-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-イソブチル-2-メチルイミダゾール、1-ジメチルアミノプロピルイミダゾール、N,N-ジメチルヘキサノールアミン、N-メチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)ピペラジン、1-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾール、1-(2-ヒドロキシプロピル)イミダゾール、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-メチルイミダゾール、1-(2-ヒドロキシプロピル)-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0059】
脂肪族環状アミド化合物は、例えば、δ-バレロラクタム、ε-カプロラクタム、ω-エナントールラクタム、η-カプリルラクタム、β-プロピオラクタム等が挙げられる。これらの中でもε-カプロラクタムが硬化促進により効果的である。
【0060】
チタンキレート錯体は、紫外線照射により触媒活性が高められる化合物であり、脂肪族又は芳香族ジケトンをリガンドとするチタンキレート錯体であることが硬化促進効果に優れる点から好ましい。又、本発明ではリガンドとして芳香族又は脂肪族ジケトンに加え、炭素原子数2~10のアルコールを持つものがより本発明の効果が顕著なものとなる点から好ましい。
【0061】
触媒(H)は単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。触媒(H)の配合量は、ポリオール組成物(I)とポリイソシアネート組成物(II)の固形分総量100質量部に対して0.001~3質量部とすることが好ましく、0.01~2質量部とすることがより好ましい。
【0062】
(カップリング剤(I))
本発明で使用するコーティング剤は、カップリング剤(I)を含んでいてもよい。カップリング剤(H)としては、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等のカップリング剤等が挙げられる。
【0063】
シランカップリング剤としては、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン;β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン;ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン;ヘキサメチルジシラザン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0064】
チタネート系カップリング剤としては、例えば、テトライソプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、ブチルチタネートダイマー、テトラステアリルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンラクテート、テトラオクチレングリコールチタネート、チタンラクテート、テトラステアロキシチタン等が挙げられる。
【0065】
アルミニウム系カップリング剤としては、例えば、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
【0066】
本発明で使用するコーティング剤はリン酸類(J)を含んでいてもよい。リン酸類(J)としては、リン酸、ピロリン酸、トリリン酸、メチルアシッドホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ジブチルホスフェート、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2-エチルヘキシル)ホスフェート、イソドデシルアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートアシッドホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸等が挙げられる。本発明で使用するコーティング剤がリン酸類(J)を含む場合、その配合量はコーティング剤の固形分全量の1ppm以上200ppm以下であることが好ましい。
【0067】
(その他の添加剤)
本発明で使用するコーティング剤は、上述した成分以外に、レベリング剤、ポリメチルメタクリレート系の有機微粒子、消泡剤、タレ性防止剤、湿潤分散剤、粘性調整剤、紫外線吸収剤、金属不活性化剤、過酸化物分解剤、難燃剤、補強剤、可塑剤、潤滑剤、表面調整剤、防錆剤、蛍光性増白剤、無機系熱線吸収剤、防炎剤、帯電防止剤、脱水剤、公知慣用の熱可塑性エラストマー、粘着付与剤、メラミン樹脂、反応性エラストマー等を含んでいてもよい。これらの添加剤の配合量は、本発明で使用するコーティング剤の希望を損なわない範囲で適宜調整される。
【0068】
(配合量)
ポリオール組成物(I)とポリイソシアネート組成物(II)とは、ポリイソシアネート組成物(II)中に含まれるイソシアネート基とポリオール組成物(I)中に含まれるヒドロキシル基とのモル比([NCO]/[OH])が0.3~6となるよう調整して用いることが好ましい。
【0069】
<紙基材>
本発明の積層体は、紙基材に、上記コーティング剤を塗布し、乾燥させてガスバリアコート層を形成して得られる。
紙としては、特に限定なく公知の紙基材を使用することができる。具体的には、木材パルプ等の製紙用天然繊維を用いて公知の抄紙機にて製造されるが、その抄紙条件は特に規定されるものではない。製紙用天然繊維としては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等の木材パルプ、マニラ麻パルプ、サイザル麻パルプ、亜麻パルプ等の非木材パルプ、およびそれらのパルプに化学変性を施したパルプ等が挙げられる。パルプの種類としては、硫酸塩蒸解法、酸性・中性・アルカリ性亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用することができる。また、市販の各種上質紙やコート紙、裏打ち紙、含浸紙、ボール紙や板紙などを用いることもできる。これらの紙に、アルミニウム等の金属、シリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層を積層した蒸着紙を基材として用いることもできる。
【0070】
上記紙基材は、目的に応じ紙の種類、厚み等を逐次選択する事ができる。例えばバーガーラップであれば米坪対応20グラム/m2程度、紙コップであれば米坪対応200~300グラム/m2、紙皿、紙スプーン、紙マドラー等であれば米坪対応50~500グラム/m2のカップ原紙等の食品用原紙が好ましい。
【0071】
(シール層)
また、本発明の積層体は、紙基材と、ヒートシール剤の乾燥塗膜であるヒートシール層と、上記ガスバリアコート層とを含む積層体であってもよい。ヒートシール剤は塗布、乾燥させてヒートシール層を形成する。ヒートシール剤の形成に用いられるヒートシール剤としては特に限定されず、ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂を有機溶剤に溶解したタイプ、水または水性の有機溶剤に溶解したタイプ、水または水性の有機溶剤中に分散させたエマルジョンタイプなど、いずれの形態のものであってもよい。
【0072】
また、本発明の積層体は、紙基材と、コールドシール剤の乾燥塗膜であるコールドシール層と、上記ガスバリアコート層とを含む積層体であってもよい。コールドシール層は、コールドシール剤を塗布、乾燥させて形成される。コールドシール剤の形成に用いられるコールドシール剤としては特に限定されず、コールドシール性を有する熱可塑性樹脂を有機溶剤に溶解したタイプ、水または水性の有機溶剤に溶解したタイプ、水または水性の有機溶剤中に分散させたエマルジョンタイプなど、いずれの形態のものであってもよい。
【0073】
本発明の積層体は、紙基材と、ヒートシールフィルムと、上記紙基材の上記ヒートシールフィルム側の面に配置された上記ガスバリアコート層と、上記ガスバリアコート層と上記ヒートシールフィルムとの間に配置された接着層とを含む積層体であってもよい。
ヒートシールフィルムとしては、特に限定されることなく汎用のオレフィン系ヒートシールフィルムを使用すればよい。具体的には、オレフィン樹脂からなり、熱によって溶融し相互に融着するヒートシール性を有するヒートシールフィルムが好ましい。例えば低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン等のポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン等のオレフィン樹脂からなるフィルムが挙げられる。ヒートシール層は、延伸ポリオレフィンフィルムと同様の方法で表面処理が施されていてもよい。
【0074】
ヒートシール層の膜厚は15μm以上500μm以下であることが好ましく、20μm以上250μm以下であることがより好ましく、30μm以上100μm以下であることがさらに好ましい。これにより、ヒートシール性樹脂層のヒートシール性を維持しつつ、本発明の積層体の加工適性や耐突き刺し性を向上させることができる。
【0075】
(その他の層)
本発明の積層体は、上述した構成に加えて、更に他の基材や層を含んでいてもよい。サステナブルの観点から本発明の積層体を使用する場合は、その目的やリサイクル方法等を考慮した構成とするのが好ましい。
【0076】
(印刷層)
本発明の積層体は印刷層を有していてもよい。印刷層は上記紙基材上に直接印刷された印刷層であってもよいし、後述のフィルム層を有する場合はフィルム層に印刷層が設けられていてもよい。印刷層は、リキッドインキ(グラビアインキ、フレキソインキ)、オフセットインキ、孔版インキ、インクジェットインク等、各種印刷インキにより、従来ポリマーフィルムや紙への印刷に用いられてきた一般的な印刷方法で形成される。またバイオマス認証されたインキも好ましく使用される。
本発明に使用する印刷層は、単層であってもよいし、複数の印刷層があってもよい。印刷層が複数ある場合は、各印刷層に使用するリキッド印刷インキは同一のものであっても良いし、同一の組成で着色剤のみが違うものであっても良いし、異なる組成であっても良い。
【0077】
(目止め層)
本発明の積層体は、使用するコーティング剤が有機溶剤を使用しているため、目止め剤は必須ではないが、紙基材の種類によっては目止め剤からなる目止め層を有していてもよい。目止め剤は特に限定なく、例えば(メタ)アクリル系、スチレン-ブタジエン系、酢酸ビニル系、塩素化ポリオレフィン等のポリマーの有機溶剤溶液、(メタ)アクリル系、酢酸ビニル系、塩化ビニリデン系等のポリマーのエマルジョン、SBR系、NBR系等のラテックス等をコーティング剤として塗工して使用することができる。
【0078】
(水蒸気バリア層)
本発明の積層体は、ガスバリア性の他水蒸気バリア性を付与する目的で水蒸気バリア層を設けていてもよい。水蒸気バリア性を付与する方法としては、バリア性を有するフィルムを積層する方法とバリア性コーティング剤を塗工して塗膜層を作成する方法が挙げられるが、バリア性コーティング剤を塗工した塗膜層を作成する方法が簡便であり好ましい。
水蒸気バリア性コーティング剤としては、ポリビニリデンクロライド(PVDC)等のポリマーを含有するコーティング剤、あるいはこれらポリマーに無機微粒子、例えばシリカ、アルミナ、アルミニウムフレーク、ガラスフレークや、含水ケイ酸塩(フィロケイ酸塩鉱物等)、カオリナイト-蛇紋族粘土鉱物(ハロイサイト、カオリナイト、エンデライト、ディッカイト、ナクライト等、アンチゴライト、クリソタイル等)、パイロフィライト-タルク族(パイロフィライト、タルク、ケロライ等)、スメクタイト族粘土鉱物(モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等)、バーミキュライト族粘土鉱物(バーミキュライト等)、雲母又はマイカ族粘土鉱物(白雲母、金雲母等の雲母、マーガライト、テトラシリリックマイカ、テニオライト等)、緑泥石族(クッケアイト、スドーアイト、クリノクロア、シャモサイト、ニマイト等)、ハイドロタルサイト、板状硫酸バリウム、ベーマイト、ポリリン酸アルミニウム等の板状無機化合物を含むコーティング剤や、
スチレン・ブタジエン系、スチレン・アクリル系、エチレン・酢酸ビニル系、ブタジエン・メチルメタクリレート系、酢酸ビニル・ブチルアクリレート系等の各種共重合体、無水マレイン酸共重合体、アクリル酸・メチルメタクリレート系共重合体等の合成接着剤に対し、平均粒子径5μm以上且つアスペクト比10以上のタルクを含有させたものや(特開2013-256013に記載)、水性アクリル系エマルジョン樹脂に対し及び炭素原子数20~50で融点が45~70℃のパラフィンワックスエマルジョンを含有した水性コーティング剤等(特開2011-219624に記載)が知られているが、本発明においては特に限定なく公知のバリア性コーティング剤を使用することができる。公知のバリア性コーティング剤としては、サンケミカル社製の「SunBar」シリーズ等やDIC株式会社製の「HYDBAR」シリーズや、特許5617831に記載されたポリエステル系のバリアコーティング剤を用いることができる。
【0079】
また、バリア層として、アルミニウム等の金属、シリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層を積層したフィルム、ポリビニルアルコールやエチレン・ビニルアルコール共重合体、塩化ビニリデン等のバリア性フィルムを使用してもよい。
【0080】
(機能性コート層)
本発明の積層体に、例えば、耐擦傷性付与材、耐油性付与材、耐水性付与材、耐熱性付与材、あるいは食品接触材(フードコンタクトマテリアル)等の機能性付与材を積層体の構成の一部に含有させることができる。このような機能性付与材は市販品を利用することができ、コーティング剤の形態で販売されていることが多い。コーティング剤として販売されているものは、例えば本発明の積層体の最外層にコーティングするだけでこれらの機能性を付与することができる。(以後このような機能性付与のコーティング剤を、機能性コート剤と称する場合がある。)
【0081】
(フィルム層)
また、本発明の積層体に、用途に応じたフィルムを積層させてよい。
例えば、食品包装用としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリブチレンサクシネート(PBS)フィルム等のポリエステルフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリエチレンフィルム(LLDPE:低密度ポリエチレンフィルム、HDPE:高密度ポリエチレンフィルム、MDOPE:一軸延伸ポリエチレンフィルム、BOPE:二軸延伸ポリエチレンフィルム)やポリプロピレンフィルム(CPP:無延伸ポリプロピレンフィルム、OPP:二軸延伸ポリプロピレンフィルム)、セロハンなどのセルロース系フィルム、エチレンビニルアルコール共重合体や、ポリビニルアルコールなどのガスバリア性を有する樹脂の片面または両面にオレフィン系のヒートシール性の樹脂層を設けたガスバリア性ヒートシールフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-ビニルアルコール共重合体フィルム等が挙げられる。
【0082】
基材として、保香性を有するフィルムを用いることも好ましい。このようなフィルムとしては、保香性を有する樹脂からなるフィルム、保香性を有する樹脂とオレフィン系樹脂とのポリマーアロイからなるフィルム、保香性を有する樹脂と他の樹脂とを押出積層、または共押出積層して得られるフィルム、他の樹脂からなるフィルム上に保香性を有する樹脂をコーティングして得られるフィルム、後述する金属または金属酸化物の蒸着層を有するフィルム等が挙げられる。保香性を有する樹脂としては、ポリエステル、環状ポリオレフィン、ポリ塩化ビニリデン、エチレンビニルアルコール共重合体等が挙げられる。他の樹脂としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリアミド、酸基等により変性されていてもよいポリオレフィン等が挙げられるがこれに限定されない。保香性を有するフィルムはヒートシール性を有していてもよい。保香性を有するフィルムにヒートシール性を付与する方法としては例えば、保香性を有する樹脂とヒートシール性を有する樹脂を押出積層または共押出積層する方法や、ヒートシール性を有する樹脂に保香性を有する樹脂をコーティングする方法等が挙げられる。保香性を有するフィルムは市販品を使用してもよく、一例として共同印刷社製のノンキャッチシリーズ、東洋紡社製のオリエステルシリーズ、ダイセル社製のセネシKOP、DIC社製のDIFAREN MPシリーズ等が挙げられる。
【0083】
また、バイオマス由来成分を含有する材料で形成された、バイオマスフィルムを用いることも好ましい。バイオマスフィルムは各社から販売されているほか、例えば、一般財団法人日本有機資源協会に記載のバイオマス認定商品一覧に挙げられるようなシートを使用することができる。
【0084】
具体的によく知られているバイオマスフィルムとしては、バイオマス由来のエチレングリコールを原料とするものが挙げられる。バイオマス由来のエチレングリコールは、バイオマスを原料として製造されたエタノール(バイオマスエタノール)を原料としたものである。例えば、バイオマスエタノールを、従来公知の方法により、エチレンオキサイドを経由してエチレングリコールを生成する方法等により、バイオマス由来のエチレングリコールを得ることができる。また、市販のバイオマスエチレングリコールを使用してもよく、例えば、インディアグライコール社から市販されているバイオマスエチレングリコールを好適に使用することができる。
【0085】
例えば、従来の石油系原料を使用したポリエチレンテレフタレートフィルムの代替として、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のジカルボン酸をジカルボン酸単位とするバイオマスポリエステル、バイオマスポリエチレンテレフタレート等を含有するフィルムが知られている。
【0086】
バイオマスポリエステルのジカルボン酸単位は、化石燃料由来のジカルボン酸を使用する。ジカルボン酸としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、およびそれらの誘導体を制限なく使用することができる。
また、上記のジオール成分とジカルボン酸成分に加えて、2官能のオキシカルボン酸や、架橋構造を形成するために3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸及び/又はその無水物並びに3官能以上のオキシカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の多官能化合物等の第3成分として共重合成分を加えた共重合ポリエステルであっても良い。
【0087】
また、例えば、従来の石油系原料を使用したポリオレフィン系フィルムの代替として、バイオマス由来のエチレングリコールを原料とするポリエチレン系樹脂を含有するバイオマスポリエチレン系フィルム、バイオマスポリエチレン-ポリプロピレン系フィルム等のバイオマスポリオレフィン系フィルムも知られている。
ポリエチレン系樹脂は、原料の一部に上記バイオマス由来のエチレングリコールを使用する以外は特に限定されず、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンとα-オレフィンとの共重合体(エチレン単位を90質量%以上含有するエチレン-α-オレフィン共重合体)などが挙げられ、これらを1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0088】
なお、エチレンとα-オレフィンとの共重合体を構成するα-オレフィンは特に限定されず、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン及び1-オクテンなどの炭素原子数4乃至8のα-オレフィンが挙げられる。低密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂及び直鎖状低密度ポリエチレン樹脂などの公知のポリエチレン樹脂を用いることができる。中でも、フィルム同士が擦れても、穴開きや破けなどの損傷を一段と生じにくくする観点から、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)(エチレンと1-ヘキセンとの共重合体、又はエチレンと1-オクテンとの共重合体)が好ましく、密度が0.910乃至0.925g/cm3である直鎖状低密度ポリエチレン樹脂がより好ましい。
【0089】
バイオマスフィルムとしては、ISO16620またはASTMD6866で規定されたバイオマスプラスチック度で区別されたバイオマス原料を使用したものも流通している。大気中では1012個に1個の割合で放射性炭素14Cが存在し、この割合は大気中の二酸化炭素でも変わらないので、この二酸化炭素を光合成で固定化した植物の中でも、この割合は変わらない。このため、植物由来樹脂の炭素には放射性炭素14Cが含まれる。これに対し、化石燃料由来樹脂の炭素には放射性炭素14Cがほとんど含まれない。そこで、加速器質量分析器で樹脂中の放射性炭素14Cの濃度を測定することにより、樹脂中の植物由来樹脂の含有割合、すなわちバイオマスプラスチック度を求めることができる。
【0090】
ISO16620またはASTM D6866で規定されたバイオマスプラスチック度が80%以上、好ましくは90%以上であるバイオマスプラスチックである植物由来の低密度ポリエチレンとしては、例えば、Braskem社製の商品名「SBC818」「SPB608」「SBF0323HC」「STN7006」「SEB853」「SPB681」等が挙げられ、これらを原料として使用したフィルムを好適に使用することができる。
【0091】
また、バイオマス原料であるデンプンや、ポリ乳酸を配合したフィルムやシートも知られている。これらは用途に応じて適宜選択し使用することができる。
【0092】
バイオマスフィルムは、複数のバイオマスフィルムを積層させた積層体であってもよいし、従来の石油系フィルムとバイオマスフィルムとの積層体であってもよい。またこれらのバイオマスフィルムは、未延伸フィルムでも延伸フィルムでもよく、その製法も限定されるものではない。
【0093】
リサイクルを考慮する場合は、上記フィルム中、いわゆるモノマテリアル素材と表現される、オレフィン系フィルムを適宜選択すればよい。
また、これらのフィルムが印刷層を有していてもよい。印刷層は、リキッドインキ(グラビアインキ、フレキソインキ)、オフセットインキ、孔版インキ、インクジェットインク等各種印刷インキにより、従来ポリマーフィルムや紙への印刷に用いられてきた一般的な印刷方法で形成される。またバイオマス認証されたインキも好ましく使用される。
本発明に使用する印刷層は、単層であってもよいし、複数の印刷層があってもよい。印刷層が複数ある場合は、各印刷層に使用するリキッド印刷インキは同一のものであっても良いし、同一の組成で着色剤のみが違うものであっても良いし、異なる組成であっても良い。
【0094】
フィルムは延伸処理を施されたものであってもよい。延伸処理方法としては、押出製膜法等で樹脂を溶融押出してシート状にした後、同時二軸延伸あるいは逐次二軸延伸を行うことが一版的である。また逐次二軸延伸の場合は、はじめに縦延伸処理を行い、次に横延伸を行うことが一般的である。具体的には、ロール間の速度差を利用した縦延伸とテンターを用いた横延伸を組み合わせる方法が多く用いられる。
【0095】
フィルム表面には、膜切れやはじき等の欠陥のない塗膜が形成されるように、必要に応じて火炎処理やコロナ放電処理等の各種表面処理を施してもよい。
【0096】
あるいは、アルミニウム等の金属、シリカやアルミナ等の金属酸化物の蒸着層を積層したフィルム、ポリビニルアルコールやエチレン・ビニルアルコール共重合体、塩化ビニリデン等のガスバリア層を含有するバリア性フィルムを併用してもよい。このようなフィルムを用いることで、水蒸気、酸素、アルコール、不活性ガス、揮発性有機物(香り)等に対するバリア性を備えた積層体とすることができる。
【0097】
上記フィルムは、後述の接着剤で本発明の紙基材の積層体と貼り合わせてもよいし、本発明の紙基材の積層体上に共押出法等の方法で積層させてもよい。
【0098】
(接着剤)
本発明の紙基材の積層体と他の基材を貼り合せる際に用いる接着剤としては、公知公用のウレタン系2液硬化型接着剤、1液硬化型接着剤、ホットメルト接着剤等を用いることができる。上述の積層体を、接着剤を用いて他の基材と貼り合わせる場合は、基材と接着層との間にガスバリアコート層が配置されるようにすることが好ましい。
【0099】
接着剤がガスバリア性に優れるものであると、積層体のガスバリア性をさらに優れたものとすることができるため好ましい。ガスバリア性に優れる接着剤の市販品としては、DIC社製のPASLIMシリーズ、三菱ガス化学社製のマクシーブ等が挙げられる。また、本発明で使用するコーティング剤に用いられるポリエステルポリオール(A1)~(A3)の少なくとも一種と、ポリイソシアネート化合物とを含む2液硬化型接着剤もガスバリア性接着剤として好適に用いることができる。
【0100】
(オーバーコート層)
本発明の積層体はオーバーコート層を有していてもよい。オーバーコート層は、印刷層上に、印刷層の保護を目的として設けられ、オーバーコート剤を塗布乾燥して得られる。オーバーコート層の形成には、従来公知のオーバーコート剤を好適に用いることができる。
【0101】
(蒸着層)
本発明の積層体は蒸着層を有していてもよい。蒸着層としては、アルミニウム等の金属や酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグシウム、酸化カルシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化ホウ素、酸化ハフニウム、酸化バリウム等の無機酸化物を含む蒸着層が挙げられる。酸素バリア性及び水蒸気バリア性という観点からは、アルミニウム蒸着層が好ましい。これらえの蒸着層は、紙基材の他、ヒートシール層やフィルム層を有する場合はこれらの層に設けることができ、また蒸着層を予め備えたフィルムや紙を使用してもよい。
【0102】
蒸着層の形成方法としては、従来公知の方法を採用でき、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法及びイオンプレーティング法等の物理気相成長法(Physical VaporDeposition法、PVD法)、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical VaporDeposition法、CVD法)等が挙げられる。
【0103】
蒸着膜の膜厚は、アルミニウム蒸着膜の場合には、1nm以上100nm以下であることが好ましく、15nm以上60nm以下であることがより好ましく、10nm以上40nm以下であることがさらに好ましい。珪素酸化物又は酸化アルミニウム蒸着膜の場合には、1nm以上140nm以下であることが好ましく、5nm以上30nm以下であることがより好ましく、5nm以上20nm以下であることがさらに好ましい。
【0104】
また、例えば、物理気相成長法と化学気相成長法の両者を併用して異種の無機酸化物の蒸着膜の2層以上からなる複合膜を形成して使用することもできる。蒸着チャンバーの真空度としては、酸素導入前においては、10-2~10-8mbar程度が好ましく、酸素導入後においては、10-1~10-6mbar程度が好ましい。なお、酸素導入量等は、蒸着機の大きさ等によって異なる。導入する酸素には、キャリヤーガスとしてアルゴンガス、ヘリウムガス、窒素ガス等の不活性ガスを支障のない範囲で使用してもよい。フィルムの搬送速度としては、10~800m/min程度、特に50~600m/min程度が好ましい。
【0105】
(具体的態様)
本発明の積層体の具体的態様の一例としては、例えば、次の構成が挙げられるが、本発明においてはこれらに限定されるものではない。
なお下記表記において「/」は隣接していることを示し、「シール層」は、ヒートシールフィルム層、ヒートシール剤の塗工層、コールドシール剤の塗工層等、シール性を示す層を全て含んだ表現である。
【0106】
紙/ガスバリアコート層
紙/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層
紙/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層
ガスバリアコート層/紙/水蒸気バリアコート層
紙/目止め層/ガスバリアコート層
紙/目止め層/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層
紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層
ガスバリアコート層/目止め層/紙/水蒸気バリアコート層
ガスバリアコート層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層
ガスバリアコート層/目止め層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層
【0107】
印刷層/紙/ガスバリアコート層
印刷層/紙/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層
印刷層/紙/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層
印刷層/ガスバリアコート層/紙/水蒸気バリアコート層
印刷層/紙/目止め層/ガスバリアコート層
印刷層/紙/目止め層/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層
印刷層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層
印刷層/ガスバリアコート層目止め層/紙/水蒸気バリアコート層
印刷層/ガスバリアコート層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層
印刷層/ガスバリアコート層/目止め層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層
水蒸気バリアコート層/印刷層/紙/ガスバリアコート層
水蒸気バリアコート層/印刷層/ガスバリアコート層/紙
水蒸気バリアコート層/印刷層/紙/目止め層/カスバリアコート層
水蒸気バリアコート層/印刷層/ガスバリアコート層/目止め層/紙
【0108】
機能性コート層/紙/ガスバリアコート層
機能性コート層/紙/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層
機能性コート層/紙/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層
機能性コート層/ガスバリアコート層/紙/水蒸気バリアコート層
機能性コート層/紙/目止め層/ガスバリアコート層
機能性コート層/紙/目止め層/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層
機能性コート層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層
機能性コート層/ガスバリアコート層/目止め層/紙/水蒸気バリアコート層
機能性コート層/ガスバリアコート層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層
機能性コート層/ガスバリアコート層/目止め層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層
【0109】
機能性コート層/印刷層/紙/ガスバリアコート層
機能性コート層/印刷層/紙/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層
機能性コート層/印刷層/紙/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層
機能性コート層/印刷層/ガスバリアコート層/紙/水蒸気バリアコート層
機能性コート層/印刷層/紙/目止め層/ガスバリアコート層
機能性コート層/印刷層/紙/目止め層/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層
機能性コート層/印刷層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層
機能性コート層/印刷層/ガスバリアコート層/目止め層/紙/水蒸気バリアコート層
機能性コート層/印刷層/ガスバリアコート層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層
機能性コート層/印刷層/ガスバリアコート層/目止め層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層
【0110】
機能性コート層/紙/ガスバリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/紙/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/紙/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/ガスバリアコート層/紙/水蒸気バリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/紙/目止め層/ガスバリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/紙/目止め層/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/ガスバリアコート層/目止め層/紙/水蒸気バリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/ガスバリアコート層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/ガスバリアコート層/目止め層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/印刷層/紙/ガスバリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/印刷層/紙/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/印刷層/紙/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/印刷層/ガスバリアコート層/紙/水蒸気バリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/印刷層/紙/目止め層/ガスバリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/印刷層/紙/目止め層/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/印刷層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/印刷層/ガスバリアコート層/目止め層/紙/水蒸気バリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/印刷層/ガスバリアコート層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/印刷層/ガスバリアコート層/目止め層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/機能性コート層
【0111】
紙/ガスバリアコート層/シール層
紙/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層/シール層
紙/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層/シール層
ガスバリアコート層/紙/水蒸気バリアコート層/シール層
紙/目止め層/ガスバリアコート層/シール層
紙/目止め層/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層/シール層
紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層/シール層
【0112】
ガスバリアコート層目止め層/紙/水蒸気バリアコート層/シール層
ガスバリアコート層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/シール層
ガスバリアコート層目止め層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/シール層
シール層/紙/ガスバリアコート層
シール層/紙/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層
シール層/紙/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層
シール層/ガスバリアコート層/紙/水蒸気バリアコート層
シール層/紙/目止め層/ガスバリアコート層
シール層/紙/目止め層/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層
シール層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層
シール層/ガスバリアコート層目止め層/紙/水蒸気バリアコート層
シール層/ガスバリアコート層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層
シール層/ガスバリアコート層目止め層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層
【0113】
印刷層/紙/ガスバリアコート層/シール層
印刷層/紙/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層/シール層
印刷層/紙/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層/シール層
印刷層/ガスバリアコート層/紙/水蒸気バリアコート層/シール層
印刷層/紙/目止め層/ガスバリアコート層/シール層
印刷層/紙/目止め層/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層/シール層
印刷層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層/シール層
印刷層/ガスバリアコート層目止め層/紙/水蒸気バリアコート層/シール層
印刷層/ガスバリアコート層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/シール層
印刷層/ガスバリアコート層目止め層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/シール層
水蒸気バリアコート層/印刷層/紙/ガスバリアコート層/シール層
水蒸気バリアコート層/印刷層/ガスバリアコート層/紙/水蒸気バリアコート層/シール層
水蒸気バリアコート層/印刷層/紙/目止め層/カスバリアコート層/シール層
水蒸気バリアコート層/印刷層/ガスバリアコート層/目止め層/紙/シール層
【0114】
機能性コート層/紙/ガスバリアコート層/シール層
機能性コート層/紙/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層/シール層
機能性コート層/紙/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層/シール層
機能性コート層/ガスバリアコート層/紙/水蒸気バリアコート層/シール層
機能性コート層/ガスバリアコート層/紙/シール層
機能性コート層/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層/紙/シール層
機能性コート層/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層/紙/シール層
機能性コート層/ガスバリアコート層/目止め層/紙/シール層
機能性コート層/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層/目止め層/紙/シール層
機能性コート層/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層/目止め層/紙/シール
機能性コート層/紙/目止め層/ガスバリアコート層/シール層
機能性コート層/紙/目止め層/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層/シール層
機能性コート層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層/シール層
機能性コート層/ガスバリアコート層/目止め層/紙/水蒸気バリアコート層/シール層
機能性コート層/ガスバリアコート層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/シール層
機能性コート層/ガスバリアコート層目止め層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/シール層
機能性コート層/印刷層/紙/ガスバリアコート層/シール層
機能性コート層/印刷層/紙/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層/シール層
機能性コート層/印刷層/紙/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層/シール層
機能性コート層/印刷層/ガスバリアコート層/紙/水蒸気バリアコート層/シール層
機能性コート層/印刷層/紙/目止め層/ガスバリアコート層/シール層
機能性コート層/印刷層/紙/目止め層/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層/シール層
機能性コート層/印刷層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層/シール層
機能性コート層/印刷層/ガスバリアコート層目止め層/紙/水蒸気バリアコート層/シール層
機能性コート層/印刷層/ガスバリアコート層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/シール層
機能性コート層/印刷層/ガスバリアコート層目止め層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/シール層
【0115】
上記の構成において好ましい具体的態様として、例えばラップ用途であれば、
機能性コート層/紙/ガスバリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/紙/水蒸気バリアコート層/ガスバリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/ガスバリアコート層/紙/水蒸気バリアコート層
機能性コート層/紙/目止め層/ガスバリアコート層/機能性コート層
機能性コート層/紙/目止め層/ガスバリアコート層/水蒸気バリアコート層/コート層
等が挙げられる。またこの層間に印刷層を含んでも良い。
【0116】
上記の構成において好ましい具体的態様として、シールを必要とする用途であれば、
機能性コート層/紙/目止め層/ガスバリアコート層/シール層
機能性コート層/ガスバリアコート層/目止め層/紙/水蒸気バリアコート層/シール層
機能性コート層/ガスバリアコート層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/シール層
機能性コート層/ガスバリアコート層目止め層/紙/目止め層/水蒸気バリアコート層/シール
シール層/ガスバリアコート層/目止め層/紙/水蒸気バリアコート層
等が挙げられる。またこの層間に印刷層を含んでも良い。
【0117】
上記の構成において好ましい具体的態様として、保香性を必要とする用途であれば、上記シール層を有する具体的態様のシール層として保香性を有するヒートシール層を用いればよく好ましい。保香性を有するヒートシール層は、前述の通り、保香性を有するフィルムにヒートシール性を付与したフィルムを使用することができる。保香性を有するフィルムは市販品として、共同印刷社製のノンキャッチシリーズ、東洋紡社製のオリエステルシリーズ、ダイセル社製のセネシKOP、DIC社製のDIFAREN MPシリーズ等が挙げられる。
【0118】
また上記構成において、「機能性コート層」に替えて「押し出しフィルム層」であってもよいし、「フィルム層/接着剤層」であってもよい。
【0119】
上記の構成において、印刷層を設ける場合は、ガスバリアコート層の表側基材とは反対側の面か、ガスバリアコート層と表側基材との間のいずれかに配置される。また、表側基材が有する蒸着層は、ガスバリアコート層側、ヒートシール層側のいずれ側に位置していてもよいが、ガスバリア性の観点からはガスバリアコート層側に位置していることが好ましい。
【0120】
(用途)
本発明の積層体は、様々な用途、例えば食品や医薬品、生活用品の包装材料や、蓋材、紙ストローや紙ナプキン、紙スプーン、紙皿、紙コップ等の紙製食器、防壁材、屋根材、太陽電池パネル材、電池用包装材、窓材、屋外フローリング材、照明保護材、自動車部材、看板、ステッカー等の屋外産業用途、射出成形同時加飾方法等に使用する加飾用シート、洗濯用液体洗剤、台所用液体洗剤、浴用液体洗剤、浴用液体石鹸、液体シャンプー、液体コンディショナー等包装材料等として、好適に使用することができる。
【0121】
<包装材>
本発明の積層体は、食品や医薬品などの保護を目的とする多層包装材料として使用することができる。多層包装材料として使用する場合には、内容物や使用環境、使用形態に応じてその層構成は変化し得る。また、本発明の包装体に易開封処理や再封性手段を適宜設けてあってもよい。
【0122】
本発明の包装材は、本発明の積層体を使用し、積層体のシーラントフィルムあるいはヒートシール層の面を対向して重ね合わせた後、その周辺端部をヒートシールして袋状にして得られる。製袋方法としては、本発明の積層体を折り曲げるか、あるいは重ねあわせてその内層の面(シーラントフィルムの面)を対向させ、その周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型、ガゼット型、その他のヒートシール型等の形態によりヒートシールする方法が挙げられる。本発明の包装材は内容物や使用環境、使用形態に応じて種々の形態をとり得る。自立性包装材(スタンディングパウチ)等も可能である。ヒートシールの方法としては、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0123】
本発明の包装材に、その開口部から内容物を充填した後、開口部をヒートシールして本発明の包装材を使用した製品が製造される。充填される内容物として、例えば食品としては、米菓、豆菓子、ナッツ類、ビスケット・クッキー、ウェハース菓子、マシュマロ、パイ、半生ケーキ、キャンディ、スナック菓子などの菓子類、パン、スナックめん、即席めん、乾めん、パスタ、無菌包装米飯、ぞうすい、おかゆ、包装もち、シリアルフーズなどのステープル類、漬物、煮豆、納豆、味噌、凍豆腐、豆腐、なめ茸、こんにゃく、山菜加工品、ジャム類、ピーナッツクリーム、サラダ類、冷凍野菜、ポテト加工品などの農産加工品、ハム類、ベーコン、ソーセージ類、チキン加工品、コンビーフ類などの畜産加工品、魚肉ハム・ソーセージ、水産練製品、かまぼこ、のり、佃煮、かつおぶし、塩辛、スモークサーモン、辛子明太子などの水産加工品、桃、みかん、パイナップル、りんご、洋ナシ、さくらんぼなどの果肉類、コーン、アスパラガス、マッシュルーム、玉ねぎ、人参、大根、じゃがいもなどの野菜類、ハンバーグ、ミートボール、水産フライ、ギョーザ、コロッケなどを代表とする冷凍惣菜、チルド惣菜などの調理済食品、バター、マーガリン、チーズ、クリーム、インスタントクリーミーパウダー、育児用調整粉乳などの乳製品、ペットフードなどの食品類が挙げられる。
【0124】
また非食品としては、タバコ、使い捨てカイロ、輸液パック等の医薬品、洗濯用液体洗剤、台所用液体洗剤、浴用液体洗剤、浴用液体石鹸、液体シャンプー、液体コンディショナー、化粧水や乳液等の化粧品、真空断熱材、電池等、様々な包装材料としても使用され得る。
【実施例】
【0125】
以下、実施例と比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。配合組成その他の数値は特記しない限り質量基準である。
【0126】
<ポリエステルポリオール(A)の合成>
(合成例1)ポリエステルポリオール(A-1)の合成
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、エチレングリコール1.30部、グリセリン27.00部、無水フタル酸42.00部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を190℃に保持した。酸価が40mgKOH/gになったところで無水フタル酸6.00部を追添し、酸価が70mgKOH/gになったところでエステル化反応を終了した。数平均分子量890のポリエステルポリオール(A-1)を得た。水酸基価は169mgKOH/gであった。
【0127】
(合成例2)ポリエステルポリオール(A-2)の合成
攪拌機、窒素ガス導入管、スナイダー管、コンデンサーを備えたポリエステル反応容器に、エチレングリコール5.00部、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸62.00部、無水フタル酸35.00部を仕込み、精留管上部温度が100℃を超えないように徐々に加熱して内温を220℃に保持した。酸価が3mgKOH/gになったところでエステル化反応を終了し、数平均分子量1100のポリエステルポリオール(A-2)を得た。水酸基価は221mgKOH/gであった。
【0128】
<溶剤系ガスバリアコーティング剤の調製>
表1に示す配合で実施例、比較例の溶剤系ガスバリアコーティング剤を調整した。なお表中においてXDI-TMPアダクト体は、キシリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体、カオリンはBARRISURF HX(IMERYS社製、カオリン/非膨潤性、層間非イオン性、板状、平均粒径/1.5μm、アスペクト比/約100)である。空欄は未配合を表す。
【0129】
【0130】
<紙基材>
紙基材として、以下のものを用いた。
紙基材1:日本製紙(株)製、純白ロール紙、坪量40g/m2
紙基材2:日本製紙(株)製、白色グラシン紙、坪量40g/m2
【0131】
(実施例 比較例)
表2~表4に示す層構成で、実施例及び比較例の積層体を作成した。表2~表4において積層体の層構成は、紙基材を中心として、紙基材の(「↑表面」で示す)表面側に、印刷層と水蒸気バリア層とをこの順に有し、一方紙基材の(「↓裏面」で示す)裏面側に、目止め層とガスバリア層とヒートシール層とをこの順に有することを表す。
なお、実施例1~7、比較例1~6のそれぞれの欄に記載されているのは、各層を得る材料である。「-」は層を有しないことを示す。また各層は次のように形成した。
【0132】
(印刷層)
GPW-5004 804墨(DIC社製、紙用水性インキ)をグラビア塗工機にてグラビア版ヘリオ175線/inchの版を用いて印刷し、印刷層を形成した。
実施例1であれば、印刷層は紙基材1の表面に、実施例5であれば、印刷層はガスバリアコート層の上に形成されていることを示す。
【0133】
(水蒸気バリア層)
HYDBAR 99(DIC社製、水蒸気バリアコーティング剤)、あるいはSunBar BARV656(サンケミカル社製、水蒸気バリアコーティング剤)をバーコーターを用いて塗装し、80℃のオーブンで1分間乾燥させ、水蒸気バリア層を形成した。水蒸気バリアコーティング剤の乾燥後の塗布量は4.0g/m2であった。
実施例1であれば、水蒸気バリア層は印刷層の表面に、実施例6であれば、水蒸気バリア層はガスバリアコート層の上に形成されていることを示す。
【0134】
(目止め層)
ディックシール W-483(DIC社製、水性目止めコーティング剤)をバーコーターで塗装し、80℃のオーブンで1分間乾燥させて目止め層を形成した。目止めコーティング剤の乾燥後の塗布量は4.0g/m2であった。
実施例1であれば、目止め層は紙基材の裏面に、実施例5であれば、目止め層は紙基材の表面に形成されていることを示す。
【0135】
(ガスバリアコート層)
表1に記載のコーティング剤1~3のいずれか、あるいは市販のポリビニルアルコール樹脂系水性ガスバリアコーティング剤(PVA系水性コーティング剤P1)をバーコーターで塗装し、80℃のオーブンで1分間乾燥させた後に40℃/3日間かけて硬化させ、ガスバリアコート層を形成した。コーティング剤1~3の乾燥後の塗布量は3.0g/m2であった。水性コーティング剤P1の塗布量は1.0g/m2であった。
実施例1であれば、ガスバリアコート層は目止め層の上に、実施例7であれば、ガスバリアコート層は紙基材の表面に形成されていることを示す。
【0136】
(ヒートシール層)
ディックシールA-970NT(DIC(株)製、ヒートシール剤)をバーコーターで塗装し、80℃のオーブンで1分間乾燥させてヒートシール層を形成した。ヒートシール剤の乾燥後の塗布量は5.0g/m2であった。
実施例1であれば、ヒートシール層はガスバリアコート層の上に、実施例5であれば、ヒートシール層は紙基材の裏面に形成されていることを示す。
【0137】
<評価>
(酸素バリア性)
実施例、比較例の積層体を10cm×10cmのサイズに調整し、OX-TRAN2/22(モコン社製:酸素透過率測定装置)を用い、JIS-K7126(等圧法)に準じ、23℃20%RH及び23℃90%RHの雰囲気下で酸素透過率を測定し、結果を表2、3、4にまとめた(単位はcc/m2・day・atm)。なおRHとは、湿度を表す。
【0138】
(水蒸気バリア性)
JIS-Z0208に基づき、実施例、比較例の積層体を40℃90%RHの雰囲気下にてカップ法にて水蒸気透過率を測定し、結果を表2,3,4にまとめた(単位はg/m2・day)。
【0139】
評価結果を表2~表4に示す。
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
実施例、比較例から明らかなように、本発明の積層体は目止め層が無い場合及び高湿度条件下でも良好なガスバリア性を示した。一方、水性のガスバリアコーティング剤を用いた比較例2では高湿度下で著しくバリア性が劣化した。また、目止め層を有さずに水性のガスバリアコーティング剤を用いた比較例3では、全湿度領域で非常にガスバリア性に劣るものであった。
【要約】
紙基材と、上記紙基材上に配置されたガスバリアコート層とを含み、上記ガスバリアコート層が、オルト配向性芳香族多価カルボン酸を含む多価カルボン酸と、多価アルコールとを重縮合して得られるポリエステルポリオール(A1)、イソシアヌル環を有するポリエステルポリオール(A2)、重合性炭素-炭素二重結合を有するポリエステルポリオール(A3)から選ばれる少なくとも一種を含むポリエステルポリオール(A)と、イソシアネート化合物(B)と、有機溶剤(C)と、乾燥助剤(D)とを含む2液硬化型コーティング剤の硬化塗膜である積層体。