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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】機能性膜状体、およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 1/02 20060101AFI20240730BHJP
   C08L 3/02 20060101ALI20240730BHJP
   C08B 15/00 20060101ALI20240730BHJP
   C08B 31/00 20060101ALI20240730BHJP
   C08B 15/04 20060101ALI20240730BHJP
   C08B 31/02 20060101ALI20240730BHJP
   C08B 31/08 20060101ALI20240730BHJP
   C08J 3/03 20060101ALI20240730BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C08L1/02
C08L3/02
C08B15/00
C08B31/00
C08B15/04
C08B31/02
C08B31/08
C08J3/03
C08J5/18 CEP
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2020125657
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2021021063
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2019138191
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 電気通信回線による発表:掲載年月日:2020年4月7日 掲載アドレス:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0141391020300975?via%3Dihub https://doi.org/10.1016/j.polymdegradstab.2020.109165
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 電気通信回線による発表:掲載年月日:2020年3月23日 掲載アドレス:https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0144861720303775?via%3Dihub https://doi.org/10.1016/j.carbpol.2020.116203
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 電気通信回線による発表:掲載年月日:2020年3月5日 掲載アドレス:https://resou.osaka-u.ac.jp/ja/research/2020/20200305_01 https://resou.osaka-u.ac.jp/en/research/2020/20200305_01
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発表した刊行物:TECHNO NET NO.589,2020.7,pages 6-9 発行者名:一般社団法人大阪大学工業会 発行年月日:2020年7月19日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発表した刊行物:MATERIAL STAGE Vol.20,No.3 2020,pages 28-30 発行者名:株式会社技術情報協会 発行年月日:2020年6月10日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発表した刊行物:The 7th International Conference on Bio-Based Polymer、プログラム、第48頁 発行者名:THE PETROLEUM AND PETROCHEMICAL COLLEGE,Chulalongkorn University 発行年月日:2019年11月11日 電気通信回線による発表:掲載年月日:2019年11月11日 掲載アドレス:http://www.ppc.chula.ac.th/icbp2019/wp-content/uploads/2019/11/Raghav-Soni.pdf 発表した研究集会:The 7th International Conference on Bio-Based Polymer 開催日:2019年11月11日から2019年11月13日 発表日(発明を公開した日):2019年11月13日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 電気通信回線による発表:掲載年月日:2020年5月22日 掲載アドレス:http://jaci-gsc.com/9th_web/
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000231453
【氏名又は名称】日本食品化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100194515
【弁理士】
【氏名又は名称】南野 研人
(72)【発明者】
【氏名】宇山 浩
(72)【発明者】
【氏名】麻生 隆彬
(72)【発明者】
【氏名】徐 于懿
(72)【発明者】
【氏名】木村 亨
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-263850(JP,A)
【文献】国際公開第2013/042654(WO,A1)
【文献】特開2018-119220(JP,A)
【文献】特開平02-281050(JP,A)
【文献】特開2006-241601(JP,A)
【文献】特表平11-507111(JP,A)
【文献】特開2006-118114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C08B 1/00-37/18
C08J 3/00-3/28、5/00-5/02、
5/12-5/22、99/00
D21B 1/00-1/38
D21C 1/00-11/14
D21D 1/00-99/00
D21F 1/00-13/12
D21G 1/00-9/00
D21H 11/00-27/42
D21J 1/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノセルロース骨格と澱粉骨格とを含み、
前記ナノセルロース骨格と前記澱粉骨格との間に、ヘミアセタール構造を有し、
前記澱粉骨格が、糊化後、凝集した澱粉に由来する骨格であることを特徴とする機能性膜状体。
【請求項2】
前記ナノセルロース骨格が、セルロースナノファイバー骨格およびセルロースナノクリスタル骨格の一方である、請求項1に記載の機能性膜状体。
【請求項3】
前記ナノセルロース骨格が、酸化セルロースナノファイバー、リン酸エステル化セルロースナノファイバー、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー、物理解繊セルロースナノファイバー、酸変性セルロースナノファイバー、およびセルロースナノクリスタルからなる群から選択された少なくとも一つのナノセルロースに由来する骨格である、請求項1または2に記載の機能性膜状体。
【請求項4】
前記酸化セルロースナノファイバーが、TEMPO酸化セルロースナノファイバーである、請求項3に記載の機能性膜状体。
【請求項5】
前記酸化セルロースナノファイバーが、過ヨウ素酸酸化セルロースナノファイバーである、請求項3に記載の機能性膜状体。
【請求項6】
前記酸変性セルロースナノファイバーが、クエン酸変性セルロースナノファイバーおよびマレイン酸変性セルロースナノファイバーの少なくとも一方である、請求項3に記載の機能性膜状体。
【請求項7】
前記澱粉骨格が、加工澱粉に由来する骨格である、請求項1から6のいずれか一項に記載の機能性膜状体。
【請求項8】
前記澱粉骨格が、未加工澱粉に由来する骨格である、請求項1から6のいずれか一項に記載の機能性膜状体。
【請求項9】
前記澱粉骨格が、酸化処理澱粉、エステル化処理澱粉、エーテル化処理澱粉、および架橋処理澱粉からなる群から選択された少なくとも一つの修飾化澱粉に由来する骨格である、請求項1から7のいずれか一項に記載の機能性膜状体。
【請求項10】
前記ナノセルロース骨格および前記澱粉骨格において、
前記ナノセルロース骨格は、カルボニル基を有するナノセルロースに由来する骨格であり、前記澱粉骨格は、水酸基を有する澱粉に由来する骨格であるか、
前記ナノセルロース骨格は、水酸基を有するナノセルロースに由来する骨格であり、前記澱粉骨格は、カルボニル基を有する澱粉に由来する骨格である、
請求項1から9のいずれか一項に記載の機能性膜状体。
【請求項11】
前記澱粉骨格と前記ナノセルロース骨格との含有比率が、1:0.1~100である、請求項1から10のいずれか一項に記載の機能性膜状体。
【請求項12】
湿潤状態における引張弾性率が、乾燥状態における引張弾性率の1/10万倍~4/5倍である、請求項1から11のいずれか一項に記載の機能性膜状体。
【請求項13】
ノセルロース骨格の原料と澱粉骨格の原料とを含む混合液を、乾燥によって成膜し、
前記澱粉骨格が、糊化後、凝集した澱粉に由来する骨格であり、
前記ナノセルロース骨格と前記澱粉骨格との間に、ヘミアセタール構造を有することを特徴とする機能性膜状体の製造方法。
【請求項14】
前記ナノセルロース骨格の原料が、セルロースナノファイバーおよびセルロースナノクリスタルの一方である、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ナノセルロース骨格の原料が、酸化セルロースナノファイバー、リン酸エステル化セルロースナノファイバー、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー、物理解繊セルロースナノファイバー、酸変性セルロースナノファイバー、およびセルロースナノクリスタルからなる群から選択された少なくとも一つのナノセルロースである、請求項13または14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記酸化セルロースナノファイバーが、TEMPO酸化セルロースナノファイバーである、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記酸化セルロースナノファイバーが、過ヨウ素酸酸化セルロースナノファイバーである、請求項15に記載の製造方法。
【請求項18】
前記酸変性セルロースナノファイバーが、クエン酸変性セルロースナノファイバーおよびマレイン酸変性セルロースナノファイバーの少なくとも一方である、請求項15に記載の製造方法。
【請求項19】
前記澱粉骨格の原料が、加工澱粉である、請求項13から18のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
前記澱粉骨格が、未加工澱粉に由来する骨格である、請求項13から18のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項21】
前記澱粉骨格の原料が、酸化処理澱粉、エステル化処理澱粉、エーテル化処理澱粉、および架橋処理澱粉からなる群から選択された少なくとも一つの修飾化澱粉である、請求項13から19のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項22】
前記ナノセルロース骨格および前記澱粉骨格において、
前記ナノセルロース骨格は、カルボニル基を有するナノセルロースに由来する骨格であり、前記澱粉骨格は、水酸基を有する澱粉に由来する骨格であるか、
前記ナノセルロース骨格は、水酸基を有するナノセルロースに由来する骨格であり、前記澱粉骨格は、カルボニル基を有する澱粉に由来する骨格である、
請求項13から21のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項23】
前記澱粉骨格の原料と前記ナノセルロース骨格の原料との含有比率が、1:0.1~100である、請求項13から22のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項24】
前記澱粉骨格の原料を溶解した澱粉溶液と、前記ナノセルロース骨格の原料を分散したナノセルロース分散液とを混合して、前記混合液を調製する、請求項13から23のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項25】
前記澱粉溶液が、糊化した溶液である、請求項24に記載の製造方法。
【請求項26】
前記澱粉溶液が、糊化後、凝集した澱粉液である、請求項24記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性膜状体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品用の包装袋や包装膜等には、様々な原料から形成された膜状体が利用されている。このような膜状体は、通常、乾燥状態においてある程度の強度を示すように設定されている。前記原料としては、近年、セルロースナノファイバー等の利用も試みられている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-115047号公報
【文献】特開2011-202010号公報
【文献】特開平11-029683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、さらに用途を広げるためには、湿潤状態においても、ある程度の強度が維持できることが必要と考えられる。例えば、前述したセルロースナノファイバー等に関しても、本発明者らは、乾燥状態であれば強度を示すものの、水に濡れた状態では、強度が著しく低下することを見出した。そこで、本発明は、例えば、水に接触した場合であっても、強度をある程度維持することができる、強化された機能性膜状体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために、本発明の機能性膜状体は、ナノセルロース骨格と澱粉骨格とを含み、前記ナノセルロース骨格と前記澱粉骨格との間に、ヘミアセタール構造を有していることを特徴とする。
【0006】
本発明の機能性膜状体の製造方法は、ヘミアセタール構造を形成する、ナノセルロース骨格の原料と、澱粉骨格の原料とを含む混合液を、乾燥によって成膜することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、水に接触して湿潤した場合でも、強度の低下を防止できる。このため、本発明の機能性膜状体は、例えば、水に接触する可能性がある食品用の包装膜、包装袋等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1における膜のヘミアセタール構造の概要を示す概略図である。
図2図2は、実施例1における浸漬時間と膨潤重量%との関係を示すグラフである。
図3図3(A)は、実施例1における乾燥状態の膜の外観の写真であり、図3(B)は、乾燥状態の膜の光透過率を示すグラフである。
図4図4は、実施例1における乾燥状態の膜の表面および断面のSEM画像である。
図5図5(A)は、実施例1における湿潤状態の膜の外観の写真であり、図5(B)は、浸漬時間と膨潤重量%との関係を示すグラフである。
図6図6(A)は、実施例2における乾燥状態の膜の外観の写真であり、図6(B)は、乾燥状態の膜の光透過率を示すグラフである。
図7図7は、実施例2における乾燥状態の膜の表面および断面のSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<機能性膜状体>
本発明の機能性膜状体は、前述のように、ナノセルロース骨格と澱粉骨格とを含み、前記ナノセルロース骨格と前記澱粉骨格との間に、ヘミアセタール構造を有していることを特徴とする。以下、ナノセルロース骨格の原料を、「ナノセルロース原料」といい、澱粉骨格の原料を「澱粉原料」という。
【0010】
本発明において膜状体は、特に制限されず、例えば、いわゆるフィルム、シート、膜等があげられる。これらは、例えば、分野によっては、厚み、切り出しの有無、巻取の有無、支持体の有無等によって、呼称が変わる場合があるが、本発明においては、何ら制限されない。前記膜状体の厚みは、特に制限されず、例えば、用途に応じて決定できる。前記厚みの下限は、例えば、500nm、100nm、50nmであり、その上限は、例えば、10mm、5mm、2mm、1mm等である。
【0011】
本発明の機能性膜状体は、前記ナノセルロース骨格と前記澱粉骨格との間で、ヘミアセタール構造を有することが特徴であって、例えば、前記ナノセルロース骨格の由来となるナノセルロース原料および前記澱粉骨格の由来となる澱粉原料の種類等は、特に制限されない。すなわち、本発明の機能性膜状体は、例えば、両者の間で、ヘミアセタール構造を形成する官能基を有する前記ナノセルロース原料と前記澱粉原料とを使用することによって、製造できる。ヘミアセタール構造は、アルコール等の水酸基と、アルデヒド、ケトン等のカルボニル基とが反応して形成される構造である。前記両者の間でのヘミアセタール構造は、例えば、直接的な相互作用による形成でもよいし、架橋剤等による間接的な作用による形成でもよい。前記架橋剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、グリオキザール、グルタルアルデヒド等のアルデヒド類;等があげられる。
【0012】
前記ナノセルロース原料と前記澱粉原料との組み合わせは、特に制限されず、例えば、一方を水酸基を有する原料とし、他方をアルデヒド基(-CHO)等のカルボニル基(-C(=O)-)を有する原料とすることで、ヘミアセタール構造を形成できる。本発明の機能性膜状体の製造方法については、後述する。
【0013】
本発明の機能性膜状体において、含まれる前記ナノセルロース骨格の種類は、例えば、1種類以上でもよいし、2種類以上でもよい。前記ナノセルロース骨格は、例えば、セルロースナノファイバー(以下、CNFともいう)骨格でもよいし、セルロースナノクリスタル骨格でもよい。前記CNFは、いわゆる長繊維であり、機械的解繊等で製造でき、例えば、平均繊維長が1μm以上、好ましくは5μm以上であり、平均繊維幅が4~100nmである。前記セルロースナノクリスタルは、いわゆる短繊維の針状結晶であり、酸加水分解等で製造でき、例えば、平均繊維長が100~500μmであり、平均繊維幅が10~50nmである。
【0014】
前記ナノセルロース骨格は、例えば、前記CNFまたは前記セルロースナノクリスタルに由来する骨格であり、酸化等の修飾がされた骨格でもよい。前記ナノセルロース骨格は、具体例として、酸化CNF、リン酸エステル化CNF、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー、物理解繊CNF、酸変性CNF、およびセルロースナノクリスタルからなる群から選択された少なくとも一つのナノセルロースに由来する骨格である。前記酸化CNFは、例えば、過ヨウ素酸酸化CNF、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル)酸化CNF等があげられる。前記酸化CNFでは、例えば、次亜塩素酸、過ヨウ素酸、TEMPO等の酸化剤で酸化処理することにより、セルロース骨格のC6位の一級水酸基等の水酸基のアルデヒド基への酸化、セルロース骨格のC2-C3位間の酸化開裂によるアルデヒド基の生成等により、アルデヒド基等が生じる。前記酸変性CNFは、特に制限されず、例えば、クエン酸変性CNF、マレイン酸変性CNF等があげられる。修飾された前記修飾化ナノセルロースは、例えば、加工ナノセルロースともいう。
【0015】
本発明の機能性膜状体において、含まれる前記澱粉骨格の種類は、例えば、1種類以上でもよいし、2種類以上でもよい。後述する本発明の機能性膜状体の製造においては、結晶性が高い澱粉の溶解性(糊化性)を促進することで、均質な糊化液(分散液)を調製できる。また、本発明の機能性膜状体の製造においては、前記糊化液の再凝集(老化ともいう)を制御(例えば、抑制)して安定化できるよう、化学的に修飾された澱粉原料を使用することが好ましい。このことから、本発明の機能性膜状体に含まれる前記澱粉骨格の種類は、例えば、前記化学修飾された澱粉に由来する骨格があげられる。前記化学修飾された澱粉としては、例えば、酸化処理澱粉、エステル化処理澱粉、エーテル化処理澱粉、および架橋処理澱粉からなる群から選択された少なくとも一つの修飾化澱粉があげられ、前記澱粉骨格の種類は、例えば、これらの修飾化澱粉に由来する骨格である。前記修飾化澱粉は、例えば、加工澱粉ともいう。前記修飾化澱粉は、前述のような各種処理によって、例えば、ヒドロキシアルキル基、アシル基、カルボニル基(-C(=O)-)、カルボキシ基、アルデヒド基(-CHO)等の官能基が導入されてもよい。前記ヒドロキシアルキル基は、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基等があげられる。前記アシル基は、例えば、アセチル基等があげられる。前記修飾化澱粉のうち、例えば、前記酸化処理された澱粉は、次亜塩素酸、過ヨウ素酸、過酸化水素等の酸化剤で処理された澱粉であり、カルボニル基を有する。ただし、本発明の機能性膜状体に含まれる前記澱粉骨格の種類は、これに限定されず、未修飾澱粉(未加工澱粉)でもよい。前記未修飾澱粉は、例えば、前記修飾澱粉と比較して、糊化後に凝集(再凝集)しやすい。このため、前記未修飾澱粉は、例えば、凝集した澱粉由来の澱粉骨格を使用する場合に、好適に利用できる。また、前記未修飾澱粉は、例えば、前記修飾澱粉と比較して、製造コストが低く、また、相対的に高分子量である。このため、本発明の機能性膜状体は、例えば、前記未修飾澱粉を用いることにより、製造コストを低減でき、機能低下を抑制できる。
【0016】
本発明の機能性膜状体において、前記澱粉骨格は、例えば、α化澱粉に由来する骨格でもよい。前記α化澱粉は、例えば、50~160℃の温度で糊化した後、乾燥させた澱粉である。
【0017】
本発明の機能性膜状体において、前記澱粉骨格は、糊化後、凝集した澱粉に由来する骨格でもよい。本発明の機能性膜状体は、例えば、前記凝集した澱粉に由来する骨格を用いることにより光透過率の高いフィルムを作製でき、水に接触して湿潤した場合でも、強度の低下を防止できる。これは、糊化後、凝集した澱粉の粒子が、通常、10μm以下と小さく、フィラーとして機能するとともに、澱粉分子の再配列(再結晶化)によりフィルムを疎水化することによると推定される。前記凝集した澱粉に由来する骨格は、例えば、α化澱粉をβ化したβ化澱粉に由来する骨格ということもできる。前記β化澱粉は、例えば、前記澱粉を、50~160℃の温度で糊化した後、低温(0~50℃)で数時間~10日間インキュベートすることにより得られた澱粉である。
【0018】
本発明の機能性膜状体において、前記ナノセルロース骨格および前記澱粉骨格は、一方が、水酸基を有し、他方が、アルデヒド基等のカルボニル基を有することが好ましい。これにより、本発明の機能性膜状体は、例えば、前記ナノセルロース骨格の原料と前記澱粉骨格の原料とを混合し、乾燥させることにより、成膜できる。具体例として、前記ナノセルロース骨格および前記澱粉骨格において、前記ナノセルロース骨格は、例えば、カルボニル基を有するナノセルロースに由来する骨格であり、前記澱粉骨格は、水酸基を有する澱粉に由来する骨格である。また、前記ナノセルロース骨格および前記澱粉骨格において、前記ナノセルロース骨格は、例えば、水酸基を有するナノセルロースに由来する骨格であり、前記澱粉骨格は、カルボニル基を有する澱粉に由来する骨格である。
【0019】
本発明の機能性膜状体におけるヘミアセタール構造は、以下のようにして測定できる。なお、以下の方法は、対象物において、本発明の機能性膜状体におけるヘミアセタール構造を有するか否かを判断するための一例であり、本発明自体を何ら制限しない。
【0020】
本発明の機能性膜状体と、およびその製造に使用した原料(ナノセルロース原料および澱粉原料)とについて、アルデヒド基(-CHO)を定量する。そして、前記原料のアルデヒド基の量(A)と、前記機能性膜状体のアルデヒド基の量(A1)との差分(A-A)を求め、A>Aであることをもって、ヘミアセタール構造を有すると判断できる。また、差分のアルデヒド量は、ヘミアセタール構造の量と比例関係にあることから、前記差分より、ヘミアセタール構造の定量もできる。
【0021】
アルデヒドの定量は、2,4-ジニトロフェニルヒドラジン(DNPH)とアルデヒドとの反応によって測定できる。具体的には、10mg/LのDNPH溶液10mL(HO:EtOH=7:3)に、サンプルと酸触媒(HSO)とを加え、3時間、室温で反応させる。その後、遠心分離により、前記サンプルを除去し、上澄みの357nmまたは375nmにおける吸収を測定し、357nmまたは375nmの吸光度とアルデヒド基との検量線からアルデヒド基の量を定量する。
【0022】
本発明の機能性膜状体において、前記澱粉骨格(S)と前記ナノセルロース骨格(C)との含有比率(S:C)は、特に制限されない。前記含有比率を質量比率で表した場合、前記澱粉骨格(S)を相対値1として、前記ナノセルロース骨格の相対値の下限は、例えば、0.1以上、0.5以上であり、前記ナノセルロース骨格の相対値の上限は、例えば、100以下、10以下、5以下であり、前記相対値の範囲は、例えば、1:0.1~100、1:0.1~10、1:0.1~5、1:0.5~100、1:0.5~10、1:0.5~5である。前記澱粉原料(S)が未修飾の澱粉原料の場合、前記機能性膜状体の引張挙動を向上できることから、前記相対値の範囲は、好ましくは、1:0.6~1:1.5である。
【0023】
前記含有比率(S:C)は、例えば、以下のようにして測定することができる。すなわち、本発明の機能性膜状体を、αアミラーゼを用いて、70~80℃で2~3時間処理し、前記澱粉骨格を溶出させる。そして、溶出画分のグルコース質量を定量し、それを澱粉質量に換算する。一方、本発明の機能性膜状体の質量から、前記澱粉骨格の質量を差し引いた、不溶画分の質量が、前記ナノセルロース骨格の質量となる。
【0024】
本発明の機能性膜状体は、前述のように、例えば、湿潤(膨潤ともいう)状態においても強度に優れる。すなわち、本発明の機能性膜状体は、例えば、CNF等のナノセルロース骨格単独の場合と比較して、湿潤状態における機能低下が抑制されている。本発明の機能性膜状体は、例えば、湿潤状態における引張弾性率を、乾燥状態における引張弾性率の1/10万倍から4/5倍に維持することができ、好ましくは、1/10万倍を超え4/5倍以下、1/1万倍~4/5倍である。ここで、乾燥状態と湿潤状態の引張弾性率の比較に関して、「湿潤状態」とは、例えば、縦20mm×横5mm×厚み25μmの前記機能性膜状体を室温で2時間浸漬した状態とする。
【0025】
本発明の機能性膜状体について、引張弾性率を含む引張特性は、例えば、以下のように測定できる。すなわち、乾燥状態で縦20mm×横5mmに切り出した前記機能性膜状体を、乾燥状態または湿潤状態で、100Nのロードセルとユニバーサル試験機(EZグラフ、島津製作所)に供し、ひずみ速度は、0.5mm/secに設定する。
【0026】
本発明の機能性膜状体は、前述のように、耐水性に優れる。本発明の機能性膜状体の耐水性は、例えば、膨潤重量%で示すことができる。前記耐水性を示す膨潤重量%は、例えば、以下のように測定できる。なお、以下の方法は例示であり、本発明を制限するものではない。すなわち、乾燥状態で縦20mm×横5mmに切り出した前記機能性膜状体を、秤量した後、室温で水に浸漬する。浸漬後の前記機能性膜状体に付着した水を除去してから、さらに秤量する。そして、乾燥状態で秤量した重量と、湿潤状態で秤量した重量とを、下記式(1)に代入して求めることができる。2時間の浸漬による前記湿潤重量%は、その上限が、例えば、8000%以下、6000%以下、3000%以下であり、その下限が、例えば、10%以上である。
【0027】
【数1】
【0028】
本発明の機能性膜状体は、例えば、前記澱粉骨格の由来となる澱粉原料の粒子の残存率が低いことが好ましい。
【0029】
本発明の機能性膜状体の用途は、特に制限されず、例えば、強度および耐水性が求められる用途に適用できる。具体例としては、例えば、食品用袋、食品用包装材、産業用包装材、ブリスターパック等が例示できる。本発明の機能性膜状体は、前述のように、例えば、水との接触により湿潤した場合でも強度の低下が抑制できることから、レジ袋、等としての使用に適しているともいえる。本発明の機能性膜状体は、例えば、その用途に応じて、前述のような厚みに適宜設定してもよい。
【0030】
本発明の機能性膜状体は、例えば、前記ナノセルロース骨格と前記澱粉骨格の他に、さらに添加物を含んでもよい。前記添加物は、例えば、酸化防止剤、無機化合物、樹脂、架橋剤、着色剤、カーボン等があげられる。本発明の機能性膜状体において、前記添加物の割合は、特に制限されない。前記添加物の具体例等については、後述する本発明の製造方法における例示を援用できる。
【0031】
<製造方法>
本発明の機能性膜状体の製造方法は、前述のように、ヘミアセタール構造を形成する、ナノセルロース骨格の原料(ナノセルロース原料)と、澱粉骨格の原料(澱粉原料)とを含む混合液を、乾燥によって成膜することを特徴とする。本発明の製造方法は、前記本発明の機能性膜状体の説明を援用できる。
【0032】
本発明において、前記ナノセルロース原料および前記澱粉原料は、特に制限されず、両者間において、ヘミアセタール構造を形成するものであればよい。
【0033】
前記ナノセルロース原料は、例えば、前述したように、前記CNFまたは前記セルロースナノクリスタルであり、酸化等の修飾がされた骨格でもよい。前記ナノセルロース骨格は、具体例として、酸化CNF、リン酸エステル化CNF、カルボキシメチル化CNF、物理解繊CNF、酸変性CNF、およびセルロースナノクリスタルからなる群から選択された少なくとも一つのナノセルロースがあげられる。前記酸化CNFは、例えば、過ヨウ素酸酸化CNF、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルラジカル)酸化CNF等があげられる。前記酸変性CNFは、特に制限されず、例えば、クエン酸変性CNF、マレイン酸変性CNF等があげられる。本発明の製造方法により、透明性に優れた機能性膜状体を製造する場合には、例えば、前記ナノセルロース原料として、例えば、TEMPO酸化CNF等のTEMPO酸化ナノセルロース等を使用することが好ましい。前記ナノセルロース原料は、例えば、1種類を使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0034】
前記澱粉原料は、化学修飾されていない澱粉(未修飾澱粉)でもよいし、化学修飾された澱粉でもよい。前記澱粉原料は、例えば、化学修飾された澱粉が好ましい。具体的には、前記澱粉原料は、例えば、結晶性が高い澱粉の溶解性(糊化性)を促進することで、均質な糊化液(分散液)を調製でき、また、前記糊化液の再凝集(老化ともいう)を制御(例えば、抑制)して安定化できるよう、化学的に修飾された澱粉原料が好ましい。前記化学修飾された澱粉としては、例えば、酸化処理澱粉、エステル化処理澱粉、エーテル化処理澱粉、および架橋処理澱粉からなる群から選択された少なくとも一つの修飾化澱粉があげられる。前記修飾化澱粉において修飾により導入される官能基は、特に制限されず、例えば、前述したヒドロキシアルキル基、アシル基、カルボキシ基、アルデヒド基等があげられる。また、前記ナノセルロース原料がアルデヒド基を有する場合、前記澱粉原料としては、例えば、様々な修飾化澱粉(加工澱粉)が使用できる。前記澱粉原料として、例えば、未修飾澱粉(未加工澱粉)を使用してもよく、その場合、前記ナノセルロース原料は、例えば、酸化ナノセルロース(例えば、TEMPO酸化CNF)等の酸化処理された修飾化ナノセルロースまたはナノセルロース材料とヘミアセタール構造を形成可能な架橋剤とを組合せて使用する。本発明の製造方法により、透明性に優れた機能性膜状体を製造する場合には、例えば、前記澱粉原料として、例えば、エーテル化、エステル化等の化学修飾の度合いを高くした澱粉原料等を使用することが好ましい。前記澱粉原料は、例えば、1種類を使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0035】
本発明の製造方法においては、まず、ヘミアセタール構造を形成する前記ナノセルロース原料と前記澱粉原料とを含む混合液を準備する。前記混合液の溶媒は、特に制限されず、例えば、水、緩衝液、有機溶媒との混合水溶液等の水系溶媒があげられる。
【0036】
前記混合液において、前記ナノセルロース原料と前記澱粉原料との含有比率は、特に制限されず、例えば、各種原料の種類等に応じて適宜設定できる。前記含有比率を質量比率で表した場合、前記澱粉原料(S)を相対値1として、前記ナノセルロース原料の相対値の下限は、例えば、0.1以上、0.5以上であり、前記ナノセルロース原料の相対値の上限は、例えば、100以下、10以下、5以下であり、前記相対値の範囲は、例えば、1:0.1~100、1:0.1~10、1:0.1~5、1:0.5~100、1:0.5~10、1:0.5~5である。前記澱粉原料(S)が未修飾の澱粉原料の場合、前記機能性膜状体の引張挙動を向上できることから、前記相対値の範囲は、好ましくは、1:0.6~1:1.5である。前記混合液における前記ナノセルロース原料の濃度および前記澱粉原料の濃度は、それぞれ特に制限されない。前記ナノセルロース原料の濃度は、例えば、0.1~10w/v%、0.5~1w/v%、1~10w/v%であり、前記澱粉原料の濃度は、例えば、1~10w/v%、10~50w/v%、20~50w/v%である。前記混合液に含まれる前記ナノセルロース原料の種類は、例えば、1種類でもよいし、2種類以上でもよく、また、前記混合液に含まれる前記澱粉原料の種類は、例えば、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0037】
前記混合液は、例えば、前記ナノセルロース原料を前記水系溶媒に分散したナノセルロース分散液と、前記澱粉原料を前記水系溶媒に溶解した澱粉溶液とを、それぞれ準備し、混合してもよいし、前記ナノセルロース原料と前記澱粉原料とを前記水系溶媒に混合して調製してもよいし、前記澱粉溶液に前記ナノセルロース原料を混合して調製してもよいし、前記ナノセルロース分散液に前記澱粉原料を混合して調製してもよい。前者の場合、前記ナノセルロース分散液に使用する水系溶媒と、前記澱粉溶液に使用する水系溶媒とは、例えば、同じ種類でもよいし、異なる種類でもよい。
【0038】
前記ナノセルロース分散液における前記ナノセルロース原料の濃度は、特に制限されず、例えば、前記混合液におけるナノセルロース原料の濃度に応じて適宜決定できる。具体例として、前記ナノセルロース原料の濃度は、例えば、0.1~80w/v%、0.1~5w/v%である。前記ナノセルロース分散液のpHは、特に制限されず、例えば、微酸性から微アルカリの範囲であり、具体例として、pH4~10である。
【0039】
前記澱粉溶液における前記澱粉原料の濃度は、特に制限されず、例えば、前記混合液における澱粉原料の濃度に応じて適宜決定できる。具体例として、前記澱粉原料の濃度は、例えば、0.1~80w/v%、1~50w/v%、5~30w/v%である。前記澱粉溶液のpHは、特に制限されず、例えば、酸性からアルカリの範囲であり、具体例として、pH3~9である。
【0040】
前記澱粉溶液は、例えば、前記水系溶媒において前記澱粉原料が十分に糊化し、溶解した糊液であることが好ましい。前記糊液の調製方法は、特に制限されず、例えば、前記水系溶媒に前記澱粉原料を添加し、加熱条件下で撹拌することにより、調製できる。加熱条件は、特に制限されず、温度は、例えば、50~160℃である。また、前記澱粉溶液と前記ナノセルロース分散液とを混合する際、例えば、前記加熱条件で保温された前記澱粉溶液に前記ナノセルロース分散液を添加することが好ましい。前記澱粉溶液は、例えば、前記澱粉が再凝集した澱粉溶液でもよい。前記澱粉が再凝集した澱粉溶液は、例えば、前記溶解した糊液を0~50℃で、数時間~10日間インキュベートすることにより調製できる。
【0041】
本発明の製造方法においては、つぎに、前記混合液を乾燥によって成膜する。この工程を成膜工程という。前記成膜の方法は、特に制限されず、例えば、キャスト法、ロールtoロール等が利用できる。前記乾燥の条件は、特に制限されず、前記混合液中の水系溶媒を低減できればよく、中でも、加熱処理を施すことが好ましい。加熱処理の温度条件は、例えば、20~100℃であり、加熱処理の時間は、例えば、加熱温度、処理対象の体積(表面積および厚み等)等に応じて適宜設定でき、具体例としては、例えば、1~5時間である。
【0042】
本発明の製造方法においては、前記混合液が、さらに添加物を含んでもよい。前記添加物は、例えば、前記水系溶媒に対して、分散または溶解できるものが好ましい。前記添加物の含有割合は、特に制限されず、その種類等に応じて適宜設定できる。前記添加物としては、例えば、前述と同様に、酸化防止剤、無機化合物、着色剤等があげられる。前記酸化防止剤としては、例えば、クエン酸等があげられる。前記無機化合物としては、例えば、シリカ、顔料等の無機フィラー、ZIF-8等のMOF等があげられる。前記着色剤は、例えば、前記機能性膜状体を着色する場合に使用すればよく、例えば、有機色素等があげられる。
【0043】
本発明の製造方法において、前記混合液は、例えば、さらに樹脂を含んでもよい。また、本発明の製造方法は、前記成膜工程において、例えば、さらに樹脂の架橋反応を行い、前記成膜中で樹脂を架橋させてもよい。この場合、前記混合液は、例えば、さらに、樹脂、架橋剤等を含んでもよい。前記樹脂は、例えば、水溶性エポキシ樹脂、水溶性高分子、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール等があげられる。前記架橋剤は、例えば、樹脂の種類に応じて適宜選択できる。
【実施例
【0044】
以下、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、以下の実施例には限定されない。
【0045】
[実施例1]
三種類の修飾澱粉と、TEMPO酸化CNF(以下、TCNFという)とを用いて、機能性膜状体を製造し、その機能を確認した。
【0046】
(1)TCNF分散液の調製
未修飾CNFをTEMPO酸化した。TEMPO酸化は、論文(Isogai, A.; Saito, T.; Fukuzumi H. Nanoscale 2011, 3, 71-85. )に準じて行った。すなわち、未修飾のセルロース粉末(ナカライテスク社)4.0g、(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシダニル(TEMPO、TCIケミカルズ社)0.075g、およびNaBr粉末(シグマ アルドリッチ社)0.75gを、300mLの水(Mili-Q水、以下同様)に添加し、室温で1時間、スターラを用いた撹拌により、分散させた。得られた懸濁液のpHは、自動滴定装置(Auto Titrator com -1600、平沼産業株式会社)により、pH10.5であることが確認された。前記懸濁液のpHが10.5を超えないように確認しながら、一次酸化剤として次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を添加して、反応を開始させた。NaClOの添加総量は、18mLであった。そして、前記懸濁液の色が、黄色から白色に変色し、pHが安定した段階で、反応を終了とした。前記懸濁液を遠心分離して、上清を除去し、沈殿(パルプ)を水に分散して、さらに遠心分離を行った。このような水への分散と遠心分離を、前記沈澱中の残留物が完全に洗い流されるまで、5回繰り返し行った。そして、遠心分離により回収した沈澱、すなわちセルロースパルプを、ブレンダーを用いて15分間、機械的に処理し、セルロースを、個々のナノフィブリル(TCNF)として分散させた。これによって、前記セルロースパルプは、前記機械的処理によって、透明なゾル様の分散液に変換された。さらに、前記分散液に水を添加して、前記TCNFの濃度を0.8%(W/V)となるように調整し、これをゲル状のTCNF分散液とした。前記分散液を使用時まで冷蔵庫で保存した。
【0047】
(2)修飾澱粉溶解液の調製
修飾澱粉粉末として、ヒドロキシプロピル澱粉(以下、HPSという)(DS:0.11、日本食品化工社)、アセチル澱粉(以下、ASという)(DS:0.08、日本食品化工社)、およびアセチル酸化澱粉(以下、AOSという)(DS:0.04、日本食品化工社)を使用した。前記修飾澱粉粉末5.0gを、水100mLに添加し、85℃で1時間、スターラを用いた撹拌により、均一な修飾澱粉溶液を調製した。前記溶液は、使用時まで冷蔵庫で保存した。
【0048】
(3)成膜
前記修飾澱粉溶液(5%(w/v))と前記TCNF分散液(0.8%(w/v))とを、前記修飾澱粉と前記TCNFとの重量比(S:C)が1:1.5となるように混合し、均質になるまで撹拌混合した。前記修飾澱粉と前記TCNFとを含む混合液10mLを、直径10cmのポリプロピレン製ペトリ皿にキャストし、45℃に設定したオーブンで6時間、乾燥処理を行った。乾燥処理によって、前記ペトリ皿に乾燥状態の膜が形成された。前記膜から、所定の大きさを切り出し、これをサンプルとして、以下の試験に供した。なお、以下、TCNFとHPSとを用いた膜を、「TCNF/HPS」といい、TCNFとASとを用いた膜を、「TCNF/AS」といい、TCNFとAOSとを用いた膜を、「TCNF/AOS」という。また、比較例として、前記修飾澱粉溶液を使用しない以外は、同様にして成膜を行い、TCNFのみの膜を形成した。この膜を「TCNF」という。各サンプルの平均厚みは、いずれも約25μm程度であった。
【0049】
(4)機能等の解析
前記4種類の膜から切り出したサンプルを用いて、以下の解析を行った。解析は、各サンプルについて、特に示さない限り3回行い、3連解析の平均および標準偏差を求めた。
【0050】
(4-1)SEM(走査型電子顕微鏡)分析
前記サンプルの表面を、走査型電子顕微鏡(日立SU3500、日立製作所)を使用し、加速電圧15kV、作動距離10mmの条件で確認した。このSEM検査前に、真空スパッタリング装置を用いて、前記サンプルの表面を、白金-パラジウム(厚さ5nm)でスパッタコートした。
【0051】
(4-2)紫外可視分光法
前記サンプルについて、UV分光計(Hitachi U-2810、日立製作所)を用いて、波長範囲200~800nmのUV-visスペクトルを集め、各波長の透過率(%)を算出した。前記サンプルは、前述のように、厚み25μmで自立できる膜であり、ブランクの媒質は、実験を通して空気とした。
【0052】
(4-3)乾燥状態での引張試験
前記4種類の膜から、縦20mm×横5mmの大きさのサンプル5枚(n=5)をそれぞれ切り出した。各サンプルについて、引張試験前に、マイクロメーターにより厚みを測定した。サンプル1枚あたり、異なる4箇所で測定を行い、その平均値をサンプルの平均厚みとした。そして、各サンプルについて引張試験を行い、引張弾性率(tensile modulus、ヤング率、GPa)、引張強度(Tensile strength、Pa)、ひずみ(Strain、%)を求めた。前記引張試験は、100Nのロードセルとユニバーサル試験機(EZグラフ、島津製作所)を用い、ひずみ速度は、0.5mm/secに設定して行った。
【0053】
(4-4)膨張試験
水吸収能に関する膨張試験を行った。すなわち、前記4種類の膜からサンプル(乾燥状態)を切り出し秤量した。つぎに、前記サンプルを、所定時間、室温(25℃)で、水に浸漬させた。そして、浸漬により湿潤したサンプルを、ピンセットを用いてゆっくりと取出し、前記サンプルに付着した過剰の水をティッシュペーパーで除去してから秤量した。膨潤重量%を、前記式1に基づいて算出した。前記4種類の膜について、それぞれ3つのサンプルの平均を求めた。
【0054】
(4-5)湿潤状態での引張試験
前記4種類の膜から、縦20mm×横5mmの大きさのサンプルそれぞれ切り出し、室温(25℃)で、水に2時間浸漬した。そして、浸漬により湿潤したサンプルについて、引張試験前に、マイクロメーターにより厚みを測定した。サンプル1枚あたり、異なる4箇所で測定を行い、その平均値をサンプルの平均厚みとした。そして、各サンプルについて、引張試験を行った。前記引張試験は、前記(4-3)と同様とした。
【0055】
(4-6)アルデヒドの選択的還元
前記(1)で調製したゲル状のTCNF分散液20gを、40mLの水に懸濁し、撹拌して均質な希釈分散液を得た。この希釈分散液に、アルデヒドの選択的還元のために、水素化ホウ素ナトリウム1.0gを添加し、pH約8となるように、希釈した水酸化アンモニウムを添加して調整した。pHを調整したスラリーを24時間撹拌し、続いて、水を用いてろ過洗浄した。これによって、還元TCNF(R-TCNFともいう)を形成した。そして、前記R-TCNFと前記HPSとを使用した以外は、同様にして成膜を行い、R-TCNF/HPS膜を形成した。
【0056】
(5)結果
(5-1)基本的な物性
各膜について、膨潤重量%、湿潤状態での引張弾性率(tensile modulus)を下記表1に示す。なお、前記TCNF単独のTCNF膜は、水への浸漬によって、後述する図5(A)に示すように、表面がボロボロになり、フラグメント化し、崩壊した。前記TCNF膜は、このように崩壊したが、そのまま測定に使用し、各種物性を測定した。また、下記表1の測定結果は、崩壊を表す結果となった。
【0057】
【表1】
【0058】
各膜について、乾燥状態での引張弾性率(tensile modulus)、乾燥状態での引張強度(Tensile strength)、ひずみ(Strain)、光透過率を下記表2に示す。
【0059】
【表2】
【0060】
前記TCNFと前記修飾澱粉とを複合させた各膜は、以下のように、ヘミアセタール構造が形成された。具体的に、図1を用いて説明する。まず、TCNFは、図1(A)に示すように、セルロースナノファイバーに対するTEMPO酸化により、カルボン酸ナトリウムおよびアルデヒドが導入され、そのようなTCNFのみを用いて成膜を行うと、乾燥によって、前記アルデヒド部分が、共有結合を形成する。これに対して、前記TCNFと前記各種修飾澱粉とを用いて成膜を行うと、図1(B)に示すように、前記TCNFと前記修飾澱粉との間で、ヘミアセタール結合が起こり、ヘミアセタール構造が形成される。
【0061】
(5-2)配合最適化
前記(1)で調製したTCNFと、前記(2)で調製した修飾澱粉との混合割合を変化させた以外は、前記(3)と同様に成膜を行い、それぞれについて、前記(4)に示すように、水への浸漬後、膨張試験および引張試験を行った。前記修飾澱粉は、HPSを使用した。これらの結果を下記表3および図2に示す。下記表3において、膨潤重量%は、水に2時間浸漬した結果を示す。図2は、浸漬時間(0、10、20、40、60、120分)と膨潤重量%との関係を示すグラフである。
【0062】
【表3】
【0063】
前記表3および図2に示すように、TCNFの割合が高いT-6群(TCNF:HPS=6:1)の膜が、最も高い膨潤重量%を示した。また、T-1.5群のTCNF:HPS=1.5:1が最適割合であり、この割合を超えると、前記表3および図2に示すように、水の吸収が、T-1.5群よりも増加した。前記表3に示すように、膨潤重量%の増加に伴って、湿潤状態の引張弾性率は、減少した。そして、TCNF:HPS=1.5:1のT-1.5群の膜が、その引張弾性率から、十分な機械的強度を示し、且つ、最小の膨潤であることが確認できた。そこで、前述した各種解析については、TCNF:修飾澱粉=1.5:1の条件で成膜した膜を使用した。
【0064】
(5-3)光透過性
膜状体を食品包装に使用する場合、透明性は重要視される性質である。そこで、前記膜について、視覚的な観察と、前記(4-2)の紫外可視分光法による分析を行った。図3(A)に、各膜の写真を示す。視覚的な観察は、大阪大学の紋章が示された紙の上に、前記膜状体をかざし、紋章が確認できるか否かによって確認した。図3(B)は、各波長における透過率(Transmittance、%)を示し、前記表2に、650nmの透過率を示す。
【0065】
図3(A)に示すように、TCNFと修飾澱粉とを複合した膜は、いずれも、TCNF膜と同様に、大阪大学の紋章が視認でき、視覚的に高い光透過性を示すことがわかった。また、図3(B)に示すように、いずれの膜も、380nm~740nmの波長にわたって、75~88%の高い透過率を示した。また、図3(B)および前記表2に示すように、TCNF膜は、650nmで87.2%の光透過率を示したのに対して、修飾澱粉を添加した膜は、光透過率はわずかに低下したものの、TCNF/HPS膜およびTCNF/AS膜は、650nmでそれぞれ86%および85.8%の透過率を示し、TCNF/AOS膜も、650nmで84.6%の光透過率を維持できた。
【0066】
(5-4)表面形態
SEMによる膜の表面形態の結果を図4に示す。図4は、各膜のSEM画像である。図4の各図A~Dにおいて、右上の枠内が、断面の画像(C.S.)である。図4に示すように、TCNF膜(A)は、滑らかな表面を有し、修飾澱粉を含まないことから、断面において、修飾澱粉の顆粒は確認されなかった。TCNF/HPS膜(B)は、前記TCNF膜と同様に、滑らかな表面を有し、断面においても、修飾澱粉の顆粒は確認されなかった。TCNF/AS膜(C)およびTCNF/AOS膜(D)は、いずれも滑らかな表面であったが、断面において、修飾澱粉の顆粒の凝集体が確認された。
【0067】
また、TCNF膜(A)の断面においては、セルロース繊維が層になって密に配列していることが確認された。一方、修飾澱粉と複合させた各種膜(B、C、D)は、いずれもセルロース繊維の層構造は確認されず、TCNFと修飾澱粉とが均一にブレンドされた膜状体であることが確認できた。
【0068】
(5-5)乾燥状態での引張試験
各膜の引張挙動を前記表2に示す。前記表2に示すように、TCNF膜は、引張弾性率(tensile modulus、ヤング率、GPa)が6.4GPaであり、これは、以前に論文(Isogai et al. ,2011、 Nanoscale, 2011, 3, 71)で報告された値と類似していた。そして、TCNFと修飾澱粉とを複合させたTCNF/HPS膜、TCNF/AS膜、およびTCNF/AOS膜は、前記修飾澱粉の添加によって、引張弾性率が、それぞれ7.0GPa、6.7GPa、および8.0GPaに増加した。このように、TCNFと修飾澱粉との複合によって、引張弾性率を向上できることがわかった。
【0069】
(5-6)膨潤試験
膜状体の耐水性に関しては、水吸収能が関与する。そこで、各膜のサンプルを水に2時間浸漬させた後、視覚的な観察と、膨潤重量%の測定を行った。図5(A)に、湿潤状態のサンプルの写真を示す。また、図5(B)は、浸漬時間と膨潤重量%との関係を示すグラフである。また、湿潤状態のサンプルの膨潤に関する情報は、前記表1を参照する。
【0070】
図5(B)に示すように、TCNF膜を湿潤させた場合、2時間の浸漬で、約6500%の最高膨潤重量%を示した。これは、前記TCNF単独のTCNF膜が、水への浸漬によって、表面がボロボロになり、フラグメント化し、崩壊したことを意味する。これは、図5(A)の画像からも明らかである。これに対して、TCNFと修飾澱粉とを複合させた膜は、いずれも浸漬による膨潤の程度を減少できた。具体的には、TCNF/AOS膜、およびTCNF/AS膜は、2時間の浸漬による膨潤重量%が、約2300%、および約1000%に減少でき、TCNF/HPS膜は、2時間の浸漬による膨潤重量が、さらに約600%にまで減少できた。つまり、TCNFと修飾澱粉との複合によって、膨潤を減少できることがわかった。また、図5(A)に示すように、ピンセットで膜を挟んだ状態において、TCNF膜は、大きく膨潤し、厚みが増加したゲル状の固体となっているため、ハンドリングがしにくい状態となっているのに対して、他の複合体の膜は、膨潤が抑制され、中でも、TCNF/HPSは、フィルム状に維持され、ハンドリングが容易な状態が保たれた。
【0071】
(5-7)湿潤状態における引張試験
各膜を2時間浸漬した後の湿潤状態の引張挙動を前記表1に示す。TCNF膜の引張弾性率は、0.05MPaと最も低い値を示し、水への浸漬によって、強度が低下した。これに対して、TCNFと修飾澱粉とを複合させたTCNF/AS膜、およびTCNF/HPS膜の引張弾性率は、それぞれ、2MPaおよび7MPaであり、また、最大の引張強度は、それぞれ150KPa、および300KPaであった。このことから、TCNFと修飾澱粉とを複合することで、湿潤状態における引張挙動を向上できることがわかった。
【0072】
(5-8)乾燥状態と湿潤状態との変動
前記(5-5)~(5-7)に示すように、前記TCNF膜の引張弾性率は、乾燥状態で6.4±0.3GPaを示すものの、湿潤状態になると0.052±0.01MPaにまで減少し、その低下率は10万分の1であった。これに対して、TCNFと修飾澱粉とを複合させた膜の場合、前記TCNF/HPS膜は、乾燥状態で7.0±0.2GPa、湿潤状態で7.12±2.27MPaであり、その低下率は、1000分の1に抑制された。前記TCNF/AS膜は、乾燥状態で6.7±0.3GPa、湿潤状態で2.15±0.18MPaであり、その低下率は、1000分の1にまで抑制された。
【0073】
(5-9)ヘミアセタール結合
前記(4-7)のアルデヒドの選択的還元によって、各膜におけるヘミアセタール結合について、その役割を確認した。前記R-TCNF/HPS膜と、前記TCNF/HPS膜とを、それぞれ水に浸漬した結果、前記TCNF/HPS膜は水中で安定化していたが、前記R-TCNF/HPS膜は、数分以内に大きく膨潤してしまい、水中で崩壊していることが確認された。この結果から、TCNFと修飾澱粉とを含む膜は、TCNFと修飾澱粉との間でヘミアセタール構造が形成され、このヘミアセタール構造によって、水での安定性が向上したということができる。
【0074】
[実施例2]
未加工澱粉と、TCNFとを用いて、機能性膜状体を製造し、その機能を確認した。
【0075】
(1)TCNF分散液の調製
前記実施例(1)と同様にして、TCNF分散液を調製した。
【0076】
(2)未加工澱粉溶解液の調製
未加工タピオカ澱粉粉末5.0g(アミロース17-20%、アミロペクチン、83-80%、日本食品化工社製)を、水100mLに添加し、90℃で1時間、スターラを用いた撹拌により、均一な未加工(未修飾)澱粉溶液(NRS)を調製した。前記溶液は、調製後ただちに機能性膜状体の製造に使用した。また、前記未加工澱粉溶液(NRS)を、上限22℃、湿度25%の条件下で、5日間インキュベートし、澱粉を再凝集させた未加工澱粉溶液(RS)を調製した。
【0077】
(3)成膜
前記TCNF分散液(0.8%(w/v))と前記未加工澱粉溶液(5%(w/v))とを、前記TCNFと前記未加工澱粉との重量比を1:0.2~1:6の間の5条件で変化させて混合し、均質になるまで撹拌混合した。前記TCNFと前記未加工澱粉とを含む混合液10mLを、直径10cmのポリプロピレン製ペトリ皿にキャストし、45℃に設定したオーブンで6時間、乾燥処理を行った。乾燥処理によって、前記ペトリ皿に乾燥状態の膜が形成された。前記膜から、所定の大きさを切り出し、これをサンプルとして、以下の試験に供した。以下、TCNFと未加工澱粉液(NRS)とを用いた膜を、「TCNF/NRS」という。TCNFと未加工澱粉溶(RS)とを用いた膜を、「TCNF/RS」という。また、比較例には、実施例1の「TCNF」を用いた。各サンプルの平均厚みは、いずれも約25μm程度であった。
【0078】
(4)機能等の解析
前記5種類の膜から切り出したサンプルを用いて、前記実施例1(4-3)~(4-5)の試験に供した。
【0079】
(5)結果
各膜について、乾燥状態での引張弾性率および引張強度を下記表4および5に、湿潤状態での引張弾性率および引張強度を下記表6および7に示す。
【0080】
【表4】
【0081】
【表5】
【0082】
【表6】
【0083】
【表7】
【0084】
(5-1)光透過性
膜状体を食品包装に使用する場合、透明性は重要視される性質である。そこで、前記膜について、視覚的な観察と、前記実施例1(4-2)の紫外可視分光法による分析を行った。図6(A)に、各膜の写真を示す。視覚的な観察は、大阪大学の紋章が示された紙の上に、前記膜状体をかざし、紋章が確認できるか否かによって確認した。図6(B)は、S-0.6における各波長における透過率(Transmittance、%)を示し、前記表4および5に、650nmの透過率を示す。
【0085】
図6(A)に示すように、TCNFと未修飾澱粉とを複合した膜は、いずれも、TCNF膜と同様に、大阪大学の紋章が視認でき、視覚的に高い光透過性を示すことがわかった。また、図6(B)に示すように、いずれの膜も、380nm~740nmの波長にわたって、75~88%の高い透過率を示した。また、前述の図3(B)および前記表2に示すように、TCNF膜は、650nmで87.2%の光透過率を示した。これに対して、TCNFと再凝集前の未修飾澱粉(NRS)とを複合させたS-0.6の650nmでの光透過率は、87%であった。また、TCNFと再凝集後の未修飾澱粉(RS)とを複合させたS-0.6の650nmでの光透過率は、85%であった。このため、未修飾澱粉を添加した膜は、光透過率はわずかに低下したものの、光透過率を維持できた。
【0086】
(5-2)表面形態
SEMによる膜の表面形態の結果を図7に示す。図7は、各膜のSEM画像である。図7の各図BおよびDにおいて、右上の枠内が、断面の画像(C.S.)である。図7に示すように、TCNF/NRS膜(A)およびTCFN/RS膜(C)は、いずれも滑らかな表面であったが、TCFN/RS膜(D)は、その断面において、700nm~3μmの未修飾澱粉の顆粒の凝集体が確認された。このため、前記未修飾澱粉がフィラーとなり、後述の引張弾性率および引張強度等の機械的強度が向上していると推定された。
【0087】
また、前述のように、TCNF膜断面においては、セルロース繊維が層になって密に配列している。一方、未修飾澱粉と複合させた各種膜(B、D)は、いずれもセルロース繊維の層構造は確認されず、TCNFと未修飾澱粉とが均一にブレンドされた膜状体であることが確認できた。
【0088】
(5-3)乾燥状態での引張試験
各膜の引張挙動を前記表4および5に示す。前記表4および5に示すように、TCNF膜は、引張弾性率(tensile modulus、ヤング率、GPa)が6.4GPaであった。そして、TCNFと再凝集前の未修飾澱粉(NRS)とを複合させたS-0.2、S-0.6、S-1、S-1.5、およびS-6の引張弾性率は、それぞれ、5.87、6.24、6.17、5.41、および2.58GPaであった。また、TCNFと再凝集後の未修飾澱粉(RS)とを複合させたS-0.2、S-0.6、S-1、S-1.5、およびS-6の引張弾性率は、それぞれ、8.00、7.62、7.60、6.17、および3.43GPaであった。
【0089】
つぎに、TCNF膜の引張強度は、134MPa(tensile strength)であった。そして、TCNFと再凝集前の未修飾澱粉(NRS)とを複合させたS-0.2、S-0.6、S-1、S-1.5、およびS-6の引強度は、それぞれ、89、82、78、69、および46MPaであった。また、TCNFと再凝集後の未修飾澱粉(RS)とを複合させたS-0.2、S-0.6、S-1、S-1.5、およびS-6の引張弾性率は、それぞれ、110、99、94、89、および77MPaであった。
【0090】
このため、未修飾澱粉を用いた際にも、十分な強度が確保でき、また、再凝集後の未修飾澱粉(RS)を用いることにより、引張弾性率および引張強度を向上できることがわかった。
【0091】
(5-4)膨潤試験
膜状体の耐水性に関しては、水吸収能が関与する。そこで、各膜のサンプルを水に2時間浸漬させた後、膨潤重量%の測定を行った。湿潤状態のサンプルの膨潤に関する情報は、前記表6および7を参照する。
【0092】
前記表6および7に示すように、TCNF膜を湿潤させた場合、2時間の浸漬で、約6720%の最高膨潤重量%を示した。これは、前記TCNF単独のTCNF膜が、水への浸漬によって、表面がボロボロになり、フラグメント化し、崩壊したことを意味する。これは、前述の図5(A)の画像からも明らかである。これに対して、TCNFと再凝集前の未修飾澱粉(NRS)または再凝集後の未修飾澱粉(RS)とを複合させた膜は、いずれも浸漬による膨潤の程度を減少できた。具体的には、TCNFと再凝集前の未修飾澱粉(NRS)とを複合させたS-0.2、S-0.6、S-1、S-1.5、およびS-6の膨潤重量%は、それぞれ、1593、503、588、603、および544%であった。また、TCNFと再凝集後の未修飾澱粉(RS)とを複合させたS-0.2、S-0.6、S-1、S-1.5、およびS-6の膨潤重量%は、それぞれ、863、338、341、347、および395%であった。すなわち、TCNFと未修飾澱粉との複合によって、膨潤を減少できることがわかった。また、再凝集後の未修飾澱粉(RS)を用いることにより、膨潤をより抑制できることがわかった。さらに、図示していないが、TCNFと未修飾澱粉との複合体の膜は、膨潤が抑制され、ハンドリングが容易な状態が保たれた。
【0093】
(5-5)湿潤状態における引張試験
各膜を2時間浸漬した後の湿潤状態の引張挙動を前記表6および7に示す。TCNF膜の引張弾性率および引張強度は、それぞれ、0.05MPaおよび1.5kPaと最も低い値を示し、水への浸漬によって、強度が低下した。これに対して、TCNFと未修飾澱粉とを複合させたTCNF/NRS膜、およびTCNF/RS膜の引張弾性率および引張強度は、TCNFと未修飾澱粉との混合率によらず、より優れていた。また、TCNF/NRS膜およびTCNF/RS膜の引張弾性率および引張強度は、TCNFと未修飾澱粉との混合率によらず、TCNF/RS膜がより優れていた。これらのことから、TCNFと未修飾澱粉とを複合することで、湿潤状態における引張挙動を向上できることがわかった。また、未修飾澱粉として、再凝集後の未修飾澱粉を用いることにより、湿潤状態における引張挙動をより向上できることがわかった。さらに、前記TCNFと前記未修飾澱粉とを複合させた各膜は、その引張弾性率からTCNF単独の膜に対して湿潤状態でも十分な機械的強度を示した。そして、TCNFと未修飾澱粉の比率が1:0.6~1:1.5で比較的高い機械的強度を示した。
【0094】
(5-6)乾燥状態と湿潤状態との変動
前記表4~7に示すように、前記TCNF膜の引張弾性率は、乾燥状態で6.4±0.2GPaを示すものの、湿潤状態になると0.05±0.01MPaにまで減少し、その低下率は、約12万分の1であった。これに対して、TCNFと再凝集前の未修飾澱粉(NRS)とを複合させたS-0.2、S-0.6、S-1、S-1.5、およびS-6の低下率は、約3000分の1~約10000分の1に抑制された。また、TCNFと再凝集後の未修飾澱粉(RS)とを複合させたS-0.2、S-0.6、S-1、S-1.5、およびS-6の低下率は、約1500分の1~約10000分の1に抑制された。すなわち、TCNFと未修飾澱粉との複合によって、膨潤を減少できることがわかった。
【0095】
また、前記表4~7に示すように、前記TCNF膜の引張強度は、乾燥状態で134±1MPaを示すものの、湿潤状態になると1.5±0.8kPaにまで減少し、その低下率は10万分の1であった。これに対して、TCNFと再凝集前の未修飾澱粉(NRS)とを複合させたS-0.2、S-0.6、S-1、S-1.5、およびS-6の低下率は、約300分の1~約1300分の1に抑制された。また、TCNFと再凝集後の未修飾澱粉(RS)とを複合させたS-0.2、S-0.6、S-1、S-1.5、およびS-6の低下率は、約150分の1~約1000分の1に抑制された。
【0096】
以上の結果から、未加工澱粉と、TCNFとを用いても、水での安定性が向上した機能性膜状体を製造しできることがわかった。
【0097】
[実施例3]
HPSと、酸化機械解繊CNF(以下、OMCNFともいう)とを用いて、機能性膜状体態を製造し、その機能を確認した。
【0098】
(1)OMCNF分散液の調製
未修飾の市販セルロース粉末(ナカライテスク社)を水に膨潤させ、湿式微粒化装置(スターバーストミニ、SUGINO製)を用いて、245MPaで25回処理し、機械解繊CNF(MCNF)を作製した。1%(w/v)のMCNF水溶液20gを水20mLに分散し、得られた分散液に、0.4gの過ヨウ素酸ナトリウムを加えて25℃で1時間反応した後、水で洗浄し、OMCNFを得た。さらに、前記分散液に水を添加して、前記OMCNFの濃度を0.8%(w/v)となるように調整し、これをゲル状のOMCNF分散液とした。同様に前記MCNFの濃度を0.8%(w/v)となるように調整し、これをゲル状のMCNF分散液とした。前記分散液を使用時まで冷蔵庫で保存した。
【0099】
(2)HPS溶液の調製
HPS粉末5.0gを、水100mLに添加し、85℃で1時間、スターラを用いた撹拌により、均一なHPS溶液を調製した。前記溶液は、使用時まで冷蔵庫で保存した。
【0100】
(3)成膜
前記OMCNF(0.8%(w/v))と前記HPS溶液(5%(w/v))とを、前記OMCNFと前記HPSとの重量比が3:0.25となるように混合し、均質になるまで撹拌混合した。前記OMCNFと前記HPSを含む混合液10mLを、直径10cmのポリプロピレン製ペトリ皿にキャストし、45℃に設定したオーブンで6時間、乾燥処理を行った。乾燥処理によって、前記ペトリ皿に乾燥状態の膜が形成された。前記膜から、所定の大きさを切り出し、これをサンプルとして、以下の試験に供した。以下、OMCNFと加工澱粉とを用いた膜を、「OMCNF/HPS」という。また、比較例として、前記HPSを使用しない以外は、同様にして成膜を行い、OMCNFのみの膜を形成した。この膜を「OMCNF」という。各サンプルの平均厚みは、いずれも約25μm程度であった。
【0101】
(4)機能等の解析
前記2種類の膜から切り出したサンプルを用いて、前記実施例1(4-4)および(4-5)の試験に供した。
【0102】
(5)結果
各膜について、膨潤重量および湿潤状態での引張弾性率を下記表8に示す。
【0103】
【表8】
【0104】
前記OMCNFと前記HPSを複合させた膜は、乾燥によってヘミアセタール構造が形成され、前記OMCNFのみを用いて成膜したものに比べ、湿潤状態での引張弾性率が向上した。前記OMCNFと前記HPSを複合させた膜を用いて成膜したものは、前記OMCNFのみを用いて成膜したものに比べ、湿潤状態での引張弾性率が向上し、また、引張弾性率の低下率は、抑制された。他方、前記OMCNFのみの膜は、前記OMCNFと前記HPSを複合させた膜と比較して、膨潤重量が低下した。これはOMCNF内でヘミアセタール構造が形成されたためと考えられる。
【0105】
[実施例4]
ジアルデヒド化澱粉(DAS)と、機械解繊CNF(以下、「MCNF」という)とを用いて、機能性膜状体を製造し、その機能を確認した。
【0106】
(1)MCNF分散液の調製
未修飾の市販セルロース粉末(ナカライテスク社)を水に膨潤させ、湿式微粒化装置(スターバーストミニ、SUGINO製)を用いて、245MPaで25回処理し、機械解繊CNF(MCNF)を作製した。さらに、前記分散液に水を添加して、前記MCNFの濃度を0.8%(w/v)となるように調整し、これをゲル状のMCNF分散液とした。
【0107】
(2)DAS溶液の調製
未加工タピオカ澱粉を過ヨウ素酸により酸化し、ジアルデヒド澱粉を調製した。未加工タピオカ澱粉粉末200gを、水500mLに分散し、DCスターラにて撹拌しながら品温を32℃に調整した。HCL溶液を用いてpHを3.0に調整し、過ヨウ素酸ナトリウムを6gまたは18g添加して1時間反応させた。水酸化ナトリウム溶液を用いてpH6.0に中和した後、水道水1.1Lを加えて十分に懸濁し脱水ろ過して、澱粉のウェットケーキを回収した。これを再度1.6Lの水道水に懸濁し、再度脱水ろ過した。その後、澱粉のウェットケーキを1%(w/v)のピロ亜硫酸ナトリウム水溶液500mLに懸濁し、1時間撹拌して残存する過ヨウ素酸を不活化した。これを脱水ろ過してウェットケーキを回収し、前述と同様に水道水に懸濁して脱水ろ過する作業を2回実施した。得られたウェットケーキを送風乾燥機で乾燥させ加工度の異なる2種類のDAS粉末を得た。前記DAS粉末5.0gを、水100mLに添加し、85℃で1時間、スターラを用いた撹拌により、均一なDAS溶液を調製した。前記溶液は、使用時まで冷蔵庫で保存した。6gの過ヨウ素酸ナトリウムを添加して得られたDASをDAS1、18gの過ヨウ素酸ナトリウムを添加して得られたDASをDAS2という。
【0108】
(3)成膜
前記MCNF(0.8%(w/v))と前記DAS溶液(5%(w/v))とを、前記OMCNFと前記HPSとの重量比が1:0.6となるように混合し、均質になるまで撹拌混合した。前記MCNFと前記を含む混合液10mLを、直径10cmのポリプロピレン製ペトリ皿にキャストし、45℃に設定したオーブンで6時間、乾燥処理を行った。乾燥処理によって、前記ペトリ皿に乾燥状態の膜が形成された。前記膜から、所定の大きさを切り出し、これをサンプルとして、以下の試験に供した。以下、MCNFとDASとを用いた膜を、「MCNF/DAS」という。また、比較例として、前記DASを使用しない以外は、同様にして成膜を行い、MCNFのみの膜を形成した。この膜を「MCNF」という。各サンプルの平均厚みは、いずれも約25μm程度であった。
【0109】
(4)機能等の解析
前記2種類の膜から切り出したサンプルを用いて、前記実施例1(4-3)~(4-5)の試験に供した。
【0110】
(5)結果
各膜について、乾燥状態での引張弾性率および引張強度を下記表9に、湿潤状態での引張弾性率および引張強度を下記表10に示す。
【0111】
【表9】
【0112】
【表10】
【0113】
前記MCNFと前記DASを複合させた膜は、乾燥によってヘミアセタール構造が形成され、前記MCNFのみを用いて成膜したものに比べ、湿潤状態での引張弾性率が向上した。前記MCNFと前記DASを複合させた膜を用いて成膜したものは、前記MCNFのみを用いて成膜したものに比べ、湿潤状態での引張強度が向上し、また、引張強度の低下率は、抑制された。他方、前記MCNFのみの膜は、前記MCNFと前記DASを複合させた膜と比較して、膨潤重量が低下した。これはMCNF内においてセルロース間で水素結合が形成されたためと考えられる。
【0114】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【0115】
この出願は、2019年7月26日に出願された日本出願特願2019-138191を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【0116】
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
ナノセルロース骨格と澱粉骨格とを含み、
前記ナノセルロース骨格と前記澱粉骨格との間に、ヘミアセタール構造を有していることを特徴とする機能性膜状体。
(付記2)
前記ナノセルロース骨格が、セルロースナノファイバー骨格およびセルロースナノクリスタル骨格の一方である、付記1に記載の機能性膜状体。
(付記3)
前記ナノセルロース骨格が、酸化セルロースナノファイバー、リン酸エステル化セルロースナノファイバー、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー、物理解繊セルロースナノファイバー、酸変性セルロースナノファイバー、およびセルロースナノクリスタルからなる群から選択された少なくとも一つのナノセルロースに由来する骨格である、付記1または2に記載の機能性膜状体。
(付記4)
前記酸化セルロースナノファイバーが、TEMPO酸化セルロースナノファイバーである、付記3に記載の機能性膜状体。
(付記5)
前記酸化セルロースナノファイバーが、過ヨウ素酸酸化セルロースナノファイバーである、付記3に記載の機能性膜状体。
(付記6)
前記酸変性セルロースナノファイバーが、クエン酸変性セルロースナノファイバーおよびマレイン酸変性セルロースナノファイバーの少なくとも一方である、付記3に記載の機能性膜状体。
(付記7)
前記澱粉骨格が、加工澱粉に由来する骨格である、付記1から6のいずれかに記載の機能性膜状体。
(付記8)
前記澱粉骨格が、未加工澱粉に由来する骨格である、付記1から6のいずれかに記載の機能性膜状体。
(付記9)
前記澱粉骨格が、糊化後、凝集した澱粉に由来する骨格である、付記1から8のいずれかに記載の機能性膜状体。
(付記10)
前記澱粉骨格が、酸化処理澱粉、エステル化処理澱粉、エーテル化処理澱粉、および架橋処理澱粉からなる群から選択された少なくとも一つの修飾化澱粉に由来する骨格である、付記1から7および9のいずれかに記載の機能性膜状体。
(付記11)
前記ナノセルロース骨格および前記澱粉骨格において、
前記ナノセルロース骨格は、カルボニル基を有するナノセルロースに由来する骨格であり、前記澱粉骨格は、水酸基を有する澱粉に由来する骨格であるか、
前記ナノセルロース骨格は、水酸基を有するナノセルロースに由来する骨格であり、前記澱粉骨格は、カルボニル基を有する澱粉に由来する骨格である、
付記1から10のいずれかに記載の機能性膜状体。
(付記12)
前記澱粉骨格と前記ナノセルロース骨格との含有比率が、1:0.1~100である、付記1から11のいずれかに記載の機能性膜状体。
(付記13)
湿潤状態における引張弾性率が、乾燥状態における引張弾性率の1/10万倍~4/5倍である、付記1から12のいずれかに記載の機能性膜状体。
(付記14)
ヘミアセタール構造を形成する、ナノセルロース骨格の原料と、澱粉骨格の原料とを含む混合液を、乾燥によって成膜することを特徴とする機能性膜状体の製造方法。
(付記15)
前記ナノセルロース骨格の原料が、セルロースナノファイバーおよびセルロースナノクリスタルの一方である、付記14に記載の製造方法。
(付記16)
前記ナノセルロース骨格の原料が、酸化セルロースナノファイバー、リン酸エステル化セルロースナノファイバー、カルボキシメチル化セルロースナノファイバー、物理解繊セルロースナノファイバー、酸変性セルロースナノファイバー、およびセルロースナノクリスタルからなる群から選択された少なくとも一つのナノセルロースである、付記14または15に記載の製造方法。
(付記17)
前記酸化セルロースナノファイバーが、TEMPO酸化セルロースナノファイバーである、付記16に記載の製造方法。
(付記18)
前記酸化セルロースナノファイバーが、過ヨウ素酸酸化セルロースナノファイバーである、付記16に記載の製造方法。
(付記19)
前記酸変性セルロースナノファイバーが、クエン酸変性セルロースナノファイバーおよびマレイン酸変性セルロースナノファイバーの少なくとも一方である、付記16に記載の製造方法。
(付記20)
前記澱粉骨格の原料が、加工澱粉である、付記14から19のいずれかに記載の製造方法。
(付記21)
前記澱粉骨格が、未加工澱粉に由来する骨格である、付記14から19のいずれかに記載の製造方法。
(付記22)
前記澱粉骨格が、糊化後、凝集した澱粉に由来する骨格である、付記14から21のいずれかに記載の製造方法。
(付記23)
前記澱粉骨格の原料が、酸化処理澱粉、エステル化処理澱粉、エーテル化処理澱粉、および架橋処理澱粉からなる群から選択された少なくとも一つの修飾化澱粉である、付記14から20および22のいずれかに記載の製造方法。
(付記24)
前記ナノセルロース骨格および前記澱粉骨格において、
前記ナノセルロース骨格は、カルボニル基を有するナノセルロースに由来する骨格であり、前記澱粉骨格は、水酸基を有する澱粉に由来する骨格であるか、
前記ナノセルロース骨格は、水酸基を有するナノセルロースに由来する骨格であり、前記澱粉骨格は、カルボニル基を有する澱粉に由来する骨格である、
付記14から23のいずれかに記載の製造方法。
(付記25)
前記澱粉骨格の原料と前記ナノセルロース骨格の原料との含有比率が、1:0.1~100である、付記14から24のいずれかに記載の製造方法。
(付記26)
前記澱粉骨格の原料を溶解した澱粉溶液と、前記ナノセルロース骨格の原料を分散したナノセルロース分散液とを混合して、前記混合液を調製する、付記14から25のいずれかに記載の製造方法。
(付記27)
前記澱粉溶液が、糊化した溶液である、付記26に記載の製造方法。
(付記28)
前記澱粉溶液が、糊化後、凝集した澱粉液である、付記26記載の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0117】
以上のように、本発明によれば、例えば、水に接触して湿潤した場合でも、強度の低下を防止できる。このため、本発明の機能性膜状体は、例えば、水に接触する可能性がある食品用の包装膜、包装袋等に有用である。
図1
図2
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図4
図5
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図7