(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】偽造防止印刷物及び偽造防止印刷物用画像データの作成方法
(51)【国際特許分類】
B41M 3/14 20060101AFI20240730BHJP
G07D 7/12 20160101ALI20240730BHJP
G07D 7/20 20160101ALI20240730BHJP
B42D 25/378 20140101ALI20240730BHJP
【FI】
B41M3/14
G07D7/12
G07D7/20
B42D25/378
(21)【出願番号】P 2021006825
(22)【出願日】2021-01-20
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】木内 正人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 寛行
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-100331(JP,A)
【文献】特開2017-065185(JP,A)
【文献】特開2007-152805(JP,A)
【文献】特開2009-202420(JP,A)
【文献】特開2013-039726(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/00- 3/18
7/00- 9/04
B42D 15/02
25/00-25/485
G07D 7/00- 7/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一部に、前記基材と異なる色彩の印刷模様を備え、前記印刷模様を拡散反射光下で観察すると第1の有意情報が視認され、正反射光下で観察すると第2の有意情報が視認される偽造防止印刷物であって、
前記印刷模様は、光輝性インキによって形成された第1の画像と、前記光輝性インキと同じ色相の着色インキによって形成された第2の画像から成り、
前記第1の画像は、濃度が異なることで区分けされた前記第1の有意情報の一部を現す第1の画像部と、前記第1の有意情報及び前記第2の有意情報の背景を現す背景部とから成り、
前記第2の画像は、濃度が異なることで区分けされた前記第2の有意情報の一部を現す潜像部と、前記第1の有意情報及び前記第2の有意情報の残りを共通して現す共通画像部とから成り、
前記第1の画像部と前記共通画像部の濃度が等しく、前記背景部と前記潜像部の濃度が等しいことを特徴とする偽造防止印刷物。
【請求項2】
前記第2の画像は、前記光輝性インキの色の分解色を有する複数の着色インキによって形成され、前記第2の画像を形成する前記複数の着色インキの減法混色した色の色相が、前記光輝性インキの色相と同じであることを特徴とする請求項1記載の偽造防止印刷物。
【請求項3】
光輝性インキによって形成される第1の画像と、前記光輝性インキと同じ色相の着色インキによって形成される第2の画像から成り、拡散反射光下で観察すると第1の有意情報が視認され、正反射光下で観察すると第2の有意情報が視認される
偽造防止印刷物用画像データの作成方法であって、
前記第1の有意情報の基となる第1の基画像及び前記第2の有意情報の基となる第2の基画像を設定する基画像設定工程と、
前記第1の基画像に、前記光輝性インキによって形成される前記第1の画像の濃度を補正するための第1のトーンカーブを適用して第1の濃度補正画像を生成する第1の濃度補正処理と、
前記光輝性インキと同じ色相の着色インキによって形成される前記第2の画像が、前記第1の画像の濃度に対応するための第2のトーンカーブを前記第1の基画像に適用して第2の濃度補正画像を生成する第2の濃度補正処理を行う濃度補正工程と、
前記第2の基画像により前記第1の濃度補正画像をマスク処理して、前記光輝性インキによって形成する第1の画像用のデータを生成する第1の画像用データの生成処理と、
前記第2の基画像を階調反転した反転画像により前記第2の濃度補正画像をマスク処理して、前記光輝性インキと同じ色相の着色インキによって形成する第2の画像用のデータを生成する第2の画像用データの生成処理を行う画像データ生成工程とを、有して成ることを特徴とする偽造防止印刷物用画像データの作成方法。
【請求項4】
前記第2の画像が、前記光輝性インキの色の分解色を有する複数の着色インキ
によって形成される
偽造防止印刷物用画像データの作成方法であって、
前記第2の濃度補正処理は、前記光輝性インキの色の分解色毎に、トーンカーブを適用して、前記光輝性インキの色の分解色毎の濃度補正画像を生成し、
前記第2の画像用データの生成処理は、前記光輝性インキの色の分解色毎の前記濃度補正画像に、前記反転画像によってマスク処理を行うことを特徴とする請求項3記載の偽造防止印刷物用画像データの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止効果を必要とする銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード及び通行券等の貴重印刷物の分野において、観察できる画像が入射する光の角度に応じて、異なる画像に変化する偽造防止印刷物に関わるものである。
【背景技術】
【0002】
近年のスキャナ、プリンタ、カラーコピー機等のデジタル機器の進展により、貴重印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となっている。そのような複製や偽造を防止する偽造防止技術の一つとして、観察角度によって画像が変化するホログラムに代表される光学的なセキュリティ要素を貼付した印刷物が多く存在するようになった。
【0003】
しかし、ホログラムは、インキを用いた印刷によって形成する従来の偽造防止技術とは異なり、複雑な製造工程と特殊な材料を用いて形成されることから、従来の偽造防止用印刷物と比較すると製造に手間がかかり、かつ、極めて高価である。このことから、金属インキや干渉マイカや酸化フレークマイカ、顔料コートアルミニウムフレーク、光学的変化フレーク等の特殊な光反射性粉体をインキや塗料に配合し、かつ、特殊な材料同士の重ね合わせ、及び複雑な網点構成を用いることによって、ホログラムと同様な画像変化を実現した、一般的な印刷方法で形成可能な偽造防止用印刷物が出現している。
【0004】
本出願人は、一般的、かつ、比較的安価な材料及び簡単な印刷手段を使用していながら、特定の観察角度において、印刷物中の特定部位における人の目に認識される情報が、観察角度を変化させることによって、全く別の情報に変化する偽造防止印刷物に係る発明をすでに出願している(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の技術は、光輝性インキによる画像と透明インキによる画像を重ね合わせて形成した印刷物であって、重ね合わせる画像同士の位置合わせ精度と色調整を要することなく作製できる点で優れる。
【0005】
また、本出願人は、特許文献1の技術において、透明インキによって形成する画像が目視できず、品質管理が困難であることを課題とし、着色インキと光輝性インキによって形成した画像を重ね合わせることで、画像が変化する印刷物を提案している(例えば、特許文献2、特許文献3参照)。なお、特許文献2及び特許文献3の印刷物は、印刷画像を構成する二つの画像が、目視確認できることから、品質確認をすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4604209号公報
【文献】特開2017-65185号公報
【文献】特許第6504564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の従来技術は、着色インキによって形成された第一の画像において異なる濃度で形成された各部と、着色インキと同じ色相の光輝性インキによって形成された第二の画像において異なる濃度で形成された各部が重なる構成であり、各部がそれぞれ重なる領域を等色に形成するために、第一の画像と第二の画像の色調整を要するという課題があった。詳細には、第一の画像と第二の画像の各部の濃度の算出自体は容易であるが、実際に、二つのインキを用いて印刷した場合、完全に等色にするために、微調整をする必要があった。
【0008】
また、特許文献3の従来技術は、光輝性インキによって形成された第一の画像と、光輝性インキと同じ色相で濃い有色インキによって形成された第二の画像が重なる構成であって、特許文献3の印刷物においても、異なるインキにより異なる濃度で形成された各部が重なる領域を等色に形成するために、第一の画像と第二の画像の色調整を要するという課題があった。
【0009】
本発明は、前述した課題の解決を目的とするものであり、光輝性インキと着色インキによって形成された印刷模様において、観察角度によって視認される画像が変化する印刷物であって、簡易に作製できる偽造防止印刷物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の偽造防止印刷物は、基材の少なくとも一部に、基材と異なる色彩の印刷模様を備え、印刷模様を拡散反射光下で観察すると第1の有意情報が視認され、正反射光下で観察すると第2の有意情報が視認される偽造防止印刷物であって、印刷模様は、光輝性インキによって形成された第1の画像と、光輝性インキと同じ色相の着色インキによって形成された第2の画像から成り、第1の画像は、濃度が異なることで区分けされた第1の有意情報の一部を現す第1の画像部と、第1の有意情報及び第2の有意情報の背景を現す背景部とから成り、第2の画像は、濃度が異なることで区分けされた第2の有意情報の一部を現す潜像部と、第1の有意情報及び第2の有意情報の残りを共通して現す共通画像部とから成り、第1の画像部と共通画像部の濃度が等しく、背景部と潜像部の濃度が等しいことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の偽造防止印刷物は、第2の画像は、光輝性インキの色の分解色を有する複数の着色インキによって形成され、第2の画像を形成する複数の着色インキの減法混色した色の色相が、光輝性インキの色相と同じであることを特徴とする。
【0012】
また、偽造防止印刷物用画像データの作成方法は、光輝性インキによって形成される第1の画像と、光輝性インキと同じ色相の着色インキによって形成される第2の画像から成り、拡散反射光下で観察すると第1の有意情報が視認され、正反射光下で観察すると第2の有意情報が視認される印刷模様用の画像データの作成方法であって、第1の有意情報の基となる第1の基画像及び第2の有意情報の基となる第2の基画像を設定する基画像設定工程と、第1の基画像に、光輝性インキによって形成される第1の画像の濃度を補正するための第1のトーンカーブを適用して第1の濃度補正画像を生成する第1の濃度補正処理と、光輝性インキと同じ色相の着色インキによって形成される第2の画像が、第1の画像の濃度に対応するための第2のトーンカーブを第1の基画像に適用して第2の濃度補正画像を生成する第2の濃度補正処理を行う濃度補正工程と、第2の基画像により第1の濃度補正画像をマスク処理して、光輝性インキによって形成する第1の画像用のデータを生成する第1の画像用データの生成処理と、第2の基画像を階調反転した反転画像により第2の濃度補正画像をマスク処理して、光輝性インキと同じ色相の着色インキによって形成する第2の画像用のデータを生成する第2の画像用データの生成処理を行う画像データ生成工程とを、有して成ることを特徴とする。
【0013】
また、偽造防止印刷物用画像データの作成方法は、第2の画像が、光輝性インキの色の分解色を有する複数の着色インキよって形成される印刷模様用データの作成方法であって、第2の濃度補正処理は、光輝性インキの色の分解色毎に、トーンカーブを適用して、光輝性インキの色の分解色毎の濃度補正画像を生成し、第2の画像用データの生成処理は、光輝性インキの色の分解色毎の濃度補正画像に、反転画像によってマスク処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の偽造防止印刷物は、光輝性インキと着色インキが異なる濃度で形成された画像が重なる領域同士を等色にする必要がなく、光輝性インキによって形成された画像と着色インキによって形成された画像同士を特色に形成すればよいことから、簡易に作製できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】本発明における偽造防止印刷物の効果を示す。
【
図4】本発明における第1の画像の一部拡大図である。
【
図5】本発明における印刷模様の別の構成を示す図である。
【
図6】複数の色の着色インキによって形成された第2の画像の構成を示す図である。
【
図7】偽造防止印刷物用画像データの作成装置を示すブロック図である。
【
図8】本発明の偽造防止印刷物用画像データを作成する方法を示すフロー図である。
【
図9】基画像設定工程によって設定された基画像を示す図である。
【
図10】濃度補正工程によって生成される濃度補正画像を示す図である。
【
図11】画像生成工程によって生成される第1の画像用データを示す図である。
【
図12】画像生成工程によって生成される第2の画像用データを示す図である。
【
図13】本発明の偽造防止印刷物用画像データを作成する別の方法を示すフロー図である。
【
図14】濃度補正工程によって生成される別の濃度補正画像を示す図である。
【
図15】画像生成工程によって生成される別の第2の画像用データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0017】
なお、本明細書中でいう「明度」とは色の明るさを指し、高い場合には明るく、低い場合には暗い。また、「彩度」とは、色の鮮やかさの度合いを指す。加えて、本発明における「色彩」とは、色相、彩度及び明度の概念を含んで色を表したものであり、また、「色相」とは、赤、青、黄といった色の様相のことであり、具体的には、可視光領域(400~700nm)の特定の波長の高低の分布を示すものである。本明細書中では特に、無彩色である白や黒も一つの色相と考え、白、灰色、黒は同じ色相であるとする。
【0018】
また、本発明でいう「明暗フリップフロップ性」とは、物体が光を正反射した場合に、その物体の明度が上昇する性質を指す。例えば、金属や樹脂等の物体が光ったと感じるのは、物体の明度が上昇しているためであり、その物体は、明暗フリップフロップ性を備えている。一定の艶のある物体は明暗フリップフロップ性を備え、逆に艶のない、マットな物体は明暗フリップフロップ性を備えない。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1に、本発明における偽造防止印刷物(1)を示す。偽造防止印刷物(1)は、
図1に示すように、基材(2)の上に、基材(2)と異なる色彩を有する印刷模様(3)を有する。また、
図1に示す印刷模様(3)は、拡散反射光下で視認できる第1の有意情報(ここでは、「星型」の例)と、正反射光下で視認できる第2の有意情報(ここでは、「月」の例)を備える。
【0020】
図1に示す偽造防止印刷物(1)を、
図2(a)に示すように、光源(30)から偽造防止印刷物(1)に入射する光の入射角度(α)に対して、観察者(31)と偽造防止印刷物(1)とを結ぶ反射角度(β)が大きく異なる位置関係である拡散反射光下で観察すると、第1の有意情報である「星型」の図柄が視認される。また、
図2(b)に示すように、光源(30)から偽造防止印刷物(1)に入射する光の入射角度(α)に対して、観察者(31)と偽造防止印刷物(1)とを結ぶ反射角度(β)が略等しい位置関係である正反射光下で観察すると、第2の有意情報である「月」の図柄が視認される。以下、本発明の偽造防止印刷物(1)の詳細について説明する。
【0021】
(基材)
本発明における偽造防止印刷物(1)を構成する基材(2)は、印刷模様(3)が形成可能な面を備えていれば、材質は特に限定されるものではなく、上質紙、コート紙、プラスティック、金属等を用いることができ、基材(2)表面は、平滑であることが望ましい。
【0022】
(印刷模様)
図3は、印刷模様(3)の構成を示す図であり、
図3(a)に示す印刷模様(3)は、
図3(b)に示す第1の画像(4)と
図3(c)に示す第2の画像(5)から成り、二つの画像が嵌め合わさって、印刷模様(3)を構成している。ここでは、印刷模様(3)の構成について、簡易に説明するため、
図3(a)に示す印刷模様(3)のうち、「星型」の図柄を現す領域(3A)は、一様な濃度の図柄が形成され、残りの領域(3B)も、一様な濃度で構成された例について説明する。また、印刷模様(3)において、「星型」の図柄を現す領域(3A)が、残りの領域(3B)よりも濃い構成の例について説明する。
【0023】
(第1の画像)
第1の画像(4)は、光輝性インキによって形成された領域の濃度が部分的に異なることで、第1の画像部(4A)と背景部(4B)に区分けされて成り(
図3(b))、第1の画像部(4A)は、第1の有意情報の「星型」の図柄の一部を現し、背景部(4B)は、第1の有意情報と第2の有意情報の背景を構成する。
【0024】
図4は、
図3(b)に示す第1の画像(4)において、太線で囲む領域の拡大図であって、第1の画像(4)の濃度が部分的に異なる構成を示す図である。
図4(a)は、光輝性インキによって形成する印刷網点の密度が異なることで、濃淡を現したもの(FMスクリーン)で、印刷網点の密度が高い程、濃い濃度となる。なお、密度を異ならせる場合、印刷網点を一定のピッチで形成してもよいし、ランダムのピッチで形成してもよい。また、
図4(b)は、光輝性インキによって形成する印刷網点の大きさが異なることで、濃淡を現したもの(AMスクリーン)で、印刷網点が大きい程、濃い濃度となる。
図4は、第1の画像(4)が印刷網点によって構成された例を示しているが、本発明において印刷網点の形状は、
図4に示す円形に限定されるものではなく、任意の形状としてもよい。また、印刷網点を連続して形成した直線、曲線によって、第1の画像(4)を構成してもよい。
【0025】
第1の実施の形態の偽造防止印刷物(1)の印刷模様(3)において、「星型」の図柄を現す領域「3A」が、残りの領域(3B)よりも濃い構成の場合、
図4に示すように、「星型」の図柄の一部を現す第1の画像部(4A)は、背景部(4B)よりも、印刷網点の密度が高いか又は印刷網点の大きさが大きい構成によって、背景部(4B)よりも濃い濃度となり、背景部(4B)は、第1の画像部(4A)よりも淡い濃度となる。
【0026】
(第2の画像)
第2の画像(5)は、拡散反射光下で第1の画像(4)を形成する光輝性インキと同じ色相の着色インキによって形成され、着色インキによって形成された領域の濃度が部分的に異なることで、潜像部(5A)と共通画像部(5B)に区分けされて成る(
図3(c))。また、
図3(c)に示すように、潜像部(5A)は、第2の有意情報の「月」の図柄の一部を現し、共通画像部(5B)は、「月」の図柄の残りの部位であり、かつ、「星型」の図柄の残りの部位を共通して現す。
【0027】
第2の画像(5)においても、潜像部(5A)と共通画像部(5B)の濃度が異なる構成は、第1の画像(4)と同様であり、着色インキによって形成された印刷網点の密度が異なるか、又は、印刷網点の大きさが異なる(図示せず)。
図3に示す印刷模様(3)のように、「星型」の図柄を現す領域(3A)が、残りの領域(3B)よりも濃い構成の場合、共通画像部(5B)は、着色インキによって形成される印刷網点の密度が高いか又は印刷網点の大きさが大きい構成によって、潜像部(5A)よりも濃い濃度となり、潜像部(5A)は、共通画像部(5B)よりも淡い濃度となる。
【0028】
また、印刷模様(3)のうち、「星型」の図柄を現す領域(3A)を構成する第1の画像部(4A)と共通画像部(5B)は、異なるインキを用いて同じ濃度に形成され、「星型」の残りの領域(3B)を構成する背景部(4B)と潜像部(5A)もまた、異なるインキを用いて同じ濃度に形成される。なお、光輝性インキによって形成される第1の画像部(4A)と着色インキによって形成される共通画像部(5B)が、拡散反射光下で観察した際に、同じ濃度として視認されれば、第一の画像(4A)を構成する印刷網点と共通画像部(5B)を構成する印刷網点の密度は異なってもよいし、印刷網点の大きさが異なってもよい。同様に、背景部(4B)と潜像部(5A)が、拡散反射光下で観察した際に、同じ濃度として視認されれば、背景部(4B)を構成する印刷網点と潜像部(5A)を構成する印刷網点の密度は異なってもよいし、印刷網点の大きさが異なってもよい。
【0029】
(拡散反射光下)
第1の画像部(4A)と共通画像部(5B)、すなわち、「星型」の図柄を現す領域(3A)が、同じ濃度で形成され、背景部(4B)と潜像部(5A)、すなわち、「星型」の残りの領域(3B)が、同じ濃度で形成された印刷模様(3)を、
図2(a)に示すように、拡散反射光下で観察すると、第1の画像部(4A)と共通画像部(5B)は、同じ色彩として視認されて区別することができない。また、背景部(4B)と潜像部(5A)もまた、同じ色相の光輝性インキと着色インキにより、同じ濃度で形成されることで、同じ色彩として視認されて区別することができない。その結果、「星型」の図柄を現す領域(3A)と、「星型」の残りの領域(3B)の濃度の差により、第1の有意情報(「星型」の図柄)のみが視認できる。なお、本実施の形態の偽造防止印刷物(1)を拡散反射光下で観察すると、「星型」の図柄を現す領域(3A)が、「星型」の残りの領域(3B)よりも濃く視認される。
【0030】
(正反射光下)
一方、
図2(b)に示すように、正反射光下で観察すると光輝性インキによって形成された第1の画像(4)は、入射した光を正反射して淡く変化することで、第1の画像部(4A)と背景部(4B)の濃度差が小さくなり、濃淡が圧縮されて第1の画像部(4A)が現す「星型」の図柄は、不可視となる。一方、着色インキによって形成された第2の画像(5)の濃度変化は起きず、第1の画像(4)との正反射光の差によって、第2の画像(5)が現す第2の有意情報(「月」の図柄)が視認される。詳細には、仮に、基材(2)に第2の画像(5)のみを形成した場合には、通常の着色インキによって形成されているため、拡散反射光下での濃度の差が、そのまま、反映されて、潜像部(5A)と共通画像部(5B)の濃度の差が認識されてしまうが、本発明では、第1の画像(4)と合わせて形成する構成により、第1の画像(4)からの正反射光が極めて強く感じられることで、見かけ上、第2の画像(5)の濃淡が圧縮されたように視認され、同じ濃度の「月」の図柄として視認される。
【0031】
(濃度、光沢)
本発明において、正反射光下で第2の画像(5)の濃淡が、見かけ上の圧縮作用が生じるためには、第1の画像(4)からの正反射光が強いことが好ましく、基材(2)に光輝性インキを印刷した領域の光沢度が、20以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましい。なお、光沢度とは、JIS Z8741で規定されている鏡面光沢度の測定方法において、入射角が60度(GS(60°))で測定した場合の光沢値のことである。
【0032】
また、正反射光下で第1の有意情報が不可視になる効果は、印刷模様(3)内の濃淡差が大きくなる程、低下する。具体的には、各画像部の面積率差が大きくなる程、低下するとともに、第1の画像(4)と第2の画像(5)を形成するインキの着色力が高い程、低下する。このため、第1の画像(4)と第2の画像(5)を形成するインキに応じて、各画像部の面積率を調整することで、正反射光下で第1の有意情報が不可視になる効果を得ることができる。なお、プロセスインキにおいては、ブラックインキ、シアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキの順に着色力が高く、着色力が高いインキを用いる程、各画像部の面積率差の許容範囲は、狭くなる。
【0033】
各画像部の面積率を調整する具体的な例として、例えば、ブラックインキを用いて第2の画像(5)を形成した印刷物において、潜像部(5A)と共通画像部(5B)の面積率差を50%とした場合に、正反射光下で第1の有意情報が消失しない場合、潜像部(5A)と共通画像部(5B)の面積率差を50%より小さくすることで、正反射光下で第1の有意情報が消失する効果を得ることができる。また、イエローインキを用いて第2の画像(5)を形成した場合、基本的には、イエローインキがブラックインキに比べて着色力が低い分、潜像部(5A)と共通画像部(5B)の面積率差は、ブラックインキを用いた場合よりも広くすることができるが、イエローインキと同じ色相の光輝性インキの光沢にもよることから、正反射光下での第1の有意情報の消失効果を確認しながら面積率を調整すればよい。
【0034】
(光輝性インキ)
第1の画像(4)を形成する光輝性インキは、光を強く反射する特性を備えた光輝性材料をインキ中に含んだインキであって、基材(2)と異なる色彩のインキであれば、如何なるインキを用いてもよい。オフセットインキとして市販されているインキとしては、メタリックインキと呼ばれる銀インキや金インキ等が存在し、特殊なパール顔料を配合したパールインキ等を用いてもよい。加えて、光輝性材料の他に着色顔料を混合してもよく、着色顔料の色は、黒、赤、青及び黄色等のいずれの色相であってもよい。
【0035】
光輝性インキに含まれる光輝性材料は、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉末、錫粉末、真鍮粉末又はリン化鉄等の一般的な金属粉顔料等があり、虹彩色パール顔料、鱗片状顔料等の一般的なパール顔料、ガラスフレーク顔料及びコレステリック液晶顔料等の機能性顔料等を用いてもよい。
【0036】
第2の画像(5)を形成する着色インキは、拡散反射光下で光輝性インキと同じ色相であればよく、一般的なプロセスCMYKインキ(シアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキ、ブラックインキ)、特色インキを用いる。例えば、光輝性インキが銀インキの場合、着色インキは、黒又は灰色のインキを用いればよく、光輝性インキが金インキの場合、金インキと色相が同じ特色インキ又はシアンインキ、マゼンタインキ及びイエローインキを所定の割合で混合して同じ色相にしたインキを用いればよい。なお、着色インキに蛍光顔料、燐光顔料及び蓄光顔料等の発光顔料や、赤外吸収顔料、フォトクロミック顔料、示温材料及びサーモクロミック材料等の機能性材料を加えてもよく、この場合、画像のスイッチ効果に加えて各種の機能性を追加することができる。着色インキは、グロス系でもマット系でもよいが、基材(2)を問わず、高いスイッチ効果を発現させるには、マット系の着色インキを用いることが望ましい。マット系のインキの方が正反射光下において第2の有意情報のコントラストを高めやすく、画像のチェンジ効果が高くなるためである。
【0037】
本発明における偽造防止印刷物の印刷方式は、オフセット印刷、フレキソ印刷、凸版印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷及び凹版印刷等のあらゆる印刷方式で形成することが可能である。また、金属インキを用いることが可能であれば、IJP、レーザプリンタ及び昇華型プリンタ等の各種デジタル出力機でも形成することができ、この場合には、一枚ごとの出力物の情報を変える、いわゆる、可変印刷を実施することができる。
【0038】
本実施の形態においては、「星型」の図柄を現す領域(3A)が、残りの領域(3B)よりも濃い構成の例について説明したが、本発明の偽造防止印刷物(1)において、「星型」の図柄を現す領域(3A)が、残りの領域(3B)よりも淡い構成としてもよい。また、本実施の形態においては、第1の有意情報が「星型」の図柄を現し、第2の有意情報が「月」の図柄を現した例ついて説明したが、第1の有意情報と第2の有意情報が現す図柄は、これに限定されるものではなく、他の図柄、文字、記号、マークであってもよい。また、第1の有意情報と第2の有意情報が現す図柄は、写真や絵画等の階調画像であってもよく、第1の有意情報と第2の有意情報が階調画像として形成される例について、以下に説明する。
【0039】
(第1の有意情報が階調画像)
図5(a)は、拡散反射光下で視認される第1の有意情報を2階調の「星型」の図柄とした例の印刷模様(3)を示す図であり、「星型」の図柄の左半分と右半分の濃度が異なった例(左半分の方が濃い)である。また、
図5(b)は、
図5(a)に示す印刷模様(3)を構成する第1の画像(4)を示す図であり、
図5(c)は、
図5(a)に示す印刷模様(3)を構成する第2の画像(5)を示す図である。
【0040】
図5(b)に示す第1の画像(4)のうち、第1の画像部(4A)は、第1の有意情報が現す「星型」の濃度に対応して部分的に濃度が異なる領域(4
A1、4
A2)から成り、光輝性インキによって形成される。濃度が異なる構成については、前述のように、第1の画像部(4A)において、印刷網点の密度又は大きさが異なることで表現される。また、
図5(c)に示す第2の画像(5)のうち、共通画像部(5B)は、第1の有意情報が現す「星型」の濃度に対応して部分的に濃度が異なる領域(5
B1、5
B2)から成り、光輝性インキと同じ色相の着色インキによって形成される。濃度が異なる構成については、前述のように、第2の画像部(5)において、印刷網点の密度又は大きさが異なることで表現される。なお、
図5(a)に示す「星型」の図柄の左半分に対応した第1の画像部(4A)の領域(4
A1)と、共通画像部(5B)の領域(5
B1)は、異なるインキによって同じ濃度で形成され、
図5(a)に示す「星型」の図柄の右半分に対応した第1の画像部(4A)の領域(4
A2)と、共通画像部(5B)の領域(5
B2)は、異なるインキによって同じ濃度で形成される。
【0041】
図5に示す印刷模様(3)を備えた偽造防止印刷物(1)においては、拡散反射光下で観察すると、第1の有意情報として、2階調の「星型」の図柄が視認され、正反射光下で観察すると、第2の有意情報として、「月」の図柄が視認される。
図5に示すように、第1の有意情報の濃度に応じて第1の画像部(4A)と共通画像部(5B)を形成した構成においても、正反射光下での作用効果は、前述のとおりであり、光輝性インキによって形成された第1の画像(4)は、正反射して淡く変化することで、濃度の差が小さくなり、不可視となる。また、第1の画像(4)からの正反射光が極めて強く感じられることで、第2の画像(5)の濃淡は、見かけ上の圧縮作用が生じ、同じ濃度の「月」の図柄として視認される。
【0042】
図5においては、第1の有意情報が階調画像として形成される構成について、分かり易く説明するために、「星型」の図柄が2階調で表現された例について説明したが、本発明において第1の有意情報は、更に多くの階調で現してもよい。
【0043】
また、本発明の偽造防止印刷物(1)においては、印刷模様(3)の色彩とは異なる色相の着色インキによって形成した模様を、印刷模様(3)に重ねて形成してもよい(図示せず)。具体的には、印刷模様(3)から視認できる「星型」と「月」の図柄が視認できる程度に間隔を空けて配置した、印刷網点から成る別の図柄を現す模様や、直線又は曲線から成る地紋、彩紋等を形成してもよい。これは、拡散反射光下と正反射光下の境界となる観察角度において、第1の有意情報と第2の有意情報の両方が視認されることを避けるためであり、印刷模様(3)と異なる色相の模様を形成することで、その模様が強調されて見えるからである。
【0044】
また、特許文献2及び特許文献3に記載の構成を組み合わせて、拡散反射光下と正反射光下の観察で視認される画像が変化する印刷模様(3)を形成してもよい。
【0045】
(カラー)
第2の画像(5)の変形例として、第2の画像(5)が、複数の色の着色インキから成る画像によって形成された構成の偽造防止印刷物(1)について説明する。第2の画像(5)の変形例の構成は、第1の画像(4)を形成する光輝性インキの色の分解色を有する複数の着色インキによって第2の画像(5)を形成したものであり、具体例として、第1の画像(4)を黄土色の金インキを用いて形成すると、シアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキを用い、各インキによる画像を所定の濃度で構成することで、第1の画像(4)と同じ色相の第2の画像(5)を形成することができる。なお、分解色とは、一般的には、カメラやスキャナによって撮影した画像を、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)フィルタを用いて色分解された色のことであり、これによって、シアン色、マゼンタ色、イエロー色、ブラック色が抽出される。そして、抽出されたシアン色、マゼンタ色、イエロー色、ブラック色の画像を合成すると、色分解する前の画像と同じ色の画像を作成することができる。
【0046】
この場合、黄土色の第2の画像(5)(
図6(a))は、シアンインキによって形成された
図6(b)に示す第2-1の画像(5-1)と、マゼンタインキによって形成された
図6(c)に示す第2-2の画像(5-2)と、イエローインキによって形成された
図6(d)に示す第2-3の画像(5-3)から成る。また、第2-1の画像(5-1)は、
図6(b)に示すように、第1の有意情報の濃度に応じて濃度が異なり、第2-1の潜像部(5A-1)と第2-1の共通画像部(5B-1)に区分けされ、第2-2の画像(5-2)は、
図6(c)に示すように、第1の有意情報の濃度に応じて濃度が異なり、第2-2の潜像部(5A-2)と第2-2の共通画像部(5B-2)に区分けされ、第2-3の画像(5-3)は、
図6(d)に示すように、第1の有意情報の濃度に応じて濃度が異なり、第2-3の潜像部(5A-3)と第2-3の共通画像部(5B-3)に区分けされて成る。なお、
図6に示す第2の画像(5)において、共通画像部(5B)の濃度が潜像部(5A)の濃度より高い場合、第2-1の共通画像部(5B-1)の濃度は、第2-1の潜像部(5A-1)の濃度よりも高く、詳細には、第2-1の共通画像部(5B-1)は、第2-1の潜像部(5A-1)よりも、シアンインキによって形成された網点の密度が高いか又は大きさが大きい構成となっている。同様に、マゼンタインキによって形成される第2-2の画像(5-2)及びイエローインキによって形成される第2-3の画像(5-3)もまた、印刷網点の密度又は大きさが異なる。
【0047】
図6(b)から
図6(d)に示す画像を基材(2)に形成すると、減法混色の原理により各画像(5-1、5-2、5-3)の色が混色して、第2の画像(5)全体は黄土色であり、第1の画像(4)と同じ色相で視認される。詳細には、拡散反射光下の観察では、第2-1の潜像部(5A-1)、第2-2の潜像部(5A-2)及び第2-3の潜像部(5A-3)の色が混色して、黄土色の潜像部(5A)となり、黄土色の金インキによって形成された背景部(4B)と潜像部(5A)が同じ色として見える。また、拡散反射光下の観察では、第2-1の共通画像部(5B-1)、第2-2の共通画像部(5B-2)及び第2-3の共通画像部(5B-3)の色が混色して、黄土色の共通画像部(5B)となり、黄土色の金インキによって形成された第1の画像部(4A)と共通画像部(5B)が同じ色として見える。
【0048】
一般的にCMYKインキを用いることで、多彩な色を表現できることから、第1の画像(4)を形成する光輝性インキの色に対応して、CMYKインキを用いることで、第1の画像(4)と同じ色相の第2の画像(5)を形成することができる。特に、インクジェットインクや、トナーを用いた印刷機には、CMYKインキが用いられていることから、当該装置によって、第2の画像(5)を第1の画像(4)の色相に対応させて形成することができる。
【0049】
ここでは、黄土色の金インキに対して、CMYインキを用いる例について説明したが、本発明において、複数の色の着色インキを用いて第2の画像(5)を形成する場合、第1の画像(4)の色相に対応した関係を満たしていればよく、CMYKインキのうちの少なくとも2色の用いてもよいし、他の特色インキを用いてもよい。また、本発明でいう分解色とは、第2の画像(5)を構成するインキの混色した色が、光輝性インキと同じ色相になる関係を満たすものであれば、前述した色分解の方法によって得られるCMYKの色に限定されるものではなく、市販されているインキの中から、適宜、組み合わせたり、色を調整して用いるインキの色であってもよいし、特色インキの色であってもよい。また、第2の画像(5)を構成するインキの混色した色と同じ色相となるように、光輝性インキの色を調整してもよい。
【0050】
図6に示す第2の画像(5)は、黄土色の色相の図柄の「月」が形成されたものであるが、CMYKインキを用いて第2の画像(5)を形成し、かつ、CMYKインキの濃度を部分的に異ならせた場合、例えば、部分的にシアンインキの濃い領域や、マゼンタインキの濃い領域を設けると、正反射光下でカラーの潜像画像が視認できる印刷物となる。
【0051】
(第2の実施の形態)
第2の実施の形態では、第1の実施の形態の偽造防止印刷物(1)が備える印刷模様(3)を形成するためのデータを作成する装置(M)と作成方法について説明する。
【0052】
(偽造防止印刷物用画像データの作成装置)
図7は、偽造防止印刷物用画像データの作成装置(M)の構成を示すブロック図であり、
図7に示す偽造防止印刷物用画像データの作成装置(M)は、入力手段(M1)、編集手段(M2)、表示手段(M3)、データベース(M4)及び通信インターフェース(M5)を備えている。なお、表示手段(M3)は偽造防止印刷物用のデータの作成に必須の構成とするものではない。また、
図7に示す印刷手段(P)は、偽造防止印刷物用画像データの作成装置(M)によって作成されたデータを基に、基材(2)に印刷模様(3)を印刷する手段であって、偽造防止印刷物用のデータの作成に必須の構成とするものではないが、印刷手段(P)を後述するレーザープリンタ、インクジェットプリンタによって構成して、偽造防止印刷物用画像データの作成装置(M)と接続して用いることで、データの生成から偽造防止印刷物(1)の作製までを一つの装置として行うことができる。
【0053】
(入力手段)
入力手段(M1)は、画像入力手段(M1a)と情報入力手段(M1b)とで構成される。画像入力手段(M1a)は、拡散反射光下で観察した際に視認される第1の有意情報の基となる画像(以下、「第1の基画像(10)」という。)と、正反射光下で観察した際に視認される第2の有意情報の基となる画像(以下、「第2の基画像(20)」という。)を入力する手段である。第1の基画像(10)と第2の基画像(20)の入力は、デジタルカメラによる撮像、スキャナによるスキャニング等や、データベース(M4)又は通信インターフェース(M5)によって接続された外部のデータベースサーバに、予め記憶された画像を読み出して行う。
【0054】
情報入力手段(M1b)は、マウス、キーボード等によって構成され、Adobe(登録商標)社製の画像処理ソフトウェアであるPhotoshop(登録商標)の画像処理ソフトを用いて、直接、第1の基画像(10)と第2の基画像(20)を作成してもよい。また、情報入力手段(M1b)は、編集手段(M2)で用いる濃度補正の値の入力や、各画像処理を実行する指示の入力を行ってもよい。
【0055】
(編集手段)
図7に示す編集手段(M2)は、グレースケール変換手段(M2a)、濃度補正手段(M2b)、反転手段(M2c)、画像生成手段(M2d)とで構成されている。グレースケール変換手段(M2a)は、画像入力手段(M1a)によって入力された第1の基画像(10)と第2の基画像(20)が、RGB画像、モノクロの2値画像の場合、グレースケール画像(8bit)に変換する。
【0056】
濃度補正手段(M2b)は、第1の基画像(10)の濃度を補正する。この際、光輝性インキによって形成する画像用の濃度補正と、光輝性インキと同じ色相のインキによって形成する画像用の濃度補正を行う。
【0057】
反転手段(M2c)は、グレースケール形式の第2の基画像(20)の濃度を反転する処理を行う。
【0058】
画像生成手段(M2d)は、濃度補正した第1の基画像に、マスク処理をして、第1の画像用データと第2の画像用データの生成を行う。また、後述する印刷手段(P)が、偽造防止印刷物用画像データの作成装置(M)によって生成された画像データを基材に直接、印刷するデジタル印刷装置の場合、画像生成手段(M2d)は、第1の画像用データと第2の画像用データを合成した一つの画像データとする処理を行ってもよい。
【0059】
編集手段(M2)において、グレースケール変換手段(M2a)による変換処理、濃度補正手段(M2b)による濃度補正の処理、反転手段(M2c)による反転処理及び画像生成手段(M2d)によるマスク処理の詳細については、後述するが、Adobe(登録商標)社製の画像処理ソフトウェアであるPhotoshop(登録商標)の機能自体や、個別の機能を組み合わせることで行うことができる。
【0060】
(他の手段)
印刷手段(P)は、レーザープリンタ、インクジェットプリンタ等のコンピュータからの画像を印刷可能な印刷装置や偽造防止印刷物用画像データの作成装置(M)が作成した画像データを基に、公知の製版方法により製版した版面を用いるオフセット印刷、凸版印刷等の印刷機構を備えた印刷機であり、特に限定されるものではない。表示手段(M3)は、パソコンのモニタ、専用のモニタ等、特に限定されるものではない。また、通信インターフェース(M5)は、USB、RS-232C、IEEE1394等、特に限定されるものではない。
【0061】
(偽造防止印刷物用画像データの作成方法)
次に、偽造防止印刷物用画像データの作成装置(M)を用いて偽造防止印刷物用画像データを作成する方法について、
図8を用いて説明する。なお、本実施の形態の偽造防止印刷物用画像データの作成方法において作成する偽造防止印刷物用画像データは、第1の実施の形態で説明した偽造防止印刷物(1)に対応したもので、第1の有意情報は、「星型」の図柄であり、第2の有意情報は、「月」の図柄とした例について説明する。また、本発明の偽造防止印刷物用画像データの作成方法について、分かり易く説明するため、第1の画像(4)を銀インキにより形成し、第2の画像(5)を黒インキにより形成する例について説明する。
【0062】
(基画像設定工程)
図8に示す符号(f1)は、拡散反射光下で視認される第1の有意情報の基となる第1の基画像(10)と、正反射光下で視認される第2の有意情報の基となる第2の基画像(20)を、グレースケール画像の形式で設定する工程(以降、「基画像設定工程(f1)」という。)である。
図9(a)は、基画像設定工程(f1)によって設定された第1の基画像(10)を示す図であり、第1の有意情報を現す「星型」の図柄を含む画像となっている。また、
図9(b)は、基画像設定工程(f1)によって設定された第2の基画像(20)を示す図であり、第2の有意情報を現す「月」の図柄を含む画像となっている。
【0063】
第1の基画像(10)と第2の基画像(20)の設定は、画像入力手段(M1a)により、デジタルカメラによる撮像や、予めデータベース(M4)に登録された画像の読み出し等によって行う。なお、画像入力手段(M1a)により入力された画像がグレースケール画像の場合、そのまま第1の基画像(10)と第2の基画像(20)として設定し、仮にRGB画像、モノクロの2値画像の場合、グレースケール変換手段(M2a)によりグレースケール画像(8bit)に変換して第1の基画像(10)と第2の基画像(20)として設定する。なお、グレースケール変換手段(M2a)が行う処理は、例えば、Adobe(登録商標)社製の画像処理ソフトウェアであるPhotoshop(登録商標)のモード変換処理機能を用いて行うことができる。第1の基画像(10)と第2の基画像(20)は、同じ解像度の画像(縦横の画素数が同じ)を設定する必要があり、入力された画像の解像度が異なる場合は、解像度を変更して、同じ解像度の画像とすればよい。なお、解像度を変更する処理は、PhotoShop(登録商標)の解像度変更機能により行うことができる。
【0064】
(濃度補正工程)
図8に示す符号(f2)は、第1の基画像(10)の濃度補正を行う工程(以降、「濃度補正工程(f2)」という。)であり、銀インキによって形成する第1の画像(4)用のデータを形成するための第1の濃度補正処理(f2-1)と、黒インキによって形成する第2の画像(5)用のデータを形成するための第2の濃度補正処理(f2-2)を、濃度補正手段(M2b)により行う。これは、銀インキによって形成する第1の画像(4)と、黒インキによって形成する第2の画像(5)の濃度バランスを調整して、第1の実施の形態で説明した、異なるインキを用いて形成される第1の画像部(4A)と共通画像部(5B)、更に、背景部(4B)と潜像部(5A)を同じ濃度(色)に形成するための処理である。
【0065】
(第1の濃度補正処理)
第1の濃度補正処理(f2-1)は、具体的には、
図10(a)に示す第1の基画像(10)を、
図10(b)に示す第1のトーンカーブ(T1)を適用して、
図10(c)に示す第1の濃度補正画像(11)を生成する。
図10(b)に示す第1のトーンカーブ(T1)は、第1の基画像(10)における網点面積率の0%を75%とし、第1の基画像(10)の網点面積率の100%を100%とする2点を直線で結び、濃度変換するための変換式に相当する。
図10(b)に示す第1のトーンカーブ(T1)を適用することにより、第1の基画像(10)は、濃度が圧縮されるとともに、画像全体が暗い(シャドー)第1の濃度補正画像(11)に変換される。なお、第1の濃度補正処理(f2-1)として、
図10(b)に示すトーンカーブを適用(設定)する処理は、例えば、Adobe(登録商標)社製の画像処理ソフトウェアであるPhotoshop(登録商標)のトーンカーブの変更機能を用いて所定のトーンカーブを設定することで可能であり、本発明の濃度補正手段(M2b)は、当該機能を用いればよく、第2の濃度補正処理(f2-2)においても、これと同様である。
【0066】
(第2の濃度補正処理)
第2の濃度補正処理(f2-2)は、具体的には、
図10に示すように、
図10(a)に示す第1の基画像(10)を、
図10(d)に示す第2のトーンカーブ(T2)を適用して、
図10(e)に示す第2の濃度補正画像(12)を生成する。
図10(d)に示す第2のトーンカーブ(T2)は、第1の基画像(10)における網点面積率の0%を20%とし、第1の基画像(10)の網点面積率の100%を33%とする2点を直線で結び、濃度変換するための変換式に相当する。
図10(d)に示す第2のトーンカーブ(T2)を適用することにより、第1の基画像(10)は、濃度が圧縮されるとともに、画像全体が明るい(ハイライト)第2の濃度補正画像(12)に変換される。
【0067】
濃度補正工程(f2)で用いる第1のトーンカーブ(T1)と第2のトーンカーブ(T2)は、異なるインキを用いて形成される第1の画像部(4A)と共通画像部(5B)、更に、背景部(4B)と潜像部(5A)を同じ濃度(色)に形成するための濃度補正を行うため、対応したものとなっている。具体的には、
図3に示す光輝性インキによって形成する第1の画像部(4A)と、黒インキによって形成する共通画像部(5B)を、同じ色に形成するため、色相は同じであるが、明暗が異なる銀インキと黒インキを用いた画像が同じ色になるように、二つのトーンカーブ(T1、T2)が予め設計されている。例えば、
図10(b)に示す第1のトーンカーブ(T1)において、黒インキよりも明るい銀インキによって75%の面積率で形成した画像と、
図10(d)に示す第2のトーンカーブ(T2)において、銀インキよりも暗い黒インキによって20%の面積率で形成した画像が、同じ色の画像として形成され、
図10(b)に示す第1のトーンカーブ(T1)において、明るい銀インキによって100%の面積率で形成した画像と、
図10(d)に示す第2のトーンカーブ(T2)において、銀インキよりも暗い黒インキによって33%の面積率で形成した画像が、同じ色の画像として形成される。すなわち、第1のトーンカーブ(T1)と第2のトーンカーブ(T2)は、色相が同じで明るさが異なるインキによって形成される画像が、同じ色で形成されるための面積率を対応させた変換式に相当する。
【0068】
第1の画像(4)と第2の画像(5)を形成する二つのインキに対して、有彩色の色も含め、このような条件を予め確認しておき、偽造防止印刷物用画像データの作成装置(M)のデータベース(M4)に保存して用いることで、作製した印刷物の色味を確認して、濃度調整を要することなく、簡単に偽造防止印刷物(1)を作製することができる。
【0069】
第2の実施の形態の濃度補正工程(f2)について、銀インキと黒インキに対応した第1のトーンカーブ(T1)と、第2のトーンカーブ(T2)について説明したが、銀インキと銀インキよりも明るい灰色のインキを用いる場合、
図10(b)と
図10(d)に示すトーンカーブが入れ替わり、銀インキによって形成される第1の画像(4)の面積率が、灰色のインキによって形成される第2の画像(4)の面積率よりも低くなるような第1のトーンカーブ(図示せず)となり、灰色のインキによって形成される第2の画像(5)の面積率は、第1の画像(4)よりも高くなるような第2のトーンカーブ(図示せず)となる。
【0070】
(画像データ生成工程)
図8に示す符号(f3)は、光輝性インキよって形成する第1の画像用のデータの生成処理(f3-1)と、着色インキによって形成する第2の画像用のデータの生成処理(f3-2)を行う工程(以降、「画像データ生成工程(f3)」という。)である。
【0071】
(第1の画像用データの生成処理)
図11は、第1の画像用データの生成処理(f3-1)によって、第1の画像用データ(13)を生成する処理を模式的に示す図である。第1の画像用データの生成処理(f3-1)は、画像生成手段(M2d)により、第1の濃度補正処理(f2-1)によって生成された第1の濃度補正画像(11)に、第2の基画像(20)を用いてマスク処理し、
図11に示す第1の画像用データ(13)を生成する。
【0072】
第2の基画像(20)を用いたマスク処理とは、第1の濃度補正画像(11)と第2の基画像(20)を構成する画素同士を、所定の演算処理し、第2の有意情報である「月」の図柄を構成する画素と重なる第1の濃度補正画像(11)を構成する画素の面積率を下げることである。具体的には、
図11に示す第1の濃度補正画像(11)の基準位置(A)と、第2の基画像(20)の基準位置(A)から同じ位置にある画素同士において、第2の基画像(20)の画素が「月」の図柄を現す場合、第1の濃度補正画像(11)の画素の面積率に「0」を乗算することで、第1の濃度補正画像(11)の画素の面積率を下げることができる。また、
図11に示す第1の濃度補正画像(11)の基準位置(A)と、第2の基画像(20)の基準位置(A)から同じ位置にある画素同士において、第2の基画像(20)の画素が「月の背景」を現す場合、第1の濃度補正画像(11)の画素の面積率に「1」を乗算することで、第1の画像(4)を形成するための第1の画像用データ(13)を得ることができる。なお、第1の画像用データの生成処理(f3-1)で行うマスク処理は、PhotoShop(登録商標)のマスク機能を用いて行うことができ、第2の画像用データの生成処理(f3-2)についても同じである。
【0073】
本実施の形態において、第1の画像用データの生成処理(f3-1)に用いる第2の基画像(20)が現す「月」の図柄は、単一の濃度で構成された例であるが、本発明において、第2の画像(20)が現す図柄は、写真や人物のような階調画像であってもよく、この場合、階調画像を現す画素に対応した第1の濃度補正画像(11)を構成する画素の面積率に「0」を乗算すればよい。
【0074】
(第2の画像用データの生成処理)
図12は、第2の画像用データの生成処理(f3-2)によって、第2の画像用データ(14)を生成する処理を模式的に示す図である。第2の画像用データの生成処理(f3-2)は、画像生成手段(M2d)により、第2の濃度補正処理(f2-2)によって生成された第2の濃度補正画像(12)に、第2の基画像(20)の階調を反転した反転画像(21)を用いてマスク処理し、
図12に示す第2の画像用データ(14)を生成する。なお、反転画像(21)は、反転手段(M2c)によって第2の基画像(20)の階調を反転することで生成され、具体的には、PhotoShop(登録商標)の階調反転機能を用いて行うことができる。
【0075】
反転画像(21)を用いたマスク処理とは、第2の濃度補正画像(12)と反転画像(21)を構成する画素同士を、所定の演算処理し、第2の有意情報である「月の背景」の図柄を構成する画素と重なる第2の濃度補正画像(12)を構成する画素の面積率を下げることである。具体的には、
図12に示す第2の濃度補正画像(12)の基準位置(B)と、反転画像(21)の基準位置(B)から同じ位置にある画素同士において、反転画像(21)の画素が「月の背景」を現す場合、第2の濃度補正画像(12)の画素の面積率に「0」を乗算することで、第2の濃度補正画像(12)の画素の面積率を下げることができる。また、
図12に示す第2の濃度補正画像(12)の基準位置(B)と、反転画像(21)の基準位置(B)から同じ位置にある画素同士において、反転画像(21)の画素が「月」を現す場合、第2の濃度補正画像(12)の画素の面積率に「1」を乗算することで、第2の画像(5)を形成するための第2の画像用データ(14)を得ることができる。
【0076】
図11に示す第1の画像用データ(13)と
図12に示す第2の画像用データ(14)から見て分かるように、銀インキによって形成する第1の画像用データ(13)は、第2の画像用データ(14)よりも、面積率の高い(濃度が濃い)画像データとなっている。しかし、実際に第1の画像用データ(13)を用いて、銀インキを用いて印刷した第1の画像(4)と、濃い黒色のインキにより第2の画像用データ(14)を用いて形成した第2の画像(5)の対応した領域は、同じ色の画像として形成される。
【0077】
本発明の偽造防止印刷物用画像データの作成方法により作成された第1の画像用データ(13)と第2の画像用データ(14)は、別々にデータベース(M4)に保存してもよいし、画像生成手段(M2d)により合成した一つの画像データとしてデータベース(M4)に保存してもよい。
【0078】
偽造防止印刷物用画像データの作成方法により作成された第1の画像用データ(13)と第2の画像用データ(14)を、レーザープリンタ、インクジェットプリンタ等の出力手段(T)により、基材(2)に印刷することで偽造防止印刷物(1)を作製することができる。なお、第1の画像用データ(13)と第2の画像用データ(14)又はそれらを合成した画像データは、ビットマップ、JPEG等の形式は特に限定はない。PDF(Adobe Portable Document format)形式の場合、CMYKの各色のインキ用の画像データと光輝性インキ用の画像データとして保存することができ、PDF形式の画像データをそのまま用いて、光輝性インキを印刷できるデジタル印刷機により、第1の画像用データ(13)と第2の画像用データ(14)を印刷することができる。
【0079】
また、保存したデータを用いて、公知の製版工程により銀インキ用の版面と黒インキ用の版面を作製し、所定の印刷機により印刷することで偽造防止印刷物(1)を作製することができる。また、本発明の偽造防止印刷物用画像データの作成方法により作成された第1の画像用データ(13)と第2の画像用データ(14)を、表示手段(M3)に表示して、画像データが生成されたことを確認できるようにしてもよい。
【0080】
本発明の偽造防止印刷物用画像データの作成方法の、第1の画像データ生成処理(f3-1)及び第2の画像データ生成処理(f3-2)において行うマスク処理は、第2の基画像(20)又は反転画像(21)の画素が「月」又は「月の背景」を現すかにより「1」又は「0」を乗算するが、これとは異なり、第1の濃度補正画像(11)と第2の濃度補正画像(12)に「0」から「1」の間の値を乗算とすると、特許文献3の印刷画像を形成するための画像データを生成することができる。この場合、詳細には、第1の濃度補正画像(11)と第2の濃度補正画像(12)に乗算する値の和が「1」となる条件で、マスク処理を行う。なお、マスク処理に用いる第2の画像(20)が現す図柄は、写真や人物のような階調画像であってもよい。
【0081】
(偽造防止印刷物用画像データの作成方法)
次に、第1の画像(4)を形成する光輝性インキの色の分解色を有する複数の色の着色インキから成る画像によって、第2の画像(5)が構成されて成る偽造防止印刷物(1)の画像データを作成する方法について、
図13を用いて説明する。なお、本実施形態の偽造防止印刷物用画像データの作成方法について分かり易く説明するため、第1の画像(4)を金インキにより形成し、第2の画像(5)をシアンインキ、マゼンタインキ及びイエローインキにより形成する例について説明する。この場合の基本的な工程は、
図8に示した工程と同様であるが、第2の画像(5)を形成するための画像データが、シアンインキ用、マゼンタインキ用、イエローインキ用の画像を生成する点が異なり、以下、詳細について説明する。
【0082】
(基画像設定工程)
図13(a)に示す基画像設定工程(f1’)は、拡散反射光下で視認される第1の有意情報の基となる第1の基画像(10)と、正反射光下で視認される第2の有意情報の基となる第2の基画像(20)を、グレースケール画像の形式で設定する工程である。
【0083】
(濃度補正工程)
図13(a)に示す濃度補正工程(f2’)は、第1の基画像(10)の濃度補正を行う工程であり、金インキによって形成する第1の画像(4)用のデータを形成するための第1の濃度補正処理(f2’-1)と、シアンインキ、マゼンタインキ及びイエローインキによって形成する第2の画像(5)用のデータを形成するための第2の濃度補正処理(f2’-2)を、濃度補正手段(M2b)により行う。
【0084】
第1の実施の形態の
図6で説明したように、シアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキを用いて形成する第2の画像(5)は、第2-1の画像(5-1)、第2-2の画像(5-2)及び第2-3の画像(5-3)から成ることに対応して、
図13(a)に示す第2の濃度補正処理(f2’-2)は、
図13(b)に示すように、それぞれの画像データを生成するための濃度補正が行われる。
【0085】
図13(b)に示すように、第2の濃度補正処理(f2’-2)は、シアンインキによって形成する第2-1の画像(5-1)用のデータを形成するための第2-1の濃度補正処理(f2’-2-1)、マゼンタインキによって形成する第2-2の画像(5-2)用のデータを形成するための第2-2の濃度補正処理(f2’-2-2)及びイエローインキによって形成する第2-3の画像(5-3)用のデータを形成するための第2-3の濃度補正処理(f2’-2-3)から成る。
【0086】
図14は、第1の基画像(10)を濃度補正して、各色のインキに対応した濃度補正画像を生成する処理を示す図である。
図13(a)に示す第1の濃度補正処理(f2’-1)では、
図14(a)に示す第1の基画像(10)に、
図14(b)に示す第1のトーンカーブ(T1)を適用して、
図14(c)に示す第1の濃度補正画像(11)を生成する。
図14(b)に示す第1のトーンカーブ(T1)は、第1の基画像(10)における網点面積率の0%を88%とし、第1の基画像(10)の網点面積率の100%を100%とする2点を直線で結び、濃度変換するための変換式に相当する。
【0087】
図13(b)に示す第2-1の濃度補正処理(f2’-2-1)では、
図14(a)に示す第1の基画像(10)に、
図14(d)に示す第2-1のトーンカーブ(T2-1)を適用して、
図14(e)に示す第2-1の濃度補正画像(12-1)を生成する。
図14(d)に示す第2-1のトーンカーブ(T2-1)は、第1の基画像(10)における網点面積率の0%を21%とし、第1の基画像(10)の網点面積率の100%を29%とする2点を直線で結び、濃度変換するための変換式に相当する。
【0088】
図13(b)に示す第2-2の濃度補正処理(f2’-2-2)では、
図14(a)に示す第1の基画像(10)に、
図14(f)に示す第2-2のトーンカーブ(T2-2)を適用して、
図14(g)に示す第2-2の濃度補正画像(12-2)を生成する。
図14(f)に示す第2-2のトーンカーブ(T2-2)は、第1の基画像(10)における網点面積率の0%を39%とし、第1の基画像(10)の網点面積率の100%を52%とする2点を直線で結び、濃度変換するための変換式に相当する。
【0089】
図13(b)に示す第2-3の濃度補正処理(f2’-2-3)では、
図14(a)に示す第1の基画像(10)に、
図14(h)に示す第2-3のトーンカーブ(T2-3)を適用して、
図14(i)に示す第2-3の濃度補正画像(12-3)を生成する。
図14(h)に示す第2-3のトーンカーブ(T2-3)は、第1の基画像(10)における網点面積率の0%を78%とし、第1の基画像(10)の網点面積率の100%を90%とする2点を直線で結び、濃度変換するための変換式に相当する。
【0090】
図14に示す第1のトーンカーブ(T1)、第2-1のトーンカーブ(T2-1)、第2-2のトーンカーブ(T2-2)及び第2-3のトーンカーブ(T2-3)においても、金インキとシアンインキ、マゼンタインキ及びイエローインキの異なるインキによって形成する第1の画像部(4A)と共通画像部(5B)、更に、背景部(4B)と潜像部(5A)を同じ濃度(色)に形成するための濃度補正を行うため、対応したものとなっている。具体的には、
図14(b)に示す第1のトーンカーブ(T1)により、金インキによって88%の面積率で形成した画像に対して、第2-1のトーンカーブ(T2-1)によってシアンインキを21%、第2-2のトーンカーブ(T2-2)によってマゼンタインキを39%、第2-3のトーンカーブ(T2-3)によってイエローインキを78%として形成した画像が、同じ色の画像として形成される。また、
図14(b)に示す第1のトーンカーブ(T1)により、金インキによって100%の面積率で形成した画像に対して、第2-1のトーンカーブ(T2-1)によってシアンインキを29%、第2-2のトーンカーブ(T2-2)によってマゼンタインキを52%、第2-3のトーンカーブ(T2-3)によってイエローインキを90%として形成した画像が、同じ色の画像として形成される。
【0091】
以上に説明したトーンカーブ(T1、T2-1、T2-2、T2-3)は、金インキによって形成する画像と、シアンインキ、マゼンタインキ及びイエローインキによって形成される画像が、同じ色で形成されるための面積率を対応させた変換式に相当する。金インキとシアンインキ、マゼンタインキ及びイエローインキの関係に限らず、実際に第1の画像(4)と第2の画像(5)の形成に用いるインキに対して、このような濃度補正を行うための条件を予め確認しておき、偽造防止印刷物用画像データの作成装置(M)のデータベース(M4)に保存して用いることで、簡単に偽造防止印刷物(1)を作製することができる。
【0092】
(第1の画像用データの生成処理)
第1の画像用データの生成処理(f3’-1)は、前述のように、第2の基画像(20)を用いてマスク処理を行う。第2の画像(20)を用いたマスク処理については、前述のとおりであり、ここでは、
図14(c)に示す第1の濃度補正画像(11)に、第2の基画像(20)を用いてマスク処理して、
図15(a)に示す第1の画像用データ(13)を生成する。
【0093】
(第2の画像用データの生成処理)
第2の画像用データの生成処理(f3’-2)は、前述のように、第2の基画像(20)を反転処理した反転画像(21)を用いてマスク処理を行う。反転画像(21)を用いたマスク処理については、前述のとおりであり、ここでは、第2-1の濃度補正画像(12-1)、第2-2の濃度補正画像(12-2)及び第2-3の濃度補正画像(12-3)の各々に、反転画像(21)を用いてマスク処理することで、
図15(b)に示す第2-1の画像用データ(14-1)、
図15(c)に示す第2-2の画像用データ(14-2)及び
図15(d)に示す第2-3の画像用データ(14-3)を生成する。
【0094】
画像データ生成工程(f3’)において、生成された画像データは、印刷手段(P)により、基材(2)に印刷することで、偽造防止印刷物(1)を作製することができる。前述のように、金インキ用の第1の画像用データ(13)、シアンインキ用の第2-1の画像用データ(14-1)、マゼンタインキ用の第2-2の画像用データ(14-2)及びイエローインキ用の第2-3の画像用データ(14-3)を備えたPDF(Adobe Portable Document format)形式の場合、PDF形式の画像データをそのまま用いて、光輝性インキを印刷できるデジタル印刷機により印刷することができる。
【0095】
図13に示す偽造防止印刷物用画像データの作成方法について、第2の画像(5)をシアンインキ、マゼンタインキ及びイエローインキによって形成する例について説明したが、第1の画像(4)と同じ色の第2の画像(5)を形成できれば、用いるインキは、これに限定されるものではなく、ブラックインキを加えてもよいし、2色のインキを用いてもよいし、シアンインキ、マゼンタインキ及びイエローインキの他に特色インキを用いてもよい。
【0096】
以下、前述の発明を実施するための形態にしたがって、具体的に作製した偽造防止印刷物の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【0097】
(実施例1)
実施例1は、
図1から
図5に示す構成の偽造防止印刷物(1)を銀インキと黒インキを用いて形成する例であり、
図8に示す作成方法により、偽造防止印刷物用の画像データを作成して基材(2)に印刷した例について説明する。
【0098】
はじめに、基画像設定工程(f1)として、
図9(a)に示す「星型」の図柄を現すグレースケール画像を、データベース(M4)から読み込んで第1の基画像(10)とし、
図9(b)に示す「月」の図柄を現すグレースケール画像をデータベース(M4)から読み込んで第2の基画像(20)として設定した。なお、第1の基画像(10)と第2の基画像(20)の画像サイズは、1000ピクセル×1000ピクセルの画像であり、第1の基画像(10)の「星型」の図柄の濃度は「255」、その周りの濃度は、「0」であり、第2の基画像(20)の「月」の図柄の濃度は、「255」、その周りの濃度は、「0」である。
【0099】
次に、濃度補正工程(f2)の第1の濃度補正処理(f2-1)として、Photoshop(登録商標)のトーンカーブの変更機能を用い、
図10(b)に示す第1のトーンカーブ(T1)を適用して、
図10(c)に示す第1の濃度補正画像(11)を生成した。なお、第1のトーンカーブ(T1)は、銀インキ(CT202916 富士ゼロックス(株)製)によって形成する第1の画像(4)の各部が、銀インキによりも濃い黒インキ(CT202904 富士ゼロックス(株)製)によって形成する第2の画像(5)の各部と同じ色彩になるように形成するための濃度補正処理であり、第1の基画像(10)における網点面積率の0%を75%とし、第1の基画像(10)の網点面積率の100%を100%とする2点を直線で結ぶトーンカーブ(T1)を適用した。
【0100】
また、濃度補正工程(f2)の第2の濃度補正処理(f2-2)として、Photoshop(登録商標)のトーンカーブの変更機能を用い、
図10(d)に示す第2のトーンカーブ(T2)を適用して、
図10(e)に示す第2の濃度補正画像(12)を生成した。なお、第2のトーンカーブ(T2)は、黒インキ(CT202904 富士ゼロックス(株)製)によって形成する第2の画像(5)の各部が、黒インキよりも淡い銀インキ(CT202916 富士ゼロックス(株)製)によって形成する第1の画像(4)の各部と同じ色彩になるように形成するための濃度補正処理であり、第2の基画像(10)における網点面積率の0%を20%とし、第1の基画像(10)の網点面積率の100%を33%とする2点を直線で結ぶトーンカーブ(T2)を適用した。
【0101】
次に、画像データ生成工程(f3)の第1の画像用データの生成処理(f3-1)として、
図11に示すように、第2の基画像(20)を用いて第1の濃度補正画像(11)をマスク処理し、第1の画像用データ(13)を生成した。また、第2の画像用データの生成処理(f3-2)として、
図12に示すように、第2の基画像(20)の階調を反転した反転画像(21)を用いて第2の濃度補正画像(12)をマスク処理し、第2の画像用データ(14)を生成した。なお、マスク処理は、PhotoShop(登録商標)のマスク機能を用いて行い、反転画像(21)の生成は、PhotoShop(登録商標)の階調反転機能を用いて行った。画像データ生成工程(f3)によって生成された銀インキ用の第1の画像用データ(13)と黒インキ用の第2の画像用データ(14)は、PDF(Adobe Portable Document format)形式の画像データとして保存した。
【0102】
次に、PDF形式の画像データを用いて、銀インキ(CT202916 富士ゼロックス(株)製)と黒インキ(CT202904 富士ゼロックス(株)製)を備えたデジタル印刷機により、基材(2)に印刷模様(3)を形成して実施例1の偽造防止印刷物(1)を作製した。
【0103】
作製した実施例1の偽造防止印刷物(1)を、拡散反射光下で観察すると、銀インキによって形成した第1の画像部(4A)と黒インキによって形成した共通画像部(5B)は、同じ濃度の灰色として視認された。また、銀インキによって形成した背景部(4B)と黒インキによって形成した潜像部(5A)もまた、同じ濃度の灰色であり、かつ、第1の画像部(4A)と共通画像部(5B)よりも淡い灰色として視認された。その結果、
図2(a)に示すように、第1の有意情報(「星型」の図柄)が、その周りの領域よりも濃い灰色として視認された。また、実施例1の偽造防止印刷物(1)を、正反射光下で観察すると、
図2(b)に示すように、第2の有意情報である「月」の図柄が視認された。
【0104】
(実施例2)
実施例2は、第1の画像(4)を金インキによって形成し、第2の画像(5)(
図6)をCMYインキによって形成する例であり、
図13に示す作成方法により、偽造防止印刷物用の画像データを作成して基材(2)に印刷した例について説明する。なお、実施例2において、基画像設定工程(f1’)において設定する第1の基画像(10)と第2の基画像(20)は、実施例1と同じ画像を設定した例とし、基画像設定工程(f1)については、ここでは説明を省略する。
【0105】
実施例2の濃度補正工程(f2’)の第1の濃度補正処理(f2’-1)として、
図14(b)に示す第1のトーンカーブ(T1)を適用して、
図14(c)に示す第1の濃度補正画像(11)を生成した。なお、第1の濃度補正画像(11)は、金インキによって形成する第1の画像(4)に対応した画像である。また、濃度補正工程(f2’)の第2-1の濃度補正処理(f2’-2-1)、第2-2の濃度補正処理(f2’-2-2)及び第2-3の濃度補正処理(f2’-2-3)として、
図14(d)に示す第2-1のトーンカーブ(T2-1)、
図14(f)に示す第2-2のトーンカーブ(T2-2)及び
図14(h)に示す第2-3のトーンカーブ(T2-3)をそれぞれ適用して、
図14(e)に示す第2-1の濃度補正画像(12-1)、
図14(g)に示す第2-2の濃度補正画像(12-2)及び
図14(i)に示す第2-3の濃度補正画像(12-3)を生成した。なお、
図14に示す各トーンカーブは、金インキ(CT202909 富士ゼロックス(株)製)によって形成する第1の画像(4)の各部と、シアンインキ(CT202905 富士ゼロックス(株)製)、マゼンタインキ(CT202906 富士ゼロックス(株)製)及びイエローインキ(CT202907 富士ゼロックス(株)製)によって形成する第2の画像(5)の各部が同じ色彩になるように形成するためのトーンカーブである。
【0106】
次に、画像データ生成工程(f3’)は、第1の画像用データの生成処理(f3’-1)として、第2の基画像(20)を用いて第1の濃度補正画像(11)をマスク処理し、
図15(a)に示す第1の画像用データ(13)を生成した。また、第2の画像用データの生成処理(f3’-2)として、第2-1の濃度補正画像(12-1)、第2-2の濃度補正画像(12-2)及び第2-3の濃度補正画像(12-3)の各々に、反転画像(21)を用いてマスク処理することで、
図15(b)に示す第2-1の画像用データ(14-1)、
図15(c)に示す第2-2の画像用データ(14-2)及び
図15(d)に示す第2-3の画像用データ(14-3)を生成した。画像データ生成工程(f3’)によって生成された金インキ用の第1の画像用データ(13)、シアンインキ用の第2-1の画像用データ(14-1)、マゼンタインキ用の第2-2の画像用データ(14-2)及びイエローインキ用の第2-3の画像用データ(14-3)は、PDF(Adobe Portable Document format)形式の画像データとして保存した。
【0107】
次に、PDF形式の画像データを用いて、金インキ(CT202909 富士ゼロックス(株)製)、シアンインキ(CT202905 富士ゼロックス(株)製)、マゼンタインキ(CT202906 富士ゼロックス(株)製)及びイエローインキ(CT202907 富士ゼロックス(株)製)を備えたデジタル印刷機により、基材(2)に印刷模様(3)を形成して実施例2の偽造防止印刷物(1)を作製した。
【0108】
作製した実施例2の偽造防止印刷物(1)を、拡散反射光下で観察すると、金インキによって形成した第1の画像部(4A)とCMYインキによって形成した共通画像部(5B)は、同じ濃度の黄土色として視認された。また、金インキによって形成した背景部(4B)とCMYインキによって形成した潜像部(5A)もまた、同じ濃度の黄土色であり、かつ、第1の画像部(4A)と共通画像部(5B)よりも淡い黄土色として視認された。その結果、
図2(a)に示すように、第1の有意情報(「星型」の図柄)が、その周りの領域よりも濃い黄土色として視認された。また、実施例2の偽造防止印刷物(1)を、正反射光下で観察すると、
図2(b)に示すように、第2の有意情報である「月」の図柄が視認された。
【符号の説明】
【0109】
1 偽造防止印刷物
2 基材
3 印刷模様
4 第1の画像
4A 第1の画像部
4B 背景部
5 第2の画像
5A 潜像部
5B 共通画像部
10 第1の基画像
11 第1の濃度補正画像
12 第2の濃度補正画像
12-1 第2-1の濃度補正画像
12-2 第2-2の濃度補正画像
12-3 第2-3の濃度補正画像
13 第1の画像用データ
14 第2の画像用データ
14-1 第2-1の画像用データ
14-2 第2-2の画像用データ
14-3 第2-3の画像用データ
20 第2の基画像
21 反転画像
30 光源
31 観察者
M 偽造防止印刷物用画像データの作成装置
M1 入力手段
M2 編集手段
M3 表示手段
M4 データベース
M5 通信インターフェース
P 印刷手段
T1 第1のトーンカーブ
T2 第2のトーンカーブ
T2-1 第2-1のトーンカーブ
T2-2 第2-2のトーンカーブ
T2-3 第2-3のトーンカーブ