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特許7529315蒸発潜熱を利用した冷却装置、ミスト噴霧量制御方法及び制御プログラム
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  • 特許-蒸発潜熱を利用した冷却装置、ミスト噴霧量制御方法及び制御プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】蒸発潜熱を利用した冷却装置、ミスト噴霧量制御方法及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   F25B 19/02 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
F25B19/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023186272
(22)【出願日】2023-10-31
【審査請求日】2024-05-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504145308
【氏名又は名称】国立大学法人 琉球大学
(74)【代理人】
【識別番号】100152180
【弁理士】
【氏名又は名称】大久保 秀人
(72)【発明者】
【氏名】寺西 碧人
(72)【発明者】
【氏名】安田 啓太
(72)【発明者】
【氏名】瀬名波 出
(72)【発明者】
【氏名】松田 昇一
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-034377(JP,A)
【文献】特開2013-104598(JP,A)
【文献】特開2010-048482(JP,A)
【文献】特開2021-092370(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115853571(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 19/00 - 19/04
F25D 7/00
F24F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミストの蒸発潜熱を利用して冷却対象物を冷却させる冷却装置であって、
ミストを噴霧する噴霧ノズルと、
主流空気を供給する主流空気供給部と、
ミストと主流空気を混合し、ミストを蒸発させて冷却空気を作るチャンバーと、
冷却空気をチャンバー内から噴出して冷却対象物に衝突させる冷却空気噴出部と、
チャンバー入口に設置され、チャンバー入口における主流空気の温度TSを検出する温度センサと、
チャンバー入口に設置され、チャンバー入口における主流空気の湿度HSを検出する湿度センサと、
冷却対象物に設置され、冷却対象物の温度TTを検出する温度センサと、
噴霧ノズルから噴霧させるミストの供給量Mを制御する制御部と、
からなり、
当該制御部が、
冷却を行う際に計測された値、及び、事前に設定された値に基づき、ミストの蒸発速度mを推定し、蒸発潜熱Qevと水蒸気量を算出する蒸発量算出ステップと、

冷却を行う際に計測された値、及び、事前に設定された値に基づき、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TMを算出し、蒸発量算出ステップで算出した水蒸気量をもとにチャンバー内の位置ごとの想定湿度HMを算出する、主流空気の想定温度湿度算出ステップと、

蒸発量算出ステップ、及び、主流空気の想定温度湿度算出ステップで算出した、蒸発潜熱Qev、水蒸気量、並びに、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TM及び想定湿度HMをもとに、
チャンバー入口からチャンバー出口にかけて、チャンバー内の、時間tにおける位置z=Vtごとの主流空気の想定温度TMと想定液滴径RMを連続的に算出しながら、
チャンバー出口の、主流空気の想定温度TM,Oと想定液滴径RM,Oを算出する想定値算出ステップと、

想定値算出ステップの算出の結果、
次の2つの判定フェーズによって、チャンバー出口を流れるミストが完全蒸発しているか否か、及び、チャンバー出口を流れる主流空気が冷却対象物を冷却できるか否か、を判定する冷却判定ステップと、

チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が、0.1マイクロメートル未満のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発している」と判定し、チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が0.1マイクロメートル以上のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発していない」と判定する第1判定フェーズ、

チャンバー入口における主流空気の温度T S と、チャンバー出口の主流空気の想定温度T M,O と、の差と、
ミストを噴霧しない状態の冷却対象物の温度T T,I と、冷却対象物の耐熱上限温度T T,H と、の差と、
を比較して、
TS-TM,O>TT,I-TT,Hなら「冷却できる」と判定し、TS-TM,O<TT,I-TT,Hなら「冷却できない」と判定する第2判定フェーズ、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合に、修正ミスト供給仮想量「M」を「>Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、修正ミスト供給仮想量「M」を「<Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合、ミストによる冷却では不十分であるから過熱状態になる旨の結果を出力するとともにアラームによる警告を報知するステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、初期ミスト供給仮想量Mまたは修正ミスト供給仮想量「M」を「噴霧する供給量M」として出力し、噴霧ノズルから供給量Mのミストを噴霧するステップと、
を実行することで、
噴霧されたミストが完全蒸発した状態の冷却空気を作り、冷却空気を冷却対象物に噴出しても冷却対象物を濡らさずに冷却できる供給量Mのミストを供給する
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
ミストの蒸発潜熱を利用して冷却対象物を冷却させる冷却装置であって、
ミストを噴霧する噴霧ノズルと、
主流空気を供給する主流空気供給部と、
ミストと主流空気を混合し、ミストを蒸発させて冷却空気を作るチャンバーと、
冷却空気をチャンバー内から噴出して冷却対象物に衝突させる冷却空気噴出部と、
チャンバー入口に設置され、チャンバー入口における主流空気の温度TSを検出する温度センサと、
チャンバー入口に設置され、チャンバー入口における主流空気の湿度HSを検出する湿度センサと、
冷却対象物に設置され、冷却対象物の温度TTを検出する温度センサと、
噴霧ノズルから噴霧させるミストの供給量Mを制御する制御部と、
からなり、
当該制御部が、
冷却を行う際に計測した値の入力を受け付ける計測値入力ステップと、

事前に設定された値の入力を受け付ける設定値入力ステップと、

計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、ミストの蒸発速度mを推定し、蒸発潜熱Qevと水蒸気量を算出する蒸発量算出ステップと、

計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TMを算出し、蒸発量算出ステップで算出した水蒸気量をもとにチャンバー内の位置ごとの想定湿度HMを算出する、主流空気の想定温度湿度算出ステップと、

蒸発量算出ステップ、及び、主流空気の想定温度湿度算出ステップで算出した、蒸発潜熱Qev、水蒸気量、並びに、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TM及び想定湿度HMをもとに、
チャンバー入口からチャンバー出口にかけて、チャンバー内の、時間tにおける位置z=Vtごとの主流空気の想定温度TMと想定液滴径RMを連続的に算出しながら、
チャンバー出口の、主流空気の想定温度TM,Oと想定液滴径RM,Oを算出する想定値算出ステップと、

想定値算出ステップの算出の結果、
次の2つの判定フェーズによって、チャンバー出口を流れるミストが完全蒸発しているか否か、及び、チャンバー出口を流れる主流空気が冷却対象物を冷却できるか否か、を判定する冷却判定ステップと、

チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が、0.1マイクロメートル未満のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発している」と判定し、チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が0.1マイクロメートル以上のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発していない」と判定する第1判定フェーズ、

チャンバー入口における主流空気の温度T S と、チャンバー出口の主流空気の想定温度T M,O と、の差と、
ミストを噴霧しない状態の冷却対象物の温度T T,I と、冷却対象物の耐熱上限温度T T,H と、の差と、
を比較して、
TS-TM,O>TT,I-TT,Hなら「冷却できる」と判定し、TS-TM,O<TT,I-TT,Hなら「冷却できない」と判定する第2判定フェーズ、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合に、修正ミスト供給仮想量「M」を「>Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、修正ミスト供給仮想量「M」を「<Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合、ミストによる冷却では不十分であるから過熱状態になる旨の結果を出力するとともにアラームによる警告を報知するステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、初期ミスト供給仮想量Mまたは修正ミスト供給仮想量「M」を「噴霧する供給量M」として出力し、噴霧ノズルから供給量Mのミストを噴霧するステップと、
を実行することで、
噴霧されたミストが完全蒸発した状態の冷却空気を作り、冷却空気を冷却対象物に噴出しても冷却対象物を濡らさずに冷却できる供給量Mのミストを供給する
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項3】
ミストの蒸発潜熱を利用して冷却対象物を冷却させる冷却装置であって、
ミストを噴霧する噴霧ノズルと、
主流空気を供給する主流空気供給部と、
ミストと主流空気を混合し、ミストを蒸発させて冷却空気を作るチャンバーと、
冷却空気をチャンバー内から噴出して冷却対象物に衝突させる冷却空気噴出部と、
チャンバー入口に設置され、チャンバー入口における主流空気の温度TSを検出する温度センサと、
チャンバー入口に設置され、チャンバー入口における主流空気の湿度HSを検出する湿度センサと、
冷却対象物に設置され、冷却対象物の温度TTを検出する温度センサと、
噴霧ノズルから噴霧させるミストの供給量Mを制御する制御部と、
からなり、
当該制御部が、
冷却を行う際に計測した値の入力を受け付ける計測値入力ステップと、

事前に設定された値の入力を受け付ける設定値入力ステップと、

計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、
次式の質量保存と物質拡散モデルの組み合わせにしたがって、ミストの蒸発速度mを推定し、それにより蒸発潜熱Qevと水蒸気量を算出する蒸発量算出ステップと、
m/4π=RMBDva ln(1+Z)
(式中、Zは水蒸気の空気中への拡散速度を表すスポールディングの物質拡散係数を表す)

計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、
次式の気相へのエネルギー保存にしたがって、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TMを算出し、蒸発量算出ステップで算出した水蒸気量をもとにチャンバー内の位置ごとの想定湿度HMを算出する、主流空気の想定温度湿度算出ステップと、
Bc(T,i-T,i-1)/t=Qev,i+Qin,i
(式中、Qev,iは、蒸発量算出ステップで決定される蒸発潜熱を表し、Qin,i=AK(TS-TM,i)はチャンバー外部からチャンバー内部への吸熱を表す。)
蒸発量算出ステップ、及び、主流空気の想定温度湿度算出ステップで算出した、
蒸発潜熱Qev、水蒸気量、並びに、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TM及び想定湿度HMと、
熱伝導率L、定圧比熱c、主流空気の密度B、水蒸気拡散係数Dvaと、
をもとに、
チャンバー入口からチャンバー出口にかけて、チャンバー内の、時間tにおける位置z=Vtごとの
主流空気の想定温度TMと想定液滴径RM
を連続的に算出しながら、
チャンバー出口の、
主流空気の想定温度TM,Oと想定液滴径RM,O
を算出する想定値算出ステップと、

想定値算出ステップの算出の結果、
次の2つの判定フェーズによって、チャンバー出口を流れるミストが完全蒸発しているか否か、及び、チャンバー出口を流れる主流空気が冷却対象物を冷却できるか否か、を判定する冷却判定ステップと、

チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が、0.1マイクロメートル未満のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発している」と判定し、チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が0.1マイクロメートル以上のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発していない」と判定する第1判定フェーズ、

チャンバー入口における主流空気の温度T S と、チャンバー出口の主流空気の想定温度T M,O と、の差と、
ミストを噴霧しない状態の冷却対象物の温度T T,I と、冷却対象物の耐熱上限温度T T,H と、の差と、
を比較して、
TS-TM,O>TT,I-TT,Hなら「冷却できる」と判定し、TS-TM,O<TT,I-TT,Hなら「冷却できない」と判定する第2判定フェーズ、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合に、修正ミスト供給仮想量「M」を「>Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、修正ミスト供給仮想量「M」を「<Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合、ミストによる冷却では不十分であるから過熱状態になる旨の結果を出力するとともにアラームによる警告を報知するステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、初期ミスト供給仮想量Mまたは修正ミスト供給仮想量「M」を「噴霧する供給量M」として出力し、噴霧ノズルから供給量Mのミストを噴霧するステップと、
を実行することで、
噴霧されたミストが完全蒸発した状態の冷却空気を作り、冷却空気を冷却対象物に噴出しても冷却対象物を濡らさずに冷却できる供給量Mのミストを供給する
ことを特徴とする冷却装置。
【請求項4】
ミストの蒸発潜熱を利用して冷却対象物を冷却させるミスト噴霧量を制御する方法であって、
冷却を行う際に計測された値、及び、事前に設定された値に基づき、ミストの蒸発速度mを推定し、蒸発潜熱Qevと水蒸気量を算出する蒸発量算出ステップと、

冷却を行う際に計測された値、及び、事前に設定された値に基づき、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TMを算出し、蒸発量算出ステップで算出した水蒸気量をもとにチャンバー内の位置ごとの想定湿度HMを算出する、主流空気の想定温度湿度算出ステップと、

蒸発量算出ステップ、及び、主流空気の想定温度湿度算出ステップで算出した、蒸発潜熱Qev、水蒸気量、並びに、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TM及び想定湿度HMをもとに、
チャンバー入口からチャンバー出口にかけて、チャンバー内の、時間tにおける位置z=Vtごとの主流空気の想定温度TMと想定液滴径RMを連続的に算出しながら、
チャンバー出口の、主流空気の想定温度TM,Oと想定液滴径RM,Oを算出する想定値算出ステップと、

想定値算出ステップの算出の結果、
次の2つの判定フェーズによって、チャンバー出口を流れるミストが完全蒸発しているか否か、及び、チャンバー出口を流れる主流空気が冷却対象物を冷却できるか否か、を判定する冷却判定ステップと、

チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が、0.1マイクロメートル未満のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発している」と判定し、チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が0.1マイクロメートル以上のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発していない」と判定する第1判定フェーズ、

チャンバー入口における主流空気の温度T S と、チャンバー出口の主流空気の想定温度T M,O と、の差と、
ミストを噴霧しない状態の冷却対象物の温度T T,I と、冷却対象物の耐熱上限温度T T,H と、の差と、
を比較して、
TS-TM,O>TT,I-TT,Hなら「冷却できる」と判定し、TS-TM,O<TT,I-TT,Hなら「冷却できない」と判定する第2判定フェーズ、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合に、修正ミスト供給仮想量「M」を「>Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、修正ミスト供給仮想量「M」を「<Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合、ミストによる冷却では不十分であるから過熱状態になる旨の結果を出力するとともにアラームによる警告を報知するステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、初期ミスト供給仮想量Mまたは修正ミスト供給仮想量「M」を「噴霧する供給量M」として出力し、噴霧ノズルから供給量Mのミストを噴霧するステップと、
を実行することで、
噴霧されたミストが完全蒸発した状態の冷却空気を作り、冷却空気を冷却対象物に噴出しても冷却対象物を濡らさずに冷却できる供給量Mのミストを供給する
ことを特徴とするミスト噴霧量の制御方法。
【請求項5】
ミストの蒸発潜熱を利用して冷却対象物を冷却させるミスト噴霧量を制御する方法であって、
冷却を行う際に計測した値の入力を受け付ける計測値入力ステップと、

事前に設定された値の入力を受け付ける設定値入力ステップと、

計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、ミストの蒸発速度mを推定し、蒸発潜熱Qevと水蒸気量を算出する蒸発量算出ステップと、

計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TMを算出し、蒸発量算出ステップで算出した水蒸気量をもとにチャンバー内の位置ごとの想定湿度HMを算出する、主流空気の想定温度湿度算出ステップと、

蒸発量算出ステップ、及び、主流空気の想定温度湿度算出ステップで算出した、蒸発潜熱Qev、水蒸気量、並びに、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TM及び想定湿度HMをもとに、
チャンバー入口からチャンバー出口にかけて、チャンバー内の、時間tにおける位置z=Vtごとの主流空気の想定温度TMと想定液滴径RMを連続的に算出しながら、
チャンバー出口の、主流空気の想定温度TM,Oと想定液滴径RM,Oを算出する想定値算出ステップと、

想定値算出ステップの算出の結果、
次の2つの判定フェーズによって、チャンバー出口を流れるミストが完全蒸発しているか否か、及び、チャンバー出口を流れる主流空気が冷却対象物を冷却できるか否か、を判定する冷却判定ステップと、

チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が、0.1マイクロメートル未満のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発している」と判定し、チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が0.1マイクロメートル以上のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発していない」と判定する第1判定フェーズ、

チャンバー入口における主流空気の温度T S と、チャンバー出口の主流空気の想定温度T M,O と、の差と、
ミストを噴霧しない状態の冷却対象物の温度T T,I と、冷却対象物の耐熱上限温度T T,H と、の差と、
を比較して、
TS-TM,O>TT,I-TT,Hなら「冷却できる」と判定し、TS-TM,O<TT,I-TT,Hなら「冷却できない」と判定する第2判定フェーズ、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合に、修正ミスト供給仮想量「M」を「>Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、修正ミスト供給仮想量「M」を「<Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合、ミストによる冷却では不十分であるから過熱状態になる旨の結果を出力するとともにアラームによる警告を報知するステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、初期ミスト供給仮想量Mまたは修正ミスト供給仮想量「M」を「噴霧する供給量M」として出力し、噴霧ノズルから供給量Mのミストを噴霧するステップと、
を実行することで、
噴霧されたミストが完全蒸発した状態の冷却空気を作り、冷却空気を冷却対象物に噴出しても冷却対象物を濡らさずに冷却できる供給量Mのミストを供給する
ことを特徴とするミスト噴霧量の制御方法。
【請求項6】
ミストの蒸発潜熱を利用して冷却対象物を冷却させるミスト噴霧量を制御する方法であって、
冷却を行う際に計測した値の入力を受け付ける計測値入力ステップと、

事前に設定された値の入力を受け付ける設定値入力ステップと、

計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、
次式の質量保存と物質拡散モデルの組み合わせにしたがって、ミストの蒸発速度mを推定し、それにより蒸発潜熱Qevと水蒸気量を算出する蒸発量算出ステップと、
m/4π=RMBDva ln(1+Z)
(式中、Zは水蒸気の空気中への拡散速度を表すスポールディングの物質拡散係数を表す)

計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、
次式の気相へのエネルギー保存にしたがって、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TMを算出し、蒸発量算出ステップで算出した水蒸気量をもとにチャンバー内の位置ごとの想定湿度HMを算出する、主流空気の想定温度湿度算出ステップと、
Bc(T,i-T,i-1)/t=Qev,i+Qin,i
(式中、Qev,iは、蒸発量算出ステップで決定される蒸発潜熱を表し、Qin,i=AK(TS-TM,i)はチャンバー外部からチャンバー内部への吸熱を表す。)

蒸発量算出ステップ、及び、主流空気の想定温度湿度算出ステップで算出した、
蒸発潜熱Qev、水蒸気量、並びに、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TM及び想定湿度HMと、
熱伝導率L、定圧比熱c、主流空気の密度B、水蒸気拡散係数Dvaと、
をもとに、
チャンバー入口からチャンバー出口にかけて、チャンバー内の、時間tにおける位置z=Vtごとの
主流空気の想定温度TMと想定液滴径RM
を連続的に算出しながら、
チャンバー出口の、
主流空気の想定温度TM,Oと想定液滴径RM,O
を算出する想定値算出ステップと、

想定値算出ステップの算出の結果、
次の2つの判定フェーズによって、チャンバー出口を流れるミストが完全蒸発しているか否か、及び、チャンバー出口を流れる主流空気が冷却対象物を冷却できるか否か、を判定する冷却判定ステップと、

チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が、0.1マイクロメートル未満のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発している」と判定し、チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が0.1マイクロメートル以上のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発していない」と判定する第1判定フェーズ、

チャンバー入口における主流空気の温度T S と、チャンバー出口の主流空気の想定温度T M,O と、の差と、
ミストを噴霧しない状態の冷却対象物の温度T T,I と、冷却対象物の耐熱上限温度T T,H と、の差と、
を比較して、
TS-TM,O>TT,I-TT,Hなら「冷却できる」と判定し、TS-TM,O<TT,I-TT,Hなら「冷却できない」と判定する第2判定フェーズ、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合に、修正ミスト供給仮想量「M」を「>Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、修正ミスト供給仮想量「M」を「<Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合、ミストによる冷却では不十分であるから過熱状態になる旨の結果を出力するとともにアラームによる警告を報知するステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、初期ミスト供給仮想量Mまたは修正ミスト供給仮想量「M」を「噴霧する供給量M」として出力し、噴霧ノズルから供給量Mのミストを噴霧するステップと、
を実行することで、
噴霧されたミストが完全蒸発した状態の冷却空気を作り、冷却空気を冷却対象物に噴出しても冷却対象物を濡らさずに冷却できる供給量Mのミストを供給する
ことを特徴とするミスト噴霧量の制御方法。
【請求項7】
ミストの蒸発潜熱を利用して冷却対象物を冷却させるミスト噴霧量を制御するコンピュータシステムに、
冷却を行う際に計測された値、及び、事前に設定された値に基づき、ミストの蒸発速度mを推定し、蒸発潜熱Qevと水蒸気量を算出する蒸発量算出ステップと、

冷却を行う際に計測された値、及び、事前に設定された値に基づき、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TMを算出し、蒸発量算出ステップで算出した水蒸気量をもとにチャンバー内の位置ごとの想定湿度HMを算出する、主流空気の想定温度湿度算出ステップと、

蒸発量算出ステップ、及び、主流空気の想定温度湿度算出ステップで算出した、蒸発潜熱Qev、水蒸気量、並びに、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TM及び想定湿度HMをもとに、
チャンバー入口からチャンバー出口にかけて、チャンバー内の、時間tにおける位置z=Vtごとの主流空気の想定温度TMと想定液滴径RMを連続的に算出しながら、
チャンバー出口の、主流空気の想定温度TM,Oと想定液滴径RM,Oを算出する想定値算出ステップと、

想定値算出ステップの算出の結果、
次の2つの判定フェーズによって、チャンバー出口を流れるミストが完全蒸発しているか否か、及び、チャンバー出口を流れる主流空気が冷却対象物を冷却できるか否か、を判定する冷却判定ステップと、

チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が、0.1マイクロメートル未満のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発している」と判定し、チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が0.1マイクロメートル以上のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発していない」と判定する第1判定フェーズ、

チャンバー入口における主流空気の温度T S と、チャンバー出口の主流空気の想定温度T M,O と、の差と、
ミストを噴霧しない状態の冷却対象物の温度T T,I と、冷却対象物の耐熱上限温度T T,H と、の差と、
を比較して、
TS-TM,O>TT,I-TT,Hなら「冷却できる」と判定し、TS-TM,O<TT,I-TT,Hなら「冷却できない」と判定する第2判定フェーズ、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合に、修正ミスト供給仮想量「M」を「>Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、修正ミスト供給仮想量「M」を「<Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合、ミストによる冷却では不十分であるから過熱状態になる旨の結果を出力するとともにアラームによる警告を報知するステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、初期ミスト供給仮想量Mまたは修正ミスト供給仮想量「M」を「噴霧する供給量M」として出力し、噴霧ノズルから供給量Mのミストを噴霧するステップと、
を実行させることで、
噴霧されたミストが完全蒸発した状態の冷却空気を作り、冷却空気を冷却対象物に噴出しても冷却対象物を濡らさずに冷却できる供給量Mのミストを供給する
ことを特徴とするミスト噴霧量の制御プログラム。
【請求項8】
ミストの蒸発潜熱を利用して冷却対象物を冷却させるミスト噴霧量を制御するコンピュータシステムに、
冷却を行う際に計測した値の入力を受け付ける計測値入力ステップと、

事前に設定された値の入力を受け付ける設定値入力ステップと、

計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、ミストの蒸発速度mを推定し、蒸発潜熱Qevと水蒸気量を算出する蒸発量算出ステップと、

計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TMを算出し、蒸発量算出ステップで算出した水蒸気量をもとにチャンバー内の位置ごとの想定湿度HMを算出する、主流空気の想定温度湿度算出ステップと、

蒸発量算出ステップ、及び、主流空気の想定温度湿度算出ステップで算出した、蒸発潜熱Qev、水蒸気量、並びに、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TM及び想定湿度HMをもとに、
チャンバー入口からチャンバー出口にかけて、チャンバー内の、時間tにおける位置z=Vtごとの主流空気の想定温度TMと想定液滴径RMを連続的に算出しながら、
チャンバー出口の、主流空気の想定温度TM,Oと想定液滴径RM,Oを算出する想定値算出ステップと、

想定値算出ステップの算出の結果、
次の2つの判定フェーズによって、チャンバー出口を流れるミストが完全蒸発しているか否か、及び、チャンバー出口を流れる主流空気が冷却対象物を冷却できるか否か、を判定する冷却判定ステップと、

チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が、0.1マイクロメートル未満のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発している」と判定し、チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が0.1マイクロメートル以上のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発していない」と判定する第1判定フェーズ、

チャンバー入口における主流空気の温度T S と、チャンバー出口の主流空気の想定温度T M,O と、の差と、
ミストを噴霧しない状態の冷却対象物の温度T T,I と、冷却対象物の耐熱上限温度T T,H と、の差と、
を比較して、
TS-TM,O>TT,I-TT,Hなら「冷却できる」と判定し、TS-TM,O<TT,I-TT,Hなら「冷却できない」と判定する第2判定フェーズ、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合に、修正ミスト供給仮想量「M」を「>Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、修正ミスト供給仮想量「M」を「<Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合、ミストによる冷却では不十分であるから過熱状態になる旨の結果を出力するとともにアラームによる警告を報知するステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、初期ミスト供給仮想量Mまたは修正ミスト供給仮想量「M」を「噴霧する供給量M」として出力し、噴霧ノズルから供給量Mのミストを噴霧するステップと、
を実行させることで、
噴霧されたミストが完全蒸発した状態の冷却空気を作り、冷却空気を冷却対象物に噴出しても冷却対象物を濡らさずに冷却できる供給量Mのミストを供給する
ことを特徴とするミスト噴霧量の制御プログラム。
【請求項9】
ミストの蒸発潜熱を利用して冷却対象物を冷却させるミスト噴霧量を制御するコンピュータシステムに、
冷却を行う際に計測した値の入力を受け付ける計測値入力ステップと、

事前に設定された値の入力を受け付ける設定値入力ステップと、

計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、
次式の質量保存と物質拡散モデルの組み合わせにしたがって、ミストの蒸発速度mを推定し、それにより蒸発潜熱Qevと水蒸気量を算出する蒸発量算出ステップと、
m/4π=RMBDva ln(1+Z)
(式中、Zは水蒸気の空気中への拡散速度を表すスポールディングの物質拡散係数を表す)

計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、
次式の気相へのエネルギー保存にしたがって、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TMを算出し、蒸発量算出ステップで算出した水蒸気量をもとにチャンバー内の位置ごとの想定湿度HMを算出する、主流空気の想定温度湿度算出ステップと、
Bc(T,i-T,i-1)/t=Qev,i+Qin,i
(式中、Qev,iは、蒸発量算出ステップで決定される蒸発潜熱を表し、Qin,i=AK(TS-TM,i)はチャンバー外部からチャンバー内部への吸熱を表す。)

蒸発量算出ステップ、及び、主流空気の想定温度湿度算出ステップで算出した、
蒸発潜熱Qev、水蒸気量、並びに、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TM及び想定湿度HMと、
熱伝導率L、定圧比熱c、主流空気の密度B、水蒸気拡散係数Dvaと、
をもとに、
チャンバー入口からチャンバー出口にかけて、チャンバー内の、時間tにおける位置z=Vtごとの
主流空気の想定温度TMと想定液滴径RM
を連続的に算出しながら、
チャンバー出口の、
主流空気の想定温度TM,Oと想定液滴径RM,O
を算出する想定値算出ステップと、

想定値算出ステップの算出の結果、
次の2つの判定フェーズによって、チャンバー出口を流れるミストが完全蒸発しているか否か、及び、チャンバー出口を流れる主流空気が冷却対象物を冷却できるか否か、を判定する冷却判定ステップと、

チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が、0.1マイクロメートル未満のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発している」と判定し、チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が0.1マイクロメートル以上のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発していない」と判定する第1判定フェーズ、

チャンバー入口における主流空気の温度T S と、チャンバー出口の主流空気の想定温度T M,O と、の差と、
ミストを噴霧しない状態の冷却対象物の温度T T,I と、冷却対象物の耐熱上限温度T T,H と、の差と、
を比較して、
TS-TM,O>TT,I-TT,Hなら「冷却できる」と判定し、TS-TM,O<TT,I-TT,Hなら「冷却できない」と判定する第2判定フェーズ、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合に、修正ミスト供給仮想量「M」を「>Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、修正ミスト供給仮想量「M」を「<Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合、ミストによる冷却では不十分であるから過熱状態になる旨の結果を出力するとともにアラームによる警告を報知するステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、初期ミスト供給仮想量Mまたは修正ミスト供給仮想量「M」を「噴霧する供給量M」として出力し、噴霧ノズルから供給量Mのミストを噴霧するステップと、
を実行させることで、
噴霧されたミストが完全蒸発した状態の冷却空気を作り、冷却空気を冷却対象物に噴出しても冷却対象物を濡らさずに冷却できる供給量Mのミストを供給する
ことを特徴とするミスト噴霧量の制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気中に噴霧したミストが完全に蒸発した状態の、ミストの蒸発潜熱を利用して冷却された空気によって対象物を冷却する冷却装置、並びに、空気中に噴霧されたミストが完全に蒸発した状態を仮想して、噴霧する現場の環境条件(気温、湿度)に合わせて、空気中に噴霧するミスト噴霧量を制御する方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物体を冷却するため、流体を高速で噴流させて、物体表面に衝突させる衝突噴流熱伝達に関する研究が広く行われている。
また、冷却効率を向上させるために、噴流のような空気の流れに水をミストとして噴霧する技術も知られている。
これらの多くは、ミストが冷却対象に付着すること、すなわち、冷却対象が濡れることを前提にしている。
【0003】
例えば、特許文献1には、送風空間に配設して所定の冷却媒体を空冷する熱交換部を有する冷却機構部及びこの熱交換部に噴霧用水を噴霧する噴霧機構部を備える冷却装置及びその冷却方法が開示されている。
これによれば、噴霧する水の無駄を無くし、必要とする条件下において、噴霧を最大限効率的に利用することで冷却性能の向上を図ることができるとともに、省エネルギー化を実現することができる。
【0004】
しかし、例えば、ハイブリッドカーのバッテリーなどは、ミストが付着して濡れることで、電気系統がショートしたり、部材が錆びたりしてしまうおそれがあり、濡れることを前提にした従来の冷却技術は利用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-092370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、空気中に噴霧したミストが完全に蒸発した状態の、ミストの蒸発潜熱を利用して冷却された空気によって対象物を冷却する冷却装置、並びに、空気中に噴霧されたミストが完全に蒸発した状態を仮想して、噴霧する現場の環境条件(気温、湿度)に合わせて、空気中に噴霧するミスト噴霧量を制御する方法及びプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、上記課題を解決するため、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明にかかるミストの蒸発潜熱を利用して冷却対象物を冷却させる冷却装置は、
ミストを噴霧する噴霧ノズルと、
主流空気を供給する主流空気供給部と、
ミストと主流空気を混合し、ミストを蒸発させて冷却空気を作るチャンバーと、
冷却空気をチャンバー内から噴出して冷却対象物に衝突させる冷却空気噴出部と、
チャンバー入口に設置され、チャンバー入口における主流空気の温度TSを検出する温度センサと、
チャンバー入口に設置され、チャンバー入口における主流空気の湿度HSを検出する湿度センサと、
冷却対象物に設置され、冷却対象物の温度TTを検出する温度センサと、
噴霧ノズルから噴霧させるミストの供給量Mを制御する制御部と、
からなり、
当該制御部が、
冷却を行う際に計測した値の入力を受け付ける計測値入力ステップと、

事前に設定された値の入力を受け付ける設定値入力ステップと、

計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、
次式の質量保存と物質拡散モデルの組み合わせにしたがって、ミストの蒸発速度mを推定し、それにより蒸発潜熱Qevと水蒸気量を算出する蒸発量算出ステップと、
m/4π=RMBDva ln(1+Z)
(式中、Zは水蒸気の空気中への拡散速度を表すスポールディングの物質拡散係数を表す)

計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、
次式の気相へのエネルギー保存にしたがって、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TMを算出し、蒸発量算出ステップで算出した水蒸気量をもとにチャンバー内の位置ごとの想定湿度HMを算出する、主流空気の想定温度湿度算出ステップと、
Bc(T,i-T,i-1)/t=Qev,i+Qin,i
(式中、Qev,iは蒸発量算出ステップで決定される蒸発潜熱を表し、Qin,i=AK(TS-TM,i)はチャンバー外部からチャンバー内部への吸熱を表す。なお、本願発明において、添え字のiとi-1は、算出の回数を示す。したがって、「T,i」は、i-1回目のTMをもとに決定したi回目のTMを意味する。)

蒸発量算出ステップ、及び、主流空気の想定温度湿度算出ステップで算出した、
蒸発潜熱Qev、水蒸気量、並びに、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TM及び想定湿度HMと、
熱伝導率L、定圧比熱c、主流空気の密度B、水蒸気拡散係数Dvaと、
をもとに、
チャンバー入口からチャンバー出口にかけて、チャンバー内の、時間tにおける位置z=Vtごとの
主流空気の想定温度TMと想定液滴径RM
を連続的に算出しながら、
チャンバー出口の、
主流空気の想定温度TM,Oと想定液滴径RM,O
を算出する想定値算出ステップと、

想定値算出ステップの算出の結果、
次の2つの判定フェーズによって、チャンバー出口を流れるミストが完全蒸発しているか否か、及び、チャンバー出口を流れる主流空気が冷却対象物を冷却できるか否か、を判定する冷却判定ステップと、

チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が、0.1マイクロメートル未満のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発している」と判定し、チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が0.1マイクロメートル以上のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発していない」と判定する第1判定フェーズ、

TS-TM,O>TT,I-TT,Hなら「冷却できる」と判定し、TS-TM,O<TT,I-TT,Hなら「冷却できない」と判定する第2判定フェーズ、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合に、修正ミスト供給仮想量「M」を「>Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、修正ミスト供給仮想量「M」を「<Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合、ミストによる冷却では不十分であるから過熱状態になる旨の結果を出力するとともにアラームによる警告を報知するステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、初期ミスト供給仮想量Mまたは修正ミスト供給仮想量「M」を噴霧する供給量Mとして出力し、噴霧ノズルから供給量Mのミストを噴霧するステップと、
を実行することで、
噴霧されたミストが完全蒸発した状態の冷却空気を作り、冷却空気を冷却対象物に噴出しても冷却対象物を濡らさずに冷却できる供給量Mのミストを供給する
ことを特徴とする。
【0009】
本発明にかかるミストの蒸発潜熱を利用して冷却対象物を冷却させるミスト噴霧量を制御する方法は、
冷却を行う際に計測した値の入力を受け付ける計測値入力ステップと、

事前に設定された値の入力を受け付ける設定値入力ステップと、

計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、
次式の質量保存と物質拡散モデルの組み合わせにしたがって、ミストの蒸発速度mを推定し、それにより蒸発潜熱Qevと水蒸気量を算出する蒸発量算出ステップと、
m/4π=RMBDva ln(1+Z)
(式中、Zは水蒸気の空気中への拡散速度を表すスポールディングの物質拡散係数を表す)

計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、
次式の気相へのエネルギー保存にしたがって、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TMを算出し、蒸発量算出ステップで算出した水蒸気量をもとにチャンバー内の位置ごとの想定湿度HMを算出する、主流空気の想定温度湿度算出ステップと、
Bc(T,i-T,i-1)/t=Qev,i+Qin,i
(式中、Qev,iは蒸発量算出ステップで決定される蒸発潜熱を表し、Qin,i=AK(TS-TM,i)はチャンバー外部からチャンバー内部への吸熱を表す。)

蒸発量算出ステップ、及び、主流空気の想定温度湿度算出ステップで算出した、
蒸発潜熱Qev、水蒸気量、並びに、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TM及び想定湿度HMと、
熱伝導率L、定圧比熱c、主流空気の密度B、水蒸気拡散係数Dvaと、
をもとに、
チャンバー入口からチャンバー出口にかけて、チャンバー内の、時間tにおける位置z=Vtごとの
主流空気の想定温度TMと想定液滴径RM
を連続的に算出しながら、
チャンバー出口の、
主流空気の想定温度TM,Oと想定液滴径RM,O
を算出する想定値算出ステップと、

想定値算出ステップの算出の結果、
次の2つの判定フェーズによって、チャンバー出口を流れるミストが完全蒸発しているか否か、及び、チャンバー出口を流れる主流空気が冷却対象物を冷却できるか否か、を判定する冷却判定ステップと、

チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が、0.1マイクロメートル未満のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発している」と判定し、チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が0.1マイクロメートル以上のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発していない」と判定する第1判定フェーズ、

TS-TM,O>TT,I-TT,Hなら「冷却できる」と判定し、TS-TM,O<TT,I-TT,Hなら「冷却できない」と判定する第2判定フェーズ、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合に、修正ミスト供給仮想量「M」を「>Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、修正ミスト供給仮想量「M」を「<Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合、ミストによる冷却では不十分であるから過熱状態になる旨の結果を出力するとともにアラームによる警告を報知するステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、初期ミスト供給仮想量Mまたは修正ミスト供給仮想量「M」を噴霧する供給量Mとして出力し、噴霧ノズルから供給量Mのミストを噴霧するステップと、
を実行することで、
噴霧されたミストが完全蒸発した状態の冷却空気を作り、冷却空気を冷却対象物に噴出しても冷却対象物を濡らさずに冷却できる供給量Mのミストを供給する
ことを特徴とする。
【0010】
本発明にかかるミストの蒸発潜熱を利用して冷却対象物を冷却させるミスト噴霧量の制御プログラムは、
コンピュータシステムに、
冷却を行う際に計測した値の入力を受け付ける計測値入力ステップと、

事前に設定された値の入力を受け付ける設定値入力ステップと、

計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、
次式の質量保存と物質拡散モデルの組み合わせにしたがって、ミストの蒸発速度mを推定し、それにより蒸発潜熱Qevと水蒸気量を算出する蒸発量算出ステップと、
m/4π=RMBDva ln(1+Z)
(式中、Zは水蒸気の空気中への拡散速度を表すスポールディングの物質拡散係数を表す)

計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、
次式の気相へのエネルギー保存にしたがって、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TMを算出し、蒸発量算出ステップで算出した水蒸気量をもとにチャンバー内の位置ごとの想定湿度HMを算出する、主流空気の想定温度湿度算出ステップと、
Bc(T,i-T,i-1)/t=Qev,i+Qin,i
(式中、Qev,iは蒸発量算出ステップで決定される蒸発潜熱を表し、Qin,i=AK(TS-TM,i)はチャンバー外部からチャンバー内部への吸熱を表す。)

蒸発量算出ステップ、及び、主流空気の想定温度湿度算出ステップで算出した、
蒸発潜熱Qev、水蒸気量、並びに、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TM及び想定湿度HMと、
熱伝導率L、定圧比熱c、主流空気の密度B、水蒸気拡散係数Dvaと、
をもとに、
チャンバー入口からチャンバー出口にかけて、チャンバー内の、時間tにおける位置z=Vtごとの
主流空気の想定温度TMと想定液滴径RM
を連続的に算出しながら、
チャンバー出口の、
主流空気の想定温度TM,Oと想定液滴径RM,O
を算出する想定値算出ステップと、

想定値算出ステップの算出の結果、
次の2つの判定フェーズによって、チャンバー出口を流れるミストが完全蒸発しているか否か、及び、チャンバー出口を流れる主流空気が冷却対象物を冷却できるか否か、を判定する冷却判定ステップと、

チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が、0.1マイクロメートル未満のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発している」と判定し、チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が0.1マイクロメートル以上のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発していない」と判定する第1判定フェーズ、

TS-TM,O>TT,I-TT,Hなら「冷却できる」と判定し、TS-TM,O<TT,I-TT,Hなら「冷却できない」と判定する第2判定フェーズ、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合に、修正ミスト供給仮想量「M」を「>Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、修正ミスト供給仮想量「M」を「<Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合、ミストによる冷却では不十分であるから過熱状態になる旨の結果を出力するとともにアラームによる警告を報知するステップと、

冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、初期ミスト供給仮想量Mまたは修正ミスト供給仮想量「M」を噴霧する供給量Mとして出力し、噴霧ノズルから供給量Mのミストを噴霧するステップと、
を実行させることで、
噴霧されたミストが完全蒸発した状態の冷却空気を作り、冷却空気を冷却対象物に噴出しても冷却対象物を濡らさずに冷却できる供給量Mのミストを供給する
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる、空気中に噴霧したミストが完全に蒸発した状態の、ミストの蒸発潜熱を利用して冷却された空気によって対象物を冷却する冷却装置、並びに、空気中に噴霧されたミストが完全に蒸発した状態を仮想して、噴霧する現場の環境条件(気温、湿度)に合わせて、空気中に噴霧するミスト噴霧量を制御する方法及びプログラムによれば、使用環境に応じた最適なミスト供給量を算出し、冷却対象物を濡らすことなく、安全に冷却できる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】冷却装置の構成の概略を示すイメージ図
図2】冷却装置の制御部並びに空気中に噴霧するミスト噴霧量を制御する方法及びプログラムにおける制御の手順を示したフロー図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明にかかる、空気中に噴霧したミストが完全に蒸発した状態の、ミストの蒸発潜熱を利用して冷却された空気によって対象物を冷却する冷却装置、並びに、空気中に噴霧されたミストが完全に蒸発した状態を仮想して、噴霧する現場の環境条件(気温、湿度)に合わせて、空気中に噴霧するミスト噴霧量を制御する方法及びプログラムの実施例を、以下のとおり、図をもとに詳細に説明する。
【0014】
図1は、本実施例にかかる冷却装置の構成を示す概略図である。
【0015】
本実施例にかかる冷却装置は、
ミストを噴霧する噴霧ノズルと、
主流空気を供給する主流空気供給部と、
ミストと主流空気を混合し、ミストを蒸発させて冷却空気を作るチャンバーと、
冷却空気をチャンバー内から噴出して冷却対象物に衝突させる冷却空気噴出部と、
チャンバー入口に設置され、チャンバー入口における主流空気の温度TSを検出する温度センサと、
チャンバー入口に設置され、チャンバー入口における主流空気の湿度HSを検出する湿度センサと、
冷却対象物に設置され、冷却対象物の温度TTを検出する温度センサと、
噴霧ノズルから噴霧させるミストの供給量Mを制御する制御部と、
から構成されている。
供給量Mは、実際の供給量を意味する。
【0016】
制御部は、以下の各ステップを実行する。
【0017】
冷却を行う際に計測した値(チャンバー入口における主流空気の温度TS及び湿度H、ミストを噴霧しない状態の冷却対象物の温度TT,I)の入力を受け付ける計測値入力ステップ。
【0018】
事前に設定された値(時間t、冷却対象物の耐熱上限温度TT,H、初期ミスト供給仮想量M、初期液滴径R、主流空気供給部からチャンバー内に供給される主流空気の流速V、熱通過率K、チャンバーの表面積A(t、TT,Hは定値、Mは任意の値、R、V、K、Aは冷却装置の性能による値)の入力を受け付ける設定値入力ステップ。
【0019】
計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、次の式1の質量保存と物質拡散モデルの組み合わせにしたがって、ミストの蒸発速度mを推定し、それにより蒸発潜熱Qevと水蒸気量を算出する蒸発量算出ステップ。
(計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップを省略し、蒸発量算出ステップにおいて、冷却を行う際に計測された値、及び、事前に設定された値に基づき、ミストの蒸発速度mを推定し、蒸発潜熱Qevと水蒸気量を算出することもできる。)
【0020】
【数1】
(式中、Zは水蒸気の空気中への拡散速度を表すスポールディングの物質拡散係数を表す。)
【0021】
計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、次の式2の気相へのエネルギー保存にしたがって、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TMを算出し、前記の蒸発量算出ステップで算出した水蒸気量をもとにチャンバー内の位置ごとの想定湿度HMを算出する、主流空気の想定温度湿度算出ステップ。
【0022】
【数2】
【0023】
蒸発量算出ステップ、及び、主流空気の想定温度湿度算出ステップで算出した、蒸発潜熱Qev、水蒸気量、並びに、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TM及び想定湿度HMと、熱伝導率L、定圧比熱c、主流空気の密度B、水蒸気拡散係数Dvaと、をもとに、
チャンバー入口からチャンバー出口にかけて、チャンバー内の、時間tにおける位置z=Vtごとの主流空気の想定温度TMと想定液滴径RMを連続的に算出しながら、チャンバー出口の、主流空気の想定温度TM,Oと想定液滴径RM,Oを算出する想定値算出ステップ。
【0024】
想定値算出ステップの算出の結果、
次の2つの判定フェーズ(第1及び第2)によって、チャンバー出口を流れるミストが完全蒸発しているか否か、及び、チャンバー出口を流れる主流空気が冷却対象物を冷却できるか否か、を判定する冷却判定ステップ。
【0025】
チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が、0.1マイクロメートル未満のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発している」と判定し、チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が0.1マイクロメートル以上のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発していない」と判定する第1判定フェーズ。
【0026】
TS-TM,O>TT,I-TT,Hなら「冷却できる」と判定し、TS-TM,O<TT,I-TT,Hなら「冷却できない」と判定する第2判定フェーズ。
【0027】
冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合に、修正ミスト供給仮想量「M」(n=2、n=3、・・・)を「>Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップ。
【0028】
冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、修正ミスト供給仮想量「M」(n=2、n=3、・・・)を「<Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップ。
【0029】
冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合、ミストによる冷却では不十分であるから過熱状態になる旨の結果を出力するとともにアラームによる警告を報知するステップ。
【0030】
冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、初期ミスト供給仮想量Mまたは修正ミスト供給仮想量「M」(n=2、n=3、・・・)を噴霧する供給量Mとして出力し、噴霧ノズルから供給量Mのミストを噴霧するステップ。
【0031】
なお、時間tは、冷却空気がチャンバー内を移動する位置z=Vtごとに計算するための数値であり、熱通過率Kは、ミスト供給によりチャンバー内で生じる温度差ΔT=TS-TMと、チャンバー外からチャンバー内に、チャンバーの壁を通じて起こる熱の移動量q[W/m2] = KΔTをもとに算出した装置固有の値であり、蒸発潜熱Qevは、蒸発量を意味する。
【0032】
前記の制御部が、以上のステップを実行することで、本実施例にかかる冷却装置は、噴霧されたミストが完全蒸発した状態の冷却空気を作り、冷却空気を冷却対象物に噴出しても冷却対象物を濡らさずに冷却できる供給量Mのミストを供給することができる。
【0033】
次に、ミスト噴霧量の制御方法を実施手順に従って説明する。
【0034】
本実施例にかかるミスト噴霧量の制御方法は、
ミストを噴霧する噴霧ノズルと、
主流空気を供給する主流空気供給部と、
ミストと主流空気を混合し、ミストを蒸発させて冷却空気を作るチャンバーと、
冷却空気をチャンバー内から噴出して冷却対象物に衝突させる冷却空気噴出部と、
チャンバー入口に設置され、チャンバー入口における主流空気の温度TSを検出する温度センサと、
チャンバー入口に設置され、チャンバー入口における主流空気の湿度HSを検出する湿度センサと、
冷却対象物に設置され、冷却対象物の温度TTを検出する温度センサと、
からなる構成の冷却装置において、次の手順によって、噴霧するミスト噴霧量を制御する。
【0035】
冷却対象物にミストを噴出して冷却を行う際に、予め、チャンバー入口に設置され、チャンバー入口における主流空気の、温度TSを検出する温度センサと、湿度HSを検出する湿度センサとによって、チャンバー入口における主流空気の温度TS及び湿度Hを計測する。
また、冷却対象物に設置され、冷却対象物の温度TTを検出する温度センサによって、ミストを噴霧しない状態の冷却対象物の温度TT,Iを計測する。
これらの計測した値を手動で入力する。
【0036】
次に、事前に設定された、時間t、冷却対象物の耐熱上限温度TT,H、初期ミスト供給仮想量M、初期液滴径R、主流空気供給部からチャンバー内に供給される主流空気の流速V、熱通過率K、チャンバーの表面積A(t、TT,Hは定値、Mは任意の値、R、V、K、Aは冷却装置の性能による値)の値を手動で入力する。
【0037】
これらの手動で入力された計測値及び設定値に基づき、次の式3の質量保存と物質拡散モデルの組み合わせにしたがって、ミストの蒸発速度mを推定し、それにより蒸発潜熱Qevと水蒸気量を算出する。
【0038】
【数3】
(式中、Zは水蒸気の空気中への拡散速度を表すスポールディングの物質拡散係数を表す。)
【0039】
また、前記の計測値及び設定値に基づき、次の式4の気相へのエネルギー保存にしたがって、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TMを算出し、前記の式3によって算出された水蒸気量をもとにチャンバー内の位置ごとの想定湿度HMを算出する。
【0040】
【数4】
【0041】
算出した、蒸発潜熱Qev、水蒸気量、並びに、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TM及び想定湿度HMと、
熱伝導率L、定圧比熱c、主流空気の密度B、水蒸気拡散係数Dvaと、
をもとに、
チャンバー入口からチャンバー出口にかけて、チャンバー内の、時間tにおける位置z=Vtごとの
主流空気の想定温度TMと想定液滴径RM
を連続的に算出しながら、
チャンバー出口の、
主流空気の想定温度TM,Oと想定液滴径RM,O
を算出する。
【0042】
チャンバー出口の、主流空気の想定温度TM,Oと想定液滴径RM,Oを算出した結果、
次の2つの判定フェーズ(第1及び第2)によって、チャンバー出口を流れるミストが完全蒸発しているか否か、及び、チャンバー出口を流れる主流空気が冷却対象物を冷却できるか否か、を判定する。
【0043】
チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が、0.1マイクロメートル未満のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発している」と判定し、チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が0.1マイクロメートル以上のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発していない」と判定する(第1判定フェーズ)。
【0044】
TS-TM,O>TT,I-TT,Hなら「冷却できる」と判定し、TS-TM,O<TT,I-TT,Hなら「冷却できない」と判定する(第2判定フェーズ)。
【0045】
判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合は、修正ミスト供給仮想量「M」を「>Mn-1」に修正して、前記の「チャンバー出口の、主流空気の想定温度TM,Oと想定液滴径RM,O」を算出することを繰り返し行い、再度、前記の判定をする。
【0046】
また、判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合は、修正ミスト供給仮想量「M」を「<Mn-1」に修正して、前記の「チャンバー出口の、主流空気の想定温度TM,Oと想定液滴径RM,O」を算出することを繰り返し行い、再度、前記の判定をする。
【0047】
しかし、判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合には、ミストによる冷却では不十分であるから過熱状態になる旨の結果を出力するとともにアラームによる警告を報知する。
【0048】
なお、判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合には、初期ミスト供給仮想量Mまたは修正ミスト供給仮想量「M」を「噴霧する供給量M」であると決定して、噴霧ノズルから供給量Mのミストを噴霧する。
【0049】
以上のステップを実施することで、噴霧されたミストが完全蒸発した状態の冷却空気を作り、冷却空気を冷却対象物に噴出しても冷却対象物を濡らさずに冷却できるミストの供給量Mを制御できる。
【0050】
次に、ミスト噴霧量の制御プログラムを動作手順に従って説明する。
【0051】
ミスト噴霧量を制御するコンピュータシステムに、以下のステップを実行させることで、噴霧されたミストが完全蒸発した状態の冷却空気を作り、冷却空気を冷却対象物に噴出しても冷却対象物を濡らさずに冷却できるミストの供給量Mを制御できる。
【0052】
冷却を行う際に計測した値(チャンバー入口における主流空気の温度TS及び湿度H、ミストを噴霧しない状態の冷却対象物の温度TT,I)の入力を受け付ける計測値入力ステップ。
【0053】
事前に設定された値(時間t、冷却対象物の耐熱上限温度TT,H、初期ミスト供給仮想量M、初期液滴径R、主流空気供給部からチャンバー内に供給される主流空気の流速V、熱通過率K、チャンバーの表面積A(t、TT,Hは定値、Mは任意の値、R、V、K、Aは冷却装置の性能による値)の入力を受け付ける設定値入力ステップ。
【0054】
計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、
次の式5の質量保存と物質拡散モデルの組み合わせにしたがって、ミストの蒸発速度mを推定し、それにより蒸発潜熱Qevと水蒸気量を算出する蒸発量算出ステップ。
(計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップを省略し、蒸発量算出ステップにおいて、冷却を行う際に計測された値、及び、事前に設定された値に基づき、ミストの蒸発速度mを推定し、蒸発潜熱Qevと水蒸気量を算出することもできる。)
【0055】
【数5】
(式中、Zは水蒸気の空気中への拡散速度を表すスポールディングの物質拡散係数を表す。)
【0056】
計測値入力ステップ、及び、設定値入力ステップで入力されたそれぞれの値に基づき、
次の式6の気相へのエネルギー保存にしたがって、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TMを算出し、前記の蒸発量算出ステップで算出した水蒸気量をもとにチャンバー内の位置ごとの想定湿度HMを算出する、主流空気の想定温度湿度算出ステップ。
【0057】
【数6】
【0058】
蒸発量算出ステップ、及び、主流空気の想定温度湿度算出ステップで算出した、
蒸発潜熱Qev、水蒸気量、並びに、チャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TM及び想定湿度HMと、
熱伝導率L、定圧比熱c、主流空気の密度B、水蒸気拡散係数Dvaと、
をもとに、
チャンバー入口からチャンバー出口にかけて、チャンバー内の、時間tにおける位置z=Vtごとの
主流空気の想定温度TMと想定液滴径RM
を連続的に算出しながら、
チャンバー出口の、
主流空気の想定温度TM,Oと想定液滴径RM,O
を算出する想定値算出ステップ。
【0059】
想定値算出ステップの算出の結果、
次の2つの判定フェーズ(第1及び第2)によって、チャンバー出口を流れるミストが完全蒸発しているか否か、及び、チャンバー出口を流れる主流空気が冷却対象物を冷却できるか否か、を判定する冷却判定ステップ。
【0060】
チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が、0.1マイクロメートル未満のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発している」と判定し、チャンバー出口の想定液滴径RM,Oのしきい値が0.1マイクロメートル以上のとき、チャンバー出口においてミストは「完全蒸発していない」と判定する第1判定フェーズ。
【0061】
TS-TM,O>TT,I-TT,Hなら「冷却できる」と判定し、TS-TM,O<TT,I-TT,Hなら「冷却できない」と判定する第2判定フェーズ。
【0062】
冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合に、修正ミスト供給仮想量「M」(n=2、n=3、・・・)を「>Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップ。
【0063】
冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、修正ミスト供給仮想量「M」(n=2、n=3、・・・)を「<Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、冷却判定ステップの判定を行うステップ。
【0064】
冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発していない」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できない」と判定された場合、ミストによる冷却では不十分であるから過熱状態になる旨の結果を出力するとともにアラームによる警告を報知するステップ。
【0065】
冷却判定ステップの判定の結果、
第1判定フェーズで「完全蒸発している」と判定され、第2判定フェーズで「冷却できる」と判定された場合、初期ミスト供給仮想量Mまたは修正ミスト供給仮想量「M」(n=2、n=3、・・・)を噴霧する供給量Mとして出力し、噴霧ノズルから供給量Mのミストを噴霧するステップ。
【0066】
なお、時間tは、冷却空気がチャンバー内を移動する位置z=Vtごとに計算するための数値であり、熱通過率Kは、ミスト供給によりチャンバー内で生じる温度差ΔT=TS-TMと、チャンバー外からチャンバー内に、チャンバーの壁を通じて起こる熱の移動量q[W/m2] = KΔTをもとに算出した装置固有の値であり、蒸発潜熱Qevは、蒸発量を意味する。
【0067】
本実施例にかかるミスト噴霧量の制御プログラムを使用して実験したところ、例えば、TS=31.0 ℃、HS=82.0 %RHの条件下では、Mn=5.5 mg/sのミストの供給によって1.1 ℃の冷却が可能であり、TS=25.5 ℃、HS=78.0 %RHの条件下では、Mn=5.5 mg/sのミストの供給によって0.8 ℃の冷却が可能であるという結果を得られた。
【0068】
そこで、本実施例にかかるミスト噴霧量の制御プログラムにおいて、夏場の東京を仮想したTS=35.0 ℃、HS=53.0 %RHの条件下と、夏場のカイロ(エジプト)を仮想したTS=41.0 ℃、HS=13.0 %RHの条件下のそれぞれについて、冷却判定ステップの判定を得るために使用した計算処理を、以下詳述する。
【0069】
<蒸発量算出ステップ>
蒸発量算出ステップでは、液滴単体に対する解析処理を行っている。
ミストが球状であるとの仮定のもと、球対称境界条件を導入すると、質量保存則より、式7のとおり表され、これに準定常状態の仮定を導入すると、質量保存則は、式8のとおりに書き換えられる。
【0070】
【数7】
【0071】
【数8】
【0072】
同じく準定常状態の仮定により、気相の物質量保存は式9、エネルギー保存は式10、エンタルピー保存は式11のとおりに、それぞれ表すことができる。
【0073】
【数9】
【0074】
【数10】
【0075】
【数11】
【0076】
また、式9に、境界条件である式12を導入すると、式13のとおりに表される。
【0077】
【数12】
【0078】
【数13】
【0079】
スポールディング物質輸送係数Zを式14のように定義すると、
をミスト表面での水蒸気質量分率、
を無限遠の水蒸気質量分率として、式15のとおり表すことができる。
【数14】
【0080】
【数15】
(式中、MH2Oは水の分子量、Maは空気の分子量、PWSはミスト表面での水蒸気分圧、PWは無限遠での水蒸気分圧、Pは大気圧を示す。)
【0081】
以上のことから、式13は、式16のとおりに表され、YF << 1である場合には、式17のとおりに表される。
【0082】
【数16】
【0083】
【数17】
【0084】
<主流空気の想定温度湿度算出ステップ>
主流空気の想定温度湿度算出ステップでは、i-1回目のTM及びHMをもとに決定したi回目のチャンバー内の位置ごとの主流空気の想定温度TM及び想定湿度HMを算出することで、液相に対する解析処理を行っている。
【0085】
液滴表面から気相への熱伝導による熱輸送は、エンタルピー保存の適用により、式18のとおり表すことができ、
が無視できるほど小さい場合は、式19のとおり表され、すなわち蒸発潜熱は、気相に輸送されることになる。
【0086】
【数18】
【0087】
【数19】
【0088】
<気相に対する解析>
微小検査体積に対して定常状態であり、粘性散逸を無視し、気相の熱伝導を無視した一次元流れを仮定すると、熱力学の第一法則を導入して、式20のとおり表される。
【0089】
【数20】
【0090】
式20をオイラー後退法で離散化すると、式21のとおり表される。
【0091】
【数21】
【0092】
ここで、TM,1=TSであるから、例えば、夏場の東京を仮想する場合、計測値入力ステップでは、TM,i=TS=35.0 ℃の測定値を入力し、夏場のカイロ(エジプト)を仮想する場合、計測値入力ステップでは、TM,1=TS=41.0 ℃の測定値を入力する。
【0093】
そして、式21を解くために、式22の関数を導入する。
【0094】
【数22】
【0095】
式21が成り立つためには、F=0となるTM,iを決定する必要がある。
そこで、はじめに、仮定の
を置き、対応する
を式23で計算する。
【0096】
【数23】
(式中、Nはチャンバーに単位時間に供給されるミストの数を示す。)
【0097】
<想定値算出ステップ>チャンバー入口からチャンバー出口にかけて、チャンバー内の、時間tにおける位置z=Vtごとの主流空気の想定温度TMと想定液滴径RMを連続的に算出しながら、チャンバー出口の、主流空気の想定温度TM,Oと想定液滴径RM,Oを算出する。
【0098】
具体的な算出の手順は、次のとおりである。
チャンバー入口からチャンバー出口にかけて、チャンバー内の、時間tにおける位置z=Vtごとの主流空気の想定液滴径RMは、式24のとおり計算される。
【0099】
【数24】
【0100】
式24のZi-1は、式25を用いて計算される。
【0101】
【数25】
【0102】
ここで、式25は、次の条件で算出される。
【0103】
ここでi=1とした場合の
は、チャンバー入口における主流空気の湿度Hを表すため、例えば、夏場の東京を仮想する場合、計測値入力ステップでは、
を入力し、また、夏場のカイロ(エジプト)を仮想する場合、計測値入力ステップでは、
を入力することになる。
【0104】
また、
(式中、wbは湿球温度を表す。)
であるから、
を解くために、これに、式26で定義される関数Gを導入する。
【0105】
【数26】
【0106】
ここで、G=0となる
を、式27の繰り返し計算式により求める。
【0107】
【数27】
(式中、上付きのnは繰り返し計算の回数を示す。)
【0108】
さらに、式26を、
になるまで続ける。
この式中の「0.01」は、収束しているかどうかを判定する閾値を意味する。
つまり、繰り返し計算をすると、n+1のTと、nのTとの差が小さくなり、収束していくことになる。
そこで、収束しているかどうかを判定するための閾値として0.01℃を設定した。
【0109】
続いてTM,iの決定のため、
を、式28の繰り返し計算式により求める。
【0110】
【数28】
【0111】
さらに、式28を、
になるまで続ける。
【0112】
これを満たす
がTM,i(i回目の計算による、チャンバー入口からチャンバー出口にかけて、チャンバー内の、時間tにおける位置z=Vtごとの主流空気の想定温度TM)である。
この「TM,i」、及び、式24によって算出される、チャンバー入口からチャンバー出口にかけて、チャンバー内の、時間tにおける位置z=Vtごとの主流空気の想定液滴径「RM,i」、のそれぞれを位置zごとに連続的に算出して、チャンバー出口における、主流空気の想定温度「TM,O」、及び、想定液滴径「RM,O」を算出する処理が「想定値算出ステップ」である。
【0113】
以上の各ステップにおける計算処理を、設定値入力ステップを先に実行してから行うことを前提に設計した、本実施例にかかるミスト噴霧量の制御プログラムを実行することで、冷却判定ステップ、第1判定フェーズ、修正ミスト供給仮想量「M」を「>Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、「冷却判定ステップの判定を行うステップ」と、修正ミスト供給仮想量「M」を「<Mn-1」に修正して、想定値算出ステップを繰り返し行い、再度、「冷却判定ステップの判定を行うステップ」を繰り返した結果、「噴霧ノズルから供給量Mのミストを噴霧するステップ」として、夏場の東京を仮想したTS=35.0 ℃、HS=53.0 %RHの条件下では、Mn=15.0 mg/sのミストの供給によって2.2 ℃の冷却が可能であり、夏場のカイロ(エジプト)を仮想したTS=41.0 ℃、HS=13.0 %RHの条件下では、Mn=40.0 mg/sのミストの供給によって7.4 ℃の冷却が可能であるという結果を得られた。
なお、この制御プログラムによる実施例では、冷却対象物の耐熱上限温度TT,Hを設定していないため、「第2判定フェーズ」及び「過熱状態になる旨の結果を出力するとともにアラームによる警告を報知するステップ」は実行せず、供給可能な最大ミスト量を噴霧ノズルからの供給量Mとして出力している。
【0114】
また、本実施例にかかる以上の計算処理は、ミスト噴霧量の制御方法と、冷却装置の制御部においても行われ、同じ結果を得られる。



【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、空気中に噴霧したミストの蒸発潜熱を利用して対象物を冷却する冷却装置を提供する。
【解決手段】本発明は、ミストを噴霧する噴霧ノズルと、主流空気を供給する主流空気供給部と、ミストと主流空気を混合し、ミストを蒸発させて冷却空気を作るチャンバーと、冷却空気をチャンバー内から噴出して冷却対象物に衝突させる冷却空気噴出部と、チャンバー入口に設置され、チャンバー入口における主流空気の温度TSを検出する温度センサと、チャンバー入口に設置され、チャンバー入口における主流空気の湿度HSを検出する湿度センサと、冷却対象物に設置され、冷却対象物の温度TTを検出する温度センサと、噴霧ノズルから噴霧させるミストの供給量Mを制御する制御部と、からなる冷却装置、並びに、これを制御する方法及びプログラムである。
【選択図】図1
図1
図2