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  • 特許-被加工物の研削方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】被加工物の研削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 55/02 20060101AFI20240730BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20240730BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
B24B55/02 B
B24B7/04 A
H01L21/304 631
H01L21/304 622H
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019117158
(22)【出願日】2019-06-25
(65)【公開番号】P2021003740
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-04-28
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 太一
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-252333(JP,A)
【文献】特開2013-215868(JP,A)
【文献】特開昭62-251054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 55/02
B24B 7/04
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持手段に備えた吸着部の保持面に吸引保持された被加工物を研削砥石で研削する被加工物の研削方法であって、
被加工物の面積より広い面積の該保持面の中央に被加工物の中心を合致させて被加工物を保持させる保持工程と、
該保持手段より外側に配設される外周ノズルから該保持面に保持された被加工物の外周縁に向かって水を噴射し、噴射された水が放物線を描くように該保持面の外周側の領域に到達し、該保持面が環状に露出した露出面に該水で水膜を形成し、該外周縁周囲が常に水で満たされた状態で被加工物の上面を該研削砥石で研削する研削工程と、を備える被加工物の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の被加工物を研削する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハ等の被加工物を研削砥石で研削する研削装置では、チャックテーブルの保持面でウェーハを吸引保持した状態で研削を行っていく(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-030055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の研削装置では、チャックテーブルの保持面をウェーハの被保持面の面積より僅かに小さい面積に設定している。即ち、チャックテーブルの保持面の直径をウェーハの直径よりも僅かに小さく設定している。そのため、チャックテーブルでウェーハを吸引保持しても、ウェーハの外周部分がリング状に吸引されていない状態になる。ウェーハが研削され薄くなるとウェーハの外周部分が吸引保持されていないことで、回転する研削砥石から受ける押圧力でウェーハの外周部分が持ち上げられウェーハの外周縁が欠けるという問題が発生する。
【0005】
また、例えば、ウェーハの一方の面には樹脂層が形成されている場合があり、この場合には、ウェーハの樹脂層側の外周部分が反り上がるように湾曲している。そのため、ウェーハの該樹脂層を上側に向けてチャックテーブルで保持した状態で該樹脂層を研削する場合には、ウェーハの外周部分が吸引保持されておらず保持面に密接していないことで、研削によって外周部分が中央領域に比べて多く研削されて薄くなってしまうという問題がある。また、ウェーハの外周部分が保持面から離れることで隙間が形成され、研削屑が該隙間に進入し保持面を汚し、順次ウェーハを研削する毎に保持面の汚れが増し、チャックテーブルの保持面においてウェーハの外周部分が吸引できないエリアが広がるという問題がある。
【0006】
よって、研削装置を用いて半導体ウェーハ等の被加工物を研削する場合には、チャックテーブルの保持面に吸引保持された被加工物の外周部分が保持面から浮いた状態にならないようにするという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、保持手段に備えた吸着部の保持面に吸引保持された被加工物を研削砥石で研削する被加工物の研削方法であって、被加工物の面積より広い面積の該保持面の中央に被加工物の中心を合致させて被加工物を保持させる保持工程と、該保持手段より外側に配設される外周ノズルから該保持面に保持された被加工物の外周縁に向かって水を噴射し、噴射された水が放物線を描くように該保持面の外周側の領域に到達し、該保持面が環状に露出した露出面に該水で水膜を形成し、該外周縁周囲が常に水で満たされた状態で被加工物の上面を該研削砥石で研削する研削工程と、を備える被加工物の研削方法である。
【発明の効果】
【0008】
保持手段の保持面に吸引保持された被加工物を研削砥石で研削する本発明に係る研削方法は、保持面に被加工物を保持させる保持工程と、保持手段より外側に配設される外周ノズルから保持面に保持された被加工物の外周縁に向かって水を供給させ、外周縁周囲が常に水で満たされた状態で被加工物の上面を研削砥石で研削する研削工程と、を備えることで、外周ノズルから供給した水で保持面と被加工物の外周縁との接触部位をシールしてバキュームリークが発生しないようにしつつ、被加工物の外周縁を含む外周部分の浮き上がりが生じないようにして被加工物を研削する事が可能となる。
【0009】
本発明に係る被加工物の研削方法において、保持面は、被加工物の面積より広い面積であって、研削工程では、被加工物の外周縁より外側において保持面が環状に露出した露出面に外周ノズルから供給する水で水膜を形成することで、露出面のバキュームリークが発生しないようにしつつ、被加工物の吸引される面全面を保持面で吸引保持することができ、被加工物の外周縁を含む外周部分の浮き上がりが生じないようにして被加工物を研削する事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】研削装置の一例を示す斜視図である。
図2】被加工物の外周縁より外側において保持面が環状に露出した露出面に外周ノズルから供給する水で水膜を形成し、被加工物の外周縁周囲が常に水で満たされた状態で被加工物の上面を研削砥石で研削している状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示す本発明に係る研削装置1は、保持手段3上に保持された被加工物Wを研削手段7によって研削する装置であり、研削装置1の装置ベース10上の前方(-Y方向側)は、保持手段3に対して被加工物Wの着脱が行われる領域であり、装置ベース10上の後方(+Y方向側)は、研削手段7によって保持手段3上に保持された被加工物Wの研削が行われる領域である。
なお、本発明に係る研削装置は、研削装置1のような研削手段7が1軸の研削装置に限定されるものではなく、少なくとも粗研削手段と仕上げ研削手段との2軸を備え、ターンテーブルで被加工物を各研削手段の下方に位置づけ可能な研削装置等であってもよい。
【0012】
被加工物Wは、例えば、シリコン母材等からなる円形の半導体ウェーハであり、図1において下方を向いている被加工物Wの表面Waは、格子状に区画された領域に複数のデバイスが形成されており、被加工物Wと略同径の保護テープTが貼着されて保護されている。被加工物Wの裏面Wbは、研削加工が施される被加工面となる。なお、被加工物Wはシリコン以外にガリウムヒ素、サファイア、窒化ガリウム、セラミックス、樹脂、又はシリコンカーバイド等で構成されていてもよい。
【0013】
被加工物Wを保持する保持手段3は、被加工物Wを吸引保持するチャックテーブル30を備えている。チャックテーブル30は、例えば、その外形が円形状であり、ポーラス部材等からなり被加工物Wを吸着する吸着部300と、縦断面が凹形状となっており吸着部300を支持する枠体301とを備える。枠体301の凹部にはめ込まれた状態の吸着部300は図2に示す吸引源37に連通し、吸着部300の保持面300aで被加工物Wを吸引保持する。
本実施形態において、例えば、チャックテーブル30の保持面300aは、被加工物Wの表面Waの面積より広い面積となっている。
【0014】
図1に示すように、チャックテーブル30は、カバー100によって囲繞されていると共に、その下方に配設された回転機構36(図2参照)により回転可能である。また、保持手段3は、図1に示すカバー100及びカバー100に連結された蛇腹カバー100aの下方に配設された図示しないY軸移動手段によってY軸方向に往復移動可能となっている。カバー100はチャックテーブル30と共にY軸方向に往復移動可能であり、蛇腹カバー100aはチャックテーブル30及びカバー100のY軸方向における移動に伴って伸縮する。
【0015】
例えば、チャックテーブル30の移動経路両脇には、図示しないウォーターケースの排水溝が位置している。ウォーターケースは、被加工物Wが研削されることで排出される研削屑を含みチャックテーブル30から流下する加工廃液等を受け止めて、図示しない廃液処理機構へと送る。
【0016】
回転機構36は、例えば、図2に示すように、プーリ機構であり、チャックテーブル30の下面に接続されチャックテーブル30に対して垂直に延在するテーブルスピンドル360を備えている。テーブルスピンドル360を回転させる駆動源となるモータ361のシャフトには、主動プーリ362が取り付けられており、主動プーリ362には無端ベルト364が巻回されている。テーブルスピンドル360には従動プーリ363が取り付けられており、無端ベルト364は、この従動プーリ363にも巻回されている。図2に示すモータ361が主動プーリ362を回転駆動することで、主動プーリ362の回転に伴って無端ベルト364が回動し、無端ベルト364が回動することで従動プーリ363及びテーブルスピンドル360が回転する。
【0017】
枠体301の凹部の底面から枠体301の下面、さらに該下面からテーブルスピンドル360にかけては、吸着部300に連通する吸引流路370が形成されている。該吸引流路370は、テーブルスピンドル360を囲繞するように配設されたロータリージョイント373、及び配管374を介してエジェクター機構又は真空発生装置等の吸引源37に連通している。ロータリージョイント373は、吸引源37が生み出す吸引力を遺漏無くテーブルスピンドル360側に移送する。
【0018】
例えば、配管374内には第一開閉弁375が配設されている。また、配管374内には、圧力計376が配設されており、吸引源37が作動してチャックテーブル30が被加工物Wを吸引保持している最中の配管374内の負圧を測定して、チャックテーブル30の保持面300aからバキュームリークが発生していないかを監視可能となっている。
【0019】
配管374の途中には、例えば、分岐管45が連通しており、該分岐管45の上流側はさらに二股に分岐して、第二開閉弁462を介してコンプレッサー等からなり圧縮エアを供給可能なエア供給源46に連通していると共に、第三開閉弁473を介してポンプ等からなり純水等の洗浄水を供給可能な水供給源47に連通している。
【0020】
例えば、チャックテーブル30による被加工物Wの吸引保持を解除して、チャックテーブル30から被加工物Wを搬出したい場合には、第一開閉弁375及び第三開閉弁473が閉じられた状態で、第二開閉弁462が開かれて、エア供給源46が圧縮エアを分岐管45に供給する。圧縮エアは、分岐管45、配管374、及び吸引流路370を通りチャックテーブル30の保持面300aから噴出する。その結果、保持面300aと被加工物Wの表面Waに貼着された保護テープTとの間に残存する真空吸着力を排除して、被加工物Wを保持面300aから離脱可能な状態にすることができる。
【0021】
例えば、チャックテーブル30の吸着部300につまった研削屑を吸着部300から排除したい場合には、第一開閉弁375が閉じられた状態で、第二開閉弁462又は第三開閉弁473が開かれて、エア供給源46が圧縮エアを分岐管45に供給する、又は水供給源47が純水を分岐管45に供給する。圧縮エア若しくは純水、又は圧縮エア及び純水が混合されてなる二流体は、分岐管45、配管374、吸引流路370、及び吸着部300を通りチャックテーブル30の保持面300aから噴出する。その結果、吸着部300に入り込んでいた研削屑等を保持面300aから噴出させて除去することができる。
【0022】
図1に示す装置ベース10上の後方(+Y方向側)にはコラム11が立設されている。
コラム11の前面には研削手段7をY軸方向に直交し保持手段3の保持面300aに対して垂直なZ軸方向に移動させる研削送り手段5が配設されている。研削送り手段5は、Z軸方向の軸心を有するボールネジ50と、ボールネジ50と平行に配設された一対のガイドレール51と、ボールネジ50の上端に連結しボールネジ50を回動させるモータ52と、内部のナットがボールネジ50に螺合し側部がガイドレール51に摺接する昇降板53とを備えており、モータ52がボールネジ50を回動させると、これに伴い昇降板53がガイドレール51にガイドされてZ軸方向に往復移動し、昇降板53に固定された研削手段7がZ軸方向に研削送りされる。
【0023】
研削手段7は、軸方向がZ軸方向であるスピンドル70と、スピンドル70を回転可能に支持するハウジング71と、スピンドル70を回転駆動するモータ72と、スピンドル70の先端に連結された円形板状のマウント73と、マウント73の下面に装着された研削ホイール74と、ハウジング71を支持し研削送り手段5の昇降板53にその側面が固定されたホルダ75と、を備える。
【0024】
図1に示す研削ホイール74は、平面視円環状のホイール基台740を備えており、ホイール基台740の底面の外周側の領域には、略直方体形状の研削砥石741が環状に複数配設されている。研削砥石741は、所定のボンド剤でダイヤモンド砥粒等が固着されて成形されている。
【0025】
本発明に係る研削装置1は、チャックテーブル30の外周より外側から保持面300aの外周に向かって水を供給する外周ノズル40を備えている。外周ノズル40は、例えば、チャックテーブル30を囲繞するカバー100上の四隅にそれぞれ配置されている。外周ノズル40は、例えば、カバー100から立設しており、側面視略逆L字状の外形を備えている。外周ノズル40の先端部分に形成されチャックテーブル30側に向かって開口する供給口400は、例えば、チャックテーブル30の保持面300aよりも高い位置に位置しており、供給口400から例えば水平に噴射された水が放物線を描くように保持面300aの外周側の領域に到達できるようになっている。
【0026】
なお、外周ノズル40の配設本数は図1に示すように4本に限られず、その形状も図1、2に示す例に限定されない。
また、配設箇所もカバー100上に限定されるものではない。例えば、研削装置1は、研削手段7の下方まで移動したチャックテーブル30と、研削ホイール74とを収容する図示しない加工室を備えている場合がある。加工室は、上板と、底板と、上板及び底板を連結してチャックテーブル30と研削ホイール74とを囲繞する側板とを備えていて、該上板や側板に外周ノズルがチャックテーブル30を囲むようにして複数本配設されていてもよい。
【0027】
各外周ノズル40には、配管41の一端がそれぞれ連通しており、各配管41は例えば1本に合流した後にその他端側が水供給源47に連通している。例えば、配管41内には、第四開閉弁414が配設されていてもよい。
【0028】
以下に、上記図1に示す研削装置1を用いて被加工物Wの上面を研削する場合の、研削装置1の各部の動作及び研削方法の各工程について説明する。
【0029】
(1)保持工程
まず、チャックテーブル30の中心と被加工物Wの中心とが略合致するように、被加工物Wが裏面Wbを上に向けた状態で保持面300a上に載置される。また、図2に示す第一開閉弁375が開かれて吸引源37と配管374とが連通し、この状態で、吸引源37が作動して生み出された吸引力が、ロータリージョイント373、吸引流路370、吸着部300を通りチャックテーブル30の保持面300aに伝達される。そして、チャックテーブル30が被加工物Wを裏面Wbを上側に向けた状態で吸引保持する。
【0030】
(2)研削工程
本実施形態においては、チャックテーブル30の保持面300aは、被加工物Wの面積より広い面積に設定されている。即ち、保持面300aの直径は被加工物Wよりも大径に設定されており、例えば、図2に示すように、被加工物Wの外周縁Wdより外側において保持面300aが環状に露出した露出面300bが形成される。例えば、該環状の露出面300bの幅(被加工物Wの外周縁Wdから枠体301の内周までの距離)は、約2mmとなっている。
【0031】
チャックテーブル30の環状の露出面300bにバキュームリークを発生させないようにするために、本実施形態においては、保持手段3より径方向外側に配設される外周ノズル40から保持面300aに保持された被加工物Wの外周縁Wdに向かって水を供給させ、外周縁Wd周囲が水で満たされた状態にし、また、例えば、被加工物Wの外周縁Wdより外側において保持面300aが環状に露出した露出面300bに外周ノズル40から供給する水で水膜を形成する。
【0032】
図2に示すように、第三開閉弁473が閉じられ、かつ、第四開閉弁414が開かれた状態で、水供給源47が水(例えば、純水)を配管41に供給する。水は、配管41を通り各外周ノズル40の供給口400から噴出する。各外周ノズル40の供給口400から噴出した水は被加工物Wの外周縁Wdに到達して、外周縁Wd周囲が水で満たされて水膜M(水シールM)が形成される。
また、各外周ノズル40の供給口400から噴出した水は、被加工物Wの外周縁Wdより外側において保持面300aが環状に露出した露出面300bにも到達して、水が表面張力で露出面300bを覆う膜を形成することで水シールMを形成する。この水シールMによって、露出面300bにバキュームリークが発生することが防がれる。
【0033】
次に、被加工物Wを保持したチャックテーブル30が、図1、2に示す研削手段7の下まで+Y方向へ移動し、研削手段7の研削ホイール74の回転中心が被加工物Wの回転中心に対して所定距離だけ水平方向にずれ、研削砥石741の回転軌跡が被加工物Wの回転中心を通るようにチャックテーブル30が位置付けられる。
【0034】
なお、上記のように、外周ノズル40から供給した水で被加工物Wの外周縁Wd周囲を水で満たした状態にし、また、露出面300bに外周ノズル40から供給する水で水シールMが形成された状態にする。例えば、被加工物Wを吸引保持したチャックテーブル30が、図1に示す装置ベース10上の着脱領域から研削領域内の研削手段7の下方の所定の位置まで移動する間においては、外周ノズル40から供給した水で被加工物Wの外周縁Wd周囲を水で満たした状態にして、露出面300bに外周ノズル40から供給する水で水シールMが形成された状態になっている。
【0035】
図2に示すように、被加工物Wを吸引保持したチャックテーブル30が研削領域に移動し、研削手段7が研削送り手段5により-Z方向へと送られ、スピンドル70の回転に伴って回転する研削砥石741が被加工物Wの裏面Wbに当接することで研削が行われる。研削中は、回転機構36によってZ軸を軸としてチャックテーブル30が回転するのに伴って、保持面300a上に保持された被加工物Wも回転するので、研削砥石741が被加工物Wの上面である裏面Wb全面の研削加工を行う。
【0036】
被加工物Wが上記のように研削されている最中においては、保持手段3より外側に配設される外周ノズル40から保持面300aに保持された被加工物Wの外周縁Wdに向かって水が供給され、外周縁Wd周囲が常に水で満たされた状態が維持される。そして、保持面300aよりも小さい面積の被加工物Wの表面Wa側は、保持面300aによって表面Wa全面が吸引保持されており、また外周縁Wdに対して保持面300aから作用する吸引力が下がってしまうことが水シールMによって抑制されるため、回転する研削砥石741から受ける押圧力で被加工物Wの外周縁Wdが持ち上げられてしまうことが防がれる。したがって、保持面300aにバキュームリークが発生することも無く、被加工物Wの外周縁Wdの浮き上がりが生じないようにして被加工物Wの研削を行っていくことができる。
なお、外周ノズル40は、研削砥石741が接触しないようにカバー39上に配設されている。
また、外周ノズル40から供給される水が露出面300bを覆っており、該水はチャックテーブル30の回転による遠心力を受けている。その遠心力を受けた水は、研削砥石741が被加工物Wを研削した研削屑と共にチャックテーブル30の外へ流れるので、研削屑を露出面300bに吸引されないようにしている。
【0037】
例えば、図1に示す四本の外周ノズル40の内の少なくとも1本の外周ノズル40の供給口400は、図2に示すように、研削ホイール74のホイール基台740の内側面及び環状に配列された研削砥石741の内側面に略対向した状態になる。したがって、水供給源47から供給する水の量を増やす等して、該1本の外周ノズル40の供給口400から噴射される水の一部を、外周縁Wd周囲を常に満たす水としてではなく、回転する研削ホイール74の内側面側から研削砥石741と被加工物Wとの接触部位を冷却・洗浄する水として作用させてもよい。接触部位を冷却・洗浄する該水は、研削屑と共にチャックテーブル30上から流下して、図示しないウォーターケースに流れていく。
【0038】
なお、チャックテーブル30は研削加工中において回転しており、外周ノズル40から噴射されて被加工物Wの外周縁Wd周囲に到達した水に遠心力が加わることで、該水が外周縁Wd周囲から外側に流れていってしまうが、各外周ノズル40から常に水が外周縁Wdに供給されているので、被加工物Wの外周縁Wd周囲が常に水で満たされた状態が維持される。
【0039】
また、本実施形態においては、チャックテーブル30の保持面300aは、被加工物Wの面積より広い面積であり、被加工物Wの被保持面である表面Wa側全面を吸引保持することができる。また、研削加工中において、被加工物Wの外周縁Wdより外側において保持面300aが環状に露出した露出面300bに外周ノズル40から供給する水で水膜M(水シールM)を形成することで、露出面300bのバキュームリークが発生しないようにしつつ、被加工物Wの外周縁Wdの浮き上がりが生じないようにして被加工物Wを研削する事が可能となる。
【0040】
被加工物Wの厚み測定がなされつつ、所望の厚みまで被加工物Wが研削された後、図1に示す研削送り手段5が研削手段7を上昇させ被加工物Wから離間させることで、被加工物Wの研削加工が完了する。
【0041】
研削工程において、図2に示すチャックテーブル30の露出面300bからは、水が吸引流路370に引き込まれる。露出面300bが広すぎると吸引流路370に引き込まれる水の量が多くなり吸引源37の吸引力が低下してしまうため、露出面300bは狭い方が好ましい。
【0042】
上記のように、保持手段3の保持面300aに吸引保持された被加工物Wを研削砥石741で研削する本発明に係る研削方法は、保持面300aに被加工物Wを保持させる保持工程と、保持手段3より外側に配設される外周ノズル40から保持面300aに保持された被加工物Wの外周縁Wdに向かって水を供給させ、外周縁Wd周囲が常に水で満たされた状態で被加工物Wの上面(本実施形態においては裏面Wb)を研削砥石741で研削する研削工程と、を備えることで、外周ノズル40から供給した水で保持面300aと被加工物Wの外周縁Wdとの接触部位周囲をシールしてバキュームリークが発生しないようにしつつ、被加工物Wの外周縁Wdを含む外周部分の浮き上がりが生じないようにして被加工物Wを研削する事が可能となる。
【0043】
本発明に係る被加工物Wの研削方法においては、保持面300aは、被加工物Wの面積より広い面積であって、研削工程では、被加工物Wの外周縁Wdより外側において保持面300aが環状に露出した露出面300bに外周ノズル40から供給する水で水膜M(水シールM)を形成することで、露出面300bのバキュームリークが発生しないようにしつつ、被加工物Wの吸引される下面である表面Wa全面を保持面300aで吸引保持することができ、被加工物Wの外周縁Wdを含む外周部分の浮き上がりが生じないようにして被加工物Wを研削する事が可能となる。
【0044】
また、本発明に係る研削装置1は、保持面300aで被加工物Wを保持するチャックテーブル30を回転させる回転機構36を備える保持手段3と、保持面300aに保持された被加工物Wを研削砥石741で研削する研削手段7と、チャックテーブル30の外周より外側から保持面300aの外周に向かって水を供給する外周ノズル40とを備え、外周ノズル40から保持面300aに保持された被加工物Wの外周縁Wdに水を供給しチャックテーブル30を回転させながら研削砥石741で被加工物Wを研削することで、外周ノズル40から供給した水で保持面300aと被加工物Wの外周縁Wdとの接触部位周囲をシールしてバキュームリークが発生しないようにしつつ、被加工物Wの外周縁Wdを含む外周部分の浮き上がりが生じないようにして被加工物Wを研削する事が可能となる。
【0045】
本発明に係る研削装置1において、チャックテーブル30の保持面300aは、被加工物Wの面積より広い面積となっていることで、外周ノズル40から供給した水で形成される水膜Mによって被加工物Wからはみ出した保持面300aの環状の露出面300bのバキュームリークを発生させないようにしつつ、被加工物Wの吸引される表面Wa全面を保持面300aで吸引保持することができ、被加工物Wの外周縁Wdを含む外周部分の浮き上がりが生じないようにして被加工物Wを研削する事が可能となる。
なお、チャックテーブル30の保持面300aが被加工物Wの面積より広い面積となって環状の露出面300bに外周ノズル40から水を供給して水膜Mを形成して、水膜Mを形成するために供給され続けている水はチャックテーブル30の回転に伴い遠心力を受けて外側に流れていくことで、露出面300bに研削屑が吸引されるというような問題も発生しない。
【0046】
本発明に係る研削方法は上記実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。また、添付図面に図示されている研削装置1の各構成の形状等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【0047】
被加工物Wは、例えば、表面Waに所定の樹脂によるモールドがなされ一様な厚さの樹脂層が形成されていてもよい。この場合には、被加工物Wは、樹脂層の形成時における熱影響(樹脂層の収縮等)によって、樹脂層側の外周部分が反り上がるように湾曲している。そして、被加工物Wは、保持手段3の保持面300aに樹脂層が形成された表面Waを上側にむけて載置され、該樹脂層が被研削面となってもよい。
【0048】
チャックテーブル30の保持面300aは、被加工物Wの面積より狭い面積であってもよい。この場合において被加工物Wの外周縁Wdが上に反っていても、外周ノズル40から水を供給しているので、外周縁Wd周囲が常に水で満たされた状態で被加工物Wの上面となる樹脂層を研削砥石741で研削することで、形成される水シールによって被加工物Wの外周縁Wdと枠体301の上面との間に隙間が無く、かつ、バキュームリークを発生させずに研削を行っていくことができ、研削屑を露出面となる枠体301の上面に付着させることが無い。
【符号の説明】
【0049】
W:被加工物 Wa:被加工物の表面 Wb:被加工物の裏面 T:保護テープ
1:研削装置 10:装置ベース 100:カバー 100a:蛇腹カバー 11:コラム
3:保持手段
30:チャックテーブル 300:吸着部 300a:保持面 301:枠体
36:回転機構 360:テーブルスピンドル 361:モータ
370:吸引流路 373:ロータリージョイント 374:配管 375:第一開閉弁376:圧力計 37:吸引源
45:分岐管 462:第二開閉弁 46:エア供給源 473:第三開閉弁 47:水供給源
5:研削送り手段 7:研削手段 741:研削砥石
40:外周ノズル 400:外周ノズルの供給口 41:配管 414:第四開閉弁
図1
図2