(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法およびプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
H01L21/302 101H
H01L21/302 101B
(21)【出願番号】P 2020029071
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2022-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中谷 理子
(72)【発明者】
【氏名】箕浦 佑也
(72)【発明者】
【氏名】後平 拓
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-133483(JP,A)
【文献】特開平04-229619(JP,A)
【文献】特開平10-172958(JP,A)
【文献】特開2006-165093(JP,A)
【文献】特開2009-188257(JP,A)
【文献】特開2016-076515(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板をプラズマ処理するプラズマ処理方法であって、
チャンバ内において炭素および水素を含有する第1のガスをプラズマ化することにより、前記チャンバ内の部品の表面を20[nm]以上の厚さの導電性を有する膜でコーティングする工程と、
前記チャンバ内
の支持部上に基板を
配置する工程
であり、前記支持部は下部電極を含む、工程と、
前記チャンバ内の部品の表面が前記導電性を有する膜でコーティングされた状態で、
前記下部電極にプラズマ生成用の第1のRF電力を供給し、前記チャンバ内において第2のガスをプラズマ化することにより、前記基板を処理する工程と、
前記処理する工程の後に、前記チャンバ内において酸素を含有する第3のガスをプラズマ化することにより、前記導電性を有する膜を除去する工程と
を含み、
前記除去する工程が実行された後、前記コーティングする工程が再び実行された後、前記処理する工程が実行されるプラズマ処理方法。
【請求項2】
前記第1のガスは、
ハイドロカーボンガス、ハイドロフルオロカーボンガス、フルオロカーボンガスと水素を含有する
第1の水素含有ガスとの混合ガス、または、ハイドロフルオロカーボンガスと
前記第1の水素含有ガスとの混合ガスを含む請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記
第1の水素含有ガスは、水素ガス、ハイドロカーボンガス、または、ハイドロフルオロカーボンガスを含む請求項2に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記第2のガスには、フルオロカーボンガスが含まれる請求項1から3のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記第2のガスには、C
4F
6ガス、C
4F
8ガス、およびC
5F
8ガスのうち、少なくとも1つが含まれる請求項4に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
前記第2のガスには、水素を含有する
第2の水素含有ガスが含まれる請求項4または5に記載のプラズマ処理方法。
【請求項7】
前記
第2の水素含有ガスは、水素ガス、ハイドロカーボンガス、または、ハイドロフルオロカーボンガスを含む請求項6に記載のプラズマ処理方法。
【請求項8】
前記コーティングする工程の前に、前記チャンバ内においてクリーニングガスをプラズマ化することにより、前記チャンバ内の部品の表面をクリーニングする工程をさらに含む請求項1から7のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項9】
前記クリーニングする工程の前に、前記チャンバにダミーウェハを搬入する工程と、
前記クリーニングする工程の後に、前記チャンバから前記ダミーウェハを搬出する工程をさらに含む請求項8に記載のプラズマ処理方法。
【請求項10】
チャンバと、
前記チャンバ内で基板を支持するための
支持部であって、下部電極を含む、
支持部と、
前記下部電極に対向して配置される上部電極と、
前記第1のRF
電力を供給するように構成された第1のRF生成部と、
前記プラズマ中のイオンを前記基板に引き込むための第2のRF
電力を供給するように構成された第2のRF生成部と
を備えるプラズマ処理装置を用いて実行される、請求項1から9のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項11】
前記コーティングする工程は、前記下部電極に前記第1のRF
電力及び前記第2のRF
電力を供給することを含む、請求項10に記載のプラズマ処理方法。
【請求項12】
チャンバと、
前記チャンバ内で基板を支持するための
支持部であって、下部電極を含む、
支持部と、
前記下部電極に対向して配置される上部電極と、
前記第1のRF
電力を供給するように構成された第1のRF生成部と、
前記プラズマ中のイオンを前記基板に引き込むためのDCパルスを生成するように構成されたDCパルス生成部と
を含むプラズマ処理装置を用いて実行される、請求項1から9のいずれか一項に記載のプラズマ処理方法。
【請求項13】
前記コーティングする工程は、前記下部電極に前記第1のRF
電力及び前記DCパルスを供給することを含む、請求項12に記載のプラズマ処理方法。
【請求項14】
チャンバと、
前記チャンバ内で基板を支持するための
支持部であって、下部電極を含む、
支持部と、
前記下部電極に対向して配置される上部電極と、
プラズ
マ生成用の第1のRF
電力を生成する第1のRF生成部と、
バイアス用の第2のRF
電力を生成する第2のRF生成部又は
バイアス用のDCパルスを生成するDCパルス生成部と、
制御部と、
を含み、
前記制御部は、
チャンバ内において炭素および水素を含有する第1のガスをプラズマ化することにより、前記チャンバ内の部品の表面を20[nm]以上の厚さの導電性を有する膜でコーティングする工程と、
前記
支持部上に前記基板を
配置する工程と、
前記チャンバ内の部品の表面が前記導電性を有する膜でコーティングされた状態で、
前記下部電極に前記第1のRF電力を供給し、前記チャンバ内において第2のガスをプラズマ化することにより、前記基板を処理する工程と、
前記処理する工程の後に、前記チャンバ内において酸素を含有する第3のガスをプラズマ化することにより、前記導電性を有する膜を除去する工程と
を実行するように構成され、
前記除去する工程が実行された後、前記コーティングする工程が再び実行された後、前記処理する工程が実行される、プラズマ処理装置。
【請求項15】
チャンバと、
前記チャンバ内で基板を支持する支持部であって、下部電極を含む支持部と、
前記下部電極に対向して配置される上部電極と、
プラズマ生成用の第1のRF電力を生成する第1のRF生成部と、
バイアス用の第2のRF電力を生成する第2のRF生成部又はバイアス用のDCパルスを生成するDCパルス生成部と、
制御部と、
を含み、
前記制御部は、
チャンバ内において炭素および水素を含有する第1のガスをプラズマ化することにより、前記チャンバ内の部品の表面を導電性を有する膜でコーティングする工程と、
前記チャンバ内に前記基板を配置する工程と、
前記チャンバ内の部品の表面が前記導電性を有する膜でコーティングされた状態で、前記下部電極に前記第1のRF電力を供給し、前記チャンバ内において第2のガスをプラズマ化することにより、前記基板を処理する工程と、
を実行するように構成される、プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の種々の側面および実施形態は、プラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チャンバの内部で生成されたプラズマにより基板にエッチング等の処理を行う際、プラズマに含まれるイオンやラジカルがチャンバの内壁に衝突する。これにより、チャンバの内壁が削れたり浸食されたりしてダメージを受ける。チャンバの内壁をこのようなダメージから保護するために、プラズマ処理を行う前に、チャンバの内壁に保護膜を形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、チャンバ内の部品の消耗を抑えつつ、プロセスの安定化を実現することができるプラズマ処理方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面は、基板をプラズマ処理するプラズマ処理方法であって、チャンバ内において炭素および水素を含有する第1のガスをプラズマ化することにより、チャンバ内の部品の表面を導電性を有する膜でコーティングする工程と、チャンバ内に基板を搬入する工程と、チャンバ内の部品の表面が導電性を有する膜でコーティングされた状態で、チャンバ内において第2のガスをプラズマ化することにより、基板を処理する工程とを含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示の種々の側面および実施形態によれば、チャンバ内の部品の消耗を抑えつつ、プロセスの安定化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理装置の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、条件毎に形成される膜の特性の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、膜の電圧電流特性の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、膜の電圧電流特性の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、チャンバ内の各部に形成される保護膜の厚さの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、プラズマ処理方法の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、最初に実行されたエッチングにおけるE/Rを基準としたE/Rの変化の割合の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、プラズマ処理方法の実施形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態により、開示されるプラズマ処理方法が限定されるものではない。
【0009】
ところで、チャンバ内には、チャンバ内で生成されるプラズマに対して、アノードやカソードとして機能する電極が存在する。このような電極は、プラズマとの間で電子のやり取りを行うため、プラズマとの間で導電性を有している必要がある。
【0010】
しかし、チャンバの内壁に形成された保護膜が絶縁性の膜であると、プラズマと電極との間の導電性が低下し、プラズマとの間で電子のやり取りが妨げられる。これにより、プラズマの状態が設計時の状態と異なることになる。そのため、プロセスが不安定になり、プロセスの結果と所望の結果との乖離が大きくなる場合がある。
【0011】
そこで、本開示は、チャンバ内の部品の消耗を抑えつつ、プロセスの安定化を実現することができる技術を提供する。
【0012】
[プラズマ処理装置1の構成]
図1は、本開示の一実施形態におけるプラズマ処理装置1の一例を示す概略断面図である。一実施形態において、プラズマ処理装置1は、チャンバ10、ガス供給部20、RF(Radio Frequency)電力供給部30、排気システム40、および制御部50を含む。
【0013】
本実施形態において、チャンバ10は、支持部11および上部電極シャワーヘッドアセンブリ12を含む。支持部11は、チャンバ10内の処理空間10sの下部領域に配置されている。上部電極シャワーヘッドアセンブリ12は、支持部11の上方に配置されており、チャンバ10の天板の一部として機能し得る。
【0014】
チャンバ10は、例えば内壁の表面が陽極酸化処理されたアルミニウム等の部材によって形成されており、接地されている。チャンバ10の内側壁には、デポシールド100が着脱自在に設けられている。
【0015】
支持部11は、処理空間10sにおいて基板Wを支持するように構成されている。本実施形態において、支持部11は、下部電極111、静電チャック112、およびエッジリング113を含む。静電チャック112は、下部電極111上に配置されており、静電チャック112の上面で基板Wを支持するように構成されている。エッジリング113は、下部電極111の周縁部上面において基板Wを囲むように配置されている。下部電極111の外周面には、筒状のリングシールド103が設けられている。リングシールド103に対向するチャンバ10の内壁には、バッフル板側壁101が設けられている。リングシールド103とバッフル板側壁101との間には、バッフル板102が設けられている。
【0016】
静電チャック112内には、図示しないヒータが設けられている。また、下部電極111内には、図示しない流路が形成されており、図示しないチラーユニットによって温度制御された媒体が流路内を循環する。静電チャック112内のヒータと、下部電極111の流路内を循環する媒体によって、静電チャック112上に配置された基板Wの温度が制御される。本実施形態において、基板Wに対するエッチング等のプロセス時に、基板Wの温度は、例えば20℃以下の温度に制御される。
【0017】
上部電極シャワーヘッドアセンブリ12は、ガス供給部20からの1種類以上のガスを処理空間10s内に供給するように構成されている。本実施形態において、上部電極シャワーヘッドアセンブリ12は、ガス入口12a、ガス拡散室12b、および複数のガス出口12cを含む。ガス供給部20とガス拡散室12bとは、ガス入口12aを介して流体連通している。ガス拡散室12bと処理空間10sとは、複数のガス出口12cを介して流体連通している。本実施形態において、上部電極シャワーヘッドアセンブリ12は、1種類以上のガスをガス入口12aからガス拡散室12bおよび複数のガス出口12cを介して処理空間10s内に供給するように構成されている。
【0018】
ガス供給部20は、複数のガスソース21a~21dおよび複数の流量制御器22a~22dを含む。流量制御器22a~22dは、例えばマスフローコントローラまたは圧力制御式の流量制御器を含み得る。また、ガス供給部20は、1以上の処理ガスの流量を変調またはパルス化する1以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0019】
本実施形態において、流量制御器22aは、ガスソース21aから供給された処理ガスの流量を制御し、流量が制御された処理ガスをガス入口12aに供給する。本実施形態において、処理ガスには、炭素を含有するガスが含まれる。炭素を含有するガスとしては、例えばフルオロカーボンガスを用いることができる。炭素を含有するガスには、例えば、C4F6ガス、C4F8ガス、およびC5F8ガスのうち、少なくとも1つが含まれてもよい。また、処理ガスには、水素を含有するガスが含まれてもよい。水素を含有するガスは、例えば水素ガスまたはハイドロカーボンガス等であってもよい。処理ガスは、第2のガスの一例である。
【0020】
流量制御器22bは、ガスソース21bから供給されたクリーニングガスの流量を制御し、流量が制御されたクリーニングガスをガス入口12aに供給する。本実施形態において、クリーニングガスは、例えば酸素ガスやオゾンガス等である。また、CF4等を少量添加してもよい。クリーニングガスは、第3のガスの一例である。
【0021】
流量制御器22cは、ガスソース21cから供給されたハイドロカーボンガスの流量を制御し、流量が制御されたハイドロカーボンガスをガス入口12aに供給する。本実施形態において、ハイドロカーボンガスは、例えばメタン(CH4)ガスである。
【0022】
流量制御器22dは、ガスソース21dから供給されたフルオロカーボンガスの流量を制御し、流量が制御されたフルオロカーボンガスをガス入口12aに供給する。本実施形態において、フルオロカーボンガスは、例えばオクタフルオロシクロブタン(C4F8)ガスである。ガスソース21cから供給されたハイドロカーボンガスと、ガスソース21dから供給されたフルオロカーボンガスとの混合ガスは、第1のガスの一例である。なお、第1のガスとしては、フルオロカーボンガスを含まないハイドロカーボンガスであってもよく、ハイドロカーボンガスを含まないフルオロカーボンガスと水素を含有するガスとの混合ガスであってもよい。水素を含有するガスは、例えば水素ガス等であってもよい。
【0023】
RF電力供給部30は、RF電力、例えば1以上のRF信号を、下部電極111、上部電極シャワーヘッドアセンブリ12、または、下部電極111および上部電極シャワーヘッドアセンブリ12の双方のような1以上の電極に供給するように構成されている。本実施形態において、RF電力供給部30は、2つのRF生成部31a、31b、および2つの整合回路32a、32bを含む。本実施形態におけるRF電力供給部30は、第1のRF信号を第1のRF生成部31aから第1の整合回路32aを介して下部電極111に供給するように構成されている。RFスペクトルは、3[Hz]~3000[GHz]の範囲の電磁スペクトルの一部を包含する。半導体プロセスのような電子材料プロセスに関して、プラズマ生成のために用いられるRFスペクトルの周波数は、好ましくは100[kHz]~3[GHz]、より好ましくは200[kHz]~150[MHz]の範囲内の周波数である。例えば、第1のRF信号の周波数は、27[MHz]~100[MHz]の範囲内の周波数であってもよい。本実施形態において、下部電極111は、プラズマ生成用の第1のRF信号が供給されるカソードとして機能する。一方、プラズマ生成用の第1のRF信号に対して、上部電極シャワーヘッドアセンブリ12およびチャンバ10の内壁は、下部電極111に対する対向電極であるアノードとして機能する。
【0024】
また、本実施形態におけるRF電力供給部30は、第2のRF信号を第2のRF生成部31bから第2の整合回路32bを介して下部電極111に供給するように構成されている。例えば、第2のRF信号の周波数は、400[kHz]~13.56[MHz]の範囲内の周波数であってもよい。代わりに、第2のRF生成部31bに代えて、DC(Direct Current)パルス生成部を用いてもよい。
【0025】
さらに、図示は省略するが、ここでは他の実施形態が考慮される。例えば、代替実施形態のRF電力供給部30において、RF生成部が第1のRF信号を下部電極111に供給し、他のRF生成部が第2のRF信号を下部電極111に供給するように構成されてもよい。更に他のRF生成部が第3のRF信号を上部電極シャワーヘッドアセンブリ12に供給するように構成されてもよい。加えて、他の代替実施形態において、DC電圧が上部電極シャワーヘッドアセンブリ12に印加されてもよい。また、さらに、種々の実施形態において、1以上のRF信号(即ち、第1のRF信号、第2のRF信号等)の振幅がパルス化または変調されてもよい。振幅変調は、オン状態とオフ状態との間、あるいは、複数の異なるオン状態の間でRF信号の振幅をパルス化することを含んでもよい。また、RF信号の位相整合が制御されてもよく、複数のRF信号の振幅変調の位相整合は、同期化されてもよく、非同期であってもよい。
【0026】
排気システム40は、例えばチャンバ10の底部に設けられた排気口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力弁、ターボ分子ポンプ、粗引きポンプ、またはこれらの組み合わせのような真空ポンプを含んでもよい。
【0027】
本実施形態において、制御部50は、ここで述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な指示を処理する。制御部50は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。制御部50は、例えばコンピュータ51を含んでもよい。コンピュータ51は、例えば、処理部(例えばCPU;Central Processing Unit)511、記憶部512、および通信インターフェイス513を含む。処理部511は、記憶部512に格納されたプログラムやレシピに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部512は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、およびSSD(Solid State Drive)等のようなタイプのメモリからなるグループから選択される少なくとも1つのタイプのメモリを含んでもよい。通信インターフェイス513は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信を行う。
【0028】
[保護膜の選定]
図2は、条件毎に形成される膜の特性の一例を示す図である。
図2に示された各条件(1)~(5)では、主に以下の条件でチャンバ10内に生成されたプラズマを用いてシリコン基板上に形成された膜について、その特性が評価された。
圧力:100[mTorr]
第1のRF:1000[W]
第2のRF:200[W]
【0029】
条件(1)では、メタン(CH4)ガスを用いて膜が形成された。条件(1)で形成された膜では、シリコン基板におけるデポジションレート(D/R)は、130[nm/min]であった。また、条件(1)で形成された膜では、堆積可能な膜厚は400[nm]以下であった。また、条件(1)で形成された膜では、下記の条件でエッチングを行った場合のエッチングレート(E/R)は、19[nm/min]であった。E/Rが低いほど、エッチング耐性が高い保護膜といえる。
圧力:25[mTorr]
第1のRF:4500[W]
第2のRF:200[W]
エッチングガス:H2/C4F8/O2
エッチング時間:120秒
【0030】
なお、条件(1)でチャンバ10内の部品の表面に保護膜を形成した場合、保護膜の厚さの均一性が悪かった。条件(1)で形成される膜は、保護膜としては適さない。
【0031】
条件(2)では、オクタフルオロシクロブタン(C4F8)ガスを用いて膜が形成された。条件(2)で形成された膜では、シリコン基板におけるデポジションレート(D/R)は、233[nm/min]であった。
【0032】
条件(3)では、ヘキサフルオロブタジエン(C4F6)ガスを用いて膜が形成された。条件(3)で形成された膜では、シリコン基板におけるデポジションレート(D/R)は、1000[nm/min]であった。また、条件(3)で形成された膜では、堆積可能な膜厚は2000[nm]以上であった。しかし、条件(3)で形成された膜では、シリコン基板との間の密着性が悪く、膜が剥がれやすかった。なお、条件(3)で形成された膜のE/Rは、102[nm/min]であった。
【0033】
条件(4)では、メタン(CH4)ガスとヘキサフルオロブタジエン(C4F6)ガスとの混合ガスを用いて膜が形成された。条件(4)では、CH4ガスに対するC4F6ガスの比率がCH4:C4F6=1:9となる流量比で混合された。条件(4)で形成された膜では、シリコン基板におけるデポジションレート(D/R)は、1004[nm/min]であった。
【0034】
条件(5)では、メタン(CH4)ガスとオクタフルオロシクロブタン(C4F8)ガスの混合ガスを用いて膜が形成された。条件(5)では、CH4ガスに対するC4F8ガスの比率がCH4:C4F8=1:3となる流量比で混合された。条件(5)で形成された膜では、シリコン基板におけるデポジションレート(D/R)は、506[nm/min]であった。また、条件(5)で形成された膜では、堆積可能な膜厚は2000[nm]以下であった。また、条件(5)で形成された膜のE/Rは、91[nm/min]であった。
【0035】
ここで、チャンバ10内の部品の表面に保護膜を形成する場合、保護膜が形成される過程でチャンバ10内の部品の表面がプラズマに晒される。そのため、チャンバ10内の部品の表面がプラズマに晒される時間が長くなると、チャンバ10内の部品の表面がダメージを受ける。そのため、短時間で所望の厚さの保護膜が形成されることが好ましい。短時間で所望の厚さの保護膜が形成されるためには、D/Rが高いことが好ましい。
【0036】
条件(5)で形成された膜は、他の条件で形成された膜と比べて、D/Rが比較的高く、E/Rも比較的低い。そのため、
図2に例示された条件で形成された膜の中では、条件(5)で形成された膜が最も好ましい。
【0037】
[保護膜の最小膜厚]
チャンバ10内の部品の表面に保護膜が形成されたとしても、保護膜が薄い場合には、プラズマに含まれるイオン等が保護膜を突き抜けてチャンバ10内の部品の表面に達し、部品の表面にダメージを与える場合がある。そこで、最も小さい原子である水素をプラズマ化し、プラズマに含まれる水素イオンが保護膜に衝突した場合に、保護膜において水素イオンがどの程度の深さまで到達するかを調べた。
【0038】
実験では、保護膜と材質が似ているフォトレジスト(PR)膜が水素ガスのプラズマに晒された。チャンバ10の内壁に対するプラズマのポテンシャルは、約100[eV]と算出され、これは、第1のRF信号のVppが200[V]に相当する。
【0039】
この条件で、PR膜を水素ガスのプラズマに晒したところ、表面から約20[nm]の深さまでのPR膜がプラズマに含まれる水素イオンによって変質した。即ち、PR膜が20[nm]以上の厚さであれば、水素ガスのプラズマに含まれる水素イオンがPR膜を突き抜けることはない。従って、PR膜と材質が似ている保護膜は、チャンバ10内の部品の表面に、20[nm]以上の厚さで形成されることが好ましい。これにより、プラズマに含まれるイオン等によるチャンバ10内の部品へのダメージを抑制することができる。
【0040】
[保護膜の導電性]
図3および
図4は、膜の電圧電流特性の一例を示す図である。CH
4ガスとC
4F
8ガスの両方を用いて形成された膜の抵抗値は、およそ2×10
10[Ω]~2×10
11[Ω]程度である。一方、CH
4ガスを用いずにC
4F
8ガスを用いて形成された膜の抵抗値は、およそ6×10
12[Ω]~12×10
12[Ω]程度となっており、CH
4ガスとC
4F
8ガスの両方を用いて形成された膜の抵抗値よりも2桁以上大きい値となっている。なお、C
4F
8ガスを用いずにCH
4ガスを用いて形成された膜の抵抗値は、およそ1×10
8[Ω]~2×10
8[Ω]程度となっており、CH
4ガスとC
4F
8ガスの両方を用いて形成された膜の抵抗値よりも2桁以上小さい値となっている。
【0041】
図3および
図4を参照すると、CH
4ガスのように炭素と水素の両方を含有するガスを用いて形成された膜の抵抗値は、C
4F
8ガスのように水素を含有しないガスを用いて形成された膜の抵抗値よりも低くなっている。即ち、CH
4ガスのように炭素と水素の両方を含有するガスを用いて形成された膜は、導電性を示し、C
4F
8ガスのように水素を含有しないガスを用いて形成された膜は、絶縁性を示している。
【0042】
ここで、チャンバ10内には、チャンバ10内で生成されるプラズマに対して、アノードやカソードとして機能する電極が存在する。このような電極は、プラズマとの間で電子のやり取りを行うため、プラズマとの間で導電性を有している必要がある。
【0043】
しかし、チャンバ10の内壁に形成された保護膜が絶縁性の膜であると、プラズマと電極との間の導電性が低下し、プラズマとの間で電子のやり取りが妨げられる。これにより、プラズマの状態が設計時の状態と異なることになる。そのため、プロセスが不安定になり、プロセスの結果と所望の結果との乖離が大きくなる場合がある。そこで、本実施形態では、プロセスの開始前に、チャンバ10内の部品の表面に導電性を有する保護膜が形成される。これにより、チャンバ10内の部品の消耗を抑えつつ、プロセスの安定化を実現することができる。
【0044】
[保護膜の組成]
図5は、膜の組成の一例を示す図であり、XPS(X-ray Photoelectron Spectroscopy)にて膜に含まれる炭素の結合状態の観察を行った結果である。C
4F
8ガスのみを用いて形成された膜は-CF
2結合および-CF
3結合といったフッ素の比率が多い結合状態のピークが高いのに対して、CH
4ガスとC
4F
8ガスの両方を用いて形成された膜は、フッ素の比率が多い結合状態のピークは減少し、-CF結合、-C-CF
X結合といったフッ素の比率が少ない結合状態のピークが高くなる傾向あり、C
4F
8ガスに対するCH
4ガスの比率が高くなるほど、よりフッ素の比率が少ない結合状態のピークが高くなる。
【0045】
これは、C4F8ガスのプラズマによって生成されるCFポリマーに含まれるフッ素(F)がCH4ガスのプラズマによって生成された水素(H)とスカベンジ反応して引き抜かれることのよって、フッ素含有率が低いCFポリマーとして膜が形成されたものと考えられる。このため、実施例ではC4F8ガスに対してCH4ガスを用いたが、フルオロカーボンガスに対して水素ガスやハイドロフルオロカーボンガスなど水素を含有するガスを用いるのであれば同様な効果が得られるものと考えられる。さらに、CH4ガスの組成にはフッ素が含まれないため、CH4ガスのみを用いて形成された膜には、フッ素が含まれず、-C-C結合のみである。
【0046】
また、フルオロカーボンガスの代わりにCH2F2ガスのようなハイドロフルオロカーボンガスを用いた場合、ガスの中に含まれるフッ素は少なく、また水素が含まれる。そのため、水素を含有するガスを用いなくてもフッ素含有率が低いCFポリマーとして膜が形成されることが予想される。また、さらに水素を含有するガスを用いることによって、よりフッ素含有率が低いCFポリマーとして膜が形成されることが期待できる。
【0047】
一般的に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素原子を多く含むフッ素樹脂は誘電体であり導電性が非常に低いが、炭素のみからなるグラファイトは同位体であり非常に導電性が高い。このことからも、-C-CFX結合やC-C結合の比率が高くなるCH4ガスのように炭素と水素の両方を含有するガスを用いて形成された膜は、導電性を示し、-CF2結合や-CF3結合の比率が高くなるC4F8ガスのように水素を含有しないガスを用いて形成された膜は、絶縁性を示している傾向と一致する。
【0048】
[反応副生成物の堆積]
図6は、チャンバ10内の各部に形成される保護膜の厚さの一例を示す図である。
図6には、保護膜が形成されていない状態でエッチングが実行された場合、保護膜が形成されるプリコーティングが行われた場合、保護膜が形成された状態でエッチングが実行された場合のそれぞれの場合における各部の堆積物の厚さが示されている。
【0049】
エッチングでは、以下の条件Aで生成されたプラズマにより、静電チャック112上に載置された基板Wがエッチングされ、その後に以下の条件Bで生成されたプラズマにより、静電チャック112上に載置された基板Wがさらにエッチングされた。
<条件>
圧力:20[mTorr]
第1のRF:5000[W]
第2のRF:9000[W]
エッチングガス:H2/C4F8/O2
エッチング時間:1200秒
【0050】
また、プリコーティングでは、以下の条件で生成されたプラズマにより、チャンバ10内に保護膜が形成された。
圧力:100[mTorr]
第1のRF:1000[W]
第2のRF:200[W]
エッチングガス:CH4:C4F8=1:2
エッチング時間:180秒
【0051】
図6を参照すると、エッジリング113では、保護膜が無い状態ではエッチング後に堆積物が残らなかったが、保護膜が形成された場合には、エッチング後に堆積物が残っており、保護膜として機能していると考えられる。
【0052】
また、リングシールド103、バッフル板102、バッフル板側壁101、およびデポシールド100では、保護膜が無い状態でもエッチング後に堆積物が付着するが、保護膜が形成された場合には、エッチング後の堆積物の量が増加する傾向にある。そのため、リングシールド103、バッフル板102、バッフル板側壁101、およびデポシールド100においても、エッチング前に保護膜を形成することにより、チャンバ10内の部材が保護されていると考えられる。
【0053】
[プラズマ処理方法]
図7は、プラズマ処理方法の一例を示すフローチャートである。
図7に例示されたプラズマ処理方法は、例えばプラズマ処理装置1の設置後に最初にエッチング等のプロセスが実行される場合や、プラズマ処理装置1のメンテナンス後にエッチング等のプロセスが実行される場合等の予め定められたタイミングで開始される。なお、
図7に例示されたプラズマ処理方法は、例えば、処理部511が記憶部512に格納されたプログラム等を実行し、プラズマ処理装置1の各部を制御することにより実現される。
【0054】
まず、クリーニングが実行される(S10)。ステップS10は、除去する工程の一例である。ステップS10では、まず図示しないゲートバルブが開けられ、図示しない搬送装置により、基板Wの代わりにダミーウェハがチャンバ10内に搬入され、静電チャック112上に載置される。そして、チャンバ10内にダミーウェハがある状態で、処理部511は、排気システム40を制御してチャンバ10内のガスを排気する。そして、処理部511は、流量制御器22bを制御してチャンバ10内に所望の流量のクリーニングガスを供給し、チャンバ10内の圧力を調整する。そして、処理部511は、第1のRF電力供給部30aを制御して第1のRF信号を下部電極111に供給する。上部電極シャワーヘッドアセンブリ12から処理空間10sにシャワー状に供給されたクリーニングガスは、第1のRF電力供給部30aから下部電極111に供給された第1のRF信号によりプラズマ化される。そして、プラズマに含まれるラジカル等によりチャンバ10内の部品の表面に付着した異物が除去される。なお、クリーニングでは、第2のRF電力供給部30bから第2のRF信号が下部電極111に供給されてもよい。また、チャンバ10内にダミーウェハおよび基板Wが無い状態で、ステップS10が実行されてもよい。
【0055】
次に、チャンバ10内に保護膜を形成するプリコーティングが実行される(S11)。ステップS11は、コーティングする工程の一例である。ステップS11では、引き続きチャンバ10内に基板Wの代わりにダミーウェハがある状態で、処理部511は、排気システム40を制御してチャンバ10内のガスが排気する。そして、処理部511は、流量制御器22cを制御してチャンバ10内に所望の流量のCH4ガスを供給し、流量制御器22dを制御してチャンバ10内に所望の流量のC4F6ガスを供給し、チャンバ10内の圧力を調整する。これにより、CH4ガスおよびC4F6ガスを含むガスが、上部電極シャワーヘッドアセンブリ12から処理空間10s内に供給される。そして、処理部511は、第1のRF電力供給部30aおよび第2のRF電力供給部30bを制御して第1のRF信号および第2のRF信号を下部電極111に供給する。上部電極シャワーヘッドアセンブリ12から処理空間10sにシャワー状に供給されたガスは、第1のRF電力供給部30aから下部電極111に供給された第1のRF信号によりプラズマ化される。そして、プラズマに含まれるイオンやラジカル等によりチャンバ10内の部品の表面に導電性を有する保護膜が形成される。また、第2のRF電力供給部30bから下部電極111に供給された第2のRF信号により、基板Wにバイアスが印加されると同時にプラズマポテンシャルが増加する。プラズマポテンシャルが増加することによって、プラズマに含まれるイオンがチャンバ10内の部品の表面に引き込まれ、チャンバ10内の部品の表面上に形成された保護膜に含まれるフッ素がスパッタリング効果によって引き抜かれる。これにより、チャンバ10内の部品の表面上に形成された保護膜は、炭素比率が高い状態となり、保護膜の導電性が高まるものと考えられる
【0056】
なお、静電チャック112上に保護膜が形成されない、もしくは少なくなる条件で処理できるのであれば、チャンバ10内にダミーウェハおよび基板Wが無い状態で、ステップS11が実行されてもよい。また、ステップS11およびステップS12においてダミーウェハが用いられた場合には、次のステップS12が実行される前に、図示しないゲートバルブが開けられ、図示しない搬送装置により、チャンバ10内からダミーウェハが搬出される。
【0057】
次に、エッチング等のプロセスが実行される(S12)。ステップS12は、処理する工程の一例である。ステップS12では、図示しないゲートバルブが開けられ、図示しない搬送装置により、基板Wがチャンバ10内に搬入され、静電チャック112上に載置される。そして、処理部511は、排気システム40を制御してチャンバ10内のガスが排気し、流量制御器22aを制御してチャンバ10内に所望の流量の処理ガスを供給し、チャンバ10内の圧力を調整する。そして、処理部511は、第1のRF電力供給部30aおよび第2のRF電力供給部30bを制御して第1のRF信号および第2のRF信号を下部電極111に供給する。上部電極シャワーヘッドアセンブリ12から処理空間10sにシャワー状に供給された処理ガスは、第1のRF電力供給部30aから下部電極111に供給された第1のRF信号によりプラズマ化される。そして、第2のRF電力供給部30bから下部電極111に供給された第2のRF信号により、プラズマに含まれるイオン等が基板Wに引き込まれる。これにより、プラズマに含まれるイオンやラジカル等により、基板Wがエッチングされる。また、ステップS11においてチャンバ10内の部品の表面に形成された保護膜の上に反応副生成物が堆積する。また、エッチング等のプロセスの実行が終了すると、図示しないゲートバルブが開けられ、図示しない搬送装置により、チャンバ10内から基板Wが搬出される。
【0058】
次に、処理部511は、予め定められた数の基板Wに対するプロセスが終了したか否かを判定する(S13)。予め定められた数とは、例えば1であってもよく、2以上であってもよい。予め定められた数の基板Wに対するプロセスが終了していない場合(S13:No)、処理部511は、再びステップS10に示された処理を実行する。ステップS10に示された処理が再び実行されることにより、ステップS11において形成された保護膜と、ステップS12において保護膜の上に堆積した反応副生成物とが除去される。保護膜と反応副生成物が除去された後、再びステップS11およびステップS12が実行され、基板Wに対するプロセスが継続される。
【0059】
なお、予め定められた数の基板Wに対するプロセス処理方法が終了した場合(S13:Yes)、プラズマ処理方法が終了する。また、
図7には図示されていないが、プロセス処理方法を終了する前に、処理部511は、再びステップS10と同様な条件によってクリーニングを実行してもよい。ステップS10と同様な条件によって処理が再び実行されることにより、ステップS11において形成された保護膜と、ステップS12において保護膜の上に堆積した反応副生成物とが除去され、再びプロセス処理方法が実行されるまでの間、チャンバ10内の部品の表面に保護膜や異物が取り除かれている状態であるため、保護膜や異物の剥離によるパーティクル発生が抑制される。
【0060】
[プロセスの安定性]
図8は、最初に実行されたエッチングにおけるE/Rを基準としたE/Rの変化の割合の一例を示す図である。
【0061】
チャンバ10内の部品の表面に保護膜が形成されていない場合、エッチングが実行されると、プラズマによりチャンバ10内の部品がダメージを受ける。これにより、チャンバ10内の部品が消耗し、チャンバ10内の環境が徐々に変化する。また、消耗した部品から発生したパーティクルが他の部品に付着し、電気的な特性を変化させる。そのため、最初に実行されたエッチングにおけるE/Rを基準とした場合、エッチングの累積時間が長くなるほどE/Rが徐々に変化してしまう。
図7の例では、エッチングの累積時間が400[min]におけるE/Rは、最初に実行されたエッチングにおけるE/Rから40%以上変化している。
【0062】
これに対しチャンバ10内の部品の表面に保護膜が形成されている場合、エッチングが実行されても、チャンバ10内の部品はプラズマによるダメージを受け難い。これにより、チャンバ10内の部品の消耗が抑制され、チャンバ10内の環境の変化が抑制される。また、チャンバ10内の部品の消耗が抑制されるため、チャンバ10内の部品から発生するパーティクルも抑制され、チャンバ10内の部品の電気的な特性の変化が抑制される。そのため、最初に実行されたエッチングにおけるE/Rを基準とした場合、エッチングの累積時間が長くなってもE/Rの変化が抑制されている。
図7の例では、エッチングの累積時間が400[min]において、E/Rの変化量は、最初に実行されたエッチングにおけるE/Rから6%程度に抑制されている。
【0063】
以上、一実施形態について説明した。上記したように、本実施形態におけるプラズマ処理方法は、基板Wをプラズマ処理するプラズマ処理方法であって、チャンバ10内において炭素および水素を含有する第1のガスをプラズマ化することにより、チャンバ10内の部品の表面を導電性を有する保護膜でコーティングする工程と、チャンバ10内に基板Wを搬入する工程と、チャンバ10内の部品の表面が導電性を有する保護膜でコーティングされた状態で、チャンバ10内において第2のガスをプラズマ化することにより、基板Wを処理する工程とを含む。これにより、チャンバ10内の部品の消耗を抑えつつ、プロセスの安定化を実現することができる。
【0064】
また、上記した実施形態におけるコーティングする工程において、導電性を有する保護膜は、20[nm]以上の厚さでチャンバ10内の部品の表面に形成される。これにより、プラズマに含まれるイオン等によるチャンバ10内の部品へのダメージを抑制することができる。
【0065】
また、上記した実施形態におけるプラズマ処理方法には、処理する工程の後に、チャンバ10内において酸素を含有する第3のガスをプラズマ化することにより、導電性を有する保護膜を除去する工程をさらに含む。また、除去する工程が実行された後、コーティングする工程が再び実行され、その後に前記処理する工程が実行される。これにより、保護膜上に堆積した反応副生成物を除去することができると共に、ダメージを受けた保護膜を除去し、新たな保護膜をチャンバ10内の部品の表面に形成することができる。
【0066】
また、上記した実施形態において、第1のガスは、ハイドロカーボンガス、ハイドロフルオロカーボン、フルオロカーボンガスと水素を含有するガスとの混合ガス、または、ハイドロフルオロカーボンガスと水素を含有するガスとの混合ガスを含む。水素を含有するガスは、水素ガス、ハイドロカーボンガス、またはハイドロフルオロカーボンガスを含む。これにより、チャンバ10内の部品の表面を導電性を有する保護膜でコーティングすることができる。
【0067】
また、上記した実施形態において、第2のガスには、フルオロカーボンガスが含まれる。第2のガスには、C4F6ガス、C4F8ガス、およびC5F8ガスのうち、少なくとも1つが含まれてもよい。また、第2のガスには、水素を含有するガスが含まれる。水素を含有するガスには、水素ガス、ハイドロカーボンガスまたはハイドロフルオロカーボンガスが含まれる。これにより、導電性を有する保護膜が形成されたチャンバ10内の部品の表面に導電性の反応副生成物が堆積し、チャンバ10内の環境の変化が抑制される。そのため、プロセスの安定化を実現することができる。
【0068】
[その他]
なお、本願に開示された技術は、上記した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0069】
例えば、上記した各実施形態では、プラズマ源の一例として、容量結合型プラズマ(CCP)を用いて処理を行うプラズマ処理装置1として説明したが、プラズマ源はこれに限られない。容量結合型プラズマ以外のプラズマ源としては、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)、マイクロ波励起表面波プラズマ(SWP)、電子サイクロトン共鳴プラズマ(ECP)、およびヘリコン波励起プラズマ(HWP)等が挙げられる。
【0070】
なお、今回開示された実施形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実に、上記した実施形態は多様な形態で具現され得る。また、上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
W 基板
1 プラズマ処理装置
10 チャンバ
10e 排気口
10s 処理空間
11 支持部
100 デポシールド
101 バッフル板側壁
102 バッフル板
103 リングシールド
111 下部電極
112 静電チャック
113 エッジリング
12 上部電極シャワーヘッドアセンブリ
12a ガス入口
12b ガス拡散室
12c ガス出口
20 ガス供給部
21 ガスソース
22 流量制御器
30 RF電力供給部
30a 第1のRF電力供給部
30b 第2のRF電力供給部
31a 第1のRF生成部
31b 第2のRF生成部
32a 第1の整合回路
32b 第2の整合回路
40 排気システム
50 制御部
51 コンピュータ
511 処理部
512 記憶部
513 通信インターフェイス