(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240730BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240730BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20240730BHJP
B23K 26/03 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H01L21/78 B
H01L21/78 X
H01L21/78 Q
H01L21/78 P
H01L21/68 N
B23K26/53
B23K26/03
(21)【出願番号】P 2020136679
(22)【出願日】2020-08-13
【審査請求日】2023-06-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】バン ヒョンジン
(72)【発明者】
【氏名】バン ギソク
(72)【発明者】
【氏名】キム テヒ
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-50536(JP,A)
【文献】特開2020-21844(JP,A)
【文献】特開2020-107820(JP,A)
【文献】特開2019-121646(JP,A)
【文献】特開2019-54082(JP,A)
【文献】特開2015-65385(JP,A)
【文献】特開2010-29906(JP,A)
【文献】特開2018-190937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/683
B23K 26/53
B23K 26/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に交差する複数のストリートを有し、該表面に凹凸が形成されたウェーハの加工方法であって、
保護シートと、該保護シート上に配設された外的刺激で硬化する硬化樹脂と、からなる保護部材の該硬化樹脂上に、樹脂フィルムを介してウェーハの表面側を配設し、該ウェーハの表面側の該凹凸を該樹脂フィルムを介して該硬化樹脂に埋め込ませ該ウェーハの裏面側を平坦な状態とする配設ステップと、
該配設ステップを実施した後、該硬化樹脂に該外的刺激を付与して該硬化樹脂を硬化させ、保護シートと、該保護シート上の該硬化樹脂と、該硬化樹脂上の該樹脂フィルムと、該樹脂フィルム上に配設されて裏面が露出した該ウェーハと、からなるウェーハユニットを形成するウェーハユニット形成ステップと、
該ウェーハユニットの該保護シート側を保持テーブルで保持する保持ステップと、
該保持ステップを実施した後、該ストリートに対応した該ウェーハの該裏面の上面高さ位置を検出する上面高さ位置検出ステップと、
該上面高さ位置検出ステップで検出した上面高さ位置に基づいて該ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点を該ウェーハの内部に位置付けた状態で、該レーザービームを該ウェーハの該裏面側から該ストリートに沿って照射して該ストリートに沿った改質層を形成するレーザービーム照射ステップと、
を備え
、
該レーザービーム照射ステップを実施した後、該ウェーハの該裏面にエキスパンドシートを貼着し、該ウェーハの該表面から該保護部材と該樹脂フィルムとを除去する転写ステップと、
該転写ステップを実施した後、該エキスパンドシートを拡張して該ウェーハを該改質層に沿って個々のチップへと分割する分割ステップと、
を備えた、ウェーハの加工方法。
【請求項2】
該ウェーハは、該ストリートで区画される領域にそれぞれデバイスが形成されるとともに、該デバイスには複数のバンプが形成され、
該分割ステップを実施した後、該バンプを介して該デバイスを実装する実装ステップ、をさらに備える、
ことを特徴とする請求項
1に記載のウェーハの加工方法。
【請求項3】
該樹脂フィルムにおいて、該ウェーハの表面に配設される側の面には、糊層が形成されないこととする、
ことを特徴とする請求項1
又は請求項
2に記載のウェーハの加工方法。
【請求項4】
該配設ステップにおいて、該ウェーハの表面に対し該樹脂フィルムを真空マウントで一体化させることとする、
ことを特徴とする請求項
3に記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に交差する複数のストリートを有し、ストリート上に凹凸を有したウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェーハのレーザー加工方法において、ウェーハの内部にレーザービームの集光点を設定し、ストリート(分割予定ライン)に沿って改質層を形成した後、外力を加えてチップに分割する加工方法が知られている。
【0003】
この場合、ウェーハの内部の一定高さ位置に改質層を形成する必要があるため、レーザービームを照射するストリートに沿ってレーザービームの被照射面高さを検出し、検出した高さ位置に基づいてレーザービームの集光点位置を調整してレーザービームをウェーハに照射している(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えばストリート上にTEG(Test Element Group)等が形成されたウェーハの場合では、ウェーハの表面側を保持テーブルの平坦な保持面で吸引保持すると、ウェーハの裏面側にTEGが存在する領域の高さ(裏面の上面高さ)は、TEGが存在しない領域の高さよりも高くなる。
【0006】
したがって、このような場合に検出された裏面の上面高さ位置に基づいて集光点を位置付けると、TEGが存在する領域ではTEGが存在しない領域と比較して、ウェーハの裏面側にずれた位置に改質層が形成されてしまうことになる。これにより、改質層が形成される高さ位置がばらついてしまうという問題が生じる。
【0007】
特にレーザービームが入射されるウェーハ厚みが50μm以下と薄い場合には、TEGに対応した領域では、集光点の位置がウェーハの裏面側に近づいてしまい、アブレーションが生じてしまうという恐れもある。
【0008】
本発明は以上の問題に鑑み、ストリート上にTEG等の凹凸が存在するウェーハについて、改質層が形成される位置のばらつきを抑えることを可能とする新規な加工方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0010】
本発明の一態様によれば、
表面に交差する複数のストリートを有し、該表面に凹凸が形成されたウェーハの加工方法であって、
保護シートと、該保護シート上に配設された外的刺激で硬化する硬化樹脂と、からなる保護部材の該硬化樹脂上に、樹脂フィルムを介してウェーハの表面側を配設し、該ウェーハの表面側の該凹凸を該樹脂フィルムを介して該硬化樹脂に埋め込ませ該ウェーハの裏面側を平坦な状態とする配設ステップと、
該配設ステップを実施した後、該硬化樹脂に該外的刺激を付与して該硬化樹脂を硬化させ、保護シートと、該保護シート上の該硬化樹脂と、該硬化樹脂上の該樹脂フィルムと、該樹脂フィルム上に配設されて裏面が露出した該ウェーハと、からなるウェーハユニットを形成するウェーハユニット形成ステップと、
該ウェーハユニットの該保護シート側を保持テーブルで保持する保持ステップと、
該保持ステップを実施した後、該ストリートに対応した該ウェーハの該裏面の上面高さ位置を検出する上面高さ位置検出ステップと、
該上面高さ位置検出ステップで検出した上面高さ位置に基づいて該ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点を該ウェーハの内部に位置付けた状態で、該レーザービームを該ウェーハの該裏面側から該ストリートに沿って照射して該ストリートに沿った改質層を形成するレーザービーム照射ステップと、
を備えた、ウェーハの加工方法とするものである。
【0011】
また、本発明の一態様によれば、
該レーザービーム照射ステップを実施した後、該ウェーハの該裏面にエキスパンドシートを貼着し、該ウェーハの該表面から該保護部材と該樹脂フィルムとを除去する転写ステップと、
該転写ステップを実施した後、該エキスパンドシートを拡張して該ウェーハを該改質層に沿って個々のチップへと分割する分割ステップと、
を備えた、
ウェーハの加工方法とするものである。
【0012】
また、本発明の一態様によれば、
該ウェーハは、該ストリートで区画される領域にそれぞれデバイスが形成されるとともに、該デバイスには複数のバンプが形成され、
該分割ステップを実施した後、該バンプを介して該デバイスを実装する実装ステップ、をさらに備える、
ウェーハの加工方法とするものである。
【0013】
また、本発明の一態様によれば、
該樹脂フィルムにおいて、該ウェーハの表面に配設される側の面には、糊層が形成されないこととする、
ウェーハの加工方法とするものである。
【0014】
また、本発明の一態様によれば、
該配設ステップにおいて、該ウェーハの表面に対し該樹脂フィルムを真空マウントで一体化させることとする、
ウェーハの加工方法とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、硬化樹脂が硬化することにより平坦な基準面が形成され、ウェーハの上面高さ位置がばらつきのない一定の高さとなり、この上面高さ位置に基づいてレーザービームの集光点を位置付けることで、改質層が形成される位置のばらつきを抑えることができる。
【0016】
また、本発明の一態様によれば、転写ステップにおいては、ウェーハの表面が樹脂フィルムで覆われているため、硬化樹脂が異物としてウェーハの表面に残存することがない。
【0017】
また、本発明の一態様によれば、硬化樹脂が異物としてウェーハの表面に残存することがないため、バンプに異物が付着することによるボンディング不良が防止できる。
【0018】
また、本発明の一態様によれば、転写ステップにおいて、ウェーハの表面から保護部材と樹脂フィルムとを除去する際に、糊層が異物となってウェーハの表面に残存してしまうことがない。
【0019】
また、本発明の一態様によれば、糊層のない樹脂フィルムをウェーハと一体化させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】被加工物であるウェーハの一例について示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るフローチャートである。
【
図3】(A)は真空マウント装置の構成例について説明する図である。(B)は樹脂フィルム配設ステップについて説明する図である。
【
図4】硬化樹脂配設ステップについて説明する図である。
【
図5】ウェーハユニット形成ステップについて説明する図である。
【
図7】上面高さ位置検出ステップについて説明する図である。
【
図8】レーザー加工装置の光学系の構成例について説明する図である。
【
図9】ウェーハの高さ位置が異なる場合に形成されるスポットの違いについて説明する図である。
【
図10】第1の受光素子から出力される電圧値V1と第2の受光素子から出力される電圧値V2との比(V1/V2)と、集光レンズからウェーハの上面までの距離との関係を示すマップである。
【
図11】レーザービーム照射ステップについて説明する図である。
【
図12】(A)はエキスパンドシートについて説明する図である。(B)はエキスパンドシートを貼着することについて説明する図である。(C)ウェーハユニットを上下反転させた状態について説明する図である。(D)は保護部材と樹脂フィルムを除去する様子について説明する図である。
【
図13】ウェーハが転写されたウェーハユニットについて説明する図である。
【
図14】(A)分割ステップにおいてウェーハユニットをセットした状態について説明する図である。(B)分割ステップによりチップに個片化する様子について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本実施の形態について説明する。
図1には、本発明によるウェーハの加工方法によって加工されるウェーハが示されている。
図1に示すウェーハ10は、シリコンを母材とする半導体ウェーハであり、円板形状のウェーハ10の表面10aには、複数のストリート12(分割予定ライン)によって格子状に区画された複数の領域に、ICやLSI等のデバイス14が形成されている。
【0022】
図1の拡大部分に示すように、各デバイス14の周縁部分には、ウェーハ10の表面10aから突出する複数のバンプ16(電極)が形成されている。
【0023】
図1の拡大部分に示すように、ストリート12の一部には、ウェーハ10の表面10aから突出するTEG18(Test Element Group)が複数箇所に形成されている。
【0024】
なお、本発明が加工対象とするウェーハは、
図1に示す形態以外にも種々のものを採用可能であり、半導体ウェーハのみならず光デバイスウェーハ等にも適用することができる。
【0025】
以上のようなストリート12の一部にTEG18が形成されるウェーハ10について、ウェーハ10の裏面の上面高さ位置を検出する際に、TEG18等の凹凸の影響を無くしつつ、レーザー加工を行う方法について説明する。以下の実施例では、
図2に示すフローチャートの各ステップが順に実施される。
【0026】
<配設ステップS1>
配設ステップS1は、ウェーハ10の表面10aを糊層のない樹脂フィルム22で覆う樹脂フィルム配設ステップS1-1と、樹脂フィルム22を硬化樹脂24で覆う硬化樹脂配設ステップS1-2と、を含む。
【0027】
<樹脂フィルム配設ステップS1-1>
図3(A)(B)に示すように、まず、ウェーハ10の表面10aを樹脂フィルム22で覆うとともに、樹脂フィルム22を真空によりウェーハ10の表面10aと一体化させる真空マウントが実施される。
【0028】
図3(A)(B)は、真空マウント装置30を示すものであり、上側筐体32と下側筐体34を有して構成される。上側筐体32には、外部から上側内部空間32aに通じる排気路32bが設けられ、排気路32bが気圧計32c及び制御バルブ32dを介して吸引源32eに接続される。
【0029】
下側筐体34には、外部から下側内部空間34aに通じる排気路34bが設けられ、排気路34bが気圧計34c及び制御バルブ34dを介して吸引源34eに接続される。下側内部空間34aには、ウェーハ10を支持する支持台34fが設けられ、支持台34fには、ウェーハ10を加熱するための面状のヒーター34gが設けられる。
【0030】
樹脂フィルム22は、その表面には糊層が存在せず、ウェーハ10の表面10aに粘着しないように構成される。これにより、後に剥離される際にデバイス14の表面やバンプ16(
図1)に糊が付着して残存することがない。
【0031】
樹脂フィルム22の素材は特に限定されるものではないが、例えば、PE(ポリエチレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、EVA(酢酸ビニル)などが採用され得る。また、樹脂フィルム22の厚みは、例えば、5~100μmとすることができるが、特に限定されるものではない。
【0032】
以上の構成とし、
図3(A)に示すように、支持台34fの保持面34hにウェーハ10の裏面10bを載置し、ウェーハ10の表面10aを上側に露出させる。ウェーハ10の表面10aには、
図1に示すように、デバイス14、バンプ16、TEG18が形成されている。
【0033】
次いで、
図3(A)に示すように、樹脂フィルム22をウェーハ10の表面10aの全体を覆うように被せる。樹脂フィルム22の端の周辺部分は、下側筐体34からはみ出す状態とされる。
【0034】
次いで、
図3(B)に示すように、上側筐体32を下側筐体34に被せて一体化し、両者の間に樹脂フィルム22の端部分を挟み込んで挟持した状態とする。上側内部空間32aと下側内部空間34aは、樹脂フィルム22を挟んで対向し、それぞれ閉じられた減圧チャンバー(減圧室)を構成する。
【0035】
次いで、
図3(B)に示すように、制御バルブ32d,34dを通じて吸引源32e,34eよる真空引きが行われ、上側内部空間32aと下側内部空間34aが所定の圧力まで減圧される。
【0036】
所定の圧力まで減圧後、制御バルブ32dを閉じて上側内部空間32aの減圧を停止する一方で、制御バルブ34dを開き続けて下側内部空間34aの減圧を継続することで、樹脂フィルム22をウェーハ10の表面10aに圧着させる。樹脂フィルム22の表面には、ウェーハ10の表面10aに形成されていた凹凸に対応し、凹凸が形成されることになる。なお、所定の圧力まで減圧後、上側内部空間32aを大気開放することで樹脂フィルム22をウェーハ10に圧着させることとしてもよい。
【0037】
また、以上の一連の過程において、ヒーター34gによりウェーハ10を加熱することで、樹脂フィルム22を軟化させ、ウェーハ10の表面10aに形成される凹凸に沿うように樹脂フィルム22を圧着させることができる。
【0038】
所定時間経過後、真空状態を解除して内部を大気圧にし、上側筐体32を開いて樹脂フィルム22が一体化されたウェーハ10を取り出す。ウェーハ10からはみ出す樹脂フィルム22の余剰部分は、適宜カッターなどで除去される。
【0039】
樹脂フィルム配設ステップS1-1を終えた状態では、
図4の拡大部分に示すように、樹脂フィルム22は、ウェーハ10の表面10aから突出するデバイス14、バンプ16、TEG18の凹凸に沿うように、ウェーハ10の表面10a全体を覆う。
【0040】
<硬化樹脂配設ステップS1-2>
図4に示すように、樹脂フィルム22を外的刺激によって硬化する硬化樹脂42で覆うステップである。
【0041】
まず、
図4に示すように、平坦なステージ40上に紫外線を透過させる保護シート41が配設され、保護シート41の上面に所定量の硬化樹脂42を載せた状態とする。
【0042】
硬化樹脂42は、紫外線硬化樹脂であり、後述するように外的刺激として紫外線を照射することで硬化するものであり、例えば、アクリル系、エポキシ系の光硬化樹脂を用いることができる。
【0043】
アクリル系の樹脂は、(メタ)アクリレートであり、ウレタン結合(ウレタン基)を有する(メタ)アクリレートやウレタン結合(ウレタン基)を有しない(メタ)アクリレートを用いることができる。
【0044】
なお、(メタ)アクリレートとは、アクリル酸化合物であるアクリレート、又はメタクリル酸化合物であるメタクリレートを指す。具体的には、例えば、テトラヒドロフルフリルアクリレート(Tetrahydrofurfuryl acrylate)、イソボルニルアクリレート(Isobornyl acrylate)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(1,9-Nonanediol diacrylate)等を用いることができる。
【0045】
また、エポキシ系樹脂は、エポキシ基を含有する樹脂であり、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂や脂肪族型エポキシ樹樹脂(ダイマー酸型エポキシ樹脂)等を用いることができる。
【0046】
保護シート41は、硬化樹脂42と同一の樹脂で構成され、予めシート状に成形されたものとすることが好ましい。なお、保護シート41は、PET(ポリエチレンテレフタレート)にて構成されることとしてもよい。
【0047】
次いで、
図4に示すように、ウェーハ10の裏面10bを保持具43の平坦な保持面43aにて保持し、樹脂フィルム22が下側に配置された状態とし、樹脂フィルム22を保護シート41に対向させた状態とする。本実施例では、保持具43は、ウェーハ10の裏面10bを吸引して保持する構成とするが、具体的な保持の構成については、特に限定するものではない。
【0048】
次いで、
図5に示すように、保持具43を下降させることで、樹脂フィルム22の表面によって硬化樹脂42を押し広げ、硬化樹脂42を樹脂フィルム22の表面全体に行き渡らせる。保護シート41と樹脂フィルム22の間の隙間に硬化樹脂42が入り込み、樹脂フィルム22の表面に形成された凹凸の箇所に硬化樹脂42が埋め込まれる。
【0049】
<ウェーハユニット形成ステップS2>
図5に示すように、硬化樹脂42を硬化させるとともにウェーハ10と環状フレーム11を一体化させたウェーハユニット13を構成するステップである。
【0050】
ステージ40の下方に配置された光照射器46の光源46aから紫外線を発生させ、透明部材で構成されたステージ40、及び、保護シート41を介し、紫外線をウェーハ10の硬化樹脂42に照射する。
【0051】
ステージ40はガラス等の透明部材で構成することができる。光照射器46の光源46aは、所定波長の紫外線を照射するLEDライト(又は低圧水銀ランプ等)にて構成するこことができる。
【0052】
なお、本実施例では硬化樹脂42として紫外線硬化樹脂を使用するため、外的刺激となる紫外線を照射するための光照射器46を設けることとしたが、硬化樹脂42として熱硬化樹脂を用いる場合には、外的刺激となる熱を付与するための加熱器が設けられる。
【0053】
紫外線が所定時間照射されることで硬化樹脂42が硬化し、樹脂フィルム22と硬化樹脂42が一体化される。また、硬化樹脂42の硬化に際し、硬化樹脂42は保護シート41とも一体される。保護シート41は硬化樹脂42と同一の樹脂で構成される場合には、硬化樹脂42と保護シート41が強固に一体化され、後に両者を一体として容易に剥離することができる。
【0054】
図6の拡大部分に示すように、硬化樹脂42が硬化することにより樹脂層42Aが形成され、この樹脂層42Aの下面において平坦な基準面42aが形成される。このような平坦な基準面42aが形成されることで、後述するように、ウェーハ10の上面高さ位置10zがばらつきのない一定の高さとなる。
【0055】
そして、
図6の拡大部分に示すように、硬化樹脂42による樹脂層42Aと、保護シート41により、ウェーハ10の表面10aを保護する保護部材45が構成される。
【0056】
さらに、
図5に示すように、保護シート41に対し、ウェーハ10を取り囲むように環状フレーム11が載置され、保護シート41と一体化される。この一体化は、保護シート41側に接着層を形成して保護シート41に貼着することとする他、保護シート41において環状フレーム11が載置される箇所に粘着層を形成することによるものとしてもよい。
【0057】
なお、この保護シート41に対する環状フレーム11の設置は、
図4に示すように、ウェーハユニット形成ステップS2の前の硬化樹脂配設ステップS1-2において実施することとしてもよい。
【0058】
<保持ステップS3>
図6に示すように、ウェーハユニット13の保護シート41側を保持テーブル50で保持するステップである。
【0059】
保持テーブル50はレーザー加工装置に備えられるものであり、X軸方向に加工送りされるものである。保持テーブル50は、保持面51aを形成する多孔質プレート51と、多孔質プレート51に通じる吸引路51bと、を有して構成される。吸引路51bは、バルブ51cを介して吸引源51dに接続される。
【0060】
多孔質プレート51の保持面51aには、保護シート41、硬化樹脂42(硬化樹脂層)、樹脂フィルム22を介してウェーハ10が位置付けられ、バルブ51cを開いて負圧を生じさせることで、裏面10bが上側に露出した状態でウェーハ10が吸引保持される。
【0061】
露出するウェーハ10の裏面10bの高さ位置は、ウェーハ10の上面高さ位置10zとなる。ウェーハ10の表面10aの凹凸が硬化樹脂42によって解消され、平坦な基準面42aが構成されることにより、ウェーハ10の上面高さ位置10zは、ばらつきのない一定の高さとなる。
【0062】
<上面高さ位置検出ステップS4>
図7に示すように、ストリートに対応したウェーハ10の裏面10bの上面高さ位置10zを検出するステップである。
【0063】
図7に示すように、保持テーブル50を第一方向(X軸方向往路)に移動させ、ストリート12(
図1)に沿ってウェーハ10の裏面10bを走査することで、上面高さ位置10zを連続的に計測する。
【0064】
上面高さ位置10z(
図7)の検出は、例えば、
図8に示すレーザー加工装置の光学系により実施することができる。この光学系では、被加工物であるウェーハ10に対して透過性を有する波長の加工用レーザービームを発振する加工用レーザー発振器62と、上面高さ位置10z(
図7)を検出するためのセンシング用レーザービームを発振するセンシング用レーザー発振器70と、を備える構成とするものである。
【0065】
センシング用レーザー発振器70は例えばHe-Neレーザーから構成され、例えば波長633nm、出力10mW、ビーム径1.0mmのレーザービームを発振する。
【0066】
センシング用レーザー発振器70から発振されたセンシング用レーザービームLB2は、その一部がハーフミラー72を透過し、ダイクロイックミラー66で反射されて集光レンズ68に入射する。該ダイクロイックミラー66は例えばピエゾ素子等から構成されるミラー回転手段74により紙面に垂直な回転軸周りに回転可能に配設されている。
【0067】
図8においては、ダイクロイックミラー66は反時計回り方向に回転されて、ダイクロイックミラー66の反射面がセンシング用レーザービームの光路73に対して45度からマイナス0.14度傾くように配設されている。
【0068】
これにより、例えば焦点距離が200mmの集光レンズ68を使用してダイクロイックミラー66から集光レンズ68までの距離と集光レンズ68からウェーハ10までの距離が概略等しい場合、加工用レーザービームLB1が照射される箇所より0.5mm先に、即ち加工方向進行側にセンシング用レーザービームを照射することができる。矢印Aは加工方向を示している。
【0069】
ウェーハ10の表面で反射されたセンシング用反射ビーム(反射光)は、集光レンズ68を透過してダイクロイックミラー66で反射され、その一部がハーフミラー72で反射され、更にミラー76で反射されて高さ位置検出部78に入射される。
【0070】
即ち、ミラー76で反射されたセンシング用反射ビームは、ピンホールマスク80のピンホール80aを通過してビームスプリッタ82に入射され、ビームスプリッタ82により第1の光路83aと第2の光路83bに分割される。
【0071】
第1の光路83aに分割されたセンシング用反射ビームは集光レンズ84によって100%集光され、第1の受光素子86に受光される。第1の受光素子86は、受光した光量に対応した電圧信号を図示せぬコントローラに出力する。
【0072】
一方、第2の光路83bに分割されたセンシング用反射ビームは、受光領域規制手段88のシリンドリカルレンズ90によって一次元に集光され、一次元マスク92によって所定の単位長さに規制されて第2の受光素子94に受光される。第2の受光素子94は、受光した光量に対応した電圧信号を図示せぬコントローラに出力する。
【0073】
ここで、第1の受光素子86と第2の受光素子94によって受光される反射光の受光量の関係について説明する。第1の受光素子86で受光されるセンシング用反射光は、集光レンズ84によって100%集光されるので受光量は一定であり、第1の受光素子86から出力される電圧値(V値)は一定(例えば10V)となる。
【0074】
一方、第2の受光素子94によって受光されるセンシング用反射光は、シリンドリカルレンズ90によって一次元に集光された後、一次元マスク92によって所定の単位長さに規制されて第2の受光素子94に受光される。
【0075】
従って、
図9に示すようにセンシング用レーザービームLB2がウェーハ10の上面に照射される際に、集光器36の集光レンズ68からウェーハ10の上面までの距離、即ちウェーハ10の高さ位置によって第2の受光素子94の受光量は変化する。従って、第2の受光素子94から出力される電圧値(V2)は、センシング用レーザービームLB2が照射されるウェーハ10の上面高さ位置によって変化する。
【0076】
例えば、
図9(A)に示すように、ウェーハ10の高さ位置が高く集光レンズ68からウェーハ10の上面までの距離Hが小さい場合には、センシング用レーザービームLB2はウェーハ10の上面に照射される小さなスポットS1で反射する。
【0077】
この反射光は上述したようにビームスプリッタ82により第1の光路83aと第2の光路83bに分割されるが、第1の光路83aに分割されたスポットS1の反射光は集光レンズ84によって100%集光されるので、反射光の全ての光量が第1の受光素子86に受光される。
【0078】
一方、ビームスプリッタ82によって第2の光路83bに分割されたスポットS1の反射光は、シリンドリカルレンズ90によって一次元に集光されるので断面が略長方形となる。
【0079】
このようにして断面が略長方形に絞られた反射光は、一次元マスク92によって所定の単位長さに規制されるので、第2の光路83bに分割された反射光の一部が第2の受光素子94によって受光されることになる。従って、第2の受光素子94に受光される反射光の光量は、第1の受光素子86に受光される光量より少なくなる。
【0080】
次に、
図9(B)に示すように、ウェーハ10の高さ位置が低く、集光レンズ68からウェーハ10の上面までの距離Hが大きい場合には、センシング用レーザービームLB2はウェーハ10の上面に照射されるスポットS2で反射する。このスポットS2は
図9(A)のスポットS1より大きい。
【0081】
スポットS2の反射光はビームスプリッタ82により第1の光路83aと第2の光路83bに分割されるが、第1の光路83aに分割されたスポットS2の反射光は集光レンズ84によって100%集光されるので、反射光の全ての光量が第1の受光素子86に受光される。
【0082】
一方、ビームスプリッタ82により第2の光路83bに分割されたスポットS2の反射光は、シリンドリカルレンズ90によって一次元に集光されるので断面が略長方形となる。この略長方形の長辺の長さは、反射光のスポットS2がスポットS1より大きいので、スポットS1の場合より長くなる。
【0083】
このようにして断面が略長方形に集光された反射光は、一次元マスク92によって所定の長さに区切られ、一部が第2の受光素子94によって受光される。従って、第2の受光素子94によって受光される光量は、
図9(A)に示す場合より少なくなる。
【0084】
このように第2の受光素子94に受光される反射光の光量は、集光レンズ68からウェーハ10の上面までの距離Hが小さい程、即ちウェーハ10の高さ位置が高い程多く、集光レンズ68からウェーハ10の上面までの距離Hが大きい程、即ちウェーハ10の高さ位置が低い程少なくなる。
【0085】
ここで、第1の受光素子86から出力される電圧値V1と第2の受光素子94から出力される電圧値V2との比と、集光レンズ68からウェーハ10の上面までの距離H、即ちウェーハ10の高さ位置との関係について、
図10に示すマップを参照して説明する。
【0086】
尚、
図10において横軸は集光レンズ68からウェーハ10の上面までの距離Hであり、縦軸は第1の受光素子86から出力される電圧値V1と第2の受光素子94から出力される電圧値V2との比(V1/V2)を示している。
【0087】
図10に示す例においては、集光レンズ68からウェーハ10の上面までの距離Hが30.0mmの場合、電圧値の比(V1/V2)は1であり、距離Hが30.6mmの場合、電圧値の比(V1/V2)は10に設定されている。
【0088】
図示せぬコントローラは、第1の受光素子86から出力される電圧値V1と第2の受光素子94から出力される電圧値V2との比(V1/V2)を求め、この電圧値の比(V1/V2)を
図10に示すマップに照合することにより、集光レンズ68からウェーハ10の上面までの距離Hを求めることができる。尚、
図10に示すマップは、図示せぬコントローラのROMに格納されている。
【0089】
以上のようにして、集光レンズ68を通してウェーハ10に照射されるセンシング用レーザービームLB2と、高さ位置検出部78と、により、ウェーハ10の上面高さ位置を検出可能な検出手段を構成することができ、上面高さ位置10z(
図7)の検出が可能となる。
【0090】
<レーザービーム照射ステップS5>
図11に示すように、上面高さ位置10zに基づいてウェーハ10に対して透過性を有する波長の加工用レーザービームLB1の集光点をウェーハ10の内部に位置付けた状態で、加工用レーザービームLB1をウェーハ10の裏面10b側からストリート12(
図1)に沿って照射してストリートに沿った改質層を形成するステップである。
【0091】
具体的には、
図7に示すように、上面高さ位置検出ステップS4において保持テーブル50を第一方向(X軸方向往路)に移動させて上面高さ位置10zを検出した後、
図11に示すように、保持テーブル50を第二方向(X軸方向復路)に移動させつつ、上面高さ位置10zに基づいて集光点の高さ(Z軸方向高さ)を追従させながら、加工用レーザービームLB1を照射する。
【0092】
加工用レーザービームLB1を照射するための構成は、上述した
図8に示す光学系により実現できる。
図8に示す加工用レーザー発振器62は、例えば波長が1064nmである加工用レーザービームLB1を発振するYVO4パルスレーザー発振器或いはYAGパルスレーザー発振器で構成される。
【0093】
加工用レーザー発振器62から発振された加工用レーザービームLB1はミラー64で反射されてダイクロイックミラー66を透過する。ダイクロイックミラー66を透過した加工用レーザービームLB1は集光レンズ(対物レンズ)68に垂直に(集光レンズ68の光軸に平行に)入射し、集光レンズ68によりウェーハ10の内部に集光点を合わせて照射され、ウェーハ10の内部にストリートに沿って改質層を連続的に形成する。
【0094】
<転写ステップS6>
図12(A)乃至
図12(D)に示すように、ウェーハ10の裏面10bにエキスパンドシート19を貼着し、ウェーハ10の表面10aから保護部材45と樹脂フィルム22とを除去するステップである。
【0095】
具体的には、まず
図12(A)(B)に示すように、ウェーハ10の裏面10bに対し、粘着層を有するエキスパンドシート19を貼着する。エキスパンドシート19は、環状フレーム11の上面11aにも貼着される。
【0096】
次いで、
図12(C)に示すように、ウェーハユニット13を上下反転させて、保護シート41を上側に配置し、
図12(D)に示すように、保護シート41を環状フレーム11から剥がし始め、そのままウェーハ10の位置に到達すると、保護シート41とともに硬化樹脂42(樹脂層42A)と、樹脂フィルム22がともに剥離される。
【0097】
以上のようにして、
図13に示すように、エキスパンドシート19側にウェーハ10と環状フレーム11が転写され、ウェーハ10の表面10aが露出したウェーハユニット13Aが構成される。
【0098】
以上の転写ステップS6においては、ウェーハ10の表面10aが樹脂フィルム22で覆われているため、硬化樹脂42がウェーハ10の表面10aに残存することがなく、また、樹脂フィルム22には糊層が存在しないため、樹脂フィルム22を容易に剥離させることができ、ウェーハ10の表面10aに異物が残存することが防がれる。
【0099】
なお、以上の一連の転写ステップS6は、装置により自動で行うことが可能であり、その装置の具体的な構成は特に限定されるものではない。
【0100】
<分割ステップS7>
図14(A)、(B)に示すように、エキスパンドシート19を拡張してウェーハ10を改質層に沿って個々のチップへと分割するステップである。
【0101】
図14(A)は、分割ステップS7を実施するためのエキスパンド装置305の構成例について示すものである。エキスパンド装置305は、エキスパンドシート19の直径よりも大径の環状テーブル350を具備しており、環状テーブル350の開口350cの直径はエキスパンドシート19の直径よりも小さく形成されている。環状テーブル350の外周部には、複数の固定クランプ352が均等に配設されている。固定クランプ352は、バネ等によって回転軸352cを軸として回動可能に構成され、環状テーブル350の環状の保持面350aと固定クランプ352の下面との間に環状フレーム11を挟み込む。環状テーブル350は、例えば、エアシリンダ等からなる環状テーブル昇降手段355によって上下動可能に構成される。
【0102】
環状テーブル350の開口350c内には、円筒状の拡張ドラム353が高さ位置を固定して配設されており、環状テーブル350の中心と拡張ドラム353の中心とは略合致している。この拡張ドラム353の外径は、ウェーハ10の直径よりも大径となっている。
【0103】
以上の構成において、まず
図14(A)に示すように、基準高さ位置に位置付けられた環状テーブル350の保持面350aに環状フレーム11を載置するとともに、固定クランプ352にて環状フレーム11を挟持固定する。この状態で、拡張ドラム353の上端面が、エキスパンドシート19の環状フレーム11の内周縁とウェーハ10の外周縁との間の領域に、エキスパンドシート19の下面に当接する。
【0104】
次いで、
図14(B)に示すように、環状テーブル昇降手段355にて環状テーブル350を下降させると、環状フレーム11が拡張ドラム353の上端面よりも下方に移動し、エキスパンドシート19が拡張ドラム353の上端面で押し上げられて径方向外側に向かって放射状にエキスパンドされる。
【0105】
これにより、外力(拡張力)がエキスパンドシート19を介してウェーハ10の改質層の箇所に集中的に加わり、改質層が形成されたストリートに沿ってウェーハ10がチップに分割される。
【0106】
<実装ステップS8>
分割ステップS7を実施した後、デバイスに形成されたバンプを介してデバイスを実装するステップである。
【0107】
分割ステップS7により個片化されたチップの表面には、異物が残存しないため、バンプに異物が付着することによるボンディング不良が防止できる。
【0108】
以上のようにして本発明を実現することができる。
即ち、
図1乃至
図14に示すように、
表面10aに交差する複数のストリート12を有し、表面10aに凹凸が形成されたウェーハ10の加工方法であって、
保護シート41と、保護シート41上に配設された外的刺激で硬化する硬化樹脂42と、からなる保護部材45の硬化樹脂42上に、樹脂フィルム22を介してウェーハ10の表面10a側を配設し、ウェーハ10の表面10a側の凹凸を樹脂フィルム22を介して硬化樹脂42に埋め込ませウェーハ10の裏面10b側を平坦な状態とする配設ステップS1と、
配設ステップS1を実施した後、硬化樹脂42に外的刺激を付与して硬化樹脂42を硬化させ、保護シート41と、保護シート41上の硬化樹脂42と、硬化樹脂42上の樹脂フィルム22と、樹脂フィルム22上に配設されて裏面10bが露出したウェーハ10と、からなるウェーハユニット13を形成するウェーハユニット形成ステップS2と、
ウェーハユニット13の保護シート41側を保持テーブル50で保持する保持ステップS3と、
保持ステップS3を実施した後、ストリート12に対応したウェーハ10の裏面10bの上面高さ位置10zを検出する上面高さ位置検出ステップS4と、
上面高さ位置検出ステップS4で検出した上面高さ位置10zに基づいてウェーハ10に対して透過性を有する波長のレーザービームの集光点をウェーハ10の内部に位置付けた状態で、レーザービームをウェーハ10の裏面10b側からストリート12に沿って照射してストリート12に沿った改質層を形成するレーザービーム照射ステップS5と、
を備えた、ウェーハ10の加工方法とするものである。
【0109】
これにより、硬化樹脂42が硬化することにより平坦な基準面42aが形成され、ウェーハ10の上面高さ位置10z(
図6)がばらつきのない一定の高さとなり、この上面高さ位置10zに基づいてレーザービームの集光点を位置付けることで、改質層が形成される位置のばらつきを抑えることができる。
【0110】
また、
図13及び
図14に示すように、
レーザービーム照射ステップS5を実施した後、ウェーハ10の裏面10bにエキスパンドシート19を貼着し、ウェーハ10の表面10aから保護部材45と樹脂フィルム22とを除去する転写ステップS6と、
転写ステップS6を実施した後、エキスパンドシート19を拡張してウェーハ10を改質層に沿って個々のチップCへと分割する分割ステップS7と、
を備えることとするものである。
【0111】
これにより、転写ステップS6においては、ウェーハ10の表面10aが樹脂フィルム22で覆われているため、硬化樹脂42が異物としてウェーハ10の表面10aに残存することがない。
【0112】
また、
図1及び
図2に示すように、
ウェーハ10は、ストリート12で区画される領域にそれぞれデバイス14が形成されるとともに、デバイス14には複数のバンプ16が形成され、
分割ステップS7を実施した後、バンプ16を介してデバイス14を実装する実装ステップ、をさらに備えることとするものである。
【0113】
この場合、硬化樹脂42が異物としてウェーハ10の表面10aに残存することがないため、バンプに異物が付着することによるボンディング不良が防止できる。
【0114】
また、
図3(A)(B)に示すように、樹脂フィルム22において、ウェーハ10の表面10aに配設される側の面には、糊層が形成されないこととするものである。
【0115】
これにより、転写ステップS6において、ウェーハ10の表面10aから保護部材45と樹脂フィルム22とを除去する際に、糊層が異物となってウェーハ10の表面10aに残存してしまうことがない。
【0116】
また、
図3(A)(B)に示すように、配設ステップS1において、ウェーハ10の表面10aに対し樹脂フィルム22を真空マウントで一体化させることとするものである。
【0117】
これにより、糊層のない樹脂フィルム22をウェーハ10と一体化させることが可能となる。
【符号の説明】
【0118】
10 ウェーハ
10a 表面
10b 裏面
10z 上面高さ位置
11 環状フレーム
12 ストリート
13 ウェーハユニット
14 デバイス
16 バンプ
19 エキスパンドシート
22 樹脂フィルム
24 硬化樹脂
30 真空マウント装置
40 ステージ
41 保護シート
42 硬化樹脂
42A 樹脂層
42a 基準面
46 光照射器
46a 光源
LB1 加工用レーザービーム
LB2 センシング用レーザービーム
305 エキスパンド装置
S1 配設ステップ
S1―1 樹脂フィルム配設ステップ
S1―2 硬化樹脂配設ステップ
S2 ウェーハユニット形成ステップ
S3 保持ステップ
S4 位置検出ステップ
S5 レーザービーム照射ステップ
S6 転写ステップ
S7 分割ステップ
S8 実装ステップ