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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】リニアゲージ
(51)【国際特許分類】
   G01B 13/16 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
G01B13/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020176582
(22)【出願日】2020-10-21
(65)【公開番号】P2022067788
(43)【公開日】2022-05-09
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千嶋 一史
(72)【発明者】
【氏名】浦山 孝世
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-210830(JP,A)
【文献】特開2017-058174(JP,A)
【文献】特開2017-198586(JP,A)
【文献】特開昭55-103405(JP,A)
【文献】特開昭49-015451(JP,A)
【文献】米国特許第04854156(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 13/00-13/24
21/00-21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定物の表面の変位を測定するリニアゲージであって、
被測定物に対峙させる下端を備えるコンタクトと、該コンタクトの外側面を隙間を空けて囲繞する筒の内側の支持面からエアを噴出させ鉛直方向に移動自在に該コンタクトを支持するエアスライダと、該コンタクトの高さ位置を検出するスケールと、該コンタクトと該エアスライダと該スケールとを収容するケースと、該エアスライダを形成したエアを該ケース内に排気する該筒の上部の排気部と、該コンタクトの上部に形成する入口と該コンタクトの下端に形成する出口とを該コンタクトの内部で連通する連通路と、該エアスライダにおける該筒内のエアの流路に連通しており、該コンタクトを該ケースの下方に向けて貫通させる貫通孔と、該貫通孔から該ケース内のエアが漏れ出すことを防ぐ水シールを形成するシール機構と、を備え、
該排気部から該ケース内に排気されたエアを該入口から該コンタクト内に入れ該出口から噴出させることによって、該コンタクトの下端と被測定物の表面との間に隙間を設けて非接触で被測定物の表面変位を測定可能とするリニアゲージ。
【請求項2】
前記ケース内に排気されるエアを該ケース外へ排気させるケース排気口と、該ケース排気口から排気される排気量を調整するバルブと、を備え、
該排気量を調整することによって、該連通路に流れるエアの流量を調整して前記コンタクトの下端と被測定物の表面との距離を調整可能な請求項1記載のリニアゲージ。
【請求項3】
前記コンタクトに配設され、前記連通路を流れるエアの流量を調整する流量調整部を備え、
該流量調整部によって該連通路を流れるエアの流量を調整して該コンタクトの下端と被測定物の表面との距離を調整可能な請求項1、又は請求項2記載のリニアゲージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハ等の被測定物の表面の変位を測定するリニアゲージに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1や特許文献2に開示されているように、ウェーハの上面高さを測定するリニアゲージは、鉛直方向に移動自在に支持される測定子(コンタクト)を、ウェーハの上面に接触させ、そのコンタクトの高さをスケールで測定することによりウェーハの上面高さを測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-175758号公報
【文献】特開2017-058174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ウェーハに接触させているコンタクトの先端が摩耗することによって、正確にウェーハの上面高さを測定することができなくなるという問題がある。
よって、リニアゲージにおいては、コンタクトの摩耗を防止させるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明は、被測定物の表面の変位を測定するリニアゲージであって、被測定物に対峙させる下端を備えるコンタクトと、該コンタクトの外側面を隙間を空けて囲繞する筒の内側の支持面からエアを噴出させ鉛直方向に移動自在に該コンタクトを支持するエアスライダと、該コンタクトの高さ位置を検出するスケールと、該コンタクトと該エアスライダと該スケールとを収容するケースと、該エアスライダを形成したエアを該ケース内に排気する該筒の上部の排気部と、該コンタクトの上部に形成する入口と該コンタクトの下端に形成する出口とを該コンタクトの内部で連通する連通路と、該エアスライダにおける該筒内のエアの流路に連通しており、該コンタクトを該ケースの下方に向けて貫通させる貫通孔と、該貫通孔から該ケース内のエアが漏れ出すことを防ぐ水シールを形成するシール機構と、を備え、該排気部から該ケース内に排気されたエアを該入口から該コンタクト内に入れ該出口から噴出させることによって、該コンタクトの下端と被測定物の表面との間に隙間を設けて非接触で被測定物の表面変位を測定可能とするリニアゲージである。
【0006】
本発明に係るリニアゲージは、前記ケース内に排気されるエアを該ケース外へ排気させるケース排気口と、該ケース排気口から排気される排気量を調整するバルブと、を備え、該排気量を調整することによって、該連通路に流れるエアの流量を調整して前記コンタクトの下端と被測定物の表面との距離を調整可能であると好ましい。
【0007】
本発明に係るリニアゲージは、前記コンタクトに配設され、前記連通路を流れるエアの流量を調整する流量調整部を備え、該流量調整部によって該連通路を流れるエアの流量を調整して該コンタクトの下端と被測定物の表面との距離を調整可能であると好ましい。
【発明の効果】
【0008】
被測定物の表面の変位を測定する本発明に係るリニアゲージは、被測定物に対峙させる下端を備えるコンタクトと、コンタクトの外側面を隙間を空けて囲繞する筒の内側の支持面からエアを噴出させ鉛直方向に移動自在にコンタクトを支持するエアスライダと、コンタクトの高さ位置を検出するスケールと、コンタクトとエアスライダとスケールとを収容するケースと、エアスライダを形成したエアをケース内に排気する筒の上部の排気部と、コンタクトの上部に形成する入口とコンタクトの下端に形成する出口とをコンタクトの内部で連通する連通路と、を備えているため、排気部からケース内に排気されたエアを入口からコンタクト内に入れ出口から噴出させることによって、コンタクトの下端と被測定物の表面との間に隙間を設けて非接触で被測定物の表面変位を測定することが可能となり、コンタクトの摩耗を防止することが可能となる。
【0009】
本発明に係るリニアゲージにおいては、ケース内に排気されるエアをケース外へ排気させるケース排気口と、ケース排気口から排気される排気量を調整するバルブと、を備えることで、ケース外へ排気されるエアの排気量を調整することによって、連通路に流れるエアの流量を調整してコンタクトの下端と被測定物の表面との距離を調整することが可能となる。
【0010】
本発明に係るリニアゲージにおいては、前記コンタクトに配設され、連通路を流れるエアの流量を調整する流量調整部を備えることで、流量調整部によって連通路を流れるエアの流量を調整してコンタクトの下端と被測定物の表面との距離を調整することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るリニアゲージを備える研削装置の一例を示す斜視図である。
図2】リニアゲージの一例を示す斜視図である。
図3】リニアゲージの一例を示す断面図である。
図4】リニアゲージが非接触で被測定物の表面変位を測定している状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示す加工装置1は、チャックテーブル30上に保持された被測定物90(被加工物90)を研削手段7によって研削加工する装置であり、本発明に係るリニアゲージ6を備えている。加工装置1の長手方向がY軸方向であるベース10上の前方(-Y方向側)は、チャックテーブル30に対して被測定物90の着脱が行われる領域であり、ベース10上の後方(+Y方向側)は、研削手段7によってチャックテーブル30上に保持された被測定物90の研削が行われる領域である。
なお、リニアゲージ6が配設される加工装置は、加工装置1のような研削手段7が1軸の研削装置に限定されるものではなく、粗研削手段と仕上げ研削手段とを備え、回転するターンテーブルで被測定物90を粗研削手段又は仕上げ研削手段の下方に位置づけ可能な2軸の研削装置等であってもよい。または、研磨パッドによって被測定物90に研磨加工を施す研磨加工装置にリニアゲージ6が配設されていてもよい。
【0013】
被測定物90は、例えば、シリコン母材等からなる円形の半導体ウェーハである。なお、被測定物90はシリコン以外にガリウムヒ素、サファイア、窒化ガリウム、セラミックス、樹脂、又はシリコンカーバイド等で構成されていてもよいし、矩形のパッケージ基板等であってもよい。
【0014】
図1に示すチャックテーブル30は、例えば、ポーラス部材等からなり被測定物90を吸着する吸着部300と、吸着部300を支持する枠体301とを備える。吸着部300は、図示しない吸引源に連通し、吸引源が吸引することで生み出された吸引力が、吸着部300の露出面と枠体301の上面とで構成される保持面302に伝達されることで、チャックテーブル30は保持面302上で被測定物90を吸引保持することができる。
【0015】
図1に示すように、チャックテーブル30は、カバー39によって囲繞されていると共に、その下方に配設された図示しないテーブル回転手段によって軸方向がZ軸方向の回転軸を軸に回転可能である。また、チャックテーブル30は、図1に示すカバー39及びカバー39に連結された蛇腹カバー390の下方に配設された図示しないY軸移動手段によってY軸方向に往復移動可能となっている。
【0016】
図1に示すベース10上の研削領域には、コラム11が立設されており、コラム11の前面には研削手段7をチャックテーブル30に対して離間又は接近するZ軸方向(鉛直方向)に研削送りする研削送り手段13が配設されている。研削送り手段13は、鉛直方向の軸心を有するボールネジ130と、ボールネジ130と平行に配設された一対のガイドレール131と、ボールネジ130の上端に連結しボールネジ130を回動させるモータ132と、内部のナットがボールネジ130に螺合し側部がガイドレール131に摺接する昇降板133とを備えており、モータ132がボールネジ130を回動させると、これに伴い昇降板133がガイドレール131にガイドされてZ軸方向に往復移動し、昇降板133に固定されている研削手段7がZ軸方向に研削送りされる。
【0017】
チャックテーブル30に保持された被測定物90を研削する研削手段7は、軸方向がZ軸方向であるスピンドル70と、スピンドル70を回転可能に支持するハウジング71と、スピンドル70を回転駆動するモータ72と、スピンドル70の下端に連結された円板状のマウント73と、マウント73の下面に着脱可能に装着された研削ホイール74と、ハウジング71を支持し研削送り手段13の昇降板133にその側面が固定されたホルダ75とを備える。
【0018】
研削ホイール74は、平面視円環状のホイール基台741と、ホイール基台741の下面に環状に配置された略直方体形状の複数の研削砥石740と、を備える。研削砥石740は、適宜のバインダー(接着剤)でダイヤモンド砥粒等が固着されて成形されており、主にその下面が研削面となる。
【0019】
スピンドル70の内部には、純水等を蓄えた研削水源に連通し研削水の通り道となる流路が、スピンドル70の軸方向に貫通して設けられており、該流路は、さらにマウント73を通り、ホイール基台741の底面において研削砥石740に向かって研削水を噴出できるように開口している。
なお、研削時に、研削ホイール74は、チャックテーブル30から水平方向に一部がはみ出すように位置づけられているため、そのはみ出した部分の研削ホイール74の内側に配設され研削砥石740の下面が被測定物90に接触している部分に研削水を噴射する内部ノズルを配設してもよい。
【0020】
加工装置1は、例えば、研削中において被測定物90の厚さを測定するために、例えば、チャックテーブル30の保持面302の変位測定用のリニアゲージ5と、チャックテーブル30の保持面302に保持された被測定物90の上面900(表面900)を測定するリニアゲージ6とを備えている。
【0021】
ベース10上のチャックテーブル30の移動経路脇で研削位置まで下降した研削ホイール74の近傍となる位置には、リニアゲージ支持コラム14が立設されており、リニアゲージ支持コラム14の+X方向側の側面にチャックテーブル30の移動経路上に交差するように水平に延在する第1アーム141と第2アーム142とが並んで配設されている。そして、第1アーム141の先端側に被測定物90の上面900の変位測定用のリニアゲージ6が固定されており、第2アーム142の先端側に保持面302の変位測定用のリニアゲージ5が固定されている。
【0022】
加工装置1は、リニアゲージ5により、基準面となる保持面302の高さ位置の変位を測定し、リニアゲージ6により、研削される被測定物90の上面900の高さ位置の変位を測定し、両者の測定値の差を算出することで、被測定物90の厚さを研削中に逐次測定することができる。
なお、加工装置1は、リニアゲージ6のみを備えていてもよい。この場合には、予め、チャックテーブル30の保持面302の高さ位置をリニアゲージ6で測定し把握しており、保持面302で保持された研削前の被測定物90の上面900の高さ位置と例えば研削加工後に測定した被測定物90の上面900の高さ位置との差から被測定物90の研削により除去された量を測定して、予め測定したチャックテーブル30の保持面302の高さ位置との差から被測定物90の厚さを測定できる。
なお、本実施形態のように、リニアゲージ5とリニアゲージ6とを用いて被測定物90の厚さを測定する際は、事前に、保持面302に被測定物90を保持させていない状態で、保持面302に非接触で接近させ保持面302から所定幅L1の隙間を空けて浮上している該リニアゲージ5のコンタクト60の高さを測定した測定値と、保持面302に非接触で接近させ保持面302から所定幅L1の隙間を空けて浮上している該リニアゲージ6のコンタクト60の高さを測定した測定値とを一致させる、即ち、この際の両リニアゲージの測定値の高さ差をゼロにさせる原点調整を行っている。このように、本発明に係るリニアゲージ6とリニアゲージ5とは、非接触での原点調整を行うことができる。
【0023】
リニアゲージ6とリニアゲージ5とは同様の構成を備えているため、以下にリニアゲージ6の構成についてのみ説明する。
図2図3に示す直動式のリニアゲージ6は、被測定物90に対峙させる下端を備えるコンタクト60と、コンタクト60の外側面を隙間を空けて囲繞する筒690の内側の支持面6901からエアを噴出させ鉛直方向に移動自在にコンタクト60を支持するエアスライダ69と、コンタクト60の高さ位置を検出するスケール63と、コンタクト60とエアスライダ69とスケール63とを収容するケース65と、エアスライダ69を形成したエアをケース65内に排気する筒690の上部の排気部692と、コンタクト60の上部に形成する入口602とコンタクト60の下端に形成する出口604とをコンタクト60の内部で連通する連通路607と、を備えている。
【0024】
コンタクト60は、例えば、本実施形態においては外形が四角柱状に形成された中上部606と、中上部606と一体的に形成された円柱状の下部609とを備えている。
コンタクト60の中上部606の上端側は、例えば、平板状の連結部材612の下面側に図示しない固定ナットによって連結している。そして、中上部606の外側面は、エアスライダ69から供給されるエアによって囲繞されることで、コンタクト60のZ軸方向を回転軸方向とする回転を規制する規制面となる。
【0025】
コンタクト60の下部609の被測定物90の上面900に対峙する下端608は、例えば、フランジ状に水平に拡径されており、その中心に出口604が開口している。そして、フランジ状に拡径されて下面の面積が広くされた下端608は、出口604から噴出したエアによって浮き上がりやすくなっている。
【0026】
コンタクト60は、例えば、ピストンシリンダ等の上下駆動部64によって上昇可能であり、かつ自重で下降可能となっている。上下駆動部64は、内部にピストン640を備え基端側(-Z方向側)に底のあるシリンダチューブ641と、シリンダチューブ641に挿入され下端がピストン640に取り付けられたロッド642と、シリンダチューブ641の内部にエアを流入するためのエア流入口6411、及びエア流入口6412とを少なくとも備えている。ロッド642の上端側は、連結部材612の下面に接触可能となっており、シリンダチューブ641の基端側は、ケース65の底板653の上面に固定されている。
【0027】
図3に示すように、エア流入口6411、エア流入口6412には、それぞれエア供給管682、エア供給管683が連通しており、エア供給管682、エア供給管683はソレノイドバルブ685を介してコンプレッサー等からなるエア供給源68に連通している。
【0028】
上下駆動部64によって被測定物90の上面900から離すためにコンタクト60を上昇させるときは、ソレノイドバルブ685がエア供給源68とエア供給管683とを連通させた状態で、エア供給源68がエア流入口6412からシリンダチューブ641内にエアを供給することにより、ピストン640を上昇させる。そして、連結部材612の下面にロッド642を接触させて連結部材612を上昇させることにより、連結部材612に連結されたコンタクト60を上昇させる。
【0029】
一方、上下駆動部64によってコンタクト60を被測定物90の上面900に接近させるために下降させるときは、ソレノイドバルブ685がエア供給源68とエア供給管682とを連通させた状態で、エア供給源68がエア流入口6411からシリンダチューブ641内にエアを供給し、また、エア流入口6412からエアを流出させることにより、規制された速度でロッド642を下降させることで、コンタクト60の自重によってコンタクト60が下降する速度を制限する。
【0030】
エアスライダ69は、ケース65の底板653の上面に固定された筒690を有しており、筒690の内部にコンタクト60の中上部606を挿通させてコンタクト60の外側面を非接触で支持できる構成となっている。
【0031】
コンタクト60の収容する中上部606の形状に対応して、筒690には、コンタクト60を上下動可能に収容するための横断面四角形状の縦孔がZ軸方向に貫通形成されている。そして、コンタクト60が挿通された状態の該縦孔の上端が、エアスライダ69を形成したエアを筒690からケース65内に排気する排気部692となる。該筒690の下端からは、コンタクト60の主に下部609が下方に突き出ている。筒690は、コンタクト60の中上部606の外側面から小さな隙間を設けて離間して該外側面を囲繞する支持面6901と、コンタクト60の外側面を囲繞しコンタクト60の中上部606の外側面を支持するエアを該隙間に対して支持面6901から噴出させる複数の噴射口6902と、筒690の外側面に形成されエア供給源68に連通するエア供給口6904と、エア供給口6904と各噴射口6902とを連通させる内部流路6906とを備えている。
【0032】
このように構成されるエアスライダ69では、各噴射口6902からコンタクト60の中上部606の外側面に対して垂直な方向にエアを噴出することによって、コンタクト60を隙間に介在させたエアで囲繞して非接触の状態で支持することができる。なお、コンタクト60の形状は、四角柱状に限られず、回転しない形状、すなわち円柱でない形状であればよい。したがって、多角柱でもよいし、楕円柱でもよい。また、一面のみが平らな面に形成され、他の面が曲面に形成された柱状でもよい。これに対応し、筒690の縦孔も、コンタクト60と同形状に形成されていればよい。
なお、コンタクト60の形状は、全体が円柱状であってもよい。円柱状の場合には、コンタクト60の回転を規制して該コンタクト60を軸方向に移動可能なガイド部を備える。ガイド部は、例えば、コンタクト60に連結しコンタクト60の軸方向(-Z方向)に延在する移動磁石と、筒690または底板653から立設しコンタクト60の軸方向(+Z方向)に延在し移動磁石を隙間を設けて挟んで配設された2本の固定磁石とを備え、固定磁石と移動磁石とは、コンタクト60の軸方向に直交する方向に反発する力が作用していて、その反発する力によってコンタクト60の回転を防止することができる。
【0033】
連結部材612の下面の一角には、スケール63が配設されている。スケール63は、連結部材612の下面にその上端が固定されておりコンタクト60の延在方向(Z軸方向)と平行に-Z方向に向かって延在する。そして、スケール63に対向するように、スケール63の目盛りを読み取る読み取り部635がケース65内に配設されている。例えば、読み取り部635は、ケース65の側壁655の内側面に固定されており、スケール63の目盛りの反射光を読み取る光学式のものであり、コンタクト60の下端608の高さ位置、すなわち、被測定物90の上面900の高さ位置を読み取ることができる。
【0034】
コンタクト60は中上部606から下端608まで連通路607がZ軸方向に貫通形成されており、該連通路607の上端側は連結部材612を貫通して連結部材612の上面に入口602として開口している。また、連通路607の下端側はコンタクト60の下端608の下面において出口604として開口している。
【0035】
図2図3に示すように、ケース65は、本実施形態においては、直方体状の外形を備えているが、これに限定されず、例えば円柱状の外形を備えていてもよい。図2図3に示すように、ケース65は、例えば、平面視略矩形で水平面に平行な底板653と、底板653の外周から一体的に+Z方向に立ち上がる4枚の側壁と、平面視矩形で4枚の側壁の上端に連結され水平面に平行な天板658とを備えている。図2図3でX軸方向において対向する2枚の側壁を側壁654として、Y軸方向において対向する2枚の側壁を側壁655とする。
-X方向側の側壁654の外側面は、例えば図1に示す第1アーム141の前面に固定されている。
【0036】
例えば、ケース65の側壁654、側壁655、又は天板658は、丁番等からなる図示しない開閉手段によって開閉可能となっており、また、各接続箇所には図示しないシーリング等が配設され、それぞれが閉じられた状態においてケース65の内部は密閉されており、図2図3に示すケース排気口671からのみ選択的にケース65内部のエアをケース65外へ排気可能となっている。
ケース65の底板653には貫通孔657が形成されており、貫通孔657からコンタクト60の下部609及び中上部606の一部がケース65外下方に上下動可能に抜け出ている。貫通孔657とコンタクト60との間には、例えばシール機構62が配設されている。
シール機構62は、例えば、底板653の下面に取り付けられた筒状部材620と、筒状部材620に連通する水供給源629とを少なくとも備えており、筒状部材620はコンタクト60の外側面に隙間を設けて囲繞する内側面から水を噴射する水噴射口6201を備えている。そして、高さ測定時にケース65から下方に突き出たコンタクト60の外側面と筒状部材620の内側面との隙間を水供給源629から供給され水噴射口6201から噴射された水が満たすことで、貫通孔657からケース65内のエアが漏れ出すことを防ぐ水シールが形成される。
【0037】
本実施形態のリニアゲージ6は、エアスライダ69からケース65内に排気されるエアをケース65外へ排気させるケース排気口671と、ケース排気口671から排気される排気量を調整するバルブ673と、を備えている。
ケース排気口671は図示の例においては、側壁654の上部側に貫通形成されており、ケース排気口671には金属配管や樹脂チューブ等の排気管674が連通している。排気管674には電空レギュレータ等のバルブ673が配設されている。
【0038】
本実施形態のリニアゲージ6は、例えば、図2図3に示す、コンタクト60に配設され、コンタクト60内の連通路607を流れるエアの流量を調整する流量調整部66を備えていてもよい。流量調整部66は、例えば、連通路607の断面積を変更加工に水平方向に移動可能な電動ゲート弁であるがこれに限定されるものではない。
【0039】
図1に示すように、加工装置1は、例えば、装置全体の制御を行う制御手段19を備えている。CPU等で構成される制御手段19は、加工装置1の各構成要素に電気的に接続されている。制御手段19は、例えば、研削送り手段13、及び研削手段7等に電気的に接続されており、制御手段19による制御の下で、研削送り手段13による研削手段7の上下動動作、及び研削手段7における研削ホイール74の回転動作等が実施される。
また、制御手段19は、メモリ等の記憶素子で構成される記憶部190を備えている。
【0040】
制御手段19は、図2、3に示す読み取り部635に有線又は無線の通信経路を介して接続されており、読み取り部635は、スケール63から読み取ったコンタクト60の下端608の高さ位置、即ち、被測定物90の上面900の高さ位置を制御手段19に送信できる。
【0041】
制御手段19に電気的に接続された図2、3に示す電空レギュレータ等のバルブ673は、制御手段19から送られる電気信号に比例して、ケース排気口671から排気させるエアの排気量を調整して、ケース65内のエアの圧力を無段階に調整することができる。即ち、制御手段19の制御の下で、該排気量を調整することによって、ケース65内に配設されたコンタクト60の入口602から連通路607に流れて出口604からケース65外に噴出するエアの流量を調整できる。
【0042】
以下に、図1に示す加工装置1において、チャックテーブル30に保持された被測定物90を研削する場合の加工装置1の動作について説明する。
着脱領域内において、被測定物90がチャックテーブル30の保持面302上に互いの中心を略合致させた状態で載置される。そして、図示しない吸引源により生み出される吸引力が保持面302に伝達され、チャックテーブル30が保持面302上で被測定物90を吸引保持する。
【0043】
次いで、被測定物90を吸引保持したチャックテーブル30が、着脱領域から研削領域内の研削手段7の下まで+Y方向へ移動し、研削手段7の研削砥石740の回転中心が被測定物90の回転中心に対して所定距離だけ水平方向にずれ、研削砥石740の回転軌跡が被測定物90の回転中心を通るようにチャックテーブル30が位置づけされる。
【0044】
例えば、加工装置1において研削を実際に行う前に、先に説明したリニアゲージ6とリニアゲージ5との原点調整は既に行っている。そして、図4に示すように、上下駆動部64が、コンタクト60を被測定物90の上面900に接近する-Z方向に下降させる。具体的には、ソレノイドバルブ685の供給ポートがエア供給管682に連通した状態で、エア供給源68がエア流入口6411からシリンダチューブ641内にエアを供給することにより、エア流入口6412から排気されるエアが流量調整弁686によって所定の流量で大気に排気されることによって、規制された速度でシリンダチューブ641の内部においてピストン640を下方向(-Z方向)に移動させる。これにより、主にコンタクト60の自重により下降しようとするコンタクト60の下降速度を規制された速度に制限している。
【0045】
この際、エア供給源68からエアスライダ69のエア供給口6904にエアを供給し、噴射口6902からコンタクト60の外側面に向かって噴射させることで、エアスライダ69でコンタクト60を非接触で支持しつつ、規制面としての役割を果たす該外側面によってコンタクト60のZ軸を軸とした回転方向の動きを規制する。
なお、コンタクト60全体が円柱状の場合には、上記に記載のように、移動磁石と固定磁石とを有し回転方向の動きを規制するガイド部を備える。
【0046】
一方、図1に示す研削手段7が研削送り手段13により-Z方向へと送られ、回転する研削砥石740が被測定物90の上面900に当接することで研削が行われる。研削中は、チャックテーブル30が所定の回転速度で回転されるのに伴って、保持面302上に保持された被測定物90も回転するので、研削砥石740が被測定物90の上面900全面の研削加工を行う。研削加工中には、例えばスピンドル70を通して、研削水が研削砥石740と被測定物90の上面900との接触部位に供給されて、接触部位が冷却・洗浄される。
【0047】
研削砥石740による被測定物90の研削が開始されると、図1に示すリニアゲージ5により、基準面となる保持面302の高さ位置が非接触で測定され、上記のようにコンタクト60が被測定物90の上面900に向かって下降するリニアゲージ6により、研削される被測定物90の上面900の変化する高さ位置が非接触で測定され、制御手段19が両ゲージの測定値の差を算出することで、被測定物90の厚さを研削中に逐次測定する。
【0048】
具体的なリニアゲージ6による被測定物90の上面900の高さ位置の変位の測定では、例えば、先に説明した原点調整が行われたことで、図4に示す被測定物90の上面900から所定幅L1の隙間を空けて浮上するリニアゲージ6のコンタクト60の高さの測定値と、チャックテーブル30の保持面302から所定幅L1の隙間を空けて浮上するリニアゲージ5のコンタクト60の高さの測定値との差が被測定物90の厚さとなる。
即ち、リニアゲージ6のコンタクト60が被測定物90に非接触となるように所定の距離上方にエアによって浮かせられる。具体的には、図4に示すように、エア供給源68からエアスライダ69のエア供給口6904にエア689を供給し、噴射口6902からコンタクト60の外側面に向かって噴射させることで、エアスライダ69でコンタクト60を非接触で支持しつつ、該エア689は筒690の上部の排気部692からケース65内に排気される。
【0049】
排気部692からケース65内に排気されたエア689によって、ケース65内がエア689で満たされていき、コンタクト60上部の入口602から連通路607内に流れ込んでいく。そして、該エア689が出口604から下方に向かって噴出して、コンタクト60の下端608の下面を径方向外側に向かって放射状に流れることで、コンタクト60が被測定物90の上面900上から離れるように浮上していることで、リニアゲージ6が、コンタクト60の下端608と被測定物90の上面900との間に例えばμm単位の所望幅L1の隙間を設けて非接触で被測定物90の上面900の変位が測定可能な状態になる。
なお、高さ測定開始時に所望幅L1の隙間を研削前の被測定物90の上面900とコンタクト60の下端608の下面との間に設けることは、例えば、原点調整時に保持面302からリニアゲージ6のコンタクト60の下端608の下面との間に所定幅L1の隙間を設けた際のコンタクト60の出口604から噴出させたエアの流量を制御手段19の記憶部190が記憶していることで、該噴出エアの流量を再現することで容易に所定幅L1の隙間を実現できる。
【0050】
エア供給源68からエアスライダ69に供給されるエア689の単位時間当たりの供給量(例えば、少なくとも1L/minを超える量)は一定に保たれている。そして、ケース65内のエアの排気口は、コンタクト60の出口604と、ケース65のケース排気口671との二か所であるため、本実施形態においては、例えば図1に示す制御手段19によるバルブ673を介したケース排気口671から排気されるエア689の排気量の調整制御によって、研削により下がっていく被測定物90の上面900と、これに追従するように下がるコンタクト60の下端608の下面との隙間の上記所定幅L1の大きさが研削加工中に維持されるようになる。即ち、制御手段19から電空レギュレータまたは電動調整バルブ等のバルブ673に送られる電気信号に比例してバルブ673の開度が調整され、ケース排気口671から排気させるエア689の排気量を研削加工中に所定の排気量に維持することで、連通路607に流れるエア689の流量を一定量に調整して出口604から噴出するエア689の量を一定量に調整する。
【0051】
例えば、リニアゲージ6がケース排気口671と、バルブ673とを備えていない場合には、研削により下がっていく被測定物90の上面900と、これに追従するように下がるコンタクト60の下端608の下面との隙間の上記所定幅L1の大きさが研削加工中に維持されるように、図5に示す流量調整部66が水平方向に移動することで、連通路607の断面積を変更して、連通路607に流れるエア689の流量を一定量に調整して出口604から噴出するエア689の量を一定量に調整してもよい。
【0052】
図1に示す回転する研削砥石740によって被測定物90の上面900が研削されて、上面900の高さ位置が基準となる投入厚さ時の高さ位置から下がっていくにつれて、図4に示す出口604から一定量のエア689を噴出して隙間の幅L1を保ちつつ、コンタクト60が下がっていき、それと並行して非接触で被測定物90の上面900の変化する高さ位置がスケール63及び読み取り部635により単位時間ごとに逐次測定され、測定情報が図1に示す制御手段19に送られる
【0053】
また、上記のようにリニアゲージ6が非接触で被測定物90の上面900の高さ位置の変位を測定するのと略同様の動作により、研削中においてリニアゲージ5がチャックテーブル30の保持面302の高さ位置の変位を逐次非接触で測定し続ける。そして、制御手段19が、リニアゲージ6の測定値とリニアゲージ5の測定値との差を算出することで、被測定物90の厚さを研削中に逐次測定する。
【0054】
上記のような厚さ測定を伴いつつ、被測定物90が所望の厚さになるまで研削された後、制御手段19による制御の下で、研削手段7が上方へ移動し被測定物90から離間する。また、図5に示す上下駆動部64は、コンタクト60を被測定物90から離反する上方向(+Z方向)に上昇させる。具体的には、ソレノイドバルブ685の供給ポートがエア供給管683に連通するように切り替えられた状態(図3に示す状態)で、エア供給源68がエア流入口6412からシリンダチューブ641内にエアを供給することにより、ピストン640を上昇させる。そして、ロッド642を上昇させることにより連結部材612と共にコンタクト60を上昇させ、コンタクト60を被測定物90から離間させる。これによって、被測定物90の研削が完了する。
【0055】
被測定物90の上面900の変位を測定する本発明に係るリニアゲージ6は、被測定物90に対峙させる下端608を備えるコンタクト60と、コンタクト60の外側面を隙間を空けて囲繞する筒690の内側の支持面6901からエアを噴出させ鉛直方向に移動自在にコンタクト60を支持するエアスライダ69と、コンタクト60の高さ位置を検出するスケール63と、コンタクト60とエアスライダ69とスケール63とを収容するケース65と、エアスライダ69を形成したエアをケース65内に排気する筒690の上部の排気部692と、コンタクト60の上部に形成する入口602とコンタクト60の下端608に形成する出口604とをコンタクト60の内部で連通する連通路607と、を備えているため、排気部692からケース65内に排気されたエアを入口602からコンタクト60内に入れ出口604から噴出させることによって、コンタクト60の下端608と被測定物90の上面900との間に隙間を設けて非接触で被測定物90の上面900変位を測定することが可能となり、コンタクト60の摩耗を防止することが可能となる。
また、コンタクト60が被測定物90に非接触なので、被測定物90の上面900が凹凸であっても、コンタクト60を傾ける力がコンタクト60にかかる事が無いので、正確に厚みを測定する事が可能となる。
【0056】
本発明に係るリニアゲージ6においては、ケース65内に排気されるエアをケース65外へ排気させるケース排気口671と、ケース排気口671から排気される排気量を調整するバルブ673と、を備えることで、排気量を調整することによって、連通路607に流れるエアの流量を調整してコンタクト60の下端608と被測定物90の上面900との距離を調整することが可能となる。
【0057】
本発明に係るリニアゲージ6においては、コンタクト60に配設され、連通路607を流れるエアの流量を調整する流量調整部66を備えることで、流量調整部66によって連通路607を流れるエアの流量を調整してコンタクト60の下端608と被測定物90の上面900との距離を調整することが可能となる。
なお、本発明に係るリニアゲージ6は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0058】
90:被測定物
1:加工装置 10:ベース
30:チャックテーブル 302:保持面 39:カバー 390:蛇腹カバー
11:コラム 13:研削送り手段 7:研削手段
5:保持面高さの変位測定用のリニアゲージ
6:被測定物の表面の高さ変位測定用のリニアゲージ
60:コンタクト 606:中上部 609:下部 608:下端 602:入口 604:出口 607:連通路
63:スケール 635:読み取り部
64:上下駆動部 640:ピストン 641:シリンダチューブ 6411、6412:エア流入口
65:ケース 658:天板 655、654:側壁 653:底板 657:貫通孔
671:ケース排気口 673:バルブ 674:排気管
682、683:エア供給管 68:エア供給源 685:ソレノイドバルブ
69:エアスライダ 690:筒 6901:支持面 6902:噴射口 692:排気部 62:シール機構
66:流量調整部
19:制御手段 190:記憶部
図1
図2
図3
図4