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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】音響用座標変換装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04S 7/00 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
H04S7/00 300
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020205315
(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公開番号】P2022092487
(43)【公開日】2022-06-22
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100121119
【弁理士】
【氏名又は名称】花村 泰伸
(72)【発明者】
【氏名】小倉 知美
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-278381(JP,A)
【文献】特開2019-146086(JP,A)
【文献】特開2019-097164(JP,A)
【文献】特開2020-120377(JP,A)
【文献】特開2019-186888(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0128567(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04S 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デカルト座標または極座標で記述された音の素材を示すオブジェクトの位置座標を含む座標メタデータ、制作環境のスピーカのレイアウトに関する情報が定義された制作環境スピーカレイアウト情報、及び再生環境のスピーカのレイアウトに関する情報が定義された再生環境スピーカレイアウト情報に基づいて、前記オブジェクトの位置座標を変換する音響用座標変換装置であって、
前記座標メタデータに基づいて、前記オブジェクトの位置座標の座標系が前記デカルト座標であるか、または前記極座標であるかを判定する座標判定部と、
前記座標判定部により判定された前記座標系に応じて、前記オブジェクトの位置座標を変換する座標変換部と、を備え、
前記座標変換部は、
前記座標判定部により前記デカルト座標が判定された場合、
前記再生環境スピーカレイアウト情報に基づいて、音響システムが22.2chであるか否かを判定し、
前記音響システムが前記22.2chである場合、スピーカラベルM±060のスピーカがスピーカ配置空間の前方の両端に配置されるものとし、前記両端を基準にして、前記デカルト座標の(X,Y)値の所定区分毎に、前記デカルト座標のZ値に応じた線形補完により、前記オブジェクトのデカルト座標を変換し、
前記音響システムが前記22.2chでない場合、前記オブジェクトの変換前のデカルト座標を変換後のデカルト座標に設定するデカルト座標変換部と、
前記座標判定部により前記極座標が判定された場合、
前記制作環境スピーカレイアウト情報及び前記再生環境スピーカレイアウト情報に基づいて、前記制作環境及び前記再生環境の前記音響システムが同じであるか否かを判定すると共に、前記制作環境及び前記再生環境の前記音響システムが同じである場合に、前記制作環境及び前記再生環境の同一のスピーカラベルにつき前記スピーカの方位角が同じであるか否かを判定し、
前記音響システムが同じでない場合、または前記方位角が同じでない場合、前記制作環境スピーカレイアウト情報及び前記再生環境スピーカレイアウト情報に基づいて、前記オブジェクトの極座標に含まれる方位角φに最も近い前記制作環境及び前記再生環境の2つのスピーカをそれぞれ特定し、前記方位角φ、前記制作環境の2つのスピーカにおけるそれぞれの前記方位角、及び前記再生環境の2つのスピーカにおけるそれぞれの前記方位角に基づいて、前記オブジェクトの極座標を変換し、
前記音響システムが同じであり、かつ前記方位角が同じである場合、前記オブジェクトの変換前の極座標を変換後の極座標に設定する極座標変換部と、
を備えたことを特徴とする音響用座標変換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音響用座標変換装置において、
前記デカルト座標変換部は、
前記音響システムが前記22.2chである場合、前記オブジェクトの変換前のデカルト座標を(X,Y,Z)、前記変換後のデカルト座標を(X’,Y’,Z)として、
Z値が0、X値が0及び負の範囲かつY値が0及び正の範囲を示す第1範囲の場合、(-1,1)≦(X,Y)≦(0,1)を(-0.5,1)≦(X’,Y’)≦(0,1)に、(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)を(-1,1)≦(X’,Y’)<(-0.5,1)に、(-1,0)≦(X,Y)<(-1,0.41)を(-1,0)≦(X’,Y’)<(-1,1)に線形的に変換することで、前記変換後のデカルト座標(X’,Y’,Z)を求め、
Z値が0、X値が正の範囲かつY値が正の範囲を示す第2範囲の場合、(1,1)≧(X,Y)≧(0,1)を(0.5,1)≧(X’,Y’)≧(0,1)に、(1,0.41)≦(X,Y)<(1,1)を(1,1)≧(X’,Y’)>(0.5,1)に、(1,0)≦(X,Y)<(1,0.41)を(1,0)≦(X’,Y’)<(1,1)に線形的に変換することで、前記変換後のデカルト座標(X’,Y’,Z)を求め、
Z値が0、Y値が負の範囲を示す第3範囲の場合、前記オブジェクトの変換前のデカルト座標(X,Y,Z)を前記変換後のデカルト座標(X’,Y’,Z)に設定し、
Z値が-1<Z<0,0<Z<1の場合、前記第1範囲、前記第2範囲及び前記第3範囲を基準にした補完処理にて(X,Y)値を(X’,Y’)値に線形的に変換することで、前記変換後のデカルト座標(X’,Y’,Z)を求める、ことを特徴とする音響用座標変換装置。
【請求項3】
請求項2に記載の音響用座標変換装置において、
前記デカルト座標変換部は、
前記音響システムが前記22.2chである場合、
前記(X,Y)値が(-1,1)≦(X,Y)≦(0,1)であり、前記Z値が-1≦Z<0のとき、-1≦Z<0に対応する-1≦TX<-0.5のパラメータTXを設定し、または、前記(X,Y)値が(-1,1)≦(X,Y)≦(0,1)であり、前記Z値が0≦Z≦1のとき、0≦Z≦1に対応する-0.5≧TX≧-1の前記パラメータTXを設定し、前記(-1,1)≦(X,Y)≦(0,1)を(TX,1)≦(X’,Y’)≦(0,1)に座標変換することで、前記変換後のデカルト座標(X’,Y’,Z)を求め、
前記(X,Y)値が(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)であり、前記Z値が-1≦Z<0のとき、-1≦Z<0に対応する-1≦TX<-0.5の前記パラメータTX及び0.41≦TY<1のパラメータTYを設定し、または、前記(X,Y)値が(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)であり、前記Z値が0≦Z≦1のとき、0≦Z≦1に対応する-0.5≧TX≧-1の前記パラメータTX及び1≧TY≧0.41の前記パラメータTYを設定し、前記(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)を(-1,TY)≦(X’,Y’)<(TX,1)に座標変換することで、前記変換後のデカルト座標(X’,Y’,Z)を求め、
前記(X,Y)値が(-1,0)≦(X,Y)<(-1,0.41)であり、前記Z値が-1≦Z<0のとき、-1≦Z<0に対応する0.41≦TY<1の前記パラメータTYを設定し、または、前記(X,Y)値が(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)であり、前記Z値が0≦Z≦1のとき、0≦Z≦1に対応する1≧TY≧0.41の前記パラメータTYを設定し、前記(-1,0)≦(X,Y)<(-1,0.41)を(-1,0)≦(X’,Y’)<(-1,TY)に座標変換することで、前記変換後のデカルト座標(X’,Y’,Z)を求める、ことを特徴とする音響用座標変換装置。
【請求項4】
請求項1に記載の音響用座標変換装置において、
前記極座標変換部は、
前記オブジェクトの変換後の極座標における前記方位角をφ’として、
前記音響システムが同じであり、かつ前記方位角が同じでない場合、
前記制作環境スピーカレイアウト情報及び前記再生環境スピーカレイアウト情報に基づいて、前記方位角φに最も近い2つのスピーカM1,M2を特定し、前記制作環境における前記スピーカM1,M2の方位角φ_m1,φ_m2及び前記再生環境における前記スピーカM1,M2の方位角φ_m1’,φ_m2’を特定し、
φ_m1≦φ≦φ_m2の範囲をφ_m1’≦φ’≦φ_m2’の範囲に線形補完にて対応させることで、前記変換後の極座標の方位角φ’を求める、ことを特徴とする音響用座標変換装置。
【請求項5】
請求項4に記載の音響用座標変換装置において、
前記極座標変換部は、
前記音響システムが同じでない場合、
前記制作環境スピーカレイアウト情報に基づいて、前記方位角φに最も近い2つのスピーカM11,M12を特定し、前記再生環境スピーカレイアウト情報に基づいて、前記方位角φに最も近い2つのスピーカM13,M14を特定し、前記制作環境における前記スピーカM11,M12の方位角φ_m11,φ_m12及び前記再生環境における前記スピーカM13,M14の方位角φ_m13,φ_m14を特定し、
前記スピーカM11,M12の所定範囲内に前記スピーカM13,M14がそれぞれ存在する場合、φ_m11≦φ≦φ_m12の範囲をφ_m13≦φ’≦φ_m14の範囲に線形補完にて対応させることで、前記変換後の極座標の方位角φ’を求め、
前記スピーカM11の所定範囲内に前記スピーカM13が存在し、前記スピーカM12の所定範囲内にスピーカM14が存在しない場合、前記方位角φ_m12及び前記方位角φ_m14のうち前記方位角φに近い方を方位角φ_m’とし、φ_m11≦φ≦φ_m12の範囲をφ_m13≦φ’≦φ_m’の範囲に線形補完にて対応させることで、前記変換後の極座標の方位角φ’を求め、
前記スピーカM11の所定範囲内に前記スピーカM13が存在せず、前記スピーカM12の所定範囲内にスピーカM14が存在する場合、前記方位角φ_m11及び前記方位角φ_m13のうち前記方位角φに近い方を方位角φ_m”とし、φ_m11≦φ≦φ_m12の範囲をφ_m”≦φ’≦φ_m14の範囲に線形補完にて対応させることで、前記変換後の極座標の方位角φ’を求め、
前記スピーカM11,M12の所定範囲内に前記スピーカM13,M14がそれぞれ存在しない場合、前記方位角φを前記変換後の極座標の方位角φ’に設定する、ことを特徴とする音響用座標変換装置。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1から5までのいずれか一項に記載の音響用座標変換装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オブジェクトベース音響において、オブジェクトの位置座標を、制作環境及び再生環境に合わせて変換する音響用座標変換装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、素材となる音声信号及び音響メタデータ(非特許文献1を参照)を放送し、再生環境または視聴者の好みに合わせた再生信号を生成する方式として、オブジェクトベース音響が知られている。
【0003】
このオブジェクトベース音響では、オブジェクトの位置座標、ゲイン等の情報が音響メタデータとして記述される。レンダラー(再生装置)は、音響信号及び音響メタデータを受信し、音響メタデータに含まれるオブジェクトの位置座標等に基づいて、音響信号から制作時の環境及び再生時の環境を考慮して再生信号を生成する。
【0004】
ここで、オブジェクトは、番組の音を構成する実況、解説、背景音、効果音等の音の素材をいう。
【0005】
このようなレンダラーによるレンダリング手法は、ITU-R勧告BS.2127-0にて国際標準化されている(非特許文献2を参照)。ITU-R勧告BS.2127-0においては、オブジェクトの位置座標を極座標で記述する場合と、デカルト座標で記述する場合の両方に対応するようになっている。また、スピーカの位置座標を規定するスピーカレイアウトは、ITU-R勧告BS.2051-2にて国際標準化されている(非特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Recommendation ITU-R BS.2076-2(10/2019),“Audio Definition Model”
【文献】Recommendation ITU-R BS.2127-0(06/2019),“Audio Definition Model renderer for advanced sound systems”
【文献】Recommendation ITU-R BS.2051-2(07/2108),“Advanced sound system for programme production”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、オブジェクトの位置座標がデカルト座標で記述された場合、制作時と再生時のスピーカレイアウトが異なると、同じ座標値であっても意味する角度が異なることがある。このため、制作時と再生時とでスピーカレイアウトが異なる場合に、制作者の(制作時の)意図を再生時に再現することができない、すなわち制作者の意図どおりにオブジェクトを再生することができないという課題があった。
【0008】
一般に、制作者は、部屋の隅(デカルト座標におけるスピーカ配置空間の端)に配置されるスピーカを基準にしてデカルト座標を設定する。しかし、音響システムを再生するユーザは、オブジェクトの位置座標がデカルト座標で記述されている場合(例えばデカルト座標(-1,1,0))、部屋の隅に配置されるスピーカの方位角が30°なのか、または60°なのかを明確に判断することができない。
【0009】
例えば、22.2chの音響システムにおいて、前述の非特許文献2のITU-R勧告BS.2127-0によれば(TABLE12を参照)、スピーカラベルがM+030のデカルト座標は(-1,1,0)である。つまり、スピーカラベルがM+030のスピーカは、22.2chのスピーカが配置される空間において左前の隅(四角い部屋の左前の隅)に配置される。
【0010】
しかしながら、実際には、22.2chの音響システムにおいて、左前の隅に配置されるスピーカのラベルは、設計上M+060とするのが望ましいとされている。前述の非特許文献3のITU-R勧告BS.2051-2によれば(TABLE10を参照)、スピーカラベルがM+030の名称は「Front left centre」であるのに対し、スピーカラベルがM+060の名称は「Front left」である。つまり、この規格では、左前の隅に配置されるスピーカのラベルはM+060となる。
【0011】
このため、前述の非特許文献2のITU-R勧告BS.2127-0に従ってスピーカラベルM+030の位置のオブジェクトがデカルト座標(-1,1,0)に、M+060の位置のオブジェクトがデカルト座標(-1,0.414214,0)に配置された場合、M+060の位置のオブジェクトは、前述の非特許文献3のITU-R勧告BS.2051-2で想定された「Front left」前左ではなく、左側方となり、制作者の意図が再生時に再現されない場合がある。
【0012】
また、制作時と再生時のスピーカレイアウトが異なり、例えば極座標をデカルト座標に変換する必要がある場合に、一般的には公知の変換式が用いられる。この変換式は、前述の非特許文献2のITU-R勧告BS.2127-0(10.1.1 Polar to Cartesian(p.70)を参照)に記載されている。
【0013】
しかしながら、スピーカレイアウトが異なる場合に、オブジェクトの位置座標が同じデカルト座標の座標値であっても意味する角度が異なるときには、前述の変換式をそのまま流用すると、制作者の意図と異なる座標に変換することになる。
【0014】
このため、特にスピーカ前方において、制作者の意図を再生時に再現することができない、すなわち制作者の意図どおりにオブジェクトを再生することができないという課題があった。
【0015】
また、オブジェクトの位置座標が極座標で記述された場合、制作時と再生時とでスピーカ位置が異なると、離れた複数のスピーカを用いてパンニングを行うが、これは、音質の劣化につながるという課題があった。
【0016】
そこで、本発明は前記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、オブジェクトベース音響において、オブジェクトの位置座標がデカルト座標で記述されている場合、または極座標で記述されている場合のいずれにおいても、音質を劣化させずに制作者の意図を反映するように、オブジェクトの座標を変換する音響用座標変換装置及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
前記課題を解決するために、請求項1の音響用座標変換装置は、デカルト座標または極座標で記述された音の素材を示すオブジェクトの位置座標を含む座標メタデータ、制作環境のスピーカのレイアウトに関する情報が定義された制作環境スピーカレイアウト情報、及び再生環境のスピーカのレイアウトに関する情報が定義された再生環境スピーカレイアウト情報に基づいて、前記オブジェクトの位置座標を変換する音響用座標変換装置であって、前記座標メタデータに基づいて、前記オブジェクトの位置座標の座標系が前記デカルト座標であるか、または前記極座標であるかを判定する座標判定部と、前記座標判定部により判定された前記座標系に応じて、前記オブジェクトの位置座標を変換する座標変換部と、を備え、前記座標変換部が、前記座標判定部により前記デカルト座標が判定された場合、前記再生環境スピーカレイアウト情報に基づいて、音響システムが22.2chであるか否かを判定し、前記音響システムが前記22.2chである場合、スピーカラベルM±060のスピーカがスピーカ配置空間の前方の両端に配置されるものとし、前記両端を基準にして、前記デカルト座標の(X,Y)値の所定区分毎に、前記デカルト座標のZ値に応じた線形補完により、前記オブジェクトのデカルト座標を変換し、前記音響システムが前記22.2chでない場合、前記オブジェクトの変換前のデカルト座標を変換後のデカルト座標に設定するデカルト座標変換部と、前記座標判定部により前記極座標が判定された場合、前記制作環境スピーカレイアウト情報及び前記再生環境スピーカレイアウト情報に基づいて、前記制作環境及び前記再生環境の前記音響システムが同じであるか否かを判定すると共に、前記制作環境及び前記再生環境の前記音響システムが同じである場合に、前記制作環境及び前記再生環境の同一のスピーカラベルにつき前記スピーカの方位角が同じであるか否かを判定し、前記音響システムが同じでない場合、または前記方位角が同じでない場合、前記制作環境スピーカレイアウト情報及び前記再生環境スピーカレイアウト情報に基づいて、前記オブジェクトの極座標に含まれる方位角φに最も近い前記制作環境及び前記再生環境の2つのスピーカをそれぞれ特定し、前記方位角φ、前記制作環境の2つのスピーカにおけるそれぞれの前記方位角、及び前記再生環境の2つのスピーカにおけるそれぞれの前記方位角に基づいて、前記オブジェクトの極座標を変換し、前記音響システムが同じであり、かつ前記方位角が同じである場合、前記オブジェクトの変換前の極座標を変換後の極座標に設定する極座標変換部と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、請求項2の音響用座標変換装置は、請求項1に記載の音響用座標変換装置において、前記デカルト座標変換部が、前記音響システムが前記22.2chである場合、前記オブジェクトの変換前のデカルト座標を(X,Y,Z)、前記変換後のデカルト座標を(X’,Y’,Z)として、Z値が0、X値が0及び負の範囲かつY値が0及び正の範囲を示す第1範囲の場合、(-1,1)≦(X,Y)≦(0,1)を(-0.5,1)≦(X’,Y’)≦(0,1)に、(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)を(-1,1)≦(X’,Y’)<(-0.5,1)に、(-1,0)≦(X,Y)<(-1,0.41)を(-1,0)≦(X’,Y’)<(-1,1)に線形的に変換することで、前記変換後のデカルト座標(X’,Y’,Z)を求め、Z値が0、X値が正の範囲かつY値が正の範囲を示す第2範囲の場合、(1,1)≧(X,Y)≧(0,1)を(0.5,1)≧(X’,Y’)≧(0,1)に、(1,0.41)≦(X,Y)<(1,1)を(1,1)≧(X’,Y’)>(0.5,1)に、(1,0)≦(X,Y)<(1,0.41)を(1,0)≦(X’,Y’)<(1,1)に線形的に変換することで、前記変換後のデカルト座標(X’,Y’,Z)を求め、Z値が0、Y値が負の範囲を示す第3範囲の場合、前記オブジェクトの変換前のデカルト座標(X,Y,Z)を前記変換後のデカルト座標(X’,Y’,Z)に設定し、Z値が-1<Z<0,0<Z<1の場合、前記第1範囲、前記第2範囲及び前記第3範囲を基準にした補完処理にて(X,Y)値を(X’,Y’)値に線形的に変換することで、前記変換後のデカルト座標(X’,Y’,Z)を求める、ことを特徴とする。
【0019】
また、請求項3の音響用座標変換装置は、請求項2に記載の音響用座標変換装置において、前記デカルト座標変換部が、前記音響システムが前記22.2chである場合、前記(X,Y)値が(-1,1)≦(X,Y)≦(0,1)であり、前記Z値が-1≦Z<0のとき、-1≦Z<0に対応する-1≦TX<-0.5のパラメータTXを設定し、または、前記(X,Y)値が(-1,1)≦(X,Y)≦(0,1)であり、前記Z値が0≦Z≦1のとき、0≦Z≦1に対応する-0.5≧TX≧-1の前記パラメータTXを設定し、前記(-1,1)≦(X,Y)≦(0,1)を(TX,1)≦(X’,Y’)≦(0,1)に座標変換することで、前記変換後のデカルト座標(X’,Y’,Z)を求め、前記(X,Y)値が(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)であり、前記Z値が-1≦Z<0のとき、-1≦Z<0に対応する-1≦TX<-0.5の前記パラメータTX及び0.41≦TY<1のパラメータTYを設定し、または、前記(X,Y)値が(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)であり、前記Z値が0≦Z≦1のとき、0≦Z≦1に対応する-0.5≧TX≧-1の前記パラメータTX及び1≧TY≧0.41の前記パラメータTYを設定し、前記(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)を(-1,TY)≦(X’,Y’)<(TX,1)に座標変換することで、前記変換後のデカルト座標(X’,Y’,Z)を求め、前記(X,Y)値が(-1,0)≦(X,Y)<(-1,0.41)であり、前記Z値が-1≦Z<0のとき、-1≦Z<0に対応する0.41≦TY<1の前記パラメータTYを設定し、または、前記(X,Y)値が(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)であり、前記Z値が0≦Z≦1のとき、0≦Z≦1に対応する1≧TY≧0.41の前記パラメータTYを設定し、前記(-1,0)≦(X,Y)<(-1,0.41)を(-1,0)≦(X’,Y’)<(-1,TY)に座標変換することで、前記変換後のデカルト座標(X’,Y’,Z)を求める、ことを特徴とする。
【0020】
また、請求項4の音響用座標変換装置は、請求項1に記載の音響用座標変換装置において、前記極座標変換部が、前記オブジェクトの変換後の極座標における前記方位角をφ’として、前記音響システムが同じであり、かつ前記方位角が同じでない場合、前記制作環境スピーカレイアウト情報及び前記再生環境スピーカレイアウト情報に基づいて、前記方位角φに最も近い2つのスピーカM1,M2を特定し、前記制作環境における前記スピーカM1,M2の方位角φ_m1,φ_m2及び前記再生環境における前記スピーカM1,M2の方位角φ_m1’,φ_m2’を特定し、φ_m1≦φ≦φ_m2の範囲をφ_m1’≦φ’≦φ_m2’の範囲に線形補完にて対応させることで、前記変換後の極座標の方位角φ’を求める、ことを特徴とする。
【0021】
また、請求項5の音響用座標変換装置は、請求項4に記載の音響用座標変換装置において、前記極座標変換部が、前記音響システムが同じでない場合、前記制作環境スピーカレイアウト情報に基づいて、前記方位角φに最も近い2つのスピーカM11,M12を特定し、前記再生環境スピーカレイアウト情報に基づいて、前記方位角φに最も近い2つのスピーカM13,M14を特定し、前記制作環境における前記スピーカM11,M12の方位角φ_m11,φ_m12及び前記再生環境における前記スピーカM13,M14の方位角φ_m13,φ_m14を特定し、前記スピーカM11,M12の所定範囲内に前記スピーカM13,M14がそれぞれ存在する場合、φ_m11≦φ≦φ_m12の範囲をφ_m13≦φ’≦φ_m14の範囲に線形補完にて対応させることで、前記変換後の極座標の方位角φ’を求め、前記スピーカM11の所定範囲内に前記スピーカM13が存在し、前記スピーカM12の所定範囲内にスピーカM14が存在しない場合、前記方位角φ_m12及び前記方位角φ_m14のうち前記方位角φに近い方を方位角φ_m’とし、φ_m11≦φ≦φ_m12の範囲をφ_m13≦φ’≦φ_m’の範囲に線形補完にて対応させることで、前記変換後の極座標の方位角φ’を求め、前記スピーカM11の所定範囲内に前記スピーカM13が存在せず、前記スピーカM12の所定範囲内にスピーカM14が存在する場合、前記方位角φ_m11及び前記方位角φ_m13のうち前記方位角φに近い方を方位角φ_m”とし、φ_m11≦φ≦φ_m12の範囲をφ_m”≦φ’≦φ_m14の範囲に線形補完にて対応させることで、前記変換後の極座標の方位角φ’を求め、前記スピーカM11,M12の所定範囲内に前記スピーカM13,M14がそれぞれ存在しない場合、前記方位角φを前記変換後の極座標の方位角φ’に設定する、ことを特徴とする。
【0022】
さらに、請求項6のプログラムは、コンピュータを、請求項1から5までのいずれか一項に記載の音響用座標変換装置として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、オブジェクトベース音響において、オブジェクトの位置座標がデカルト座標で記述されている場合、または極座標で記述されている場合のいずれにおいても、音質を劣化させずに制作者の意図を反映するように、オブジェクトの位置座標を変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態による音響用座標変換装置の構成例を示すブロック図である。
図2】座標判定部の処理例を示すフローチャートである。
図3】座標変換部の構成例を示すブロック図である。
図4】座標変換部の処理例を示すフローチャートである。
図5】デカルト座標変換処理(ステップS403)を示すフローチャートである。
図6】22.2chの音響システムの中層(Z=0)におけるスピーカのデカルト座標を示す図である。
図7】22.2chの音響システムの中層(Z=0)における前方スケーリング処理(ステップS504)を説明する図である。
図8】22.2chの音響システムの下層(Z=-1)における前方スケーリング処理(ステップS504)を説明する図である。
図9】22.2chの音響システムの中層と下層の間(Z=-0.5)における前方スケーリング処理(ステップS504)を説明する図である。
図10】(X,Y)の区分が<1>の場合の前方スケーリング処理(ステップS504)を示すフローチャートである。
図11】(X,Y)の区分が<2>の場合の前方スケーリング処理(ステップS504)を示すフローチャートである。
図12】(X,Y)の区分が<3>の場合の前方スケーリング処理(ステップS504)を示すフローチャートである。
図13】極座標変換処理(ステップS404)を示すフローチャートである。
図14】第1極座標変換処理(ステップS1306)を示すフローチャートである。
図15】第2極座標変換処理(ステップS1307)を示すフローチャートである。
図16】第2-1極座標変換処理(ステップS1506)を示すフローチャートである。
図17】第2-2極座標変換処理(ステップS1507)を示すフローチャートである。
図18】ITU-R勧告BS.2051-2に記載されたスピーカレイアウト情報を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態について図面を用いて詳細に説明する。本発明は、オブジェクトの位置座標がデカルト座標で記述されている場合、22.2chの音響システムにおける前方の座標位置について、スピーカラベル「M±060」のスピーカがスピーカ配置空間の前方の両端に配置されるものとして、両端を基準にして、所定区分(区間)毎にデカルト座標のZ値に応じた線形補完を行い、前方に配置されたオブジェクトの位置座標を変換することを特徴とする。これにより、再生環境の前方のスピーカが配置された端を基準にして、制作者が意図したオブジェクトの位置を再現することができる。
【0026】
また、本発明は、オブジェクトの位置座標が極座標で記述されている場合、制作時及び再生時のスピーカレイアウト情報に基づいて、オブジェクトの極座標の方位角φに最も近い制作環境及び再生環境の2つのスピーカの方位角をそれぞれ特定し、オブジェクトの方位角φ及びこれらのスピーカの方位角に基づいて、オブジェクトの位置座標を変換することを特徴とする。これにより、離れた複数のスピーカを用いたパンニングを減らすことができ、制作者の意図を再現しつつ、オブジェクトを高品質に再生することができる。
【0027】
〔音響用座標変換装置〕
図1は、本発明の実施形態による音響用座標変換装置の構成例を示すブロック図である。この音響用座標変換装置1は、座標判定部10、座標変換部11及び記憶部12を備えている。
【0028】
音響用座標変換装置1は、座標メタデータ、制作環境スピーカレイアウト情報及び再生環境スピーカレイアウト情報を入力し、座標メタデータに基づいて、オブジェクトの位置座標が記述されている座標系(デカルト座標または極座標)を判定する。
【0029】
そして、音響用座標変換装置1は、制作環境スピーカレイアウト情報及び再生環境スピーカレイアウト情報に基づき、座標系に応じて座標メタデータに含まれるオブジェクトの位置座標を変換することで、変換後のオブジェクトの位置座標を求める。
【0030】
座標メタデータは、音響メタデータに含まれるメタデータであり、オブジェクトの位置座標が記述された座標系(デカルト座標または極座標)を示す「cartesian(デカルト座標)」フラグ、オブジェクト毎の当該オブジェクトが配置された位置座標等が含まれる。音響メタデータの詳細については、前述の非特許文献1のITU-R勧告BS.2076-2を参照されたい。
【0031】
制作環境スピーカレイアウト情報には、制作環境のスピーカのレイアウトに関する情報が定義されている。また、再生環境スピーカレイアウト情報には、再生環境のスピーカのレイアウトに関する情報が定義されている。
【0032】
座標メタデータ及び制作環境スピーカレイアウト情報は、例えば放送局により記述され、再生環境スピーカレイアウト情報は、例えば当該音響用座標変換装置1が設置される家庭内のユーザにより記述される。
【0033】
図18は、前述の非特許文献3のITU-R勧告BS.2051-2に記載されたスピーカレイアウト情報を説明する図である。このスピーカレイアウト情報の記載内容は、制作環境スピーカレイアウト情報及び再生環境スピーカレイアウト情報のいずれにも適用があり、システム名称、並びにスピーカラベル毎の方位角及び仰角等のデータから構成される。
【0034】
システム名称は、音響システムの名称を示し、例えば音響システムが「22.2ch」の場合、「H」が記述される。
【0035】
スピーカラベル(SP Label)は、システム名称が示す音響システムにおいて、スピーカが配置される空間(スピーカ配置空間、部屋)内のスピーカのラベルを示す。図18に示す表の「X」が、当該音響システムにおいて使用するスピーカのスピーカラベルを示す。例えば、スピーカラベルが「M+030」の場合、中層(「M」)の方位角+30°の位置に配置されるスピーカであることを示している。
【0036】
方位角は、スピーカ配置空間において、聴取者を基準にして前方を0°とした場合の水平方向の角度を示す。仰角は、スピーカ配置空間において、聴取者を基準にして水平方向を0°とした場合の鉛直方向の角度を示す。
【0037】
例えば、音響システムが「22.2ch」の場合、スピーカレイアウト情報は、システム名称「H」、スピーカラベル「M+000」、方位角「0」、仰角「0」、スピーカラベル「M+030」、方位角「+30」、仰角「0」、スピーカラベル「M-030」、方位角「-30」、仰角「0」、・・・から構成される。
【0038】
(座標判定部10)
図2は、座標判定部10の処理例を示すフローチャートである。座標判定部10は、座標メタデータを入力し(ステップS201)、座標メタデータから「cartesian」フラグを抽出する(ステップS202)。
【0039】
座標判定部10は、「cartesian」フラグが1であるか、または0であるかを判定する(ステップS203)。座標判定部10は、ステップS203において、「cartesian」フラグが1であると判定した場合(ステップS203:=1)、オブジェクトの位置座標が記述された座標系がデカルト座標であると判断する(ステップS204)。
【0040】
一方、座標判定部10は、ステップS203において、「cartesian」フラグが0であると判定した場合(ステップS203:=0)、オブジェクトの位置座標が記述された座標系が極座標であると判断する(ステップS205)。
【0041】
座標判定部10は、ステップS204またはステップS205から移行して、座標系がデカルト座標表記であるか、または極座標表記であるかを示す判定結果を生成し、当該判定結果を座標変換部11に出力する(ステップS206)。
【0042】
このように、座標判定部10により、座標メタデータに含まれるオブジェクトの位置座標の座標系が判定される。そして、オブジェクトの位置座標がデカルト座標で記述されている場合、デカルト座標を示す判定結果が生成され、オブジェクトの位置座標が極座標で記述されている場合、極座標を示す判定結果が生成される。
【0043】
尚、座標判定部10は、「cartesian」フラグ以外の他の指標を用いて、オブジェクトの位置座標が記述された座標系を判定するようにしてもよい。
【0044】
(座標変換部11)
図3は、座標変換部11の構成例を示すブロック図であり、図4は、座標変換部11の処理例を示すフローチャートである。この座標変換部11は、デカルト座標変換部20及び極座標変換部21を備えている。
【0045】
座標変換部11は、座標判定部10から判定結果を入力すると共に、座標メタデータ、制作環境スピーカレイアウト情報及び再生環境スピーカレイアウト情報を入力する(ステップS401)。
【0046】
座標変換部11は、判定結果がデカルト座標を示しているか、または極座標を示しているかを判定する(ステップS402)。
【0047】
座標変換部11は、ステップS402において、判定結果がデカルト座標を示していると判定した場合(ステップS402:デカルト座標)、デカルト座標変換処理を行う(ステップS403)。このデカルト座標変換処理は、制作者が意図したオブジェクトの位置を再現するように、デカルト座標変換部20により行われる。
【0048】
具体的には、デカルト座標変換部20は、再生環境スピーカレイアウト情報に基づいて、音響システムが22.2chであるか否かを判定する。そして、デカルト座標変換部20は、音響システムが22.2chである場合、後述する前方スケーリング処理を行う。前方スケーリング処理は、スピーカラベル「M±060」のスピーカがスピーカ配置空間の前方の両端に配置されるものとし、両端を基準にして、デカルト座標の(X,Y)値の所定区間毎に、デカルト座標のZ値に応じた線形補完により、制作時の意図を再現するように、座標メタデータに含まれるオブジェクトの位置座標であるデカルト座標を変換する処理である。デカルト座標変換処理の詳細については後述する。
【0049】
ここで、音響システムが22.2chの場合における制作時の意図(制作者の意図)とは、スピーカラベル「M±060」のスピーカが、スピーカ配置空間の前方の両端(部屋の前方の両端)に配置されることを指している。
【0050】
前述の非特許文献2のITU-R勧告BS.2127-0において、TABLE12には、スピーカラベル「M±030」のスピーカが、スピーカ配置空間の前方の両端に配置されることが示されている。
【0051】
一方、前述の非特許文献3のITU-R勧告BS.2051-2において、TABLE10には、スピーカラベル「M±060」のスピーカの名称がそれぞれ「Front left」「Front right」であり、スピーカラベル「M±030」のスピーカの名称がそれぞれ「Front left centre」「Front right centre」であることが示されている。
【0052】
前者の規格は、座標変換時におけるスピーカ配置とデカルト座標の対応表が示されているに過ぎず、制作者は、制作時において、後者の規格に従ってオブジェクトの座標位置等を設計するのが通常である。したがって、制作者は、スピーカ配置空間の前方の両端に、スピーカラベル「M±030」のスピーカではなくスピーカラベル「M±060」のスピーカを配置することを前提として、オブジェクトの座標位置等を設計することとなる。つまり、制作時の意図は、スピーカラベル「M±060」のスピーカが、スピーカ配置空間の前方の両端に配置されることを指している。
【0053】
図4に戻って、座標変換部11は、ステップS402において、判定結果が極座標を示していると判定した場合(ステップS402:極座標)、極座標変換処理を行う(ステップS404)。この極座標変換処理は、離れた複数のスピーカを用いたパンニングを減らし、制作者の意図を再現しつつ、オブジェクトを高品質に再生するように、極座標変換部21により行われる。
【0054】
具体的には、極座標変換部21は、制作環境スピーカレイアウト情報及び再生環境スピーカレイアウト情報に基づいて、制作時及び再生時の音響システム及びスピーカの方位角が同じであるか否かを判定する。そして、極座標変換部21は、制作時及び再生時の音響システムが同じでない、または制作時及び再生時の方位角が同じでないと判定した場合、座標メタデータに含まれるオブジェクトの位置座標である極座標の方位角φに最も近い制作環境及び再生環境の2つのスピーカをそれぞれ特定する。極座標変換部21は、オブジェクトの方位角φ及びこれらのスピーカの方位角に基づいて、オブジェクトの位置座標である極座標を変換する。極座標変換処理の詳細については後述する。
【0055】
座標変換部11は、ステップS403またはステップS404から移行して、ステップS403,S404により変換された変換後のオブジェクトの位置座標を記憶部12に格納する(ステップS405)。
【0056】
このように、座標変換部11により、制作者が意図したオブジェクトの位置を再現するように、オブジェクトのデカルト座標が変換される。また、離れた複数のスピーカを用いたパンニングを減らし、制作者の意図を再現しつつ、オブジェクトを高品質に再生するように、オブジェクトの極座標が変換される。
【0057】
そして、記憶部12には、座標メタデータに含まれるオブジェクトの位置座標がデカルト座標で記述されている場合、変換後のオブジェクトのデカルト座標が格納される。また、記憶部12には、オブジェクトの位置座標が極座標で記述されている場合、変換後のオブジェクトの極座標が格納される。
【0058】
(デカルト座標変換処理)
まず、図4のステップS403に示したデカルト座標変換処理の詳細について説明する。図5は、デカルト座標変換処理(ステップS403)を示すフローチャートである。
【0059】
デカルト座標変換部20は、再生環境スピーカレイアウト情報からシステム名称を抽出する(ステップS501)。そして、デカルト座標変換部20は、座標メタデータからオブジェクトの位置座標であるデカルト座標を抽出する(ステップS502)。
【0060】
デカルト座標変換部20は、システム名称が「H」であるか否か、すなわち音響システムが「22.2ch」であるか否かを判定する(ステップS503)。
【0061】
デカルト座標変換部20は、ステップS503において、システム名称が「H」である(音響システムが「22.2ch」である)と判定した場合(ステップS503:Y)、再生環境のスピーカラベル「M±060」のスピーカがスピーカ配置空間の前方の端に配置されるものとして、制作者の意図通りになるように、前述の前方スケーリング処理を行い、変換後のオブジェクトのデカルト座標を求める(ステップS504)。前方スケーリング処理の詳細については後述する。
【0062】
一方、デカルト座標変換部20は、ステップS503において、システム名称が「H」でない(音響システムが「22.2ch」でない)と判定した場合(ステップS503:N)、ステップS502にて抽出されたデカルト座標(変換前のデカルト座標)を変換後のデカルト座標に設定する(ステップS505)。
【0063】
デカルト座標変換部20は、ステップS504またはステップS505から移行して、変換後のオブジェクトのデカルト座標を記憶部12に格納する(ステップS506)。
【0064】
デカルト座標変換部20は、座標メタデータに含まれる全てのオブジェクトについて処理が完了したか否かを判定する(ステップS507)。デカルト座標変換部20は、ステップS507において、全てのオブジェクトについて処理が完了していないと判定した場合(ステップS507:N)、ステップS502へ移行し、次のオブジェクトについてステップS502~S506の処理を行う。
【0065】
一方、デカルト座標変換部20は、ステップS507において、全てのオブジェクトについて処理が完了したと判定した場合(ステップS507:Y)、当該処理を終了する。
【0066】
尚、デカルト座標変換部20は、システム名称以外の他の指標に基づいて、再生環境の音響システムが「22.2ch」であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0067】
例えば、デカルト座標変換部20は、再生環境スピーカレイアウト情報から全てのスピーカラベルを抽出する。そして、デカルト座標変換部20は、全てのスピーカラベルが、図18に示したスピーカレイアウト情報のシステム名称「H」に対応する全てのスピーカラベル「M+000」「M+030」等と一致するか否かを判定する。デカルト座標変換部20は、全てのスピーカラベルが一致すると判定した場合、音響システムが「22.2ch」であると判定し、少なくとも1つのスピーカラベルが一致しない場合、音響システムが「22.2ch」でないと判定する。
【0068】
この場合、例えばスピーカラベル「M+060」は、音響システムが「22.2ch」(システム名称が「A」~「J」のうちの「H」)の場合にのみ存在する。このため、デカルト座標変換部20は、スピーカラベル「M+060」の有無によって、再生環境の音響システムが「22.2ch」であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0069】
図6は、22.2chの音響システムの中層(Z=0)におけるスピーカのデカルト座標を示す図である。座標メタデータに含まれるオブジェクトの座標位置がデカルト座標で表記されており、座標変換前のデカルト座標を(X,Y,Z)、座標変換後のデカルト座標を(X’,Y’,Z)とする。
【0070】
図6(1)は、前述の非特許文献2のITU-R勧告BS.2127-0に記載されたスピーカのデカルト座標を示しており、図5のステップS504に示した前方スケーリング処理前のスピーカのデカルト座標を示している。制作環境スピーカレイアウト情報のシステム名称は「H」であり、音響システムは「22.2ch」である。
【0071】
前述の非特許文献2のITU-R勧告BS.2127-0のTABLE12によれば、前方の端のデカルト座標(-1,1,0)(1,1,0)には、それぞれスピーカラベル「M±030」のスピーカが配置され、この配置が図6(1)に示されている。これらのスピーカの方位角は、それぞれ30°,-30°である。
【0072】
図6(2)は、前述の非特許文献3のITU-R勧告BS.2051-2に記載されたスピーカレイアウト情報を元に記載したスピーカのデカルト座標を示しており、前方スケーリング処理後のスピーカのデカルト座標を示している。再生環境スピーカレイアウト情報のシステム名称は「H」であり、音響システムは「22.2ch」である。
【0073】
前述の非特許文献3のITU-R勧告BS.2051-2のTABLE10によれば、スピーカラベル「M±030」のスピーカの名称は、それぞれ「Front left centre」「Front right centre」である。また、スピーカラベル「M±060」のスピーカの名称は、それぞれ「Front left」「Front right」であり、これらのスピーカがスピーカ配置空間の前方の端に配置される。つまり、前方の端のデカルト座標(-1,1,0)(1,1,0)には、方位角±60°のスピーカラベル「M±060」のスピーカが配置されることが想定され、この配置が図6(2)に示されている。
【0074】
そこで、本発明の実施形態では、デカルト座標変換部20による図5のステップS504の前方スケーリング処理において、スピーカ配置空間の前方の両端にスピーカラベル「M±060」のスピーカが配置されるものとし、これらのデカルト座標(-1,1,0)(1,1,0)を基準にしてオブジェクトの位置を再現する。
【0075】
具体的には、デカルト座標変換部20は、図6(1)に示したスピーカラベル「M±060」のスピーカが配置されたデカルト座標(-1,0.41,0)(1,0.41,0)を図6(2)に示すスピーカラベル「M±060」のスピーカが配置されたデカルト座標(-1,1,0)(1,1,0)に変換すると共に、図6(1)に示したスピーカラベル「M±030」のスピーカが配置されたデカルト座標(-1,1,0)(1,1,0)を図6(2)に示すスピーカラベル「M±030」のスピーカが配置されたデカルト座標(-0.5,1,0)(0.5,1,0)に変換するように、変換前の(X,Y)値の区分(区間)を設定し、区分毎にZ値に応じた線形補完を行い、オブジェクトのデカルト座標を変換する。
【0076】
デカルト座標変換部20は、Z=0の中層では、変換前のデカルト座標(-1,0.41,0)(1,0.41,0)(-1,1,0)(1,1,0)が、それぞれ変換後のデカルト座標(-1,1,0)(1,1,0)(-0.5,1,0)(0.5,1,0)に対応するように、デカルト変換処理を行う。
【0077】
図7は、22.2chの音響システムの中層(Z=0)における前方スケーリング処理(ステップS504)を説明する図である。図7並びに後述する図8及び図9における前方スケーリング処理は、制作環境スピーカレイアウト情報のシステム名称が「H」以外(音響システムが「22.2ch」以外)の場合にも適用がある。再生環境スピーカレイアウト情報のシステム名称は、「H」(音響システムが「22.2ch」)である。
【0078】
図7<1>は、変換前のデカルト座標(X,Y,0)の(X,Y)成分(以下、Z値を省略して単に「デカルト座標(X,Y)」という。後述する図8図9等においても同様。)において、区分((X,Y)値の範囲)が(-1,1)≦(X,Y)≦(0,1)の場合を示している。(X’,Y’)は、変換後のデカルト座標である。後述する図8及び図9においても同様である。
【0079】
この区分では、オブジェクトのデカルト座標は、(-1,1)≦(X,Y)≦(0,1)から(-0.5,1)≦(X’,Y’)≦(0,1)に線形的に変換される。
【0080】
図7<2>は、変換前のデカルト座標(X,Y)の区分が(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)の場合を示している。この区分では、オブジェクトのデカルト座標は、(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)から(-1,1)≦(X’,Y’)<(-0.5,1)に線形的に変換される。
【0081】
図7<3>は、変換前のデカルト座標(X,Y)の区分が(-1,0)≦(X,Y)<(-1,0.41)の場合を示している。この区分では、オブジェクトのデカルト座標は、(-1,0)≦(X,Y)<(-1,0.41)から(-1,0)≦(X’,Y’)<(-1,1)に線形的に変換される。
【0082】
図8は、22.2chの音響システムの下層(Z=-1)における前方スケーリング処理(ステップS504)を説明する図である。
【0083】
図8<1>は、変換前のデカルト座標(X,Y,-1)の(X,Y)成分において、区分が(-1,1)≦(X,Y)≦(0,1)の場合を示している。
【0084】
この区分では、オブジェクトのデカルト座標は変換されない。つまり、変換前のデカルト座標(-1,1)≦(X,Y)≦(0,1)が変換後のデカルト座標(-1,1)≦(X’,Y’)≦(0,1)にそのまま設定される。
【0085】
図8<2>は、変換前のデカルト座標(X,Y)の区分が(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)の場合を示している。この区分も同様に、オブジェクトのデカルト座標は変換されない。つまり、変換前のデカルト座標(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)が変換後のデカルト座標(-1,0.41)≦(X’,Y’)<(-1,1)にそのまま設定される。
【0086】
図8<3>は、変換前のデカルト座標(X,Y)の区分が(-1,0)≦(X,Y)<(-1,0.41)の場合を示している。この区分も同様に、オブジェクトのデカルト座標は変換されない。つまり、変換前のデカルト座標(-1,0)≦(X,Y)<(-1,0.41)が変換後のデカルト座標(-1,0)≦(X’,Y’)<(-1,0.41)にそのまま設定される。
【0087】
図9は、22.2chの音響システムの中層と下層の間(Z=-0.5)における前方スケーリング処理(ステップS504)を説明する図である。Z=-0.5は、図7のZ=0と図8のZ=-1の中間値である。このため、デカルト座標変換部20は、図7に示した座標変換が行われるZ=0の場合と、図8に示した座標変換が行われないZ=-1の場合との間で、(X,Y)値の範囲を示す区分毎にZ値に応じた線形補完を行い、オブジェクトのデカルト座標を変換する。
【0088】
図9<1>は、変換前のデカルト座標(X,Y,-0.5)の(X,Y)成分において、区分が(-1,1)≦(X,Y)≦(0,1)の場合を示している。
【0089】
この区分では、オブジェクトのデカルト座標は、(-1,1)≦(X,Y)≦(0,1)から(-0.75,1)≦(X’,Y’)≦(0,1)に線形的に変換される。
【0090】
図9<2>は、変換前のデカルト座標(X,Y)の区分が(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)の場合を示している。この区分では、オブジェクトのデカルト座標は、(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)から(-1,0.70)≦(X’,Y’)<(-0.75,1)に線形的に変換される。
【0091】
図9<3>は、変換前のデカルト座標(X,Y)の区分が(-1,0)≦(X,Y)<(-1,0.41)の場合を示している。この区分では、オブジェクトのデカルト座標は、(-1,0)≦(X,Y)<(-1,0.41)から(-1,0)≦(X’,Y’)<(-1,0.70)に線形的に変換される。
【0092】
尚、図7図9では、X値が0及び負の範囲、かつY値が0及び正の範囲の場合の変換処理を示しているが、X値及びY値が正の範囲の場合も、Y軸を対称とした同様の変換処理が行われる。また、Y値が負の範囲の場合、変換処理は行われず、変換前の位置座標が変換後の位置座標に設定される。
【0093】
(前方スケーリング処理(ステップS504)、<1>の場合)
図10は、(X,Y)の区分が<1>の場合の前方スケーリング処理(ステップS504)を示すフローチャートである。<1>の場合とは、(-1,1)≦(X,Y)≦(0,1)の場合を示す。
【0094】
まず、デカルト座標変換部20は、<1><2>または<3>の場合の処理を行う前に、オブジェクトのデカルト座標の(X,Y)が<1>の(-1,1)≦(X,Y)≦(0,1)の範囲に含まれるか、<2>の(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)の範囲に含まれるか、または<3>の(-1,0)≦(X,Y)<(-1,0.41)の範囲に含まれるかを判定する(ステップS1001)。
【0095】
デカルト座標変換部20は、ステップS1001において、オブジェクトのデカルト座標の(X,Y)が<1>の範囲に含まれると判定した場合(ステップS1001:<1>)、後述するステップS1002~S1005に示す<1>の場合の処理へ移行する。
【0096】
デカルト座標変換部20は、ステップS1001において、オブジェクトのデカルト座標の(X,Y)が<2>の範囲に含まれると判定した場合(ステップS1001:<2>)、後述する図11に示す<2>の場合の処理へ移行する。
【0097】
デカルト座標変換部20は、ステップS1001において、オブジェクトのデカルト座標の(X,Y)が<3>の範囲に含まれると判定した場合(ステップS1001:<3>)、後述する図12に示す<3>の場合の処理へ移行する。
【0098】
デカルト座標変換部20は、ステップS1001(<1>)から移行して、オブジェクトのデカルト座標のZが-1≦Z<0の範囲に含まれるか、または0≦Z≦1の範囲に含まれるかを判定する(ステップS1002)。
【0099】
デカルト座標変換部20は、ステップS1002において、オブジェクトのデカルト座標のZ値が-1≦Z<0の範囲に含まれると判定した場合(ステップS1002:-1≦Z<0)、-1≦Z<0の範囲のZに対応する-1≦TX<-0.5の範囲のパラメータTXを線形補完にて設定する(ステップS1003)。
【0100】
例えばZ=-1に対応するTX=-1、Z=0.5に対応するTX=-0.75となるように、Z及びTXが線形的に対応するようにTXが設定される。後述するステップS1004、図11のステップS1102等も同様であり、TYについても同様である。
【0101】
一方、デカルト座標変換部20は、ステップS1002において、オブジェクトのデカルト座標のZ値が0≦Z≦1の範囲に含まれると判定した場合(ステップS1002:0≦Z≦1)、0≦Z≦1の範囲のZに対応する-0.5≧TX≧-1の範囲のパラメータTXを線形補完にて設定する(ステップS1004)。
【0102】
デカルト座標変換部20は、ステップS1003またはステップS1004から移行して、TXを用いて、<1>の(-1,1)≦(X,Y)≦(0,1)を(TX,1)≦(X’,Y’)≦(0,1)に座標変換する(ステップS1005)。ここでは、Z=-1,1の場合も説明の便宜上、座標変換されるものとする。後述する図11のステップS1104及び後述する図12のステップS1204についても同様である。
【0103】
これにより、例えばZ=-1の場合、図8<1>のとおり(-1,1)≦(X’,Y’)≦(0,1)に変換(設定)され、Z=0の場合、図7<1>のとおり(-0.5,1)≦(X’,Y’)≦(0,1)に変換される。また、Z=-0.5の場合、図9<1>のとおり(-0.75,1)≦(X’,Y’)≦(0,1)に変換される。
【0104】
(前方スケーリング処理(ステップS504)、<2>の場合)
図11は、(X,Y)の区分が<2>の場合の前方スケーリング処理(ステップS504)を示すフローチャートである。<2>の場合とは、(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)の場合を示す。
【0105】
デカルト座標変換部20は、図10のステップS1001(<2>)から移行して、オブジェクトのデカルト座標のZが-1≦Z<0の範囲に含まれるか、または0≦Z≦1の範囲に含まれるかを判定する(ステップS1101)。
【0106】
デカルト座標変換部20は、ステップS1101において、オブジェクトのデカルト座標のZ値が-1≦Z<0の範囲に含まれると判定した場合(ステップS1101:-1≦Z<0)、-1≦Z<0の範囲のZに対応する-1≦TX<-0.5の範囲のパラメータTX及び0.41≦TY<1の範囲のパラメータTYを線形補完にて設定する(ステップS1102)。
【0107】
一方、デカルト座標変換部20は、ステップS1101において、オブジェクトのデカルト座標のZ値が0≦Z≦1の範囲に含まれると判定した場合(ステップS1101:0≦Z≦1)、0≦Z≦1の範囲のZに対応する-0.5≧TX≧-1の範囲のパラメータTX及び1≧TY≧0.41の範囲のパラメータTYを線形補完にて設定する(ステップS1103)。
【0108】
デカルト座標変換部20は、ステップS1102またはステップS1103から移行して、TX,TYを用いて、<2>の(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)を(-1,TY)≦(X’,Y’)<(TX,1)に座標変換する(ステップS1104)。
【0109】
これにより、例えばZ=-1の場合、図8<2>のとおり(-1,0.41)≦(X’,Y’)<(-1,1)に変換(設定)され、Z=0の場合、図7<2>のとおり(-1,1)≦(X’,Y’)<(-0.5,1)に変換される。また、Z=-0.5の場合、図9<2>のとおり(-1,0.70)≦(X’,Y’)<(-0.75,1)に変換される。
【0110】
(前方スケーリング処理(ステップS504)、<3>の場合)
図12は、(X,Y)の区分が<3>の場合の前方スケーリング処理(ステップS504)を示すフローチャートである。<3>の場合とは、(-1,0)≦(X,Y)<(-1,0.41)の場合を示す。
【0111】
デカルト座標変換部20は、図10のステップS1001(<3>)から移行して、オブジェクトのデカルト座標のZが-1≦Z<0の範囲に含まれるか、または0≦Z≦1の範囲に含まれるかを判定する(ステップS1201)。
【0112】
デカルト座標変換部20は、ステップS1201において、オブジェクトのデカルト座標のZ値が-1≦Z<0の範囲に含まれると判定した場合(ステップS1201:-1≦Z<0)、-1≦Z<0の範囲のZに対応する0.41≦TY<1の範囲のパラメータTYを線形補完にて設定する(ステップS1202)。
【0113】
一方、デカルト座標変換部20は、ステップS1201において、オブジェクトのデカルト座標のZ値が0≦Z≦1の範囲に含まれると判定した場合(ステップS1201:0≦Z≦1)、0≦Z≦1の範囲のZに対応する1≧TY≧0.41の範囲のパラメータTYを線形補完にて設定する(ステップS1203)。
【0114】
デカルト座標変換部20は、ステップS1202またはステップS1203から移行して、TYを用いて、<3>の(-1,0)≦(X,Y)<(-1,0.41)を(-1,0)≦(X’,Y’)<(-1,TY)に座標変換する(ステップS1204)。
【0115】
これにより、例えばZ=-1の場合、図8<3>のとおり(-1,0)≦(X’,Y’)<(-1,0.41)に変換(設定)され、Z=0の場合、図7<3>のとおり(-1,0)≦(X’,Y’)<(-1,1)に変換される。また、Z=-0.5の場合、図9<3>のとおり(-1,0)≦(X’,Y’)<(-1,0.70)に変換される。
【0116】
尚、図10図12も、図7図9と同様に、X値が0及び負の範囲、かつY値が0及び正の範囲の場合の変換処理を示しているが、X値及びY値が正の範囲の場合も、Y軸を対称とした同様の変換処理が行われる。また、Y値が負の範囲の場合、変換処理は行われず、変換前の位置座標が変換後の位置座標に設定される。
【0117】
このように、図7図12に示したとおり、デカルト座標変換部20は、前方スケーリング処理において、スピーカ配置空間の下層(Z=-1)及び上層(Z=1)では、デカルト座標の変換を行わず、変換前のデカルト座標を変換後のデカルト座標に設定する。
【0118】
また、デカルト座標変換部20は、スピーカ配置空間の中層(Z=0)では、デカルト座標(0,1)から左回りの(0,1)~(-1,1)~(-1,0)の領域において、(-1,1)≦(X,Y)≦(0,1)の範囲を示す<1>の区間、(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)の範囲を示す<2>の区間、及び(-1,0)≦(X,Y)<(-1,0.41)の範囲を示す<3>の区間のそれぞれについて、スピーカラベル「M+060」のスピーカがスピーカ配置空間の前方の端であるデカルト座標(-1,1)に配置されるものとして(、及び、スピーカラベル「M+030」のスピーカがデカルト座標(-0.5,1)に配置されるものとして)、デカルト座標(-1,1)(及びデカルト座標(-0.5,1))を基準にして、図7及び図10図12のとおり、オブジェクトのデカルト座標を変換する。
【0119】
また、デカルト座標変換部20は、デカルト座標(0,1)から右回りの(0,1)~(1,1)~(1,0)の領域において、<1>に対応する(1,1)≧(X,Y)≧(0,1)の範囲を示す区間、<2>に対応する(1,0.41)≦(X,Y)<(1,1)の範囲を示す区間、及び<3>に対応する(1,0)≦(X,Y)<(1,0.41)の範囲を示す区間のそれぞれについて、スピーカラベル「M-060」のスピーカがスピーカ配置空間の前方の端であるデカルト座標(1,1)に配置されるものとして(、及び、スピーカラベル「M-030」のスピーカがデカルト座標(0.5,1)に配置されるものとして)、デカルト座標(1,1)(及びデカルト座標(0.5,1))を基準にして、オブジェクトのデカルト座標を変換する。
【0120】
また、デカルト座標変換部20は、(-1,0)~(0,-1)~(1,0)の区間において、オブジェクトのデカルト座標の変換を行わず、変換前のデカルト座標を変換後のデカルト座標に設定する。
【0121】
さらに、デカルト座標変換部20は、スピーカ配置空間の下層、中層及び上層以外の層(-1<Z<0、0<Z<1)では、変換を行わない下層(Z=-1)及び上層(Z=1)、並びに変換を行う中層(Z=0)を基準にして、Zに応じた線形補完を行うことで、オブジェクトのデカルト座標を変換する。
【0122】
より詳細には、図6を参照して、デカルト座標変換部20は、Z値が0、X値が0及び負の範囲かつY値が0及び正の範囲を示す第1範囲の場合、(-1,1)≦(X,Y)≦(0,1)を(-0.5,1)≦(X’,Y’)≦(0,1)に、(-1,0.41)≦(X,Y)<(-1,1)を(-1,1)≦(X’,Y’)<(-0.5,1)に、(-1,0)≦(X,Y)<(-1,0.41)を(-1,0)≦(X’,Y’)<(-1,1)に線形的に変換することで、変換後のデカルト座標(X’,Y’,Z)を求める。
【0123】
また、デカルト座標変換部20は、Z値が0、X値が正の範囲かつY値が正の範囲を示す第2範囲の場合、(1,1)≧(X,Y)≧(0,1)を(0.5,1)≧(X’,Y’)≧(0,1)に、(1,0.41)≦(X,Y)<(1,1)を(1,1)≧(X’,Y’)>(0.5,1)に、(1,0)≦(X,Y)<(1,0.41)を(1,0)≦(X’,Y’)<(1,1)に線形的に変換することで、変換後のデカルト座標(X’,Y’,Z)を求める。
【0124】
また、デカルト座標変換部20は、Z値が0、Y値が負の範囲を示す第3範囲の場合、変換前のデカルト座標(X,Y,Z)を変換後のデカルト座標(X’,Y’,Z)に設定する。
【0125】
さらに、デカルト座標変換部20は、Z値が-1<Z<0,0<Z<1の場合、第1範囲、第2範囲及び第3範囲を基準にした補完処理にて(X,Y)値を(X’,Y’)値に線形的に変換することで、変換後のデカルト座標(X’,Y’,Z)を求める。
【0126】
これにより、デカルト座標変換部20によるデカルト座標変換処理にて、スピーカラベル「M±060」のスピーカがスピーカ配置空間の前方の両端に配置されるものとして、当該位置を基準にして、制作者が意図したオブジェクトの座標位置を再現することができる。
【0127】
(極座標変換処理)
次に、図4のステップS404に示した極座標変換処理の詳細について説明する。図13は、極座標変換処理(ステップS404)を示すフローチャートである。
【0128】
極座標変換部21は、制作環境スピーカレイアウト情報からシステム名称S1及びスピーカラベル(の方位角φ1)を抽出すると共に、再生環境スピーカレイアウト情報からシステム名称S2及びスピーカラベル(の方位角φ2)をそれぞれ抽出する(ステップS1301)。そして、極座標変換部21は、座標メタデータからオブジェクトの位置座標である極座標(の方位角φ)を抽出する(ステップS1302)。
【0129】
極座標変換部21は、制作環境及び再生環境のシステム名称S1,S2が同じであるか否か、すなわち音響システムが同一であるか否か(スピーカレイアウトが同一であるか否か)を判定する(ステップS1303)。
【0130】
極座標変換部21は、ステップS1303において、システム名称S1,S2が同じであると判定した場合(ステップS1303:Y)、ステップS1304へ移行する。一方、極座標変換部21は、ステップS1303において、システム名称S1,S2が同じでないと判定した場合(ステップS1303:N)、ステップS1307へ移行する。
【0131】
極座標変換部21は、ステップS1303(Y)から移行して、システム名称S1,S2が同じ場合、制作環境及び再生環境における同一のスピーカラベルのそれぞれについて、方位角φ1,φ2が同じであるか否かを判定する(ステップS1304)。
【0132】
極座標変換部21は、ステップS1304において、全ての同一のスピーカラベルにつき方位角φ1,φ2が同じであると判定した場合(ステップS1304:Y)、ステップS1302にて抽出された極座標(変換前の極座標)を変換後の極座標に設定する(ステップS1305)。
【0133】
一方、極座標変換部21は、ステップS1304において、同一のスピーカラベルにつき方位角φ1,φ2が同じでないと判定した場合(ステップS1304:N)、第1極座標変換処理を行い、変換後のオブジェクトの極座標を求める(ステップS1306)。第1極座標変換処理の詳細については後述する。
【0134】
極座標変換部21は、ステップS1303(N)から移行して、システム名称S1,S2が同じでない場合、第2極座標変換処理を行い、変換後のオブジェクトの極座標を求める(ステップS1307)。第2極座標変換処理の詳細については後述する。
【0135】
第1極座標変換処理及び第2極座標変換処理は、前述のとおり、いずれも離れた複数のスピーカを用いたパンニングを減らし、制作者の意図を再現しつつ、オブジェクトを高品質に再生するための処理である。
【0136】
極座標変換部21は、ステップS1305、ステップS1306またはステップS1307から移行して、変換後のオブジェクトの極座標を記憶部12に格納する(ステップS1308)。
【0137】
極座標変換部21は、座標メタデータに含まれる全てのオブジェクトについて処理が完了したか否かを判定する(ステップS1309)。極座標変換部21は、ステップS1309において、全てのオブジェクトについて処理が完了していないと判定した場合(ステップS1309:N)、ステップS1302へ移行し、次のオブジェクトについてステップS1302~S1308の処理を行う。
【0138】
一方、極座標変換部21は、ステップS1309において、全てのオブジェクトについて処理が完了したと判定した場合(ステップS1309:Y)、当該処理を終了する。
【0139】
(第1極座標変換処理(ステップS1306))
まず、図13のステップS1306に示した第1極座標変換処理(システム名称S1,S2が同じ、かつ方位角φ1,φ2が異なる場合の処理)について詳細に説明する。図14は、第1極座標変換処理(ステップS1306)を示すフローチャートである。
【0140】
極座標変換部21は、図13のステップS1301にて制作環境スピーカレイアウト情報及び再生環境スピーカレイアウト情報から抽出されたスピーカラベルのうち、図13のステップS1302にて抽出されたオブジェクトの方位角φに最も近い2つのスピーカM1,M2(のスピーカラベル)をそれぞれ特定する(ステップS1401)。
【0141】
極座標変換部21は、制作環境スピーカレイアウト情報から、制作環境におけるスピーカM1,M2のスピーカラベルに対応する方位角φ_m1,φ_m2を特定する(ステップS1402)。また、極座標変換部21は、再生環境スピーカレイアウト情報から、再生環境におけるスピーカM1,M2のスピーカラベルに対応する方位角φ_m1’,φ_m2’を特定する(ステップS1403)。
【0142】
極座標変換部21は、φ_m1≦φ≦φ_m2の範囲のφに対応するφ_m1’≦φ’≦φ_m2’の範囲のφ’を線形補完にて求めることで、オブジェクトの極座標の方位角φを方位角φ’に変換する(ステップS1404)。
【0143】
これにより、第1極座標変換処理にて、オブジェクトの方位角φに最も近い制作環境及び再生環境のスピーカM1,M2の方位角φ_m1,φ_m2及び方位角φ_m1’,φ_m2’を用いて、線形補完にて、制作環境の方位角φ_m1,φ_m2内のオブジェクトの方位角φが再生環境の方位角φ_m1’,φ_m2’内の方位角φ’に変換される。
【0144】
(第2極座標変換処理(ステップS1307))
次に、図13のステップS1307に示した第2極座標変換処理(システム名称S1,S2が異なる場合の処理)について詳細に説明する。図15は、第2極座標変換処理(ステップS1307)を示すフローチャートである。
【0145】
極座標変換部21は、図13のステップS1301にて制作環境スピーカレイアウト情報及び再生環境スピーカレイアウト情報から抽出されたスピーカラベルのうち、図13のステップS1302にて抽出されたオブジェクトの方位角φに最も近い2つのスピーカM11,M12及び2つのスピーカM13,M14(のスピーカラベル)をそれぞれ特定する(ステップS1501)。
【0146】
極座標変換部21は、制作環境スピーカレイアウト情報から、制作環境におけるスピーカM11,M12のスピーカラベルに対応する方位角φ_m11,φ_m12を特定する(ステップS1502)。また、極座標変換部21は、再生環境におけるスピーカM13,M14のスピーカラベルに対応する方位角φ_m13,φ_m14を特定する(ステップS1503)。
【0147】
極座標変換部21は、制作環境のスピーカM11の所定範囲内(所定の方位角のレンジ内)に、再生環境のスピーカM13(の方位角)が存在するか否か、及び制作環境のスピーカM12の所定範囲内(所定の方位角のレンジ内)に、再生環境のスピーカM14(の方位角)が存在するか否かを判定する(ステップS1504)。
【0148】
所定範囲は、前述の非特許文献3のITU-R勧告BS.2051-2において、TABLE3~12に記載されたスピーカ配置の範囲(方位角のレンジ)を示す。
【0149】
極座標変換部21は、ステップS1504において、スピーカM11,M12の所定範囲内にスピーカM13,M14がそれぞれ存在すると判定した場合(ステップS1504:両方存在)、φ_m11≦φ≦φ_m12の範囲のφに対応するφ_m13≦φ’≦φ_m14の範囲のφ’を線形補完にて求めることで、オブジェクトの極座標の方位角φを方位角φ’に変換する(ステップS1505)。
【0150】
また、極座標変換部21は、ステップS1504において、スピーカM11の所定範囲内にスピーカM13が存在し、スピーカM12の所定範囲内にスピーカM14が存在しないと判定した場合(ステップS1504:M13のみ存在)、第2-1極座標変換処理を行う(ステップS1506)。
【0151】
図16は、第2-1極座標変換処理(ステップS1506)を示すフローチャートである。極座標変換部21は、スピーカM12の方位角φ_m12及びスピーカM14の方位角φ_m14のうち、オブジェクトの方位角φに近い方を方位角φ_m’とする(ステップS1601)。
【0152】
極座標変換部21は、φ_m11≦φ≦φ_m12の範囲のφに対応するφ_m13≦φ’≦φ_m’の範囲のφ’を線形補完にて求めることで、オブジェクトの極座標の方位角φを方位角φ’に変換する(ステップS1602)。
【0153】
図15に戻って、極座標変換部21は、ステップS1504において、スピーカM11の所定範囲内にスピーカM13が存在せず、スピーカM12の所定範囲内にスピーカM14が存在すると判定した場合(ステップS1504:M14のみ存在)、第2-2極座標変換処理を行う(ステップS1507)。
【0154】
図17は、第2-2極座標変換処理(ステップS1507)を示すフローチャートである。極座標変換部21は、スピーカM11の方位角φ_m11及びスピーカM13の方位角φ_m13のうち、オブジェクトの方位角φに近い方を方位角φ_m”とする(ステップS1701)。
【0155】
極座標変換部21は、φ_m11≦φ≦φ_m12の範囲のφに対応するφ_m”≦φ’≦φ_m14の範囲のφ’を線形補完にて求めることで、オブジェクトの極座標の方位角φを方位角φ’に変換する(ステップS1702)。
【0156】
図15に戻って、極座標変換部21は、ステップS1504において、スピーカM11の所定範囲内にスピーカM13が存在せず、スピーカM12の所定範囲内にスピーカM14が存在しないと判定した場合(ステップS1504:両方存在しない)、図13のステップS1302にて抽出された極座標の方位角φ(変換前の極座標の方位角φ)を変換後の極座標の方位角φ’に設定する(ステップS1508)。
【0157】
これにより、第2極座標変換処理にて、オブジェクトの方位角φに最も近い制作環境及び再生環境のスピーカM11,M12の方位角φ_m11,φ_m12及びスピーカM13,M14の方位角φ_m13,φ_m14が特定され、スピーカM11の所定範囲内にスピーカM13が存在しない場合、またはスピーカM12の所定範囲内にスピーカM14が存在しない場合には、それぞれ方位角φ_m12,φ_m14のうち方位角φに近い方位角φ_m’、または方位角φ_m11,φ_m13のうち方位角φに近い方位角φ_m”が特定される。そして、線形補完にて、制作環境の方位角φ_m11,φ_m12間のオブジェクトの方位角φが、再生環境の方位角φ_m13,φ_m14間、方位角φ_m13,φ_m’間または方位角φ_m”,φ_m14間の方位角φ’に変換される。
【0158】
このように、極座標変換部21による極座標変換処理にて、離れた複数のスピーカを用いたパンニングを減らし、制作者の意図を再現しつつ、オブジェクトを高品質に再生するように、オブジェクトの極座標を変換することができる。
【0159】
以上のように、本発明の実施形態の音響用座標変換装置1によれば、座標判定部10は、座標メタデータに含まれる「cartesian」フラグに基づいて、オブジェクトの位置座標が記述された座標系がデカルト座標であるか、または極座標であるかを判定する。
【0160】
座標変換部11のデカルト座標変換部20は、座標系がデカルト座標である場合、再生環境スピーカレイアウト情報に基づいて、再生環境の音響システムが22.2chであると判定すると、図7図12のとおり、スピーカラベル「M±060」のスピーカがスピーカ配置空間の前方の両端に配置されるものとして、両端の座標を基準とした前方スケーリング処理を行うことで、デカルト座標の所定区間毎に、オブジェクトのデカルト座標を変換する。
【0161】
また、デカルト座標変換部20は、再生環境の音響システムが22.2chでないと判定すると、オブジェクトのデカルト座標の変換を行わず、変換前のデカルト座標を変換後のデカルト座標に設定する。
【0162】
これにより、デカルト座標変換処理において、再生環境の前方のスピーカが配置された端を基準にして、制作者が意図したオブジェクトの位置を再現することができる。
【0163】
座標変換部11の極座標変換部21は、座標系が極座標である場合、制作環境スピーカレイアウト情報及び再生環境スピーカレイアウト情報に基づいて、制作環境及び再生環境の音響システム及びスピーカの方位角が同じであると判定すると、オブジェクトの極座標の変換を行わず、変換前の極座標を変換後の極座標に設定する。
【0164】
また、極座標変換部21は、制作時及び再生時の音響システムが同じであり、かつ方位角が異なると判定すると、または、制作時及び再生時の音響システムが同じでないと判定すると、図14図17のとおり、座標メタデータに含まれるオブジェクトの位置座標である極座標の方位角φに最も近い制作環境及び再生環境の2つのスピーカの方位角をそれぞれ特定し、オブジェクトの方位角φ及びこれらのスピーカの方位角に基づいて、オブジェクトの極座標を変換する。
【0165】
これにより、極座標変換処理において、離れた複数のスピーカを用いたパンニングを減らすことができ、制作者の意図を再現しつつ、オブジェクトを高品質に再生することができる
【0166】
したがって、オブジェクトの位置座標を制作環境及び再生環境に合わせて変換することができ、音質をなるべく劣化させずに、制作者の意図どおりにオブジェクトをレンダリングして再現することができる。
【0167】
つまり、オブジェクトベース音響において、オブジェクトの位置座標がデカルト座標で記述された場合、または極座標で記述された場合のいずれの場合においても、音質を劣化させずに制作者の意図を反映するように、オブジェクトの位置座標を変換することができる。
【0168】
以上、実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その技術思想を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0169】
例えば、音響用座標変換装置1の座標変換部11に備えた極座標変換部21は、オブジェクトの極座標に含まれる方位角φを変換するようにした。これに対し、極座標変換部21は、オブジェクトの極座標に含まれる仰角を変換するようにしてもよい。仰角を変換する処理は、前述の方位角φを変換する場合と同様の処理にて実現することができる。
【0170】
尚、本発明の実施形態による音響用座標変換装置1のハードウェア構成としては、通常のコンピュータを使用することができる。音響用座標変換装置1は、CPU、RAM等の揮発性の記憶媒体、ROM等の不揮発性の記憶媒体、及びインターフェース等を備えたコンピュータによって構成される。
【0171】
音響用座標変換装置1に備えた座標判定部10、座標変換部11及び記憶部12の各機能は、これらの機能を記述したプログラムをCPUに実行させることによりそれぞれ実現される。
【0172】
これらのプログラムは、前記記憶媒体に格納されており、CPUに読み出されて実行される。また、これらのプログラムは、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク等)、光ディスク(CD-ROM、DVD等)、半導体メモリ等の記憶媒体に格納して頒布することもでき、ネットワークを介して送受信することもできる。
【符号の説明】
【0173】
1 音響用座標変換装置
10 座標判定部
11 座標変換部
12 記憶部
20 デカルト座標変換部
21 極座標変換部
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