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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/10 20060101AFI20240730BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240730BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
H05K3/10 E
H01L23/12 N
H05K3/18 A
H05K3/18 B
H05K3/18 H
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021076288
(22)【出願日】2021-04-28
(62)【分割の表示】P 2016225772の分割
【原出願日】2016-11-21
(65)【公開番号】P2021177546
(43)【公開日】2021-11-11
【審査請求日】2021-05-27
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100189452
【弁理士】
【氏名又は名称】吉住 和之
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 正也
(72)【発明者】
【氏名】蔵渕 和彦
(72)【発明者】
【氏名】満倉 一行
【合議体】
【審判長】高野 洋
【審判官】稲葉 崇
【審判官】丸山 高政
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-267724(JP,A)
【文献】特開2002-134921(JP,A)
【文献】特開2002-76618(JP,A)
【文献】特開2011-184679(JP,A)
【文献】特開2011-35220(JP,A)
【文献】特開平4-180696(JP,A)
【文献】特開平9-260812(JP,A)
【文献】特開平10-310873(JP,A)
【文献】国際公開第2015/129799(WO,A1)
【文献】特開2011-3884(JP,A)
【文献】特開2014-49170(JP,A)
【文献】特開2005-142534(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/10
H01L 21/768
H05K 3/18
H05K 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に絶縁材料層を直接形成する工程(I)と、
絶縁材料層の表面に凹部を形成する工程(II)と、
前記絶縁材料層の凹部を含む表面を改質する工程(III)と、
前記改質した絶縁材料層の凹部を含む表面に、パラジウム吸着層を形成する工程(IV)と、
前記パラジウム吸着層を形成した絶縁材料層の凹部を含む表面に、無電解ニッケルめっきによりニッケル層を形成する工程(V)と、
前記ニッケル層上に電解銅めっきにより銅層を形成する工程(VI)と、
前記絶縁材料層の凹部を除く表面から、前記銅層、ニッケル層及びパラジウム吸着層を除去することによって、絶縁材料層の凹部に形成された銅層を備える配線層を形成する工程(VII)と、
を備え、
前記工程(I)において、前記絶縁材料層が、感光性樹脂材料で形成される絶縁材料層であり、
前記工程(I)において、前記支持体がシリコン板又はガラス板であり、
前記工程(II)において、前記凹部が、前記感光性樹脂材料を部分的に露光及び現像して形成される凹部であり、
前記工程(III)が、湿式法での前処理により前記表面を改質する工程を含み、前記湿式法での前処理が、シランカップリング剤を含む前処理液による前処理であり、
前記工程(IV)が、前記絶縁材料層の表面を、パラジウム-スズコロイド粒子が分散されたパラジウム-スズコロイド溶液に浸漬させて前記絶縁材料層の表面にパラジウム-スズコロイド粒子を付着させた後、パラジウムを触媒として作用させるための活性化を行い、パラジウム(II)から金属パラジウムに還元させてパラジウム吸着層を得る工程であり、
前記工程(V)において、前記無電解ニッケルめっきが無電解ニッケル-リンめっきであり、前記ニッケル層の厚みが200nm以下であり、前記無電解ニッケルめっきの後、前記ニッケル層を120~200℃で時効硬化処理し、
前記工程(VII)において、前記銅層を含む配線層が、前記絶縁材料層の前記凹部の内部にのみ形成されたものである、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。より詳しくは、微細化や高密度化の要求が高い半導体装置を効率よく、低コストに製造するための半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージの高密度化、高性能化を目的に、異なる性能のチップを一つのパッケージに混載する実装形態が提案されており、コスト面に優れたチップ間の高密度インターコネクト技術が重要になっている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
パッケージ上に異なるパッケージをフリップチップ実装によって積層することで接続するパッケージ・オン・パッケージがスマートフォンやタブレット端末に広く採用されている(例えば非特許文献1及び非特許文献2参照)。さらに高密度で実装するための形態として、高密度配線を有する有機基板を用いたパッケージ技術(有機インターポーザ)、スルーモールドビア(TMV)を有するファンアウト型のパッケージ技術(FO-WLP)、シリコン又はガラスインターポーザを用いたパッケージ技術、シリコン貫通電極(TSV)を用いたパッケージ技術、基板に埋め込まれたチップをチップ間伝送に用いるパッケージ技術等が提案されている。
【0004】
特に有機インタポーザやFO-WLPでは、半導体チップ同士を並列して搭載する場合には、高密度で導通させるために微細配線層が必要となる(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2012-529770号公報
【文献】米国特許出願公開第2001/0221071号明細書
【非特許文献】
【0006】
【文献】Application of Through Mold Via (TMV) as PoP Base Package, Electronic Components and Technology Conference (ECTC), 2008
【文献】Advanced Low Profile PoP Solution with Embedded Wafer Level PoP (eWLB-PoP) Technology, ECTC, 2012
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の微細配線層の形成には、通常スパッタによりシード層形成、レジスト形成、電気めっき、レジスト除去、シード層除去の工程が必要となり、この方法ではプロセスコストが課題であった。従って、微細配線層を低コストで生産するために、より低コストな工程が強く望まれている。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、チップ同士の伝送に優れた高密度で導通させるための微細配線層を有する半導体装置を良好な歩留まり、かつ低コストで製造できる半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の半導体装置の製造方法は、支持体上に絶縁材料層を形成する工程(I)と、絶縁材料層の表面に凹部を形成する工程(II)と、前記絶縁材料層の凹部を含む表面を改質する工程(前処理する工程)(III)と、前記改質した絶縁材料層の凹部を含む表面に、パラジウム吸着層を形成する工程(IV)と、前記パラジム吸着層を形成した絶縁材料層の凹部を含む表面に、無電解ニッケルめっきによりニッケル層を形成する工程(V)と、前記ニッケル層上に電解銅めっきにより銅層を形成する工程(VI)と、前記絶縁材料層の凹部を含む表面から、前記銅層、ニッケル層及びパラジム吸着層を除去することによって、前記絶縁材料層の凹部に形成された銅層を備える配線層を形成する工程(表面研磨により配線層を露出させる工程)(VIII)と、を備える。
また、本発明は、前記絶縁材料層の凹部を除く表面から、前記銅層、ニッケル層及びパラジウム吸着層を除去することによって、絶縁材料層の凹部に形成された銅層を備える配線層を形成する工程(VII)では、前記絶縁材料層の凹部を除く表面から、前記銅層、ニッケル層及びパラジウム吸着層を除去する際に、絶縁材料層の表面と凹部に形成された銅層とを平坦化する、上記半導体装置の製造方法である。
また、本発明は、支持体上に絶縁材料層を形成する工程(I)では、前記絶縁材料層が感光性樹脂材料で形成され、前記絶縁材料層の表面に凹部を形成する工程(II)では、前記感光性樹脂材料を部分的に露光及び現像して凹部を形成する、上記の半導体装置の製造方法である。
また、本発明は、前記絶縁材料層の表面に形成した凹部が、幅方向に少なくとも0.5~20μmの開口幅を有する、上記の半導体装置の製造方法である。
更に、本発明は、前記絶縁材料層の凹部を除く表面から、銅層、ニッケル層及びパラジウム吸着層を除去することによって、前記絶縁材料層の凹部に形成された銅層を備える配線層を形成する工程(VII)を行った後、さらに、前記絶縁材料層及び銅層を備える配線層を有する支持体に対して、前記支持体上に絶縁材料層を形成する工程(I)から、前記絶縁材料層の凹部を除く表面から、銅層、ニッケル層及びパラジウム吸着層を除去することによって、絶縁材料層の凹部に形成された銅層を備える配線層を形成する工程(VII)までを、少なくとも1回以上繰り返し、配線層を多層にする工程(VIII)を有する、上記の半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、チップ同士の伝送に優れた高密度で導通させるための微細配線層を有する半導体装置を良好な歩留まり、かつ低コストで提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)支持体上に絶縁材料層を形成した状態を模式的に示す断面図である。(b)絶縁材料層に凹部を形成した状態を模式的に示す断面図である。(c)絶縁材料層の表面に前処理によってパラジウム-スズコロイド粒子吸着層を形成した状態を模式的に示す断面図である。(d)絶縁材料上に無電解ニッケルめっきした状態を模式的に示す断面図である。
図2】(e)無電解ニッケルをシード層として、電解銅めっきした状態を模式的に示す断面図である。(f)表面研磨により配線層が露出した状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下の説明では、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0013】
本明細書の記載及び請求項において「左」、「右」、「正面」、「裏面」、「上」、「下」、「上方」、「下方」等の用語が利用されている場合、これらは、説明を意図したものであり、必ずしも永久にこの相対位置である、という意味ではない。また、「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。
【0014】
本発明の一実施形態にかかる半導体装置を製造する方法について説明する。尚、本発明の半導体装置の製造方法は、微細化及び多ピン化が必要とされる形態において特に好適である。特に、本発明の半導体装置の製造方法は、異種チップを混載するためのインターポーザが必要なパッケージ形態において好適である。
【0015】
図1(a)から図2(f)を参照しながら、本実施の形態の半導体装置の製造方法、特に配線基板の製造方法について説明する。
【0016】
本実施の形態の半導体装置の製造方法は、支持体上に絶縁材料層を形成する工程(I)と、絶縁材料層の表面に凹部を形成する工程(II)と、前記絶縁材料層の凹部を含む表面を改質する工程(III)と、前記改質した絶縁材料層の凹部を含む表面に、パラジウム吸着層を形成する工程(IV)と、前記パラジウム吸着層を形成した絶縁材料層の凹部を含む表面に、無電解ニッケルめっきによりニッケル層を形成する工程(V)と、前記ニッケル層上に電解銅めっきにより銅層を形成する工程(VI)と、前記絶縁材料層の凹部を除く表面から、前記銅層、ニッケル層及びパラジウム吸着層を除去することによって、絶縁材料層の凹部に形成された銅層を備える配線層を形成する工程(VII)と、を備える。
【0017】
以下、支持体上に絶縁材料層を形成する工程(I)を「絶縁材料層を形成する工程(I)」と、絶縁材料層の表面に凹部を形成する工程(II)を「凹部を形成する工程(II)」と、絶縁材料層の凹部を含む表面を改質する工程(III)を「表面を改質する工程(III)」と、改質した絶縁材料層の凹部を含む表面に、パラジウム吸着層を形成する工程(IV)を「パラジム吸着層を形成する工程(IV)」と、パラジウム吸着層を形成した絶縁材料層の凹部を含む表面に、無電解ニッケルめっきによりニッケル層を形成する工程(V)を「ニッケル層を形成する工程(V)」と、ニッケル層上に電解銅めっきにより銅層を形成する工程(VI)を「銅層を形成する工程(VI)」と、絶縁材料層の凹部を除く表面から、銅層、ニッケル層及びパラジウム吸着層を除去することによって、絶縁材料層の凹部に形成された銅層を備える配線層を形成する工程(VII)を「配線層を形成する工程(VII)」と、絶縁材料層の凹部を除く表面から、銅層、ニッケル層及びパラジウム吸着層を除去することによって、絶縁材料層の凹部に形成された銅層を備える配線層を形成する工程(VII)を行った後、さらに、絶縁材料層及び銅層を備える配線層を有する支持体に対して、支持体上に絶縁材料層を形成する工程(I)から、絶縁材料層の凹部を除く表面から、銅層、ニッケル層及びパラジウム吸着層を除去することによって、絶縁材料層の凹部に形成された銅層を備える配線層を形成する工程(VII)までを、少なくとも1回以上繰り返し、配線層を多層にする工程(VIII)を、「配線層を多層化する工程」と、いうことがある。
【0018】
<支持体上に絶縁材料層を形成する工程(I)>
まず、半導体装置の支持体1上に絶縁材料層2を形成する工程(I)を行う(図1(a))。支持体1は、特に限定されないが、シリコン板、ガラス板、SUS板、ガラスクロス入り基板、半導体素子入り封止樹脂等であり、高剛性からなる基板が好適である。
【0019】
支持体1の厚みは0.2mmから2.0mmの範囲であることが好ましい。0.2mmより薄い場合はハンドリングが困難になる一方、2.0mmより厚い場合は材料費が高くなる傾向にある。
【0020】
支持体1はウェハ状でもパネル状でも構わない。サイズは特に限定されないが、直径200mm、直径300mm又は直径450mmのウェハや、一辺が300~700mmの矩形パネルが好ましく用いられる。
【0021】
支持体1上に絶縁材料層2を形成する工程(I)では、絶縁材料層が感光性樹脂材料で形成されるのが、フォトリソグラフィープロセスで微細な凹部3を容易に形成できる点で好ましい。絶縁材料層2を形成するのに用いる感光性絶縁材料としては、液状やフィルム状のものが挙げられるが、膜厚平坦性とコストの観点からフィルム状の感光性絶縁材料が好ましい。また、微細なトレンチ構造を形成できる点で、感光性絶縁材料に含有するフィラ(充填材)のサイズは平均粒径500nm以下、もしくはフィラを含有しないことが好ましい。
【0022】
上記のフィルム状の感光性絶縁材料のラミネート工程は、低温工程であることが好ましく、40℃~120℃でラミネート可能な感光性樹脂材料からなる感光性絶縁フィルムであることが好ましい。ラミネート可能な温度が40℃を下回る感光性絶縁フィルムは常温(約25℃)でのタックが強く取り扱い性に悪化する傾向があり、120℃を上回る感光性絶縁フィルムはラミネート後に反りが大きくなる傾向がある。
【0023】
絶縁材料層2は、硬化後の熱膨張係数は、反り抑制の観点から80×10-6/K以下であることが好ましく、高信頼性が得られる点で70×10-6/K以下であることがより好ましい。また、絶縁材料の応力緩和性、高精細なパターンが得られる点で20×10-6/K以上であることが好ましい。
【0024】
この後の工程で絶縁材料層2に形成する凹部3を、微細なトレンチ構造とするために、絶縁材料層2の膜厚は10μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましく、3μm以下であることが更に好ましい。また、電気的信頼性の観点から1μm以上であることが好ましい。
【0025】
<凹部を形成する工程(II)>
次に、絶縁材料層2の表面に凹部3を形成する工程(II)を行う(図1(b))。本実施の形態において、凹部3とは、絶縁材料層2の表面に対して、絶縁材料層2の厚さ方向に凹んだ部位をいい、この凹んだ部位の内壁(側壁及び底壁等)を含む。絶縁材料層の表面に凹部を形成する工程(II)では、絶縁材料層2が感光性樹脂材料で形成され、感光性樹脂材料を部分的に露光及び現像して凹部を形成するのが好ましい。凹部3の形成方法は、レーザアブレーション、フォトリソグラフィーやインプリントなどが挙げられるが、微細化とコストの観点から、このように、感光性樹脂材料を部分的に露光及び現像して凹部を形成するフォトリソグラフィープロセスが好ましい。従って、絶縁材料としては、フィルム状の感光性樹脂材料が最も好ましく用いられる。
【0026】
感光性樹脂材料の露光方法としては、通常の投影露光方式、コンタクト露光方式、直描露光方式等を用いることができ、現像方法としては炭酸ナトリウムやTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)のアルカリ水溶液を用いることが好ましい。
【0027】
また、絶縁材料層の表面に凹部を形成する工程(II)では、絶縁材料層の表面に形成した凹部が、幅方向に少なくとも0.5~20μmの開口幅を有するのが、高密度化を実現する半導体装置を提供できる点で、また、微細配線層を有する半導体装置を良好な歩留まり、かつコストで製造できる点で好ましい。
【0028】
凹部3を形成した後、絶縁材料をさらに加熱硬化させてもよい。加熱温度は100℃~200℃、加熱時間は30分~3時間の間で実施される。
【0029】
<表面を改質する工程(III)>
次に、絶縁材料層2の凹部を含む表面を改質する工程(III)を行う(図示しない。)。本実施の形態において、改質とは、(III)パラジウム吸着層を形成する工程の前に、絶縁材料層2の表面を、パラジウム-スズコロイド粒子がより吸着しやすい状態とする前処理のことをいう。このため、本実施の形態における前処理とは、(III)パラジウム吸着層を形成する工程の前に行なう、絶縁材料層2の凹部を含む表面を改質するための前処理をいう。このような改質のための前処理を、単に「前処理」ということがある。
【0030】
改質の方法としては、以下の湿式法での前処理、乾式法での前処理の何れを用いることもできる。
湿式法での前処理で用いる前処理液(改質液)としては、例えば分子内にポリエーテル、グリコールエーテル、アミン、アミド、ウレイド、トリアジン、メラミン、イミダゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール等を含むシランカップリング剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むものが挙げられる。これらの前処理液で用いる溶媒の種類は特に制限されず、一般に用いられる有機溶媒や水から選択でき、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。また、絶縁材料層2の表面の濡れ性を向上させる目的で、界面活性剤を含んでいても良い。さらに、これら以外の湿式法での前処理による改質の方法として、酸、アルカリによる粗化処理が挙げられる。
また、乾式法での前処理としては、プラズマ処理、コロナ処理、紫外線処理等による表面改質が挙げられる。
なお、以上述べたような絶縁材料層2の表面に対する改質方法の中でも、湿式法での前処理である、シランカップリング剤を含む前処理液(改質液)による絶縁材料層2表面の改質を、前処理として行なうのが好ましい。
【0031】
湿式法での前処理の方法としては、絶縁材料層2の表面に、前処理液が接触するスプレー法、ディップ法、スピンコート法、印刷法等が挙げられるが、効率良く処理できるディップ法が好ましい。
【0032】
前処理液の成分と絶縁材料層2との反応性を上げるために、これらの改質のための前処理を行なう前に、絶縁材料層2の表面を活性化してもよい。活性化の方法としては、紫外線照射、電子線照射、オゾン水処理、コロナ放電処理、プラズマ処理等の方法が挙げられる。
【0033】
前処理は、25℃~80℃で行うことが好ましい。より反応性を早めるために40℃~80℃がより好ましく、60℃~80℃が更に好ましい。
【0034】
前処理は、5分~30分で行うことが好ましい。より反応性を早めるために10分~30分がより好ましく、15分~30分が更に好ましい。
【0035】
前処理で用いる前処理液を接触させた後、余分な前処理液を除去するために、水や有機溶剤で洗浄しても良い。
【0036】
前処理を行なった後、絶縁材料層2と前処理液の成分であるシランカップリング剤との結合力を高めるために、熱処理を行っても良い。熱処理温度は、80℃~200℃で加熱することが好ましい。より反応性を早めるために120℃~200℃がより好ましく、120℃~180℃で加熱することが更に好ましい。熱処理時間は5分~60分が好ましく、10分~60分がより好ましく、20分~60分が更に好ましい。また、前処理と熱処理を複数回繰り返しても良い。
【0037】
<パラジウム吸着層を形成する工程(IV)>
次に、改質した絶縁材料層2の凹部3を含む表面に、パラジウム吸着層4を形成する工程(IV)を行う(図1(c))。本実施の形態において、パラジウム吸着層4とは、パラジウム-スズコロイド粒子を絶縁材料層2の凹部3を含む表面に吸着させた後、パラジウムを触媒として作用させるための活性化を行い、パラジウム(II)からパラジウム(0)(金属パラジウム)に還元させたものをいい、この後の工程で行う無電解ニッケルめっきの無電解めっき反応の触媒となるものである。このパラジウム吸着層4の形成方法について、以下詳細に説明する。
【0038】
前処理を行なった後、まず、絶縁材料層2の表面にパラジウム-スズコロイド粒子を付着させる。パラジウム-スズコロイド粒子は、市販のコロイド溶液でよく、水中にパラジウム-スズコロイドが分散された溶液(パラジウム-スズコロイド溶液)を用いればよい。パラジウム-スズコロイド粒子を付着させるために浸漬するパラジウム-スズコロイド溶液の温度は、25℃~80℃、付着させるための浸漬時間は1分~60分の間で実施される。パラジウム-スズコロイド粒子を付着させた後、余分なパラジウム-スズコロイド粒子を除去するため、水や有機溶剤で洗浄しても良い。
【0039】
パラジウム-スズコロイド粒子付着後、パラジウムを触媒として作用させるための活性化を行い、パラジウム(II)からパラジウム(0)(金属パラジウム)に還元させる。パラジウムを活性化させる試薬は市販の活性化剤(活性化処理液)で良い。パラジウムを活性化させるために浸漬する活性化剤の温度は、25℃~80℃、活性化させるために浸漬する時間は1分~60分の間で実施される。パラジウムの活性化後、余分な活性化剤を除去するため、水や有機溶剤で洗浄しても良い。
【0040】
<ニッケル層を形成する工程(V)>
続いて、パラジウム吸着層4を形成した絶縁材料層2の凹部3を含む表面に、無電解ニッケルめっきによりニッケル層5を形成する工程(V)を行う(図1(d))。このニッケル層5は、この後の工程で銅層6を形成するために行う電解銅めっきのシード層(電解銅めっきのための給電層)となる。
【0041】
無電解ニッケルめっきとしては、無電解純ニッケルめっき(純度99質量%以上)、無電解ニッケル-リンめっき(リン含有量:1質量%~13質量%)や無電解ニッケル-ホウ素めっき(ホウ素含有量:0.3質量%~1質量%)等が挙げられるが、コストの観点から、無電解ニッケル-リンめっきが好ましい。
【0042】
無電解ニッケルめっき液は市販のめっき液で良く、例えば、中リンタイプ(リン含有量:7質量%~9質量%)の無電解ニッケルめっき液(株式会社三明社製、商品名「ICPニコロンGM-SB-M」、「ICPニコロンGMSD」)を用いることができる。無電解ニッケルめっきは、60℃~90℃の無電解ニッケルめっき液中で実施される。
【0043】
無電解ニッケルめっきにより形成されるニッケル層5の厚みは、20nm~200nmが好ましく、40nm~200nmがより好ましく、60nm~200nmが更に好ましい。
【0044】
無電解ニッケルめっき後、余分なめっき液を除去するため、水や有機溶剤で洗浄しても良い。
【0045】
無電解ニッケルめっき後、ニッケル層5と絶縁材料層2の密着力を高めるため、熱硬化(アニーリング:加熱による時効硬化処理)を行っても良い。熱硬化温度は、80℃~200℃で加熱することが好ましい。より反応性を早めるために120℃~200℃がより好ましく、120℃~180℃で加熱することが更に好ましい。熱硬化時間は5分~60分が好ましく、10分~60分がより好ましく、20分~60分が更に好ましい。
【0046】
<銅層を形成する工程(VI)>
次に、ニッケル層5上に電解銅めっきにより銅層6を形成する工程(VI)を行う(図2(e))。より具体的には、無電解ニッケルめっきで形成したニッケル層5をシード層として、その上に電解銅めっきにより、銅層6を形成する(図1(d))。なお、本実施の形態では、銅層6を形成する方法として、電解銅めっきを用いたが、これ以外に、例えば、無電解めっきを選択できる。
【0047】
また、本実施の形態では、銅層6は、絶縁材料層2の表面の凹部3内に充填される。このように、銅層6が絶縁材料層2の表面の凹部3内に充填されることで、この後の工程で絶縁材料層2の凹部3を除く表面から、銅層6、ニッケル層5及びパラジウム吸着層4(以下、「金属層6、5、4」ということがある。)を除去するだけで、絶縁材料層2の表面を削ることなく、絶縁材料層2の表面と凹部3に形成された銅層6とを平坦化することが可能になる。なお、金属層6、5、4を除去した後、さらに絶縁材料層2の表面を削っても絶縁材料層2の表面と凹部3に形成された銅層6とを平坦化することが可能である。電解銅めっきによって、銅層6を絶縁材料層2の表面の凹部3内に充填するためには、絶縁材料層2の表面に比べて、凹部3内への電解銅めっきの析出量(めっき厚)が大きい、いわゆるフィルドめっきを用いるのが好ましい。
なお、銅層6は、絶縁材料層2の表面の凹部3内に充填されなくてもよく、凹部3の内壁(底壁及び側壁)に沿って形成されてもよい。この場合は、絶縁材料層2の凹部3を除く表面から、金属層6、5、4を除去するだけでなく、さらに絶縁材料層2の表面を削ることによって、凹部3内(凹部3の底壁)の銅層6を露出させて、絶縁材料層2の表面と凹部3に形成された銅層6とを平坦化することが可能になる。
【0048】
<配線層を形成する工程(VII)>
次に、絶縁材料層2の凹部3を除く表面から、銅層6、ニッケル層5及びパラジウム吸着層4を除去することによって、絶縁材料層2の凹部3に形成された銅層6からなる配線層を形成する工程(VII)を行う(図2(f))。すなわち、絶縁材料層2上部(表面)の金属層6、5、4を除去する(図2(f))ことによって、絶縁材料層2の凹部3を含む表面においては、凹部3にのみ銅層6等(詳細には、銅層6、ニッケル層5、パラジウム吸着層4)が残され、この凹部3の銅層6等が配線層を形成する。
【0049】
なお、絶縁材料層2の凹部3を除く表面から、銅層6、ニッケル層5及びパラジウム吸着層4を除去する際に、絶縁材料層2の表面と凹部3に形成された銅層6とを平坦化するのが好ましい。また、これらの絶縁材料層2の上部の金属層6、5、4を除去する際に、絶縁材料層2の上部(表面)側から厚さ方向の一部を除去してもよい。
【0050】
これらの絶縁材料層2の上部の金属層6、5、4及び絶縁材料層2の除去方法としては、バックグラインド法、フライカット法や化学的機械研磨(CMP)が挙げられる。また、複数の除去方法を併用してもよい。フライカット法では、例えば、ダイヤモンドバイトによる研削装置を使用する。具体例としては、300mmウェハ対応のオートマチックサーフェースプレーナ(株式会社ディスコ製、商品名「DAS8930」)を用いることができる。なお、フライカット法による金属層6、5、4の除去は、絶縁材料層2の上部側(表面側)から面全体を均一に研磨するので、研磨面が平坦となるため、平坦化処理であるともいえる。
【0051】
<配線層を多層にする工程(VIII)>
絶縁材料層2の凹部3を除く表面から、銅層6、ニッケル層5及びパラジウム吸着層4を除去することによって、絶縁材料層2の凹部3に形成された銅層6からなる配線層を形成する工程(VII)を行った後、さらに、絶縁材料層2及び銅層6からなる配線層を有する支持体1に対して、支持体1上に絶縁材料層2を形成する工程(I)から、絶縁材料層2の凹部3を除く表面から、銅層6、ニッケル層5及びパラジウム吸着層4を除去することによって、絶縁材料層2の凹部3に形成された銅層6からなる配線層を形成する工程(VII)までを、少なくとも1回以上繰り返し、配線層を多層にする工程(VIII)を行う(図示しない。)。
【0052】
以上、半導体装置製造用部材、及び、それを用いる半導体装置の製造方法等の好適な実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を行ってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…支持体、2…絶縁材料層、3…凹部、4…パラジウム吸着層又は金属層、5…ニッケル層又は金属層、6…銅層又は金属層

図1
図2