(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ウレタン系接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 175/04 20060101AFI20240730BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20240730BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20240730BHJP
C08G 18/78 20060101ALI20240730BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20240730BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240730BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240730BHJP
C09J 167/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C09J175/04
C08G18/10
C08G18/42
C08G18/78 031
C08G18/79 020
C09J11/04
C09J11/06
C09J167/00
(21)【出願番号】P 2021110620
(22)【出願日】2021-07-02
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100166637
【氏名又は名称】木内 圭
(72)【発明者】
【氏名】荒木 公範
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/159237(WO,A1)
【文献】特開2006-176664(JP,A)
【文献】特開2010-168435(JP,A)
【文献】国際公開第2014/136800(WO,A1)
【文献】特開2005-239753(JP,A)
【文献】特開2012-111898(JP,A)
【文献】特開2013-203927(JP,A)
【文献】特表2020-536136(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0054764(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00ー 5/10
C09J 7/00ー 7/50
C09J 9/00ー201/10
C08G 18/00ー 18/87
C08G 71/00- 71/04
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンプレポリマーと、
ジブチルフタレート吸油量が30~40ml/100gであるカーボンブラックAと、
ジブチルフタレート吸油量が98~108ml/100gであるカーボンブラックBと、
白色充填剤Cと、
可塑剤Dと、
脂肪族ジイソシアネートの変性体Eと、
イソシアネート基が結合する脂肪族炭化水素基を複数有する熱可塑性ポリエステルFと、
触媒と、を含有し、
前記可塑剤Dが、フタル酸エステル及び/又はアジピン酸エステルを含み、
下記(1)~(6)を全て満たす、1液湿気硬化タイプのウレタン系接着剤組成物。ただし、前記変性体Eはエステル結合を有さない。
(1)25≦a≦35
(2)55≦b≦75
(3)197≦a+3b≦251
(4)30≦c≦35
(5)35≦d≦45
(6)2.5≦e≦3.7
前記(1)、(3)において、aは、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対する前記カーボンブラックAの含有量を表し、
前記(2)、(3)において、bは、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対する前記カーボンブラックBの含有量を表し、
前記(4)において、cは、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対する前記白色充填剤Cの含有量を表し、
前記(5)において、dは、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対する前記可塑剤Dの含有量を表し、
前記(6)において、eは、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対する前記変性体Eの含有量を表し、
前記a~eの単位は質量部である。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリエステルFを構成する熱可塑性ポリエステルポリオールの融点が、55~65℃である、請求項1に記載のウレタン系接着剤組成物。
【請求項3】
前記熱可塑性ポリエステルFにおいて、前記イソシアネート基が結合する脂肪族炭化水素基が、脂肪族ジイソシアネートに由来する、請求項1又は2に記載のウレタン系接着剤組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリエステルFの含有量fが、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、3~8質量部である、請求項1~3のいずれか1項に記載のウレタン系接着剤組成物。
【請求項5】
前記変性体Eが、ヘキサメチレンジイソシアネートのヴュレット体及び/又はヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のウレタン系接着剤組成物。
【請求項6】
前記白色充填剤Cが、炭酸カルシウムを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のウレタン系接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用に使用することができる接着剤として、ウレタンプレポリマー、カーボンブラック等を含有する接着剤組成物が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/159237号
【文献】特開2012-111898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車用の接着剤組成物には、通常、製造時の熱安定性、使用時の作業性や安定性、得られる硬化物の物性(初期及び老化後の物性)等が優れることが要求されるが、近年、その要求レベルはますます高まっている。
このようななか、本発明者は特許文献1を参考にして、ウレタンプレポリマー、カーボンブラック等を含有するウレタン系接着剤組成物を調製しこれを評価したところ、ウレタン系接着剤組成物が上記の要求レベルを全て満たすには改善の余地があることが分かった。
また、1液湿気硬化タイプのウレタン系接着剤組成物に特許文献2に示されているように結晶化剤を添加すると、結晶化剤がウレタン系接着剤組成物に関する上記の特性を阻害する恐れがあった(特許文献2の比較例3)。
【0005】
そこで、本発明は、製造時の熱安定性、使用時の作業性、安定性、得られる硬化物の物性(初期及び老化後の物性。以下同様)、接着性が優れる、ウレタン系接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ウレタンプレポリマーと、ジブチルフタレート吸油量がとそれぞれ特定の範囲であるカーボンブラックA、Bと、白色充填剤Cと、可塑剤Dと、脂肪族ジイソシアネートの変性体Eと、イソシアネート基が結合する脂肪族炭化水素基を複数有する熱可塑性ポリエステルFと、触媒と、を含有し、上記のA~Eがそれぞれ特定の含有量であり、A、Bの含有量が特定の関係を満たすことによって、所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0007】
[1]
ウレタンプレポリマーと、
ジブチルフタレート吸油量が30~40ml/100gであるカーボンブラックAと、
ジブチルフタレート吸油量が98~108ml/100gであるカーボンブラックBと、
白色充填剤Cと、
可塑剤Dと、
脂肪族ジイソシアネートの変性体Eと、
イソシアネート基が結合する脂肪族炭化水素基を複数有する熱可塑性ポリエステルFと、
触媒と、を含有し、
後述する(1)~(6)を全て満たす、1液湿気硬化タイプのウレタン系接着剤組成物。ただし、上記変性体Eはエステル結合を有さない。
[2]
上記熱可塑性ポリエステルFを構成する熱可塑性ポリエステルポリオールの融点が、55~65℃である、[1]に記載のウレタン系接着剤組成物。
[3]
上記熱可塑性ポリエステルFにおいて、上記イソシアネート基が結合する脂肪族炭化水素基が、脂肪族ジイソシアネートに由来する、[1]又は[2]に記載のウレタン系接着剤組成物。
[4]
上記熱可塑性ポリエステルFの含有量fが、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、3~8質量部である、[1]~[3]のいずれかに記載のウレタン系接着剤組成物。
[5]
上記変性体Eが、ヘキサメチレンジイソシアネートのヴュレット体及び/又はヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体を含む、[1]~[4]のいずれかに記載のウレタン系接着剤組成物。
[6]
上記白色充填剤Cが、炭酸カルシウムを含む、[1]~[5]のいずれかに記載のウレタン系接着剤組成物。
[7]
上記可塑剤Dが、フタル酸エステル及び/又はアジピン酸エステルを含む、[1]~[6]のいずれかに記載のウレタン系接着剤組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明のウレタン系接着剤組成物は、製造時の熱安定性、使用時の作業性、安定性、得られる硬化物の物性、接着性が優れる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下詳細に説明する。
本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、特に断りのない限り、成分の含有量は2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、製造時の熱安定性、使用時の作業性、使用時の安定性、得られる硬化物の物性、接着性のうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。
【0010】
[ウレタン系接着剤組成物]
本発明のウレタン系接着剤組成物(本発明の接着剤組成物)は、ウレタンプレポリマーと、ジブチルフタレート吸油量が30~40ml/100gであるカーボンブラックAと、ジブチルフタレート吸油量が98~108ml/100gであるカーボンブラックBと、白色充填剤Cと、可塑剤Dと、脂肪族ジイソシアネートの変性体Eと、イソシアネート基が結合する脂肪族炭化水素基を複数有する熱可塑性ポリエステルFと、触媒と、を含有し、
下記(1)~(6)を全て満たす、ウレタン系接着剤組成物である。ただし、上記変性体Eはエステル結合を有さない。
(1)25≦a≦35
(2)55≦b≦75
(3)197≦a+3b≦251
(4)30≦c≦35
(5)35≦d≦45
(6)2.5≦e≦3.7
上記(1)~(6)において、aはカーボンブラックAの含有量を表し、bはカーボンブラックBの含有量を表し、cは白色充填剤Cの含有量を表し、dは可塑剤Dの含有量を表し、eは変性体Eの含有量を表す。なお、上記aは、ウレタンプレポリマー100質量部に対する量(単位は質量部)である。b、c、d、eについても同様である。
以下、本発明の接着剤組成物に含有される各成分について詳述する。
【0011】
〔ウレタンプレポリマー〕
本発明の接着剤組成物に含有されるウレタンプレポリマーは、イソシアネート基を有するウレタンプレポリマーである。
ただし、本発明において、ウレタンプレポリマーは、後述する熱可塑性ポリエステルFを含まない。また、本発明において、ウレタンプレポリマーは、後述する変性体Eを含まない。
ウレタンプレポリマーはイソシアネート基を末端に有することが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0012】
ウレタンプレポリマーとしては例えば、ポリイソシアネートと1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)とを、活性水素化合物が有する活性水素含有基に対してポリイソシアネートが有するイソシアネート基が過剰になるように反応させたものが挙げられる。
・イソシアネート基含有量
ウレタンプレポリマーのイソシアネート基含有量は、ウレタンプレポリマー全量中の0.5~5質量%であることが好ましい。
【0013】
・ポリイソシアネート
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネートは、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ウレタンプレポリマーを製造する際に使用できるポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI;例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような、脂肪族ポリイソシアネート(脂環式ポリイソシアネートを含む)が挙げられる。
【0014】
これらのうち、ポリイソシアネートは、硬化性に優れる理由から、芳香族ポリイソシアネートを含むことが好ましく、MDIを含むことがより好ましい。
【0015】
・活性水素化合物
ウレタンプレポリマーを製造する際に使用できる1分子中に2個以上の活性水素含有基を有する化合物(活性水素化合物)は特に限定されない。活性水素含有基としては、例えば、水酸(OH)基、アミノ基、イミノ基が挙げられる。
活性水素化合物としては、例えば、1分子中に2個以上の水酸(OH)基を有するポリオール化合物等が好適に挙げられ、中でも、ポリオール化合物であることが好ましい。
【0016】
ウレタンプレポリマーを製造する際に使用できるポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2個以上有する化合物であれば特に限定されない。例えば、ポリエーテルポリオール;アクリルポリオール、ポリブタジエンジオール、水素添加されたポリブタジエンポリオールなどの炭素-炭素結合を主鎖骨格に有するポリマーポリオール;低分子多価アルコール類;これらの混合ポリオールが挙げられる。なかでも、ポリエーテルポリオールが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0017】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンジオール(ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレンジオール(ポリプロピレングリコール:PPG)、ポリオキシプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
【0018】
ポリエーテルポリオールは、ポリイソアネートとの相溶性に優れるという観点から、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールが好ましい。
ポリエーテルポリオールの重量平均分子量は、イソシアネートとの反応によって得られるウレタンプレポリマーの粘度が常温(23℃)において適度な流動性を有することができるという観点から、500~20,000であることが好ましい。本発明において上記重量平均分子量は、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン(THF))により得られたポリスチレン換算値である。
【0019】
ウレタンプレポリマーは、接着性により優れ、硬化性に優れるという観点から、ポリエーテルポリオールと芳香族ポリイソシアネートとを反応させてなるウレタンプレポリマーを含むことが好ましく、ポリオキシプロピレンジオール及びポリオキシプロピレントリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種とジフェニルメタンジイソシアネートとを反応させることによって得られるウレタンプレポリマーを含むことがより好ましい。
【0020】
ウレタンプレポリマーの製造方法は特に制限されない。例えば、活性水素化合物が有する活性水素含有基(例えばヒドロキシ基)1モルに対し、1.5~2.5モルのイソシアネート基が反応するようにポリイソシアネートを使用し、これらを混合して反応させることによってウレタンプレポリマーを製造することができる。
ウレタンプレポリマーを製造する際に、後述する可塑剤Dを使用してもよい。
【0021】
〔カーボンブラックA〕
本発明において、カーボンブラックAは、ジブチルフタレート吸油量(DBP吸油量)が30~40ml/100gであるカーボンブラックである。
本発明の接着剤組成物はカーボンブラックAを含有することによって、製造時の熱安定性、得られる硬化物の物性(例えば、せん断強度保持率)、接着性が優れる。
【0022】
・カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量の測定方法
本発明において、カーボンブラックのジブチルフタレート吸油量は、JIS K 6217-4:2008「ゴム用カーボンブラック-基本特性-第4部:オイル吸収量の求め方」に準じて測定された。
【0023】
・カーボンブラックAの好適例
カーボンブラックAとしては、例えば、DBP吸油量が30~40ml/100gに該当する、FT、MT級カーボンブラックが挙げられる。
【0024】
〔カーボンブラックB〕
本発明において、カーボンブラックBは、ジブチルフタレート吸油量(DBP吸油量)が98~108ml/100gであるカーボンブラックである。
本発明の接着剤組成物はカーボンブラックBを含有することによって、使用時の安定性(例えば、粘度、三角ビード保持性)、使用時の安定性(例えば定流量ポンプの発熱性が低い)、得られる硬化物の物性(例えば、引張弾性率、破断時伸び、せん断強度保持率)が優れる。
【0025】
カーボンブラックBのジブチルフタレート吸油量の測定方法は上記と同様である。
【0026】
・カーボンブラックBの好適例
カーボンブラックBとしては、例えば、DBP吸油量が98~108ml/100gに該当する、ISAF,HAF,HAF-LS級カーボンブラックが挙げられる。
【0027】
〔白色充填剤C〕
本発明の接着剤組成物は、白色充填剤Cを含有する。
本発明の接着剤組成物は白色充填剤Cを含有することによって、使用時の作業性(例えば、深部硬化性)、得られる硬化物の物性(例えば、破断時伸び)が優れる。
【0028】
・白色充填剤Cの好適例
本発明において、白色充填剤Cは特に制限されない。例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカが挙げられる。
白色充填剤Cは、本発明の効果がより優れるという観点から、炭酸カルシウムを含むことが好ましく、重質炭酸カルシウムを含むことがより好ましい。
【0029】
・重質炭酸カルシウム
ここで、重質炭酸カルシウムとは、天然のチョーク(白亜)、石灰石、大理石などを機械的に粉砕又は加工して得られるものである。
【0030】
・表面処理
白色充填剤Cは、例えば脂肪酸エステル等の表面処理剤を用いて表面処理されたものであってもよい。また、白色充填剤Cは、表面処理がされていない未処理のものであってもよい。
白色充填剤Cは、本発明の効果がより優れるという観点から、表面処理されていない炭酸カルシウムを含むことが好ましい。
【0031】
・白色充填剤Cの50%積算粒子径
白色充填剤Cの50%積算粒子径は、本発明の効果がより優れるという観点から、1~10μmが好ましい。本発明において、白色充填剤Cの50%積算粒子径は、JIS M 8511に準じて測定された。
【0032】
〔可塑剤D〕
本発明の接着剤組成物に含有される可塑剤Dは、ウレタンプレポリマーを可塑化又は軟化させることができ、ウレタンプレポリマーに対して相溶性があり反応性を有さない化合物であれば特に制限されない。
本発明の接着剤組成物は可塑剤Dを含有することによって、製造時の熱安定性、使用時の作業性、安定性、得られる硬化物の物性が優れる。
【0033】
可塑剤Dとしては、例えば、フタル酸エステル;アジピン酸エステル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル等が挙げられる。
【0034】
・可塑剤Dの好適例
可塑剤Dは、本発明の効果がより優れるという観点から、フタル酸エステル及び/又はアジピン酸エステルを含むことが好ましく、フタル酸ジエステル及び/又はアジピン酸ジエステルを含むことがより好ましく、フタル酸ジエステル及びアジピン酸ジエステルを含むことが更に好ましい。
【0035】
フタル酸ジエステルとしては、例えば、ジイソノニルフタレート(DINP)のようなフタル酸ジアルキルエステルが挙げられる。
アジピン酸ジエステルとしては、例えば、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソノニル(DINA)のようなアジピン酸ジアルキルエステルが挙げられる。
【0036】
可塑剤Dがフタル酸エステル及び/又はアジピン酸エステルを含む場合、フタル酸エステル及び/又はアジピン酸エステルの含有量(フタル酸エステル及びアジピン酸エステルを併用する場合はこれらの合計含有量)は、本発明の効果がより優れるという観点から、可塑剤D全量中の80~100質量%であることが好ましく、90~100質量%がより好ましい。
【0037】
可塑剤Dは、上述したウレタンプレポリマーを製造する際に使用されてもよく、この場合、ウレタンプレポリマーは可塑剤Dとの混合物であってもよい。
また、可塑剤Dを、上記のとおり製造されたウレタンプレポリマー(上記ウレタンプレポリマーが可塑剤Dの一部との混合物であってもよい。)に後添加して使用してもよい。
可塑剤Dの一部を後述する触媒に添加して、触媒を、触媒と可塑剤との混合物として使用してもよい。
【0038】
〔変性体E〕
本発明の接着剤組成物に含有される変性体Eは、脂肪族ジイソシアネートによって構成される変性体である。
ただし、本発明において、変性体Eはエステル結合(-C-COO-C-)を有さない。また、上述のウレタンプレポリマーは、変性体Eを含まない。
本発明の接着剤組成物は変性体Eを含有することによって、製造時の熱安定性、使用時の作業性、安定性、得られる硬化物の物性、接着性が優れる。
【0039】
・イソシアネート基
変性体Eは、本発明の効果がより優れるという観点から、脂肪族ジイソシアネートに由来するイソシアネート基を有することが好ましく、上記イソシアネート基を1分子当たり複数有することがより好ましく、上記イソシアネート基を1分子当たり3~6個有することが更に好ましい。
【0040】
1分子の変性体Eを構成する脂肪族ジイソシアネートが2分子以上である場合、上記脂肪族ジイソシアネートは、同じであっても、異なる化合物の組合わせであってもよい。上記3個の脂肪族ジイソシアネートは、同じであることが好ましい態様の1つとして挙げられる。
変性体Eは、本発明の効果がより優れるという観点から、脂肪族ジイソシアネートの3量体を含むことが好ましい。
【0041】
・具体例
変性体Eとしては、例えば、3官能以上のポリオールと脂肪族ジイソシアネートとの反応物、脂肪族ジイソシアネートのアロファネート体、脂肪族ジイソシアネートのアロファネート体に由来する脂肪族ジイソシアネートの3量体、脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体(脂肪族ジイソシアネートの3量体)、脂肪族ジイソシアネートのヴュレット体(脂肪族ジイソシアネートの3量体)が挙げられる。
変性体Eは、本発明の効果がより優れるという観点から、3官能以上のポリオールと脂肪族ジイソシアネートとの反応物、脂肪族ジイソシアネートのアロファネート体に由来する脂肪族ジイソシアネートの3量体、脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体(ヌレート体)、及び、脂肪族ジイソシアネートのヴュレット体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、
脂肪族ジイソシアネートのイソシアヌレート体(ヌレート体)、及び/又は、脂肪族ジイソシアネートのヴュレット体を含むことがより好ましく、
HDIのイソシアヌレート体及び/又はHDIのヴュレット体を含むことが更に好ましく、
HDIのヴュレット体を含むことが特に好ましい。
【0042】
変性体Eを構成し得る脂肪族ジイソシアネートは、1分子中に2個のイソシアネート基を有する脂肪族炭化水素化合物であれば特に制限されない。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような、脂肪族ジイソシアネート(脂環式を含む。)が挙げられる。
なかでも、変性体Eを構成し得る脂肪族ジイソシアネートは、本発明の効果がより優れるという観点から、直鎖状の脂肪族ジイソシアネートであることが好ましく、HDIがより好ましい。
【0043】
変性体Eは、本発明の効果がより優れるという観点から、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)を変性した3官能(イソシアネート基を3個有する)の化合物(EE)を含むことが好ましい。
【0044】
ヘキサメチレンジイソシアネートを変性した3官能の化合物(EE)としては、例えば、トリメチロールプロパン(TMP)、グリセリンのような3官能ポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応物;
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(ヌレート体);
ヘキサメチレンジイソシアネートのヴュレット体が挙げられる。
【0045】
・・3官能ポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応物
3官能ポリオールとヘキサメチレンジイソシアネートとの反応物としては、例えば、TMPとHDIとの反応物(例えば下記式(5)で表される化合物)、グリセリンとHDIとの反応物(例えば下記式(6)で表される化合物)が挙げられる。
【0046】
【0047】
【0048】
・・ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体に由来するHDIの3量体
ヘキサメチレンジイソシアネートのアロファネート体に由来するHDIの3量体は特に制限されない。
【0049】
・・ヘキサメチレンジイソシアネートのヴュレット体
ヘキサメチレンジイソシアネートのヴュレット体としては例えば、下記式(7)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
【0050】
・・ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体(ヌレート体)としては、例えば、下記式(8)で表される化合物が挙げられる。
【化4】
【0051】
〔熱可塑性ポリエステルF〕
本発明の接着剤組成物に含有される熱可塑性ポリエステルFは、イソシアネート基が結合する脂肪族炭化水素基を複数有し、主鎖骨格が熱可塑性ポリエステルである、熱可塑性のポリマーである。
本発明において、熱可塑性ポリエステルFは、上述したウレタンプレポリマーに含まれない。また、熱可塑性ポリエステルFは、上述した変性体Eに含まれない。
本発明の接着剤組成物は熱可塑性ポリエステルFを含有し、本発明の接着剤組成物を被着体に適用した後、熱可塑性ポリエステルFが固化することで本発明の接着剤組成物の凝集力が上がるので、接着剤層における初期強度が早く発現し、被着体を仮止めすることができる。
また、本発明の接着剤組成物は熱可塑性ポリエステルFを含有しても、本発明の効果は熱可塑性ポリエステルFによって阻害されない。
【0052】
・イソシアネート基が結合する脂肪族炭化水素基
本発明において、熱可塑性ポリエステルFは、イソシアネート基が結合する脂肪族炭化水素基を複数有する。
イソシアネート基が結合する脂肪族炭化水素基は、(NCO)n-R-と表すことができ、上記Rはn+1価の脂肪族炭化水素基を表し、nは1以上である。
n+1価の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状、環状、これらの組合せのいずれでもよい。n+1価の脂肪族炭化水素基は、本発明の効果がより優れ、接着剤層の初期強度が早く発現するという観点から、直鎖状であることが好ましく、炭素数4~8の直鎖状の脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
(NCO)n-R-においてnは、上記n+1価の脂肪族炭化水素基について述べた観点と同様の観点から、1であることが好ましい。
熱可塑性ポリエステルFは、上記n+1価の脂肪族炭化水素基について述べた観点と同様の観点から、イソシアネート基が結合する脂肪族炭化水素基を1分子当たり、2個有することが好ましい。
【0053】
熱可塑性ポリエステルFにおいて、イソシアネート基が結合する脂肪族炭化水素基は、本発明の効果がより優れ、接着剤層の初期強度が早く発現するという観点から、脂肪族ジイソシアネートに由来することが好ましい。
熱可塑性ポリエステルFを構成することができる脂肪族ジイソシアネートは、2個のイソシアネート基が脂肪族炭化水素基に結合する化合物であれば特に制限されない。例えば、上述のウレタンプレポリマーを製造する際に使用できる脂肪族ポリイソシアネートが挙げられる。なかでも、本発明の効果がより優れ、接着剤層の初期強度が早く発現するという観点から、ヘキサメチレンジイソシアネートを含むことが好ましい。
【0054】
・主鎖骨格としての熱可塑性ポリエステル
熱可塑性ポリエステルFは、主鎖骨格として熱可塑性ポリエステルを有する。
上記主鎖骨格としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、1,1,1-トリメチロールプロパンのような低分子ポリオールと、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸のような低分子ポリカルボン酸との縮合重合体が挙げられる。
上記主鎖骨格は、本発明の効果がより優れ、接着剤層の初期強度が早く発現するという観点から、ヘキサンジオールとセバシン酸により形成されるポリエステルを有することが好ましい。
【0055】
熱可塑性ポリエステルFにおいて、主鎖骨格は、本発明の効果がより優れ、接着剤層の初期強度が早く発現するという観点から、熱可塑性ポリエステルポリオールに由来することが好ましく、熱可塑性ポリエステルジオールに由来することがより好ましい。
【0056】
・熱可塑性ポリエステルポリオールの融点
熱可塑性ポリエステルFを構成し得る熱可塑性ポリエステルポリオールの融点は、本発明の効果がより優れ、接着剤層の初期強度が早く発現するという観点から、55~65℃であることが好ましく、56~60℃がより好ましい。上記融点はDSCで昇温速度10℃/minの条件で測定することができる。
本発明において、上記の熱可塑性ポリエステルポリオールの融点を、熱可塑性ポリエステルFの融点として取り扱うことができる。
【0057】
・熱可塑性ポリエステルポリオールの重量平均分子量
熱可塑性ポリエステルFを構成し得る熱可塑性ポリエステルポリオールの重量平均分子量(Mw)は、本発明の効果がより優れ、溶融温度が高すぎず初期強度が早く発現するという観点から、1700~2300であることが好ましい。熱可塑性ポリエステルFを構成し得る熱可塑性ポリエステルポリオールのMwは、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算値とできる。
【0058】
・結合
熱可塑性ポリエステルFにおいて、イソシアネート基が結合する脂肪族炭化水素基が、主鎖骨格の、末端、側鎖のいずれに結合するかは特に制限されない。
また、イソシアネート基が結合する脂肪族炭化水素基は、上記主鎖骨格の末端に、直接又は連結基を介して結合することができ、末端に結合することが好ましい。上記連結基は特に制限されない。例えば、ウレタン結合、ウレア結合が挙げられる。
【0059】
・好適例
熱可塑性ポリエステルFは、本発明の効果がより優れ、接着剤層の初期強度が早く発現するという観点から、直鎖状の熱可塑性ポリエステルの両末端にそれぞれ、イソシアネート基を1つ有する脂肪族炭化水素基が結合するポリマーを含むことが好ましい。
【0060】
・調製方法
熱可塑性ポリエステルFの調製方法は特に制限されない。例えば、熱可塑性ポリエステルポリオールと脂肪族ジイソシアネートとを、脂肪族ジイソシアネートが有するイソシアネート基が、熱可塑性ポリエステルポリオールが有するヒドロキシ基に対してモル比で1.9~2.1になる量で、75~85℃の条件下で反応させることによって得ることができる。
【0061】
・熱可塑性ポリエステルFの含有量f
熱可塑性ポリエステルFの含有量fは、本発明の効果がより優れ、接着剤層の初期強度が早く発現するという観点から、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、3~8質量部(3≦f≦8)であることが好ましい。
【0062】
〔触媒〕
本発明の接着剤組成物に含有される触媒は、イソシアネート基の反応を促進できる化合物であれば特に制限されない。例えば、金属触媒、アミン触媒が挙げられる。
上記触媒の含有量(触媒が2種以上の組み合わせである場合、これらの合計含有量)は、本発明の効果がより優れ、湿気硬化性に優れるという点で、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.01~5.0質量部が好ましい。
【0063】
・金属触媒
本発明の接着剤組成物に含有されうる金属触媒はイソシアネート基の反応を促進できる金属化合物であれば特に制限されない。例えば、有機金属触媒が挙げられる。
金属触媒が有する金属としては、例えば、錫、ビスマス、チタンが挙げられる。
【0064】
有機金属触媒が有する有機基は特に制限されない。有機金属触媒としては、金属のカルボン酸塩、アルコキシド、錯体が挙げられる。有機金属触媒は、例えば、カルボン酸、アルコキシ基及び配位子からなる群から選ばれる少なくとも1種を有することができる。カルボン酸、アルコキシ基及び配位子は特に制限されない。
【0065】
・・有機錫触媒
金属触媒は有機錫触媒を含むことが好ましい。
【0066】
有機錫触媒としては、例えば、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレエート、第一錫オクテート、ジブチル錫ジアセチルアセトネート、ジオクチル錫マレエートのような4価の錫のカルボン酸塩;2価の錫の有機化合物;1,3-ジアセトキシ-1,1,3,3-テトラブチル-ジスタノキサンとエチルシリケートとの反応物等が挙げられる。
【0067】
・・有機チタン触媒
有機チタン触媒としては、例えば、テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラオクチルチタネート、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)が挙げられる。
【0068】
・金属触媒の含有量
金属触媒の含有量は、本発明の効果がより優れるという点で、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.0003~0.04質量部が好ましく、0.0004~0.03質量部がより好ましく、0.005~0.02質量部が更に好ましい。
【0069】
・アミン触媒
本発明の接着剤組成物に含有されうるアミン触媒は、窒素原子を有し、イソシアネート基の反応を促進する化合物である。
【0070】
・・第3級アミノ基を有するアミン触媒
アミン触媒は、第3級アミノ基(1個の窒素原子が3個の炭素原子と単結合する、又は、1つの窒素原子が1つの炭素原子と単結合し別の炭素原子と二重結合する)を有することが好ましい。
第3級アミノ基を有するアミン触媒(第3級アミン)としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリアミルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルアミルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルラウリルアミン、トリアリルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、ピリジン、メチルピリジン(ピコリン)、ジメチルアミノメチルフェノール、トリスジメチルアミノメチルフェノール、1,8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン、1,1,4-ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン、トリエタノールアミン、N,N′-ジメチルピペラジン、テトラメチルブタンジアミンのような第3級アミン(エーテル結合を有する化合物を除く);エーテル結合を有する第3級アミンが挙げられる。
【0071】
エーテル結合を有する第3級アミンとしては、例えば、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルのような鎖状エーテル構造を有する第3級アミン(鎖状エーテル構造を有する第3級アミンは環構造を有さない);N-メチルモルフォリン、ジメチルアミノエチルモルフォリンのようなモノモルフォリン化合物;複数のモルフォリン環がエーテル結合を介して結合する化合物が挙げられる。
複数のモルフォリン環がエーテル結合を介して結合する化合物としては、例えば、ビス(モルフォリノアルキル)エーテル類が挙げられる。ビス(モルフォリノアルキル)エーテル類において、各モルフォリン環が有する窒素原子と、エーテル結合を構成する酸素原子(モルフォリン環が有する酸素原子を除く)との間のアルキレン基は特に制限されない。例えば、エチレン基が挙げられる。
【0072】
・・ビス(モルフォリノアルキル)エーテル構造
上記のビス(モルフォリノアルキル)エーテル類は、本発明の効果がより優れ、湿気硬化性に優れるという点で、ビス(モルフォリノアルキル)エーテル構造を含むことが好ましい。
ビス(モルフォリノアルキル)エーテル構造において、モルフォリン環が有する水素原子は置換基で置換されていてもよい。置換基は特に制限されない。例えば、アルキル基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基が挙げられる。
【0073】
ビス(モルフォリノアルキル)エーテル類としては、例えば、下記式(1)で表される化合物が挙げられる。
【化5】
上記式(1)中、R
1、R
2はそれぞれ独立にアルキル基であり、m、nはそれぞれ独立に0、1又は2である。
ビス(モルフォリノアルキル)エーテル類としては、具体的には例えば、ビス(2-モルフォリノエチル)エーテル(下記構造)、ビス(メチルモルフォリノエチル)エーテル、ビス(ジメチルモルフォリノエチル)エーテルが挙げられる。
【化6】
【0074】
触媒は、本発明の効果がより優れ、湿気硬化性に優れるという観点から、4価の錫のカルボン酸塩と、鎖状エーテル構造を有する第3級アミン(環構造を有さない)と、モノモルフォリン化合物と、複数のモルフォリン環がエーテル結合を介して結合する化合物とを含むことが好ましく、
ジオクチル錫ジラウレートと、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテルと、ジメチルアミノエチルモルフォリンと、ビス(2-モルフォリノエチル)エーテルとを含むことがより好ましい。
【0075】
・アミン触媒の含有量
アミン触媒の含有量(アミン触媒が2種以上である場合、各アミン触媒の含有量)は、本発明の効果がより優れ、湿気硬化性に優れるという点で、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.01~1.0質量部が好ましく、0.02~0.4質量部がより好ましく、0.08~0.2質量部が更に好ましい。
アミン触媒が2種以上である場合、2種以上のアミン触媒の合計含有量は、本発明の効果がより優れ、湿気硬化性に優れるという点で、ウレタンプレポリマー100質量部に対して、0.04~5.0質量部が好ましい。
【0076】
〔(1)〕
本発明の接着剤組成物は、下記(1)を満たす。
(1)25≦a≦35
上記(1)において、aは、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対する上記カーボンブラックAの含有量を表す。
なお、本明細書において、aを含有量aと表す場合がある。b~eについても同様とする。また、本発明において、a~eの単位は質量部である。
含有量aは、本発明の効果がより優れるという観点から、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、28~33質量部が好ましい。
【0077】
〔(2)〕
本発明の接着剤組成物は、下記(2)を満たす。
(2)55≦b≦75
上記(2)において、bは、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対する上記カーボンブラックBの含有量を表す。
含有量bは、本発明の効果がより優れるという観点から、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、59~70質量部が好ましく、60~65質量部がより好ましい。
【0078】
〔(3)〕
本発明の接着剤組成物は、下記(3)を満たす。
(3)197≦a+3b≦251
上記(3)において、aは含有量aを表し、bは含有量bを表す。
a+3bは、本発明の効果がより優れるという観点から、205~240が好ましく、210~229が好ましい。
【0079】
〔(4)〕
本発明の接着剤組成物は、下記(4)を満たす。
(4)30≦c≦35
上記(4)において、cは、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対する上記白色充填剤Cの含有量を表す。
【0080】
〔(5)〕
本発明の接着剤組成物は、下記(5)を満たす。
(5)35≦d≦45
上記(5)において、dは、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対する上記可塑剤Dの含有量を表す。
【0081】
〔(6)〕
本発明の接着剤組成物は、下記(6)を満たす。
(6)2.5≦e≦3.7
上記(6)において、eは、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対する上記変性体Eの含有量を表す。
【0082】
(添加剤)
本発明の接着剤組成物は、必要に応じて本発明の目的を損なわない範囲で、添加剤を更に含有することができる。添加剤としては、例えば、カーボンブラックA、B及び白色充填剤C以外の充填剤、ウレタンプレポリマー、変性体E及び熱可塑性ポリエステルF以外のイソシアネート化合物、老化防止剤、酸化防止剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤、分散剤、脱水剤、ジエチルマロネートのような熱安定剤が挙げられる。
【0083】
(製造方法)
本発明の接着剤組成物はその製造方法について特に限定されない。例えば、ウレタンプレポリマーとカーボンブラックA,Bと白色充填剤Cと可塑剤Dと変性体Eと熱可塑性ポリエステルFと触媒と必要に応じて使用することができる添加剤とを、室温下又は加熱下(例えば40~60℃)の条件下で、ロール、ニーダー、押出し機、万能攪拌機、連続混合機(コンティニュアスミキサー)等を用いて撹拌し混合することによって、本発明の接着剤組成物を製造することができる。
【0084】
[1液]
本発明の接着剤組成物は、1液(1液型)の組成物である。
【0085】
・使用方法(加温)
本発明の接着剤組成物を被着体に塗布する際、本発明の接着剤組成物を加温することが好ましい。本発明の接着剤組成物を加温することによって本発明の接着剤組成物の粘度が作業に適正な範囲となり、塗布しやすくすることができる。
本発明の接着剤組成物を被着体に塗布する際、本発明の接着剤組成物を、例えば、熱可塑性ポリエステルFの融点(又は熱可塑性ポリエステルFを構成する熱可塑性ポリエステルポリオールの融点)以上の温度で加温することが好ましい。また、上記の加温温度は、本発明の効果(特に接着剤組成物の使用時の安定性)がより優れるという観点から、70℃以下であることが好ましい。
【0086】
本発明の接着剤組成物を被着体に塗布する際、本発明の接着剤組成物を加温する方法は特に制限されない。例えば、従来公知の方法が挙げられる。
また、本発明の接着剤組成物を被着体に塗布する際、本発明の接着剤組成物を送液するために使用されるポンプは特に制限されない。例えば、外歯車と内歯車がかみ合って回転する内接歯車方式のポンプ(具体的には例えば、一般的にトロコイドポンプと称されるポンプ)が挙げられる。ポンプの市販品として、例えば、トロコイド(登録商標)ポンプ(日本オイルポンプ社製)が挙げられる。
【0087】
・被着体
本発明の接着剤組成物を塗布することができる被着体は特に制限されない。例えば、金属(塗板を含む。)、プラスチック、ゴム、ガラスが挙げられる。
塗板は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。塗板に使用される塗装は特に制限されない。
本発明の接着剤組成物を被着体に塗布する方法は特に制限されない。例えば、従来公知の方法が挙げられる。
被着体に対してプライマーを使用せずに本発明の接着剤組成物を被着体に塗布することができる。プライマーを使用しない被着体としては例えば、塗板が挙げられる。
【0088】
本発明の接着剤組成物を自動車のウィンドウガラスとボディー(塗板)とを接着させるダイレクトグレージング方式に用いる場合、ボディーにはプライマーを使用せず、ボディーに直接本発明の接着剤組成物を塗布することができる。ガラス側にはプライマーを使用してもよい。被着体に使用されるプライマーは特に制限されない。
【0089】
・使用方法
本発明の接着剤組成物の使用方法としては、例えば、加温した本発明の接着剤組成物を室温(23℃)条件下で被着体に塗布し、別の被着体を貼り合わせる方法が挙げられる。別の被着体を貼り合わせた後、加温した本発明の接着剤組成物が冷めることによって本発明の接着剤組成物は固化して接着剤層の初期強度を発現し、被着体を仮止めすることができる。その後、本発明の接着剤組成物は更に湿気硬化することによってより接着力が向上し被着体同士を優れた接着力で接着させることができる。
【0090】
[湿気硬化タイプ]
本発明の接着剤組成物は、湿気硬化タイプであり、湿気(例えば、大気中の湿気によって)硬化することができる。
本発明の接着剤組成物は、例えば、-20~+50℃の条件下で硬化することができる。なお、本発明の接着剤組成物は、湿気硬化できるので、被着体に塗布した後、本発明の接着剤組成物を加熱する必要はない。
【実施例】
【0091】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明は実施例に限定されない。
【0092】
(ウレタンプレポリマー1の調製*)
ポリオキシプロピレンジオール(重量平均分子量2000。エクセノール2020、AGC社製)500g、ポリオキシプロピレントリオール(重量平均分子量5000。エクセノール5030、AGC社製)750g、および4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(分子量250)214gを混合し(このときのNCO/OH(モル比)=1.8)、更にアジピン酸ジイソノニル(DINA)160gを加えて、窒素気流中、80℃で24時間撹拌を行い、反応させて、イソシアネート基を1.95質量%含有するウレタンプレポリマー1を合成し、上記ウレタンプレポリマー1と可塑剤としてのアジピン酸ジイソノニルとの混合物を得た。
上記混合物において、アジピン酸ジイソノニルの含有量は、割合として、正味のウレタンプレポリマー1の100質量部に対して、10.9質量部である。
【0093】
ウレタンプレポリマーとしてウレタンプレポリマー1を使用した場合、ウレタンプレポリマー1の調製に使用されたアジピン酸ジイソノニルは、第1表中の「可塑剤D1」欄に組み込まれ、「可塑剤(D)合計量」中の10.9質量部はウレタンプレポリマー1に伴うアジピン酸ジイソノニルであり、残りは後添加等で加えられた可塑剤Dである。
【0094】
実施例27で使用されたウレタンプレポリマー1については、アジピン酸ジイソノニル(DINA)160gの代わりにフタル酸ジイソノニル(DINP)160gを使用したほかは上記の(ウレタンプレポリマー1の調製*)と同様にウレタンプレポリマーを調製して、イソシアネート基を1.95質量%含有するウレタンプレポリマー1を合成し、上記ウレタンプレポリマー1と可塑剤としてのフタル酸ジイソノニルとの混合物を得た。
上記混合物において、フタル酸ジイソノニルの含有量は、割合として、正味のウレタンプレポリマー1の100質量部に対して、10.9質量部である。
【0095】
<接着剤組成物の製造>
下記第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを連続混合機(ダルトン社製コンテニュアスニーダー連続混合機)で混合し、組成物を製造した。
なお下記の各表において、DBPはジブチルフタレート吸油量であり、その単位はml/100g(cm3/100g)である。
また、各表においてウレタンプレポリマーの量はウレタンプレポリマーの正味の量である。
【0096】
[評価]
上記のとおり製造された各接着剤組成物について以下の評価を行った。結果を第1表に示す。
【0097】
〔製造時の熱安定性:混合時発熱〕
上述のとおり、第1表の各成分を同表に示す組成(質量部)で用いて、これらを上記の連続混合機で混合速度=4L/minで混合した際の混合物の温度を測定した。
・製造時の熱安定性の評価基準
上記のとおり測定された温度が100℃以下であった場合、接着剤組成物の製造時の熱安定性が優れると評価して、これを「○」と表示した。
一方、上記のとおり測定された温度が100℃を超えた場合、接着剤組成物の製造時の熱安定性が悪いと評価して、これを「×」と表示した。
上記結果を「混合時発熱」欄に示す。
【0098】
〔使用時の作業性〕
・使用時の作業性の評価基準
本発明において、後述する粘度が55~85であり、かつ、三角ビード保持性、深部硬化性、及び、硬化時発泡性の評価結果が全て○であった場合、接着剤組成物の使用時の作業性が優れると評価した。
一方、粘度が55~85以外である場合、又は、三角ビード保持性、深部硬化性、硬化時発泡性の評価結果のいずれかが×であった場合、接着剤組成物の使用時の作業性が悪いと評価した。
【0099】
(粘度)
上記のとおり製造した各接着剤組成物のSOD粘度(初期粘度)を、JASO M338-89に準拠して、60℃の条件下で圧力粘度計(ASTM D 1092)を用いて測定した。
上記の測定結果を「粘度」欄に示す。
【0100】
・粘度の評価基準
上記のとおり測定された粘度が55~85であった場合、得られた組成物の粘度が適正な範囲であると評価した。
一方、上記のとおり測定された粘度が55未満又は85を超えた場合、得られた組成物の粘度が適正な範囲ではないと評価した。
【0101】
〔三角ビード保持性〕
上記のとおり製造した各接着剤組成物を60℃に加温して、ガラス板の上に、底辺6mm、高さ10mmの直角三角形ビードで帯状(長さ15cm)に押し出した。その後、上記の帯状の組成物の高さ10mmの辺が属する面が水平でありかつ帯状の組成物の上面に位置するように、ガラス板を垂直(90°の角度)に立て、ガラス板を固定し、ガラス板を垂直に保持したまま、20℃、65%相対湿度の条件下で30分放置した。
ガラス板を垂直にした後から30分の間に、各接着剤組成物の直角三角形の頂点が、下へ垂れ下がった距離h(mm)を測定し、この値で三角ビード保持性を評価した。
【0102】
・三角ビード保持性の評価基準
上記のとおり測定された距離hが2mm以下であった場合、三角ビード保持性が優れると評価し、これを「○」と表示した。
一方、距離hが2mmを超えた場合、三角ビード保持性が悪いと評価し、これを「×」と表示した。
【0103】
〔深部硬化性〕
ポリエチレン製の枠(枠内の大きさは50mm×50mm×12.5mm)を準備し、この枠の中に気泡が入り込まないように枠内の高さまで上記のとおり製造された各接着剤組成物を60℃に加温して流し込み、上端の大気に触れている接着剤組成物の表面を平らにならして試験体とした。この試験体を23℃、50%湿度条件下に60時間置いた。
60時間経過後の試験体の中央部を、上記上端の大気に触れている表面(空気に面した面)に対して垂直に切断し、未硬化の接着剤組成物を除去して、得られた硬化物の断面を目視で観察した。
【0104】
・深部硬化性の評価基準
硬化物の断面全体が硬化していた場合、深部硬化性が優れると評価し、これを「○」と表示した。
一方、硬化物の断面に未硬化の部分があった場合、深部硬化性が悪いと評価し、これを「×」と表示した。
【0105】
〔硬化時発泡性〕
ガラス用プライマー(製品名:ハマタイトG(MS-90))を塗布したガラス板2枚のうち1枚に、上記のとおり製造され、60℃に加温された各接着剤組成物を、△8mm×12mmの△ビード、長さ15mmで塗布し、これに残りの1枚のガラス板を重ねて、接着剤組成物の厚さが3mmになるまで圧着し20℃、その後、65%RH下に3時間放置後40℃温水に72h浸漬し取り出し後に1時間乾燥した。これを試験体として接着界面や接着剤内部にエアー溜りがないかを確認した。エアー(発泡)が無かった場合、硬化時発泡性が良いと評価し、これを「〇」と表示した。一方、エアーがあった場合、硬化時発泡性が悪いと評価し、これを「×」と表示した。
【0106】
〔使用時の安定性:定流量ポンプ発熱性〕
上述のとおり製造された各接着剤組成物を定流量ポンプ(ヨコハマ技研社製トロコイド式ポンプ)で6時間運転(試験条件:配管圧力20MPa,回転数=1000回/分)した後の上記ポンプ表面の温度を測定した。
【0107】
・使用時の安定性の評価基準
上記のとおり測定された温度が75℃以下であった場合、接着剤組成物の使用時の安定性が優れると評価して、これを「○」と表示した。
一方、上記のとおり測定された温度が75℃を超えた場合、接着剤組成物の使用時の安定性が悪いと評価して、これを「×」と表示した。
上記結果を「定流量ポンプ発熱性」欄に示す。
【0108】
〔得られる硬化物の物性(初期及び老化後の物性)〕
本発明において、後述する引張弾性率が1.2MPa以上であり、破断時伸びが200%以上であり、かつ、老化後のせん断強度保持率が60%以上であった場合、接着剤組成物から得られる硬化物の物性が優れると評価した。
一方、引張弾性率が1.2MPa未満であった場合、破断時伸びが200%未満であった場合、及び、老化後のせん断強度保持率が60%未満であった場合のうちのいずれかに該当したときを、接着剤組成物から得られる硬化物の物性が悪いと評価した。
【0109】
<引張弾性率、破断時伸びの評価>
(引張弾性率、破断時伸び評価用のサンプルの作製)
上記のとおり製造された各接着剤組成物を20℃、65%RHの条件下で336時間硬化させ、得られた硬化物からダンベル状3号形でサンプルを切りだし、厚さ2mmのサンプルを作製した。
【0110】
(引張試験)
上記のとおり作製したサンプルを用いて、JIS K 6251に準じて、23℃の条件下において引張速度500mm/分で引張試験を行い、引張弾性率(単位:MPa)、切断時伸び(破断時伸び、単位%)を測定した。引張弾性率については応力10N、20Nの2点より引張弾性率を算出した。
【0111】
・引張弾性率
引張弾性率が1.2MPa以上であった場合、得られる硬化物の硬度が高い、つまり剛性が高く、好ましいと評価した。
一方、引張弾性率が1.2MPa未満であった場合、得られる硬化物の硬度が低いと評価した。
【0112】
・破断時伸び
破断時伸びが200%以上であった場合、得られる硬化物の伸びが優れると評価した。なお、第1表中、「破断時伸び」欄の「200<」は破断時伸びが200%以上であったことを示す。
一方、破断時伸びが200%未満であった場合、得られる硬化物の伸びが低いと評価した。
【0113】
<せん断強度保持率の評価>
(せん断強度保持率評価用のサンプルの作製)
上記のとおり製造された各接着剤組成物を60℃に加温し、ガラス(幅25mm×長手方向120mm×厚さ5mm。プライマー処理済み。プライマーは商品名MS-90、横浜ゴム社製)に塗布し、その上に、塗板(商品名O-1810、日本ペイント社製。プライマー無し。上記ガラスと同じ大きさ)を長手方向10mmで重ねて接着剤組成物の厚さを5mmとした。上記の積層体を20℃、65%RHの条件下で1週間硬化させて、せん断強度用の初期試験片を得た。
次に、上記初期試験片を、80℃の条件下に2週間置いた後、更に、振幅10%、10Hzの振動試験を1週間実施して、老化後試験片を得た。
【0114】
(せん断強度の測定)
上記初期試験片及び上記老化後試験片のせん断強度を、JIS K6850:1999(接着剤-剛性被着材の引張せん断接着強さ試験方法)に準じて23℃の条件下で測定し、初期せん断強度、老化後せん断強度をそれぞれ得た。
【0115】
(せん断強度保持率の評価基準)
上記の初期せん断強度、老化後せん断強度を下記式に当てはめ、せん断強度保持率(%)を算出した。
せん断強度保持率(%)=老化後せん断強度/初期せん断強度×100
上記せん断強度保持率が60%以上であった場合、老化(熱及び振動による老化)後の硬化物の強度が優れると評価した。
一方、上記せん断強度保持率が60%未満であった場合、老化後の硬化物の強度が悪いと評価した。
【0116】
〔接着性:耐熱接着性〕
(接着性評価用サンプルの作製)
被着材としてガラス(25mm×120mm×5mmプライマー処理済み、プライマーは商品名MS-90、横浜ゴム社製)を1枚準備した。上記各接着剤組成物を60℃に加温し、室温(23℃)下で上記ガラスに△8mm×12mm×長さ10cm塗布し、塗板(商品名O-1810、日本ペイント社製。プライマー無し)にも同様に接着剤を塗布して、上記ガラスと上記塗板とを接着剤組成物を介して重ね、上記接着剤層組成物の厚さが3mmになるまで圧着し、20℃、65%RH条件下で7日間硬化させた。接着剤が硬化したガラス及び塗板テストピースを100℃条件下で、4週間放置して耐熱接着試験片とした。
【0117】
(手剥離試験)
上記のとおり得られた耐熱接着試験片を用いてカッターナイフによる手剥離試験を実施した。
手剥離試験の結果、接着剤層の全体が凝集破壊した場合を、接着性(特に耐熱接着性)が優れると評価して、これを「○」と表示した。
一方、手剥離試験の結果、界面剥離が確認された場合、接着性が悪いと評価して、これを「×」と表示した。
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
第1表に示した各成分の詳細は以下のとおりである。
〔ウレタンプレポリマー〕
・ウレタンプレポリマー1:上記のとおり調製した各ウレタンプレポリマー1
【0124】
〔カーボンブラック〕
・カーボンブラック1:商品名旭サーマル、旭カーボン社製、DBP吸油量28ml/100g、FT級
なお、カーボンブラック1はカーボンブラックA,Bのいずれにも該当しない。後述するカーボンブラック2~4も同様である。
・カーボンブラックA:商品名CSX682、キャボットスペシャルティケミカル社製、DBP吸油量34ml/100g
・カーボンブラック2:商品名シーストTA、東海カーボン社製、DBP吸油量42ml/100g
【0125】
・カーボンブラック3:商品名HTC#S、日鉄カーボン社製、DBP吸油量72ml/100g
・カーボンブラックB:商品名ELFTEX460、キャボットスペシャルティケミカル社製、DBP吸油量102ml/100g
・カーボンブラック4:商品名ニテロン#300、新日化カーボン社製、DBP吸油量115ml/100g、ISAF級
【0126】
〔白色充填剤C〕
・白色充填剤C:重質炭酸カルシウム。50%積算粒子径8.5μm(スーパーS、丸尾カルシウム社製)表面未処理
【0127】
〔可塑剤D〕
・可塑剤D1:アジピン酸ジイソノニル(DINA)
・可塑剤D2:フタル酸ジイソノニル(DINP)
【0128】
〔変性体E〕
・変性体E1:上記式(7)で表されるHDIヴュレット体(D165N、三井武田ウレタン社製)
・変性体E2:上記式(8)で表されるHDIイソシアヌレート体(D170N、三井武田ウレタン社製)
【0129】
〔熱可塑性ポリエステルF〕
・熱可塑性ポリエステルF1:1,6-ヘキサンジオールとセバシン酸とによる熱可塑性ポリエステルの両末端に、イソシアネートヘキシル基が結合したポリエステル。
(熱可塑性ポリエステルF1の調製)
1,6-ヘキサンジオールとセバシン酸とによる熱可塑性ポリエステルジオール(商品名テスラック2461、昭和電工マテリアルズ社製。融点57-59℃、重量平均分子量2000)と、1,6-ヘキサンジイソシアネート(HDI)とを、HDIが有するイソシアネート基が、上記熱可塑性ポリエステルポリオールが有するヒドロキシ基に対してモル比で2.0になる量で使用し、これらを80℃の条件下で反応させて熱可塑性ポリエステルF1を製造した。
【0130】
・(比較)熱可塑性ポリエステルポリオール:1,6-ヘキサンジオールとセバシン酸とによる熱可塑性ポリエステルジオール。商品名 URIC SE-2606、伊藤製油社製。融点66-68℃、重量平均分子量2500
・(比較)脂肪族ジイソシアネート:1,6-ヘキサンジイソシアネート
【0131】
・触媒+可塑剤D3:以下の(9)~(12)の触媒と(13)可塑剤D3との混合物(合計3質量部)
(9)ジオクチル錫ジラウレート:ネオスタン810(日東化成)を0.01質量部
(10)ビス(2,2-モルフォリノエチル)エーテル:DMDEE(ハンツマン)を0.12質量部
(11)ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル:BL-19(エボニック)を0.05質量部
(12)ジメチルアミノエチルモルフォリン:X-DM(エボニック)を0.1質量部
(13)可塑剤D3:フタル酸ジイソノニル(DINP)を2.72質量部
【0132】
第1表に示す結果から明らかなように、少なくともaが所定の範囲より少ない比較例1,2は、接着性(耐熱接着性)が悪かった。
a+3bが所定の範囲を外れる比較例3~5は、使用時の作業性(粘度又は三角ビード保持性)が悪かった。
少なくともaが所定の範囲より多い比較例6~8は、製造時の熱安定性等が悪かった。
cが所定の範囲より少ない比較例9は、使用時の作業性(深部硬化性)が悪かった。
cが所定の範囲より多い比較例10は、得られる硬化物の物性(破断時伸び)、使用時の安定性が悪かった。
dが所定の範囲より少ない比較例11は、製造時の熱安定性、使用時の作業性(粘度、硬化時発泡性)が悪かった。
dが所定の範囲より多い比較例12は、使用時の作業性(三角ビード保持性)、接着性(耐熱接着性)が悪かった。
eが所定の範囲より少ない比較例13は、得られる硬化物の物性(引張弾性率)、接着性(耐熱接着性)が悪かった。
eが所定の範囲より多い比較例14は、使用時の作業性(硬化時発泡性)、得られる硬化物の物性(破断時伸び)が悪かった。
a、b、a+3bが所定の範囲を外れる比較例15は、製造時の熱安定性、使用時の作業性(粘度)、得られる硬化物の物性(破断時伸び、せん断強度保持率)が悪かった。
b、a+3bが所定の範囲を外れる比較例16,17は、使用時の作業性(三角ビード保持性)等が悪かった。
カーボンブラックAを含有せず、代わりにカーボンブラックAよりDBP吸油量が低いカーボンブラック1を含有する比較例18は、製造時の熱安定性、得られる硬化物の物性(破断時伸び)が悪かった。
カーボンブラックAを含有せず、代わりにカーボンブラックAよりDBP吸油量が少し大きいカーボンブラック2を含有する比較例19は、接着性(耐熱接着性)が悪かった。
カーボンブラックBを含有せず、代わりにカーボンブラックBよりDBP吸油量が少し小さいカーボンブラック3を含有する比較例20は、使用時の作業性(三角ビード保持性、硬化時発泡性)、得られる硬化物の物性(破断時伸び)が悪かった。
カーボンブラックBを含有せず、代わりにカーボンブラックBよりDBP吸油量が大きいカーボンブラック4を含有する比較例21は、使用時の作業性(粘度)が悪かった。
bが所定の範囲を外れ、a+3bが所定の範囲より大きい比較例22、a+3bが所定の範囲より大きい比較例23は、使用時の作業性(粘度)が悪かった。
a+3bが所定の範囲より小さい比較例24は、使用時の作業性(三角ビード保持性)が悪かった。
カーボンブラックB、熱可塑性ポリエステルFを含有しない比較例25は、使用時の作業性(粘度、三角ビード保持性)、得られる硬化物の物性(引張弾性率)が悪かった。
熱可塑性ポリエステルFを含有せず、代わりに熱可塑性ポリエステルポリオール、脂肪族ジイソシアネートを含有する比較例26は、使用時の作業性(硬化時発泡性)、得られる硬化物の物性(破断時伸び)が悪かった。
【0133】
これに対して、本発明のウレタン系接着剤組成物は、製造時の熱安定性、使用時の作業性、安定性、得られる硬化物の物性、接着性が優れた。