(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】流量制御装置、流量測定方法、及び、流量制御装置用プログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 7/06 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
G05D7/06 Z
(21)【出願番号】P 2021530504
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2020018785
(87)【国際公開番号】W WO2021005879
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2019126780
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】徳永 和弥
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-228950(JP,A)
【文献】特開2018-097759(JP,A)
【文献】特開2015-109022(JP,A)
【文献】特開2011-185635(JP,A)
【文献】国際公開第2019/107215(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 7/00 - 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メイン流路に設けられた流量制御バルブと、
前記流量制御バルブの上流側に設けられた第2圧力センサと、
少なくとも前記第2圧力センサで測定される第2圧力と、設定流量とに基づいて前記流量制御バルブを制御する流量制御器と、
前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐し、流体の供給対象と接続される第1分岐流路と、
前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐する第2分岐流路と、
前記第2分岐流路上に設けられた第3圧力センサと、
少なくとも前記第2圧力と前記第3圧力センサで測定される第3圧力に基づいて、前記流量制御バルブを通過する流体の流量を算出するバルブ流量算出部と、
前記第2圧力センサの上流側に設けられた流体抵
抗と、
前記流体抵
抗の上流側に設けられた圧力制御バルブと、
前記第2圧力が、設定圧力となるように前記圧力制御バルブを制御する圧力制御部と、
前記流体抵抗の上流側に設けられた第1圧力センサと、
前記第1圧力センサで測定される第1圧力、及び、前記第2圧力に基づいて、前記流体抵抗を流れる流体の流量を算出する抵抗流量算出部と、を備え、
前記流量制御器が、
少なくとも前記抵抗流量算出部で算出される抵抗流量、前記第2圧力、及び、前記流量制御バルブを通過する流体の流量との間の関係を示すマップを記憶するマップ記憶部と、
測定されている前記抵抗流量、及び、前記第2圧力に基づいて、前記マップを参照し、対応する前記流量制御バルブを通過する流体の流量を推定バルブ流量として出力するマップ参照部と、
前記推定バルブ流量が、前記設定流量となるように前記流量制御バルブを制御する開度制御部と、を備えた流量制御装置。
【請求項2】
前記第1圧力が設定圧力となるように前記圧力制御バルブを制御する圧力制御部と、をさらに備えた請求項
1記載の流量制御装置。
【請求項3】
前記流量制御バルブの開度を測定する開度センサをさらに備え、
前記流量制御器が、
少なくとも前記第2圧力と、前記流量制御バルブの開度と、前記流量制御バルブを通過する流体の流量との間の関係を示すマップを記憶するマップ記憶部と、
測定されている前記第2圧力と、前記設定流量に基づいて、前記マップを参照し、対応する前記流量制御バルブの開度を設定開度として出力するマップ参照部と、
前記開度センサで測定される測定開度が、前記設定開度となるように前記流量制御バルブを制御する開度制御部と、を備えた請求項1記載の流量制御装置。
【請求項4】
前記流体抵抗の上流側に設けられた第1圧力センサと、
前記第1圧力センサで測定される第1圧力、及び、前記第2圧力に基づいて、前記流体抵抗を流れる流体の流量を算出する抵抗流量算出部と、をさらに備え、
前記バルブ流量算出部で算出される実測バルブ流量に基づいて、少なくとも前記抵抗流量算出部で算出される抵抗流量、前記第2圧力、及び、前記流量制御バルブを通過する流体の流量との間の関係を示すマップを更新する校正器をさらに備えた請求項1乃至
3いずれかに記載の流量制御装置。
【請求項5】
前記校正器が、測定されている前記抵抗流量、及び、前記第2圧力に基づいて、前記マップを参照し、対応する前記流量制御バルブを通過する流体の流量である推定バルブ流量と前記実測バルブ流量の差が所定値以上の場合に前記マップを更新する請求項
4記載の流量制御装置。
【請求項6】
前記バルブ流量算出部が、前記流量制御バルブのコンダクタンスと、前記第2圧力と前記第3圧力の差圧に基づいて、前記バルブ流量算出部で算出される実測バルブ流量を算出する請求項1乃至
5いずれかに記載の流量制御装置。
【請求項7】
メイン流路に設けられた流量制御バルブと、
前記流量制御バルブの上流側に設けられた第2圧力センサと、
少なくとも前記第2圧力センサで測定される第2圧力と、設定流量とに基づいて前記流量制御バルブを制御する流量制御器と、
前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐し、流体の供給対象と接続される第1分岐流路と、
前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐する第2分岐流路と、
前記第2分岐流路上に設けられた第3圧力センサと、
少なくとも前記第2圧力と前記第3圧力センサで測定される第3圧力に基づいて、前記流量制御バルブを通過する流体の流量を算出するバルブ流量算出部と、
前記第2圧力センサの上流側に設けられた流体抵抗又は前記流体抵抗の代わりに形成された容積部と、
前記流体抵抗又は前記容積部の上流側に設けられた圧力制御バルブと、
前記第2圧力が、設定圧力となるように前記圧力制御バルブを制御する圧力制御部と、
前記第2圧力センサの上流側に設けられた流体抵抗と、
前記流体抵抗の上流側に設けられた第1圧力センサと、
前記第1圧力センサで測定される第1圧力、及び、前記第2圧力に基づいて、前記流体抵抗を流れる流体の流量を算出する抵抗流量算出部と、
前記第1圧力センサの上流側に設けられた圧力制御バルブと、を備え、
前記流量制御器が、
前記抵抗流量算出部で算出される抵抗流量と、前記第1圧力センサで測定される第1圧力の時間変化量と、に基づいて前記流量制御バルブを通過する流量を推定するバルブ流量推定部と、
前記バルブ流量推定部で推定された推定バルブ流量が、前記設定流量となるように前記流量制御バルブを制御する開度制御部と、を備え
た流量制御装置。
【請求項8】
メイン流路に設けられた流量制御バルブと、
前記流量制御バルブの上流側に設けられた第2圧力センサと、
前記第2圧力センサの上流側に設けられた圧力制御バルブと、
前記圧力制御バルブと前記流量制御バルブとの間に形成された容積内に設けられた1又は複数の温度センサと、
前記容積内に充填されたメッシュ部材と、を備えたことを特徴とする流量制御装置。
【請求項9】
少なくとも前記第2圧力センサで測定される第2圧力と、前記温度センサで測定される温度と、設定流量とに基づいて前記流量制御バルブを制御する流量制御器をさらに備えた請求項
8記載の流量制御装置。
【請求項10】
少なくとも前記第2圧力センサで測定される第2圧力と前記温度センサで測定される測定温度に基づいて、前記流量制御バルブを通過する流体の流量を算出するバルブ流量算出部をさらに備えた請求項
8又は
9に記載の流量制御装置。
【請求項11】
前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐し、流体の供給対象と接続される第1分岐流路と、
前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐する第2分岐流路と、
前記第2分岐流路上に設けられた第3圧力センサと、をさらに備え、
前記バルブ流量算出部が、少なくとも前記第2圧力、前記第3圧力センサで測定される第3圧力、及び、前記測定温度に基づいて、前記流量制御バルブを通過する流体の流量を算出するように構成された請求項
10記載の流量制御装置。
【請求項12】
メイン流路に設けられた流量制御バルブと、前記流量制御バルブの上流側に設けられた第2圧力センサと、少なくとも前記第2圧力センサで測定される第2圧力と、設定流量とに基づいて前記流量制御バルブを制御する流量制御器と、を備えた流量制御装置に用いられる流量測定方法であって、
前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐し、流体の供給対象と接続される第1分岐流路と、前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐する第2分岐流路と、前記第2分岐流路上に設けられた第3圧力センサと、前記第2圧力センサの上流側に設けられた流体抵
抗と、前記流体抵
抗の上流側に設けられた圧力制御バルブと、
前記流体抵抗の上流側に設けられた第1圧力センサと、を設け、
少なくとも前記第2圧力と前記第3圧力センサで測定される第3圧力に基づいて、前記流量制御バルブを通過する流体の流量を算出し、
前記第2圧力が、設定圧力となるように前記圧力制御バルブを制御
し、
前記第1圧力センサで測定される第1圧力、及び、前記第2圧力に基づいて、前記流体抵抗を流れる流体の流量を算出し、
少なくとも算出される抵抗流量、前記第2圧力、及び、前記流量制御バルブを通過する流体の流量との間の関係を示すマップを記憶し、
測定されている前記抵抗流量、及び、前記第2圧力に基づいて、前記マップを参照し、対応する前記流量制御バルブを通過する流体の流量を推定バルブ流量として出力し、
前記推定バルブ流量が、前記設定流量となるように前記流量制御バルブを制御することを特徴とする流量測定方法。
【請求項13】
メイン流路に設けられた流量制御バルブと、前記流量制御バルブの上流側に設けられた第2圧力センサと、前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐し、流体の供給対象と接続される第1分岐流路と、前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐する第2分岐流路と、前記第2分岐流路上に設けられた第3圧力センサと、前記第2圧力センサの上流側に設けられた流体抵
抗と、前記流体抵
抗の上流側に設けられた圧力制御バルブと、
前記流体抵抗の上流側に設けられた第1圧力センサと、を備えた流量制御装置に用いられるプログラムであって、
少なくとも前記第2圧力センサで測定される第2圧力と、設定流量とに基づいて前記流量制御バルブを制御する流量制御器
としての機能と、
少なくとも前記第2圧力と前記第3圧力センサで測定される第3圧力に基づいて、前記流量制御バルブを通過する流体の流量を算出するバルブ流量算出部
としての機能と、
前記第2圧力が、設定圧力となるように前記圧力制御バルブを制御する圧力制御部
としての機能と、
前記第1圧力センサで測定される第1圧力、及び、前記第2圧力に基づいて、前記流体抵抗を流れる流体の流量を算出する抵抗流量算出部としての機能とをコンピュータに発揮させ、
前記流量制御器としての機能は、
少なくとも前記抵抗流量算出部で算出される抵抗流量、前記第2圧力、及び、前記流量制御バルブを通過する流体の流量との間の関係を示すマップを記憶するマップ記憶部としての機能と、
測定されている前記抵抗流量、及び、前記第2圧力に基づいて、前記マップを参照し、対応する前記流量制御バルブを通過する流体の流量を推定バルブ流量として出力するマップ参照部としての機能と、
前記推定バルブ流量が、前記設定流量となるように前記流量制御バルブを制御する開度制御部としての機能とをコンピュータに発揮させることを特徴とする流量制御装置用プログラム。
【請求項14】
メイン流路に設けられた流量制御バルブと、
前記流量制御バルブの上流側に設けられた第2圧力センサと、
少なくとも前記第2圧力センサで測定される第2圧力と、設定流量とに基づいて前記流量制御バルブを制御する流量制御器と、
前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐し、流体の供給対象と接続される第1分岐流路と、
前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐する第2分岐流路と、
前記第2分岐流路上に設けられた第3圧力センサと、
少なくとも前記第2圧力と前記第3圧力センサで測定される第3圧力に基づいて、前記流量制御バルブを通過する流体の流量を算出するバルブ流量算出部と、
前記第2圧力センサが設けられ、流体抵抗の代わりに形成されている容積部と、
前記容積部の上流側に設けられた圧力制御バルブと、
前記第2圧力が、設定圧力となるように前記圧力制御バルブを制御する圧力制御部と、を備えたことを特徴とする流量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばマスフローコントローラ等の流量制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体製造プロセスにおいては、チャンバ等の供給対象に対して予め定められた設定流量でプロセスガス等を正確に供給する必要がある。このような用途に用いられるマスフローコントローラには、例えば特許文献1に記載されているように、上流側に設けられた圧力制御バルブと、下流側に設けられ、開度センサを具備する流量制御バルブと、2つのバルブ間の容積内における流体の温度及び圧力を測定する各種センサと、を備えたものがある。
【0003】
このマスフローコントローラは、上流側にある圧力制御バルブで容積内のガスの圧力を一定に保つように制御した上で、容積内から流出するガスの流量を下流側にある流量制御バルブで制御する。
【0004】
具体的には、マスフローコントローラは、容積内における流体の温度及び圧力、流量制御バルブを通過する流体の流量、流量制御バルブの開度の関係を示すマップを記憶している。そして、このマスフローコントローラは、設定流量と測定されている温度及び圧力に基づいてマップを参照して、対応する開度を設定開度として出力する。また、開度センサで測定される測定開度が設定開度となるように流量制御バルブが制御される。
【0005】
ところで、上記のようなマップは経年変化や使用環境等によって各パラメータ間の関係が変化し、マスフローコントローラから正しい流量が出力されなくなってしまう恐れがある。このため、マップを何らかの基準流量に基づいて適宜校正する必要がある。
【0006】
特許文献1ではマップの校正のために例えばチャンバにおいてプロセスが実施されていない期間等を利用して以下のような校正動作を行うようにしている。まず、下流側にある流量制御バルブを全閉して圧力制御バルブと流量制御バルブとの間の容積に所定圧力のガスが貯められる。その後、上流側にある圧力制御バルブを全閉するとともに流量制御バルブを開放し、その時点からの容積内の圧力と温度の変化が測定される。容積から流量制御バルブを介して流出するガスの流量は気体の状態方程式から導出される流量算出式に圧力の時間変化量を示す圧力の微分値と温度を代入することで算出される。このようにして算出された測定流量と、マップに記憶されている対応する条件での流量とが比較され、所定値以上の差がある場合にはマップに記憶されている流量は測定流量に更新される。
【0007】
しかしながら、このような校正方法によってマップを更新したとしても、実際に流量制御が行われている間は、上記のような各種バルブ動作を行うことはできないので、流量制御バルブから流出するガスの流量であるバルブ流量はモニタリングできていない。つまり、実際のプロセス中にチャンバ内に対して本当に正しい流量が供給されているかどうかを保証することはできていない。
【0008】
一方で、マスフローコントローラの流量制御バルブの下流側とチャンバとの間に流量センサ等を設けてバルブ流量を実測することによりバルブ流量の正しさを保証できるようにしてしまうと、流量測定のために設けられる流体抵抗等によって流路抵抗が大幅に増大することになる。そうすると、例えば過渡応答時における応答速度が大幅に低下してしまい、要求仕様を満たせなくなる恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、流量制御バルブと供給対象間における流路抵抗の増大を招かずにバルブ流量の正しさを保証することが可能な流量制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
すなわち、本発明に係る流量制御装置は、メイン流路に設けられた流量制御バルブと、前記流量制御バルブの上流側に設けられた第2圧力センサと、少なくとも前記第2圧力センサで測定される第2圧力と、設定流量とに基づいて前記流量制御バルブを制御する流量制御器と、前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐し、流体の供給対象と接続される第1分岐流路と、前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐する第2分岐流路と、前記第2分岐流路上に設けられた第3圧力センサと、少なくとも前記第2圧力と前記第3圧力センサで測定される第3圧力に基づいて、前記流量制御バルブを通過する流体の流量を算出するバルブ流量算出部と、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る流量制御方法は、メイン流路に設けられた流量制御バルブと、前記流量制御バルブの上流側に設けられた第2圧力センサと、少なくとも前記第2圧力センサで測定される第2圧力と、設定流量とに基づいて前記流量制御バルブを制御する流量制御器と、を流量制御装置に用いられる流量測定方法であって、前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐し、流体の供給対象と接続される第1分岐流路と、前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐する第2分岐流路と、前記第2分岐流路上に設けられた第3圧力センサと、を設け、少なくとも前記第2圧力と前記第3圧力センサで測定される第3圧力に基づいて、前記流量制御バルブを通過する流体の流量を算出することを特徴とする。
【0013】
このようなものであれば、前記流量制御バルブの下流側において供給対象と接続されている前記第1分岐流路とは別に分岐する前記第2分岐流路にバルブ流量を算出するために用いられる前記第3圧力センサを設けているので、前記流量制御バルブと供給対象との間において流路抵抗が増大するのを防げる。また、前記バルブ流量算出部は、前記第2圧力と前記第3圧力に基づいて前記流量制御バルブを通過する流体の流量であるバルブ流量を常時算出することが可能なので、常にバルブ流量をモニタリングすることができる。
【0014】
前記流量制御バルブを通過する流体の流量であるバルブ流量を推定して、流量フィードバック制御を実現できるようにするには、前記第2圧力センサの上流側に設けられた流体抵抗と、前記流体抵抗の上流側に設けられた第1圧力センサと、前記第1圧力センサで測定される第1圧力、及び、前記第2圧力に基づいて、前記流体抵抗を流れる流体の流量を算出する抵抗流量算出部と、をさらに備え、前記流量制御器が、少なくとも前記抵抗流量算出部で算出される抵抗流量、前記第2圧力、及び、前記流量制御バルブを通過する流体の流量との間の関係を示すマップを記憶するマップ記憶部と、測定されている前記抵抗流量、及び、前記第2圧力に基づいて、前記マップを参照し、対応する前記流量制御バルブを通過する流体の流量を推定バルブ流量として出力するマップ参照部と、前記推定バルブ流量が、前記設定流量となるように前記流量制御バルブを制御する開度制御部と、を備えたものが挙げられる。また、このようなものであれば、推定バルブ流量に基づいて前記流量制御バルブを制御した結果が正しく動作しているかどうかは、前記流量算出部で算出される実測バルブ流量を参照することで確認できる。
【0015】
例えば流量制御における過渡応答の応答速度をさらに向上させたり、チャンバへの供給圧の変動による影響が流量制御に現れにくくしたりするには、前記第1圧力センサの上流側に設けられた圧力制御バルブと、前記第1圧力が、設定圧力となるように前記圧力制御バルブを制御する圧力制御部と、をさらに備えたものであればよい。
【0016】
流量制御装置内において流体抵抗を用いず流量制御を実現するための制御方式としては、前記流量制御バルブの開度を測定する開度センサをさらに備え。前記流量制御器が、少なくとも前記第2圧力と、前記流量制御バルブの開度と、前記流量制御バルブを通過する流体の流量との間の関係を示すマップを記憶するマップ記憶部と、測定されている前記第2圧力と、前記設定流量に基づいて、前記マップを参照し、対応する前記流量制御バルブの開度を設定開度として出力するマップ参照部と、前記開度センサで測定される測定開度が、前記設定開度となるように前記流量制御バルブを制御する開度制御部と、を備えたものが挙げられる。
【0017】
前述した制御方式において圧力一定制御を実施して、流量制御の応答速度を向上させられるようにするには、前記第2圧力センサの上流側に設けられた圧力制御バルブと、前記第2圧力が設定圧力となるように前記圧力制御バルブを制御する圧力制御部と、をさらに備えたものが挙げられる。
【0018】
経年変化等が生じたとしても、流量制御バルブから出力されるバルブ流量が正確な値で出力されるようにするには、前記バルブ流量算出部で算出される実測バルブ流量に基づいて、前記マップを更新する校正器をさらに備えたものであればよい。
【0019】
偶発的な誤差が生じた場合には、マップをそのまま使用し、系統的な誤差が発生している場合のみマップが更新されるようにするには、前記校正器が、前記推定バルブ流量と前記実測バルブ流量の差が所定値以上の場合に前記マップを更新するものであればよい。
【0020】
前記第2圧力と前記第3圧力に基づいて、前記流量制御バルブを通過するバルブ流量を算出するための具体的な構成としては、前記バルブ流量算出部が、前記流量制御バルブのコンダクタンスと、前記第2圧力と前記第3圧力の差圧に基づいて、前記実測バルブ流量を算出するものが挙げられる。
【0021】
例えば前記流量制御バルブを通過する流体の流量の過渡応答制御をより高速化するための構成例としては、前記第2圧力センサの上流側に設けられた流体抵抗と、前記流体抵抗の上流側に設けられた第1圧力センサと、前記第1圧力センサで測定される第1圧力、及び、前記第2圧力に基づいて、前記流体抵抗を流れる流体の流量を算出する抵抗流量算出部と、前記第1圧力センサの上流側に設けられた圧力制御バルブと、を備え、前記流量制御器が、前記抵抗流量算出部で算出される抵抗流量と、前記第1圧力センサで測定される第1圧力の時間変化量と、に基づいて前記流量制御バルブを通過する流量を推定するバルブ流量推定部と、前記バルブ流量推定部で推定された推定バルブ流量が、前記設定流量となるように前記流量制御バルブを制御する開度制御部と、を備えたものであればよい。このようなものであれば、前記圧力制御バルブと前記流体抵抗との間の圧力の情報を利用して前記流量制御バルブを通過する流体の流量を算出し、過渡応答の制御性能を向上させることができる。
【0022】
メイン流路に設けられた流量制御バルブと、前記流量制御バルブの上流側に設けられた第2圧力センサと、前記第2圧力センサの上流側に設けられた圧力制御バルブと、前記圧力制御バルブと前記流量制御バルブとの間に形成された容積内に設けられた1又は複数の温度センサと、を備えたことを特徴とする流量制御装置であれば、前記容積の外側に温度センサが設けられ、間接的に流体の温度を測定する場合と比較して、実際に流れている流体の温度を正確に測定することが可能となる。この結果、正確な流体の温度を利用して例えば正確な流量を算出することが可能となる。
【0023】
前記容積内の流体の温度を安定化させ、前記容積内を流れる流体の温度をより正確に測定できるようにするには、前記容積内に充填されたメッシュ部材をさらに備えたものであればよい。
【0024】
正確に測定される流体の温度に基づいて、従来よりも正確な流量制御を実現できるようにするには、少なくとも前記第2圧力センサで測定される第2圧力と、前記温度センサで測定される温度と、設定流量とに基づいて前記流量制御バルブを制御する流量制御器をさらに備えたものであればよい。
【0025】
少なくとも前記第2圧力と前記温度センサで測定される測定温度に基づいて、前記流量制御バルブを通過する流体の流量を算出するバルブ流量算出部をさらに備えたものであれば、正確に測定される温度を利用して前記流量制御バルブを通過する流体の流量についても正確に算出することが可能となる。
【0026】
前記流量制御バルブを通過する流体の流量を流量制御中でもより正確に算出することを可能としながら、前記流量制御バルブと流体の供給対象との間における流路抵抗の増加は生じないようにするには、前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐し、流体の供給対象と接続される第1分岐流路と、前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐する第2分岐流路と、前記第2分岐流路上に設けられた第3圧力センサと、をさらに備え、前記バルブ流量算出部が、少なくとも前記第2圧力、前記第3圧力センサで測定される第3圧力、及び、前記測定温度に基づいて、前記流量制御バルブを通過する流体の流量を算出するように構成されたものであればよい。
【0027】
既存の流量制御装置において使用されているプログラムを更新することにより、本発明に係る流量制御装置と同様の効果を享受できるようにするには、メイン流路に設けられた流量制御バルブと、前記流量制御バルブの上流側に設けられた第2圧力センサと、前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐し、流体の供給対象と接続される第1分岐流路と、前記メイン流路において前記流量制御バルブの下流側において分岐する第2分岐流路と、前記第2分岐流路上に設けられた第3圧力センサと、を備えた流量制御装置に用いられるプログラムであって、少なくとも前記第2圧力センサで測定される第2圧力と、設定流量とに基づいて前記流量制御バルブを制御する流量制御器と、少なくとも前記第2圧力と前記第3圧力センサで測定される第3圧力に基づいて、前記流量制御バルブを通過する流体の流量を算出するバルブ流量算出部と、としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする流量制御装置用プログラムを用いれば良い。
【0028】
なお、流量制御装置用プログラムは電子的に配信されるものであってもよいし、CD、DVD、HDD、フラッシュメモリ等のプログラム記録媒体に記録されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0029】
このように本発明に係る流量制御装置であれば、前記流量制御バルブの下流側に形成され、流体の供給対象とは接続されていない前記第2分岐流路上に前記第3圧力センサを設けているので、前記流量制御バルブの下流側の流路抵抗を増大させることなく、当該第3圧力センサの出力に基づいて前記流量制御バルブを通過する流体の流量を実測できる。この結果、実際にバルブ流量をモニタリングしながら流量制御を行う事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る流量制御装置の構成を示す模式図。
【
図2】本発明の第1実施形態に係る流量制御装置の流量制御器の構成を示す模式図。
【
図3】本発明の第2実施形態に係る流量制御装置の構成を示す模式図。
【
図4】本発明の第2実施形態に係る流量制御装置の流量制御器の構成を示す模式図。
【
図5】本発明の第3実施形態に係る流量制御装置の構成を示す模式図。
【
図6】本発明の第3実施形態に係る流量制御装置の流量制御器の構成を示す模式図。
【
図7】本発明の第4実施形態に係る流量制御装置の構成を示す模式図。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る流量制御装置の内部構造の詳細を示す模式的断面図。
【符号の説明】
【0031】
100・・・流量制御装置
FM ・・・流量センサ
1 ・・・抵抗流量算出部
2 ・・・流量制御器
21 ・・・マップ記憶部
22 ・・・マップ参照部
23 ・・・開度制御部
24 ・・・バルブ流量推定部
25 ・・・時間変化量算出部
26 ・・・出力部
3 ・・・バルブ流量算出部
4 ・・・校正器
5 ・・・圧力制御部
ML ・・・メイン流路
DL1・・・第1分岐流路
DL2・・・第2分岐流路
P1 ・・・第1圧力センサ
P2 ・・・第2圧力センサ
P3 ・・・第3圧力センサ
V1 ・・・圧力制御バルブ
V2 ・・・流量制御バルブ
R ・・・流体抵抗
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の第1実施形態に係る流量制御装置100について
図1を参照しながら説明する。第1実施形態の流量制御装置100は、例えば半導体製造プロセスにおいてチャンバCNに対して流体であるガスを設定流量で供給するために用いられるものである。
【0033】
すなわち、流量制御装置100は、
図1に示すように、流路に設けられたセンサ、バルブからなる流体機器と、当該流体機器の制御を司る制御機構COMと、を備えている。
【0034】
メイン流路MLに対して上流側から順番に供給圧センサP0、圧力制御バルブV1、第1圧力センサである第1圧力センサP1、流体抵抗R、第2圧力センサである第2圧力センサP2、流量制御バルブV2が設けてある。また、メイン流路MLの流量制御バルブV2の下流側は2つの流路に分岐しており、流体の供給対象であるチャンバCNと接続される第1分岐流路DL1と、チャンバCNには接続されず、下流端が閉止された第2分岐流路DL2と、が設けられている。さらに第2分岐流路DL2上には流量制御バルブV2の下流側の圧力を測定する第3圧力センサである第3圧力センサP3が設けてある。ここで、流体抵抗Rは例えば層流素子であり、その前後に流れるガス流量に応じた差圧を発生する。
【0035】
供給圧センサP0は、上流側から供給されるガスの圧力をモニタリングするためのものである。なお、供給圧センサP0については供給圧が安定していることが保証されている場合等には省略してもよい。
【0036】
第1圧力センサP1は、流路において上流側にある圧力制御バルブV1と流体抵抗Rとの間における容積である上流側容積内にチャージされているガスの圧力である第1圧力を測定するものである。
【0037】
第2圧力センサP2は、流路において流体抵抗Rと下流側にある流量制御バルブV2との間における容積である下流側容積にチャージされているガスの圧力である第2圧力を測定するものである。
【0038】
このように第1圧力センサP1と第2圧力センサP2は、圧力制御バルブV1、流体抵抗R、流量制御バルブV2で形成される2つの容積の圧力をそれぞれ測定している。また、別の表現をすると、第1圧力センサP1と第2圧力センサP2は、流体抵抗Rの前後に配置されたそれぞれの容積内の圧力を測定するものである。
【0039】
圧力制御バルブV1、及び、流量制御バルブV2は、第1実施形態では同型のものであり、例えばピエゾ素子によって弁体が弁座に対して駆動されるピエゾバルブである。圧力制御バルブV1、及び、流量制御バルブV2はそれぞれ操作量として入力される電圧に応じて開度が変更される。ここで、少なくとも流量制御バルブV2は開度センサV2を備えており、現在の開度を測定できる。開度センサV2としては、弁体又は弁体に接続されたプランジャやアクチュエータ等の動きに応じた出力をする変位センサ等が挙げられる。
【0040】
次に制御機構COMについて詳述する。
【0041】
制御機構COMは、例えばCPU、メモリ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、入出力手段等を具備するいわゆるコンピュータであって、メモリに格納されている流量制御装置用プログラムが実行されて各種機器が協業することにより、少なくとも抵抗流量算出部1、流量制御器2、バルブ流量算出部3、校正器4、圧力制御部5としての機能を発揮する。
【0042】
抵抗流量算出部1は、第1圧力センサP1、流体抵抗R、第2圧力センサP2とともにいわゆる差圧式の流量センサFMを構成するものである。つまり、抵抗流量算出部1は、第1圧力センサP1で測定される第1圧力と、第2圧力センサP2で測定される第2圧力を入力として、流体抵抗Rを流れる流体の流量である抵抗流量を算出し、出力するものである。ここで、抵抗流量算出部1で用いられる流量の算出式は既存のものを用いることができる。抵抗流量算出部1が算出する抵抗流量は、連続的に変化するものであるが、流量制御バルブV2の制御により実現される当該流量制御バルブV2を通過している実際の流量に対して所定の時間遅れが発生している。
【0043】
流量制御器2は、少なくとも第2圧力センサP2で測定される第2圧力と、ユーザにより設定される設定流量と、に基づいて流量制御バルブV2を通過する流体の流量であるバルブ流量が設定流量となるように流量制御バルブV2を制御する。第1実施形態では、流量制御器2は抵抗流量算出部1で算出される抵抗流量と、第2圧力センサで測定される第2圧力からバルブ流量を推定し、そのバルブ流量が設定流量となるように流量制御バルブV2を流量フィードバック制御する。ここで、バルブ流量の推定は、抵抗流量及び第2圧力に基づいてマップを参照して行われる。
【0044】
具体的には
図2に示すように流量制御器2は、マップ記憶部21、マップ参照部22、開度制御部23を備えている。
【0045】
マップ記憶部21は、少なくとも抵抗流量、第2圧力、及び、バルブ流量との間の関係を示すマップを記憶する。このようなマップは、例えば各抵抗流量、第2圧力の組み合わせを実現した状態で、流量制御バルブV2の下流側に実際に流量センサを配置して実測を行い、各パラメータの関係をデータベース化したものである。マップについては、テーブル形式であってもよいし、各パラメータの関係を示す式であってもよい。
【0046】
マップ参照部22は、測定されている抵抗流量、及び、第2圧力に基づいて、マップ記憶部21に記憶されているマップを参照し、対応するバルブ流量を推定バルブ流量として開度制御部23に出力する。このようにして推定されたバルブ流量は、抵抗流量と比較して実際のバルブ流量に対する遅れが小さくなるように構成されている。
【0047】
開度制御部23は、推定バルブ流量が、設定流量となるように流量制御バルブV2を制御する。第1実施形態では推定バルブ流量と設定流量の偏差が小さくなるように流量制御バルブV2に印加する電圧をフィードバック制御する。
【0048】
図1に示すバルブ流量算出部3は、少なくとも第2圧力と第3圧力センサで測定される第3圧力に基づいて、流量制御バルブV2を通過する流体の流量を算出する。具体的には、バルブ流量算出部3は流量制御バルブV2の開度から決まるコンダクタンスと、第2圧力と第3圧力の差圧とから実測バルブ流量を算出する。ここで、バルブ流量算出部3は開度とコンダクタンスとの間の関係を示すテーブルを記憶しており、開度センサV21で測定される開度に応じたコンダクタンスを使用して実測バルブ流量を出力する。このようにバルブ流量算出部3は、実測値に基づいて流量制御バルブV2を通過する流体の流量を算出しているので、推定バルブ流量とは異なり、このバルブ流量は流量制御中においてリアルタイムで実測された値である。また、この実施形態では、実測バルブ流量はマップの更新に用いられる。
【0049】
校正器4は、
図1及び
図2に示すようにバルブ流量算出部3で算出される実測バルブ流量に基づいて、流量制御器2内のマップを更新する。具体的には、流量制御バルブV2の制御に使用されている推定バルブ流量と実測バルブ流量との差が所定値以上となった場合には、マップにおけるその時点での第2圧力及び抵抗流量に対応するバルブ流量を実測バルブ流量に更新する。
【0050】
圧力制御部5は、ユーザにより設定される設定圧力と、第1圧力センサP1で測定される第1圧力に基づいて圧力制御バルブV1を制御する。具体的には、設定圧力と第1圧力の偏差が小さくなるように圧力制御バルブV1に印加される電圧を圧力フィードバック制御する。
【0051】
このように構成された第1実施形態の流量制御装置100によれば、流量制御バルブV2により設定流量となるように流量フィードバック制御を行いながら、当該流量制御バルブV2を通過する流体の流量を第2圧力と第3圧力に基づいてモニタリングすることができる。
【0052】
また、流量制御バルブV2の下流側に設けられた第3圧力センサP3は供給対象であるチャンバCNとは接続されていない第2分岐流路DL2上に設けられているので、バルブ流量を実測するために設けられた機器によって、流量制御バルブV2とチャンバCNとの間の流路抵抗を増大させることがない。したがって、第1実施形態の流量制御装置100は、流量制御バルブV2を通過する流体のバルブ流量の正確さを保証しつつ、応答速度を高く保つことができる。
【0053】
第1実施形態の変形例について説明する。
【0054】
マップについては、流体の温度影響を考慮できるようにするために、抵抗流量、第2圧力、温度、及び、バルブ流量との間の関係を示すものにしてもよい。
【0055】
この場合、例えば流体抵抗Rの温度をサーミスタ等の温度センサで測定できるようにしておき、マップ参照部22は、測定された温度、第2圧力、抵抗流量に基づいてマップを参照して、バルブ流量を出力するように構成すればよい。
【0056】
また、バルブ流量算出部3において用いられるコンダクタンスについても、温度センサで測定される温度に応じて異なる値が使用されるようにしてもよい。
【0057】
次に本発明の第2実施形態について説明する。
【0058】
第2実施形態の流量制御装置100は、
図3及び
図4に示すように流量制御器2の構成が第1実施形態とは異なっている。
【0059】
具体的には、流量制御器2において推定バルブ流量を算出するための構成がマップ参照ではなく、第1圧力の時間変化量に基づいて算出するように構成されている。このため、第1実施形態の流量制御器2には第2圧力が入力されていたのに対して、
図3に示すように第2実施形態の流量制御器2には第1圧力が入力される。
【0060】
具体的には流量制御器2は、
図4に示すようにマップ記憶部21及びマップ参照部22の代わりに抵抗流量算出部1で算出される抵抗流量と、第1圧力センサP1で測定される第1圧力の時間変化量と、に基づいて流量制御バルブV2を通過する流量を推定するバルブ流量推定部24を備えている。
【0061】
バルブ流量推定部24は、第1圧力の時間変化量として例えば第1圧力の時間微分値を算出し、その微分値に所定の係数を乗じた値を出力する時間変化量算出部25と、時間変化量算出部25から時間変化量と抵抗流量に基づいて推定バルブ流量を算出する出力部26と、を備えている。なお、時間変化量算出部25は、第1圧力を微分するものに限られず、第1圧力センサP1のサンプリングタイムごとに差分演算を行うものであってもよい。
【0062】
また、第2実施形態では校正器4は推定バルブ流量と実測バルブ流量との差が所定値以上の場合には、時間変化量算出部25で用いられる係数をその差に応じて補正する。
【0063】
このように構成された第2実施形態の流量制御装置100であれば、第1圧力の時間微分値に基づいて抵抗流量を補正演算して、推定バルブ流量を算出することができる。また、上流側の圧力の変化が抵抗流量に考慮された値を出力することができるので、バルブ流量における過渡的な変化を補正することが可能となる。
【0064】
次に本発明の第3実施形態に係る流量制御装置100について
図5及び
図6を参照しながら説明する。
【0065】
第3実施形態の流量制御装置100は、第1及び第2実施形態に示す流量制御装置100とは異なり、圧力制御バルブV1と流量制御バルブV2との間に流体抵抗Rが設けられておらず、圧力制御バルブV1と流量制御バルブV2との間が1つの大きな容積VLとして構成されている。また、圧力センサについては第1圧力センサについては省略されており、第2圧力センサP2のみが設けられている。すなわち、この容積においては流量の測定を行うための機能が省略されるとともに、圧力制御バルブV1の制御についても第2圧力センサP2の出力に基づいて行われる。
【0066】
また、抵抗流量の測定が行われていないため、流量制御器2の構成も
図6に示すように第1及び第2実施形態とは異なっている。すなわち、流量制御器2は第2圧力センサP2で測定される第2圧力と設定流量に基づいて、実現したバルブ流量に相当する設定開度を算出し、算出された設定開度と開度センサV21で測定される測定開度の偏差が小さくなるように流量制御バルブV2の制御が行われる。
【0067】
具体的には第3実施形態の流量制御器2では、マップが少なくとも第2圧力と、流量制御バルブV2の開度と、流量制御バルブV2を通過する流体の流量との間の関係を示すものである。そして、マップ参照部22は、測定される第2圧力及び測定開度と、ユーザにより設定される設定流量に基づいてマップを参照して対応する設定開度を出力する。
【0068】
また、開度制御部23は流量制御バルブV2に設けられた開度センサV21から出力される測定開度が、マップ参照部22から出力された設定開度となるように流量制御バルブV2に印加される電圧を制御する。
【0069】
バルブ流量算出部3は、
図5に示すように流量制御バルブV2の上流側の圧力である第2圧力と下流側の圧力である第3圧力と、測定開度とが、入力され、これらの値に基づいて実測バルブ流量を算出する。より具体的にはバルブ流量算出部3は、第2圧力と第3圧力の差圧と、流量制御バルブV2の測定開度に応じたコンダクタンスに基づいて、実測バルブ流量を例えば制御周期ごとに算出している。
【0070】
校正器4は、
図5及び
図6に示すようにバルブ流量算出部3から実測バルブ流量が算出されると、その度にマップを更新する。具体的には、設定開度を出力するために参照している第2圧力、開度、流量の組において流量を実測流量に更新する。
【0071】
このように構成された第3実施形態の流量制御装置100であれば、第1及び第2実施形態のように流体抵抗を用いた差圧に基づいた流量の測定を行わなくても、流量制御バルブV2を通過するバルブ流量を推定し、流量制御を行うことができる。
【0072】
また、流量制御バルブV2の前後の圧力から、当該流量制御バルブV2を通過するバルブ流量を実測し、マップを逐次更新しているので、上記のように流量制御バルブV2を制御しても実質的に常に測定された流量に基づいてバルブ流量を制御することができる。
【0073】
したがって、従来とは異なって、チャンバCNに対して流体を供給している状態でも、その流量を保証することが可能となる。また、メイン流路ML及び第2分岐流路DL2には流路抵抗となる機器を極力配置しないようにできるので、例えば過渡応答特性をよくしながら、流量の正確性を担保することが可能となる。
【0074】
第3実施形態の変形例について説明する。
【0075】
第3実施形態についてもマップ参照によって流量制御バルブV2を制御するのではなく、測定される流量から直接流量制御バルブV2の開度が制御されるようにしてもよい。具体的には、流量制御器2がマップ記憶部21及びマップ参照部22を備えておらず、開度制御部23に、バルブ流量算出部3で算出される実測バルブ流量がフィードバックされるようにしてもよい。すなわち、開度制御部23は、第2圧力センサP2で測定される第2圧力と第3圧力センサP3で測定される第3圧力から算出される実測バルブ流量と、設定流量の偏差が小さくなるように流量制御バルブV2に印加する電圧を制御するようにしてもよい。
【0076】
また、流量制御装置100が圧力制御バルブV1と流量制御バルブV2の間の容積VLを流れる流体の温度を測定する温度センサを更に備えており、この温度も考慮したマップに基づいて流量制御が行われるようにしてもよい。すなわち、マップは、第2圧力、開度、温度、及び、流量との間の関係を示すものであり、マップ参照部22は測定されている第2圧力、開度、及び、温度から設定開度を出力するようにしてもよい。
【0077】
次に本発明の第4実施形態について
図7及び
図8を参照しながら説明する。なお、第3実施形態において説明した部材に対応する部材には同じ符号を付すこととする。
【0078】
第4実施形態の流量制御装置100は、第3実施形態に示す流量制御装置100と同様に、圧力制御バルブV1と流量制御バルブV2との間に流体抵抗Rが設けられておらず、圧力制御バルブV1と流量制御バルブV2との間が1つの大きな容積VLとして構成されている。
【0079】
より具体的には圧力制御バルブV1と流量制御バルブV2との間には内部に形成された空洞である容積VLと、容積VLにガスを導入又は導出する導入路、導出路が内部に形成されたブロック体BLが設けられている。また、ブロック体BLのガスの導入口に対して圧力制御バルブV1が設けられ、ブロック体BLのガスの導出口に対して流量制御バルブV2が設けられている。
図8に示すようにブロック体BLの内部に形成された容積VL内には、当該容積VLの全体に充填されたメッシュ部材Mと、容積VL内のガスの温度を測定するための温度センサTSが設けられている。
【0080】
メッシュ部材Mは、例えばガスの通過を実質的に阻害しないようにしつつ、容積VL内に存在するガスの温度をほぼ均一するようなメッシュ数のものが選択されている。メッシュ部材Mが容積VL内に充填されていることにより、後述するマップの更新のための温度測定時における測定温度の安定性を向上させ、正確な値を得ることができるようになる。
【0081】
温度センサTSは、容積VL内においてメッシュ部材Mの一部と接触するように設けられている。
図8に示すように温度センサTSは、容積VLにおいてブロック体BLの内壁面に接触させる、あるいは、内壁面に近接する位置でメッシュ部材Mと接触させ、配線をブロック体BLの外部へと取り出しやすくしてある。温度センサTSとしては、ガスと直接接触する位置に設けられるので、例えば流されるガスの種類に応じて耐食性を有したものが適宜選択される。この実施形態では温度センサTSは、容積VL内に2つ設けられており、これらの温度センサTSにおける測定温度の平均値がガスの温度として採用される。なお、温度センサTSの個数については適宜選択でき、1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、温度センサTSは容積VL内に設けられ、直接流体の温度を測定するものであればよい。
【0082】
また、第4実施形態の流量制御器2では、マップが少なくとも第2圧力と、流量制御バルブV2の開度と、ガスの温度と、流量制御バルブV2を通過するガスの流量との間の関係を示すものである。そして、マップ参照部22は、測定される第2圧力、測定開度、温度センサTSで測定される測定温度、及び、ユーザにより設定される設定流量に基づいてマップを参照して対応する設定開度を出力する。
【0083】
また、開度制御部23は流量制御バルブV2に設けられた開度センサV21から出力される測定開度が、マップ参照部22から出力された設定開度となるように流量制御バルブV2に印加される電圧を制御する。
【0084】
バルブ流量算出部3は、開度制御部23による流量制御が行われておらず、マップを更新するための校正用の制御が行われている間に取得される、第2圧力、測定温度に基づいて、既存のROF法等から実測バルブ流量を算出する。ROF法を簡単に説明すると以下のようなものになる。まず、圧力制御バルブV1と流量制御バルブV2との間の空間に所定圧力のガスがチャージされる。その後、流量制御バルブV2が所定の開度で開放され、空間内のガスに圧力低下を生じさせる。この圧力降下時に測定される第2圧力、測定温度、ガスがチャージされていた空間の体積値と、気体の状態方程式を時間微分した式に基づいて、流量制御バルブV2を通過する流量を算出することができる。第4実施形態ではメッシュ部材Mが容積VL内に充填されており、ガスの温度が均一化されているので、圧力降下時におけるガスの温度についても正確に測定することができる。この結果、バルブ流量算出部3は実測バルブ流量を正確に算出することができる。
【0085】
校正器4は、バルブ流量算出部3から実測バルブ流量が算出されると、その度にマップを更新する。具体的には、バルブ流量算出部3が実測バルブ流量を算出しているときに使用されている第2圧力、開度、温度の組に対応する流量を実測バルブ流量に更新する。
【0086】
このように構成された第4実施形態の流量制御装置100であれば、圧力制御バルブV1と流量制御バルブV2との間の容積VL内にメッシュ部材Mが充填され、当該容積VL内に温度センサTSを設けているので、例えば実測バルブ流量を気体の状態方程式に基づいて算出する際に必要となるガスの温度を正確に得ることができる。この結果、流量マップの更新時に算出される実測バルブ流量をより正確にすることができ、最終的な流量制御の正確さをさらに向上させることができる。
【0087】
第4実施形態の変形例について説明する。第4実施形態では容積VL内にメッシュ部材Mが充填されていたが、メッシュ部材Mを省略し、容積VL内には温度センサTSのみを設けるようにしてもよい。また、第4実施形態においても第3実施形態と同様にメイン流路MLが流量制御バルブV2の下流側において流体の供給対象と接続される第1分岐流路DL1と、流体の供給対象と接続されない第2分岐流路DL2とに分岐しており、第2分岐流路DL2に第3圧力センサである第3圧力センサP3が設けられていてもよい。このように各分岐流路DL1、DL2、及び、第3圧力センサP3が設けられている場合には、バルブ流量算出部3が、少なくとも第2圧力センサP2で測定される第2圧力、第3圧力センセP3で測定される第3圧力、及び、温度センサTSで測定される測定温度に基づいて、流量制御バルブV2を通過する流体の流量を算出するように構成してもよい。
【0088】
その他の実施形態について説明する。
【0089】
第2圧力及び第3圧力に基づいて実測バルブ流量を算出する方法は、各実施形態において示したようにコンダクタンスを利用した演算に限られない。例えば、予め第2圧力と第3圧力とバルブ流量との間の関係を示すマップを測定してデータベース化しておき、測定された第2圧力、第3圧力でマップを参照して対応する流量をバルブ流量として出力するようにしてもよい。また、校正器を省略してバルブ流量算出部のみを設けて、バルブ流量算出部で算出される実測バルブ流量で流量制御バルブをフィードバック制御するようにしてもよい。
【0090】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて各実施形態の一部同士を組み合わせてもよいし、変形を行っても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
このように本発明であれば、流量制御バルブと供給対象間における流路抵抗の増大を招かずにバルブ流量の正しさを保証することが可能な流量制御装置を提供できる。