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特許7529764基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/324 20060101AFI20240730BHJP
【FI】
H01L21/324 R
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022508665
(86)(22)【出願日】2020-03-17
(86)【国際出願番号】 JP2020011754
(87)【国際公開番号】W WO2021186562
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 富大
(72)【発明者】
【氏名】檜山 真
(72)【発明者】
【氏名】高橋 哲
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-070906(JP,A)
【文献】特開2017-212466(JP,A)
【文献】特開2012-237026(JP,A)
【文献】特開平09-064028(JP,A)
【文献】特開2006-274316(JP,A)
【文献】特開2013-084895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/324
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持し、処理容器の内部で昇降可能な基板保持台と、
上昇した状態の前記基板保持台及び前記基板に接触せず、前記基板保持台の上面と該上面に対する対向面との間の処理空間、及び上昇した状態の前記基板保持台の外周を囲む遮蔽壁と、
前記処理空間に水素ガスを含む処理ガスを供給する処理ガス供給口と、
前記処理空間の外側かつ前記遮蔽壁の外側に設けられ、前記遮蔽壁と前記処理容器の内壁との間の空間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給口と、
前記処理空間から出た前記処理ガスが前記不活性ガスと前記処理容器の内部で混合されるガス混合部と、
上昇した状態の前記基板保持台の外周面と前記遮蔽壁の内周面との間に形成され、前記処理空間から前記ガス混合部に向かって前記処理ガスが流れるように構成された処理ガス流路と、
を有し、
前記遮蔽壁と前記処理容器の内壁との間の空間は、前記処理空間の外側で前記不活性ガス供給口と前記ガス混合部を連通させるように構成されている基板処理装置。
【請求項2】
前記処理ガス供給口は、前記対向面に設けられた単数又は複数の処理ガス噴出孔により構成されている請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理ガス供給口は、前記対向面に前記複数の処理ガス噴出孔が設けられたシャワーヘッドにより構成され、
前記シャワーヘッドは、前記処理容器内に該処理容器の天井面から離れて設けられている請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記不活性ガスは、前記不活性ガス供給口から、前記シャワーヘッドの上面と前記処理容器の前記天井面との間に供給され、前記遮蔽壁と前記処理容器の内壁との間の空間へ至るように構成された請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記不活性ガス供給口は、前記処理容器の前記天井面における前記シャワーヘッドの外縁よりも中央側に少なくとも設けられる請求項4に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記不活性ガス供給口は、前記処理容器の前記天井面における前記シャワーヘッドの外縁に沿って周方向に複数設けられる請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記遮蔽壁は、前記シャワーヘッドに設けられている請求項3に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記不活性ガス供給口は、前記内壁の内側で、前記遮蔽壁の上端の位置又は該上端よりも高い位置に設けられる請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記遮蔽壁及び前記不活性ガス供給口は、前記処理容器の天井面に設けられている請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記処理ガス供給口へ供給される前記処理ガスの流量を制御する流量制御装置と、
前記処理容器内の雰囲気を排気するよう構成された排気部と、
前記流量制御装置及び前記排気部を制御して、前記処理空間における圧力を、大気圧又は大気圧に対して微減圧となるように調整するよう構成された制御部と、
を更に有する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記処理ガス中の水素ガスの濃度は4%以上である請求項10に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記不活性ガス供給口から前記処理容器内に供給される不活性ガスの流量は、前記ガス混合部における水素ガスの濃度が4%未満となるように調整される請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記処理ガス中の水素ガスの濃度は100%である請求項11に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記不活性ガス供給口へ供給される前記不活性ガスの流量を制御する流量制御装置と、
前記流量制御装置を制御して、前記不活性ガス供給口から供給される前記不活性ガスの流量を、前記処理ガス供給口から供給される前記処理ガスの流量の24倍以上となるように調整するよう構成された制御部と、
を更に有する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項15】
上昇した状態の前記基板保持台の下端位置は前記遮蔽壁の下端位置よりも低い、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項16】
基板を保持し、処理容器の内部で昇降可能な基板保持台と、
上昇した状態の前記基板保持台及び前記基板に接触せず、前記基板保持台の上面と該上面に対する対向面との間の処理空間、及び上昇した状態の前記基板保持台の外周を囲む遮蔽壁と、
前記処理空間に水素ガスを含む処理ガスを供給する処理ガス供給口と、
前記処理空間の外側かつ前記遮蔽壁の外側に設けられ、前記遮蔽壁と前記処理容器の内壁との間の空間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給口と、
前記処理空間から出た前記処理ガスが前記不活性ガスと前記処理容器の内部で混合されるガス混合部と、上昇した状態の前記基板保持台の外周面と前記遮蔽壁の内周面との間に形成され、前記処理空間から前記ガス混合部に向かって前記処理ガスが流れるように構成された処理ガス流路と、を有し、前記遮蔽壁と前記処理容器の内壁との間の空間は、前記処理空間の外側で前記不活性ガス供給口と前記ガス混合部を連通させるように構成されている基板処理装置の前記基板保持台上に前記基板を載置する基板搬入工程と、
前記基板に前記処理ガスを用いた処理を行う処理工程と、
前記基板を前記処理容器から搬出する基板搬出工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項17】
基板を保持し、処理容器の内部で昇降可能な基板保持台と、
上昇した状態の前記基板保持台及び前記基板に接触せず、前記基板保持台の上面と該上面に対する対向面との間の処理空間、及び上昇した状態の前記基板保持台の外周を囲む遮蔽壁と、
前記処理空間に水素ガスを含む処理ガスを供給する処理ガス供給口と、
前記処理空間の外側かつ前記遮蔽壁の外側に設けられ、前記遮蔽壁と前記処理容器の内壁との間の空間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給口と、
前記処理空間から出た前記処理ガスが前記不活性ガスと前記処理容器の内部で混合されるガス混合部と、上昇した状態の前記基板保持台の外周面と前記遮蔽壁の内周面との間に形成され、前記処理空間から前記ガス混合部に向かって前記処理ガスが流れるように構成された処理ガス流路と、を有し、前記遮蔽壁と前記処理容器の内壁との間の空間は、前記処理空間の外側で前記不活性ガス供給口と前記ガス混合部を連通させるように構成されている基板処理装置に実行させるプログラムであって、
前記基板保持台上に前記基板を載置する手順と、
前記基板に前記処理ガスを用いた処理を行う手順と、
前記基板を前記処理容器から搬出する手順と、
をコンピュータによって前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、半導体装置の製造方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
基板をアニール処理可能な処理室を有する基板処理装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-169663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体の製造工程では、水素ガス雰囲気の様々な圧力下で基板に対する水素アニール処理を行うことがある。その際、水素だけを使用する場合や、ヘリウム、窒素、アルゴンと水素を混合したガスを使用する場合がある。
【0005】
処理装置では、可燃ガス、支燃ガス、着火源の条件が揃うと着火、燃焼が生じる。微減圧下又は大気圧下で高濃度の水素ガスを用いた処理を行う場合、何らかの要因で処理室内のガスに着火した時には、処理室内のガスが膨張して処理室内が加圧される。減圧下であれば、膨張時に加圧限界値を越えないように容易に対処できるが、微減圧下もしくは大気圧下で処理するためには、処理室全体を高耐圧仕様にする等、十分な安全対策が必須である。
【0006】
処理室の容積を小さくし、狭いエリアで基板に対する処理をすれば、安全対策を施す範囲が小さくなり対処が容易になるが、装置構成によっては基板を搬送するためのスペースが不十分となり、アクセスが困難になることがある。
【0007】
本開示は、微減圧下又は大気圧下での基板に対する高濃度の水素ガスを用いた処理を容易に可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る基板処理装置は、処理容器の内部で昇降可能な基板保持台と、上昇した状態の前記基板保持台の上面と該上面に対する対向面との間の処理空間、及び上昇した状態の前記基板保持台の外周を囲む遮蔽壁と、前記処理空間に水素ガスを含む処理ガスを供給する処理ガス供給口と、前記遮蔽壁と前記処理容器の内壁との間の空間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給口と、前記処理空間から出た前記処理ガスが前記処理容器の内部で前記不活性ガスと混合されるガス混合部と、上昇した状態の前記基板保持台の外周面と前記遮蔽壁の内周面との間に形成され、前記処理空間から前記ガス混合部に向かって前記処理ガスが流れるように構成された処理ガス流路と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、微減圧下又は大気圧下での基板に対する高濃度の水素ガスを用いた処理を容易に可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る基板処理装置において、基板保持台が下降した状態を示す断面図である。
図2】第1実施形態に係る基板処理装置において、基板保持台が上昇した状態を示す断面図である。
図3】第1実施形態に係る基板処理装置において、水素アニール処理時における処理ガスと不活性ガスの流れを示す拡大断面図である。
図4】第1実施形態に係る基板処理装置において、不活性ガス供給口の他の例を示す断面図である。
図5】基板処理装置のコントローラの概略構成図である。
図6】基板処理工程のフロー図である。
図7】第1実施形態に係る基板処理装置において、シャワーヘッドの他の例を示す拡大断面図である。
図8】第2実施形態に係る基板処理装置において、基板保持台が下降した状態を示す断面図である。
図9】第2実施形態に係る基板処理装置において、基板保持台が上昇した状態を示す断面図である。
図10】第2実施形態に係る基板処理装置において、水素アニール処理時における処理ガスと不活性ガスの流れを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示を実施するための形態を図面に基づき説明する。各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。また、図面の上方向を上方又は上部、下方向を下方又は下部として説明する。また、本実施形態において記載する圧力は、すべて気圧を意味する。
【0012】
[第1実施形態]
図1図2において、本実施形態に係る基板処理装置10では、半導体装置の製造の一工程が行われる。この基板処理装置10は、基板保持台12と、遮蔽壁14と、処理ガス供給口16と、不活性ガス供給口18と、ガス混合部22とを有している。
【0013】
(基板保持台)
基板保持台12は、処理容器24の内部、つまり処理室に設けられ、該処理容器24内で昇降可能な、例えば円板状のサセプタである。ここで、処理容器24は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、処理容器24は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料または、石英により構成されている。処理容器24内には、基板30を搬送する搬送空間26が形成されている。また処理容器24内には、後述するように、基板保持台12の上昇時に、基板30としてのシリコンウエハ等を処理する処理空間32が形成されるようになっている。 処理容器24は、上部容器24aと下部容器24bで構成される。下部容器24bの側面には、ゲートバルブ34に隣接した基板搬入出口24dが設けられている。基板30は、基板搬入出口24dを介して、下部容器24b内の搬送空間26と真空搬送室(図示せず)との間を移動するようになっている。下部容器24bの底部には、リフトピン36が複数設けられている。
【0014】
基板保持台12の上面38には、基板30を載置する載置面38aが例えば凹状に設けられている。載置面38aの径方向外側には、基板30が載置されない外側上面38bが設けられている。載置面38aは、基板保持台12の上面38に例えば凹状に設けられている。つまり、基板保持台12の上面38は、載置面38aと外側上面38bを有している。
【0015】
基板30を載置面38aに配置した場合において、外側上面38bは、基板30の上面と略面一となるように構成されている。これにより、外側上面38bは、基板30の外周側への処理ガスの供給量を、基板30の中心側への処理ガスの供給量に近付けることを可能にする。基板保持台12の外周12bの下部には、張出し部12cが設けられている。張出し部12cは、外周12bよりも径方向外側にフランジ状に突出する部位である。
【0016】
なお、基板保持台12には、加熱部としての第1ヒータ41が設けられていてもよい。第1ヒータ41を設けることにより、基板30を加熱し、基板30上に形成される膜の品質を向上させることができる。また、第1ヒータ41は、温度制御部40に接続され温度制御可能に構成される。温度制御部40は、信号線を介して後述のコントローラ44(図9)に温度データを送受信可能に構成される。
【0017】
基板保持台12には、リフトピン36が貫通する貫通孔12aが、リフトピン36と対応する位置にそれぞれ設けられている。また、基板保持台12には、基板30上に形成される膜の膜厚を測定する膜厚モニタ(図示せず)が設けられていてもよい。その場合、膜厚モニタは信号線を介して膜厚計に接続される。そして、膜厚計で生成された膜厚値(膜厚データ)は、信号線を介して後述のコントローラ44(図9)に送受信可能に構成される。
【0018】
基板保持台12は、例えば1本のシャフト46によって支持される。シャフト46は、処理容器24の底部を貫通しており、更には処理容器24の外部で昇降機構48に接続されている。昇降機構48を作動させてシャフト46及び基板保持台12を昇降させることにより、載置面38a上に載置される基板30を昇降させることが可能となっている。なお、シャフト46の下端部の周囲はベローズ50により覆われており、処理容器24内は気密に保持されている。昇降機構48は、基板保持台12の高さデータを後述のコントローラ44に対して送信可能に構成されている。
【0019】
図1に示されるように、基板30の搬送時には、基板保持台12は、載置面38aが基板搬入出口24dの位置(つまり、搬送位置)となるように下降し、基板30の処理時には、図2に示されるように、基板30が処理容器24内の処理位置(つまり、処理位置)まで上昇する。
【0020】
具体的には、基板保持台12が搬送位置まで下降したときには、リフトピン36の上端部が載置面38aから突出して基板30を下方から突き上げ、基板30を基板保持台12の上面38、具体的には外側上面38bより高い位置まで持ち上げた状態で支持するようになっている。また、基板保持台12が処理位置まで上昇したときには、リフトピン36は載置面38aから埋没して、載置面38aが基板30を下方から支持するようになっている。なお、リフトピン36は、基板30と直接触れるため、例えば、石英やアルミナなどの材質で形成することが望ましい。なお、リフトピン36に昇降機構を設けて、基板保持台12とリフトピン36が相対的に動くように構成してもよい。
【0021】
(遮蔽壁)
図2図3において、遮蔽壁14は、上昇した状態の基板保持台12の上面38と該上面38に対する対向面52との間の処理空間32、及び上昇した状態の基板保持台12の外周12bを囲む部位として設けられている。実際には載置面38aに基板30が載せられて処理されるので、処理空間32は、載置面38aに載せられた基板30の上面と、該上面に対向する対向面52との間に形成される。
【0022】
遮蔽壁14は、後述するシャワーヘッド54に例えば一体的に設けられている。具体的には、遮蔽壁14は、シャワーヘッド54の径方向外側端部から下方へ円筒状に延びる部位として設けられている。基板保持台12が処理位置まで上昇した状態において、遮蔽壁14を含むシャワーヘッド54は、基板30及び基板保持台12には接触せず、載置面38aに載せられた基板30の上面と、該上面に対向する対向面52との間に処理空間32が形成されるようになっている。また、遮蔽壁14の内周面と基板保持台12の外周12bとの間、及び遮蔽壁14の下端と基板保持台12の張出し部12cとの間には、処理ガス流路56が形成されるようになっている。処理ガス流路56は、処理空間32に供給された水素ガスを含む処理ガスが、該処理空間32を出て不活性ガスと合流する位置まで導く流路である。換言すると、処理ガス流路56は、処理空間32と後述するガス混合部22との間を連通させ、処理空間32からガス混合部22に向かって処理ガスが流れる流路を構成する。
【0023】
また、基板保持台12は、処理位置まで上昇した状態において、基板保持台12の下端位置が遮蔽壁14の下端よりも低い高さに位置するように上昇する。本実施形態では、張出し部12cの高さ方向の幅(厚さ)と、遮蔽壁14の下端と張出し部12cとの間の処理ガス流路56の幅との合計の長さだけ、基板保持台12の下端位置が遮蔽壁14の下端よりも低くなる状態となるように基板保持台12が上昇する。処理位置まで上昇した状態における基板保持台12の下端と遮蔽壁の下端との位置関係をこのようにすることによって、処理ガス流路56から流れ出る処理ガスが遮蔽壁14の内側に滞留することなく、後述する不活性ガス供給口18から供給された不活性ガスの流れと直接合流させることができる。
【0024】
(処理ガス供給口)
図1から図3において、処理ガス供給口16は、処理空間32に水素ガスを含む処理ガスを供給する部位である。処理ガス供給口16には、処理ガスに対する流量制御装置としてのMFC(Mass Flow Controller)58と開閉弁としての処理ガス用バルブ60が接続されている。MFC58、処理ガス用バルブ60、及び処理ガス供給口16により、処理ガス供給部(処理ガス供給系)が構成される。
【0025】
処理空間32における処理ガス中の水素ガスの濃度は4%以上である。本実施形態に係る処理ガス中の水素ガスの濃度が100%であってもよい。この場合、不活性ガス供給口18から処理容器24内に供給される不活性ガスの流量は、処理ガスの24倍以上である。これにより、ガス混合部22での水素ガスの濃度を4%未満にすることができる。
【0026】
ガス混合部22における水素ガスの濃度を4%未満にすることにより、たとえ水素ガスと酸素との混合が発生した場合であっても、水素ガスへの着火による急激な燃焼を防止することができる。換言すると、本実施形態に係る装置構成を採用することで、処理空間32に供給される処理ガス中の水素ガスの濃度を4%以上とした場合であっても、着火による急激な燃焼を防止することができる。処理空間32に供給される処理ガス中の水素ガスの濃度を100%とした場合、水素ガスの漏洩等による水素ガスと酸素との混合が発生する可能性がより高いため、本実施形態に係る装置構成の採用はより好適である。なお、混合部22における水素ガスの濃度は4%未満であればできるだけ低い方が望ましいが、希釈に必要な不活性ガスの供給可能な流量には実質的な限界があるため、0.1%以上の範囲とすることが適当である。
【0027】
処理ガス供給口16は、上下方向に延びる管状の支持軸(シャワーヘッド)62に形成されている。支持軸(シャワーヘッド)62は、処理容器24の天井面24eを貫通している。
【0028】
この処理ガス供給口16は、対向面52に設けられた単数又は複数の処理ガス噴出孔54aにより構成されている。具体的には、処理ガス供給口16は、シャワーヘッド54により構成されている。このシャワーヘッド54は、処理容器24内に設けられ、処理ガス供給口16から供給された処理ガスを分散させて処理空間32に供給可能に構成されている。シャワーヘッド54を「ガス分散部」と言い換えることもできる。シャワーヘッド54において、基板保持台12の上面38に対する対向面52には、複数の処理ガス噴出孔54aが設けられている。処理ガス噴出孔54aは、対向面52の全体に配置されている。処理ガス噴出孔54aが設けられた部位を多孔板64と呼ぶとすると、多孔板64の下面が対向面52である。
【0029】
シャワーヘッド54は、多孔板64と、多孔板64の上方に位置する蓋66と、多孔板64と蓋66の間に挟まれたスペーサ65と、多孔板64、蓋66及びスペーサ65により囲まれたバッファ空間67とを有している。蓋66には、処理ガスを加熱するための第2ヒータ42が設けられている。また、シャワーヘッド54は、処理容器24内に、該処理容器24の天井面24eから離れて配置されている。具体的には、処理ガス供給口16から導入される処理ガスは、シャワーヘッド54内のバッファ空間67に供給され、該バッファ空間67から多孔板64の複数の処理ガス噴出孔54aを通じて処理空間32に広く分散供給されるようになっている。シャワーヘッド54における多孔板64は、例えば、石英、アルミナ、ステンレス、アルミニウム等の材料で構成される。
【0030】
なお、供給されたガスの流れを形成するガスガイド(図示せず)がバッファ空間67に設けられていてもよい。ガスガイドは、例えば蓋66の下面に設けられ、その形状は、処理ガス供給口16がバッファ空間67に開口する部位を中心として、基板30の下方に向かうにつれて径が広がる円錐形状である。
【0031】
(不活性ガス供給口)
不活性ガス供給口18は、遮蔽壁14と処理容器24の内壁24cとの間の空間に不活性ガスを供給する部位である。不活性ガスとしては、例えば窒素ガスが用いられる。不活性ガス供給口18には、不活性ガスに対する流量制御装置としてのMFC68と不活性ガス用バルブ70が接続されている。MFC68、不活性ガス用バルブ70、及び不活性ガス供給口18により、不活性ガス供給部(不活性ガス供給系)が構成される。
【0032】
不活性ガス供給口18から処理容器24内に供給される不活性ガスの流量は、ガス混合部22における水素ガスの濃度が例えば4%未満となるように調整される。
【0033】
一例として、不活性ガス供給口18は、処理容器24の天井面24eにおけるシャワーヘッド54の外縁直上よりも中央側に少なくとも設けられている。具体的には、不活性ガス供給口18は、処理容器24の天井面24eの中央部におけるシャワーヘッド54の支持軸(シャワーヘッド)62の外側に、該支持軸(シャワーヘッド)62と同心状に設けられている。換言すれば、シャワーヘッド54の支持軸(シャワーヘッド)62は、不活性ガス供給口18に挿通されている。
【0034】
また、不活性ガス供給口18は、処理容器24内における遮蔽壁14の外側かつ内壁24cの内側で、遮蔽壁14の上端14aの位置又は該上端よりも高い位置に設けられている。
【0035】
不活性ガスは、不活性ガス供給口18から、シャワーヘッド54の上面と処理容器24の天井面24eとの間に供給され、遮蔽壁14と処理容器24の内壁24cとの間の空間へ至るように構成されている。
【0036】
なお、不活性ガス供給口18の配置は、図1から図3に示される例に限られない。図4に示されるように、不活性ガス供給口18は、例えば処理容器24の天井面24eにおけるシャワーヘッド54の外縁に沿って周方向に複数設けられていてもよい。この周方向とは、シャワーヘッド54の周方向である。この複数の不活性ガス供給口18は、周方向に均等に設けられていてもよいし、周方向に不均等に設けられていてもよい。
【0037】
(ガス混合部)
図2図3において、ガス混合部22は、処理空間32を出た処理ガスが不活性ガスと混合される部位である。水素ガスを含む処理ガスは、不活性ガスと混合されることで希釈される。具体的には、遮蔽壁14と処理容器24の内壁24cとの間の空間には、不活性ガス供給口18から供給された不活性ガスが上方から下方に向かって流される。処理ガスは、処理空間32から出て、遮蔽壁14と基板保持台12との間の処理ガス流路56を抜けたところで、不活性ガスと合流し、該不活性ガスと混合される。つまり、処理容器24の内部のうち、処理ガスと不活性ガスの合流部から下方の空間が、ガス混合部22となっている。
【0038】
(排気部)
本開示に係る基板処理装置10は、更に排気部(排気系)を有している。この排気部は、例えば下部容器24bに設けられている。具体的には、下部容器24bの内壁24cに、処理容器24の雰囲気を排気するための排気口74が設けられている。処理容器24の外側から排気口74に対して、排気管76の上流端が接続されている。排気管76には、一例として、上流側から順に圧力調整器(圧力調整部)としてのAPC(Auto Pressure Controller)78、開閉弁としてのベントバルブ80、真空排気装置としての真空ポンプ82が設けられている。排気口74、排気管76、APC78及びベントバルブ80により排気部は構成される。また、排気部は真空ポンプ82を更に含んでもよい。
【0039】
この排気部のAPC78及び処理ガス供給部のMFC58を制御することにより、処理空間32における圧力は、大気圧又は大気圧に対して微減圧となるように調整される。微減圧の範囲は、例えば「220Torr以上、大気圧未満」である。これは、燃焼上限濃度(75%)の水素ガスに燃焼が生じることで急激に体積膨張した場合、処理空間32内の圧力が大気圧を超える可能性がある範囲である。すなわち、このような圧力範囲において、本実施形態に係る装置構成は安全性を確保するために有用である。また、微減圧の範囲は、例えば「300Torr以上、大気圧未満」としてもよい。これは、基板上に形成された金属膜や金属配線に対する水素アニール処理によって実用的な効果が得られる範囲である。なお、必要に応じて、処理空間32における圧力を大気圧より大きくしてもよい。
【0040】
(制御部)
本開示に係る基板処理装置10は、図5に示されるように、制御部としてのコントローラ44を有している。コントローラ44は、図示しない信号線を通じてゲートバルブ34、昇降機構48、APC78、真空ポンプ82、第1ヒータ41、第2ヒータ42、処理ガス用バルブ60、不活性ガス用バルブ70、及びベントバルブ80をそれぞれ制御するように構成されている。また、図5では省略するが、コントローラ44は、図1に示されるMFC58、処理ガス用バルブ60、MFC68及び不活性ガス用バルブ70についてもそれぞれ制御するように構成されている。
【0041】
図5に示されるように、制御部(制御手段)であるコントローラ44は、CPU(Central Processing Unit)84a、RAM(Random Access Memory)84b、記憶装置84c、I/Oポート84dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM84b、記憶装置84c、I/Oポート84dは、内部バス84eを介して、CPU84aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ44には、例えばタッチパネルやディスプレイ等として構成された入出力装置86が接続されている。
【0042】
記憶装置84cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置84c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述する基板処理の手順や条件などが記載されたプログラムレシピ等が読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ44に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプログラムレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プログラムレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM84bは、CPU84aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0043】
I/Oポート84dは、上述のゲートバルブ34、昇降機構48、APC78、真空ポンプ82、第1ヒータ41、第2ヒータ42、処理ガス用バルブ60、不活性ガス用バルブ70、ベントバルブ80、MFC58、処理ガス用バルブ60、MFC68及び不活性ガス用バルブ70、等に接続されている。
【0044】
CPU84aは、記憶装置84cからの制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置86からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置84cからプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU84aは、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、I/Oポート84d及び図示しない信号線を通じて、ゲートバルブ34の開閉動作、昇降機構48の昇降動作、APC78の開度調整動作、真空ポンプ82の起動及び停止、第1ヒータ41及び第2ヒータ42への供給電力量調整動作(温度調整動作)、処理ガス用バルブ60、不活性ガス用バルブ70、ベントバルブ80、処理ガス用バルブ60の開閉動作、MFC58及びMFC68の各種ガスの流量調整動作、等を制御するように構成されている。
【0045】
コントローラ44は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)88に格納された上述のプログラムをコンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置84cや外部記憶装置88は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置84c単体のみを含む場合、外部記憶装置88単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。なお、コンピュータにプログラムを供給するための手段は、外部記憶装置88を介して供給する場合に限らない。例えば、ネットワーク90(インターネットや専用回線)等の通信手段を用い、外部記憶装置88を介さずにプログラムを供給するようにしてもよい。
【0046】
(基板処理工程)
次に、本実施形態に係る基板処理装置10及び半導体装置の製造方法を用いた基板処理工程について、主に図6を用いて説明する。図6は、本実施形態に係る基板処理工程を示すフロー図である。
【0047】
本基板処理工程では、基板上に形成された金属膜や金属配線に対して、水素ガス含有雰囲気下でアニール処理(水素アニール処理)を行う。
【0048】
本実施形態に係る半導体装置の製造方法は、基板処理装置10の処理容器24内に基板30を搬入する基板搬入工程S110と、基板30に水素アニール処理を行う処理工程S200(S120~S140)と、基板30を処理容器24から搬出する基板搬出工程S150と、を有する。この基板処理工程は、例えばフラッシュメモリ等の半導体装置の製造工程の一工程として、上述の基板処理装置10により実施される。以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作は、図5に示されるコントローラ44により制御される。
【0049】
(基板搬入工程S110)
まず、基板30としての例えばウエハを処理容器24内に搬入する。具体的には、昇降機構48が基板30の搬送位置まで基板保持台12を下降させて、基板保持台12の貫通孔12aにリフトピン36を貫通させる。その結果、リフトピン36が基板保持台12の上面38(具体的には、外側上面38b)よりも所定の高さ分だけ突出した状態となる。
【0050】
続いて、ゲートバルブ34を開き、処理容器24に隣接する真空搬送室から処理容器24内に、ウエハ搬送機構(図示せず)を用いて、基板搬入出口24dを通じて基板30を搬入する。搬入された基板30は、基板保持台12の表面から突出したリフトピン36上に水平姿勢で支持される。処理容器24内に基板30を搬入したら、ウエハ搬送機構を処理容器24外へ退避させ、ゲートバルブ34を閉じて処理容器24内を密閉する。そして、昇降機構48が基板保持台12を上昇させることにより、基板30は基板保持台12の上面38(具体的には、載置面38a)に載置(支持)される。また、基板保持台12の上面38と、シャワーヘッド54の対向面52との間に処理空間32が形成される。
【0051】
(昇温・真空排気工程S120)
続いて、処理容器24内に搬入された基板30の昇温を行う。第1ヒータ41は予め加熱されており、第1ヒータ41が埋め込まれた基板保持台12上に基板30を保持することで、例えば150~750℃の範囲内の所定値に基板30を加熱する。ここでは、基板30の温度が600℃となるよう加熱する。また、基板30の昇温を行う間、真空ポンプ82により排気管76を介して処理容器24内を真空排気し、処理容器24内の圧力を所定の値とする。真空ポンプ82は、少なくとも後述の基板搬出工程S150が終了するまで作動させておく。
【0052】
なお、本明細書における「150~750℃」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「150~750℃」とは「150℃以上750℃以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0053】
(反応ガス供給工程S130)
次に、反応ガスとして、水素を含む処理ガスの供給と、不活性ガスの供給を開始する。具体的には、処理ガス用バルブ60を開け、MFC58にて流量制御しながら、処理ガス供給口16から処理空間32への処理ガスの供給を開始すると共に、不活性ガス用バルブ70を開け、MFC68にて流量制御しながら、不活性ガス供給口18から処理容器24内への不活性ガスの供給を開始する。処理ガスは、シャワーヘッド54により分散して処理空間32に供給される。この際、シャワーヘッド54に設けられた第2ヒータ42により、処理ガスは所定温度に加熱される。不活性ガスは、不活性ガス供給口18から処理容器24内に入り、処理容器24の天井面24eとシャワーヘッド54の蓋66との間を通り、シャワーヘッド54の外縁に至り、遮蔽壁14と処理容器24の内壁24cとの間を通り、ガス混合部22へと流れて行く。
【0054】
このとき、水素ガスの濃度が100%の処理ガスを処理空間32に供給してもよい。処理空間32における処理ガス中の水素ガスの濃度は、例えば4%以上である。一方、不活性ガス供給口18から処理容器24内に供給される不活性ガスの流量は、ガス混合部22における水素ガスの濃度が4%未満となるように調整される。このとき、MFC58とAPC78の開度を調整して、処理空間32への処理ガスの供給流量と、処理容器24内の排気を制御することで、処理空間32における圧力が、例えば大気圧又は大気圧に対して微減圧(例えば300Torr以上、大気圧未満)となるように調整される。このように、処理容器24内を適度に排気しつつ、処理ガス及び不活性ガスの供給を継続する。
【0055】
基板30の上面は処理空間32に面しており、水素ガスを含む処理ガスにより基板30上の金属膜等が水素アニール処理される。図2図3に示されるように、処理空間32及び基板保持台12の外周12bは、シャワーヘッド54に一体的に設けられた遮蔽壁14に囲まれている。また、遮蔽壁14と処理容器24の内壁24cとの間には不活性ガスが供給されている。図3に示されるように、処理空間32から出た処理ガスは、遮蔽壁14と基板保持台12との間の処理ガス流路56を通り、該処理ガス流路56を抜けたところで不活性ガスと合流し、該不活性ガスと混合され、下方のガス混合部22へと至る。
【0056】
このように、大気圧又は微減圧下の処理空間32において、水素ガスの濃度が4%以上であっても、処理空間32の周囲が不活性ガスでパージされ、酸素が処理空間32に入り込むことがないため、水素ガスの急激な燃焼が抑制される。同様に大気圧又は微減圧下とされているガス混合部22では、処理ガスが不活性ガスにより希釈され、水素ガスの濃度が4%未満となっているため、水素ガスの急激な燃焼が抑制される。また、狭い処理空間32で基板の水素アニール処理を行うため、安全対策を施す範囲が小さくなり対処が容易である。このため、基板搬送スペース(つまり、搬送空間26)を確保しつつ、最小の安全対策で、微減圧下又は大気圧下での基板に対する水素アニール処理が可能となる。
【0057】
(真空排気工程S140)
水素アニール処理が完了したら、処理ガス及び不活性ガスの供給を停止し、排気管76を介して処理容器24内を真空排気する。これにより、処理容器24内の処理ガス、不活性ガス及びガスの反応により発生した排ガス等を処理容器24外へと排気する。その後、APC78の開度を調整し、処理容器24内の圧力を処理容器24に隣接する真空搬送室(つまり、図示しない基板30の搬出先)と同じ圧力、例えば100Paに調整する。
【0058】
(基板搬出工程S150)
処理容器24内が所定の圧力となったら、基板保持台12を基板30の搬送位置まで下降させ、リフトピン36上に基板30を支持する。そして、ゲートバルブ34を開き、ウエハ搬送機構を用いて、基板搬入出口24dを通じて、基板30を処理容器24外へ搬出する。以上により、本実施形態に係る基板処理工程が終了する。
【0059】
(プログラム)
上記した基板処理工程に用いられるプログラムは、処理容器24内に基板30を搬入して基板保持台12上に載置する手順と、基板30に水素アニール処理を行う手順と、基板30を処理容器24から搬出する手順とを、コンピュータによって基板処理装置10に実行させる。
【0060】
本実施形態によれば、水素ガスの燃焼発生時において水素ガスが急激に膨張する空間を制限することで、装置全体を高耐圧化や防爆化の対策を施すことなく、高耐圧化や防爆化の対策に必要なコストを低減し、また運用を容易としながら、装置の安全性能を向上させることができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、高濃度の水素ガスが存在する処理空間32の容積を、遮蔽壁12と昇降する基板保持台12によって最小化することができる。
【0062】
また、本実施形態によれば、処理空間32から排出された高濃度の水素ガスを、ガス混合部22において速やかに希釈して燃焼下限濃度(4%)未満の濃度にすることで、処理空間32以外における急激な燃焼の発生する可能性がある領域を最小化することができる。
【0063】
また、本実施形態によれば、遮蔽壁12と処理容器24の内壁の間に不活性ガスを供給することで、処理空間32から処理容器24の外への水素ガスの漏洩を確実に防止することができる。
【0064】
また、本実施形態によれば、シャワーヘッド54全体を不活性ガスでパージするように装置を構成することで、シャワーヘッド54から漏洩する水素ガスがもし存在する場合であっても、処理容器24の外への漏洩を確実に防止することができる。また、処理空間32内への支燃性ガスの流入を抑制することができる。
【0065】
また、本実施形態によれば、不活性ガス供給口18が遮蔽壁14の上端14aの位置又は該上端よりも高い位置に設けることにより、遮蔽壁14の外周に沿って流れる不活性ガスによる遮蔽壁14の冷却効果を得ることもできる。
【0066】
(不活性ガス供給口の変形例)
図7に示されるように、不活性ガス供給口18を、複数の不活性ガス噴出孔94aが設けられたシャワーヘッド94により構成してもよい。この構成では、不活性ガス供給口18から導入される不活性ガスは、シャワーヘッド94内のバッファ空間97に供給され、該バッファ空間97から複数の不活性ガス噴出孔94aを通じて処理容器24内に分散供給される。
【0067】
[第2実施形態]
図8から図10において、本実施形態に係る基板処理装置20では、遮蔽壁14及び不活性ガス供給口18が、処理容器24の天井面24eに設けられている。具体的には、処理容器24の天井面24eの中央部に処理ガス用のシャワーヘッド54が組み込まれている。また、天井面24eにおけるシャワーヘッド54の径方向外側に、遮蔽壁14が用いられている。遮蔽壁14は、例えば円筒状に形成され、シャワーヘッド54とは別に設けられている。不活性ガス供給口18は、遮蔽壁14と処理容器24の内壁24cとの間に設けられている。この不活性ガス供給口18は、例えば周方向に複数均等に配置され、処理容器24の天井面24eに開口しており、遮蔽壁14の上端14aから下端に向けて、遮蔽壁14に沿うように不活性ガスを供給するように構成されている。
【0068】
処理容器24は、基板保持台12が配置される上室100と、排気部が接続された下室102に区画されている。上室100と下室102は隔壁104で区画されているが、隔壁104には上室100と下室102とを連通させる連通孔104aが形成されている。
【0069】
基板保持台12には、例えば複数のシャフト46によって支持されている。このシャフト46及び基板保持台12は、昇降機構48の作動により昇降するようになっている。なお、処理容器24や昇降機構48の構成は、第1実施形態と同じであってもよい。
【0070】
図8において、本実施形態に係る基板処理装置20では、基板保持台12を下降させた状態で基板30を処理容器24内に搬入する。搬入された基板30は、基板保持台12の表面から突出したリフトピン36上に水平姿勢で支持される。図9に示されるように、昇降機構48が基板保持台12を上昇させることにより、基板30は基板保持台12の上面38(具体的には、載置面38a)に支持される。また、基板保持台12の上面38と、シャワーヘッド54の対向面52との間に処理空間32が形成される。また、処理空間32及び基板保持台12の外周12bは、遮蔽壁14に囲まれる。
【0071】
図10に示されるように、反応ガス供給工程S130(図6)において、処理ガスは、処理容器24の天井面24eに設けられたシャワーヘッド54により分散して処理空間32に供給される。不活性ガスは、例えば遮蔽壁14の上端14aの位置又は該上端14aよりも高い位置にある不活性ガス供給口18から処理容器24内に入り、遮蔽壁14の上端から下端に向けて、遮蔽壁14に沿うように供給される。処理空間32から出た処理ガスは、遮蔽壁14と基板保持台12との間の処理ガス流路56を通り、該処理ガス流路56を抜けたところで不活性ガスと合流し、該不活性ガスと混合され、下方のガス混合部22へと至る。
【0072】
他の部分については、第1実施形態と同様であるので、同一又は対応する部分には図面に同一の符号を付し、説明を省略する。また、処理ガス供給口16からの処理ガスの供給、及び不活性ガス供給口18からの不活性ガスの供給を制御するMFCやバルブについても、図示は省略するが第1実施形態と同様の構造が用いられる。
【0073】
[他の実施形態]
以上、本開示の実施形態の一例について説明したが、本開示の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0074】
基板保持台12が処理位置まで上昇した状態で、基板30と対向面52との距離は、例えば2cm以下となるように制御される。この距離を2cm以下とすることで、上述の効果が実用的に得られる程度に、処理空間32の体積を制限することができる。またこの状態で、基板30と対向面52との距離は、例えば0.5cm以上となるように制御される。この距離を0.5cm以上とすることで、シャワーヘッド54の下面における温度分布の偏りが、基板30における面内温度分布に影響を与えることを抑制することができる。処理空間32の容量は、基板保持台12の外周12bと遮蔽壁14とが重なる範囲において、昇降機構48の制御により調整される。
【0075】
更に、基板保持台12が処理位置まで上昇した状態で、基板保持台12の外側上面38bから遮蔽壁14の下端までの上下方向の長さは、例えば5cm以上である。この長さを5cm以上とすることで、処理ガス流路56を介して処理空間32内に処理ガス以外のガスが流入することを防止することができる。またこの状態で、基板保持台12の外周12bと遮蔽壁14との基板保持台12の径方向の間隔は、例えば1cm以下である。この間隔は、基板保持台12の径方向断面における処理ガス流路56の幅に相当する。この間隔を1cm以下とすることで、処理ガス流路56を介して処理空間32内に処理ガス以外のガスが流入することを防止することができる。また、この間隔は、0.1cm以上である。この間隔を0.1cm以上とすることで、処理ガス流路56の実用的なコンダクタンスを確保することができる。
【0076】
また、上述では、基板30を一枚ずつ処理する基板処理装置10,20について記したがこれに限らず、処理容器24内に基板30を水平方向に複数枚並べるバッチ式装置であっても良い。
【0077】
更に、上述では、半導体装置の製造工程について記したが、実施形態に係る開示技術は、半導体装置の製造工程以外にも適用可能である。例えば、液晶デバイスの製造工程、太陽電池の製造工程、発光デバイスの製造工程、ガラス基板の処理工程、セラミック基板の処理工程、導電性基板の処理工程、などの基板処理がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10