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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-29
(45)【発行日】2024-08-06
(54)【発明の名称】放射導管
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/20 20060101AFI20240730BHJP
   H05G 2/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G03F7/20 503
H05G2/00 K
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022515515
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-28
(86)【国際出願番号】 EP2020075034
(87)【国際公開番号】W WO2021063637
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】19200480.2
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ハイマンス,レムコ,ヨハネス,エリサ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デル ストラーテン,ゲリット
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンデルハリアン,イヴォ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェステルラケン,ジャン,スティーブン,クリスティアーン
【審査官】小林 幹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0008335(US,A1)
【文献】特表2018-500601(JP,A)
【文献】特表2010-539700(JP,A)
【文献】国際公開第2018/127565(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUVリソグラフィ装置のための放射源であって、
プラズマ形成領域を含むチャンバと、
前記チャンバ内に配置され、前記プラズマ形成領域で放出された放射を収集するように、かつ、前記収集した放射を中間焦点領域の方へ誘導するように構成された放射コレクタと、
前記放射コレクタと前記中間焦点領域との間に配置された放射導管と、を備え、
前記放射導管は、保護ガス流を誘導するための、前記放射導管の壁の内面における少なくとも1つの放出口と、前記放射導管の前記壁の前記内面から延出し、前記保護ガス流を方向転換するように構成された少なくとも1つのガイド部と、を含む、放射源。
【請求項2】
前記少なくとも1つのガイド部は、前記放射導管の前記壁の前記内面から実質的に離れる方へ向かう第1の方向から前記放射導管の前記壁の前記内面に実質的に沿っている第2の方向へ前記保護ガス流を方向転換するように構成されている、請求項1に記載の放射源。
【請求項3】
前記第2の方向は、実質的に前記プラズマ形成領域の方へ向かう、請求項2に記載の放射源。
【請求項4】
前記少なくとも1つのガイド部は、前記保護ガス流を方向転換して、前記放射導管の前記壁の前記内面に実質的に沿って誘導される保護ガスカーテン流を形成する、請求項1から3の何れか一項に記載の放射源。
【請求項5】
前記壁の前記内面は、前記中間焦点領域の遠位の入口開口から前記中間焦点領域の近位の出口開口まで内側へテーパ状である、請求項1から4の何れか一項に記載の放射源。
【請求項6】
前記放射導管は、前記中間焦点領域の近位に配置されている、請求項1から5の何れか一項に記載の放射源。
【請求項7】
前記少なくとも1つのガイド部及び前記放射導管は、一体型構造として形成されている、請求項1から6の何れか一項に記載の放射源。
【請求項8】
前記少なくとも1つのガイド部は、前記放射導管の前記壁の前記内面で円周方向に及び/又は連続的に延出している、請求項1から7の何れか一項に記載の放射源。
【請求項9】
前記少なくとも1つのガイド部の表面は、前記放射導管の前記壁の前記内面と前記少なくとも1つのガイド部との間にチャネルを形成している、請求項1から8の何れか一項に記載の放射源。
【請求項10】
前記放射導管の前記壁の前記内面における前記少なくとも1つの放出口は、前記チャネルに配置されている、請求項9に記載の放射源。
【請求項11】
前記放射導管の前記壁の前記内面は、滑らかな表面、隆起のある表面、段差のある表面、起伏のある表面、及び/又は、羽根表面、のうち少なくとも1つによって画定されている、請求項1から10の何れか一項に記載の放射源。
【請求項12】
前記放射導管の隆起、起伏、又は羽根から離れる方へ前記保護ガス流を方向転換するように、前記チャネルは前記壁の前記内面に対して角度を付けて形成されている、請求項9又は10に従属する場合の請求項11に記載の放射源。
【請求項13】
前記放射源は、前記チャンバ内で磁場を発生させるための磁石を含み、
前記磁石は、前記プラズマから放射された荷電粒子を捕捉するように構成されている、請求項1から12の何れか一項に記載の放射源。
【請求項14】
請求項1に記載の放射源のための放射導管であって、
前記放射導管は、
保護ガス流を誘導するための、前記放射導管の壁の内面における少なくとも1つの放出口と、
前記放射導管の前記壁の前記内面から延出し、前記保護ガス流を方向転換するように構成された少なくとも1つのガイド部と、
を備える、放導管
【請求項15】
請求項14に記載の放射導管内のデブリ及び/又は蒸気の堆積を低減する方法であって、
前記放射導管の前記少なくとも1つの放出口に保護ガス流を提供して、前記保護ガス流が前記少なくとも1つのガイド部によって方向転換されるようにすることを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
[0001] 本出願は、2019年9月30日に出願された欧州特許出願第19200480.2号の優先権を主張する。これは援用により全体が本願に含まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、EUVリソグラフィ装置のための放射源用の放射導管、及びEUVリソグラフィ装置のための放射源に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に使用可能である。リソグラフィ装置は、例えばパターニングデバイス(例えばマスク)からのパターンを、基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)の層に投影することができる。
【0004】
[0004] 基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を使用することができる。この放射の波長は、基板上に形成可能なフィーチャの最小サイズを決定する。4~20nmの範囲内、例えば6.7nm又は13.5nmの波長を有する極端紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置は、例えば193nmの波長を有する放射を使用するリソグラフィ装置よりも小さいフィーチャを基板上に形成するのに使用することができる。
【0005】
[0005] EUV放射は、プラズマを用いて生成することができる。EUV放射を生成するための放射システムは、燃料を励起してプラズマを提供するためのレーザと、プラズマを収容するためのソースコレクタモジュールと、を含み得る。プラズマは例えば、適切な材料(例えばスズ(Sn))の粒子及び/又は蒸気、又は適切なガスもしくは蒸気の流れ、例えばXeガスもしくはLi蒸気のような燃料に、レーザビームを誘導することによって生成することができる。これによって得られるプラズマは、例えばEUV放射のような出力放射を放射し、これは放射コレクタを用いて収集される。放射コレクタは、放射を受容し、集束してビームにするミラー(mirrored)法線入射放射コレクタとすることができる。ソースコレクタモジュールは、プラズマをサポートする真空環境を与えるように配置された閉鎖構造又はチャンバを含むことができる。このような放射システムは通常、レーザ生成プラズマ(LPP:laser produced plasma)放射源と呼ばれる。
【0006】
[0006] LLP放射源内のプラズマ生成により、燃料から汚染粒子及び/又は蒸気及び/又は粒子デブリが発生する可能性がある。場合によっては、そのような汚染粒子及び/又は蒸気及び/又は粒子デブリは比較的高速で移動し、その場合、概ね放射ビームの経路に追従する傾向がある。他の場合には、そのような汚染粒子及び/又は蒸気及び/又は粒子デブリは比較的低速で移動し、その場合、自由にブラウン運動を生じる。一部のリソグラフィ装置では、比較的低速で移動する汚染粒子及び/又は蒸気は、リソグラフィ装置内のガス流によって運ばれることがある。
【0007】
[0007] 比較的高速で移動する汚染粒子及び/又は蒸気と比較的低速で移動する汚染粒子及び/又は蒸気は双方とも、リソグラフィ装置のパターニングデバイスの方へ移動する可能性がある。もし汚染粒子及び/又は蒸気が(極めて少数であっても)パターニングデバイスに到達したら、パターニングデバイスを汚染する恐れがある。パターニングデバイスの汚染は、リソグラフィ装置の結像性能を低下させ、深刻な場合はパターニングデバイスの交換が必要となり、コストと生産の非効率を招くことがある。
【0008】
[0008] 更に、粒子デブリ及び/又は蒸気は放射源内の他のコンポーネントに入射することがある。このようなデブリ及び/又は蒸気は、放射源がEUV生成プラズマを発生する能力、又はプラズマからリソグラフィ装置の他のコンポーネントへEUV放射ビームを提供する能力に影響を及ぼし得る。
【0009】
[0009] 例えば、粒子デブリ及び/又は蒸気は、赤外放射のような望ましくない放射を吸収するように設計されている放射源のコンポーネントに入射し、これに蓄積することがある。このような粒子デブリ及び/又は蒸気の蓄積は、そういったコンポーネントが望ましくない放射を吸収する能力に影響を与える可能性がある。
【0010】
[00010] 上述した汚染粒子及び/又は蒸気及び/又は粒子デブリの効果を低減又は軽減する手段を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0011】
[00011] 本発明の一態様によれば、EUVリソグラフィ装置のための放射源が提供される。この放射源は、プラズマ形成領域を含むチャンバと、チャンバ内に配置され、プラズマ形成領域で放出された放射を収集するように、かつ、収集した放射を中間焦点領域の方へ誘導するように構成された放射コレクタと、放射コレクタと中間焦点領域との間に配置された放射導管と、を備える。放射導管は、保護ガス流を誘導するための、放射導管の壁の内面における少なくとも1つの放出口と、放射導管の壁の内面から延出し、保護ガス流を方向転換するように構成された少なくとも1つのガイド部と、を含む。
【0012】
[00012] 有利な点として、本発明を具現化している放射源は、例えばSnデブリ粒子及び/又は蒸気のような粒子デブリ及び/又は蒸気の放射導管上の堆積率の著しい低減を示し得る。更に、本発明を具現化している放射源は結果として、中間焦点を通過してリソグラフィ装置内に入る粒子デブリ及び/又は蒸気を著しく低減させることができる。このため本発明は、そのような粒子デブリ及び/又は蒸気によるリソグラフィ装置の汚染も軽減することができる。放出口は放射導管の壁の内面に配置することができる。放出口は、放射導管の壁の内面における開口を含み得る。
【0013】
[00013] 少なくとも1つのガイド部は、放射導管の壁の内面から実質的に離れる方へ向かう第1の方向から放射導管の壁の内面に実質的に沿っている第2の方向へ保護ガス流を方向転換するように構成することができる。
【0014】
[00014] 第2の方向は実質的にプラズマ形成領域の方へ向かう方向とすることができる。
【0015】
[00015] 少なくとも1つのガイド部は、保護ガス流を方向転換して、放射導管の壁の内面に実質的に沿って誘導される保護ガスカーテン流を形成することができる。好ましくは、カーテン流は放射導管の壁の内面上に均等に分布し、粒子デブリは最終的に内面のあらゆる場所に到達する。
【0016】
[00016] 壁の内面は、中間焦点領域の遠位の入口開口から中間焦点領域の近位の出口開口まで内側へテーパ状とすることができる。EUVリソグラフィ装置のための放射源では、出口開口を通って逃げる粒子デブリが皆無であること、又は逃げるデブリが少なくともできる限り少数であることが重要である。デブリは、リソグラフィ装置の他の部分(スキャナ部分と呼ばれることがある)においてリソグラフィプロセスに悪影響を及ぼす。中間焦点領域の近くに壁を配置することにより、保護ガス流は、粒子デブリが出口開口を通って逃げるのを効果的に防止することができる。
【0017】
[00017] 放射導管は中間焦点領域の近位に配置することができる。
【0018】
[00018] 少なくとも1つのガイド部及び放射導管は一体型構造として形成することができる。
【0019】
[00019] 少なくとも1つのガイド部は、放射導管の壁の内面で円周方向に及び/又は連続的に延出することができる。
【0020】
[00020] 少なくとも1つのガイド部の表面は、放射導管の壁の内面と少なくとも1つのガイド部との間にチャネルを形成することができる。
【0021】
[00021] 放射導管の壁の内面における少なくとも1つの放出口はチャネルに配置することができる。
【0022】
[00022] 放射導管の壁の内面は、滑らかな表面、隆起のある表面、段差のある表面、起伏のある表面、及び/又は羽根表面のうち少なくとも1つによって画定することができる。
【0023】
[00023] 放射導管の隆起、段差、起伏、又は羽根から離れる方へ保護ガス流を方向転換するように、チャネルは壁の内面に対して角度を付けて形成することができる。
【0024】
[00024] 放射源は複数のガイド部を含み得る。
【0025】
[00025] ガイド部/各ガイド部は、複数の放出口からの保護ガス流を方向転換することができる。複数の放出口は、放射導管の壁の内面で円周方向に及び/又は連続的に延出している少なくとも1つのガイド部と組み合わせることができる。これにより、放射導管の円周に沿って保護ガス流を均等に分布させることが可能となる。更に、少なくとも1つのガイド部の表面は、放射導管の壁の内面と少なくとも1つのガイド部との間にチャネルを形成することができる。これにより、保護ガス流が放射導管の壁の内面に沿って流れる前に蓄積することができるリング形チャネルを形成することが可能となる。放射導管の壁の内面に複数の放出口が設けられている場合、保護ガス流はチャネル内に均等に蓄積し得る。
【0026】
[00026] 放射導管は、保護ガス流を誘導するための、放射導管の壁の内面における少なくとも1つの放出口を含むことができる。
【0027】
[00027] 放射源は、チャンバ内で磁場を発生させるための磁石を含むことができる。磁石は、使用時にプラズマから放射された荷電粒子を捕捉するように構成されている。
【0028】
[00028] 放射導管は、放射導管の壁の内面から延出し、保護ガス流を方向転換するように構成された少なくとも1つのガイド部を含むことができる。
【0029】
[00029] 本発明の第2の態様によれば、第1の態様に従った放射導管内のデブリ及び/又は蒸気の堆積を低減する方法が提供される。この方法は、放射導管の少なくとも1つの放出口に保護ガス流を提供して、保護ガス流が少なくとも1つのガイド部によって方向転換されるようにすることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
[00030] 本発明の実施形態を、単なる例として添付の概略図を参照して以下に説明する。
【0031】
図1】本発明の一態様に従ったリソグラフィ装置及び放射源を含むリソグラフィシステムを示す。
図2】デブリ及び/又は蒸気が堆積した放射導管を示す。
図3】本発明の一実施形態に従った放射導管の一部の断面斜視図を示す。
図4a】放射導管内の逆流の領域を示す。
図4b】本発明の一実施形態に従った放射導管内の逆流の領域を示す。
図5a】本発明の一実施形態に従った、保護ガス流を用いない放射導管内のSn粒子及び/又は蒸気堆積のシミュレーション結果を示す。
図5b】本発明の一実施形態に従った、20slm(standard liters per minute)の保護ガス流を用いた放射導管内のSn粒子及び/又は蒸気堆積の別のシミュレーション結果を示す。
図5c】本発明の一実施形態に従った、40slmの保護ガス流を用いた放射導管内のSn粒子及び/又は蒸気堆積の別のシミュレーション結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[00031] 図1は、放射源SO及びリソグラフィ装置LAを備えたリソグラフィシステムを示している。放射源SOは、EUV放射ビームBを生成し、このEUV放射ビームBをリソグラフィ装置LAに供給するように構成される。リソグラフィ装置LAは、照明システムILと、パターニングデバイスMA(例えばマスク)を支持するように構成された支持構造MTと、投影システムPSと、基板Wを支持するように構成された基板テーブルWTと、を備える。
【0033】
[00032] 照明システムILは、EUV放射ビームBがパターニングデバイスMAに入射する前にEUV放射ビームBを調節するように構成される。そのため、照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11を備えることができる。ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11は共に、EUV放射ビームBに所望の断面形状と所望の強度分布とを与える。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11に加えて又はこれらの代わりに、他のミラー又はデバイスを備えることができる。
【0034】
[00033] このように調節された後、EUV放射ビームBはパターニングデバイスMAと相互作用する。この相互作用の結果、パターン付きEUV放射ビームB’が生成される。投影システムPSは、パターン付きEUV放射ビームB’を基板Wに投影するように構成される。この目的のため、投影システムPSは、基板テーブルWTにより保持された基板Wにパターン付きEUV放射ビームB’を投影するように構成された複数のミラー13、14を備えることができる。投影システムPSは、パターン付きEUV放射ビームB’に縮小係数を適用し、これによってパターニングデバイスMAにおける対応するフィーチャよりも小さいフィーチャの像を形成することができる。例えば、4又は8の縮小係数を適用することができる。投影システムPSは、図1では2つのミラー13、14のみを有するものとして示されているが、投影システムPSは様々な数のミラー(例えば6個又は8個のミラー)を備えることができる。
【0035】
[00034] 基板Wは、前もって形成されたパターンを含むことができる。このような場合、リソグラフィ装置LAは、パターン付きEUV放射ビームB’により形成された像を、基板W上に前もって形成されたパターンと位置合わせする。
【0036】
[00035] 相対真空、すなわち大気圧を大きく下回る圧力の少量のガス(例えば水素)を、放射源SO、照明システムIL、及び/又は投影システムPS内に供給することができる。
【0037】
[00036] 図1に示されている放射源SOは例えば、レーザ生成プラズマ(LPP)放射源と呼ぶことがあるタイプである。例えばCOレーザを含み得るレーザシステム1は、レーザビーム2を介して、例えば燃料放出器3から与えられるスズ(Sn)のような燃料にエネルギを堆積するよう配置されている。以下の記載ではスズに言及するが、任意の適切な燃料を使用すればよい。燃料は、例えば液体の形態とすることや、例えば金属又は合金とすることが可能である。燃料放出器3は、例えば小滴の形態のスズを、プラズマ形成領域4へ向かう軌道に沿って誘導するよう構成されたノズルを備えることができる。レーザビーム2は、プラズマ形成領域4においてスズに入射する。レーザエネルギのスズへの堆積は、プラズマ形成領域4においてスズプラズマ7を生成する。プラズマイオンによる電子の脱励起及び再結合の間に、プラズマ7からEUV放射を含む放射が放出される。
【0038】
[00037] プラズマからのEUV放射は、コレクタ5によって収集され集束される。コレクタ5は、例えば近法線入射放射コレクタ5を含む(より一般的に法線入射放射コレクタと呼ばれることもある)。コレクタ5は、EUV放射(例えば、13.5nm等の所望の波長を有するEUV放射)を反射するように配置された多層ミラー構造を有し得る。コレクタ5は、2つの焦点を有する楕円構成を有し得る。焦点のうち第1のものはプラズマ形成領域4にあり、焦点のうち第2のものは中間焦点6にあり得る。これについては以下で検討する。
【0039】
[00038] レーザシステム1は、放射源SOから空間的に分離してもよい。これが当てはまる場合、レーザビーム2は、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエキスパンダ及び/又は他の光学系を含むビームデリバリシステム(図示せず)によって、レーザシステム1から放射源SOへ渡すことができる。レーザシステム1、放射源SO、及びビームデリバリシステムは、共に放射システムと見なすことができる。
【0040】
[00039] コレクタ5によって反射された放射は、EUV放射ビームBを形成する。EUV放射ビームBは、中間焦点6で集束されて、プラズマ形成領域4に存在するプラズマの中間焦点6での像を形成する。中間焦点6の像は、照明システムILの仮想放射源として作用する。放射源SOは、中間焦点6が放射源SOの閉鎖構造9の開口8に又は開口8の近くに位置付けられるように配置されている。
【0041】
[00040] 図1は放射源SOをレーザ生成プラズマ(LPP)放射源として図示しているが、放電生成プラズマ(DPP:discharge produced plasma)放射源又は自由電子レーザ(FEL:free electron laser)等のいずれかの適切な放射源を用いてEUV放射を発生させればよい。
【0042】
[00041] また、図1には本発明の一実施形態に従った放射導管100も示されている。放射導管100は放射源SO内に配置されており、コレクタ5によって形成されたEUV放射ビームBは中間焦点6に到達する前にこれを通過する。放射導管100は、赤外放射を吸収及び/又は反射するように構成され得る。これについては以下で更に詳しく説明する。
【0043】
[00042] 放射導管の壁の「内面」という場合、これは、放射導管の壁によって画定される導管、容器、又はチャンバの内側にあるか又はその内部に面する放射導管の壁の表面を指すものと理解するべきであり、これは例えば、コレクタ5によって形成されたEUV放射ビームBが通過する導管の表面である。
【0044】
[00043] 図2は、スズデブリ205及び/又は蒸気の堆積物が蓄積している放射導管200の一例を示し、放射導管に関する一般的な背景情報の目的で提供されている。図2の放射導管200は本発明を具現化するものではない。
【0045】
[00044] 放射導管200は、中間焦点6の遠位の入口開口210から中間焦点6の近位の出口開口220まで内側へテーパ状になった内壁を含む。出口開口220は、図1に示されているように放射源SOの閉鎖構造9の開口8とすることができる。「入口」及び「出口」という用語は、EUV放射ビームBの進行方向に対して用いられる。例えば、EUV放射はプラズマ形成領域4から放射導管200に入り、中間焦点6で放射導管200から出る。
【0046】
[00045] 図2に示されている例示の放射導管200では、放射導管200は実質的に円錐台形(frustoconical)であり、実質的に円形の断面を有する。
【0047】
[00046] 放射導管200の内壁のテーパ形状は、コレクタ5によって中間焦点6の方へ集束されるEUV放射すなわちEUV放射ビームBが妨げられずに放射導管200を通過するようにすればよい。
【0048】
[00047] 放射導管200のテーパ形状は、他の放射、具体的に言うと中間焦点6の方へ集束されない放射が、放射導管200に入射するように、例えば放射導管200の内壁の表面に入射するようにすればよい。例えば、レーザシステム1によって放出され、燃料で吸収されずに燃料から散乱又は反射された赤外放射は、コレクタ5によって放射導管200の方へ回折させることができる。
【0049】
[00048] 図2の例示的な放射導管200は複数の隆起215を含む。他の例示的な放射導管は、この代わりに又はこれに加えて、滑らかな表面及び/又は起伏のある表面、段差のある表面、又は羽根付きの表面を含み得る。複数の隆起215は、放射導管200の内壁の表面で円周方向に延出している。隆起215は、入口開口210の中心と出口開口220の中心を通る中心軸に沿って放射導管200を見た場合、隆起215が同心円状に配置されて見えるように配置されている。放射導管200の断面図において、隆起215は周期構造又は実質的な周期構造として配置され得る。
【0050】
[00049] 各隆起215は、放射導管200の内壁の表面から延出している。隆起215は、例えば入射赤外放射のような入射放射を吸収するように構成できる。この代わりに及び/又はこれに加えて、隆起215は、例えば入射赤外放射のような入射放射を反射するように構成できる。例えば隆起215は、入射放射を放射導管200の下部(すなわちコレクタ5に近い方)に反射するように構成できる。放射導管200の下部は、反射された放射を吸収するように構成できる。このような隆起215は「光るリング(glint ring)」として既知であり得る。
【0051】
[00050] 使用時に、出口開口220を介して、又は、概ね中間焦点6にもしくは中間焦点6の周辺に配置された1つ以上の注入口、ノズル、もしくはスリット(図示せず)を介して、保護ガス流を放射導管200内に導入することができる。保護ガス流はガス供給システムによって導入することができる。ガス供給システムは、動的ガスロック(DGL:Dynamic Gas Lock)システムとして既知であり得る。
【0052】
[00051] DGLシステムは、ガス流を中間焦点領域6からプラズマ形成領域4の方へ誘導するように構成できる。すなわち、保護ガス流は、放射ビームBの伝搬方向とは反対の(例えば実質的に反対の)方向であり得る。保護ガス流は、プラズマ形成領域4から中間焦点6の方へ進んでいくデブリ及び/又は蒸気を低減するか又は防止するのに充分な流量を有することができる。
【0053】
[00052] レーザビーム2で燃料を照射してプラズマ7を生成する場合、燃料の一部がデブリになる可能性がある。デブリは、例えばSnクラスタ、Sn粒子、Sn微粒子、Snナノ粒子等の粒子デブリ、及び/又は、例えばSn蒸気、SnHx蒸気、Sn原子、Snイオン等のSn堆積物、分子及び/又は原子デブリを含み得る。保護ガス流は、そのようなデブリ及び/又は蒸気が照明システムILに入るのを防止することができる。保護ガス流に用いられるガス、保護ガス流で用いられるガスの速度、保護ガス流で用いられるガスの密度もしくは圧力、例えば粒子デブリのようなデブリの大きさ、放射源SO内のデブリの速度及び/又はデブリ拡散の方向に応じて、保護ガス流の流量を選択することができる。これに加えて又はこの代わりに、ガス供給システムの構成又はジオメトリに応じて保護ガス流の流量を選択してもよい。
【0054】
[00053] 保護ガスの流量は一般に、中間焦点6又は中間焦点領域(「中間焦点領域」という用語は、「中間焦点」という用語に対応するか、類似するか、又は交換可能である用語である)を通過するデブリ粒子及び/又は蒸気、例えばSnデブリ粒子及び/又は蒸気の量を制限し、これによってリソグラフィ装置の少なくとも一部を燃料汚染から保護するのに充分であるよう選択される。しかしながら、高速になると、保護ガス流は放射導管200内である程度のガス再循環を発生させることがある。このような再循環又は「逆流」は、例えばSnデブリ粒子及び/又は蒸気のようなデブリ粒子及び/又は蒸気を中間焦点6に近付けるように作用し得るので、それらがリソグラフィ装置内へ入る可能性がある。更に、そのような再循環によって、デブリ及び/又は蒸気が例えば放射導管200の内壁のような表面に接触する可能性がある。このような効果は、放射導管200の隆起215上のスズデブリ205及び/又は蒸気の堆積物が明確に視認される図2で見ることができる。このような再循環は、特に中間焦点6の近くで発生し得る。
【0055】
[00054] 図3は、本発明の一実施形態に従った放射導管300の一部の断面斜視図を示す。また、図3は、図2に示されている放射導管200の設計をどのように変更して本発明を具現化するかを示す一例を与える。
【0056】
[00055] 放射導管300は、中間焦点領域の遠位の入口開口(図示せず)から中間焦点領域の近位の出口開口(図示せず)まで内側へテーパ状になった内壁を含む。図3に示されている例示的な実施形態では、入口開口は図3の下部の近くに配置され、出口開口は図3の上部の近くに配置される。
【0057】
[00056] 放射導管300の図示されている部分は、実質的に円錐台形の放射導管300の一部であり、従って実質的に円形の断面を有する。本発明の範囲内に該当する他の実施形態では、放射導管300が他の何らかの適切な形状を有し得ること、他の何らかの適切な断面形状を有し得ることは認められよう。例えば放射導管300は、実質的に円筒形、球形、半球形、又は立方形の形状を含み得る。放射導管300は、実質的に円形、楕円形、方形、又は他の任意の多面体の形状である断面を含み得る。放射導管300は、概ね中空の錐台形状を有し得る。
【0058】
[00057] 放射導管300の内壁のテーパ形状は、コレクタ5によって中間焦点6の方へ集束されるEUV放射が妨げられずに放射導管300を通過するようにすればよい。放射導管200を参照して記載したように、放射導管300のテーパ形状は、他の放射、具体的に言うと中間焦点6の方へ集束されない放射が、放射導管300に入射するようにすればよい。
【0059】
[00058] 放射導管300は、放射源の中間焦点領域の近位に配置することができる。すなわち、放射導管300は放射導管アセンブリの上部を形成することができる。この上部は中間焦点領域の近位であり、放射導管アセンブリの下部は中間焦点領域の遠位及び/又はプラズマ形成領域の近位である。放射導管300は、放射導管アセンブリの最上部(例えば中間焦点領域に最も近い部分)に相当し得る。このため、放射導管300を「中間焦点キャップ(Intermediate Focus Cap)」と呼ぶことができる。このような放射導管アセンブリは、1つ以上の中央又は下部のセクションを含み得る。このような中央又は下部のセクションは、実質的に錐台の形状とすることができ、放射導管300に結合することで放射導管アセンブリを形成できる。更に、一実施形態では、そのような放射導管アセンブリの1つ以上の中央又は下部のセクションは、赤外放射のような放射を吸収及び/又は反射するように構成された羽根付き表面又は隆起のある表面を含み得る。更に別の実施形態では、そのような中央又は下部のセクションは、温度制御された表面、特に、能動的に冷却された表面を含み得る。このような冷却された表面は、例えば、収集されたスズを固体の状態に維持するよう機能することができる。
【0060】
[00059] 図3の例示的な実施形態において、放射導管300は複数の羽根310を含む。すなわち、放射導管300の壁の内面は羽根表面で画定されている。本発明の範囲内に該当する他の実施形態では、放射導管300の壁の内面は、滑らかな表面、隆起のある表面、段差のある表面、起伏のある表面、及び/又は羽根表面のうち少なくとも1つによって画定できることは認められよう。
【0061】
[00060] 放射導管300は、保護ガス流を誘導するための複数の放出口320、325を含む。各放出口320、325は、分配チャネル330等のガス源から放射導管300内へ保護ガス流を誘導することができる。すなわち、各放出口320、325は、放射導管300の内壁によって画定された導管、チャンバ、空間、又は容器内へ、保護ガス流を誘導することができる。
【0062】
[00061] 保護ガス流は水素ガスを含み得る。他の実施形態では、別のガス又はガス混合物が使用され得ることは認められよう。例えば他の実施形態では、保護ガス流はアルゴンガス又はヘリウムガスを含み得る。
【0063】
[00062] 例示的な放射導管300は複数のガイド部335、345を含む。図3の例示的な実施形態において、放射導管300は2つのガイド部335、345を含む。他の実施形態では、放射導管300が1つだけのガイド部を含み得ること、又は、3つ、4つ、5つ、もしくはそれ以上のガイド部のように、3つ以上のガイド部を含み得ることは認められよう。好適な実施形態において、放射導管300は2つのガイド部を含む。
【0064】
[00063] 各ガイド部335、345は、放射導管300の壁の内面から延出している。各ガイド部335、345は、放射導管300の壁の内面で円周方向に及び/又は連続的に延出することができる。
【0065】
[00064] ガイド部335、345は、入口開口の中心と出口開口の中心を通る中心軸に沿って放射導管300を見た場合、ガイド部335、345が同心円状に配置されて見えるように配置されている。放射導管200の断面図において、ガイド部335、345は周期構造又は実質的な周期構造として配置され得る。
【0066】
[00065] 各ガイド部335、345は、実質的にリング形の構造を形成している。ガイド部335、345を「流れリング(flow-ring)」と呼ぶことができる。
【0067】
[00066] 各ガイド部335、345は、関連付けられた放出口320、325からの保護ガス流を方向転換するように構成されている。例えば、第1のガイド部335は、第1の放出口320からの保護ガス流を方向転換するように構成されている。第2のガイド部345は、第2の放出口325からの保護ガス流を方向転換するように構成されている。
【0068】
[00067] 好適な実施形態では、各ガイド部335、345に複数の放出口が関連付けられている。一例では、第1のガイド部335に32の放出口を関連付け、第2のガイド部345に32の放出口を関連付けることができる。他の実施形態では、各ガイド部に32よりも少ないか又は多い数の放出口を関連付けることができる。このような放出口は、均等に又は不均等に離隔することができ、例えば円周方向に離隔されている。
【0069】
[00068] 複数の放出口は、放射導管300の内壁に円周方向に及び/又は周方向に(peripherally)配置することができる。複数の放出口は、放射導管300の内壁に軸方向に配置することができる。すなわち、複数の放出口は、放射導管300内を取り囲むように延出するよう配置され得る。複数の放出口は、均等に、例えば実質的に均等に、離隔することができる。
【0070】
[00069] また、異なるガイド部に異なる量の放出口を関連付けることができる。例えば、第1のガイド部335は第2のガイド部345よりも中間焦点6の近くに配置される。このため、放射導管300の入口開口から出口開口への内側テーパ形状に起因して、第1のガイド部335の円周又は周囲長は第2のガイド部345の円周又は周囲長よりも小さい。このように、異なるガイド部では円周方向の寸法が異なるので、各ガイド部に異なる量の放出口を関連付けることができる。すなわち、第1のガイド部335の円周又は周囲長が第2のガイド部345よりも小さいことが少なくとも理由の一部となって、第1のガイド部335には第2のガイド部345よりも少ない数の放出口320を関連付けることができる。
【0071】
[00070] 放出口320、325は、放射導管300の内壁の全周に沿って放射導管300内に保護ガスを導入するよう構成することができる。
【0072】
[00071] 各放出口は、放射導管300の壁の表面の開口を含み得る。
【0073】
[00072] 他の実施形態において、放出口のうち1つ以上はノズルを含み得る。このようなノズルは、放射導管300の壁の表面から突出することができる。放射導管の壁の表面から突出するノズルは、デブリによる詰まりに対してある程度の保護を与えることができる。
【0074】
[00073] 放出口320、325は、放射導管の1又は複数の壁によって画定されたチャンバ容器内にガスを出力する保護ガス源の観点からは放出口である。このため、いずれの「放出口」も、放射導管300の1又は複数の内壁によって画定された導管、容器、空間、又はチャンバの観点からは「注入口」であると考えることも可能である。
【0075】
[00074] 各ガイド部335、345は複数の表面を含み得る。例えば図3の実施形態では、少なくとも1つのガイド部335、345の第1の表面365、375は、放射導管300の壁の内面と実質的に平行であり、例えば、導管300の内壁の表面によって概ね画定され図3で破線370によって示されているテーパ状表面全体と実質的に平行である。
【0076】
[00075] 図3の例示的な実施形態では、少なくとも1つのガイド部335、345の第2の表面385、395は、放射導管300の壁の内面と少なくとも1つのガイド部335、345との間にチャネル380、390を形成している。放射導管300の壁の内面上の放出口320、325は、チャネル380、390に配置されている。
【0077】
[00076] 各ガイド部335、345は、放射導管300の壁の内面から実質的に離れる方へ向かう第1の方向から放射導管300の壁の内面に実質的に沿っている第2の方向へ保護ガス流を方向転換するように構成されている。第1の方向は図3の第1の矢印340、350で示されている。第2の方向は図3の第2の矢印305、315で示されている。ガイド部は、保護ガス流を方向転換して、放射導管300の壁の内面に実質的に沿って誘導される保護ガスカーテン流を形成するように構成されている。このような保護ガスカーテンは、実質的にプラズマ形成領域4及び/又はコレクタ5の方へ流れることができる。
【0078】
[00077] 前述のように、DGLシステム等から導入された保護ガス流により、放射源内で、特に放射源の内壁に極めて近い場所で、ガス再循環又は「逆流」領域が引き起こされることがある。概ねコレクタ5へ向かう方向に放射導管の壁の内面に実質的に沿って誘導される保護ガスカーテン流を導入することによって、そのような逆流領域を妨害する、及び/又はある程度(in scale or extent)軽減もしくは低減することができる。このため、放射導管300及び/又はリソグラフィ装置LAのある程度の汚染を低減できる。このような効果については、以下で図4a及び図4bを参照して更に詳しく説明する。
【0079】
[00078] 例示的な実施形態では、チャネル380、390を放射導管300の壁の内面に対して角度を付けて形成することで、放出口320、325からの保護ガス流を放射導管310の羽根表面310から離れる方へ方向転換することができる。更に、第1のガイド部335に関連付けられたチャネル380を放射導管300の壁の内面に対して角度を付けて形成することで、第1のガイド部335に関連付けられた放出口320からの矢印305で示されている方向の保護ガス流を第2のガイド部345から離れる方へ方向転換することができる。
【0080】
[00079] 放射導管300が羽根付きの表面を含むいくつかの実施形態では、ガイド部345に直接隣接した羽根355は、他の羽根310に比べて、放射導管300の壁の内面から短く延出し得る。すなわち、いくつかの実施形態では、ガイド部に直接隣接した1つ以上の羽根は、図3の矢印315によって示されている放射導管300の壁の内面に実質的に沿った第2の方向の保護ガス流を阻止しないように構成することができる。
【0081】
[00080] 図3に示されている実施形態において、ガイド部335、345及び放射導管300は一体型構造として形成されている。他の実施形態では、1つ以上のガイド部を別個に形成し、放射導管300に取り付ける、例えば組み込むことも可能である。
【0082】
[00081] 放射導管300は、例えば放射源SO内の水素環境のような放射源SO内の環境において、耐腐食性であるように、例えば燃料による腐食に対して耐性があるように選択された材料から形成されるか又はそのような材料を含み得る。放射導管300の材料は、放射源SO内の放射及び/又はプラズマ7に起因する熱変動等の熱変動に耐性があるように選択され得る。例示的な放射導管300は、金属又は金属合金を含むか又はそれらから作製することができる。例えば放射導管300の材料は、モリブデン、タングステン、アルミニウム、ステンレス鋼、銅、又はそれらの合金とするか、又はそれらを含むことができる。放射導管300は金属又は金属合金表面を含み得る。
【0083】
[00082] 図4aは、本発明の一実施形態に従った放射導管400におけるガス再循環又は逆流の領域を示す概略図である。
【0084】
[00083] 放射導管400は、中間焦点の近位の出口開口420の遠位の入口開口410から内側へテーパ状になった内壁を含む。
【0085】
[00084] 例示の目的のため、保護ガス流460は、出口開口420を介して放射導管400内へ導入されるものとして図示されている。他の実施形態において、保護ガスは、概ね中間焦点6及び/又は出口開口420に又はそれらの周辺に配置された1つ以上の注入口、ノズル、又はスリット(図示せず)を介して導入され得る。前述のように、保護ガス流460は動的ガスロック(DGL)システムによって導入され得る。
【0086】
[00085] 例示のみを目的として、図4aには単一のガイド部450が図示されている。この例では、単一のガイド部450によって保護ガス流は方向転換されない。
【0087】
[00086] 更に、例示のみを目的として、放射導管400は、羽根付きの表面、隆起のある表面、又は起伏のある表面なしで図示されている。他の実施形態では、放射導管400の壁の内面の少なくとも一部を、滑らかな表面、段差のある表面、隆起のある表面、起伏のある表面、及び/又は羽根表面によって画定できることは理解されよう。
【0088】
[00087] 図4aの例では、出口開口420を介して流れる保護ガスは、放射導管400内でガス再循環領域430を生じている。このようなガス再循環又は「逆流」は、入口開口410の近くからの例えばSnデブリ粒子及び/又は蒸気のようなデブリ粒子及び/又は蒸気を中間焦点6に近付けるように作用し得るので、そういった粒子及び/又は蒸気はリソグラフィ装置LA内へ入る可能性がある。
【0089】
[00088] 更に、例えばSnデブリ粒子及び/又は蒸気のようなデブリ粒子及び/又は蒸気の軌道は、放射導管400の壁の内面に近く、この内面と実質的に平行であり得るので、少なくとも部分的に再循環領域に起因して、DGLシステム等からの保護ガス流によるそのようなデブリの抑制は最小限である。
【0090】
[00089] また、このようなガス再循環によって、そのようなデブリ及び/又は蒸気が例えば放射導管400の内壁のような表面に接触する可能性がある。図4aに、再循環ガスの流れの方向が矢印440で示されている。このようなガス再循環は、特に中間焦点6及び/又は出口開口420の近くで発生し得る。更に、このようなガス再循環は、そのようなデブリ及び/又は蒸気を中間焦点6及び/又は出口開口420の方へ引きずっていき、結果として、そのようなデブリ及び/又は蒸気が中間焦点6及び/又は出口開口420を通過してリソグラフィ装置LA内に入る可能性がある。リソグラフィ装置LAのこのような汚染は例えば、リソグラフィ装置LA内のパターニングデバイスMAを汚染させる恐れがある。パターニングデバイスMAの汚染は、リソグラフィ装置LAの結像性能を低下させ、深刻な場合はパターニングデバイスの交換が必要となり、コストと生産の非効率を招くことがある。
【0091】
[00090] 図4bは、本発明の一実施形態に従った放射導管400のガス再循環又は逆流領域を示す概略図である。図4bは図4aに対応するが、単一のガイド部450によって保護ガス流470が方向転換されている点が異なっている。
【0092】
[00091] 単一のガイド部450は、保護ガス流470を方向転換して、放射導管400の壁の内面に実質的に沿って誘導される保護ガスカーテン流を形成するように構成されている。使用中、保護ガスカーテン流は実質的にプラズマ形成領域及び/又はコレクタ5の方へ流れる。
【0093】
[00092] 保護ガスカーテン流によって、放射導管400内のガス再循環領域430の範囲が著しく縮小していることがわかる。具体的には、ガス再循環領域430は放射導管400の入口開口の近くまでは実質的に延出していない。このため、ガス再循環領域430が多くのデブリ及び/又は蒸気を拾ってそのようなデブリ及び/又は蒸気を出口開口420の方へ移送することがなくなる可能性がある。更に、少なくとも部分的に放射導管400内のガス再循環領域430の範囲縮小に起因して、放射導管400の壁の内面に近い、この内面に実質的に平行な軌道を有するデブリ及び/又は蒸気は、DGLシステム等からの保護ガス流によって抑制される可能性が高くなり得る。
【0094】
[00093] 本発明の一実施形態に従った、様々な保護ガス流量を用いた放射導管内のSn粒子及び/又は蒸気堆積のシミュレーション結果を示す図5aから図5cに、本発明の有効性が例示されている。
【0095】
[00094] 例えば図5aは、1対のガイド部510、520を含む放射導管500を示す。図5aでは、ガイド部によって保護ガスを方向転換して放射導管500の壁の内面に実質的に沿って誘導されるカーテン流を形成することは実行されない。このため、シミュレーションされた堆積率、例えば放射導管500上のSnデブリ及び/又は蒸気の堆積率は、10~0.25ナノメートル/ギガパルス(nanometer per Giga-pulse)の範囲内であり、例えば、ナノメートル/レーザ出力ギガパルスである。
【0096】
[00095] 図5bは、ガイド部によって保護ガスを方向転換して放射導管500の壁の内面に実質的に沿って誘導されるカーテン流を形成した放射導管500を示す。シミュレーションされた保護ガス流量は20slmである。従って、シミュレーションされた堆積率、例えば放射導管500上のSnデブリ及び/又は蒸気の堆積率は、1.6×10-4~1×10-7ナノメートル/ギガパルスの範囲内である。
【0097】
[00096] 図5cは、ガイド部によって保護ガスを方向転換して放射導管500の壁の内面に実質的に沿って誘導されるカーテン流を形成した放射導管500を示す。シミュレーションされた保護ガス流量は40slmである。従って、シミュレーションされた堆積率、例えば放射導管500上のSnデブリ及び/又は蒸気の堆積率は、放射導管500の表面全体にわたって1×10-7ナノメートル/ギガパルスの範囲内である。
【0098】
[00097] 放射源のチャンバは、ガスを除去するための排出装置(図示せず)を含むことができる。更に、放射源は、Snデブリを除去又は収集するための他の手段を含むことができる。そのような手段は例えば、(Sn)堆積表面に連結した加熱手段と、溶融スズを収集するためのSnバケツに通じる側溝又はガイドシステムと、を含み得る。Snバケツは放射源の下部に設けられる。
【0099】
[00098] 従って、上述のシミュレーション結果から、本発明を具現化している放射源は、放射導管500の壁の内面に実質的に沿って流れる保護ガス流カーテンの流量を増大させることによって、放射導管500上のデブリ及び/又は蒸気の堆積率の著しい低減を示し得ることがわかる。更に、本発明を具現化している放射源は結果として、中間焦点を通過してリソグラフィ装置内に入るデブリ及び/又は蒸気を著しく低減させることができる。
【0100】
[00099] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。考えられる他の用途は、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。
【0101】
[000100] 以上、本発明の特定の実施形態を説明してきたが、本発明は以上の説明以外にも実施できることが理解されるであろう。上記の説明は例示を意図したものであって制限的なものではない。したがって、上記の発明に以下に記載の特許請求の範囲から逸脱することなく変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。特に、本発明の一態様について開示された特徴は、本発明の任意の他の態様と組み合わせることができる。
【0102】
[000101] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることは理解されよう。上記の説明は例示的であり、限定的ではない。それ故、下記に示す特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図5a
図5b
図5c