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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】薬液供給装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/02 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
E03D9/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018242523
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020105707
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-11-22
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永田 優香
(72)【発明者】
【氏名】萬濃 香穂
【合議体】
【審判長】居島 一仁
【審判官】太田 恒明
【審判官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-122338(JP,A)
【文献】登録実用新案第3172249(JP,U)
【文献】特開2006-280907(JP,A)
【文献】特開2010-51591(JP,A)
【文献】特開2015-165084(JP,A)
【文献】特開2015-10427(JP,A)
【文献】意匠登録第1303345(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液と、
前記薬液を収容する胴部及び前記胴部内の前記薬液を吐出する吐出口と連通する口部を備え、内部を視認可能な薬液容器と、
前記薬液容器の前記胴部に前記薬液とともに収容される装飾物と、
前記口部を下に向けた状態の前記薬液容器を下方から支持する支持体と、
を備え、
前記薬液容器において前記支持体上に露出する前記胴部の周面には、複数本の凸状の筋状屈曲部が上下の位置が互いに異なるようにして、前記胴部の周面の周方向に1周にわたり形成されている、薬液供給装置。
【請求項2】
前記薬液容器の高さ方向の中央領域に、前記筋状屈曲部が形成されている、請求項に記載の薬液供給装置。
【請求項3】
前記薬液容器の周面には、正面視及び/又は背面視において、凸部及び/又は凹部により構成される立体模様が形成されている、請求項1又は2に記載の薬液供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香、消臭、洗浄などのための薬液を外部に供給する薬液供給装置に関し、例えば水洗トイレの貯水タンク上部に設けられた皿状の手洗い部に設置されて、薬液を水洗用の流水(フラッシュ水)に供給する薬液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水洗トイレには、例えば芳香、消臭、洗浄のための薬液を水洗用の流水(フラッシュ水)に供給するために、貯水タンク上部に設けられた手洗い部に設置されるオンタンクタイプの薬液供給装置が従来から使用されている。
【0003】
このオンタンクタイプの薬液供給装置としては、例えば、薬液を収容する薬剤容器と、薬液の吐出口を下に向けた状態の薬液容器を下方から支持するカップ状の支持体とを備え、支持体の底部から突き出た複数の長脚及び案内部材を手洗い部の排水口に挿入して設置するものが知られている(例えば特許文献1を参照)。この薬液供給装置は、薬液容器の吐出口から支持体に薬液が吐出され、支持体に吐出された薬液は案内部材に案内されて保持される。そして、手洗い部の上方に配置された放水タップから手洗い部に供給された流水が排水口に向かって流れる際に案内部材上の薬液をさらうことで、流水とともに排水口から貯水タンクに流れ込むように構成されている。
【0004】
また、水洗トイレにおいては、トイレ内の美観を向上させるために、造花や飾りなどの装飾物で手洗い部が装飾されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-79496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、薬液供給装置が設置された手洗い部を上述した装飾物で装飾するためには、手洗い部に広いスペースを必要とする。また、装飾物により、薬液供給装置に形成された種々の開口や手洗い部の排水口が塞がれることで、薬液供給装置による所望の効果が得られないという問題や、水がつまるという問題が生じるおそれがある。このような問題は、オンタンクタイプ以外の薬液供給装置においても起こり得る可能性がある。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、美観を有する薬液供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の薬液供給装置は、内部を視認可能な薬液容器と、前記薬液容器内に収容される薬液と、前記薬液容器内に前記薬液とともに収容される装飾物と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の薬液供給装置においては、前記薬液容器の周面には、正面視及び/又は背面視において、凸状又は凹状の筋状屈曲部が少なくとも1つ形成されていることが好ましい。
【0010】
また、本発明の薬液供給装置においては、前記筋状屈曲部は、前記薬液容器の周面の周方向に1周にわたり形成されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明の薬液供給装置においては、前記薬液容器の高さ方向の中央領域に、前記筋状屈曲部が形成されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明の薬液供給装置においては、前記薬液容器の周面には、正面視及び/又は背面視において、凸部及び/又は凹部により構成される立体模様が形成されていることが好ましい。
【0013】
また、本発明の薬液供給装置においては、前記薬液の吐出口を下に向けた状態の前記薬液容器を下方から支持する支持体をさらに備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、内部を視認可能な薬液容器の内部に薬液とともに装飾物が収容されていて、装飾物の装飾効果により薬液供給装置自体が美観を有するので、装飾のために他の装飾物が不要となる。よって、例えば水洗トイレの貯水タンク上部の手洗い部に薬液供給装置を設置した場合には、従来の薬液供給装置と同じ広さのスペースを確保できれば足り、装飾のために手洗い部に広いスペースを必要としない。そのうえ、薬液供給装置に形成された種々の開口や手洗い部の排水口が塞がれないので、薬液供給装置による所望の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】薬液供給装置の正面図である。
図2】薬液供給装置の側面図である。
図3】薬液容器及び支持体の正面図である。
図4】薬液容器の平面図である。
図5】薬液容器の口部の部分を拡大した断面図である。
図6】支持体の断面図である。
図7】カバー部材を外した状態の支持体の平面図である。
図8】カバー部材を外した状態の支持体の底面図である。
図9図7のX1-X1断面図である。
図10】カバー部材の斜視図である。
図11】カバー部材の斜視図である。
図12】カバー部材の平面図である。
図13図12のX2-X2断面図である。
図14】筋状屈曲部が形成された薬液容器を正面から撮影した写真である。
図15】筋状屈曲部が形成されていない薬液容器を正面から撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実態の形態について添付図面を参照して説明する。図1図3は、本発明の一実施形態である薬液供給装置1の外観構成を示している。なお、本実施形態の薬液供給装置1は、水洗トイレにおける貯水タンク上部に設けられた皿状の手洗い部に設置されるタイプのものを例に挙げている。
【0017】
薬液供給装置1は、例えばトイレ内空間の芳香・消臭や便器の洗浄のための薬液と、薬液を収容する薬液容器2と、薬液容器2が着脱可能に取り付けられる支持体3と、薬液容器2内に薬液とともに収容される装飾物7とを備えている。この薬液供給装置1は、支持体3の底面部30から突き出た案内部材5及び長脚32が手洗い部の排水口に挿入されるようにして手洗い部に設置される。以下、薬液供給装置1の各部材について説明する。
【0018】
薬液容器2は、図3図5に示すように、薬液を収容可能な胴部20と、胴部20に連続して一体形成された円筒状の口部21とを備えている。なお、薬液容器2は、使用時に口部21が下方を向く上下逆さの状態で支持体3に取り付けられるので、以下の説明では、薬液容器2の口部21側を「下側」、胴部20側を「上側」としている。
【0019】
薬液容器2は、外側から内部を視認することが可能であり、例えば全体を透明又は半透明とすることで内部を視認可能とすることができる。なお、薬液容器2の少なくとも一部を透明又は半透明にすることにより、内部を視認可能としてもよい。薬液容器2の胴部20及び口部21は、例えばガラスや合成樹脂などで形成することができる。胴部20の底には、口部21と連通して胴部20内の薬液を吐出するための吐出口22が開口している。口部21には、キャップ23が着脱可能に被せられている。キャップ23は、例えば軟質の合成樹脂により形成することができる。キャップ23は、口部21を塞ぐ部分に薄肉部25を介して閉塞部24を備えている。
【0020】
薬液容器2は、キャップ23を口部21に装着したまま、キャップ23(胴部20の吐出口22)側を下に向けた逆さの状態で使用される。そして、使用に際しては、後述する支持体3の円筒状の接続部材44を薬液容器2の口部21内にキャップ23の閉塞部24を突き破るように差し込むことで、薬液容器2と支持体3とが接続される。これにより、薬液容器2内の薬液が吐出口22から口部21を通り、接続部材44を介して支持体3に吐出される。支持体3の接続部材44は、薬液容器2の口部21と嵌合することで、接続部材44が口部21から抜け出し難くなっている。
【0021】
薬液容器2の周面には、正面視及び/又は背面視において、1又は複数の筋状屈曲部8が形成されている。筋状屈曲部8は、胴部20の周面が外側にV字に突き出るよう凸状に形成されるか、胴部20の周面が内側にV字にへこむよう凹状に形成されており、胴部20の周面は、筋状屈曲部8において角張った形状を呈している。本実施形態では、筋状屈曲部8は凸状に形成されている。
【0022】
筋状屈曲部8は、上下、左右又は斜めのいずれの方向に延びていてもよい。筋状屈曲部8は、直線状に延びていてもよいし、曲線状に延びていてもよい。筋状屈曲部8は、胴部20の周面の正面側及び背面側のどちらかにだけ形成されていてもよいが、胴部20の周面の正面側及び背面側のどちらにも形成されている方が好ましく、さらには、胴部20の周面の正面側及び背面側の筋状屈曲部8同士が繋がるように周方向に1周にわたり形成されていることが好ましい。本実施形態では、上下の位置が互いに異なるようにして、複数本(3本)の筋状屈曲部8が胴部20の周面の周方向に1周にわたり形成されている。
【0023】
薬液容器2の周面において筋状屈曲部8が形成される位置は特に限定されるものではないが、薬液容器2の高さ方向の中央領域に筋状屈曲部8の少なくとも一部が形成されていることが好ましい。なお、薬液容器2の高さ方向の中央領域とは、薬液容器2の胴部20の高さHを基準にして、胴部20の下端からH/3~2H/3の領域を指す。
【0024】
薬液容器2の周面には、正面視及び/又は背面視において、1又は複数の立体模様9が形成されている。立体模様9は、胴部20の周面の一部を外側に突き出させることにより形成される凸部、及び/又は、胴部20の周面の一部を内側にへこませることにより形成される凹部により構成される。本実施形態では、複数の凸部や凹部の組み合わせにより全体として1つの所望のデザインを有する立体模様9が形成されているが、各凸部や各凹部が所望のデザインを有することで立体模様9が形成されていてもよい。
【0025】
立体模様9は、胴部20の周面の正面側及び背面側のどちらかにだけ形成されていてもよいが、胴部20の周面の正面側及び背面側のどちらにも形成されている方が好ましい。また、薬液容器2の周面において立体模様9が形成される位置は特に限定されるものではないが、胴部20の周面の正面側や背面側において、左右方向の中央に配置されていることが好ましい。
【0026】
次に、支持体3は、図1図3及び図6図9に示すように、上部が開口するカップ状に形成されており、接続された薬液容器2を下方から支持する。支持体3は、底面部30及び側面部31と、カバー部材4と、案内部材5とを備えている。支持体3は、薬液容器2と同様に、平面視において、第1の方向(図1の左右方向)の長さがこれと直交する第2の方向(図2の左右方向)の長さよりも長い横長状の外形を有している。本実施形態では、支持体3は平面視略楕円形状に形成されている。手洗い部の形状が横長形状である場合、薬液供給装置1は、第1の方向(支持体3及び薬液容器2の左右方向)が手洗い部の左右方向と一致するように設置される。この支持体3は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂により形成することができ、可撓性を有している。
【0027】
底面部30には、下方に突き出る複数(図示例では2本)の長脚32が設けられている。また、長脚32の周囲には、長脚32より短い複数(例えば4本)の短脚33が側面部31から下方に突き出るようにして設けられている。複数の短脚33は、長脚32が手洗い部の排水口に挿入された状態で、支持体3を手洗い部上にほぼ水平に定置させる。
【0028】
また、底面部30には、上方に突き出る略矩形枠状の周壁34が設けられている。この周壁34内には後述するカバー部材4の内側壁41が嵌め込まれる。周壁34の上端には、互いに対向する位置において凹状に切り欠かれていることで、切欠き35が形成されている。底面部30の周壁34に囲まれた領域の中央位置には、貫通孔36が形成されている。
【0029】
底面部30の周壁34の外側位置には、手洗い部に供給された水が支持体3の内部へ浸入したときに、その水を外部へ排出するための開口37Aが形成されている。また、側面部31には、薬液の芳香成分を外部に拡散させるための開口37Bが形成されている。
【0030】
カバー部材4は、図10図13に示すように、平面視略矩形状の上面部40と、上面部40から垂下する略矩形枠状の内側壁41と、内側壁41の外側に位置し上面部40の周縁から垂下する外側壁42とを備えている。内側壁41を周壁34の内側に嵌合させることで、図6に示すように、カバー部材4が底面部30上に設置され、底面部30とカバー部材4との間に緩衝室6が形成される。緩衝室6は、薬液を貯留可能な空間である。
【0031】
外側壁42は、カバー部材4が底面部30上に設置されたとき、周壁34の外周面から離反しており、外側壁42の下端から外側に突き出た一対の係合突起43が底面部30に設けられた一対の係合爪38と一対一で係合することで、カバー部材4が底面部30に固定される。
【0032】
内側壁41には、その上端から下端まで上下方向に延びる一対の切欠き47が形成されている。一対の切欠き47は、支持体3の周壁34の一対の切欠き35に一対一で対応するように配置されている。カバー部材4が底面部30上に設置されたとき、切欠き35と切欠き47とが一致することで、緩衝室6内に空気を流通させる空気流通孔が形成される。
【0033】
上面部40は、その中央部の平面視円形状の下段部40aと、下段部40aより高い位置にある下段部40aの周囲の上段部40bとからなる。下段部40aの中央位置には、薬液容器2の口部21内に差し込まれる円筒状の接続部材44が設けられている。
【0034】
接続部材44は、上面部40の下段部40aに上段部40bよりも上方に突き出るように設けられている。接続部材44は、薬液容器2の口部21内に差し込まれる際に、キャップ22の薄肉部を容易に突き破ることが可能なように、上端が斜めに切り取られて尖っている。
【0035】
上面部40の下段部40aには、下方に突き出る排出部材45が設けられている。排出部材45は、接続部材44よりも小径の円筒状であり、接続部材44と同心円状に配置されている。接続部材44と排出部材45とは連通しており、接続部材44及び排出部材45の内部は、薬液を薬液容器2から後述する案内部材5に通す薬液通路を構成している。排出部材45の内部は、緩衝室6とは仕切られており、排出部材45は、底面部30の中央に位置する貫通孔36内に嵌合可能である。
【0036】
下段部40aの接続部材44の内側かつ排出部材45の外側には、小径の通液孔46が複数(図示例では3個)形成されている。この通液孔46は、薬液容器2から接続部材44を介して吐出された薬液の一部を緩衝室6へ導入する。
【0037】
緩衝室6は、温度変化によって薬液容器2内に圧力変化が生じた場合でも、薬液容器2から排出される薬液の量を調整するものである。緩衝室6は、薬液容器2の温度変化に対して次のように作用をする。
【0038】
例えば、温度が上昇して薬液容器2が暖められた場合には、薬液容器2内の空気が膨張して薬液容器2内は正圧になる。この場合、薬液容器2内の薬液は押し出されて口部21から吐出されるが、吐出された薬液は、接続部材44及び排出部材45から案内部材5に流れる他、通液孔46を介して緩衝室6にも流れ込む。そのため、薬液が案内部材5へ過剰に流出するのが防止される。
【0039】
一方、流水で冷やされるなどして、薬液容器2の温度が低下すると、薬液容器2内の空気が収縮して薬液容器2内は負圧になる。この場合には、空気流通孔(切欠き35及び切欠き47)の作用により大気圧又は室内圧となっている緩衝室6内の薬液が、通液孔46を介して薬液容器2内へ吸い込まれる。したがって、案内部材5上の水又は薄められた薬液が排出部材45及び接続部材44を通って薬液容器2側に戻されるのが抑制される。また、薬液容器2内の負圧によって薬液の吐出が制限されるのが防止される。
【0040】
案内部材5は、図1図3及び図6図9に示すように、板状を呈しており、底面部30から貫通孔36を横断するようにして下方に突き出ている。案内部材5は、薬液容器2から接続部材44及び排出部材45を介して支持体3に吐出された薬液を、支持体3の外部を流れる水などの液体と接触する位置へ案内するためのものである。案内部材5の上端には、貫通孔36を通って底面部30の上方に突き出る嵌合突起50が設けられている。嵌合突起50は、カバー部材4の排出部材45内に嵌合可能である。嵌合突起50の外周面には、上端から下端まで延びる縦溝51が形成されており、この縦溝51は、毛管作用により排出部材45内を通過する薬液を案内部材5に導出する。
【0041】
案内部材5の表面及び裏面には、上下方向に延びる多数の細溝52が形成されている。案内部材5は、2本の長脚32の間に位置しており、長脚32とともに手洗い部の排水口に挿入される。案内部材5は長脚32よりもやや短く形成されており、その下端部のみが排水口に挿入される。案内部材5に、手洗い部に供給された流水が接することで、案内部材5の表裏面の薬液が流水にさらわれて、流水とともに排水口から貯水タンクに流れ込む。案内部材5と長脚32との間には、略矩形枠状の遮水壁39設けられている。遮水壁39は、案内部材5よりもさらに短く形成されており、手洗い部に供給された流水が案内部材5から支持体3内に逆流することを規制している。
【0042】
次に、装飾物7は、図1及び図2に示すように、薬液とともに薬液容器2内に1つ又は複数収容されることで、薬液供給装置1を装飾して薬液供給装置1の美観を向上させる。装飾物7は、天然物を用いる他、例えば合成樹脂やガラスなどで形成することができる。装飾物7の形態としては、特に限定されるものではなく、例えばシート状であってもよいし、立体形状であってもよい。シート状は、天然繊維や合成樹脂繊維などからなる不織布や織物で構成することができる。立体形状は、合成樹脂やガラスなどの成形品で構成することができる他、シートを折り曲げて立体状に成形したもので構成することもできる。
【0043】
装飾物7としては、例えば、花、葉、茎、草などの植物に似せた造形物;樹木に似せた造形物;動物に似せた造形物;昆虫に似せた造形物;果物に似せた造形物;ヒトデやサンゴなどの水生生物(海洋生物も含む)に似せた造形物;星、月、惑星などに似せた造形物;ビーズやビー玉などの球形物又は球形に似た形の物;天然石や人工石;砂や貝殻などを例示することができる。本実施形態では、装飾物7はシート状の造花である。
【0044】
装飾物7は、薬液容器2内において、薬液中にとどまって薬液中をゆらゆらと浮遊していてもよいし、薬液中を浮かび上がって薬液の液面に浮いていてもよく、または、薬液中に没して薬液の下部に沈んでいてもよい。
【0045】
装飾物7が薬液容器2内で薬液中を浮遊していると、装飾物7による装飾効果が増すうえ、本実施形態の薬液供給装置1のように目線の高さに設置される薬液供給装置1に対して、薬液供給装置1を真っ直ぐ見た際に薬液容器2内の装飾物7がよく見えるので、薬液供給装置1の美観を向上することができる。
【0046】
また、装飾物7が薬液容器2内で薬液の液面に浮いていると、装飾物7は薬液の液面とともに薬液容器2内を上下動するので、薬液容器2内の装飾物7の位置を確認することで、薬液容器2内の薬液の残量を容易に把握することができる。また、床に設置される薬液供給装置1に対して、薬液供給装置1を上方から見下ろして見た際に薬液容器2内の装飾物7が薬液容器2の上部に浮かんでいることでよく見えるので、薬液供給装置1の美観を向上することができる。
【0047】
また、装飾物7が薬液容器2内で薬液の下部に沈んでいると、薬液容器2内で例えば水中に沈んだ花や海底などを表現する際に、装飾物7が薬液容器2の底に維持されるため、上述した世界観を良好に表現でき、薬液供給装置1の美観を向上することができる。
【0048】
なお、薬液容器2内で装飾物7を薬液の下部に沈ませた場合や、使用に伴う薬液の減量により薬液容器2内の装飾物7が沈降した場合、薬液容器2の吐出口22が装飾物7により覆われることで塞がれ、吐出口22からの薬液の吐出が阻害されるおそれがある。そのため、吐出口22を覆わないように装飾物7の大きさや外縁輪郭を適宜設計したり、装飾物7が吐出口22を覆ったとしても吐出口22を完全に塞がないように薬液を通液できる切欠きや貫通孔などの通液部を装飾物7に形成しておくことが好ましい。
【0049】
装飾物7を薬液容器2内で薬液中に浮遊させる方法としては、例えば装飾物7の乾燥時の比重を薬液の比重と同等にすることが挙げられる。ここで、比重が同等とは、装飾物7及び薬液の比重が同じ、又は、比重に差があるとしてもその差が装飾物7が浮かび上がったり沈んだりするほど大きくはないことを指し、装飾物7の比重としては例えば薬液の比重の0.9倍以上1.1倍以下の範囲内にすることができる。
【0050】
また、装飾物7を薬液容器2内で薬液の液面に浮かせる方法としては、例えば装飾物7の乾燥時の比重を薬液の比重よりも小さくすることが挙げられる。ここで、比重が小さいとは、装飾物7が浮かび上がるほど装飾物7の比重が薬液の比重よりも小さいことを指し、装飾物7の比重としては例えば薬液の比重の0.9倍よりも小さくすることができる。
【0051】
また、装飾物7を薬液容器2内で薬液の下部に沈ませる方法としては、例えば装飾物7の乾燥時の比重を薬液の比重よりも大きくすることが挙げられる。ここで、比重が大きいとは、装飾物7が沈降するほど装飾物7の比重が薬液の比重よりも大きいことを指し、装飾物7の比重としては例えば薬液の比重の1.1倍よりも大きくすることができる。
【0052】
上述した薬液の比重は、標準比重計(1-5659(小型)、日本計量器工業株式会社製)を用いて室温(25℃)で測定することができる。例えば薬液の比重が0.94~1.00のときはNo.5を、比重が1.00~1.06のときはNo.6を、1.06~1.12のときはNo.7を、1.12~1.18のときはNo.8を、1.18~1.24のときはNo.9を、1.24~1.28のときはNo.10の比重計をそれぞれ用いる。具体的には、容量が100mlのメスシリンダーに100mlの薬液を入れ、その薬液に比重計を浮かべ、比重計が安定して浮かんだ状態で、液面と比重計の黒線との交点の数値を読み取ることで比重を測定する。
【0053】
また、上述した装飾物7の比重は、目盛りの細かい(例えば0.2ml)メスシリンダーに蒸留水を一定量入れた後、その蒸留水に装飾物7を浸るまで入れて目盛りの増加分(装飾物7の体積)を読み取り、予め測定した乾燥状態の装飾物7の重量と読み取った目盛りの増加分(装飾物7の体積)とにより算出することができる。
【0054】
装飾物7は、薬液を実質的に吸収しない性質を有していることが好ましい。装飾物7が薬液を実質的に吸収しないことで、装飾物7は薬液とともに薬液容器2内に収容されてもその比重がほとんど変化せず、薬液中における装飾物7の状態(上述した浮上、浮遊又は沈降状態)を薬液供給装置1の使用終期まで維持することができる。なお、装飾物7の薬液を実質的に吸収しない性質とは、薬液を全く吸収しないことに加え、薬液を多少は吸収するが、吸収しても薬液中における装飾物7の状態(上述した浮上、浮遊又は沈降状態)を薬液供給装置1の使用終期まで維持できる程度までを許容するものである。
【0055】
なお、装飾物7は、必ずしも薬液を実質的に吸収しない性質を有している必要はなく、薬液を吸収する性質を有していてもよい。この場合には、乾燥状態では装飾物7はその比重が薬液の比重よりも小さくて薬液の液面に浮くが、薬液を吸収することで装飾物7が薬液中を浮遊するもしくは薬液の下部に沈むようになってもよい。また、乾燥状態では装飾物7はその比重が薬液の比重と同等で薬液中を浮遊するが、薬液を吸収することで装飾物7が薬液の下部に沈むようになってもよい。
【0056】
上述した本実施形態の薬液供給装置1によれば、内部を視認可能な薬液容器2の内部に薬液とともに装飾物7が収容されているので、装飾物7の装飾効果により薬液供給装置1自体が美観を有する。そのため、例えば水洗トイレの貯水タンク上部の手洗い部に薬液供給装置1を設置した場合、手洗い部の装飾のために他の装飾物が不要となる。よって、従来の薬液供給装置と同じ広さのスペースを手洗い部に確保できれば足り、装飾のために手洗い部に広いスペースを必要としない。そのうえ、薬液供給装置1に形成された種々の開口37A,37Bや手洗い部の排水口が塞がれないので、薬液供給装置1による所望の効果を得ることができる。
【0057】
また、薬液容器2の周面に筋状屈曲部8が形成されていることで、図14に示すように、薬液容器2の筋状屈曲部8が形成されている部分では光の屈折によって薬液容器2内の装飾物7がぼやけて見えたり、大きく見えたり、屈折して見える。一方で、薬液容器2の周面に筋状屈曲部8が形成されていないと、図15に示すように、薬液容器2内の装飾物7はハッキリ見える。このように、薬液容器2の周面に筋状屈曲部8を形成することにより、薬液容器2内の装飾物7がハッキリとは見えなくなるため、抽象的なデザインを表現することが可能となり、装飾物7の形態によっては装飾物7による装飾効果を増大することができる。
【0058】
また、筋状屈曲部8が薬液容器2の周面の周方向に1周にわたり形成されているので、薬液容器2をその周囲のどの位置から見ても、薬液容器2内の装飾物7を上述した抽象的なデザインで表現することができる。
【0059】
また、本実施形態の薬液供給装置1は一般的に目線の高さに設置されることから、薬液供給装置1を真っ直ぐ見ることが多いが、薬液容器2の高さ方向の中央領域に筋状屈曲部8が形成されていることで、薬液容器2内の装飾物7を効果的に上述した抽象的なデザインで表現することができる。
【0060】
また、薬液容器2の周面に立体模様9が形成されていることで、薬液容器2の立体模様9が形成されている部分では、筋状屈曲部8が形成されている部分と同様に、光の屈折によって薬液容器2内の装飾物7がハッキリとは見えなくなるため、抽象的なデザインを表現することが可能となる。よって、装飾物7の形態によっては装飾物7による装飾効果を増大することができる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0062】
例えば上記実施形態では、薬液容器2の周面に筋状屈曲部8が形成されているが、筋状屈曲部8は薬液容器2の周面に形成されていなくてもよい。薬液容器2の周面に筋状屈曲部8が形成されていないと、図15に示すように、薬液容器2内の装飾物7をハッキリ見せることができるため、装飾物7を具体的に表現することができる。よって、装飾物7の形態によっては装飾物7による装飾効果を増大することができる。
【0063】
また、上記実施形態では、薬液容器2の周面に立体模様9が形成されているが、立体模様9は、筋状屈曲部8と同様、薬液容器2の周面に形成されていなくてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、水洗トイレの貯水タンク上部の手洗い部に設置されるオンタンクタイプの薬液供給装置の中でも、案内部材5を手洗い部の排水口に挿入して薬液を供給するタイプのものを例にして説明しているが、薬液を手洗い部に直接供給するタイプのものなど、種々のタイプの薬液供給装置についても、本発明を好適に適用することができる。
【0065】
また、上記実施形態では、水洗トイレの貯水タンク上部の手洗い部に設置されるオンタンクタイプの薬液供給装置を例に説明しているが、便器のリムに吊り掛けられて使用されるタイプの薬液供給装置についても、本発明を好適に適用することができる。
【0066】
また、上記実施形態では、水洗トイレ用の薬液供給装置を例に説明しているが、リビングなどの部屋や玄関の床、棚に置いて室内空間を芳香、消臭するための薬液を揮散又は蒸散させるなどして供給するタイプの薬液供給装置についても、本発明を好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 薬液供給装置
2 薬液容器
3 支持体
7 装飾物
8 筋状屈曲部
9 立体模様
図1
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