(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】固体撮像素子
(51)【国際特許分類】
H04N 25/77 20230101AFI20240731BHJP
H04N 25/78 20230101ALI20240731BHJP
H04N 25/772 20230101ALI20240731BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20240731BHJP
H01L 31/107 20060101ALI20240731BHJP
H01L 31/10 20060101ALI20240731BHJP
G01J 1/44 20060101ALI20240731BHJP
G01J 1/42 20060101ALI20240731BHJP
H04N 25/773 20230101ALI20240731BHJP
【FI】
H04N25/77
H04N25/78
H04N25/772
H01L27/146 E
H01L31/10 B
H01L31/10 G
G01J1/44 P
G01J1/42 H
G01J1/44 F
H04N25/773
(21)【出願番号】P 2020142028
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【氏名又は名称】福尾 誠
(72)【発明者】
【氏名】難波 正和
(72)【発明者】
【氏名】後藤 正英
(72)【発明者】
【氏名】為村 成亨
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-077992(JP,A)
【文献】特開2019-047486(JP,A)
【文献】Shigeyuki Imura et al.,Crystalline Selenium-Based Stacked CMOS Image Sensor with in-Pixel Pulse-Generating Operation Suitable for Single-Photon Counting,Proc. IISW(2019),2019年,R22
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/30 - 5/33
H04N 23/11
H04N 23/20 -23/30
H04N 25/00
H04N 25/20 -25/61
H04N 25/615-25/79
H01L 27/14 -27/148
H01L 29/76
H10K 39/32 -39/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換により電荷を生成する光電変換部と、
前記光電変換部が受信したフォトンの個数を出力する信号読み出し回路と
を画素ごとに備えた固体撮像素子であって、
前記信号読み出し回路は、
前記光電変換部において生成された電荷を蓄積する蓄積部と、
前記蓄積部に第1の電荷量が蓄積され
てから、
予め定められた時間を経過した後に、前記蓄積部の電荷をリセットするリセット回路と、
前記蓄積部に第1の電荷量が蓄積されてから前記予め定められた時間が経過する前に、前記蓄積部に第1の電荷量よりも大きな第2の電荷量が蓄積されたことに応じて、パルスを発生し、前記パルスをカウントして当該パルスの数を前記フォトンの個数として出力するアナログ/デジタル変換回路と
を備える固体撮像素子。
【請求項2】
前記信号読み出し回路は、前記蓄積部に蓄積された電荷量に対応する電圧値を発生する電圧発生部を備え、
前記リセット回路は、
前記電圧値と第1の閾値電圧とを比較する第1のコンパレータと、
前記第1のコンパレータの出力に接続された遅延回路と、
前記遅延回路により伝達された前記第1のコンパレータの反転信号に応じて、前記蓄積部に蓄積された電荷をリセットするリセット手段と
を備える請求項
1に記載の固体撮像素子。
【請求項3】
前記アナログ/デジタル変換回路は、
前記電圧値と第2の閾値電圧とを比較する第2のコンパレータと、
前記第2のコンパレータが出力するパルスをカウントするカウンタ回路と
を備える請求項
2に記載の固体撮像素子。
【請求項4】
前記遅延回路は、前記光電変換部がフォトンを受信した場合に前記蓄積部に蓄積される電荷が前記第1の電荷量から前記第2の電荷量まで増加するのに要する時間よりも大きな時間だけ、前記第1のコンパレータの反転信号を遅延させる請求項
2又は
3に記載の固体撮像素子。
【請求項5】
前記光電変換部は、結晶セレン膜を備える請求項1から
4のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【請求項6】
前記光電変換部は、アバランシェ電荷増倍をして電荷を生成する請求項1から
5のいずれか1項に記載の固体撮像素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像デバイスの性能は急速に進歩し、低ノイズ化技術においても、回路の読み出しノイズが既に1電子を下回るような段階にまで進んでいる。更にノイズの低減が進みS/N(Signal/Noise)比が改善できれば、シングルフォトンを検出できるようになり、入射したフォトン数をデジタル的に数えられる究極の感度の撮像デバイスが実現できる。
【0003】
S/N比を改善するためには、ノイズ(N)を低減する以外に信号(S)を大きくするというアプローチも考えられる。これまでに、膜内でのアバランシェ電荷増倍を利用した信号増幅により撮像デバイスを高感度化し、低照度下でも高画質な撮影が可能なことが実証されている(非特許文献1、2)。効率良く増倍率を高めることで高いS/N比が得られれば、シングルフォトンカウンティングを実現できる可能性がある。
【0004】
また、シングルフォトンカウンティングを実現するためには、複数のフォトンが同時に画素に到達しないよう、撮像デバイスの読み出しの高速化が求められる。近年、読み出し回路の高速化も進められており、8Kセンサーのような多画素でも高速撮影を可能にする技術や、読み出し回路を3次元的に積層し、信号を列並列ではなく画素並列で処理することで、画素数に無関係に読み出しを高速化できる技術が報告されている(非特許文献3、特許文献1)。
【0005】
上記、光電変換膜の積層によるアバランシェ増倍を利用した信号増幅と、読み出し回路の高速化を合わせることでフォトンカウンティングの実現を目指すという報告もなされている(非特許文献4)。
【0006】
図10は、非特許文献4に記載された1画素の信号読み出し回路を示す図である。1画素の信号読み出し回路は、電荷増倍型光電変換膜(増倍膜)91内で光電変換された電荷を蓄積する浮遊拡散層(FD)92、FD92をリセットするリセットトランジスタ(T
RST)93、コンパレータ(Comp)94、及び偶数個のインバータチェーン95から成る画素回路90と、出力されたパルスをカウントするカウンタ96とで構成される。FDは、Floating Diffusionの略称である。
【0007】
フォトンが1個増倍膜91に入射して電荷が1個生成されたとする。その電荷は増倍膜91内でアバランシェ増倍等により例えば100倍に増倍され、FD92に蓄積される。コンパレータ94の入力端子97の電圧V
FDは当初V
RSTであるが、FD92に蓄積された電荷により入力端子97の電圧V
FDは低下する。電荷が蓄積された時のFD92の電圧V
FDがコンパレータ94の閾値V
THより小さくなるように、閾値V
THは設定される(V
TH>V
FD)。増倍膜91にフォトンが入射したことに応じて、コンパレータ94からHigh信号が出力され、インバータチェーン95を介してカウンタ96の入力端子98にパルスが出力されるとともにT
RST93はONとなり、入力端子97の電圧V
FDは再びV
RSTへリセットされる。フォトンが入射する度、この動作が繰り返され、光の強度は時間当たりのパルス数としてカウンタ96においてカウントされる(
図11A)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【文献】S. Imura et. al., "High-Sensitivity Image Sensors Overlaid With Thin-Film Gallium Oxide/Crystalline Selenium Heterojunction Photodiodes," IEEE Trans. Electron Devices, (2016年), vol. 63, no. 1, pp. 86-91
【文献】K.Tanioka et. al, "An Avalanche-Mode Amorphous Selenium Photoconductive Layer for Use as a Camera Tube Target," IEEE Electron Device Lett., (1987年), vol. 8,no.9, pp. 394-394
【文献】T. Arai et. al, "A 1.1-μm 33-Mpixel 240-fps 3-D-Stacked CMOS Image Sensor With Three-Stage Cyclic-Cyclic-SAR Analog-to-Digital Converters," IEEE Trans. Electron Devices, (2017年), vol. 64, no. 12, pp. 4992-5000
【文献】S. Imura et. al, "Crystalline Selenium-Based Stacked COMS Image Sensor with in-Pixel Pulse-Generating Operation Suitable for Single-Photon Counting," IISW2019, (2019年), R22, pp.214-217
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一方、増倍膜91はフォトンを入射していない場合であっても少なからず暗電流を出力する。増倍膜91では、その発生する暗電流がフォトン入射に応じて発生する電荷による電流と比べて1/100以下になるよう対策が取られているが、FD92には、このような暗電流の流入により不要な電荷が蓄積する。また、FD92自体にも暗電流発生源があり同様に電荷の蓄積が起こる。比較的光量が多く、増倍膜91からフォトン入射による電荷が頻繁に流入する状態では、暗電流によってのみ入力端子97の電圧V
FDがV
THを超えて低下する前に入力端子98にパルスが出力され、同時に入力端子97の電圧V
FDがリセットされるので問題とはならない(
図11A)。しかし、入射光が少なく到来フォトンの間隔が長くなると、暗電流のみによる蓄積で入力端子97の電圧V
FDがV
THを超えて低下してしまい、暗電流によるパルスが入力端子98に出力され、偽信号(ノイズ)となる。極端な場合、入射光が全くないときでも、暗電流による電荷の蓄積により、定期的にカウンタ96の入力端子98へパルスが出力されてしまう(
図11B)。そのため、従来の構成においては、極低照度下において、増倍膜で発生する暗電流に起因する電荷蓄積を誤ってフォトンとしてカウントしてしまい、正確なフォトンカウンティングを実現することができなかった。
【0011】
本開示の目的は、極低照度下においても正確なフォトンカウンティングを実現することが可能な撮像技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の一態様としての固体撮像素子は、光電変換により電荷を生成する光電変換部と、前記光電変換部が受信したフォトンの個数を出力する信号読み出し回路とを画素ごとに備えた固体撮像素子であって、前記信号読み出し回路は、前記光電変換部において生成された電荷を蓄積する蓄積部と、前記蓄積部に第1の電荷量が蓄積されたことに応じて、前記蓄積部の電荷をリセットするリセット回路と、前記蓄積部に第1の電荷量よりも大きな第2の電荷量が蓄積されたことに応じて、パルスを発生し、前記パルスをカウントして当該パルスの数を前記フォトンの個数として出力するアナログ/デジタル変換回路とを備える。
【0013】
一実施形態として、前記リセット回路は、前記蓄積部に第1の電荷量が蓄積されてから、予め定められた時間を経過した後に、前記蓄積部の電荷をリセットする。
【0014】
一実施形態として、前記信号読み出し回路は、前記蓄積部に蓄積された電荷量に対応する電圧値を発生する電圧発生部を備え、前記リセット回路は、前記電圧値と第1の閾値電圧とを比較する第1のコンパレータと、前記第1のコンパレータの出力に接続された遅延回路と、前記遅延回路により伝達された前記第1のコンパレータの反転信号に応じて、前記蓄積部に蓄積された電荷をリセットするリセット手段とを備える。
【0015】
一実施形態として、前記アナログ/デジタル変換回路は、前記電圧値と第2の閾値電圧とを比較する第2のコンパレータと、前記第2のコンパレータが出力するパルスをカウントするカウンタ回路とを備える。
【0016】
一実施形態として、前記遅延回路は、前記光電変換部がフォトンを受信した場合に前記蓄積部に蓄積される電荷が前記第1の電荷量から前記第2の電荷量まで増加するのに要する時間よりも大きな時間だけ、前記第1のコンパレータの反転信号を遅延させる。
【0017】
一実施形態として、前記光電変換部は、結晶セレン膜を備える。
【0018】
一実施形態として、前記光電変換部は、アバランシェ電荷増倍をして電荷を生成する。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、暗電流に起因する電荷蓄積を誤ってフォトンとしてカウントすることが防止され、極低照度下においても正確なフォトンカウンティングを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の一実施形態に係る固体撮像素子の画素アレイの例を示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係る固体撮像素子の一画素の構成例を示す図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る固体撮像素子の光電変換部の例を示す図である。
【
図4A】パルス発生の例を示すタイミングチャートである。
【
図4B】パルス発生の例を示すタイミングチャートである。
【
図4C】パルス発生の例を示すタイミングチャートである。
【
図5A】フォトンの入射によるフローティングディフュージョンの電圧の変化を示すタイミングチャートである。
【
図5B】フォトンの入射によるフローティングディフュージョンの電圧の変化を示すタイミングチャートである。
【
図6】フォトンの入射によるフローティングディフュージョンの電圧の変化を示すタイミングチャートである。
【
図7】フォトンの入射によるフローティングディフュージョンの電圧の変化を示すタイミングチャートである。
【
図8】暗電流の流入によるフローティングディフュージョンの電圧の変化を示すタイミングチャートである。
【
図9】フォトンの入射によるフローティングディフュージョンの電圧の変化を示すタイミングチャートである。
【
図10】従来の固体撮像素子の一画素の構成例を示す図である。
【
図11A】
図10の構成におけるパルス発生のタイミングチャートの例を示す図である。
【
図11B】
図10の構成におけるパルス発生のタイミングチャートの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図面中、同一又は相当する部分には、同一符号を付している。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0022】
(画素アレイ)
図1は、本開示の一実施形態に係る固体撮像素子100の画素アレイの例を示す図である。
図1は、画素を複数有する固体撮像素子100を平面視した図であり、光電変換部(増倍膜)2と、画素回路120及びカウンタ60とが積層形成されている。画素アレイの周囲に行及び列走査のための垂直シフトレジスタ70及び水平シフトレジスタ80が配置されており、1フレーム期間終了後にXYアドレス方式で各画素のカウンタ60の値が読み出される。垂直シフトレジスタ70の行選択線71はカウンタ60を選択しており、信号読み出し線81からはカウンタ60の信号が出力される。全画素のカウンタ値が出力された後、全画素のカウンタ値はリセットされて、次のフレームのパルスカウントが開始される。
【0023】
(信号読み出し回路)
図2は、本開示の一実施形態に係る固体撮像素子100の一画素の信号読み出し回路の構成例を示す図である。信号読み出し回路は、画素回路120及びカウンタ60を備える。
【0024】
本実施形態に係る画素回路120は、パルス出力型の画素並列撮像素子において、フローティングディフュージョン(FD)10への暗電流の蓄積を検知し基準電圧にリセットするための第1のコンパレータとしてのコンパレータ41及びインバータチェーン50と、フォトンによる光生成電荷蓄積を検知し出力パルスを生成する第2のコンパレータとしてのコンパレータ42とを有する。ここで、暗電流検知のコンパレータ41の閾値VTH1が、光生成電荷を検出するコンパレータ42の閾値VTH2よりも基準電圧VC0に近く設定される。そのため、暗電流に起因する電荷蓄積を誤ってフォトンとしてカウントすることが防止され、極低照度下においても正確なフォトンカウンティングを実現することができる。
【0025】
図3に、本実施形態に係る固体撮像素子100の光電変換部2の例を示す。本実施形態に係る固体撮像素子100は、画素回路120を有する基板1上に、可視光領域に感度を有する光電変換部2を積層した構造を有している。
【0026】
図3の光電変換部2は、例えば、金属画素電極3と、酸化ガリウム(Ga
2O
3)膜4と、テルル(Te)膜5と、結晶セレン(c-Se)膜6と、ITO(Indium Tin Oxide)等からなる透明電極7との積層体からなる。n型半導体である酸化ガリウム膜4と、p型半導体である結晶セレン膜6との組み合わせにより、ヘテロ接合のpnフォトダイオードが構成される。なお、半導体を結晶セレン(c-Se)膜の単層膜として、画素電極又は透明電極7との間でショットキー接合ダイオードが構成されてもよい。
【0027】
図3に示す光電変換部2の製造方法の概要について説明する。まず、基板1上の金属画素電極3上に、例えばスパッタリング法、パルスレーザー蒸着法、真空蒸着法などにより、酸化ガリウム膜4が形成される。その後、例えば真空蒸着法やスパッタリング法などにより、テルル膜5が形成される。テルル膜5は後の熱処理工程において、下層膜と結晶セレン膜6との接着力を向上させ、結晶セレン膜6の膜剥がれを防止する機能を有する。次に、例えば真空蒸着法やスパッタリング法などにより、アモルファスセレン膜が形成される。光電変換膜の厚さは、可視光の吸収率やアバランシェ増倍率等を考慮して適宜な厚さとすることができるが、結晶セレン膜6の場合は300~500nmが望ましい。その後、本実施形態では、例えば、100℃~220℃の温度で30秒~1時間熱処理が行われる。このことにより、アモルファスセレン膜が結晶化され、結晶セレン膜6となる。熱処理温度及び熱処理時間が上記範囲内であると、結晶性の良好な結晶セレン膜6が得られる。最後に真空蒸着法やスパッタリング法により透明電極7が形成される。
【0028】
なお、基板1上に複数画素の光電変換部2を形成するとき、金属画素電極3が画素単位で分離されていれば、酸化ガリウム膜4、テルル膜5、結晶セレン膜6、及び透明電極7は、画素分離する必要がなく、基板1上に一様に形成することができる。
【0029】
本実施形態では、光電変換部2の材料として結晶セレン(c-Se)を利用したが、結晶セレンの他にも、可視光領域に吸収を有する半導体である、アモルファスセレン(a-Se)、CIGS(CuInGaSe)、結晶シリコン(c-Si)、アモルファスシリコン(a-Si)、カドミウムテルル(CdTe)、ガリウム砒素(GaAs)、インジウム燐(InP)、硫化銅(Cu2S)等の材料について利用可能性がある。
【0030】
固体撮像素子100の動作時には、光電変換部2の透明電極7と金属画素電極3との間に電圧が加えられ、光電変換膜としての結晶セレン膜6中に107V/m程度の電界が発生される。
【0031】
透明電極7と金属画素電極3との間に電圧が印加された状態で、フォトンが入射すると、光電変換部2内でフォトンが吸収及び電荷に変換され、その電荷が膜内を走行中にアバランシェ電荷増倍され、信号読み出し回路で検出可能な電荷量が得られる。フォトン検出に好ましい電荷増倍の割合は10~10000倍の範囲が考えられる。なお、入射光の波長により光の膜内への侵入長が異なり、電極までの電荷走行距離に差が生じて電荷増倍率に差が生じるおそれがある。短波長の1フォトンが生じる光電変換信号が、長波長の2個のフォトンが生じる光電変換信号を越えることがないように、半導体膜の膜厚、印加電界等が調整されるか、あるいは受光する波長が所定の範囲とされることが望ましい。
【0032】
図2に戻って、本実施形態に係る信号読み出し回路の構成を説明する。画素回路120は、光電変換部2で光電変換され増倍された電荷(信号電荷)を蓄積するフローティングディフュージョン10、フローティングディフュージョン10をリセットするリセットトランジスタ(T
RST)20、アンプ(Amp)30、コンパレータ(Comp1,Comp2)41,42、及び偶数個のインバータ回路としてのインバータ51
1~51
2nからなるインバータチェーン50を備える。
【0033】
アンプ30の入力は、フローティングディフュージョン10の電極11(信号検出電圧VFD)に接続され、出力端31(出力電圧値VC)は、各コンパレータ41,42のマイナス(-)入力に接続される。また、各コンパレータ41,42のプラス(+)入力には、異なる閾値電圧(VTH1,VTH2)が入力される。アンプ30は、フローティングディフュージョン10の電圧VFDを増幅する増幅回路を備える。
【0034】
フローティングディフュージョン10とアンプ30は、光電変換部2で生成する電荷量に対応した電圧値VCを発生する電圧発生部として機能する。また、リセットトランジスタ20は、フローティングディフュージョン10をリセットするとともに、電圧値VCをリセットするリセット手段である。
【0035】
なお、アンプ30はオプションであり、アンプ30を用いずにフローティングディフュージョン10を直接コンパレータ41,42の入力端子に接続してもよい。ただし、コンパレータ41,42に接続することで、フローティングディフュージョン10の容量が実質的に大きくなり、信号電荷に対して信号検出電圧VFDが小さくなってしまうため、アンプ30を配置することが望ましい。アンプ30は、ソースフォロアアンプ等を用いることができる。また、後述のとおり、インバータチェーン50は遅延回路として機能しており、他の回路部分又は代替回路で十分な遅延時間が確保できるのであれば、省略又は置換してもよい。
【0036】
信号読み出し回路の内、リセットトランジスタ20、コンパレータ41、及びインバータチェーン50は、フローティングディフュージョン10に一定の電荷量が蓄積されたことに応じて、フローティングディフュージョン10の電荷をリセットする。すなわち、これらの構成要素は、蓄積部としてのフローティングディフュージョン10に第1の電荷量が蓄積されたことに応じて、蓄積部の電荷をリセットするリセット回路として機能する。また、コンパレータ42は、フローティングディフュージョン10に第1の電荷量よりも大きな第2の電荷量が蓄積されたことに応じてパルスを出力することにより、光電変換部2でフォトンにより生じた電荷量(光電変換回数=フォトンの入射個数)に対応する数のパルスを出力する。カウンタ60は、発生したパルス数をカウントし、カウント数をデジタル信号として出力する。すなわち、信号読み出し回路は、1bit型アナログ/デジタル(A/D)変換回路を構成しており、これはフォトンカウント回路として機能する。コンパレータ42とカウンタ60とを備える1bit型アナログ/デジタル変換回路を、アナログ/デジタル変換回路と呼ぶこととする。
【0037】
本実施形態では、リセット回路は、暗電流を検出しフローティングディフュージョン10をリセットするためのコンパレータ41とインバータチェーン50がリセットトランジスタ20のゲートに接続されたループを備える。インバータチェーン50は、偶数個のインバータ511~512nが直列に接続して構成され、コンパレータ41の反転信号を遅延して伝達する遅延回路として機能する。このように、リセット回路は、フローティングディフュージョン10に第1の電荷量が蓄積されてから、予め定められた時間を経過した後に、フローティングディフュージョン10の電荷をリセットする。そのため、アナログ/デジタル変換回路は、フォトンの受信に応じてフローティングディフュージョン10に第1の電荷量よりも大きな量の電荷が蓄積された場合、それらがリセットされる前に、パルスを出力して光電変換の回数、すなわちフォトンの入射個数を計数することができる。したがって、本実施形態の構成によれば、暗電流に起因する電荷蓄積を誤ってフォトンとしてカウントすることを防止しつつ、極低照度下においても正確なフォトンカウンティングを行うことが可能である。
【0038】
(動作例)
フォトンが1個光電変換部2に入射すると、光電変換部2の材料に応じた一次量子効率に従い電荷が生成される。その電荷は光電変換部2においてアバランシェ増倍等により増倍され、フローティングディフュージョン10に蓄積される。コンパレータ42の入力端子31の電圧V
Cは、後述する暗電流の影響を無視すると当初V
C0であるが、フローティングディフュージョン10に蓄積された電荷により入力端子31の電圧V
CはV
C0から低下する。電荷が蓄積した時のフローティングディフュージョン10の電圧V
FDによるアンプ30の出力、すなわち入力端子31の電圧V
Cがコンパレータ42の閾値V
TH2より小さくなるように、閾値V
TH2は設定される(V
TH2>V
C)。フローティングディフュージョン10に光電変換部2でフォトンを光電変換し増倍した電荷が蓄積されたことに応じて、コンパレータ41からHigh信号が出力されるとともに、コンパレータ42からHigh信号が出力される。これに応じて、インバータチェーン50を介してリセットトランジスタ20にHigh信号が出力され、入力端子31の電圧V
Cは再びV
C0へリセットされるとともに、カウンタ60にパルスが出力される。フォトンが入射する度、この動作が繰り返され、光の強度は時間当たりのパルス数としてカウンタ60においてカウントされる(
図11A)。
【0039】
図4A、
図4B、及び
図4Cに本実施形態のパルス発生のタイミングチャートを示す。光電変換部2からの電荷は、電子により蓄積される場合について説明する。まず、
図4Bのようにフォトンの入射が全くない場合において、フローティングディフュージョン10がV
RSTにリセットされた状態からスタートする例が説明される。処理の開始時刻はT0である。
【0040】
VCは、アンプ30の出力電圧である。VC0は、電極11の電圧VFDがVRSTの場合のアンプ30の出力電圧である。光電変換部2とフローティングディフュージョン10内で発生した暗電流による電荷(電子)は、フローティングディフュージョン10に蓄積され、アンプ30の出力電圧VCはVC0より下がっていく。このときVC0>VTH1>VTH2のように設定しておけば、暗電流により電圧VCがVC<VTH1となった時点でコンパレータ41及びインバータチェーン50の出力VOUT1がLowからHighに反転する。そして、リセットトランジスタ20がONし、フローティングディフュージョン10の電圧VFDはVRSTにリセットされる。ここで、コンパレータ42はVC>VTH2のためVOUT2つまり光信号のパルスは出力されず、フローティングディフュージョン10内の暗電流による電荷はリセット(VC=VC0)できる。
【0041】
図4Bの例では、時刻T0以後、暗電流の影響により、アンプ30の出力電圧V
Cは、当初のV
C0から低下し、時刻T1において、V
CはV
TH1に到達している。これに応じて、コンパレータ41の出力は、LowからHighへ反転する。ただし、コンパレータ41の出力には遅延回路として機能するインバータチェーン50が接続しているため、コンパレータ41の出力が反転してから、インバータチェーン50の出力V
OUT1がLowからHighに反転して、リセットトランジスタ20がONになるまでにはタイムラグが存在する。
図4Bの例では、時刻T1ではなく、時刻T2(>T1)において、インバータチェーン50の出力V
OUT1にバルスが生じているのはそのためである。時刻T2にフローティングディフュージョン10内の電荷はリセットされ、アンプ30の出力電圧V
CはV
C0に復帰している。
【0042】
次に、フォトンが光電変換部2に入射した場合について、
図4Cを参照して説明する。光電変換部2にフォトン入射すると、光電変換部2における光電変換及び電荷増倍により、大きな電荷がフローティングディフュージョン10に蓄積される。これにより、アンプ30の出力電圧V
Cは急激に下がり、V
C<V
TH2に達して(時刻T2)コンパレータ42がHighとなり、V
OUT2へ光信号のパルスが出力される。カウンタ60は、V
OUT2へ出力された光信号のパルスをカウントする。ここで、V
CがV
TH2に達する時刻T2より前の、時刻T1において、V
C<V
TH1となるが、V
OUT1が出力されリセットトランジスタ20がフローティングディフュージョン10をリセットするタイミングは、インバータチェーン50によって遅延され、V
C<V
TH2となってV
OUT2にパルスが出力された後になるように設定する。そのため、フォトン入射による信号出力を終えた後にフローティングディフュージョン10をリセットすることができる。
【0043】
上記のようにすることで、フローティングディフュージョン10の電圧V
FDによるV
Cの変化が、暗電流によるものかフォトン入射によるものかを判別し、暗電流による偽信号が生じないよう適宜フローティングディフュージョン10をリセットし、光信号のパルスのみを出力することができる。
図4Aの例では、時刻T1、時刻T3、及び時刻T7において、フォトンの受信によりアンプ30の出力電圧V
CがV
TH1まで低下している。これにより、コンパレータ41の出力は反転するが、その反転信号はインバータチェーン50により遅延して伝達される。そのため、アンプ30の出力電圧V
Cは更に低下し、コンパレータ42の出力が反転してカウンタ60へパルスが出力され、その後、時刻T2、時刻T4、及び時刻T8にリセットトランジスタ20はONとなり、アンプ30の出力電圧V
CはV
C0に復帰する。
【0044】
時刻T4以後、しばらくの間、フォトンが到達していないものの、暗電流がフローティングディフュージョン10に流入することにより、電極11の電圧VFDが少しずつ低下し、それに応じて、アンプ30の出力電圧VCも時間の経過とともに低下している。時刻T5において、出力電圧VCがVTH1まで低下したことに応じて、コンパレータ41の出力が反転し、反転信号がインバータチェーン50を介してリセットトランジスタ20へ入力されることにより、時刻T6にアンプ30の出力電圧VCはVC0に復帰している。このように、暗電流がフローティングディフュージョン10に流入しても、アンプ30の出力電圧VCがVTH2へ達するよりも前にリセットトランジスタ20はONとなるため、コンパレータ42が誤ってパルスを出力することを防ぐことができる。したがって、本実施形態によれば、光電変換部2が受信したフォトンの個数を正確に計上することができる。
【0045】
(インバータチェーン50の遅延時間及びコンパレータ41,42の閾値電圧)
次に、コンパレータ41に接続されたループにおけるインバータチェーン50によるVOUT1の遅延時間Tdと各コンパレータ41,42の閾値VTH1、VTH2の設定について述べる。
【0046】
図5Aにフォトンの入射によるフローティングディフュージョン10の電圧V
Cの変化を示す。時刻T1からT4までに描かれている左の曲線は、暗電流の蓄積がない場合の、光電変換部2へのフォトンの入射により生成増倍された電荷によるV
Cの変化を示す。ここでは、コンパレータ41の出力V
OUT1によるフローティングディフュージョン10のリセット動作がない場合の電圧V
Cの変化を示している。
【0047】
フォトン入射により光電変換部2において生成された電荷量Qにより、フローティングディフュージョン10の電圧VCは、時刻T1から時刻T4にかけて時間Tq(=T4-T1)を経て、VC0からVqまで下がっている。このようなVCの変化は、様々な要因により決定されるが、フローティングディフュージョン10の容量C及び配線抵抗Rで決まるCRの時定数を主要因として決定される。
【0048】
フローティングディフュージョン10の電圧V
Cが、時刻T2にV
TH1に達してから、時刻T3にV
TH2に達するまでの時間T
d(=T3-T2)よりも大きな時間だけ、インバータチェーン50においてV
OUT1の伝達を遅延させることで、フォトンの入射に応じたコンパレータ42からのパルス出力を実現することができる。
図5Aの右の曲線のように、より暗電流の蓄積によりV
Cが下がっていた場合は、V
Cの変化がCRの時定数に従うとすれば、フォトンを受信した時のV
Cの初期値が低下している分、V
Cが時刻T5にV
TH1に達してから時刻T6にV
TH2に達するまでの時間T
d’(=T6-T5)は、前述のT
dよりも短くなる。したがって、インバータチェーン50における信号の遅延時間は、暗電流が0の場合のV
C変化のカーブから算出されるT
dよりも大きく設定することで、フォトンの入射に応じたコンパレータ42からのパルス出力を実現することができる。
【0049】
ただし、VCがVTH1からVTH2へ下がる間は、フローティングディフュージョン10がリセットされないため、暗電流の蓄積のみでVCがVTH2に到達しないよう、インバータチェーン50における信号の遅延時間は短くする必要がある。
【0050】
インバータチェーン50における信号の遅延時間を前述のT
dとすると、V
CがV
TH1に低下してからT
dの時間が経過するまでは、フローティングディフュージョン10のリセット動作に入らない。そのため、
図5Bの右の曲線に示すように、仮に時刻T5にV
CがV
TH1に達すると同時にフォトンを受信した場合であっても、V
CがV
TH1から時刻T6にV
TH2へ下がるまでの間に入射したフォトンによる電荷はフローティングディフュージョン10に蓄積される。そして、V
CがV
TH1からV
TH2に到達するまでの時間T
d''(=T6-T5)は、前述同様T
dより短い。そのため、V
CがV
TH1に達すると同時にフォトンを受信した場合であっても、フォトンの受信に応じて、V
OUT2からパルスを出力して、カウンタ60に入力することができる。
【0051】
フローティングディフュージョン10のリセット電圧V
C0は、実際にはkTC雑音(熱雑音)の影響を受けるため、リセットごとにV
COを基準としたV
C0+~V
C0-までの範囲にばらつきが生じる。
図6は、フローティングディフュージョン10のリセット電圧V
C0が変化した場合の、リセット後のV
Cの変化を示している。V
Cの変化がCRの時定数に従うとすれば、V
Cの初期値が高いほどV
CがV
TH1からV
TH2に到達する時間は長くなる。そのため、想定されるV
Cのばらつきのうち最も高い値V
C0+をV
Cの初期値としたV
Cの曲線において、V
CがV
TH1からV
TH2まで変化するのに要する時間T
d'''(
図6におけるT6-T5)をインバータチェーン50における信号の遅延時間として設定するとよい。
【0052】
次にコンパレータ41,42の閾値V
TH1,V
TH2について述べる。この電圧差は、V
Cの電圧変動が、暗電流によるものなのか、フォトンによるものかを識別できればよいという観点からは、V
TH1>V
TH2である必要がある。実際には、
図7に示すように、フローティングディフュージョン10のリセット電圧V
FDのばらつきによるV
COのばらつき(V
C0+~V
C0-)やV
TH2の熱雑音によるばらつき(V
TH1+~V
TH1-)を考慮すると、V
TH1->V
TH2が必要である。
【0053】
ただし、コンパレータ41がONしてV
OUT1を発生するまでT
dの遅延時間が設定されているので、この間に暗電流蓄積によるV
Cがコンパレータ42の閾値V
TH2を下回らないようにする必要がある。
図8では、左の曲線は、暗電流蓄積によるV
Cの低下を示しているところ、時刻T1にV
CがV
TH1となってから、インバータチェーン50の遅延時間T
dが経過する時刻T3よりも前の時刻T2に、V
CはV
TH2に到達しており、暗電流蓄積が誤ってパルスとしてカウントされる。そこで、暗電流による単位時間当たりのV
Cの変化をQ
Id(V/s)とすると、V
TH1--V
TH2>Q
Id×T
d、すなわちV
TH2<V
TH1--Q
Id×T
dも満たす必要がある。
【0054】
光電変換部2の増倍率を高くし、一つのフォトンを受信した場合に生成する電荷数を多くするほど、ノイズマージンが大きくなるので、ノイズへの耐性が強くなる。
【0055】
一つのフォトンの検出時間、すなわち、光電変換部2がフォトンを検出してからフローティングディフュージョン10の電圧V
FDを反映したV
CがV
TH2まで低下するのに要する時間T
sの間には、さらに追加でフォトンが到来するとその追加のフォトンは検出されない(
図9の上の曲線)。光電変換部2の増倍率を高く設定し、一つのフォトンを受信した場合に生成する電荷を増加させたほうが、
図9の下の曲線に示すようにフローティングディフュージョン10の電圧V
Cの変化が大きくなる。例えば、
図9において、V
TH1からV
TH2へ達する時間T
sをT
s'のように短くできる。到来するフォトン数をどの程度の頻繁までカウントするかに応じて、必要とする増倍率は決まる。
【0056】
インバータチェーン50から遅延されたVOUT1が出力されてからフローティングディフュージョン10の電圧VCがVC0にリセットされるまでの時間も、フォトンの入射による電荷は検出できない不感帯となる。そのため、VOUT1が出力されてからリセットトランジスタ20のONまでの時間が極力短くなるように配線やトランジスタを設計する必要がある。また、リセットトランジスタ20がONとなりフローティングディフュージョン10がVC0に戻るまでの間VOUT1がHighとなっているようにVOUT1のパルス幅を設定する必要がある。
【0057】
また、前述のように、リセットトランジスタ20がONとなってから、フローティングディフュージョン10がリセットされるまでの時間、フォトン入射があってもフローティングディフュージョン10にはVRSTが印加されているので、その間は不感帯となる。暗電流蓄積によるVOUT1出力はなるべく少ないほうが不感帯を少なくできるので、VTH1はVTH2に近い値となるように設定したほうが、暗電流によるフローティングディフュージョン10のリセット回数を少なくすることができる。
【0058】
光電変換部2からの電荷が正孔の場合は、VRSTに対して信号の蓄積とともに電圧VFDはプラスへ上昇していく動作となる。そのため、VC0<VTH1<VTH2の関係になるよう閾値設定とコンパレータ動作が逆になるようにすればよい。
【0059】
上記のように、固体撮像素子100は、光電変換により電荷を生成する光電変換部2と、光電変換部2が受信したフォトンの個数を出力する信号読み出し回路とを画素ごとに備える。信号読み出し回路は、光電変換部2において生成された電荷を蓄積するフローティングディフュージョン10と、フローティングディフュージョン10に第1の電荷量が蓄積されたことに応じて、その電荷をリセットするリセット回路と、フローティングディフュージョン10に第1の電荷量よりも大きな第2の電荷量が蓄積されたことに応じて、パルスを発生し、パルスをカウントして当該パルスの数をフォトンの個数として出力するアナログ/デジタル変換回路とを備える。したがって、固体撮像素子100によれば、フォトンの到来が少ない極低照度下においても正確なフォトンカウンティングを実現することができる。
【0060】
また、リセット回路は、フローティングディフュージョン10に第1の電荷量が蓄積されてから、予め定められた時間を経過した後に、フローティングディフュージョン10の電荷をリセットする。具体的には、信号読み出し回路は、フローティングディフュージョン10に蓄積された電荷量に対応する電圧値を発生する電圧発生部を備える。リセット回路は、その電圧値と第1の閾値電圧とを比較するコンパレータ41と、コンパレータ41の出力に接続されたインバータチェーン50と、インバータチェーン50により伝達されたコンパレータ41の反転信号に応じて、フローティングディフュージョン10に蓄積された電荷をリセットするリセットトランジスタ20とを備える。また、アナログ/デジタル変換回路は、電圧値と第2の閾値電圧とを比較するコンパレータ42と、コンパレータ42が出力するパルスをカウントするカウンタ回路とを備える。したがって、暗電流により蓄積された電荷を適切にリセットしつつ、到来したフォトンの個数を正確にカウントすることが可能である。
【0061】
また、遅延回路は、光電変換部2がフォトンを受信した場合にフローティングディフュージョン10に蓄積される電荷が第1の電荷量から第2の電荷量まで増加するのに要する時間よりも大きな時間だけ、コンパレータ41の反転信号を遅延させる。したがって、フォトンの受信に応じて確実にパルスを発生させ、パルスを計数することで、受信したフォトンの個数を正確にカウントすることができる。
【0062】
上記のように、固体撮像装置100は、暗電流に起因する電荷蓄積を誤ってフォトンとしてカウントすることが防止され、極低照度下においても正確なフォトンカウンティングを実現することができる。したがって、固体撮像装置100を使用して画像を形成する撮像装置は、極低照度下においてもフォトンを正確に検出して、画像を形成することが可能である。
【0063】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、ブロック図に記載の複数のブロックを統合してもよいし、又は一つのブロックを分割してもよい。フローチャートに記載の複数のステップを記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行してもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 基板
2 光電変換部
3 金属画素電極
4 酸化ガリウム膜
5 テルル膜
6 結晶セレン膜
7 透明電極
10 フローティングディフュージョン
20 リセットトランジスタ
30 アンプ
41,42 コンパレータ
50 インバータチェーン
51 インバータ
60 カウンタ
70 垂直シフトレジスタ
71 行選択線
80 水平シフトレジスタ
81 信号読み出し線
100 固体撮像素子
120 画素回路