(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】窒素ガス分離方法及び窒素ガス分離装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/047 20060101AFI20240731BHJP
【FI】
B01D53/047
(21)【出願番号】P 2020208404
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100137143
【氏名又は名称】玉串 幸久
(72)【発明者】
【氏名】中島 拓人
(72)【発明者】
【氏名】小林 牧治
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-254334(JP,A)
【文献】特開2020-054979(JP,A)
【文献】特開昭64-051119(JP,A)
【文献】特開2008-307504(JP,A)
【文献】特開2008-272350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02 - 53/12
C01B 21/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤が充填された2基以上の吸着塔に窒素ガスと酸素ガスとを含む原料ガスを圧縮機から加圧供給し、各吸着塔が吸着工程、均圧工程、脱着工程、均圧工程を繰り返し行うことにより原料ガスから窒素ガスを製品ガスとして分離し、当該製品ガスを製品槽に導入する窒素ガス分離方法であって、
前記圧縮機
が吸い込む前記原料ガスの温度が第1温度のときに前記製品槽から前記製品ガスを第1流量で流出させる一方、前記
圧縮機が吸い込む前記原料ガスの温度が前記第1温度よりも低い第2温度では前記製品槽から前記製品ガスを前記第1流量よりも大きい第2流量で流出させる、窒素ガス分離方法。
【請求項2】
吸着剤が充填された2基以上の吸着塔に窒素ガスと酸素ガスとを含む原料ガスを圧縮機から加圧供給し、各吸着塔が吸着工程、均圧工程、脱着工程、均圧工程を繰り返し行うことにより原料ガスから窒素ガスを製品ガスとして分離し、当該製品ガスを製品槽に導入する窒素ガス分離方法であって、
前記圧縮機
が吸い込む前記原料ガスの温度を温度計により計測し、
前記温度計による計測温度が第1温度のときに前記製品槽から前記製品ガスを第1流量で流出させる一方、前記計測温度が前記第1温度よりも低い第2温度では前記製品槽から前記製品ガスを前記第1流量よりも大きい第2流量で流出させる、窒素ガス分離方法。
【請求項3】
前記各吸着塔において吸着工程と脱着工程を行う吸脱着時間を一定に維持する、請求項1又は2に記載の窒素ガス分離方法。
【請求項4】
窒素ガスと酸素ガスとを含む原料ガスを加圧供給する圧縮機と、
吸着剤が充填され、前記圧縮機からの前記原料ガスの供給に応じて当該原料ガスから窒素ガスを製品ガスとして分離する2基以上の吸着塔と、
前記各吸着塔において得られた前記製品ガスが導入される製品槽と、
前記製品槽から前記製品ガスを流出させる流量を調整する流量調整部と、
前記圧縮機
が吸い込む前記原料ガスの温度を計測する温度計と、
前記各吸着塔において前記製品ガスが得られるように吸着工程、均圧工程、脱着工程、均圧工程を繰り返し行うための制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記温度計による計測温度が第1温度のときに前記製品槽から前記製品ガスが第1流量で流出する一方、前記計測温度が前記第1温度よりも低い第2温度では前記製品槽から前記製品ガスが前記第1流量よりも大きい第2流量で流出するように、前記流量調整部を制御する、窒素ガス分離装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記各吸着塔において吸着工程と脱着工程を行う吸脱着時間を一定に維持する、請求項4に記載の窒素ガス分離装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒素ガス分離方法及び窒素ガス分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、窒素ガスは金属の熱処理、半導体の製造、化学プラントの防爆シール等に用いる工業用ガスから食品保存用の充填ガスに至るまで多岐にわたる分野で使用されており、その使用量も年々増大している。この窒素ガスの製造方法として、速度分離型の吸着剤である分子篩炭素を充填した吸着塔に原料ガスである高圧の空気を送入し、前記吸着剤に酸素ガスを吸着させて窒素ガスを製品ガスとして分離するいわゆる圧力変動吸着(Pressure Swing Adsorption:PSA)式製造方法が用いられている。このようなPSA方式による窒素ガス分離方法を適用した装置としては、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載された装置では、吸着塔の周囲温度が予め決められた低温基準温度よりも低いときには、吸着塔で得られた製品ガスを当該吸着塔から取り出す吸着取出工程の時間を延長している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、吸着塔に原料ガスを供給するための圧縮機は、周囲温度が低温になるほど圧縮機から吐出される圧縮空気の質量流量が増大する特性を有している。このため、低温時には、圧縮機から供給される原料ガスの質量流量増大に伴って吸着塔内の圧力が上昇しやすくなる。このように吸着塔内の圧力が上昇すると、吸着塔で得られる製品ガスの純度が過剰に高くなることがある。
【0006】
特許文献1に記載された装置では、吸着塔内の圧力が上昇しやすくなる周囲温度の低下に応じて吸着塔における吸着取出工程の時間を延長するので、吸着塔で得られる製品ガスの純度が過剰に高まることを抑制できる。しかしながら、周囲温度の低下に応じて圧縮機から供給される原料ガスの質量流量が増大するという圧縮機の特性を有効に利用できているとは言えない。しかも、質量流量増大分の原料ガスを吸着塔において有効に利用して製品ガスを得ることができるとは言えない。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、周囲温度が低下した場合において、製品ガスの純度が過剰に高まることを抑制しつつ、圧縮機から供給される原料ガスを吸着塔において有効に利用して製品ガスを得ることができる窒素ガス分離方法及び窒素ガス分離装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る窒素ガス分離方法は、吸着剤が充填された2基以上の吸着塔に窒素ガスと酸素ガスとを含む原料ガスを圧縮機から加圧供給し、各吸着塔が吸着工程、均圧工程、脱着工程、均圧工程を繰り返し行うことにより原料ガスから窒素ガスを製品ガスとして分離し、当該製品ガスを製品槽に導入する窒素ガス分離方法である。この窒素ガス分離方法では、前記圧縮機が吸い込む前記原料ガスの温度が第1温度のときに前記製品槽から前記製品ガスを第1流量で流出させる一方、前記圧縮機が吸い込む前記原料ガスの温度が前記第1温度よりも低い第2温度では前記製品槽から前記製品ガスを前記第1流量よりも大きい第2流量で流出させる。
【0009】
この窒素ガス分離方法によれば、圧縮機の周囲温度が第1温度よりも低い第2温度に低下した場合に、第1流量よりも大きい第2流量で製品ガスを製品槽から流出させる。製品槽からの製品ガスの流出流量の増大によって製品槽内の圧力が低下するので、吸着塔内の圧力が上昇しにくくなり当該吸着塔内の圧力の過剰な上昇を抑制することができる。これにより、吸着塔で得られる製品ガスの純度が過剰に高まることを抑制することができる。しかも、吸着塔内の圧力が上昇しにくくなるため、圧縮機による吸着塔への原料ガスの供給量を増大させることができる。これにより、周囲温度の低下に応じて圧縮機から供給される原料ガスの質量流量が増大する場合には、その増大分の原料ガスを吸着塔において有効に利用して製品ガスを得ることができる。
【0010】
また、周囲温度が低い場合に製品槽から流出させる製品ガスの流量を大きくすることにより、例えば気温の低い冬場や1日のうちで気温が低下する時間帯などにおいて、製品ガスを使用するユーザーへの製品ガスの提供量を増量することができる。
【0011】
本発明に係る窒素ガス分離方法は、吸着剤が充填された2基以上の吸着塔に窒素ガスと酸素ガスとを含む原料ガスを圧縮機から加圧供給し、各吸着塔が吸着工程、均圧工程、脱着工程、均圧工程を繰り返し行うことにより原料ガスから窒素ガスを製品ガスとして分離し、当該製品ガスを製品槽に導入する窒素ガス分離方法である。この窒素ガス分離方法では、前記圧縮機が吸い込む前記原料ガスの温度を温度計により計測し、前記温度計による計測温度が第1温度のときに前記製品槽から前記製品ガスを第1流量で流出させる一方、前記計測温度が前記第1温度よりも低い第2温度では前記製品槽から前記製品ガスを前記第1流量よりも大きい第2流量で流出させる。
【0012】
この窒素ガス分離方法によれば、温度計により計測された温度が第1温度よりも低い第2温度に低下した場合に、その温度計の計測結果に基づいて、第1流量よりも大きい第2流量で製品ガスを製品槽から流出させる。製品槽からの製品ガスの流出流量の増大によって製品槽内の圧力が低下するので、吸着塔内の圧力が上昇しにくくなり当該吸着塔内の圧力の過剰な上昇を抑制することができる。これにより、吸着塔で得られる製品ガスの純度が過剰に高まることを抑制することができる。しかも、吸着塔内の圧力が上昇しにくくなるため、圧縮機による吸着塔への原料ガスの供給量を増大させることができる。これにより、周囲温度の低下に応じて圧縮機から供給される原料ガスの質量流量が増大する場合には、その増大分の原料ガスを吸着塔において有効に利用して製品ガスを得ることができる。
【0013】
また、温度計により計測された温度の低下に応じて製品槽から流出させる製品ガスの流量を大きくすることにより、温度計の計測結果に基づいて、製品ガスを使用するユーザーへの製品ガスの提供量を増量することができる。
【0014】
上記の窒素ガス分離方法では、前記各吸着塔において吸着工程と脱着工程を行う吸脱着時間を一定に維持するようにしてもよい。
【0015】
この態様では、圧縮機の周囲温度が低下した場合においても、各吸着塔における吸脱着時間を一定に維持する。これにより、周囲温度の低下に応じて吸脱着時間を延長する場合に比べて、各吸着塔内において吸着工程を行うときに吸着塔内の最高圧力の変動を抑制することができる。このため、各吸着塔で得られる製品ガスの純度が変動することを抑制することができる。
【0016】
本発明に係る窒素ガス分離装置は、窒素ガスと酸素ガスとを含む原料ガスを加圧供給する圧縮機と、吸着剤が充填され、前記圧縮機からの前記原料ガスの供給に応じて当該原料ガスから窒素ガスを製品ガスとして分離する2基以上の吸着塔と、前記各吸着塔において得られた前記製品ガスが導入される製品槽と、前記製品槽から前記製品ガスを流出させる流量を調整する流量調整部と、前記圧縮機が吸い込む前記原料ガスの温度を計測する温度計と、前記各吸着塔において前記製品ガスが得られるように吸着工程、均圧工程、脱着工程、均圧工程を繰り返し行うための制御を行う制御部と、を備える。そして、前記制御部は、前記温度計による計測温度が第1温度のときに前記製品槽から前記製品ガスが第1流量で流出する一方、前記計測温度が前記第1温度よりも低い第2温度では前記製品槽から前記製品ガスが前記第1流量よりも大きい第2流量で流出するように、前記流量調整部を制御する。
【0017】
上記の窒素ガス分離装置において、前記制御部は、前記各吸着塔において吸着工程と脱着工程を行う吸脱着時間を一定に維持する構成であってもよい。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、周囲温度が低下した場合において、製品ガスの純度が過剰に高まることを抑制しつつ、圧縮機から供給される原料ガスを吸着塔において有効に利用して製品ガスを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る窒素ガス分離装置の構成を示す図である。
【
図2】窒素ガス分離装置に備えられる流量調整部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係る窒素ガス分離方法及び窒素ガス分離装置について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1に示される窒素ガス分離装置100は、窒素ガスと酸素ガスとを含む原料ガスから窒素ガスを分離して、窒素ガスを含む製品ガスを得るものである。原料ガスとしては、例えば、空気を使用することができるが、これに限定されるものではなく、少なくとも窒素ガスと酸素ガスとを含むガスであればよい。
【0022】
窒素ガス分離装置100は、原料ガス供給部1と、2基以上の吸着塔を構成する第1吸着塔3A及び第2吸着塔3Bと、製品槽4と、製品ガス流量調整部5と、制御部10と、を備えている。
【0023】
原料ガス供給部1は、圧縮機2と、圧縮機2の吐出口に接続された原料ガス供給ラインL1と、原料ガス供給ラインL1と第1吸着塔3Aの入口とを接続する第1吸着塔入口ラインL1Aと、原料ガス供給ラインL1と第2吸着塔3Bの入口とを接続する第2吸着塔入口ラインL1Bと、を有する。
【0024】
圧縮機2は、原料ガスを吸入口から吸い込み、吸い込んだ原料ガスを加圧して吐出口から吐出し、原料ガス供給ラインL1と第1及び第2吸着塔入口ラインL1A,L1Bとを介して第1及び第2吸着塔3A,3Bに所定圧力の原料ガスを供給する。なお、原料ガスとして空気が使用される場合は、圧縮機2は、大気から空気を吸い込む。空気以外のガスを原料ガスとする場合は、圧縮機2は、例えば、原料ガスを容器に入れた原料ガス源に接続される。
【0025】
第1吸着塔入口ラインL1Aには、第1吸気バルブCV1が設けられている。第2吸着塔入口ラインL1Bには、第2吸気バルブCV3が設けられている。更に、第1吸着塔入口ラインL1Aと第2吸着塔入口ラインL1Bとを接続する第1均圧ラインL7が設けられている。第1均圧ラインL7には、第1均圧バルブCV7が設けられている。なお、第1吸気バルブCV1、第2吸気バルブCV3及び第1均圧バルブCV7は、開閉切り換え可能な弁によって構成されている。
【0026】
第1及び第2吸着塔入口ラインL1A,L1Bには、原料ガス排出ラインL2が接続されている。原料ガス排出ラインL2は、第1吸着塔入口ラインL1A上における第1吸気バルブCV1の下流側に接続された第1排出ラインL2Aと、第2吸着塔入口ラインL1B上における第2吸気バルブCV3の下流側に接続された第2排出ラインL2Bと、第1排出ラインL2Aと第2排出ラインL2Bとの合流点に接続された排出合流ラインL2Cと、を有する。第1排出ラインL2Aには、第1排出バルブCV2が設けられている。第2排出ラインL2Bには、第2排出バルブCV4が設けられている。なお、第1排出バルブCV2及び第2排出バルブCV4は、開閉切り換え可能な弁によって構成されている。
【0027】
圧縮機2の近傍には、温度計11が設けられている。温度計11は、圧縮機2の周囲温度を計測する。具体的には、温度計11は、圧縮機2の吸入口の近傍に設けられ、圧縮機2が吸入口を介して吸い込む原料ガスの温度を計測する。
【0028】
第1吸着塔3A及び第2吸着塔3Bは、酸素ガスを吸着する吸着剤が充填されている。第1吸着塔3A及び第2吸着塔3Bは、圧縮機2から原料ガスが供給されると、原料ガス中の酸素ガスを吸着剤にて吸着することにより原料ガスから窒素ガスを分離して、窒素ガスを高濃度に含む製品ガスを生成する。第1及び第2吸着塔3A,3B内に充填される吸着剤としては、酸素ガスを吸着できるものであればいずれのものでもよく、例えば、分子篩炭素を使用することができる。
【0029】
分子篩炭素とは、多数の細孔を備える木炭、石炭、コークス、やし殻、樹脂、ピッチなどの原料を高温で炭化し、細孔径を約3~5オングストロームに調整した木質系、石炭系、樹脂系、ピッチ系などの吸着剤である。このような分子篩炭素は、窒素ガスよりも酸素ガスを吸着しやすい性質を有しており、空気等の窒素ガスと酸素ガスとを含む混合気体から、酸素ガスを選択的に吸着する性質を有する。また、分子篩炭素は、高圧条件下において酸素ガスの吸着能が増大する。そのため、分子篩炭素は、第1及び第2吸着塔3A,3B内を加圧することにより酸素ガスを多く吸着することができ、その後、第1及び第2吸着塔3A,3B内を減圧することにより酸素ガスを脱着させることができる。
【0030】
第1及び第2吸着塔3A,3Bにおいて生成された製品ガスは、製品ガス取り出しラインL3を流通して製品槽4に導入される。製品ガス取り出しラインL3は、第1吸着塔3Aの出口に接続された第1吸着塔出口ラインL3Aと、第2吸着塔3Bの出口に接続された第2吸着塔出口ラインL3Bと、第1吸着塔出口ラインL3Aと第2吸着塔出口ラインL3Bとが合流し製品槽4に接続された製品ガス合流ラインL3Cと、を有する。
【0031】
第1吸着塔出口ラインL3Aには、第1取出バルブCV5が設けられている。第2吸着塔出口ラインL3Bには、第2取出バルブCV6が設けられている。更に、第1吸着塔出口ラインL3Aにおける第1取出バルブCV5の上流側と、第2吸着塔出口ラインL3Bにおける第2取出バルブCV6の上流側と、を接続する第2均圧ラインL8が設けられている。第2均圧ラインL8には、第2均圧バルブCV8が設けられている。なお、第1取出バルブCV5、第2取出バルブCV6及び第2均圧バルブCV8は、開閉切り換え可能な弁によって構成されている。
【0032】
第2均圧ラインL8には、第2均圧ラインL8における第2均圧バルブCV8を迂回するように洗浄ガス流量調整ラインL9が接続されている。洗浄ガス流量調整ラインL9は、第2均圧ラインL8よりも管径が小さくなるように構成されている。すなわち、洗浄ガス流量調整ラインL9は洗浄ガス用のラインなので、製品ガスの一部として流す洗浄ガスの流量は、第2均圧ラインL8を流れる製品ガスの流量よりも小さくなるようにしている。
【0033】
洗浄ガス流量調整ラインL9には、洗浄ガス流量調整バルブCV9が設けられている。洗浄ガス流量調整バルブCV9は、吸着工程に付されている吸着塔から脱着工程に付されている吸着塔へ製品ガスの一部を洗浄ガスとして送り、脱着工程に付されている吸着塔内に残存する原料ガスの排出を促進するために設けられている。洗浄ガス流量調整バルブCV9は、後述の制御部10の制御により洗浄ガス流量調整ラインL9の開度を調整可能に構成されている。なお、洗浄ガス流量調整バルブCV9及び洗浄ガス流量調整ラインL9は省略されてもよい。すなわち、洗浄ガスを流さない構成にしてもよい。
【0034】
製品槽4は、第1及び第2吸着塔3A,3Bにおいて得られた製品ガスが製品ガス合流ラインL3Cを介して導入される。製品槽4は、導入された製品ガスを適宜貯留する一時貯留空間を有する容器によって構成されており、製品槽4内に貯留された製品ガス中の窒素ガス濃度を平準化するものである。製品槽4には、製品ガス流出ラインL10が接続されている。製品槽4に貯留された製品ガスは、製品ガス流出ラインL10を通して製品槽4から流出される。製品槽4から流出された製品ガスは、ユーザーによって使用される。
【0035】
製品ガス流出ラインL10には、酸素濃度計12と、流量計13と、製品ガス流量調整部5とが設けられている。
【0036】
酸素濃度計12は、製品槽4から流出する製品ガスに含まれる酸素ガスの濃度を計測する。後述の制御部10は、酸素濃度計12により計測された酸素ガス濃度に基づいて製品ガス中の窒素ガスの濃度を算出し、その算出結果に基づいて製品ガスの窒素純度を算出する。酸素濃度計12は、製品ガス流出ラインL10上における製品槽4の下流側に配置されている。
【0037】
流量計13は、製品槽4から流出する製品ガスの流量を計測する。流量計13は、製品ガス流出ラインL10上における酸素濃度計12と製品ガス流量調整部5との間に配置されている。なお、流量計13は、製品ガス流出ラインL10上における製品槽4と酸素濃度計12との間に配置されてもよい。
【0038】
製品ガス流量調整部5は、製品槽4に貯留された製品ガスを当該製品槽4から流出させる流量を調整するためのものである。製品槽4から流出させる製品ガスの流量は、圧縮機2の周囲温度に基づいて設定される。この製品ガス流量調整部5について、
図2を参照して説明する。製品ガス流量調整部5は、
図2(A)に示される構成であってもよいし、或いは
図2(B)に示される構成であってもよい。
【0039】
図2(A)に示される例では、製品ガス流量調整部5は、開度を調整可能な製品ガス流量調整バルブ51から構成されている。製品ガス流量調整バルブ51の開度を調整することにより、製品槽4から流出させる製品ガスの流量を調整することができる。
【0040】
図2(B)に示される例では、製品ガス流量調整部5は、開閉切り換え可能な複数の製品ガス流出バルブ52から構成されている。複数の製品ガス流出バルブ52は、製品ガス流出ラインL10上において並列に配置されている。複数の製品ガス流出バルブ52のうちで開放するバルブの数を調整することにより、製品槽4から流出させる製品ガスの流量を調整することができる。
【0041】
制御部10は、バルブCV1~CV8、洗浄ガス流量調整バルブCV9、及び製品ガス流量調整部5に電気的に接続されている。制御部10は、第1及び第2吸着塔3A,3Bにおいて吸着工程、均圧工程、脱着工程および均圧工程を繰り返し行うことができるように、バルブCV1~CV8の開閉及び洗浄ガス流量調整バルブCV9の開度を制御するとともに、製品ガス流量調整部5を制御する。
【0042】
具体的には、制御部10は、第1吸着塔3Aを吸着工程に、第2吸着塔3Bを脱着工程に付すときには、第1吸気バルブCV1と第1取出バルブCV5と第2排出バルブCV4とを開くとともに、第2吸気バルブCV3と第2取出バルブCV6と第1排出バルブCV2とを閉じる。
【0043】
制御部20は、第1吸着塔3Aを脱着工程に、第2吸着塔3Bを吸着工程に付すときには、第1吸気バルブCV1と第1取出バルブCV5と第2排出バルブCV4とを閉じるとともに、第2吸気バルブCV3と第2取出バルブCV6と第1排出バルブCV2とを開く。
【0044】
制御部20は、第1及び第2吸着塔3A,3Bを均圧工程に付すときには、第1吸気バルブCV1と第2吸気バルブCV3と第1取出バルブCV5と第2取出バルブCV6とを閉じるとともに、第1均圧バルブCV7と第2均圧バルブCV8とを開く。
【0045】
制御部20は、窒素ガス分離装置100が始動されると、予め設定された時間だけ、各工程が行われるようにバルブCV1~CV8の開閉状態を維持する制御を行う。また、制御部20は、窒素ガス分離装置100が始動されると、脱着工程において予め設定された開度に洗浄ガス流量調整バルブCV9を調整する制御を行う。
【0046】
また、制御部10は、温度計11により計測された圧縮機2の周囲温度に基づいて、製品ガス流量調整部5を制御する。これにより、圧縮機2の周囲温度に基づいて、製品槽4に貯留された製品ガスを当該製品槽4から流出させる流量を調整することができる。
【0047】
次に、上記のように構成された窒素ガス分離装置100を使用した窒素ガス分離方法について説明する。
【0048】
まず、窒素ガス分離装置100が始動されると、予め設定された時間だけ吸着工程、均圧工程、脱着工程、均圧工程が繰り返し行われる。このとき、吸着工程において洗浄ガス流量調整バルブCV9の開度も予め設定された開度に調整される。
【0049】
例えば、第1吸着塔3Aにおいて吸着工程を行うときには、第2吸着塔3Bにおいて脱着工程が行われる。吸着工程は、原料ガスから窒素ガスを分離して窒素ガスを含む製品ガスを生成する工程である。脱着工程は、吸着剤に吸着している酸素ガスを吸着剤から脱着することによって吸着剤を再生する工程である。
【0050】
第1吸着塔3Aの吸着工程と第2吸着塔3Bの脱着工程は、第1吸気バルブCV1と第1取出バルブCV5と第2排出バルブCV4と洗浄ガス流量調整バルブCV9とを開き、第1排出バルブCV2と第2吸気バルブCV3と第2取出バルブCV6と第1及び第2均圧バルブCV7,CV8とを閉じることによって開始される。
【0051】
第1吸着塔3Aの吸着工程では、まず、圧縮機2から原料ガス供給ラインL1及び第1吸着塔入口ラインL1Aを通して第1吸着塔3Aに原料ガスが供給される。第1吸着塔3Aに供給された原料ガスは、原料ガス中の酸素ガスが吸着剤に吸着されることにより、原料ガスから窒素ガスが分離して窒素ガスを含む製品ガスが生成される。第1吸着塔3Aにおいて生成された製品ガスは、第1吸着塔出口ラインL3A及び製品ガス合流ラインL3Cを通して製品槽4に導入される。製品槽4に導入された製品ガスは、製品ガス流量調整部5によって流量が調整された状態で、製品槽4から製品ガス流出ラインL10を通して流出される。第1吸着塔3Aにおいて生成された製品ガスの一部は、洗浄ガスとして洗浄ガス流量調整ラインL9を介して第2吸着塔3Bへ送られる。
【0052】
一方、第2吸着塔3Bの脱着工程では、第2吸着塔入口ラインL1B、第2排出ラインL2B、及び排出合流ラインL2Cを介して第2吸着塔3B内の原料ガスが洗浄ガスとともに第2吸着塔3B内の圧力よりも低い外部へ圧力差によって排出される。これにより、第2吸着塔3B内の圧力が減圧され、吸着剤に吸着していた酸素ガスが吸着剤から脱着する。脱着した酸素ガスは、原料ガスと洗浄ガスとともに第2吸着塔3Bから排出される。これにより、第2吸着塔3B内の吸着剤が再生される。
【0053】
吸着工程及び脱着工程が終了すると、第1吸着塔3A内のガスを第2吸着塔3Bへ移動させる均圧工程が開始される。均圧工程は、第1吸気バルブCV1と第1取出バルブCV5と第2排出バルブCV4とを閉じ、第1及び第2均圧バルブCV7,CV8を開くことによって開始される。
【0054】
均圧工程では、第1吸着塔3A内に充満していたガスが第1均圧ラインL7及び第2均圧ラインL8を通して第2吸着塔3Bに移動する。
【0055】
均圧工程が終了すると、第1吸着塔3Aの脱着工程と第2吸着塔3Bの吸着工程が行われる。第1吸着塔3Aの脱着工程と第2吸着塔3Bの吸着工程は、第1排出バルブCV2と第2吸気バルブCV3と第2取出バルブCV6と洗浄ガス流量調整バルブCV9とを開き、第1及び第2均圧バルブCV7,CV8を閉じることによって開始される。
【0056】
第2吸着塔3Bの吸着工程では、圧縮機2から原料ガス供給ラインL1及び第2吸着塔入口ラインL1Bを通して原料ガスが第2吸着塔3Bに供給される。このとき、原料ガス中の酸素ガスが吸着剤に吸着し、原料ガスから窒素ガスが分離して窒素ガスを含む製品ガスが生成される。第2吸着塔3Bにおいて生成された製品ガスは、第2吸着塔出口ラインL3Bと製品ガス合流ラインL3Cとを通して製品槽4に導入される。製品槽4に導入された製品ガスは、製品ガス流量調整部5によって流量が調整された状態で、製品槽4から製品ガス流出ラインL10を通して流出される。第2吸着塔3Bにおいて生成された製品ガスの一部は、洗浄ガスとして洗浄ガス流量調整ラインL9を介して第1吸着塔3Aへ送られる。
【0057】
一方、第1吸着塔3Aの脱着工程では、第1吸着塔入口ラインL1A、第1排出ラインL2A、及び排出合流ラインL2Cを通して第1吸着塔3A内の原料ガスが洗浄ガスとともに第1吸着塔3A内の圧力よりも低い外部へ圧力差によって排出される。これにより、第1吸着塔3A内の圧力が減圧され、吸着剤に吸着していた酸素ガスが吸着剤から脱着する。脱着した酸素ガスは、原料ガスと洗浄ガスとともに第1吸着塔3Aから排出される。これにより、第1吸着塔3A内の吸着剤が再生される。
【0058】
第1吸着塔3Aの脱着工程及び第2吸着塔3Bの吸着工程が終了すると、第2吸着塔3B内のガスを第1吸着塔3Aに移動させる均圧工程が行われる。
【0059】
均圧工程が終了すると、第1吸着塔3Aの吸着工程と第2吸着塔3Bの脱着工程が行われる。以後、第1及び第2吸着塔3A,3Bにおいて上記のサイクルが繰り返される。
【0060】
ここで、第1及び第2吸着塔3A,3Bに原料ガスを供給するための圧縮機2は、周囲温度が低温になるほど圧縮機2から吐出される原料ガスの質量流量が増大する特性を有している。周囲温度の低下に応じて圧縮機2から吐出される原料ガスの質量流量が増大するのは、圧縮機2の吸い込みガス温度が低下するとガス密度が上がるためである。このように、周囲温度の低下に応じて圧縮機2から吐出される原料ガスの質量流量が増大すると、原料ガスが供給される第1及び第2吸着塔3A,3B内の圧力が上昇しやすくなる。第1及び第2吸着塔3A,3B内の圧力が上昇すると、吸着剤による酸素ガスの吸着量が増大するので、第1及び第2吸着塔3A,3Bで得られる製品ガスの窒素純度が過剰に高くなることがある。
【0061】
そこで、窒素ガス分離装置100では、圧縮機2の周囲温度に基づいて、製品槽4から流出させる製品ガスの体積流量を製品ガス流量調整部5によって調整することにより、製品槽4内の圧力を調整する。この際、製品槽4から流出される製品ガスの窒素純度が、例えば99%以上99.999%以下の範囲の所定の目標純度(例えば99.9%)となるように、製品槽4から流出させる製品ガスの体積流量が調整される。
【0062】
具体的には、圧縮機2の周囲温度が第1温度(予め設定された範囲内の温度)の場合には、製品槽4から製品ガスを第1流量で流出させる。一方、圧縮機2の周囲温度が第1温度よりも低い第2温度の場合には、製品槽4から製品ガスを第1流量よりも大きい第2流量で流出させる。この場合において第2流量は、製品ガスの窒素純度が第1流量で流出させるときの窒素純度から変化しないように、あるいは、変化したとしても所定範囲内に収まるように、圧縮機2の周囲温度に応じて設定される。従って、圧縮機2の周囲温度が低いほど製品槽4から流出させる製品ガスの体積流量が大きくなるように調整される。
【0063】
以上説明したように、本実施形態では、圧縮機2の周囲温度が第1温度よりも低い第2温度に低下した場合に、第1流量よりも大きい第2流量で製品ガスを製品槽4から流出させる。製品槽4からの製品ガスの流出流量の増大によって製品槽4内の圧力が低下するので、第1及び第2吸着塔3A,3B内の圧力が上昇しにくくなり当該各吸着塔3A,3B内の圧力の過剰な上昇を抑制することができる。これにより、第1及び第2吸着塔3A,3Bで得られる製品ガスの純度が過剰に高まることを抑制することができる。しかも、第1及び第2吸着塔3A,3B内の圧力が上昇しにくくなるため、圧縮機2による各吸着塔3A,3Bへの原料ガスの供給量を増大させることができる。これにより、周囲温度の低下に応じて圧縮機2から供給される原料ガスの質量流量が増大する場合には、その増大分の原料ガスを各吸着塔3A,3Bにおいて有効に利用して製品ガスを得ることができる。
【0064】
また、周囲温度が低い場合に製品槽4から流出させる製品ガスの体積流量を大きくすることにより、例えば気温の低い冬場や1日のうちで気温が低下する時間帯などにおいて、製品ガスを使用するユーザーへの製品ガスの提供量を増量することができる。
【0065】
製品槽4から流出させる製品ガスの体積流量は、圧縮機2の周囲温度と、圧縮機2から吐出される原料ガスの体積流量と、第1及び第2吸着塔3A,3Bにおける所定の目標純度の製品ガスの生成量と、を関連付けた流量指標データに基づいて設定される。流量指標データは、原料ガスの体積流量と製品ガスの生成量との関係を周囲温度ごとに表すデータである。この流量指標データに基づけば、圧縮機2から供給される原料ガスを使用して第1及び第2吸着塔3A,3Bにおいて生成される製品ガスの量を、圧縮機2の周囲温度ごとに把握することができる。そして、第1及び第2吸着塔3A,3Bにおける製品ガスの生成量に基づいて、製品槽4から流出させる製品ガスの体積流量を周囲温度ごとに算出することができる。
【0066】
なお、製品槽4から流出させる製品ガスの体積流量と周囲温度との関係を示す実験データを予め取得しておいて、その実験データに基づいて製品槽4から流出させる製品ガスの体積流量を設定するようにしてもよい。
【0067】
また、本実施形態では、圧縮機2の近傍に設けられた温度計11の計測結果に基づいて、製品槽4から流出させる製品ガスの体積流量を製品ガス流量調整部5によって調整することにより、製品槽4内の圧力を調整する。具体的には、温度計11による計測温度が第1温度の場合には、製品槽4から製品ガスを第1流量で流出させる。一方、温度計11による計測温度が第1温度よりも低い第2温度の場合には、製品槽4から製品ガスを第1流量よりも大きい第2流量で流出させる。この場合において第2流量は、製品ガスの窒素純度が第1流量で流出させるときの窒素純度から変化しないように、あるいは、変化したとしも所定範囲内に収まるように、温度計11による計測温度に応じて設定される。従って、温度計11による計測温度が低いほど製品槽4から流出させる製品ガスの体積流量が大きくなるように調整される。
【0068】
温度計11による計測温度が第1温度よりも低い第2温度に低下した場合に、その温度計11の計測結果に基づいて、第1流量よりも大きい第2流量で製品ガスを製品槽4から流出させる。製品槽4からの製品ガスの流出流量の増大によって製品槽4内の圧力が低下するので、第1及び第2吸着塔3A,3B内の圧力が上昇しにくくなり当該各吸着塔3A,3B内の圧力の過剰な上昇を抑制することができる。これにより、第1及び第2吸着塔3A,3Bで得られる製品ガスの純度が過剰に高まることを抑制することができる。しかも、第1及び第2吸着塔3A,3B内の圧力が上昇しにくくなるため、圧縮機2による各吸着塔3A,3Bへの原料ガスの供給量を増大させることができる。これにより、周囲温度の低下に応じて圧縮機2から供給される原料ガスの質量流量が増大する場合には、その増大分の原料ガスを各吸着塔3A,3Bにおいて有効に利用して製品ガスを得ることができる。
【0069】
また、温度計11により計測された温度の低下に応じて製品槽4から流出させる製品ガスの流量を大きくすることにより、温度計11の計測結果に基づいて、製品ガスを使用するユーザーへの製品ガスの提供量を増量することができる。
【0070】
また、窒素ガス分離装置100において制御部10は、圧縮機2の周囲温度が低下した場合においても、第1及び第2吸着塔3A,3Bにおいて吸着工程と脱着工程を行う吸脱着時間を一定に維持する制御を行ってもよい。これにより、周囲温度の低下に応じて吸脱着時間を延長する場合に比べて、第1及び第2吸着塔3A,3B内において吸着工程を行うときに各吸着塔3A,3B内の最高圧力の変動を抑制することができる。このため、各吸着塔3A,3Bで得られる製品ガスの純度が変動することを抑制することができる。
【0071】
なお、第1及び第2吸着塔3A,3Bにおける吸脱着時間は、一定に維持されることが望ましいが、所定の基準吸脱着時間に対して所定の許容範囲内で変化するように調整されてもよい。例えば、第1及び第2吸着塔3A,3Bにおける吸脱着時間は、基準吸脱着時間の80%以上120%以下の許容範囲内での変化については許容される。
【0072】
また、窒素ガス分離装置100は、常に温度計11の計測結果に応じて製品槽4からの製品ガスの流出流量を調整するようにしているが、これに限らない。例えば、窒素ガス分離装置100は、第1モードと第2モードとの間でモードの切り替えが可能に構成されていて、第2モードに切り替えられたときのみ、製品槽4からの製品ガスの流出流量を調整するようにしてもよい。すなわち、第1モードでは、圧縮機2の周囲温度が変化しても製品槽4から流出させる製品ガスの体積流量を一定に維持する。一方、第2モードでは、上記のように、圧縮機2の周囲温度に応じて製品槽4から流出させる製品ガスの体積流量を調整する。
【実施例】
【0073】
以下、
図1に示される窒素ガス分離装置100を用いて具体的に実施した例について説明する。
【0074】
(実施例1)
実施例1では、圧縮機2から第1及び第2吸着塔3A,3Bに供給される原料ガスとしての空気の体積流量が2.2m3/minであり圧力が0.9MPaとなるように、圧縮機2を設定した。圧縮機2の周囲温度が45℃、35℃、30℃、20℃、5℃、0℃と低くなるように変化することに応じて、製品槽4から流出させる製品ガスの流量が24Nm3/h、28Nm3/h、30Nm3/h、32Nm3/h、34Nm3/h、35Nm3/hと大きくなるように変化させた。なお、第1及び第2吸着塔3A,3Bにおいて吸着工程と脱着工程を行う吸脱着時間については40secで一定に維持した。
【0075】
(比較例1)
比較例1では、圧縮機2の周囲温度が45℃、35℃、30℃、20℃、5℃、0℃と低くなるように変化することに応じて、製品槽4から流出させる製品ガスの流量を24Nm3/hで一定に維持し、第1及び第2吸着塔3A,3Bの吸脱着時間を40sec、50sec、60sec、60sec、80sec、80secと延長した点で実施例1と相違している。比較例1の他の条件は、実施例1と同じである。
【0076】
上記実施例1及び比較例1における、第1及び第2吸着塔3A,3B内の最高圧力と、酸素濃度計12により計測された酸素ガス濃度から算出された製品ガスの窒素純度と、圧縮機2により第1及び第2吸着塔3A,3Bに供給された原料ガスの消費率とを表1に示す。なお、原料ガス消費率は、圧縮機2が発生させることができる原料ガスの最大量(圧縮機2の最大能力での第1及び第2吸着塔3A,3Bへの原料ガスの供給量)に対する、第1及び第2吸着塔3A,3Bにおいて製品ガスを得るのに圧縮機2が実際に発生させた原料ガス量を百分率で表したものである。
【0077】
【0078】
表1に示すように、比較例1では、第1及び第2吸着塔3A,3B内の最高圧力が上昇しやすくなる圧縮機2の周囲温度の低下に応じて、第1及び第2吸着塔3A,3Bにおける吸脱着時間を延長することにより、製品ガスの窒素純度が所定の目標純度の99.9%で一定に維持された。しかしながら、圧縮機2の周囲温度の低下に応じて、圧縮機2により第1及び第2吸着塔3A,3Bに供給された原料ガスの消費率が低下した。これは、比較例1では、周囲温度の低下に応じて圧縮機2から供給される原料ガスの質量流量が増大するにも関わらず、その増大分の原料ガスを第1及び第2吸着塔3A,3Bにおいて有効に利用して製品ガスを得ることができなかったためであると考えられる。
【0079】
これに対し、実施例1では、圧縮機2の周囲温度の低下に応じて製品槽4から流出させる製品ガスの流量が大きくなるよう調整することにより、製品ガスの窒素純度が所定の目標純度の99.9%で一定に維持された。また、圧縮機2の周囲温度が変化しても、圧縮機2により第1及び第2吸着塔3A,3Bに供給された原料ガスの消費率は100%であった。このことから、実施例1では、圧縮機2の周囲温度が低下した場合であっても製品ガスの窒素純度が過剰に高まることを抑制しつつ、圧縮機2から供給される原料ガスを第1及び第2吸着塔3A,3Bにおいて有効に利用して製品ガスが得られることが分かる。
【符号の説明】
【0080】
1 原料ガス供給部
2 圧縮機
3A 第1吸着塔
3B 第2吸着塔
4 製品槽
5 製品ガス流量調整部
10 制御部
11 温度計
100 窒素ガス分離装置