IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-エアロゲルブランケット 図1
  • 特許-エアロゲルブランケット 図2
  • 特許-エアロゲルブランケット 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】エアロゲルブランケット
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/158 20060101AFI20240731BHJP
   C01B 33/16 20060101ALI20240731BHJP
   F16L 59/02 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
C01B33/158
C01B33/16
F16L59/02
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022504204
(86)(22)【出願日】2020-09-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-27
(86)【国際出願番号】 KR2020011867
(87)【国際公開番号】W WO2021045533
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】10-2019-0109158
(32)【優先日】2019-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0121147
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0087640
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】カン、テ-キョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ポン-チュン
(72)【発明者】
【氏名】ペク、セ-ウォン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ヒョン-ウ
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ソン-ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン-フン
(72)【発明者】
【氏名】パク、サン-ウ
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/145359(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0021956(KR,A)
【文献】特表2018-535178(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109868598(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
F16L 59/02
D06M 11/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブランケット用基材と、
前記ブランケット用基材の表面に結合したエアロゲルおよびブランケット用基材の間の空間に位置するエアロゲルとを含むエアロゲルブランケットの製造方法であって、
1)反応容器にゾル及び塩基触媒を含む触媒化したゾルおよびブランケット用基材を投入し、ブランケット用基材を回転させながらブランケット用基材にゾル及び塩基触媒を含む触媒化したゾルを含浸させるステップと、
2)前記触媒化したゾルが含浸されたブランケット用基材を回転してゲル化させるステップとを含み、
前記エアロゲルブランケットは、6~24Hzの振動数の範囲におけるいずれの振動数で6時間振動させた時でも、エアロゲルブランケットから脱落するエアロゲル粒子の数が、13,600~90,000個/ft3を満たす、エアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項2】
前記エアロゲルブランケットは、6~24Hzの振動数の範囲におけるいずれの振動数で6時間振動させた時でも、振動後の熱伝導度の増加率が1.5%以下である、請求項1に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項3】
前記エアロゲルブランケットは、6~24Hzの振動数の範囲におけるいずれの振動数で6時間振動させた時でも、振動後の熱伝導度の増加率が0.10%~1.45%である、請求項1に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項4】
前記エアロゲルブランケットは、6~24Hzの振動数の範囲におけるいずれの振動数で6時間振動させた時でも、エアロゲルブランケットから脱落する粒径0.5μm超1.0μm以下のエアロゲル粒子の数が、10,000~58,000個/ft3を満たす、請求項1に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項5】
前記エアロゲルブランケットは、6~24Hzの振動数の範囲におけるいずれの振動数で6時間振動させた時でも、エアロゲルブランケットから脱落する粒径1.0μm超2.0μm以下のエアロゲル粒子の数が、3,000~28,000個/ft3を満たす、請求項1に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項6】
前記エアロゲルブランケットは、6~24Hzの振動数の範囲におけるいずれの振動数で6時間振動させた時でも、エアロゲルブランケットから脱落する粒径2.0μm超5.0μm以下のエアロゲル粒子の数が、500~4,000個/ft3を満たす、請求項1に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項7】
前記エアロゲルブランケットは、6~24Hzの振動数の範囲におけるいずれの振動数で6時間振動させた時でも、エアロゲルブランケットから脱落する粒径5.0μm超10μm以下のエアロゲル粒子の数が10~700個/ft3を満たす、請求項1に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項8】
前記エアロゲルブランケットは、6~24Hzの振動数の範囲におけるいずれの振動数で6時間振動させた時でも、振動後の重量の減少率が0.3重量%以下である、請求項1に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項9】
前記エアロゲルブランケットは、親水性シリカエアロゲルブランケットまたは疎水性シリカエアロゲルブランケットである、請求項1に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項10】
前記ブランケット用基材は、ボビンに巻いた状態で反応容器に投入され、
前記ボビンを回転して、前記触媒化したゾルが含浸されたブランケット用基材が回転する、請求項1に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項11】
ステップ2)の後、熟成するステップと、
表面改質するステップとをさらに含む、請求項1に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項12】
前記熟成するステップおよび前記表面改質するステップは、前記の反応容器内で行われ、
前記熟成するステップおよび前記表面改質するステップは、前記ステップ2)で製造された湿潤ゲル‐ブランケット複合体を回転して行われる、請求項11に記載のエアロゲルブランケットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2019年9月3日付けの韓国特許出願第10-2019-0109158号、2019年9月30日付けの韓国特許出願第10-2019-0121147号および2020年7月15日付けの韓国特許出願第10-2020-0087640号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、エアロゲルブランケットに関し、より詳細には、振動によるエアロゲル粒子の脱離およびこれによる性能の低下が抑制されたエアロゲルブランケットに関する。
【背景技術】
【0003】
エアロゲル(aerogel)は、90~99.9%程度の気孔率と、1~100nm範囲の気孔径を有する超多孔性の高比表面積(≧500m2/g)物質であって、優れた超軽量/超断熱/超低誘電などの特性を有する材料であることから、エアロゲルの素材に関する開発研究は言うまでもなく、透明断熱材および環境にやさしい高温型断熱材、高集積素子用極低誘電薄膜、触媒および触媒担体、スーパキャパシタ用電極、海水淡水化用電極材料としての応用研究も活発に行われている。
【0004】
エアロゲルの最大の利点は、従来、スチロフォームなどの有機断熱材より低い0.003W/m・K以下の熱伝導率を示すスーパ断熱性(super‐insulation)である点と、有機断熱材の致命的な弱点である火災脆弱性と火災時の有害ガスの発生を解決できるという点である。
【0005】
一般的に、エアロゲルは、前駆体物質からヒドロゲルを製造し、ヒドロゲル内部の液体成分を微細構造の破壊なしに除去して製造される。代表的なエアロゲルの形態は、粉末、顆粒、モノリスの3種類に分けることができ、一般的には、粉末の形態に製造される。
【0006】
前記粉末の場合、繊維と複合化して、エアロゲルブランケット(blanket)またはエアロゲルシート(sheet)などの形態への製品化が可能であり、ブランケットまたはシートの場合、柔軟性を有しており、任意のサイズや形態に曲げるか折るか切ることができる。これにより、LNG線の断熱パネル、工業用断熱材と宇宙服、交通および車両、電力生産用断熱材などの工業用への応用だけでなく、ジャケットや運動靴類などの生活用品にも適用が可能である。また、アパートのような住宅において、屋根や床だけでなく、防火戸でエアロゲルを使用する場合、火災の予防に大きな効果がある。
【0007】
具体的には、エアロゲルブランケットは、繊維などのブランケット用基材に物理的に結合し含浸されたエアロゲルからなっており、エアロゲル粒子は、サイズが小さく、密度が非常に低くて飛散しやすい性質を有している。かかる特性によって、一般的に、エアロゲルブランケットは、貯蔵、運搬、施工中にエアロゲル粒子がブランケット用基材から分離して飛散するため、作業環境を低下させ、エアロゲルブランケット自体の性能を低下させるという問題がある。
【0008】
特に、エアロゲルブランケットを配管に設置した場合には、配管の継続した振動によってエアロゲル粒子がエアロゲルブランケットから継続して脱落するようになり、性能が次第に低下するため、結局、エアロゲルブランケットの大きな性能低下につながり得る。
【0009】
したがって、振動によるエアロゲル粒子の脱落およびこれによるエアロゲルブランケットの性能の低下を最小化することができる振動耐久性が向上したエアロゲルブランケットの開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、振動によるエアロゲル粒子の脱離およびこれによる熱伝導度の上昇などの性能の低下が抑制されたエアロゲルブランケットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するために、ブランケット用基材と、前記ブランケット用基材の表面に結合したエアロゲルおよびブランケット用基材の間の空間に位置するエアロゲルとを含むエアロゲルブランケットであって、1~30Hzの振動数で2~10時間振動させた時に、エアロゲルブランケットから脱落するエアロゲル粒子の数が、13,600~90,000個/ft3を満たすエアロゲルブランケットを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明のエアロゲルブランケットは、ブランケット用基材と、前記ブランケット用基材の表面に結合したエアロゲルおよびブランケット用基材の間の空間に位置するエアロゲルとを含み、前記エアロゲルが、ブランケット用基材の表面に結合しており、振動によるエアロゲル粒子の脱離が抑制されるため、これによるエアロゲルブランケットの熱伝導度の増加などの物性の低下を最小化したものである。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書に添付の以下の図面は、本発明の好ましい実施形態を例示し、上述の発明の内容とともに本発明の技術思想をより理解させる役割を果たすものであって、本発明は、かかる図面に記載の事項にのみ限定して解釈してはならない。
【0014】
図1】本発明の一実施形態によるエアロゲルブランケットを製造するための製造方法の一例に使用される製造装置の一例を図示した斜視図である。
図2】実施例2で製造されたエアロゲルブランケットに対するSEM写真であり、左側図は400倍率、右側図は5,000倍率である。
図3】比較例1で製造されたエアロゲルブランケットに対するSEM写真であり、左側図は400倍率、右側図は5,000倍率である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をより詳細に説明する。この際、本明細書および請求の範囲で使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義し得るという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0016】
本発明のエアロゲルブランケットは、ブランケット用基材と、前記ブランケット用基材の表面に結合したエアロゲルおよびブランケット用基材の間の空間に位置するエアロゲルとを含み、前記エアロゲルブランケットを1~30Hzの振動数で2~10時間振動させた時に、エアロゲルブランケットから脱落するエアロゲル粒子の数が、13,600~90,000個/ft3を満たすことを特徴とする。
【0017】
本発明において、前記振動条件は、1~30Hzの振動数で2~10時間振動させた時を基準とする。前記振動条件は、より具体的に限定可能であり、前記振動数は、具体的には6~24Hzであってもよく、前記振動時間は、具体的には4~8時間、より具体的には6時間であってもよい。
【0018】
本発明のエアロゲルブランケットは、ブランケット用基材とエアロゲルとを含むものであって、多量のエアロゲルがブランケット用基材の表面に結合しており、エアロゲルブランケットに振動などの外力が加えられる場合にも、これによりエアロゲルの脱離が最小化され得る。本明細書において、エアロゲルがブランケット用基材の表面に結合していることは、エアロゲルブランケットに含まれたエアロゲルが、粒子、片、平面などの形態を有する時に、前記エアロゲルの粒子、片、平面などのある一部分がブランケット用基材と物理的に結合していることを意味し、これに対し、ブランケット用基材の間の空間に位置するエアロゲルは、前記エアロゲルがブランケット用基材とは全く物理的に結合しておらず、独立した粒子、片、平面などの形態でブランケット用基材が形成する空間内に位置していることを意味する。
【0019】
多量のエアロゲルがブランケット用基材に強固に結合しているか否かは、エアロゲルブランケットを振動させた後、前記エアロゲルブランケットから脱離するエアロゲルの数により評価することができる。エアロゲルブランケットに含まれたエアロゲルがブランケット用基材と結合していない場合、エアロゲルブランケットからの脱離の可能性が高くなるため、脱離したエアロゲル粒子の数を測定することで、これを評価することができる。
【0020】
本発明のエアロゲルブランケットは、前記エアロゲルブランケットを1~30Hzの振動数で2~10時間振動させた時に、エアロゲルブランケットから脱落するエアロゲル粒子の数が、13,600~90,000個/ft3を満たすものである。本発明の一例において、1~30Hzの振動数で2~10時間振動させた時に、エアロゲルブランケットから脱落するエアロゲル粒子の数は、具体的には25,800~89,000個/ft3であってもよく、より具体的には40,900~88,500個/ft3であってもよい。
【0021】
本発明のエアロゲルブランケットは、多量のエアロゲルがブランケット用基材の表面に強固に結合しており、これにより、エアロゲルブランケットに振動などの外力が加えられる場合にも、これより脱落するエアロゲルが最小化し、前記の脱落粒子数の範囲を満たすことができる。
【0022】
本発明のエアロゲルブランケットは、多量のエアロゲルがブランケット用基材の表面に強固に結合しており、振動などの外力によるエアロゲル粒子の脱落が最小化するため、振動などの外力が加えられた場合にも、エアロゲルブランケットの熱伝導度などの物性の変化が抑制され得る。本発明のエアロゲルブランケットは、前記エアロゲルブランケットを1~30Hzの振動数で2~10時間振動させた時に、振動後の熱伝導度の増加率が、1.5%以下、具体的には1.48%以下、より具体的には1.45%以下であってもよく、熱伝導度の増加率の最小値は、0.10%、具体的には0.15%、より具体的には0.20%であってもよい。
【0023】
前記熱伝導度の増加率は、エアロゲルブランケットを振動させる前と振動させた後の熱伝導度を比較して示したものであり、具体的には、下記の数学式1のように示すことができる。
【0024】
【数1】
【0025】
本発明によるエアロゲルブランケットは、エアロゲルブランケットからのエアロゲルの脱離が最小化するため、振動後、エアロゲルブランケットから脱落するエアロゲル粒子の数も小さい値を有することができる。
【0026】
また、本発明の一例によるエアロゲルブランケットは、1~30Hzの振動数で2~10時間振動させた時に、エアロゲルブランケットから脱落する粒径0.5μm超1.0μm以下のエアロゲル粒子の数が、10,000~58,000個/ft3を満たすことができ、具体的には20,000~57,000個/ft3を満たすことができ、より具体的には30,000~56,000個/ft3を満たすことができる。
【0027】
また、本発明の一例によるエアロゲルブランケットは、1~30Hzの振動数で2~10時間振動させた時にエアロゲルブランケットから脱落する粒径1.0μm超2.0μm以下のエアロゲル粒子の数が、3,000~28,000個/ft3を満たすことができ、具体的には5,000~27,500個/ft3を満たすことができ、より具体的には10,000~27,000個/ft3を満たすことができる。
【0028】
また、本発明の一例によるエアロゲルブランケットは、1~30Hzの振動数で2~10時間振動させた時に、エアロゲルブランケットから脱落する粒径2.0μm超5.0μm以下のエアロゲル粒子の数が、500~4,000個/ft3を満たすことができ、具体的には700~4,000個/ft3を満たすことができ、より具体的には800~3,900個/ft3を満たすことができる。
【0029】
また、本発明の一例によるエアロゲルブランケットは、1~30Hzの振動数で2~10時間振動させた時に、エアロゲルブランケットから脱落する粒径5.0μm超10.0μm以下のエアロゲル粒子の数が、10~700個/ft3を満たすことができ、具体的には20~650個/ft3を満たすことができ、より具体的には40~600個/ft3を満たすことができる。
【0030】
本発明において、前記エアロゲル粒子の粒径は、例えば、走査電子顕微鏡(scanning electron microscopy、SEM)または電界放出型電子顕微鏡(field emission scanning electron microscopy、FE-SEM)などを用いた電子顕微鏡観察、もしくはレーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができる。レーザ回折法により測定する際、より具体的には、脱離したエアロゲル粒子を分散媒の中に分散させた後、市販のレーザ回折粒度測定装置(例えば、Microtrac MT 3000)に導入して粒径分布を算出することができる。
【0031】
本発明によるエアロゲルブランケットは、エアロゲルブランケットからのエアロゲルの脱離が最小化することから、振動後のエアロゲルブランケットから脱落するエアロゲル粒子の数が前記の具体的な範囲を満たすことができ、これにより、振動後のエアロゲルブランケットの重量の減少率も最小化することができる。
【0032】
本発明の一例によるエアロゲルブランケットは、1~30Hzの振動数で2~10時間振動させた時に、振動後の重量の減少率が、0.3重量%以下であってもよく、具体的には0.25重量%以下であってもよく、より具体的には0.23重量%以下であってもよい。一方、重量の減少率の最小値は、0.01重量%であってもよく、具体的には0.05重量%であってもよく、より具体的には0.1重量%であってもよい。
【0033】
本発明のエアロゲルブランケットは、その表面疎水性の改質可否に関係なく振動によるエアロゲル粒子の脱離が抑制され、優れた振動後の熱伝導度増加の抑制の効果を発揮することができる。本発明のエアロゲルが、表面疎水性の改質可否に関係なく優れた振動後の熱伝導度増加の抑制効果を発揮することは、多量のエアロゲルがブランケット用基材の表面に物理的に結合しているためである。
【0034】
本発明の一例において、本発明のエアロゲルブランケットは、シリカエアロゲルブランケットであってもよく、前記シリカエアロゲルブランケットの疎水化可否に影響を受けないため、本発明のエアロゲルブランケットは、親水性シリカエアロゲルブランケットまたは疎水性シリカエアロゲルブランケットであってもよい。
【0035】
本発明のエアロゲルブランケットは、各種の産業用設備の配管や工業用炉のような保温保冷用プラント施設は言うまでもなく、航空機、線舶、自動車、建築構造物などの断熱材、保温材、または不燃材として有用に使用可能である。
【0036】
本発明によるエアロゲルブランケットにおいて、多量のエアロゲルがブランケット用基材の表面に強固に結合していることは、本発明によるエアロゲルブランケットの製造方法から由来した特徴であり得る。すなわち、本発明のエアロゲルブランケットは、その製造方法によって上述のような特徴を有するものであり得る。以下では、本発明のエアロゲルブランケットの製造方法について説明する。
【0037】
本発明の一例によるエアロゲルブランケットは、1)反応容器に触媒化したゾルおよびブランケット用基材を投入し、ブランケット用基材に触媒化したゾルを含浸させるステップと、2)前記触媒化したゾルが含浸されたブランケット用基材を回転してゲル化するステップとを含む製造方法により製造することができる。
【0038】
ステップ1)
ステップ1)は、エアロゲルブランケットを形成するために準備するステップであって、ブランケット用基材に触媒化したゾルを含浸させるものとして、触媒化したゾルを製造し、製造した触媒化したゾルおよびブランケット用基材を反応容器に投入することにより、ブランケット用基材に触媒化したゾルを含浸させるものであり得る。
【0039】
本発明で使用される用語「含浸」は、ブランケット用基材に流動性のある触媒化したゾルを投入することで行われ、ブランケット用基材内部の気孔に触媒化したゾルが浸透することを示し得る。
【0040】
また、本発明の一例において、前記ステップ1)は、反応容器にブランケット用基材と触媒化したゾルを投入することであれば、その投入順序を特に制限しない。具体的には、前記ステップ1)は、反応容器にブランケット用基材を投入した後、触媒化したゾルを投入する方法、反応容器に触媒化したゾルを投入した後、ブランケット用基材を投入する方法、および反応容器に触媒化したゾルを投入しながらブランケット用基材を投入する方法のいずれか一つの方法で投入可能である。中でも、より均一な含浸を可能にする面で、ブランケット用基材を投入した後、触媒化したゾルを投入する方法がより好ましい。具体的には、ブランケット用基材を先に投入する場合には、触媒化したゾルを投入する時にブランケット用基材を回転させることができ、より均一な含浸が誘導され得る。
【0041】
本発明の一例によると、ステップ1)において、前記含浸は、上述のように、前記ブランケット用基材が回転しながら行われ得る。ブランケット用基材を回転しながら含浸を行う場合、ブランケット用基材の全面に均一に触媒化したゾルが接触して均一な含浸を誘導することができ、より好ましい。
【0042】
本発明において、前記触媒化したゾルは、ゾルと塩基触媒を混合して製造するものであってもよく、塩基触媒は、ゾルのpHを増加させてステップ2)でのゲル化を促進する役割を果たす。
【0043】
この際、ゾルは、ゾル‐ゲル反応で多孔性のゲルを形成することができる物質であれば制限されず、具体的には、無機ゾル、有機ゾルまたはこれらの組み合わせを含むことができる。無機ゾルは、ジルコニア、酸化イットリウム、ハフニア、アルミナ、チタニア、セリア、シリカ、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムおよびこれらを組み合わせた物を含むことができ、有機ゾルは、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリフルフラールアルコール、フェノールフルフリルアルコール、メラミンホルムアルデヒド、レゾルシノールホルムアルデヒド、クレゾールホルムアルデヒド、フェノールホルムアルデヒド、ポリビニルアルコールジアルデヒド、ポリシアヌレート、ポリアクリルアミド、様々なエポキシ、寒天、アガロースおよびこれらを組み合わせた物を含むことができる。また、ブランケット用基材との優れた混和性を確保し、ゲルへの形成時に多孔性をより改善することができ、低い熱伝導度を有するエアロゲルブランケットを製造する面で、好ましくは、前記ゾルがシリカゾルであってもよい。
【0044】
本発明の一例において、前記ゾルは、ゾル前駆体、水および有機溶媒を含むものであり、ゾル前駆体、水および有機溶媒を混合して製造したものであってもよい。本発明の一例において、前記触媒化したゾルが、触媒化したシリカゾルである場合、前記ステップ1)で触媒化したシリカゾルは、シリカゾルと塩基触媒を混合して製造されてもよく、ここで、前記シリカゾルは、シリカ前駆体と、水、有機溶媒を混合して製造されてもよい。また、シリカゾルは、ゲル化を容易にするために、低いpHで加水分解を行うことができ、この際、pHを下げるために、酸触媒を使用してもよい。
【0045】
前記のシリカゾルの製造に使用可能なシリカ前駆体は、シリコン含有アルコキシド系化合物であってもよく、具体的にはテトラメチルオルトシリケート(tetramethyl orthosilicate;TMOS)、テトラエチルオルトシリケート(tetraethyl orthosilicate;TEOS)、メチルトリエチルオルトシリケート(methyl triethyl orthosilicate)、ジメチルジエチルオルトシリケート(dimethyl diethyl orthosilicate)、テトラプロピルオルトシリケート(tetrapropyl orthosilicate)、テトライソプロピルオルトシリケート(tetraisopropyl orthosilicate)、テトラブチルオルトシリケート(tetrabutyl orthosilicate)、テトラセカンダリーブチルオルトシリケート(tetra secondary butyl orthosilicate)、テトラトターシャリーブチルオルトシリケート(tetra tertiary butyl orthosilicate)、テトラヘキシルオルトシリケート(tetrahexyl orthosilicate)、テトラシクロヘキシルオルトシリケート(tetracyclohexyl orthosilicate)、テトラドデシルオルトシリケート(tetradodecyl orthosilicate)などのテトラアルキルシリケートであってもよい。中でも、より具体的には、本発明の一実施形態による前記シリカ前駆体は、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)であってもよい。
【0046】
前記シリカ前駆体は、シリカゾル内に含まれるシリカ(SiO2)の含量が3重量%~30重量%になるようにする量で使用され得る。前記シリカの含量が3重量%未満である場合には、最終製造されるブランケットでのシリカエアロゲルの含量が過剰に低くて、目的とする水準の断熱効果を期待できないという問題が発生し得、30重量%を超える場合には、過剰なシリカエアロゲルの形成によって、ブランケットの機械的物性、特に、柔軟性が低下する恐れがある。
【0047】
また、本発明のゾルの製造に使用可能な有機溶媒は、ゾル前駆体および水との相溶性に優れたものであれば制限なく使用可能であり、具体的には、極性有機溶媒を使用してもよく、より具体的には、アルコールを使用してもよい。ここで、アルコールは、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの1価アルコール;またはグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、およびソルビトールなどの多価アルコールであってもよく、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用され得る。中でも、水および以降製造されるエアロゲルとの混和性を考慮すると、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの炭素数1~6の1価アルコールであってもよい。
【0048】
前記のような有機溶媒は、最終製造されるエアロゲルの含量を考慮して、適切な含量で使用され得る。
【0049】
本発明の一実施形態によるシリカゾルは、シリカ前駆体と水が1:4~1:1のモル比で含まれ得る。また、シリカ前駆体と有機溶媒が1:2~1:9の重量比で含まれてもよく、好ましくは1:4~1:6の重量比で含まれてもよい。シリカ前駆体が、水および有機溶媒との前記モル比または重量比を満たす場合、エアロゲル生産収率がより高くなることができ、断熱性能の面で改善効果がある。
【0050】
また、本発明の一実施形態によるゾルにおいてさらに含まれ得る酸触媒は、pHが3以下になるようにする酸触媒であれば制限なく使用可能であり、一例として、塩酸、硝酸または硫酸を使用してもよい。この際、酸触媒は、ゾルのpHが3以下になるようにする量を添加してもよく、水溶媒に溶解させた水溶液状態で添加してもよい。
【0051】
また、本発明の一実施形態による触媒化したゾルで使用可能な塩基触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基;または水酸化アンモニウムのような有機塩基であってもよい。具体的には、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カリウム(Ca(OH)2)、アンモニア(NH3)、水酸化アンモニウム(NH4OH;アンモニア水)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、モノイソプロピルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、コリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2‐アミノエタノール、2‐(エチルアミノ)エタノール、2‐(メチルアミノ)エタノール、N‐メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ニトリロトリエタノール、2‐(2‐アミノエトキシ)エタノール、1‐アミノ‐2‐プロパノール、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジブタノールアミンおよびピリジンからなる群から選択される1種以上であってもよく、好ましくは、水酸化ナトリウム、アンモニア、水酸化アンモニウムまたはこれらの混合物であってもよい。
【0052】
前記塩基触媒は、ゾルのpHが7~11になるようにする量で含まれ得る。前記ゾルのpHが前記範囲から逸脱する場合、後述するステップ2)のゲル化が容易でないか、ゲル化速度が過剰に遅くなって、工程性が低下する恐れがある。また、前記塩基は、固体状で投入すると析出される恐れがあるため、水溶媒または上述の有機溶媒によって希釈された溶液状で添加されることが好ましい。この際、前記塩基触媒および有機溶媒、具体的には、アルコールの希釈比率は、体積基準で1:4~1:100であってもよい。
【0053】
前記触媒化したゾルは、必要に応じて、添加剤をさらに添加することができ、この際、添加剤は、エアロゲルを製造する時に添加可能な公知の添加剤がいずれも適用可能であり、例えば、不透明化剤、難燃剤などの添加剤を使用することができる。
【0054】
前記ブランケット用基材は、反応容器の形状に応じて投入しやすい適切な形態で投入するものであり、具体的には、後述するステップ2)で回転が容易になるようにボビンにロール(roll)形態で巻いたブランケット用基材を反応容器に投入するものであり得る。この際、ボビンは、ブランケット用基材を回転させる軸になることができ、ブランケット用基材に巻くことができるものであれば、いずれも制限なく適用可能である。一例として、反応容器の内部に入ることができるサイズの多角筒型柱、好ましくは円筒型柱を使用してもよい。また、本発明の一実施形態によると、前記ボビンは、ブランケット用基材をロール形態で巻くことができる巻き取り棒と、巻き取り棒に巻かれたブランケット用基材が回転時に離脱しないように側部を支持する支持板とを含むことができる。この際、触媒化したゾルがブランケット用基材の内側にも含浸されやすいように巻き取り棒に多数の中空があることが好ましい。一方、ブランケット用基材の側部に触媒化したゾルが流入することができるように、支持板は、メッシュタイプであるか、多数の中空を含むことができる。ボビンの材質は、ブランケットを支持することができる十分な強度を有する如何なる材質でも使用が可能であり、具体的には、ステンレス鋼、PE、PP、テフロン(登録商標)などが使用可能である。
【0055】
前記ボビンにブランケット用基材に巻いた後、反応容器にこれを入れて固定することである。ここで、前記ボビンは、反応容器の如何なる位置でも固定が可能であるが、同じ体積の反応容器内でブランケット用基材を多く投入し、これによる生産効率を高める面で、好ましくは、反応容器の中心部に固定するものであり得る。また、前記ボビンの長軸と反応容器の長軸が互いに平行になるようにボビンを位置させてもよい。
【0056】
また、前記ブランケット用基材は、エアロゲルブランケットの断熱性を改善する面で、具体的には、多孔質(porous)基材であってもよい。多孔質のブランケット用基材を使用すると、触媒化したゾルが基材の内部に浸透しやすく、ブランケット用基材の内部でエアロゲルを均一に形成することから多量のエアロゲルがブランケット用基材の表面に強固に結合することができ、これにより、製造されたエアロゲルブランケットが優れた断熱性を有することができ、エアロゲルブランケットに振動などの外力が加えられる場合にもエアロゲル粒子の脱落が最小化するため、振動などの外力が加えられた場合にも、エアロゲルブランケットの熱伝導度などの物性の変化が抑制される効果を発揮することができる。
【0057】
前記ブランケット用基材は、フィルム、シート、網、繊維、発泡体、不織布体またはこれらの2層以上の積層体であってもよい。また、用途に応じて、その表面に表面粗さが形成されるか、パターン化したものであってもよい。より具体的には、前記ブランケット用基材は、ブランケット用基材内にエアロゲルの挿入が容易な空間または空隙を含むことで、断熱性能をより向上させることができる繊維であり得る。また、前記ブランケット用基材は、低い熱伝導度を有することが好ましい。
【0058】
具体的には、前記ブランケット用基材は、ポリアミド、ポリベンゾイミダゾール、ポリアラミド、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはこれらの共重合体など)、セルロース、カーボン、綿、毛、麻、不織布、ガラス繊維またはセラミックウールなどであってもよく、より具体的には、本発明において、前記ブランケット用基材は、ガラス繊維(glass felt、glass fiber)であってもよい。
【0059】
前記反応容器は、ゲル化を行うための反応容器であってもよく、触媒化したゾルが含浸されたブランケット用基材が回転するように空間を形成する容器であれば、多角筒型、円筒型などの如何なる形状の容器も使用が可能であるが、ロール形態で巻かれたブランケット用基材の投入も容易にし、ゲル化反応時に触媒化したゾルが含浸されたブランケット用基材の回転が容易に行われる面で、好ましくは、円筒型の反応容器を使用することができる。
【0060】
前記ステップ1)において触媒化したゾルを投入する時に、ブランケット用基材と触媒化したゾルの結合を良好にするために、ブランケット用基材を軽く押して充分に含浸されるようにすることができる。以降、一定の圧力でブランケット用基材を一定の厚さに加圧して残りのゾルを除去し、乾燥時間を低減することもできる。他の一実施形態において、反応容器に触媒化したゾルを投入する時に、ブランケット用基材が充分に含浸されこれ以上反応容器内の液位が変化しない時に、残っているゾルは回収してもよく、この際、残っているゾルは、反応容器に連結されたドレン弁(drain valve)を開いて回収してもよい。
【0061】
また、前記触媒化したゾルおよびブランケット用基材は、反応容器の体積、具体的には、反応容器内部の体積の1~100%になる量をそれぞれ投入することができ、ステップ3)においてゲル化時間を短縮し、ブランケット用基材内部に均一にエアロゲルを形成する面で、好ましくは反応容器体積の1~60%になる量、より好ましくは10~60%、さらに好ましくは30~60%になる量をそれぞれ投入してもよい。
【0062】
本発明の一例によると、ブランケット用基材の体積を基準に触媒化したゾルを80~120%、好ましくは90~110%になる比率の量で投入することができる。また、好ましくは、前記ブランケット用基材および触媒化したゾルの投入量は、前記の反応容器に対する投入量を満たす条件下で、前記の相互間の投入比率を満たしてもよい。触媒化したゾルがブランケット用基材の体積に対する投入比率(投入量)を満たす場合、触媒化したゾルがブランケット用基材にさらに均一に含浸され、製造されるエアロゲルブランケットがさらに均一な物性を有することができ、多量のエアロゲルがブランケット用基材の表面に強固に結合することができ、触媒化したゾルがブランケット用基材にすべて含浸され得るため、原材料の損失を防ぎ、触媒化したゾルが単独でゲル化する問題を防止することができる。
【0063】
ステップ2)
前記ステップ2)は、湿潤ゲル‐ブランケット複合体(湿潤ゲルブランケット)を製造するためのものであり、触媒化したゾルが含浸されたブランケット用基材を回転してゲル化させることで行われ得る。
【0064】
本発明の一例によるエアロゲルブランケットの製造方法は、触媒化したゾルが含浸されたブランケット用基材を回転してゲル化させることで、ブランケット用基材内のゾルが均一に含浸され得ることから、ゲル化時にエアロゲルがブランケット用基材内にさらに均一に形成され、また、エアロゲルがブランケット用基材の表面に強固に結合し、振動によるエアロゲル粒子の脱離が抑制されたエアロゲルブランケットを製造することができる。
【0065】
前記触媒化したゾルが含浸されたブランケット用基材の回転は、反応容器内でゲル化する間に回転するようにする方法であれば、如何なる方法および装置も使用が可能であり、具体的には、前記ステップ1)においてブランケット用基材をボビンに巻いた状態で投入し、固定させる場合、前記触媒化したゾルが含浸されたブランケット用基材がボビンに巻かれた状態で反応容器に存在するため、ボビンを回転することで触媒化したゾルが含浸されたブランケット用基材が回転するようにすることができる。
【0066】
本発明において、前記ゲル化(gelation)とは、触媒化したゾルから網状構造を形成させることであり、前記網状構造(network structure)は、原子配列が1種あるいはそれ以上の種類からなっているある特定の多角形が連なった平面網形状の構造または特定の多面体の頂点、角、面などを共有して、三次元骨格構造を形成している構造を示し得る。
【0067】
本発明の一例によると、触媒化したゾルおよびブランケット用基材を投入した反応容器をシールした後、ゲル化反応が行われ得る。また、本発明の一例によると、長軸を横方向、すなわち、水平方向に配置して回転させてもよい。仮に、反応容器(本体)が円筒型の反応容器である場合、円筒型の反応容器を横たえて回転させてもよい。すなわち、本発明の反応容器の回転軸は、水平方向であってもよいが、これに制限されない。
【0068】
前記反応容器(本体)を含み、前記反応容器に存在する触媒化したゾルが含浸されたブランケット用基材を回転させることができるエアロゲルブランケットの製造装置であれば、その種類が制限されず、回転させることができる装置であれば、公知の如何なる装置でも使用可能である。具体的には、反応容器にボビンの位置を固定させることができ、位置が固定されたボビンを回転可能にする装置であれば、公知の如何なる装置でも使用可能である。本発明において適用可能なエアロゲルブランケットの製造装置の一例示は後述する。
【0069】
また、前記ステップ1)を完了した後に前記ステップ2)を開始し、前記ステップ1)および前記ステップ2)を順に行ってもよい。
【0070】
本発明のさらに他の一実施形態によると、前記ステップ1)が完了する前に前記ステップ2)を開始して行ってもよく、このように、前記ステップ1)の完了前にステップ2)を行う場合には、ゲル化が完了するまで、具体的には、ゲル化が完了する前まで触媒化したゾルを反応容器に全部投入してもよい。
【0071】
本発明の一実施形態によると、前記ステップ2)での回転速度は、ブランケット内にエアロゲルが均一に形成され得るようにする回転速度であれば、制限なく適用可能であり、一例として、1rpm~300rpm、好ましくは5rpm~150rpm、5rpm~100rpm、より好ましくは10rpm~30rpmの回転速度で回転させながらゲル化を実施してもよい。反応容器が前記範囲の回転速度を満たす場合、ブランケット用基材内にゾルが均一に含浸され得るため、ゲル化時にエアロゲルがより均一に形成され、多量のエアロゲルがブランケット用基材の表面に強固に結合することができ、これにより、エアロゲルブランケットの全体において非常に均一な熱伝導度を確保することができ、反応容器およびこれを回転させる装置の安定性を高めて、エアロゲルブランケット製造工程の安全性を高めるという利点がある。
【0072】
本発明では、反応容器に触媒化したゾルとブランケット用基材をすべて入れゲル化させてエアロゲルブランケットを製造することにより、従来適用されていたロールツーロール工法とは異なり、コンベアベルトのような移動要素を別に必要とせず、製造時に使用空間を大幅に節約できるという利点がある。また、ロールツーロール工法のように、移動要素にブランケット用基材を配置し、前記ブランケット用基材に触媒化したゾルを塗布して、移動要素を移動させ続けながらゲル化させる場合、ブランケット用基材の全体において同時にゲル化が行われるのではなく、連続してブランケット用基材および触媒化したゾルを供給しながら、時間の流れによって順にゲル化が行われるしかないため、同一の厚さおよび長さを有するブランケット用基材を使用しても、本発明の一実施形態によるゲル化工程より著しく長い時間がかかるという問題が発生する。特に、ブランケット用基材が長くなるほど、ブランケット用基材の全体的に十分なゲル化が行われるためには、ゲル化工程時間が長くなる問題がより著しく現れるが、本発明の一実施形態によると、ブランケット用基材の全体においてゾルのゲル化が同時に行われるため、製造時間を著しく低減することができ、また、ブランケット用基材の長さおよび厚さがゲル化時間に影響を及ぼさないため、長さが長いブランケット用基材を使用しても、製造時間を著しく低減して、工程効率を極大化することができる。
【0073】
また、本発明の一実施形態によると、反応容器を回転させながらゲル化を行って遠心力と向心力が作用するため、反応容器を回転させないか、移動要素上でゲル化させるロールツーロール工法に比べて、エアロゲルがより均一に分散したエアロゲルブランケットを製造することができ、製造されるエアロゲルブランケットの厚さが、ブランケット用基材の厚さと同一または極めて類似する水準であり、断熱性に優れるという効果がある。
【0074】
さらに、本発明の一実施形態による製造方法は、前記湿潤ゲルブランケット複合体を適当な温度で放置して化学的変化が完全になされるようにするための工程として熟成ステップを行うことができ、熟成ステップは、前記形成された網状構造をより堅固に形成させることができ、本発明のエアロゲルブランケットの機械的安定性を強化することができる。
【0075】
本発明の熟成ステップは、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、トリエチルアミン、ピリジンなどの塩基性触媒を有機溶媒に1~10%の濃度で希釈させた溶液を添加することで、エアロゲル内にSi‐O‐Si結合を最大限に誘導して、シリカゲルの網状構造をより堅固にし、以降行われる迅速な乾燥工程で気孔構造の維持をより容易にするという効果がある。この際、有機溶媒は、上述のアルコール(極性有機溶媒)であってもよく、具体的には、エタノールを含むことができる。
【0076】
また、前記熟成ステップは、最適の気孔構造の強化のために、適切な温度範囲で行われなければならないが、本発明における熟成ステップは、30~70℃の温度で1~10時間放置して行ってもよい。熟成温度が30℃未満の場合、熟成時間が過剰に長くなって全工程時間の増加につながり、生産性が減少する問題が生じ得、熟成温度が70℃を超える場合、エタノールの沸点から離脱するため、蒸発による溶媒の損失が大きくなり、原材料費用が増加する問題が生じ得る。
【0077】
また、本発明の一実施形態によると、疎水性エアロゲルブランケットを製造するためのものとして、表面改質ステップをさらに行うことができる。
【0078】
エアロゲルの表面に存在する親水性官能基を疎水性官能基で置換する場合、疎水性官能基の間の反発力によって、エアロゲルの乾燥時に、溶媒の表面張力による気孔の収縮を最小化することができる。乾燥したエアロゲルは、乾燥直後は低い熱伝導率を維持するが、エアロゲルの表面に存在するヒドロキシ官能基、例えば、前記エアロゲルがシリカエアロゲルである場合、シリカの表面に存在する親水性のシラノール基(Si‐OH)が空気中の水を吸収することで、熱伝導率が次第に高くなるという欠点がある。したがって、低い熱伝導率を維持するためには、エアロゲルの表面を疎水性に改質する必要がある。
【0079】
したがって、本発明の一実施形態による前記表面改質は、極性溶媒および有機シラン化合物を含む表面改質剤によって行われ得る。
【0080】
前記極性溶媒は、メタノール、エタノールまたはイソプロピルアルコールなどを使用することができ、前記有機シラン化合物は、トリメチルクロロシラン(Trimethylchlorosilane、TMCS)、ヘキサメチルジシラザン(hexamethyldisilazane、HMDS)、メチルトリメトキシシラン(methyltrimethoxysilane)、トリメチルエトキシシラン(trimethylethoxysilane)、エチルトリエトキシシラン(ethyltriethoxysilane)、またはフェニルトリエトキシシラン(phenyltriethoxysilane)などが使用可能であり、具体的には、ヘキサメチルジシラザンが使用可能である。
【0081】
前記表面改質は、溶媒の場合、ゲルに対して1~10の体積比で、有機シラン化合物の場合、ゲルに対して0.1~10の体積比で混合することが好ましい。有機シラン化合物の体積比が0.1未満の場合には、反応時間が過剰に長くなり、表面改質効率が低下することがあり、有機シラン化合物の体積比が10を超える場合には、コストアップの問題があり、未反応の表面改質剤が乾燥時に収縮を誘発することがある。
【0082】
また、本発明の一実施形態によると、前記熟成ステップおよび表面改質ステップは、ゲル化が完了したシリカ湿潤ゲルブランケットを回収した後、別の反応容器で行ってもよく、もしくはゲル化が行われた反応容器の内部で行われてもよく、工程の効率および装備の簡素化の面で、好ましくは、ゲル化が行われた前記の反応容器で熟成および表面改質ステップを行うことができる。また、ゲル化が行われた前記の反応容器で熟成および表面改質ステップを行う時に、前記ステップ3)で製造された湿潤ゲル‐ブランケット複合体は回転してもよく、回転しながら熟成および表面改質を行う場合、熟成溶媒および表面改質剤がよりよく浸透され、浸透された後、湿潤ゲルブランケット複合体内で分散がよりよく行われ得るため、熟成効率および表面改質効率が大幅に改善するという利点がある。
【0083】
前記の表面改質ステップを行った後には、疎水性の湿潤ゲルブランケット複合体を得ることができる。
【0084】
また、本発明の一実施形態による湿潤ゲルブランケット複合体は、乾燥するステップを行ってエアロゲルブランケットを製造することができる。
【0085】
一方、本発明の一実施形態による製造方法は、前記乾燥前に洗浄するステップをさらに行うことができる。前記洗浄は、反応中に発生した不純物(ナトリウムイオン、未反応物、副産物など)および超臨界乾燥中にCO2と反応して、炭酸アンモニウム塩を発生することができる残留アンモニアなどを除去し、高純度の疎水性のシリカエアロゲルを得るためのものであり、非極性有機溶媒を用いた希釈工程または交換工程で行うことができる。
【0086】
本発明の一実施形態による前記乾燥ステップは、熟成されたゲルの気孔構造をそのまま維持しながら溶媒を除去する工程により行われ得、前記乾燥ステップは、超臨界乾燥または常圧乾燥工程によることができる。
【0087】
前記超臨界乾燥工程は、超臨界二酸化炭素を用いて行われ得る。二酸化炭素(CO2)は、常温および常圧では、ガス状態であるが、臨界点(supercritical point)といる所定の温度および高圧の限界を超えると、蒸発過程が起こらずガスと液体の区別がつかない臨界状態になり、この臨界状態にある二酸化炭素を超臨界二酸化炭素とする。
【0088】
超臨界二酸化炭素は、分子の密度は液体に近いが、粘性度は低くてガスに近い性質を有し、拡散が迅速で熱伝導性が高くて乾燥効率が高く、乾燥工程時間を短縮することができる。
【0089】
具体的には、前記超臨界乾燥工程は、超臨界乾燥反応器の中に熟成された湿潤ゲルブランケットを入れた後、液体状態のCO2を充填し、湿潤ゲル内部のアルコール溶媒をCO2で置換する溶媒置換工程を行う。その後、所定の昇温速度、具体的には0.1℃/min~1℃/minの速度で、40~70℃に昇温させた後、二酸化炭素が超臨界状態になる圧力以上の圧力、具体的には100bar~150barの圧力を維持して、二酸化炭素の超臨界状態で、所定時間、具体的には20分~1時間維持する。一般的に、二酸化炭素は、31℃の温度、73.8barの圧力で超臨界状態になる。二酸化炭素が超臨界状態になる所定の温度および所定の圧力で2時間~12時間、より具体的には2時間~6時間維持した後、徐々に圧力を除去して超臨界乾燥工程を完了し、エアロゲルブランケットを製造することができる。
【0090】
また、常圧乾燥工程の場合、70~200℃の温度および常圧(1±0.3atm)下で、熱風乾燥、IR dryingなどの通常の方法により行われ得る。
【0091】
前記のような乾燥工程の結果として、ナノサイズの気孔を有する多孔性エアロゲルを含むブランケットが製造され得る。特に、本発明の一実施形態によるシリカエアロゲルは、高い疎水化度とともに、優れた物性的特性、特に、低いタップ密度と高い気孔率を有し、これを含むシリカエアロゲル含有ブランケットは、低い熱伝導度とともに優れた機械的柔軟性を有する。
【0092】
また、前記乾燥工程の前または後に、厚さの調節およびブランケットの内部組織と表面形状を均一にするための圧着工程、用途に応じて、適切な形態またはモルホロジーを有するようにするための成形工程、または別の機能層を積層する積層工程などがさらに行われてもよい。
【0093】
本発明の一例による製造方法に使用されるエアロゲルブランケット製造装置の一例を図1に図示した。図1を参照すると、ブランケット(blanket)が巻き取られるボビン100と、前記ボビン100を収容するゲル化タンク210が備えられた本体200と、前記ゲル化タンク210に収容されたボビン100を回転させる駆動部材300と、前記ゲル化タンク210に触媒化したゾルを注入する触媒化したゾル供給部材400と、前記ゲル化タンク210に熟成溶液を注入する熟成部材(図示せず)と、前記ゲル化タンク210に表面改質剤を注入する表面改質剤部材(図示せず)と、前記ゲル化タンク210の温度を上昇させてブランケットを乾燥する乾燥部材(図示せず)とを含む。
【0094】
ここで、ブランケットは、触媒化したゾルが投入される前のブランケット用基材、触媒化したゾルが含浸されたブランケット用基材および/またはゲル化後の湿潤ゲルブランケットを意味し得、各ステップ別にブランケット用基材の状態に応じて適切に解釈され得る。
【0095】
(ボビン)
ボビンは、ブランケットをロール形態に巻き取るためのものであり、ブランケットがロール形態に巻き取られる巻き取り棒と、前記巻き取り棒の両端部にそれぞれ結合し、前記巻き取り棒に巻き取られたブランケットの側部を支持する支持板とを含む。
【0096】
前記巻き取り棒は、長手方向に貫通する中空が形成された円筒形態を有し、外周面に長いシート状のブランケットがロール形態に巻き取られる。
【0097】
一方、巻き取り棒に巻き取られたブランケットの外側は、触媒化したゾルを迅速に含浸させることができ、安定的にゲル化させることができるが、ブランケットの内側は、触媒化したゾルが含浸されるために長い時間がかかるという問題がある。これを防止するために、巻き取り棒の外周面には、中空と連結される複数個の連結孔を含む。
【0098】
すなわち、前記巻き取り棒は、前記ゲル化タンクに注入された触媒化したゾルを流入するように、内部に中空が形成され、前記中空に流入された触媒化したゾルが巻き取り棒の外に流出して、巻き取り棒に巻き取られたブランケットの内側に含浸されるようにする複数個の連結孔が形成される。これにより、ブランケットの外側と内側を同時に触媒化したゾルを含浸させることによってゲル化させることができ、結果、ブランケットのゲル化にかかる時間を大幅に短縮することができ、結果、ブランケットの全体を均一にゲル化させることができる。
【0099】
一方、前記複数個の連結孔の直径は3~5mmであり、巻き取り棒の外周面に規則的な間隔で形成される。これにより、巻き取り棒の外周面に巻き取られたブランケットの全体に均一に触媒化したゾルを供給することができ、これによってブランケット内側の全体を均一にゲル化させることができる。
【0100】
前記支持板は、巻き取り棒に巻き取られたブランケットが不規則に巻き取られないように支持するものであり、円板形態を有し、前記巻き取り棒の両端部にそれぞれ結合し、前記巻き取り棒に巻き取られたブランケットの側部を支持する。
【0101】
一方、支持板は、前記巻き取り棒の端部が結合する締結溝と、前記締結溝の底面に形成される締結孔とを含む。すなわち、支持板は、締結溝を通じて巻き取り棒の端部に結合することができる。
【0102】
一方、支持板には、複数個の開放孔が形成され、複数個の開放孔は、巻き取り棒に巻き取られたブランケットの側部に触媒化したゾルを流入することができ、これによってブランケットの側部を安定的にゲル化させることがある。
【0103】
したがって、前記ボビンは、巻き取り棒と支持板を含み、これによってブランケットをロール形態に巻き取ることができる。
【0104】
(本体)
本体は、ボビンを収容するゲル化タンクが設置されるものであり、ゲル化タンクと、前記ゲル化タンクが設置される第1設置部材220とを含む。
【0105】
前記ゲル化タンクは、ボビンに収容されたブランケットをゲル化させるためのものであり、内部に備えられ、前記ボビンを収容するゲル化室と、外部下端に備えられ、ゲル化室と連結される排出部と、外部上端に備えられ、ゲル化室と連結される流入部とを含む。
【0106】
特に、ゲル化タンクのゲル化室は、上部が蓋によって開放され、下部が巻き取り棒に巻き取られたブランケットと対応する曲率を有する「U」字断面形状を有し、これにより、ゲル化室にシリカゾルが流入される場合、シリカゾルとブランケットの接触力を高めることができ、結果、ブランケットのゲル化を高めることができる。
【0107】
一方、前記ゲル化タンクは、前記ゲル化室の両壁面に備えられ、前記ボビンの両端に結合するとともに、前記ボビンを前記ゲル化室に回転可能に設置する回転部材を含む。
【0108】
前記回転部材は、前記ゲル化室の両壁面に形成された貫通孔に回転可能に設置され、ゲル化室に収容されたボビンの端部が動力伝達可能に設置される。
【0109】
一例として、回転部材の一面に一字状の結合突起が形成され、ボビンの端部に前記結合突起が結合する一字状の結合溝が形成される。すなわち、結合突起と結合溝の結合により、回転部材の回転時にボビンを同方向に回転させることができる。結果、ゲル化タンクの内部にボビンを回転可能に設置することができる。
【0110】
一方、本体には、触媒化したゾル供給部材が設置される第2設置部材230がさらに含まれ、前記第2設置部材は、底片231と、前記底片の上部に設置され、触媒化したゾル供給部材がゲル化タンクより高く位置するように設置される設置台232と、前記底片の一側端部に設置される階段233とを含む。
【0111】
一方、前記ゲル化タンクは、前記ゲル化タンクに備えられた残りの一つの回転部材と結合するとともに前記ボビンを回転させる回転ハンドルを含み、回転ハンドルは、外部でボビンを手動で回転させることができる。
【0112】
一方、前記第2設置部材の設置台には、熟成部材、表面改質部材および乾燥部材がさらに設置される。
【0113】
(駆動部材)
駆動部材は、前記ゲル化タンクに収容されたボビンを回転させるためのものであり、前記ゲル化タンクに備えられた他の一つの回転部材と動力伝達可能に連結される。すなわち、駆動部材は、回転部材を回転させると、回転部材と連動して、ゲル化タンクに収容されたボビンを回転させることができる。
【0114】
(触媒化したゾル供給部材)
触媒化したゾル供給部材は、ゲル化タンクにシリカゾルを注入し、ボビンに巻き取られたブランケットを含浸させることによってブランケットをゲル化させるためのものであり、前記設置台に設置され、触媒化したゾルをゲル化タンクの流入部を通じてゲル化室に供給する。
【0115】
(熟成部材)
熟成部材は、ゲル化タンクに熟成溶液を注入し、ボビンに巻き取られたブランケットを熟成するためのものであり、前記設置台に設置され、熟成溶液をゲル化タンクの流入部を通じてゲル化室に供給する。
【0116】
(表面改質部材)
表面改質部材は、ゲル化タンクに表面改質剤を注入し、ボビンに巻き取られたブランケットの表面を改質するためのものであり、前記設置台に設置され、表面改質剤をゲル化タンクの流入部を通じてゲル化室に供給する。
【0117】
(乾燥部材)
乾燥部材は、ゲル化タンクに高温の熱風を供給し、ボビンに巻き取られたブランケットを乾燥するためのものであり、前記設置台に設置されてゲル化タンクの温度を上昇させてゲル化タンクに収容されたブランケットを乾燥する。
【0118】
したがって、本発明の一実施形態によるエアロゲルブランケット製造装置は、エアロゲルブランケットの製造時間を大幅に短縮することができ、エアロゲルブランケットの生産性を大幅に高めることができ、結果、エアロゲルブランケットを大量生産することができる。
【0119】
特に、本発明の一実施形態によるエアロゲルブランケット製造装置は、ブランケットを回転させることによって、ブランケットの厚さおよび長さに関係なく安定したゲル化を誘導することができ、ボビンが回転することから、ボビンに巻き取られたブランケットの全体を均一にゲル化させることができ、ゲル化タンクを回転せず、ボビンのみ回転するため、ゲル化タンクの形態が制限されない。また、ゲル化タンクのゲル化室を「U」字断面形態に形成することによって、ボビンに巻き取られたブランケットをより効果的にゲル化させることがある。
【0120】
また、本発明の一実施形態によると、前記エアロゲルブランケット製造装置は、ブランケット(blanket)が巻き取られるボビンを含み、前記ボビンは、巻き取り棒と支持板とを含むことができる。
【0121】
ここで、前記巻き取り棒の外周面には、ブランケットの巻取開始点が挟まれて固定される固定クリップを含むことができる。
【0122】
すなわち、固定クリップは、弾性復元力を有するピン形態を有し、一端が巻き取り棒の外周面に固定され、他端が巻き取り棒の外周面に弾力的に支持される。これにより、固定クリップの他端と巻き取り棒との間にブランケットの開始点を挿入すると、固定クリップの弾性力によって、ブランケットを巻き取り棒の開始点を固定することができ、結果、巻き取り棒の外周面にブランケットを簡単に巻き取ることができる。
【実施例
【0123】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施することができるように、本発明の実施例について詳細に説明する。しかし、本発明は、様々な相違する形態に具現され得、ここで説明する実施例に限定されない。
【0124】
(製造例:シリカゾルおよび触媒溶液の製造)
テトラエチルオルトシリケート(TEOS)と水を1:4のモル比で混合し、TEOSと1:5の重量比を有するエタノールを添加して、シリカゾルを製造した。加水分解を促進するために、シリカゾルのpHが3以下になるように塩酸を添加した。シリカゾル100重量部に対して、0.2重量部の不透明化剤であるTiO2と、0.2重量部の難燃剤であるUltracarb(LKAB社製)を混合し30分間撹拌してシリカゾルを製造し、これとは別に、1体積%のアンモニアエタノール溶液(塩基触媒溶液)を製造する。前記シリカゾルと塩基触媒溶液を9:1の体積比で混合し、触媒化したゾルを製造した。
【0125】
(実施例1)
反応容器に10T(10mm)ガラス繊維(Glass fiber)が巻かれたボビンを固定した。前記製造例で製造された触媒化したゾルを反応容器に投入し、ガラス繊維が巻かれたボビンを回転させてゲル化を行った。この際、触媒化したゾルの投入速度を調節して、ゲル化が完了する前に触媒化したゾルがすべて投入されるようにした。繊維が充分に含浸され、これ以上反応容器内の液位が変化しないと、残っているゾルは、反応容器に結合したドレン弁を開いて回収した。30分後、ゲル化が完了すると、反応容器に熟成溶液を投入しボビンを回転させて熟成を行った。この際、熟成溶液としては5体積%のアンモニアエタノール希釈液を使用して、60℃の温度で1時間熟成させた。熟成が完了すると、ドレン弁を開いて熟成溶液を回収した。次に、反応容器に表面改質溶液を投入してボビンを回転させて表面改質を行い、完了後、表面改質溶液を回収した。表面改質溶液としては、10体積%のヘキサメチルジシラザン(HMDS)エタノール希釈液を使用しており、湿潤ゲル‐ブランケット複合体と同じ体積比を有する量を添加した。
【0126】
表面改質(疎水化)は、60℃の温度で4時間行った。表面改質反応の完了後、湿潤ゲルブランケットを超臨界抽出装置に入れてCO2を注入し、抽出装置内の温度を1時間にわたり60℃に昇温し、60℃、150barで超臨界乾燥を実施した。超臨界乾燥が完了した疎水性シリカエアロゲルブランケットを200℃のオーブンで2時間常圧乾燥を行って残存する塩と水分を完全に除去し、疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0127】
(実施例2)
反応容器に10T(10mm)ガラス繊維(Glass fiber)が巻かれたボビンを固定した。前記製造例で製造された触媒化したゾルにテトラエチルオルトシリケート(TEOS)と同じモル数のトリメチルエトキシシランを表面改質剤として添加した。前記ゾルを反応容器に投入し、ガラス繊維が巻かれたボビンを回転させてゲル化を行った。この際、触媒化したゾルの投入速度を調節して、ゲル化が完了する前に触媒化したゾルがすべて投入されるようにした。繊維が充分に含浸され、これ以上反応容器内の液位が変化しないと、残っているゾルは、反応容器に結合したドレン弁を開いて回収した。30分後、ゲル化が完了すると、別の熟成溶液なしに60℃の温度で20時間熟成を行った。
【0128】
熟成された湿潤ゲルブランケットを超臨界抽出装置に入れてCO2を注入し、抽出装置内の温度を1時間にわたり60℃に昇温し、60℃、150barで超臨界乾燥を実施した。超臨界乾燥が完了した疎水性シリカエアロゲルブランケットを200℃のオーブンで2時間常圧乾燥を行って残存する塩と水分を完全に除去し、疎水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0129】
製造されたシリカエアロゲルブランケットに対する走査電子顕微鏡(SEM)写真を図2に示した。
【0130】
(実施例3)
反応容器に10T(10mm)ガラス繊維(Glass fiber)が巻かれたボビンを固定した。前記製造例で製造された触媒化したゾルを反応容器に投入し、ガラス繊維が巻かれたボビンを回転させてゲル化を行った。この際、触媒化したゾルの投入速度を調節して、ゲル化が完了する前に触媒化したゾルがすべて投入されるようにした。繊維が充分に含浸され、これ以上反応容器内の液位が変化しないと、残っているゾルは、反応容器に結合したドレン弁を開いて回収した。30分後、ゲル化が完了すると、反応容器に熟成溶液を投入し、ボビンを回転させて熟成を行った。
【0131】
熟成された湿潤ゲルブランケットを超臨界抽出装置に入れてCO2を注入し、抽出装置内の温度を1時間にわたり60℃に昇温し、60℃、150barで超臨界乾燥を実施した。超臨界乾燥が完了したシリカエアロゲルブランケットを200℃のオーブンで2時間常圧乾燥を行って残存する塩と水分を完全に除去し、親水性のシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0132】
(比較例1)
10Tガラス繊維をコンベアベルトに載置し、0.15m/minの速度でベルトを作動させてガラス繊維を移動した。コンベアベルトの前端に設置されたノズルを通じて前記製造例で製造された触媒化したゾルを1.2L/minの速度で噴射し、移動するガラス繊維に含浸されるようにした。ゾルが含浸された繊維は、ベルトで20分間移動してゲル化が行われ、ゲル化が完了すると、ベルトの後端に載置されたボビンに湿潤ゲルブランケットを巻いた。以降、実施例1と同じ方法でシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0133】
製造されたシリカエアロゲルブランケットに対する走査電子顕微鏡(SEM)写真を図3に示した。
【0134】
(実験例)
1)振動後の大気中のサイズ別の粒子数の測定
実施例1~3および比較例1で製造されたシリカエアロゲルブランケットを用いて、それぞれ610mm×914mmサイズの試験片を製造し、これを直接作製した振動発生装置に装着し、下記の表1に示したような振動数と時間に設定して振動を加えた。振動を加えた後、粒子カウンタ(particle counter)装備(Fluke社製、Fluke‐985)を用いて、大気中に飛散した粒子の数を1分間測定した。振動試験は、約12m2サイズの密閉されたルームで行われた。
【0135】
2)常温の熱伝導度の測定(mW/mK)
各実施例および比較例で製造したエアロゲルブランケットで30cm×30cmサイズを有するサンプルを各ブランケット当たり5個ずつ準備し、サンプルに対して、NETZSCH社製のHFM 436 Lambda装備を用いて、前記1)の振動前後の常温(20±5℃)の熱伝導度を測定した。下記数学式1を用いて、振動後も熱伝導度の増加率を計算した。
【0136】
【数2】
【0137】
3)重量の減少率
実施例1~3および比較例1で製造されたシリカエアロゲルブランケットを用いて、それぞれ610mm×914mmサイズの試験片に対して、前記1)の振動前後の重量を測定した。下記数学式2を用いて、振動後の重量の減少率を計算した
【0138】
【数3】
【0139】
【表1】
【0140】
前記表1において、~1.0μmは、粒径0.5μm超1.0μm以下、~2.0μmは、粒径1.0μm超2.0μm以下、~5.0μmは、粒径2.0μm超5.0μm以下、~10.0μmは、粒径5.0μm超10.0μm以下を示す。前記表1の実験2~4は、すべて実施例2で製造されたシリカエアロゲルブランケットを、実験6~9は、すべて比較例1で製造されたシリカエアロゲルブランケットを用いて準備した試験片を用いて実験が行われ、振動前の常温熱伝導度に差があるものは、試験片の採取位置による偏差に相当する。
【0141】
前記表1で確認されるように、実施例1~3のエアロゲルブランケットの場合、6Hz、6時間の振動条件、12Hz、6時間の振動条件、24Hz、6時間の振動条件の後、エアロゲルブランケットの熱伝導度の増加率および重量の減少率が、比較例1に比べて著しく少ない値を示していることを確認することができる。また、具体的な振動後のエアロゲルブランケットから脱離したエアロゲル粒子の数においても、実施例1~3のエアロゲルブランケットは、比較例1のエアロゲルブランケットに比べて著しく少ない数を示していることを確認することができる。
【0142】
また、比較例1のエアロゲルブランケットの場合、6Hz、3時間の振動条件では、0.24重量%の相対的に低い重量の減少率を示しているが、振動後、エアロゲルブランケットから脱離したエアロゲル粒子の数は、94,120個/ft3と多数を記録しており、この場合、振動後の重量の減少率に比べて相対的に高い常温熱伝導度の増加率を示した。これにより、エアロゲルブランケットの振動後の重量の減少率に比べて、脱離したエアロゲル粒子の数が、エアロゲルブランケットの振動後の常温の熱伝導度の増加率に対してより大きい影響を及ぼすことを確認することができた。
【0143】
これに関して、実施例2のエアロゲルブランケットのSEM写真を図示した図2と、比較例1のエアロゲルブランケットのSEM写真を図示した図3を参照すると、実施例2のエアロゲルブランケットは、ほとんどのエアロゲルがブランケット用基材(繊維)に物理的に結合している点を確認することができるのに対し、比較例1のエアロゲルブランケットは、ほとんどのエアロゲルがブランケット用基材(繊維)が形成している空間に独立して離れて位置しており、ブランケット用基材と物理的に結合しているエアロゲルが相対的に非常に少ない量であることを確認することができる。
【0144】
前記実験例により、実施例1~3のエアロゲルブランケットの場合、エアロゲルがブランケット用基材に物理的に堅固に結合しており、振動後にもエアロゲルの脱離が少ないのに対し、比較例1のエアロゲルブランケットの場合、そうではないため、著しい効果上の差が発生することを確認することができた。かかる結果は、本発明のエアロゲルブランケットは、エアロゲルがブランケット用基材にさらに堅固に結合し、振動後にもエアロゲルの脱離が少なく、これにより、熱伝導度の増加率が低い優れた効果を示すものと分析され得る。
【符号の説明】
【0145】
100 ボビン
110 巻き取り棒
120 支持板
200 本体
210 ゲル化タンク
212 排出部
213 流入部
214 蓋
215 回転部材
216 回転ハンドル
220 第1設置部材
230 第2設置部材
231 底片
232 設置台
233 階段
300 駆動部材
400 触媒化したゾル供給部材
図1
図2
図3