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特許7530563シート搬送装置、自動原稿搬送装置及び画像形成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】シート搬送装置、自動原稿搬送装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/02 20060101AFI20240801BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20240801BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20240801BHJP
   G03G 21/20 20060101ALI20240801BHJP
   G03G 21/00 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B65H7/02
B65H5/06 J
G03G15/00 107
G03G21/20
G03G21/00 500
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020088412
(22)【出願日】2020-05-20
(65)【公開番号】P2021181376
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】水野 陽太朗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 千沙
(72)【発明者】
【氏名】飯田 陽介
(72)【発明者】
【氏名】澤田 健
(72)【発明者】
【氏名】中田 真人
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 宏太
【審査官】久米 伸一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-059975(JP,A)
【文献】特開2017-222514(JP,A)
【文献】特開2017-079368(JP,A)
【文献】特開平11-106093(JP,A)
【文献】特開平09-249320(JP,A)
【文献】特開2009-062115(JP,A)
【文献】特開2012-131579(JP,A)
【文献】特開2013-234033(JP,A)
【文献】特開2014-043340(JP,A)
【文献】特開2016-176706(JP,A)
【文献】特開2019-077512(JP,A)
【文献】特開2010-011097(JP,A)
【文献】特開2021-022823(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0140766(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0140757(US,A1)
【文献】特開2014-058352(JP,A)
【文献】特開2012-193040(JP,A)
【文献】国際公開第2017/141290(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/02
B65H 5/06
G03G 15/00
G03G 21/20
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する搬送部材を備えたシート搬送装置において、
前記搬送部材が、シートトレイに載置されたシートを給送する給送ローラであり、
前記給送ローラより給送されたシートを搬送・分離する一対の分離搬送部材と、
前記給送ローラと一対の分離搬送部材のうち一方の分離搬送部材とを保持し、シート搬送路を覆う閉じ位置と前記シート搬送路の一部を露出する開位置との間を回動可能な開閉カバーと、
前記給送ローラによりシートトレイに載置されたシートを給送してから前記一対の分離搬送部材で前記給送ローラより給送されたシートを搬送・分離するまでの給紙/分離動作時の音を集音する集音部と、
シートの変形が発生しているか否かに基づいて、前記給送ローラおよび前記一方の分離搬送部材の前記シートとの接触圧を減少、または、前記シートから離間させる動作を行うか否かを判断する減圧判断部とを備え、
前記減圧判断部は、前記集音部が集音した音に基づいて、前記給紙/分離動作時に前記シートに変形が発生していると判定したときは、前記開閉カバーを前記閉じ位置から前記開位置へ向けて回動させる動作を行う判断をすることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
求項に記載のシート搬送装置において、
前記シートの変形が発生していると判別したときは、前記開閉カバーの前記閉じ位置でのロックを解除することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のシート搬送装置において、
前記開閉カバーが閉じ位置にあるとき、前記開閉カバーを開く方向に押圧する押圧機構を有することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項4】
請求項乃至いずれか一項に記載のシート搬送装置において、
前記給送ローラをシートに対して接離させる接離部を備え、
前記シートの変形が有ると判別したときは、前記接離部により前記給送ローラを前記シートから離間させることを特徴とするシート搬送装置
【請求項5】
求項1乃至4いずれか一項に記載のシート搬送装置において、
前記集音部を前記搬送部材の近傍に配置したことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれか一項に記載のシート搬送装置において、
前記集音部が集音した音の特徴を定量的に表現した特徴量を抽出し、抽出した特徴量に基づいてシートの変形の有無を判別することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項7】
請求項6に記載のシート搬送装置において、
前記特徴量が、メル周波数ケプストラム係数であることを特徴とするシート搬送装置。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれか一項に記載のシート搬送装置において、
サポートベクタ―マシンによりシートの変形の有無を判別することを特徴とするシート搬送装置。
【請求項9】
原稿シートを搬送する原稿シート搬送部を備え、
前記原稿シート搬送部によって原稿シートを画像読取部へ搬送する自動原稿搬送装置において、
前記原稿シート搬送部として、請求項1乃至8いずれか一項に記載のシート搬送装置を用いたことを特徴とする自動原稿搬送装置。
【請求項10】
シートを搬送するシート搬送部を備え、
前記シート搬送部によって搬送されるシートに画像を形成する画像形成装置において、
前記シート搬送部として、請求項1乃至8いずれか一項に記載のシート搬送装置の構成を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送装置、自動原稿搬送装置及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シートを搬送する搬送部材を備えたシート搬送装置が知られている。
【0003】
特許文献1には、上記シート搬送装置として、集音部が集音した動作音に基づいて、用紙ジャムの内容を特定し、特定した用紙ジャムの内容に基づいて所定のジャム処理を行うものが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、用紙ジャムの発生を未然に抑制することができないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明は、シートを搬送する搬送部材を備えたシート搬送装置において、前記搬送部材が、シートトレイに載置されたシートを給送する給送ローラであり、前記給送ローラより給送されたシートを搬送・分離する一対の分離搬送部材と、前記給送ローラと一対の分離搬送部材のうち一方の分離搬送部材とを保持し、シート搬送路を覆う閉じ位置と前記シート搬送路の一部を露出する開位置との間を回動可能な開閉カバーと、前記給送ローラによりシートトレイに載置されたシートを給送してから前記一対の分離搬送部材で前記給送ローラより給送されたシートを搬送・分離するまでの給紙/分離動作時の音を集音する集音部と、前記シートの変形が発生しているか否かに基づいて、前記給送ローラおよび前記一方の分離搬送部材の前記シートとの接触圧を減少、または、前記搬送部材を前記シートから離間させる動作を行うか否かを判断する減圧判断部とを備え、前記減圧判断部は、前記集音部が集音した音に基づいて、前記シートに変形が発生していると判定したときは、前記開閉カバーを前記閉じ位置から前記開位置へ向けて回動させる動作を行う判断をすることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、用紙ジャムの発生を未然に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る複写機を示す概略構成図。
図2】同複写機における画像形成部の内部構成の一部を拡大して示す部分拡大構成図。
図3】同画像形成部における4つのプロセスユニットからなるタンデム部の一部を示す部分拡大図。
図4】同複写機のスキャナ及びADFを示す斜視図。
図5】同ADFの要部構成をスキャナの上部とともに示す拡大構成図。
図6】同ADF及び同スキャナの電気回路の一部を示すブロック図。
図7】同ADFに配置される集音マイクの配置に関する説明図。
図8】同ADFのピックアップローラを加熱する発熱部材について説明する図。
図9】同ADFの給紙カバーの開閉について説明する図。
図10】同ADFのコントローラによって実施される動作状態判別処理のフローチャート。
図11】本実施形態の白紙供給装置の概略構成図。
図12】本体制御部によって実施される白紙供給装置の動作状態判別処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を、電子写真方式の複写機(以下、単に複写機という)に適用した実施形態について説明する。
まず、実施形態に係る複写機の基本的な構成について説明する。図1は、実施形態に係る複写機を示す概略構成図である。この複写機は、画像形成部1と、白紙供給装置40と、原稿読取装置50とを備えている。原稿読取装置50は、画像形成部1の上に固定されたスキャナ150と、これに支持される原稿搬送装置たるADF51とを有している。
【0009】
白紙供給装置40は、ペーパーバンク41内に多段に配設された2つの給紙カセット42、給紙カセットから転写紙を送り出す送出ローラ43、送り出された転写紙を分離して給紙路44に供給する分離ローラ45等を有している。また、画像形成部1の給紙路37に転写紙を搬送する複数の搬送ローラ47等も有している。そして、給紙カセット内の転写紙を画像形成部1内の給紙路37内に給紙する。
【0010】
図2は、画像形成部の内部構成の一部を拡大して示す部分拡大構成図である。画像形成手段としての画像形成部1は、光書込装置2、K,Y,M,C色のトナー像を形成する4つのプロセスユニット3K,Y,M,C、転写ユニット24を備えている。また、紙搬送ユニット28、レジストローラ対33、定着装置34、スイッチバック装置36、給紙路37等を備えている。そして、光書込装置2内に配設されたレーザーダイオードやLED等の光源を駆動して、ドラム状の4つの感光体4K,Y,M,Cに向けてレーザー光Lを照射する。この照射により、感光体4K,Y,M,Cの表面には静電潜像が形成され、この潜像は所定の現像プロセスを経由してトナー像に現像される。なお、符号の後に付されたK,Y,M,Cという添字は、ブラック,イエロー,マゼンタ,シアン用の仕様であることを示している。
【0011】
プロセスユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ、感光体とその周囲に配設される各種装置とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、画像形成部1本体に対して着脱可能になっている。ブラック用のプロセスユニット3Kを例にすると、これは、感光体4Kの他、これの表面に形成された静電潜像をブラックトナー像に現像するための現像装置6Kを有している。また、後述するK用の1次転写ニップを通過した後の感光体4K表面に付着している転写残トナーをクリーニングするドラムクリーニング装置15なども有している。本複写機では、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cを、後述する中間転写ベルト25に対してその無端移動方向に沿って並べるように対向配設した、いわゆるタンデム型の構成になっている。
【0012】
図3は、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cからなるタンデム部の一部を示す部分拡大図である。なお、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cは、それぞれ使用するトナーの色が異なる他はほぼ同様の構成になっているので、同図においては各符号に付すK,Y,M,Cという添字を省略している。同図に示すように、プロセスユニット3は、感光体4の周りに、帯電装置5、現像装置6、ドラムクリーニング装置15、除電ランプ22等を有している。
【0013】
感光体4としては、アルミニウム等の素管に、感光性を有する有機感光材の塗布による感光層を形成したドラム状のものを用いている。但し、無端ベルト状のものを用いても良い。
【0014】
現像装置6は、磁性キャリアと非磁性トナーとを含有する二成分現像剤を用いて潜像を現像するようになっている。内部に収容している二成分現像剤を攪拌しながら搬送して現像スリーブ12に供給する攪拌部7と、現像スリーブ12に担持された二成分現像剤中のトナーを感光体4に転移させるための現像部11とを有している。
【0015】
攪拌部7は、現像部11よりも低い位置に設けられており、互いに平行配設された2本の搬送スクリュウ8、これらスクリュウ間に設けられた仕切り板、現像ケース9の底面に設けられたトナー濃度センサー10などを有している。
【0016】
現像部11は、現像ケース9の開口を通して感光体4に対向する現像スリーブ12、これの内部に回転不能に設けられたマグネットローラ13、現像スリーブ12に先端を接近させるドクタブレード14などを有している。現像スリーブ12は、非磁性の回転可能な筒状になっている。マグネットローラ13は、ドクタブレード14との対向位置からスリーブの回転方向に向けて順次並ぶ複数の磁極を有している。これら磁極は、それぞれスリーブ上の二成分現像剤に対して回転方向の所定位置で磁力を作用させる。これにより、攪拌部7から送られてくる二成分現像剤を現像スリーブ12表面に引き寄せて担持させるとともに、スリーブ表面上で磁力線に沿った磁気ブラシを形成する。
【0017】
磁気ブラシは、現像スリーブ12の回転に伴ってドクタブレード14との対向位置を通過する際に適正な層厚に規制されてから、感光体4に対向する現像領域に搬送される。そして、現像スリーブ12に印加される現像バイアスと、感光体4の静電潜像との電位差によってトナーを静電潜像上に転移させて現像に寄与する。更に、現像スリーブ12の回転に伴って再び現像部11内に戻り、マグネットローラ13の磁極間に形成される反発磁界の影響によってスリーブ表面から離脱した後、攪拌部7内に戻される。攪拌部7内には、トナー濃度センサー10による検知結果に基づいて、二成分現像剤に適量のトナーが補給される。なお、現像装置6として、二成分現像剤を用いるものの代わりに、磁性キャリアを含まない一成分現像剤を用いるものを採用してもよい。
【0018】
ドラムクリーニング装置15としては、ポリウレタンゴム製のクリーニングブレード16を感光体4に押し当てる方式のものを用いているが、他の方式のものを用いてもよい。クリーニング性を高める目的で、本例では、外周面を感光体4に接触させる接触導電性のファーブラシ17を、図中矢印方向に回転自在に有する方式のものを採用している。このファーブラシ17は、固形潤滑剤から潤滑剤を掻き取って微粉末にしながら感光体4表面に塗布する役割も兼ねている。ファーブラシ17にバイアスを印加する金属製の電界ローラ18を図中矢示方向に回転自在に設け、これにスクレーパ19の先端を押し当てている。ファーブラシ17に付着したトナーは、ファーブラシ17に対してカウンタ方向に接触して回転しながらバイアスが印加される電界ローラ18に転位する。そして、スクレーパ19によって電界ローラ18から掻き取られた後、回収スクリュウ20上に落下する。回収スクリュウ20は、回収トナーをドラムクリーニング装置15における図紙面と直交する方向の端部に向けて搬送して、外部のリサイクル搬送装置21に受け渡す。リサイクル搬送装置21は、受け渡されたトナーを現像装置6に送ってリサイクルする。
【0019】
除電ランプ22は、光照射によって感光体4を除電する。除電された感光体4の表面は、帯電装置23によって一様に帯電せしめられた後、光書込装置2による光書込処理がなされる。なお、帯電装置23としては、帯電バイアスが印加される帯電ローラを感光体4に当接させながら回転させるものを用いている。感光体4に対して非接触で帯電処理を行うスコロトロンチャージャ等を用いてもよい。
【0020】
先に示した図2において、4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cの感光体4K,Y,M,Cには、これまで説明してきたプロセスによってK,Y,M,Cトナー像が形成される。
【0021】
4つのプロセスユニット3K,Y,M,Cの下方には、転写ユニット24が配設されている。この転写ユニット24は、複数のローラによって張架した中間転写ベルト25を、感光体4K,Y,M,Cに当接させながら図中時計回り方向に無端移動させる。これにより、感光体4K,Y,M,Cと中間転写ベルト25とが当接するK,Y,M,C用の1次転写ニップが形成されている。K,Y,M,C用の1次転写ニップの近傍では、ベルトループ内側に配設された1次転写ローラ26K,Y,M,Cによって中間転写ベルト25を感光体4K,Y,M,Cに向けて押圧している。これら1次転写ローラ26K,Y,M,Cには、それぞれ電源によって1次転写バイアスが印加されている。これにより、K,Y,M,C用の1次転写ニップには、感光体4K,Y,M,C上のトナー像を中間転写ベルト25に向けて静電移動させる1次転写電界が形成されている。図中時計回り方向の無端移動に伴ってK,Y,M,C用の1次転写ニップを順次通過していく中間転写ベルト25のおもて面には、各1次転写ニップでトナー像が順次重ね合わせて1次転写される。この重ね合わせの1次転写により、中間転写ベルト25のおもて面には4色重ね合わせトナー像(以下、4色トナー像という)が形成される。
【0022】
転写ユニット24の図中下方には、駆動ローラ30と2次転写ローラ31との間に、無端状の紙搬送ベルト29を掛け渡して無端移動させる紙搬送ユニット28が設けられている。そして、自らの2次転写ローラ31と、転写ユニット24の下部張架ローラ27との間に、中間転写ベルト25及び紙搬送ベルト29を挟み込んでいる。これにより、中間転写ベルト25のおもて面と、紙搬送ベルト29のおもて面とが当接する2次転写ニップが形成されている。2次転写ローラ31には電源によって2次転写バイアスが印加されている。一方、転写ユニット24の下部張架ローラ27は接地されている。これにより、2次転写ニップに2次転写電界が形成されている。
【0023】
この2次転写ニップの図中右側方には、レジストローラ対33が配設されており、ローラ間に挟み込んだ転写紙を中間転写ベルト25上の4色トナー像に同期させ得るタイミングで2次転写ニップに送り出す。2次転写ニップ内では、中間転写ベルト25上の4色トナー像が2次転写電界やニップ圧の影響によって転写紙に一括2次転写され、転写紙の白色と相まってフルカラー画像となる。2次転写ニップを通過した転写紙は、中間転写ベルト25から離間して、紙搬送ベルト29のおもて面に保持されながら、その無端移動に伴って定着装置34へと搬送される。
【0024】
2次転写ニップを通過した中間転写ベルト25の表面には、2次転写ニップで転写紙に転写されなかった転写残トナーが付着している。この転写残トナーは、中間転写ベルト25に当接するベルトクリーニング装置によって掻き取り除去される。
【0025】
定着装置34に搬送された転写紙は、定着装置34内における加圧や加熱によってフルカラー画像が定着させしめられた後、定着装置34から排紙ローラ対35に送られた後、機外へと排出される。
【0026】
先に示した図1において、紙搬送ユニット28および定着装置34の下には、スイッチバック装置36が配設されている。これにより、片面に対する画像定着処理を終えた転写紙が、切換爪で転写紙の進路を転写紙反転装置側に切り換えられ、そこで反転されて再び2次転写ニップに進入する。そして、もう片面にも画像の2次転写処理と定着処理とが施された後、排紙トレイ上に排紙される。
【0027】
画像形成部1の上に固定されたスキャナ150は、第1面読取手段としての第1面固定読取部151や、第1面読取手段としての移動読取部152を有している。
【0028】
第1面読取手段としての移動読取部152は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された第2コンタクトガラスの直下に配設されており、光源や、反射ミラーなどからなる光学系を図中左右方向に移動させることができる。そして、光学系を図中左側から右側に移動させていく過程で、光源から発した光を第2コンタクトガラス上に載置された原稿で反射させた後、複数の反射ミラーを経由させて、スキャナ本体に固定された画像読取センサー153で受光する。
【0029】
第1面読取手段としての第1面固定読取部151は、原稿MSに接触するようにスキャナ150のケーシング上壁に固定された第1コンタクトガラスの直下に配設されている。そして、後述するADF51によって搬送される原稿MSが第1コンタクトガラス上を通過する際に、光源から発した光を原稿面で順次反射させながら、複数の反射ミラーを経由させて画像読取センサーで受光する。これにより、光源や反射ミラー等からなる光学系を移動させることなく、原稿MSの第1面を走査する。
【0030】
また、スキャナ150は、原稿MSの第2面を読み取る密着型イメージセンサーも有している。この密着型イメージセンサーについては後述する。
【0031】
スキャナ150の上に配設されたADF51は、本体カバー52に、読取前の原稿MSを載置するための原稿載置台53、原稿MSを搬送するための搬送ユニット、読取後の原稿MSをスタックするための原稿スタック台55などを保持している。図4に示すように、スキャナ150に固定された蝶番159によって上下方向に揺動可能に支持されている。そして、その揺動によって開閉扉のような動きをとり、開かれた状態でスキャナ150の上面の第1コンタクトガラス154や第2コンタクトガラス155を露出させる。原稿束の片隅を綴じた本などの片綴じ原稿の場合には、原稿を1枚ずつ分離することができないため、ADF51による搬送を行うことができない。そこで、片綴じ原稿の場合には、ADF51を図4に示すように開いた後、読み取らせたいページが見開かれた片綴じ原稿を下向きにして第2コンタクトガラス155上に載せた後、ADF51を閉じる。そして、スキャナ150の図1に示した移動読取部152によってそのページの画像を読み取らせる。
【0032】
一方、互いに独立した複数の原稿MSを単に積み重ねた原稿束の場合には、その原稿MSをADF51によって1枚ずつ自動搬送しながら、スキャナ150内の第1面固定読取部151やADF51内の密着型イメージセンサーに順次読み取らせていくことができる。この場合、原稿束を原稿載置台53上にセットした後、コピースタートボタンを押す。すると、ADF51が、原稿載置台53上に載置された原稿束の原稿MSを上から順に送り、それを反転させながら原稿スタック台55に向けて搬送する。この搬送の過程で、原稿MSを反転させた直後にスキャナ150の第1面固定読取部151の真上に通す。このとき、原稿MSの第1面の画像がスキャナ150の第1面固定読取部151によって読み取られる。
【0033】
図5は、ADF51の要部構成をスキャナ150の上部とともに示す拡大構成図である。また、図6は、ADF51及びスキャナ150の電気回路の一部を示すブロック図である。ADF51は、原稿セット部A、分離搬送部B、レジスト部C、ターン部D、第1読取搬送部E、第2読取搬送部F、排紙部G、スタック部H等を備えている。
【0034】
図6に示すように、ADF51は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等からなるコントローラ904を有しており、これによって各種の機器やセンサーを制御することができる。このコントローラ904には、レジストセンサー65、原稿セットセンサー63、排紙センサー61、突き当てセンサー72、原稿幅センサー73、読取入口センサー67、長さセンサー57,58などが接続されている。また、給紙モータ191、搬送モータ192、ピックアップモータ193、排紙クラッチ194なども接続されている。また、集音部としての集音マイク201、ソレノイド806、加熱部としての発熱部材910なども接続されている。
【0035】
集音マイク201は、原稿の搬送時の音を取り込むものである。ソレノイド806は、開閉可能な開閉カバーとしての給紙カバー98を閉位置でロックするものである。また、発熱部材910は、搬送部材であり給送ローラであるピックアップローラ80を加熱するものである。
【0036】
スキャナ150は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)等からなる読取制御部903を有している。これにより、スキャナ150内部の各種機器やセンサーを制御することができる。また、読取制御部903は、I/FによってADF51のコントローラ904と接続されており、読取制御部903は、コントローラ904を介して、ADF51内の各種機器やセンサーを間接的に制御することもできる。
【0037】
図5において、原稿セット部Aは、原稿MSの束がセットされる原稿載置台53等を有している。また、分離搬送部Bは、セットされた原稿MSの束から原稿MSを一枚ずつ分離して給送するものである。また、レジスト部Cは、給送された原稿MSに一時的に突き当たって原稿MSを整合した後に送り出すものである。また、ターン部Dは、C字状に湾曲する湾曲搬送部を有しており、この湾曲搬送部内で原稿MSを折り返しながらその上下を反転させるものである。また、第1読取搬送部Eは、第1コンタクトガラス154の上で原稿MSを搬送しながら、第1コンタクトガラス154の下方でスキャナの内部に配設されている第1面固定読取部151に原稿MSの第1面を読み取らせるものである。また、第2読取搬送部Fは、密着型イメージセンサー95の下で原稿MSを搬送しながら、原稿MSの第2面を密着型イメージセンサー95に読み取らせるものである。また、排紙部Gは、両面の画像が読み取られた原稿MSをスタック部Hに向けて排出するものである。また、スタック部Hは、原稿スタック台55の上に原稿MSをスタックするものである。
【0038】
原稿MSは、原稿MSの束の厚みに応じて図中矢印a、b方向に揺動可能なシートトレイたる可動原稿テーブル54の上に原稿先端部が載せられるとともに、原稿後端側が原稿載置台53の上に載せられた状態でセットされる。このとき、原稿載置台53上において、その幅方向(図紙面に直交する方向)の両端に対してそれぞれサイドガイドが突き当てられることで、幅方向における位置が調整される。このようにしてセットされる原稿MSは、可動原稿テーブル54の上方で揺動可能に配設されたレバー部材62を押し上げる。すると、それに伴って原稿セットセンサー63が原稿MSのセットを検知して、検知信号をコントローラ904に送信する。そして、この検知信号は、コントローラ904からI/Fを介して読取制御部903に送られる。
【0039】
原稿載置台53には、原稿MSの搬送方向の長さを検知する反射型フォトセンサー又はアクチュエーター・タイプのセンサーからなる第1長さセンサー57、第2長さセンサー58が保持されている。これら長さセンサーにより、原稿MSの搬送方向の長さが検知される。
【0040】
可動原稿テーブル54の上に載置された原稿MSの束の上方には、カム機構によって上下方向(図中矢印c,d方向)に移動可能に支持されるピックアップローラ80が配設されている。このカム機構は、ピックアップモータ193によって駆動することで、ピックアップローラ80を上下移動させることが可能である。ピックアップローラ80が上昇移動すると、それに伴って可動原稿テーブル54が図中矢印a方向に揺動して、ピックアップローラ80が原稿MSの束における一番上の原稿MSに当接する。更に可動原稿テーブル54が上昇すると、やがてテーブル上昇センサー59によって可動原稿テーブル54の上限までの上昇が検知される。これにより、ピックアップモータ193が停止するとともに、可動原稿テーブル54の上昇が停止する。
【0041】
複写機の本体に設けられたテンキーやディスプレイ等からなる本体操作部902に対しては、操作者によって両面読取モードか、あるいは片面読取モードかを示す読取モード設定のためのキー操作や、コピースタートキーの押下操作などが行われる。即ち、本体操作部902は、両面読取モードであるのか、あるいは片面読取モードであるのかの情報を取得するモード情報取得手段として機能している。コピースタートキーが押下されると、本体制御部901からI/Fを介してADF51のコントローラ904に原稿給紙信号が送信される。すると、ピックアップローラ80が給紙モータ191の正転によって回転駆動して、可動原稿テーブル54上の原稿MSを可動原稿テーブル54上から送り出す。
【0042】
両面読取モードか、片面読取モードかの設定に際しては、可動原稿テーブル54上に載置された全ての原稿MSについて一括して両面、片面の設定を行うことが可能である。また、1枚目及び10枚目の原稿MSについては両面読取モードに設定する一方で、その他の原稿MSについては片面読取モードに設定するなどといった具合に、個々の原稿MSについてそれぞれ個別に読取モードを設定することも可能である。
【0043】
ピックアップローラ80によって送り出された原稿MSは、分離搬送部Bに進入して、給紙ベルト84との当接位置に送り込まれる。この給紙ベルト84は、駆動ローラ82と従動ローラ83とによって張架されており、給紙モータ191の正転に伴う駆動ローラ82の回転によって図中時計回り方向に無端移動せしめられる。この給紙ベルト84の下部張架面には、給紙モータ191の正転によって図中時計回りに回転駆動される分離ローラ85が当接している。当接部においては、給紙ベルト84の表面が給紙方向に移動する。これに対し、分離ローラ85は、給紙ベルト84に所定の圧力で当接しており、給紙ベルト84に直接当接している際、あるいは当接部に原稿MSが1枚だけ挟み込まれている際には、ベルト又は原稿MSに連れ回る。但し、当接部に複数枚の原稿MSが挟み込まれた際には、連れ回り力がトルクリミッターのトルクよりも低くなることから、連れ回り方向とは逆の図中時計回りに回転駆動する。これにより、最上位よりも下の原稿MSには、分離ローラ85によって給紙とは反対方向の移動力が付与されて、数枚の原稿から最上位の原稿MSだけが分離される。
【0044】
給紙ベルト84や分離ローラ85の働きによって1枚に分離された原稿MSは、レジスト部Cに進入する。そして、突き当てセンサー72の直下を通過する際にその先端が検知される。このとき、給紙モータ191の駆動力を受けているピックアップローラ80がまだ回転駆動しているが、可動原稿テーブル54の下降によって原稿MSから離間するため、原稿MSは給紙ベルト84の無端移動力のみによって搬送される。そして、突き当てセンサー72によって原稿MSの先端が検知されたタイミングから所定時間だけ給紙ベルト84の無端移動が継続する。その後、原稿MSの先端がプルアウト従動ローラ86とこれに当接しながら回転駆動するプルアウト駆動ローラ87との当接部に突き当たる。原稿MSの先端が両ローラの当接部に突き当たった状態で、原稿MSの後端側が給紙方向に向けて送られることで、原稿MSは所定量だけ撓んだ状態になりながら、先端が当接部に位置決めされる。これにより、原稿MSのスキュー(傾き)が補正されて、原稿MSは給紙方向に沿った姿勢になる。
【0045】
プルアウト駆動ローラ87は、原稿MSのスキューを補正する役割の他に、スキューが補正された原稿MSを原稿搬送方向下流側の中間ローラ対66まで搬送する役割を担っている。ピックアップローラ80と給紙ベルト84を張架する駆動ローラ82とプルアウト駆動ローラ87と中間ローラ対の駆動ローラは、ワンウェイクラッチを介して給紙モータ191に接続されている。プルアウト駆動ローラ87と中間ローラ対の駆動ローラに接続されてワンウェイクラッチは、給紙モータ191の逆転時に駆動力を伝達し、駆動ローラ82に接続されたワンウェイクラッチは、給紙モータ191の正転時に駆動力を伝達する。そのため、給紙モータ191が逆転すると、プルアウト駆動ローラ87と、中間ローラ対66の駆動ローラとが回転を開始するとともに、給紙ベルト84の無端移動が停止する。また、このとき、ピックアップローラ80の回転も停止される。
【0046】
プルアウト駆動ローラ87から送り出された原稿MSは、原稿幅センサー73の直下を通過する。原稿幅センサー73は、反射型フォトセンサー等からなる紙検知部を複数有しており、これら紙検知部は原稿幅方向(図紙面に直交する方向)に並んでいる。どの紙検知部が原稿MSを検知するのかに基づいて、原稿MSの幅方向のサイズが検知される。また、原稿MSの搬送方向の長さは、原稿MSの先端が突き当てセンサー72によって検知されてから、原稿MSの後端が突き当てセンサー72によって検知されなくなるまでのタイミングに基づいて検知される。
【0047】
原稿幅センサー73によって幅方向のサイズが検知された原稿MSの先端は、ターン部Dに進入して、中間ローラ対66のローラ間の当接部に挟み込まれる。この中間ローラ対66による原稿MSの搬送速度は、後述する第1読取搬送部Eでの原稿MSの搬送速度よりも高速に設定されている。これにより、原稿MSを第1読取搬送部Eに送り込むまでの時間の短縮化が図られている。
【0048】
ターン部D内を搬送される原稿MSの先端は、原稿先端が読取入口センサー67との対向位置を通過する。これによって原稿MSの先端が読取入口センサー67によって検知されると、その先端が搬送方向下流側の読取入口ローラ対(89と90との対)の位置まで搬送されるまでの間に、中間ローラ対66による原稿搬送速度が減速される。また、搬送モータ192の回転駆動の開始に伴って、読取入口ローラ対(89,90)における一方のローラ、読取出口ローラ対92における一方のローラ、第2読取出口ローラ対93における一方のローラがそれぞれ回転駆動を開始する。
【0049】
ターン部D内においては、原稿MSが中間ローラ対66と読取入口ローラ対(89、90)との間の湾曲搬送路で搬送される間に上下面が逆転されるとともに、搬送方向が折り返される。そして、読取入口ローラ対(89、90)のローラ間のニップを通過した原稿MSの先端は、レジストセンサー65の直下を通過する。このとき原稿MSの先端がレジストセンサー65によって検知されると、所定の搬送距離をかけながら原稿搬送速度が減速されていき、第1読取搬送部Eの手前で原稿MSの搬送が一時停止される。また、読取制御部903にI/Fを介して一時停止信号が送信される。
【0050】
一時停止信号を受けた読取制御部903が読取開始信号を送信すると、コントローラ904の制御により、原稿MSの先端が第1読取搬送部E内に到達するまで、搬送モータ192の回転が再開されて所定の搬送速度まで原稿MSの搬送速度が増速される。そして、原稿MSの先端が第1面固定読取部151による読取位置に到達するタイミングで、コントローラ904から読取制御部903に対して原稿MSの第1面の副走査方向有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が第1面固定読取部151による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第1面が第1面固定読取部151によって読み取られる。なお、原稿MSの先端が第1面固定読取部151による読取位置に到達するタイミングは、搬送モータ192のパルスカウントに基づいて算出される。
【0051】
第1読取搬送部Eを通過した原稿MSは、後述の読取出口ローラ対92を経由した後、その先端が排紙センサー61によって検知される。片面読取モードが設定されている場合には、後述する密着型イメージセンサー95による原稿MSの第2面の読取が不要である。そこで、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知されると、排紙クラッチ194によって搬送モータ192の駆動力が排紙ローラ対94に繋がれ、排紙ローラ対94における図中下側の排紙ローラが図中時計回り方向に回転駆動される。また、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知されてからの搬送モータ192のパルスカウントに基づいて、原稿MSの後端が排紙ローラ対94のニップを抜け出るタイミングが演算される。そして、この演算結果に基づいて、排紙クラッチ194によって搬送モータ192の駆動力を切って排紙ローラ対94を停止する。
【0052】
一方、両面読取モードが設定されている場合には、排紙センサー61によって原稿MSの先端が検知された後、密着型イメージセンサー95に到達するまでのタイミングが搬送モータ192のパルスカウントに基づいて演算される。そして、そのタイミングでコントローラ904から読取制御部903に対して原稿MSの第2面における副走査方向の有効画像領域を示すゲート信号が送信される。この送信は、原稿MSの後端が密着型イメージセンサー95による読取位置を抜け出るまで続けられ、原稿MSの第2面が密着型イメージセンサー95によって読み取られる。
【0053】
第2面読取手段としての密着型イメージセンサー95(CIS)は、原稿MSに付着している糊状の異物が読取面に付着することによる読取縦すじを防止する目的で、読取面にコーティング処理が施されている。密着型イメージセンサー95との対向位置には、原稿MSを非読取面側(第1面側)から支持する原稿支持手段としての第2読取ローラ96が配設されている。この第2読取ローラ96は、密着型イメージセンサー95による読取位置での原稿MSの浮きを防止するとともに、密着型イメージセンサー95におけるシェーディングデータを取得するための基準白部として機能する役割を担っている。本複写機では、密着型イメージセンサー95との対向位置で原稿を支持する原稿支持手段として、第2読取ローラ96を用いたが、ガイド板状のものを用いてもよい。
【0054】
原稿を搬送する搬送部材であるピックアップローラ80、プルアウトローラ86,87、中間ローラ対66の各ローラ、読取入口ローラ89,90、読取出口ローラ対92の各ローラ、第2読取出口ローラ対93の各ローラおよび排紙ローラ対94の各ローラの原稿と接触する外周表面部は、ゴム材で構成されている。
【0055】
次に、本実施形態の特徴部について、説明する。
本実施形態においては、ピックアップローラ80の近傍に集音部としての集音マイク201が設けられており、給紙/分離動作時の動作音を集音している。なお、給紙/分離動作は、ピックアップローラ80が給紙モータ191の正転によって回転駆動して、可動原稿テーブル54上の原稿MSを可動原稿テーブル54上から送り出してから、分離ローラ85によって数枚の原稿から最上位の原稿MSだけを分離するまでの動作である。
【0056】
加熱判断部であり減圧判断部であるコントローラ904は、集音マイク201が集音した給紙/分離動作の動作音に基づいて、正常搬送、給紙スリップ、原稿変形の3つの動作状態のどれになるかを判定する。コントローラ904は、ピックアップローラ80に対して原稿がスリップする給紙スリップが発生していると判定したとき、加熱部としての発熱部材910を駆動して、ピックアップローラ80を加熱する。ピックアップローラ80を加熱することで、ゴム材からなるピックアップローラ80の外周表面部と原稿MSとの摩擦力が上がる。これにより、ピックアップローラ80に対する原稿のスリップの改善を図り、スリップによる原稿搬送遅れによる用紙ジャムを未然に防いでいる。
【0057】
また、折れやしわなどの原稿変形が発生していると判定したときは、原稿の搬送を中止し、ソレノイド806を制御して給紙カバー98のロックを解除する。給紙カバー98は、ピックアップローラ80、給紙ベルト84、プルアウト従動ローラ86、中間ローラ対66の一方のローラを保持しており、給紙カバー98のロックを解除すると、給紙カバーが保持している搬送部材(給紙ベルト84、プルアウト従動ローラ86および中間ローラ対66の一方のローラ)との間で原稿を挟み込む搬送部材(分離ローラ85、プルアウト駆動ローラ87および中間ローラ対66の他方のローラ)から離間もしくは接触圧が減少する。これにより、これら搬送部材の対に挟み込まれた変形した原稿に加わる圧力が低減もしくは0となり、原稿の変形による癖付きが抑制される。
【0058】
図7は、集音マイク201の配置に関する説明図である。(a)は、原稿のセット基準が、装置の奥側の場合のときの集音マイク201の配置を示す図であり、(b)は、原稿のセット基準が、装置の中央の場合のときの集音マイク201の配置を示す図である。(c)は、ピックアップローラ80付近を軸方向から見た図である。
図7に示すように、本実施形態では、集音マイク201は、給紙カバー98に取り付けられており、ピックアップローラ80に対して原稿搬送の上流側に配置されている。本実施形態では、原稿給紙時の動作音を収集するのが目的であるため、給紙時に駆動されるピックアップローラ80の周囲に配置している。なお、集音マイク201の配置位置は、これに限らず、給紙/分離動作の動作音を良好に集音できる箇所に適宜、配置すればよい。図中80aは、ピックアップローラ80を可動原稿テーブル54に載置された原稿に対して接離可能に保持するホルダ80aである。
【0059】
図8は、ピックアップローラ80を加熱する発熱部材910について説明する図である。
加熱部としての発熱部材910は、ピックアップローラ80および給紙ベルト84を保持するホルダ80aに取り付けられており、ピックアップローラ80の外周面に対向配置されている。発熱部材910は、例えばニクロム線によって構成されている。ホルダ80aの発熱部材910の周囲に、反射板や、断熱部材を設け、発熱部材910が発熱した熱で効率的にピックアップローラ80を加熱できるようにするのが好ましい。
【0060】
発熱部材910に通電することで、発熱部材910が発熱し、ピックアップローラ80を加熱する。なお、本実施形態では、ピックアップローラ近傍の発熱部材910を配置しているが、ピックアップローラ80に発熱部材を設ける構成でもよい。例えば、発熱部材としてのシリコンラバーヒーターをピックアップローラ80に巻き付けることで、ピックアップローラ80に発熱部材を設けることができる。
【0061】
ピックアップローラ80は、原稿を給送するとき、給送する原稿の真下の原稿または可動原稿テーブル54との摩擦力に抗して原稿を搬送するため、原稿がピックアップローラ80に対してスリップが生じやすい。スリップが生じることで、原稿が所定時間内に規定の位置へ搬送されず、用紙ジャムとなるおそれがある。
【0062】
ゴムと紙との摩擦係数は、荷重、温度および速度に依存しており、ゴムの温度が20℃~40℃で紙との摩擦係数が高くなる。そのため、低温環境下において、ピックアップローラ80のゴム材からなる外周表面部が低温の状態だと原稿との摩擦係数が低くなり、スリップが発生しやすく、用紙ジャムが発生しやすい。
【0063】
そこで、本実施形態では、給紙/分離動作の動作音からピックアップローラ80と原稿との間でスリップが発生していると判別したときは、ピックアップローラ80を発熱部材910により加熱する。これにより、ピックアップローラ80のゴム材からなる外周表面部の温度を、20~40℃にすることができ、紙との摩擦係数を高めることができる。これにより、ピックアップローラ80と原稿との間でスリップが生じるのを抑制することができ、良好に原稿を給送することができる。
なお、ピックアップローラ80への加熱にかえて荷重や速度を変更し摩擦係数を変えてもよい。
【0064】
図9は、給紙カバー98の開閉について説明する図である。
開閉カバーたる給紙カバー98は、ピックアップローラ80、給紙ベルト84、プルアウト従動ローラ86、及び中間ローラ対66の一方のローラ66bを保持している。給紙カバー98は、図中実線で示す、原稿搬送路808を覆うように閉じられている閉じ位置と、図中二点鎖線で示す原稿搬送路808の一部分を露出する開位置との間を、支持軸800を支点にして回動可能となっている。
【0065】
給紙カバー98が閉じ位置にあるときは、給紙ベルト84が装置本体に配置された分離ローラ85に当接し、プルアウト従動ローラ86は、装置本体に配置されたプルアウト駆動ローラ87に当接する。さらに、中間ローラ対66の一方のローラ66bは、装置本体に配置された中間ローラ対66の他方のローラ66aに当接する。このように、給紙カバー98に保持された各搬送部材(給紙ベルト84、プルアウト従動ローラ86および中間ローラ対の一方のローラ66b)が、対向する装置本体側の各搬送部材(分離ローラ85、プルアウト駆動ローラ87および中間ローラ対の一方のローラ66b)に当接し、原稿MSを挟むように受け入れて搬送する搬送ニップを形成している。
【0066】
給紙カバー98が、図中二点鎖線の開位置にあるときは、給紙カバー98に保持されている給紙ベルト84と、装置本体に配置された分離ローラ85とが離間し、給紙カバー98に保持されているプルアウト従動ローラ86と、装置本体に配置されたプルアウト駆動ローラ87とが離間する。さらに、給紙カバー98に保持されている中間ローラ対66の一方のローラ66bと、装置本体に配置された他方のローラ66aとが離間する。これにより、搬送ニップが解除され、原稿MSの挟み込みが解除される。また、原稿搬送路808の一部分が露出し、ジャムした原稿を取り出しやすくなる。
【0067】
また、給紙カバー98には、弾性部材802と、弾性部材802に取り付けられる押圧部803とを有している。装置本体には、押圧対向部804があり、給紙カバー98が閉じられた状態の時には、押圧部803が押圧対向部804に当接し、弾性部材802が圧縮変形して給紙カバー98を図中左側に押圧している。すなわち、本実施形態では、弾性部材802と、押圧部803と押圧対向部804とで開閉カバーたる給紙カバー98を開く方向に押圧する押圧機構として機能している。
【0068】
また、給紙カバー98には、鉤状の突出片805が設けられている。装置本体には、戻しバネ付きソレノイド806が取り付けられている。給紙カバー98が閉じられている時には、突出片805が戻しバネ付きソレノイド806のフランジ部に引っかかり、給紙カバー98が閉位置でロックされるようになっている。
【0069】
戻しバネ付きのソレノイド806をONにすると、ソレノイド806のフランジ部が引き戻され、突出片805のフランジ部への引っかかりが外れ、ロックが外される。すると、給紙カバー98は、弾性部材802の押圧により、開位置へ向けて回動し、給紙カバー98に保持された各搬送部材(給紙ベルト84、プルアウト従動ローラ86および中間ローラ対の一方のローラ66b)と装置本体側の各搬送部材(分離ローラ85、プルアウト駆動ローラ87および中間ローラ対の一方のローラ66b)との接触圧が減少または装置本体側の搬送部材から離間する。また、ピックアップローラ80についても、可動原稿テーブル上の原稿から離間する。
【0070】
図10は、コントローラ904によって実施される動作状態判別処理を示すフローチャートである。
上述したように本体制御部901からコントローラ904に原稿給紙信号が送信されると、給紙/分離動作を開始し(S1)、同時に集音マイク201により、給紙/分離動作音を集音する(S2)。コントローラ904は、集音された動作音データを、順次、所定長のフレームに切り出し、音の特徴量であるメル周波数ケプストラム係数を算出する(S3)。
【0071】
メル周波数ケプストラム係数は、音声のスペクトル包絡(声道成分に由来した周波数特性)に対して、ヒトの周波数知覚特性を考慮したメル周波数で重み付けをした特徴量であり、音声認識の特徴量としてよく用いられるものである。
【0072】
上記「メル周波数」は、人間には、可聴域の下限に近い音は高めに、上限に近い音は低めに聞こえるという、音高知覚があり、その人間音声知覚の特徴を考慮して変換された周波数のことである。「ケプストラム」は、音声信号(波形データ)をフーリエ変換して周波数スペクトルに変換した後、その対数を取ったものを逆フーリエ変換して時間空間に戻したものになり、「スペクトルの対数のフーリエ逆変換」(スペクトルのスペクトル)とも呼ばれ、スペクトルの微細な構造(細かい微妙な変化)とスペクトルのゆるやかな変化(スペクトル包絡)とに分離したものである。
【0073】
メル周波数ケプストラム係数は、一般的には次のようにして求められる。すなわち、音データから求めた振幅スペクトラムをメル周波数に変換した後、三角形のバンドパスフィルタをオーバラップさせながら並べ、フィルタバンクとしたメルフィルタバンクを用いて、20次元に圧縮し、メル周波数スペクトラムを求める。求めたメル周波数スペクトラムを離散コサイン変換し、高次成分のスペクトルの微細な構造(細かい微妙な変化)と低次成分のスペクトル包絡とに分離するメル周波数ケプストラムを求める。このメル周波数ケプストラムの低次成分のスペクトル包絡を取り出すことで、メル周波数ケプストラム係数を得る。
【0074】
メル周波数ケプストラム係数は、一般的に12次元(12個のデータ)からなるスペクトル包絡を取り出して特徴量としたものであり、少ないデータ量で音声データの特徴を表現できる。これにより、コントローラ904の計算負荷を減らすことができる。なお、メル周波数ケプストラムから取り出す次元は、12次元に限らず、適宜、決めればよい。
【0075】
メル周波数ケプストラム係数は、声道成分に由来した周波数特性である音声のスペクトル包絡を取り出したものである。しかし、給紙/分離動作時の正常搬送時の動作音のスペクトル包絡、スリップ発生時の動作音のスペクトル包絡、および原稿変形発生時の動作音のスペクトル包絡が互いに異なっている。よって、メル周波数ケプストラム係数により、正常搬送、スリップ発生、および原稿変形発生を、分類することが可能である。
【0076】
なお、本実施形態では、動作状態判別に用いる動作音の特徴を定量的に表現した特徴量としてメル周波数ケプストラム係数を用いているが、これに限られるものではなく、例えば、動作状態判別に用いる動作音の特徴量として線形予測係数等、公知の音の特徴量を用いてもよい。
【0077】
算出されたメル周波数ケプストラム係数は、教師あり学習を用いるパターン認識モデルの一つであるサポートベクターマシンによる分類器に与えられ、動作状態が判別される(S4)。
【0078】
サポートベクターマシンは、複数次元データを複数のクラスに線形分離し分類する。つまり、本実施形態では、集音マイク201で集音した給紙/分離動作の動作音の特徴量であるメル周波数ケプストラム係数を、正常搬送、原稿変形、給紙スリップの3クラスのいずれかに分類する。サポートベクターマシンは、少ない教師データで高い汎化性能を持て、高精度に、正常搬送、原稿変形、給紙スリップの判別を行うことができる。なお、本実施形態では、分類器にサポートベクターマシンを用いているが、ディープラーニング手法による分類器を用いても良い。
【0079】
サポートベクターマシンによる分類器が、与えられたメル周波数ケプストラム係数を正常搬送に分類し正常搬送と判別した場合は、上述した原稿搬送処理を実行する。すなわち、給紙/分離動作を終了後(S5)、給紙モータ191を逆転させ、プルアウト駆動ローラ87によりスキュー補正した原稿を送り出すプルアウト動作(S6)後、第1読取搬送部Eの手前で原稿MSの搬送を一時停止するレジスト処理(S7)を行う。その後、読取制御部903からの読取開始信号の受信を待ち(S8)、受信後は、原稿の搬送を再開し、原稿を第1読取搬送部E、第2読取搬送部Fおよび排紙部Gへ順次搬送する読取搬送処理を開始する(S9)
【0080】
一方、サポートベクターマシンによる分類器が、与えられたメル周波数ケプストラム係数を原稿変形に分類し、原稿変形が発生している判別した場合は、給紙モータ191の駆動を停止するとともに、ピックアップモータ193によりピックアップローラ80を上昇させて、給紙/分離動作を停止し(S10)、戻しバネ付きのソレノイド806をONにして給紙カバー98のロックを解除する(S11)。給紙カバー98のロックを解除すると、上述したように、給紙カバー98が弾性部材802の押圧により、開位置へ向けて回動し、給紙ベルト84が分離ローラ85から離間もしくは分離ローラ85に対する接触圧が低減する。これにより、給紙ベルト84と分離ローラ85とに挟まれた原稿に加わる圧力が低減もしくは0となり、原稿の変形による癖付きが抑制される。
【0081】
一方、サポートベクターマシンによる分類器が、与えられたメル周波数ケプストラム係数を給紙スリップに分類し、ピックアップローラ80と原稿との間でスリップが発生している判別した場合は、給紙モータ191の駆動を停止するとともに、ピックアップモータ193によりピックアップローラ80を上昇させて、給紙/分離動作を停止(S12)する。その後、発熱部材910に通電し規定時間、ピックアップローラ80を加熱するピックアップローラ加熱処理を実行する(S13)。
【0082】
このピックアップローラ加熱処理においては、ピックアップモータ193を駆動し、ピックアップローラ80を回転駆動しながら、ピックアップローラ80の加熱を行う。これにより、ピックアップローラ80のゴム材からなる外周表面部が均一に加熱される。予め決められた規定の時間、ピックアップローラ80を加熱するようにしてもよいし、ピックアップローラ80の表面温度を検知する温度センサを設け、温度センサが規定温度(20℃~40℃)を検知するまで、ピックアップローラ80を加熱するようにしてもよい。
【0083】
ピックアップローラ80のゴム材からなる外周表面部が発熱部材910により加熱されることで、紙との摩擦係数を上げることができ、ピックアップローラ80に対する原稿のスリップを抑制することができる。ピックアップローラ加熱処理が終了したら、給紙/分離動作がリトライされる(S1)。
【0084】
本実施形態では、ピックアップローラ80と原稿との間でスリップが発生している判別したとき、給紙/分離動作を停止しているが、給紙/分離動作終了後に、ピックアップローラ加熱処理を行ってもよい。また、ピックアップローラ80を上昇させずに給紙中にピックアップローラ80を加熱してもよい。
【0085】
また、本実施形態では、ピックアップローラ80の近傍に集音マイク201を設けて分離/給送動作時の原稿の変形や給紙スリップを検知しているが、これに限られない。例えば、中間ローラ対など、給紙/分離動作後の原稿を搬送する搬送部材の近傍に集音マイクを配置し、給紙/分離動作後の原稿搬送時の動作音を集音し、搬送部材に対する原稿のスリップの発生や原稿の変形を検知するようにしてもよい。そして、原稿搬送時の動作音から、スリップが発生していると判別したときは、搬送部材に設けた発熱部材または搬送部材に対向配置した発熱部材で加熱する。一方、原稿の変形が発生していると判別したときは、原稿搬送を停止し、搬送部材対の一方を、他方から離間させるなどして原稿との接触圧を低減させる。
【0086】
次に、シート給送装置としての白紙供給装置40に本発明を適用した実施形態について説明する。
【0087】
図11は、本実施形態の白紙供給装置40の概略構成図である。
図11に示すように、給紙カセット42、給紙カセットから転写紙を送り出す給送ローラなどの送出ローラ43よりも搬送方向上流側に、集音部としての集音マイク201Aを配置している。また、発熱部材910Aが、送出ローラ43に対向配置されている。
【0088】
送出ローラ43は、給紙カセット42にセットされた転写紙に対して接離可能に設けられており、接離部としてピックアップソレノイドをONすることにより、送出ローラ43は、上方向に持ちあげられ、転写紙から離間するようになっている。
【0089】
送出ローラ43の搬送方向下流には、分離ローラ45と、この分離ローラに当接するフィードローラ46とが配設されている。複写機の操作者により、コピースタートキーが押下されると、本体制御部901から送出ローラ43を回転させる信号が送信され、給紙カセット42内部に収容した転写紙束の最上位の転写紙が送り出される。
【0090】
フィードローラ46は転写紙を給紙カセット42から送出する方向に回転駆動し、分離ローラ45はトルクリミッターを介してモータの駆動力が伝達されるようになっており、モータの駆動力によりフィードローラ46とは逆方向に回転駆動するようになっている。フィードローラ46と分離ローラ45との分離ニップに一枚の転写紙が搬送されたときは、トルクリミッターが作動し、分離ローラ45をフィードローラ46に従動回転する。一方、分離ニップに複数枚の転写紙が搬送されたときは、ADF51の分離ローラ85と同様、連れ回り力がトルクリミッターのトルクよりも低くなることから、分離ローラ45がフィードローラ46とは逆方向に回転駆動する。これにより、最上位よりも下の転写紙には、分離ローラ45によって給紙とは反対方向の移動力が付与されて、数枚の転写紙から最上位の転写紙だけに分離される。以上が、白紙供給装置40における給紙/分離動作である。
【0091】
図12は、本体制御部901によって実施される白紙供給装置40の動作状態判別処理を示すフローチャートである。
給紙/分離動作が開始(S1A)されると、集音マイク201Aにより給紙/分離動作の動作音が集音される(S2A)。加熱判断部であり、減圧判断部である本体制御部901は、この集音した給紙/分離動作の動作音から、特徴量としてのメル周波数ケプストラム係数を算出(S3A)し、算出したメル周波数ケプストラム係数に基づいて、動作状態を判別する(S4A)。
【0092】
動作状態の判別は、上述同様、サポートベクターマシンによる分類器に算出したメル周波数ケプストラム係数を与え、サポートベクターマシンによる分類器により、正常搬送、転写紙の変形発生、給紙スリップ発生に分類する。
【0093】
分類器により正常搬送と判別したときは、そのまま給紙/分離動作を継続し、転写紙を搬送する(S5A)。
一方、転写紙に変形が発生していると判別したときは、給紙/分離動作を停止し(S10A)、ピックアップソレノイドをONにして、送出ローラ43を上方向に持ちあげて転写紙から離間させる(S14A)。このように、送出ローラ43を転写紙から離間させることで、転写紙に対する送出ローラ43の接触圧が0となり、転写紙の変形による癖付きが抑制される。送出ローラ43を転写紙から離間させた後、フィードローラ46を逆回転させ、転写紙を給紙カセットへ戻すようにしてもよい。これにより、フィードローラ46と分離ローラ45とから受ける圧力による転写紙の変形による癖付きも抑制される。
【0094】
送出ローラ43に対して転写紙のスリップが発生していると判別したときは、給紙/分離動作を停止し(S10A)、送出ローラ43加熱処理を実行する(S13A)。送出ローラ43加熱処理が実行されると、ピックアップソレノイドをONにして、送出ローラ43を上方向に持ちあげて転写紙から離間させる。そして、送出ローラ43を回転駆動し、送出ローラ43に対向配置されている発熱部材910に通電して送出ローラ43を所定時間加熱する。所定時間加熱して、送出ローラ43のゴム材からなる外周表面部が所定温度(20℃~40℃)となったら、発熱部材910への通電を終了し、送出ローラ43の回転駆動を停止し、送出ローラ43加熱処理を終了する。ピックアップローラ加熱処理が終了したら、給紙/分離動作がリトライされる(S1A)。
【0095】
このように、送出ローラ43のゴム材からなる外周表面部を所定温度(20℃~40℃)に加熱することで、送出ローラ43と転写紙との摩擦係数を高めることができ、スリップの発生を抑制して良好に転写紙を給送することができる。
【0096】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
(態様1)
原稿MSなどのシートを搬送するピックアップローラ80などの搬送部材を備えたADF51などのシート搬送装置において、搬送部材を加熱する発熱部材910などの加熱部と、搬送部材とシートとの間のスリップの有無に基づいて、搬送部材を加熱部により加熱するか否かを判断するコントローラ904などの加熱判断部とを備える。
これによれば、実施形態で説明したように、シートのスリップが発生したときは、ピックアップローラ80などの搬送部材を発熱部材910などの加熱部により加熱するとコントローラ904などの加熱判断部が判断し、搬送部材を加熱することができる。これにより、搬送部材の表面(本実施形態ではゴムからなる外周表面部)とシートとの摩擦力が上がり搬送部材とシートとの間のスリップの改善を図ることができる。その結果、スリップによる搬送遅れが改善され、搬送遅れによる用紙ジャムの発生を未然に防ぐことが可能となる。
【0097】
(態様2)
態様1において、コントローラ904などの加熱判断部は、ピックアップローラ80などの搬送部材と原稿MSなどのシートとの間でスリップが発生していると判別したときは、搬送部材を発熱部材910などの加熱部により加熱する判断を行う。
これによれば、実施形態で説明したように、搬送部材とシートとの間のスリップの改善を図ることができ、スリップによる搬送遅れが改善され、搬送遅れによる用紙ジャムの発生を未然に防ぐことが可能となる。
【0098】
(態様3)
態様1または2において、シート搬送時の動作音を集音する集音マイク201などの集音部を備え、コントローラ904などの加熱判断部は、集音部が集音した動作音に基づいて、ピックアップローラ80などの搬送部材と原稿MSなどのシートとの間のスリップの有無を判別する。
これによれば、ピックアップローラ80などの搬送部材と原稿MSなどのシートとの間のスリップの有無を良好に判別することが可能となる。
【0099】
(態様4)
態様1乃至3いずれかにおいて、原稿MSなどのシートの変形の有無に基づいて、搬送部材のシートとの接触圧を減少、または、搬送部材をシートから離間させる動作を行うか否かを判断するコントローラ904などの減圧判断部を備える。
これによれば、実施形態で説明したように、原稿MSなどのシートの変形が有ったとき、搬送部材のシートとの接触圧を減少、または、搬送部材をシートから離間させる動作を行うことが可能となる。これにより、原稿などのシートの変形による癖付きが抑制される。
【0100】
(態様5)
原稿MSなどのシートを搬送するピックアップローラ80などの搬送部材を備えたADF51などのシート搬送装置において、原稿MSなどのシートの変形の有無に基づいて、搬送部材のシートとの接触圧を減少、または、搬送部材をシートから離間させる動作を行うか否かを判断するコントローラ904などの減圧判断部を備える。
これによれば、実施形態で説明したように、原稿MSなどのシートの変形が有ったとき、搬送部材のシートとの接触圧を減少、または、搬送部材をシートから離間させる動作を行うことが可能となる。これにより、原稿などのシートの変形による癖付きが抑制される。
【0101】
(態様6)
態様4または5において、 コントローラ904などの減圧判断部は、原稿MSなどのシートの変形が有ると判別したときは、搬送部材のシートとの接触圧を減少させる、または、前記搬送部材を前記シートから離間させる動作を行う判断をする。
これによれば、実施形態で説明したように、原稿MSなどのシートの変形が有ったとき、搬送部材のシートとの接触圧を減少、または、搬送部材をシートから離間させる動作が実施される。
【0102】
(態様7)
態様4乃至6いずれかにおいて、原稿MSなどのシートの変形が有ると判別したときは、ピックアップローラ80などの搬送部材を保持する給紙カバー98などの開閉カバーの閉じ位置でのロックを解除する。
ロックが解除されることで、給紙カバー98などの開閉カバーの部材が当接する装置本体側の部材からの反力で、開閉カバーが多少開く。これにより、ピックアップローラ80などの搬送部材とシートとの接触圧が減少する。
【0103】
(態様8)
態様7において、給紙カバー98などの開閉カバーが閉じ位置にあるとき、開閉カバーが開く方向に開閉カバーを押圧する押圧機構(本実施形態では、弾性部材802と、押圧部803と押圧対向部804とで構成)を有する。
これによれば、実施形態で説明したように、給紙カバー98などの開閉カバーのロックが解除されると、押圧機構の押圧により開閉カバーが開位置へ回動し、ピックアップローラ80などの搬送部材のシートとの接触圧を減少、または、搬送部材をシートから離間させることができる。
【0104】
(態様9)
態様4乃至6いずれかにおいて、送出ローラ43などの搬送部材を転写紙などのシートに対して接離させるピックアップソレノイドなどの接離部を備え、本体制御部901などの動作状態判別部が、装置の動作状態として、シートの変形が有ると判別したときは、接離部により搬送部材をシートから離間させる。
これによれば、図11、12を用いて説明したように、送出ローラ43などの搬送部材を転写紙などのシートから離間させることができる。
【0105】
(態様10)
態様4乃至9いずれかにおいて、シート搬送時の動作音を集音する集音マイク201などの集音部を備え、コントローラ904などの減圧判断部は、集音部が集音した動作音に基づいて、シートの変形の有無を判別する。
これによれば、シートの変形の有無を良好に判別することが可能となる。
【0106】
(態様11)
態様3または10において、集音マイク201などの集音部をピックアップローラ80などの搬送部材の近傍に配置した。
これによれば、ピックアップローラ80などの搬送部材との間のスリップ音や、シート変形時に発生する音の発生源に近い位置に集音マイク201などの集音部を配置することができ、良好にスリップ音やシート変形時に発生する音を集音することができる。
【0107】
(態様12)
態様3、10または11において、集音マイク201などの集音部が集音した動作音の特徴を定量的に表現したメル周波数ケプストラム係数などの特徴量を抽出し、抽出した特徴量に基づいて装置の動作状態を判別する。
これによれば、集音部が集音した動作音から、シートの変形の発生やピックアップローラ80などの搬送部材とシートとの間のスリップの発生などの装置の動作状態を判別することが可能となる。
【0108】
(態様13)
態様12において、特徴量が、メル周波数ケプストラム係数である。
これによれば、メル周波数ケプストラム係数から、シートの変形の発生やピックアップローラ80などの搬送部材とシートとの間のスリップの発生などの装置の動作状態を判別することができる。
【0109】
(態様14)
態様1乃至9いずれかにおいて、サポートベクタ―マシンにより装置の動作状態を判別する。
これによれば、高い汎化性能を有するサポートベクタ―マシンで装置の動作状態を判別することで、高精度に、正常搬送、原稿変形、給紙スリップなどの装置の動作状態を判別することができる。
【0110】
(態様15)
態様1乃至14いずれかにおいて、搬送部材が、可動原稿テーブル54などのシートトレイに載置されたシートを給送するピックアップローラ80などの給送ローラである。
これによれば、実施形態で説明したように、給紙時のスリップや給紙時のシート変形を検出して、ピックアップローラ80などの給送ローラの加熱や、給送ローラをシートから離間せるなどの給送動作時の問題に対する対策を施すことができる。
【0111】
(態様16)
原稿などの原稿シートを搬送する原稿シート搬送部を備え、原稿シート搬送部によって原稿シートを画像読取部へ搬送する自動原稿搬送装置において、原稿シート搬送部として、態様1乃至15いずれかのシート搬送装置を用いた。
これよれば、ジャムの発生を抑制できたり、原稿に折れやしわなどの癖がつくのを抑制することができる。
【0112】
(態様17)
シートを搬送するシート搬送部を備え、シート搬送部によって搬送されるシートに画像を形成する画像形成装置において、シート搬送部として、態様1乃至12いずれかのシート搬送装置の構成を用いた。
これによれば、用紙ジャムの発生を抑制できかつ、折れやしわが発生したシートに画像が形成されるのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0113】
1 :画像形成部
2 :光書込装置
3 :プロセスユニット
40 :白紙供給装置
41 :ペーパーバンク
42 :給紙カセット
43 :送出ローラ
44 :給紙路
45 :分離ローラ
46 :フィードローラ
47 :搬送ローラ
50 :原稿読取装置
51 :ADF
52 :本体カバー
53 :原稿載置台
54 :可動原稿テーブル
55 :原稿スタック台
66 :中間ローラ対
80 :ピックアップローラ
80a :ホルダ
84 :給紙ベルト
85 :分離ローラ
86 :プルアウト従動ローラ
87 :プルアウト駆動ローラ
89 :読取入口ローラ
90 :読取入口ローラ
92 :読取出口ローラ対
93 :第2読取出口ローラ対
94 :排紙ローラ対
98 :給紙カバー
150 :スキャナ
191 :給紙モータ
192 :搬送モータ
193 :ピックアップモータ
194 :排紙クラッチ
201 :集音マイク
201A :集音マイク
800 :支持軸
802 :弾性部材
803 :押圧部
804 :押圧対向部
805 :突出片
806 :戻しバネ付きソレノイド
808 :原稿搬送路
901 :本体制御部
902 :本体操作部
903 :読取制御部
904 :コントローラ
910 :発熱部材
910A :発熱部材
MS :原稿
【先行技術文献】
【特許文献】
【0114】
【文献】特開2014-43340号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12