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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】浮力調整機構及びハウジング
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/08 20210101AFI20240801BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20240801BHJP
   B63B 22/18 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G03B17/08
G03B17/56 H
B63B22/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020180335
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022071397
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2023-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】小関 和宏
【審査官】登丸 久寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-032996(JP,A)
【文献】特開2010-221922(JP,A)
【文献】米国特許第06807856(US,B1)
【文献】特開平11-237688(JP,A)
【文献】特開2001-247086(JP,A)
【文献】国際公開第2018/223154(WO,A1)
【文献】特開平05-158119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 17/08
G03B 17/56
B63B 22/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体中における浮力調整対象物の浮力又は浮力バランスを調整する浮力調整機構であって、
前記浮力調整対象物に接続され、体積を変化させることで浮力が変化する体積変化部と、
前記体積変化部の体積を変化させるためのユーザー操作を受け付ける操作受付部と
流体中における浮力調整対象物の姿勢を安定させる姿勢安定化部材と、を有し、
前記姿勢安定化部材は、前記浮力調整機構の長手方向に対して直交する方向に突出した板状部材であり、
前記板状部材の板面は、前記浮力調整機構の長手方向に対して平行に配置されることを特徴とする浮力調整機構。
【請求項2】
請求項1に記載の浮力調整機構において、
前記体積変化部を前記浮力調整対象物に着脱可能に接続する接続部を有することを特徴とする浮力調整機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の浮力調整機構において、
前記体積変化部は、密閉構造物の体積が密閉状態のまま変化するものであることを特徴とする浮力調整機構。
【請求項4】
請求項3に記載の浮力調整機構において、
前記密閉構造物は、第一構造部と該第一構造部に対して進退可能な第二構造部とから構成され、該第一構造部に対して該第二構造部が進退することにより体積が変化することを特徴とする浮力調整機構。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の浮力調整機構において、
前記浮力調整対象物は、前記流体に対して浮くものであり、
前記体積変化部は、前記流体に対して沈む重りを有することを特徴とする浮力調整機構。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の浮力調整機構において、
前記流体中における推進力を発生させる推進力発生部と、
外部通信装置から制御情報を受信する受信部と、
前記受信部により受信した制御情報に基づいて前記流体中の移動を制御する移動制御部とを有する浮力調整機構。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の浮力調整機構において、
流体圧を検知する検知部と、
前記検知部が検知した流体圧に基づいて、前記体積変化部の体積を変化させるように制御する体積制御部とを有することを特徴とする浮力調整機構
【請求項8】
収容物を内部に収容するハウジング部と、
前記被収容物を内部に収容したハウジング部の流体中における浮力又は浮力バランスを調整する浮力調整部とを有するハウジングであって、
前記浮力調整部として、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の浮力調整機構を用いることを特徴とするハウジング。
【請求項9】
請求項8に記載のハウジングにおいて、
前記ハウジング部は、前記被収容物として撮像装置を収容することを特徴とするハウジング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮力調整機構及びハウジングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、流体中における浮力調整対象物の浮力又は浮力バランスを調整する浮力調整機構が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水中カメラ(浮力調整対象物)の本体下部に取り付けた収納ケース内に多数の浮力体が収納された機構が開示されている。この機構では、水の出入り口となる開口(浮力体が流出しない大きさ)が収納ケースに設けられており、収納ケース内に収容する浮力体の数を調整することで、水中カメラの浮力を調整する。また、収納ケースの各端部に取り付けられた蓋体を収納ケース内外方向に移動させることにより、収納ケース内における多数の浮力体の配置を変更することで、水中カメラの浮力バランスを調整する。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、デジタルカメラを内部に収容する防水ケース(浮力調整対象物)に浮力調整用のバランスウェイトが取り付けられた機構が開示されている。この機構は、バランスウェイトの重心とデジタルカメラの重心と防水ケースの重心とを合成した合成重心が防水ケースの重心近傍となるように、バランスウェイトの重心が配置されるようになっている。
【0005】
また、例えば、特許文献3には、防水カメラ(浮力調整対象物)のカメラ本体の体積を水圧に応じて変化させるための筒状部材を有する機構が開示されている。この機構は、筒状部材を出し入れ可能に保持する受容室がカメラ本体に設けられ、筒状部材がバネにより受容室から出る方向に付勢されている。水深が深くなって筒状部材に作用する水圧が大きくなると、筒状部材がバネに抗して受容室内へ入り込み、これによりカメラ本体の体積が減少して、カメラ全体の浮力が小さくなる。その結果、水面近傍ではカメラ自重よりも浮力の方が大きくなり、その一方で所定深さよりも深い水中ではカメラ自重よりも浮力の方が小さくなるようにしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の浮力調整機構は、浮力調整対象物の浮力調整(浮力又は浮力バランスの調整)に関するユーザーの利便性について改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、流体中における浮力調整対象物の浮力又は浮力バランスを調整する浮力調整機構であって、前記浮力調整対象物に接続され、体積を変化させることで浮力が変化する体積変化部と、前記体積変化部の体積を変化させるためのユーザー操作を受け付ける操作受付部と、流体中における浮力調整対象物の姿勢を安定させる姿勢安定化部材と、を有し、前記姿勢安定化部材は、前記浮力調整機構の長手方向に対して直交する方向に突出した板状部材であり、前記板状部材の板面は、前記浮力調整機構の長手方向に対して平行に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、浮力調整対象物の浮力調整に関するユーザーの利便性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】(a)は、実施形態における水中ハウジングを模式的に示す正面図。(b)は、同水中ハウジングを模式的に示す側面図。
図2】実施形態における水中ハウジングの具体的構成の一例を示す部分断面図。
図3】同水中ハウジングのハウジング部に収容されるカメラの一例を示す正面図。
図4】(a)は、体積変化部の体積が減っている状態を示す説明図。(b)は、体積変化部の体積が増えている状態を示す説明図。
図5】圧力センサの検知した水圧に基づいて体積変化部の体積を変化させる一例を示すブロック図。
図6】受信部で受信した制御情報に基づいて推進力発生部を制御して水中ハウジングの水中の移動を制御する一例を示すブロック図。
図7】水中ハウジングに羽部材を設置した変形例を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る浮力調整機構を、被収容物である撮像装置としてのカメラを内部に収容するハウジング部を備えた水中ハウジングに適用し、水中ハウジング内のカメラを流体である水の中で使用する一実施形態について説明する。
【0011】
ここでは、ハウジング部内に収容される被収容物がカメラである例について説明するが、これに限られない。したがって、被収容物は、撮像装置以外の電子機器、電子機器以外の物品など、どのような物体であってもよいが、当該流体中でそのまま(ハウジングに収容されない状態で)使用することに不向きな物体である。また、流体は、水である場合に限らず、海水などの他の液体、あるいは、気体などであってもよい。
【0012】
図1(a)は、本実施形態における水中ハウジング1を模式的に示す正面図であり、図1(b)は、本実施形態における水中ハウジング1を模式的に示す側面図である。
本実施形態の水中ハウジング1は、被収容物であるカメラ100を内部に収容するハウジング部10と、カメラ100を内部に収容したハウジング部10の水中における浮力を調整する浮力調整部20とを備えている。
【0013】
ハウジング部10は、内部のカメラ100がハウジング部10の外部を撮像可能なように光透過性部材で構成されている。例えば、ハウジング部10は、透明なプラスチック製のものである。ハウジング部10には、カメラ100を保持するための保持部11が内部に設けられている。保持部11にカメラ100を保持することで、カメラ100はハウジング部10の内部に保持される。
【0014】
浮力調整部20は、カメラ100を内部に収容したハウジング部10を浮力調整対象物とし、水中における浮力調整対象物の浮力を調整する浮力調整機構として機能する。本実施形態の浮力調整部20は、体積を変化させることでアルキメデスの原理により浮力が変化する体積変化部21を有する。この体積変化部21は、第一構造部21Aと、この第一構造部21Aに対して図中矢印Aに沿って進退可能な第二構造部21Bとから構成された密閉構造物である。すなわち、本実施形態の体積変化部21は、第一構造部21Aに対して第二構造部21Bが進退することにより、密閉状態のまま体積を変化させることができる。
【0015】
また、浮力調整部20は、体積変化部21をハウジング部10に接続するための接続部22を備えている。この接続部22は、体積変化部21をハウジング部10に対して着脱自在に接続することができる。
【0016】
図2は、本実施形態における水中ハウジング1の具体的構成の一例を示す部分断面図である。図2では、浮力調整部20の部分が断面で示されている。
図3は、図2に示す水中ハウジング1のハウジング部10に収容されるカメラ100の一例を示す正面図である。
【0017】
図3に示すように、カメラ100は、長尺な略直方形状をなし、正面と裏面のそれぞれの上部に、超広角レンズを備える撮像部101が配置された360度カメラである。また、このカメラ100には、正面の中央に操作ボタン102が配置され、撮影開始や撮影終了などのユーザー操作を操作ボタン102が受け付ける。このカメラ100は、正面と裏面に設けられる2つの撮像部101によりそれぞれ約半天球状の画像を撮像することで、上下左右の全空間の画像(360度画像)を取得することができる。
【0018】
本実施形態の水中ハウジング1におけるハウジング部10は、図2に示すように、図3に示す構成のカメラ100に対応する長尺な形状をなしている。具体的には、ハウジング部10は、ハウジング部10に対してカメラ100を出し入れするための出入り口としてハウジング部本体12の下面が開口している。そして、この出入口を開閉するための蓋部材13を閉じ、ロック部材14によって蓋部材13を閉じた状態でロックすることにより、ハウジング部10が密閉状態に維持される。これにより、ハウジング部10を水中に入れても、ハウジング部10内に水が入り込むことがなく、カメラ100が水に濡れることが防止される。
【0019】
また、ハウジング部本体12の下面の出入り口からカメラ100をハウジング部10内に挿入し、蓋部材13を閉じてロック部材14によりロックすると、カメラ100がハウジング部10の内壁部に当接し、正規の位置に位置決め固定される。
【0020】
また、ハウジング部10の蓋部材13には、浮力調整部20の接続部22における接続ネジ22aをネジ止めするためのネジ穴13aが設けられている。このネジ穴13aに接続部22の接続ネジ22aをネジ止めすることで、図2に示すように、ハウジング部10の下端に浮力調整部20を連結することができる。また、ハウジング部10には、例えば蓋部材13に、ユーザーから離れてしまわないようにするストラップを取り付ける取付部を設けるのが好ましい。
【0021】
また、ハウジング部10は、内部のカメラ100でハウジング部10の外部を撮像できるように、少なくともカメラ100の撮像領域に対応する部分が透明なプラスチック製で形成されている。本実施形態のハウジング部10は、ハウジング部本体12及び蓋部材13が透明である。また、ハウジング部本体12は、カメラ100の撮像部101によって撮像される撮像画像への悪影響(画像歪みなど)を抑制するため、2つの撮像部101を覆う部分12aの形状が略球形となるように構成されている。
【0022】
本実施形態のハウジング部10に収容されるカメラ100は、それ単体では水中で沈むものであるが、このカメラ100をハウジング部10に収容することで、カメラ100を含むハウジング部10の全体(浮力調整対象物)は水中で浮くものとなる。水中で常に浮いてしまうようなハウジング部10を水中で運搬したり操作したりするのは、ユーザーにとって非常に面倒である。そのため、本実施形態では、ハウジング部10に浮力調整部20を連結することで、カメラ100を含むハウジング部10と浮力調整部20との全体で浮力と重力のバランスが取れる中性浮力を得られるようにしている。
【0023】
もちろん、ハウジング部10の重量や体積を調整することで、浮力調整部20を利用せずに、カメラ100を含むハウジング部10の全体が中性浮力を得られるようにすることも可能である。しかしながら、本実施形態において、カメラ100は比較的軽量であり、かつ、2つの撮像部101を覆う部分12aが略球形となるようにハウジング部本体12が部分的に突出した形状をなしていることから、浮力を抑えることが難しい。このような場合には、浮力調整部20を利用するのがよい。
【0024】
本実施形態の浮力調整部20は、上述したとおり、体積を変化させることで浮力が変化する第一構造部21A及び第二構造部21Bからなる体積変化部21を有する。第一構造部21Aは、例えば中空円筒状の長尺な部材である。このように第一構造部21Aを長尺な部材とすることで、ユーザーから離れた位置からカメラ100での撮像が可能となる。なお、第一構造部21Aは、このような中空円筒状の部材に限らず、中実の部材や、断面が非円形(矩形状など)の部材であってもよい。
【0025】
第二構造部21Bも、中空円筒状の長尺な部材である。なお、第二構造部21Bも、このような中空円筒状の部材に限らず、中実の部材や、断面が非円形(矩形状など)の部材であってもよい。第一構造部21Aの下端部分の外周面にはネジ山23aが形成されており、第二構造部21Bの上端部分の内週面には、このネジ山23aに噛み合うネジ溝23bが形成されている。これにより、ユーザーが第二構造部21Bを回して、このネジ構造23a,23bを締めたり緩めたりすることで、第二構造部21Bが第一構造部21Aに対して図中矢印Aに沿って進退することができる。
【0026】
その結果、第一構造部21A及び第二構造部21Bからなる体積変化部21の全体の体積を変化させることができる。例えば、図4(a)に示すようにネジ構造23a,23bを締めた状態から、図4(b)に示すようにネジ構造23a,23bを緩めた状態にすると、長さLだけ体積変化部21の長さを伸ばすことができ、ΔVで示す破線で囲んだ分だけ体積を増やすことができる。逆に、図4(b)に示すようにネジ構造23a,23bを緩めた状態から、図4(a)に示すようにネジ構造23a,23bを締めた状態にすると、長さLだけ体積変化部21の長さを縮めることができ、ΔVで示す破線で囲んだ分だけ体積を減らすことができる。本実施形態において、このネジ構造23a,23bを備えた第一構造部21A及び第二構造部21Bは、体積変化部21の体積を変化させるためのユーザー操作を受け付ける操作受付部として機能する。
【0027】
なお、ここでは、体積変化部21の体積を変化させるためのユーザー操作を受け付ける操作受付部が、ネジ構造23a,23bにより構成されている例であるが、これに限られない。例えば、操作受付部は、第二構造部21Bが第一構造部21Aに対して図中矢印Aに沿って摺動するようなピストン構造により構成されていてもよい。
【0028】
また、本実施形態の操作受付部は、体積変化部21の体積を変化させるための動力がユーザーの操作力によってなされる構成であるが、モータやソレノイド等のアクチュエータ(駆動手段)を設けて、その駆動力を体積変化部21の体積を変化させるための動力としてもよい。この場合、アクチュエータを制御する制御部は、操作ボタンや操作レバーなどの操作受付部が受け付けたユーザー操作に応じて、アクチュエータのオンオフ動作や動作量あるいは動作方向などの制御を行う。これにより、ユーザーは、軽い操作力で、自らの意思に沿って体積変化部21の体積を変化させることができる。
【0029】
また、第一構造部21Aに対して第二構造部21Bが進退しても密閉状態を維持できるように、第一構造部21Aと第二構造部21Bとの間にはシール部材24が配置されている。このシール部材24には、例えば樹脂製のOリングなどを用いることができる。
【0030】
また、本実施形態の第二構造部21Bには、重り25が配置されている。上述したようにカメラ100を含むハウジング部10の全体が水中で浮くものであり、また、浮力調整部20も中空構造の密閉構造物であるため比較的軽量である。そのため、カメラ100を含むハウジング部10と浮力調整部20との全体で中性浮力を得られるように、重り25を設けている。
【0031】
本実施形態において、ハウジング部10に加わる浮力F0は、主に、ハウジング部10の重量、ハウジング部10の体積、ハウジング部10に収容されるカメラ100の重量によって決定される。一方、浮力調整部20に加わる浮力F1は、主に、浮力調整部20の重量M、浮力調整部20の体積(体積変化部21の体積)、浮力調整部20に収容される重り25の重量Mcによって決定される。そして、浮力調整部20に加わる浮力F1は、上述したとおり、第二構造部21Bを第一構造部21Aに対して進退させて体積変化部21の長さLを変化させ、体積変化部21の体積を変化させることで、体積変化分ΔVに応じた分ΔFだけ変化させることができる。
【0032】
したがって、水中ハウジング1に中性浮力を得たい場合、F0+(F1+ΔF)=M+McとなるΔFが得られるように、第二構造部21Bを第一構造部21Aに対して進退させて体積変化部21の体積変化分ΔVを調整すればよい。また、水中ハウジング1を浮かせたい場合、F0+(F1+ΔF)>M+McとなるΔFが得られるように、第二構造部21Bを第一構造部21Aに対して進退させて体積変化部21の体積変化分ΔVを調整すればよい。また、水中ハウジング1を沈ませたい場合、F0+(F1+ΔF)<M+McとなるΔFが得られるように、第二構造部21Bを第一構造部21Aに対して進退させて体積変化部21の体積変化分ΔVを調整すればよい。
【0033】
なお、本実施形態では、重り25を浮力調整部20における第二構造部21Bに配置しているが、これに限らず、第一構造部21Aに配置してもよいし、あるいは、ハウジング部10に配置してもよい。重り25の配置については、種々の目的に応じて適宜決定される。例えば、カメラ100を含む水中ハウジング1の全体の重心位置が、水中ハウジング1の取り扱いを容易にするような位置になるように決定してもよい。
【0034】
本実施形態では、カメラ100が収容されるハウジング部10とは反対側の端部に位置する第二構造部21Bに重り25を配置している。これにより、カメラ100を含む水中ハウジング1の全体の重心位置を、水中ハウジング1の中央付近(第一構造部21Aの中間位置付近)にすることができ、例えば地上での水中ハウジング1の取り扱いが容易になる。
【0035】
また、本実施形態のように、第一構造部21Aに対して進退可能な第二構造部21Bに重り25を配置することで、第二構造部21Bを進退させて体積変化部21の体積を変更させる際に、水中ハウジング1の全体の重心位置の移動量が大きくなる。よって、第一構造部21Aに対して第二構造部21Bを進退させることにより、水中ハウジング1の全体の重心位置を調整する機能が発揮される。これにより、水中において、水中ハウジング1に浮力や重力の作用する位置バランスを調整でき、水中ハウジング1の取り扱いを容易にする調整が可能となる。
【0036】
ユーザーは、例えば水中(海中)でカメラ100により360度画像を撮像する場合、カメラ100をハウジング部10内に収容した水中ハウジング1を持って水中に潜る。このとき、ハウジング部10の部分だけの場合(浮力調整部20が接続されていない場合)には、浮力が大きすぎて、水中に潜る際や水中での撮影の際の取り扱いが不便で、また、これを把持しているユーザーの水中での動きも制限される。
【0037】
本実施形態のように、ハウジング部10に浮力調整部20が接続された水中ハウジング1であれば、水中ハウジング全体で中性浮力が得られる。中性浮力が得られることで、例えば、水中ハウジング1をユーザーが手放しても、水中ハウジング1がユーザーの手元から急に離れていくようなことがなくなり、またユーザーの手元付近に浮遊させて留めておくことも可能である。その結果、ユーザーは、水中でずっと水中ハウジング1を把持し続ける必要がなくなり、また、ストラップなどで水中ハウジング1をユーザーに連結しておく必要もなくすことが可能である。よって、水中での取り扱いが容易になり、また、これを把持しているユーザーの水中での動きも制限されにくい。
【0038】
また、本実施形態においては、ユーザーが第二構造部21Bを回す操作を行って第二構造部21Bを第一構造部21Aに対して進退させることで、体積変化部21の体積を変化させ、カメラ100を含むハウジング部10の浮力を変化させることができる。このように、カメラ100を含むハウジング部10の浮力をユーザー操作に基づいて行うことができることで、ユーザーは、自らの意思に沿って浮力の調整を行うことができる。
【0039】
また、本実施形態では、中性浮力が得られている状態から、ユーザーが第二構造部21Bを回して体積変化部21の体積を増加させると、浮力が増して、水中ハウジング1が浮くようにすることができる。これにより、例えば、ユーザーは、水中ハウジング1を手放すことで水中ハウジング1だけを浮上させ、ユーザーから離れた上方の水中画像を撮像することができる。
【0040】
同様に、本実施形態では、中性浮力が得られている状態から、ユーザーが第二構造部21Bを回して体積変化部21の体積を減少させると、浮力が減って、水中ハウジング1が沈むようにすることができる。これにより、例えば、ユーザーは、水中ハウジング1を手放すことで水中ハウジング1だけを沈降させ、ユーザーから離れた下方の水中画像を撮像することができる。
【0041】
特に、ユーザー操作により水中ハウジング1だけを浮上させたり沈降させたりできることで、カメラ100で360度画像を撮像する場合において、操作ボタンを押すユーザーの指やユーザー自身の顔や体が映り込んでしまうことを回避することができる。なお、長い自撮り棒とセルフタイマー機能を利用することで、このような映り込みを回避することも可能であるが、水中で長い自撮り棒を運搬したり動かしたりするのはユーザーの負担が大きく、利便性が悪い。これに対し、本実施形態のように、水中ハウジング1だけを浮上させたり沈降させたりできる場合には、運搬したり動かしたりすることが不便な長い自撮り棒を必要とせず、利便性が高い。
【0042】
以上のように、本実施形態によれば、ユーザーは、水中で第二構造部21Bを回す操作を行うことで、水中ハウジング1を浮かせたり沈ませたりすることができるので、水中ハウジング1の取り扱いの自由度、利便性が非常に高い。
【0043】
また、上述したように、モータやソレノイド等のアクチュエータ(駆動手段)を設けて、その駆動力を体積変化部21の体積を変化させるための動力とする場合、更に取り扱いの自由度や利便性を向上させることが可能である。
【0044】
例えば、図5に示すように、水圧(流体圧)を検知する検知部としての圧力センサ202を水中ハウジング1に設置し、水中ハウジング1の水深に応じて加わる水圧を検知できるようにする。そして、体積変化部21の体積を変化させるアクチュエータ203を制御する体積制御部200が、圧力センサ202の検知した水圧に基づいて体積変化部21の体積を変化させるように制御するようにする。
【0045】
このような構成によれば、例えば、水深を指定するユーザーの指示操作を操作受付部201が受け付けて、その水深まで水中ハウジング1を自動制御で移動させることが可能である。具体的には、体積制御部200は、例えば、圧力センサ202が検知する水圧と、指定された水深に対応する水圧との比較結果に基づき、アクチュエータ203を制御して体積変化部21の体積を変化させる。これにより、ユーザー操作により指定した水深まで、水中ハウジング1を自動的に浮上又は沈降させることができる。
【0046】
また、図6に示すように、水中における推進力を発生させる推進力発生部を水中ハウジング1に設置してもよい。推進力発生部301の構成は、特に制限はなく、例えば、プロペラと、プロペラを回転させる駆動源(モータ等)と、駆動源を駆動させる駆動回路とから構成される。そして、移動制御部300が、推進力発生部301を制御して水中ハウジング1の水中の移動を制御するようにする。これにより、水中の狙いの位置に水中ハウジング1を容易に移動させることができ、取り扱いや利便性は更に向上する。
【0047】
移動制御部300は、水中ハウジング1に設けられる操作受付部が受け付けたユーザー操作に基づいて水中ハウジング1の水中の移動を制御してもよい。図6に示す例では、移動制御部300は、受信部302で受信した外部通信装置からの制御情報に基づいて、水中ハウジング1の水中の移動を制御することができる。受信部302は、有線通信でも無線通信(例えば、電波や超音波による通信)でもよい。この場合、ユーザー操作による外部通信装置からの遠隔操作によって水中ハウジング1の水中の移動を制御することができる。
【0048】
また、図6の例において、移動制御部300は、受信部302で受信した外部通信装置からの制御情報に基づいて、体積変化部21の体積を変化させるアクチュエータ303を制御してもよい。この場合、ユーザー操作による外部通信装置からの遠隔操作によって体積変化部21の体積を変化させるように制御し、水中ハウジング1の水中の移動(浮上や沈降)を制御することができる。この場合、受信部302が操作受付部として機能する。
【0049】
また、水中ハウジング1をユーザーが水中で手放した状態で水中ハウジング1内のカメラ100により撮像する際、水中ハウジング1の姿勢を安定させることは重要な課題である。本実施形態において、水中ハウジング1は、上述したとおり、ハウジング部10が水中で浮くのに対し、浮力調整部20は重り25によって水中で沈むように構成されている。そのため、ユーザーが手放した状態における水中ハウジング1の水中姿勢は、ハウジング部10が上部、浮力調整部20が下部となるような姿勢(上下方向の姿勢)で安定しやすい。
【0050】
しかしながら、流れ(うねり)がある水中では、水中ハウジング1が長手方向中心軸(長尺な部材である浮力調整部20の長手方向中心軸)の回りを回転し、当該中心軸回りにおける回転方向の姿勢が安定しないことがある。このように姿勢が安定せずに回転が生じてしまうと、カメラ100で適切な画像を撮像することが困難となる。
【0051】
そこで、流れ(うねり)のある水中でも水中ハウジング1が回転せずに姿勢を安定させるため、図7に示すように、姿勢安定化部材として、例えば羽部材26を水中ハウジング1に設置してもよい。この羽部材26は、例えば、浮力調整部20の第一構造部21Aから横方向(長手方向に対して直交する方向)へ突出した板状の部材であって、その板面が長手方向に略平行となるように設置されている。このような羽部材26を設置することで、羽部材26の板面が水中の流れ方向Cに平行となる姿勢で水中ハウジング1が安定しやすくなり、流れ(うねり)のある水中でも水中ハウジング1が回転せずに姿勢が安定しやすい。
【0052】
上述した羽部材26は、浮力調整部20の第一構造部21Aに対して着脱自在であるのが好ましいが、第一構造部21Aと一体構成であってもよい。また、羽部材26の設置箇所は、浮力調整部20の第一構造部21Aでなくてもよく、例えば第二構造部21Bやハウジング部10であってもよい。また、姿勢安定化部材は、水中ハウジング1の姿勢(ハウジング部10の姿勢)を安定させることのできるものであれば、羽部材に限られない。
【0053】
なお、流れ(うねり)がある水中では、水中ハウジング1が重心位置付近(例えば重り25の付近)を中心にハウジング部10が揺れるような動き(揺動)をして、水中ハウジング1の姿勢が安定しないこともある。このような場合も、例えば、姿勢安定化部材として、羽部材を水中ハウジング1に設置するのが効果的である。ただし、この場合の羽部材の板面が水平方向に略平行となるように設置される。
【0054】
なお、本実施形態においては、浮力調整対象物が水中で浮くものである場合について説明したが、浮力調整対象物が水中で沈むものであっても、同様に適用することができる。
また、本実施形態は、ハウジング部10と浮力調整部20とが別体で構成されている例であるが、ハウジング部10と浮力調整部20とを一体構造としてもよい。
【0055】
以上に説明したものは一例であり、次の態様毎に特有の効果を奏する。
[第1態様]
第1態様は、流体(例えば水)中における浮力調整対象物(例えばカメラ100を含むハウジング部10)の浮力又は浮力バランスを調整する浮力調整機構(例えば浮力調整部20)であって、前記浮力調整対象物に接続され、体積を変化させることで浮力が変化する体積変化部21と、前記体積変化部の体積を変化させるためのユーザー操作を受け付ける操作受付部(例えば第一構造部21A及び第二構造部21B)とを有することを特徴とするものである。
本態様においては、浮力調整対象物の浮力又は浮力バランスを調整させるための体積変化部の体積変化を、ユーザー操作に基づいて行うことができる。これにより、ユーザーは、自らの操作により浮力調整対象物の浮力を調整して、例えば、浮力調整対象物を浮上させたり、沈降させたり、所定の深さに留まらせたりすることができる。また、ユーザーは、自らの操作により浮力調整対象物の浮力を調整して、例えば、浮上する浮力調整対象物の浮上スピードを増大させたり減少させたり、反対に、沈降する浮力調整対象物の沈降スピードを増大させたり減少させたりすることができる。また、ユーザーは、自らの操作により浮力調整対象物の浮力バランスを調整して、例えば、流体中における浮力調整対象物の姿勢を変更することもできる。このように、本態様によれば、浮力調整対象物の浮力又は浮力バランスをユーザー操作により調整することができるので、流体中においてユーザーによる浮力調整対象物の取り扱いが容易になり、浮力調整対象物の浮力調整(浮力又は浮力バランスの調整)に関するユーザーの利便性が向上する。
【0056】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記体積変化部を前記浮力調整対象物に着脱可能に接続する接続部22を有することを特徴とするものである。
これによれば、ユーザーが浮力調整対象物に対して体積変化部を取り付けたり取り外したりすることが可能となり、利便性が向上する。
【0057】
[第3態様]
第3態様は、第1又は第2態様において、前記体積変化部は、密閉構造物の体積が密閉状態のまま変化するものであることを特徴とするものである。
これによれば、体積変化部として中空形状のものを採用することが可能となり、より軽量な体積変化部を実現することができる。
【0058】
[第4態様]
第4態様は、第3態様において、前記密閉構造物は、第一構造部21Aと該第一構造部に対して進退可能な第二構造部21Bとから構成され、該第一構造部に対して該第二構造部が進退することにより体積が変化することを特徴とするものである。
これによれば、体積変化部の体積変化を簡易な構成で実現することができる。
【0059】
[第5態様]
第5態様は、第1乃至第4態様のいずれかにおいて、前記浮力調整対象物は、前記流体に対して浮くものであり、前記体積変化部は、前記流体に対して沈む重り25を有することを特徴とするものである。
これによれば、流体に対して浮く浮力調整対象物の浮力調整に関するユーザーの利便性が向上する。また、重りの流量や配置を適切に調整することで、例えば、浮力調整対象物に中性浮力を作用させることが可能となり、流体中においてユーザーによる浮力調整対象物の取り扱いが容易になる。
【0060】
[第6態様]
第6態様は、第1乃至第5態様のいずれかにおいて、前記流体中における推進力を発生させる推進力発生部301と、外部通信装置から制御情報を受信する受信部302と、前記受信部により受信した制御情報に基づいて前記流体中の移動を制御する移動制御部300とを有するものである。
これによれば、ユーザー操作による外部通信装置からの遠隔操作によって流体中の狙いの位置に浮力調整対象物を移動させることができ、取り扱いや利便性が向上する。
【0061】
[第7態様]
第7態様は、第1乃至第6態様のいずれかにおいて、流体圧(例えば水圧)を検知する検知部(圧力センサ202)と、前記検知部が検知した流体圧に基づいて、前記体積変化部の体積を変化させるように制御する体積制御部200とを有することを特徴とするものである。
これによれば、例えば、ユーザーが指定した水深まで浮力調整対象物を自動的に浮上又は沈降させることが可能となり、取り扱いや利便性が向上する。
【0062】
[第8態様]
第8態様は、第1乃至第7態様のいずれかにおいて、流体中における浮力調整対象物の姿勢を安定させる姿勢安定化部材(例えば羽部材26)を有することを特徴とするものである。
これによれば、流体の流れによって浮力調整対象物の姿勢が変化することを抑制することができる。
【0063】
[第9態様]
第9態様は、被収容物(例えばカメラ100)を内部に収容するハウジング部10と、前記被収容物を内部に収容したハウジング部の流体中における浮力又は浮力バランスを調整する浮力調整部20とを有するハウジング(例えば水中ハウジング1)であって、前記浮力調整部として、第1乃至第8態様のいずれかの浮力調整機構を用いることを特徴とするものである。
本態様によれば、被収容物を内部に収容したハウジング部の浮力をユーザー操作により調整することができるので、流体中においてユーザーによる当該ハウジング部の取り扱いが容易になり、当該ハウジング部の浮力調整に関するユーザーの利便性が向上する。
【0064】
[第10態様]
第10態様は、第9態様において、前記ハウジング部は、前記被収容物として撮像装置(例えばカメラ100)を収容することを特徴とするものである。
これによれば、流体中の画像を撮像装置によって撮像する際の取り扱いや利便性が向上する。
【符号の説明】
【0065】
1 :水中ハウジング
10 :ハウジング部
11 :保持部
12 :ハウジング部本体
13 :蓋部材
14 :ロック部材
20 :浮力調整部
21 :体積変化部
21A :第一構造部
21B :第二構造部
22 :接続部
23a,23b:ネジ構造
24 :シール部材
25 :重り
100 :カメラ
101 :撮像部
102 :操作ボタン
200 :体積制御部
201 :操作受付部
202 :圧力センサ
203 :アクチュエータ
300 :移動制御部
301 :推進力発生部
302 :受信部
303 :アクチュエータ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0066】
【文献】実開平06-028848号公報
【文献】特開2007-328105号公報
【文献】特開平05-158119号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7