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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】脱穀装置
(51)【国際特許分類】
   A01F 12/10 20060101AFI20240801BHJP
   A01F 12/16 20060101ALI20240801BHJP
   A01D 41/02 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
A01F12/10 D
A01F12/10 A
A01F12/16 J
A01D41/02 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021024887
(22)【出願日】2021-02-19
(65)【公開番号】P2022126988
(43)【公開日】2022-08-31
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 裕文
(72)【発明者】
【氏名】紺屋 秀之
(72)【発明者】
【氏名】関 隼人
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-188396(JP,A)
【文献】実開昭53-109670(JP,U)
【文献】特開2012-130289(JP,A)
【文献】特開2013-198449(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01F 12/10
A01F 12/16
A01D 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被脱穀物の手扱ぎ作業を行う脱穀装置であって、
前記被脱穀物を搬送するフィードチェンと、
前記手扱ぎ作業を行う作業者の姿勢が適正であるか否かを検知する検知機構と、
前記検知機構から得られた情報に基づいて前記フィードチェンの動作を制御する制御部と、を備え
前記検知機構は、
前記脱穀装置の機体側面部のうち、前記フィードチェンが配された側の機体側面部に設けられた、前記作業者の体の一部に接触する接触部材と、
前記接触部材の位置、または前記作業者と前記接触部材の接触状態を検知する検知部と、を有し、
前記接触部材は、前記手扱ぎ作業の非作業時における所定の待機位置と、前記手扱ぎ作業の作業時における所定の使用位置との間で回動可能であって、且つ、前記使用位置から前記待機位置に回動する方向に付勢されるように設けられ、
前記制御部は、前記フィードチェンの稼働時において、前記接触部材が前記使用位置と前記待機位置の間の所定の位置を通過した際に前記フィードチェンの動作を停止させる制御を行うことを特徴とする、脱穀装置。
【請求項2】
前記接触部材の回動中心は、前記脱穀装置の機体高さ方向であり、
前記待機位置は、前記脱穀装置の機体幅方向における機体の外側面よりも内側の領域に位置していることを特徴とする、請求項に記載の脱穀装置。
【請求項3】
前記接触部材の回動中心は、前記脱穀装置の機体幅方向であり、
前記接触部材は、板状であって、板厚方向が前記接触部材の回動方向に向いて配置されていることを特徴とする、請求項に記載の脱穀装置。
【請求項4】
前記接触部材は、前記回動中心に垂直な方向に向いた他の回動中心を有し、前記脱穀装置の機体幅方向における機体の外側面よりも内側の領域の位置と、前記待機位置との間で回動可能に設けられていることを特徴とする、請求項に記載の脱穀装置。
【請求項5】
前記検知部は、前記接触部材の回動角度を検知する角度センサであり、
前記制御部は、前記フィードチェンの稼働時において、前記接触部材の回動角度が所定の角度となった場合に前記フィードチェンの動作を停止させる制御を行うことを特徴とする、請求項のいずれか一項に記載の脱穀装置。
【請求項6】
被脱穀物の手扱ぎ作業を行う脱穀装置であって、
前記被脱穀物を搬送するフィードチェンと、
前記手扱ぎ作業を行う作業者の姿勢が適正であるか否かを検知する検知機構と、
前記検知機構から得られた情報に基づいて前記フィードチェンの動作を制御する制御部と、を備え、
前記検知機構は、
前記脱穀装置の機体側面部のうち、前記フィードチェンが配された側の機体側面部に設けられた、前記作業者の体の一部に接触する接触部材と、
前記接触部材の位置、または前記作業者と前記接触部材の接触状態を検知する検知部と、を有し、
前記接触部材は、前記手扱ぎ作業を行う作業者が両足を載せるステップであり、
前記検知部は、前記接触部材に乗る前記作業者の左足の姿勢を検知可能な位置と、前記接触部材に乗る前記作業者の右足の姿勢を検知可能な位置にそれぞれ配置され、
前記制御部は、前記フィードチェンの稼働時において、各々の検知部の検知結果に基づいて前記フィードチェンの動作を停止させる制御を行うことを特徴とする、脱穀装置。
【請求項7】
前記検知部は、荷重センサであり、
前記接触部材に2つの前記検知部が間隔をおいて配置され、
前記制御部は、前記フィードチェンの稼働時において、各々の荷重センサで測定される荷重の差が所定の閾値を超えた場合に前記フィードチェンの動作を停止させる制御を行うことを特徴とする、請求項に記載の脱穀装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱穀装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
稲、麦などの作物(以下、被脱穀物と称する)の収穫期には、例えばコンバインの刈取装置で刈取りを行った後、脱穀装置により脱穀して穀粒と藁屑などの廃棄部分とに分離する作業が行われる。このような被脱穀物の刈取り、脱穀といった一連の作業は、基本的にコンバインが圃場内を走行することで自動的に行われるが、圃場内においてはコンバインの装置特性上、刈取りを行うことが困難な領域(例えば圃場の四隅の領域)がある。このため、当該領域の被脱穀物については作業者の手によって刈取りが行われ、作業者がコンバインの脱穀装置を利用して被脱穀物を脱穀する、いわゆる手扱ぎ作業が行われる。
【0003】
一般的なコンバインの脱穀装置は、フィードチェン、挟やく桿、扱ぎ胴、扱ぎ歯等を備えている。このような脱穀装置の手扱ぎ作業においては、作業者によってフィードチェンに被脱穀物が載せられた後、被脱穀物が扱ぎ胴や扱ぎ歯で構成される脱穀部に搬送されて脱穀される。手扱ぎ作業が可能な脱穀装置として、特許文献1には、作業者が手扱ぎ作業位置にあるペダルを片足で踏み下ろすことでフィードチェンが作動するコンバインが開示されている。また、特許文献2には、作業者が手扱ぎ作業を行いやすいように、手扱ぎ作業用のステップが設けられた脱穀装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-051884号公報
【文献】実開平5-082230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された脱穀装置の場合、作業者の片足がペダルに載った状態で手扱ぎ作業が行われるため、作業者の作業姿勢が不安定となり、作業能率が低下する。また、特許文献2に記載された脱穀装置の場合、作業者の両足がステップに載るため、作業姿勢は安定するが、作業者がステップ上で姿勢を崩した場合であってもフィードチェンが稼働し続けることから、安全性の観点においては改善の余地がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、脱穀装置における手扱ぎ作業の作業能率と安全性を両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する本発明は、被脱穀物の手扱ぎ作業を行う脱穀装置であって、前記被脱穀物を搬送するフィードチェンと、前記手扱ぎ作業を行う作業者の姿勢が適正であるか否かを検知する検知機構と、前記検知機構から得られた情報に基づいて前記フィードチェンの動作を制御する制御部と、を備え、前記検知機構は、前記脱穀装置の機体側面部のうち、前記フィードチェンが配された側の機体側面部に設けられた、前記作業者の体の一部に接触する接触部材と、前記接触部材の位置、または前記作業者と前記接触部材の接触状態を検知する検知部と、を有し、前記接触部材は、前記手扱ぎ作業の非作業時における所定の待機位置と、前記手扱ぎ作業の作業時における所定の使用位置との間で回動可能であって、且つ、前記使用位置から前記待機位置に回動する方向に付勢されるように設けられ、前記制御部は、前記フィードチェンの稼働時において、前記接触部材が前記使用位置と前記待機位置の間の所定の位置を通過した際に前記フィードチェンの動作を停止させる制御を行うことを特徴としている。
別の観点による本発明は、被脱穀物の手扱ぎ作業を行う脱穀装置であって、前記被脱穀物を搬送するフィードチェンと、前記手扱ぎ作業を行う作業者の姿勢が適正であるか否かを検知する検知機構と、前記検知機構から得られた情報に基づいて前記フィードチェンの動作を制御する制御部と、を備え、前記検知機構は、前記脱穀装置の機体側面部のうち、前記フィードチェンが配された側の機体側面部に設けられた、前記作業者の体の一部に接触する接触部材と、前記接触部材の位置、または前記作業者と前記接触部材の接触状態を検知する検知部と、を有し、前記接触部材は、前記手扱ぎ作業を行う作業者が両足を載せるステップであり、前記検知部は、前記接触部材に乗る前記作業者の左足の姿勢を検知可能な位置と、前記接触部材に乗る前記作業者の右足の姿勢を検知可能な位置にそれぞれ配置され、前記制御部は、前記フィードチェンの稼働時において、各々の検知部の検知結果に基づいて前記フィードチェンの動作を停止させる制御を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、脱穀装置における手扱ぎ作業の作業能率と安全性を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1の実施形態に係る脱穀装置の概略構成を示すコンバインの左側面図である。
図2】脱穀装置の機体フレームの左前端部を模式的に示す上面図である。
図3】手扱ぎ作業時の作業者の作業位置を示すコンバインの左側面図である。
図4】接触部材の動作を説明するための上面図である。
図5】接触部材の他の動作例を示す上面図である。
図6】変形例に係る接触部材の動作を説明するための上面図である。
図7】本発明の第2の実施形態に係る脱穀装置の概略構成を示すコンバインの左側面図である。
図8】脱穀装置の機体フレームの左前端部を模式的に示す上面図である。
図9】接触部材の動作を説明するための左側面図である。
図10】変形例に係る接触部材の動作を説明するための図であり、脱穀装置の機体フレームの左前端部を示す前面図である。
図11】変形例に係る接触部材の動作を説明するための図であり、脱穀装置の機体フレームの左前端部を示す左側面図である。
図12】第3の実施形態に係る、使用位置にある接触部材の上面図である。
図13】脱穀装置の機体フレームの左前端部を示す前面図である。
図14】手扱ぎ作業時の作業者の作業位置を示すコンバインの左側面図である。
図15】接触部材の支持構造の例を示す左側面図である。
図16】第4の実施形態に係る検知機構の概略構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
なお、以下の実施形態においては、脱穀装置の一例としてコンバインに搭載された脱穀装置を例に挙げて説明しているが、脱穀装置は、いわゆる動力脱穀機のような被脱穀物の刈取り機構を有しない装置に適用することもできる。
【0012】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る脱穀装置1の概略構成を示すコンバイン70の左側面図である。図1では、コンバイン70の一部の構成のみが図示されている。コンバイン70は、稲や麦などの被脱穀物の刈取りを行う刈取装置71と、操縦席72と、履帯が取り付けられた走行機構を有する走行部73と、走行部73の上部に搭載された脱穀装置1を備えている。
【0013】
脱穀装置1は、脱穀機構を有する機体10を備え、機体10は、機体フレーム20と、機体フレーム20の上に支持された機体本体部30を有している。機体本体部30は、被脱穀物を搬送するフィードチェン31と、フィードチェン31に載せられた被脱穀物を押さえる役割を担う挟やく桿32を備えている。コンバイン70の刈取装置71または作業者によって圃場から刈り取られた被脱穀物は、フィードチェン31に載せられた後、フィードチェン31と挟やく桿32に挟まれた状態で搬送されて、扱ぎ歯や扱ぎ胴等で構成される脱穀部(図示せず)で脱穀される。
【0014】
なお、本明細書および図面におけるX方向は、コンバイン70および脱穀装置1の前後方向であり、脱穀装置1の機体上面視においては、フィードチェン31の搬送方向と同方向である。Y方向は、コンバイン70および脱穀装置1の幅方向であり、脱穀装置1の機体上面視においては、フィードチェン31の搬送方向に垂直な方向である。Z方向は、コンバイン70および脱穀装置1の高さ方向である。また、本明細書で使用するコンバイン70および脱穀装置1の「前」「後」「左」「右」の方向は、コンバイン70の操縦席72に着座した作業者から見た方向であり、作業者は図1中の左方向を向いて操縦席72に着座する。
【0015】
図2は、機体フレーム20の左前端部の構造を模式的に示す上面図である。図2に示すように、機体フレーム20は、X方向に延伸するフレーム(以下、「サイドフレーム20a」と記載する)と、Y方向に延伸するフレーム(以下、「クロスフレーム20b」と記載する)が互いに接合されることで構成されている。
【0016】
脱穀装置1は、手扱ぎ作業を行う作業者の姿勢を検知する検知機構40を備えている。本実施形態における検知機構40は、手扱ぎ作業の際に作業者の体の一部に接触する接触部材41と、接触部材41の位置を検知する検知部42を有している。検知機構40は、これらの接触部材41と検知部42がフィードチェン31の設置位置等に応じて適切に配置されることによって、手扱ぎ作業時の作業者の姿勢が適正であるか否かを検知することができる。
【0017】
接触部材41は、脱穀装置1の機体10の左側面部(図1のY方向手前側の側面部)と、右側面部(図1のY方向奥側の側面部)のうち、フィードチェン31が配された側の側面部である左側面部に設けられている。なお、フィードチェン31が右側面部に配された構造の脱穀装置1の場合、接触部材41は機体10の右側面部に設けられる。
【0018】
本実施形態における接触部材41は、棒状に形成されており、接触部材41の一端はサイドフレーム20aの前端部上面に支持された回転支柱43の側面部に取り付けられている。回転支柱43は、軸方向が高さ方向(Z方向)に向くように配置され、回転中心が高さ方向となるよう回転可能に構成されている。このような回転支柱43に取り付けられた接触部材41は、回転支柱43の回転により回転支柱43の軸方向を回動中心として回動する。なお、接触部材41の回動機構は本実施形態で説明された構成に限定されず、公知の構成を適用することができる。また、接触部材41の形状は、回動動作を阻害せずに作業者の体の一部に接触可能な形状であれば特に限定されない。
【0019】
接触部材41は、手扱ぎ作業の非作業時には所定の位置(以下「待機位置」)で待機し、手扱ぎ作業の作業時には、その待機位置から図2の二点鎖線で示す所定の位置(以下「使用位置」)まで回動するように設けられている。この際の回動動作は作業者自身が接触部材41を待機位置から引っ張ることで行われてもよいし、モータ等により回転駆動力が回転支柱43に付与されることで自動的に行われてもよい。なお、接触部材41の待機位置と使用位置の各々は、手扱ぎ作業を行う前に予め設定される位置であり、フィードチェン31の設置位置や採用する作業者の姿勢検知手段等に応じて適宜変更される位置である。
【0020】
ただし、接触部材41の待機位置は、機体10の幅方向(Y方向)において機体10の外側面10a(図2)の位置よりも内側の領域に位置していることが好ましい。待機位置がそのような位置であれば、手扱ぎ作業の非作業時に接触部材41が機体10の外側面10aに対して幅方向の外方に突出しないため、脱穀装置1の最大幅寸法を小さくすることができる。
【0021】
接触部材41は、待機位置から使用位置に向かって回動した際に、当該回動した位置から待機位置に回動する方向に付勢される構成を有している。このため、例えば使用位置にある接触部材41には付勢力Fが作用し、使用位置にある接触部材41は自動的に待機位置に戻るような構成となっている。接触部材41への付勢手段は特に限定されず、例えば部材の伸縮に伴う復元力を利用した、ばね等の弾性部材を用いた付勢機構や、モータ等の回転駆動力を利用した付勢機構が採用され得る。
【0022】
本実施形態における検知部42は、例えばポテンショメータ等の角度センサ42aであり、角度センサ42aは回転支柱43の上端部に設けられている。角度センサ42aは回転支柱43と共に回転可能に取り付けられているため、回転支柱43の回転角度を検知することができる。このため、角度センサ42aで測定される回転角度に基づいて、接触部材41の回動角度も検知することができる。
【0023】
脱穀装置1は、検知機構40による検知結果に基づいてフィードチェン31の動作を制御する制御部50を備えている。制御部50は、例えば角度センサ42aで得られる、待機位置からの接触部材41の回動角度が所定の閾値以上である場合にフィードチェン31の作動を許可し、待機位置からの接触部材41の回動角度が所定の閾値未満となった場合にフィードチェン31の停止信号を出力する。なお、所定の閾値は、手扱ぎ作業を行う前に予め設定される位置であり、フィードチェン31の設置位置や検知機構40の構造等に応じて適宜変更される値である。
【0024】
なお、制御部50は、コンバイン70または脱穀装置1の動作を制御する制御系に組み込まれてもよいし、検知機構40のために独立した制御系として設けられてもよい。独立した制御系として制御部50を設ける場合、検知機構40の検知結果に基づくフィードチェン31の動作停止信号は、制御部50から、脱穀装置1の動作を制御する制御系に出力される。また、フィードチェン31の動作停止信号によるフィードチェン31の具体的な停止方法は特に限定されない。例えばコンバイン70のエンジン停止や、クラッチの接続状態解除による動力カット、あるいは油圧を用いた強制的な減速等、公知の手段を適用できる。
【0025】
本実施形態における脱穀装置1は以上のように構成されている。次に、この脱穀装置1による手扱ぎ作業時の作業者の姿勢検知方法について、図3および図4を参照しながら説明する。なお、図4中の斜線部は、手扱ぎ作業を行う作業者の左脚部80および右脚部81の位置を示している。
【0026】
図3に示すように、手扱ぎ作業を行う際、作業者は、脱穀装置1の左側面部におけるフィードチェン31の被脱穀物の投入側近傍で作業を行う。このとき、接触部材41は、図4(a)のように待機位置から使用位置に回動した状態にあり、接触部材41は作業者の左脚部80に接している。また、接触部材41には、使用位置から待機位置に回動する方向に付勢力Fが作用しているため、接触部材41は作業者の左脚部80の位置に追従するように回動可能な状態にある。
【0027】
このため、例えば図4(a)では、待機位置からの接触部材41の回動角度が90度の状態にあるが、作業者の左脚部80の位置が図4(a)に示す手扱ぎ作業を行う位置から前方側(X方向におけるフィードチェン31から離れる側)にずれた場合には接触部材41の回動角度が90度よりも大きくなる。一方で、作業者の左脚部80の位置が図4(a)に示す手扱ぎ作業を行う位置から後方側(X方向におけるフィードチェン31に近づく側)にずれた場合には接触部材41の回動角度が90度よりも小さくなる。
【0028】
手扱ぎ作業中、作業者の左脚部80の位置が作業位置として適正な範囲内にある限りは、作業者の左脚部80がX方向におけるフィードチェン31側にわずかに移動したとしても、フィードチェン31の動作は停止することなく手扱ぎ作業を続行することができる。
【0029】
一方、作業者が手扱ぎ作業中に体勢を崩し、図4(b)のように作業者の左脚部80の位置がX方向におけるフィードチェン31側に大きく移動したことによって、待機位置からの接触部材41の回動角度が所定の閾値未満となった場合には、制御部50からフィードチェン31の動作を停止させる信号が出力される。例えば所定の閾値が75度に設定されている場合、適正な作業位置で手扱ぎ作業を実施しているときは、待機位置からの接触部材41の回動角度が75度以上であるところ、作業者が体勢を崩して接触部材41の回動角度が75度を下回った場合には、制御部50からフィードチェン31の動作停止信号が出力される。これにより、フィードチェン31の動作が自動的に停止する。
【0030】
以上のように本実施形態における脱穀装置1においては、接触部材41が作業者の左脚部80に当接した状態で左脚部80の移動に追従することができ、検知部42によって接触部材41が所定の位置を通過したことを検知することができる。これにより、手扱ぎ作業時に体勢を崩した作業者の安全を担保することが可能となる。加えて、作業者の両足を略同一平面(本実施形態では地面)に置くことができるため、作業姿勢が安定して作業能率を担保することもできる。したがって、本実施形態にかかる脱穀装置1によれば、手扱ぎ作業の作業能率と安全性を両立させることができる。
【0031】
なお、図4に示す例では、使用位置における接触部材41の回動角度は、待機位置を基準として時計回りに90度の位置であったが、脱穀装置1の機体構造によっては、使用位置が図5(a)に示すように90度より大きい角度に設定されることが適切な場合もある。この場合、例えば図5(b)のように待機位置からの接触部材41の回動角度が90度となった場合にフィードチェン31の動作停止信号が出力されてもよい。このように、接触部材41の使用位置やフィードチェン31の動作停止信号を出力するための所定の閾値は適宜変更されるものである。
【0032】
また、図4の例では、接触部材41が作業者の左脚部80に当接していたが、図6に示すように接触部材41が作業者の右脚部81に当接する構成であってもよい。図6の例では、図4の例とは異なり、待機位置にある接触部材41は、当該接触部材41の回動中心に対して前方側(X方向におけるフィードチェン31から離れる側)に位置しており、待機位置から使用位置への回動方向は機体上面視において反時計回りの方向である。図6の例における接触部材41も、図4の例と同様に使用位置から待機位置に回動する方向に付勢力Fが作用するように設けられている。このため、手扱ぎ作業時において、作業者の右脚部81と接触部材41が接触している限りは、接触部材41は作業者の右脚部81に追従して回動するため、作業者の姿勢を検知することができる。
【0033】
図6の例では、制御部50によって待機位置からの接触部材41の回動角度が所定の閾値を超えるか否かの判定が行われ、回動角度が所定の閾値を超えた場合には、フィードチェン31の動作を停止する信号が出力される。このため、作業者が体勢を崩し、図6(b)のように作業者の右脚部81がフィードチェン31側に大きく移動したとしても、フィードチェン31の動作が自動的に停止するため、作業者の安全が担保される。また、図6の例においては、使用位置にある接触部材41が待機位置に戻った際にも制御部50からフィードチェン31の動作停止信号が出力される。このため、例えば作業者の姿勢が崩れ、接触部材41から作業者の右脚部81が外れることによって作業者と接触部材41が非接触となった際には、接触部材41が使用位置から待機位置に回動し、制御部50からフィードチェン31の動作停止信号が出力される。これにより、フィードチェン31の動作が自動的に停止し、作業者の安全が担保される。
【0034】
以上のように、接触部材が接触する作業者の体の部位は左脚部80に限定されない。ただし、フィードチェン31に作業者の腕が挟まれて作業者の姿勢が崩れた場合には、右足が軸足となって作業者の身体がフィードチェン31に引き込まれるため、左脚部80と右脚部81のうち、左脚部80の方が先に適正位置から外れる可能性がある。このため、フィードチェン31に腕が挟まれた作業者の姿勢の崩れをより早期に検知する観点からは、図4の例のように接触部材41は作業者の左側に接触することが好ましい。換言すると、接触部材41の回動中心は、フィードチェン31の設置位置等から想定される作業者の手扱ぎ作業の位置よりも前方側(X方向におけるフィードチェン31から離れる側)に位置していることが好ましい。
【0035】
<第2の実施形態>
図7は、第2の実施形態に係る脱穀装置1の概略構成を示すコンバイン70の左側面図である。図8は、機体フレーム20の左前端部の構造を模式的に示す上面図である。
【0036】
第2の実施形態では、接触部材41、検知部42、および回転支柱43の配置が第1の実施形態と異なっている。第2の実施形態における回転支柱43は、軸方向が機体幅方向(Y方向)となる向きでサイドフレーム20aの左側面に取り付けられており、機体幅方向を回転中心として回転可能に構成されている。接触部材41は、回転支柱43の周方向の面に支持されており、回転支柱43が回転することで接触部材41も回転支柱43の軸方向を回動中心として回動する。第2の実施形態における接触部材41は板状に形成されており、板厚方向が回動方向となる向きに配置されている。検知部42は角度センサ42aであり、角度センサ42aは回転支柱43の先端部(機体10の幅方向外側の端部)に取り付けられている。第1の実施形態と同様に、接触部材41の回動角度は角度センサ42aによって検知することができる。
【0037】
図7に示すように、第2の実施形態における接触部材41の待機位置は水平位置に設定されており、使用位置は、脱穀装置1の左側面視において、待機位置から時計周りに90度回転した位置に設定されている。接触部材41は、第1の実施形態と同様に待機位置から回動した際に、回動した位置から待機位置に向かって回動する方向に付勢されるように構成されている。
【0038】
このような脱穀装置1で手扱ぎ作業を行う際も作業者の姿勢を検知することができる。具体的に説明すると、手扱ぎ作業を開始する際には、まず図9(a)のように接触部材41を使用位置に回動させて、作業者が手扱ぎ作業を行う作業位置に立つ。その際、接触部材41には待機位置に向かって回動する方向への付勢力Fが作用するため、接触部材41は作業者の左脚部80に当接し、作業者の左脚部80の動きに追従する状態にある。そして、作業者が体勢を崩してX方向におけるフィードチェン31側に近づいた際は、図9(b)のように待機位置からの接触部材41の回動角度が小さくなる。その後、待機位置からの接触部材41の回動角度が所定の閾値未満となった場合は、制御部50からフィードチェン31の動作停止信号が出力される。これにより、フィードチェン31の動作が自動的に停止し、作業者の安全が担保される。
【0039】
なお、第2の実施形態における脱穀装置においても、図6のように接触部材が作業者の右脚部に接触する構成であってもよい。
【0040】
ところで、図7図9の例では、待機位置にある接触部材41は、機体幅方向(Y方向)における機体10の外側面10a(図8)よりも外方に突出した状態にある。したがって、脱穀装置1の最大幅寸法抑制の観点からは、図10および図11に示すように、接触部材41を、機体幅方向における機体10の外側面10aよりも内側の領域に位置させるための収納機構44を設けてもよい。図10は、機体フレーム20の左前端部を機体10の前方から見た図であり、図11は、機体フレーム20の左前端部を機体10の左側方から見た図である。各々の図の(a)は接触部材41の収納位置、(b)は接触部材41の待機位置、(c)は接触部材41の使用位置を示している。
【0041】
図10および図11に示す例では、2つの回転支柱43a、43bが設けられている。第1の回転支柱43aは、回転中心がX方向に向くようにサイドフレーム20aの上面に支持され、第2の回転支柱43bは、当該第2の回転支柱43bの軸方向端部が第1の回転支柱43aの外周面に支持されている。接触部材41は、第2の回転支柱43bの外周面に取り付けられている。このように取り付けられた接触部材41は、第1の回転支柱43aの軸方向(X方向)を回動中心Aとして回動可能であると共に、第2の回転支柱43bの軸方向(回動中心Aに垂直な方向)を回動中心Bとして回動可能である。このため、回動中心Aで接触部材41を回動させることで、収納位置にある接触部材41を待機位置まで移動させることができる。さらに、回動中心Bで接触部材41を回動させることで、待機位置にある接触部材41を使用位置まで移動させることができる。
【0042】
第1~第2の実施形態における脱穀装置1の説明は以上の通りである。なお、第1~第2の実施形態では、検知部42として角度センサ42aを用いたが、接触部材41が所定の位置を通過したことを検知することが可能であれば、検知部42は角度センサ42aに限定されない。例えば検知部42としてリミットスイッチを用い、作業者が体勢を崩した際に追従して移動する接触部材41の位置を検知してもよい。すなわち、第1~第2の実施形態で説明した検知機構40の場合、接触部材41の使用位置と待機位置との間において少なくとも一回、接触部材41の位置を検知することが可能な検知機構40であるとよい。
【0043】
また、第1~第2の実施形態では、接触部材41が機体フレーム20に取り付けられていたが、機体フレーム20以外の箇所に取り付けられてもよい。また、接触部材41が作業者に接触する部位は脚部に限定されず、例えば臀部や腰部であってもよい。
【0044】
<第3の実施形態>
図12は、第3の実施形態における、使用位置にある接触部材41の上面図である。図13は、第3の実施形態における接触部材41の取付構造を説明するための機体フレーム20の前面図(機体10を前方から見た図)である。図14は、手扱ぎ作業時の作業者の作業位置を示すコンバイン70の左側面図である。
【0045】
図12に示すように本実施形態における接触部材41は、作業者が接触部材41の上に乗ることが可能なステップであり、矩形の板状に形成されている。接触部材の上面には、作業者に対して特定の範囲内に足を置くことを促すことができるよう2つの目印45が設けられ、目印45は機体10の前後方向(X方向)に沿って間隔をおいて2つ設けられている。
【0046】
本実施形態における検知部42は、例えばロードセルなどの荷重を測定することが可能な荷重センサ42bであり、荷重センサ42bは接触部材41に内蔵されている。荷重センサ42bは、目印45の範囲内に乗った作業者の左足および右足の各々の荷重を測定できるように機体10の前後方向(X方向)に沿って間隔をおいて2つ設けられている。
【0047】
図13に示すように接触部材41は、複数のヒンジ46や平板47を介してサイドフレーム20aに支持されている。本実施形態の場合、待機位置では、機体幅方向(Y方向)における機体10の外側面10aよりも内側の領域に接触部材41が位置している。使用位置では接触部材41が水平状態で固定される。なお、接触部材41の形状や、機体10に対する取付構造は特に限定されず、作業者が接触部材41上に両足で乗ることが可能な形状や取付構造であればよい。
【0048】
制御部50は、各々の荷重センサ42bで測定される荷重値を比較し、荷重の差が所定の閾値を超えた場合にフィードチェン31の動作を停止させる制御を行う。なお、所定の閾値は脱穀装置1の構造に応じて適宜設定される。
【0049】
このような構成の脱穀装置1においては、図14に示すように、作業者は接触部材41(ステップ)に乗って手扱ぎ作業を行う。このとき、正常に手扱ぎ作業が実施されている場合には、接触部材41に乗った作業者の姿勢が安定しているため、2つの荷重センサ42bで測定される各々の荷重値は略等しい状態にある。
【0050】
一方、作業者が体勢を崩した場合には、2つの荷重センサ42bで測定される荷重の差が大きくなり、荷重の差が所定の閾値(以下「第1の閾値」)を超えた場合には、制御部50からフィードチェン31の動作停止信号が出力される。なお、X方向においてフィードチェン31から離れる方向に作業者が体勢を崩す場合は、フィードチェン31に巻き込まれることはないため、制御部50においては、少なくとも、X方向におけるフィードチェン31から遠い側(本実施形態では左足側)の荷重センサ42bの荷重値から、X方向におけるフィードチェン31に近い側(本実施形態では右足側)の荷重センサ42bの荷重値を差し引いたときの荷重差が第1の閾値を超えた場合にのみ、フィードチェン31の動作停止信号を出力するようにしてもよい。
【0051】
制御部50からフィードチェン31の動作停止信号が出力されることで、フィードチェン31の動作が自動的に停止する。これにより、体勢を崩した作業者の安全が担保される。また、作業者は、略同一平面(本実施形態では接触部材41)に両足を置いて作業を行うことができるため、作業姿勢が安定し、手扱ぎ作業の作業能率が担保される。したがって、第3の実施形態のような脱穀装置1であっても、手扱ぎ作業における安全性と作業能率を両立させることができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、2つの荷重センサ42bの荷重差に基づいてフィードチェン31の動作停止信号が出力されているが、2つの荷重センサ42bの各々の荷重値がそれぞれ所定の閾値(第2の閾値)未満となった場合においても、フィードチェン31の動作停止信号が出力されるようにしてもよい。作業者が体勢を崩した際には両足の位置がそれぞれ適正位置からずれることもあり、作業者が体勢を崩しても、2つの荷重センサ42bの荷重差が第1の閾値を超えない場合もある。このため、2つの荷重センサ42bで測定される荷重値が両方とも第2の閾値未満となった場合にもフィードチェン31を停止することができれば安全性が向上する。
【0053】
また、本実施形態では、接触部材41が平板47で支持されていたが、例えば図15に示すように、脱穀装置1の前後方向(X方向)に間隔をおいて配置された2つの支持部材48で接触部材41が支持されてもよい。この場合、例えば検知部42としてひずみゲージ42cを各支持部材48に設けることで、接触部材41に乗る作業者の左足または右足の荷重変化を検知することが可能となる。すなわち、2つの検知部42は、接触部材41に設けられることに限定されず、接触部材41に乗る作業者の左足の姿勢を検知可能な位置と、接触部材41に乗る作業者の右足の姿勢を検知可能な位置にそれぞれ配置されているとよい。
【0054】
以上、第1~第3の実施形態について説明したが、手扱ぎ作業を行う作業者の姿勢を検知する構成は上記の第1~第3の実施形態で説明した構成に限定されない。接触部材41が作業者の体の一部に接触し、検知部42によって接触部材41の位置または作業者と接触部材41の接触状態を検知することが可能な構成であれば、手扱ぎ作業中の作業者の姿勢を検知することができる。例えば第1~第2の実施形態においては、接触部材41が作業者の脚部に接触し、角度センサ42aにより接触部材41の水平面内の位置を検知している。また例えば第3の実施形態では、接触部材41が作業者の両足の裏に接触し、荷重センサ42bにより作業者と接触部材41の接触状態を検知している。
【0055】
<第4の実施形態>
図16に示すように第4の実施形態においては、第1~第3の実施形態における接触部材41が設けられておらず、検知機構40が備える検知部42として非接触センサ42dが設けられている。
【0056】
非接触センサ42dは、例えば検知範囲内(図16中の二点鎖線で囲まれる領域内)に物体が存在する場合にON状態となり、制御部50にON信号を出力する機能を有している。当該機能を有した非接触センサ42dであれば、具体的なセンサの種類は特に限定されない。また、非接触センサ42dは、検知範囲が作業者の立ち位置となる機体10の側面から1m程度の範囲となるように配置されることが好ましい。
【0057】
非接触センサ42dは、検知範囲内に手扱ぎ作業時の作業者の適正位置が含まれるようにして機体本体部30の上面部に固定されている。なお、非接触センサ42dの固定位置は、手扱ぎ作業の適正位置が検知範囲内に含まれる位置であれば特に限定されないが、手扱ぎ作業を行う作業者から見て右斜め前方に配置されていることが好ましい。このような配置であれば、手扱ぎ作業中に体勢を崩した作業者が適正位置からX方向におけるフィードチェン31側に移動した際に、非接触センサ42dがON状態からOFF状態に切り替わりやすくなる。これにより、作業者が手扱ぎ作業の適正位置からずれたことを早期に検知することができる。また例えば、非接触センサ42dの取り付け位置は作業者の下半身を検出するような位置であってもよい。ただし、フィードチェン31の下側には収穫作業による藁が積み上げられる場合があることから、非接触センサ42dは作業者の上半身を検出するように配置されることが好ましい。また、作業者が適正位置からずれたことを検知する精度を向上させるためには、非接触センサ42dを複数設け、複数箇所から適正位置にいる作業者を捕捉できるようにすることが好ましい。
【0058】
手扱ぎ作業を行う作業者から見て、左前方にはフィードチェン31を作動させるための開始ボタン49が設けられている。なお、開始ボタン49の設置位置は、手扱ぎ作業の適正位置にいる作業者の手の届く範囲であれば特に限定されない。開始ボタン49は、押下げられることで制御部50にON信号を出力する。制御部50は、非接触センサ42dと開始ボタン49がそれぞれON状態となった場合にフィードチェン31に動作開始信号を出力する。なお、フィードチェン31の動作が開始された後に、作業者が開始ボタン49から手を離しても、非接触センサ42dの出力がOFFに切り替わらない限りフィードチェン31は稼働し続ける。
【0059】
本実施形態における脱穀装置1は以上のように構成されている。この脱穀装置1で手扱ぎ作業を行う場合、まず、作業者は、非接触センサ42dの検知範囲外から開始ボタン49の押下げを行う。この段階では、非接触センサ42dがOFF状態であるため、フィードチェン31は稼働しない。続いて、作業者が藁を持って手扱ぎ作業の作業位置に立つことで、非接触センサ42dにより作業者の存在が検知され、非接触センサ42dがON状態となる。これにより、フィードチェン31が稼働し、手扱ぎ作業を行うことが可能となる。
【0060】
そして、作業者が手扱ぎ作業中に体勢を崩して非接触センサ42dの検知範囲内に作業者が存在しない状態となった際には、非接触センサ42dがONからOFFに切り替わる。これにより、非接触センサ42dのON信号が制御部50に入力されなくなり、このON信号が途絶えたことをトリガーとして制御部50からフィードチェン31の動作を停止させる信号が出力される。その結果、フィードチェン31の動作が自動的に停止する。なお、手扱ぎ作業を再開する際には、作業者が再度開始ボタン49を押し、作業者が非接触センサ42dの検知範囲に入ることによってフィードチェン31が再稼働する。
【0061】
本実施形態で説明したように検知機構40が備える検知部42は、非接触センサ42dであっても、作業者の姿勢を検知することが可能である。すなわち、検知機構40は、前述の第1~第3の実施形態のような、検知部42によって接触部材の位置、または作業者に対する接触部材の接触状態を検知する構成に限定されない。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、稲、麦などの作物の脱穀作業に適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 脱穀装置
10 機体
10a 機体の外側面
20 機体フレーム
20a サイドフレーム
20b クロスフレーム
30 機体本体部
31 フィードチェン
32 挟やく桿
40 検知機構
41 接触部材
42 検知部
42a 角度センサ
42b 荷重センサ
42c ひずみゲージ
42d 非接触センサ
43 回転支柱
43a 第1の回転支柱
43b 第2の回転支柱
44 収納機構
45 目印
46 ヒンジ
47 平板
48 支持部材
49 開始ボタン
50 制御部
70 コンバイン
71 刈取装置
72 操縦席
73 走行部
80 左脚部
81 右脚部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16