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  • 特許-液体散布装置及び作物栽培圃場 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】液体散布装置及び作物栽培圃場
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20240801BHJP
   A01G 17/06 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
A01M7/00 F
A01M7/00 J
A01G17/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022039451
(22)【出願日】2022-03-14
(65)【公開番号】P2023134099
(43)【公開日】2023-09-27
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】岩波 宏
(72)【発明者】
【氏名】花田 俊男
(72)【発明者】
【氏名】守谷 友紀
(72)【発明者】
【氏名】馬場 隆士
【審査官】磯田 真美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0239080(US,A1)
【文献】特開2001-016993(JP,A)
【文献】特開2002-138571(JP,A)
【文献】特開2018-126070(JP,A)
【文献】実開昭54-062979(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0359969(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 9/12
A01G 17/04 - 17/16
A01G 25/00 - 25/16
A01M 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延在し、水平方向に間隔をおいて配置された複数の栽培作物を支える複数の支柱同士の間にかけ渡され、鉛直方向に距離をおいて配置された水平方向に延びる複数の梁線に取り付けられ、液体を噴出するノズルを備える複数のノズルユニットと、
前記支柱または前記梁線のうち少なくともいずれか一方に取り付けられ、前記ノズルに液体を供給する配管と、を備え、
前記複数のノズルは、前記栽培作物に沿って配置され
前記複数のノズルユニットは、水平方向及び鉛直方向に対して、網目状に配置されている、
液体散布装置。
【請求項2】
前記複数のノズルユニットは、千鳥に配置されている、
請求項に記載の液体散布装置。
【請求項3】
前記栽培作物は、カラムナータイプの樹木である、
請求項1または2に記載の液体散布装置。
【請求項4】
前記栽培作物は、主幹を複数に分岐して垂直に誘引したマルチアキシス形、または寝かされた主幹から複数の側枝が垂直に伸びるマルチリーダー形に整枝された樹木である、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の液体散布装置。
【請求項5】
前記ノズルは、水平方向よりも上方に向けて前記液体を噴出する、
請求項1からのうちいずれか1項に記載の液体散布装置。
【請求項6】
前記栽培作物はリンゴである、
請求項1からのうちいずれか1項に記載の液体散布装置。
【請求項7】
前記配管は、水平方向に延びる親管と、水平方向に距離をおいて前記親管に接続され、鉛直方向に延びる複数の枝管と、を備え、
前記親管は、前記複数の梁線のうち、最上部に配置された梁線に沿って設置され、前記枝管に前記複数のノズルが取り付けられている、
請求項1からのうちいずれか1項に記載の液体散布装置。
【請求項8】
鉛直方向に延在し、水平方向に間隔をおいて配置された複数の栽培作物を支える複数の支柱と、
複数の前記支柱同士の間にかけ渡され、鉛直方向に距離をおいて配置された水平方向に延びる複数の梁線と、
請求項1からのうちいずれか1項に記載の液体散布装置と、を備える、
作物栽培圃場。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体散布装置及び作物栽培圃場に関する。
【背景技術】
【0002】
栽培作物、例えばリンゴを栽培する場合、樹体を小さくするためにわい性台木を用いると、根量も少なく倒れやすくなることから、木の転倒を防ぐために、例えば、列状に植栽されたリンゴ樹の主幹をトレリスで固定する並木植えが一般的に行われている。並木植えされたリンゴには、例えば、雹害等を避けるために樹木全体を覆うネットが設置される。一般に、作物の樹高が高いとネットの展張が困難になる。また、収穫に手間がかかるなどの不都合もある。そこで、樹高を低くした技術として、主幹を横に倒し、倒した主幹から複数の側枝を上方に伸ばし、その側枝をトレリスに固定するマルチリーダー樹形がある。マルチリーダー樹形とすることで樹高を低くできるが、樹高を低くすると、単位面積当たりの収穫量が少なくなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-62094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この問題に対して、複数のトレリスの列間を狭くしてトレリスを密に配置することにより、収穫量の確保はできるが、トレリスの列間を狭くすると、例えば、スピードスプレーヤによる薬剤の散布が困難又は不可能となる。列間の狭いトレリスに誘引された樹木に対して薬剤を散布するために、動力噴霧器を用いることが考えられる。しかし、動力噴霧器を用いる場合、ホースの取り回しが面倒であるという問題がある。さらに、トレリスの上方に設置されたスプリンクラーから薬剤を散布する方法も考えられる。しかし、スプリンクラーを用いた場合でも、密集した樹木を通して全体的に薬剤をいきわたらせるためには、薬剤の散布量が多くなる問題が生じる。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、トレリスに取り付けられて密集した樹木に対して、効率的に薬剤などの液体を散布することができる液体散布装置及び作物栽培圃場を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した液体散布装置は、鉛直方向に延在し、水平方向に間隔をおいて配置された複数の栽培作物を支える複数の支柱同士の間にかけ渡され、鉛直方向に距離をおいて配置された水平方向に延びる複数の梁線に取り付けられ、液体を噴出するノズルを備える複数のノズルユニットと、前記支柱または前記梁線のうち少なくともいずれか一方に取り付けられ、前記ノズルに液体を供給する配管と、を備え、前記複数のノズルは、前記栽培作物に沿って配置されているものである。
【0007】
また、前記栽培作物は、カラムナータイプの樹木であるものでもよい。
【0008】
また、前記栽培作物は、主幹を複数に分岐して垂直に誘引したマルチアキシス形、または寝かされた主幹から複数の側枝が垂直に伸びるマルチリーダー形に整枝された樹木であるものでもよい。
【0009】
また、前記複数のノズルは、水平方向及び鉛直方向に対して、網目状に配置されているものでもよい。
【0010】
また、前記複数のノズルは、千鳥に配置されているものでもよい。
【0011】
また、前記ノズルは、水平方向よりも上方に向けて前記液体を噴出するものでもよい。
【0012】
また、前記栽培作物はリンゴであるものでもよい。
【0013】
また、前記配管は、水平方向に延びる親管と、水平方向に距離をおいて前記親管に接続され、鉛直方向に延びる複数の枝管と、を備え、前記親管は、前記複数の梁線のうち、最上部に配置された梁線に沿って設置され、前記枝管に前記複数のノズルが取り付けられているものでもよい。
【0014】
また、上記課題を解決した作物栽培圃場は、鉛直方向に延在し、水平方向に間隔をおいて配置された複数の栽培作物を支える複数の支柱と、複数の前記支柱同士の間にかけ渡され、鉛直方向に距離をおいて配置された水平方向に延びる複数の梁線と、上記のいずれかの液体散布装置を備えるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る液体散布装置によれば、トレリスに取り付けられて密集した樹木に対して、効率的に薬剤を散布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態の作物栽培圃場Hの一例を示す斜視図である。
図2】実施形態の薬剤散布装置1とトレリス30の位置関係の一例を説明する図である。
図3】枝管12に取り付けられたノズルユニット20を示す図である。
図4】ノズルユニット20の一例を示す図である。
図5】複数のノズルユニット20が薬液Lを噴出する方向の一例を示す図である。
図6】変形例の薬剤散布装置とトレリス30の位置関係の一例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る薬剤散布装置及び作物栽培圃場を、図面に参照して説明する。図1は、実施形態の作物栽培圃場Hの一例を示す斜視図である。実施形態の作物栽培圃場Hは、例えば、薬剤散布装置1と、トレリス30と、を備える。トレリス30は、複数の栽培作物である樹木T1を支えている。薬剤散布装置1は、トレリス30に設けられている。薬剤散布装置1が設けられたトレリス30は、例えば、作物栽培圃場Hにおいて複数列設けられており、図1にはその1列分を示している。薬剤散布装置1は、液体散布装置の一例である。
【0018】
薬剤散布装置1は、例えば、配管10と、複数のノズルユニット20と、を備える。配管10は、例えば、1本の親管(本管)11と、複数本の枝管(支管)12と、を備える。薬剤は、液体の一例であり、薬剤散布装置1は、液体散布装置の一例である。トレリス30は、例えば、複数の支柱31と、複数の鋼線32と、を備える。以下、作物栽培圃場Hについて、まず、トレリス30の構成について説明し、続いて、ここで、薬剤散布装置1について説明する。
【0019】
図2は、実施形態の薬剤散布装置1とトレリス30の位置関係の一例を説明する図である。トレリス30における支柱31は、圃場に立設された棒状の部材である。支柱31は、鉛直方向に沿って延びている。複数の支柱31同士の間には、複数の鋼線32がかけ渡されている。図2では、支柱31を2本、鋼線32を4本示している。
【0020】
複数の鋼線32は、鉛直方向に距離をおいて配置されている。鋼線32は、梁線の一例である。梁線は、鋼製でなくてもよく、例えば樹脂で形成された線材でもよい。複数の鋼線32は、鉛直方向に間隔をおいて配置されている。例えば、上から1段目の(最上段)の鋼線32は地上から約225cmの高さ位置に配置され、2段目の鋼線32は地上から約185cmの高さ位置に配置される。また、3段目の鋼線32は地上から約120cmの高さ位置に配置され、4段目(最下段)の鋼線32は地上から約50cmの高さ位置に配置される。複数の鋼線32は、例えば等間隔をおいて配置されていてもよい。
【0021】
トレリス30に支えられる樹木T1は、例えば高さ2m程度であり、鉛直方向に延在している。複数の樹木T1の列間は例えば2mである。樹木T1は、例えばリンゴである。樹木T1は、リンゴ以外の果樹でもよいし、果樹以外、例えば花卉の樹木でもよい。樹木T1は、主幹T11及び側枝T12を含むカラムナータイプの樹木である。主幹T11は、鉛直方向に延在する。樹木T1は、カラムナータイプでなくてもよい。カラムナータイプの樹木T1では、主幹T11からは側枝T12が伸びるが、カラムナータイプではない樹木では、側枝からさらに小さな枝が伸びる場合もある。
【0022】
複数の樹木T1は、水平方向に略等間隔をおいて並木植えされている。複数の樹木T1は、異なる間隔をおいて配置されていてもよい。樹木T1は、複数の鋼線32とそれぞれ交差する。樹木T1と鋼線32が交差する位置には、樹木T1を鋼線32に結束する結束バンド40(図1参照)が設けられている。結束バンド40が、樹木T1を鋼線32に結束させることにより、樹木T1がトレリス30に支えられている。結束バンド40は、例えば樹脂製テープであるが、結束バンド40はテープ以外のもの、例えばゴムや紐でもよい。結束バンド40は、樹木T1を鋼線32に結束させる際に、密着させる必要なく、ゆるみを持った状態で結束させればよい。
【0023】
配管10における親管11は、トレリス30における複数の鋼線32のうち、最上部に配置された鋼線32に縛り付けられている。親管11は、鋼線32に沿って設置されている。親管11には複数の枝管12が接続されている。枝管12は、水平方向に略等間隔で離間して親管11に接続されている。親管11には、不図示のポンプが接続されており、ポンプから供給された薬剤が流通する。枝管12は、親管11に連通しており、親管11に流通する薬剤は、枝管12に流入する。こうして、薬剤は、親管11から枝管12に供給される。
【0024】
親管11に沿って並べられた複数の枝管12のうち、親管11の右端部から数えて奇数番目の列(以下、奇数列)に並べられた枝管12における複数の鋼線32との交点は、それぞれノズルユニット20が取り付けられている。また、親管11に沿って並べられた複数の枝管12のうち、偶数番目の列(以下、偶数列)に並べられた枝管12における複数の鋼線32の交点よりも下方位置には、それぞれノズルユニット20が取り付けられている。このように、複数のノズルユニット20は、水平方向及び鉛直方向に対して網目状であり、千鳥に配置されている。
【0025】
図3は、枝管12に取り付けられたノズルユニット20を示す図である。複数の枝管12同士の間の距離は、複数の樹木T1同士の間の距離と略同一である。複数の枝管12同士の間の距離は、同一でなく、不均一でもよい。複数の枝管12のうち、1つの枝管12は、1つの樹木T1に沿って配置されている。ここでは、ノズルユニット20は、枝管12における鋼線32との交点に取り付けられている。
【0026】
図4は、ノズルユニット20の一例を示す図である。ノズルユニット20は、例えば、ノズル21と、接続管22と、ジョイント23と、を備える。ノズル21は、枝管12を通じて供給される薬剤である薬液を噴出する。接続管22は、枝管12とノズル21との間に配置された中空の筒体である。接続管22は、例えば樹脂製であり、直線状の管を曲げ加工して製造されている。ジョイント23は、枝管12と接続管22を接続する。ジョイント23は、例えばチューブフィッティングである。枝管12を流通する薬液は、ジョイント23及び接続管22を通じてノズル21に供給される。ジョイント23は、チューブフィッティング以外の継手でもよい。ジョイント23は、例えば、タケノコ式のY字継手でもよい。
【0027】
複数のノズル21は、いずれもトレリス30の表面がなす面に沿って薬液を噴出し、いわば地面と垂直に壁状に薬液を散布する。複数のノズル21は、いずれも水平線よりも上方を向いて配置されている。ノズル21は、薬剤を水平方向よりも上方に向けて噴出する。ノズル21は、水平線に対して約45°の角度をなす方向を向いて設けられている。ノズル21は、例えば、水平線に対して約40°から50°の範囲内の角度をなす方向を向いて設けられるのが好適である。
【0028】
ノズル21は、水平線に対して約45°の角度をなす方向に向けて薬液を噴出する。実施形態では、ノズル21は、水平線に対して右上方又は左上方に約45°の角度をなす方向を向いて設けられているが、その他の角度をもって設けられていてもよく、下方を向いて設けられていてもよい。また、複数のノズル21の向きが上方と下方で変わるよう設けられていてもよい。
【0029】
図5は、複数のノズルユニット20が薬液Lを噴出する方向の一例を示す図である。各枝管12に設けられる複数のノズルユニット20のうち、最上段及び3段目に配置されるノズルユニット20は、左上方45°の方向に薬液Lを噴出し、2段目に配置されるノズルユニット20は、右上方45°の方向に薬液を噴出する。このように、千鳥に配置された複数のノズルユニット20は、薬液を噴出する方向が互い違いに右上方及び左上方と変わるように設けられている。
【0030】
実施形態の薬剤散布装置1は、複数のノズルユニット20を備え、ノズルユニット20におけるノズル21は、トレリス30に支えられる樹木T1に沿って配置されている。このため、スピードスプレーヤを利用することなく薬液を散布することができる。さらに、複数のノズル21から薬液を噴出することにより、トレリス30に支えられる樹木T1に薬液を効率的かつ均等に散布することができる。
【0031】
また、実施形態の薬剤散布装置1では、複数のノズルユニット20が網目状に配置されている。このため、トレリス30の表面に広がっている複数の樹木T1に対して、薬液を均等に散布することができる。また、複数のノズルユニット20は、千鳥に配置されている。このため、ノズルユニット20同士の間を狭くしすぎることなくノズルユニット20を配置することができる。したがって、散布量が過剰にならないようにしながら薬液を散布することができる。
【0032】
また、実施形態の薬剤散布装置1では、ノズルユニット20におけるノズル21が上方を向いて設けられており、薬剤を上方に向けて散布する。このため、樹木T1の葉の裏面に向けて薬剤を散布することができるので、例えば、樹木の葉の裏側に多く存在する害虫の駆除などを好適に行うことができる。
【0033】
また、実施形態の薬剤散布装置1において、千鳥に配置されたノズルユニット20は、薬液を噴出する方向が互い違いに右上方及び左上方と変わるように設けられている。このため、トレリス30に支えられる複数の樹木T1に対して、均等に薬剤を散布することができるので、樹木T1の全体に対してムラが少ない状態で薬剤を散布することができる。
【0034】
また、実施形態の作物栽培圃場Hでは、複数のトレリス30が密集した状態で設けられるので、トレリス30に支えられる樹木T1で栽培される作物、例えばリンゴの単位面積当たりの収穫量を多くすることができる。また、複数のトレリス30を密集した状態で設けると、スピードスプレーヤが各トレリス30の近傍まで移動することができず、スピードスプレーヤにより薬剤の散布が困難となる。この点、実施形態の作物栽培圃場Hでは、トレリス30に薬剤散布装置1が設けられている。このため、スピードスプレーヤが入れないような場所であっても薬剤を散布することができる。
【0035】
上記の実施形態においては、複数のカラムナータイプの樹木T1が、主幹T11が鉛直方向に沿って延在する状態で水平方向に並木植えされているが、樹木は、主幹を複数に分岐して垂直に誘引したマルチアキシス形、または寝かされた主幹から複数の側枝が垂直に伸びるマルチリーダー形に整枝されたものであってもよい。以下に、変形例として、マルチリーダー形の樹木がトレリス30によって支えられる例について説明する。図6は、変形例の薬剤散布装置1とトレリス30の位置関係の一例を説明する図である。
【0036】
変形例の作物栽培圃場Hに設置されるトレリス30は、マルチリーダー形の樹木T2を支えている。樹木T2は、寝かされた主幹T21から複数の側枝T22が伸びるマルチリーダー形をなしている。寝かされた主幹T21は、斜めを向いて配置されている。主幹T21は、真横を向いていてもよい。
【0037】
樹木T2は、例えばカラムナータイプであり、複数の側枝T22は、いずれも鉛直方向に沿って延在している。複数の側枝T22同士の間隔は不均一である。薬剤散布装置1における配管10の枝管12は、側枝T22に沿って配置されている。このため、変形例における複数の枝管12は、実施形態における複数の枝管12と異なり、不均一の間隔(同一でない間隔)をもって配置されている。このように、複数の枝管12は、複数の栽培作物の間隔に応じて、均一であってもよいし不均一であってもよく、側枝T22のように、複数の栽培作物の間隔が不均一である場合に、複数の枝管12の間隔も不均一であってもよい。
【0038】
変形例の作物栽培圃場Hにおいて、トレリス30に支えられる樹木T2は、カラムナータイプのマルチリーダー形である。樹木T2がマルチリーダー形であることから、樹幅は狭く、枝葉が均一に広がった樹高が低い側枝T22が密集した状態となっている。この状態のトレリス30が狭い列間で配置されていると、スピードスプレーヤによる薬剤の散布ができなくなり、薬剤の散布が困難となる。
【0039】
この点、変形例の薬剤散布装置1は、側枝T22に沿って配管10の枝管12が配置されており、枝管12にはノズルユニット20におけるノズル21が取り付けられている。このため、樹幅は狭く、枝葉が均一に広がった側枝T22を備えるマルチリーダー形の樹木T2に対して、薬剤を効率的に散布することができる。
【0040】
また、上記の実施形態では、液体散布装置は、薬剤を散布する薬剤散布装置1であるが、液体散布装置は、薬剤以外の液体、例えば水を散布する散水装置でもよい。例えば、液体散布装置で水を噴霧(散布)した場合、果実の表面温度を低下させることにより、果実の日焼けを防止することができたり、水をまくことで芽の霜害を防止できたりすることができる。このような水の散布も、液体散布装置によって効率的に行うことができる。
【0041】
また、上記の実施形態では、栽培作物はリンゴなどの木本である、これに対して、栽培作物は、例えば、木本以外の植物、例えば草本でもよい。草本である栽培作物としては、例えばトマトがある。栽培作物がトマトなどの草本である場合、例えば、鉛直方向に延在する草本の茎がトレリス30に固定されてよい。
【符号の説明】
【0042】
1…薬剤散布装置
10…配管
11…親管
12…枝管
20…ノズルユニット
21…ノズル
22…接続管
23…ジョイント
30…トレリス
31…支柱
32…鋼線
40…結束バンド
H…作物栽培圃場
L…薬液
T1,T2…樹木
T11、T21…主幹
T12,T22…側枝
図1
図2
図3
図4
図5
図6