(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】実行装置及び実行方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20240801BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
H01L21/68 A
H01L21/302 101B
H01L21/302 101G
(21)【出願番号】P 2020151966
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】薄 優斗
(72)【発明者】
【氏名】畑中 貴之
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-526814(JP,A)
【文献】特開2017-183683(JP,A)
【文献】特開2020-059082(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置に設けられた搬送装置に搬送されて、所定の動作を実行する実行装置であって、
円盤形状を有するベース基板と、
前記ベース基板に設けられた、前記所定の動作を実行するための動作装置と、
前記ベース基板に設けられた、前記実行装置に加わる加速度を計測可能な加速度センサと、
前記ベース基板に設けられた、前記加速度センサによって計測される前記加速度が基準範囲内の値になってからの経過時間を計測し、前記加速度が前記基準範囲内の値のまま所定時間経過した場合に、前記実行装置が前記半導体製造装置の載置台に載置されたと判定して、前記所定の動作を前記動作装置に実行させる、演算装置と、を備える、実行装置。
【請求項2】
前記演算装置は、前記経過時間の計測開始から前記所定時間内に前記加速度が前記基準範囲を超えた場合に、前記経過時間の計測を停止、且つ初期状態に戻す、請求項1に記載の実行装置。
【請求項3】
前記加速度センサは、
水平方向に沿った第1方向における第1の加速度を計測可能な第1加速度センサと、
水平方向に沿った前記第1方向と直交する第2方向における第2の加速度を計測可能な第2加速度センサと、を含み、
前記加速度は、前記第1の加速度と前記第2の加速度との合成値である、請求項1又は請求項2に記載の実行装置。
【請求項4】
前記演算装置によって前記動作装置が所定の動作を実行した後に、前記加速度が前記基準範囲を超えた場合には、前記演算装置は、前記実行装置が前記半導体製造装置の載置台から搬出されたと判定して、前記所定の動作を前記動作装置に停止させる、請求項1~3のいずれか一項に記載の実行装置。
【請求項5】
前記基準範囲は-0.005m/s
2から0.005m/s
2の間の範囲である、請求項1~4のいずれか一項に記載の実行装置。
【請求項6】
前記所定時間は60s以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の実行装置。
【請求項7】
前記所定の動作は、静電容量の測定である、請求項1~6のいずれか一項に記載の実行装置。
【請求項8】
半導体製造装置に設けられた搬送装置に搬送される実行装置に、所定の動作を実行させる実行方法であって、
実行装置に加わる加速度を計測し、計測された加速度が基準範囲内の値になってからの経過時間を計測する工程と、
前記経過時間の計測開始から前記加速度が前記基準範囲を超えないまま所定時間経過した場合に、前記実行装置が前記半導体製造装置の載置台に載置されたと判定して、前記所定の動作を実行させる工程と、を備え
、
前記経過時間を計測する工程及び前記所定の動作を実行させる工程は、前記実行装置のベース基板に設けられた演算装置によって実行される、実行方法。
【請求項9】
前記経過時間の計測開始から前記所定時間内に前記加速度が前記基準範囲を超えた場合に、前記経過時間の計測を停止、且つ初期状態に戻す工程をさらに含む、請求項8に記載の実行方法。
【請求項10】
前記加速度は、水平方向に沿った第1方向における第1の加速度と、水平方向に沿った前記第1方向と直交する第2方向における第2の加速度と、の合成値である、請求項8又は請求項9に記載の実行方法。
【請求項11】
前記実行装置が所定の動作を実行した後に、前記加速度が前記基準範囲を超えた場合には、前記実行装置が前記半導体製造装置の載置台から搬出されたと判定して、前記所定の動作を停止させる工程をさらに含む、請求項8~請求項10のいずれか一項に記載の実行方法。
【請求項12】
前記基準範囲は、-0.005m/s
2から0.005m/s
2の間の範囲である、請求項8~請求項11のいずれか一項に記載の実行方法。
【請求項13】
前記所定時間は60s以上である、請求項8~請求項12のいずれか一項に記載の実行方法。
【請求項14】
前記所定の動作は、静電容量の測定である、請求項8~請求項13のいずれか一項に記載の実行方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の例示的実施形態は、実行装置及び実行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、静電容量を測定するという動作を実行する測定器が記載されている。この測定器は、ベース基板、第1センサ、第2センサ、及び、回路基板を備えている。第1センサは、ベース基板上面のエッジに沿って設けられた第1電極を有する。第2センサは、ベース基板底面に固定された第2電極を有する。回路基板は、ベース基板上に搭載されており、第1センサ及び第2センサに接続されている。回路基板は、第1電極及び第2電極に高周波信号を与え、第1電極における電圧振幅から静電容量に応じた第1の測定値を取得し、第2電極における電圧振幅から静電容量に応じた第2の測定値を取得する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、動作装置に自動で所定の動作を実行させる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの例示的実施形態においては、半導体製造装置に設けられた搬送装置に搬送されて、所定の動作を実行する実行装置が提供される。実行装置は、動作装置と、加速度センサと、演算装置とを備える。動作装置は、所定の動作を実行するための装置である。加速度センサは、実行装置に加わる加速度を計測可能である。演算装置は、加速度センサによって計測される加速度に基づいて、所定の動作を動作装置に実行させる。演算装置は、加速度センサによって計測される加速度が閾値以下になってからの経過時間を計測し、加速度が閾値を超えないまま所定時間経過した場合に、実行装置が半導体製造装置の載置台に載置されたと判定して、所定の動作を動作装置に実行させる。
【発明の効果】
【0006】
一つの例示的実施形態に係る実行装置によれば、動作装置に自動で所定の動作を実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図4】一例の測定器を上面側から見て示す平面図である。
【
図5】一例の測定器を底面側から見て示す平面図である。
【
図7】
図6のVII-VII線に沿ってとった断面図である。
【
図9】測定器の回路基板の構成を例示する図である。
【
図10】一例の実行装置の加速度センサを説明するための模式図である。
【
図11】電源制御系の回路の一例を示すブロック図である。
【
図12】実行装置の動作方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態においては、半導体製造装置に設けられた搬送装置に搬送されて、所定の動作を実行する実行装置が提供される。実行装置は、動作装置と、加速度センサと、演算装置とを備える。動作装置は、所定の動作を実行するための装置である。加速度センサは、実行装置に加わる加速度を計測可能である。演算装置は、加速度センサによって計測される加速度が基準範囲内の値になってからの経過時間を計測し、加速度が基準範囲内の値のまま所定時間経過した場合に、実行装置が半導体製造装置の載置台に載置されたと判定して、所定の動作を動作装置に実行させる。
【0010】
上記実施形態の実行装置では、実行装置に設けられた加速度センサによって、実行装置に加わる加速度が検出され得る。例えば、実行装置が半導体製造装置の搬送装置に搬送されている場合、実行装置には速度変化に応じて加速度が加わる。また、実行装置が載置台に載置されている状態では、実行装置が静止しており、実行装置に加速度が加わっていない。演算装置は、搬送装置による移動によって生じる加速度が実行装置に加わっているか否かを判定することができる。加速度が基準範囲を超えない状態、すなわち移動による加速度が実行装置に加わっていない状態で所定時間経過した場合に、演算装置は、実行装置が載置台に載置されたと判断できる。この判断に基づいて、演算装置は所定の動作を動作装置に実行させる。したがって、動作装置に自動で所定の動作を実行させることができる。
【0011】
一つの例示的実施形態において、演算装置は、経過時間の計測開始から所定時間内に加速度が基準範囲を超えた場合に、経過時間の計測を停止、且つ初期状態に戻してもよい。
【0012】
一つの例示的実施形態において、演算装置によって動作装置が所定の動作を実行した後に、加速度が基準範囲を超えた場合には、演算装置は、実行装置が半導体製造装置の載置台から搬出されたと判定して、所定の動作を動作装置に停止させてもよい。
【0013】
別の例示的実施形態においては、半導体製造装置に設けられた搬送装置に搬送される実行装置に、所定の動作を実行させる実行方法が提供される。この方法は、実行装置に加わる加速度を計測し、計測された加速度が基準範囲内の値になってからの経過時間を計測する工程を備える。また、この方法は、経過時間の計測開始から加速度が基準範囲を超えないまま所定時間経過した場合に、実行装置が半導体製造装置の載置台に載置されたと判定して、所定の動作を動作装置に実行させる工程を備える。
【0014】
一つの例示的実施形態において、実行方法は、経過時間の計測開始から所定時間内に加速度が基準範囲を超えた場合に、経過時間の計測を停止、且つ初期状態に戻す工程をさらに含んでもよい。
【0015】
一つの例示的実施形態において、 実行方法は、動作装置が所定の動作を実行した後に、加速度が基準範囲を超えた場合には、実行装置が半導体製造装置の載置台から搬出されたと判定して、所定の動作を動作装置に停止させる工程をさらに含んでもよい。
【0016】
一つの例示的実施形態において、加速度センサは、水平方向に沿った第1方向における第1の加速度を計測可能な第1加速度センサと、水平方向に沿った第1方向と直交する第2方向における第2の加速度を計測可能な第2加速度センサと、を含んでもよい。加速度は、第1の加速度と第2の加速度との合成値であってよい。
【0017】
一つの例示的実施形態において、基準範囲は、-0.005m/s2から0.005m/s2であってもよい。
【0018】
一つの例示的実施形態において、所定時間は60s以上であってもよい。
【0019】
一つの例示的実施形態において、所定の動作は、静電容量の測定であってもよい。
【0020】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0021】
一つの例示的実施形態に係る実行装置は、半導体製造装置S1としての機能を有する処理システム1によって搬送され得る。まず、被加工物を処理するための処理装置、及び、当該処理装置に被処理体を搬送するための搬送装置を有する処理システムについて説明する。
図1は、処理システムを例示する図である。処理システム1は、台2a~2d、容器4a~4d、ローダモジュールLM、アライナAN、ロードロックモジュールLL1,LL2、プロセスモジュールPM1~PM6、トランスファーモジュールTF、及び、制御部MCを備えている。なお、台2a~2dの個数、容器4a~4dの個数、ロードロックモジュールLL1,LL2の個数、及び、プロセスモジュールPM1~PM6の個数は限定されるものではなく、一以上の任意の個数であり得る。
【0022】
台2a~2dは、ローダモジュールLMの一縁に沿って配列されている。容器4a~4dはそれぞれ、台2a~2d上に搭載されている。容器4a~4dの各々は、例えば、FOUP(Front Opening Unified Pod)と称される容器である。容器4a~4dのそれぞれは、被加工物Wを収容するように構成され得る。被加工物Wは、ウエハのように略円盤形状を有する。
【0023】
ローダモジュールLMは、大気圧状態の搬送空間をその内部に画成するチャンバ壁を有している。この搬送空間内には搬送装置TU1が設けられている。搬送装置TU1は、例えば、多関節ロボットであり、制御部MCによって制御される。搬送装置TU1は、容器4a~4dとアライナANとの間、アライナANとロードロックモジュールLL1~LL2の間、ロードロックモジュールLL1~LL2と容器4a~4dの間で被加工物Wを搬送するように構成されている。
【0024】
アライナANは、ローダモジュールLMと接続されている。アライナANは、被加工物Wの位置の調整(位置の較正)を行うように構成されている。
図2は、アライナを例示する斜視図である。アライナANは、支持台6T、駆動装置6D、及び、センサ6Sを有している。支持台6Tは、鉛直方向に延びる軸線中心に回転可能な台であり、その上に被加工物Wを支持するように構成されている。支持台6Tは、駆動装置6Dによって回転される。駆動装置6Dは、制御部MCによって制御される。駆動装置6Dからの動力により支持台6Tが回転すると、当該支持台6T上に載置された被加工物Wも回転するようになっている。
【0025】
センサ6Sは、光学センサであり、被加工物Wが回転されている間、被加工物Wのエッジを検出する。センサ6Sは、エッジの検出結果から、基準角度位置に対する被加工物WのノッチWN(或いは、別のマーカー)の角度位置のずれ量、及び、基準位置に対する被加工物Wの中心位置のずれ量を検出する。センサ6Sは、ノッチWNの角度位置のずれ量及び被加工物Wの中心位置のずれ量を制御部MCに出力する。制御部MCは、ノッチWNの角度位置のずれ量に基づき、ノッチWNの角度位置を基準角度位置に補正するための支持台6Tの回転量を算出する。制御部MCは、この回転量の分だけ支持台6Tを回転させるよう、駆動装置6Dを制御する。これにより、ノッチWNの角度位置を基準角度位置に補正することができる。また、制御部MCは、アライナANから被加工物Wを受け取る際の搬送装置TU1のエンドエフェクタ(end effector)の位置を、被加工物Wの中心位置のずれ量に基づき、制御する。これにより、搬送装置TU1のエンドエフェクタ上の所定位置に被加工物Wの中心位置が一致する。
【0026】
図1に戻り、ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2の各々は、ローダモジュールLMとトランスファーモジュールTFとの間に設けられている。ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2の各々は、予備減圧室を提供している。
【0027】
トランスファーモジュールTFは、ロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2にゲートバルブを介して気密に接続されている。トランスファーモジュールTFは、減圧可能な減圧室を提供している。この減圧室には、搬送装置TU2が設けられている。搬送装置TU2は、例えば、搬送アームTUaを有する多関節ロボットであり、制御部MCによって制御される。搬送装置TU2は、ロードロックモジュールLL1~LL2とプロセスモジュールPM1~PM6との間、及び、プロセスモジュールPM1~PM6のうち任意の二つのプロセスモジュール間において、被加工物Wを搬送するように構成されている。
【0028】
プロセスモジュールPM1~PM6は、トランスファーモジュールTFにゲートバルブを介して気密に接続されている。プロセスモジュールPM1~PM6の各々は、被加工物Wに対してプラズマ処理といった専用の処理を行うよう構成された処理装置である。
【0029】
この処理システム1において被加工物Wの処理が行われる際の一連の動作は以下の通り例示される。ローダモジュールLMの搬送装置TU1が、容器4a~4dの何れかから被加工物Wを取り出し、当該被加工物WをアライナANに搬送する。次いで、搬送装置TU1は、その位置が調整された被加工物WをアライナANから取り出して、当該被加工物WをロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2のうち一方のロードロックモジュールに搬送する。次いで、一方のロードロックモジュールが、予備減圧室の圧力を所定の圧力に減圧する。次いで、トランスファーモジュールTFの搬送装置TU2が、一方のロードロックモジュールから被加工物Wを取り出し、当該被加工物WをプロセスモジュールPM1~PM6のうち何れかに搬送する。そして、プロセスモジュールPM1~PM6のうち一以上のプロセスモジュールが被加工物Wを処理する。そして、搬送装置TU2が、処理後の被加工物WをプロセスモジュールからロードロックモジュールLL1及びロードロックモジュールLL2のうち一方のロードロックモジュールに搬送する。次いで、搬送装置TU1が被加工物Wを一方のロードロックモジュールから容器4a~4dの何れかに搬送する。
【0030】
この処理システム1は、上述したように制御部MCを備えている。制御部MCは、プロセッサ、メモリといった記憶装置、表示装置、入出力装置、通信装置等を備えるコンピュータであり得る。上述した処理システム1の一連の動作は、記憶装置に記憶されたプログラムに従った制御部MCによる処理システム1の各部の制御により、実現されるようになっている。
【0031】
図3は、プロセスモジュールPM1~PM6の何れかとして採用され得るプラズマ処理装置の一例を示す図である。
図3に示すプラズマ処理装置10は、容量結合型プラズマエッチング装置である。プラズマ処理装置10は、略円筒形状のチャンバ本体12を備えている。チャンバ本体12は、例えば、アルミニウムから形成されており、その内壁面には、陽極酸化処理が施され得る。このチャンバ本体12は保安接地されている。
【0032】
チャンバ本体12の底部上には、略円筒形状の支持部14が設けられている。支持部14は、例えば、絶縁材料から構成されている。支持部14は、チャンバ本体12内に設けられており、チャンバ本体12の底部から上方に延在している。また、チャンバ本体12によって提供されるチャンバS内には、ステージSTが設けられている。ステージSTは、支持部14によって支持されている。
【0033】
ステージSTは、下部電極LE及び静電チャックESCを有している。下部電極LEは、第1プレート18a及び第2プレート18bを含んでいる。第1プレート18a及び第2プレート18bは、例えばアルミニウムといった金属から構成されており、略円盤形状をなしている。第2プレート18bは、第1プレート18a上に設けられており、第1プレート18aに電気的に接続されている。
【0034】
第2プレート18b上には、静電チャックESCが設けられている。静電チャックESCは、導電膜である電極を一対の絶縁層又は絶縁シート間に配置した構造を有しており、略円盤形状を有している。静電チャックESCの電極には、直流電源22がスイッチ23を介して電気的に接続されている。この静電チャックESCは、直流電源22からの直流電圧により生じたクーロン力等の静電力により被加工物Wを吸着する。これにより、静電チャックESCは、被加工物Wを保持することができる。
【0035】
第2プレート18bの周縁部上には、フォーカスリングFRが設けられている。このフォーカスリングFRは、被加工物Wのエッジ及び静電チャックESCを囲むように設けられている。フォーカスリングFRは、第1部分P1及び第2部分P2を有している(
図7参照)。第1部分P1及び第2部分P2は環状板形状を有している。第2部分P2は、第1部分P1よりも外側の部分である。第2部分P2は、第1部分P1よりも高さ方向に大きな厚みを有している。第2部分P2の内縁P2iは第1部分P1の内縁P1iの直径よりも大きい直径を有している。被加工物Wは、そのエッジ領域が、フォーカスリングFRの第1部分P1上に位置するように、静電チャックESC上に載置される。このフォーカスリングFRは、シリコン、炭化ケイ素、酸化シリコンといった種々の材料のうち何れかから形成され得る。
【0036】
第2プレート18bの内部には、冷媒流路24が設けられている。冷媒流路24は、温調機構を構成している。冷媒流路24には、チャンバ本体12の外部に設けられたチラーユニットから配管26aを介して冷媒が供給される。冷媒流路24に供給された冷媒は、配管26bを介してチラーユニットに戻される。このように、冷媒流路24とチラーユニットとの間では、冷媒が循環される。この冷媒の温度を制御することにより、静電チャックESCによって支持された被加工物Wの温度が制御される。
【0037】
ステージSTには、当該ステージSTを貫通する複数(例えば、三つ)の貫通孔25が形成されている。複数の貫通孔25は、平面視において静電チャックESCの内側に形成されている。これら、それぞれの貫通孔25には、リフトピン25aが挿入されている。なお、
図3においては、一本のリフトピン25aが挿入された一つの貫通孔25が描かれている。リフトピン25aは、貫通孔25内において上下動可能に設けられている。リフトピン25aの上昇によって、静電チャックESC上に支持された被加工物Wが上昇する。
【0038】
ステージSTには、平面視において静電チャックESCよりも外側の位置に、当該ステージST(下部電極LE)を貫通する複数(例えば、三つ)の貫通孔27が形成されている。これら、それぞれの貫通孔27には、リフトピン27aが挿入されている。なお、
図3においては、一本のリフトピン27aが挿入された一つの貫通孔27が描かれている。リフトピン27aは、貫通孔27内において上下動可能に設けられている。リフトピン27aの上昇によって、第2プレート18b上に支持されたフォーカスリングFRが上昇する。
【0039】
また、プラズマ処理装置10には、ガス供給ライン28が設けられている。ガス供給ライン28は、伝熱ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、静電チャックESCの上面と被加工物Wの裏面との間に供給する。
【0040】
また、プラズマ処理装置10は、上部電極30を備えている。上部電極30は、ステージSTの上方において、当該ステージSTと対向配置されている。上部電極30は、絶縁性遮蔽部材32を介して、チャンバ本体12の上部に支持されている。上部電極30は、天板34及び支持体36を含み得る。天板34はチャンバSに面しており、当該天板34には複数のガス吐出孔34aが設けられている。この天板34は、シリコン又は石英から形成され得る。或いは、天板34は、アルミニウム製の母材の表面に酸化イットリウムといった耐プラズマ性の膜を形成することによって構成され得る。
【0041】
支持体36は、天板34を着脱自在に支持するものであり、例えばアルミニウムといった導電性材料から構成され得る。この支持体36は、水冷構造を有し得る。支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。このガス拡散室36aからは、ガス吐出孔34aに連通する複数のガス通流孔36bが下方に延びている。また、支持体36には、ガス拡散室36aに処理ガスを導くガス導入口36cが形成されており、このガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0042】
ガス供給管38には、バルブ群42及び流量制御器群44を介して、ガスソース群40が接続されている。ガスソース群40は、複数種のガス用の複数のガスソースを含んでいる。バルブ群42は複数のバルブを含んでおり、流量制御器群44はマスフローコントローラといった複数の流量制御器を含んでいる。ガスソース群40の複数のガスソースはそれぞれ、バルブ群42の対応のバルブ及び流量制御器群44の対応の流量制御器を介して、ガス供給管38に接続されている。
【0043】
また、プラズマ処理装置10では、チャンバ本体12の内壁に沿ってデポシールド46が着脱自在に設けられている。デポシールド46は、支持部14の外周にも設けられている。デポシールド46は、チャンバ本体12にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止するものであり、アルミニウム材に酸化イットリウム等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。
【0044】
チャンバ本体12の底部側、且つ、支持部14とチャンバ本体12の側壁との間には排気プレート48が設けられている。排気プレート48は、例えば、アルミニウム材に酸化イットリウム等のセラミックスを被覆することにより構成され得る。排気プレート48には、その板厚方向に貫通する複数の孔が形成されている。この排気プレート48の下方、且つ、チャンバ本体12には、排気口12eが設けられている。排気口12eには、排気管52を介して排気装置50が接続されている。排気装置50は、圧力調整弁及びターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ本体12内の空間を所望の真空度まで減圧することができる。また、チャンバ本体12の側壁には被加工物Wの搬入出口12gが設けられており、この搬入出口12gはゲートバルブ54により開閉可能となっている。
【0045】
また、プラズマ処理装置10は、第1の高周波電源62及び第2の高周波電源64を更に備えている。第1の高周波電源62は、プラズマ生成用の第1の高周波を発生する電源であり、例えば、27~100MHzの周波数を有する高周波を発生する。第1の高周波電源62は、整合器66を介して上部電極30に接続されている。整合器66は、第1の高周波電源62の出力インピーダンスと負荷側(上部電極30側)の入力インピーダンスを整合させるための回路を有している。なお、第1の高周波電源62は、整合器66を介して下部電極LEに接続されていてもよい。
【0046】
第2の高周波電源64は、被加工物Wにイオンを引き込むための第2の高周波を発生する電源であり、例えば、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数の高周波を発生する。第2の高周波電源64は、整合器68を介して下部電極LEに接続されている。整合器68は、第2の高周波電源64の出力インピーダンスと負荷側(下部電極LE側)の入力インピーダンスを整合させるための回路を有している。
【0047】
このプラズマ処理装置10では、複数のガスソースのうち選択された一以上のガスソースからのガスがチャンバSに供給される。また、チャンバSの圧力が排気装置50によって所定の圧力に設定される。さらに、第1の高周波電源62からの第1の高周波によってチャンバS内のガスが励起される。これにより、プラズマが生成される。そして、発生した活性種によって被加工物Wが処理される。なお、必要に応じて、第2の高周波電源64の第2の高周波に基づくバイアスにより、被加工物Wにイオンが引き込まれてもよい。
【0048】
続いて、実行装置について説明する。
図4は、実行装置を上面側から見て示す平面図である。
図5は、実行装置を底面側から見て示す平面図である。一例の実行装置100は、処理システム1の搬送装置による搬送位置を計測する計測器であってよい。図示例の実行装置100は、半導体製造装置S1としての機能を有する処理システム1の搬送装置によって搬送されて、所定の動作として、静電容量の計測を実行する。また、実行装置100は、計測された静電容量に基づいて搬送位置を計測する。
【0049】
図4及び
図5に示す実行装置100は、ベース基板102を備えている。ベース基板102は、例えば、シリコンから形成されており、被加工物Wの形状と同様の形状、即ち略円盤形状を有している。ベース基板102の直径は、被加工物Wの直径と同様の直径であり、例えば、300mmである。実行装置100の形状及び寸法は、このベース基板102の形状及び寸法によって規定される。したがって、実行装置100は、被加工物Wの形状と同様の形状を有し、且つ、被加工物Wの寸法と同様の寸法を有する。また、ベース基板102のエッジには、ノッチ102N(或いは、別のマーカー)が形成されている。
【0050】
ベース基板102には、静電容量測定用の複数の第1センサ104A~104Cが設けられている。複数の第1センサ104A~104Cは、ベース基板102のエッジに沿って、例えば当該エッジの全周において、等間隔に配列されている。具体的には、複数の第1センサ104A~104Cの各々は、ベース基板102の上面側のエッジに沿うように設けられている。複数の第1センサ104A~104Cの各々の前側端面は、ベース基板102の側面に沿っている。
【0051】
また、ベース基板102には、静電容量測定用の複数の第2センサ105A~105Cが設けられている。複数の第2センサ105A~105Cは、ベース基板102のエッジに沿って、例えば当該エッジの全周において、等間隔に配列されている。具体的には、複数の第2センサ105A~105Cの各々は、ベース基板の底面側のエッジに沿うように設けられている。複数の第2センサ105A~105Cの各々のセンサ電極161は、ベース基板102の底面に沿っている。また、第2センサ105A~105Cと第1センサ104A~104Cとは、周方向において60°間隔で交互に配列されている。なお、以下の説明において、第1センサ104A~104C及び第2センサ105A~105Cを総称して静電容量センサとする場合がある。
【0052】
ベース基板102の上面の中央には、回路基板106が設けられている。回路基板106と複数の第1センサ104A~104Cとの間には、互いを電気的に接続するための配線群108A~108Cが設けられている。また、回路基板106と複数の第2センサ105A~105Cとの間には、互いを電気的に接続するための配線群208A~208Cが設けられている。回路基板106、配線群108A~108C、及び配線群208A~208Cは、カバー103によって覆われている。
【0053】
以下、第1センサについて詳細に説明する。
図6は、センサの一例を示す斜視図である。
図7は、
図6のVII-VII線に沿ってとった断面図である。
図6及び
図7に示す第1センサ104は、実行装置100の複数の第1センサ104A~104Cとして利用されるセンサであり、一例では、チップ状の部品として構成されている。なお、以下の説明では、XYZ直交座標系を適宜参照する。X方向は、第1センサ104の前方向を示しており、Y方向は、X方向に直交する一方向であって第1センサ104の幅方向を示しており、Z方向は、X方向及びY方向に直交する方向であって第1センサ104の上方向を示している。
図7には、第1センサ104と共にフォーカスリングFRが示されている。
【0054】
第1センサ104は、電極141、ガード電極142、センサ電極143、基板部144及び絶縁領域147を有している。
【0055】
基板部144は、例えばホウケイ酸ガラスまたは石英から形成されている。基板部144は、上面144a、下面144b、及び前側端面144cを有している。ガード電極142は、基板部144の下面144bの下方に設けられており、X方向及びY方向に延在している。また、電極141は、絶縁領域147を介してガード電極142の下方に設けられており、X方向及びY方向に延在している。絶縁領域147は、例えば、SiO2、SiN、Al2O3、又は、ポリイミドから形成されている。
【0056】
基板部144の前側端面144cは、段状に形成されている。前側端面144cの下側部分144dは、当該前側端面144cの上側部分144uよりもフォーカスリングFRの側に向けて突出している。センサ電極143は、前側端面144cの上側部分144uに沿って延在している。一つの例示的実施形態では、前側端面144cの上側部分144u及び下側部分144dは、それぞれに所定の曲率をもった曲面となっている。即ち、前側端面144cの上側部分144uは、当該上側部分144uの任意の位置で一定の曲率をしており、当該上側部分144uの曲率は、実行装置100の中心軸線AX100と前側端面144cの上側部分144uとの間の距離の逆数である。また、前側端面144cの下側部分144dは、当該下側部分144dの任意の位置で一定の曲率をしており、当該下側部分144dの曲率は、実行装置100の中心軸線AX100と前側端面144cの下側部分144dとの間の距離の逆数である。
【0057】
センサ電極143は、前側端面144cの上側部分144uに沿って設けられている。一つの例示的実施形態では、このセンサ電極143の前面143fも曲面になっている。即ち、センサ電極143の前面143fは、当該前面143fの任意の位置で一定の曲率を有しており、当該曲率は、実行装置100の中心軸線AX100と前面143fとの間の距離の逆数である。
【0058】
この第1センサ104を実行装置100のセンサとして用いる場合には、後述のように電極141が配線181に接続され、ガード電極142が配線182に接続され、センサ電極143が配線183に接続される。
【0059】
第1センサ104においては、センサ電極143が、電極141及びガード電極142によって、第1センサ104の下方に対して遮蔽されている。したがって、この第1センサ104によれば、特定方向、即ち、センサ電極143の前面143fが向いている方向(X方向)に高い指向性をもって静電容量を測定することが可能となる。
【0060】
以下、第2センサについて詳細に説明する。
図8は、
図5の部分拡大図であり、一つの第2センサを示す。第2センサ105は、センサ電極161を有している。センサ電極161のエッジは部分的に円弧形状をなしている。即ち、センサ電極161は、中心軸線AX100を中心とした異なる半径を有する二つの円弧である内縁161a及び外縁161bによって規定される平面形状を有している。複数の第2センサ105A~105Cそれぞれのセンサ電極161における径方向外側の外縁161bは、共通する円上で延在する。また、複数の第2センサ105A~105Cそれぞれのセンサ電極161における径方向内側の内縁161aは、他の共通する円上で延在する。センサ電極161のエッジの一部の曲率は、静電チャックESCのエッジの曲率に一致している。一つの例示的実施形態では、センサ電極161における径方向外側のエッジを形成する外縁161bの曲率が、静電チャックESCのエッジの曲率に一致している。なお、外縁161bの曲率中心、即ち、外縁161bがその上で延在する円の中心は、中心軸線AX100を共有している。
【0061】
一つの例示的実施形態では、第2センサ105は、センサ電極161を囲むガード電極162を更に含んでいる。ガード電極162は、枠状をなしており、センサ電極161をその全周にわたって囲んでいる。ガード電極162とセンサ電極161は、それらの間に絶縁領域164が介在するよう、互いに離間している。また、一つの例示的実施形態では、第2センサ105は、ガード電極162の外側で当該ガード電極162を囲む電極163を更に含んでいる。電極163は、枠状をなしており、ガード電極162をその全周にわたって囲んでいる。ガード電極162と電極163は、それらの間に絶縁領域165が介在するよう互いに離間している。
【0062】
以下、回路基板106の構成について説明する。
図9は、測定器の回路基板の構成を例示する図である。回路基板106は、高周波発振器171、複数のC/V変換回路172A~172C、複数のC/V変換回路272A~272C、A/D変換器173、プロセッサ174、記憶装置175、通信装置176、及び、電源177を有している。一例においては、プロセッサ174、記憶装置175等によって演算装置が構成されている。また、回路基板106は、温度センサ179を有している。温度センサ179は、検出した温度に応じた信号をプロセッサ174に出力する。例えば、温度センサ179は、実行装置100の周囲の環境の温度を取得することができる。
【0063】
複数の第1センサ104A~104Cの各々は、複数の配線群108A~108Cのうち対応の配線群を介して回路基板106に接続されている。また、複数の第1センサ104A~104Cの各々は、対応の配線群に含まれる幾つかの配線を介して、複数のC/V変換回路172A~172Cのうち対応のC/V変換回路に接続されている。複数の第2センサ105A~105Cの各々は、複数の配線群208A~208Cのうち対応の配線群を介して回路基板106に接続されている。また、複数の第2センサ105A~105Cの各々は、対応の配線群に含まれる幾つかの配線を介して、複数のC/V変換回路272A~272Cのうち対応のC/V変換回路に接続されている。以下、第1センサ104A~104Cの各々と同構成の一つの第1センサ104、配線群108A~108Cの各々と同構成の一つの配線群108、C/V変換回路172A~172Cの各々と同構成の一つのC/V変換回路172、について説明する。また、第2センサ105A~105Cの各々と同構成の一つの第2センサ105、配線群208A~208Cの各々と同構成の一つの配線群208、及び、C/V変換回路272A~272Cの各々と同構成のC/V変換回路272について説明する。
【0064】
配線群108は、配線181~183を含んでいる。配線181の一端は、電極141に接続されている。この配線181は、回路基板106のグランドGCに接続されたグランド電位線GLに接続されている。なお、配線181は、グランド電位線GLにスイッチSWGを介して接続されていてもよい。また、配線182の一端は、ガード電極142に接続されており、配線182の他端はC/V変換回路172に接続されている。また、配線183の一端は、センサ電極143に接続されており、配線183の他端はC/V変換回路172に接続されている。
【0065】
配線群208は、配線281~283を含んでいる。配線281の一端は、電極163に接続されている。この配線281は、回路基板106のグランドGCに接続されたグランド電位線GLに接続されている。なお、配線281は、グランド電位線GLにスイッチSWGを介して接続されていてもよい。また、配線282の一端は、ガード電極162に接続されており、配線282の他端はC/V変換回路272に接続されている。また、配線283の一端は、センサ電極161に接続されており、配線283の他端はC/V変換回路272に接続されている。
【0066】
高周波発振器171は、バッテリーといった電源177に接続されており、当該電源177からの電力を受けて高周波信号を発生するよう構成されている。なお、電源177は、プロセッサ174、記憶装置175、及び、通信装置176にも接続されている。高周波発振器171は、複数の出力線を有している。高周波発振器171は、発生した高周波信号を複数の出力線を介して、配線182及び配線183、並びに、配線282及び配線283に与えるようになっている。したがって、高周波発振器171は、第1センサ104のガード電極142及びセンサ電極143に電気的に接続されており、当該高周波発振器171からの高周波信号は、ガード電極142及びセンサ電極143に与えられるようになっている。また、高周波発振器171は、第2センサ105のセンサ電極161及びガード電極162に電気的に接続されており、当該高周波発振器171からの高周波信号は、センサ電極161及びガード電極162に与えられるようになっている。
【0067】
C/V変換回路172の入力には、ガード電極142に接続された配線182、及び、センサ電極143に接続された配線183が接続されている。即ち、C/V変換回路172の入力には、第1センサ104のガード電極142及びセンサ電極143が接続されている。また、C/V変換回路272の入力には、センサ電極161及びガード電極162がそれぞれ接続されている。C/V変換回路172及びC/V変換回路272は、その入力における電位差に応じた振幅を有する電圧信号を生成し、当該電圧信号を出力するよう構成されている。C/V変換回路172は、対応する第1センサ104が形成する静電容量に応じた電圧信号を生成する。すなわち、C/V変換回路172に接続されたセンサ電極の静電容量が大きいほど、当該C/V変換回路172が出力する電圧信号の電圧の大きさは大きくなる。同様に、C/V変換回路272に接続されたセンサ電極の静電容量が大きいほど、当該C/V変換回路272が出力する電圧信号の電圧の大きさは大きくなる。
【0068】
A/D変換器173の入力には、C/V変換回路172及びC/V変換回路272の出力が接続している。また、A/D変換器173は、プロセッサ174に接続している。A/D変換器173は、プロセッサ174からの制御信号によって制御され、C/V変換回路172の出力信号(電圧信号)及びC/V変換回路272の出力信号(電圧信号)を、デジタル値に変換し、検出値としてプロセッサ174に出力する。
【0069】
プロセッサ174には記憶装置175が接続されている。記憶装置175は、揮発性メモリといった記憶装置であり、例えば、測定データを記憶するよう構成されている。また、プロセッサ174には、別の記憶装置178が接続されている。記憶装置178は、不揮発性メモリといった記憶装置であり、例えば、プロセッサ174によって読み込まれて実行されるプログラムが記憶されている。
【0070】
通信装置176は、任意の無線通信規格に準拠した通信装置である。例えば、通信装置176は、Bluetooth(登録商標)に準拠している。通信装置176は、記憶装置175に記憶されている測定データを無線送信するように構成されている。
【0071】
プロセッサ174は、上述したプログラムを実行することにより、実行装置100の各部を制御するように構成されている。例えば、プロセッサ174は、ガード電極142、センサ電極143、センサ電極161、及び、ガード電極162に対する高周波発振器171からの高周波信号の供給を制御する。また、プロセッサ174は、記憶装置175に対する電源177からの電力供給、通信装置176に対する電源177からの電力供給等を制御する。さらに、プロセッサ174は、上述したプログラムを実行することにより、A/D変換器173から入力された検出値に基づいて、第1センサ104の測定値及び第2センサ105の測定値を取得する。一実施形態では、A/D変換器173から出力された検出値をXとした場合、プロセッサ174では、測定値が(a・X+b)に比例した値となるように、検出値に基づいて測定値を取得している。ここで、a及びbは回路状態等によって変化する定数である。プロセッサ174は、例えば、測定値が(a・X+b)に比例した値となるような所定の演算式(関数)を有していてよい。
【0072】
以上説明した実行装置100では、実行装置100がフォーカスリングFRによって囲まれた領域に配置されている状態において、複数のセンサ電極143及びガード電極142はフォーカスリングFRの内縁と対面する。これらセンサ電極143の信号とガード電極142の信号との電位差に基づいて生成される測定値は、複数のセンサ電極143それぞれとフォーカスリングFRとの間の距離を反映する静電容量を表している。なお、静電容量Cは、C=εS/dで表される。εはセンサ電極143の前面143fとフォーカスリングFRの内縁との間の媒質の誘電率であり、Sはセンサ電極143の前面143fの面積であり、dはセンサ電極143の前面143fとフォーカスリングFRの内縁との間の距離と見なすことができる。
【0073】
したがって、実行装置100によれば、被加工物Wを模した当該実行装置100とフォーカスリングFRとの相対的な位置関係を反映する測定データが得られる。例えば、実行装置100によって取得される複数の測定値は、センサ電極143の前面143fとフォーカスリングFRの内縁との間の距離が大きくなるほど、小さくなる。したがって、第1センサ104A~104Cの各々のセンサ電極143の静電容量を表す測定値に基づいて、フォーカスリングFRの各径方向における各センサ電極143のずれ量を求めることができる。そして、各径方向における第1センサ104A~104Cの各々のセンサ電極143のずれ量から、実行装置100の搬送位置を求めることができる。
【0074】
また、実行装置100が静電チャックESCに載置されている状態では、複数のセンサ電極161及びガード電極162は静電チャックESCと対面する。上述の通り、静電容量Cは、C=εS/dで表される。εはセンサ電極161と静電チャックESCの電極との間の媒質の誘電率である。dはセンサ電極161と静電チャックESCの電極との間の距離である。Sは平面視においてセンサ電極161と静電チャックESCの電極とが互いに重なり合う面積と見なすことができる。面積Sは、実行装置100と静電チャックESCの電極との相対的な位置関係によって変化する。したがって、実行装置100によれば、被加工物Wを模した当該実行装置100と静電チャックESCとの相対的な位置関係を反映する測定データが得られる。
【0075】
一例では、所定の搬送位置、すなわち静電チャックESCの中心と実行装置100の中心とが一致する静電チャックESC上の位置に実行装置100が搬送された場合、センサ電極161における外縁161bと静電チャックESCのエッジとが一致してもよい。この場合、例えば、実行装置100の搬送位置が所定の搬送位置からずれることにより、センサ電極161が静電チャックESCに対して径方向の外側にずれたときに、面積Sは小さくなる。すなわち、センサ電極161によって測定される静電容量は、所定の搬送位置に実行装置100が搬送された場合の静電容量に比べて小さくなる。したがって、第2センサ105A~105Cの各々のセンサ電極161の静電容量を表す測定値に基づいて、静電チャックESCの各径方向における各センサ電極161のずれ量を求めることができる。そして、各径方向における第2センサ105A~105Cの各々のセンサ電極161のずれ量から、実行装置100の搬送位置を求めることができる。
【0076】
また、回路基板106は、加速度センサ190を有している。加速度センサ190は、実行装置100に加わる加速度を検出することによって、処理システム1内における実行装置100の搬送動作を検出する。一例の加速度センサ190は、少なくとも第1加速度センサ190Xと第2加速度センサ190Yとを含んで構成されている。
【0077】
図10は、実行装置100に設けられた加速度センサ190を説明するための模式図である。
図10では、実行装置100を上側から見た模式的な平面図が示されている。
図10におけるY軸は、実行装置100の中心とノッチ110Nとを通っている。X軸は、Y軸に直交するとともに、実行装置100の中心を通っている。X軸とY軸とは、ベース基板に沿った平面に沿って互いに直交(交差)する軸であってよい。
【0078】
第1加速度センサ190Xは、X軸方向における加速度を検出するように構成され、第2加速度センサ190Yは、Y軸方向における加速度を検出するように構成されている。そのため、実行装置100が水平の状態では、第1加速度センサ190Xによって水平方向に沿った第1方向における加速度が検出可能である。また、第2加速度センサ190Yによって水平方向に沿った第1方向に交差する第2方向における加速度が検出可能である。
【0079】
一例において、第1加速度センサ190Xは、X軸の正方向に加わる加速度が検出されたときに、加速度の大きさに応じた正の検出値を出力し、X軸の負方向に加わる加速度が検出されたときに、加速度の大きさに応じた負の検出値を出力する。また、第2加速度センサ190Yは、Y軸の正方向に加わる加速度が検出されたときに、加速度の大きさに応じた正の検出値を出力し、Y軸の負方向に加わる加速度が検出されたときに、加速度の大きさに応じた負の検出値を出力する。
【0080】
一例の実行装置100では、第1加速度センサ190X及び第2加速度センサ190Yからのそれぞれの検出値がプロセッサ174に入力される。プロセッサ174は、第1加速度センサ190Xの検出値と第2加速度センサ190Yの検出値とを合算(合成)し、合算値(合成値)を導出する。プロセッサ174は、合算値に基づいて、実行装置100が搬送装置によって搬送されているか否かの判定を行うことができる。
【0081】
図10に示すX軸に沿った方向D1,D2に実行装置100が搬送される場合、第2加速度センサ190Yでは実質的に加速度が検出されない。そのため、プロセッサ174は、第1加速度センサ190Xのみの検出値を合算値としてもよい。同様に、
図10に示すY軸に沿った方向D3,D4に実行装置100が搬送される場合には、プロセッサ174は、第2加速度センサ190Yのみの検出値を合算値としてもよい。また、X軸とY軸との両方が正方向である方向D5、及び、X軸とY軸との両方が負方向である方向D6に実行装置が搬送される場合には、検出値がそのまま足し合わされた値を合算値としてもよい。
【0082】
X軸が正方向でありY軸が負方向である方向D7、及び、X軸が負方向でありY軸が正方向である方向D8に実行装置100が搬送される場合、第1加速度センサ190Xの検出値と第2加速度センサ190Yの検出値とでは符号が逆になる。そのため、第1加速度センサ190Xの検出値から第2加速度センサ190Yの検出値を引いた値を合算値としてもよい。なお、第1加速度センサ190Xの検出値と第2加速度センサ190Yの検出値とが合算によって打ち消されなければよいため、第2加速度センサ190Yの検出値から第1加速度センサ190Xの検出値を引いた値を合算値としてもよい。
【0083】
一例として、プロセッサ174に入力される2つの検出値のうちの一方が実質的にゼロである場合に、プロセッサ174は、実行装置100が方向D1,D2,D3,D4に搬送されていると判定して、合算値を算出してもよい。また、プロセッサ174に入力される2つの検出値の符号が同じである場合に、プロセッサ174は、実行装置100が方向D5,D6に搬送されていると判定して、合算値を算出してもよい。また、プロセッサ174に入力される2つの検出値の符号が互いに異なる場合に、プロセッサ174は、実行装置100が方向D7,D8に搬送されていると判定して、合算値を算出してもよい。
【0084】
続いて、実行装置100における、動作制御について説明する。
図11は、電源制御系の回路を示すブロック図である。一例の実行装置100では、加速度センサ190によって計測される加速度に基づいて、センサ出力取得回路(動作装置)195に対する電源177からの電力供給が制御される。センサ出力取得回路195は、静電容量センサからの出力信号を取得するための回路であり、上述の高周波発振器171とC/V変換回路172,272とを含む。C/V変換回路172,272は、増幅回路172a,272a及びフィルタ回路172b,272bを含む。増幅回路172a,272aは、C/V変換回路172,272に入力されたセンサ電極143,161からの信号とガード電極142,162からの信号との電位差を増幅させる。また、フィルタ回路172b,272bは、増幅回路172a,272aから出力される電圧信号のノイズを低減する。一例において、増幅回路172a,272a及びフィルタ回路172b,272bは、いずれもオペアンプを含んでおり、電源177から供給される電力によって動作するようになっている。
【0085】
電源177とセンサ出力取得回路195とは、スイッチ198を介して電気的に互いに接続されている。スイッチ198は、電源177とセンサ出力取得回路195との間の経路を、電気的に接続された状態と電気的に切断された状態とに切り替え可能な機能を有している。スイッチ198が接続された状態では、電源177からセンサ出力取得回路195に対して電力が供給されている。すなわち、スイッチ198が接続された状態では、第1センサ104A~104C及び第2センサ105A~105Cが動作し、静電容量が取得され得る。また、スイッチ198が切断された状態では、電源177からのセンサ出力取得回路195に対する電力供給が停止されている。スイッチ198は、例えばトランジスタのような電子式のスイッチであってもよい。
【0086】
スイッチ198の接続及び切断は、プロセッサ174によって制御されている。一例の実行装置100は、上述の通り、静電チャックESC上に載置された状態で静電容量の計測を行い、搬送位置の計測を実行する。そのため、プロセッサ174は、実行装置100が静電チャックESC上に載置された後にスイッチ198を切断状態から接続状態に制御する。
【0087】
一例のプロセッサ174は、加速度センサ190によって計測される加速度が所定の基準範囲内の値になってからの経過時間を計測する。例えば、プロセッサ174は、内蔵されたタイマによって経過時間を計測してもよい。加速度の基準範囲は、搬送装置TU1,TU2で搬送中の実行装置100に加わる加速度の値が含まれない範囲である。すなわち、基準範囲を超える加速度が検出された場合、実行装置100は搬送装置TU1,TU2によって搬送されていると考えられる。例えば、基準範囲は、プラスの閾値からマイナスの閾値までの範囲として定義され得る。一例として、加速度の基準範囲は、-0.005m/s2から0.005m/s2の間の範囲であってもよい。
【0088】
プロセッサ174は、加速度が正負の閾値を超えないまま所定時間経過した場合、実行装置100が処理システム1の静電チャック(載置台)ESCに載置されたと判定して、電源177とセンサ出力取得回路195との間の配線を電気的に接続された状態に制御する。すなわち、プロセッサ174は、静電容量の取得(所定の動作)を実行装置100に実行させる。例えば、プロセッサ174は、計測される加速度が基準範囲に入ったまま60s以上経過した場合に、スイッチ198が接続されるように制御してもよい。
【0089】
図12は、実行装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図12の例では、処理システム1によって実行装置100が静電チャックESC(載置台)まで搬送され、静電チャックESC上において取得される静電容量に基づいて位置情報を取得する動作が示されている。例えば、処理システム1の搬送装置は、容器4a~4dのいずれかである専用のFOUPに収容された実行装置100を静電チャックESC上に載置し、一定時間経過後に静電チャックESC上から実行装置100をFOUP内に戻すように制御されている。
【0090】
図12の例では、まず、実行装置100によって加速度の計測が開始される(ステップST1)。例えば、実行装置100は、処理システム1に接続された専用のFOUPに収容された状態で起動されてもよい。実行装置100が起動されると、加速度センサ190が動作することにより、加速度センサ190からの信号がプロセッサ174によって取得される。なお、実行装置100が起動されても、初期状態においてはスイッチ198は切断された状態となっている。すなわち、電源177からのセンサ出力取得回路195に対する電力供給は停止されている。ステップST1において、制御部MCは、搬送装置TU1,TU2が実行装置100をFOUP4FからプロセスモジュールPM内の静電チャックESC上まで搬送するように、処理システム1を制御する。
【0091】
続いて、加速度センサ190によって計測される加速度が基準範囲を超えているかが判定される(ステップST2)。実行装置100がFOUP内に載置されている場合、実行装置100の加速度センサ190によって検出される加速度は基準範囲内となっている。一方、実行装置100の搬送が開始されると、加速度センサ190によって基準範囲を超える加速度が計測される。ステップST2では、加速度センサ190による計測値が基準範囲内である場合、搬送装置による搬送が開始されていないと判定され、ステップST2を繰り返す。
【0092】
ステップST2において、加速度センサ190によって計測される加速度が基準範囲を超えていると判定された場合、プロセッサ174のタイマーがリセットされ、加速度が基準範囲内となってからの経過時間を計測するための待機状態となる(ステップST3)。
【0093】
続いて、加速度センサ190によって計測される加速度が基準範囲内になっているかが判定される(ステップST4)。実行装置100が搬送されている状態では加速度が基準範囲を超えるようになっている。そのため、実行装置100が搬送されている間は、ステップST4を繰り返すことになる。一方、搬送が終了し、実行装置100が静電チャックESC上に載置されると、実行装置100に対して搬送による加速度が加わらなくなる。すなわち、ステップST4において、加速度センサ190による計測値が基準範囲内になっていると判定される。
【0094】
加速度が基準範囲内になった場合、プロセッサ174のタイマーが起動され、加速度が基準範囲内になってからの経過時間が計測される(ステップST5)。なお、搬送の状況によっては、実行装置100の搬送中に一時的に実行装置100が静止する等の理由により、実行装置100に加わる加速度が基準範囲内になることが考えられる。この場合、実際には実行装置100が搬送中であるため、実行装置100が静電チャックESCに載置されたと判定されることを避ける必要がある。そこで、経過時間の計測中には、加速度が基準範囲内になっているかが繰り返し判定されている(ステップST6)。これにより、加速度が基準範囲を超えた場合、ステップST3に戻り、タイマーがリセットされる。すなわち、タイマーによる経過時間の計測が停止され、タイマーが初期状態に戻される。
【0095】
ステップST6において、加速度が基準範囲内になっていると判定されると、加速度が基準範囲内になってからの経過時間が設定時間を超えたかが判定される(ステップST7)。経過時間が設定時間を超えていない場合、ステップST6に戻る。経過時間が設定時間を超えた場合、プロセッサ174は、タイマーを終了し(ST8)、静電容量センサを起動する(ST9)。すなわち、プロセッサ174は、スイッチ198を接続状態にして、電源177からセンサ出力取得回路195に対して電力供給する。
【0096】
続いて、上述の方法によって実行装置100の搬送位置の計測が開始され(ステップST10)、静電容量値が計測される(ステップST11)。静電容量が計測されている間、加速度センサ190によって計測される加速度が基準範囲を超えているかが判定される(ST12)。すなわち、搬送装置TU1,TU2によって実行装置100を静電チャックESCからFOUPに搬送する工程が開始されたかが判定される。加速度が基準範囲を超えていると判定された場合、静電容量センサが停止される(ステップST13)。すなわち、スイッチ198が切断され、電源177からのセンサ出力取得回路195に対する電力供給が停止される。そして計測された位置計測の結果を示すデータが、例えば外部のコンピュータに送信され、動作が終了する。
【0097】
以上説明したとおり、一つの例示的実施形態においては、処理システム1に設けられた搬送装置TU1,TU2に搬送されて、所定の動作を実行する実行装置100が提供される。実行装置100は、動作装置である第1センサ104及び第2センサ105と、加速度センサ190と、プロセッサ174とを備える。加速度センサ190は、実行装置100に加わる加速度を計測する。プロセッサ174は、加速度センサ190によって計測される加速度が基準範囲内の値になってからの経過時間を計測する。加速度が基準範囲内の値のまま所定時間経過した場合に、実行装置100は、センサ出力取得回路195に対して電力を供給する。すなわち、第1センサ104及び第2センサ105による静電容量の計測が実行される。
【0098】
上記実行装置100では、加速度センサ190によって、実行装置100に加わる加速度が検出され得る。例えば、実行装置100が処理システム1の搬送装置TU1,TU2に搬送されている場合、実行装置100には速度変化に応じて加速度が加わる。また、実行装置100が静電チャックESCに載置されている状態では、実行装置100が静止しており、実行装置100に加速度が加わっていない。
【0099】
プロセッサ174は、搬送装置TU1,TU2による移動によって生じる加速度が実行装置100に加わっているか否かを判定することができる。加速度が基準範囲を超えない状態、すなわち移動による加速度が実行装置100に加わっていない状態で所定時間経過した場合に、プロセッサ174は、実行装置100が静電チャックESCに載置されたと判断できる。この判断に基づいて、実行装置100は、第1センサ104及び第2センサ105による静電容量の計測を実行する。このように、実行装置100は、自動で所定の動作を実行することができる。
【0100】
第1センサ104及び第2センサ105によって静電容量の計測を実行する場合、センサ出力取得回路195に電力を供給する必要がある。上記実行装置100において、搬送装置TU1,TU2による実行装置100の搬送中には、センサ出力取得回路195に対する電力供給が停止されている。そのため、実行装置100における電力消費を低減することができる。
【0101】
一つの例示的実施形態において、プロセッサ174は、経過時間の計測開始から所定時間内に加速度が基準範囲を超えた場合に、経過時間の計測を停止してもよい。例えば、搬送装置TU1,TU2による実行装置100の搬送中に一時的に搬送が停止した場合、プロセッサ174はタイマーをオンして経過時間の計測を開始する。この場合であっても、搬送が再開された際に、経過時間の計測が停止されるので、静電チャックESC上に実行装置100が搬送されたと誤って判定されることが防止される。
【0102】
一つの例示的実施形態において、第1センサ104及び第2センサ105によって静電容量の計測が実行された後に、加速度が基準範囲を超えた場合には、プロセッサ174は、実行装置100が静電チャックESCから搬出されたと判定する。この場合、第1センサ104及び第2センサ105による静電容量の計測が停止されるように、センサ出力取得回路195への電力供給が停止される。実行装置100の搬出に伴いセンサ出力取得回路195への電力供給が停止されることで、消費電力の増加を抑制できる。
【0103】
一つの例示的実施形態において、加速度センサ190は、第1加速度センサ190Xと第2加速度センサ190Yとを含む。第1加速度センサ190Xは、水平方向に沿った第1方向における第1の加速度を計測する。第2加速度センサ190Yは、水平方向に沿った第1方向と直交する第2方向における第2の加速度を計測する。第1加速度センサ190X及び第2加速度センサ190Yを備えることで、搬送装置TU1,TU2の搬送によって実行装置100に加わる加速度を確実に検出できる。
【0104】
一つの例示的実施形態において、基準範囲は、-0.005m/s2から0.005m/s2の間の範囲であってもよい。この構成では、実行装置100が搬送装置TU1,TU2によって搬送されているか否かを適切に判定できる。
【0105】
一つの例示的実施形態において、ステップST7の設定時間は60s以上であってもよい。例えば、搬送装置TU1,TU2による実行装置100の搬送中に一時的に搬送が停止したとしても、一般的な半導体製造装置では60s経過するよりも前に搬送が再開される。そのため、プロセッサ174が誤ってタイマーをオンしても、静電チャックESC上に実行装置100が搬送されたと誤って判定されることが防止される。なお、処理システム1の搬送装置は、実行装置100を静電チャックESC上に載置した後、上記の設定時間以上の一定時間経過後に静電チャックESC上から実行装置100をFOUP内に戻すように制御されている。
【0106】
一つの例示的実施形態において、実行装置100は、静電容量の測定を実行してもよい。なお、実行装置100は、所定の動作を実行する動作装置として、互いに異なる波長の光を発する複数の光源、実行装置の周囲を撮像する撮像装置等を有していてもよい。すなわち、実行装置100は、
図12におけるステップST8の後に、上記複数の光源に電力の供給を開始してもよいし、上記撮像装置を起動させてもよい。
【0107】
以上、例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。
【0108】
例えば、実行装置100は、X軸とY軸との両方に直交するZ軸方向に加速度を検出する第3加速度センサをさらに含んでもよい。
【0109】
また、加速度センサによって出力される加速度は絶対値で示されてもよい。例えば、第1加速度センサ190Xと第2加速度センサ190Yとの合算値は、第1加速度センサ190Xで計測される加速度と第2加速度センサ190Yで計測される加速度とのベクトルの和の絶対値であってもよい。この場合、加速度の基準範囲は、ゼロからプラスの閾値までの範囲として定義されてもよい。
【0110】
以上の説明から、本開示の種々の実施形態は、説明の目的で本明細書で説明されており、本開示の範囲及び主旨から逸脱することなく種々の変更をなし得ることが、理解されるであろう。したがって、本明細書に開示した種々の実施形態は限定することを意図しておらず、真の範囲と主旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
【符号の説明】
【0111】
100…実行装置、174…プロセッサ(演算装置)、190…加速度センサ、190X…第1加速度センサ、190Y…第2加速度センサ、195…センサ出力取得回路(動作装置)。