(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】シーリング材組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20240801BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20240801BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C09K3/10 D
C09K3/10 Z
C09K3/10 L
C08G18/10
C08G18/42 044
(21)【出願番号】P 2020185113
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100166637
【氏名又は名称】木内 圭
(72)【発明者】
【氏名】神田 彩香
(72)【発明者】
【氏名】高原 英之
(72)【発明者】
【氏名】中松 隼人
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/006473(WO,A1)
【文献】特開昭63-156879(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0339726(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/10
C08G
C09J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアネートとポリオールとを前記ポリオールの水酸基に対して前記ポリイソシアネートのイソシアネート基が過剰になるように反応させることで得られるウレタンプレポリマーと、安息香酸エステルとを含有し、
前記ポリオールが、
該ポリオール100質量部に対して10質量部以上かつ50質量部以下の含有量で数平均分子量2,500以下のポリオールを含
み、
前記安息香酸エステルの数平均分子量が、200以上2,000以下である、シーリング材組成物。
【請求項2】
前記安息香酸エステルの水酸基価が、20.0以下であ
り、
前記安息香酸エステルの含有量が、前記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1.0質量部以上40.0質量部以下であり、
前記安息香酸エステルが、ポリアルキレンエーテルポリオールと安息香酸とのエステルであり、
前記シーリング材組成物が1液型又は2液型である、請求項1に記載のシーリング材組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シーリング材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シーリング材は、建築物等において各種部材間の目地を充填し、水密性や気密性等と確保する目的で幅広く使用されている。ここで、上記部材を塗装する場合、上記部材の表面とともに、目地に充填されたシーリング材の表面も塗装する場合がある。そのため、塗料との密着性(塗料密着性)は、部材(例えば、外壁)だけでなく、シーリング材についても重要となる。このようななか、例えば、特許文献1には、所定のウレタンプレポリマーとポリエチレングリコール安息香酸ジエステルとを含有する一液湿気硬化型シーラント(シーリング材組成物)が塗料密着性に優れることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようななか、本発明者らが特許文献1に記載のシーリング材組成物についてその塗料密着性を評価したところ、昨今要求される水準を必ずしも満たすものではないことが明らかになった。
【0005】
そこで、本発明は、上記実情に鑑みて、塗料密着性に優れるシーリング材組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、安息香酸エステルを配合するとともに、ウレタンプレポリマーとして特定のウレタンプレポリマーを使用することで、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明者らは、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
【0007】
(1) ポリイソシアネートとポリオールとを上記ポリオールの水酸基に対して上記ポリイソシアネートのイソシアネート基が過剰になるように反応させることで得られるウレタンプレポリマーと、安息香酸エステルとを含有し、
上記ポリオールが、数平均分子量2,500以下のポリオールを含む、シーリング材組成物。
(2) 上記安息香酸エステルの水酸基価が、20.0以下である、上記(1)に記載のシーリング材組成物。
(3) 上記安息香酸エステルの数平均分子量が、200以上2,000以下である、上記(1)又は(2)に記載のシーリング材組成物。
(4) 上記安息香酸エステルの含有量が、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1.0質量部以上40.0質量部以下である、上記(1)~(3)のいずれかに記載のシーリング材組成物。
(5) 上記安息香酸エステルが、ポリアルキレンエーテルポリオールと安息香酸とのエステルである、上記(1)~(4)のいずれかに記載のシーリング材組成物。
(6) 1液型又は2液型である、上記(1)~(5)のいずれかに記載のシーリング材組成物。
【発明の効果】
【0008】
以下に示すように、本発明によれば、塗料密着性に優れるシーリング材組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明のシーリング材組成物について説明する。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、各成分は、1種を単独でも用いても、2種以上を併用してもよい。ここで、各成分について2種以上を併用する場合、その成分について含有量とは、特段の断りが無い限り、合計の含有量を指す。
また、本明細書において、硬化後のシーリング材組成物をシーリング材とも言う。
【0010】
本発明のシーリング材組成物(以下、「本発明の組成物」とも言う)は、
ポリイソシアネートとポリオールとを上記ポリオールの水酸基に対して上記ポリイソシアネートのイソシアネート基が過剰になるように反応させることで得られるウレタンプレポリマーと、安息香酸エステルとを含有し、
上記ポリオールが、数平均分子量2,500以下のポリオールを含む、シーリング材組成物である。
【0011】
本発明の組成物はこのような構成をとるため、上述した効果が得られるものと考えられる。その理由は明らかではないが、およそ以下のとおりと推測される。
本発明の組成物に含有される安息香酸エステルは可塑剤として働き、シーリング材を柔軟にし、塗料密着性を向上させるものと考えられる。ここで、安息香酸エステルはベンゼン環を有するため、ブリードアウトし難く(シーリング材中に留まり易く)、上述した塗料密着性を向上させる効果が十分に発現されるものと考えられる。
【0012】
以下、本発明の組成物に含有される各成分について説明する。
なお、本発明の組成物は、硬化剤を含有しない1液型(1液型シーリング材組成物)でも、ウレタンプレポリマーを含有する基剤と硬化剤とからなる2液型(2液型シーリング材組成物)でもどちらでもよいが、塗料密着性及び硬化性がより優れる理由から、2液型シーリング材組成物であることが好ましい。以下、「塗料密着性及び硬化性がより優れる」ことを「本発明の効果等がより優れる」とも言う。
【0013】
[特定ウレタンプレポリマー]
上述のとおり、本発明の組成物は、
ポリイソシアネートとポリオールとを上記ポリオールの水酸基に対して上記ポリイソシアネートのイソシアネート基が過剰になるように反応させることで得られるウレタンプレポリマーであって、
上記ポリオールが、数平均分子量2,500以下のポリオールを含むウレタンプレポリマー(以下、「特定ウレタンプレポリマー」とも言う)を含有する。
【0014】
特定ウレタンプレポリマーは、上述のとおり、ポリイソシアネートとポリオールとを上記ポリオールの水酸基に対して上記ポリイソシアネートのイソシアネート基が過剰になるように反応させることで得られるウレタンプレポリマーであるため、イソシアネート基を末端に有する。
【0015】
〔ポリイソシアネート〕
特定ウレタンプレポリマーの製造に使用されるポリイソシアネートは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI。例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI。例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート)、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような、脂肪族及び/又は脂環式のポリイソシアネート;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート、イソシアヌレート変性ポリイソシアネート、アロファネート変性体が挙げられる。
【0016】
ポリイソシアネートは、本発明の効果等がより優れる理由から、芳香族ポリイソシアネートであることが好ましく、トリレンジイソシアネートであることがより好ましい。
【0017】
〔ポリオール〕
特定ウレタンプレポリマーの製造に使用されるポリオールは、水酸基を2個以上有する化合物である。ポリオールの具体例としては、ポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;(メタ)アクリルポリオール;ポリブタジエンポリオール、水素添加されたポリブタジエンポリオール;低分子多価アルコール類;これらの混合ポリオールが挙げられる。なかでも、本発明の効果等がより優れる理由から、ポリエーテルポリオールが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0018】
ポリエーテルポリオールは、主鎖としてポリエーテルを有し、水酸基を2個以上有する化合物であれば特に制限されない。ポリエーテルとは、エーテル結合を2以上有する基であり、その具体例としては、例えば、構造単位-Ra-O-Rb-を合計して2個以上有する基が挙げられる。ここで、上記構造単位中、RaおよびRbは、それぞれ独立して、炭化水素基を表す。炭化水素基は特に制限されない。例えば、炭素数1~10の直鎖状のアルキレン基が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリオキシエチレンジオール(ポリエチレングリコール)、ポリオキシプロピレンジオール(ポリプロピレングリコール:PPG)、ポリオキシプロピレントリオール、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体のポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、ポリテトラエチレングリコール、ソルビトール系ポリオール等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールは、本発明の効果等がより優れる理由から、ポリオキシアルキレンポリオール(ポリアルキレンエーテルポリオール)であることが好ましく、ポリオキシプロピレンポリオール(ポリプロピレンエーテルポリオール)であることがより好ましい。
【0019】
<特定ポリオール>
特定ウレタンプレポリマーの製造に使用されるポリオールは、数平均分子量(Mn)2,500以下のポリオール(以下、「特定ポリオール」とも言う)を含む。すなわち、特定ウレタンプレポリマーの製造に使用されるポリオールのうち少なくとも一部のポリオールは、そのMnが2,500以下である。ポリオールについては上述のとおりである。
特定ポリオールのMnの下限は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、500以上であることが好ましく、1,000以上であることがより好ましい。
なお、本明細書において、ポリオールの数平均分子量は、水酸基価と平均官能基数とから求めた値であり、具体的には、(56,100/水酸基価)×平均官能基数として求められる。
ここで、水酸基価は、JIS K 1557-1:2007に記載の水酸基価であり、試料1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのmg数である。また、平均官能基数は、1分子のポリオールが有する水酸基の平均の数である。
【0020】
<特定ポリオール以外のポリオール>
特定ウレタンプレポリマーの製造に使用されるポリオールは、特定ポリオール以外のポリオールを含んでいてもよい。すなわち、特定ウレタンプレポリマーの製造に使用されるポリオールはMnが2,500を超えるポリオールを含んでいてもよい。ポリオールについては上述のとおりである。
特定ポリオール以外のポリオールのMnの上限は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、20,000以下であることが好ましく、10,000以下であることがより好ましい。
【0021】
<特定ポリオールが占める割合>
特定ウレタンプレポリマーの製造に使用されるポリオールのうち、特定ポリオールが占める割合は、本発明の効果等がより優れる理由から、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましい。上記割合の上限は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、80質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。
【0022】
〔NCO/OH〕
上述のとおり、特定ウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートとポリオールとを上記ポリオールの水酸基に対して上記ポリイソシアネートのイソシアネート基が過剰になるように反応させることで得られるウレタンプレポリマーである。
ここで、ポリイソシアネートのイソシアネート基とポリオールの水酸基とのモル比(NCO/OH)は、本発明の効果等がより優れる理由から、1.5~2.5であることが好ましい。
【0023】
〔含有量〕
本発明の組成物において、特定ウレタンプレポリマーの含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、シーリング材組成物全体に対して、1~50質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましく、10~20質量%であることがさらに好ましい。
【0024】
本発明の組成物が2液型シーリング材組成物である場合、基剤に対する特定ウレタンプレポリマーの含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、10質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることが特に好ましく、90質量%以上であることが最も好ましい。基剤に対する特定ウレタンプレポリマーの含有量の上限は特に制限されず100質量%である。
【0025】
[安息香酸エステル]
上述のとおり、本発明の組成物は安息香酸エステルを含有する。
安息香酸エステルは安息香酸のエステルであれば特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、ポリオールと安息香酸とのエステルであることが好ましく、ポリエーテルポリオールと安息香酸とのエステルであることがより好ましく、ポリアルキレンエーテルポリオールと安息香酸とのエステルであることがさらに好ましく、ポリエチレンエーテルジオール(ポリオキシエチレンジオール)(ポリエチレングリコール)と安息香酸とのエステルであることが特に好ましい。ポリオールの具体例は、上述した特定ウレタンプレポリマーの製造に使用されるポリオールと同じである。
安息香酸エステルがジオールと安息香酸とのエステルである場合、本発明の効果等がより優れる理由から、ジオールと安息香酸とのジエステルであることが好ましい。
【0026】
〔水酸基価〕
安息香酸エステルの水酸基価は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、20.0以下であることが好ましく、15.0以下であることがより好ましく、10.0以下であることがさらに好ましい。水酸基価の下限は特に制限されず0である。
なお、本明細書において水酸基価とは、JIS K 1557-1:2007に記載の水酸基価であり、試料1g中の水酸基と当量の水酸化カリウムのmg数である。
【0027】
〔分子量〕
安息香酸エステルの数平均分子量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、200以上2,000以下であることが好ましく、300以上1,000以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において、安息香酸エステルの数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)(下記条件)による測定値をもとにした標準ポリスチレン換算値である。
(GPC測定条件)
GPC装置:島津製作所 Prominence
検出器:Shodex RI-104
カラム:TOSOH TSKgel Super HM-NX4
溶媒:テトラヒドロフラン
温度:40℃
流速:0.3mL/分
試料濃度:10mg/mL
【0028】
〔含有量〕
本発明の組成物において、安息香酸エステルの含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、シーリング材組成物全体に対して、0.1~20質量%であることが好ましく、1~10質量%であることがより好ましく、2~8質量%であることがさらに好ましい。
【0029】
本発明の組成物において、安息香酸エステルの含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述した特定ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1.0質量部以上60.0質量部以下であることが好ましく、10.0質量部以上40.0質量部以下であることがより好ましい。
【0030】
[硬化剤]
上述のとおり、本発明の組成物は、本発明の効果等がより優れる理由から、ウレタンプレポリマーを含有する基剤と硬化剤とからなる2液型シーリング材組成物であることが好ましい。
【0031】
上記硬化剤は、ポリオールを含む。
【0032】
〔ポリオール〕
上述のとおり、上記硬化剤はポリオールを含む。
ポリオールの具体例及び好適な態様は、上述した特定ウレタンプレポリマーの製造に使用されるポリオール(特定ポリオール、特定ポリオール以外のポリオール)と同じである。
【0033】
<含有量>
硬化剤剤に対する上記ポリオールの含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、1~90質量%であることが好ましく、5~50質量%であることがより好ましく、10~40質量%であることがさらに好ましく、20~30質量%であることが特に好ましい。
【0034】
また、シーリング材組成物全体に対する上記ポリオールの含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、1~50質量%であることが好ましく、5~30質量%であることがより好ましく、10~20質量%であることがさらに好ましい。
【0035】
〔特定ウレタンプレポリマーとポリオールとの量比〕
本発明の組成物が2液型シーリング材組成物である場合、上述した基剤の特定ウレタンプレポリマーと上述した硬化剤のポリオールとの質量比(ウレタンプレポリマー/ポリオール)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、50~200質量%であることが好ましく、80~120質量%であることがより好ましい。
【0036】
本発明の組成物が2液型シーリング材組成物である場合、上述した基剤の特定ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と上述した硬化剤のポリオールの水酸基とのモル比(イソシアネート基/水酸基)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、0.8~1.3であることが好ましく、0.9~1.2であることがより好ましい。
【0037】
[任意成分]
本発明の組成物は、上述した成分以外の成分(任意成分)を含有していてもよい。
上記任意成分としては、例えば、上述した特定ウレタンプレポリマー以外のウレタンプレポリマー、上述した安息香酸エステル以外の可塑剤、バルーン(中空体)、触媒(硬化触媒)、老化防止剤、酸化防止剤、反応調整剤、充填剤、希釈剤(溶剤)、チクソトロピー剤、増粘剤、分散剤、顔料等が挙げられる。
なお、本発明の組成物が2液型シーリング材組成物である場合、任意成分は、上述した基剤に含まれていても、上述した硬化剤に含まれていても、上述した基剤と上述した硬化剤の両方に含まれていてもよい。
【0038】
〔硬化触媒〕
上述した硬化剤は、本発明の効果等がより優れる理由から、硬化触媒を含むのが好ましいい。
上記硬化触媒としては、例えば、有機金属系触媒が挙げられる。
有機金属系触媒としては、例えば、オクテン酸鉛、オクチル酸鉛のような鉛系触媒;オクチル酸亜鉛のような有機亜鉛化合物;ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズラウレートのような有機スズ化合物;オクチル酸カルシウム、ネオデカン酸カルシウムのような有機カルシウム化合物;有機バリウム化合物;有機ビスマス化合物等が挙げられる。
硬化触媒は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0039】
上記硬化触媒の含有量は、硬化剤全量に対して0.2~5質量%であることが好ましい。
なお、硬化触媒は、硬化剤中に配合してもよいし、基剤と硬化剤の混合時に添加してもよい。
【0040】
〔老化防止剤〕
上記老化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシトルエンアニソール(BHA)、ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
【0041】
〔酸化防止剤〕
上記酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシトルエンアニソール(BHA)、ジフェニルアミン、フェニレンジアミン、亜リン酸トリフェニル等を挙げることができる。
【0042】
〔反応調製剤〕
上記反応調整剤は可使時間と硬化性のバランスを整えるものであり、オクチル酸、ネオデカン酸、ステアリン酸等のカルボン酸が適している。また、カルボン酸と水酸化カルシウムとの当量配合によって得られるカルボン酸のカルシウム塩等を反応調整剤として使用することもできる。配合量は硬化剤全量に対して0.1~2.0質量%が好ましく、0.1~0.5質量%がより好ましい。
【0043】
〔充填剤〕
上記充填剤は充填効果のほかに、シーリング材の硬化物に伸びと強度を付与し、補強効果をもたらす。上記充填剤は特に限定されないが、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化ケイ素、タルク、クレー、生石灰、カオリン、ゼオライト、けいそう土、微粉末シリカ、疎水性シリカ、カーボンブラック等が挙げられる。
上記充填剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を併用して使用することができる。好ましいのは硬化剤および可塑剤との濡れ性の観点から、酸化チタン、疎水性シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウムである。充填剤の含有量は、本発明の効果等がより優れる理由から、上述した特定ウレタンプレポリマー100質量部に対して40~400質量部であることが好ましく、100~300質量部であることがより好ましい。
【0044】
〔希釈剤〕
上記希釈剤(溶剤)としては、例えば、ヘキサン、トルエンのような炭化水素化合物;テトラクロロメタンのようなハロゲン化炭化水素化合物;アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランのようなエーテル;酢酸エチルのようなエステル;ミネラルスピリット等が挙げられる。配合量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、硬化剤全量に対して10質量%以下が好ましく、5.0質量%以下がより好ましい。
【0045】
〔チクソトロピー剤〕
上記チクソトロピー剤は特に限定されないが、合成炭酸カルシウム(沈降性炭酸カルシウム)が好適である。合成炭酸カルシウムとしては、コロイダル炭酸カルシウム等が挙げられる。チクソトロピー剤は、本発明の効果等がより優れる理由から、硬化剤全量に対して、15~60質量%であることが好ましく、25~55質量%であることがより好ましい。
【0046】
〔可塑剤〕
上述した安息香酸エステル以外の可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジラウリルフタレート(DLP)、ジブチルベンジルフタレート(BBP)、ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)、トリオクチルフォスフェート(TOP)、トリス(クロロエチル)フォスフェート(TCEP)、トリス(ジクロロプロピル)フォスフェート(TDCPP)、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。
本発明の組成物が2液型シーリング材組成物である場合、上述した基剤に対する上記可塑剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、1~30質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。
本発明の組成物が2液型シーリング材組成物である場合、上述した硬化剤に対する上記可塑剤の含有量は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、1~50質量%であることが好ましく、2~30質量%であることがより好ましく、3~20質量%であることがさらに好ましい。
【0047】
〔顔料〕
上記顔料は、無機顔料と有機顔料とに大別される。
無機顔料としては、例えば、二酸化チタン、カーボンブラック、酸化亜鉛、群青、ベンガラのような金属酸化物;リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウムの硫化物、これらの塩酸塩またはこれらの硫酸塩等が挙げられる。
有機顔料としては、具体的には、例えば、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等が挙げられる。
【0048】
〔バルーン〕
上記バルーン(中空体)は特に制限されないが、本発明の効果等がより優れる理由から、中空体の外殻が樹脂またはガラス状物質によって構成されているものが好ましい。例えば、中空体の内部に液体を内包させてこれを加熱し、外殻となる樹脂を膨張させ、かつ、内部の液体を気化させて得られる熱膨張性の樹脂中空体が挙げられる。
【0049】
上記樹脂中空体の外殻を構成する樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、(メタ)アクリロニトリル(共)重合体等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらのうち、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデンおよび(メタ)アクリロニトリル(共)重合体からなる群から選択される少なくとも一種であるのが好ましい。
【0050】
上記熱可塑性樹脂としては、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデンのようなハロゲン含有化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリルのようなニトリル化合物;ベンジルアクリレート、ノルボルナンアクリレートのようなアクリレート化合物;メチルメタクリレート、ノルボルナンメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートのようなメタクリレート化合物;スチレン系モノマー;酢酸ビニル;ブタジエン;ビニルピリジン;クロロプレン等の化合物のホモポリマーや、これらの化合物のコポリマー等が挙げられる。
これらのうち、耐候性、耐熱性の観点から、アクリロニトリル共重合体(例えば、アクリロニトリルとメタクリロニトリルとの共重合体、アクリロニトリルとアクリロニトリルと共重合可能なブタジエン、スチレンのようなビニル系モノマーとの共重合体等)、ポリ塩化ビニリデン樹脂が好ましい。
【0051】
上記樹脂中空体に内包される液体としては、例えば、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、ブタン、イソブタン、ヘキサン、石油エーテルのような炭化水素類;塩化メチル、塩化メチレン、ジクロロエチレン、トリクロロエタン、トリクロルエチレンのような塩素化炭化水素が挙げられる。
【0052】
[シーリング材組成物の製造方法]
本発明のシーリング材組成物の製造方法は特に制限されない。
本発明のシーリング材組成物が1液型シーリング材組成物である場合、例えば、上述した各成分を窒素ガス雰囲気下で十分に混合する方法が挙げられる。
また、本発明のシーリング材組成物が2液型シーリング材組成物である場合、例えば、特定ウレタンプレポリマーを含む基剤と、ポリオールを含む硬化剤とを別々に窒素ガス雰囲気下で十分に混合する方法が挙げられる。
【0053】
[用途]
本発明の組成物を適用することができる部材は特に制限されない。例えば、ガラス、プラスチック、ゴム、木材、金属、アスファルト、石、多孔質部材が挙げられる。
本発明の組成物は、特に、外壁(例えば、サイディングボード)等のシーリング材に有用である。
【0054】
[塗料]
シーリング材(硬化後の本発明のシーリング材組成物)に適用することができる塗料は特に制限されないが、具体例としては、アクリルシリコーン系塗料、アクリル系塗料、ウレタン系塗料、アクリルウレタン系塗料、フッ素系塗料等が挙げられる。塗料は水系塗料であることが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により、本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0056】
〔シーリング材組成物の調製〕
下記表1に示される各成分を同表に示される割合(質量部)で混合することで2液型シーリング材組成物(基剤、硬化剤)を調製した。
【0057】
〔塗料密着性の評価〕
長さ150mm×幅70mmのスレート板の幅方向の両端部に、長さ150mm×幅10mmのガイド部材を取り付けた。次いで、これらのガイド部材の間に得られたシーリング材組成物を充填し、20℃で7日間養生し、長さ150mm×幅70mm×高さ3mmのシーリング材(硬化後のシーリング材組成物)を得た。
得られたシーリング材の表面に、下塗り塗料としてエスケー化研社製水性ミラクシーラーエコを80g/m2塗装し、次いで、上塗り塗料としてエスケー化研社製水性弾性セラミシリコン200g/m2を2度塗装し、20℃で7日間養生して、シーリング材の表面に外壁仕上げ用の塗膜が形成された試験片を得た。
得られた試験片について、特開2007-46977号公報の段落[0014]に記載の方法に準じて剥離強度を測定した。そして、以下の基準によって塗料密着性を評価した。結果を表1に示す。○又は◎であれば塗料密着性に優れ、◎であれば塗料密着性により優れると言える。
×:剥離強度が3.0N未満
△:剥離強度が3.0N以上4.0N未満
○:剥離強度が4.0N以上5.0N未満
◎:剥離強度が5.0N以上、又は、リードテープと塗膜との間で剥離、若しくは、塗膜が破壊
【0058】
【0059】
表1中の各成分の詳細は以下のとおりである。
【0060】
・特定ウレタンプレポリマー:下記のとおり合成したウレタンプレポリマー
ポリプロピレンエーテルトリオール(「エクセノール3030」、数平均分子量3,000、AGC社製)50質量部とポリプロピレンエーテルジオール(「エクセノール2020」、数平均分子量2000、AGC社製)20質量部、ポリプロピレンエーテルモノオール(「ニューポールLB-3000」、数平均分子量3,070、三洋化成工業社製)10質量部とを(合計で80質量部)、減圧下で110℃に加熱し、6時間脱水を行った。次いで、脱水後の反応容器内を80℃に加熱し、窒素雰囲気下で、トリレンジイソシアネート(「TDI-80」、三井化学社製)10質量部を攪拌しながら添加し(NCO/OH=2.0)、さらに24時間攪拌混合し、ウレタンプレポリマーを合成した。得られたウレタンプレポリマーのNCO基の含有量は、ウレタンプレポリマー全質量に対して3.0質量%であった。得られたウレタンプレポリマーを特定ウレタンプレポリマーとも言う。
得られたウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートとポリオールとをポリオールの水酸基に対してポリイソシアネートのイソシアネート基が過剰になるように反応させることで得られるウレタンプレポリマーであって、ポリオールが数平均分子量2,500以下のポリオールであるエクセノール2020を含むため、上述した特定ウレタンプレポリマーに該当する。
・比較ウレタンプレポリマー:下記のとおり合成したウレタンプレポリマー
ポリプロピレンエーテルトリオール(「エクセノール3030」、数平均分子量3,000、AGC社製)60質量部を減圧下で110℃に加熱し、6時間脱水した。次いで、脱水後の反応容器内を80℃に加熱し、窒素雰囲気下で、トリレンジイソシアネート(「TDI-80」、三井化学社製)10質量部を攪拌しながら添加し(NCO/OH=2.0)、さらに24時間攪拌混合し、ウレタンプレポリマーを合成した。得られたウレタンプレポリマーを比較ウレタンプレポリマーとも言う。
得られたウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネートとポリオールとをポリオールの水酸基に対してポリイソシアネートのイソシアネート基が過剰になるように反応させることで得られるウレタンプレポリマーであるが、ポリオールが数平均分子量2,500以下のポリオールを含まないため、上述したウレタンプレポリマーに該当しない。
・可塑剤:ジェイ・プラス社製DINA(可塑剤、アジピン酸ジイソノニル)
・PPG:エクセノール3020(PPG、AGC社製)/エクセノール5030(PPG、AGC社製)=65/35(質量比)
・溶剤:昭和インターナショナル社製メルベイユ40(脂肪族炭化水素を含有する混合炭化水素類)
・触媒:日本化学産業社製プキャット10/日本化学産業社製ニッカオクチックス亜鉛8%EH=1.5/1.5(質量比)
・炭酸カルシウム:丸尾カルシウム社製スーパーS(炭酸カルシウム)
・表面処理炭酸カルシウム:丸尾カルシウム社製MS-700(表面処理炭酸カルシウム)
・バルーン:松本油脂社製MFL-100MCA(樹脂中空体)
・安息香酸エステル1:三洋化成社製サンフレックスEB-200(ポリエチレングリコールと安息香酸とのエステル、数平均分子量300、水酸基価10.1)
・安息香酸エステル2:三洋化成社製サンフレックスEB-300(ポリエチレングリコールと安息香酸とのエステル、数平均分子量400、水酸基価5.0)
・安息香酸エステル3:ADEKA社製アデカサイザーPN-6122(ポリエチレングリコールと安息香酸とのエステル、数平均分子量300、水酸基価4.3)
・安息香酸エステル4:ADEKA社製PX-1759(ポリエチレングリコールと安息香酸とのエステル、数平均分子量400、水酸基価13.8)
・安息香酸エステル5:ADEKA社製PX-2427(ポリエチレングリコールと安息香酸とのエステル、数平均分子量700、水酸基価2.3)
・酢酸エステル:三洋化成社製サンフレックスGPA-3000(ポリプロピレングリコールと酢酸とのエステル、数平均分子量3,800、水酸基価0.3)
【0061】
なお、表1中、「ウレタンプレポリマー100質量部に対するエステルの質量部」のウレタンプレポリマーとは、表1中の特定ウレタンプレポリマー又は比較ウレタンプレポリマーを指し、「ウレタンプレポリマー100質量部に対するエステルの質量部」のエステルとは、安息香酸エステル1~5又は酢酸エステルを指す。
【0062】
表1から分かるように、特定ウレタンプレポリマーと安息香酸エステルとを含有する実施例1~8は、いずれも優れた塗料密着性を示した。なかでも、安息香酸エステルの水酸基価が13以下である実施例1~6及び8は、より優れた塗料密着性を示した。
一方、安息香酸エステルの代わりに酢酸エステルを含有する比較例1~3、安息香酸エステルを含有しない比較例4、及び、安息香酸エステルを含有するが特定ウレタンプレポリマーを含有しない(特定ウレタンプレポリマー以外のウレタンプレポリマーを含有する)比較例5は、塗料密着性が不十分であった。