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特許7530824膜厚推定方法、記憶媒体、及び膜厚推定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】膜厚推定方法、記憶媒体、及び膜厚推定装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/06 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
G01B11/06 G
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020215634
(22)【出願日】2020-12-24
(65)【公開番号】P2022101198
(43)【公開日】2022-07-06
【審査請求日】2023-09-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【弁理士】
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】坂口 慶介
(72)【発明者】
【氏名】田所 真任
(72)【発明者】
【氏名】柴 和宏
(72)【発明者】
【氏名】榎本 正志
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-060385(JP,A)
【文献】特開平02-142113(JP,A)
【文献】特開平01-248620(JP,A)
【文献】特開2007-088485(JP,A)
【文献】特開2001-116518(JP,A)
【文献】特開平01-276722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面上に処理液が供給された状態の基板を、当該基板の表面上に前記処理液の膜が形成されるように回転させている回転期間において、前記基板の表面と重なる箇所に向けて光を照射することと、
前記基板の表面を反射した後に前記処理液の膜を介して出射される光と、前記処理液の膜の外表面で反射した光とが合成された反射光を受光することで、前記回転期間における前記反射光の強度の時間変化を示す信号波形を取得することと、
前記信号波形のうちの、前記回転期間内の所定の計測時点と、前記計測時点以前において前記信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形から特徴量を取得することと、
取得した前記特徴量に基づいて、前記計測時点における前記処理液の膜の厚さを算出することと、を含み、
前記特徴量は、前記計測時点から数えて第1番目に現れる極値点での前記信号波形の強度と、前記計測時点での前記信号波形の強度との差分を、前記第1番目の極値点での前記信号波形の強度で除算して得られる値である、膜厚推定方法。
【請求項2】
表面上に処理液が供給された状態の基板を、当該基板の表面上に前記処理液の膜が形成されるように回転させている回転期間において、前記基板の表面と重なる箇所に向けて光を照射することと、
前記基板の表面を反射した後に前記処理液の膜を介して出射される光と、前記処理液の膜の外表面で反射した光とが合成された反射光を受光することで、前記回転期間における前記反射光の強度の時間変化を示す信号波形を取得することと、
前記信号波形のうちの、前記回転期間内の所定の計測時点と、前記計測時点以前において前記信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形から特徴量を取得することと、
取得した前記特徴量に基づいて、前記計測時点における前記処理液の膜の厚さを算出することと、を含み、
前記特徴量は、前記計測時点から数えて第1番目に現れる極値点での前記信号波形の強度に応じた位相と、前記計測時点での前記信号波形の強度に応じた位相との差分である、膜厚推定方法。
【請求項3】
表面上に処理液が供給された状態の基板を、当該基板の表面上に前記処理液の膜が形成されるように回転させている回転期間において、前記基板の表面と重なる箇所に向けて光を照射することと、
前記基板の表面を反射した後に前記処理液の膜を介して出射される光と、前記処理液の膜の外表面で反射した光とが合成された反射光を受光することで、前記回転期間における前記反射光の強度の時間変化を示す信号波形を取得することと、
前記信号波形のうちの、前記回転期間内の所定の計測時点と、前記計測時点以前において前記信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形から特徴量を取得することと、
取得した前記特徴量に基づいて、前記計測時点における前記処理液の膜の厚さを算出することと、を含み、
前記特徴量は、予め設定されたベース強度と、前記計測時点での前記信号波形の強度との差分である、膜厚推定方法。
【請求項4】
表面上に処理液が供給された状態の基板を、当該基板の表面上に前記処理液の膜が形成されるように回転させている回転期間において、前記基板の表面と重なる箇所に向けて光を照射することと、
前記基板の表面を反射した後に前記処理液の膜を介して出射される光と、前記処理液の膜の外表面で反射した光とが合成された反射光を受光することで、前記回転期間における前記反射光の強度の時間変化を示す信号波形を取得することと、
前記信号波形のうちの、前記回転期間内の所定の計測時点と、前記計測時点以前において前記信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形から特徴量を取得することと、
取得した前記特徴量に基づいて、前記計測時点における前記処理液の膜の厚さを算出することと、を含み、
前記特徴量は、予め設定されたベース強度に応じた位相と、前記計測時点での前記信号波形の強度に応じた位相との差分である、膜厚推定方法。
【請求項5】
前記処理液の膜の厚さを算出することは、前記処理液の膜の厚さを推定するために予め構築されたモデル式と、前記特徴量とに基づいて、前記処理液の膜の厚さを算出することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の膜厚推定方法。
【請求項6】
前記モデル式を構築することを更に含み、
前記モデル式を構築することは、
第1テスト用基板を第1回転速度で回転させながら得られた前記信号波形に基づいて、前記特徴量に対応する第1特徴量を取得することと、
前記第1テスト用基板に形成された前記処理液の膜の厚さを示す第1測定値を取得することと、
第2テスト用基板を第2回転速度で回転させながら得られた前記信号波形に基づいて、前記特徴量に対応する第2特徴量を取得することと、
前記第2テスト用基板に形成された前記処理液の膜の厚さを示す第2測定値を取得することと、
前記第1特徴量、前記第2特徴量、前記第1測定値、及び前記第2測定値に基づいて、前記モデル式を生成することとを含む、請求項に記載の膜厚推定方法。
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の膜厚推定方法を膜厚推定装置に実行させるためのプログラムを記憶した、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項8】
表面上に処理液が供給された状態の基板を、当該基板の表面上に前記処理液の膜が形成されるように回転させている回転期間において、前記基板の表面と重なる箇所に向けて光を照射するように構成された投光部と、
前記基板の表面を反射した後に前記処理液の膜を介して出射される光と、前記処理液の膜の外表面で反射した光とが合成された反射光を受光するように構成された受光部と、
前記受光部が受光した前記反射光に基づいて、前記回転期間における前記反射光の強度の時間変化を示す信号波形を取得するように構成された信号取得部と、
前記信号取得部が取得した前記信号波形のうちの、前記回転期間内の所定の計測時点と、前記計測時点以前において前記信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形から特徴量を取得するように構成された特徴量取得部と、
前記特徴量取得部が取得した前記特徴量に基づいて、前記計測時点における前記処理液の膜の厚さを算出するように構成された膜厚算出部と、を備え
前記特徴量取得部は、前記計測時点から数えて第1番目に現れる極値点での前記信号波形の強度と、前記計測時点での前記信号波形の強度との差分を、前記第1番目の極値点での前記信号波形の強度で除算して得られる値を、前記特徴量として取得するように構成されている、膜厚推定装置。
【請求項9】
表面上に処理液が供給された状態の基板を、当該基板の表面上に前記処理液の膜が形成されるように回転させている回転期間において、前記基板の表面と重なる箇所に向けて光を照射するように構成された投光部と、
前記基板の表面を反射した後に前記処理液の膜を介して出射される光と、前記処理液の膜の外表面で反射した光とが合成された反射光を受光するように構成された受光部と、
前記受光部が受光した前記反射光に基づいて、前記回転期間における前記反射光の強度の時間変化を示す信号波形を取得するように構成された信号取得部と、
前記信号取得部が取得した前記信号波形のうちの、前記回転期間内の所定の計測時点と、前記計測時点以前において前記信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形から特徴量を取得するように構成された特徴量取得部と、
前記特徴量取得部が取得した前記特徴量に基づいて、前記計測時点における前記処理液の膜の厚さを算出するように構成された膜厚算出部と、を備え、
前記特徴量取得部は、前記計測時点から数えて第1番目に現れる極値点での前記信号波形の強度に応じた位相と、前記計測時点での前記信号波形の強度に応じた位相との差分を、前記特徴量として取得するように構成されている、膜厚推定装置。
【請求項10】
表面上に処理液が供給された状態の基板を、当該基板の表面上に前記処理液の膜が形成されるように回転させている回転期間において、前記基板の表面と重なる箇所に向けて光を照射するように構成された投光部と、
前記基板の表面を反射した後に前記処理液の膜を介して出射される光と、前記処理液の膜の外表面で反射した光とが合成された反射光を受光するように構成された受光部と、
前記受光部が受光した前記反射光に基づいて、前記回転期間における前記反射光の強度の時間変化を示す信号波形を取得するように構成された信号取得部と、
前記信号取得部が取得した前記信号波形のうちの、前記回転期間内の所定の計測時点と、前記計測時点以前において前記信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形から特徴量を取得するように構成された特徴量取得部と、
前記特徴量取得部が取得した前記特徴量に基づいて、前記計測時点における前記処理液の膜の厚さを算出するように構成された膜厚算出部と、を備え、
前記特徴量取得部は、予め設定されたベース強度と、前記計測時点での前記信号波形の強度との差分を、前記特徴量として取得するように構成されている、膜厚推定装置。
【請求項11】
表面上に処理液が供給された状態の基板を、当該基板の表面上に前記処理液の膜が形成されるように回転させている回転期間において、前記基板の表面と重なる箇所に向けて光を照射するように構成された投光部と、
前記基板の表面を反射した後に前記処理液の膜を介して出射される光と、前記処理液の膜の外表面で反射した光とが合成された反射光を受光するように構成された受光部と、
前記受光部が受光した前記反射光に基づいて、前記回転期間における前記反射光の強度の時間変化を示す信号波形を取得するように構成された信号取得部と、
前記信号取得部が取得した前記信号波形のうちの、前記回転期間内の所定の計測時点と、前記計測時点以前において前記信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形から特徴量を取得するように構成された特徴量取得部と、
前記特徴量取得部が取得した前記特徴量に基づいて、前記計測時点における前記処理液の膜の厚さを算出するように構成された膜厚算出部と、を備え、
前記特徴量取得部は、予め設定されたベース強度に応じた位相と、前記計測時点での前記信号波形の強度に応じた位相との差分を、前記特徴量として取得するように構成されている、膜厚推定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、膜厚推定方法、記憶媒体、及び膜厚推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表面上に膜が形成された基板の半径方向に沿って載置した膜厚測定手段と、膜厚測定手段から出力される測定結果に基づいて、薬液の吐出量、薬液ノズルの往復速度、及び基板回転数を制御する演算制御部とを有する基板処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平1-276722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板からの反射光に基づいて膜厚を精度良く推定することが可能な膜厚推定方法、記憶媒体、及び膜厚推定装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る膜厚推定方法は、表面上に処理液が供給された状態の基板を、当該基板の表面上に処理液の膜が形成されるように回転させている回転期間において、基板の表面と重なる箇所に向けて光を照射することと、基板の表面を反射した後に処理液の膜を介して出射される光と、処理液の膜の外表面で反射した光とが合成された反射光を受光することで、回転期間における反射光の強度の時間変化を示す信号波形を取得することと、信号波形のうちの、回転期間内の所定の計測時点と、計測時点以前において信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形から特徴量を取得することと、取得した特徴量に基づいて、計測時点における処理液の膜の厚さを算出することとを含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、基板からの反射光に基づいて膜厚を精度良く推定することが可能な膜厚推定方法、記憶媒体、及び膜厚推定装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、基板処理システムの一例を示す模式図である。
図2図2は、塗布現像装置の一例を示す模式図である。
図3図3は、液処理ユニット及び計測部の一例を示す模式図である。
図4図4は、計測部からの光の照射位置の一例を示す模式図である。
図5図5(a)及び図5(b)は、膜厚と反射光との関係を説明するための模式図である。
図6図6は、制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
図7図7は、制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図8図8は、基板処理方法の一例を示すフローチャートである。
図9図9は、反射光の強度の時間変化の一例を示すグラフである。
図10図10は、膜厚を推定するためのモデル式の生成方法の一例を示すフローチャートである。
図11図11は、計測部の一例を示す模式図である。
図12図12は、計測部の一例を示す模式図である。
図13図13(a)及び図13(b)は、計測部の一例を示す模式図である。
図14図14は、膜厚推定方法の一例を説明するためのグラフである。
図15図15(a)及び図15(b)は、膜厚推定方法の一例を説明するためのグラフである。
図16図16は、膜厚推定方法の一例を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。
【0009】
一つの例示的実施形態に係る膜厚推定方法は、表面上に処理液が供給された状態の基板を、当該基板の表面上に処理液の膜が形成されるように回転させている回転期間において、基板の表面と重なる箇所に向けて光を照射することと、基板の表面を反射した後に処理液の膜を介して出射される光と、処理液の膜の外表面で反射した光とが合成された反射光を受光することで、回転期間における反射光の強度の時間変化を示す信号波形を取得することと、信号波形のうちの、回転期間内の所定の計測時点と、計測時点以前において信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形から特徴量を取得することと、取得した特徴量に基づいて、計測時点における処理液の膜の厚さを算出することとを含む。
【0010】
この膜厚推定方法では、基板の表面を反射した後に処理液の膜を介して出射される光と、処理液の膜の外表面で反射した光とが合成された反射光の強度の時間変化を示す信号波形が取得される。処理液の膜の厚さに応じて、基板の表面を反射した後に処理液の膜を介して出射される光と、処理液の膜の外表面で反射した光との干渉状態が変化するので、信号波形には、処理液の膜の厚さに関する情報が含まれる。そのため、信号波形のうちの、回転期間内の所定の計測時点と、計測時点以前において信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形から取得される特徴量は、処理液の膜の厚さに相関し得る。その結果、特徴量に基づいて、処理液の膜の厚さを算出することができる。上記膜厚推定方法では、反射光の強度の時間変化から、処理液の膜の厚さを算出しているので、処理液の膜の厚さが変動する場合であっても、処理液の膜の厚さを精度良く推定することが可能となる。
【0011】
処理液の膜の厚さを算出することは、処理液の膜の厚さを推定するために予め構築されたモデル式と、特徴量とに基づいて、処理液の膜の厚さを算出することを含んでもよい。この場合、モデル式に特徴量を当てはめることによって膜厚が算出されるので、膜厚の算出を簡略化することが可能となる。
【0012】
上記膜厚推定方法は、モデル式を構築することを更に含んでもよい。モデル式を構築することは、第1テスト用基板を第1回転速度で回転させながら得られた信号波形に基づいて、特徴量に対応する第1特徴量を取得することと、第1テスト用基板に形成された処理液の膜の厚さを示す第1測定値を取得することと、第2テスト用基板を第2回転速度で回転させながら得られた信号波形に基づいて、特徴量に対応する第2特徴量を取得することと、第2テスト用基板に形成された処理液の膜の厚さを示す第2測定値を取得することと、第1特徴量、第2特徴量、第1測定値、及び第2測定値に基づいて、モデル式を生成することとを含んでもよい。回転速度が異なると、処理液の膜厚の時間変化の傾向、及び測定する時点での処理液の膜の厚さが異なるので、精度良くモデル式を構築することが可能となる。
【0013】
特徴量は、計測時点から数えて第n番目(nは1以上の整数)に現れる極値点の時刻であってもよい。第n番目の極値点の時刻と、計測時点での処理液の膜の厚さとの間には比較的強い相関関係があることが見出された。そのため、処理液を用いた処理を基板に施す際に、第n番目の極値点の時刻を取得することで、処理液の膜の厚さを高精度に推定することができる。
【0014】
特徴量は、信号波形の強度が予め設定されたベース強度に一致する最後の時点から計測時点までの時間であってもよい。ベース強度に一致する最後の時点から計測時点までの時間と、計測時点での処理液の膜の厚さとの間には比較的強い相関関係があることが見出された。そのため、処理液を用いた処理を基板に施す際に、ベース強度に一致する最後の時点から計測時点までの時間を取得することで、処理液の膜の厚さを高精度に推定することができる。
【0015】
特徴量は、計測時点から数えて第1番目に現れる極値点での信号波形の強度と、計測時点での信号波形の強度との差分を、第1番目の極値点での信号波形の強度で除算して得られる値であってもよい。当該値と、計測時点での処理液の膜の厚さとの間には比較的強い相関関係があることが見出された。そのため、処理液を用いた処理を基板に施す際に、計測時点から数えて第1番目に現れる極値点での信号波形の強度と、計測時点での信号波形の強度との差分を、第1番目の極値点での信号波形の強度で除算して得られる値を取得することで、処理液の膜の厚さを高精度に推定することができる。
【0016】
特徴量は、計測時点から数えて第1番目に現れる極値点での信号波形の強度に応じた位相と、計測時点での信号波形の強度に応じた位相との差分であってもよい。当該差分と、計測時点での処理液の膜の厚さとの間には比較的強い相関関係があることが見出された。そのため、処理液を用いた処理を基板に施す際に、計測時点から数えて第1番目に現れる極値点での信号波形の強度に応じた位相と、計測時点での信号波形の強度に応じた位相との差分を取得することで、処理液の膜の厚さを高精度に推定することができる。
【0017】
特徴量は、予め設定されたベース強度と、計測時点での信号波形の強度との差分であってもよい。当該差分と、計測時点での処理液の膜の厚さとの間には比較的強い相関関係があることが見出された。そのため、処理液を用いた処理を基板に施す際に、予め設定されたベース強度と、計測時点での信号波形の強度との差分を取得することで、処理液の膜の厚さを高精度に推定することができる。
【0018】
特徴量は、予め設定されたベース強度に応じた位相と、計測時点での信号波形の強度に応じた位相との差分であってもよい。当該差分と、計測時点での処理液の膜の厚さとの間には比較的強い相関関係があることが見出された。そのため、処理液を用いた処理を基板に施す際に、予め設定されたベース強度に応じた位相と、計測時点での信号波形の強度に応じた位相との差分を取得することで、処理液の膜の厚さを推定することができる。
【0019】
一つの例示的実施形態に係る記憶媒体は、上記の膜厚推定方法を膜厚推定装置に実行させるためのプログラムを記憶した、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。
【0020】
一つの例示的実施形態に係る膜厚推定装置は、表面上に処理液が供給された状態の基板を、当該基板の表面上に処理液の膜が形成されるように回転させている回転期間において、基板の表面と重なる箇所に向けて光を照射するように構成された投光部と、基板の表面を反射した後に処理液の膜を介して出射される光と、処理液の膜の外表面で反射した光とが合成された反射光を受光するように構成された受光部と、受光部が受光した反射光に基づいて、回転期間における反射光の強度の時間変化を示す信号波形を取得するように構成された信号取得部と、信号取得部が取得した信号波形のうちの、回転期間内の所定の計測時点と、計測時点以前において信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形から特徴量を取得するように構成された特徴量取得部と、特徴量取得部が取得した特徴量に基づいて、計測時点における処理液の膜の厚さを算出するように構成された膜厚算出部とを備える。この膜厚推定装置では、上述の膜厚推定方法と同様に、反射光の強度の時間変化から、処理液の膜の厚さを算出しているので、処理液の膜の厚さが変動する場合であっても、処理液の膜の厚さを精度良く推定することが可能となる。
【0021】
以下、図面を参照して、いくつかの実施形態について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
[基板処理システム]
図1に示される基板処理システム1(基板処理装置)は、ワークWに対し、感光性被膜の形成、当該感光性被膜の露光、及び当該感光性被膜の現像を施すシステムである。処理対象のワークWは、例えば基板、あるいは所定の処理が施されることで膜又は回路等が形成された状態の基板である。当該基板は、一例として、シリコンウェハである。ワークW(基板)は、円形であってもよい。ワークWは、ガラス基板、マスク基板、又はFPD(Flat Panel Display)などであってもよい。感光性被膜は、例えばレジスト膜である。
【0023】
図1及び図2に示されるように、基板処理システム1は、塗布現像装置2と、露光装置3と、制御装置100(制御部)とを備える。露光装置3は、ワークW(基板)に形成されたレジスト膜(感光性被膜)を露光する装置である。具体的には、露光装置3は、液浸露光等の方法によりレジスト膜の露光対象部分にエネルギー線を照射する。
【0024】
塗布現像装置2は、露光装置3による露光処理前に、ワークWの表面にレジスト(薬液)を塗布してレジスト膜を形成する処理を行い、露光処理後にレジスト膜の現像処理を行う。塗布現像装置2は、キャリアブロック4と、処理ブロック5と、インタフェースブロック6と、を備える。
【0025】
キャリアブロック4は、塗布現像装置2内へのワークWの導入及び塗布現像装置2内からのワークWの導出を行う。例えばキャリアブロック4は、ワークW用の複数のキャリアCを支持可能であり、受け渡しアームを含む搬送装置A1を内蔵している。キャリアCは、例えば円形の複数枚のワークWを収容する。搬送装置A1は、キャリアCからワークWを取り出して処理ブロック5に渡し、処理ブロック5からワークWを受け取ってキャリアC内に戻す。処理ブロック5は、処理モジュール11,12,13,14を有する。
【0026】
処理モジュール11は、液処理ユニットU1と、熱処理ユニットU2と、これらのユニットにワークWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール11は、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2によりワークWの表面上に下層膜を形成する。下層膜としては、例えばSOC(Spin On Carbon)膜が挙げられる。液処理ユニットU1は、下層膜形成用の処理液をワークW上に塗布する。熱処理ユニットU2は、下層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
【0027】
処理モジュール12は、液処理ユニットU1と、熱処理ユニットU2と、これらのユニットにワークWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール12は、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2により下層膜上にレジスト膜を形成する。液処理ユニットU1は、レジスト膜形成用の処理液を下層膜上に塗布することで、下層膜上に(ワークWの表面上に)当該処理液の膜を形成する。熱処理ユニットU2は、レジスト膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
【0028】
処理モジュール13は、液処理ユニットU1と、熱処理ユニットU2と、これらのユニットにワークWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール13は、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2によりレジスト膜上に上層膜を形成する。液処理ユニットU1は、上層膜形成用の処理液をレジスト膜上に塗布する。熱処理ユニットU2は、上層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
【0029】
処理モジュール14は、液処理ユニットU1と、熱処理ユニットU2と、これらのユニットにワークWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール14は、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2により、露光処理が施されたレジスト膜の現像処理及び現像処理に伴う熱処理を行う。液処理ユニットU1は、露光済みのワークWの表面上に現像液を塗布した後、これをリンス液により洗い流すことで、レジスト膜の現像処理を行う。熱処理ユニットU2は、現像処理に伴う各種熱処理を行う。熱処理の具体例としては、現像前の加熱処理(PEB:Post Exposure Bake)、及び現像後の加熱処理(PB:Post Bake)等が挙げられる。
【0030】
処理ブロック5内におけるキャリアブロック4側には棚ユニットU10が設けられている。棚ユニットU10は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。棚ユニットU10の近傍には昇降アームを含む搬送装置A7が設けられている。搬送装置A7は、棚ユニットU10のセル同士の間でワークWを昇降させる。
【0031】
処理ブロック5内におけるインタフェースブロック6側には棚ユニットU11が設けられている。棚ユニットU11は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。
【0032】
インタフェースブロック6は、露光装置3との間でワークWの受け渡しを行う。例えばインタフェースブロック6は、受け渡しアームを含む搬送装置A8を内蔵しており、露光装置3に接続される。搬送装置A8は、棚ユニットU11に配置されたワークWを露光装置3に渡す。搬送装置A8は、露光装置3からワークWを受け取って棚ユニットU11に戻す。
【0033】
制御装置100は、例えば以下の手順で塗布・現像処理を実行するように塗布現像装置2を制御する。まず制御装置100は、キャリアC内のワークWを棚ユニットU10に搬送するように搬送装置A1を制御し、このワークWを処理モジュール11用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
【0034】
次に制御装置100は、棚ユニットU10のワークWを処理モジュール11内の液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2に搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御装置100は、このワークWの表面上に下層膜を形成するように、液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後制御装置100は、下層膜が形成されたワークWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このワークWを処理モジュール12用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
【0035】
次に制御装置100は、棚ユニットU10のワークWを処理モジュール12内の液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2に搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御装置100は、このワークWの下層膜上にレジスト膜を形成するように液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後制御装置100は、ワークWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このワークWを処理モジュール13用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
【0036】
次に制御装置100は、棚ユニットU10のワークWを処理モジュール13内の各ユニットに搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御装置100は、このワークWのレジスト膜上に上層膜を形成するように液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後制御装置100は、ワークWを棚ユニットU11に搬送するように搬送装置A3を制御する。
【0037】
次に制御装置100は、棚ユニットU11のワークWを露光装置3に送り出すように搬送装置A8を制御する。その後制御装置100は、露光処理が施されたワークWを露光装置3から受け入れて、棚ユニットU11における処理モジュール14用のセルに配置するように搬送装置A8を制御する。
【0038】
次に制御装置100は、棚ユニットU11のワークWを処理モジュール14内の各ユニットに搬送するように搬送装置A3を制御し、このワークWのレジスト膜の現像処理を行うように液処理ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後制御装置100は、ワークWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このワークWをキャリアC内に戻すように搬送装置A7及び搬送装置A1を制御する。以上で1枚のワークWについての塗布現像処理が完了する。制御装置100は、後続の複数のワークWのそれぞれについても、上述と同様に塗布現像処理を実行するように塗布現像装置2を制御する。
【0039】
なお、基板処理装置の具体的な構成は、以上に例示した基板処理システム1の構成に限られない。基板処理装置は、処理液を基板に供給して液処理を行う液処理ユニット、及びこれを制御可能な制御装置を備えていればどのようなものであってもよい。
【0040】
(液処理ユニット)
続いて、図3を参照して、処理モジュール12の液処理ユニットU1の一例について説明する。液処理ユニットU1(液処理部)は、ワークWの表面Waに処理液を供給した後に、表面Wa上に処理液が供給された状態のワークWを、表面Wa上に処理液の膜が形成されるように回転させる。以下では、処理液が供給された直後の処理液の液膜、及びワークWの回転に伴い、揮発が進行した固化前の膜を総称して「塗布膜AF」と称する。図3に示されるように、液処理ユニットU1は、回転保持部30と、処理液供給部40とを有する。
【0041】
回転保持部30は、ワークWを保持して回転させる。回転保持部30は、例えば、保持部32と、シャフト34と、回転駆動部36とを有する。保持部32(支持部)は、ワークWを支持する。保持部32は、例えば、表面Waを上にして水平に配置されたワークWの中心部を支持し、当該ワークWを真空吸着等により保持する。保持部32の上面(ワークWを支持する面)は、上方から見て円形に形成されていてもよく、ワークWの半径の1/6倍~1/2倍程度の半径を有していてもよい。保持部32の下方には、シャフト34を介して回転駆動部36が接続されている。
【0042】
回転駆動部36は、例えば電動モータ等の動力源を含むアクチュエータであり、鉛直な軸線Axまわりに保持部32を回転させる。回転駆動部36により保持部32が回転することで、保持部32に保持(支持)されているワークWが回転する。保持部32は、ワークWの中心CP(図4参照)が軸線Axに略一致するようにワークWを保持してもよい。
【0043】
処理液供給部40は、ワークWの表面Waに処理液を供給する。処理液は、レジスト膜を形成するための溶液(レジスト)である。処理液供給部40は、例えば、ノズル42と、供給源44と、開閉バルブ46と、ノズル駆動部48とを有する。ノズル42は、保持部32に保持されたワークWの表面Waに処理液を吐出する。例えば、ノズル42は、ワークWの上方(ワークWの中心CPの鉛直上方)に配置され、処理液を下方に吐出する。供給源44は、処理液をノズル42に供給する。
【0044】
開閉バルブ46は、ノズル42と供給源44との間の供給路に設けられる。開閉バルブ46は、当該供給路の開閉状態を切り替える。ノズル駆動部48は、ワークWの上方の吐出位置と、当該吐出位置から離れた退避位置との間でノズル42を移動させる。吐出位置は、例えばワークWの回転中心の鉛直上方の位置(軸線Ax上の位置)である。待機位置は、例えば、ワークWの周縁よりも外側の位置に設定される。
【0045】
(計測部)
塗布現像装置2は、処理液の塗布膜AFの厚さを計測するための計測部60を更に有する。計測部60は、液処理ユニットU1に設けられている。計測部60は、処理液が供給された後のワークWを回転させて、塗布膜AFが形成されている期間に、回転中のワークWに向けて光を照射する。計測部60は、保持部32に保持されたワークWの表面Waに向けて、表面Wa上の塗布膜AF(処理液)を透過可能な光を照射すると共に、照射した光に応じて発生する(ワークWで反射した)反射光を受光する。
【0046】
計測部60は、例えば、投受光デバイス70A~70Cを有する。投受光デバイス70A~70Cはそれぞれ、保持部32上のワークWの表面Waと重なる照射箇所P1~P3に向けて光を照射し、照射箇所P1~P3から反射された反射光を受光する。照射箇所P1~P3それぞれは、固定された定位置であり、ワークWが回転しても変化しない。投受光デバイス70A~70Cそれぞれは、照射光としてレーザ光をワークWの表面Waに向けて照射する。投受光デバイス70A~70Cそれぞれは、表面Wa上に形成されている処理液の塗布膜AFを透過可能なレーザ光を照射する。
【0047】
投受光デバイス70A~70Cそれぞれから照射されるレーザ光は、可視光線又は赤外線であってもよい。レーザ光の波長は、500nm~1200nmであってもよく、600nm~1100nmであってもよく、780nm~1000nmであってもよい。レーザ光の波長は、処理液の種類に応じて設定されてもよい。例えば、処理液内の反応を促進させずに、且つ光の吸収が小さくなるように、レーザ光の波長が設定される。
【0048】
投受光デバイス70A~70Cから照射されるレーザ光の周波数は、互いに異なっていてもよい。すなわち、投受光デバイス70Aから照射箇所P1に向けて照射される光の周波数は、投受光デバイス70B(投受光デバイス70C)から照射箇所P2(照射箇所P3)に向けて照射される光の周波数と異なっていてもよい。投受光デバイス70A~70Cがそれぞれ含む光源は、レーザダイオードであってもよく、LEDであってもよい。レーザ光のビーム幅は、数mm~数十mm程度であってもよい。
【0049】
投受光デバイス70A~70Cからの光(レーザ光)の照射箇所P1~P3は、図4に示されるように、互いに異なる位置に設定されている。すなわち、計測部60は、照射箇所P1(箇所)と、当該照射箇所P1とは別の位置でワークWの表面Waと重なる照射箇所P2,P3(別の箇所)とに向けてレーザ光を照射する。投受光デバイス70Aからの光の照射箇所P1、投受光デバイス70Bからの光の照射箇所P2、及び投受光デバイス70Cからの光の照射箇所P3では、ワークWの中心CPとの間の距離が互いに異なっている。一例では、照射箇所P1とワークWの中心CPとの間の距離は、照射箇所P2とワークWの中心CPとの間の距離よりも小さい。照射箇所P2とワークWの中心CPとの間の距離は、照射箇所P3とワークWの中心CPとの間の距離よりも小さい。
【0050】
照射箇所P1、照射箇所P2、及び照射箇所P3は、ワークWの径方向に沿って、ワークWの中心CPからこの順に一列に並んでいてもよい。照射箇所P1、照射箇所P2、及び照射箇所P3は、略等間隔に配置されていてもよい。照射箇所P1は、ワークWの表面Waの中心部に位置している。具体的には、照射箇所P1は、保持部32の上面(ワークWの裏面を支持する面)に重なるように設定されている。外側に位置する照射箇所P3は、ワークWの周縁の近傍の領域(周縁領域)に位置している。以上のように、投受光デバイス70A~70Cは、ワークWの表面Waと重なる所定の箇所に向けて光を照射する投光部として機能する。
【0051】
投受光デバイス70A~70Cは、受光した反射光の強度に応じた電気信号を生成してもよい。レーザ光は、ワークWの表面Wa上の塗布膜AFを透過可能であるので、照射箇所において、塗布膜AFの外表面Fa(上面)で反射すると共に、塗布膜AFの下に位置するワークWの表面Waを反射した後に、塗布膜AFを介して出射する。本開示において、レーザ光の一部が反射するワークWの表面Waは、ワークWが含む基材の表面、又は、塗布膜AFの下に存在し、既に固化された別の膜の表面である。別の膜は、例えば、塗布膜AFの直下に存在する膜(例えば、上記下層膜)であってもよい。
【0052】
投受光デバイス70Aは、照射箇所P1から発せられる光を受光する。具体的には、投受光デバイス70Aは、照射箇所P1において、ワークWの表面Waを反射した後に塗布膜AFを介して出射される光と、塗布膜AFの外表面Faで反射した光とが合成されて得られる反射光を受光する。照射箇所P2,P3それぞれにおいても、レーザ光は、塗布膜AFの外表面Faと、塗布膜AFの下に位置する表面Waとで反射する。すなわち、投受光デバイス70B,70Cも、投受光デバイス70Aと同様に、照射箇所P2,P3から発せられる光をそれぞれ受光する。より詳細には、投受光デバイス70B,70Cは、照射箇所P2,P3において、ワークWの表面Waを反射した後に塗布膜AFを介して出射される光と、塗布膜AFの外表面Faで反射した光とが合成されて得られる反射光をそれぞれ受光する。以上のように、投受光デバイス70A~70Cは、表面Wa上の処理液の塗布膜AFにおける外表面Faで反射した光と表面Waで反射した光とが合成された反射光を受光する受光部としても機能する。
【0053】
ここで、図5(a)及び図5(b)を参照して、上記反射光の強度の時間変化について説明する。反射光は、ワークWの表面Wa上に処理液の塗布膜AFが形成されている期間において、塗布膜AFの厚さに応じた強度を有する。図5(a)及び図5(b)では、いずれかの投受光デバイスのうちの、レーザ光を照射する部分が「投光部72」で示され、反射光を受光する部分が「受光部74」で示されている。なお、図5(a)及び図5(b)では、図3とは異なり、表面Waに対して斜め方向から光が入射する場合が例示されている。
【0054】
ワークWの表面Waに向けて照射されたレーザ光に伴う反射光には、上述のように、処理液の塗布膜AFを透過し表面Waを反射した後に、塗布膜AFを介して外部に出射される光L1と、塗布膜AF内に入射せずに、塗布膜AFの外表面Faで反射する光L2とが含まれる。受光部74で受光する反射光は、光L1と光L2とを合成することで得られる反射光Lcとなる。塗布膜AFの厚さによって、光L1に対する光L2の位相が変化し、互いに強め合う場合と互いに弱め合う場合とがある。図5(a)に示されるように、光L1における振幅の山部分と光L2における振幅の山部分とが重なると、光L1と光L2とは互いに強め合い、反射光の強度は大きくなる。一方、図5(b)に示されるように、光L1における振幅の山部分と光L2における振幅の谷部分とが重なると、光L1と光L2とは互いに弱め合い、反射光の強度は小さくなる。
【0055】
処理液が表面Waに供給された直後では、処理液の液膜が形成されており、その後にワークWを回転させることによって、塗布膜AFの固化(揮発)が徐々に進行する。そのため、ワークWを回転させている期間において、塗布膜AFの厚さが徐々に減少する。これにより、光L1に対する光L2の位相も変化し、互いに強め合う状態と互いに弱め合う状態とが繰り返される。その結果、反射光の強度の時間変化を示す波形として、山部分と谷部分とが交互に繰り返えされる波形が得られる(図9参照)。本開示の基板処理システム1では、この波形に基づき、塗布膜AFの厚さ(膜厚)の推定が行われる。膜厚の推定方法の詳細については後述する。
【0056】
(制御装置)
制御装置100は、塗布現像装置2を部分的又は全体的に制御することで、ワークWの処理を塗布現像装置2に実行させる。図6に示されるように、制御装置100は、例えば、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、処理情報記憶部112と、液処理制御部114と、膜厚推定部120とを有する。これらの機能モジュールが実行する処理は、制御装置100が実行する処理に相当する。
【0057】
処理情報記憶部112は、ワークWに対する液処理に関する処理情報を記憶する。処理情報には、液処理を実行する際の各種条件が設定されている。例えば、各種条件の設定値として、処理液の吐出を開始及び停止するタイミング(時刻)、処理液を吐出する際のワークWの回転速度(回転数)、処理液の供給後に表面Wa上に塗布膜AFを形成する際のワークWの回転速度、及び、塗布膜AFを形成する際のワークWの回転時間等が予め定められている。
【0058】
液処理制御部114は、ワークWに対して液処理を施すように液処理ユニットU1を制御する。液処理制御部114は、処理情報記憶部112が記憶する処理情報に定められる各種条件に従って、ワークWに対する液処理を実行するように回転保持部30及び処理液供給部40を制御する。
【0059】
膜厚推定部120は、ワークWからの反射光の強度の時間変化を示す波形(以下、「信号波形」という。)を計測部60から取得し、当該信号波形に基づいて表面Wa上の塗布膜AFの厚さを推定する。すなわち、基板処理システム1は、計測部60と膜厚推定部120とを含む膜厚推定装置20を有する(図4参照)。膜厚推定部120は、機能モジュールとして、図6に示されるように、例えば、投光制御部122と、信号取得部124と、特徴量取得部126と、膜厚算出部128と、モデル情報記憶部132と、モデル構築部134とを含む。
【0060】
投光制御部122は、処理液の供給後に液処理ユニットU1の回転保持部30がワークWを回転させている回転期間において、ワークWの表面Waと重なる照射箇所に向けて光を照射するように投受光デバイス70A~70Cを制御する。投光制御部122は、ワークWに対する液処理での処理液の吐出開始前に、投受光デバイス70A~70Cからの光の照射を開始させてもよい。投光制御部122は、塗布膜AFを形成するための回転を停止させた後に、投受光デバイス70A~70Cからの光の照射を停止させる。
【0061】
信号取得部124は、各投受光デバイスから、上記回転期間において当該照射デバイスが受光した反射光の強度の時間変化を示す信号波形を取得する。信号取得部124は、予め定められたサンプリング周期で、反射光の強度を取得してもよい。サンプリング周期は、表面Waで反射する光L1と、塗布膜AFの外表面Faで反射する光L2との干渉状態の変化が、信号波形によって把握できる程度に設定される。サンプリング周期は、数十ms~数百ms程度に設定されてもよい。
【0062】
特徴量取得部126は、信号取得部124によって取得された信号波形のうちの、回転期間内の所定の計測時点と、その計測時点以前において信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形から特徴量を取得する。特徴量は、上記信号波形から予め定められた条件に従って取得される値であり、塗布膜AFの厚さに相関する。特徴量取得部126は、例えば、照射箇所P1~P3それぞれについて、信号波形から特徴量を取得する。
【0063】
膜厚算出部128は、特徴量取得部126によって取得された特徴量に基づいて、計測時点における塗布膜AFの膜の厚さを算出する。膜厚算出部128は、例えば、照射箇所P1~P3それぞれについて、特徴量に基づいて塗布膜AFの厚さを算出する。計測時点は、回転期間内のいずれの時点に設定されていてもよい。計測時点は、例えば、回転期間の終了時点(ワークWの回転が停止する時点)に設定される。この場合、膜厚算出部128は、回転期間の終了時点での塗布膜AFの厚さを算出する。膜厚算出部128は、上記特徴量と、塗布膜AFの厚さを推定するために予め構築されたモデル式とに基づいて、計測時点における塗布膜AFの厚さを算出してもよい。
【0064】
モデル情報記憶部132は、塗布膜AFの厚さを推定するために予め構築されたモデル式を記憶する。このモデル式は、信号波形の特徴量と、膜厚の推定値との関係を示すように構築される。
【0065】
モデル構築部134は、塗布膜AFの厚さを推定するためのモデル式を生成する。モデル構築部134は、例えば、複数のテスト用のワークWに対して、回転速度を複数段階に変化させて液処理を実行しつつ、段階ごとに、信号波形に基づく特徴量と計測時点での塗布膜AFの厚さの測定値とを取得する。そして、モデル構築部134は、回転速度を変更させた複数段階それぞれについての特徴量と塗布膜AFの厚さの測定値とに基づいて、塗布膜AFの厚さの推定値と特徴量との関係を示すモデル式を生成する。モデル構築部134は、照射箇所ごとにモデル式を生成してもよく、複数の照射箇所について1つのモデル式を生成してもよい。
【0066】
制御装置100は、一つ又は複数の制御用コンピュータにより構成される。例えば制御装置100は、図7に示される回路150を有する。回路150は、一つ又は複数のプロセッサ152と、メモリ154と、ストレージ156と、入出力ポート158と、タイマ162とを有する。ストレージ156は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。記憶媒体は、後述の基板処理方法及び膜厚推定方法を制御装置100に実行させるためのプログラムを記憶している。記憶媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。
【0067】
メモリ154は、ストレージ156の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ152による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ152は、メモリ154と協働して上記プログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。入出力ポート158は、プロセッサ152からの指令に従って、回転保持部30、処理液供給部40、及び計測部60等との間で電気信号の入出力を行う。タイマ162は、例えば一定周期の基準パルスをカウントすることで経過時間を計測する。
【0068】
制御装置100が複数の制御用コンピュータで構成される場合、各機能モジュールがそれぞれ、個別の制御用コンピュータによって実現されていてもよい。制御装置100は、液処理ユニットU1による液処理を実行するための機能モジュールを含む制御用コンピュータと、塗布膜AFの厚さを推定するための機能モジュール(膜厚推定部120)を含む制御用コンピュータとで構成されてもよい。あるいは、これらの各機能モジュールがそれぞれ、2つ以上の制御用コンピュータの組み合わせによって実現されていてもよい。これらの場合、複数の制御用コンピュータは、互いに通信可能に接続された状態で、後述する基板処理方法及び膜厚推定方法を連携して実行してもよい。なお、制御装置100のハードウェア構成は、必ずしもプログラムにより各機能モジュールを構成するものに限られない。例えば制御装置100の各機能モジュールは、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
【0069】
[基板処理方法]
続いて、基板処理方法の一例として、制御装置100が実行する一連の処理の一例を説明する。制御装置100が実行する一連の処理では、液処理ユニットU1による液処理を行うための処理と、塗布膜AFの厚さを推定するための処理(膜厚推定方法)とが並行して行われる。以下では、処理液の供給終了後における回転期間の終了時点が、膜厚を推定する計測時点(以下、「計測時点MT」という。)に設定されている場合を例示する。
【0070】
図8は、液処理及び膜厚の推定のために制御装置100が実行する一連の処理の一例を示すフローチャートである。制御装置100は、上位コントローラからの指令を受けることで、ステップS11を実行する。ステップS11では、例えば、液処理制御部114が、ワークWの回転を開始させるように回転保持部30を制御する。液処理制御部114は、ワークWの回転開始後に、ワークWが処理液の吐出時の回転速度の設定値で回転するように、回転保持部30を制御する。
【0071】
次に、制御装置100は、ステップS12,S13を実行する。ステップS12では、例えば、膜厚推定部120が、所定の計測開始時刻となるまで待機する。計測開始時刻は、例えば、上位コントローラからの指令を受け取った時点を基準として定められる時刻である。ステップS13では、例えば、膜厚推定部120が、反射光の強度の計測を開始するように計測部60を制御する。一例では、投光制御部122が、照射箇所P1~P3に向けたレーザ光の照射をそれぞれ開始させるように投受光デバイス70A~70Cを制御する。そして、信号取得部124が、投受光デバイス70A~70Cそれぞれから、レーザ光の照射に伴う反射光の強度の取得を開始する。以降の処理において、レーザ光の照射と反射光の強度の取得とが継続される。
【0072】
次に、制御装置100は、ステップS14,S15を実行する。ステップS14では、例えば、液処理制御部114が、所定の吐出開始時刻となるまで待機する。吐出開始時刻は、例えば、上位コントローラからの指令を受け取った時点を基準として定められる時刻である。ステップS15では、例えば、液処理制御部114が、処理液の吐出を開始するように処理液供給部40を制御する。
【0073】
次に、制御装置100は、ステップS16,S17,S18を実行する。ステップS16では、例えば、液処理制御部114が、処理液の吐出開始時刻から所定の吐出時間が経過するまで待機する。ステップS17では、例えば、液処理制御部114が、処理液の吐出を停止するように処理液供給部40を制御する。ステップS18では、例えば、液処理制御部114が、回転保持部30を制御することで、処理液の供給後での回転速度の設定値でワークWが回転するように、ワークWの回転速度を調節する。回転速度の設定値は、処理情報記憶部112が記憶する処理情報に定められている。
【0074】
次に、制御装置100は、ステップS19,S20を実行する。ステップS19では、例えば、液処理制御部114が、処理液の吐出停止時刻から所定の乾燥時間が経過するまで待機する。ステップS20では、例えば、液処理制御部114が、ワークWの回転を停止させるように回転保持部30を制御する。以上のステップS19,S20の実行によって、予め定められた乾燥時間だけ、処理液が供給された状態のワークWが回転し、回転している最中にワークWの表面Wa上に処理液の塗布膜AFが形成される。この乾燥時間だけワークWを回転させる期間が、処理液の供給後にワークWを回転させる回転期間に相当する。
【0075】
次に、制御装置100は、ステップS21を実行する。ステップS21では、例えば、膜厚推定部120が、反射波の強度の計測を停止するように計測部60を制御する。一例では、投光制御部122が、照射箇所P1~P3に向けたレーザ光の照射をそれぞれ停止させるように投受光デバイス70A~70Cを制御する。そして、信号取得部124が、レーザ光の照射に伴う反射光の強度の取得を停止する。以上のステップS21までの処理が実行されることで、図9に示されるような信号波形(反射波の強度の時間変化)が、照射箇所P1~P3それぞれについて取得される。
【0076】
図9に示される信号波形のグラフでは、上位コントローラから処理開始の指令を受けたタイミングが「0」で示され、処理液の吐出停止のタイミング(乾燥時間の開始のタイミング)が「t1」で示され、乾燥時間の終了タイミングに対応する計測時点が「MT」で示されている。図9に示されるように、時刻t1以降において、表面Waで反射する光L1と塗布膜AFの外表面Faで反射する光L2との干渉状態の時間変化に応じて、山部分と谷部分とが繰り返される信号波形が得られる。図9において、山部分の頂点が黒丸印で描かれ、谷部分の最下点が白抜きの丸印で描かれている。また、時刻t1よりも前の信号波形は省略されている。
【0077】
ステップS21の実行後に、制御装置100は、ステップS22を実行する。ステップS22では、例えば、膜厚算出部128が、ステップS21の実行までで得られた信号波形のうちの、計測時点MTと、計測時点MT以前において信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形に基づいて、計測時点MTにおける塗布膜AFの厚さを算出する。より詳細には、特徴量取得部126が、上記信号波形のうちの、計測時点MTと、計測時点MT以前において信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形から特徴量を取得する。そして、膜厚算出部128が、上記特徴量に基づいて、計測時点MTにおける塗布膜AFの厚さを算出する。
【0078】
信号波形の一部から得られる特徴量は、例えば、計測時点MTから数えて第n番目(nは1以上の整数)に現れる極値点の時刻である。すなわち、特徴量取得部126は、計測時点MTと、信号波形が、計測時点MTから時刻が戻る向きに数えて第n番目の極値点となる条件を満たす時点との間の波形から、当該波形の第n番目の極値点の時刻を特徴量として取得する。本開示において、極値点とは、山部分の頂点(極大となる点)及び谷部分の最下点(極小となる点)を総称している。
【0079】
図9に例示される信号波形のグラフでは、計測時点MTから数えて第10番目の極値点(計測時点MTから数えて第5番目の山部分の頂点)の時刻が、特徴量F1として取得されている。なお、図9の信号波形のグラフにおいて、計測時点MTから数えて第9番目に現れる極値点は、計測時点MTから数えて第5番目の谷部分の最下点である。特徴量F1は、液処理の基準タイミング(例えば、上述の上位コントローラから処理開始の指令を受けたタイミング)と、計測時点MTから数えて第n番目の極値点との間の時間に対応する。
【0080】
膜厚算出部128は、特徴量F1と塗布膜AFの厚さとの相関関係を利用して、特徴量F1に基づき、計測時点MTにおける塗布膜AFの厚さを算出する。相関関係を利用した塗布膜AFの厚さの算出方法については後述する。膜厚算出部128は、例えば、照射箇所P1~P3それぞれについて、信号波形に基づいて、各照射位置での塗布膜AFの厚さを算出する。
【0081】
以上により、1枚のワークWに対する液処理と膜厚の推定とを行う一連の処理が終了する。制御装置100は、後続の複数のワークWに対しても、同様の一連の処理を順に実行してもよい。この場合、制御装置100は、複数のワークW間で、処理液の吐出開始及び吐出停止のタイミング、処理液の供給後にワークWを回転させる乾燥時間、並びに、反射光の強度の計測を開始及び停止するタイミングが一定となるように、一連の処理を繰り返し実行してもよい。ワークWに対して上記一連の処理を実行する前には、塗布膜AFの厚さを推定するためのモデル式の構築が行われる。
【0082】
(モデル式の構築方法)
図10は、特徴量に基づき塗布膜AFの厚さを推定するためのモデル式の構築方法の一例を示すフローチャートである。このモデル式の構築方法では、テスト用ワークWTの回転速度を複数段階に変更して塗布膜AFを形成し、段階ごとに、特徴量の取得と塗布膜AFの厚さの測定とが行われる。そして、特徴量と塗布膜AFの厚さの推定値との関係を示すモデル式が構築される。以下では、特徴量として、計測時点MTから数えて第n番目に現れる極値点の時刻(上述の特徴量F1)を用いる場合を例示する。テスト用ワークWTは、ワークWと同じ種類の基板である。
【0083】
このモデル式の構築方法では、最初に、制御装置100がステップS31を実行する。ステップS31では、例えば、モデル構築部134が、テスト用ワークWTの回転速度を初期値に設定する。より詳細には、モデル構築部134は、処理液が供給された後にテスト用ワークWTを回転させる際の回転速度を初期値(変化させる複数段階のいずれかの回転速度)に設定する。回転速度を変化させる範囲、及び1回あたりの変化幅は、オペレータ等により予め定められている。回転速度を変化させる範囲(最大の回転速度と最小の回転速度との差)は、例えば、80rpm~300rpmであり、1回あたりの変化幅は、5rpm~50rpmである。
【0084】
次に、制御装置100は、ステップS32,S33を実行する。ステップS32では、例えば、制御装置100が、上述のステップS11~S21と同様に、液処理の実行と信号波形の取得とを行う。ステップS32では、テスト用ワークWTが用いられる点、及び塗布膜AFを回転する際のワークの回転速度を除いて、上述のステップS11~S21での処理条件と同じ条件で液処理及び信号波形の取得が行われる。ステップS33では、例えば、モデル構築部134が、ステップS32で得られた信号波形から特徴量F1を取得する。
【0085】
次に、制御装置100は、ステップS34を実行する。ステップS34では、例えば、モデル構築部134が、ステップS32において、テスト用ワークWTの表面上に形成された塗布膜AFの厚さを示す測定値を取得する。塗布膜AFの厚さの測定値は、信号波形に基づく膜厚の算出方法以外のどのような方法で(いずれの方式の膜厚測定器を用いて)測定された値であってもよい。例えば、回転停止後の塗布膜AFからの反射光を分光し、分光して得られた分光スペクトルに基づき測定された膜厚であってもよい。
【0086】
次に、制御装置100は、ステップS35を実行する。ステップS35では、例えば、モデル構築部134が、変更させる全ての回転速度において、特徴量F1及び膜厚の測定値の取得が終了したかどうかを判断する。ステップS35において、全ての回転速度において特徴量F1及び膜厚の測定値の取得が終了していないと判断された場合(ステップS35:NO)、制御装置100は、ステップS36を実行する。ステップS36では、例えば、モデル構築部134が、テスト用ワークWTの回転速度の設定値を変更する。そして、制御装置100は、ステップS32~S35の処理を繰り返す。これにより、モデル構築部134は、段階的に変化させる回転速度ごとに、特徴量F1と膜厚の測定値とを取得する。
【0087】
ステップS32~S35の処理が繰り返される際に、ワークWの回転速度の設定値は、少なくとも、第1回転速度と、その第1回転速度とは異なる第2回転速度とに設定される。この場合、モデル構築部134は、テスト用ワークWT(第1テスト用基板)を第1回転速度で回転させながら得られた信号波形に基づいて、その第1回転速度での特徴量F1(第1特徴量)を取得する。モデル構築部134は、テスト用ワークWT(第2テスト用基板)を第2回転速度で回転させながら得られた信号波形に基づいて、その第2回転速度での特徴量F1(第2特徴量)を取得する。
【0088】
モデル構築部134は、第1回転速度で回転させた際にテスト用ワークWTに形成された塗布膜AFの厚さを示す測定値(第1測定値)を取得し、第2回転速度で回転させた際にテスト用ワークWTに形成された塗布膜AFの厚さを示す測定値(第2測定値)を取得する。複数段階の回転速度それぞれで回転させるテスト用ワークWTは、互いに異なるワークであってもよく、互いに同一のワークであってもよい。同一のワークが用いられる場合には、塗布膜AFを形成し膜厚が測定された後に、当該塗布膜AFが薬液等によって除去されてもよい。
【0089】
ステップS35において、全ての回転速度において特徴量F1及び膜厚の測定値の取得が終了したと判断された場合(ステップS35:YES)、制御装置100は、ステップS37を実行する。ステップS37では、例えば、モデル構築部134が、ステップS32~S35が繰り返されることで得られた複数の特徴量F1と複数の膜厚の測定値とに基づいて、特徴量F1から膜厚を推定するためのモデル式を生成する。一例では、膜厚の推定値を「Th」としたときに、モデル構築部134は、下記の式(1)で表される一次式をモデル式として生成する。式(1)において、「a」及び「b」は係数であり、これらの係数が定められることでモデル式が構築される。
Th=a×F1+b (1)
【0090】
モデル構築部134は、生成(構築)したモデル式をモデル情報記憶部132に記憶する。以上のモデル式の構築が終了した後に、上述のステップS11~S22の処理が実行される。上述のステップS22では、膜厚算出部128が、モデル情報記憶部132に記憶された式(1)のモデル式を参照することで、液処理の実行中に得られた特徴量F1に応じた膜厚を算出する。以上のように、膜厚推定部120によって、ワークWに対して液処理が行われることで形成される塗布膜AFの厚さが推定される。
【0091】
[変形例]
(1)ワークWの表面Waに対するレーザ光の照射方法は、上述の例に限られない。計測部60は、ミラー部材を介して、レーザ光をワークWの表面Waに向けて照射してもよい。図11に示されるように、計測部60は、例えば、投受光デバイス170と、ミラー部材80とを有する。投受光デバイス170とミラー部材80とは、水平方向(保持部32に支持されたワークWの表面Wa)に沿って並んで配置される。ミラー部材80の大きさ(サイズ)は、投受光デバイス170よりも小さくてもよい。投受光デバイス170は、ワークWの周縁よりも外に配置されている。
【0092】
ミラー部材80は、保持部32に保持されたワークWの上方(例えば、レーザ光の照射箇所の鉛直上方)に配置される。ミラー部材80は、光を反射することによってワークWに照射するレーザ光の方向(光が進行する方向)を変更する。ミラー部材80は、例えば、投受光デバイス170と保持部32に保持されたワークWの表面Waとに対向する反射面82を有する。投受光デバイス170は、投受光デバイス70A~70Cと同様に、塗布膜AFを透過可能なレーザ光を照射する。投受光デバイス170(投光部)は、ミラー部材80の反射面82に向けてレーザ光を照射する。これにより、投受光デバイス170から照射されたレーザ光が、ミラー部材80の反射面82において反射した後に、ワークWの表面Waに照射される。
【0093】
投受光デバイス170(受光部)は、レーザ光のワークWにおける反射光を、ミラー部材80の反射面80aを介して受光する。計測部60は、投受光デバイス70A~70Cと同様に、互いに異なる複数箇所それぞれにレーザ光を照射するために、複数組の投受光デバイス170及びミラー部材80を有してもよい。
【0094】
(2)レーザ光の光源は、その熱が液処理に影響を及ぼさないように、液処理を行うための空間を形成する筐体の内壁に設けられてもよい。図11に示されるように、液処理ユニットU1は、回転保持部30を収容し、ワークWに対して処理液を用いた処理を行うための内部空間Sを形成する筐体28を有する。投受光デバイス170は、その内部にレーザ光を生成する光源172を含んでいてもよい。投受光デバイス170(光源172)は、筐体28の内壁(例えば、側壁の内面)に設けられてもよい。
【0095】
(3)レーザ光の光源は、その熱が熱処理に影響を及ぼさないように、液処理を行うための空間を形成する筐体の外に配置されていてもよい。図12に示されるように、計測部60は、投光デバイス180(投光部)と、受光デバイス190(受光部)とを有してもよい。投光デバイス180は、光源182と、導光部184と、照射部186とを含む。光源182は、ワークWの表面Waに照射するレーザ光を生成する。光源182は、筐体28の外に配置されている。導光部184は、光源182からのレーザ光を筐体28の内部まで導く。導光部184は、例えば光ファイバである。照射部186は、導光部184によって導光されたレーザ光を、ミラー部材を介してワークWの表面Waに照射する。
【0096】
受光デバイス190は、集光部192と、導光部194と、検出部196とを含む。集光部192には、レーザ光の照射に伴うワークWからの反射光が、ミラー部材を介して入射する。導光部194は、集光部192に入射した反射光を、筐体28の外に配置された検出部196まで導く。導光部194は、例えば光ファイバである。検出部196は、導光部194によって導光された反射光に応じた電気信号を生成する。計測部60は、投受光デバイス70A~70Cと同様に、互いに異なる複数箇所それぞれにレーザ光を照射するために、複数組の投光デバイス180及び受光デバイス190を有してもよい。
【0097】
(4)計測部60がミラー部材を用いる場合、ミラー部材は、光の散乱と吸収とを抑制する膜を有してもよい。図12に示されるように、計測部60は、ミラー部材80Aを有してもよい。ミラー部材80Aは、照射されたレーザ光をワークWの表面Waに向けて反射し、ワークWからの反射光を受光デバイス190に向けて反射する。ミラー部材80Aの反射面82には、入射されたレーザ光の当該反射面82における散乱と吸収とを抑制する膜84が形成されている。
【0098】
(5)計測部60は、ワークWにおけるレーザ光の反射点の上下方向における位置ずれに応じて、反射光の受光状態を調節する部材を有してもよい。図12に示されるように、計測部60の受光デバイス190は、反射光の受光状態を調節する調節部材198を有してもよい。調節部材198は、ワークWの上下方向の位置ずれ、又はワークWの反りに応じて、受光デバイス190における反射光の受光状態を調節する。調節部材198は、例えば、集光部192内に設けられている。
【0099】
調節部材198は、ワークWに反り等があっても、受光デバイス190で受光する反射光の強度が、ワークWに反り等がない場合での反射光の強度と同程度となるように、反射光の受光状態を調節する。調節部材198は、例えば、反射光の受光状態として、反射光の光路、又は、反射光の焦点を調節する光学部品である。
【0100】
(6)ワークWの表面Waに対して、斜め方向からレーザ光が照射されてもよい。図13(a)に示されるように、計測部60は、投光デバイス280(投光部)と、受光デバイス290(受光部)とを有してもよい。投光デバイス280と受光デバイス290とは、水平方向に沿って並び、互いの間にワークWを挟むように配置される。投光デバイス280と受光デバイス290とは、ワークWの周縁よりも外側に位置している。投光デバイス280は、ワークWの表面Waに垂直な方向(上下方向)に対して傾いた方向から、所定の照射箇所に向けてレーザ光を照射する。受光デバイス290は、ワークWの表面Waに垂直な方向(上下方向)に対して傾いた方向に反射される反射光を受光する。
【0101】
計測部60は、投受光デバイス70A~70Cと同様に、互いに異なる複数箇所それぞれに向けてレーザ光を照射する複数の投光デバイス280を有してもよい。この場合、計測部60は、複数の投光デバイス280それぞれに対応する複数の受光デバイス290を有してもよい。投光デバイス280が配置される位置に、投光デバイス280に代えて、投光部及び受光部として機能する投受光デバイスが配置されてもよい。受光デバイス290が配置される位置に、受光デバイス290に代えてミラー部材が配置されてもよい。この場合、投受光デバイスからワークWの表面Waに斜め方向からレーザ光が照射され、ワークWからの反射光がミラー部材で投受光デバイスに向けて反射される。
【0102】
(7)複数箇所それぞれにレーザ光を照射する場合に、1つの光源から生成されるレーザ光が、一の箇所に照射される光と、当該一の箇所とは別の箇所に照射される光とに分けられてもよい。図13(b)に示されるように、計測部60は、投光デバイス280Aと、複数(3つ)の受光デバイス290とを有してもよい。投光デバイス280Aは、1つの光源282と、分岐部284と、複数の導光部286とを含む。光源282は、ワークWの表面Waに向けて照射されるレーザ光を生成する。
【0103】
分岐部284は、光源282からのレーザ光を、複数箇所それぞれに向けて照射されるレーザ光に分ける。例えば、分岐部284は、光源282からのレーザ光を、複数箇所のいずれか一つに照射される光と、複数箇所のうちの他の一箇所に照射される光とに分岐させる。分岐部284は、例えば、ビームスプリッタ等の光学部品によって構成される。分岐部284によって分岐された複数のレーザ光は、複数の導光部286にそれぞれ入射されてもよい。導光部286は、例えば光ファイバである。投光デバイス280Aは、複数の導光部286によって導光されたレーザ光を、ワークWの表面Waに重なる複数箇所に向けてそれぞれ照射する。なお、分岐部284は、1つの光源からの光を、時刻ごとに異なる箇所に向かうように分けてもよい。例えば、分岐部284は、揺動によって反射面(鏡面)の角度が変化する機能を有するMEMS(Micro-Electro-Mechanical Systems)ミラーによって構成されてもよい。
【0104】
(8)上述の例では、ワークWの表面Waと重なる3箇所に向けてレーザ光が照射されるが、ワークWの表面Waと重なる一箇所に向けてレーザ光が照射されてもよい。この場合、制御装置100の膜厚推定部120は、レーザ光が照射された当該一箇所における塗布膜AFの厚さを推定してもよい。レーザ光の照射箇所(塗布膜AFの厚さの推定箇所)は、2箇所であってもよく、4箇所以上であってもよい。複数箇所での膜厚の推定が行われる場合に、上述の例とは異なり、これらの箇所とワークWの中心CPとの間の距離が互いに略一致していてもよい。
【0105】
(9)計測部60におけるレーザ光及び反射光の光路が、調節用の別のレーザ光を用いて調節されてもよい。別のレーザ光を用いた光路の調節が、液処理の実行前に作業員等によって行われてもよい。
【0106】
(10)計測部60が受光する反射光の強度(例えば、平均強度)に応じて、ワークWに照射されるレーザ光の強度が調節されてもよい。図6に示されるように、制御装置100(膜厚推定部120)は、機能モジュールとして投光条件設定部138(条件設定部)を有してもよい。投光条件設定部138は、反射光の強度と所定の閾値との比較結果に基づいて、投受光デバイス70A~70C等の投光部からの光の強度の設定値を変更する。例えば、投光条件設定部138は、反射光の平均強度が所定の閾値を下回った場合に、投光部から照射されるレーザ光の強度の設定値を大きくする。
【0107】
投光条件設定部138によって、レーザ光の強度の設定値が変更された場合、投光制御部122は、変更された設定値の強度を有するレーザ光が照射されるように計測部60を制御する。投光条件設定部138は、レーザ光の照射強度の設定値を変更するための反射光の強度の取得を、1回又は複数回の液処理の実行ごとに行ってもよい。投光条件設定部138は、ワークWに対する液処理を実行していない期間において、テスト用のワークWに対して塗布膜AFを形成したうえで、レーザ光の照射強度の設定値を変更するために反射光の強度を取得してもよい。
【0108】
(11)制御装置100は、膜厚算出部128によって算出された膜厚に応じて、後続のワークWに対する液処理の条件を変更してもよい。制御装置100(膜厚推定部120)は、機能モジュールとして処理条件変更部136を有してもよい。処理条件変更部136は、膜厚算出部128によって算出された塗布膜AFの厚さに基づいて、処理情報記憶部112に記憶されている処理情報に含まれる液処理の各種条件の設定値を変更する。例えば、処理条件変更部136は、照射箇所P1~P3について算出された塗布膜AFの厚さの平均値と予め定められた目標の厚さとの差分の絶対値が、所定値よりも大きい場合に、当該差分が縮小するように、処理液供給後でのワークWの回転速度の設定値を変更する。
【0109】
(12)上述したように、受光した反射光に基づく信号波形のうちの、計測時点MTと、計測時点MT以前において信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形から得られる特徴量に基づき、計測時点MTにおける塗布膜AFの厚さが算出される。上述の例では、計測時点MTから数えて第n番目の極値点の時刻が特徴量F1として用いられているが、特徴量F1とは異なる特徴量に基づいて、計測時点MTにおける塗布膜AFの厚さの算出が行われてもよい。以下、いくつかの特徴量について例示する。
【0110】
(12-1)信号波形の一部から得られる特徴量は、信号波形の強度が予め設定されたベース強度に一致する最後の時点から計測時点MTまでの時間であってもよい。特徴量取得部126は、計測時点MTと、信号波形の強度が所定のベース強度に最後に一致するという条件を満たす時点との間の波形から、計測時点MTとその一致点との間の時間を特徴量F2として取得する。特徴量F2を用いる場合も、塗布膜AFの厚さと特徴量F2との関係を示すモデル式が構築される。
【0111】
図14には、5段階に回転速度を変化させてテスト用ワークWTに塗布膜AFを形成しつつ取得された信号波形のグラフが示されている。図14の信号波形のグラフでは、信号波形のうちの後半部分(回転時間の終了付近)だけの波形が示されている。変化させた回転速度の値が、それぞれ「ω1」~「ω5」で示されており、ω1~ω5の順で値が大きくなる。上述のベース強度が「BI」で示されており、ベース強度BIは、例えば、モデル式を作成する際に、最も小さい回転速度で形成された塗布膜AFから得られる信号波形の計測時点MTにおける強度に相当する。なお、ベース強度BIは、最も大きい回転速度で形成された塗布膜AFから得られた信号波形の計測時点MTにおける強度に設定されてもよい。
【0112】
例えば、回転速度がω5である場合、その回転速度についての信号波形の強度がベース強度BIに最後に一致する点での時刻t5と、計測時点MTとの間の時間が、特徴量F2として取得される。モデル構築部134は、5段階に回転速度を変化させて得られる複数の特徴量F2と複数の膜厚の測定値とに基づいて、特徴量F2から膜厚を推定するためのモデル式を生成する。一例では、モデル構築部134は、膜厚の推定値Thと特徴量F2との関係を定めるモデル式として、下記の式(2)で示される二次式を生成する。式(2)において「a1」「b1」及び「c1」は係数であり、これらの係数が定められることでモデル式が構築される。
Th=a1×F2×F2+b1×F2+c1 (2)
【0113】
膜厚算出部128は、構築されたモデル式を参照することで、液処理の実行中に得られた特徴量F2に応じた膜厚を算出する。なお、モデル構築部134は、3次以上の多項式近似を利用して、モデル式を生成してもよい。モデル式にいずれの近似式を用いるかは、膜厚の測定値と特徴量との相関が評価されたうえで、特徴量ごとに選択されてもよい。
【0114】
(12-2)信号波形の一部から得られる特徴量は、計測時点MTから数えて第1番目に現れる極値点(極大又は極小となる点)での信号波形の強度と、計測時点MTでの信号波形の強度との差分を、第1番目の極値点での信号波形の強度で除算して得られる値であってもよい。図15(a)には、信号波形のうちの後半部分(回転期間が終了する付近)の波形が示されている。
【0115】
特徴量取得部126は、計測時点MTと、信号波形が、計測時点MTから時刻が戻る向きに数えて第1番目の極値点となる時点との間の波形から、第1番目の極値点での信号波形の強度In1と、計測時点MTでの信号波形の強度In2とを取得する。そして、特徴量取得部126は、強度In2から強度In1を減算して得られる値を求め、その求められた値を強度In1で除算することで得られる値を、特徴量F3として算出する。膜厚推定部120は、特徴量F1,F2を用いる場合と同様に、特徴量F3についてモデル式を構築し、当該モデル式を参照することで、ワークWへの液処理において取得された特徴量F3に応じて塗布膜AFの厚さを算出(推定)する。
【0116】
(12-3)信号波形の一部から得られる特徴量は、計測時点MTから数えて第1番目に現れる極値点での信号波形の強度に応じた位相と、計測時点MTでの信号波形の強度に応じた位相との差分であってもよい。図15(b)には、信号波形の後半部分の一部(図15(a)の「LP」で示す期間)における強度の時間変化を、位相の時間変化に変換した波形が示されている。強度から位相への変換では、信号波形のうちの強度が最大となる点の位相がπ/2となり、信号波形のうちの強度が最小となる点の位相が(-π/2)となるように、逆正弦関数(アークサイン)を用いた演算が行われる。例えば、逆正弦関数を用いた演算では、最初に、信号波形の強度の正規化が行われる。具体的には、信号波形のうちの強度の最大値が1となり、強度の最小値が-1となるように正規化が行われる。そして、正規化された強度を変数として逆正弦関数を算出することで、強度から位相への変換が行われる。
【0117】
特徴量取得部126は、例えば、第1番目の極値点での信号波形の強度In1と、計測時点での信号波形の強度In2とを取得する。そして、特徴量取得部126は、逆正弦関数を用いた演算を行うことで、強度In1を位相Ph1に変換し、強度In2を位相Ph2に変換する。その後、特徴量取得部126は、位相Ph2から位相Ph1を減算して得られる値を特徴量F4として算出する。膜厚推定部120は、特徴量F1,F2を用いる場合と同様に、特徴量F4についてモデル式を構築し、当該モデル式を参照することで、ワークWへの液処理において取得された特徴量F4に応じて塗布膜AFの厚さを算出(推定)する。
【0118】
(12-4)信号波形の一部から得られる特徴量は、予め設定されたベース強度BIと、計測時点MTでの信号波形の強度との差分であってもよい。ベース強度BIは、特徴量F2が用いられる場合と同様に、モデル式を作成する際に、最も小さい回転速度又は最も大きい回転速度で形成された塗布膜AFから得られる信号波形の計測時点MTにおける強度に相当する。図16には、モデル式を作成する際に得られる複数の信号波形が示されている。
【0119】
この例では、ベース強度BIと、計測時点MTでの信号波形の強度Inmとの差分が、特徴量F5として取得される。すなわち、特徴量取得部126は、計測時点MTにおける波形から、ベース強度BIと強度Inmとの差分(強度Inmからベース強度BIを減算して得られる値)を特徴量F5として取得する。このように、本開示において、信号波形のうちの、計測時点MTと、計測時点MT以前において信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形(情報)には、上記所定の条件によっては、計測時点MTにおける波形(情報)も含まれる。膜厚推定部120は、特徴量F1,F2を用いる場合と同様に、特徴量F5についてモデル式を構築し、当該モデル式を参照することで、ワークWへの液処理において取得された特徴量F5に応じて塗布膜AFの厚さを算出(推定)する。
【0120】
(12-5)信号波形の一部から得られる特徴量は、予め設定されたベース強度BIに応じた位相と、計測時点MTでの信号波形の強度に応じた位相との差分であってもよい。ベース強度BIは、特徴量F2が用いられる場合と同様に、モデル式を作成する際に、最も小さい回転速度又は最も大きい回転速度で形成された塗布膜AFから得られる信号波形の計測時点MTにおける強度に相当する。
【0121】
特徴量取得部126は、計測時点MTにおける波形から、計測時点MTでの信号波形の強度Inmを取得する。そして、特徴量取得部126は、特徴量F4が用いられる場合と同様に、逆正弦関数を用いた演算を行うことで、ベース強度BIを位相に変換し、強度Inmを位相に変換する。その後、特徴量取得部126は、強度Inmに応じた位相からベース強度BIに応じた位相を減算して得られる値を、特徴量F6として算出する。膜厚推定部120は、特徴量F1,F2を用いる場合と同様に、特徴量F6についてモデル式を構築し、当該モデル式を参照することで、ワークWへの液処理において取得された特徴量F6に応じて塗布膜AFの厚さを算出(推定)する。
【0122】
(12-6)特徴量取得部126は、信号波形のうちの、計測時点MTと、計測時点MT以前において信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形(情報)から、上述した特徴量F1~F6以外の特徴量を取得してもよい。塗布膜AFの厚さとの間に相関が得られるものであれば、どのような特徴量が用いられてもよい。
【0123】
(13)上述の例では、レジスト膜を形成するための処理液(レジスト)の塗布膜AFの厚さが推定されているが、膜厚推定部120は、レジスト膜以外の膜(例えば、下層膜又は上層膜)を形成するための処理液の塗布膜の厚さを推定してもよい。膜厚推定部120は、レジスト膜を現像するための現像液の膜の厚さを推定してもよい。
【0124】
(14)上述の例では、計測時点MTは、回転期間(乾燥時間)の終了時点に設定されているが、終了時点以前のいずれの時点に設定されてもよい。この場合、膜厚推定部120は、計測時点MTが設定される時点に合わせて、当該時点での膜厚と特徴量との関係を示すモデル式を構築してもよい。
【0125】
(15)基板処理方法(膜厚推定方法)及びモデル式の構築方法において制御装置100が実行する上述の一連の処理は一例であり、適宜変更可能である。例えば、上述したステップ(処理)の一部が省略されてもよいし、別の順序で各ステップが実行されてもよい。また、上述したステップのうちの任意の2以上のステップが組み合わされてもよいし、ステップの一部が修正または削除されてもよい。あるいは、上記の各ステップに加えて他のステップが実行されてもよい。
【0126】
[実施形態の効果]
以上に説明した膜厚推定方法は、表面Wa上に処理液が供給された状態のワークWを、当該ワークWの表面Wa上に処理液の膜(塗布膜AF)が形成されるように回転させている回転期間において、ワークWの表面Waと重なる箇所に向けて光を照射することと、ワークWの表面Waを反射した後に塗布膜AFを介して出射される光と、塗布膜AFの外表面Faで反射した光とが合成された反射光を受光することで、回転期間における反射光の強度の時間変化を示す信号波形を取得することと、信号波形のうちの、回転期間内の所定の計測時点MTと、計測時点MT以前において信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形から特徴量を取得することと、取得した特徴量に基づいて、計測時点における処理液の膜の厚さを算出することとを含む。
【0127】
以上に説明した膜厚推定装置20は、表面Wa上に処理液が供給された状態のワークWを、当該ワークWの表面Wa上に塗布膜AFが形成されるように回転させている回転期間において、ワークWの表面Waと重なる箇所に向けて光を照射するように構成された投光部と、ワークWの表面Waを反射した後に塗布膜AFを介して出射される光と、塗布膜AFの外表面Faで反射した光とが合成された反射光を受光するように構成された受光部と、受光部が受光した反射光に基づいて、回転期間における反射光の強度の時間変化を示す信号波形を取得するように構成された信号取得部124と、信号取得部124が取得した信号波形のうちの、回転期間内の所定の計測時点MTと、計測時点MT以前において信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形から特徴量を取得するように構成された特徴量取得部126と、特徴量取得部126が取得した特徴量に基づいて、計測時点MTにおける処理液の膜の厚さを算出するように構成された膜厚算出部128とを備える。
【0128】
これらの膜厚推定方法及び膜厚推定装置20では、ワークWの表面Waを反射した後に塗布膜AFを介して出射される光L1と、塗布膜AFの外表面Faで反射した光L2とが合成された反射光の強度の時間変化を示す信号波形が取得される。塗布膜AFの厚さに応じて、ワークWの表面Waを反射した後に塗布膜AFを介して出射される光L1と、塗布膜AFの外表面で反射した光L2との干渉状態が変化するので、信号波形には、塗布膜AFに関する情報が含まれる。そのため、信号波形のうちの、回転期間内の所定の計測時点MTと、計測時点MT以前において信号波形が所定の条件を満たす時点との間の波形から取得される特徴量は、塗布膜AFの厚さに相関し得る。その結果、その特徴量に基づいて、塗布膜AFの厚さを算出することができる。上記膜厚推定方法及び膜厚推定装置20では、反射光の強度の時間変化から処理液の膜の厚さを算出しているので、塗布膜AFの厚さが変動する場合であっても、塗布膜AFの厚さを精度良く推定することが可能となる。例えば、特徴量は、信号波形の相対的な時間変化に基づくので、反射光を検出する際に種々の要因で発生するノイズの影響を受け難い。そのため、特徴量に基づき膜厚を推定することで、推定精度を向上させることが可能となる。
【0129】
上記膜厚推定方法において、塗布膜AFの厚さを算出することは、塗布膜AFの厚さを推定するために予め構築されたモデル式と、特徴量とに基づいて、塗布膜AFの厚さを算出することを含んでもよい。この場合、モデル式に特徴量を当てはめることで膜厚が算出されるので、膜厚の算出を簡略化することが可能となる。例えば、制御装置100の処理負荷を低減することができる。
【0130】
上記膜厚推定方法は、モデル式を構築することを更に含んでもよい。モデル式を構築することは、第1テスト用基板を第1回転速度で回転させながら得られた信号波形に基づいて、第1特徴量を取得することと、第1テスト用基板に形成された塗布膜AFの厚さを示す第1測定値を取得することと、第2テスト用基板を第2回転速度で回転させながら得られた信号波形に基づいて、第2特徴量を取得することと、第2テスト用基板に形成された塗布膜AFの厚さを示す第2測定値を取得することと、第1特徴量、第2特徴量、第1測定値、及び第2測定値に基づいて、モデル式を生成することとを含んでもよい。ワークの回転速度が異なると、塗布膜AFの厚さの時間変化の傾向(反射光の時間変化の傾向)、及び測定する時点での塗布膜AFの厚さが異なる。塗布膜AFの厚さの時間変化が異なると、同じ条件で取得される特徴量も異なる。上記方法では、異なる回転速度で得られた特徴量と厚さの測定値とに基づきモデル式が構築されるので、精度良くモデル式を構築することが可能となる。
【0131】
膜厚の算出に用いる特徴量は、計測時点MTから数えて第n番目(nは1以上の整数)に現れる極値点の時刻(特徴量F1)であってもよい。特徴量F1と計測時点MTでの処理液の膜の厚さとの間には比較的強い相関関係があることが見出された。そのため、処理液を用いた液処理をワークWに施す際に、特徴量F1を取得することで、塗布膜AFの厚さを高精度に推定することができる。
【0132】
膜厚の算出に用いる特徴量は、信号波形の強度が予め設定されたベース強度BIに一致する最後の時点から計測時点までの時間(特徴量F2)であってもよい。特徴量F2と計測時点での処理液の膜の厚さとの間には比較的強い相関関係があることが見出された。そのため、処理液を用いた液処理をワークWに施す際に、特徴量F2を取得することで、塗布膜AFの厚さを高精度に推定することができる。
【0133】
膜厚の算出に用いる特徴量は、計測時点MTから数えて第1番目に現れる極値点での信号波形の強度In1と、計測時点MTでの信号波形の強度In2との差分を、強度In1で除算して得られる値(特徴量F3)であってもよい。特徴量F3と計測時点での処理液の膜の厚さとの間には比較的強い相関関係があることが見出された。そのため、処理液を用いた液処理をワークWに施す際に、特徴量F3を取得することで、塗布膜AFの厚さを高精度に推定することができる。
【0134】
膜厚の算出に用いる特徴量は、計測時点MTから数えて第1番目に現れる極値点での信号波形の強度In1に応じた位相Ph1と、計測時点MTでの信号波形の強度In2に応じた位相Ph2との差分(特徴量F4)であってもよい。特徴量F4と計測時点MTでの塗布膜AFの厚さとの間には比較的強い相関関係があることが見出された。そのため、処理液を用いた液処理をワークWに施す際に、特徴量F4を取得することで、塗布膜AFの厚さを高精度に推定することができる。
【0135】
膜厚の算出に用いる特徴量は、予め設定されたベース強度BIと、計測時点MTでの信号波形の強度Inmとの差分(特徴量F5)であってもよい。特徴量F5と計測時点MTでの塗布膜AFの厚さとの間には比較的強い相関関係があることが見出された。そのため、処理液を用いた液処理をワークWに施す際に、特徴量F5を取得することで、塗布膜AFの厚さを高精度に推定することができる。
【0136】
膜厚の算出に用いる特徴量は、予め設定されたベース強度BIに応じた位相と、計測時点MTでの信号波形の強度Inmに応じた位相との差分(特徴量F6)であってもよい。特徴量F6と計測時点MTでの塗布膜AFの厚さとの間には比較的強い相関関係があることが見出された。そのため、処理液を用いた液処理をワークWに施す際に、特徴量F6を取得することで、塗布膜AFの厚さを高精度に推定することができる。
【符号の説明】
【0137】
1…基板処理システム、2…塗布現像装置、20…膜厚推定装置、60…計測部、70A~70C,170…投受光デバイス、72…投光部、180,280,280A…投光デバイス、74…受光部、190,290…受光デバイス、80,80A…ミラー部材、82…反射面、84…膜、100…制御装置、122…投光制御部、124…信号取得部、126…特徴量取得部、128…膜厚算出部、134…モデル構築部、136…処理条件変更部、138…投光条件設定部、W…ワーク、Wa…表面、CP…中心、AF…塗布膜、Fa…外表面、P1~P3…照射箇所、F1~F6…特徴量。
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