(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】転写フィルム、積層体の製造方法、回路配線の製造方法、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20240801BHJP
G03F 7/11 20060101ALI20240801BHJP
G03F 7/027 20060101ALI20240801BHJP
H05K 3/06 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G03F7/004 512
G03F7/11 503
G03F7/027
H05K3/06 J
(21)【出願番号】P 2022544545
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2021030597
(87)【国際公開番号】W WO2022045002
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2020142918
(32)【優先日】2020-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】山田 悟
(72)【発明者】
【氏名】両角 一真
(72)【発明者】
【氏名】豊岡 健太郎
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-274321(JP,A)
【文献】特開2006-053487(JP,A)
【文献】特開2013-213851(JP,A)
【文献】特開昭47-046102(JP,A)
【文献】特開2009-204914(JP,A)
【文献】特開平09-325474(JP,A)
【文献】特開2012-247777(JP,A)
【文献】特開2014-123105(JP,A)
【文献】特開2013-037092(JP,A)
【文献】特開昭54-139720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00-7/42
H05K 3/06
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮支持体と、前記仮支持体上に配置された組成物層と、を有する転写フィルムであって、
前記組成物層は、アルカリ可溶性樹脂及び重合性化合物を含む感光性樹脂層と、水溶性樹脂を含む層である水溶性樹脂層と、を含み、
前記仮支持体、前記水溶性樹脂層、及び前記感光性樹脂層をこの順で積層してなり、
前記水溶性樹脂層は、下記一般式(1)で表される基を有する化合物Aを含み、
前記化合物Aが、下記一般式(4A)で表されるモノマーに由来する構成単位と下記一般式(5)で表されるモノマーに由来する構成単位とを含む高分子化合物であり、
前記水溶性樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ゼラチン、ビニルエーテル系樹脂、ポリアミド樹脂、及びこれらの共重合体から選ばれる1種以上を含む、転写フィルム。
一般式(1):*-CF
2-H
式中、*は、結合位置を表す。
【化1】
式中、R
1は、水素原子又はメチル基を表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、又は-N(R
2)-を表す。m及びnは、それぞれ独立に、1~6の整数を表す。R
2は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
【化2】
式中、R
3は、水素原子又はメチル基を表す。Yは、酸素原子、硫黄原子、又は-N(R
5)-を表す。ALは、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。nALは、2以上の整数を表す。R
4は、水素原子又は置換基を表す。R
5は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
【請求項2】
仮支持体と、前記仮支持体上に配置された組成物層と、を有する転写フィルムであって、
前記組成物層は、アルカリ可溶性樹脂及び重合性化合物を含む感光性樹脂層と、水溶性樹脂を含む層である水溶性樹脂層と、を含み、
前記仮支持体、前記水溶性樹脂層、及び前記感光性樹脂層をこの順で積層してなり、
前記水溶性樹脂層は、下記一般式(1)で表される基を有する化合物Aを含み、
前記化合物Aが、下記一般式(6B)で表される化合物であり、
前記水溶性樹脂は、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ゼラチン、ビニルエーテル系樹脂、ポリアミド樹脂、及びこれらの共重合体から選ばれる1種以上を含む、転写フィルム。
一般式(1):*-CF
2-H
式中、*は、結合位置を表す。
【化3】
式中、L
3は、酸素原子、硫黄原子、又は-N(R
6)-を表す。m及びnは、それぞれ独立に、1~6の整数を表す。R
6は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。R
7は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。ALは、置換基を有さないアルキレン基を表す。nALは、2以上の整数を表す。nAL個存在する、ALは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
【請求項3】
前記化合物Aが、重量平均分子量が5,000以上である、請求項1に記載の転写フィルム。
【請求項4】
前記化合物Aの分子量が2,000以下である、請求項2に記載の転写フィルム。
【請求項5】
前記水溶性樹脂層が、2種以上の水溶性樹脂を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項6】
更に、熱可塑性樹脂層を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項7】
前記仮支持体、前記熱可塑性樹脂層、前記水溶性樹脂層、及び前記感光性樹脂層をこの順で積層してなる、請求
項6に記載の転写フィルム。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の転写フィルムを用いた積層体の製造方法であって、
前記転写フィルム中の前記仮支持体上に配置された組成物層のうちの最外層の表面に基板を接触させて、前記転写フィルムと前記基板とを貼り合せ、転写フィルム付き基板を得る貼合工程と、
前記組成物層をパターン露光する露光工程と、
露光された前記組成物層を現像して樹脂パターンを形成する現像工程と、
更に、前記貼合工程と前記露光工程との間、又は、前記露光工程と前記現像工程との間に、転写フィルム付き基板から仮支持体を剥離する剥離工程と、含む、積層体の製造方法。
【請求項9】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の転写フィルムを用いた回路配線の製造方法であって、
前記転写フィルム中の前記仮支持体上に配置された組成物層のうちの最外層の表面を、導電層を有する基板に接触させて、前記転写フィルムと前記導電層を有する基板とを貼り合せ、転写フィルム付き基板を得る貼合工程と、
前記組成物層をパターン露光する露光工程と、
露光された前記組成物層を現像して樹脂パターンを形成する現像工程と、
前記樹脂パターンが配置されていない領域における前記導電層をエッチング処理するエッチング工程と、
更に、前記貼合工程と前記露光工程との間、又は、前記露光工程と前記現像工程との間に、転写フィルム付き基板から仮支持体を剥離する剥離工程と、を含む、回路配線の製造方法。
【請求項10】
請求項
8に記載の積層体の製造方法を含む電子デバイスの製造方法であって、
前記電子デバイスが前記樹脂パターンを硬化膜として含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写フィルム、積層体の製造方法、回路配線の製造方法、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感光性転写材料等の転写フィルムは、近年、多分野でますます利用されている。
感光性転写材料は製品のコストダウンに寄与できるため、エッチングレジスト用のフィルム及び配線保護膜用のフィルム等として使用することが提案されている。
一方で、感光性転写材料に求められる機能も益々高度化しており、複数の機能層を積層した構成とすることも検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、複数の機能層を積層してなるエッチングレジスト用の転写フィルム及び配線保護膜用の転写フィルムが開示されている。具体的には、仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層/感光性樹脂層を積層してなるエッチングレジスト用の転写フィルム(段落[0203]~[0207]等)、及び仮支持体/感光性樹脂層/第二の透明樹脂層を積層してなる配線保護膜用の転写フィルム(段落[0197]及び[0208]等)が開示されている。なお、上記中間層の主たる成分は、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンであり、上記第二の透明樹脂層の主たる成分は、金属酸化物粒子及びメタクリル酸/メタクリル酸アリルの共重合体である。つまり、上記中間層及び上記第二の透明樹脂層は、水溶性の高い樹脂を含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1を参照して、仮支持体と感光性樹脂層と水溶性の高い樹脂を含む層(水溶性樹脂層)を含み且つ仮支持体、水溶性樹脂層、及び感光性樹脂層がこの順で積層してなる転写フィルムを作製してレジストパターンとしての性能を検討したところ、凸部の剥がれ及び/又は凹部の残渣が生じる場合がある(つまり、解像性が劣る場合がある)ことを明らかとした。また、仮支持体と感光性樹脂層と水溶性樹脂層を含み且つ仮支持体、感光性樹脂層、及び水溶性樹脂層がこの順で積層してなる転写フィルムを作製して配線用保護膜としての性能を検討したところ、保護膜として機能する樹脂パターンに光学的なムラに起因する表面欠陥が生じる場合がある(つまり、面状性が劣る場合がある)ことを明らかとした。
【0006】
そこで、本発明は、解像性に優れたレジストパターンを形成できる転写フィルムを提供することを第1の課題とする。
また、本発明は、面状性に優れた樹脂パターンを形成できる転写フィルムを提供することを第2の課題とする。
更に、本発明は、上記の転写フィルムを用いた、積層体の製造方法、回路配線の製造方法、及び電子デバイスの製造方法を提供することを第3の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を達成できることを見出した。
【0008】
〔1〕 仮支持体と、上記仮支持体上に配置された組成物層と、を有する転写フィルムであって、
上記組成物層は、感光性樹脂層と、水溶性樹脂層と、を含み、
上記仮支持体、上記水溶性樹脂層、及び上記感光性樹脂層をこの順で積層してなるか、又は、上記仮支持体、上記感光性樹脂層、及び上記水溶性樹脂層をこの順で積層してなり、
上記水溶性樹脂層は、後述する一般式(1)で表される基を有する化合物Aを含む、転写フィルム。
〔2〕 上記化合物Aが、後述する一般式(2)で表される基を有する化合物である、〔1〕に記載の転写フィルム。
〔3〕 上記化合物Aが、後述する一般式(3)で表される基を有する化合物である、〔1〕又は〔2〕に記載の転写フィルム。
〔4〕 上記化合物Aが、重量平均分子量が5,000以上の高分子化合物である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔5〕 上記化合物Aが高分子化合物であって、
上記高分子化合物が、後述する一般式(4A)で表されるモノマーに由来する構成単位を含む、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔6〕 上記高分子化合物が、更に、後述する一般式(5)で表されるモノマーに由来する構成単位を含む、〔5〕に記載の転写フィルム。
〔7〕 上記化合物Aの分子量が2,000以下である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔8〕 上記化合物Aが、後述する一般式(6A)で表される化合物である、〔1〕~〔3〕及び〔7〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔9〕 上記Zが、置換基を有していてもよいポリ(オキシアルキレン)構造部位を含む1価の有機基を表す、〔8〕に記載の転写フィルム。
〔10〕 上記感光性樹脂層が、さらに、アルカリ可溶性樹脂と、重合性化合物と、を含む、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔11〕 上記水溶性樹脂層が、更に、金属酸化物粒子を含む、〔1〕~〔10〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔12〕 上記水溶性樹脂層が、2種以上の水溶性樹脂を含む、〔1〕~〔11〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔13〕 更に、熱可塑性樹脂層を有する、〔1〕~〔12〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔14〕 上記仮支持体、上記水溶性樹脂層、及び上記感光性樹脂層をこの順で積層してなる、〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔15〕 上記仮支持体、上記熱可塑性樹脂層、上記水溶性樹脂層、及び上記感光性樹脂層をこの順で積層してなる、〔14〕に記載の転写フィルム。
〔16〕 上記仮支持体、上記感光性樹脂層、及び上記水溶性樹脂層をこの順で積層してなる、〔1〕~〔13〕のいずれかに記載の転写フィルム。
〔17〕 〔1〕~〔16〕のいずれかに記載の転写フィルムを用いた積層体の製造方法であって、
上記転写フィルム中の上記仮支持体上に配置された組成物層のうちの最外層の表面に基板を接触させて、上記転写フィルムと上記基板とを貼り合せ、転写フィルム付き基板を得る貼合工程と、
上記組成物層をパターン露光する露光工程と、
露光された上記組成物層を現像して樹脂パターンを形成する現像工程と、
更に、上記貼合工程と上記露光工程との間、又は、上記露光工程と上記現像工程との間に、転写フィルム付き基板から仮支持体を剥離する剥離工程と、含む、積層体の製造方法。
〔18〕 〔1〕~〔15〕のいずれかに記載の転写フィルムを用いた回路配線の製造方法であって、
上記転写フィルム中の上記仮支持体上に配置された組成物層のうちの最外層の表面を、導電層を有する基板に接触させて、上記転写フィルムと上記導電層を有する基板とを貼り合せ、転写フィルム付き基板を得る貼合工程と、
上記組成物層をパターン露光する露光工程と、
露光された上記組成物層を現像して樹脂パターンを形成する現像工程と、
上記樹脂パターンが配置されていない領域における上記導電層をエッチング処理するエッチング工程と、
更に、上記貼合工程と上記露光工程との間、又は、上記露光工程と上記現像工程との間に、転写フィルム付き基板から仮支持体を剥離する剥離工程と、を含む、回路配線の製造方法。
〔19〕 〔17〕に記載の積層体の製造方法を含む電子デバイスの製造方法であって、
上記電子デバイスが上記樹脂パターンを硬化膜として含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、解像性に優れたレジストパターンを形成できる転写フィルムを提供できる。
また、本発明によれば、面状性に優れた樹脂パターンを形成できる転写フィルムを提供できる。
更に、上記の転写フィルムを用いた、積層体の製造方法、回路配線の製造方法、及び電子デバイスの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1態様の転写フィルムの構成の一例を示す概略図である。
【
図2】第2態様の転写フィルムの構成の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、表記される二価の基(例えば、-CO-O-)の結合方向は特に制限されない。
【0012】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート及びメタクリレートを表す。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸を表す。(メタ)アクリロイル基は、メタアクリロイル基又はアクリロイル基を表す。
【0013】
本明細書中における基(原子団)の表記について、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さない基と共に置換基を有する基をも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。また、本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
【0014】
また、本明細書において、「置換基を有していてもよい」というときの置換基の種類、置換基の位置、及び置換基の数は特に限定されない。置換基の数は例えば、1つ、2つ、3つ、又は、それ以上であってもよい。また、無置換であってもよい。
置換基の例としては水素原子を除く一価の非金属原子団を挙げられ、例えば、以下の置換基群Tから選択できる。
(置換基T)
置換基Tとしては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、及びtert-ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びp-トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、及びフェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、及びベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、及びメトキサリル基等のアシル基;メチルスルファニル基及びtert-ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基;フェニルスルファニル基及びp-トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基;アルキル基;シクロアルキル基;アリール基;ヘテロアリール基;水酸基;カルボキシ基;ホルミル基;スルホ基;シアノ基;アルキルアミノカルボニル基;アリールアミノカルボニル基;スルホンアミド基;シリル基;アミノ基;モノアルキルアミノ基;ジアルキルアミノ基;アリールアミノ基;ならびに、これらの組み合わせが挙げられる。
【0015】
本明細書において、特段の断りのない限り、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出した値である。
GPCは、下記の条件で測定する。
[溶離液] テトラヒドロフラン(THF)
[装置名] EcoSEC HLC-8320GPC(東ソー社製)
[カラム] TSKgel SuperHZM-H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製))
[カラム温度] 40℃
[流速] 0.35ml/min
【0016】
本明細書において、特段の断りがない限り、分子量分布がある化合物の分子量は、重量平均分子量(Mw)である。
【0017】
本明細書において、特段の断りがない限り、室温は25℃である。
【0018】
本明細書において、「アルカリ可溶性」とは、22℃において炭酸ナトリウムの1質量%水溶液100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。したがって、例えば、アルカリ可溶性樹脂とは、上述の溶解度条件を満たす樹脂を意図する。
本明細書において「水溶性」とは、液温が22℃であるpH7.0の水100gへの溶解度が0.1g以上であることを意味する。したがって、例えば、水溶性樹脂とは、上述の溶解度条件を満たす樹脂を意図する。
【0019】
本明細書において、組成物の「固形分」とは、組成物を用いて形成される組成物層を形成する成分を意味し、組成物が溶剤(有機溶剤、水等)を含む場合、溶剤を除いたすべての成分を意味する。また、組成物層を形成する成分であれば、液体状の成分も固形分とみなす。
【0020】
本明細書において、転写フィルム等が備える各層の層厚(膜厚)は、層(膜)の主面に対し垂直な方向の断面を走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により観察し、得られた観察画像に基づいて各層の厚さを10点以上計測し、その平均値を算出することにより、測定される。
【0021】
本発明の転写フィルムは、仮支持体と、上記仮支持体上に配置された組成物層と、を有する転写フィルムであって、
上記組成物層は、感光性樹脂層と、水溶性樹脂層と、を含み、
上記仮支持体、上記水溶性樹脂層、及び上記感光性樹脂層をこの順で積層してなるか、又は、上記仮支持体、上記感光性樹脂層、上記水溶性樹脂層をこの順で積層してなる。
また、上記水溶性樹脂層は、下記一般式(1)で表される基を有する化合物A(以下「化合物A」と略記する)を含む。
一般式(1):*-CF2-H
式中、*は、結合位置を表す。
つまり、本発明の転写フィルムは、
仮支持体と、仮支持体上に配置された組成物層と、を有する転写フィルムであって、
上記組成物層は、感光性樹脂層と、水溶性樹脂層と、を含み、
上記仮支持体、上記水溶性樹脂層、及び上記感光性樹脂層をこの順で積層してなり、且つ、上記水溶性樹脂層が化合物Aを含む構成である(以下「第1態様の転写フィルム」ともいう)か、
又は、
仮支持体と、仮支持体上に配置された組成物層と、を有する転写フィルムであって、
上記組成物層は、感光性樹脂層と、水溶性樹脂層と、を含み、
上記仮支持体、上記感光性樹脂層、及び上記水溶性樹脂層をこの順で積層してなり、且つ、上記水溶性樹脂層が化合物Aを含む構成(以下「第2態様の転写フィルム」ともいう)である。
【0022】
第1態様の転写フィルムによれば、解像性に優れたレジストパターンを形成でき、第2態様の転写フィルムによれば、面状性に優れた樹脂パターンを形成できる。
このような構成で本発明の課題が解決されるメカニズムは必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のように推察している。
本発明者らは、仮支持体と、感光性樹脂層と、化合物Aを含む水溶性樹脂層とを有する転写フィルムにおいて、化合物Aは、水溶性樹脂層の膜厚ムラの発生を抑制する機能を果たしていると考えている。この結果として、第1態様の転写フィルムを用いてレジストパターンを形成した場合、膜厚ムラに起因して生じ得る凸部の剥がれ及び/又はパターン凹部の残渣を抑制できる。すなわち、第1態様の転写フィルムによれば、解像性に優れたレジストパターンを形成できる。また、第2態様の転写フィルムを用いて樹脂パターンを形成した場合、膜厚ムラに起因して生じ得る光学ムラ(表面欠陥)を抑制できる。すなわち、第2態様の転写フィルムによれば、面状性に優れた膜(例えば、配線保護膜等の硬化膜)を形成できる。
なお、以下において、解像性により優れたレジストパターンを形成できること、及び/又は、面状性に優れた樹脂パターンを形成できることを、「本発明の効果により優れる」という場合もある。
【0023】
また、化合物Aが、分子量が2,000以下であり且つ後述する一般式(6B)で表される低分子化合物Aである場合、又は、重量平均分子量が2,000超15,000以下であり且つ後述する一般式(4)で表される構成単位及び後述する一般式(5)で表される構成単位を含む高分子化合物Aである場合、本発明の効果がより優れることを明らかとしている。
【0024】
上記感光性樹脂層は、ネガ型感光性樹脂層であってもよいし、化学増幅型感光性樹脂層であってもよいが、ネガ型感光性樹脂層であるのが好ましい。
また、上記の組成物層は、感光性樹脂層及び水溶性樹脂層以外のその他の層を含んでいてもよい。その他の層としては、例えば、熱可塑性樹脂層等が挙げられる。
以下に、本発明の転写フィルムの態様の一例を示すが、これに制限されない。なお、下記(1)及び(3)は、第1態様の転写フィルムの一例に該当し、下記(2)は、第2態様の転写の転写フィルムの一例に該当する。
(1)「仮支持体/熱可塑性樹脂層/中間層(水溶性樹脂層)/ネガ型感光性樹脂層/カバーフィルム」
(2)「仮支持体/ネガ型感光性樹脂層/屈折率調整層(水溶性樹脂層)/カバーフィルム」
(3)「仮支持体/中間層(水溶性樹脂層)/ネガ型感光性樹脂層/カバーフィルム」
なお、上記各構成において、ネガ型感光性樹脂層が着色樹脂層であることも好ましい。
【0025】
以下において、上述した第1態様の転写フィルム及び第2態様の転写フィルムについて各々説明する。
【0026】
〔第1態様の転写フィルム〕
以下において、第1態様の転写フィルムの実施形態の一例について説明する。
図1に示す転写フィルム10は、仮支持体1と、熱可塑性樹脂層3と、水溶性樹脂層5と、感光性樹脂層7と、カバーフィルム9とを、この順に有する。
なお、
図1で示す転写フィルム10はカバーフィルム9を配置した形態であるが、カバーフィルム9は、配置されなくてもよい。
また、
図1で示す転写フィルム10は熱可塑性樹脂層3を配置した形態であるが、熱可塑性樹脂層3は、配置されなくてもよい。
以下において、転写フィルムを構成する各要素について説明する。
【0027】
<<仮支持体>>
第1態様の転写フィルムは、仮支持体を有する。
仮支持体は、仮支持体上に配置される複数の組成物層(組成物層としては、例えば、感光性樹脂層、水溶性樹脂層、及び熱可塑性樹脂層等が該当する)を支持し、且つ、これらの組成物層から剥離可能な支持体である。
【0028】
仮支持体は、上記組成物層をパターン露光する際に、仮支持体を介した露光が可能になる観点から、光透過性を有することが好ましい。なお、本明細書において「光透過性を有する」とは、パターン露光に使用する波長の光の透過率が50%以上であることを意味する。
仮支持体は、露光感度向上の観点から、パターン露光に使用する波長(より好ましくは波長365nm)の光の透過率は、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。
なお、転写フィルムが備える層の透過率とは、層の主面に垂直な方向(厚さ方向)に光を入射させたときの、入射光の強度に対する層を通過して出射した出射光の強度の比率であり、大塚電子社製MCPD Seriesを用いて測定される。
【0029】
仮支持体を構成する材料としては、例えば、ガラス基板、樹脂フィルム、及び紙が挙げられ、強度、可撓性及び光透過性の観点から、樹脂フィルムが好ましい。
樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET:polyethylene terephthalate)フィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。なかでも、PETフィルムが好ましく、2軸延伸PETフィルムがより好ましい。
【0030】
仮支持体の厚さ(層厚)は、特に制限されず、支持体としての強度、回路配線形成用基板との貼り合わせに求められる可撓性、及び最初の露光工程で要求される光透過性の観点から、材質に応じて選択すればよい。
仮支持体の厚さは、5~100μmが好ましく、取扱い易さ及び汎用性のから、10~50μmがより好ましく、10~20μmが更に好ましく、10~16μmが特に好ましい。
【0031】
また、仮支持体として使用するフィルムには、シワ等の変形、傷、及び欠陥等がないことが好ましい。
仮支持体を介するパターン露光時のパターン形成性、及び仮支持体の透明性の観点から、仮支持体に含まれる微粒子、異物、欠陥、及び析出物等の数は少ない方が好ましい。直径1μm以上の微粒子や異物や欠陥の数は、50個/10mm2以下が好ましく、10個/10mm2以下がより好ましく、3個/10mm2以下が更に好ましく、0個/10mm2が特に好ましい。
【0032】
仮支持体の好ましい態様としては、例えば、特開2014-085643号公報の段落0017~段落0018、特開2016-027363号公報の段落0019~0026、WO2012/081680A1公報の段落0041~0057、WO2018/179370A1公報の段落0029~0040、及び特開2019-101405号公報の段落0012~段落0032に記載があり、これらの公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0033】
<<カバーフィルム>>
転写フィルムは、仮支持体上に配置された複数の組成物層のうち仮支持体から最も離れた組成物層の最表面に接するカバーフィルムを有することが好ましい。
【0034】
カバーフィルムを構成する材料としては、樹脂フィルム及び紙が挙げられ、強度及び可撓性の観点から、樹脂フィルムが好ましい。
樹脂フィルムとしては、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、及びポリカーボネートフィルムが挙げられる。なかでも、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、又はポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
【0035】
カバーフィルムの厚さ(層厚)は、特に制限されないが、5~100μmが好ましく、10~50μmがより好ましい。
また、カバーフィルムの組成物層に接する面(以下単に「カバーフィルムの表面」ともいう)の算術平均粗さRa値は、解像性により優れるから、0.3μm以下が好ましく、0.1μm以下がより好ましく、0.05μm以下が更に好ましい。カバーフィルムの表面のRa値が上記範囲であることにより、形成される樹脂パターンの層厚の均一性が向上するためと考えられる。
カバーフィルムの表面のRa値の下限は特に制限されないが、0.001μm以上が好ましい。
【0036】
カバーフィルムの表面のRa値は、以下の方法で測定される。
3次元光学プロファイラー(New View7300、Zygo社製)を用いて、以下の条件にてカバーフィルムの表面を測定し、光学フィルムの表面プロファイルを得る。
測定・解析ソフトとしては、MetroPro ver8.3.2のMicroscope Applicationを用いる。次に、上記解析ソフトにてSurface Map画面を表示し、Surface Map画面中でヒストグラムデータを得る。得られたヒストグラムデータから、算術平均粗さを算出し、カバーフィルムの表面のRa値を得る。
カバーフィルムが転写フィルムに貼り合わされている場合は、転写フィルムからカバーフィルムを剥離して、剥離した側の表面のRa値を測定すればよい。
【0037】
<<水溶性樹脂層>>
転写フィルム10において、水溶性樹脂層5は、熱可塑性樹脂層3と感光性樹脂層7との間に存在することにより、熱可塑性樹脂層3及び感光性樹脂層7の塗布形成の際及び塗布形成後の保存の際に生じ得る成分の混合を抑制できる。つまり、第1態様の転写フィルムの一態様として、水溶性樹脂層は、水溶性樹脂層の一方の面側に配置される層と他方の面側に配置される層との層間混合を抑制するための層(中間層)として機能し得る。
水溶性樹脂層5は、化合物Aと樹脂とを含む。上記樹脂はその一部又は全部として、水溶性樹脂を含む。「水溶性樹脂」とは、既述の定義のとおり、液温が22℃であるpH7.0の水100gへの溶解度が0.1g以上である樹脂を意味する。
以下、水溶性樹脂層が含み得る各成分について説明する。
【0038】
<化合物A>
水溶性樹脂層は、化合物Aを含む。
化合物Aは、下記一般式(1)で表される基を有する化合物である。
一般式(1):*-CF2-H
式中、*は、結合位置を表す。
【0039】
化合物Aは、高分子化合物であってもよく、低分子化合物であってもよい。なお、化合物Aが高分子化合物である場合、高分子化合物である化合物Aを「高分子化合物A」という場合もある。また、化合物Aが低分子化合物である場合、低分子化合物である化合物Aを「低分子化合物A」という場合もある。
【0040】
高分子化合物Aの重量平均分子量の下限値としては、1,000以上が好ましく、1,500以上がより好ましく、2,000超が更に好ましく、5,000以上が特に好ましい。また、その上限値としては、100,000以下が好ましく、80,000以下がより好ましく、60,000以下が更に好ましく、40,000以下が更により好ましく、20,000以下が特に好ましく、15,000以下が最も好ましい。
高分子化合物Aの数平均分子量(Mn)は、500~40,000が好ましく、600~20,000がより好ましく、600~10,000が更に好ましい。
高分子化合物Aの分散度(Mw/Mn)は、1.00~12.00が好ましく、1.00~11.00がより好ましく、1.00~10.00が更に好ましい。
高分子化合物Aは、一般式(1)で表される基を有する構成単位を含むのが好ましい。
【0041】
低分子化合物Aの分子量としては、100以上が好ましく、500以上がより好ましい。低分子化合物Aの分子量の上限は、5,000以下が好ましく、3,000以下がより好ましく、2,000以下が更に好ましい。
低分子化合物A中の一般式(1)で表される基の個数としては、1個以上であれば特に制限されないが、例えば、1~3であるのが好ましい。
【0042】
高分子化合物A及び低分子化合物Aの具体的な態様については、後段部にて説明する。
【0043】
また、本発明の効果がより優れる点で、化合物Aとしては、後述する一般式(2)で表される基を有する化合物(以下「化合物Aa」ともいう)であるのが好ましく、後述する一般式(3)で表される基を有する化合物(以下「化合物Ab」ともいう)であるのがより好ましい。
【0044】
なお、化合物Aaは、化合物Aにおける一般式(1)で表される基の連結形態をより限定した化合物に該当する。つまり、化合物Aa中の一般式(2)で表される基の末端部位に存在する-CF2-Hは、上述した一般式(1)で表される基に該当する。また、化合物Abは、化合物Aにおける一般式(1)で表される基の連結形態及び化合物Aaにおける一般式(2)で表される基の連結形態をより限定した化合物を意図する。つまり、化合物Ab中の一般式(3)で表される基の末端部位に存在する-CF2-Hは、上述した一般式(1)で表される基に該当し、化合物Ab中の一般式(3)で表される基の末端部位に存在する-CF2-CF2-Hは、上述した一般式(2)で表される基に該当する。
【0045】
一般式(2):*-CF2-CF2-H
式中、*は、結合位置を表す。
【0046】
一般式(3):*-(CH2)m-(CF2-CF2)n-H
式中、m及びnは、それぞれ独立に、1~6の整数を表す。
mとしては、1~4であるのが好ましく、1又は2であるのがより好ましい。
nとしては、1~4であるのが好ましく、2又は3であるのがより好ましい。
*は、結合位置を表す。
【0047】
以下、高分子化合物A及び低分子化合物Aについて、それぞれ説明する。
【0048】
(高分子化合物A)
高分子化合物Aとは、上述のとおり、化合物Aが高分子化合物である場合の態様である。高分子化合物Aの重量平均分子量及び分散度の好適態様については、既述のとおりである。
高分子化合物Aとしては、上述した一般式(1)~(3)のいずれかで表される基を有する構成単位を含むのが好ましく、後述する一般式(4)で表されるモノマーに由来する構成単位を含むのがより好ましく、後述する一般式(4A)で表されるモノマーに由来する構成単位を含むのが更に好ましい。なお、後述する一般式(4)で表されるモノマーに由来する構成単位は、上述した一般式(1)又は(2)で表される基を有する構成単位に該当し、後述する一般式(4A)で表されるモノマーに由来する構成単位は、上述した一般式(3)で表される基を有する構成単位に該当する。
【0049】
【0050】
一般式(4)中、R1は、水素原子又はメチル基を表す。Xは、酸素原子、硫黄原子、又は-N(R2)-を表す。R2は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。L1は、2価の連結基を表す。RTは、上述した一般式(1)又は(2)で表される基を表す。
【0051】
R2で表される炭素数1~4のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。
【0052】
R1としては、水素原子が好ましい。
R2としては、水素原子又は炭素数1~2のアルキル基が好ましく、炭素数1~2のアルキル基がより好ましい。
Xとしては、酸素原子が好ましい。
【0053】
L1で表される2価の連結基としては特に制限されないが、例えば、-O-、-CO-、-S-、-SO2-、-NRX-(RXは、水素原子又は置換基)、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、芳香環基、脂環基、及びこれらを組み合わせた基が挙げられる。上記RXで表される置換基としては特に制限されず、例えば、置換基群Tに例示した置換基が挙げられ、炭素数1又は2のアルキル基が好ましい。
上記アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、芳香環基、及び脂環基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては特に制限されず、例えば、置換基群Tに例示した置換基が挙げられる。置換基としては、なかでも、ハロゲン原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0054】
上記アルキレン基、上記アルケニレン基、及び上記アルキニレン基としては、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。
また、上記アルキレン基の炭素数としては、1~20が好ましく、1~15がより好ましく、1~11が更に好ましく、1~10が特に好ましい。
また、上記アルケニレン基及び上記アルキニレン基の炭素数としては、2~20が好ましく、2~15がより好ましく、2~11が更に好ましく、2~10が特に好ましい。
【0055】
上記芳香環基は、芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基のいずれであってもよい。
上記芳香環基を構成する芳香環は、単環であっても多環であってもよい。また、上記芳香環基を構成する芳香環の環員数としては特に制限されないが、例えば、5~15である。また、上記芳香族複素環基が含むヘテロ原子の数は特に制限されず、例えば、1~3個であるのが好ましい。ヘテロ原子の種類としては特に制限されないが、例えば、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子等が挙げられる。
上記芳香環基を構成する芳香環の種類としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、及びフェナンスロリン環等の芳香族炭化水素環;フラン環、ピロール環、チオフェン環、ピリジン環、チアゾール環、及びベンゾチアゾール環等の芳香族複素環が挙げられる。
【0056】
上記脂環基は、脂肪族炭化水素環基及び脂肪族複素環基のいずれであってもよい。
上記脂環基を構成する脂環は、単環であっても多環であってもよい。また、上記脂環基を構成する脂環の環員数としては特に制限されないが、例えば、5~15である。また、上記脂肪族複素環基が含むヘテロ原子の数は特に制限されず、例えば、1~3個であるのが好ましい。ヘテロ原子の種類としては特に制限されないが、例えば、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子等が挙げられる。
上記脂環基を構成する脂環としては、例えば、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロオクタン環、シクロデカン環、アダマンタン環、ノルボルナン環、及びexo-テトラヒドロジシクロペンタジエン環等のシクロアルカン環、及びシクロヘキセン環が挙げられる。
【0057】
L1で表される2価の連結基としては、なかでも、*A-フッ素原子で置換されていてもよいアルキレン基-*B、*A-フッ素原子で置換されていてもよいアルケニレン基-*B、又は*A-フッ素原子で置換されていてもよいアルキニレン基-*Bが好ましく、*A-フッ素原子で置換されていてもよいアルキレン基-*Bがより好ましい。なお、*Aは、一般式(4)中のXとの連結位置を表し、*Bは、一般式(4)中のRTとの連結位置を表す。
【0058】
【0059】
一般式(4A)中、R1及びXは、各々、一般式(4)中のR1及びXと同義であり、好適態様も同じである。
m及びnは、それぞれ独立に、1~6の整数を表す。mとしては、1~4であるのが好ましく、1又は2であるのがより好ましい。nとしては、1~4であるのが好ましく、2又は3であるのがより好ましい。
【0060】
高分子化合物A中、上述した一般式(1)~(3)のいずれかで表される基を有する構成単位の含有量の下限値としては、高分子化合物Aの全質量に対して、2質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上が更に好ましい。また、上限値としては、100質量%以下が好ましく、90質量%がより好ましく、80質量%が更に好ましい。
一般式(1)~(3)のいずれかで表される基を有する構成単位としては、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
一般式(1)~(3)のいずれかで表される基を有する構成単位は、公知の方法で合成できる。
【0061】
高分子化合物Aは、一般式(1)~(3)のいずれかで表される基を有する構成単位以外の他の構成単位(以下「他の構成単位」ともいう)を有していてもよい。
他の構成単位としては特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、ポリ(オキシアルキレン)構造を有する構成単位を含むのが好ましい。
ポリ(オキシアルキレン)構造としては、下記一般式(PAL)で表される構造であるのが好ましい。
【0062】
【0063】
一般式(PAL)中、nALは、2以上の整数を表し、2~100がより好ましく、4~20が更に好ましく、4~15が特に好ましく、4~12が最も好ましい。
ALは、アルキレン基を表す。上記アルキレン基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。ALで表されるアルキレン基の炭素数としては、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、2~4が更に好ましく、2又は3が特に好ましい。
nAL個存在する、ALは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
また、ALで表されるアルキレン基は置換基を有していてもよい。置換基としては特に制限されないが、例えば、置換基群Tで例示した置換基が挙げられる。
ALとしては、なかでも、-CH2CH2-、-CH2CH2CH2-、-CH(CH3)CH2-、又は、-CH(CH2CH3)CH2-が好ましく、-CH(CH3)CH2-、又は-CH2CH2CH2-がより好ましい。
*は、結合位置を表す。
【0064】
ポリ(オキシアルキレン)構造を有する構成単位としては、側鎖にポリ(オキシアルキレン)構造を有しているのが好ましく、後述する一般式(5)で表されるモノマーに由来する構成単位であるのがより好ましい。
【0065】
【0066】
式中、R3は、水素原子又はメチル基を表す。Yは、酸素原子、硫黄原子、又は-N(R5)-を表す。ALは、置換基を有していてもよいアルキレン基を表す。nALは、2以上の整数を表す。R4は、水素原子又は置換基を表す。R5は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0067】
一般式(5)中のAL及びnALは、各々、一般式(PAL)中のAL及びnALと同義であり、好適態様も同じである。
R4で表される置換基としては特に制限されず、置換基群Tで例示した置換基が挙げられ、炭素数1~6のアルキル基であるのが好ましい。
R5で表される炭素数1~4のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。
【0068】
R3及びR4としては、水素原子が好ましい。
R5としては、水素原子又は炭素数1~2のアルキル基が好ましく、炭素数1~2のアルキル基がより好ましい。
Yとしては、酸素原子が好ましい。
【0069】
高分子化合物Aがポリ(オキシアルキレン)構造を有する構成単位を含む場合、その含有量は、高分子化合物Aの全質量に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましい。また、その上限値としては、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
ポリ(オキシアルキレン)構造を有する構成単位は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
【0070】
高分子化合物Aが含み得る他の構成単位としては、上述の構成単位のほか、例えば、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位であるのも好ましい。
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、アルキル基の炭素数が1~18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、及び(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。
【0071】
高分子化合物Aが(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸に由来する構成単位からなる群から選ばれる構成単位を含む場合、その含有量は、高分子化合物Aの全質量に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。また、上限値としては、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
【0072】
高分子化合物Aが共重合体である場合、高分子化合物Aは、ブロック構造、グラフト構造、ブランチ構造、及び/又は、スター構造を有することも好ましい。
【0073】
高分子化合物Aを構成する各種モノマー及び高分子化合物Aは、公知の方法により製造できる。
【0074】
(低分子化合物A)
低分子化合物Aとは、上述のとおり、化合物Aが低分子化合物である場合の態様である。低分子化合物Aの分子量の好適態様については、既述のとおりである。
【0075】
低分子化合物Aとしては、上述した一般式(1)~(3)のいずれかで表される基を有する化合物であるのが好ましく、後述する(6)で表される化合物であるのがより好ましく、後述する一般式(6A)で表される化合物であるのが更に好ましく、後述する一般式(6B)で表される化合物であるのが特に好ましい。なお、後述する一般式(6)で表される化合物は、上述した一般式(1)又は(2)で表される基を有する化合物に該当し、後述する一般式(6A)又は(6B)で表される化合物は、上述した一般式(3)で表される基を有する化合物に該当する。
【0076】
【0077】
一般式(6)中、Zは、1価の有機基を表す。L2は、単結合又は2価の連結基を表す。RTは、上述した一般式(1)又は(2)で表される基を表す。
【0078】
Zで表される1価の有機基としては特に制限されないが、例えば、ヘテロ原子を含んでいてもよい(なお、ヘテロ原子は、例えば、-O-、-CO-、-S-、-SO2-、及び-NRX-(RXは、水素原子又は置換基)として含まれていてもよい)、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基が挙げられる。上記RXで表される置換基としては特に制限されず、例えば、置換基群Tに例示した置換基が挙げられる。
上記アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基は、更に置換基を有していてもよい。置換基としては特に制限されず、例えば、置換基群Tに例示した置換基が挙げられる。
上記アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基としては、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
また、上記アルキル基の炭素数としては特に制限されないが、例えば、1~40であり、1~30が好ましく、1~20がより好ましい。
また、上記アルケニル基及び上記アルキニル基の炭素数としては特に制限されないが、例えば、2~40であり、2~30が好ましく、2~20がより好ましい。
【0079】
Zとしては、なかでも、ポリ(オキシアルキレン)構造を有する1価の有機基であるのが好ましい。ポリ(オキシアルキレン)構造としては、上述した一般式(PAL)で表される構造であるのが好ましい。
なお、Zの一般式(6)中のL2との連結位置の原子は、炭素原子であるのが好ましい。
【0080】
L2で表される2価の連結基としては、例えば、上述の一般式(4)におけるL1で表される2価の連結基と同様のものが挙げられる。
L2で表される2価の連結基としては、なかでも、*A-L21-フッ素原子で置換されていてもよいアルキレン基-*B、*A-L21-フッ素原子で置換されていてもよいアルケニレン基-*B、又は、*A-L21-フッ素原子で置換されていてもよいアルキニレン基-*Bが好ましく、*A-L21-フッ素原子で置換されていてもよいアルキレン基-*Bがより好ましい。
L21は、-O-、-CO-、-S-、-SO2-、-NRX-(RXは、水素原子又は置換基)、又は、これらを組み合わせた基を表す。上記RXで表される置換基としては特に制限されず、例えば、置換基群Tに例示した置換基が挙げられ、炭素数1又は2のアルキル基が好ましい。L21としては、なかでも、-O-、-S-、又は-NRX-であるのが好ましく、-O-であるのがより好ましい。
*Aは、一般式(6)中のZとの連結位置を表し、*Bは、一般式(6)中のRTとの連結位置を表す。
【0081】
【0082】
式中、Zは、1価の有機基を表す。L3は、酸素原子、硫黄原子、又は-N(R6)-を表す。m及びnは、それぞれ独立に、1~6の整数を表す。R6は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0083】
一般式(6A)中のZで表される1価の有機基としては、一般式(6)中のZで表される1価の有機基と同様のものが挙げられ、好適態様も同じである。
R6で表される炭素数1~4のアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。
L3としては、酸素原子が好ましい。
mとしては、1~4であるのが好ましく、1又は2であるのがより好ましい。
nとしては、1~4であるのが好ましく、2又は3であるのがより好ましい。
【0084】
【0085】
一般式(6B)中のAL及びnALは、各々、一般式(PAL)中のAL及びnALと同義であり、好適態様も同じである。
一般式(6B)中のL3、m、及びnは、各々、一般式(6A)中のL3、m、及びnと同義であり、好適態様も同じである。
【0086】
一般式(6B)中、R7は、水素原子又は置換基を表す。
R7で表される置換基としては特に制限されず、置換基群Tで例示した置換基が挙げられ、炭素数1~6のアルキル基であるのが好ましい。
R7としては、水素原子であるのが好ましい。
【0087】
低分子化合物Aは、公知の方法により製造できる。
【0088】
以下において、化合物Aの具体例を例示するが、本発明における化合物Aはこれに制限されない。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
化合物Aが高分子化合物Aを含む場合、高分子化合物Aは、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
化合物Aが低分子化合物Aを含む場合、低分子化合物Aは、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
水溶性樹脂層は、化合物Aとして、高分子化合物Aのみを使用する形態、低分子化合物Aのみを使用する形態、及び高分子化合物Aと低分子化合物Aを併用する形態のいずれであってもよい。
化合物Aの含有量(複数種含まれる場合には、その合計含有量)は、水溶性樹脂層の全質量に対して、0.001~10質量%が好ましく、0.01~3質量%がより好ましく、0.02~1質量%が更に好ましい。
【0094】
<樹脂>
水溶性樹脂層は、樹脂を含む。
既述のとおり、上記樹脂は、その一部又は全部として、水溶性樹脂を含む。
水溶性樹脂として使用可能な樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリビニルピロリドン系樹脂、セルロース系樹脂、アクリルアミド系樹脂、ポリエチレンオキサイド系樹脂、ゼラチン、ビニルエーテル系樹脂、ポリアミド樹脂、及びこれらの共重合体等の樹脂が挙げられる。
また、水溶性樹脂としては、(メタ)アクリル酸/ビニル化合物の共重合体等も使用できる。(メタ)アクリル酸/ビニル化合物の共重合体としては、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アリルの共重合体が好ましく、メタクリル酸/メタクリル酸アリルの共重合体がより好ましい。
水溶性樹脂が(メタ)アクリル酸/ビニル化合物の共重合体である場合、各組成比(モル%)としては、例えば、90/10~20/80が好ましく、80/20~30/70がより好ましい。
【0095】
水溶性樹脂の重量平均分子量の下限値としては、5,000以上が好ましく、7,000以上がより好ましく、10,000以上が更に好ましい。また、その上限値としては、200,000以下が好ましく、100,000以下がより好ましく、50,000以下が更に好ましい。
水溶性樹脂の分散度(Mw/Mn)は、1~10が好ましく、1~5がより好ましい。
【0096】
なお、水溶性樹脂層の層間混合抑制能をより向上させる点で、水溶性樹脂層中の樹脂は、水溶性樹脂層の一方の面側に配置される層に含まれる樹脂及び他方の面側に配置される層に含まれる樹脂とは異なる樹脂であることが好ましい。例えば、感光性樹脂層7中に後述する重合体Aが含まれ、熱可塑性樹脂層3中に後述する熱可塑性樹脂(アルカリ可溶性樹脂)が含まれる場合、水溶性樹脂層5の樹脂は、重合体A及び熱可塑性樹脂(アルカリ可溶性樹脂)とは異なる樹脂であるのが好ましい。
【0097】
水溶性樹脂は、酸素遮断性、並びに、層間混合抑制能をより向上させる点で、ポリビニルアルコールを含むことが好ましく、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンの両者を含むことがより好ましい。
【0098】
水溶性樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
水溶性樹脂の含有量は特に制限されないが、酸素遮断性、並びに、層間混合抑制能をより向上させる点で、水溶性樹脂層の全質量に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が更に好ましく、90質量%以上が特に好ましい。なお、その上限値としては特に制限されないが、例えば、99.9質量%以下が好ましく、99.8質量%以下が更に好ましい。
【0099】
水溶性樹脂層の層厚は、特に制限されないが、0.1~5μmが好ましく、0.5~3μmがより好ましい。水溶性樹脂層の厚みが上記の範囲内であると、酸素遮断性を低下させることがなく、層間混合抑制能が優れる。また、更に、現像時の水溶性樹脂層除去時間の増大も抑制できる。
【0100】
<<感光性樹脂層>>
静電容量型入力装置等のタッチパネルを備えた表示装置(有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置及び液晶表示装置等)では、視認部のセンサーに相当する電極パターン、周辺配線部分及び取り出し配線部分の配線等の導電層パターンがタッチパネル内部に設けられている。一般的にパターン化した層の形成には、転写フィルム等を用いて基板上にネガ型感光性樹脂層(感光層)を設け、その感光層に対して所望のパターンを有するマスクを介して露光した後、現像する方法が広く採用されている。したがって、感光性樹脂層としては、ネガ型感光性樹脂層であるのが好ましい。
【0101】
感光性樹脂層がネガ型感光性樹脂層である場合、ネガ型感光性樹脂層は、樹脂、重合性化合物、及び重合開始剤を含むことが好ましい。また、感光性樹脂層がネガ型感光性樹脂層である場合、後述の通り、樹脂の一部又は全部としてアルカリ可溶性樹脂(アルカリ可溶性樹脂である重合体A等)が含まれることも好ましい。つまり、一態様において、感光性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂を含む樹脂、重合性化合物、及び重合開始剤を含むのが好ましい。
このような感光性樹脂層(ネガ型感光性樹脂層)は、感光性樹脂層の全質量を基準として、樹脂:10~90質量%;重合性化合物:5~70質量%;重合開始剤:0.01~20質量%を含むことが好ましい。
以下において、各成分を順に説明する。
【0102】
<重合体A(樹脂)>
感光性樹脂層がネガ型感光性樹脂層である場合に、感光性樹脂層中に含まれる樹脂を、特に、重合体Aともいう。
重合体Aは、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
重合体Aの酸価は、現像液によるネガ型感光性樹脂層の膨潤を抑制することにより、解像性がより優れる観点から、220mgKOH/g以下が好ましく、200mgKOH/g未満がより好ましく、190mgKOH/g未満が更に好ましい。
重合体Aの酸価の下限は特に制限されないが、現像性がより優れる観点から、60mgKOH/g以上が好ましく、120mgKOH/g以上がより好ましく、150mgKOH/g以上が更に好ましく、170mgKOH/g以上が特に好ましい。
【0103】
なお、酸価は、試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの質量[mg]であり、本明細書においては、単位をmgKOH/gと記載する。酸価は、例えば、化合物中における酸基の平均含有量から算出できる。
重合体Aの酸価は、重合体Aを構成する構成単位の種類及び酸基を含む構成単位の含有量により調整すればよい。
【0104】
重合体Aの重量平均分子量は、5,000~500,000が好ましい。重量平均分子量が500,000以下の場合、解像性及び現像性を向上させる観点から好ましい。重量平均分子量は、100,000以下がより好ましく、60,000以下が更に好ましい。一方で、重量平均分子量が5,000以上の場合、現像凝集物の性状、並びにネガ型感光性樹脂積層体とした場合のエッジフューズ性及びカットチップ性等の未露光膜の性状を制御する観点から好ましい。重量平均分子量は、10,000以上がより好ましく、20,000以上が更に好ましく、30,000以上が特に好ましい。エッジフューズ性とは、ネガ型感光性樹脂積層体としてロール状に巻き取った場合に、ロールの端面からの、ネガ型感光性樹脂層のはみ出し易さの程度をいう。カットチップ性とは、未露光膜をカッターで切断した場合に、チップの飛び易さの程度をいう。このチップがネガ型感光性樹脂積層体の上面等に付着すると、後の露光工程等でマスクに転写して、不良品の原因となる。重合体Aの分散度は、1.0~6.0が好ましく、1.0~5.0がより好ましく、1.0~4.0が更に好ましく、1.0~3.0が特に好ましい。
【0105】
ネガ型感光性樹脂層は、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太りや解像度の悪化を抑制する観点から、重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体に基づく構成単位を含むことが好ましい。なお、このような芳香族炭化水素基としては、例えば、置換又は非置換のフェニル基、及び置換又は非置換のアラルキル基が挙げられる。重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体に基づく構成単位の含有量は、重合体Aの全質量に対して、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。上限としては特に限定されないが、95質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましい。なお、重合体Aを複数種類含む場合、芳香族炭化水素基を有する単量体に基づく構成単位の含有量の平均値が上記範囲内になることが好ましい。
【0106】
芳香族炭化水素基を有する単量体としては、例えば、アラルキル基を有するモノマー、スチレン、及び重合可能なスチレン誘導体(例えば、メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、4-ビニル安息香酸、スチレンダイマー、及びスチレントリマー等)が挙げられる。なかでも、アラルキル基を有するモノマー、又はスチレンが好ましい。一態様において、重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体成分がスチレンである場合、スチレンに基づく構成単位の含有量は、重合体Aの全質量に対して、20~70質量%が好ましく、25~65質量%がより好ましく、30~60質量%が更に好ましく、30~55質量%が特に好ましい。
【0107】
アラルキル基としては、置換又は非置換のフェニルアルキル基(ベンジル基を除く)、及び置換又は非置換のベンジル基等が挙げられ、置換又は非置換のベンジル基が好ましい。
【0108】
フェニルアルキル基を有する単量体としては、フェニルエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0109】
ベンジル基を有する単量体としては、ベンジル基を有する(メタ)アクリレート、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、及びクロロベンジル(メタ)アクリレート等;ベンジル基を有するビニルモノマー、例えば、ビニルベンジルクロライド、及びビニルベンジルアルコール等が挙げられる。なかでも、ベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。一態様において、重合体Aにおける芳香族炭化水素基を有する単量体成分がベンジル(メタ)アクリレートである場合、ベンジル(メタ)アクリレートに基づく構成単位の含有量は、重合体Aの全質量に対して、50~95質量%が好ましく、60~90質量%がより好ましく、70~90質量%が更に好ましく、75~90質量%が特に好ましい。
【0110】
芳香族炭化水素基を有する単量体に基づく構成単位を含む重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体と、後述する第一の単量体の少なくとも1種及び/又は後述する第二の単量体の少なくとも1種とを重合することにより得られることが好ましい。
【0111】
芳香族炭化水素基を有する単量体に基づく構成単位を含まない重合体Aは、後述する第一の単量体の少なくとも1種を重合することにより得られることが好ましく、第一の単量体の少なくとも1種と後述する第二の単量体の少なくとも1種とを共重合することにより得られることがより好ましい。
【0112】
第一の単量体は、分子中にカルボキシル基を有する単量体である。第一の単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、イタコン酸、4-ビニル安息香酸、マレイン酸無水物、及びマレイン酸半エステル等が挙げられる。これらのなかでも、(メタ)アクリル酸が好ましい。
重合体Aにおける第一の単量体に基づく構成単位の含有量は、重合体Aの全質量に対して、5~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、15~30質量%が更に好ましい。
上記含有量を5質量%以上にすることは、良好な現像性を発現させる観点、エッジフューズ性を制御する等の観点から好ましい。上記含有量を50質量%以下にすることは、レジストパターンの高解像性及びスソ形状の観点から、更にはレジストパターンの耐薬品性の観点から好ましい。
【0113】
第二の単量体は、非酸性であり、且つ、分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有する単量体である。第二の単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;酢酸ビニル等のビニルアルコールのエステル類;並びに(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。なかでも、メチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、又はn-ブチル(メタ)アクリレートが好ましく、メチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
重合体Aにおける第二の単量体に基づく構成単位の含有量は、重合体Aの全質量に対して、5~60質量%が好ましく、15~50質量%がより好ましく、17~45質量%が更に好ましい。
【0114】
重合体Aがアラルキル基を有する単量体に基づく構成単位及び/又はスチレンを単量体に基づく構成単位を含む場合、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太りや解像度の悪化を抑制する観点から好ましい。例えば、メタクリル酸に基づく構成単位とベンジルメタクリレートに基づく構成単位とスチレンに基づく構成単位を含む共重合体、メタクリル酸に基づく構成単位とメチルメタクリレートに基づく構成単位とベンジルメタクリレートに基づく構成単位とスチレンに基づく構成単位を含む共重合体等が好ましい。
一態様において、重合体Aは、芳香族炭化水素基を有する単量体に基づく構成単位を25~55質量%、第一の単量体に基づく構成単位を20~35質量%、第二の単量体に基づく構成単位を15~45質量%含む重合体であることが好ましい。また、別の態様において、芳香族炭化水素基を有する単量体に基づく構成単位を70~90質量%、第一の単量体に基づく構成単位を10~25質量%含む重合体であることが好ましい。
【0115】
重合体Aは、側鎖に分岐構造及び/又は脂環構造を有してもよい。また、側鎖に直鎖構造を有していてもよい。側鎖に分岐構造を有する基を含むモノマー、又は側鎖に脂環構造を有する基を含むモノマーを使用することによって、重合体Aの側鎖に分岐構造や脂環構造を導入することができる。脂環構造を有する基は単環又は多環であってもよい。
側鎖に分岐構造を有する基を含むモノマーの具体例としては、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、(メタ)アクリル酸s-ブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸i-アミル、(メタ)アクリル酸t-アミル、(メタ)アクリル酸sec-iso-アミル、(メタ)アクリル酸2-オクチル、(メタ)アクリル酸3-オクチル、及び(メタ)アクリル酸t-オクチル等が挙げられる。これらのなかでも、(メタ)アクリル酸i-プロピル、(メタ)アクリル酸i-ブチル、又はメタクリル酸t-ブチルが好ましく、メタクリル酸i-プロピル又はメタクリル酸t-ブチルがより好ましい。
側鎖に脂環構造を有する基を含むモノマーの具体例としては、炭素原子数5~20個の脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。より具体的な例としては、(メタ)アクリル酸(ビシクロ〔2.2.1]ヘプチル-2)、(メタ)アクリル酸-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5-ジメチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-エチルアダマンチル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-5-エチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5,8-トリエチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-3,5-ジメチル-8-エチル-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-メチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸2-エチル-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシ-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ-4,7-メンタノインデン-5-イル、(メタ)アクリル酸オクタヒドロ-4,7-メンタノインデン-1-イルメチル、(メタ)アクリル酸-1-メンチル、(メタ)アクリル酸トリシクロデカン、(メタ)アクリル酸-3-ヒドロキシ-2,6,6-トリメチル-ビシクロ〔3.1.1〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸-3,7,7-トリメチル-4-ヒドロキシ-ビシクロ〔4.1.0〕ヘプチル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸-2,2,5-トリメチルシクロヘキシル、及び(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。これら(メタ)アクリル酸エステルのなかでも、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸-1-アダマンチル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェンチル、(メタ)アクリル酸1-メンチル、又は(メタ)アクリル酸トリシクロデカンが好ましく、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(ノル)ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸-2-アダマンチル、又は(メタ)アクリル酸トリシクロデカンがより好ましい。
【0116】
重合体Aは、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
2種以上を使用する場合には、芳香族炭化水素基を有する単量体に基づく構成単位を含む重合体Aを2種類混合使用すること、又は芳香族炭化水素基を有する単量体に基づく構成単位を含む重合体Aと芳香族炭化水素基を有する単量体に基づく構成単位を含まない重合体Aとを混合使用することが好ましい。後者の場合、芳香族炭化水素基を有する単量体に基づく構成単位を含む重合体Aの使用割合は、重合体Aの全質量に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。
【0117】
重合体Aの合成は、上述された単数又は複数の単量体を、アセトン、メチルエチルケトン、及びイソプロパノール等の溶剤で希釈した溶液に、過酸化ベンゾイル、及びアゾイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を適量添加し、加熱攪拌することにより行われることが好ましい。混合物の一部を反応液に滴下しながら合成を行う場合もある。反応終了後、更に溶剤を加えて、所望の濃度に調整する場合もある。合成手段としては、溶液重合以外に、塊状重合、懸濁重合、又は乳化重合を用いてもよい。
【0118】
重合体Aのガラス転移温度Tgは、30~135℃が好ましい。135℃以下のTgを有する重合体Aを使用することによって、露光時の焦点位置がずれたときの線幅太りや解像度の悪化を抑制できる。この観点から、重合体AのTgは、130℃以下より好ましく、120℃以下が更に好ましく、110℃以下が特に好ましい。また、30℃以上のTgを有する重合体Aを使用することは、耐エッジフューズ性を向上させる観点から好ましい。この観点から、重合体AのTgは、40℃以上がより好ましく、50℃以上が更に好ましく、60℃以上が特に好ましく、70℃以上が最も好ましい。
【0119】
ネガ型感光性樹脂層は、上述以外のその他の樹脂を重合体Aとして含んでもよい。
その他の樹脂としては、アクリル樹脂、スチレン-アクリル系共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、及びポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0120】
重合体Aとして、後述する熱可塑性樹脂層の説明で述べるアルカリ可溶性樹脂を使用してもよい。
【0121】
重合体Aの含有量は、ネガ型感光性樹脂層の全質量に対して、10~90質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましく、30~70質量%が更に好ましく、40~60質量%が特に好ましい。重合体Aの含有量を90質量%以下にすることは、現像時間を制御する観点から好ましい。一方で、重合体Aの含有量を10質量%以上にすることは、耐エッジフューズ性を向上させる観点から好ましい。
【0122】
<重合性化合物>
感光性樹脂層がネガ型感光性樹脂層である場合、ネガ型感光性樹脂層は、重合性基を有する重合性化合物を含むことが好ましい。なお、本明細書において「重合性化合物」とは、後述する重合開始剤の作用を受けて重合する化合物であって、上述した重合体Aとは異なる化合物を意味する。
【0123】
重合性化合物が有する重合性基としては、重合反応に関与する基であれば特に制限されず、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基及びマレイミド基等のエチレン性不飽和基を有する基;並びに、エポキシ基及びオキセタン基等のカチオン性重合性基を有する基が挙げられる。
重合性基としては、エチレン性不飽和基を有する基が好ましく、アクリロイル基又はメタアクリロイル基がより好ましい。
【0124】
重合性化合物としては、ネガ型感光性樹脂層の感光性がより優れる点で、1つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(エチレン性不飽和化合物)が好ましく、一分子中に2つ以上のエチレン性不飽和基を有する化合物(多官能エチレン性不飽和化合物)がより好ましい。
また、解像性及び剥離性により優れる点で、エチレン性不飽和化合物が一分子中に有するエチレン性不飽和基の数は、6つ以下が好ましく、3つ以下がより好ましく、2つ以下が更に好ましい。
【0125】
ネガ型感光性樹脂層の感光性と解像性及び剥離性とのバランスがより優れる点で、一分子中に2つ又は3つのエチレン性不飽和基を有する2官能又は3官能エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、一分子中に2つのエチレン性不飽和基を有する2官能エチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましい。
重合性化合物の全質量に対する2官能エチレン性不飽和化合物の含有量は、ネガ型感光性樹脂層の全質量に対して、剥離性に優れる観点から、20質量%以上が好ましく、40質量%超がより好ましく、55質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されず、100質量%であってもよい。即ち、重合性化合物が全て2官能エチレン性不飽和化合物であってもよい。
また、エチレン性不飽和化合物としては、重合性基として(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0126】
(重合性化合物B1)
ネガ型感光性樹脂層は、芳香環及び2つのエチレン性不飽和基を有する重合性化合物B1を含むことも好ましい。重合性化合物B1は、上述した重合性化合物Bのうち、一分子中に1つ以上の芳香環を有する2官能エチレン性不飽和化合物である。
【0127】
ネガ型感光性樹脂層中、重合性化合物の全質量に対する重合性化合物B1の含有量の質量比は、解像性がより優れる観点から、40%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、55質量%以上が更に好ましく、60質量%以上が特に好ましい。上限は特に制限されないが、剥離性の観点から、例えば100質量%以下であり、99質量%以下が好ましく、95質量%以下がより好ましく、90質量%以下が更に好ましく、85質量%以下が特に好ましい。
【0128】
重合性化合物B1が有する芳香環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環及びアントラセン環等の芳香族炭化水素環、チオフェン環、フラン環、ピロール環、イミダゾール環、トリアゾール環及びピリジン環等の芳香族複素環、並びに、それらの縮合環が挙げられ、芳香族炭化水素環が好ましく、ベンゼン環がより好ましい。なお、上記芳香環は、置換基を有してもよい。
重合性化合物B1は、芳香環を1つのみ有してもよく、2つ以上の芳香環を有してもよい。
【0129】
重合性化合物B1は、現像液による感光性樹脂層の膨潤を抑制することにより、解像性が向上する観点から、ビスフェノール構造を有することが好ましい。
ビスフェノール構造としては、例えば、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)に由来するビスフェノールA構造、ビスフェノールF(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)に由来するビスフェノールF構造、及びビスフェノールB(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン)に由来するビスフェノールB構造が挙げられ、ビスフェノールA構造が好ましい。
【0130】
ビスフェノール構造を有する重合性化合物B1としては、例えば、ビスフェノール構造と、そのビスフェノール構造の両端に結合した2つの重合性基(好ましくは(メタ)アクリロイル基)とを有する化合物が挙げられる。
ビスフェノール構造の両端と2つの重合性基とは、直接結合してもよく、1つ以上のアルキレンオキシ基を介して結合してもよい。ビスフェノール構造の両端に付加するアルキレンオキシ基としては、エチレンオキシ基又はプロピレンオキシ基が好ましく、エチレンオキシ基がより好ましい。ビスフェノール構造に付加するアルキレンオキシ基の付加数は特に制限されないが、1分子あたり4~16個が好ましく、6~14個がより好ましい。
ビスフェノール構造を有する重合性化合物B1については、特開2016-224162号公報の段落0072~0080に記載されており、この公報に記載の内容は本明細書に組み込まれる。
【0131】
重合性化合物B1としては、ビスフェノールA構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物が好ましく、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンがより好ましい。
2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリアルコキシ)フェニル)プロパンとしては、例えば、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(FA-324M、日立化成社製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシエトキシプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-500、新中村化学工業社製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシドデカエトキシテトラプロポキシ)フェニル)プロパン(FA-3200MY、日立化成社製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシペンタデカエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-1300、新中村化学工業社製)、2,2-ビス(4-(メタクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン(BPE-200、新中村化学工業社製)、及びエトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート(NKエステルA-BPE-10、新中村化学工業社製)が挙げられる。
【0132】
重合性化合物B1としては、下記一般式(B1)で表される化合物も好ましい。
【0133】
【0134】
一般式B1中、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。AはC2H4を表す。BはC3H6を表す。n1及びn3は各々独立に1~39の整数であり、且つ、n1+n3は2~40の整数である。n2及びn4は各々独立に0~29の整数であり、且つ、n2+n4は0~30の整数である。-(A-O)-及び-(B-O)-の構成単位の配列は、ランダムであってもブロックであってもよい。そして、ブロックの場合、-(A-O)-と-(B-O)-とのいずれがビスフェニル基側でもよい。
一態様において、n1+n2+n3+n4は、2~20が好ましく、2~16がより好ましく、4~12が更に好ましい。また、n2+n4は、0~10が好ましく、0~4がより好ましく、0~2が更に好ましく、0が特に好ましい。
【0135】
重合性化合物B1は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
重合性化合物B1の含有量は、解像性がより優れる観点から、ネガ型感光性樹脂層の全質量に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、転写性及びエッジフュージョン(転写部材の端部から感光性樹脂が滲み出す現象)の観点から、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましい。
【0136】
ネガ型感光性樹脂層は、上述した重合性化合物B1以外の重合性化合物を含んでもよい。
重合性化合物B1以外の重合性化合物は、特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。例えば、一分子中に1つのエチレン性不飽和基を有する化合物(単官能エチレン性不飽和化合物)、芳香環を有さない2官能エチレン性不飽和化合物、及び3官能以上のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
【0137】
単官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、及びフェノキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0138】
芳香環を有さない2官能エチレン性不飽和化合物としては、例えば、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、及びトリメチロールプロパンジアクリレートが挙げられる。
アルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(A-DCP、新中村化学工業社製)、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(DCP、新中村化学工業社製)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(A-NOD-N、新中村化学工業社製)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(A-HD-N、新中村化学工業社製)、エチレングリコールジメタクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、及びポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
ウレタンジ(メタ)アクリレートとしては、例えば、プロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。の市販品としては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル社製)、UA-32P(新中村化学工業社製)、及びUA-1100H(新中村化学工業社製)が挙げられる。
【0139】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、例えば、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、及びこれらのアルキレンオキサイド変性物が挙げられる。
ここで、「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及びヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念であり、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。
一態様において、ネガ型感光性樹脂層は、上述した重合性化合物B1及び3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことも好ましく、上述した重合性化合物B1及び2種以上の3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むことがより好ましい。この場合、重合性化合物B1と3官能以上のエチレン性不飽和化合物の質量比は、(重合性化合物B1の合計質量):(3官能以上のエチレン性不飽和化合物の合計質量)=1:1~5:1が好ましく、1.2:1~4:1がより好ましく、1.5:1~3:1が更に好ましい。
また、一態様において、ネガ型感光性樹脂層は、上述した重合性化合物B1及び2種以上の3官能のエチレン性不飽和化合物を含むことが好ましい。
【0140】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物のアルキレンオキサイド変性物としては、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート化合物(日本化薬社製KAYARAD(登録商標)DPCA-20、新中村化学工業社製A-9300-1CL等)、アルキレンオキサイド変性(メタ)アクリレート化合物(日本化薬社製KAYARAD RP-1040、新中村化学工業社製ATM-35E及びA-9300、ダイセル・オルネクス社製EBECRYL(登録商標) 135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業社製A-GLY-9E等)、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成社製)、アロニックスM-520(東亞合成社製)、及びアロニックスM-510(東亞合成社製)が挙げられる。
【0141】
また、重合性化合物として、酸基(カルボキシ基等)を有する重合性化合物を使用してもよい。上記酸基は酸無水物基を形成していてもよい。酸基を有する重合性化合物としては、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成社製)、アロニックス(登録商標)M-520(東亞合成社製)、及びアロニックス(登録商標)M-510(東亞合成社製)が挙げられる。
酸基を有する重合性化合物として、例えば、特開2004-239942号公報の段落0025~0030に記載の酸基を有する重合性化合物を用いてもよい。
【0142】
重合性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
重合性化合物の含有量は、ネガ型感光性樹脂層の全質量に対し、10~70質量%が好ましく、15~70質量%がより好ましく、20~70質量%が更に好ましい。
【0143】
重合性化合物(重合性化合物B1を含む)の分子量(分子量分布を有する場合は重量平均分子量)としては、200~3,000が好ましく、280~2,200がより好ましく、300~2,200が更に好ましい。
【0144】
<重合開始剤>
感光性樹脂層がネガ型感光性樹脂層である場合、ネガ型感光性樹脂層は、重合開始剤を含むことも好ましい。
重合開始剤は重合反応の形式に応じて選択され、例えば、熱重合開始剤、及び光重合開始剤が挙げられる。
重合開始剤は、ラジカル重合開始剤絵もカチオン重合開始剤でもよい。
【0145】
ネガ型感光性樹脂層は、光重合開始剤を含むことが好ましい。
光重合開始剤は、紫外線、可視光線及びX線等の活性光線を受けて、重合性化合物の重合を開始する化合物である。光重合開始剤としては、特に制限されず、公知の光重合開始剤を使用できる。
光重合開始剤としては、例えば、光ラジカル重合開始剤及び光カチオン重合開始剤が挙げられ、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0146】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、オキシムエステル構造を有する光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する光重合開始剤、及びN-フェニルグリシン構造を有する光重合開始剤が挙げられる。
【0147】
また、ネガ型感光性樹脂層は、感光性、露光部及び非露光部の視認性、及び解像性の観点から、光ラジカル重合開始剤として、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体及びその誘導体における2つの2,4,5-トリアリールイミダゾール構造は、同一であっても異なっていてもよい。
2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体の誘導体としては、例えば、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、及び2-(p-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体が挙げられる。
【0148】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、特開2011-095716号公報の段落0031~0042、特開2015-014783号公報の段落0064~0081に記載された重合開始剤を用いてもよい。
【0149】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジメチルアミノ安息香酸エチル(DBE、CAS No.10287-53-3)、ベンゾインメチルエーテル、アニシル(p,p’-ジメトキシベンジル)、TAZ-110(商品名:みどり化学社製)、ベンゾフェノン、4,4′-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、TAZ-111(商品名:みどり化学社製)、IrgacureOXE01、OXE02、OXE03、OXE04(BASF社製)、Omnirad651及び369(商品名:IGM Resins B.V.社製)、及び2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニル-1,2’-ビイミダゾール(東京化成工業社製)が挙げられる。
【0150】
光ラジカル重合開始剤の市販品としては、例えば、1-[4-(フェニルチオ)]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:IRGACURE(登録商標) OXE-01、BASF社製)、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)(商品名:IRGACURE OXE-02、BASF社製)、IRGACURE OXE-03(BASF社製)、IRGACURE OXE-04(BASF社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン(商品名:Omnirad 379EG、IGM Resins B.V.製)、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 907、IGM Resins B.V.製)、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 127、IGM Resins B.V.製)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1(商品名:Omnirad 369、IGM Resins B.V.製)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(商品名:Omnirad 1173、IGM Resins B.V.製)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名:Omnirad 184、IGM Resins B.V.製)、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(商品名:Omnirad 651、IGM Resins B.V.製)、2,4,6-トリメチルベンゾリル-ジフェニルフォスフィンオキサイド(商品名:Omnirad TPO H、IGM Resins B.V.製)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾリル)フェニルフォスフィンオキサイド(商品名:Omnirad 819、IGM Resins B.V.製)、オキシムエステル系の光重合開始剤(商品名:Lunar 6、DKSHジャパン社製)、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビスイミダゾール(2-(2-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体)(商品名:B-CIM、Hampford社製)、及び2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体(商品名:BCTB、東京化成工業社製)、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-3-シクロペンチルプロパン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:TR-PBG-305、常州強力電子新材料社製)、1,2-プロパンジオン,3-シクロヘキシル-1-[9-エチル-6-(2-フラニルカルボニル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,2-(O-アセチルオキシム)(商品名:TR-PBG-326、常州強力電子新材料社製)、及び3-シクロヘキシル-1-(6-(2-(ベンゾイルオキシイミノ)ヘキサノイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)-プロパン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:TR-PBG-391、常州強力電子新材料社製)が挙げられる。
【0151】
光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)は、活性光線を受けて酸を発生する化合物である。光カチオン重合開始剤としては、波長300nm以上、好ましくは波長300~450nmの活性光線に感応し、酸を発生する化合物が好ましいが、その化学構造は制限されない。また、波長300nm以上の活性光線に直接感応しない光カチオン重合開始剤についても、増感剤と併用することによって波長300nm以上の活性光線に感応し、酸を発生する化合物であれば、増感剤と組み合わせて好ましく使用できる。
光カチオン重合開始剤としては、pKaが4以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤が好ましく、pKaが3以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤がより好ましく、pKaが2以下の酸を発生する光カチオン重合開始剤が特に好ましい。pKaの下限値は特に定めないが、例えば、-10.0以上が好ましい。
【0152】
光カチオン重合開始剤としては、イオン性光カチオン重合開始剤及び非イオン性光カチオン重合開始剤が挙げられる。
イオン性光カチオン重合開始剤として、例えば、ジアリールヨードニウム塩類及びトリアリールスルホニウム塩類等のオニウム塩化合物、並びに、第4級アンモニウム塩類が挙げられる。
イオン性光カチオン重合開始剤としては、特開2014-085643号公報の段落0114~0133に記載のイオン性光カチオン重合開始剤を用いてもよい。
【0153】
非イオン性光カチオン重合開始剤としては、例えば、トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物、イミドスルホネート化合物、及びオキシムスルホネート化合物が挙げられる。トリクロロメチル-s-トリアジン類、ジアゾメタン化合物及びイミドスルホネート化合物としては、特開2011-221494号公報の段落0083~0088に記載の化合物を用いてもよい。また、オキシムスルホネート化合物としては、国際公開第2018/179640号の段落0084~0088に記載された化合物を用いてもよい。
【0154】
ネガ型感光性樹脂層は、光ラジカル重合開始剤を含むことが好ましく、2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体及びその誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0155】
重合開始剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
重合開始剤(好ましくは光重合開始剤)の含有量は、特に制限されないが、ネガ型感光性樹脂層の全質量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1.0質量%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、ネガ型感光性樹脂層の全質量に対し、20質量%以下が好ましく、15質量%以下が更に好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0156】
<色素>
感光性樹脂層は、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び解像性の観点から、発色時の波長範囲400~780nmにおける最大吸収波長が450nm以上であり、且つ、酸、塩基、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素(「色素N」ともいう)を含むことも好ましい。色素Nを含むと、詳細なメカニズムは不明であるが、隣接する層(例えば水溶性樹脂層)との密着性が向上し、解像性により優れる。
【0157】
本明細書において、色素が「酸、塩基、又はラジカルにより極大吸収波長が変化する」とは、発色状態にある色素が酸、塩基、又はラジカルにより消色する態様、消色状態にある色素が酸、塩基、又はラジカルにより発色する態様、及び発色状態にある色素が他の色相の発色状態に変化する態様のいずれの態様を意味してもよい。
具体的には、色素Nは、露光により消色状態から変化して発色する化合物であってもよいし、露光により発色状態から変化して消色する化合物であってもよい。この場合、露光により酸、塩基、又はラジカルが感光性樹脂層内において発生し作用することにより、発色又は消色の状態が変化する色素でもよく、酸、塩基、又はラジカルにより感光性樹脂層内の状態(例えばpH)が変化することで発色又は消色の状態が変化する色素でもよい。また、露光を介さずに、酸、塩基、又はラジカルを刺激として直接受けて発色又は消色の状態が変化する色素でもよい。
【0158】
なかでも、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、色素Nは、酸又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素が好ましく、ラジカルにより最大吸収波長が変化する色素がより好ましい。
感光性樹脂層がネガ型感光性樹脂層である場合は、ネガ型感光性樹脂層は、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、色素Nとしてラジカルにより最大吸収波長が変化する色素、及び光ラジカル重合開始剤の両者を含むことが好ましい。
また、露光部及び非露光部の視認性の観点から、色素Nは、酸、塩基、又はラジカルにより発色する色素であることが好ましい。
【0159】
色素Nの発色機構の例としては、感光性樹脂層に光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤(光酸発生剤)、又は光塩基発生剤を添加して、露光後に光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤、又は光塩基発生剤から発生するラジカル、酸、又は塩基によって、ラジカル反応性色素、酸反応性色素、又は塩基反応性色素(例えばロイコ色素)が発色する態様が挙げられる。
【0160】
色素Nは、露光部及び非露光部の視認性の観点から、発色時の波長範囲400~780nmにおける極大吸収波長が、550nm以上であることが好ましく、550~700nmであることがより好ましく、550~650nmであることが更に好ましい。
また、色素Nは、発色時の波長範囲400~780nmにおける極大吸収波長を1つのみ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。色素Nが発色時の波長範囲400~780nmにおける極大吸収波長を2つ以上有する場合は、2つ以上の極大吸収波長のうち吸光度が最も高い極大吸収波長が450nm以上であればよい。
【0161】
色素Nの極大吸収波長は、大気雰囲気下で、分光光度計:UV3100((株)島津製作所製)を用いて、400~780nmの範囲で色素Nを含む溶液(液温25℃)の透過スペクトルを測定し、光の強度が極小となる波長(極大吸収波長)を検出することにより、得られる。
【0162】
露光により発色又は消色する色素としては、例えば、ロイコ化合物が挙げられる。
露光により消色する色素としては、例えば、ロイコ化合物、ジアリールメタン系色素、オキザジン系色素、キサンテン系色素、イミノナフトキノン系色素、アゾメチン系色素、及びアントラキノン系色素が挙げられる。
色素Nとしては、露光部及び非露光部の視認性の観点から、ロイコ化合物が好ましい。
【0163】
ロイコ化合物としては、例えば、トリアリールメタン骨格を有するロイコ化合物(トリアリールメタン系色素)、スピロピラン骨格を有するロイコ化合物(スピロピラン系色素)、フルオラン骨格を有するロイコ化合物(フルオラン系色素)、ジアリールメタン骨格を有するロイコ化合物(ジアリールメタン系色素)、ローダミンラクタム骨格を有するロイコ化合物(ローダミンラクタム系色素)、インドリルフタリド骨格を有するロイコ化合物(インドリルフタリド系色素)、及びロイコオーラミン骨格を有するロイコ化合物(ロイコオーラミン系色素)が挙げられる。
なかでも、トリアリールメタン系色素又はフルオラン系色素が好ましく、トリフェニルメタン骨格を有するロイコ化合物(トリフェニルメタン系色素)又はフルオラン系色素がより好ましい。
【0164】
ロイコ化合物としては、露光部及び非露光部の視認性の観点から、ラクトン環、スルチン環、又はスルトン環を有することが好ましい。これにより、ロイコ化合物が有するラクトン環、スルチン環、又はスルトン環を、光ラジカル重合開始剤から発生するラジカル又は光カチオン重合開始剤から発生する酸と反応させて、ロイコ化合物を閉環状態に変化させて消色させるか、又はロイコ化合物を開環状態に変化させて発色させることができる。ロイコ化合物としては、ラクトン環、スルチン環、又はスルトン環を有し、ラジカル、又は酸によりラクトン環、スルチン環又はスルトン環が開環して発色する化合物が好ましく、ラクトン環を有し、ラジカル又は酸によりラクトン環が開環して発色する化合物がより好ましい。
【0165】
色素Nとしては、例えば、以下の染料及びロイコ化合物が挙げられる。
色素Nのうち染料の具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α-ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩、ビクトリアピュアブルーBOH(保土谷化学工業社製)、オイルブルー#603(オリヱント化学工業社製)、オイルピンク#312(オリヱント化学工業社製)、オイルレッド5B(オリヱント化学工業社製)、オイルスカーレット#308(オリヱント化学工業社製)、オイルレッドOG(オリヱント化学工業社製)、オイルレッドRR(オリヱント化学工業社製)、オイルグリーン#502(オリヱント化学工業社製)、スピロンレッドBEHスペシャル(保土谷化学工業社製)、m-クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシアニリノ-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2-カルボキシステアリルアミノ-4-p-N,N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ-フェニルイミノナフトキノン、1-フェニル-3-メチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロン、及び1-β-ナフチル-4-p-ジエチルアミノフェニルイミノ-5-ピラゾロンが挙げられる。
【0166】
色素Nのうちロイコ化合物の具体例としては、p,p’,p”-ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2-(N-フェニル-N-メチルアミノ)-6-(N-p-トリル-N-エチル)アミノフルオラン、2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-p-トルイジノ)フルオラン、3,6-ジメトキシフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-5-メチル-7-(N,N-ジベンジルアミノ)フルオラン、3-(N-シクロヘキシル-N-メチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メチル-7-クロロフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-6-メトキシ-7-アミノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-(4-クロロアニリノ)フルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-クロロフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7-ベンジルアミノフルオラン、3-(N,N-ジエチルアミノ)-7,8-ベンゾフロオラン、3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-(N,N-ジブチルアミノ)-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3,3-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-ザフタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、及び3’,6’-ビス(ジフェニルアミノ)スピロイソベンゾフラン-1(3H),9’-[9H]キサンテン-3-オンが挙げられる。
【0167】
色素Nは、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び解像性の観点から、ラジカルにより最大吸収波長が変化する色素であることが好ましく、ラジカルにより発色する色素であることがより好ましい。
色素Nとしては、ロイコクリスタルバイオレット、クリスタルバイオレットラクトン、ブリリアントグリーン、又はビクトリアピュアブルー-ナフタレンスルホン酸塩が好ましい。
【0168】
色素Nは、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
色素Nの含有量は、露光部及び非露光部の視認性、現像後のパターン視認性、及び解像性の観点から、感光性樹脂層の全質量に対して、0.1質量%以上が好ましく、0.1~10質量%がより好ましく、0.1~5質量%が更に好ましく、0.1~1質量%が特に好ましい。
【0169】
色素Nの含有量は、感光性樹脂層の全質量中に含まれる色素Nの全てを発色状態にした場合の色素の含有量を意味する。以下に、ラジカルにより発色する色素を例に、色素Nの含有量の定量方法を説明する。
メチルエチルケトン100mLに、色素0.001g及び0.01gを溶かした溶液を調製する。得られた各溶液に、光ラジカル重合開始剤Irgacure OXE01(商品名、BASFジャパン株式会社)を加え、365nmの光を照射することによりラジカルを発生させ、全ての色素を発色状態にする。その後、大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、(株)島津製作所製)を用いて、液温が25℃である各溶液の吸光度を測定し、検量線を作成する。
次に、色素に代えて感光性樹脂層3gをメチルエチルケトンに溶かすこと以外は上記と同様の方法で、色素を全て発色させた溶液の吸光度を測定する。得られた感光性樹脂層を含む溶液の吸光度から、検量線に基づいて感光性樹脂層に含まれる色素の含有量を算出する。
なお、感光性樹脂層3gとは、感光性樹脂組成物中の全固形分の3gと同様である。
【0170】
<熱架橋性化合物>
感光性樹脂層がネガ型感光性樹脂層である場合、得られる硬化膜の強度、及び得られる未硬化膜の粘着性の観点から、熱架橋性化合物を含むことが好ましい。なお、本開示においては、後述するエチレン性不飽和基を有する熱架橋性化合物は、重合性化合物としては扱わず、熱架橋性化合物として扱うものとする。
熱架橋性化合物としては、メチロール化合物、及びブロックイソシアネート化合物が挙げられる。なかでも、得られる硬化膜の強度、及び得られる未硬化膜の粘着性の観点から、ブロックイソシアネート化合物が好ましい。
ブロックイソシアネート化合物は、ヒドロキシ基及びカルボキシ基と反応するため、例えば、樹脂及び/又は重合性化合物等が、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する場合には、形成される膜の親水性が下がり、ネガ型感光性樹脂層を硬化した膜を保護膜として使用する場合の機能が強化される傾向がある。
なお、ブロックイソシアネート化合物とは、「イソシアネートのイソシアネート基をブロック剤で保護(いわゆる、マスク)した構造を有する化合物」を指す。
【0171】
ブロックイソシアネート化合物の解離温度は、特に制限されないが、100~160℃が好ましく、130~150℃がより好ましい。
ブロックイソシアネートの解離温度とは、「示差走査熱量計を用いて、DSC(Differential scanning calorimetry)分析にて測定した場合における、ブロックイソシアネートの脱保護反応に伴う吸熱ピークの温度」を意味する。
示差走査熱量計としては、例えば、セイコーインスツルメンツ社製の示差走査熱量計(型式:DSC6200)を好適に使用できる。但し、示差走査熱量計は、これに限定されない。
【0172】
解離温度が100~160℃であるブロック剤としては、活性メチレン化合物〔マロン酸ジエステル(マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジn-ブチル、マロン酸ジ2-エチルヘキシル等)〕、オキシム化合物(ホルムアルドオキシム、アセトアルドオキシム、アセトオキシム、メチルエチルケトオキシム、及びシクロヘキサノンオキシム等の分子内に-C(=N-OH)-で表される構造を有する化合物)が挙げられる。
これらのなかでも、解離温度が100~160℃であるブロック剤としては、例えば、保存安定性の観点から、オキシム化合物から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0173】
ブロックイソシアネート化合物は、例えば、膜の脆性改良、被転写体との密着力向上等の観点から、イソシアヌレート構造を有することが好ましい。
イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートをイソシアヌレート化して保護することにより得られる。
イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物のなかでも、オキシム化合物をブロック剤として用いたオキシム構造を有する化合物が、オキシム構造を有さない化合物よりも解離温度を好ましい範囲にしやすく、且つ、現像残渣を少なくしやすいという観点から好ましい。
【0174】
ブロックイソシアネート化合物は、重合性基を有していてもよい。
重合性基としては、特に制限はなく、公知の重合性基を用いることができ、ラジカル重合性基が好ましい。
重合性基としては、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、及びスチリル基等のエチレン性不飽和基、並びに、グリシジル基等のエポキシ基を有する基が挙げられる。
なかでも、重合性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましく、アクリロキシ基が更に好ましい。
【0175】
ブロックイソシアネート化合物としては、市販品を使用できる。
ブロックイソシアネート化合物の市販品の例としては、カレンズ(登録商標) AOI-BM、カレンズ(登録商標) MOI-BM、カレンズ(登録商標) MOI-BP等(以上、昭和電工社製)、ブロック型のデュラネートシリーズ(例えば、デュラネート(登録商標) TPA-B80E、デュラネート(登録商標) WT32-B75P等、旭化成ケミカルズ社製)が挙げられる。
また、ブロックイソシアネート化合物として、下記の構造の化合物を用いることもできる。
【0176】
【0177】
熱架橋性化合物は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
感光性樹脂層が熱架橋性化合物を含む場合、熱架橋性化合物の含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、1~50質量%が好ましく、5~30質量%がより好ましい。
【0178】
<その他の添加剤>
感光性樹脂層は、上記成分以外に、必要に応じて公知の添加剤を含んでもよい。
添加剤としては、例えば、ラジカル重合禁止剤、増感剤、可塑剤、ヘテロ環状化合物(トリアゾール等)、ベンゾトリアゾール類、カルボキシベンゾトリアゾール類、ピリジン類(イソニコチンアミド等)、プリン塩基(アデニン等)、及び界面活性剤が挙げられる。
各添加剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
【0179】
感光性樹脂層は、ラジカル重合禁止剤を含んでもよい。
ラジカル重合禁止剤としては、例えば、特許第4502784号公報の段落0018に記載された熱重合防止剤が挙げられる。なかでも、フェノチアジン、フェノキサジン、又は4-メトキシフェノールが好ましい。その他のラジカル重合禁止剤としては、ナフチルアミン、塩化第一銅、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、及びジフェニルニトロソアミン等が挙げられる。感光性樹脂層の感度を損なわないために、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩をラジカル重合禁止剤として使用することが好ましい。
【0180】
ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1-クロロ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾール、ビス(N-2-エチルヘキシル)アミノメチレン-1,2,3-トリルトリアゾール、及びビス(N-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレン-1,2,3-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0181】
カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、4-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、5-カルボキシ-1,2,3-ベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N-(N,N-ジ-2-ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、及びN-(N,N-ジ-2-エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、CBT-1(城北化学工業株式会社、商品名)等の市販品を使用できる。
【0182】
ラジカル重合禁止剤、ベンゾトリアゾ-ル類、及びカルボキシベンゾトリアゾ-ル類の合計含有量は、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01~3質量%が好ましく、0.05~1質量%がより好ましい。含有量が0.01質量%以上の場合、感光性樹脂層の保存安定性がより優れる。一方、含有量が3質量%以下である場合、感度の維持及び染料の脱色を抑制がより優れる。
【0183】
感光性樹脂層は、増感剤を含んでもよい。
増感剤は、特に制限されず、公知の増感剤、染料及び顔料を使用できる。増感剤としては、例えば、ジアルキルアミノベンゾフェノン化合物、ピラゾリン化合物、アントラセン化合物、クマリン化合物、キサントン化合物、チオキサントン化合物、アクリドン化合物、オキサゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、トリアゾール化合物(例えば、1,2,4-トリアゾール)、スチルベン化合物、トリアジン化合物、チオフェン化合物、ナフタルイミド化合物、トリアリールアミン化合物、及びアミノアクリジン化合物が挙げられる。
【0184】
増感剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
感光性樹脂層が増感剤を含む場合、増感剤の含有量は、目的により適宜選択できるが、光源に対する感度の向上、及び重合速度と連鎖移動のバランスによる硬化速度の向上の観点から、感光性樹脂層の全質量に対して、0.01~5質量%が好ましく、0.05~1質量%がより好ましい。
【0185】
感光性樹脂層は、可塑剤及びヘテロ環状化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含んでもよい。
可塑剤及びヘテロ環状化合物としては、国際公開第2018/179640号の段落0097~0103及び0111~0118に記載された化合物が挙げられる。
【0186】
また、感光性樹脂層は、金属酸化物粒子、酸化防止剤、分散剤、酸増殖剤、現像促進剤、導電性繊維、紫外線吸収剤、増粘剤、架橋剤、及び有機又は無機の沈殿防止剤等の公知の添加剤を更に含んでもよい。
感光性樹脂層に含まれる添加剤については特開2014-085643号公報の段落0165~0184に記載されており、この公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0187】
感光性樹脂層における水の含有量は、信頼性及びラミネート性を向上させる観点から、0.01~1.0質量%が好ましく、0.05~0.5質量%がより好ましい。
【0188】
感光性樹脂層の層厚(膜厚)は、一般的には0.1~300μmであり、0.2~100μmが好ましく、0.5~50μmがより好ましく、0.5~15μmが更に好ましく、0.5~10μmが特に好ましく、0.5~8μmが最も好ましい。これにより、感光性樹脂層の現像性が向上し、解像性を向上させることができる。
また、一態様において、0.5~5μmが好ましく、0.5~4μmがより好ましく、0.5~3μmが更に好ましい。
【0189】
また、密着性により優れる観点から、感光性樹脂層の波長365nmの光の透過率は、10%以上が好ましく、30%以上がより好ましく、50%以上が更に好ましい。上限は特に制限されないが、99.9%以下が好ましい。
【0190】
<不純物等>
感光性樹脂層は、所定量の不純物を含んでいてもよい。
不純物の具体例としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、マンガン、銅、アルミニウム、チタン、クロム、コバルト、ニッケル、亜鉛、スズ、ハロゲン及びこれらのイオンが挙げられる。なかでも、ハロゲン化物イオン、ナトリウムイオン、及びカリウムイオンは不純物として混入し易いため、下記の含有量にすることが好ましい。
【0191】
感光性樹脂層における不純物の含有量は、質量基準で、80ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましく、2ppm以下が更に好ましい。不純物の含有量は、質量基準で、1ppb以上とすることができ、0.1ppm以上としてもよい。
【0192】
不純物を上記範囲にする方法としては、組成物の原料として不純物の含有量が少ないものを選択すること、感光性樹脂層の作製時に不純物の混入を防ぐこと、及び洗浄して除去することが挙げられる。このような方法により、不純物量を上記範囲内とすることができる。
【0193】
不純物は、例えば、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分光分析法、原子吸光分光法、及びイオンクロマトグラフィー法等の公知の方法で定量できる。
【0194】
感光性樹脂層における、ベンゼン、ホルムアルデヒド、トリクロロエチレン、1,3-ブタジエン、四塩化炭素、クロロホルム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、及びヘキサン等の化合物の含有量は、少ないことが好ましい。これら化合物の感光性樹脂層の全質量に対する含有量としては、質量基準で、100ppm以下が好ましく、20ppm以下がより好ましく、4ppm以下が更に好ましい。
下限は、質量基準で、感光性樹脂層の全質量に対して、10ppb以上とすることができ、100ppb以上とすることができる。これら化合物は、上記の金属の不純物と同様の方法で含有量を抑制できる。また、公知の測定法により定量できる。
【0195】
感光性樹脂層における水の含有量は、信頼性及びラミネート性を向上させる観点から、0.01~1.0質量%が好ましく、0.05~0.5質量%がより好ましい。
【0196】
<顔料>
感光性樹脂層は、顔料を含む着色樹脂層となっていてもよい。
近年の電子機器が有する液晶表示窓には、液晶表示窓を保護するために、透明なガラス基板等の裏面周縁部に黒色の枠状遮光層が形成されたカバーガラスが取り付けられている場合がある。このような遮光層を形成するために着色樹脂層が使用し得る。
顔料としては、所望とする色相に合わせて適宜選択すればよく、黒色顔料、白色顔料、黒色及び白色以外の有彩色の顔料の中から選択できる。なかでも、黒色系のパターンを形成する場合には、顔料として黒色顔料が好適に選択される。
【0197】
黒色顔料としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、公知の黒色顔料(有機顔料又は無機顔料等)を適宜選択することができる。なかでも、光学濃度の観点から、黒色顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、チタンカーバイド、酸化鉄、酸化チタン、及び黒鉛等が好適に挙げられ、特にカーボンブラックは好ましい。カーボンブラックとしては、表面抵抗の観点から、表面の少なくとも一部が樹脂で被覆されたカーボンブラックが好ましい。
【0198】
黒色顔料の粒子径は、分散安定性の観点から、数平均粒径で0.001~0.1μmが好ましく、0.01~0.08μmがより好ましい。
ここで、粒径とは、電子顕微鏡で撮影した顔料粒子の写真像から顔料粒子の面積を求め、顔料粒子の面積と同面積の円を考えた場合の円の直径を指し、数平均粒径は、任意の100個の粒子について上記の粒径を求め、求められた100個の粒径を平均して得られる平均値である。
【0199】
黒色顔料以外の顔料として、白色顔料については、特開2005-007765号公報の段落0015及び0114に記載の白色顔料を使用できる。具体的には、白色顔料のうち、無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、リトポン、軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、又は硫酸バリウムが好ましく、酸化チタン又は酸化亜鉛がより好ましく、酸化チタンが更に好ましい。無機顔料としては、ルチル型又はアナターゼ型の酸化チタンが更に好ましく、ルチル型の酸化チタンが特に好ましい。
また、酸化チタンの表面は、シリカ処理、アルミナ処理、チタニア処理、ジルコニア処理、又は有機物処理が施されていてもよく、二つ以上の処理が施されてもよい。これにより、酸化チタンの触媒活性が抑制され、耐熱性及び褪光性等が改善される。
加熱後の感光性樹脂層の厚みを薄くする観点から、酸化チタンの表面への表面処理としては、アルミナ処理及びジルコニア処理の少なくとも一方が好ましく、アルミナ処理及びジルコニア処理の両方が特に好ましい。
【0200】
また、感光性樹脂層が着色樹脂層である場合、転写性の観点から、感光性樹脂層は、黒色顔料及び白色顔料以外の有彩色の顔料を更に含んでいることも好ましい。有彩色の顔料を含む場合、有彩色の顔料の粒径としては、分散性がより優れる点で、0.1μm以下が好ましく、0.08μm以下がより好ましい。
有彩色の顔料としては、例えば、ビクトリア・ピュアーブルーBO(Color Index(以下C.I.)42595)、オーラミン(C.I.41000)、ファット・ブラックHB(C.I.26150)、モノライト・エローGT(C.I.ピグメント・エロー12)、パーマネント・エローGR(C.I.ピグメント・エロー17)、パーマネント・エローHR(C.I.ピグメント・エロー83)、パーマネント・カーミンFBB(C.I.ピグメント・レッド146)、ホスターバームレッドESB(C.I.ピグメント・バイオレット19)、パーマネント・ルビーFBH(C.I.ピグメント・レッド11)、ファステル・ピンクBスプラ(C.I.ピグメント・レッド81)、モナストラル・ファースト・ブルー(C.I.ピグメント・ブルー15)、モノライト・ファースト・ブラックB(C.I.ピグメント・ブラック1)及びカーボン、C.I.ピグメント・レッド97、C.I.ピグメント・レッド122、C.I.ピグメント・レッド149、C.I.ピグメント・レッド168、C.I.ピグメント・レッド177、C.I.ピグメント・レッド180、C.I.ピグメント・レッド192、C.I.ピグメント・レッド215、C.I.ピグメント・グリーン7、C.I.ピグメント・ブルー15:1、C.I.ピグメント・ブルー15:4、C.I.ピグメント・ブルー22、C.I.ピグメント・ブルー60、C.I.ピグメント・ブルー64、及びC.I.ピグメント・バイオレット23等が挙げられる。なかでも、C.I.ピグメント・レッド177が好ましい。
【0201】
感光性樹脂層が顔料を含む場合、顔料の含有量としては、感光性樹脂層の全質量に対して、3質量%超40質量%以下が好ましく、3質量%超35質量%以下がより好ましく、5質量%超35質量%以下が更に好ましく、10質量%以上35質量%以下が特に好ましい。
【0202】
感光性樹脂層が黒色顔料以外の顔料(白色顔料及び有彩色の顔料)を含む場合、黒色顔料以外の顔料の含有量は、黒色顔料に対して、30質量%以下が好ましく、1~20質量%がより好ましく、3~15質量%が更に好ましい。
【0203】
なお、感光性樹脂層が黒色顔料を含み、且つ、感光性樹脂層が感光性樹脂組成物で形成される場合、黒色顔料(好ましくはカーボンブラック)は、顔料分散液の形態で感光性樹脂組成物に導入されることが好ましい。
分散液は、黒色顔料と顔料分散剤とをあらかじめ混合して得られる混合物を、有機溶剤(又はビヒクル)に加えて分散機で分散させることによって調製されるものでもよい。顔料分散剤は、顔料及び溶剤に応じて選択すればよく、例えば市販の分散剤を使用することができる。なお、ビヒクルとは、顔料分散液とした場合に顔料を分散させている媒質の部分を指し、液状であり、黒色顔料を分散状態で保持するバインダー成分と、バインダー成分を溶解及び希釈する溶剤成分(有機溶剤)と、を含む。
【0204】
分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライター、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、及びサンドミル等の公知の分散機が挙げられる。更に、機械的摩砕により摩擦力を利用して微粉砕してもよい。分散機及び微粉砕については、「顔料の事典」(朝倉邦造著、第一版、朝倉書店、2000年、438頁、310頁)の記載を参照することができる。
【0205】
<<熱可塑性樹脂層>>
熱可塑性樹脂層は、通常、仮支持体と感光性樹脂層との間に配置される。転写フィルムが熱可塑性樹脂層を備えることで、転写フィルムと基板との貼合工程における基板への追従性が向上して、基板と転写フィルムとの間の気泡の混入を抑制できる。この結果として、熱可塑性樹脂層に隣接する層(例えば仮支持体)との密着性を担保できる。
【0206】
熱可塑性樹脂層は、樹脂を含む。上記樹脂は、その一部又は全部として、熱可塑性樹脂を含む。つまり、一態様において、熱可塑性樹脂層は、樹脂が熱可塑性樹脂であることも好ましい。
【0207】
<アルカリ可溶性樹脂(熱可塑性樹脂)>
熱可塑性樹脂としては、アルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリル系共重合体、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリヒドロキシスチレン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリシロキサン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、及びポリアルキレングリコールが挙げられる。
【0208】
アルカリ可溶性樹脂としては、現像性及び隣接する層との密着性の観点から、アクリル樹脂が好ましい。
ここで、アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成単位からなる群から選ばれた少なくとも1種の構成単位を有する樹脂を意味する。
アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び(メタ)アクリル酸アミドに由来する構成単位の合計含有量が、アクリル樹脂の全質量に対して50質量%以上であることが好ましい。
なかでも、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位の合計含有量が、アクリル樹脂の全質量に対して、30~100質量%が好ましく、50~100質量%がより好ましい。
【0209】
また、アルカリ可溶性樹脂は、酸基を有する重合体であることが好ましい。
酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、及びホスホン酸基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
アルカリ可溶性樹脂は、現像性の観点から、酸価60mgKOH/g以上のアルカリ可溶性樹脂がより好ましく、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂が更に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂の酸価の上限は、特に制限されないが、300mgKOH/g以下が好ましく、250mgKOH/g以下がより好ましく、200mgKOH/g以下が更に好ましく、150mgKOH/g以下が特に好ましい。
【0210】
酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂としては、特に制限されず、公知の樹脂から適宜選択して使用できる。
例えば、特開2011-095716号公報の段落0025に記載のポリマーのうち酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂であるアルカリ可溶性樹脂、特開2010-237589号公報の段落0033~0052に記載のポリマーのうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂、及び特開2016-224162号公報の段落0053~0068に記載のバインダーポリマーのうちの酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂が挙げられる。
上記カルボキシ基含有アクリル樹脂におけるカルボキシ基を有する構成単位の共重合比は、アクリル樹脂の全質量に対して、5~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、12~30質量%が更に好ましい。
アルカリ可溶性樹脂としては、現像性及び隣接する層との密着性の観点から、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有するアクリル樹脂が特に好ましい。
【0211】
アルカリ可溶性樹脂は、反応性基を有していてもよい。反応性基としては、付加重合可能な基であればよく、エチレン性不飽和基;ヒドロキシ基及びカルボキシ基等の重縮合性基;エポキシ基、(ブロック)イソシアネート基等の重付加反応性基が挙げられる。
【0212】
アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1,000以上が好ましく、1万~10万がより好ましく、2万~5万が更に好ましい。
【0213】
アルカリ可溶性樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
アルカリ可溶性樹脂の含有量は、現像性及び隣接する層との密着性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、10~99質量%が好ましく、20~90質量%がより好ましく、40~80質量%が更に好ましく、50~75質量%が特に好ましい。
【0214】
<色素>
熱可塑性樹脂層は、発色時の波長範囲400~780nmにおける最大吸収波長が450nm以上であり、酸、塩基、又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素(単に「色素B」ともいう。)を含むことが好ましい。
色素Bの好ましい態様は、後述する点以外は、上述した色素Nの好ましい態様と同様である。
【0215】
色素Bは、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、酸又はラジカルにより最大吸収波長が変化する色素が好ましく、酸により最大吸収波長が変化する色素であることがより好ましい。
熱可塑性樹脂層は、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、色素Bとしての酸により最大吸収波長が変化する色素、及び後述する光により酸を発生する化合物の両者を含むことが好ましい。
【0216】
色素Bは、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
色素Bの含有量は、露光部及び非露光部の視認性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.2質量%以上が好ましく、0.2~6質量%がより好ましく、0.2~5質量%が更に好ましく、0.25~3.0質量%が特に好ましい。
【0217】
ここで、色素Bの含有量は、熱可塑性樹脂層に含まれる色素Bの全てを発色状態にした場合の色素の含有量を意味する。以下に、ラジカルにより発色する色素を例に、色素Bの含有量の定量方法を説明する。
メチルエチルケトン100mLに、色素0.001g及び0.01gを溶かした溶液を調製する。得られた各溶液に、光ラジカル重合開始剤Irgacure OXE01(商品名、BASFジャパン株式会社)を加え、365nmの光を照射することによりラジカルを発生させ、全ての色素を発色状態にする。その後、大気雰囲気下で、分光光度計(UV3100、(株)島津製作所製)を用いて、液温が25℃である各溶液の吸光度を測定し、検量線を作成する。
次に、色素に代えて熱可塑性樹脂層0.1gをメチルエチルケトンに溶かすこと以外は上記と同様の方法で、色素を全て発色させた溶液の吸光度を測定する。得られた熱可塑性樹脂層を含む溶液の吸光度から、検量線に基づいて熱可塑性樹脂層に含まれる色素の量を算出する。
なお、熱可塑性樹脂層3gとは、組成物の固形分の3gと同様である。
【0218】
<光により酸、塩基、又はラジカルを発生する化合物>
熱可塑性樹脂層は、光により酸、塩基、又はラジカルを発生する化合物(単に「化合物C」ともいう。)を含んでもよい。
化合物Cとしては、紫外線及び可視光線等の活性光線を受けて、酸、塩基、又はラジカルを発生する化合物が好ましい。
化合物Cとしては、公知の、光酸発生剤、光塩基発生剤、及び光ラジカル重合開始剤(光ラジカル発生剤)を使用できる。なかでも、光酸発生剤が好ましい。
【0219】
(光酸発生剤)
熱可塑性樹脂層は、解像性の観点から、光酸発生剤を含むことが好ましい。
光酸発生剤としては、上述したネガ型感光性樹脂層が含んでもよい光カチオン重合開始剤が挙げられ、後述する点以外は好ましい態様も同じである。
【0220】
光酸発生剤としては、感度及び解像性の観点から、オニウム塩化合物、及びオキシムスルホネート化合物からなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、感度、解像性、及び密着性の観点から、オキシムスルホネート化合物を含むことがより好ましい。
また、光酸発生剤としては、以下の構造を有する光酸発生剤も好ましい。
【0221】
【0222】
(光ラジカル重合開始剤)
熱可塑性樹脂層は、光ラジカル重合開始剤を含んでもよい。
光ラジカル重合開始剤としては、上述したネガ型感光性樹脂層が含んでもよい光ラジカル重合開始剤が挙げられ、好ましい態様も同じである。
【0223】
(光塩基発生剤)
熱可塑性樹脂組成物は、光塩基発生剤を含んでもよい。
光塩基発生剤としては、公知の光塩基発生剤であれば特に制限されず、例えば、2-ニトロベンジルシクロヘキシルカルバメート、トリフェニルメタノール、O-カルバモイルヒドロキシルアミド、O-カルバモイルオキシム、[[(2,6-ジニトロベンジル)オキシ]カルボニル]シクロヘキシルアミン、ビス[[(2-ニトロベンジル)オキシ]カルボニル]ヘキサン1,6-ジアミン、4-(メチルチオベンゾイル)-1-メチル-1-モルホリノエタン、(4-モルホリノベンゾイル)-1-ベンジル-1-ジメチルアミノプロパン、N-(2-ニトロベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、ヘキサアンミンコバルト(III)トリス(トリフェニルメチルボレート)、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン、2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2-ニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジン、及び2,6-ジメチル-3,5-ジアセチル-4-(2,4-ジニトロフェニル)-1,4-ジヒドロピリジンが挙げられる。
【0224】
化合物Cは、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
化合物Cの含有量は、露光部及び非露光部の視認性並びに解像性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましい。
【0225】
<可塑剤>
熱可塑性樹脂層は、解像性、隣接する層との密着性、及び現像性の観点から、可塑剤を含むことが好ましい。
可塑剤は、アルカリ可溶性樹脂よりも分子量(オリゴマー又はポリマーであり分子量分布を有する場合は重量平均分子量)が小さいことが好ましい。可塑剤の分子量(重量平均分子量)は、200~2,000が好ましい。
可塑剤は、アルカリ可溶性樹脂と相溶して可塑性を発現する化合物であれば特に制限されないが、可塑性付与の観点から、可塑剤は、分子中にアルキレンオキシ基を有することが好ましく、ポリアルキレングリコール化合物がより好ましい。可塑剤に含まれるアルキレンオキシ基は、ポリエチレンオキシ構造又はポリプロピレンオキシ構造を有することがより好ましい。
【0226】
また、可塑剤は、解像性及び保存安定性の観点から、(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。相溶性、解像性、及び隣接する層との密着性の観点から、アルカリ可溶性樹脂がアクリル樹脂であり、且つ、可塑剤が(メタ)アクリレート化合物を含むことがより好ましい。
可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物としては、上述したネガ型感光性樹脂層に含まれる重合性化合物として記載した(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
転写フィルムにおいて、熱可塑性樹脂層とネガ型感光性樹脂層とが直接接触して積層される場合、熱可塑性樹脂層及び感光性樹脂層がいずれも同じ(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。同じ(メタ)アクリレート化合物を熱可塑性樹脂層及びネガ型感光性樹脂層がそれぞれ含むことで、層間の成分拡散が抑制され、保存安定性が向上するためである。
【0227】
熱可塑性樹脂層が可塑剤として(メタ)アクリレート化合物を含む場合、熱可塑性樹脂層と隣接する層との密着性の観点から、露光後の露光部においても(メタ)アクリレート化合物が重合しないことが好ましい。
また、可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物としては、熱可塑性樹脂層の解像性、隣接する層との密着性、及び現像性の観点から、一分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
更に、可塑剤として用いられる(メタ)アクリレート化合物としては、酸基を有する(メタ)アクリレート化合物又はウレタン(メタ)アクリレート化合物も好ましい。
【0228】
可塑剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
可塑剤の含有量は、熱可塑性樹脂層の解像性、隣接する層との密着性、及び現像性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、1~70質量%が好ましく、10~60質量%がより好ましく、20~50質量%が更に好ましい。
【0229】
<増感剤>
熱可塑性樹脂層は、増感剤を含んでもよい。
増感剤としては、特に制限されず、上述したネガ型感光性樹脂層が含んでもよい増感剤が挙げられる。
【0230】
増感剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
増感剤の含有量は、目的により適宜選択できるが、光源に対する感度の向上、並びに、露光部及び非露光部の視認性の観点から、熱可塑性樹脂層の全質量に対して、0.01~5質量%が好ましく、0.05~1質量%がより好ましい。
【0231】
<添加剤等>
熱可塑性樹脂層は、上記成分以外に、必要に応じて公知の添加剤を含んでもよい。
また、熱可塑性樹脂層については、特開2014-085643号公報の段落0189~0193に記載されており、この公報に記載の内容は本明細書に組み込まれる。
【0232】
熱可塑性樹脂層の層厚は、特に制限されないが、隣接する層との密着性の観点から、1μm以上が好ましく、2μm以上がより好ましい。上限は特に制限されないが、現像性及び解像性の観点から、20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましく、8μm以下が更に好ましい。
【0233】
なお、第1態様の転写フィルムとして、
図1の転写フィルム10を一例として説明したが、本発明はこれに制限されない。例えば、仮支持体1とカバーフィルム9との間に、熱可塑性樹脂層3、水溶性樹脂層5、及び感光性樹脂層7以外の他の層を更に有する構成であってもよいし、熱可塑性樹脂層3を有さない構成であってもよい。また、仮支持体1の片面のみならず、その両面に熱可塑性樹脂層3、水溶性樹脂層5、感光性樹脂層7、及びカバーフィルム9を有する構成であってもよい。
【0234】
<<第1態様の転写フィルムの製造方法>>
第1態様の転写フィルムの製造方法は特に制限されず、公知の製造方法、例えば、公知の各層の形成方法を使用できる。
以下、
図1を参照しながら、第1態様の転写フィルムの製造方法について説明する。但し、第1態様の転写フィルムは、
図1に示す構成を有するものに制限されない。
【0235】
上記の転写フィルム10の製造方法としては、例えば、仮支持体1の表面に熱可塑性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、更にこの塗膜を乾燥して熱可塑性樹脂層3を形成する工程と、熱可塑性樹脂層3の表面に水溶性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、更にこの塗膜を乾燥して水溶性樹脂層5を形成する工程と、水溶性樹脂層5の表面に感光性樹脂組成物(ネガ型感光性樹脂組成物)を塗布して塗膜を形成し、更にこの塗膜を乾燥して感光性樹脂層7(ネガ型感光性樹脂層)を形成する工程と、を含む方法が挙げられる。
なお、熱可塑性樹脂組成物及び熱可塑性樹脂層形成方法、水溶性樹脂組成物及び水溶性樹脂層形成方法、並びに、感光性樹脂組成物(ネガ型感光性樹脂組成物)及び感光性樹脂層(ネガ型感光性樹脂層)形成方法については後述する。
【0236】
上述の製造方法により製造された積層体の感光性樹脂層7上に、カバーフィルム9を圧着させることにより、転写フィルム10が製造される。
第1態様の転写フィルムの製造方法としては、感光性樹脂層7の仮支持体1を有する側とは反対側の面に接するようにカバーフィルム9を設ける工程を含むことにより、仮支持体1、熱可塑性樹脂層3、水溶性樹脂層5、感光性樹脂層7、及びカバーフィルム9を備える転写フィルム10を製造することが好ましい。
上記の製造方法により転写フィルム10を製造した後、転写フィルム10を巻き取ることにより、ロール形態の転写フィルムを作製及び保管してもよい。ロール形態の転写フィルムは、後述するロールツーロール方式での基板との貼合工程にそのままの形態で提供できる。
【0237】
また、上記の転写フィルム10の製造方法としては、カバーフィルム9上に、感光性樹脂層7及び水溶性樹脂層5を形成した後、水溶性樹脂層5の表面に熱可塑性樹脂層3を形成する方法であってもよい。
【0238】
<熱可塑性樹脂組成物及び熱可塑性樹脂層形成方法>
熱可塑性樹脂組成物としては、上述した熱可塑性樹脂層を形成する各種成分と溶剤とを含むのが好ましい。なお、熱可塑性樹脂組成物において、組成物の全固形分に対する各成分の含有量の好適範囲は、上述した熱可塑性樹脂層の全質量に対する各成分の含有量の好適範囲と同じである。
溶剤としては、溶剤以外の各成分を溶解又は分散可能であれば特に制限されず、公知の溶剤を使用できる。具体的には、例えば、アルキレングリコールエーテル溶剤、アルキレングリコールエーテルアセテート溶剤、アルコール溶剤(メタノール及びエタノール等)、ケトン溶剤(アセトン及びメチルエチルケトン等)、芳香族炭化水素溶剤(トルエン等)、非プロトン性極性溶剤(N,N-ジメチルホルムアミド等)、環状エーテル溶剤(テトラヒドロフラン等)、エステル溶剤(酢酸nプロピル等)、アミド溶剤、ラクトン溶剤、並びにこれらの2種以上を含む混合溶剤が挙げられる。
【0239】
溶剤としては、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。なかでも、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤からなる群より選択される少なくとも1種と、ケトン溶剤及び環状エーテル溶剤からなる群より選択される少なくとも1種とを含む混合溶剤がより好ましく、アルキレングリコールエーテル溶剤及びアルキレングリコールエーテルアセテート溶剤からなる群より選択される少なくとも1種、ケトン溶剤、並びに、環状エーテル溶剤の3種を少なくとも含む混合溶剤が更に好ましい。
【0240】
アルキレングリコールエーテル溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等)、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、及びジプロピレングリコールジアルキルエーテルが挙げられる。
アルキレングリコールエーテルアセテート溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、及びジプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテートが挙げられる。
溶剤としては、国際公開第2018/179640号の段落0092~0094に記載された溶剤、及び特開2018-177889公報の段落0014に記載された溶剤を用いてもよく、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
溶剤の含有量は、組成物の全固形分100質量部に対して、50~1,900質量部が好ましく、100~900質量部がより好ましい。
【0241】
熱可塑性樹脂層の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば特に制限されず、例えば、公知の塗布方法(スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、及びインクジェット塗布等)が挙げられる。
【0242】
<水溶性樹脂組成物及び水溶性樹脂層形成方法>
水溶性樹脂組成物としては、上述した水溶性樹脂層を形成する各種成分と溶剤とを含むのが好ましい。なお、水溶性樹脂組成物において、組成物の全固形分に対する各成分の含有量の好適範囲は、上述した水溶性樹脂層の全質量に対する各成分の含有量の好適範囲と同じである。
溶剤としては、水溶性樹脂を溶解又は分散可能であれば特に制限されず、水及び水混和性の有機溶剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、水又は水と水混和性の有機溶剤との混合溶剤がより好ましい。
水混和性の有機溶剤としては、例えば、炭素数1~3のアルコール、アセトン、エチレングリコール、及びグリセリンが挙げられ、炭素数1~3のアルコールが好ましく、メタノール又はエタノールがより好ましい。
溶剤を、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
溶剤の含有量は、組成物の全固形分100質量部に対して、50~2,500質量部が好ましく、50~1,900質量部がより好ましく、100~900質量部が更に好ましい。
【0243】
水溶性樹脂層の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば特に制限されず、例えば、公知の塗布方法(スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、及びインクジェット塗布等)が挙げられる。
【0244】
<感光性樹脂組成物(ネガ型感光性樹脂組成物)及び感光性樹脂層(ネガ型感光性樹脂層)形成方法>>
感光性樹脂組成物(ネガ型感光性樹脂組成物)としては、上述した感光性樹脂層(ネガ型感光性樹脂層)を形成する各種成分と溶剤とを含むのが好ましい。なお、感光性樹脂組成物(ネガ型感光性樹脂組成物)において、組成物の全固形分に対する各成分の含有量の好適範囲は、上述した感光性樹脂層(ネガ型感光性樹脂層)の全質量に対する各成分の含有量の好適範囲と同じである。
溶剤としては、溶剤以外の各成分(化合物A及び重合体A等)を溶解又は分散可能であれば特に制限されず、公知の溶剤を使用できる。溶剤としては、上述した熱可塑性樹脂組成物で説明した溶剤と同様のものが挙げられ、好適態様も同じである。
【0245】
溶剤を、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
溶剤の含有量は、組成物の全固形分100質量部に対し、50~1,900質量部が好ましく、100~1200質量部が更に好ましく、100~900質量部が更に好ましい。
【0246】
感光性樹脂層(ネガ型感光性樹脂層)の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば特に制限されず、例えば、公知の塗布方法(スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、及びインクジェット塗布等)が挙げられる。
【0247】
〔第2態様の転写フィルム〕
以下において、第2態様の転写フィルムの実施形態の一例について説明する。
図2に示す転写フィルム20は、仮支持体11と、感光性樹脂層13と、水溶性樹脂層15と、カバーフィルム17とを、この順に有する。
なお、
図2で示す転写フィルム20はカバーフィルム17を配置した形態であるが、カバーフィルム17は、配置されなくてもよい。
以下において、第2態様の転写フィルムを構成する各要素について説明する。
第2態様の転写フィルムにおいて、仮支持体11、感光性樹脂層13、及びカバーフィルム17としては、上述した第1実施形態の仮支持体1、感光性樹脂層7、及びカバーフィルム9と同じものが挙げられ、好適態様も同じである。
【0248】
<<水溶性樹脂層>>
転写フィルム20において、水溶性樹脂層15は、屈折率を調整するための屈折率調整層として機能する。つまり、第2態様の転写フィルムの一態様として、水溶性樹脂層は、屈折率を調整するための屈折率調整層として機能し得る。
水溶性樹脂層15は、化合物Aと樹脂と屈折率を調整するための材料(屈折率調整材料:例えば、金属酸化物、トリアジン環を有する化合物、及びフルオレン骨格を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の材料)とを含む。上記樹脂はその一部又は全部として、水溶性樹脂を含む。「水溶性樹脂」とは、既述の定義のとおり、液温が22℃であるpH7.0の水100gへの溶解度が0.1g以上である樹脂を意味する。
以下、水溶性樹脂層が含み得る各成分について説明する。
【0249】
<化合物A>
水溶性樹脂層は化合物Aを含む。
化合物Aとしては第1態様の転写フィルムの水溶性樹脂層が含む化合物Aと同様のものが挙げられ、また、その好適態様も同じである。
化合物Aは、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
化合物Aの含有量は、水溶性樹脂層の全質量に対して、0.001~10質量%が好ましく、0.01~3質量%がより好ましく、0.02~1質量%が更に好ましい。
【0250】
<樹脂>
水溶性樹脂層は、樹脂を含む。
既述のとおり、上記樹脂は、その一部又は全部として、水溶性樹脂を含む。
水溶性樹脂層が含む樹脂としては第1態様の転写フィルムの水溶性樹脂層が含む水溶性樹脂と同様のものが挙げられる。
水溶性樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
水溶性樹脂の含有量は、水溶性樹脂層の全質量に対して、1~50質量%が好ましく、1~40質量%がより好ましく、5~30質量%が更に好ましく、5~20質量%が特に好ましい。
【0251】
また、水溶性樹脂層は、アルカリ可溶性樹脂を含んでいてもよい。
上記アルカリ可溶性樹脂としては、第1態様の転写フィルム中の熱可塑性樹脂層及び感光性樹脂層が含むアルカリ可溶性樹脂も使用できる。
また、上記アルカリ可溶性樹脂としては、(メタ)アクリル酸/ビニル化合物の共重合体であるのも好ましく、なかでも、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アリルの共重合体であるのがより好ましく、メタクリル酸/メタクリル酸アリルの共重合体が更に好ましい。
水溶性樹脂が(メタ)アクリル酸/ビニル化合物の共重合体である場合、各組成比(モル%)としては、例えば、90/10~20/80が好ましく、80/20~30/70がより好ましい。
アルカリ可溶性樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
アルカリ可溶性樹脂の含有量は、水溶性樹脂層の全質量に対して、1~50質量%が好ましく、1~40質量%がより好ましく、5~30質量%が更に好ましく、5~20質量%が特に好ましい。
なお、上述した水溶性樹脂が、アルカリ可溶性樹脂であるのも好ましい。
【0252】
<屈折率調整材料>
また、水溶性樹脂層は、金属酸化物、トリアジン環を有する化合物、及びフルオレン骨格を有する化合物からなる群から選択される少なくとも1種の材料(屈折率調整材料)を含む。
【0253】
(金属酸化物)
金属酸化物の種類は特に制限はなく、公知の金属酸化物が挙げられる。金属酸化物における金属には、B、Si、Ge、As、Sb、及びTe等の半金属も含まれる。
【0254】
金属酸化物としては、例えば、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化インジウムスズ、酸化インジウム、酸化アルミウム、及び酸化イットリウムが挙げられる。
これらのなかでも、金属酸化物としては、例えば、屈折率を調整しやすいという観点から、酸化ジルコニウム及び酸化チタンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0255】
金属酸化物は粒子状であることが好ましい。
金属酸化物の粒子の平均一次粒子径は、例えば、硬化膜の透明性の観点から、1~200nmが好ましく、3~80nmがより好ましい。
粒子の平均一次粒子径は、電子顕微鏡を用いて任意の粒子200個の粒子径を測定し、測定結果を算術平均することにより算出される。なお、粒子の形状が球形でない場合には、最も長い辺を粒子径とする。
【0256】
金属酸化物粒子の市販品としては、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック株式会社製、製品名:ZRPGM15WT%-F04)、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック株式会社製、製品名:ZRPGM15WT%-F74)、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック株式会社製、製品名:ZRPGM15WT%-F75)、焼成酸化ジルコニウム粒子(CIKナノテック株式会社製、製品名:ZRPGM15WT%-F76)、酸化ジルコニウム粒子(ナノユースOZ-S30M、日産化学工業社製)、及び酸化ジルコニウム粒子(ナノユースOZ-S30K、日産化学工業社製)が挙げられる。
【0257】
(トリアジン環を有する化合物)
トリアジン環を有する化合物としては、構造単位中にトリアジン環を有するポリマーが挙げられ、下記一般式(X)で表される構造単位を有する化合物が挙げられる。
上記構造単位中にトリアジン環を有するポリマーは、水溶性樹脂が含み得る上述した樹脂とは異なることが好ましい。
【0258】
【0259】
式中、Arは、芳香環(炭素数は、例えば、6~20)及び複素環(原子数は、例えば、5~20)から選択される少なくとも1つを含む2価の基を示す。
Xは、それぞれ独立に、NR1を示す。R1は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(炭素数は、例えば、1~20)、アルコキシ基(炭素数は、例えば、1~20)、アリール基(炭素数は、例えば、6~20)又はアラルキル基(炭素数は、例えば、7~20)を示す。複数のXはそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
【0260】
具体的には、トリアジン環を有するハイパーブランチポリマーが好ましく、例えば、HYPERTECHシリーズ(日産化学工業株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。
【0261】
(フルオレン骨格を有する化合物)
フルオレン骨格を有する化合物としては、9,9-ビス[4-2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル]フルオレン骨格を有する化合物が好ましい。上記化合物は(ポリ)オキシエチレン又は(ポリ)オキシプロピレンで変性されていてもよい。これらは、例えば、EA-0200(大阪ガスケミカル株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。更に、エポキシアクリレートでエポキシ変性されていてもよい。これらは、例えば、GA5000、EG200(大阪ガスケミカル株式会社製、製品名)として商業的に入手可能である。
【0262】
屈折率調整材料は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
水溶性樹脂層における屈折率調整材料の含有量は、水溶性樹脂層の全質量に対して、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。上限は特に制限されないが、95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
【0263】
<金属酸化抑制剤>
また、水溶性樹脂層は、金属酸化抑制剤を含むことが好ましい。
水溶性樹脂層が金属酸化抑制剤を含む場合、水溶性樹脂層中の金属の酸化を抑制できる。
金属酸化抑制剤としては、例えば、分子内に窒素原子を含む芳香環を有する化合物が好ましい。金属酸化抑制剤としては、例えば、イミダゾール類、ベンゾイミダゾール類、テトラゾール類、メルカプトチアジアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ピリジン類(イソニコチンアミド等)、及びプリン塩基(アデニン等)が挙げられる。
上記ベンゾトリアゾール類としては、例えば、第1態様の転写フィルムにおける感光性樹脂層の説明で述べたベンゾトリアゾール類も使用できる。
金属酸化抑制剤の含有量は、水溶性樹脂層の全質量に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましい。
【0264】
<重合性化合物>
水溶性樹脂層は、重合性化合物を含んでいてもよい。
重合性化合物の含有量は、例えば、水溶性樹脂層の全質量に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましい。
重合性化合物としては、第1態様の転写フィルムの感光性樹脂層が含み得る重合性化合物と同様のものが挙げられ、なかでも、酸基を有する重合性化合物が好ましい。
【0265】
<その他の成分>
水溶性樹脂層は、上述した成分以外のその他の成分を含んでいてもよい。
その他の成分としては、アミノアルコール(N-メチルジエタノールアミン、及びモノイソプロパノールアミン等)も挙げられる。アミノアルコールは1個以上(例えば1~5個)の1級アルコール基と、1個以上(例えば1~5個)の1~3級アミノ基を有する化合物が好ましい。アミノアルコールの含有量は、例えば、水溶性樹脂層の全質量に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましい。
【0266】
水溶性樹脂層の屈折率は、1.60以上が好ましく、1.63以上がより好ましい。屈折率の上限は、2.10以下が好ましく、1.85以下がより好ましい。
【0267】
水溶性樹脂層の厚みは、500nm以下が好ましく、110nm以下がより好ましく、100nm以下が更に好ましい。上記厚みの下限は、例えば、20nm以上である。
【0268】
<<第2態様の転写フィルムの製造方法>>
第2態様の転写フィルムの製造方法は特に制限されず、公知の製造方法、例えば、公知の各層の形成方法を使用できる。
以下、
図2を参照しながら、第2態様の転写フィルムの製造方法について説明する。但し、第2態様の転写フィルムは、
図2に示す構成を有するものに制限されない。
【0269】
上記の転写フィルム20の製造方法としては、例えば、仮支持体11の表面に感光性樹脂組成物(ネガ型感光性樹脂組成物)を塗布して塗膜を形成し、更にこの塗膜を乾燥して感光性樹脂層13(ネガ型感光性樹脂層)を形成する工程と、感光性樹脂層13(ネガ型感光性樹脂層)の表面に水溶性樹脂組成物を塗布して塗膜を形成し、更にこの塗膜を乾燥して水溶性樹脂層15を形成する工程と、を含む方法が挙げられる。
なお、水溶性樹脂組成物及び水溶性樹脂層形成方法については後述する。感光性樹脂組成物(ネガ型感光性樹脂組成物)及び感光性樹脂層(ネガ型感光性樹脂層)形成方法については、上述した第1態様の転写フィルムの製造方法において説明したのと同様であり、好適態様も同じである。
【0270】
上述の製造方法により製造された積層体の水溶性樹脂層15上に、カバーフィルム17を圧着させることにより、転写フィルム20が製造される。
第2態様の転写フィルムの製造方法としては、水溶性樹脂層15の仮支持体11を有する側とは反対側の面に接するようにカバーフィルム17を設ける工程を含むことにより、仮支持体11、感光性樹脂層13、水溶性樹脂層15、及びカバーフィルム17を備える転写フィルム20を製造することが好ましい。
上記の製造方法により転写フィルム20を製造した後、転写フィルム20を巻き取ることにより、ロール形態の転写フィルムを作製及び保管してもよい。ロール形態の転写フィルムは、後述するロールツーロール方式での基板との貼合工程にそのままの形態で提供できる。
【0271】
また、上記の転写フィルム20の製造方法としては、カバーフィルム17上に、水溶性樹脂層15を形成した後、水溶性樹脂層15の表面に感光性樹脂層13を形成する方法であってもよい。
【0272】
<水溶性樹脂組成物及び水溶性樹脂層形成方法>
水溶性樹脂組成物としては、上述した水溶性樹脂層を形成する各種成分と溶剤とを含むのが好ましい。なお、水溶性樹脂組成物において、組成物の全固形分に対する各成分の含有量の好適範囲は、上述した水溶性樹脂層の全質量に対する各成分の含有量の好適範囲と同じである。
溶剤としては、化合物A及び水溶性樹脂を溶解又は分散可能であれば特に制限されず、水及び水混和性の有機溶剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、水又は水と水混和性の有機溶剤との混合溶剤がより好ましい。
水混和性の有機溶剤としては、例えば、炭素数1~3のアルコール、アセトン、エチレングリコール、及びグリセリンが挙げられ、炭素数1~3のアルコールが好ましく、メタノール又はエタノールがより好ましい。
溶剤を、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
溶剤の含有量は、組成物の全固形分100質量部に対して、50~2,500質量部が好ましく、50~1,900質量部がより好ましく、100~900質量部が更に好ましい。
【0273】
水溶性樹脂層の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば特に制限されず、例えば、公知の塗布方法(スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、及びインクジェット塗布等)が挙げられる。
【0274】
[積層体の製造方法、及び回路配線の製造方法]
本発明は積層体の製造方法にも関する。
積層体の製造方法は、上記の第1態様及び第2態様の転写フィルムを用いる積層体の製造方法であれば、特に制限されない。
積層体の製造方法としては、転写フィルム中の仮支持体上に配置された組成物層のうちの最外層の表面に基板(好ましくは導電性を有する基板)を接触させて、転写フィルムと基板(好ましくは導電性を有する基板)とを貼り合わせて、転写フィルム付き基板を得る貼合工程(以下「貼合工程」ともいう。)と、上記組成物層をパターン露光する露光工程(以下「露光工程」ともいう。)と、露光された上記組成物層を現像して樹脂パターンを形成する現像工程(以下「現像工程」ともいう。)と、更に、貼合工程と露光工程との間、又は、露光工程と現像工程との間に、転写フィルム付き基板から仮支持体を剥離する剥離工程(以下「剥離工程」ともいう。)と、を含む方法が好ましい。
【0275】
回路配線の製造方法は、上記の第1態様及び第2態様の転写フィルムを用いる回路配線の製造方法であれば、特に制限されない。
回路配線の製造方法としては、基板、導電層(基板が有する導電層)、及び上記の転写フィルムを用いて製造された樹脂パターンがこの順で積層された積層体において、樹脂パターンが配置されていない領域にある導電層をエッチング処理する工程(以下「エッチング工程」ともいう)を含む方法が好ましい。
つまり、回路配線の製造方法は、転写フィルム中の仮支持体上に配置された組成物層のうちの最外層の表面に導電層を有する基板を接触させて、転写フィルムと導電層を有する基板とを貼り合わせて、転写フィルム付き基板を得る貼合工程(以下「貼合工程」ともいう。)と、上記組成物層をパターン露光する露光工程(以下「露光工程」ともいう。)と、露光された上記組成物層を現像して樹脂パターンを形成する現像工程(以下「現像工程」ともいう。)と、樹脂パターンが配置されていない領域にある導電層をエッチング処理する工程(以下「エッチング工程」ともいう)と、更に、貼合工程と露光工程との間、又は、露光工程と現像工程との間に、転写フィルム付き基板から仮支持体を剥離する剥離工程(以下「剥離工程」ともいう。)と、を含む方法が好ましい。
【0276】
以下、積層体の製造方法及び回路配線の製造方法が含む各工程について説明するが、特に言及した場合を除き、積層体の製造方法に含まれる各工程について説明した内容は、回路配線の製造方法に含まれる各工程についても適用されるものとする。
【0277】
〔貼合工程〕
積層体の製造方法は、貼合工程を含むことが好ましい。
貼合工程においては、転写フィルム中の仮支持体上に配置された組成物層のうちの最外層の表面に基板(基板の表面に導電層が設けられている場合は導電層)を接触させ、転写フィルムと基板とを圧着させることが好ましい。上記態様であると、組成物層と基板との密着性が向上するため、特に、露光及び現像後のパターン形成された樹脂パターンを用いて導電層をエッチングする際のエッチングレジストとして好適に用いることができる。
【0278】
なお、転写フィルムがカバーフィルムを備える場合は、転写フィルムの表面からカバーフィルムを除去した後、貼り合わせればよい。
【0279】
基板と転写フィルムとを圧着する方法としては、特に制限されず、公知の転写方法、及びラミネート方法を用いることができる。
転写フィルムの基板への貼り合わせは、転写フィルムの仮支持体とは反対側の面に基板を重ね、ロール等の手段を用いて加圧及び加熱を施すことにより、行われることが好ましい。貼り合わせには、ラミネーター、真空ラミネーター、及びより生産性を高めることができるオートカットラミネーター等の公知のラミネーターが使用できる。
【0280】
貼合工程を含む積層体の製造方法及び回路配線の製造方法は、ロールツーロール方式により行われることが好ましい。
ロールツーロール方式とは、基板として、巻き取り及び巻き出しが可能な基板を用い、積層体の製造方法又は回路配線の製造方法に含まれるいずれかの工程の前に、基板又は基板を含む構造体を巻き出す工程(「巻き出し工程」ともいう。)と、いずれかの工程の後に、基材又は基板を含む構造体を巻き取る工程(「巻き取り工程」ともいう。)と、を含み、少なくともいずれかの工程(好ましくは、全ての工程、又は加熱工程以外の全ての工程)を、基材又は基板を含む構造体を搬送しながら行う方式をいう。
巻き出し工程における巻き出し方法、及び巻き取り工程における巻取り方法としては、特に制限されず、ロールツーロール方式を適用する製造方法において、公知の方法を用いればよい。
【0281】
<基板>
第1態様及び第2態様の転写フィルムを用いる樹脂パターンの形成に用いる基板としては、公知の基板を用いればよいが、導電層を有する基板が好ましく、基材の表面に導電層を有することがより好ましい。
基板は、必要に応じて導電層以外の任意の層を有してもよい。
【0282】
基板を構成する基材としては、例えば、ガラス、シリコン、及びフィルムが挙げられる。
基板を構成する基材は透明であることが好ましい。本明細書において「透明である」とは、波長400~700nmの光の透過率が80%以上であることを意味する。
また、基板を構成する基材の屈折率は、1.50~1.52であることが好ましい。
【0283】
透明なガラス基材としては、コーニング社のゴリラガラスに代表される強化ガラスが挙げられる。また、透明なガラス基材としては、特開2010-086684号公報、特開2010-152809号公報及び特開2010-257492号公報に用いられている材料を用いることができる。
【0284】
基材としてフィルム基材を用いる場合は、光学的に歪みが小さく、及び/又は、透明度が高いフィルム基材を用いることが好ましい。そのようなフィルム基材としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース及びシクロオレフィンポリマーが挙げられる。
【0285】
基板の基材としては、ロールツーロール方式で製造する場合、フィルム基材が好ましい。また、ロールツーロール方式によりタッチパネル用の回路配線を製造する場合、基材がシート状樹脂組成物であることが好ましい。
【0286】
基板が有する導電層としては、一般的な回路配線及びタッチパネル配線に用いられる導電層が挙げられる。
導電層としては、導電性及び細線形成性の観点から、金属層、導電性金属酸化物層、グラフェン層、カーボンナノチューブ層及び導電ポリマー層からなる群から選ばれた少なくとも1種の層が好ましく、金属層がより好ましく、銅層又は銀層が更に好ましい。
基板は、導電層を1層単独で有してよく、2層以上有してもよい。2層以上の導電層を有する場合は、異なる材質の導電層を有することが好ましい。
【0287】
導電層の材料としては、金属及び導電性金属酸化物が挙げられる。
金属としては、Al、Zn、Cu、Fe、Ni、Cr、Mo、Ag及びAuが挙げられる。
導電性金属酸化物としては、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)及びSiO2が挙げられる。
なお、本明細書において「導電性」とは、体積抵抗率が1×106Ωcm未満であることをいう。導電性金属酸化物の体積抵抗率は、1×104Ωcm未満が好ましい。
【0288】
複数の導電層を有する基板を用いて樹脂パターンを製造する場合、複数の導電層のうち少なくとも一つの導電層は導電性金属酸化物を含むことが好ましい。
導電層としては、静電容量型タッチパネルに用いられる視認部のセンサーに相当する電極パターン又は周辺取り出し部の配線が好ましい。
【0289】
〔露光工程〕
積層体の製造方法は、上記貼合工程の後、組成物層をパターン露光する工程(露光工程)を含むことが好ましい。
【0290】
パターン露光におけるパターンの詳細な配置及び具体的サイズは特に制限されない。回路配線の製造方法により製造される回路配線を有する入力装置を備えた表示装置(例えばタッチパネル)の表示品質を高め、また、取り出し配線の占める面積が小さくなるように、パターンの少なくとも一部(好ましくはタッチパネルの電極パターン及び/又は取り出し配線の部分)は幅が20μm以下である細線を含むことが好ましく、幅が10μm以下の細線を含むことがより好ましい。
【0291】
露光に使用する光源は、感光性樹脂層を露光可能な波長の光(例えば、365nm又は405nm)を照射する光源であれば、適宜選定して用いることができる。具体的には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ及びLED(Light Emitting Diode)が挙げられる。
【0292】
露光量としては、5~200mJ/cm2が好ましく、10~100mJ/cm2がより好ましい。
【0293】
〔剥離工程〕
剥離工程は、貼合工程と露光工程との間、又は、露光工程と後述する現像工程との間に、感光性組成物層付き基板から仮支持体を剥離する工程である。
剥離方法は特に制限されず、特開2010-072589号公報の段落[0161]~[0162]に記載されたカバーフィルム剥離機構と同様の機構を用いることができる。
従って、露光工程においては、組成物層から仮支持体を剥離した後にパターン露光してもよく、仮支持体を剥離する前に、仮支持体を介してパターン露光し、その後、仮支持体を剥離してもよい。マスクは、露光前に仮支持体を剥離した場合には、組成物層と接触させて露光してもよいし、接触せずに近接させて露光してもよい。仮支持体を剥離せずに露光する場合には、マスクは、仮支持体と接触させて露光してもよいし、接触せずに近接させて露光してもよい。組成物層とマスクとの接触によるマスク汚染の防止、及びマスクに付着した異物による露光への影響を避けるためには、仮支持体を剥離せずにパターン露光することが好ましい。なお、露光方式は、接触露光の場合は、コンタクト露光方式、非接触露光方式の場合は、プロキシミティ露光方式、レンズ系及びミラー系のプロジェクション露光方式、並びに、露光レーザー等を用いたダイレクト露光方式を適宜選択して使用できる。レンズ系及びミラー系のプロジェクション露光の場合、必要な解像力、焦点深度に応じて、適当なレンズの開口数(NA)を有する露光機を使用できる。ダイレクト露光方式の場合は、直接感光層に描画を行ってもよいし、レンズを介して感光層に縮小投影露光をしてもよい。また、露光は大気下で行うだけでなく、減圧又は真空下で行ってもよく、また、光源と感光性層の間に水等の液体を介在させて露光してもよい。
【0294】
〔現像工程〕
積層体の製造方法は、上記露光工程の後、露光された組成物層を現像して樹脂パターンを形成する工程(現像工程)を含むことが好ましい。
組成物層がネガ型感光性樹脂層を含む場合、露光されたパターンに応じて組成物層が硬化反応して硬化膜(パターン状の硬化膜)となり、組成物層の非露光部のみを現像液(アルカリ現像液等)で除去することが可能になる。
【0295】
転写フィルムが、ネガ型感光性樹脂層と共に更に異なる組成物層を有していた場合、上記異なる組成物層は、ネガ型感光性樹脂層における除去される部分と同様の部分のみが除去されてもよいし、ネガ型感光性樹脂層における除去される部分以外の部分も含めて全面的に除去されてもよい。
例えば、転写フィルムが、ネガ型感光性樹脂層と共に、熱可塑性樹脂層及び水溶性樹脂層を有していた場合、現像工程において、非露光部の熱可塑性樹脂層及び水溶性樹脂層のみが、非露光部のネガ型感光性樹脂層とともに除去されてもよい。また、現像工程において、露光部と非露光部との両方の領域における熱可塑性樹脂層及び水溶性樹脂層が、現像液に溶解又は分散する形で除去されてもよい。
【0296】
現像工程における露光された組成物層の現像は、現像液を用いて行うことができる。
現像液は、転写フィルムが有していた組成物層の性質及び現像の形式に応じて適宜選択すればよく、例えば、アルカリ現像液及び有機系現像液が挙げられる。
アルカリ現像液としては、例えば、特開平5-072724号公報に記載の現像液等の公知の現像液が使用できる。
アルカリ現像液としては、pKa=7~13の化合物を0.05~5mol/L(リットル)の濃度で含むアルカリ水溶液系の現像液が好ましい。アルカリ現像液は、水溶性の有機溶剤及び/又は界面活性剤を含んでもよい。アルカリ現像液としては、国際公開第2015/093271号の段落0194に記載の現像液も好ましい。アルカリ現像液における有機溶剤の含有量は、現像液の全質量に対して、0質量%以上90質量%未満が好ましい。
有機系現像液としては、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及びエーテル系溶剤等の極性溶剤、並びに、炭化水素系溶剤の1種以上を含む現像液を使用可能である。有機系現像液における有機溶剤の含有量は、現像液の全質量に対して、90~100質量%が好ましく、95~100質量%が好ましい。
【0297】
現像方式としては、特に制限されず、パドル現像、シャワー現像、シャワー及びスピン現像、並びに、ディップ現像のいずれであってもよい。シャワー現像とは、露光後の感光性樹脂層に現像液をシャワーにより吹き付けることにより、非露光部を除去する現像処理である。
現像工程の後に、洗浄剤をシャワーにより吹き付け、ブラシで擦りながら、現像残渣を除去することが好ましい。
現像液の液温は特に制限されないが、20~40℃が好ましい。
【0298】
〔エッチング工程〕
回路配線の製造方法は、基板、導電層(基板が有する導電層)、及び樹脂パターン(より好ましくは、上記貼合工程と、上記露光工程と、上記現像工程とを含む製造方法により製造された樹脂パターン)がこの順で積層された積層体において、樹脂パターンが配置されていない領域にある導電層をエッチング処理する工程(エッチング工程)を含むことが好ましい。
【0299】
エッチング工程では、感光性樹脂層から形成された樹脂パターンを、エッチングレジストとして使用し、導電層のエッチング処理を行う。
エッチング処理の方法としては、公知の方法を適用でき、例えば、特開2017-120435号公報の段落0209~0210に記載の方法、特開2010-152155号公報の段落0048~0054に記載の方法、エッチング液に浸漬するウェットエッチング法、及びプラズマエッチング等のドライエッチングによる方法が挙げられる。
【0300】
ウェットエッチングに用いられるエッチング液は、エッチングの対象に合わせて酸性又はアルカリ性のエッチング液を適宜選択すればよい。
酸性のエッチング液としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸、シュウ酸及びリン酸から選択される酸性成分単独の水溶液、並びに、酸性成分と、塩化第2鉄、フッ化アンモニウム及び過マンガン酸カリウムから選択される塩との混合水溶液が挙げられる。酸性成分は、複数の酸性成分を組み合わせた成分であってもよい。
アルカリ性のエッチング液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、有機アミン、及び有機アミンの塩(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド等)から選択されるアルカリ成分単独の水溶液、並びに、アルカリ成分と塩(過マンガン酸カリウム等)との混合水溶液が挙げられる。アルカリ成分は、複数のアルカリ成分を組み合わせた成分であってもよい。
【0301】
〔除去工程〕
回路配線の製造方法においては、残存する樹脂パターンを除去する工程(除去工程)を行うことが好ましい。
除去工程は、特に制限されず、必要に応じて行うことができるが、エッチング工程の後に行うことが好ましい。
残存する樹脂パターンを除去する方法としては特に制限されないが、薬品処理により除去する方法が挙げられ、除去液を用いて除去する方法が好ましい。
感光性樹脂層の除去方法としては、液温が好ましくは30~80℃、より好ましくは50~80℃である撹拌中の除去液に、残存する樹脂パターンを有する基板を、1~30分間浸漬する方法が挙げられる。
【0302】
除去液としては、例えば、無機アルカリ成分又は有機アルカリ成分を、水、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン又はこれらの混合溶液に溶解させた除去液が挙げられる。無機アルカリ成分としては、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが挙げられる。有機アルカリ成分としては、第1級アミン化合物、第2級アミン化合物、第3級アミン化合物及び第4級アンモニウム塩化合物が挙げられる。
また、除去液を使用し、スプレー法、シャワー法及びパドル法等の公知の方法により除去してもよい。
【0303】
〔その他の工程〕
回路配線の製造方法は、上述した工程以外の任意の工程(その他の工程)を含んでもよい。例えば、以下の工程が挙げられるが、これらの工程に制限されない。
また、回路配線の製造方法に適用可能な露光工程、現像工程、及びその他の工程としては、特開2006-023696号公報の段落0035~0051に記載の工程が挙げられる。
【0304】
<<カバーフィルム剥離工程>>
転写フィルムがカバーフィルムを備える場合、積層体の製造方法は、転写フィルムからカバーフィルムを剥離する工程を含むことが好ましい。カバーフィルムを剥離する方法は、制限されず、公知の方法を適用することができる。
【0305】
<<可視光線反射率を低下させる工程>>
回路配線の製造方法は、基材が有する複数の導電層の一部又は全ての可視光線反射率を低下させる処理を行う工程を含んでいてもよい。
可視光線反射率を低下させる処理としては、酸化処理が挙げられる。基材が銅を含む導電層を有する場合、銅を酸化処理して酸化銅とし、導電層を黒化することにより、導電層の可視光線反射率を低下させることができる。
可視光線反射率を低下させる処理については、特開2014-150118号公報の段落0017~0025、並びに、特開2013-206315号公報の段落0041、段落0042、段落0048及び段落0058に記載されており、これらの公報に記載の内容は本明細書に組み込まれる。
【0306】
<<絶縁膜を形成する工程、絶縁膜の表面に新たな導電層を形成する工程>>
回路配線の製造方法は、回路配線の表面に絶縁膜を形成する工程と、絶縁膜の表面に新たな導電層を形成する工程と、を含むことも好ましい。
上記の工程により、第一の電極パターンと絶縁した第二の電極パターンを形成することができる。
絶縁膜を形成する工程としては、特に制限されず、公知の永久膜を形成する方法が挙げられる。また、絶縁性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの絶縁膜を形成してもよい。
絶縁膜上に新たな導電層を形成する工程は、特に制限されず、例えば、導電性を有する感光性材料を用いて、フォトリソグラフィにより所望のパターンの新たな導電層を形成してもよい。
【0307】
回路配線の製造方法は、基材の両方の表面にそれぞれ複数の導電層を有する基板を用い、基材の両方の表面に形成された導電層に対して逐次又は同時に回路形成することも好ましい。このような構成により、基材の一方の表面に第一の導電パターン、もう一方の表面に第二の導電パターンを形成したタッチパネル用回路配線を形成できる。また、このような構成のタッチパネル用回路配線を、ロールツーロールで基材の両面から形成することも好ましい。
【0308】
〔回路配線の用途〕
回路配線の製造方法により製造される回路配線は、種々の装置に適用することができる。上記の製造方法により製造される回路配線を備えた装置としては、例えば、入力装置が挙げられ、タッチパネルが好ましく、静電容量型タッチパネルがより好ましい。また、上記入力装置は、有機EL表示装置及び液晶表示装置等の表示装置に適用できる。
【0309】
[電子デバイスの製造方法]
本発明は電子デバイスの製造方法にも関する。
上記電子デバイスの製造方法としては、上述の第1態様及び第2態様の転写フィルムを用いる電子デバイスの製造方法が好ましい。
なかでも、電子デバイスの製造方法は、上述の積層体の製造方法を含むことが好ましい。
上記電子デバイスとしては、例えば、入力装置等が挙げられ、タッチパネルであることが好ましい。また、上記入力装置は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、液晶表示装置等の表示装置に適用することができる。
【0310】
タッチパネルの製造方法としては、基板、導電層(基板が有する導電層)、及び第1態様及び第2態様の転写フィルムを用いて製造された樹脂パターンがこの順で積層された積層体において、樹脂パターンが配置されていない領域にある導電層をエッチング処理することにより、タッチパネル用配線を形成する工程を含む方法も好ましく、上記貼合工程と、上記露光工程と、上記現像工程とを含む製造方法により製造される樹脂パターンを使用する方法がより好ましい。
【0311】
タッチパネル用配線を形成する工程を含むタッチパネルの製造方法における、各工程の具体的な態様、及び各工程を行う順序等の実施態様については、上述の「回路配線の製造方法」の項において説明した通りであり、好ましい態様も同様である。
また、タッチパネル用配線を形成する工程を含むタッチパネルの製造方法は、上述した以外の任意の工程(その他の工程)を含んでもよい。
タッチパネル用配線を形成する方法としては、国際公開第2016/190405号の
図1に記載の方法も参照できる。
【0312】
上記のタッチパネルの製造方法により、タッチパネル用配線を少なくとも有するタッチパネルが製造される。タッチパネルは、透明基板と、電極と、絶縁層又は保護層とを有することが好ましい。
タッチパネルにおける検出方法としては、抵抗膜方式、静電容量方式、超音波方式、電磁誘導方式、及び光学方式等の公知の方式が挙げられる。なかでも、静電容量方式が好ましい。
【0313】
タッチパネルとしては、いわゆるインセル型(例えば、特表2012-517051号公報の
図5、
図6、
図7及び
図8に記載のもの)、いわゆるオンセル型(例えば、特開2013-168125号公報の
図19に記載のもの、並びに、特開2012-89102号公報の
図1及び
図5に記載のもの)、OGS(One Glass Solution)型、TOL(Touch-on-Lens)型(例えば、特開2013-54727号公報の
図2に記載のもの)、各種アウトセル型(いわゆる、GG、G1・G2、GFF、GF2、GF1及びG1F等)並びにその他の構成(例えば、特開2013-164871号公報の
図6に記載のもの)が挙げられる。
タッチパネルとしては、例えば、特開2017-120345号公報の段落0229に記載のものが挙げられる。
【0314】
第1態様及び第2態様の転写フィルムを用いる電子デバイスの製造方法(特に、転写フィルムがネガ型感光性組成物層を含む場合)においては、製造される電子デバイスが樹脂パターンを硬化膜として含むことも好ましい。
このような樹脂パターンの硬化膜は、電子デバイス(タッチパネル等)が有する電極等の一部又は全部を被覆する保護膜(永久膜)として使用できる。電極等の上に上記樹脂パターンの硬化膜を保護膜(永久膜)として配置することで、金属の腐食、電極と駆動用回路間の電気抵抗の増加、及び断線といった不具合の防止が可能である。
【実施例】
【0315】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
以下の実施例において、特段の断りがない限り、「部」及び「%」は、それぞれ、「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0316】
[化合物Aの合成]
〔合成例1~4:高分子化合物Aの合成〕
<合成例1>
攪拌機、温度計、還流冷却管、及び窒素ガス導入管を備えた300ミリリットル三口フラスコに、シクロヘキサノン(富士フイルム和光純薬社製)25.0gを仕込んで、80℃まで昇温した。次いで、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチルアクリレート(東京化成工業社製)10.40g(36.6ミリモル)、ポリエチレングリコールモノアクリレート(ブレンマーAE-400(n≒10、 日油株式会社製)60.5g(111.8ミリモル)、シクロヘキサノン25.0g、及び開始剤「V-601」(富士フイルム和光純薬社製)0.342gからなる混合溶液を、180分で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、更に1時間攪拌を続けた後、「V-601」0.342gとシクロヘキサノン1.00gからなる溶液を更に添加した。次いで、添加直後から93℃まで昇温し、更に2時間攪拌を続け、後段に示す重合体A-1のシクロヘキサノン溶液121.5gを得た。この重合体の重量平均分子量(Mw)は11000(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(EcoSEC HLC-8320GPC(東ソー社製))により溶離液THF、流速0.35ml/min、温度40℃の測定条件にてポリスチレン換算で算出、使用カラムはTSKgel SuperHZM-H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製))であった。
【0317】
<合成例2~4>
合成例1で用いたモノマー及び組成比をそれぞれ表1のように変更したこと以外は同様の方法により、重合体A-5、A-6、及びA-9を合成した。
【0318】
以下に、重合体A-1、A-5、A-6、及びA-9の構造を示す。なお、重合体中の構成単位に添えた数値は、重合体の全質量に対する含有量(質量%)を表す。
【0319】
【0320】
各重合体の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(Mw/Mn)は以下の通りであった。
【0321】
【0322】
〔合成例5:低分子化合物Aの合成〕
文献(「立松等、油化学, 1980, Vol.29(1), p23」及び「立松等、薬学, 1976, Vol.25(5), p287」)を参照して、公知の方法により以下に示す低分子化合物B-1を合成した。
【0323】
【0324】
[実施例1~8並びに比較例1及び2]
〔感光性樹脂組成物の調製〕
<樹脂の製造>
以下の合成例において、以下の略語はそれぞれ以下の化合物を表す。
St:スチレン(富士フイルム和光純薬製)
MAA:メタクリル酸(富士フイルム和光純薬製)
MMA:メタクリル酸メチル(富士フイルム和光純薬製)
BzMA:ベンジルメタクリレート(富士フイルム和光純薬製)
AA:アクリル酸(東京化成製)
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(昭和電工製)
MEK:メチルエチルケトン(三協化学製)
V-601:ジメチル-2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(富士フイルム和光純薬製)
【0325】
(樹脂P-1の合成)
3つ口フラスコにPGMEA(116.5部)を入れ、窒素雰囲気下において90℃に昇温した。St(52.0部)、MMA(19.0部)、MAA(29.0部)、V-601(4.0部)、及びPGMEA(116.5部)を加えた溶液を、90℃±2℃に維持した上記フラスコ溶液中に2時間かけて滴下した。滴下終了後、上記フラスコ内の溶液を90℃±2℃にて2時間撹拌することで、樹脂P-1(固形分濃度30.0質量%)を得た。
【0326】
(樹脂P-2、P-3の合成)
使用するモノマーの種類等を下記表1に示す通りに変更し、その他の条件については、樹脂P-1と同様の方法で、樹脂P-2を含む溶液及び樹脂P-3を含む溶液を得た。樹脂P-2を含む溶液及び樹脂P-3を含む溶液の固形分濃度は30質量%とした。
【0327】
以下に、各樹脂を合成するために使用した各モノマーの種類、各モノマーに由来する構成単位の質量百分率(質量%)、並びに、各樹脂の重量平均分子量を示す。
なお、樹脂P-1~P-3は、いずれもアルカリ可溶性樹脂に該当する。
【0328】
【0329】
<感光性樹脂組成物1~4の調製>
後段に示す表3に記載の処方に従い、これらの成分を撹拌混合することで、感光性樹脂組成物1~4を調製した。なお、各成分の量の単位は、質量部である。
以下に、各感光性樹脂組成物1~4の配合を示す。
表中、各感光性樹脂組成物における、各成分に関しての数値は、各成分の添加量(質量部)を示す。
なお、樹脂は、樹脂を含む溶液の形態で各感光性樹脂組成物に添加された。表中における、樹脂の添加量を示す数値は、添加された「樹脂を含む溶液」としての質量である。
以降、混合溶液に含まれた形態で組成物の添加される成分について、特段の断りがない限り同様とする。
【0330】
【0331】
表3中、各成分の詳細は以下のとおりである。
・BPE-500:2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシペンタエトキシ)フェニル)プロパン、新中村化学工業社製
・BPE-200:2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシジエトキシ)フェニル)プロパン、新中村化学工業社製
・M-270:ポリプロピレングリコールジアクリレート(n≒12)、東亞合成社製
・A-TMPT:トリメチロールプロパントリアクリラート、新中村化学工業社製
・SR-454:エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート、アルケマ社製
・SR-502:エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート、アルケマ社製
・A-9300-CL1:カプロラクトン変性(メタ)アクリレート化合物、新中村化学工業社製
・B-CIM:2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、Hampford社
・SB-PI 701:4,4′-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、三洋貿易社製
・ロイコクリスタルバイオレット:東京化成工業社製
・ブリリアントグリーン:東京化成工業社製
・N-フェニルグリシン:東京化成工業社製
・CBT-1:カルボキシベンゾトリアゾール、城北化学社製
・TDP-G:フェノチアジン、川口化学社製
・Irganox245:ヒンダードフェノール系酸化防止剤、BASF社製
・N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩:富士フイルム和光純薬社製
・フェニドン:東京化成工業社製
・メガファックF552、DIC社製
【0332】
〔熱可塑性樹脂組成物の調製〕
<樹脂P-4の合成>
使用するモノマーの種類等を下記表4に示す通りに変更し、その他の条件については、樹脂P-1と同様の方法で、樹脂P-4を含む溶液を得た。樹脂P-4を含む溶液の固形分濃度は30質量%とした。
なお、樹脂P-4は、アルカリ可溶性樹脂に該当する。
以下に、樹脂を合成するために使用した各モノマーの種類、各モノマーに由来する構成単位の質量百分率(質量%)、並びに、樹脂の重量平均分子量を示す。
【0333】
【0334】
<熱可塑性樹脂組成物1及び2の調製>
以下の成分を下記表5に示す質量部で混合し、熱可塑性樹脂組成物1~2を調製した。
【0335】
【0336】
表5において、略語はそれぞれ以下の化合物を表す。
【0337】
・P-4:ベンジルメタクリレートに基づく構成単位、メタクリル酸メチルに基づく構成単位、アクリル酸に基づく構成単位を、樹脂の全質量に対して、それぞれ、75質量%、10質量%、及び15質量%含み、重量平均分子量が30000である樹脂。なお、P-4は、熱可塑性樹脂であるアルカリ可溶性樹脂である樹脂に該当する。また、P-4は、P-4を含む溶液(固形分濃度30.0質量%、溶剤:PGMEA)の形態で、熱可塑性樹脂組成物中に添加された。
・アクリベースFF187:アルカリ可溶性熱可塑性樹脂である樹脂を含む溶液、固形分濃度40質量%、溶剤:PGMEA、藤倉化成社製)
【0338】
・BB-1:下記に示す構造の化合物(酸により発色する色素)
【化18】
【0339】
・C-1:下記に示す構造の化合物(光酸発生剤、特開2013-047765号公報の段落0227に記載の化合物、段落0227に記載の方法に従って合成した。)
【化19】
【0340】
〔水溶性樹脂組成物の調整〕
<水溶性樹脂組成物1~7の調製>
以下の成分を下記表6に示す質量部で混合し、水溶性樹脂組成物1~7を調製した。
なお、水溶性樹脂組成物1~7は、中間層を形成するために好適な組成物である。
また、水溶性樹脂組成物1~7の調製に使用した、クラレポバール4-88LA、クラレポバール205、及びポリビニルピロリドンは、液温が22℃であるpH7.0の水100gへの溶解度が10g以上であった。
【0341】
【0342】
〔転写フィルムの作製〕
<実施例1>
調整した熱可塑性樹脂組成物1を、スリット状ノズルを用いて幅1.0mで乾燥後の組成物層の平均膜厚が指定の膜厚(表5に記載の膜厚:2.0μm)となるように、厚み16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラー16KS40(東レ株式会社製))に塗布し、80℃且つ吸気量と排気量を調整して膜面風速が0.2m/secとなるように設定した3mの乾燥ゾーンを60秒間かけて通過させ、仮支持体と熱可塑性樹脂層の積層体Aを得た。
続いて、作製した積層体Aの熱可塑性樹脂層上に、スリット状ノズルを用いて、幅1.0mで乾燥後の組成物層の平均膜厚が指定の膜厚(表6に記載の膜厚:1.0μm)となるように塗布量を調整し、水溶性樹脂組成物1を塗布した。その後、上記積層体Aを、温度が100℃、且つ、吸気量と排気量を調整して膜面風速が3m/secとなるように設定した3mの乾燥ゾーンを60秒間かけて通過させ、上記熱可塑性樹脂層上に水溶性樹脂層が形成された積層体Bを得た。
続いて、作製した積層体Bの水溶性樹脂層上に、スリット状ノズルを用いて、幅1.0mで乾燥後の組成物層の平均膜厚が指定の膜厚(表3に記載の膜厚:2.0μm)となるように塗布量を調整し、感光性樹脂組成物1を塗布した。その後、上記積層体Bを、温度が80℃、且つ、吸気量と排気量を調整して膜面風速が0.2m/secとなるように設定した3mの乾燥ゾーンを60秒間かけて通過させ、上記水溶性樹脂層上に感光性樹脂層が形成された実施例1の転写フィルムを得た。
【0343】
<実施例2~8、並びに、比較例1及び2>
表7に示すように、熱可塑性樹脂組成物、水溶性樹脂組成物、及び感光性樹脂組成物の種類を変更した以外は、実施例1と同様の方法で転写フィルムを作製した。
但し、実施例2~8、並びに、比較例1及び2については、熱可塑性樹脂組成物、水溶性樹脂組成物、及び感光性樹脂組成物の種類に応じて、各組成物から形成される組成物層の膜厚も変更している。形成される組成物層の膜厚とは、表3、表5、及び表6において組成物の組成とともに示している平均膜厚(μm)を意図する。
【0344】
なお、実施例1~8の転写フィルムは、第1態様の転写フィルムに該当する。
【0345】
〔解像性の評価〕
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、スパッタ法にて厚さ200nmの銅層を設け、銅層付きPET基板を用意した。
作製した転写フィルム(実施例1~8並びに比較例1及び2)を巻き出した後、ロール温度100℃、線圧1.0MPa、線速度4.0m/minのラミネート条件で、仮支持体上に配置された組成物層の最外層(感光性樹脂層)の表面と上記銅層付きPET基板とを貼り合せることで、転写フィルムに銅層付きPET基板をラミネートした。次いで、仮支持体を剥離せずにラインアンドスペースパターンマスク(Duty比 1:1、線幅20μm)を介して超高圧水銀灯で露光後、仮支持体を剥離して現像した。現像は25℃の1.0%炭酸ナトリウム水溶液を用い、シャワー現像で30秒行った。上記方法にてラインアンドスペースパターンを形成したときに、レジスト線幅が20μmとなる露光量を最適露光量とした。
最適露光量で形成したラインアンドスペースパターンの任意の1cm2の領域について走査型電子顕微鏡(SEM)により観察し、レジストパターンが剥離せず、且つ、残渣を生じずに解像した最小の線幅を解像度として下記評価基準にしたがって評価した。このうち、ランクA、B、Cが実用上許容可能な範囲である。結果を表7に示す。
【0346】
(評価基準)
A:解像度が5μm未満
B:解像度が5μm以上7μm未満
C:解像度が7μm以上9μm未満
D:解像度が9μm以上11μm未満
E:解像度が11μm以上
【0347】
【0348】
表7の結果から、実施例の転写フィルムによれば、解像性に優れるレジストパターンを形成できることが確認された。
また、実施例の対比から、化合物Aが、分子量が2,000以下であり且つ上述した一般式(6B)で表される低分子化合物Aである場合(実施例5、6、8が該当)、又は、上述した一般式(4)で表される構成単位及び上述した一般式(5)で表される構成単位を含む高分子化合物Aである場合(実施例1~3、6が該当)、解像性がより優れることが明らかとなった。なかでも、化合物Aが、分子量が2,000以下であり且つ上述した一般式(6B)で表される低分子化合物Aである場合(実施例5、6、8が該当)、又は、重量平均分子量が15,000以下であり且つ上述した一般式(4)で表される構成単位及び上述した一般式(5)で表される構成単位を含む高分子化合物Aである場合(実施例1、2、6が該当)、解像性がより優れることが明らかとなった。
【0349】
[実施例9~16並びに比較例3及び4]
〔感光性樹脂組成物の調製〕
<樹脂の製造>
(重合体P-5の合成)
容量2000mLのフラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(60g、富士フイルム和光純薬社製)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(240g、富士フイルム和光純薬社製)を導入した。得られた液体を、撹拌速度250rpm(round per minute;以下同じ。)で撹拌しつつ90℃に昇温した。
滴下液(1)の調製として、メタクリル酸(107.1g、三菱レイヨン社製、商品名アクリエステルM)、メタクリル酸メチル(5.46g、三菱ガス化学社製、商品名MMA)、及びシクロヘキシルメタクリレート(231.42g、三菱ガス化学社製、商品名CHMA)を混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(60.0g)で希釈することにより、滴下液(1)を得た。
滴下液(2)の調製として、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(9.637g、富士フイルム和光純薬社製、商品名V-601)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(136.56g)で溶解させることにより、滴下液(2)を得た。
滴下液(1)と滴下液(2)とを同時に3時間かけて、上述した容量2000mLのフラスコ(詳細には、90℃に昇温された液体が入った容量2000mLのフラスコ)に滴下した。滴下終了後、1時間おきにV-601(2.401g)を上記フラスコに3回添加した。その後90℃で更に3時間撹拌した。
その後、上記フラスコ中の得られた溶液(反応液)をプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(178.66g)で希釈した。次に、テトラエチルアンモニウムブロミド(1.8g、富士フイルム和光純薬社製)とハイドロキノンモノメチルエーテル(0.8g、富士フイルム和光純薬社製)を反応液に添加した。その後、反応液の温度を100℃まで昇温させた。
次に、グリシジルメタクリレート(76.03g、日油社製、商品名ブレンマーG)を1時間かけて反応液に滴下した。上記反応液を100℃で6時間反応させ、樹脂P-5の溶液を1158g得た(固形分濃度36.3質量%)。得られた樹脂P-5の重量平均分子量は27000、数平均分子量は15000、酸価は95mgKOH/gであった。ガスクロマトグラフィーを用いて測定した残存モノマー量はポリマー固形分に対し0.1質量%未満であった。
【0350】
<樹脂P-6の合成>
樹脂P-5の合成方法を参考にして、樹脂P-6を得た。
具体的には、樹脂P-5の合成で使用した滴下液(1)において、モノマーとして、メタクリル酸(107.1g)、メタクリル酸メチル(5.46g)、及びシクロヘキシルメタクリレート(231.42g)を使用していたのを、下記表8に示す質量比となるようにモノマーを使用する構成に変更した。また、グリシジルメタクリレート(76.03g)についても、下記表8中のMAA-GMAの組成となるように添加量を変更した。
得られた樹脂P-6の溶液の固形分濃度は36.3質量%であり、樹脂P-6の重量平均分子量は17000であった。
表8に、樹脂を合成するために使用した各モノマーの種類、各モノマーに由来する構成単位の質量百分率(質量%)、並びに、樹脂の重量平均分子量を示す。また、表8中、MAA-GMAは、メタクリル酸に由来する構成単位に対してグリシジルメタクリレートが付加した構成単位を表す。
【0351】
【0352】
なお、樹脂P-5、P-6はいずれのアルカリ可溶性樹脂に該当する。樹脂P-5及びP-6は、それぞれ樹脂を含む溶液の形態で、感光性樹脂組成物中に添加された。
【0353】
<ブロックイソシアネート化合物Q-1の合成>
窒素気流下、ブタノンオキシム(出光興産社製)(453g)をメチルエチルケトン(700g)に溶解させた。得られた溶液に、氷冷下、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(cis,trans異性体混合物、三井化学社製、タケネート600)(500g)を1時間かけて滴下し、滴下後更に1時間反応させた。その後、上記溶液を40℃に昇温して1時間反応させた。1H-NMR(Nuclear Magnetic Resonance)及びHPLC(High Performance Liquid Chromatography)にて反応が完結したことを確認し、ブロックイソシアネート化合物Q-1(下記式参照)のメチルエチルケトン溶液(固形分濃度57.7質量%)を得た。
なお、ブロックイソシアネート化合物Q-1は、ブロックイソシアネート化合物Q-1を含む溶液の形態で感光性樹脂組成物中に添加された。
【0354】
【0355】
<ブロックイソシアネート化合物Q-8の合成>
ブロックイソシアネート化合物Q-1の合成方法を参考にして、ブロックイソシアネート化合物Q-8(下記式参照)のメチルエチルケトン溶液(固形分濃度75.0質量%)を得た。
なお、ブロックイソシアネート化合物Q-8は、ブロックイソシアネート化合物Q-8を含む溶液の形態で感光性樹脂組成物中に添加された。
【0356】
【0357】
<感光性樹脂組成物5~6の調製>
下記表9に記載の処方に従い、これらの成分を撹拌混合することで、感光性樹脂組成物5~6を調製した。なお、各成分の量の単位は、質量部である。
【0358】
【0359】
〔水溶性樹脂組成物の調製〕
<重合体P-7の合成>
3つ口フラスコにプロピレングリコールモノメチルエーテル(270.0g)を導入し、撹拌しつつ窒素気流下で70℃に昇温させた。
一方、アリルメタクリレート(45.6g、富士フイルム和光純薬株式会社)及びメタクリル酸(14.4g)を、プロピレングリコールモノメチルエーテル(270.0g)に溶解させ、更にV-65(3.94g、富士フイルム和光純薬株式会社)を溶解させることで滴下液を作成し、上記フラスコ中へ2.5時間かけて滴下を行った。そのまま2.0時間、撹拌状態を保持し反応を行った。その後、上記フラスコの内容物の温度を室温まで戻し、上記フラスコの内容物を撹拌状態のイオン交換水2.7Lへ滴下し、再沈殿を実施し、研濁液を得た。ろ紙を引いたヌッチェ(ブフナー漏斗)にて研濁液をろ過し、濾過物を更にイオン交換水で洗浄し、湿潤状態の粉体を得た。45℃の送風乾燥にかけ、恒量になったことを確認し、粉体として収率70%で樹脂P-7を得た。ガスクロマトグラフィーを用いて測定した残存モノマー量はポリマー固形分に対し0.1質量%未満であった。
【0360】
<水溶性樹脂組成物8~14の調製>
下記表10に記載の処方に従い、これらの成分を撹拌混合することで、水溶性樹脂組成物8~14を調製した。なお、各成分の量の単位は、質量部である。
なお、水溶性樹脂組成物8~14は、屈折率調整層を形成するために用いられ得る。
また、水溶性樹脂組成物8~14の調製に使用した、樹脂P-7及びアルフォンUC-3920は、アルカリ可溶性樹脂である。また、樹脂P-7及びアルフォンUC-3920は、液温が22℃であるpH7.0の水100gへの溶解度が0.1g以上であった。つまり、これらの樹脂は、水溶性樹脂にも該当する。
【0361】
【0362】
〔転写フィルムの作製〕
<実施例9>
厚み16μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラー16KS40(東レ社製))の仮支持体の上に、スリット状ノズルを用いて、幅1.0mで乾燥後の感光性組成物層の厚みが指定の膜厚(表9に記載の膜厚:8.0μm)となるように、感光性樹脂組成物の塗布量を調整し、感光性樹脂組成物5を塗布した。次に、得られた積層体を、温度が80℃、且つ、吸気量と排気量を調整して膜面風速が0.2m/secとなるように設定した3mの乾燥ゾーンを60秒間かけて通過させ、仮支持体と感光性樹脂層の積層体Cを得た。
続いて、作製した積層体Cの感光性樹脂層上に、スリット状ノズルを用いて、幅1.0mで乾燥後の組成物層の平均膜厚が指定の膜厚(表10に記載の膜厚:80nm)となるように塗布量を調整し、水溶性樹脂組成物8を塗布した。その後、上記積層体Cを、温度が80℃、且つ、吸気量と排気量を調整して膜面風速が3m/secとなるように設定した3mの乾燥ゾーンを60秒間かけて通過させ、上記感光性樹脂層上に水溶性樹脂層が形成された実施例9の転写フィルムを得た。
【0363】
<実施例10~16、及び比較例3、4>
表11に示すように、感光性樹脂組成物及び水溶性樹脂組成物の種類を変更した以外は、実施例9と同様の方法で転写フィルムを作製した。
但し、実施例10~16、並びに、比較例3及び4については、水溶性樹脂組成物及び感光性樹脂組成物の種類に応じて、各組成物から形成される組成物層の膜厚も変更している。形成される組成物層の膜厚とは、表9及び表10において組成物の組成とともに示している平均膜厚を意図する。
【0364】
なお、実施例9~16の転写フィルムは、第2態様の転写フィルムに該当する。
【0365】
〔面状評価〕
厚さ100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用意した。
作製した転写フィルムを巻き出した後、ロール温度100℃、線圧1.0MPa、線速度4.0m/minのラミネート条件で、仮支持体上に配置された組成物層の最外層(水溶性樹脂層)の表面と上記PET基板とを貼り合せることで、転写フィルムにPET基板をラミネートした。次いで、仮支持体を剥離せずに超高圧水銀灯で露光後、仮支持体を剥離して現像した。現像は25℃の1.0%炭酸ナトリウム水溶液を用い、シャワー現像で30秒行った。上記方法にてラインアンドスペースパターンマスク(Duty比 1:1、線幅20μm)を介してパターンを形成したときに、レジスト線幅が20μmとなる露光量を最適露光量とした。
最適露光量で形成した硬化膜の表面について、PETフィルム側から、10m長×全幅(1.0m)を目視観察し、下記の評価基準にしたがって面状を評価した。このうち、ランクA、B、Cが実用上許容可能な範囲である。結果を表11に示す。
(評価基準)
A:表面欠陥が、1個/m2未満であった。
B:表面欠陥が、1個/m2以上、3個/m2未満であった。
C:表面欠陥が、3個/m2以上、5個/m2未満であった。
D:表面欠陥が、5個/m2以上、10個/m2未満であった。
E:表面欠陥が、10個/m2以上であった。
【0366】
【0367】
表11の結果から、実施例の転写フィルムは表面欠陥が少ないことが確認された。
また、実施例の対比から、化合物Aが、分子量が2,000以下であり且つ上述した一般式(6B)で表される低分子化合物Aである場合(実施例15及び16が該当)、又は、上述した一般式(4)で表される構成単位及び上述した一般式(5)で表される構成単位を含む高分子化合物Aである場合(実施例9~11、13が該当)、表面欠陥がより抑制されることが明らかとなった。なかでも、化合物Aが、分子量が2,000以下であり且つ上述した一般式(6B)で表される低分子化合物Aである場合(実施例15及び16が該当)、又は、重量平均分子量が15,000以下であり且つ上述した一般式(4)で表される構成単位及び上述した一般式(5)で表される構成単位を含む高分子化合物Aである場合(実施例9及び10が該当)、表面欠陥が更に抑制されることが明らかとなった。
【符号の説明】
【0368】
1、11 仮支持体
3 熱可塑性樹脂層
5、15 水溶性樹脂層
7、13 ネガ型感光性樹脂層
9、17 カバーフィルム
10、20 転写フィルム